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特表2022-504625ティッシュペーパー製造機械およびティッシュペーパー製造機械の駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ティッシュペーパー製造機械およびティッシュペーパー製造機械の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 5/02 20060101AFI20220105BHJP
   D21F 9/02 20060101ALI20220105BHJP
   D21F 1/00 20060101ALI20220105BHJP
   D21F 1/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
D21F5/02
D21F9/02 A
D21F1/00
D21F1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519733
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 SE2019050822
(87)【国際公開番号】W WO2020076204
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】1851245-9
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513102187
【氏名又は名称】バルメット、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】VALMET AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム、アロンソン
(72)【発明者】
【氏名】カール-ヨハン、トルフソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ポールソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーラン、エクストレム
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055BD02
4L055BD03
4L055BD05
4L055BD07
4L055CD05
4L055CE01
4L055CE25
4L055CE29
4L055CE36
4L055CE46
4L055CE78
4L055CE79
4L055CE90
4L055CF03
4L055CF50
4L055EA15
4L055EA19
4L055EA23
4L055EA26
4L055FA22
4L055FA23
4L055GA29
(57)【要約】
ティッシュ機械(1)は、ヤンキー(3)と、ヤンキー(3)とともにニップを形成するシューロール(4)と、を有している。ニップは、入口ポイント(7)から出口ポイント(8)までの最大延在長さを有している。フレキシブルベルト(9)が、ロール(4)の外周縁を形成している。ファブリック(10)が、繊維状ウェブ(W)をニップへと搬送するとともに、ウェブと一緒にニップを通過する。ファブリック(10)は、第1接触ポイント(11)のところにおいてロール(4)の外周縁へと到達するとともに、第1接触ポイントからニップまでロール(4)を巻回する。ベルト(9)の内部に位置した機械的支持体(12)が、第1接触ポイント(11)とニップの間において、ベルト(9)を支持する。ファブリック(10)は、第1接触ポイント(11)から、80゜を超えて、ロール(4)を巻回する。本発明は、また、機械を駆動する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成セクション(2)と、
ヤンキー乾燥シリンダ(3)と、
前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)とともにニップを形成するように構成されたシューロール(4)であるとともに、前記シューロール(4)と前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)との間に形成された前記ニップ内において前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)に対して作用するように構成されたシュー(6)を有したシューロール(4)であり、前記ニップは、前記ニップの入口ポイント(7)から前記ニップの出口ポイント(8)までの最大延在長さを有し、前記シュー(6)の周りにループを形成しかつ前記シューロール(4)の外周縁を形成するフレキシブル管状ベルト(9)をさらに含むシューロール(4)と、
繊維状ウェブ(W)を、前記形成セクション(2)から、前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)と前記シューロール(4)との間に形成された前記ニップへと、搬送し得るように構成され、かつ、前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)と前記シューロール(4)との間の前記ニップを、前記繊維状ウェブ(W)と一緒に通過するように構成され、さらに、第1接触ポイント(11)のところにおいて前記シューロール(4)の前記外周縁へと到達するように構成され、これにより、前記第1接触ポイント(11)から前記ニップまで広がる領域にわたって、前記シューロール(4)の前記外周縁の一部を巻回するものとされた、搬送ファブリック(10)と、を含み、
前記シューロールは、前記フレキシブル管状ベルト(9)がなす前記ループの内部に配置された機械的支持体(12)をさらに含み、前記機械的支持体(12)は、前記第1接触ポイント(11)と、前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)と前記シューロールとの間の前記ニップと、の間の前記領域の少なくとも一部において、前記フレキシブル管状ベルト(9)を支持するように配置されている、ティッシュペーパー製造機械(1)であって、
前記フレキシブル管状ベルト(9)は、端壁(17、18)に対して接続された軸方向端部(15、16)を有し、前記端壁(17、18)と前記フレキシブル管状ベルト(9)とは、閉鎖空間(19)を規定し、前記ティッシュペーパー製造機械(1)は、前記閉鎖空間(19)を加圧空気によって充填し得るよう、前記閉鎖空間と連通し得る加圧空気供給源(20)を含むことと、
前記搬送ファブリック(10)は、3.0kN/m~5.0kN/mの範囲の張力下にあることと、
前記搬送ファブリック(10)は、前記第1接触ポイント(11)から広がる前記領域において、前記シューロール(4)の前記外周縁を、80°を超える角度で巻回することと、
前記機械的支持体(12)は、前記第1接触ポイントから前記ニップまでの前記領域において、前記フレキシブル管状ベルト(9)を、90°を超える角度にわたって支持するように構成されていることと、
前記機械的支持体(12)は、前記シューロール(4)の円周方向において、前記ニップの前記出口ポイント(8)よりも前記ニップの前記入口ポイント(7)に近いポイントであり、かつ、前記ニップの前記最大延在長さに関して、前記ニップの前記入口ポイント(7)から、少なくとも8゜であり好ましくは10゜~20゜である角距離に位置したポイントのところにおいて、終端していることと、を特徴とする、ティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項2】
前記搬送ファブリック(10)は、前記第1接触ポイントから広がる領域において、100°~280°の範囲の角度で、好ましくは100°~200°の範囲の角度で、さらに好ましくは120°~180°の範囲の角度で、前記シューロールの前記外周縁を巻回している、請求項1に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項3】
前記シュー(6)は、前記ヤンキー乾燥シリンダと前記シューロールとの間の前記ニップ内において前記ヤンキー乾燥シリンダに対向している前記シューの表面の形状を、前記ヤンキー乾燥シリンダの外面に対して一致させ得るように、変形可能である、請求項1または2に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項4】
潤滑剤用の少なくとも1つのアプリケータ(21)が、前記フレキシブル管状ベルト(9)の内部に配置され、前記フレキシブル管状ベルト(9)の内面(22)に対して潤滑剤を適用し得るように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項5】
前記シューロール(4)の前記円周方向において、前記ニップの前記入口ポイント(7)と前記機械的支持体(12)との間に位置する領域に、前記シュー(6)に隣接してトラフ(24)が配置され、これにより、前記ニップに入るとともに前記ニップから後方側に押し出される潤滑流体を、前記トラフ(24)内に収集することができる、請求項1に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項6】
前記形成セクション(2)は、ガイド部材(29)によって支持されたループ内を走行するように構成された第1形成ファブリック(28)と、ガイド部材(26)によって支持されたループ内を走行するように構成されかつ前記繊維状ウェブ(W)を前記形成セクション(2)から前記シューロール(4)と前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)との間に形成された前記ニップへと搬送する第2形成ファブリックとして、前記形成セクション(2)内で使用される水受けフェルトである搬送ファブリック(10)と、を含み、
前記第1形成ファブリック(28)と前記搬送ファブリック(10)とは、これら2つのファブリック(10、28)が互いに向けて収束することにより、原料を注入し得る入口ギャップ(31)を形成するように、互いに関連して構成され、
前記形成セクション(2)は、前記入口ギャップ(31)内へと原料を注入するように構成されたヘッドボックス(32)と、前記搬送ファブリック(10)がなす前記ループの内部に配置された形成ロール(33)と、をさらに含み、
前記形成ロール(33)は、前記搬送ファブリック(10)を前記入口ギャップ(31)内へと案内するように構成されているとともに、前記搬送ファブリック(10)と前記第1形成ファブリック(28)との両方に共通する経路部分でありかつ前記入口ギャップ(31)から始まるその経路部分に沿って、前記搬送ファブリック(10)と前記第1形成ファブリック(28)とを案内するように構成され、
前記形成ロール(33)は、前記搬送ファブリック(10)および前記第1形成ファブリック(28)が走行するように構成された方向に対して垂直な方向に延びる回転軸線(A)の周りのループ内を走行するように構成されたフレキシブルスリーブ(35)を含み、
