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特表2022-506271カーボンナノ構造ベースの繊維を備えたヒートシンク
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  • 特表-カーボンナノ構造ベースの繊維を備えたヒートシンク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】カーボンナノ構造ベースの繊維を備えたヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20220107BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220107BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523493
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2019077763
(87)【国際公開番号】W WO2020094340
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】102018218832.7
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】アレンツ,クリスティーネ
(72)【発明者】
【氏名】グレーガー,ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】ラムザイヤー,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ブッティス,ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AB02
5E322AB06
5E322DA04
5E322FA01
5E322FA09
5F136DA27
5F136FA23
5F136FA25
(57)【要約】
本発明は、基体(2)と、少なくとも何本かが基体(2)に固定されている複数のカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB、3)、とりわけカーボンナノチューブ(CNT、4)またはグラフェン繊維とを備えたヒートシンク(1)に関する。繊維(3、4)が相互の付着もしくは支持に基づいて、とりわけ脱脂綿、フェルト、もしくは繭の形状の体積構造体(12)を形成しているか、または繊維(3、4)がループ(6)もしくは三次元織物を形成していることが企図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(2)と、少なくとも何本かが熱伝達のために前記基体(2)に固定されている複数のカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB、3)、とりわけカーボンナノチューブ(CNT、4)またはグラフェン繊維とを備えたヒートシンク(1)において、前記繊維(3、4)が相互の付着もしくは支持に基づいて、とりわけ脱脂綿、フェルト、もしくは繭の形状の体積構造体(12)を形成しているか、または前記繊維(3、4)がループ(6)もしくは三次元織物を形成していることを特徴とするヒートシンク(1)。
【請求項2】
前記繊維(3、4)が、少なくとも一部の領域では秩序正しい構造および/または少なくとも一部の領域では無秩序な構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記基体(2)に対して間隔をあけており、前記繊維(3、4)の少なくとも何本かが固定されている対向体(8)を特徴とする請求項1または2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記基体(2)および/または前記対向体(8)での前記固定が、はんだ付け箇所、接着箇所、および/または鋳包み箇所として形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記ループ(6)が端部領域(7、9)を有すること、ならびに前記ループ(6)の前記端部領域(7、9)の少なくとも幾つかが、前記基体(2)および/または前記対向体(8)の表面/中に固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記繊維(3、4)が少なくとも一部の領域では相互に圧縮されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記繊維(3、4)の少なくとも何本かが、機械的に安定させるコーティングを備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項8】
