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特表2022-506951複数の部位に注入するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】複数の部位に注入するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20220107BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20220107BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61M5/315 502
A61M5/32 510H
A61M5/31 534
A61M5/315 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525107
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 US2019061313
(87)【国際公開番号】W WO2020102446
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/760,273
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264424
【氏名又は名称】クリーデンス メドシステムズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Credence MedSystems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シャンリー,コナー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】シュルザス,アラン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルン,ミナ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,スティーヴン エイチ.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066FF06
4C066GG16
4C066HH02
4C066HH13
4C066HH18
4C066HH22
(57)【要約】
注入用システムはシリンジ本体を含み、このシリンジ本体は、近位端および遠位端、シリンジ内部、その近位端にあるシリンジフランジを有する。このシステムは、シリンジ内部に配置された注入可能な流体も含む。このシステムは、シリンジフランジに結合されたフィンガフランジをさらに含む。さらに、このシステムは、シリンジ内部に配置されたストッパ部材を含む。さらに、このシステムは、ストッパ部材に結合されたプランジャラチェット部材を含む。このシステムは、プランジャラチェット部材の少なくとも一部の周りに同軸上に配置されて、それに動作可能に結合されたプランジャ管も含む。
【選択図】図56
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入用システムであって、
シリンジ本体であって、近位端および遠位端、シリンジ内部、および前記近位端にあるシリンジフランジを有するシリンジ本体と、
前記シリンジ内部に配置された注入可能な流体と、
前記シリンジフランジに結合されたフィンガフランジと、
前記シリンジ内部に配置されたストッパ部材と、
前記ストッパ部材に結合されたプランジャラチェット部材と、
前記プランジャラチェット部材の少なくとも一部の周りに同軸上に配置され、前記プランジャラチェット部材に動作可能に結合されたプランジャ管とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記シリンジ本体に遠位端で結合された針ハブアセンブリをさらに含み、この針アセンブリが、非引込み式の針およびルアーハブを含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記針が、30g針、32g針、34g針、およびサブ34g針からなる群のなかから選択されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャラチェット部材が、
プランジャ内部に配置された針保持特徴部と、
前記プランジャ内部に配置されたエネルギー蓄積部材と、
前記プランジャ内部に配置されたエネルギー蓄積部材のラッチ部材とを含み、
前記システムがさらに、前記シリンジ本体に遠位端で結合された針ハブアセンブリを含み、この針アセンブリが、
針近位端特徴部を有する針と、
ハブと、
前記針が前記ハブに対して近位方向に移動するのを選択的に防止するように構成された針ラッチ部材とを含み、
前記プランジャ管の操作に応じて、前記エネルギー蓄積部材のラッチ部材がラッチされた状態からラッチされていない状態に変換され、それにより前記針を前記プランジャ内部に少なくとも部分的に引き込み可能となっていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記針が、前記ストッパ部材を完全に貫通して、前記プランジャ内部に少なくとも部分的に引き込まれるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記エネルギー蓄積部材が、前記プランジャラチェット部材の内面と前記針保持特徴部との間で相互に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記プランジャラチェット部材が、その外面に配置された複数の歯を備え、
前記プランジャ管の遠位端が、前記複数の歯の各々と干渉して、前記プランジャラチェット部材に対する前記プランジャ管の近位方向の移動を防止するように構成された縮径部を有し、
前記エネルギー蓄積部材のラッチ部材は、前記プランジャ管の縮径部が前記複数の歯のうち最も近位側の歯を越えて遠位方向に移動した後に、ラッチされた状態からラッチされていない状態に変換されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記針が、30g針、32g針、34g針、およびサブ34g針からなる群のなかから選択されていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管の近位端に結合されたサムパッドをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャラチェット部材が、その外面に配置された複数の歯を備え、
前記プランジャ管の遠位端が、前記複数の歯の各々と干渉して、前記プランジャラチェット部材に対する前記プランジャ管の近位方向の移動を防止するように構成された縮径部を有することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
ラッチを有するラチェット保持部材をさらに備え、前記ラッチが、前記プランジャラチェット部材の複数の歯と干渉して、前記ラチェット保持部材に対する前記プランジャラチェット部材の近位方向の移動を制限するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記ラチェット保持部材が、その両側に配置された一対の弾性ラッチを備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記ラチェット保持部材が、金属シートから形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、前記ラチェット保持部材を保持するためのサイズおよび形状の空間を規定することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、前記空間に通じる側部開口部も規定することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムにおいて、
歯のピッチが、歯毎に一貫した注入用量を提供するようにサイズ設定されていることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記複数の歯が、10本の歯から構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記縮径部が、前記プランジャ管の長手方向軸に向けられた複数のリーフを含むことを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、
前記複数のリーフが、4つのリーフから構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管をその近位位置から遠位位置に移動させることで、前記シリンジ内部から一定量の流体が放出されることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、遠位ストッパ面を有し、この遠位ストッパ面が、遠位位置を越える前記プランジャ管の遠位方向への移動を制限して、前記シリンジ内部から前記一定量を超える流体が放出されるのを防止するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムにおいて、
前記一定量が、約0.1mlであることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ストッパ部材が、既製のストッパ部材であることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記シリンジ本体が、既製のシリンジ本体であることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャラチェット部材が、その近位端に駆動凹部を規定することを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、
前記プランジャ管の一部の周りに同軸上に配置された近位方向に延びる管と、
前記プランジャ管を遠位位置から近位位置へと付勢するように構成された戻りバネとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管が、前記フィンガフランジの前記近位方向に延びる管に対する前記プランジャ管の遠位方向の移動を制限するように構成された近位フランジを備えることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項26に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管が、前記プランジャ管の長手方向軸から離れる方向に向けられた複数のタブを備え、
前記フィンガフランジの前記近位方向に延びる管が、前記複数のタブと干渉して、前記フィンガフランジの前記近位方向に延びる管に対する前記プランジャ管の近位方向の移動を制限するように構成された対応する複数の窓を規定することを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管が、前記シリンジ本体内で同軸上に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項1に記載のシステムにおいて、
プライミングスクリュをさらに備え、このプライミングスクリュが、前記プランジャラチェット部材を前進させて、前記シリンジ内部から空気を除去するとともに、前記シリンジ内部から前記注入可能な流体の一部を放出するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、レバーを備え、
前記プランジャラチェット部材が、前記レバーに動作可能に結合され、
前記プランジャ管が、前記レバーに動作可能に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管が、前記シリンジ本体内で同軸上に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項31に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、前記プランジャ管を前記レバーに結合するリンクをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項31に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、前記レバーに動作可能に結合されたバネをさらに含み、