前記形成ロール(33)は、前記フレキシブルスリーブ(35)がなす前記ループの内部に位置しかつ前記フレキシブルスリーブ(35)の前記回転軸線と平行な方向に延びる支持レッジ(36)をさらに含み、
前記支持レッジ(36)は、前記フレキシブルスリーブ(35)が走行するように構成された前記ループに沿った領域において、前記フレキシブルスリーブ(35)の前記回転軸線から離間して外向きに、前記フレキシブルスリーブ(35)を押圧し得るように構成され、これにより、前記フレキシブルスリーブ(35)が前記支持レッジ(36)によって外向きに押圧される前記領域では、前記フレキシブルスリーブ(35)は、前記支持レッジ(36)が前記フレキシブルスリーブ(35)に対して接触している領域の外側に位置した前記フレキシブルスリーブ(35)の曲率半径と比較して、より小さい曲率半径を有した経路に追従することを強いられる、請求項1に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項7】
前記支持レッジ(36)に対して接触していない領域における前記形成ロール(33)の半径は、500mm~1600mmの範囲であり、前記支持レッジ(36)の最小半径は、40mm~100mmの範囲であり、好ましくは45mm~80mmの範囲であり、さらに好ましくは50mm~75mmの範囲である、請求項6に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項8】
前記形成セクション(2)は、
ガイド部材(29)によって支持されたループ内を走行するように構成された第1形成ファブリック(28)と、
ガイド部材(39)によって支持されたループ内を走行するように構成された第2形成ファブリック(38)であり、水受けフェルトとされ、さらに、前記第1形成ファブリック(28)に対して、前記2つの形成ファブリック(28、38)が互いに向けて収束することにより、原料を注入し得る入口ギャップ(31)を形成するように、互いに関連して構成された第2形成ファブリック(38)と、
前記入口ギャップ(31)内へと原料を注入するように構成されたヘッドボックス(32)と、
前記第2形成ファブリックがなす前記ループの内部に配置された形成ロール(33)と、
延長ニップロール(41)と、前記延長ニップロール(41)とともに脱水ニップを形成する対向ロール(42)と、を含むプリプレス(40)であり、前記延長ニップロール(41)が、圧力シュー(43)と、前記圧力シュー(43)を巻回しているフレキシブルジャケット(44)と、を含んでいる、プリプレス(40)と、を含み、
前記第2形成ファブリック(38)は、前記延長ニップロール(41)と前記対向ロール(42)との間に形成された前記脱水ニップへと前記繊維状ウェブ(W)を搬送するように構成されているとともに、前記繊維状ウェブ(W)と一緒に前記脱水ニップを通過するように構成され、
前記搬送ファブリック(10)は、前記脱水ニップを通過するように構成されているとともに、前記脱水ニップから、前記シューロール(4)と前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)との間に形成された前記ニップへと、前記繊維状ウェブ(W)を搬送するように構成され、これにより、前記繊維状ウェブ(W)は、前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)の表面に対して移送され、
前記搬送ファブリック(10)は、水を吸収しないファブリックであり、このため、前記シューロール(4)と前記ヤンキー乾燥シリンダ(3)との間の前記ニップは、非脱水ニップである、請求項1に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項9】
前記搬送ファブリック(10)は、前記搬送ファブリック(10)がニップを通過する際に前記繊維状ウェブ(W)上に三次元構造を付与し得る水透過性構造化ファブリックである、請求項8に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項10】
前記搬送ファブリック(10)は、前記繊維状ウェブ(W)に対向するように構成された構造化表面(45)であるとともに前記搬送ファブリック(10)がニップを通過する際には前記繊維状ウェブ(W)上に三次元構造を付与し得る構造化表面(45)を有した、水不透過性ベルトである、請求項8に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項11】
前記搬送ファブリック(10)は、前記繊維状ウェブ(W)に対向するように構成された滑らかな表面(46)を有した水不透過性ベルトである、請求項8に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項12】
前記機械的支持体(12)は、前記フレキシブル管状ベルトの曲率半径に対応するように湾曲したガイドシューを含み、これにより、前記フレキシブル管状ベルト(9)は、前記機械的支持体(12)上を滑らかに動くことができる、請求項1に記載のティッシュペーパー製造機械(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のティッシュペーパー製造機械(1)を駆動する方法であって、
前記搬送ファブリック(10)を、1500m/s~2300m/sの範囲の速度で走行させ、前記搬送ファブリック(10)の張力が3.0kN/m~5.0kN/mの範囲に維持されるように、前記搬送ファブリック(10)の張力を、監視して制御する、方法。
【請求項14】
前記閉鎖空間(19)が60ミリバール~100ミリバールの範囲の過圧に維持されるように、前記閉鎖空間(19)に対して加圧空気を供給することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュペーパー製造機械およびティッシュペーパー製造機械の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュペーパー製造機械では、形成セクションで形成された繊維状ウェブが、典型的には、搬送ファブリックによってヤンキー乾燥シリンダへと搬送され、ヤンキー乾燥シリンダのところで、ヤンキー乾燥シリンダの表面に対して、繊維状ウェブが移送される。ヤンキー乾燥シリンダへの移送は、典型的には、多くの場合に脱水ニップとしても機能する移送ニップにおいて、行われる。このようなティッシュペーパー製造機械の一例は、米国特許第6,998,022号明細書に開示されている。また、移送ニップ内においてシューロールを使用し、シューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間のニップにおいて、ウェブをヤンキー乾燥シリンダに対して移送することも、提案されている。このようなティッシュペーパー製造機械の一例は、例えば、米国特許第5,393,384号明細書に開示されている。米国特許第5,393,384号明細書の図7を参照すると、水不透過性ベルト2が、紙ウェブを、「シュープレス」と「ティッシュ乾燥シリンダ」20との間に形成されたニップへと搬送する実施形態が開示されている。このような機械の別の一例は、欧州特許第926 296号明細書に開示されており、繊維状ウェブが、フェルト5によって、シュープレスユニット2とティッシュ乾燥シリンダ3との間のニップに対して搬送される態様が開示されている。シュープレスユニットとティッシュ乾燥シリンダとの間のニップの前方側には、フェルトから、そしておそらく繊維状ウェブからも、水分を除去すると言われている吸引ロール6が位置している。さらに、吸引ロールの作用により、フェルトが水を受容する能力が大幅に向上し、そのため、プレスニップにおいて水を受容し得るようになると記載されている。脱水が大幅に向上して、1つのプレスニップだけで充分であるという効果が得られると記載されている。
【0003】
ヤンキー乾燥シリンダに対してのニップの前方側で吸引ロールを使用することにより、1つの脱水プレスニップだけで充分な程度にまで脱水が向上し得るけれども、吸引ロールの使用には、いくつかの欠点もある。吸引ロールは、エネルギーを必要とし、機械の動作コストを増加させてしまう。その上、吸引ロールは、騒音の発生に寄与する。
【0004】
ティッシュ乾燥シリンダに対してのシュープレスニップを有したティッシュペーパー製造機械の別の例は、米国特許第6,004,429号明細書に開示されている。この特許文献は、シュープレスロールとして具現されたプレスロール28が、乾燥シリンダ60を有したメインプレス30を形成するように構成された機械を開示している。メインプレス30の前方側には、溝付きボトムロール38と、プレスシューを有しさらに滑らかで不透過性のフレキシブルプレスジャケットを有したシュープレスロール40と、によって形成されたプリプレスが、位置している。フェルト12が、プレプレスを経由してメインプレス30へと移動する。この構成により、吸引ロールが不要になると記載されている。米国特許第6,004,429号明細書の図1および図4では、プリプレスを通過したフェルトが、最初に吸引ロールを通過することなく、メインプレス30へと直接的に進むものとして図示されている。フェルト12が、メインプレス30のシュープレスロール28の周りにおいて、45°を超えて巻回することが記載されている。さらに、プレスジャケットが、内側から支持されるべきであると記載されている。プレスジャケットを内側から支持するために、米国特許第6,004,429号明細書は、プレスジャケットを小さな支持ロール86によって内側から支持することを提案しており、この‘429号特許の図4は、支持ロール86が、プレスジャケット84の内側に配置される態様を図示している。円周方向における支持ロール間の角距離が約7.5°~約15°の範囲にあれば有利であると記載されている。
【0005】
