(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】可動ピン付きシリンダ及び取り付け及び取り外し方法
(51)【国際特許分類】
B41N 7/00 20060101AFI20220106BHJP
B41F 13/08 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B41N7/00
B41F13/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021521220
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(85)【翻訳文提出日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2019077921
(87)【国際公開番号】W WO2020078979
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】フリント グループ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・シュヴィアーツ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・シュラップシ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ベニンク
(57)【要約】
シリンダ(2)の外面(12)上に1つ又は複数の中空シリンダを受けるように配置されるシリンダ(2)が提供される。シリンダ(2)は、少なくとも1つの可動要素を有する少なくとも1つの可動ストッパ(1)を備える。アイドル位置において少なくとも1つの可動要素は、シリンダ(2)の外面(12)を越えて突出せず、中空シリンダがシリンダ(2)上を滑動することを可能にする。アクティブ位置において少なくとも1つの可動要素は、シリンダ(2)の外面(12)を越えて突出し、中空シリンダに対して機械的ストッパとして機能する。少なくとも1つの可動要素は、回転運動によりアイドル位置からアクティブ位置に及びアクティブ位置からアイドル位置に移動可能であることが企図される。本発明の更なる態様は、この種のシリンダ(2)上に中空シリンダを位置付けるための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(2)の外面(12)上に1つ又は複数の中空シリンダを受けるように配置され、少なくとも1つの可動要素を有する少なくとも1つの可動ストッパ(1)を備えるシリンダ(2)であって、
アイドル位置において前記少なくとも1つの可動要素は、前記シリンダ(2)の外面(12)を越えて突出せず、前記中空シリンダが前記シリンダ(2)上を滑動することを可能にし、
アクティブ位置において前記少なくとも1つの可動要素は、前記シリンダ(2)の外面(12)を越えて突出し、前記中空シリンダに対して機械的ストッパとして機能し、
前記少なくとも1つの可動要素は、回転運動により前記アイドル位置から前記アクティブ位置に及び前記アクティブ位置から前記アイドル位置に移動可能であることを特徴とするシリンダ(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可動要素は、前記シリンダ(2)の長手方向軸線(8)に垂直な回転軸(7)の周りを回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ(2)。
【請求項3】
前記シリンダ(2)は、前記外面(12)を越えて突出する少なくとも1つの固定要素を有する少なくとも1つの固定ストッパを備え、前記少なくとも1つの固定要素は前記中空シリンダに対して機械的ストッパとして機能することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダ(2)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの固定要素は、ピン(11)、隆起した縁、隆起した縁の一部、隆起した環、又は隆起した環の一部として構成されることを特徴とする請求項3に記載のシリンダ(2)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可動要素は、ピン(11)、隆起した環の一部、又は隆起した縁の一部として構成される請求項1~4のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項6】
前記アクティブ位置において、前記少なくとも1つの可動要素の長手方向軸線は、前記シリンダ(2)の長手方向軸線(8)に垂直な配向から30°未満だけ逸れることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項7】
前記アクティブ位置の前記少なくとも1つの可動要素、及び/又は前記少なくとも1つの固定要素は、0.1mm~100mmの範囲内でシリンダ(2)の外面(12)を越えて突出することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可動ストッパは、前記シリンダ(2)の外面(12)の周りに円周線に沿って分散される2~10の範囲の可動要素を備え、及び/又は、前記少なくとも1つの固定ストッパは、前記シリンダ(2)の外面(12)の周りに円周線に沿って分散される2~10の範囲の固定要素を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項9】
少なくとも2つの可動ストッパ(1)又は少なくとも1つの固定ストッパ及び1つの可動ストッパ(1)は、シリンダ(2)の長さに沿って分散されるように外面(12)上に配置されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可動要素は、金属、合金、プラスチック、繊維強化プラスチック、セラミック、又はガラスから選択される材料から形成されることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項11】
前記シリンダ(2)は、少なくとも1つのロック機器(6)を更に備え、前記ロック機器(6)は、前記少なくとも1つの可動要素を前記アクティブ位置及び/又は前記アイドル位置に固定するように配置されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのロック機器(6)はばね付勢スラスト部材を備え、前記ばね付勢スラスト部材は少なくとも1つの可動要素における対応物と相互作用することを特徴とする請求項11に記載のシリンダ(2)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの可動要素は、空気圧運動、電気駆動又は手動運動のための手段を有することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項14】