前記レバーが、近位位置および遠位位置を有し、
前記バネが、前記レバーを近位位置に付勢することを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項34に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管が、前記レバーの近位位置に対応する近位位置と、前記レバーの遠位位置に対応する遠位位置とを有することを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記バネが、前記プランジャ管を近位位置に付勢することを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管をその近位位置から遠位位置に移動させることで、前記レバーをその近位位置から遠位位置に移動させ、前記プランジャラチェット部材を前記フィンガフランジに対して遠位方向に移動させることを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項37に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、遠位ストッパ面を有し、この遠位ストッパ面が、遠位位置を越える前記プランジャ管の遠位方向への移動を制限して、前記シリンジ内部から一定量を超える流体が放出されるのを防止するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項39】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管をその近位位置から遠位位置まで第1の距離だけ移動させることにより、前記プランジャラチェット部材を前記フィンガフランジに対して遠位方向に第2の距離だけ移動させ、それにより、前記シリンジ本体から前記注入可能な流体を吐出することを特徴とするシステム。
【請求項40】
請求項39に記載のシステムにおいて、
前記第2の距離に対する前記第1の距離の比が、1~5の範囲にあることを特徴とするシステム。
【請求項41】
請求項40に記載のシステムにおいて、
前記第2の距離に対する前記第1の距離の比が、約2.5であることを特徴とするシステム。
【請求項42】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管に第1の力を加えると、前記プランジャラチェット部材に第2の力が加わり、前記第1の力に対する前記第2の力の比が力比であることを特徴とするシステム。
【請求項43】
請求項42に記載のシステムにおいて、
前記力比が、1~5の範囲内であることを特徴とするシステム。
【請求項44】
請求項43に記載のシステムにおいて、
前記力比が、約2.5であることを特徴とするシステム。
【請求項45】
請求項42に記載のシステムにおいて、
前記力比が、針を通して粘性のある薬剤を注入するために前記プランジャ管に加えられる力の大きさを減少させることを特徴とするシステム。
【請求項46】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ管がその近位位置にあるときに、前記プランジャ管および前記プランジャラチェット部材が前記プランジャ管の近位端に空間を規定することを特徴とするシステム。
【請求項47】
注入用システムを組み立てる方法であって、
プレフィルドシリンジにフィンガフランジを取り付けるステップであって、前記プレフィルドシリンジが、
シリンジ内部を規定するシリンジ本体と、
前記シリンジ内部に配置された注入可能な流体と、
前記シリンジ内部に配置され、前記シリンジ内部に前記注入可能な流体を保持するストッパ部材とを備え、前記フィンガフランジが、近位開口部を有するプランジャ管を含む、ステップと、
前記プランジャラチェット部材を、前記近位開口部から前記プランジャ管内に挿入するステップと、
前記プランジャラチェット部材を、前記シリンジ内部で前記ストッパ部材に結合するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法において、
前記プランジャ管の近位開口部にサムパッドを被せるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項47に記載の方法において、
前記プランジャラチェット部材が、その外面に配置された複数の歯を備え、
前記プランジャ管の遠位端が、前記複数の歯の各々と干渉して、前記プランジャラチェット部材に対する前記プランジャ管の近位方向の移動を防止するように構成された縮径部を有し、
当該方法がさらに、
前記複数の歯のうちの最も遠位側の歯が前記縮径部を越えて遠位方向に移動して、前記プランジャ管および前記フィンガフランジに対する前記プランジャラチェット部材の近位方向の移動を制限するまで、前記近位開口部を介して前記プランジャ管内にプランジャラチェット部材を挿入するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項47に記載の方法において、
前記フィンガフランジが、
同軸上に配置された近位方向に延びる管と、
前記プランジャ管を遠位位置から近位位置に付勢するように構成された戻りバネとを備え、
当該方法が、前記近位方向に延びる管内に前記プランジャ管を挿入して、前記戻りバネを圧縮するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項47に記載の方法において、
前記フィンガフランジが、
レバーと、
前記レバーに動作可能に結合されたリンクとを備え
当該方法が、前記フィンガフランジ内に前記プランジャ管を挿入し、それにより前記リンクを介して前記プランジャ管を前記レバーに動作可能に結合するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャラチェット部材が、滑らかな外面を有し、
前記プランジャ管が、一対の内向きに付勢された部材を備え、前記一対の内向きに付勢された部材が、前記プランジャ管に対する前記プランジャラチェット部材の遠位方向の移動を許容する一方で、前記プランジャ管に対する前記プランジャラチェット部材の近位方向の移動を阻止するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項53】
請求項52に記載のシステムにおいて、
前記一対の内向きに付勢された部材が、前記プランジャラチェット部材の表面を変形させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項54】
注入用システムであって、
シリンジ本体であって、近位端および遠位端、シリンジ内部、および前記近位端にあるシリンジフランジを有するシリンジ本体と、
前記シリンジフランジに結合されたフィンガフランジであって、プランジャ戻りバネを含むフィンガフランジと、
前記シリンジ内部に配置されたストッパ部材と、
前記ストッパ部材に結合されるとともに、前記プランジャバネに動作可能に結合されたプランジャ部材とを備え、
前記プランジャ部材が、近位位置および遠位位置を有し、
前記プランジャバネが、前記プランジャ部材を近位位置に付勢することを特徴とするシステム。
【請求項55】
請求項54に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材が近位位置にあるとき、前記ストッパ部材および前記シリンジ本体が、遠位チャンバを規定し、
前記プランジャ部材が近位チャンバを有し、
前記ストッパ部材および前記プランジャ部材の遠位端が、近位側の一方向弁を形成し、この一方向弁が、前記プランジャ部材が近位位置にあるときに前記近位チャンバおよび前記遠位チャンバを流体的に結合し、前記プランジャ部材が遠位位置にあるときに前記近位チャンバを前記遠位チャンバから流体的に分離するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項56】
請求項55に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材が遠位位置にあるときに、前記遠位チャンバと前記シリンジ本体の遠位端にある開口部とを流体的に結合し、前記プランジャ部材が近位位置にあるときに、前記遠位チャンバを前記開口部から流体的に分離するように構成された遠位側の一方向弁をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項57】
請求項56に記載のシステムにおいて、
前記ストッパ部材が、空間を規定し、前記プランジャ部材の遠位端が、前記プランジャ部材を前記ストッパ部材に移動可能に結合するために、前記空間内に移動可能に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項58】
請求項56に記載のシステムにおいて、
前記遠位側の一方向弁が、球状部材と、前記遠位側の一方向弁を閉じるために前記球状部材を近位位置に付勢する弁バネとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項59】
請求項56に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材を遠位位置から近位位置に移動させることにより、前記遠位側の一方向弁を閉じ、前記近位側の一方向弁を開いて、前記近位チャンバ内の流体が前記遠位チャンバ内に流入することを可能にすることを特徴とするシステム。
【請求項60】
請求項56に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材を近位位置から遠位位置に移動させることにより、前記近位側の一方向弁を閉じ、前記遠位側の一方向弁を開いて、前記遠位チャンバ内の流体が前記シリンジ本体の遠位開口部から流出することを可能にすることを特徴とするシステム。
【請求項61】
請求項56に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材を近位位置から遠位位置に移動させることにより、前記遠位チャンバから一定量の流体が前記シリンジ本体の遠位開口部より放出されることを特徴とするシステム。
【請求項62】
請求項61に記載のシステムにおいて、
前記一定量が、約0.1mlであることを特徴とするシステム。
【請求項63】
請求項55または56に記載のシステムにおいて、
前記針が、30g針、32g針、34g針、およびサブ34g針からなる群のなかから選択されていることを特徴とするシステム。
【請求項64】
請求項54に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材の近位端に結合されたサムパッドをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項65】
請求項54に記載のシステムにおいて、
前記シリンジ本体が、既製のシリンジ本体であることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して流体注入に対する様々なレベルの制御を容易にするための注入システム、デバイスおよびプロセスに関し、より詳細には、医療環境においてマイクロリットル範囲の用量の流体を送達するためのシリンジに関連するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1Aの符号2に示すような数百万ものシリンジが、医療環境で毎日消費されている。典型的なシリンジ2は、管状本体4、プランジャ6および注射針8を含む。図1Bに示すように、そのようなシリンジ2は、患者に流体を注入するだけでなく、薬瓶、バイアル、バッグまたは他の薬剤封入システム10などの容器から流体を引き出すか、またはそれら容器内に流体を排出するために利用することもできる。実際、米国などの一部の国では、無菌状態の維持に関する懸念と、規制上の制約により、特定の患者の環境に示すように、シリンジ2と一緒に薬瓶10を使用した場合、そのような薬瓶は、単一の患者に対してのみ使用され、その後、処分しなければならず、それにより薬瓶や残りの薬剤の廃棄物から多くの医療廃棄物がもたらされ、特定の重要な薬剤の周期的な不足の原因にもなる。
【0003】