本発明の目的は、ヤンキー乾燥シリンダに対しての移送ニップを形成するためにシューロールを使用したティッシュペーパー製造機械であって、効果的に駆動することができて、ヤンキー乾燥シリンダに対しての信頼性高いウェブ移送を達成し得るティッシュペーパー製造機械を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ティッシュペーパー製造機械に関する。本発明によるティッシュペーパー製造機械は、形成セクションと、ヤンキー乾燥シリンダと、を含む。シューロールが、ヤンキー乾燥シリンダとともにニップを形成するように構成されている。シューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間のニップは、脱水ニップであってもよいけれども、そのようなニップは、繊維状ウェブをヤンキー乾燥シリンダの外面に対して移送する実質的に純粋な移送ニップとしてのみ機能するように構成されていてもよい。シューロールは、シューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間に形成されたニップ内においてヤンキー乾燥シリンダに対して作用するように構成されたシューを有している。シューロールは、シューの周りにループを形成しかつシューロールの外周縁も形成するフレキシブル管状ベルトをさらに含む。シューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間のニップは、ニップの入口ポイントからニップの出口ポイントまでの最大延在長さを有している。搬送ファブリックが、繊維状ウェブを、形成セクションから、ヤンキー乾燥シリンダとシューロールとの間に形成されたニップへと、搬送し得るように構成され、かつ、ヤンキー乾燥シリンダとシューロールとの間のニップを、繊維状ウェブと一緒に通過するように構成されている。搬送ファブリックは、第1接触ポイントのところにおいてシューロールの外周縁へと到達するように構成され、これにより、第1接触ポイントからニップまで広がる領域にわたって、シューロールの外周縁の一部を巻回するものとされている。シューロールは、フレキシブル管状ベルトがなすループの内部に配置された機械的支持体をさらに含み、機械的支持体は、第1接触ポイントと、ヤンキー乾燥シリンダとシューロールとの間のニップと、の間の領域の少なくとも一部において、フレキシブル管状ベルトを支持するように配置されている。本発明によれば、搬送ファブリックは、第1接触ポイントから広がる領域において、シューロールの外周縁を、80°を超える角度で巻回する。ヤンキー乾燥シリンダとともにニップを形成するシューロールは、端壁に対して接続された軸方向端部を有し、端壁とフレキシブル管状ベルトとが、閉鎖空間を規定し、これにより、シューロールは、閉鎖型シューロールである。製紙機械は、また、閉鎖空間と連通し得る加圧空気供給源を含み、これにより、加圧空気供給源からの加圧空気によって、閉鎖空間を充填することができる。搬送ファブリックは、張力下にあり、搬送ファブリックの張力は、3.0kN/m~5.0kN/mの範囲にあり、好ましくは3.2kN/m~5.0kN/mの範囲にあり、さらに好ましくは3.5kN/m~5.0kN/mの範囲にある。さらに、機械的支持体は、第1接触ポイントからニップまでの領域において、フレキシブル管状ベルトを、90°を超える角度にわたって支持するように構成され、機械的支持体は、シューロールの円周方向において、ニップの出口ポイントよりもニップの入口ポイントに近いポイントのところにおいて、終端している。ニップの最大延在長さに関し、機械的支持体が終端しているポイントは、ニップの入口ポイントから、少なくとも8゜であり好ましくは10゜~20゜である角距離に位置している。
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、搬送ファブリックは、第1接触ポイントから広がる領域において、100°~280°の範囲の角度で、好ましくは100°~200°の範囲の角度で、さらに好ましくは120°~180°の範囲の角度で、シューロールの外周縁を巻回している。しかしながら、巻回角度が他の値を有している実施形態が考えられる。例えば、巻回角度が95°でしかない実施形態が考えられる。
【0008】
本発明の有利な実施形態では、シューは、ヤンキー乾燥シリンダとシューロールとの間のニップ内においてヤンキー乾燥シリンダに対向しているシューの表面の形状を、ヤンキー乾燥シリンダの外面に対して一致させ得るように、変形可能である。しかしながら、本発明の実施形態では、シューが、それ自体をヤンキー乾燥表面の外面に対して適合するように変形し得ない実質的に剛直な部材であることが考えられる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、潤滑剤用の、例えば潤滑オイル用の、少なくとも1つのアプリケータが、フレキシブル管状ベルトの内部に配置され、フレキシブル管状ベルトの内面に対して潤滑剤を適用し得るように構成されている。潤滑剤用アプリケータを有していない実施形態も考えられ、それは、例えば、内面が、摩擦を低減するように選択されたコーティングによって被覆されている場合や、あるいは、大きな摩耗を許容すると決定されている場合であるけれども、好ましい解決手段は、潤滑剤用アプリケータを使用することである。
【0010】
潤滑剤用アプリケータが使用される場合には、シューロールの円周方向において、ニップの入口ポイントと機械的支持体との間に位置する領域に、シューに隣接してトラフを任意選択的に配置してもよく、これにより、ニップに入るとともにニップから後方側に押し出される潤滑流体を、トラフ内に収集することができる。
【0011】
本発明によるティッシュペーパー製造機械の有利な一実施形態では、機械の構成は、以下のようなものであってもよい。形成セクションは、ガイド部材によって支持されたループ内を走行するように構成された第1形成ファブリックを含む。搬送ファブリックは、ガイド部材によって支持されたループ内を走行するように構成されかつ繊維状ウェブを形成セクションからシューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間に形成されたニップへと搬送する第2形成ファブリックとして、形成セクション内で使用される水受けフェルトである。この実施形態では、第1形成ファブリックと搬送ファブリックとは、これら2つのファブリックが互いに向けて収束することにより、原料を注入し得る入口ギャップを形成するように、互いに関連して構成されている。形成セクションは、入口ギャップ内へと原料を注入するように構成されたヘッドボックスを含む。形成ロールが、搬送ファブリックがなすループの内部に配置され、搬送ファブリックを入口ギャップ内へと案内するように構成されている。形成ロールは、また、搬送ファブリックと第1形成ファブリックとの両方に共通する経路部分でありかつ入口ギャップから始まるその経路部分に沿って、搬送ファブリックと第1形成ファブリックとを案内するように構成されている。本発明のこの実施形態では、形成ロールは、搬送ファブリックおよび第1形成ファブリックが走行するように構成された方向に対して垂直な方向に延びる回転軸線の周りのループ内を走行するように構成されたフレキシブルスリーブを含む。形成ロールは、フレキシブルスリーブがなすループの内部に位置しかつフレキシブルスリーブの回転軸線と平行な方向に延びる支持レッジをさらに含む。支持レッジは、フレキシブルスリーブが走行するように構成されたループに沿った領域において、フレキシブルスリーブの回転軸線から離間して外向きに、フレキシブルスリーブを押圧し得るように構成され、これにより、フレキシブルスリーブが支持レッジによって外向きに押圧される領域では、フレキシブルスリーブは、支持レッジがフレキシブルスリーブに対して接触している領域の外側に位置したフレキシブルスリーブの曲率半径と比較して、より小さい曲率半径を有した経路に追従することを強いられる。
【0012】
フレキシブルスリーブと支持レッジとを有した形成ロールを使用した実施形態では、支持レッジに対して接触していない領域における形成ロールの半径は、500mm~1600mmの範囲であってもよく、支持レッジの最小半径は、40mm~100mmの範囲であってもよく、好ましくは45mm~80mmの範囲であってもよく、さらに好ましくは50mm~75mmの範囲であってもよい。
【0013】
本発明によるティッシュペーパー製造機械の代替的な実施形態では、機械の構成は、以下のようなものであってもよい。形成セクションは、ガイド部材によって支持されたループ内を走行するように構成された第1形成ファブリックと、同様にガイド部材によって支持されたループ内を走行するように構成された第2形成ファブリックと、を含む。この実施形態では、搬送ファブリックは、形成ファブリックとして使用されないけれども、搬送ファブリックとは別個のファブリックが、第2形成ファブリックとして使用される。この実施形態における第2形成ファブリックは、水受けフェルトであり、第1形成ファブリックに対して、2つの形成ファブリックが互いに向けて収束することにより、原料を注入し得る入口ギャップを形成するように、互いに関連して構成されている。ヘッドボックスが、入口ギャップ内へと原料を注入するように構成され、形成ロールが、第2形成ファブリックがなすループの内部に配置される。本発明のこの実施形態では、ティッシュペーパー製造機械は、プリプレスを含み、プリプレスは、延長ニップロールと、この延長ニップロールとともに脱水ニップを形成する対向ロールと、を含む。延長ニップロールは、圧力シューと、圧力シューを巻回しているフレキシブルジャケットと、を含んでいる。第2形成ファブリックは、延長ニップロールと対向ロールとの間に形成された脱水ニップへと繊維状ウェブを搬送するように構成されているとともに、繊維状ウェブと一緒に脱水ニップを通過するように構成されている。搬送ファブリックは、脱水ニップを通過するように構成されているとともに、脱水ニップから、シューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間に形成されたニップへと、繊維状ウェブを搬送するように構成され、これにより、繊維状ウェブは、ヤンキー乾燥シリンダの表面に対して移送される。この実施形態では、搬送ファブリックは、また、水を吸収しないファブリックともされ、このため、シューロールとヤンキー乾燥シリンダとの間のニップは、非脱水ニップである。
【0014】
プリプレスを使用した実施形態では、搬送ファブリックは、搬送ファブリックがニップを通過する際に繊維状ウェブ上に三次元構造を付与し得る水透過性構造化ファブリックであってもよい。代替的に、搬送ファブリックは、繊維状ウェブに対向するように構成された構造化表面であることにより搬送ファブリックがニップを通過する際には繊維状ウェブ上に三次元構造を付与し得る構造化表面を有した、水不透過性ベルトであってもよい。しかしながら、搬送ファブリックが水不透過性ベルトである場合には、代わりに、搬送ファブリックは、繊維状ウェブに対向するように構成された滑らかな表面を有してもよい。
【0015】
本発明は、また、本発明によるティッシュペーパー製造機械を駆動する方法に関する。本発明の方法によれば、搬送ファブリックを、1500m/s~2300m/sの範囲の速度で走行させる。
【0016】
本方法は、また、閉鎖空間が、60ミリバール~140ミリバールの範囲の過圧に維持されるように、好ましくは60ミリバール~100ミリバールの範囲の過圧に維持されるように、閉鎖空間に対して加圧空気を供給することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、従来技術によるティッシュペーパー製造機械を表す概略的な側面図である。
図2図2は、図1と同様の図であるけれども、本発明の第1実施形態による機械の構成を示す図である。
図3図3は、本発明のために設計されたシューロールの側面図を、断面によって示している。
図4図4は、特別に設計された形成ロールを使用した本発明の一実施形態による形成セクションの一部に関する側面図を、断面によって示している。
図5図5は、図4と同様の図であるけれども、いくつかの構成要素を、より詳細に示す図である。
図6図6は、図4の実施形態に属する構成要素に関する可能な実施形態を示している。
図7図7は、図6と同様の図であるけれども、同じ構成要素に関する別の可能な実施形態を示す図である。