前記シリンダ(2)は、中空シリンダ、プレートシリンダ、又はプレートシリンダに印刷スリーブを取り付けるためのアダプタシリンダを機械加工するための組立シリンダであることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項15】
少なくとも1つの更なる中空シリンダが請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)上に配置され、前記更なる中空のシリンダの少なくとも1つの縁は、アクティブ位置におけるシリンダ(2)の可動要素に接触することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)を含むシリンダの配置構成。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)上に中空シリンダを位置付けるための方法であって、
a.請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)を準備すること;
b.更なる中空シリンダを準備すること;
c.可動ストッパ(1)の少なくとも1つの可動要素をアクティブ位置に移動し、当てはまる場合、選択されていない可動ストッパ(1)の可動要素をアイドル位置に移動することにより、選択された可動ストッパ(1)を調整すること;
d.シリンダ(2)上に更なる中空シリンダを配置することであって、更なる中空シリンダの縁が選択された可動ストッパ(1)の少なくとも1つの可動要素に接触するまで、更なる中空シリンダがシリンダ(2)の外面上を滑動させること、を含む方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)と、更なる中空シリンダとを含む、請求項15に記載の配置構成を除去するための方法であって、
a.請求項15に記載の配置構成を準備すること;
b.シリンダ(2)の外面(12)から更なる中空シリンダを滑動させて外すことにより更なる中空シリンダを除去すること;
c.可動ストッパ(1)の少なくとも1つの可動要素をアイドル位置に移動させることによる、選択された可動ストッパ(1)を調整することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの外面上に1つ又は複数の中空シリンダを受けるように配置された当該シリンダに関する。本発明の更なる態様は、そのようなシリンダ及びその上に配置された中空シリンダを含む構成、並びに中空シリンダをシリンダ上に配置するための方法、及び中空シリンダをシリンダから除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業界では、スリーブ及びアダプタがフレキソ印刷プロセスで広く使用されている。フレキソ印刷では、インクは圧縮強度を用いて印刷版を介して印刷媒体に転写される。レリーフ印刷及びグラビア印刷に加えて、フレキソ印刷は特に包装業界の主要な印刷方法の1つである。これは柔軟な印刷版が特徴であり、そのため、紙、フィルム、繊維材の印刷に使用可能である。加えて、それは様々なインク系に使用できるため、より広い使用を可能にする。
【0003】
フレキソ印刷機の様々な実施形態は、それぞれの用途に個別に適合される。これらの印刷機は、マルチシリンダ印刷機と中央シリンダ印刷機とからなる主要グループに分けることができる。広範な直径のスチールシリンダを使用することで、個々の印刷の繰り返しを実現することができる。原則として、アダプタは繰り返しを橋渡しするためにスチールシリンダ上に取り付けられる。次いでスリーブがアダプタ上に取り付けられる。最後に、印刷版又は代わりに印刷ブロックが、プレアセンブリとして知られている方法でスリーブに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1346846号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1144200号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2051856号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1263592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はシリンダ又は中空シリンダであり、その上に、長さを変更するための器具を要することなく又はシリンダの一般的な機能に悪影響を与えることなく、異なる長さの中空シリンダ(例えばスリーブ)を同じ位置に更に取り付け可能なものである。一般に、これは単純なシステムであり、顧客に多大なコストをかけることなく、費用対効果の高い方法で実行可能である。顧客にとっての更なるコスト的利点は、第一に、そのようなシリンダは、例えば、異なる長さの3つのシリンダよりも調達が安価であり、第二に、保管コストがかからないことである。また、既存の標準シリンダをこの新タイプに転換することも可能である。
【0006】
同じ見当精度を維持しながら器具なしでストッパを変更できる機能に加えて、マルチ長さシリンダは器具なしで使用でき、少なくとも1つの可動要素が事前に取り付けられているという事実によって特徴付けられる。アイドル位置では、前記少なくとも1つの可動要素は、シリンダの表面下にある凹状ポケットに位置付けられ、このシリンダ上を中空シリンダが滑動することを可能にする。アクティブ状態では、前記少なくとも1つの可動要素はアクティブ位置に位置付けられ、シリンダの表面を越えて突出し、中空シリンダを所定の位置に保持する。そのため、前記少なくとも1つの可動要素は相対的に安定するように構成される。アイドル位置とアクティブ位置との間の切り替えは、好ましくは、前記少なくとも1つの可動要素を折り畳むことによって行うことができる。折り畳み角度を制限することに加えて、追加の端部ストッパも安定性を高める役割を果たす。更にまた、前記少なくとも1つの可動要素は、ロック機器を用いて、能動的介入なしに独立して位置を変更することを好ましくは防止される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、シリンダの外面上に1つ又は複数の中空シリンダを受けるように配置される当該シリンダが提案される。シリンダは、少なくとも1つの可動要素を有する少なくとも1つの可動ストッパを備える。前記少なくとも1つの可動要素は、アイドル位置においてシリンダの外面を越えて突出せず、中空シリンダが当該シリンダ上を滑動することを可能にし、また、アクティブ位置においてシリンダの外面から突出し、中空シリンダに対する機械的ストッパとして機能する。前記少なくとも1つの可動要素は、回転運動により、アイドル位置からアクティブ位置に又はその逆に移動可能であることが企図される。前記シリンダは、中実シリンダ又は中空シリンダ、例えば、プレートシリンダ、中空シリンダ又はアダプタスリーブであり得る。好ましくは、シリンダはアダプタスリーブである。
【0008】