図2Aを参照すると、3本のルアー型シリンジ12が示されており、それぞれが、遠位側に配置されたルアー継手形状14を有し、それらが、図2Bに示すルアーマニホールドアセンブリ16などの同様の継手形状を有する他のデバイスと結合されるようになっている。図2Bのルアーマニホールドアセンブリは、静脈内注入バッグの使用の有無にかかわらず、患者に液体薬剤を静脈内投与するために使用することができる。図2Aのシリンジのルアー継手14は、「雄」ルアー継手と呼ばれ、図2Bのルアー継手18は、「雌」ルアー継手と呼ばれることもあり、ルアーインターフェースの一方は、ネジ山が形成されて(この場合、その構成を「ルアーロック」構成と称することもある)、両者が相対的な回転により結合され、それが圧縮荷重と組み合わされる場合もある。言い換えれば、ルアーロックの一実施形態では、回転が、おそらく圧縮とともに、雄継手14のネジ山を係合させるために利用され、このネジ山は、雌継手18上のフランジと係合して、デバイスを流体封入された結合状態とするように構成されている。別の実施形態では、ネジ山または回転を用いることなく、圧縮を使用してルアー係合を提供するために、テーパ状のインターフェース形状が利用されることもある(そのような構成は、「スリップオン」または「円錐」ルアー構成と称することもある)。そのようなルアー結合は、オペレータにとって比較的安全であると認識されているが、ルアー結合を提供するためのローディング中に薬がこぼれたり、漏れたり、部品が破損したりする危険性がある。一方、針注入構成を使用すると、鋭い針が人や望ましくない構造物に接触したり、突き刺したりする危険性がある。このような理由から、いわゆる「安全シリンジ」が開発されてきた。
【0004】
安全シリンジ20の一実施形態が、図3に示されており、この実施形態では、管状のシールド部材22が、シリンジ本体4に対してロック位置から解放されたときに、針8を覆うようにバネ付勢されている。安全シリンジ24の別の実施形態が、図4Aおよび図4Bに示されている。この構成では、シリンジ本体4に対してプランジャ6が完全に挿入された後、図4Bに示すように、引き込み可能な針26が、管状本体4内の安全位置に引き込まれる(28、26)ように構成されている。それ自体に納めるように構成されたそのような形態は、血液の飛び散り/エアロゾル化の問題や、誤作動して作動が早過ぎる可能性のある予め載荷されたエネルギーの安全な貯蔵、バネ圧縮体積内の残留デッドスペースに起因する全用量注射を与える際の精度の喪失、および/または痛みや患者の不安に関連し得る引き込み速度制御の喪失に関連する可能性がある。
【0005】
図5Aおよび図5Bに示すようなプレフィルドシリンジアセンブリに対する需要の増加により、シリンジ市場がさらに複雑化しており、それらは一般に、シリンジ本体または「薬剤封じ込め送達システム」34と、プランジャ先端、プラグまたはストッパ36と、ルアー型インターフェースに取り付けられた遠位シールまたはキャップ35とを含む(図5Aは定位置にあるキャップ35を示しているが、図5Bはルアー型インターフェース14を例示するために、キャップを取り外してある)。液体薬剤は、遠位シール35とストッパ部材36の遠位端37との間の容積または薬剤リザーバ40内にある。ストッパ部材36は、標準的なブチルゴム材料を含むことができ、関連するシリンジ本体34構造および材料に対する好ましいシールおよび相対運動特性を容易にするために、生体適合性潤滑性コーティング(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などでコーティングされている。図5Bのシリンジ本体34の近位端は、シリンジ本体34の材料と一体的に形成された従来の一体型シリンジフランジ38を含む。フランジ38は、シリンジ本体34から半径方向に延びるように構成されており、シリンジ本体34の周囲の全周または円周の一部となるように構成されている。部分的なフランジは、「クリップドフランジ」として知られており、他方のフランジは「フルフランジ」として知られている。フランジは、指でシリンジを把持するために使用され、プランジャを押して注射を行うための支持を提供する。シリンジ本体34は、好ましくは、ガラスまたはポリマーのような半透明の材料を含む。薬剤チャンバまたはリザーバ40内に封じ込められた容積を形成し、針を介した関連流体の排出を補助するために、ストッパ部材36をシリンジ本体34内に配置することができる。シリンジ本体は、ほぼ円筒形を(すなわち、円形の断面形状を有するプランジャ先端36がシリンジ本体に対してシールを確立するように)規定することができ、または楕円形などの他の断面形状を有するように構成することもできる。
【0006】
このようなアセンブリは、充填、包装および医薬品/薬剤インターフェーシング材料の選択とコンポーネントの使用に関する世界の絶え間なく変化する規制のすべてを満たす余裕のある世界で数少ない製造業者によって標準化され、正確に大量製造される可能性があるため、望ましい。しかしながら、そのような単純な構成では、一般的に、単回使用、安全性、自動無効化および針刺し防止に関する新しい世界基準を満たすことはできない。このため、特定のサプライヤは、1つのソリューションで規格のすべてまたはその少なくとも一部を満たそうとする、より「垂直」ソリューション、例えば、図5Cに示すようなもの41に移行してきており、多くの異なるシナリオでそれらの基準を満たそうとした結果、そのような製品には重大な制限があり(図3図4Bを参照して上述したような制限を含む)、在庫および使用費用が比較的高くなる可能性がある。
【0007】
一部の薬剤は、1回の処置中に患者の複数の部位に投与される。同時に、処置後は、針が露出したままになることがあり、不注意で針が刺さる可能性が高くなる。
【0008】
現在利用可能な構成の欠点を解決する注入システムが必要とされている。特に、1人の患者の複数の部位に流体を注入する注入システムが求められている。さらに、そのような複数部位注入システムで機能する安全な注入システムが必要とされている。また、そのようなシリンジアセンブリは、従来から提供されているプレフィルドカートリッジやその他の既製のコンポーネントの既存の比較的管理の行き届いたサプライチェーン、およびそれに対応する組立機械や人員を利用できることが望ましいとされている。
【発明の概要】
【0009】
実施形態は、注入システムを対象とする。特に、実施形態は、少なくともいくつかの既製のシリンジコンポーネントを含むマイクロリットル範囲の注入システムを対象とする。
【0010】
一実施形態では、注入用システムがシリンジ本体を含み、このシリンジ本体は、近位端および遠位端、シリンジ内部、その近位端にあるシリンジフランジを有する。このシステムは、シリンジ内部に配置された注入可能な流体も含む。このシステムは、シリンジフランジに結合されたフィンガフランジをさらに含む。さらに、このシステムは、シリンジ内部に配置されたストッパ部材を含む。さらに、このシステムは、ストッパ部材に結合されたプランジャラチェット部材を含む。このシステムは、プランジャラチェット部材の少なくとも一部の周りに同軸上に配置されて、それに動作可能に結合されたプランジャ管も含む。
【0011】
1または複数の実施形態では、本システムが、シリンジ本体に遠位端で結合された針ハブアセンブリも含み、針アセンブリが、非格納式の針およびルアーハブを含む。針は、30g針、32g針、34g針、およびサブ34g針からなる群のなかから選択することができる。
【0012】
1または複数の実施形態では、プランジャラチェット部材が、プランジャ内部に配置された針保持特徴部と、プランジャ内部に配置されたエネルギー蓄積部材と、プランジャ内部に配置されたエネルギー蓄積部材のラッチ部材とを含む。また、本システムは、シリンジ本体に遠位端で結合された針ハブアセンブリを含むことができる。針アセンブリは、針近位端特徴部を有する針と、ハブと、針がハブに対して近位方向に移動するのを選択的に防止するように構成された針ラッチ部材とを含むことができる。プランジャ管の操作に応じて、エネルギー蓄積部材のラッチ部材がラッチされた状態からラッチされていない状態に変換され、それにより針がプランジャ内部に少なくとも部分的に引き込み可能となっている。針は、ストッパ部材を完全に貫通して、プランジャ内部に少なくとも部分的に引き込まれるように構成することができる。エネルギー蓄積部材は、プランジャラチェット部材の内面と針保持特徴部との間で相互に結合されるものであってもよい。プランジャラチェット部材は、その外面に配置された複数の歯を含むことができる。プランジャ管の遠位端は、複数の歯の各々と干渉して、プランジャラチェット部材に対するプランジャ管の近位方向の移動を防止するように構成された縮径部を含むことができる。エネルギー蓄積部材のラッチ部材は、プランジャ管の縮径部が複数の歯のうち最も近位側の歯を越えて遠位方向に移動した後に、ラッチされた状態からラッチされていない状態に変換されるように構成されるものであってもよい。針は、30g針、32g針、34g針、およびサブ34g針からなる群のなかから選択することができる。
【0013】
1または複数の実施形態では、本システムが、プランジャ管の近位端に結合されたサムパッドも含む。プランジャラチェット部材は、その外面に配置された複数の歯を含むことができる。プランジャ管の遠位端は、複数の歯の各々と干渉して、プランジャラチェット部材に対するプランジャ管の近位方向の移動を防止するように構成された縮径部を含むことができる。
【0014】
1または複数の実施形態では、本システムが、ラッチを有するラチェット保持部材も備え、ラッチが、プランジャラチェット部材の複数の歯と干渉して、ラチェット保持部材に対するプランジャラチェット部材の近位方向の移動を制限するように構成されている。ラチェット保持部材は、その両側に配置された一対の弾性ラッチを含むことができる。ラチェット保持部材は、金属のシートから形成することができる。フィンガフランジは、ラチェット保持部材を保持するサイズおよび形状の空間を規定することができる。また、フィンガフランジは、空間に通じる側面開口部も規定することができる。歯のピッチは、歯毎に一貫した注入用量を提供するようにサイズ設定することができる。複数の歯は、10本の歯で構成することができる。縮径部は、プランジャ管の長手方向軸に向けられた複数のリーフを含むことができる。複数のリーフは、4つのリーフで構成することができる。
【0015】
1または複数の実施形態では、プランジャ管をその近位位置から遠位位置に移動させることで、シリンジ内部から一定量の流体が放出される。フィンガフランジは、遠位ストッパ面を含むことができ、この遠位ストッパ面が、遠位位置を越えるプランジャ管の遠位方向への移動を制限して、シリンジ内部から一定量を超える流体が放出されるのを防止するように構成されている。上記一定量は、約0.1mlであってもよい。ストッパ部材は、既製のストッパ部材であってもよい。シリンジ本体は、既製のシリンジ本体であってもよい。プランジャラチェット部材は、その近位端に駆動凹部を規定することができる。
【0016】
1または複数の実施形態では、フィンガフランジが、プランジャ管の一部の周りに同軸上に配置された近位方向に延びる管と、プランジャ管を遠位位置から近位位置へと付勢するように構成された戻りバネとを備える。プランジャ管は、フィンガフランジの近位方向に延びる管に対するプランジャ管の遠位方向の動きを制限するように構成された近位フランジを含むことができる。プランジャ管は、プランジャ管の長手方向軸から離れる方向に向けられた複数のタブを含むことができる。フィンガフランジの近位方向に延びる管は、複数のタブと干渉して、フィンガフランジの近位方向に延びる管に対するプランジャ管の近位方向の移動を制限するように構成された対応する複数の窓を規定することができる。プランジャ管は、シリンジ本体内で同軸上に配置することができる。また、本システムは、プライミングスクリュをさらに備えることができ、このプライミングスクリュが、プランジャラチェット部材を前進させて、シリンジ内部から空気を除去するとともに、シリンジ内部から注入可能な流体の一部を放出するように構成されている。
【0017】
1または複数の実施形態では、フィンガフランジがレバーを含み、プランジャラチェット部材がレバーに動作可能に結合され、プランジャ管がレバーに動作可能に結合されている。プランジャ管は、シリンジ本体内で同軸上に配置することができる。また、フィンガフランジは、プランジャ管をレバーに結合するリンクを含むことができる。また、フィンガフランジは、レバーに動作可能に結合されたバネを含むことができる。レバーは、近位位置と遠位位置とを有することができる。バネは、レバーを近位位置に付勢することができる。
【0018】
1または複数の実施形態では、プランジャ管が、レバーの近位位置に対応する近位位置と、レバーの遠位位置に対応する遠位位置とを有する。バネは、プランジャ管を近位位置に付勢することができる。プランジャ管をその近位位置から遠位位置に移動させると、レバーをその近位位置から遠位位置に移動させることができ、プランジャラチェット部材をフィンガフランジに対して遠位方向に移動させることができる。フィンガフランジは、遠位ストッパ面を含むことができ、この遠位ストッパ面が、遠位位置を越えるプランジャ管の遠位方向への移動を制限して、シリンジ内部から一定量を超える流体が放出されるのを防止するように構成されている。