図8図8は、図6および図7と同じ構成要素を示す図であるけれども、わずかに異なる形態で示す図であるとともに、また、当該構成要素を巻回しているフレキシブルスリーブを示す図でもある。
図9図9は、図4の形成ロールに沿って変動する圧力を示す概略的な図示である。
図10図10は、図3と同じシューロールに関する長手方向における断面図を示す。
図11図11は、本発明の第2実施形態による製紙機械に関する概略的な側面図である。
図12図12は、本発明の一実施形態において使用され得る搬送ファブリックの表面を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、ティッシュペーパーを製造するための公知の機械構成を示している図1を参照する。実質的に同様の構成を有した機械は、例えば、米国特許第7,008,506号明細書により、公知である。図1の製紙機械は、ガイドロール28によってループ内を案内される第1形成ファブリック28を有した形成セクション2を含み、第1形成ファブリック28は、矢印Cの向きに走行するように操作されるように構成される。図1の製紙機械は、熱によって繊維状ウェブWから水分を除去するために使用されるヤンキー乾燥シリンダ3をさらに含み、ヤンキー乾燥シリンダ3は、典型的には高温の蒸気によって内部から加熱される。搬送ファブリック10は、新たに形成された繊維状ウェブWを、ヤンキー乾燥シリンダへと搬送するように構成されている。搬送ファブリックは、ガイドロール26によって案内されたループ内を走行する。動作時には、搬送ファブリック10は、矢印Bの向きに走行する。図1による機械では、搬送ファブリック10は、形成セクション2において同時に第2形成ファブリックとして使用され、第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10とは、形成ロール33上を一緒に走行する。第1形成ファブリックと搬送ファブリック10とは、入口ギャップ31へと収束するように構成され、ヘッドボックス32は、ファブリック28、10間で繊維状ウェブWが形成され得るよう、入口ギャップ31内へと原料を注入するように構成されている。第1形成ファブリック28は、有孔ワイヤであってもよく、搬送ファブリック10は、吸水性フェルトであってもよい。新たに形成された繊維状ウェブが、第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10とが形成ロール33上を一緒に走行する領域を離れる時には、まだ多くの水を含んでいる繊維状ウェブWは、搬送ファブリック10の下側を矢印Bの向きに移動して吸引回転ロール54へと向かい、他方、第1形成ファブリック28は、濡れた繊維状ウェブWから離間する。繊維状ウェブWは、搬送ファブリック10と一緒に吸引ロール54の周りを通過し、吸引ロール54は、搬送ファブリック10を通して繊維状ウェブWをさらに脱水するように機能する。ここで、搬送ファブリック10は、水不透過性ではないけれども、水が、搬送ファブリック10を少なくともある程度は通過し得ることは、理解されるべきである。その後、繊維状ウェブWは、吸引回転ロール54から、ヤンキー乾燥シリンダ3と、搬送ファブリック10がなすループの内部に配置されたシューロール4と、の間に形成されたニップNへと、移動する。シューロール4は、フレキシブル管状ベルト9と、ヤンキー乾燥シリンダ3に対して作用してニップNを形成するように構成されたシュー6と、を有している。ニップNでは、繊維状ウェブWは、ヤンキー乾燥シリンダ3の外面へと移送され、そこで、ヤンキー乾燥シリンダ3の内部から来る熱によって乾燥されることとなる。その後、乾燥済みの繊維状ウェブは、当該技術分野において公知なように、ドクター53を使用してヤンキー乾燥シリンダ3の表面から剥がすことができる。図1では、ヤンキー乾燥シリンダ3が矢印Rの向きに回転していることに、留意されるべきである。ヤンキー乾燥フード47をヤンキー乾燥シリンダ2の上方に配置して、繊維状ウェブWに対して熱風を吹き付け、これにより、繊維状ウェブWの乾燥に寄与するように構成してもよい。図1による機械では、吸引ロール54が、繊維状ウェブWの脱水に著しく寄与しており、そのため、繊維状ウェブは、そうでない場合と比較して、より大きな乾燥度合いでニップNへと到達する。搬送ファブリック10は、典型的には、水および空気の両方に対してある程度の透過性を有した吸水性フェルトであり、ヤンキー乾燥シリンダに対してのニップNにおけるプレスファブリックとしても使用される。このように、ヤンキー乾燥シリンダとシューロール4との間のニップNは、移送ニップと、脱水ニップと、の両方である。加えて、吸引ロール54は、搬送ファブリック10が、シューロール4を大きな程度にわたって巻回する必要がないような角度で、ヤンキー乾燥シリンダに対してのニップNへと到達し得るように、搬送ファブリック10を案内するようにも機能する。したがって、搬送ファブリック10は、シューロール4のフレキシブル管状ベルト9に対して、大きく干渉することはない。
【0019】
このように、吸引ロール54は、2つの重要な機能を果たす。しかしながら、吸引ロールは、多くのエネルギーを消費するとともに、製紙機械の周囲の騒音を増大させることに寄与する。その上、吸引ロール54は、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップNから適切な距離のところに配置されなければならないので、特に搬送ファブリック10の経路を案内するために使用された場合には、余分なスペースを必要とする。したがって、ヤンキー乾燥シリンダに対してのニップNの前方側に、そのような吸引ロール54が存在しない構成を使用し得ることが望ましい。吸引ロール54が存在しない代替的な構成では、搬送ファブリックが、シューロール4の周縁のかなりの部分を代わりに巻回することとなる。
【0020】
ここで、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップNの前方側において別個の吸引ロール54を使用していないティッシュペーパー製造機械1の構成を図示している図2を、参照する。図2では、各種の細部に関して使用されている参照符号は、図1の場合と同じである。例えば、形成ロールは、なおも参照符号33によって指定され、シューロールは、参照符号4によって指定され、等々である。
【0021】
図2による構成では、搬送ファブリック10は、必然的に、シューロール4の外周縁のかなりの部分を巻回することとなる。搬送ファブリック10が、シューロール4のかなりの部分を巻回する場合には、搬送ファブリック10は、フレキシブル管状ベルト9の形状が変形するようにして、フレキシブル管状ベルト9と干渉し得る。ベルト9の変形は、ヤンキー乾燥シリンダ3とシューロール4との間のニップNにおいて、特にベルト9がニップNへの進入前に急旋回しなければならない場合には、フレキシブル管状ベルト9の摩耗を増加させ得る点において、また、少なくともヤンキー乾燥シリンダに対してのニップNの最初の部分においては、プレスの経路に影響を与える可能性がある点において、負の影響を有し得る。
【0022】
シュープレスのフレキシブル管状ベルト9が、適正な形態を保持することを確保するために、シューロールは、フレキシブル管状ベルト9が、端壁に対して接続された軸方向端部を有するとともに、端壁とフレキシブル管状ベルトとが、閉鎖空間を規定するように、設計されてもよい。加圧空気の供給源を、シューロール4に対して接続し得るとともに、閉鎖空間を加圧空気によって充填し得るよう、閉鎖空間と連通させることができる。このようにして、風船を膨らませるのと同様の態様で、シューロール4を、膨張状態に維持することができる。このような解決手段の一例は、例えば、米国特許第5,084,137号明細書に開示されており、この特許文献では、過圧を、およそ0.03バール~0.1バールの範囲に維持すべきであることが提案されている。この米国特許第5,084,137号明細書に開示されている閉鎖空間を加圧するための解決手段と同一のまたは実質的に同一の解決手段を使用したシューロールは、また、多くの製紙工場に対して販売され、使用されている。
【0023】
よって、シューロール4の内部に閉鎖空間を維持することは、製紙技術の当業者には公知なように、フレキシブル管状ベルト9の形状を維持することに寄与することができる。
【0024】
しかしながら、適切なプレス手順を達成するためには、搬送ファブリック10が特定レベルの張力に維持されることも、また、望ましい。シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップNへと、繊維状ウェブWを搬送している搬送ファブリック10に対して充分な張力がかかっていないと、搬送ファブリック10上に小皺が形成されてしまい、繊維状ウェブWが、皺のある状態でニップNを通過してしまうリスクがある。この皺は、実際のプレスと、ヤンキー乾燥シリンダ3の表面に対しての繊維状ウェブWの移送と、の両方に関して悪影響を及ぼすため、あまり大きいものであってはならない。
【0025】
本発明の発明者らは、ヤンキー乾燥シリンダ3の表面に対しての良好な移送を達成するためには、搬送ファブリック10を、少なくとも3.0kN/mの張力に、好ましくは少なくとも3.2kN/mの張力に、維持する必要があることを見出した。一般的に、3.0kN/mよりも大きな張力レベルが有利であるけれども、5.0kN/mよりも大きな張力レベルは、あまり望ましくない。なぜなら、、5.0kN/mよりも大きなレベルで使用された場合には、製紙機械内で使用される大部分のファブリックが、あまりにも早く摩耗する傾向があるためである。搬送ファブリック10の適切な張力は、通常は、3.0kN/m~5.0kN/mの範囲に制限されることとなる。
【0026】
本発明者らは、また、3.0kN/m~5.0kN/mの範囲の張力レベルでは、シューロール4の膨張が、シュー6を巻回するフレキシブル管状ベルト9の実質的な変形を防止するには不充分であることを見出した。理論的には、シューロール4の内部の閉鎖空間内へと、より多くの圧縮空気を供給することにより、シューロール4の内部の内圧を単純に増加させることができ、これにより、シューロール4の形状を維持することができるであろう。しかしながら、シューロール4の内部の内圧を、特定レベルを超えて増大させると、他の望ましくない影響がもたらされることとなる。例えば、フレキシブル管状ベルト9の軸方向端部の、端壁に対しての取付/固定が、破壊されてしまう可能性があり、そうなれば、フレキシブル管状ベルト9が端壁から離脱してシューロール4が圧潰されてしまうことになりかねない。本発明者らは、シューロール4の閉鎖空間内の内部過圧を、0.04バール~0.12バールの範囲に、好ましくは0.06バール~0.10バールの範囲に、維持すべきであることを見出した。閉鎖空間内の過圧が0.04バールより小さいと、シューロール4からの潤滑流体の排出がより困難となる(閉鎖空間内の過圧は、シューロールの閉鎖空間からの潤滑剤の排出を補助する)。過圧が0.12バールを超えると、フレキシブル管状ベルト9が端壁に対しての取付から外れてしまうリスクが、大きくなりすぎる。
【0027】