とりわけ金属および/または好ましくはさらなるカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB、3)、とりわけカーボンナノチューブ(CNT、4)もしくはグラフェン繊維から成っており、前記繊維(3、4)を支持する少なくとも1つの支持構造(14、15)を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記少なくとも1つの支持構造(14、15)が、格子状に形成されており、かつ前記基体(2)および/または対向体(8)での前記固定に役立ち、とりわけ前記基体(2)および/または前記対向体(8)の中に鋳包まれていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記三次元織物が、前記織物の織り目の種類および/または前記織物の織り目幅により、機械的に安定していることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記繊維(3、4)の少なくとも何本かが、とりわけ平面的な、前記繊維(3、4)および/またはさらなるカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB、3)、とりわけカーボンナノチューブ(CNT、4)もしくはグラフェン繊維によって構成された繊維土台(11、13)から出ていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記繊維土台(11、13)が、前記基体(2)および/または対向体(8)の表面/中に固定されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項13】
前記繊維土台(11、13)が織物として形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項14】
前記繊維(3、4)の少なくとも何本かが、前記基体(2)から前記対向体(8)へと、前記両方の部品の間のできるだけ大きな繊維長を達成するために90度ではない角度で延びており、かつ/または90度の角度で延びていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体と、最初に何本かが熱伝達のために基体に固定されている複数のカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)、とりわけカーボンナノチューブもしくはカーボンナノ管(CNT)またはグラフェン繊維とを備えたヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2007158584号から、冒頭に挙げた種類のヒートシンクが知られている。既知のヒートシンクは基体を有し、この基体からカーボンナノ構造ベースの繊維が互いに平行な配置で出ている。このヒートシンクは、基体と結合した物体の冷却に役立ち、その際、カーボンナノ構造ベースの繊維が冷媒によって貫流される。よって物体の熱が基体に、そこからカーボンナノ構造ベースの繊維に、続いて冷媒に達する。
【0003】
このようなヒートシンクは、電気工学において、とりわけパワーエレクトロニクスにおいて、例えばパワー半導体に発生する熱を放散するために用いられ得る。まさにパワーエレクトロニクスの分野で、とりわけ最新のインバータでは、設置形状が小さくて高効率のヒートシンクが求められている。本発明は、簡単な製造および小さな設置形状の場合に、それにもかかわらず非常に大きな表面積をもつ構造が提供され、したがって大きな熱量が問題なく放散され得るヒートシンクに関する。
【発明の概要】
【0004】
本発明によるヒートシンクは、基体と、少なくとも何本かが熱放散のために基体に固定されている複数のカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)、とりわけカーボンナノ管(CNT)またはグラフェン繊維とを備えており、これに関しては、繊維が相互の付着もしくは支持に基づいて、とりわけ脱脂綿、フェルト、もしくは繭の形状の体積構造体を形成しているか、または繊維がループもしくは三次元織物を形成している。本発明は、カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)、とりわけカーボンナノチューブ(CNT)またはグラフェン繊維の特殊な特性を活用しており、この特性は、非常に良好な熱伝導性である。