【0019】
1または複数の実施形態では、プランジャ管をその近位位置から遠位位置まで第1の距離だけ移動させることにより、プランジャラチェット部材をフィンガフランジに対して遠位方向に第2の距離だけ移動させ、それによってシリンジ本体から注入可能な流体を吐出することができる。第2の距離に対する第1の距離の比は、1~5の範囲であってもよい。第2の距離に対する第1の距離の比は、約2.5であってもよい。
【0020】
1または複数の実施形態では、プランジャ管に第1の力を加えると、プランジャラチェット部材に第2の力が加わり、第1の力に対する第2の力の比が力比となる。力比は、1~5の範囲内であってもよい。力比は、約2.5であってもよい。力比は、粘性のある薬剤を針から注入するためにプランジャ管に加えられる力の大きさを減少させることができる。プランジャ管とプランジャラチェット部材は、プランジャ管がその近位位置にあるときに、プランジャ管の近位端に空間を規定することができる。
【0021】
1または複数の実施形態では、プランジャラチェット部材が、滑らかな外面を有し、プランジャ管が、一対の内向きに付勢された部材を備え、一対の内向きに付勢された部材が、プランジャ管に対するプランジャラチェット部材の遠位方向の移動を許容する一方で、プランジャ管に対するプランジャラチェット部材の近位方向の移動を阻止するように構成されている。一対の内向きに付勢された部材は、プランジャラチェット部材の表面を変形させるように構成することができる。
【0022】
別の実施形態では、注入用システムを組み立てる方法が、プレフィルドシリンジにフィンガフランジを取り付けるステップを含む。プレフィルドシリンジは、シリンジ内部を規定するシリンジ本体と、シリンジ内部に配置された注入可能な流体と、シリンジ内部に配置され、シリンジ内部に注入可能な流体を保持するストッパ部材とを含む。フィンガフランジは、近位開口部を有するプランジャ管を含む。本方法は、近位開口部を介してプランジャ管内にプランジャラチェット部材を挿入するステップも含む。本方法は、さらに、プランジャラチェット部材をシリンジ内部でストッパ部材に結合するステップを含む。
【0023】
1または複数の実施形態では、本方法が、プランジャ管の近位開口部にサムパッドを被せるステップをさらに含む。プランジャラチェット部材は、その外面に配置された複数の歯を含むことができる。プランジャ管の遠位端は、複数の歯の各々と干渉して、プランジャラチェット部材に対するプランジャ管の近位方向の移動を防止するように構成された縮径部を含むことができる。本方法は、複数の歯のうちの最も遠位側の歯が縮径部を越えて遠位方向に移動して、プランジャ管およびフィンガフランジに対するプランジャラチェット部材の近位方向の移動を制限するまで、近位開口部を介してプランジャ管内にプランジャラチェット部材を挿入するステップをさらに含むことができる。
【0024】
1または複数の実施形態では、フィンガフランジが、同軸上に配置された近位方向に延びる管と、プランジャ管を遠位位置から近位位置に付勢するように構成された戻りバネとを含む。本方法は、近位方向に延びる管内にプランジャ管を挿入して、戻りバネを圧縮するステップをさらに含むことができる。フィンガフランジは、レバーと、レバーに動作可能に結合されたリンクとを含むことができる。本方法は、プランジャ管をフィンガフランジ内に挿入し、それによりリンクを介してプランジャ管をレバーに動作可能に結合するステップをさらに含むことができる。
【0025】
さらに別の実施形態では、注入用システムがシリンジ本体を含み、このシリンジ本体が、近位端および遠位端、シリンジ内部、その近位端にあるシリンジフランジを含む。本システムは、シリンジフランジに結合されたフィンガフランジも含み、フィンガフランジは、プランジャ戻りバネを含む。このシステムはさらに、シリンジ内部に配置されたストッパ部材を含む。さらに、本システムは、ストッパ部材に結合されるとともに、プランジャバネに動作可能に結合されたプランジャ部材を含む。プランジャ部材は、近位位置と遠位位置とを有している。プランジャバネは、プランジャ部材を近位位置に付勢する。
【0026】
1または複数の実施形態では、プランジャ部材が近位位置にあるとき、ストッパ部材およびシリンジ本体が、遠位チャンバを規定する。プランジャ部材は、近位チャンバを有することができる。ストッパ部材およびプランジャ部材の遠位端は、近位側の一方向弁を形成することができ、この一方向弁が、プランジャ部材が近位位置にあるときに近位チャンバおよび遠位チャンバを流体的に結合し、プランジャ部材が遠位位置にあるときに近位チャンバを遠位チャンバから流体的に分離するように構成されている。また、本システムは、プランジャ部材が遠位位置にあるときに、遠位チャンバとシリンジ本体の遠位端にある開口部とを流体的に結合し、プランジャ部材が近位位置にあるときに、遠位チャンバを開口部から流体的に分離するように構成された遠位側の一方向弁も含むことができる。ストッパ部材は、空間を規定することができる。プランジャ部材の遠位端は、プランジャ部材をストッパ部材に移動可能に結合するために、空間内に移動可能に配置することができる。遠位側の一方向弁は、球状部材と、遠位側の一方向弁を閉じるために球状部材を近位位置に付勢する弁バネとを含むことができる。プランジャ部材を遠位位置から近位位置に移動させることで、遠位側の一方向弁を閉じ、近位側の一方向弁を開いて、近位チャンバ内の流体を遠位チャンバ内に流入させることができる。
【0027】
1または複数の実施形態では、プランジャ部材を近位位置から遠位位置に移動させることで、近位側の一方向弁を閉じ、遠位側の一方向弁を開いて、遠位チャンバ内の流体をシリンジ本体の遠位開口部から流出することを可能にする。プランジャ部材を近位位置から遠位位置に移動させると、遠位チャンバから一定量の流体をシリンジ本体の遠位開口部より放出することができる。上記一定量は、約0.1mlであってもよい。針は、30g針、32g針、34g針、およびサブ34g針からなる群のなかから選択することができる。本システムは、プランジャ部材の近位端に結合されたサムパッドも含むことができる。シリンジ本体は、既製のシリンジ本体であってもよい。
【0028】
本発明の上述した実施形態および他の実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
実施形態の上述した態様および他の態様は、添付図面を参照してさらに詳細に説明されており、それら図面においては、様々な図面中の同じ要素が共通の符号によって示されている。
図1図1Aおよび図1Bは、従来のシリンジ構成の様々な態様を示している。
図2図2Aおよび図2Bは、従来のシリンジ構成の様々な態様を示している。
図3図3は、従来のシリンジ構成の様々な態様を示している。
図4図4Aおよび図4Bは、従来のシリンジ構成の様々な態様を示している
図5図5A図5Cは、従来のシリンジ構成の様々な態様を示している。
図6図6は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図7図7は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図8図8は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図9図9は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図10図10は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図11図11は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図12図12は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図13図13は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図14図14は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図15図15A図15Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図16図16は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図17図17は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図18図18は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図19図19は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図20図20A図20Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図21図21は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図22図22は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図23図23A図23Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図24図24A図24Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図25図25は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図26図26は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図27図27は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図28図28は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図29図29は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図30図30は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図31図31は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図32図32は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図33図33は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図34図34は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図35図35は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図36図36は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図37図37は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図38図38は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図39図39は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図40図40は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図41図41Aおよび図41Bは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図42図42Aおよび図42Bは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図43図43は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図44図44は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図45図45は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図46図46は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図47図47A図47Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図48図48は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図49図49は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図50図50は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図51図51は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図52図52A図52Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図53図53は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図54図54は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図55図55は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図56図56は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図57図57は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図58図58は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図59図59Aおよび図59Bは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図60図60は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図61図61は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図62図62Aおよび図62Bは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図63図63は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図64図64は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図65図65は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図66図66は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図67図67は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図68図68は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図69図69は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図70図70は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図71図71は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図72図72は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図73図73は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
図74図74は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システムおよび複数部位注入方法の様々な態様を示している。
【0030】
様々な実施形態の上記および他の利点および目的を得る方法をより良く理解するために、添付の図面を参照しながら、実施形態のより詳細な説明を提供する。なお、図面は一定の縮尺で描かれておらず、同様の構造または機能の要素が、全体を通して同様の符号で示されていることに留意されたい。それらの図面は、特定の例示的な実施形態のみを示しており、よって実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示的な複数部位の注入システム
多くの注入可能な薬剤は、同一患者の複数の注入部位に投与することができる。一部の医療処置は、一定量(例えば、0.1mlおよび/またはマイクロドーズ量)の薬剤(例えば、ボツリヌス毒素または「ボトックス」)を患者の複数の注入部位に注入することを伴う。現在、多くの薬剤はバイアルから注入システムに取り込まれており、そのため処置時間が長くなり、意図しない突き刺しに対して針が露出することになる。さらに、一部の薬剤は粘性のある溶液で送達されるため、粘性のある薬剤を注入システムに引き込むために直径の大きい(例えば、ローゲージ:25g)針を使用し、注射のために直径の小さい(例えば、ハイゲージ:30g、32g、34g、サブ34g)針を使用する必要がある。このような針の交換は、処置時間の増加と意図しない刺し傷のリスクに繋がる。本明細書に記載の複数部位注入システムは、現行システムのそれらの問題を解決する。
【0032】
図6図15Cは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム500を示している。図6に示すように、システム500は、注入可能な薬剤を予め充填することができる。システム500は、シリンジ本体510と、針アセンブリ590と、ストッパ部材520と、プランジャ部材550と、フィンガフランジ540とを含む。これらのシステムコンポーネント(例えば、シリンジ本体510、ストッパ部材520および針部材590)の多くは、既製のコンポーネントであってもよく、既存の比較的よく管理されたサプライチェーン、および対応する組立機械および人員を利用することができる。シリンジ本体510は、ガラス、金属、またはCOC、COP、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの高分子材料、または他のシリンジ材料であってもよい。ストッパ部材520は、ブチル、クロロブチル、ブロモブチルなどのゴム、または熱可塑性エラストマなどの高分子材料であってもよい。ストッパ部材520は、PTFEまたは他のポリマーなど、保護および/または潤滑性のあるコーティングで覆われていてもよい。既製のストッパ部材520は、市販のストッパ部材を指しており、このストッパ部材は、針に結合するための突起または凹部を含まない概ね滑らかな遠位方向を向く表面を有する。また、システム500は、プランジャ部材550およびそれに結合されたストッパ部材520に遠位に向く力を加えるように構成されたプランジャ管560を含む。
【0033】
図7は分解図、図8および図9は詳細な斜視図、図10および図11は詳細な部分縦断面図であり、これらは何れも、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム500の様々な内部コンポーネントを示している。フィンガフランジ540は、ラチェット爪542、レバーアーム544、リンク546および戻りバネ548を含み、これらは全てフランジハウジング549内に収容されている。プランジャ管560は、アーム562およびサムパッド564を含む。プランジャ部材550は、複数の歯554を有するラチェット面552を含む。
【0034】
図8図11に示すように組み立てられると、サムパッド564は、プランジャ管560、アーム562、リンク546およびレバーアーム544を介して、ラチェット爪542に動作可能に結合される。このため、遠位に向く力がサムパッド564に加えられると、レバーアーム544が、遠位に向く力を増加させてラチェット爪542に伝達する。レバーアーム544の相対的な寸法に応じて、プランジャ管560およびプランジャ部材550が移動する距離の比は、約1~約5の何れかであってよい。一実施形態では、距離の比が約2.5:1である。同様に、サムパッド564に加えられる力と、ラチェット爪542に作用する力との力比は、約1~約5の何れかであってよい。一実施形態では、力比が約2.5:1である。
【0035】
戻りバネ548は、レバーを近位方向に付勢する。このため、ユーザがサムパッド564を押してプランジャ管560を遠位方向に移動させた後、サムパッド564上の圧力を解放すると、サムパッド564およびプランジャ562が近位位置に戻ることができる。図10および図11に示すように、ラチェット爪542は、その遠位端に縮径部543を含む。この縮径部543は、プランジャ部材550のラチェット面552に設けられた歯554と干渉し、これにより、ラチェット爪542は、プランジャ部材550に対して、近位方向には移動することができるが、遠位方向には移動することができない。遠位方向には、ラチェット爪542は、プランジャ部材550に力を加えることができる。図9に示すように、ラチェット爪542は、複数のスロット561をさらに含み、それらスロットは、プランジャ管560の戻り時に、縮径部543が半径方向に拡張して、ラチェット爪542が次の隣接するプランジャ部材550のラチェット歯554に係合することを可能にするように構成されている。戻りばね548がラチェット爪542を近位方向に移動させると、縮径部543およびスロット561は、ラチェット爪542がプランジャ部材550の上を近位方向に移動することを可能にするように構成されている。レバーアーム544は、ラチェット爪542を遠位位置から近位位置に移動させることで、その縮径部543をある1つの歯554から次の歯554に近位方向に移動させるように構成されている。これにより、プランジャ部材550は、1つの歯554の距離だけ遠位方向に移動する。システム500の様々なコンポーネントは、プランジャ部材550を1つの歯554の距離だけ遠位方向に移動させることで、シリンジ本体510の内部から予め設定された量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)の流体が放出されるように構成することができる。リブ/歯554間の間隔は、注入毎に一定の用量を送達するためにプランジャ部材550の長さ方向に沿って一定であってもよいし、注入毎に異なる用量を送達するためにプランジャ部材550の長さ方向に沿って変わるものであってもよい。その結果、ユーザは、サムパッド564を交互に押し下げたり離したりすることにより、シリンジ本体510内でプランジャ部材550を順次前進させて、予め設定された量の流体を放出することができる。
【0036】
図12図14は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム500の組立てを示している。図12において、プランジャ管560は、プランジャ管560のアーム562がレバーアーム544に取り付けられたリンク546と係合するまで、ラチェット爪542の周りを同軸上にフィンガフランジ500内に挿入される。フィンガフランジ540は、予め充填されて予め栓をしたシリンジ510にスナップ留めされる。その後、プランジャロッド550は、プランジャ管560を介してフィンガフランジ540内に挿入され、ストッパ部材520に結合される(例えば、ねじ込まれるか、押し込まれる)。次いで、サムパッド564がプランジャ管560にスナップ留めされて、組立てが完了する。図12図14に示すシステム500は、予め取り付けられた杭型の針592を含む。針592は、針シールド595で覆われた状態でエンドユーザに提供される。針シールド595は、ゴム製の内部針接触コンポーネントとプラスチック製の外部カバーから構成することができる。代替的な針は、ユーザが取り付けたルアータイプ、または予め取り付けられた格納式の安全針であってもよい。
【0037】
図13では、フィンガフランジ540の横方向の開口部がシリンジ本体510のガラスフランジ上にスライドして、フィンガフランジ540がシリンジ本体510に取り外し可能に結合される。プランジャ部材550は、ラチェット爪542の縮径部543がプランジャ部材550の最も遠位側の歯554と係合するまで、フィンガフランジ540、プランジャ管560およびラチェット爪542を介して挿入される。この係合は、縮径部543が長尺部材550の最も遠位側の歯554上を移動したことを示す、距離、音および/または触覚インジケータの何れかによって判定することができる。
【0038】
図14では、サムパッド564がプランジャ管560の近位端に結合されて、組立てが完了する。サムパッド564がプランジャ管560に結合された後、複数部位注入システム500は使用の準備が整う。針シールド595は、注入を行うために取り外されている。