そのようなアダプタスリーブは、従来技術から知られているアダプタスリーブのスリーブ本体と実質的に同一のスリーブ本体を有する。スリーブ本体は、管形状又は中空円形シリンダ形状を有し、好ましくは、内側から外側に見て、可鍛性ベーススリーブと随意的可鍛性中間層と最上層とを備える。特に、ベーススリーブ、随意的中間層及び最上層は、従来技術のアダプタスリーブのそれらと実質的に同一である。
【0009】
可鍛性ベーススリーブは、1層又は複数層から構成することができるが、好ましくは1層からなる。可鍛性ベーススリーブは、可撓性セラミック層、アルミニウム又はニッケル、例えば金属合金からなる金属層、強化又は非強化プラスチック、又はそれらの組み合わせからなることができる。金属、合金及びセラミックが使用される場合、これらは、好ましくは、部分層の形態、特にせん孔プレート、織すき網、又はこれらの材料の複数の組み合わせの形態をとる。繊維、充填材又はそれらの組み合わせで強化された強化プラスチックが好ましく使用される。金属、ガラス及び/又は炭素繊維が繊維として特に好ましいが、プラスチック繊維も使用可能である。炭素繊維、ガラス繊維及び/又はプラスチック繊維が好ましく使用される。プラスチック繊維に関して、ポリエステル、ポリアミド及びポリアラミドが好ましい。無機又は有機粒子の形態の充填材を組み込むことができる。無機充填材として使用される材料には、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩又は酸化物、例えば、炭酸カルシウム又は硫酸カルシウム、ベントナイト、二酸化チタン、酸化ケイ素、石英、又はそれらの組み合わせが含まれ得るが、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン及び二酸化ケイ素が好ましい。強化材には繊維が好ましく使用され、ガラス繊維及び/又は炭素繊維が特に好ましく使用される。これらの繊維は、織布、不織布、大部分平行な繊維の異なる層、又はそれらの組み合わせの形態で使用される。
【0010】
ガラス転移温度が50℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上のプラスチックは、プラスチック又はプラスチック混合物として検討される。ベーススリーブの製造を単純化するために、熱硬化性混合物及び/又はUV硬化性混合物が好ましく使用され、繊維がプラスチックマトリックスに埋め込まれるように含浸される。エポキシド、不飽和ポリエステル/スチレン混合物、ポリエステル、ポリエーテル及びポリウレタンが熱硬化性混合物として好ましく使用される。エポキシド及び不飽和ポリエステル/スチレン混合物が好ましく使用される。
【0011】
好ましくは変形され次いで再び初期形状に戻ることができる剛性及び可鍛性の両方の材料、換言すれば弾力性を有する材料は、随意的な可鍛性中間層として使用される。この目的のために、天然及び合成ゴム、エラストマー、フォーム等の様々なポリマーが使用可能である。フォームは、開いた又は閉じた細孔、又はそれらの組み合わせを有することができる。閉じた細孔が好ましく使用される。フォームは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル及びポリウレタン等のポリマーから作られる。ポリウレタンフォームがフォームとして好ましく使用される。
【0012】
硬質材料、好ましくは金属、合金、セラミック、ガラス、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシド等のポリマー、及び全体的繊維強化プラスチック又は発泡プラスチック、又はそれらの組み合わせが最上層に使用される。ポリウレタンが特に好ましい。最上層の表面は粗くても滑らかでもよいが、中空シリンダを簡単に滑動することができるようにできるだけ滑らかであることが好ましい。最上層は、好ましくは、寸法的に安定又は剛性である。
【0013】
全層の材料は、気体に対して不浸透性であるように選択されることが好ましく、そのためには圧力の増強が可能であり、圧力が数日又は数時間にわたって維持され得るように選択される。ある場合には、静電荷を防ぐために、全層を導電性になるように構成する必要があり得る(例えば、EP1346846A1、EP1144200A1、EP2051856A1、EP1263592A1参照)。
【0014】
ベース層の厚さは、0.3mm~8mm、好ましくは0.5mm~5mm、特に好ましくは2.9mm~4.5mmの範囲である。随意的な中間層の厚さは、0.2mm~125mm、好ましくは10mm~100mmの範囲である。最上層の厚さは、0.5mm~10mm、好ましくは1mm~3mmの範囲である。アダプタスリーブの壁厚は、8mm~150mm、好ましくは15mm~75mmの範囲である。アダプタスリーブの壁厚は、スリーブの全層の壁の厚さの合計である。
【0015】
本発明に従うアダプタスリーブの内径は、10mm~1000mm、好ましくは40mm~630mm、特に好ましくは85mm~275mmの範囲である。本発明に従うアダプタスリーブの外径は、20mm~2000mm、好ましくは100mm~700mm、特に好ましくは125mm~300mmの範囲である。
【0016】
アダプタスリーブは、気体分配システムに接続される1つ又は複数の気体の入口及び出口を有することができる。そのようなアダプタスリーブは、例えば、EP 3 243 660 B1より知られている。
【0017】
1つ又は複数の気体入口は、1つ又は複数の気体分配システムに接続される。気体分配システムは、気体をアダプタスリーブ内に分配する。気体分配システムはチャネル又は管からなることができる。チャネル又は管は、ベース層及び最上層内又はこれらの間、1つ又は複数の中間層内、異なる層間、及びそれらの組み合わせ内に延びる。第1の気体分配システムは、好ましくは、1つ又は複数のチャネルの形態で構成される。チャネルは、例えば、穴あけ、フライス加工、彫刻、機械加工、切断、又はそれらの組み合わせにより、層の表面又は層のコアに加工される。気体分配システムは、1つ又は複数の気体出口に接続され、気体出口は、外側面、従って最上層の表面で終わる。気体出口は、最上層において1つ又は複数の円形、スリット形状又は正方形開口の形態にて構成することができ、又は、多孔質材又は大部分が開口である材料として構成することができる。気体出口は、アダプタスリーブの長手方向において見えるように、アダプタスリーブの片側3分の1に配置されることが好ましく、この側は、好ましくは、オペレータに対面する側である。更なる実施形態では、気体分配システムは、少なくとも1つの空洞を有することができる。空洞は、加圧気体に曝された際、内部から可鍛性ベーススリーブ上へと圧力を伝達することができるように配置される。これにより、アダプタスリーブの少なくとも一部の領域においてスリーブ本体の内径がベーススリーブの変形により低減する。
【0018】
アダプタスリーブの一実施形態において、気体接続部は、気体入口としてアダプタスリーブの前面に配置される。この場合、アダプタスリーブには気体が供給され、これにより別のシリンダ上での滑動が可能になる。別のシリンダは、例えば、気体クッションを作るために気体を供給しないプレートシリンダ等である。気体接続は、クイックリリースカップ環、気体オリーブ、管、又はクランプでチューブに接続された管の形態で構成される。気体接続は、好ましくはクイックリリースカップ環である。
