IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァハテルス オーイーの特許一覧

特表2022-503801改良された液滴分離能を有する蒸発器
<>
  • 特表-改良された液滴分離能を有する蒸発器 図1
  • 特表-改良された液滴分離能を有する蒸発器 図2
  • 特表-改良された液滴分離能を有する蒸発器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】改良された液滴分離能を有する蒸発器
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/02 20060101AFI20220104BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F25B39/02 M
F25B39/02 Z
F28D9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021516659
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2019077470
(87)【国際公開番号】W WO2020074637
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】18200129.7
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521116129
【氏名又は名称】ヴァハテルス オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コントゥ、マウリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニッカラ、レイマ
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103BB33
3L103CC01
3L103CC28
3L103DD52
(57)【要約】
外側ケーシングの内側に配置された、蒸発器として機能するプレートパック(4)と、液滴分離器と、を少なくとも含む、物質を気体形態に蒸発させるための蒸発器(1)。外側ケーシングから蒸発物質を導出する出口接続部(6)は、外側ケーシングの端板に配置され、出口接続部(6)は、外側ケーシングの内側にシェルの長手方向に配置された吸引ダクト(10)に接続され、吸引ダクト(10)は、その上面に開口(12)を備え、液滴分離器は吸引ダクト(10)の両側に構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を気体形態に蒸発させるための蒸発器(1)であって、
略水平なシェル(2)と、略垂直な第1端板及び第2端板(3a,3b)と、を備える外側ケーシングと、
前記外側ケーシングに蒸発させる物質を導入するための入口接続部(5)と、
前記外側ケーシングから蒸発物質を導出するための出口接続部(6)と、
蒸発器として機能すると共に、前記外側ケーシング内の下部に配置されるプレートパック(4)と、
前記プレートパックに加熱物質を導入及び導出するための入口接続部(7)及び出口接続部(8)と、
前記外側ケーシング内に前記プレートパックの上方に配置される液滴分離器と、
を少なくとも備え、
前記外側ケーシングから蒸発物質を導出するための出口接続部(6)が、前記外側ケーシングの端板(3a,3b)に配置されると共に、前記外側ケーシングの内側に前記シェルの長手方向に沿って配置された吸引ダクト(10)に接続され、前記吸引ダクト(10)は、その上面に開口(12)を備え、前記液滴分離器は、前記吸引ダクト(10)の両側に構成されることを特徴とする、蒸発器(1)。
【請求項2】
蒸発させる物質を前記外側ケーシング内に導入するための入口接続部(5)が、前記外側ケーシングの端板(3a、3b)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項3】
前記吸引ダクト(10)は、前記第1の端板(3a)から前記第2の端板(3b)までにわたって、前記水平なシェル(2)の長手方向に延在することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蒸発器。
【請求項4】
前記吸引ダクト(10)は、前記外側ケーシングの端板を貫通して、好ましくは両端板を貫通して延在することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蒸発器。
【請求項5】
前記吸引ダクト(10)は、その上面に、前記吸引ダクトの実質的に全長にわたる開口(12)を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項6】