【0039】
図15A図15Cは、図6図14に示す複数部位注入システム500を使用して、複数の用量(例えば、マイクロドーズ)のうちの第1の用量を注入する様子を示している。図15Aでは、複数部位注入システム500は組み立てられており、使用の準備ができている。戻りばね548は、レバーアーム542を近位位置に付勢している。プランジャ部材550は、最も遠位側の歯554Aが遠位方向に移動してラチェット爪542の縮径部543に係合するまで、挿入されている。
【0040】
図15Bは、ユーザが遠位に向く力をサムパッド564に加えた結果を示している。遠位に向く力は、プランジャ管562の遠位端のアーム562を介してリンク546に、そしてレバーアーム544に伝達され、レバーアームが、その近位位置(図15Aを参照)から遠位位置(図15Bを参照)に移動する。レバーアーム544がその近位位置から遠位位置に移動すると、ラチェット爪542が、フィンガフランジ540およびそれに結合されたシリンジ本体510に対して遠位方向に移動する。ラチェット爪542の縮径部543と最も遠位側の歯554Aとの間の干渉により、プランジャ部材550がラチェット爪542とともに遠位方向に移動する。ラチェット爪542およびプランジャ部材550は、プランジャ管560よりも短い距離だけ遠位方向に移動するため、プランジャ管560の近位端には、プランジャ管560がプランジャ部材550の上を遠位方向に移動する際に、プランジャ部材550の近位端が移動できるように収容する空間566が存在する。プランジャ部材550がシリンジ本体510に対して遠位方向に移動する際に、それに結合されたストッパ部材520もシリンジ本体510に対して遠位方向に移動し、それにより、固定用量の流体をシリンジ本体510から針アセンブリ590を介して放出することができる。
【0041】
図15Cは、サムパッド564から遠位に向く力をユーザが解放した結果を示している。戻りばね548は、レバーアーム544をその遠位位置(図15Bを参照)からその近位位置(図15Cを参照)に移動させる。レバーアーム544が近位方向に移動すると、ラチェット爪542およびプランジャ管560の両方が近位方向に移動する。ラチェット爪542が近位方向に移動すると、その縮径部543の弾性的な性質により、それが拡張して、最も遠位側から2番目の傾斜した歯554Bの上を近位方向にスライドする。システム500は、サムパッド564およびプランジャ管560のそれぞれの押し下げによって、プランジャ部材550を1つの歯554の距離だけ遠位方向に移動させるように構成されている。このため、レバーアーム544がその近位位置に戻った後は、ラチェット爪542の縮径部543が、プランジャ部材550上の遠位方向の次の歯554(すなわち、554B)と係合するようになっている。
【0042】
このため、図15Cに示す複数部位注入システム500は、別の注入の準備が整う。図15A図15Cに示す注入プロセスは、最も近位側の歯554が遠位方向に移動してラチェット爪542の縮径部543と係合しなくなる位置まで、プランジャ部材550が遠位方向に移動するまで、一定量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)の一連の注入を行うために繰り返すことができる。図には示されていないが、複数部位注入システム500が最後の注入を行った後、針アセンブリ590内の針592は、意図しない針の突き刺しを最小限にするために、針592の鋭利な端部がもはや露出しないように、ストッパ部材520を通って、少なくとも部分的にプランジャ部材550内に入り、近位方向に完全に引っ込められる。
【0043】
図16図28は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム700を示している。図16図17および図25図27に示すように、システム700は、シリンジ本体710、針アセンブリ790、針カバー730、ストッパ部材720、プランジャ部材750、フィンガフランジ740および近位管742を含む。これらのシステムコンポーネントの多く(例えば、シリンジ本体710、ストッパ部材720および針カバー730)は、既存の比較的よく管理されたサプライチェーン、および対応する組立機械および人員を利用するために、既製のコンポーネントであってもよい。シリンジ本体710は、ガラス、金属、またはCOC、COP、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの高分子材料、または他のシリンジ材料であってもよい。ストッパ部材720は、ブチル、クロロブチル、ブロモブチルなどのゴム、または熱可塑性エラストマなどの高分子材料であってもよい。ストッパは、PTFEまたは他のポリマーなどの保護および/または潤滑性のあるコーティングで覆われていてもよい。既製のストッパ部材720は、市販のストッパ部材を指しており、このストッパ部材は、針に結合するための突起または凹部を含まない概ね滑らかな遠位方向を向く表面を有する。近位管742は、その近位端に結合されたサムパッド744を含み、近位管742、プランジャ部材750、およびそれに結合されたストッパ部材720に対して遠位に向く力をユーザが加えることを容易にする。後述するように、システム700は、シリンジ本体710に配置された注入可能な流体(例えば、薬剤)も含むことができる。
【0044】
図17図20Cに示すように、フィンガフランジ740は、そこから近位方向に延びる近位管742を含むラチェット機構を備える。また、ラチェット機構は、近位管742の内側に同軸上に配置されたラチェット管760およびプランジャ部材750を含む。プランジャ部材750は、その長手方向軸に沿って直列に配置された複数の鋸歯状のリブ/歯752を含む(図20A図20Cを参照)。ラチェット管760は、プランジャ部材750の鋸歯状のリブ752に動作可能に結合される複数(例えば、4つ)の弾性変形可能なリーフ762を含む。代替的な実施形態では、ラチェット管760が、単一の弾性変形可能なリーフ762を含むことができる。ラチェット機構は、戻りバネ748をさらに含み、この戻りバネは、ラチェット管760の近位端上のフランジ766が近位管742の近位端から離間している近位位置に、ラチェット管760を付勢する(図17を参照)。
【0045】
リーフ762は、プランジャ部材750上のリブ/歯752と干渉し、それにより、ラチェット管760は、プランジャ部材750に対して近位方向に移動することができるが、遠位方向には移動しないようになっている。遠位方向には、ラチェット管760は、プランジャ部材750に力を加えることができる。戻りバネ748がラチェット管760を近位方向に移動させると、リーフ762が半径方向内側に屈曲し、ラチェット管760がプランジャ部材750の上を近位方向に移動することを可能にする。システム700は、ラチェット管760を遠位位置から近位位置に移動させることで、そのリーフ762をある1つのリブ/歯752から次のリブ/歯752に近位方向に移動させるように構成されている。これにより、プランジャ部材750は、1つのリブ/歯752の距離分、遠位方向に移動する。システム500の様々なコンポーネントは、プランジャ部材750を1つのリブ/歯752の距離だけ遠位方向に移動させることで、シリンジ本体710の内部から一定量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)の流体を放出するように構成することができる。その結果、ユーザは、サムパッド744を交互に押し下げたり離したりすることによって、プランジャ部材750をシリンジ本体710内で順次前進させ、予め設定された量の流体を放出することができる。
【0046】
図18は、複数部位注入システム700で使用するためのフィンガフランジ740を示している。近位管742は、ラチェット機構のラチェット管760およびプランジャ部材750を整列させる。また、近位管742は、ラチェット管760の近位端のフランジ766に対してハードストップを行う近位端741も有している。近位管742の近位端と、ラチェット管760の近位端にあるフランジ766との間の距離は、1回の注入あたりのプランジャ部材750の移動量を規定する。また、近位管742は、ラチェット管760上の抜け止めタブ768と干渉するように構成された複数(例えば、2つ)の窓746を含む。
【0047】
図19は、複数部位注入システム700で使用するためのラチェット管760を示している。ラチェット管760は、プランジャ部材750上のリブ/歯752と干渉するように構成された複数(例えば、4つ)の弾性リーフ762を含む。代替的な実施形態では、ラチェット管760が、単一の弾性変形可能なリーフ762を含むことができる。また、ラチェット管760は、窓746および近位管742に干渉するように延びるように構成された複数(例えば、2つ)の抜け止めタブ768も含む。代替的な実施形態では、ラチェット管760が、単一の抜け止めタブ768を含むことができる。ラチェット管760は、近位管742の近位端と干渉して単一の注入ストロークを規定するように構成されたフランジ766をさらに含む。
【0048】
図20A図20Cは、複数部位注入システム700で使用するためのプランジャ部材750を示している。プランジャ部材750は、その外面に連続する鋸歯状のリブ/歯752のパターンを含む。リブ/歯752間の間隔は、複数部位注入システム700によって送達される用量を調整するために変更することができる。リブ/歯752間の間隔は、注入毎に一定の用量を送達するために、プランジャ部材750の長さ方向に沿って一定であってもよいし、注入毎に異なる用量を送達するために、プランジャ部材750の長さ方向に沿って変わるものであってもよい。また、プランジャ部材750は、針の引き込み機構も含む。
【0049】
図21および図22は、フィンガフランジ740の近位管742に対するラチェット管760の近位位置および遠位位置を示している。図21に示す近位位置では、戻りバネ748が、ラチェット管760上の抜け止めタブ768が近位管742の窓746と干渉するまで、ラチェット管760を近位方向に押している。図22に示す遠位位置では、ユーザが、遠位に向く力をサムパッド744に加えて、ラチェット管760上のフランジ766が近位管742の近位端と干渉するまで、ラチェット管760を近位方向に押している。この機構は、用量注入のストローク長を規定し、それにより過量投与の状況を減らすことができる。
【0050】
図23A図23Cおよび図24A図24Cは、複数部位注入システム700を使用した1回の注入サイクルを示している。図23Aおよび図24Aでは、ラチェット管760上のリーフ762がプランジャ部材750上の第1の鋸歯状のリブ/歯752に係合し、システム700が最初の注入の準備が整った状態となっている。ユーザがサムパッド744を押し下げると、リーフ762が、遠位に向く力をリブ/歯752に伝達し、それによりプランジャ部材750およびそれに結合されたストッパ部材720を、リブ/歯752のほぼ1つ分の距離だけ前進させることができる。ストッパ部材720の前進により、シリンジ本体710の内部から一定量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)の流体が放出される。
【0051】
図23Bおよび図24Bでは、ユーザが、上述したようにサムパッド744を押し下げている。ラチェット管760を前進させると、戻りバネ748も圧縮される。ラチェット管760のフランジ766と近位管742の近位端との間の干渉は、ストローク長を規定し、過量投与の状況を減らすことができる。また、ラチェット管760は、その近位端に、第1のストロークの下端でプランジャ部材750の近位端を収容するための空間764を含む。
【0052】
図23Cおよび図24Cでは、ユーザがサムパッド744を解放している。戻りバネ748は、伸張して、プランジャ部材750の上でラチェット管760を近位方向に移動させ、プランジャ部材は、ストッパ部材720とシリンジ本体710との間の摩擦によって定位置に保持されている。管760が近位方向に移動すると、弾性変形可能なリーフ762が、鋸歯状のリブ/歯752の上を滑って、第1のリブ/歯752から次の近位側のリブ/歯752へと移動する。これにより、ラチェット管760およびサムパッド744は、次の注入のための準備位置に戻り、一方、プランジャ部材750は、1つのリブ/歯752の距離だけ進んだ位置に留まる。
【0053】