【0019】
アダプタスリーブの更なる実施形態では、少なくとも1つの気体入口は、スリーブ本体の内側に配置され、かつ、別のシリンダ、例えばプレートシリンダの外側面における気体出口に接続するように配置される。この配置により、他のシリンダ、例えばアダプタスリーブが配置されるプレートシリンダによって提供される気体が、アダプタスリーブの表面に到達し、1つ又は複数の更なる中空シリンダを取り付けるために使用されることが可能になる。
【0020】
スリーブ本体の内側、従ってスリーブ本体のベース層に配置された気体入口は、アダプタスリーブがスライドされる他のシリンダによって提供される気体を、アダプタスリーブに受けるために使用される。気体入口は、最上層における1つ又は複数の円形、スリット形状又は正方形の開口の形態で、又は多孔質材又は大部分が開口である材料として構成することができる。
【0021】
気体出口は、アダプタスリーブの長手方向において見られるように、アダプタスリーブの片側の3分の1に配置されることが好ましく、この側は、好ましくは、オペレータに対面する側である。
【0022】
アダプタスリーブは、好ましくは、気体入口から気体分配システムへの気体の流れを放出及び/又は遮断するように配置された気体制御ユニットを備える。
【0023】
気体制御ユニットの様々な設定を通じて、目標態様で気体を操縦し、異なる機能を作り出すことができる。これにより、アダプタスリーブを、独自の気体供給の有無にかかわらずシリンダ上にスライドさせること、更なる中空シリンダをアダプタスリーブに取り付けること、又は、アダプタスリーブを別のシリンダ、例えばプレートシリンダに固定することが可能となる。
【0024】
気体制御ユニットは、1つ又は複数の構成部品で構成でき、アダプタスリーブに統合することも、アダプタスリーブの外側に配置することもできる。気体制御ユニットはアダプタスリーブの内側に好ましく配置される。
【0025】
気体出口は、好ましくは、スリーブの円周の周りに配置されたボアホールとして、又はスリーブの円周の周りに配置された気体透過性多孔質領域として構成される。軸方向に延びる多孔質領域も可能である。
【0026】
気体出口は、最上層又はベース層における1つ又は複数の円形、スリット形状、正方形開口又はボアホールからなり得る。しかしながら、開口は、最上層又はベース層に付加される多孔質領域の形態で構成することもできる。多孔質領域は中間層に適用可能であり、また多孔質材料を含む。多孔質材料は、細孔が当該材料の1%~50%、好ましくは5%~40%、特に好ましくは10%~30%の範囲の体積分率を占める材料を意味すると理解される。指定されたパーセンテージは、多孔質材料全体の体積における細孔の体積分率に関連する。細孔径は、1μm~500μm、好ましくは2μm~300μm、特に好ましくは5μm~100μm、非常に好ましくは10μm~50μmの範囲である。細孔は、好ましくは、多孔質材料の体積全体に均一に分散される。そのような材料の例には、連続気泡を有する発泡材料又は焼結多孔質材料が含まれる。
【0027】
多孔質領域は、好ましくは、1つ又は複数の多孔質領域全体に分散される。多孔質領域は、好ましくは、円周の周りに延びる環として構成され、又は、多孔質領域は、円周の周りに延びる破線状環の形態で構成及び配置される複数の部分領域を含む。これに対し代替的に又は付加的に、少なくとも1つの多孔質領域は、1つ又は複数の軸方向ストリップの形態で提供され得る。多孔質材料を使用する利点は、使用する気体が低減し、騒音の煩わしさが軽減されることである。
【0028】
本発明に従うシリンダ上に中空シリンダを配置する際に異なる中空シリンダの正確かつ再現可能で調整可能な位置決めを確実にするために、少なくとも2つの位置で異なる機能を実行する少なくとも1つの可動要素を有する少なくとも1つの可動ストッパが使用される。アクティブ位置において、少なくとも1つの可動要素は外面を越えて突出し、中空シリンダの動きを停止させ、機械的ストッパとして機能する。アイドル位置において、少なくとも1つの可動要素はシリンダの外面内又はその下に配置され、中空シリンダがシリンダ上を及びシリンダから離れるように滑動することを可能にし、従ってこの場合、異なる位置決めを可能にする。
【0029】
少なくとも1つの可動要素は、好ましくは、円形、楕円形、正方形、三角形、長方形、又は多角形の断面を有するピンとして構成される。しかしながら、他の形状、例えば片側が円弧状である要素等も使用することができ、前記円弧状は外面の形状と一致し、それによりアイドル位置において多かれ少なかれ連続した表面を与える。
【0030】
少なくとも1つの可動要素は、回転運動によりアイドル位置からアクティブ位置に又はその逆に移動することができる。あるいは、並進運動によって、少なくとも1つの可動要素をアイドル位置からアクティブ位置に又はその逆に移動させることも可能である。
【0031】
少なくとも1つの回転可能に構成された可動要素を使用する場合、この要素は、好ましくは、シリンダの長手方向軸線に垂直な回転軸の周りを回転可能である。しかしながら、回転軸を別の角度に配置することも可能である。回転軸がシリンダ軸線と平行に延びる場合、アイドル位置においてシリンダの外面とほぼシームレスで均一な表面を形成するように可動要素を構成することが可能である。特に、例えばピン等の細長い可動要素の場合、可動要素の軸受構成を、可動要素がアクティブ位置にある際、可動要素の長手方向軸線がシリンダに対して半径方向に整列されるように構成することも好ましい。
【0032】
少なくとも1つの可動要素を接続するために、締結具を挿入することができる。締結具は、好ましくは、可動要素と、可動要素をアイドル位置からアクティブ位置に又はその逆に移動するための手段とを備える。締結具は、好ましくは、接着適合、摩擦ばめ及び/又はポジティブフィットにてシリンダに接続され、必要に応じて、締結具とシリンダとの間に位置決め部材が挿入される。締結具は、例えば、ねじ又はリベット等の接続部品を用いてシリンダに固定されるか、又はシリンダの表面の凹部に接着、溶接、磁気又は圧入することによりシリンダに接続される。
【0033】
締結具は、好ましくは、位置決め部材によってシリンダに接続される。この目的のため、位置決め部材は好ましくは締結点を含み、締結点において締結手段が締結具に係合し接続する。位置決め部材は、例えば、接着適合、摩擦ばめ及び/又はポジティブフィットによりシリンダに接続可能である。位置決め部材は、ねじ又はリベット等の接続部品を用いてシリンダに接続されるか又は、シリンダの表面の凹部に接着、溶接、磁気又は圧入することによりシリンダに接続される。
【0034】
締結具及び存在する場合の位置決め部材は、シリンダの表面において凹部又はポケットに係合し、従って、少なくとも1つの可動要素がアイドル位置にある場合に、締結具又は位置決め部材により中空シリンダがシリンダ上を滑動することを妨げられないことを保証する。凹部は、好ましくは、表面、換言すれば外面から見て、0.5mm~20mmの範囲の深さを有する。凹部の面は、好ましくは、凹部に受け入れられる1つ又は複数の可動要素のサイズに適合される。凹部の形状及びサイズは、可動要素がアイドル位置にある際、可動要素の表面と外面との間がシームレスな遷移となるように選択されることが好ましい。可動要素の表面と外面との間に存在するいかなる間隙も1mm未満である場合、本文脈において遷移はシームレスであると見なされる。更にまた、凹部は、可動要素の手動による作動のための凹状グリップを提供するために、少なくとも1つの箇所において可動要素よりも深くなるように構成することができる。