前記液滴分離器は、前記吸引ダクト(10)の両側に配置された第1および第2のデミスター部分(9a、9b)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項7】
前記液滴分離器の前記デミスター部分(9a、9b)は、2つの重ねられた多孔板等を含み、その間の空間が気体透過性材料で満たされていることを特徴とする、請求項6に記載の蒸発器。
【請求項8】
前記デミスター部分(9a、9b)は、前記プレートパックの長さに実質的に対応する長さを有し、前記シェルの中間点の線から前記シェルの縁部に向かって斜め下方に設置されることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の蒸発器。
【請求項9】
前記吸引ダクト(10)の前記開口が、前記液滴分離器のデミスター部分(9a、9b)の実質的に上方にある、前記吸引ダクトの上面に配置されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項10】
前記液滴分離器の前記デミスター部分(9a、9b)および前記吸引ダクト(10)の上方にカバープレート(11)が配置され、前記カバープレート(11)は、前記デミスター部分の長さに対応する長さを有すると共に、断面視において、前記第1のデミスター部分(9a)の下縁から前記第2のデミスター部分(9b)の下縁まで延在することを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項11】
前記カバープレート(11)は、前記シェル(2)の内面と対応する形状を有することを特徴とする、請求項10に記載の蒸発器。
【請求項12】
前記吸引ダクト(10)と、前記吸引ダクト(10)の両側に配置されたデミスター部分(9a,9b)と、前記カバープレート(11)とが、前記外側ケーシング内に配置された別体の部品として形成されていることを特徴とする、請求項6~11のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項13】
第1の端板(14a)および第2の端板(14b)が前記カバープレートの端部に配置され、これら端板が前記デミスター部分(9a、9b)の端部に取り付けられることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項14】
前記蒸発器は、前記蒸発物質を前記外側ケーシングから導出するための2つの出口接続部を備え、前記出口接続部は、前記吸引ダクト(10)の両端に配置されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の蒸発器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の蒸発器(1)の、冷凍システムの満液式蒸発器およびそれに関連する液滴分離器としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下に提示する独立請求項に係る蒸発器および蒸発器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発器は、物質の液体形態を気体形態に変えるために使用される装置である。従来技術において知られている一種の蒸発器は、蒸発器として機能するプレートパックと、同じ外側ケーシングの内側に嵌合された液滴分離器とを含む。プレートパックは外側ケーシングの下部に配置され、液滴分離器はプレートパックの上部に配置される。プレート熱交換器の一つの重要な用途は満液式蒸発器(flooded evaporator)であり、これは冷凍装置における蒸気圧縮冷凍サイクルに使用されることができる。液滴分離器の役割は、冷媒液滴が冷凍装置の圧縮器に運ばれないようにすることである。
【0003】
既知の蒸発器では、蒸発した物質の出口は、通常、液滴分離器への均一な吸引を保証し、したがって液滴の効率的な分離を保証するために、液滴分離器の上方に配置される。液滴分離器の上方に配置された出口は、蒸発器配置に必要な高さ方向の空間を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、蒸発器に必要な空間、特に高さ方向の空間を減少させる蒸発器の構造を提供することである。
【0005】
本発明の目的は、機能的に効率的であり、経済的であり、小型である、液滴分離器を備えた満液式蒸発器の構造を提供することである。特に、本発明の目的は、用途とするシステムに蒸発器を適合させる際に、配管のためにより少ないスペースを必要とできる蒸発器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、添付の独立請求項の特徴部分に記載されている事項を特徴とする。