図23A図24Cに示す注入プロセスは、最も近位側のリブ/歯752が遠位方向に移動してラチェット管760のリーフ762を過ぎてリーフと係合しなくなる位置まで、プランジャ部材750が遠位方向に移動するまで、一定量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)の一連の注入を行うために繰り返すことができる。図17および図23A図24Cに示すように、複数部位注入システム700がその最後の用量の注入を送達した後、針アセンブリ790の針792は、意図しない針の突き刺しを最小限にするために、針792の鋭利な端部がもはや露出しないように、ストッパ部材720を通って近位方向に完全に引っ込められ、少なくとも部分的にプランジャ部材750内に入る。
【0054】
図27は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム700の組立てを示している。シリンジ本体710は、針アセンブリ(図示せず;図26の790を参照)に結合され、その遠位端に針シールド795が被せられている。シリンジ本体710には、注入可能な流体(例えば、薬剤)が予め充填され、ストッパ部材720が予め装填されている。その後、フィンガフランジ740が、シリンジ本体710のシリンジフランジと結合(例えば、スナップ留め)される。次いで、プランジャ部材750が、ラチェット管760の近位開口部から挿入され、ストッパ部材720と結合される(例えば、ねじ込まれる)。任意選択的には、ラチェット管760の近位開口部が密封され、それにより、組み立てられた複数部位注入システム700が得られる。
【0055】
図28は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム700で使用するための針アセンブリ790を示している。針アセンブリ790は、針ラッチ792を含む。また、針ラッチアセンブリ790は、保持リング794を含む。
【0056】
図29図36は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム700’を示している。図29図36に示すシステム700’は、図16図28に示すシステム700と類似しており、同一のコンポーネントが上で説明されている。図29図36に示すシステム700’と図16図28に示すシステム700との違いは、図29図36に示すシステム700’が、格納タイプではない杭型の針アセンブリ790’を含むことである。このため、プランジャ部材750’は、針の引き込みコンポーネントを含まない。図30および図31に示すように、プランジャ部材750’は、中実体(例えば、ポリマー)であってもよい。
【0057】
図32は、同じ符号が付された、図16図28に示すシステム700のコンポーネントと同一のコンポーネントを有するシステム700’を分解図で示している。図33は、図16図28に示すシステム700におけるラチェット管760と同一のラチェット管760を示している。図34は、中実のプランジャ部材750’を示している。
【0058】
図35および図36は、いくつかの実施形態に係るフィンガフランジ740/ラチェット管760ユニットの部分的な組立てを示している。先ず、戻りバネ748が、フィンガフランジ740の近位管742内に挿入される。次に、ラチェット管760が、フィンガフランジ740の近位管742内に挿入される。次いで、フィンガフランジ740/ラチェット管760ユニットが、シリンジ本体のガラス/シリンジフランジに取り付けられた後、プランジャ部材750’が、ラチェット管760を通して挿入され、シリンジ本体内でストッパ部材に結合される。任意選択的には、ラチェット管760の近位端が閉鎖/密封される。
【0059】
図37図42Bは、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム700’のプランジャ部材750’を制御可能に前進させることによって、シリンジ本体から空気を除去し(「泡抜き」または「プライミング」)、注入可能な流体の一部を針内に移動させるためのいくつかのコンポーネントを示している。このプロセス(「プライミング」)は、マイクロドーズ複数部位注入システムに特に有用である。図37図39および図41Aおよび図41Bに示すように、システム700’は、プライミングネジ761を含み、このプライミングネジは、ネジ結合によってラチェット管760に結合されており、このネジ結合は、プライミングネジ761の回転をその遠位方向の移動に変換する。プライミングネジ761は、プライミングネジ761の遠位方向の移動によってプランジャ部材750’が遠位方向に移動するように、プランジャ部材750’の近位端に当接している。密封プライミングネジ761は、矩形の駆動凹部763を規定する(図41Aおよび図41B)。サムパッド744は、矩形の駆動ボス745(図42Aおよび図42B)を含み、このボスは、矩形の駆動凹部763と篏合および干渉して、密封部材761を回転させるとともにプライミングネジ761を遠位方向に進め、それによりプランジャ部材750’および結合されたストッパ部材を遠位方向に駆動してシステム700’の針から空気および流体を排出するようになっている。図37図38および図40に示すように、ラチェット管760は、サムパッド744をラチェット管760に結合するように構成された複数(例えば、4つ)のラッチ798を含む。
【0060】
図43図47Cは、いくつかの実施形態に係る、複数部位注入システム700’’のプランジャ部材750’’の近位方向の移動を制限するためのいくつかのコンポーネントを示している。図43図46に示すように、システム700’’のフィンガフランジ740’’は、引き込み防止機構749を保持するように構成されたチャンバ747を規定する。図47A図47Cに示すように、引き込み防止機構749は、プランジャ管750’’が引き込み防止機構749に対して遠位方向に移動することを可能にする一方で、引き込み防止機構749に対して近位方向に移動することを制限するように構成された一対のブレーキタブ796を含む。
【0061】
図48図54は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム700’’’を示している。図48図54に示すシステム700’’’は、図16図28に示すシステム700と類似しており、同一のコンポーネントが上で説明されている。図48図54に示すシステム700’’’と、図16図28に示すシステム700との違いは、図48図54に示すシステム700’’’が、(図16図28に示すシステム700のプランジャ部材750と比較して)歯のないプランジャ部材750’’’を含むことである。プランジャ部材750’’’を前方にラチェットするために歯を使用する代わりに、ラチェット管760’’’は、プランジャ部材750’’’のより柔らかい表面を変形させるように構成された一対の弾性変形可能な金属製のリーフ762’’’を含む。リーフは、ポリマーで形成することができる。
【0062】
図52A図52Cは、システム700’’’を用いた複数部位注入方法における1回の注入を示している。ラチェット管760’’’が遠位方向に押されると、弾性変形可能なリーフ762’’’がプランジャ部材750’’’の表面に食い込み、プランジャ部材750’’’を遠位方向に移動させる。注入の終了時には、戻りバネがラチェット管760’’’を近位方向に押す一方で、プランジャ部材750’’’は、摩擦により、または上述した引き込み防止機構によって定位置に保持される。プランジャ部材750’’’は歯を有していないため、複数部位注入システム700’’’は、ラチェット管760’’’を解放する前に、ラチェット管760’’’をフルストロークに満たないストロークで前進させることによって、次の注入の用量を乱すことなく、全用量ではない用量を送達するために使用することができる。
【0063】
図55図67は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム500’を示している。図55図67に示すシステム500’は、図6図15Cに示すシステム500に類似しており、同一のコンポーネントが上で説明されている。図55図67に示すシステム500’と図6図15Cに示すシステム500との違いは、図55図67に示すシステム500’が針引き込み機構を含むことである。
【0064】
針の引き込みを容易にするために、針アセンブリ590’は、取り外し可能に結合された針592’を含み、プランジャ部材550’は、上述した特許出願のものと同様の針引き込み部材を含む。図60および図61に示すように、フィンガフランジ540は、引き込み防止機構541を含み、プランジャ管550’が引き込み防止機構541に対して遠位方向に移動することを可能にする一方で、引き込み防止機構541に対する近位方向の移動を制限するように構成されている。引き込み防止機構541は、図61に示すように、一対のブレーキタブ543を含む。
【0065】
図64図66は、システム500’を使用した複数部位注入方法における1回の注入サイクルを示している。ラチェット管560が図64から図65に遠位方向に移動されると、プランジャ部材550’が遠位方向に移動されて、シリンジ本体510から1回の用量を放出する。ユーザがサムパッドから圧力を取り除くと、フィンガフランジ内のバネがラチェット管560を近位方向に復帰させて、次の注入/用量のためにシステム500’を準備する。
【0066】
図57は、プランジャ部材550’およびストッパ部材520が、シリンジ本体510の内部に1回の用量のみを残して、シリンジ本体510の遠位端までほぼ進んだときを示している。シリンジ本体510の内部の最後の用量が送達された後、図58および図67に示すように、引き込み機構は、偶発的な針刺しのリスクを最小限にするために、針592’をプランジャ部材550’の内部に引き込む。
【0067】
図59Aおよび図59Bは、シリンジ本体にスナップ留めされる前のフィンガフランジアセンブリ540を示している。このフィンガフランジアセンブリ540は、図12および図13で説明したフィンガフランジと同様の方法で、シリンジ本体に取り付けられる。フィンガフランジアセンブリ540は、プランジャ管560を含み、このプランジャ管は、プランジャ部材を挿入してストッパに結合するための開いた近位端563を有する一体型サムパッド564を有する。一体型サムパッド564の近位端は、プランジャ部材の挿入後にプラグで密封することができる。
【0068】
図63は、プランジャ部材550’およびそのコンポーネントを分解図で示している。具体的に、プランジャキャップ556は、プランジャ部材550’の近位端に配置されている。プランジャキャップ556は、プランジャ部材550’をストッパ部材にねじカップリングするためのプランジャ部材550’の回転を容易にするように構成された駆動凹部557を含む。プランジャキャップ556は、プランジャキャップ556を固定するために、プランジャ部材550’の対応する開口部と干渉するように構成された一対のラッチ558も含む。プランジャキャップ556をプランジャ部材550’に固定することで、針の引き込み後に、針引き込みコンポーネント(例えば、針、バネ、バネラッチ、および針受け部材)をプランジャ部材550’の内部に収容する。
【0069】
図68図74は、いくつかの実施形態に係る複数部位注入システム600を示している。図68および図69に示すように、システム600は、シリンジ本体610、針アセンブリ690、針カバー630、ストッパ部材620、プランジャ部材650およびフィンガフランジ640を含む。これらのシステムコンポーネント(例えば、シリンジ本体610、ストッパ部材620および針カバー630)の多くは、既存の比較的よく管理されたサプライチェーン、および対応する組立機械および人員を利用するために、既製の構成要素であってもよい。プランジャ部材650は、その近位端に結合されたサムパッド654を含み、プランジャ部材650およびそれに結合されたストッパ部材620に遠位に向く力をユーザが加えることを容易にする。後述するように、システム600は、プランジャ部材650のチャンバ内に配置された注入可能な流体(例えば、薬剤)も含む。
【0070】
図70および図71は、針カバー630が取り付けられた状態および取り付けられていない状態の複数部位注入システム600を示している。図71に示すように、針カバー630が取り外された状態では、システム600は使用の準備が整っている。図70および図71に示すように、プランジャ部材650は、注入可能な流体を貯蔵することができる近位チャンバ652も含む。近位チャンバ652は、プランジャ部材650の遠位端656で開いている。
【0071】