本発明者らは、搬送ファブリック10を、3.0kN以上の張力に維持した場合、0.12バールという、シューロール4の内部過圧では、フレキシブル管状ベルト9の所望形状を保持するには不充分であることを見出した。したがって、本発明者らは、搬送ファブリック10がシューロール4の外周縁を巻回する領域において、内部支持体が必要であると結論づけた。
【0028】
ここで、本発明によるティッシュペーパー製造機械1の一実施形態について、図2図3、および図10を参照して説明する。
【0029】
図2からわかるように、本発明によるティッシュペーパー製造機械1は、形成セクション2と、ヤンキー乾燥シリンダ3と、を含む。ヤンキー乾燥シリンダは、任意の公知のタイプのヤンキー乾燥シリンダであってもよい。例えば、鋳鉄製のヤンキー乾燥シリンダとすることができ、あるいは、米国特許第8438752号明細書に開示されているようなヤンキー乾燥シリンダであってもよい。任意選択的に、例えば、国際公開第2011/030363(A1)号パンフレットに開示されているような、熱的に絶縁されたヤンキー乾燥シリンダであってもよい。
【0030】
任意選択的に、製紙機械1には、ヤンキー乾燥フード47が設けられる。ヤンキー乾燥フード47は、使用される場合には、例えば、国際公開第2016/169915(A1)号パンフレットまたは米国特許第5416979号明細書に開示されているような設計のものであってもよいけれども、ヤンキー乾燥フード47の他の多くの設計が考えられる。
【0031】
本発明による機械において使用されるヘッドボックス32は、例えば、欧州特許第0 719 360(B1)号明細書に開示されているようなヘッドボックスであってもよいけれども、ティッシュペーパー製造機械に適した任意の種類のヘッドボックスを使用してもよい。
【0032】
図2からわかるように、シューロール4は、ヤンキー乾燥シリンダ3とともにニップNを形成するように構成されている。図3において最も明瞭にわかるように、シューロール4は、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間に形成されたニップN内においてヤンキー乾燥シリンダ3に対して作用するように構成されたシュー6を有している。ニップNは、ニップの入口ポイント7からニップの出口ポイント8までの(機械方向における)最大延在長さを有している。ニップNの延在長さは、シュー6のうちの、ヤンキー乾燥シリンダ3に対向した部分の長さによって、決定される。フレキシブル管状ベルト9は、シュー6の周りにループを形成し、これにより、シューロール4の外周縁も形成する。
【0033】
図10を参照すると、シューロール4のフレキシブル管状ベルト9が、端壁17、18に対して接続された軸方向端部15、16を有していることがわかる。これにより、端壁17、18およびフレキシブル管状ベルト9は、閉鎖空間19を規定する。製紙機械1は、閉鎖空間19を加圧空気によって充填し得るように閉鎖空間と連通し得る加圧空気供給源20をさらに含む。このようにして、フレキシブル管状ベルト9を、膨張させて加圧することができ、このことが、フレキシブル管状ベルト9の形状の維持に寄与する。フレキシブル管状ベルト9の軸方向端部の、端壁17、18に対しての取付または接続は、多くの異なる方法で達成することができる。フレキシブル管状ベルトの、端壁に対しての取付/接続を達成するための異なる解決手段は、例えば、欧州特許出願公開第1873305(A2)号明細書、米国特許第5,098,523号明細書、および米国特許第5,700,357号明細書に開示されているけれども、当業者であれば、使用可能な他の多くの技術的解決手段が存在することを認識している。端壁は、支持梁51を中心として端壁17、18およびフレキシブル管状ベルト9を回転させ得るベアリング61によって、シューロール4の支持梁51上に軸支されている。図10では、フレキシブル管状ベルト9の回転軸線が、「A」として示されている。
【0034】
シューロール4のシュー6が、例えば、スチール、アルミニウム、またはブロンズなどの金属材料から形成され得る実質的に剛直なシューである実施形態が考えられる。そのようなシューは、ヤンキー乾燥シリンダ3に対してのニップN内においてヤンキー乾燥シリンダ3に対向している表面であるとともに、その形状が、ヤンキー乾燥シリンダの凸状外面48に対して一致するような凹状とされた表面を有している(フレキシブル管状ベルト9の厚さ、搬送ファブリック10の厚さ、および繊維状ウェブWの厚さ、を考慮して)。しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、シュー6は、ヤンキー乾燥シリンダとシューロールとの間のニップ内においてヤンキー乾燥シリンダに対向しているシューの表面の形状を、ヤンキー乾燥シリンダの外面に対して一致させ得るように、変形可能とされる。対向ロール(ヤンキー乾燥シリンダ、など)に対してその形状を一致させ得るように変形可能であるこのようなシューを有したシューロールは、例えば、米国特許第7527708号明細書に開示されている。シュー6、ならびに、ヤンキー乾燥シリンダなどの対向ロールに対してシューを押圧するための手段は、その米国特許第7,527,708号明細書に開示されているようにして設計してもよいけれども、他の解決手段も可能である。シュー、ならびに、ヤンキー乾燥シリンダなどの対向ロールに対してシューを押圧するための手段に関しての、別の可能な設計は、また、欧州特許第2085513(B1)号明細書に開示されており、このような解決手段は、本発明においても使用することができる。
【0035】
搬送ファブリック10は、繊維状ウェブWを、形成セクション2から、ヤンキー乾燥シリンダ3とシューロール4との間に形成されたニップへと、搬送し得るように構成され、さらに、繊維状ウェブWと一緒に、ヤンキー乾燥シリンダ3とシューロール4との間のニップを通過するように構成されている。図2に示す実施形態では、搬送ファブリック10は、形成セクション2において形成ファブリックとしても使用される。よって、搬送ファブリック10は、有孔ワイヤとされ得る第1形成ファブリック28と協働する第2形成ファブリックとして機能する。繊維状ウェブWが形成された後に、搬送ファブリック10は、第1形成ファブリック28から分離し、新たに形成された繊維状ウェブWを、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップNへと搬送し、さらに、そのニップNのところで、繊維状ウェブWを、ヤンキー乾燥シリンダ3の外面48へと押圧して移送する。搬送ファブリック10は、第1接触ポイント11においてシューロール4の外周縁へと到達するように構成されており、さらに、搬送ファブリック10は、第1接触ポイント11から、ニップNまでの、すなわちニップの入口ポイントまでの、領域にわたって、シューロール4の外周縁の一部を巻回することとなる。当然のことながら、搬送ファブリックが、ニップN自体を通してニップの出口ポイント8までシューロールを巻回することとなること、さらに可能であれば、シューロール4の外周縁のうちの、ニップNの出口ポイント8を超えた一部をも巻回することとなることは、理解されるべきである。
【0036】
搬送ファブリック10は、ヤンキー乾燥シリンダ3の外面48に対しての信頼性高いウェブ移送を確保するために、3.0kN/m~5.0kN/mの範囲の張力に維持される。搬送ファブリック10は、好ましくは3.2kN/m~5.0kN/mの範囲の、さらに好ましくは3.5kN/m~5.0kN/mの範囲の、張力に維持される。
【0037】
図2を参照すると、ストレッチャーロール27は、搬送ファブリック10の張力を増減させるために、矢印Sで示すように前後に移動することができる。
【0038】
シューロール4は、フレキシブル管状ベルト9がなすループの内部に配置された機械的支持体12をさらに含み、この機械的支持体12は、第1接触ポイント11と、ヤンキー乾燥シリンダ3とシューロール4との間のニップNと、の間の領域の少なくとも一部において、フレキシブル管状ベルト9を支持するように配置されている。本発明によれば、搬送ファブリック11は、第1接触ポイント11から広がる領域において、シューロール4の外周縁を、80゜よりも大きな角度にわたって、巻回する。本発明者らは、搬送ファブリックが3.0kN/m以上の張力で維持されている場合であってさえも、フレキシブル管状ベルトがその形状を確実に維持するためには、機械的支持体12が、第1接触ポイント11からニップNまでの領域において、フレキシブル管状ベルト9を、90°を超える角度で支持しなければならないことを見出し、機械的支持体は、これを行うように構成されている。しかしながら、本発明者らは、また、フレキシブル管状ベルト9がニップNへの入口での幾何学的形状の変化に自由に適応することを確保するためには、機械的支持体12が、ニップNへの入口から特定距離のところで終端すべきであることも、決定した。したがって、機械的支持体12は、シューロール4の円周方向において、ニップの出口ポイント8よりもニップの入口ポイント7に近いポイント13であり、かつ、ニップの最大延在長さに関して、ニップの入口ポイント7から、少なくとも8゜であり、好ましくは10゜~20゜であるが、30゜を超えない、好ましくは25゜を超えない、角距離にあるポイント13のところにおいて終端するような、形状とされている。
【0039】
入口ポイント11がどこに位置するかに応じて、すなわち、搬送ファブリック10が最初にシューロール4へと到達するポイントに応じて、機械的支持体12は、80゜よりもはるかに大きい角度にわたってフレキシブル管状ベルト9を支持するように設計されて、シューロール4内に配置されてもよい。例えば、機械的支持体は、フレキシブル管状ベルト9を、110°や120°という角度にわたって、あるいは180°という角度にわたってさえ、支持するように設計してもよい。しかしながら、機械1の構成は、搬送ファブリック10が実質的に水平な経路に沿ってシューロール4へと移動することが望ましいことが多い。その場合、第1接触ポイント11は、シューロール4の周縁上の鉛直方向の最も低いポイントのところに位置することとなる。多くの現実的な実施形態において、機械的支持体12は、その場合、95゜~120゜または100゜~115゜の範囲の角度にわたってフレキシブル管状ベルト9を支持するように設計され配置されてもよい。
【0040】
有利な実施形態では、シューロール4の円周方向において、ニップの入口ポイント7と機械的支持体12との間に位置する領域に、シュー6に隣接してトラフ24を任意選択的に配置してもよく、これにより、ニップに入るとともにニップから後方側に押し出される潤滑流体を、トラフ24内に収集することができる。機械的支持体12を、ニップNから特定距離のところで終端させることにより、また、ニップNから押し出された潤滑剤(例えば、潤滑油)を収集するためのトラフ25を、シュー6に隣接させて配置することが容易となる。
【0041】