【0035】
可動ピン等の回転可能に構成される可動要素は、好ましくは、締結具におけるスタッドを用いて取り付けられる。スタッドは可動要素に固定的に接続されるか又はスタッドは締結具に移動可能に取り付けられ得る。あるいは逆に、可動要素がスタッドに対して可動となりかつスタッドが締結具に固定的に接続されるように取り付けられ得る。あるいは、スタッドは締結具に移動可能に取り付けられ、かつ可動要素もスタッドに移動可能に取り付けられ得る。
【0036】
少なくとも1つの可動要素とシリンダとの間の接続は、好ましくは取り外し可能に構成される。この目的のために、締結具及び/又は位置決め部材は、ねじ等の取り外し可能な固定手段によりシリンダに固定される。これにより、個々の可動要素又はその部品、例えば、位置決め部材、締結具、スタッド、スラスト部材、又はこれらの部品等を必要に応じて交換することができる。
【0037】
シリンダは、好ましくは、少なくとも1つの固定ストッパを備え、固定ストッパは外面を越えて突出して中空シリンダの機械的ストッパとして機能する少なくとも1つの固定要素を有する。この固定ストッパは、中空シリンダを位置付ける際にシリンダ上における中空シリンダの位置を変更する必要がない場合に特に使用される。少なくとも1つの固定要素を有する固定ストッパは、例えば、中空シリンダがシリンダの端を越えて移動するのを防ぐためにシリンダの端部領域で使用可能であり、安全手段としての役割を果たすことができる。
【0038】
少なくとも1つの固定要素は、好ましくは、ピン、隆起した縁、隆起した縁の一部、隆起した環、又は隆起した環の一部として構成される。更に、凹部と対応する相手方とを含む組合せがスライド式の中空シリンダに使用可能である。凹部は、例えば円周溝、破線状円周溝、1つ又は複数のボアホールの形態である。対応する相手方はスライド式の中空シリンダに配置される。スライド式中空シリンダにおける相手方として使用できる要素には、例えば、浸水可能要素、ピン、ばね、ストッパエッジ、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
少なくとも1つの可動要素は、好ましくは、ピン、隆起した環の一部、又は隆起した縁の一部として構成される。隆起した環又は隆起した縁の一部の場合、少なくとも1つの可動要素は、好ましくは、前記一部の外径がシリンダの外径と同じであり、アイドル位置において多かれ少なかれ連続した表面を与えるように構成される。
【0040】
端部ストッパは、好ましくは、少なくとも1つの可動要素のために設けられ、端部ストッパは、少なくともアクティブ位置における可動要素の正確な位置及び/又は向きを規定する。例えば、端部ストッパは、回転可能に取り付けられたピン等の回転可能な可動要素のために設けられ、アイドル位置から始まりアクティブ位置に向かって移動する回転運動が、可動要素の長手軸線がシリンダに対して半径方向に向けられる位置で終了するように回転運動を制限する。可動要素の回転軸がシリンダ軸線に垂直に配置される場合、アクティブ位置にある可動要素の長手方向縦軸は、90°位置を越えて30°未満、好ましくは90°位置を越えて20°未満、特に好ましくは90°位置を越えて10°未満、非常に好ましくは90°位置を越えて5°未満、最も好ましくは90°位置を越えて1°未満だけ軸方向において逸れる。アクティブ位置における少なくとも1つの可動要素の長手方向軸線は、好ましくは、シリンダの長手方向軸に垂直な方向から30°未満だけ逸れる。これは、例えば、90°位置を越える可動要素の移動を防ぐ対応する端部ストッパの締結具を配備することにより達成することができる。1つのオプションは、例えば、適切に位置付けられたスタッド、ストッパ縁、ねじ、又はそれらの同様の組み合わせである。
【0041】
少なくとも1つの可動要素の回転軸がシリンダ軸線に平行に配置される場合、半径方向配置からの逸脱は、最大60°まで、好ましくは50°まで、特に好ましくは30°まで、非常に好ましくは20°まで両方向において適用可能である。
【0042】
十分なストッパ効果を達成するために、少なくとも1つの可動要素はアクティブ位置においてシリンダの外面を越えて突出すべきである。アクティブ位置にある少なくとも1つの可動要素及び/又は少なくとも1つの固定要素は、0.1mm~100mmの範囲内、好ましくは0.1mm~10mmの範囲内で、特に好ましくは0.1mm~5mmの範囲内、非常に好ましくは0.1mm~3mmの範囲内にてシリンダの表面を越えて好ましく突出する。
【0043】
特に頑強なストッパ効果を達成するために、複数の可動要素又は固定要素を、可動ストッパ又は固定ストッパにおけるシリンダ上に配置することができる。少なくとも1つの可動ストッパは、円周線に沿うシリンダの外面周りに分散される2~10の範囲のいずれかの可動要素を備え、及び/又は、少なくとも1つの固定ストッパは、円周線に沿うシリンダの外面周りに分散される2~10の範囲のいずれかの固定要素を備える。2~8の可動要素又は固定要素、好ましくは2~6、特に好ましくは2~4、最も好ましくは2つの可動要素又は固定要素が好ましく使用される。該要素は、円周線に沿って不規則又は規則的な間隔、又は不規則な間隔と規則的な間隔を組み合わせた間隔をあけることができる。円周線は、好ましくは、シリンダの縦軸に沿って見た際、すべての可動要素又は固定要素が同じ高さになるように整列される。
【0044】
多数の異なる中空シリンダを正確に位置付けるようにするために、複数の可動ストッパ又は固定ストッパを使用することが可能である。これらの可動ストッパ又は固定ストッパはまた、1つ又は複数の可動要素又は固定要素を備えることができる。従って、少なくとも2つの可動ストッパ、又は少なくとも1つの固定ストッパ及び1つの可動ストッパが、好ましくは、シリンダの長さに沿って分散され、外面上に配置される。ストッパの可動要素又は固定要素は、シリンダ軸線に対して平行に又は任意の角度で延びる線上に配置可能であり、又は完全に所望により配置可能である。線形配置が好ましく選択される。シリンダの外面の周りの円周線に沿って2つ以上の可動要素又は固定要素を分散することもでき、又は、それらを更なる要素の線形配置又は他の任意の配置と組み合わせることが可能である。シリンダ軸線に平行に延びる線に沿うストッパ位置の間隔が締結具の長さよりも小さい場合、少なくとも2つの可動要素の非線形配置が特に有利である。可動要素又は固定要素の数は限定されず、必要なストッパの数に基づく。
【0045】
少なくとも1つの可動要素及び/又は少なくとも1つの固定要素は、好ましくは、金属、合金、プラスチック、繊維強化プラスチック、セラミック又はガラスから選択される材料から作製される。金属、合金又は硬質プラスチックが好ましく使用される。特に、鋼、ステンレス鋼、強化硬質プラスチック、又はそれらの組み合わせが使用される。特に、シリンダの表面と同じ材料が少なくとも1つの可動要素又は固定要素に適している。