【0007】
本発明のいくつかの好ましい実施形態が、他の請求項に記載される。
【0008】
本明細書で言及される実施形態および利点は、必ずしも特に言及されていない場合であっても、適用可能な場合には、蒸発器および本発明による蒸発器の使用の両方に関連する。
【0009】
本発明による典型的な物質を気体形態に蒸発させるための蒸発器は、
略水平なシェルと、略垂直な第一端板及び第二端板と、からなる外側ケーシングと、
外側ケーシングに蒸発させる物質を導入するための入口接続部と、
外側ケーシングから蒸発物質を導出する出口接続部と、
外側ケーシング内の下部に配置され、蒸発器として機能するプレートパックと、
プレートパック内に加熱物質を導入し、プレートパックから加熱物質を導出するための入口接続部及び出口接続部と、
外側ケーシングの内側であって、プレートパックの上方に配置される液滴分離器と、を備える。
【0010】
本発明に係る典型的な蒸発器では、外側ケーシングから蒸発物質を外出させるための出口接続部が、外側ケーシングの端板に配置され、出口接続部は、外側ケーシングの内側に、外側ケーシングのシェルの長手方向に沿って配置された吸引ダクトに接続され、吸引ダクトは、その上面に開口を備え、液滴分離器は、吸引ダクトの両側に構成される。
【0011】
本発明による蒸発器は、典型的には、冷凍機装置およびそれに関連する液滴分離器における、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける満液式蒸発器として使用される。本発明による蒸発器構造は、液滴が蒸発器から冷凍装置に使用される圧縮器に運ばれないことを保証するために使用される。
【0012】
蒸発器の内部に液滴分離器に関連して吸引ダクトを配置することによって、蒸発物質を外側ケーシングの外に均一に吸引することができることが分かった。したがって、蒸発器の端板に蒸発物質の出口を配置することができ、蒸発器およびそれに関連する冷凍機械の配管をより簡単にすることができる。本発明による蒸発器の構造はコンパクトであり、蒸発器から蒸発物質を導出するための配管に必要な空間を減少させることができる。本発明による好ましい実施形態では、蒸発器のすべての入口接続部および出口接続部を、外側ケーシングの端板に配置することができ、最も好ましい実施形態では、すべての入口接続部および出口接続部は、同じ端板に配置される。液滴分離器構造内に配置された吸引ダクトは、吸引ダクト全体に沿って均一に吸引力を形成し、液滴分離も効率的である。蒸発物質は、液滴分離器を通過して流れ、次いで吸引ダクトに導かれ、外側ケーシングの外へ導かれる。本発明による構造は簡単であり、吸引ダクトを備えた液滴分離器は、別個の構成要素として容易に外部ケーシングの内側に配置することができる。
【0013】
本発明による蒸発器では、蒸発物質のための吸引ダクトおよび出口接続部を、プレートパックのサイズおよび蒸発器の容量とは無関係に、標準サイズとして製造することができる。したがって、本発明の構造は、使用される構成要素を標準部品または広く使用されているものとすることができるので、経済的でもある。
【0014】
本発明は、添付の概略図を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による蒸発器の断面図を示す。
図2】本発明の別の実施形態による蒸発器の断面図を示す。
図3】本発明の一実施形態による蒸発器の長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による蒸発器は、プレート・シェル型熱交換器の構造に基づいている。蒸発器は、外側ケーシングと、外側ケーシングの内側に配置されたプレートパックとを備える。外側ケーシングは、実質的に水平なシェルと、該シェルの端部に配置される実質的に垂直な第1の端板及び第2の端板とを備える。典型的な実施形態では、シェルは円筒形シェルである。本明細書で使用される、外側ケーシング又は円筒形シェルの長手方向という用語は、典型的には水平方向を意味する。例えば、外側ケーシングの円筒形シェルが直線円筒形である場合、その長手方向は、当該円筒の中心軸の方向と同じである。
【0017】
典型的には、本発明による蒸発器では、外側ケーシングは圧力容器として機能する。本発明による蒸発器は、好ましくは満液式蒸発器である。
【0018】