繊維の体積構造体、繊維のループ、または三次元織物に基づいて、非常に大きな表面積が提供され、したがって繊維は非常に効率的に、好ましくは流れている冷媒に熱を放出でき、この冷媒は繊維を包囲または貫流する。とりわけ冷媒は冷却液であり得る。繊維がお互いに触れ合っており、これによりある種の付着もしくは支持が存在している体積構造体により、または繊維のループ構造により、または三次元織物の織物構造により、前述の大きな表面積が提供されるだけでなく、同時に比較的丈夫な機械的構造が生成され、したがって、流れている冷媒も繊維をまったくまたは僅かにしか変形させない。むしろ前述の構造に基づいて、冷媒の流れの非常に良好な渦流が引き起こされ、これが放熱を改善させる。前述の繊維相互の「付着」とは、基本的には接着またはそれに類することではなく、例えば2本の触れ合う繊維間に存在するある種の摩擦抵抗のことである。とはいえ別の一形態によれば、例えば追加的な物質、例えばある種の接着剤またはその類似物を用いた2本の触れ合う繊維の結合も、前述の付着と理解され得る。はんだ付け箇所も考えられる。基体は、冷却すべき物体、好ましくは少なくとも1つのパワー半導体と熱工学的に結合している。
【0005】
本発明の一変形形態によれば、繊維は、少なくとも一部の領域では秩序正しい構造および/または少なくとも一部の領域では無秩序な構造を形成していることが企図される。脱脂綿状の体積構造体の場合には無秩序な構造が存在している。相応のことが、フェルトまたは繭に当てはまる。ループ状に延びている繊維の場合、むしろ秩序正しい構造を前提とし得る。同じことが、前述の織物に当てはまり、なぜならそこでは特定の織り目パターンが絶えず繰り返されるからである。
【0006】
本発明の一変形形態は、基体に対して間隔をあけており、かつ繊維の少なくとも何本かが固定されている対向体を設けている。基体および対向体での繊維の固定により、繊維構造全体が機械的に特に良く保持され、したがって流れている冷媒による望ましくない変形は起こり得ない。この場合、冷媒は基体と対向体の間を流れ、したがって間にある繊維によって熱が放散される。対向体も熱を放散し得ることが好ましい。
【0007】
基体および/または対向体での固定は、はんだ付け箇所、接着箇所、および/または鋳包み箇所として形成されることを企図するのが好ましい。基体および/または対向体は例えば板状に形作ることができ、その際、この板の表面で繊維の前述の固定が行われるか、または基体および/もしくは対向体を製造する際に鋳造工程により繊維の一区間が一緒に鋳包まれる。
【0008】
とりわけ、ループは端部領域を有することができ、かつループの端部領域の少なくとも幾つかが、基体および/または対向体の表面/中に固定され得ることが企図される。この端部領域は、ループの始点および/もしくは終点であってよく、またはループの折り返し領域であってもよい。
【0009】
繊維が少なくとも一部の領域では相互に圧縮されることを企図するのが好ましい。製造の際、例えば繊維の脱脂綿状の構造が生成され、続いてより丈夫な構造が生じるように圧縮され、ただしこの圧縮は、冷媒のための貫流経路が閉じすぎるほど強くは実施されない。
【0010】
流れている冷媒に対する特別の抵抗を提供するために、繊維の少なくとも何本かが、機械的に安定させるコーティングを備えることが企図され得る。同じ理由から、本発明の別の一変形形態によれば、とりわけ金属および/または好ましくはさらなるカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)、とりわけカーボンナノ管(CNT)もしくはグラフェン繊維から成っており、繊維を支持する少なくとも1つの支持構造を設けることができる。したがって支持構造は、とりわけ金属構造または繊維構造であり、この繊維構造もまた(とりわけ別の)カーボンナノ構造ベースの繊維、つまりカーボンナノチューブから成っている。
【0011】
一変形形態は、少なくとも1つの支持構造が、格子状に形成されており、かつ基体および/または対向体での固定に役立つことを企図し、これに関してはとりわけ、支持構造が基体および/または対向体の中に鋳包まれることが企図され得る。
【0012】
三次元織物は、織物の織り目の種類および/または織物の織り目幅により、機械的に安定していることを企図するのが好ましい。この織り目からもたらされる安定化によっても、カーボンナノ構造ベースの繊維、とりわけカーボンナノチューブが変形に対して機械的に保護される。
【0013】
繊維の少なくとも何本かが、とりわけ平面的な、繊維および/またはさらなるカーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)、とりわけカーボンナノ管(CNT)もしくはグラフェン繊維によって構成された繊維土台から出ていることが企図できる。この繊維土台は、とりわけ基体および/もしくは対向体の表面に固定でき、または基体および/もしくは対向体の中に鋳包まれ得る。