【0046】
可動要素の位置の望ましくない変化を防ぐために、これが適切な機器により防止されるなら有利である。そのため、シリンダは、好ましくは、少なくとも1つのロック機器を更に備える。少なくとも1つのロック機器は、少なくとも1つの可動要素をアクティブ位置及び/又はアイドル位置に固定するように配置される。ロック機器が使用される場合、ばね付勢スラスト部材等のロック機器の一部が位置決め部材に配置可能であり、ロック機器の相手方は、好ましくは可動要素上に直接配置される。ロック機器は、好ましくは、ばね付勢スラスト部材、ばね(鋼板)、螺旋ばね、圧縮性プラスチック、ゴム、ゲル、又はそれらの組み合わせを含む。ロック機器として、ばね付勢スラスト部材又はばね(鋼板)が好ましく使用される。
【0047】
ばね付勢スラスト部材は、好ましくは、可動要素に作用するように配置されるボールヘッドを有する。そのため、可動要素には、好ましくは、ボールヘッドに対応する相手方が設けられる。例えば、可動要素は、アクティブ位置においてシリンダ軸線に対面する端部に好ましくは球形の凹部を有する。
【0048】
少なくとも1つの可動要素をアクティブ位置とアイドル位置との間に移動させるために、空気圧、電気、磁気、機械的な又は手動の方法等、当業者に一般に知られているすべての方法を使用することができる。少なくとも1つの可動要素は、好ましくは、空気圧運動のための手段、電気駆動部又は手動運動のための手段を含む。空気圧運動のための手段は、例えば、空気圧シリンダとして構成される。電気駆動部は、例えば、サーボモータ等の電気モータとして、又は可動要素に作用する電磁石として構成される。手動運動のための手段は、例えば、シリンダの外面における凹状グリップ、及び/又は可動要素を取り付けるために使用される締結具における凹部を含む。凹状グリップ又は凹部は、可動要素を把持することを可能にする。付加的に又は代替的に、手動運動のための手段は、可動要素を把持して手動で移動することができるハンドルを備えることができる。
【0049】
手動での移動は、好ましくは、可動要素を直接把持することによって可能である。この目的のために、可動要素は、補助を使用せずに外部から直接アクセス可能である。補助は、例えば、シリンダの外面及び/又は締結具に、対応する凹状グリップ又は凹部を設けることによる。
【0050】
シリンダがアダプタスリーブ又は気体接続部を有するプレートシリンダとして構成されている場合、気体は気体分配システムを介して空気圧シリンダに供給することができる。気体分配システムを適切に制御することにより、シリンダの可動ストッパの可動要素を、目標とする態様でアクティブ位置又はアイドル位置へと移動することができる。
【0051】
可動要素を有するシリンダの提案されたモジュラー構造はまた、この種の可動ストッパを有する既存のシリンダの容易な後付けを可能にする。この目的のために、1つ又は複数の凹部がシリンダの外面に形成され、1つの可動要素が各凹部に配置されてシリンダに接続される。
【0052】
本発明に従う、ここに記載されるシリンダの1つを製造するための方法は、以下のステップを含む。
a.シリンダの準備;
b.シリンダの外面に少なくとも1つの凹部を形成すること;
c.少なくとも1つの可動要素を設けること;及び
d.少なくとも1つの可動要素を、シリンダの少なくとも1つの凹部に固定すること。
【0053】
少なくとも1つの凹部は、例えば、フライス削りによって形成することができる。別々の凹部が、好ましくは、可動要素ごとに作り出される。あるいは、複数の可動要素を1つの凹部に共に配置することができると考えられる。例えば、可動ストッパのすべての可動要素は、円周方向溝の形態で構成される単一の凹部に配置することができる。
【0054】
オプションとして、可動要素及び対応する移動手段を含むことができる締結具を使用することができる。締結具は、好ましくは、接着された、摩擦的及び/又は確実な適合でシリンダに接続され、必要に応じて、位置決め部材が締結具とシリンダとの間に挿入される。締結具は、例えば、ねじやリベット等の接続部品によってシリンダに固定されるか、又はシリンダの表面の凹部に接着、溶接、磁気又は圧入することによりシリンダに接続される。
【0055】
締結具は、好ましくは、位置決め部材によってシリンダに接続される。この目的のために、位置決め部材は、好ましくは、締結手段が係合して締結具に接続することができる締結点を含む。位置決め部材は、例えば、接着、摩擦及び/又はポジティブフィットにてシリンダに接続することができる。位置決め部材は、例えば、ねじ又はリベット等の接続部品によってシリンダに接続されるか、又は、シリンダの表面の凹部に接合、溶接、磁気又は圧入することによってシリンダに接続される。位置決め部材は、すべての標準的な方法を使用して製造することができるが、好ましくは、それは付加的な方法で製造される。
【0056】
本発明に従う、上記シリンダは、多くの用途、特に印刷部門で頻繁に見られるようなシリンダ及び中空シリンダの取り付け及び機械加工に適している。従って、本発明に従うシリンダは、好ましくは、中空シリンダを機械加工するための組立シリンダとして、又は中空シリンダ、特に印刷スリーブを取り付けるためのアダプタシリンダとして構成される。
【0057】
本発明の更なる態様は、本発明に従う上記シリンダの1つを含むシリンダの構成に関する。ここで、少なくとも1つの更なる中空シリンダは、本発明に従うシリンダ上に配置され、また、更なる中空シリンダの少なくとも1つの縁は、アクティブ位置において本発明に従うシリンダの可動要素に接触する。可動要素を有する本発明に従うシリンダは、例えば、中空シリンダを機械加工するための組立シリンダ、プレートシリンダ、又はプレートシリンダに印刷スリーブを取り付けるためのアダプタシリンダである。更なる中空シリンダは、例えば、印刷スリーブ、印刷スリーブ用の予備(スリーブ)、又はウェブシート材を装着できるロール用のコアである。
【0058】
本発明の更なる態様は、本発明に従うシリンダ上に中空シリンダを配置するための方法に関し、以下のステップを含む。
a.本発明に従うシリンダの準備;
b.更なる中空シリンダの準備;
c.可動ストッパの少なくとも1つの可動要素をアクティブ位置に移動することにより、及び当てはまる場合、選択されていない可動ストッパの可動要素をアイドル位置に移動することにより、選択された可動ストッパを調整すること;
d.本発明に従うシリンダ上への更なる中空シリンダの配置であって、更なる中空シリンダの縁が選択された可動ストッパの少なくとも1つの可動要素に接触するまで、更なる中空シリンダが本発明に従うシリンダの外面上を滑動すること。
【0059】
この方法で使用される本発明に従うシリンダは、中空シリンダを機械加工するための組立シリンダ、プレートシリンダ、又はプレートシリンダに印刷スリーブを取り付けるためのアダプタシリンダであり得る。更なる中空シリンダは、例えば、印刷スリーブ、印刷スリーブのための予備、スリーブ、ウェブシート材を装着できるロール用のコア、又はそれらの組み合わせであり得る。本発明に従うシリンダは、好ましくはアダプタシリンダであり、更なる中空シリンダは、印刷スリーブ又は印刷スリーブの予備である。