機械的支持体12は、フレキシブル管状ベルトの曲率半径に対応するように湾曲した、すなわちフレキシブル管状ベルトの曲率に一致するように湾曲した、ガイドシューを含んでもよく、これにより、フレキシブル管状ベルト9は、機械的支持体12上を滑らかに動くことができる。図3を参照すると、機械的支持体12は、連続的に湾曲したシューの形状としてもよい。湾曲したシューは、機械横断方向において、シュー6と実質的に同じ幅を有してもよい。しかしながら、複数のそのような湾曲したシューを、機械横断方向CDにおいて互いに間隔を置いて配置するという実施形態も考えられる。異なる湾曲したシュー同士の間隔は、例えば、2cm~25cmの程度としてもよいけれども、他の間隔も考えられる。機械的支持体12が、1つまたは複数のそのような湾曲したシューを含む場合、1つまたは複数のシューは、フレキシブル管状ベルト9が加圧空気によって膨張した時に、フレキシブル管状ベルト9の内面22の曲率と一致する曲率を有することとなる。湾曲したシューの代わりに、機械的支持体12は、米国特許第6,004,429号明細書に開示されているようなローラを含んでもよい。
【0042】
図3を参照すると、支持梁51が、支持梁51に対しておよび機械的支持体12に対して接続されたアーム52によって機械的支持体12を支持するように、シューロール4を設計してもよいことがわかる。シューロール4は、さらに、シュー6のためのホルダ64を支持するように設計されてもよい。ホルダ64内には、キャビティ65の内部を移動し得るシュー6のためのシリンダとして機能し得る内部キャビティ65を設けてもよい。キャビティ65には、ホルダ64のチャネル66を介して、オイルなどの加圧流体が供給されてもよい。加圧流体がキャビティ65に対して供給された時には、シュー6は、ヤンキー乾燥シリンダ3に対して押圧されることとなる。ホルダ64とキャビティ65とチャネル66とを含む図3の特定の構成が、シュー6をヤンキー乾燥シリンダ3に対して押圧するための1つの可能な方法を示しているに過ぎないこと、そして、当業者であれば、この機能を達成するための他の多くの方法が存在することを充分に認識していることが、理解されるべきである。このいくつかの例は、例えば、米国特許第7,527,708号明細書、欧州特許第2085513(B1)号明細書、および欧州特許第2808442(B1)号明細書に開示されているけれども、他の公知の解決手段を使用することもできる。
【0043】
湾曲した1つまたは複数のシューを有した機械的支持体12は、1つのシュー(または、複数のシュー)が、フレキシブル管状ベルト9の内面22から離間するように湾曲した初期部分14を有するようにして、設計されてもよい。このようにして、フレキシブル管状ベルト9は、フレキシブル管状ベルトを損傷しかねない突然の衝撃というリスクが存在しないようにして、機械的支持体12と徐々に出会うことができる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、搬送ファブリック10は、第1接触ポイントから広がる領域において、シューロールの外周縁を、100゜~280゜の範囲の角度で、好ましくは100゜~200゜の範囲の角度で、さらに好ましくは120゜~180゜の範囲の角度で、巻回する。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、潤滑剤用の少なくとも1つのアプリケータ21がフレキシブル管状ベルト9の内部に配置され、フレキシブル管状ベルト9の内面22に対して潤滑剤を適用し得るように構成されている。
【0046】
蒸発させるために多くの熱エネルギーを使用することなく、製紙機械1を高い乾燥度とするためには、シューロール4に対してのニップNの前方側で吸引ロールを使用しない場合であってさえも、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3とのニップNへと到達した繊維状ウェブWの乾燥度が、既に特定の乾燥度を有していることが望ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態では、機械1は、吸引ロールを使用しないにもかかわらず、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップNの前方側において、充分に高い乾燥度を達成できるように、設計されるべきである。
【0047】
次に、本発明による機械の可能な実施形態を、図2および図4図9を参照して説明する。
【0048】
図2を参照すると、形成セクション2は、ガイド部材29によって支持されたループ内を走行するように構成された第1形成ファブリック28と、ガイド部材26によって支持されたループ内を走行するように構成されかつ繊維状ウェブWを形成セクション2からシューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間に形成されたニップへと搬送する第2形成ファブリックとして、形成セクション2内で使用される水受けフェルトである搬送ファブリック10と、を含む。図4を参照すると、第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10とは、これら2つのファブリック10、28が互いに向けて収束することにより、原料を注入し得る入口ギャップ31を形成するように、互いに関連して構成されている。形成セクション2は、入口ギャップ31内へと原料を注入するように構成されたヘッドボックス32と、搬送ファブリック10がなすループの内部に配置された形成ロール33と、をさらに含む。形成ロール33は、搬送ファブリック10を入口ギャップ31内へと案内するように構成されているとともに、搬送ファブリック10と第1形成ファブリック28との両方に共通する経路部分でありかつ入口ギャップ31から始まる経路部分に沿って、搬送ファブリック10と第1形成ファブリック28とを案内するように構成されている。形成ロール33は、搬送ファブリック10および第1形成ファブリック28が走行するように構成された方向に対して垂直な方向に延びる回転軸線Aの周りのループ内を走行するように構成されたフレキシブルスリーブ35を含むように、設計されている。形成ロール33は、フレキシブルスリーブ35がなすループの内部に位置しかつフレキシブルスリーブ35の回転軸線と平行な方向に延びる支持レッジ36をさらに含む。支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35が走行するように構成されたループに沿った領域において、フレキシブルスリーブ35の回転軸線から離間して外向きに、フレキシブルスリーブ35を押圧し得るように構成されている。これにより、フレキシブルスリーブ35が支持レッジ36によって外向きに押圧される領域では、フレキシブルスリーブ35は、支持レッジ36がフレキシブルスリーブ35に対して接触している領域の外側に位置したフレキシブルスリーブ35の曲率半径と比較して、より小さい曲率半径を有した経路に追従することを強いられる。
【0049】
以下においては、図4図9の実施形態による形成ロール33の機能について説明する。原料が第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10(この実施形態では、形成ファブリックとして機能する)との間において、両ファブリック28、10に共通するそれぞれの経路部分を移動する際に、原料から絞り出されるまたは押し出される水の量は、原料が受ける圧力に、大きく依存する。原料が受ける圧力は、P=T/Rとして計算することができ、ここで、Pは、原料が受ける圧力であり、Tは、第1形成ファブリック28の張力であり、Rは、形成ロール33の半径である。このことから、小さな半径Rの場合には、より大きな半径と比較して、より大きな圧力がかかることがわかる。理論的には、相応に小さな半径を有した小さな形成ロール33を単に使用することにより、圧力を増加させ得ることとなる。しかしながら、経験的に、水切りゾーンが、すなわち、形成ファブリック同士の間で原料が移動する部分が、特定の長さを有する必要があることがわかっている。そのため、小さすぎる形成ロール33を有した形成セクション2では不充分である。同様に、ファブリックの張力を大きくすることもできるけれども、このような解決手段にも技術的な問題、例えば、ファブリックが受け得る張力の量がある。よって、形成時点で乾燥固形分を、約12%よりもずっと大きなものとすることは、困難である。このように乾燥固形分が少ないと、繊維状ウェブWが潰れてしまうというリスクのために、通常は繊維状ウェブWをプレスすることは困難である。そこで、プレス前のウェブの乾燥度を増加させるために、多くの場合、ヤンキー乾燥シリンダ3に対してのニップNへと繊維状ウェブWを搬送するファブリックがなすループ内に、吸引ロールが配置される。このような吸引ロールは、第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10とが互いに分離した後の場所で、搬送ファブリック10を通して作用することができる。このような解決手段の一例は、国際公開第2010/033072号パンフレットに開示されており、この特許文献の図1には、新たに形成されたウェブをプレス機へと搬送する形成ファブリックがなすループの内部に配置された吸引ロール25が示されている。また、形成ロール自体を吸引ロールとしてもよいことも提案されており、このような構成の一例は、米国特許第6,821,391号明細書に開示されており、この特許文献の図2には、吸引ゾーンを有した吸引ロールである形成ロール18を備えた形成セクションが図示されている。しかしながら、上述したように、吸引ロールは、その動作のために多くのエネルギーを必要とし、それは、当然のことながら、費用を要する。加えて、吸引ロールは騒音を発生させる。したがって、吸引ロールを使用しない場合であっても、形成時に大きな乾燥固形分をもたらし得る解決手段を見出すことが要望される。図4図9の実施形態では、この技術的課題に対する解決手段が図示されている。
【0050】
次に、図4および図5を参照する。
【0051】