図72に示すように、プランジャ部材650の遠位端656は、そのほぼ中央に開口ビッドを有する遠位方向を向く円錐を規定する。ストッパ部材620は、プランジャ部材650の遠位端656が移動可能に配置される内部キャビティ622を含む。また、ストッパ部材620は、近位方向を向く突出部624と、開口部628とを含む。プランジャ部材650の遠位端656と、ストッパ部材620の内部キャビティ622および近位方向を向く突出部624とが一緒になって、近位側の一方向弁626を形成する。近位側の一方向弁626は、プランジャ部材650内の近位チャンバ652と、ストッパ部材620およびシリンジ本体610の遠位端により規定される遠位チャンバ612との間で流体的に結合されている。図72に示す構成では、プランジャ部材650の遠位端656が近位方向を向く突出部624から近位方向に引き離される一方で、ストッパ部材620がストッパ部材620とシリンジ本体610との間の滑動摩擦および遠位チャンバ612内の真空により遠位方向に引き離され、それによってプランジャ部材650の遠位端656の開口部とストッパ部材620の開口部628との間に流路が形成されるため、近位側の一方向弁626が開いている。近位側の一方向弁626は、後述するように、プランジャ部材650に近位に向く力を加えて、プランジャ部材650の遠位端656をストッパ部材620の近位方向を向く突出部624から引き離すことによって、閉じた構成に配置することができる。
【0072】
図72にも示されているように、針アセンブリ690の近位端は、遠位側の一方向弁694を含む。遠位側の一方向弁694は、弁本体697の内部にある球状部材696と、球状部材696を近位方向に付勢して弁本体697の近位開口部を閉じる弁バネ698とを含む。図72では、遠位側の一方向弁694は、閉じた構成にある。図73および図74に示すように、プランジャ部材650およびストッパ部材620に遠位に向く力を継続的に加えると、遠位チャンバ612内の非圧縮性流体が、力を球状部材696に伝達し、弁バネ698の力に打ち勝って球状部材696を遠位方向に移動させ、遠位側の一方向弁694を開く。遠位側の一方向弁694を開くことで、遠位チャンバ612と注入用の針692とを流体的に結合することができる。本実施形態における具体的な弁は例示的なものである。他のタイプの一方向弁も本開示の範囲内にある。
【0073】
図71および図73に示すように、フィンガフランジ640は、プランジャ部材650を近位位置に付勢する戻りバネ642を含む(例えば、図71を参照)。ユーザが注入を実行するためにサムパッド654に遠位に向く力を加えると、遠位に向く力が、サムパッド654に戻りバネ642によって作用する近位に向く力に打ち勝ち、プランジャ部材650を遠位位置まで所定の距離だけ進める(例えば、図73を参照)。ストッパ部材620の位置でプランジャ部材650が近位位置から遠位位置に移動すると、遠位チャンバ612から針692を介して既知の量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)が放出される。プランジャ部材650を遠位位置までの距離の一部だけ移動させることによって、ある範囲の量(例えば、最大0.1ml)を遠位チャンバ612から放出することもできる。プランジャ部材650を前進させて注入を実行するとき、遠位チャンバ612から近位チャンバ652への流体の逆行移動を防止するために、近位側の一方向弁626が閉じられる。図74に示す構成では、プランジャ部材650の遠位端656の円錐が近位方向を向く突出部624に押し込まれ、それによってプランジャ部材650の遠位端656の開口部が閉じられるため、近位側の一方向弁626が閉じられる。近位側の一方向弁626は、プランジャ部材650に遠位に向く力を加えて、プランジャ部材650の遠位端656をストッパ部材620の近位方向を向く突出部624に押し込むことによって、閉じた構成にすることができる。ストッパ部材620および近位方向を向く突出部624は、ストッパ部材620とシリンジ本体610との間の摩擦および遠位チャンバ612内の正圧によって定位置に保持される。同時に、遠位側の一方向弁694は、遠位チャンバ612内の圧力の増加により開かれて、遠位チャンバ612から針692を介した流体の注入を可能にする。
【0074】
ユーザがサムパッド654を解放すると、戻りバネ642はプランジャ部材650を近位方向に移動させて、その近位位置に戻る(例えば、図71を参照)。プランジャ部材650がその近位位置に戻ると(例えば、図72を参照)、遠位チャンバ612内に生成された真空および弁バネ698による付勢により、遠位側の一方向弁694はその閉じた構成となる。同時に、プランジャ部材650の遠位端656が近位方向にストッパ部材620の内部キャビティ622から移動して、近位方向を向く突出部624が開くため、近位側の一方向弁626は開いた状態となる。これにより、プランジャ部材650の近位チャンバ652内の注入可能な流体が、ストッパ部材620の近位方向への移動によって生成される遠位チャンバ内の真空によって遠位チャンバ612内に引き込まれる。近位チャンバ652から遠位チャンバ612への注入可能な流体の移動により、複数部位注入システム600が別の注入のために準備される。図71図74に示す注入プロセスは、一定量(例えば、0.1ml、マイクロドーズ)の一連の注入を行うために繰り返すことができる。
【0075】
このため、ユーザは、サムパッド654を交互に押し下げたり離したりすることによって、一連の注入を実行することができる。図68図74に示す実施形態では、ユーザは、任意選択的に、(例えば、半分の用量または1/4の用量を送達するために)プランジャ部材650をその完全な移動距離よりも短く押し下げることができる。プランジャ部材650が押し下げられる距離にかかわらず、戻りストロークは、次の注入に備えるために、近位チャンバ652から遠位チャンバ612に十分な量の注入可能な流体を引き込む。
【0076】
様々な実施形態を特定のコネクタ(例えば、スリップおよびルアー)とともに説明してきたが、それらの実施形態は、任意の既知の注入システムコネクタとともに使用することができる。杭型の針および針コネクタを用いて様々な実施形態を説明してきたが、それらの実施形態は、任意の既知の恒久的に結合された針または針コネクタシステムとともに使用することができる。
【0077】
本発明の様々な例示的な実施形態が本明細書に記載されている。これらの例は、非限定的な意味で参照される。これらは、本発明のより広範に適用可能な特徴を例示するために提供されている。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載された発明に様々な変更を加えることができ、均等物に置き換えることができる。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為またはステップを、本発明の目的、趣旨または範囲に適合させるために、多くの変更を加えることができる。さらに、当業者によって理解されるように、本明細書に記載および例示された個々のバリエーションの各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態の何れかの特徴から容易に分離され、またはそれらの特徴と組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。そのような変更はすべて、本開示に関連する特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0078】
対象となる診断処置または介入処置を実行するために説明したデバイスの何れかが、そのような介入を実行する際に使用するためにパッケージ化された組合せで提供されるものであってもよい。それらの供給「キット」は、使用説明書をさらに含み、そのような目的のために一般的に採用されるような無菌トレイまたは容器にパッケージ化されるものであってもよい。
【0079】
本発明は、対象のデバイスを用いて実行され得る方法を含む。その方法は、そのような好適なデバイスを提供する行為を含むことができる。そのような提供は、エンドユーザによって実行されるものであってもよい。すなわち、「提供する」という行為は、エンドユーザが、対象となる方法において、必要なデバイスを提供するために、取得、アクセス、アプローチ、配置、セットアップ、起動、電源投入またはその他の行為を行うことを単に必要とするだけである。本明細書に記載の方法は、論理的に可能な任意の順序で、あるいは記載された事象の順序で、記載された事象を実行することができる。
【0080】
本発明の例示的な態様は、材料の選択および製造に関する詳細とともに、上述されている。本発明の他の詳細に関しては、それらは、先に引用した特許および刊行物に関連して理解され得るだけでなく、当業者には一般的に知られているか、または理解され得るものである。例えば、当業者であれば、1または複数の潤滑性コーティング(例えば、ポリビニルピロリドン系組成物などの親水性ポリマー、テトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、PTFE、親水性ゲルまたはシリコーン)を、必要に応じて、移動可能に結合された部分の比較的大きな境界面など、デバイスの様々な部分に関連して使用することができ、それにより例えば、器具の他の部分または近くの組織構造物に対するそのような対象物の低摩擦操作または前進を容易にすることができることを理解するであろう。一般的にまたは論理的に採用される追加の行為に関して、本発明の方法に基づく態様についても同様のことが当てはまるであろう。
【0081】
さらに、本発明は、様々な特徴を任意に組み込んだいくつかの例を参照して説明してきたが、本発明の各バリエーションに関して企図されるように記載または開示されたものに限定されるものではない。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載した開示に様々な変更を加えることができ、(本明細書に記載されているか、または簡潔にするために含まれていないかにかかわらず)均等物に置き換えることができる。さらに、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のすべての介在値と、記載した範囲内の他の記載した値または介在値が、本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。
【0082】
また、記載した本発明のバリエーションの任意の特徴は、独立して、または本明細書に記載された特徴のうちの任意の1または複数の特徴と組み合わせて記載および主張され得ることが企図される。単数の項目への言及は、同じ項目が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書およびこれに関連する特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。言い換えれば、冠詞の使用は、本発明に関連する特許請求の範囲と同様に、上記説明における主題項目の「少なくとも1つ」を可能にする。そのような請求項は、任意の要素を除外するように起草される場合があることに留意されたい。このため、この記述は、請求項の要素の列挙に関連して、「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用する先の記載、または「否定的な」限定を使用するための先の記載として機能することを意図している。
【0083】
そのような排他的な用語を使用することなく、本開示に関連する請求項における「含む」という用語は、所与の数の要素がそのような請求項に列挙されているかどうか、または特徴の追加がそのような請求項に記載された要素の性質を変化させるとみなされるかどうかにかかわらず、任意の追加要素を含むことを可能にするものとする。本明細書で具体的に規定されている場合を除き、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、請求項の有効性を維持しつつ、可能な限り広く一般的に理解される意味を与えるものとする。
【0084】
本発明の幅は、提供された実施例および/または主題の明細書に限定されるものではなく、むしろ、本開示に関連する請求項の文言の範囲によってのみ限定されるものである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41A
図41B
図42A
図42B
図43
図44
図45
図46
図47A
図47B
図47C
図48
図49
図50
図51
図52A
図52B
図52C
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59A
図59B
図60
図61
図62A
図62B
図63
図64
図65
図66
図67
図68
図69
図70
図71
図72
図73
図74
【国際調査報告】