【0060】
ステップdにおいて、シリンダと中空シリンダとの間に気体クッションを作成することにより、更なる中空シリンダの配置を容易にすることができる。これは、シリンダの気体供給とシリンダの表面の対応する気体出口開口部によって可能になる。代替的に又はこれに加えて、空気供給システムを中空シリンダ内に提供することができ、このシステムは、シリンダに面する内側に開口部を有し、それを通して空気を逃がし、中空シリンダ内にエアクッションを作り出すことができる。次いで、例えば気体供給を遮断することにより、中空シリンダをシリンダ上の所定の位置に固定することができ、その結果、気体クッションが消え、中空シリンダが固定される。別のオプションは、中空シリンダに固定機構を装備し、この機構を使用する。このような固定機構は、例えば、中空シリンダの油圧式又は空気圧式クランプ、又は止めねじの使用からなる。更なる中空シリンダを位置付けた後、この配置は、例えば、フレキソ印刷、レリーフ印刷、グラビア印刷、又はパッド印刷に使用可能である。
【0061】
中空シリンダを所定の位置に固定した後、回転、機械加工、洗浄、又は配置の位置決め等の更なる方法ステップを実行することができる。次いで、機械加工は、いくつかのステップを含むことができ、例えば、フライス加工、研削、液体、気体又はプラズマによる処理、電磁波による処理、角質処理、又は、例えば接着テープ及び印刷版等の更なる層による接着を含む。特に、以下の処理が可能である。すなわち、レーザー放射による表面の一部のアブレーション、基板へのインクの塗布及びインクの転写、ロールを作り出すことによる中空シリンダへのウェブシート材の適用、中空シリンダへの更なる層の塗布、それらの所定の位置での固定、又はそれらの組み合わせ、である。
【0062】
本発明の更なる態様は、本発明に従うシリンダ及び更なる中空シリンダを含むここに記述した構成のうちの1つを除去するための方法に関し、この方法は、以下のステップを含む。
a.本発明に従うシリンダを含む構成の準備。ここで、少なくとも1つの更なる中空シリンダは本発明に従うシリンダ上に配置され、更なる中空シリンダの少なくとも1つの縁がアクティブ位置における本発明に従うシリンダの可動要素に接触する;
b.本発明に従うシリンダの外面から更なる中空シリンダを滑動させて外すことによる更なる中空シリンダの除去;
c.可動ストッパの少なくとも1つの可動要素をアイドル位置に移動させることによる、選択された可動ストッパの調整。
【0063】
この方法における本発明に従うシリンダは、例えば、中空シリンダを機械加工するための組立シリンダ、プレートシリンダ、又はプレートシリンダに印刷スリーブを取り付けるためのアダプタシリンダであり得る。更なる中空シリンダは、例えば、印刷スリーブ、印刷スリーブの予備、ウェブシート材を装着することができるスリーブ又はロール用のコアであり得る。本発明に従うシリンダは、好ましくは、アダプタシリンダ、更なる中空シリンダ、印刷スリーブ、又は印刷スリーブの予備である。
【0064】
ステップbにおいて、更なる中空シリンダの除去は、本発明に従うシリンダと更なる中空シリンダとの間に気体クッションを作り出すことによって容易なものとなり得る。これは、本発明に従うシリンダへの気体供給及びシリンダの表面における対応する気体出口開口によって可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1a】
図1aは、アイドル位置に可動ストッパがあるシリンダの断面を示す。
【
図1b】
図1bは、アクティブ位置に可動ストッパがあるシリンダの断面を示す。
【
図2a】
図2aは、アイドル位置にある可動ストッパの長手方向断面の詳細図を示す。
【
図2b】
図2bは、アクティブ位置にある可動ストッパの長手方向断面の詳細図を示す。
【
図3】
図3は、複数の可動ストッパを有するシリンダを示し、各可動ストッパは可動ストッパの回転軸の異なる配置を有する。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1a及び
図1bはそれぞれ、可動ストッパ1を有するシリンダ2の断面を示す。
図1aは、アイドル位置における可動ストッパ1を示す。
図1bは、アクティブ位置における可動ストッパ1を示す。アイドル位置では、可動ストッパ1の可動要素としてのピン11は、シリンダ2の表面における凹部10(
図2a及び2bも参照)内に姿を消し、中空シリンダがシリンダ上を滑動することを可能にする。
図1bに示すアクティブ位置では、可動ストッパ1のピン11がシリンダの表面を越えて突出し、中空シリンダを望ましい位置で止める。
【0067】
図2は、可動ストッパ1を通る長手方向断面の詳細を示す。可動ストッパ1は、接続要素5を用いてシリンダ2の凹部10に締結具3により取り付けられる。
図2に示される実施形態では、接続要素5は、凹部10のねじ穴9に係合するねじとして構成される。締結具3は回転軸7を有する。回転軸7にピン11が留められ、可動ストッパ1のピン11が、アイドル位置からアクティブ位置に移動すること及びアイドル位置に再度戻ることを可能にする。
【0068】
図2a及び
図2bに示される実施形態では、可動ストッパ1はロック機器6を有する位置決め部材4を備える。ロック機器6はピン11の意図しない運動を防ぐ。
図2a及び
図2bに示される実施形態では、ロック機器6は、位置決め部材4に位置付けられたばね付勢スラスト部材として構成される。トラスト部材が係合できる凹部の形態の対応物は、ピン11に直接配置される。代替実施形態では、位置決め部材4を省くことができる。
【0069】
図3はシリンダ2を示し、シリンダ2上に、例えば3つの異なる可動ストッパ1が配置される。3つの可動ストッパ1はシリンダ2の長さに沿って分散され、
図3に示す例では、それぞれが回転軸7の異なる配置を有する。第1の可動ストッパ1aの場合、回転軸7はシリンダ2の長手方向軸線8と0°の角度をなすように配置(平行配置)される。第2の可動ストッパ1b及び第3の可動ストッパ1cの場合、それぞれの回転軸7及びシリンダ2の長手方向軸線8は、それぞれ90°及び270°の角度をなす(垂直配置)。その間にある他のすべての角度も可能である。中空シリンダを左から滑動させる場合、回転軸7を、第3の可動ストッパ1cと同様に270°の角度で配置することが好ましい。端部ストッパは、ピン11の回転が、ピン11がシリンダ2の表面に垂直である位置を越えることができないように配置される。中空シリンダを右から滑動させる場合、第2の可動ストッパ1bと同様に、回転軸7を90°の角度で配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0070】
1 可動ストッパ
1a 最初の可動ストッパ
1b 第2の可動ストッパ
1c 第3の可動ストッパ
2 シリンダ
3 締結具
4 位置決め部
5 接続要素(例: ネジ)
6 ロック機器
7 回転軸
8 シリンダの長手方向軸線
9 ねじ穴
10 凹部
11 ピン
12 外面
【手続補正書】