図4では、形成ロール33がシェルを有していることがわかる。シェルは、フレキシブルスリーブ35であり、これは、代替的に「管状ジャケット」と称されてもよい。フレキシブルスリーブ35は、シューロール4のフレキシブル管状ベルト9と実質的に非常によく類似していてもよく、可能であれば同一の設計であってもよい。フレキシブルスリーブ35は、有利には、ポリウレタンから、あるいは、部分的にポリウレタンを含む材料から、あるいは、ポリウレタンと同様の材料特性を有した材料から、形成されてもよい。フレキシブルスリーブ35は、回転軸線Aの周りのループ内を走行するように構成されている。言い換えれば、フレキシブルスリーブ35は、回転するように構成されている。フレキシブルスリーブ35が、有利には、シューロール4のフレキシブル管状ベルト9と全く同じ態様で端壁に対して接続されるように設計および構成されてもよいこと、および、端壁が、シューロール4に関して図10に図示したのと同じ態様で支持梁50上に回転可能に軸支されてもよいことは、理解されるべきである。よって、形成ロール33は、シューロール4と非常に類似した構成を有してもよく、また、シューロール4のフレキシブル管状ベルト9と同様に膨張され得るよう、加圧空気供給源に対して接続されてもよい。図4では、フレキシブルスリーブ35が、矢印Rで示す向きに回転することは、理解されるべきである。図1と同様に、第1形成ファブリック28が、矢印Cで示す向きに移動すること、そして、形成ファブリックとして機能する搬送ファブリック10が、矢印Bで示す向きに移動することは、同様に理解されるべきである。フレキシブルスリーブ35の回転軸線Aが、第1形成ファブリック28および搬送ファブリック10が走行するように構成された向きに対して垂直な方向に、すなわち形成セクション2の機械横断方向に延びていることは、理解されるべきである。図4では、形成セクション2が動作している時には、フレキシブル管状ジャケットが、矢印Rの向きに回転することは、理解されるべきである。フレキシブルスリーブ35の実際の厚さは、材料の選択を考慮しつつ、また、機械速度や機械幅や他の要因を考慮しつつ、選択されてもよい。しかしながら、多くの現実的な実施形態では、フレキシブルスリーブ35は、2mm~7mmの範囲の厚さを有してもよい。例えば、3mm、4mm、または5mmの厚さを有してもよい。フレキシブルスリーブ35は、また、異なる材料からなる複数の層を含んでもよい。図4からわかるように、形成ロール33は、フレキシブルスリーブ35がなすループの内部に配置されかつフレキシブルスリーブ35の回転軸線Aに対して平行な方向に延びる支持レッジ36をさらに含む。当然のことながら、フレキシブルスリーブ35自体も、同じ方向に延びている。支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35が走行するように構成されたループに沿った領域において、フレキシブルスリーブ35の回転軸線Aから離間して外向きにフレキシブルスリーブ35を押圧し得るように構成されている。これにより、フレキシブルスリーブ35が支持レッジ36によって外向きに押圧されている領域では、フレキシブルスリーブ35は、支持レッジ36がフレキシブルスリーブ35に対して接触している領域の外側に位置したフレキシブルスリーブ35の曲率半径と比較して、より小さな曲率半径を有した経路に追従することを強いられる。
【0052】
図4の実施形態では、支持レッジ35は、支持レッジ36が直接的にまたは間接的に固定されている支持梁50によって、支持されている。支持梁50は、溶接されたボックス梁であってもよいけれども、他の種類の支持梁50を、例えば鋳鉄製の支持梁を、使用することもできる。
【0053】
フレキシブルスリーブ35は、好ましくは、水に対して不透過性であるけれども、フレキシブルスリーブが水に対して透過性である実施形態が考えられる。フレキシブルスリーブ35が、水に対して不透過性である場合には、これは、好ましいことであって、これは、原料中の水を、第1形成ファブリック28を通して通過させることを補助する。
【0054】
上記の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、フレキシブルスリーブ35を有した形成ロール33が、シュープレスロールなどのシュープレスユニットと実質的に同様であることを、理解するであろう。このようなユニットは、SymBelt(商標)シュープレスまたはNipcoFlexシュープレスなどの商品名で市販されているとともに、例えば、米国特許第7,387,710号明細書または米国特許第5,662,777号明細書などの多くの特許文献に記載されている。支持レッジ36は、シューがシュープレスユニット内に配置される位置に配置されていることにより、代替的に「シュー」と称することができる。しかしながら、形成ロール33の支持レッジ36は、第1形成ファブリック28および搬送ファブリック10が支持レッジ36上を通過する際に、特定の圧力が加えられていることによる脱水に関連して使用されているけれども、支持レッジ36の目的は、以下において説明するように、シュープレス内のシューの目的とは、相違する。
【0055】
支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35を外側へと押し出し得ることにより、フレキシブルスリーブ35の周縁の一部にわたって、半径がより小さくなるという効果を得ることができる。フレキシブルスリーブ35の周縁のその部分では、原料が受ける圧力が上昇することとなり、他の方法では得られないピークを有することとなる。支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35の周縁のうちの、支持レッジ36上を通過していない部分が追従している経路から、フレキシブルスリーブ35を、外向きに押し出すようにまたは押し出し得るように構成されている。支持レッジ36がこれを行う際には、支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35と形成ファブリック28と搬送ファブリック10とが、フレキシブルスリーブ35の周縁に沿った他のポイントの場合と比較して、ファブリック28、10が通過する半径が実際により小さくなる経路に追従することを、強いる。その結果、原料が受ける圧力は、ファブリック28、10が、形成ロール33のうちの、支持レッジ36が作用している部分上を通過する時には、増大する。
【0056】
図5を参照すると、第1形成ファブリック28および搬送ファブリック10は、形成ロール33の周りを一緒に走行することを強いられる。初期的には、それらは、形成ロール33の第1半径Rによって規定される曲線に追従する。半径Rは、フレキシブルスリーブ35の回転軸線Aからの半径として、理解してよい。ファブリック28、10が支持レッジ36上を通過する際には、それらは、支持レッジ36の形状によって規定される半径Rを有した曲線に追従することを強いられる。半径Rは、半径Rよりも小さく(すなわち、R<R)、よって、圧力が増大することとなり、これにより、第1形成ファブリック28および搬送ファブリック10が支持レッジ36上を通過する際の脱水が、増強される。支持レッジ36の半径が、支持レッジ36の上流側の端部から支持レッジ36の下流側の端部へと、機械方向において変化してもよいことが、理解されるべきである。
【0057】
いくつかの実施形態では、支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35が支持レッジ36によって外向きに押圧される量が一定であるように、固定位置に配置することができる。例えば、支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35がなすループの内部に配置された支持梁50によって直接的に支持されてもよく、あるいは、そのような支持梁50と一体化されてもよく、そして、支持梁50に対して位置が固定されたままであってもよい。
【0058】
固定位置に保持される支持レッジ36の代わりに、支持レッジ36の少なくとも一部を、フレキシブルスリーブ35の回転軸線Aに対して接近・離間する向きに移動可能であるように構成することができ、これにより、フレキシブルスリーブ35が支持レッジ36によって外向きに押圧される量を、変化させることができる。次に、このような構成の可能な実施形態について、図6図8を参照して説明する。図6では、支持レッジは、支持梁50によって支持されるものとして図示されている。図6では、2つのアクチュエータ57が図示されており、アクチュエータ57は、シュープレス技術から公知であるような油圧シリンダであってもよい。アクチュエータ57は、支持梁50によって支持され、かつ、支持梁50に対して取付/固定されており、アクチュエータ57は、支持レッジ36に対して作用し得るように構成され、これにより、支持レッジを外向きに押し出し得るように、そしてそれにより、フレキシブルスリーブ35も外向きに押し出し得るように、構成されている。図6に図示された2つのアクチュエータ57が、機械横断方向に延びる2列をなすアクチュエータを表してもよいことを、理解されるべきである。代替的な実施形態が図7に図示されている。
【0059】
図6および図7における1つのアクチュエータ(または、複数のアクチュエータ)57が、機械横断方向(CD方向)に延びる単一のアクチュエータとして非常に良く形成されてもよいこと、また、支持レッジ36と一体的であってさえもよいことが、理解されるべきである。このようなアクチュエータの設計は、例えば、シュープレスに関する米国特許第5,223,100号明細書から公知ではあるけれども、同様の構成を、本発明の一実施形態による形成ロール33に関しても、使用することができる。複数のアクチュエータ57が使用される場合、アクチュエータ57の構成および設計は、シュープレス内のシューに関するアクチュエータの公知の構成と、同様または同一とすることができる。例えば、1つまたは複数のアクチュエータは、米国特許第5,662,777号明細書、米国特許第6,083,352号明細書、米国特許第10 7,387,710号明細書、米国特許第4,917,768号明細書、または欧州特許第2808442号明細書、に開示されているようにして、設計および構成することができる。しかしながら、シュープレスに関する他のアクチュエータ構成も、特許文献から、および、市販されているものから、公知であり、製紙の当業者であれば、アクチュエータのための公知の解決手段の中から選択することができる。
【0060】
引き続き、図6図7、および図8を参照すると、支持レッジ36が、少なくともこの実施形態の形成セクション2が動作している時には、フレキシブルスリーブ35の内面63(図8を参照されたい)に対向しかつフレキシブルスリーブ35の内面63に対して接触する上面55を有していることがわかる。図6および図8の実施形態では、上面55は、凸状であり、支持レッジ36の上面55(すなわち、フレキシブルスリーブ35の内面に対向した面)は、フレキシブルスリーブ35が入口ギャップに隣接した端部から入口ギャップからさらに離間したポイントまで支持レッジ36上を移動する際に、支持レッジ36の半径がより大きな半径からより小さな半径へと減少するように、変化する半径を有している。図6では、支持レッジ36の一端において、支持レッジ36(または、支持レッジの上面55)は、半径Rを有していることがわかる。上面55は、ピークポイント56を有している、すなわち、上面上のうちの、フレキシブルスリーブ35の回転軸線Aから最大距離のところに位置した最高ポイントを有している。ピークポイント56では、支持レッジの半径R(すなわち、その上面55の半径)は、R<Rとなるように、より小さなものとされている。よって、支持レッジ36の半径は、より大きな値から、フレキシブル管状ジャケットがその他の円形経路から外向きに押し出される量が最大値に到達する際に得られる、より小さな値へと、減少することとなる。これにより、第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10との間の原料が受ける圧力がピークに達して、脱水が増大することとなる。
【0061】
次に、図7のみを参照する。図7の実施形態では、支持レッジ36は、フレキシブルスリーブ35の回転方向(矢印Rが、フレキシブル管状ジャケット35の回転方向を示している図8を参照されたい)において、支持レッジ36の上面55が、上流側の端部58よりも支持レッジの下流側の端部59により近いピークポイント56へと、高さが増加するように、設計されている。このようにして、圧力ピーク56は、支持レッジ36の領域の端部までは到達せず、圧力は、ピークポイント56の後に下がるまで、徐々に高められていく。支持レッジ36のこの設計により、そうでない場合には形成中の繊維状ウェブWを損傷しかねないような急激な圧力パルスを、回避することができる。