【0014】
とりわけ、前述の繊維土台は織物として形成され得る。
本発明の一変形形態は、繊維の少なくとも何本かが、基体から対向体へと、この両方の部品の間のできるだけ大きな繊維長を達成するために90°ではない角度で延びており、かつ/または90°の角度で延びていることを企図する。基体と対向体の間の繊維長が大きければそれだけ、1本の繊維がより多くの熱を放散し得る。
【0015】
図面は例示的実施形態に基づいて本発明を図解している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ループ状のカーボンナノ構造ベースの繊維を備えたヒートシンクの一領域を示す図である。
図2図1のヒートシンクの領域を対向体の一領域と共に示す図である。
図3】単一フィラメントの形態およびループの形態でのカーボンナノ構造ベースの繊維を備えたヒートシンクの一領域を示す図である。
図4】繊維土台と、例えば脱脂綿またはフェルトまたは繭の形状の体積構造体の形態でのカーボンナノ構造ベースの繊維とを備えたヒートシンクの一領域を示す図である。
図5】実質的に繊維土台に対して直角にまたは繊維土台に対して斜めに延びているフィラメントを備えたヒートシンクの2つのバリエーションの領域を示す図である。
図6】格子状の支持構造と、ループ状に延びている繊維とを備えたヒートシンクの一領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、基体2と、カーボンナノ構造ベースの繊維3、とりわけカーボンナノチューブ4(カーボンナノ管もしくはカーボンナノ小管とも呼ばれる)またはその代わりにグラフェン繊維とを備えたヒートシンク1を示している。ヒートシンク1と、動作中は冷却しなければならないパワーエレクトロニクス部品とが熱工学的に結合されている(不図示)。矢印5によって示唆した冷媒、例えば冷却液は、ヒートシンク1に沿って、とりわけカーボンナノチューブ4の延び方向を横切って流れる。パワーエレクトロニクス部品の熱が基体2へ移り、そこからカーボンナノチューブ4へ伝導され、そして冷媒によって放散される。カーボンナノチューブ4は、例えばメアンダ状の構造を形成するループ6として延びており、このループ6の端部領域7は基体2の中に埋め込まれている。この埋込は、基体2を作製する際に鋳包みによって行われることが好ましい。基体2は、熱を通しやすい材料、とりわけ金属から成ることが好ましい。カーボンナノチューブ4のループ構造により、カーボンナノチューブ4は、流れている冷媒に対して良好な機械的安定性を有しており、したがって流れによって変形しない。さらに、ループ形状は、大きな表面積が生ずることになるので、非常に良好な熱伝達をもたらす。
【0018】
図2およびこれ以降のすべてのほかの図では、図1と同じ符号が同じ部分に対して使用されており、よって再び詳しく解説を行う必要がない。というよりむしろ相応のことが当てはまる。図2のヒートシンク1のこの領域は、図1と同様の構造をしており、ただしそれに加えて基体2に対し、間隔をあけて対向体8が向かい合っており、しかもループ6の端部領域9がこの対向体8に固定されており、好ましくはこの対向体8の中に鋳包まれている。これによりループ6は両端で保持されており、それにより、さらに良好な機械的安定性が付与されている。基体2および/または対向体8でのカーボンナノチューブ4の固定は、別のやり方で、例えばはんだ付け箇所または接着箇所の形態でも行われ得る。
【0019】
図3は、カーボンナノチューブ4に関して単一フィラメント10もループ6も有するヒートシンク1の一領域を示している。その代わりに、単一フィラメント10だけまたはループ6だけを有するヒートシンク1が存在していてもよい。単一フィラメント10は、それぞれある種の棒状の形成を有している。図3の例示的実施形態では、カーボンナノチューブ4は繊維土台11から出ており、繊維土台11は、基体2の表面に固定されているかまたは基体2の中に埋め込まれている(不図示)。カーボンナノチューブ4が、繊維土台11も、単一フィラメント10またはループ6も形成していることが好ましい。繊維土台11が、カーボンナノチューブ4の絡み合ったまたは織り合わさった領域の形態で形成され得ることが好ましい。
【0020】