蒸発器として機能するプレートパックは、外側ケーシングの内側の下部に配置されている。蒸発器のプレートパックは、プレートの対を重ねて配置することにより形成される。各プレート対は、典型的には、少なくともそれらの外周において互いに取り付けられた、好ましくは溶接された、2つの熱交換プレートから形成される。各熱交換プレートは、加熱物質の流れのための少なくとも2つの開口部を有する。隣接するプレート対は、2つの隣接するプレート対の開口部を互いに取り付けることによって、互いに取り付けられる。したがって、加熱物質は、開口部を介してプレート対から別のプレート対に流れることができる。蒸発される物質は、プレート対の間の空間内で外側ケーシング内を流れるように配置されている。加熱物質をプレートパック内に導き、そこから排出するための加熱物質用の入口接続部及び出口接続部が、外側ケーシングの端板に配置されている。加熱物質の入口接続部及び出口接続部は、プレートパックの内側部分、すなわちプレートパックのプレート対の内側部分と接続して配置され、これにより、加熱物質の入口接続部及び出口接続部の間に蒸発器の一次回路が形成される。蒸発される物質の入口接続部及び出口接続部は、外側ケーシングを貫通して、かつ外側ケーシングの内側、即ち、プレートパックの外側と接続して配置される。換言すれば、蒸発器の二次回路は、蒸発させる物質の入口接続部及び出口接続部の間、外側ケーシングの内側、プレート対の間の空間に形成される。典型的には、一次回路および二次回路は互いに分離しており、すなわち、プレートパックの内側部分を流れる加熱物質は、外側ケーシング内を流れる蒸発される物質と混合されることはない。したがって、加熱物質は、他のすべてのプレート空間において流れ、蒸発される物質は、プレートパックの他のすべてのプレート空間において流れる。
【0019】
熱交換板を重ねて形成したプレートパックは、プレートパックの長手方向が外側ケーシングのシェルの長手方向に沿うように、外側ケーシングの内側に配置されている。本発明の実施形態において、蒸発器として機能するプレートパックは円形の熱交換板で形成され、プレートパックは主に、その長手方向が円筒形シェルの長手方向である、円筒形状である。長手方向におけるプレートパックの長さは、シェルの長さと実質的に同じである。本発明の一実施形態では、プレートパックは実質的に円筒形であり、プレートパックの外径は、円筒形シェルの内径の約30~70%または約40~60%である。プレートパックは、典型的には、円筒形シェルの下部に、円筒形シェルに対して偏心して配置される。あるいは、プレートパックは、楕円形または半円形の熱交換プレートで形成されてもよく、プレートパックは外側ケーシングの下部に配置され、外側ケーシングのシェルの内側で蒸発される物質の体積を実質的に減少させてもよい。
【0020】
本発明による蒸発器では、蒸発される物質のための入口接続部は、典型的には、外側ケーシングの円筒形シェル又は端板を通して配置される。本発明の好ましい実施形態では、蒸発される物質を外側ケーシング内に導入するための入口接続部が、外側ケーシングの端板に配置される。
【0021】
本発明によれば、蒸発した物質を外側ケーシングから導出するための出口接続部が、外側ケーシングの端板に配置される。本発明において、外側ケーシングから蒸発物質を導出するための出口接続部は、外側ケーシングの内側にシェルの長手方向に沿って配置された吸引ダクトに接続され、吸引ダクトは、その上面に開口部を備え、液滴分離器は、吸引ダクトの両側に構成される。本発明による一実施形態では、蒸発器は、蒸発物質を外側ケーシングから導出するための2つの出口接続部を備えることができ、この出口接続部は、吸引ダクトの両端に配置され、したがって、外側ケーシングの両端板に配置される。吸引ダクトの両端における出口接続は、シェルの長さが長手方向に増大し、蒸発物質の外側ケーシングからの効率的な吸引および効率的な液滴分離が保証されるべき場合に有利であり得る。
【0022】
本発明による好ましい実施形態では、蒸発器の構造を単純化するために、すべての入口接続部および出口接続部が外側ケーシングの端板に、好ましくは同じ端板に配置される。
【0023】
液滴分離器は、外側ケーシングの内側、プレートパックの上方に配置される。典型的には、液滴分離器は、外側ケーシングの内側であって、その上部に配置される。この種の構造は、蒸発器のコンパクトな構造を提供する。液滴分離器の構成は限定されないが、操作条件およびそれらの要件に基づいて選択することができる。本発明の一実施形態では、蒸発器は、デミスター液滴分離器を含む。本発明の一実施形態による液滴分離器は、第1および第2の蒸気透過性デミスター部分を含む。本発明による蒸発器は、蒸発物質を外側ケーシングから導出するために出口接続部に関連して配置された吸引ダクトを備え、吸引ダクトは、外側ケーシングの上部において、プレートパックの上方に配置された液滴分離装置の一部である。液滴分離器の第1および第2のデミスター部分は、吸引ダクトの両側に配置される。デミスター部分は、吸引ダクトの長手方向に、吸引ダクトに対して緊密に取り付けられている。本発明の典型的な実施形態では、デミスター部分は、プレートパックの長さに実質的に対応する長さを有し、それらは、シェルの中間点のラインから外側ケーシングの縁部に向かって斜め下方に設置されている。