【0062】
支持レッジ36に対して接触していない領域における形成ロール33の半径は、500mm~1600mmの範囲であってよく、支持レッジ36の最小半径は、40mm~100mmの範囲であってよく、好ましくは45mm~80mmの範囲であってよく、さらに好ましくは50mm~75mmの範囲であってよい。
【0063】
図9を参照すると、第1形成ファブリック28と搬送ファブリック10との間において原料に対して印加される圧力が、ファブリック28、10が支持レッジ36に到達する前の領域では、値Pを有していることがわかる。ファブリック28、10が、支持レッジ36の領域へと到達すると、半径が小さくなるために圧力が増大し、圧力は、圧力Pよりも大きな圧力レベルPへと増大する。その結果、脱水が増加する。図4図9に示す形成ロールの特別な設計のおかげで、繊維状ウェブWが吸引ロールを通過していないにしても、繊維状ウェブWがシューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップNへと到達した時に、繊維状ウェブWは、より増大した乾燥度を有していることとなる。そして、繊維状ウェブWは、ヤンキー乾燥シリンダ3に対してのニップNにおいて、押し潰されることなく、より大きな圧力を受けることができる。
【0064】
次に、本発明による製紙機械1の代替的な実施形態について、図11を参照して説明する。図11の実施形態では、形成セクション2は、ガイド部材29によって支持されたループ内を走行するように構成された第1形成ファブリック28と、ガイド部材39によって支持されたループ内を走行するように構成された第2形成ファブリック38と、を含む。図2の実施形態における搬送ファブリック10とは異なり、第2形成ファブリック38は、繊維状ウェブWをヤンキー乾燥シリンダへと搬送するためには使用されない。第2形成ファブリック38は、水受けフェルトであり、第1形成ファブリック28に対して、これら2つの形成ファブリック28、38が互いに向けて収束することにより、原料を注入し得る入口ギャップ31を形成するように、互いに関連して構成されている。図2の実施形態と同様に、ヘッドボックス32が、入口ギャップ31内へと原料を注入するように構成され、形成ロール33が、第2形成ファブリックがなすループの内部に配置されている。形成ロールは、可能であれば図4図9を参照して説明した形成ロールのような形成ロールであってもよいけれども、他の形態であってもよい。例えば、図11の実施形態における形成ロール33は、吸引ロールであってもよく、あるいは、形成ロールとして適切な任意の他のロールであってもよい。
【0065】
図11の実施形態では、製紙機械1は、プリプレス40を含む。プリプレス40は、延長ニップロール41と、延長ニップロール41とともに脱水ニップDNを形成する対向ロール42と、を含んでいる。延長ニップロール41は、圧力シュー43と、圧力シュー43を巻回しているフレキシブルジャケット44と、を含んでいる。延長ニップロール41は、公知の延長ニップロールのうちの、任意の種類のものであってよい。例えば、延長ニップロールは、欧州特許第2808442(B1)号明細書、欧州特許第2085513(B1)号明細書、米国特許第5,223,100号明細書、米国特許第5,084,137号明細書、米国特許第5,662,777号明細書、または米国特許第7,527,708号明細書、に開示されているような構成を有し得るけれども、当業者であれば、他の多くの適切な構成を認識している。圧力シューは、任意選択的に、対向ロール42に対向する表面を有するように設計してもよく、シュー表面は、繊維状ウェブWの厚さと、フレキシブルジャケット44の厚さと、プリプレス40を通過するあらゆるファブリックの厚さと、を考慮した場合に、対向ロール42の凸状の曲率と一致するような凹状とされている。第2形成ファブリック38は、延長ニップロール41と対向ロール42との間に形成された脱水ニップDNへと繊維状ウェブWを搬送するように構成されているとともに、繊維状ウェブWと一緒に脱水ニップDNを通過するように構成されている。図11の実施形態では、搬送ファブリック10は、脱水ニップDNを通過するように構成されているとともに、脱水ニップDNから、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間に形成されたニップNへと、繊維状ウェブWを搬送するように構成され、これにより、繊維状ウェブWは、ヤンキー乾燥シリンダ3の表面に対して移送される。図11の実施形態では、搬送ファブリック10は、水を吸収しないファブリックであり、このため、シューロール4とヤンキー乾燥シリンダ3との間のニップは、非脱水ニップである。
【0066】
プリプレス40内の圧力は、好ましくは、繊維状ウェブWが押し潰されるという深刻なリスクを伴わない低いレベルに設定される。このことは、プリプレス40における脱水が、それほど大きくならないことを意味するけれども、それでも繊維状ウェブWの乾燥度は、許容可能なレベルにまで高められ得る。
【0067】
図11の実施形態では、搬送ファブリック10は、搬送ファブリック10がニップを通過する際に繊維状ウェブW上に三次元構造を付与し得る水透過性構造化ファブリックであってもよい。このことは、繊維状ウェブWがプリプレス40を通過する際およびヤンキー乾燥シリンダ3に対してのニップNを通過する際に、繊維状ウェブW内に、三次元構造が付与され得ることを、意味する。このようなファブリックは、縦糸、機械方向(MD)糸、横糸、機械横断方向(CD)糸との織り方として設計されてもよい。そのようなファブリックの一例は、例えば、本発明において使用可能であると考えられる構造化ファブリック28を開示している米国特許第8,840,857号明細書に開示されている。
【0068】
代替的に、図11の実施形態における搬送ファブリック10は、繊維状ウェブWに対向するように構成された構造化表面45であるとともに搬送ファブリック10がニップを通過する際には繊維状ウェブW上に三次元構造を付与し得る構造化表面45を有した、水不透過性ベルトであってもよい。構造化表面45は、隆起した領域と、下降した領域または沈んだ領域と、が設けられた表面である。例えば、表面45は、凹所によって互いに分離された隆起した領域、あるいは、隆起した領域によって互いに分離された凹所を有した領域、を含む表面であってもよい。このようにして、構造化表面45が繊維状ウェブに対して押圧された時には、繊維状ウェブWには、搬送ファブリック10の構造化表面45における隆起および凹所からなるパターンを反映した三次元構造が付与される。搬送ファブリック10が構造化表面を有した不浸透性ベルトである場合、構造化表面は、例えば、米国特許第8,366,878号明細書または米国特許第5,972,813号明細書に従ったものとし得るけれども、当業者であれば、使用可能なそのようなベルトの他の可能な設計を認識している。
【0069】
図12は、不浸透性ベルトであってもよい搬送ファブリック10の構造化表面/テクスチャー化表面45を、上方から図示している。表面45は、プリプレス40の脱水ニップDN内においては、繊維状ウェブWに対向することとなる。図12からわかるように、表面45は、隆起した領域によって囲まれた凹所67を有していてもよい。
【0070】
さらに別の代替可能な実施形態では、図11の実施形態における搬送ファブリック10は、繊維状ウェブWに対向するように構成された滑らかな表面46を有した水不透過性ベルトであってもよい。表面46は、滑らかである、すなわち、均一であって、実質的に隆起または凹所を有していない。この滑らかな表面46が繊維状ウェブWを押圧した時には、繊維状ウェブW上に三次元構造を付与するというよりもむしろ、繊維状ウェブWの表面を、単により均一にする傾向がある。繊維状ウェブWに対して接触する実質的に滑らかな(均一な)表面を有したファブリックを使用することにより、繊維状ウェブがより容易に搬送ファブリック10に対して移送されるという利点があり、それは、繊維状ウェブWが滑らかな表面に追従する傾向があるからである。
【0071】
図11の実施形態における搬送ファブリックは、また、米国特許第7,914,649号明細書に開示された製紙ベルトのいずれかの実施形態に従って設計されてもよい。
【0072】
図11の実施形態では、搬送ファブリック10の張力は、また、3.0kN/m~5.0kN/mの範囲に維持されるべきであり、図2の実施形態と同様に、この機能を達成するためにストレッチャーロール27が配置されている。
【0073】
本発明は、また、本発明による製紙機械を駆動してティッシュペーパーを製造する方法という観点で、理解されてもよい。動作時には、機械速度は、搬送ファブリック10が1500m/s~2300m/sの範囲の速度で走行するように、適切に選択される。動作時には、搬送ファブリックの張力が3.0kN/m~5.0kN/mの範囲に維持されるように、搬送ファブリックの張力を、監視して制御してもよい。
【0074】
動作時には、本方法は、好ましくは、閉鎖空間19が60ミリバール~100ミリバールの範囲の過圧で維持されるように、シューロール4の閉鎖空間19に対して加圧空気を供給することを含む。
【0075】
本発明のおかげで、ヤンキー乾燥シリンダ3の滑らかな表面48への良好な移送を達成することができ、これは、搬送ファブリック10が充分な張力を有しているからであり、このことは、機械的支持体12のおかげで可能とされており、この機械的支持体を使用しなければ、フレキシブル管状ベルト9がその形状を保持し得ないこととなる。追加的な利点は、搬送ファブリックがシューロール4の大きな角度を巻回し得ることにより、搬送ファブリックをヤンキー乾燥シリンダ3に対してのニップへと案内するに際し、搬送ファブリック10および繊維状ウェブWを、シューロール4の前方側において回転ロール(吸引回転ロールなど)上へと案内する必要がないことである。これは、利用可能なスペースが限られている場合には、重要である。
【0076】
繊維状ウェブWがヤンキー乾燥シリンダへと到達する前に他の脱水ステップが設けられている場合には、例えば形成セクション2においてより効果的な脱水が達成されている場合には、ヤンキー乾燥シリンダに対してのニップの前方側において吸引ロールの使用を回避することが可能である。
【0077】
本発明について、製紙機械および製紙方法の観点から上述したけれども、これらの分類が、1つの同じ発明の異なる態様を反映しているに過ぎないことが、理解されるべきである。よって、本方法は、そのようなステップが明示的に言及されているかどうかにかかわらず、本発明による機械における様々な実施形態を使用することから必然的に生じるであろうそのようなステップを含んでもよい。同様に、本発明による機械は、そのようなステップが明示的に言及されているかどうかにかかわらず、本方法の任意のステップを実行するための手段を含んでもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】