図4は、同様に繊維土台11が存在するヒートシンク1の一領域を示しており、繊維土台11は、実質的に平面状の織物として形成されることが好ましい。図3の例示的実施形態と同様に、繊維土台11は、基体2の中に埋め込まれているかまたは基体2の表面に固定されている(不図示)。図4のヒートシンク1は、この例示的実施形態では体積構造体12を形成しているカーボンナノ構造ベースの繊維3、とりわけカーボンナノチューブ4またはグラフェン繊維をさらに有しており、この繊維は、相互の付着または支持に基づいて接触しており、したがってとりわけ脱脂綿、フェルト、または繭の形状の体積構造体12が存在している。この体積構造体12は、カーボンナノチューブ4の非常に大きな表面積をもたらしており、かつ安定した機械的構造ももたらしている。1つの特殊な例示的実施形態によれば、カーボンナノ構造ベースの繊維3は、さらにコンパクトな、したがって丈夫な、ただし冷媒のための十分な流動経路は開いたままの構造を達成するために、少なくとも一部の領域で相互に圧縮されることを企図し得る。
【0021】
図5の例示的実施形態では、左側に、既に図3の左側から明らかであるような構造、つまり単一フィラメント10を備えた構造を示しており、この単一フィラメント10は、好ましくは部分的に繊維土台11の中に組み込まれており、ただし「自由な領域」が冷媒の流動経路内に存在しており、この場合、図5図3に対する違いは、繊維土台11に向かい合った側にもさらなる繊維土台13が存在していることにあり、繊維土台13はカーボンナノ構造ベースの繊維3の端部領域によって形成されており、したがって総括すると、自由な繊維領域が両端で支持されており、それゆえ冷媒の流れによって変形しない。図5の右側には、図5の左側から明らかであるようなヒートシンク1の相応の一例を示しており、ただしこの両方のバリエーションの違いは、左側では自由な繊維領域が、とりわけ冷媒5の流れに対して垂直であり、したがって両方の繊維土台11または13に実質的に直角に立っており、しかしながら図5の右側ではこの自由な繊維領域が冷媒の流れに対して斜めに延びており、つまりそれぞれの繊維土台11または13と90°ではない角度を挟んでいることにある。これにより図5の右側では、左側の例示的実施形態より長い自由な繊維長が生じており、それにより冷媒の流れの中のより大きな表面積が提供されている。
【0022】
図6は、同様に基体2および対向体8が存在するヒートシンク1の一領域の1つの例示的実施形態を明らかにしており、ただしこの両方の部品が示されているのではなく、それぞれ格子状の支持構造14または15だけが図示されており、この支持構造14、15は、カーボンナノ構造ベースの繊維3、とりわけカーボンナノチューブ4から形成され得ることが好ましい。この両方の支持構造14、15は、基体2および/または対向体8の表面に固定されているかまたはそこで鋳包まれており、かつその間に延びているカーボンナノ構造ベースの繊維3、とりわけカーボンナノチューブ4の端部領域7および9を受け止めている。支持構造14および15は、安定させるように作用している。とりわけ、この支持構造が固定または鋳包みを改善している。両方の支持格子14および15が相互に結合していてもよい。これは相応の結合部16によって行われ、図6では結合部16の1つだけを例示的に示している。これにより、両方の支持構造14と15の間隔が保たれる。両方の支持構造14および15は金属から成っていてもよく、つまり金属格子であり得る。
【0023】
すべての例示的実施形態についてさらに言及すべきは、そこではしばしば1本のカーボンナノ構造ベースの繊維3または数本のカーボンナノ構造ベースの繊維3しか図示されていないということである。すべてが整ったそれぞれのヒートシンク1では、大きな表面積を達成するために、もちろん非常に大きな数のカーボンナノ構造ベースの繊維3が、とりわけ3次元の配置で設けられている。
【0024】
図5の例示的実施形態(左も右も)ではそれぞれ、この場合には実質的に互いに平行に延びているカーボンナノ構造ベースの繊維3の秩序正しい構造が存在している。図4の例示的実施形態ではまったく違う構造、詳しくは無秩序な構造が存在している。
【0025】
これについて、様々な例示的実施形態で、カーボンナノ構造ベースの繊維3の少なくとも何本かが、機械的に安定させるコーティングを備えることが企図され得る。これによっても、カーボンナノ構造ベースの繊維3は、冷却された媒体の流れの中で比較的安定し続け、かつ曲がってしまうことがあまりない。例えば、銅または別の金属から成るコーティングが施され得る。
【0026】
とりわけ図4の例示的実施形態では、脱脂綿、フェルト、または繭の形状の体積構造体12の代わりに、次のことを企図し得る。すなわち、三次元織物が存在すること、つまり体積構造体12が、カーボンナノ構造ベースの繊維3によって織られて、その後、少なくとも片側で基体2の中に埋め込まれるかまたはそこで固定され、その際、その代わりに、これを図4に示しているように繊維土台11を使って行うこともでき、この繊維土台11が、好ましくはカーボンナノ構造ベースの繊維3で織った構造として作製されることである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】