【0024】
本発明の一実施形態では、液滴分離器のデミスター部分は、2つの重ね合わされた多孔板などを含み、その間の空間は、可能な限り低い流れ抵抗を生成する、ワイヤメッシュ、スチールウールなどの高度に気体透過性の材料で充填される。本発明の一実施形態では、デミスター部分は、1つまたはいくつかの蒸気透過性デミスター部分および蒸気不透過性部分を含むことができる。
【0025】
本発明による一実施形態では、外側ケーシングから蒸発物質を導出するための出口接続部に関連して配置された吸引ダクトは、外側ケーシングのシェルの長さに対応する長さを有し、すなわち、吸引ダクトは、典型的には、第1の端板から第2の端板まで水平シェルの長手方向に延在し、吸引力を、シェルの全長に沿って均一にすることができる。これは、効率的な液滴分離を提供し、液滴分離器の濡れを減少させる。吸引ダクトは、外側ケーシング内に略水平に配置される。
【0026】
吸引ダクトは、その上面に開口を備え、この開口を通して、蒸発物質が外側ケーシングの内部から吸引される。本発明による好ましい実施形態では、吸引ダクトは、実質的に吸引ダクトの全長にわたって、吸引ダクトの上面に開口を備える。開口の形状および大きさは様々であってよく、例えば、開口は円形または楕円形であってもよく、または、長尺の開口であってもよい。本発明による一実施形態では、吸引ダクトの上面は、吸引ダクトの長さ方向に長尺の開口を含むことができる。本発明による別の実施形態では、吸引ダクトの上面は、穿孔されてもよい。本発明による実施形態では、吸引ダクトの上面に配置された開口の面積の合計は、適切な吸引を提供するために、蒸発器から蒸発物質を導出するための出口接続部の面積と少なくとも同じであるべきである。
【0027】
本発明の一実施形態では、吸引ダクトの開口は、その上面に配置され、この表面は、液滴分離器のデミスター部分の実質的に上方にあり、すなわち開口は、液滴分離器のデミスター部分の最上ラインの実質的に上方にある。これは、蒸発される物質が、吸引ダクトに入り、外側ケーシングから導出される前に液滴分離器を通るよう導かれることを保証する。
【0028】
本発明の一実施形態において、液滴分離器配置は、液滴分離器のデミスター部分および吸引ダクトの上方に配置されたカバープレートを備えることができ、このカバープレートは、水平シェルの長手方向に配置された外側ケーシングの内側にある。本発明による非典型的な実施形態では、カバープレートは、デミスター部分の長さに対応する長さを有し、断面視において、カバープレートは、第1のデミスター部分の下縁部から第2のデミスター部分の下縁部まで延びるように配置される。カバープレートはデミスター部分の下端に取り付けられている。本発明による実施形態では、第1の端板および第2の端板がカバープレートの端部に配置され、これら端板は、閉構造を形成するためにデミスター部分の端部に取り付けられ、これは、吸引ダクトへの蒸発物質の直接的な流れを排除し、すなわち端板を有するカバープレートは、液滴分離器のバイパス流を排除するために使用される。
【0029】
本発明による実施形態においては、カバープレートを配置し、液滴配置全体を外側ケーシングの内面に密着させるために、カバープレートはシェルの内面と対応する形状を有する。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、吸引ダクトと、吸引ダクトの両側に配置されたデミスター部分と、カバープレートとを備える液滴分離器を、外側ケーシングの内側に配置可能な別個の液滴分離器構成要素として製造することができる。これにより、液滴分離器の組立作業が簡単になる。典型的には、液滴分離器構成要素は、カバープレートの端部に取り付けられた端板も含む。吸引ダクトは、典型的には、構成要素の端板を貫通して配置される。
【0031】
本発明による実施形態において、吸引ダクトの長さは、外側ケーシングの端板を通って、好ましくは両端板を通って、延出するように増大され、これにより吸引ダクトを取り付けることが可能となり、従って、吸引ダクトと、吸引ダクトの両側に配置されたデミスター部分と、カバープレートとを備える液滴分離器構造全体を、外側ケーシングの端板に取り付けることが可能となる。従って、外側ケーシングのシェルにカバープレートや液滴分離器を取り付ける必要がなく、組立作業が簡単になる。吸引ダクトが端板を貫通して延出すると、吸引ダクトも端板に支持される。
【0032】