【提出日】2020-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(2)の外面(12)上に1つ又は複数の中空シリンダを受けるように配置され、少なくとも1つの可動要素を有する少なくとも1つの可動ストッパ(1)を備えるシリンダ(2)であって、
アイドル位置において前記少なくとも1つの可動要素は、前記シリンダ(2)の外面(12)を越えて突出せず、前記中空シリンダが前記シリンダ(2)上を滑動することを可能にし、
アクティブ位置において前記少なくとも1つの可動要素は、前記シリンダ(2)の外面(12)を越えて突出し、前記中空シリンダに対して機械的ストッパとして機能し、
前記少なくとも1つの可動要素は、回転運動により前記アイドル位置から前記アクティブ位置に及び前記アクティブ位置から前記アイドル位置に移動可能であ
り、
前記回転運動中、前記少なくとも1つの可動要素は、前記少なくとも1つの可動要素の回転軸(7)の周りを回転することを特徴とするシリンダ(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可動要素
の前記回転軸(7)は、前記シリンダ(2)の長手方向軸線(8)に垂
直であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ(2)。
【請求項3】
前記シリンダ(2)は、前記外面(12)を越えて突出する少なくとも1つの固定要素を有する少なくとも1つの固定ストッパを備え、前記少なくとも1つの固定要素は前記中空シリンダに対して機械的ストッパとして機能することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダ(2)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの固定要素は、ピン(11)、隆起した縁、隆起した縁の一部、隆起した環、又は隆起した環の一部として構成されることを特徴とする請求項3に記載のシリンダ(2)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可動要素は、ピン(11)、隆起した環の一部、又は隆起した縁の一部として構成される請求項1~4のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項6】
前記アクティブ位置において、前記少なくとも1つの可動要素の長手方向軸線は、前記シリンダ(2)の長手方向軸線(8)に垂直な配向から30°未満だけ逸れることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項7】
前記アクティブ位置の前記少なくとも1つの可動要素、及び/又は前記少なくとも1つの固定要素は、0.1mm~100mmの範囲内でシリンダ(2)の外面(12)を越えて突出することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可動ストッパは、前記シリンダ(2)の外面(12)の周りに円周線に沿って分散される2~10の範囲の可動要素を備え、及び/又は、前記少なくとも1つの固定ストッパは、前記シリンダ(2)の外面(12)の周りに円周線に沿って分散される2~10の範囲の固定要素を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項9】
少なくとも2つの可動ストッパ(1)又は少なくとも1つの固定ストッパ及び1つの可動ストッパ(1)は、シリンダ(2)の長さに沿って分散されるように外面(12)上に配置されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可動要素は、金属、合金、プラスチック、繊維強化プラスチック、セラミック、又はガラスから選択される材料から形成されることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項11】
前記シリンダ(2)は、少なくとも1つのロック機器(6)を更に備え、前記ロック機器(6)は、前記少なくとも1つの可動要素を前記アクティブ位置及び/又は前記アイドル位置に固定するように配置されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのロック機器(6)はばね付勢スラスト部材を備え、前記ばね付勢スラスト部材は少なくとも1つの可動要素における対応物と相互作用することを特徴とする請求項11に記載のシリンダ(2)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの可動要素は、空気圧運動、電気駆動又は手動運動のための手段を有することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項14】
前記シリンダ(2)は、中空シリンダ、プレートシリンダ、又はプレートシリンダに印刷スリーブを取り付けるためのアダプタシリンダを機械加工するための組立シリンダであることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のシリンダ(2)。
【請求項15】
少なくとも1つの更なる中空シリンダが請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)上に配置され、前記更なる中空のシリンダの少なくとも1つの縁は、アクティブ位置におけるシリンダ(2)の可動要素に接触することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)を含むシリンダの配置構成。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)上に中空シリンダを位置付けるための方法であって、
a.請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)を準備すること;
b.更なる中空シリンダを準備すること;
c.可動ストッパ(1)の少なくとも1つの可動要素をアクティブ位置に移動し、当てはまる場合、選択されていない可動ストッパ(1)の可動要素をアイドル位置に移動することにより、選択された可動ストッパ(1)を調整すること;
d.シリンダ(2)上に更なる中空シリンダを配置することであって、更なる中空シリンダの縁が選択された可動ストッパ(1)の少なくとも1つの可動要素に接触するまで、更なる中空シリンダがシリンダ(2)の外面上を滑動させること、を含む方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載のシリンダ(2)と、更なる中空シリンダとを含む、請求項15に記載の配置構成を除去するための方法であって、
a.請求項15に記載の配置構成を準備すること;
b.シリンダ(2)の外面(12)から更なる中空シリンダを滑動させて外すことにより更なる中空シリンダを除去すること;
c.可動ストッパ(1)の少なくとも1つの可動要素をアイドル位置に移動させることによる、選択された可動ストッパ(1)を調整することを含む方法。
【国際調査報告】