本発明による満液式蒸発器では、蒸発させる物質、例えば蒸発させる冷媒または他の液体の液面は、有利には、円筒形シェルの直径の高さに調整され、それによって、蒸発させる物質の表面積はできるだけ大きくなり、表面積当たりの蒸気の生成はできるだけ小さくなる。蒸気の上昇速度も従って可能な限り小さく、これにより、蒸気とともに移動する生成された液滴は、より容易に下降する。本発明に係る実施形態では、少なくとも1つの充填ユニットが円筒形プレートパックと円筒形シェルとの間に嵌合されて、液体の体積を減少させる。長尺の充填ユニットは、有利にはプレートパックの両側に配置されており、プレートパックは円筒形シェルの長手方向に沿っている。充填ユニットは、必要に応じて、液体体積を可能な限り減少させるように成形することができる。
【0033】
本発明による蒸発器は、冷凍システムの満液式蒸発器およびそれに関連する液滴分離器として使用することができる。
【0034】
図面の実施例の詳細な説明
【0035】
明確にするために、異なる実施形態においても、対応する部分には同じ参照番号が使用される。
【0036】
図1~3に示す蒸発器1は、外側ケーシングを備えており、外側ケーシングは、実質的に水平な円筒形シェル2と、実質的に垂直な第1及び第2の端板3a、3bとで形成されている。円筒形プレートパック4は、円筒形シェルの内側に偏心して配置されている。プレートパック4は、典型的には、円筒シェルの下部に配置され、液滴分離器は、円筒形シェルの上部においてプレートパックの上方に配置される。図に示すプレートパック4は、互いに重ねて配置された円形の熱交換板により形成されており、プレートパック4は、その長手方向が円筒形シェルの長手方向に沿うように、水平円筒シェル2の内側に配置されている。プレートパック4の外面は、蒸発器の熱交換面として機能する。入口接続部7及び出口接続部8は、プレートパック4に加熱物質を導入し、導出するように配置されており、これらは端板3aに配置されている。
【0037】
外側ケーシングの端板3aには、蒸発させる物質のための入口接続部5と、蒸発した物質のための出口接続部6とが配置されている。
【0038】
液滴分離器配置は、吸引ダクト10と、吸引ダクトの両側に配置されたデミスター部分9a、9bとを備える。吸引ダクト10は、蒸発物質のための出口接続部6に接続して配置される。吸引ダクト10は、吸引ダクトの実質的に全長にわたる開口12を備える。開口部12は、吸引ダクトの上面に配置されており、この面は、液滴分離器のデミスター部分9a、9bのほぼ上方にある。吸引ダクトは、外側ケーシング内に略水平に配置される。図3に示すように、吸引ダクトは、外側ケーシングの端板3a、3bを貫通して延出することができるので、端板に容易に取り付けることができる。デミスター部分9a、9bは、円筒形シェルの長手方向にほぼ水平に設置され、同時に、円筒シェルの中間点の線から装置の縁部に向かって斜め下方に設置される。
【0039】
液滴分離器は、図2に示すように、カバープレート11をさらに備えることができ、カバープレート11は、シェル2の内面の形状を有する。カバープレート11は、デミスター部分9aの下縁からデミスター部分9bの下縁まで伸びている。図3に示すように、外側ケーシングの上部における液滴分離器配置は、カバープレート11の端部に配置され、デミスター部分に取り付けられた端板14a、14bも含む。図4に示す実施形態では、吸引ダクト10は、端板14a、14bを貫通して伸びている。
【0040】
蒸発させる物質、例えば冷媒は、入口接続部5から外側ケーシング2内に導入される。蒸発した物質は出口接続部6から排出される。加熱物質は、入口接続部7により外側ケーシングの端板3aを通ってプレートパック4に導入され、出口接続部8により外側ケーシングの端板3aを通ってプレートパックから除去される。プレートパック4の外面は、蒸発器の熱交換面として機能する。蒸発させる物質の液面13は、図1及び図2に視認可能に描かれている。蒸発させる物質、例えば蒸発させる冷媒又は他の液体の液面12は、有利には、ほぼ円筒形シェルの直径の高さに調節され、これにより、蒸発させる物質の表面積はできるだけ大きくなり、表面積当たりの蒸気の生成はできるだけ小さくなる。蒸発させる物質のための入口接続部5は、図に示される実施形態において、外側ケーシングの端板3aを通って配置される。入口接続部5の配置は、いつでも必要に応じて決定される。本発明の一実施形態によれば、蒸発させる物質のための入口接続部は、液面13より下に配置される。
【0041】
蒸気は、液面13から、蒸気から微細な液滴を分離する液滴分離器のデミスター部分9a、9bを通って上昇する。液滴分離器を通過した後、蒸気は吸引ダクト10及び出口接続部6を通って排出されることができる。蒸発した冷媒はそこから、例えば冷凍装置(図示せず)の圧縮機に導かれる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】