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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(54)【発明の名称】流体力学的なコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/26 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
F16H41/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526379
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077274
(87)【国際公開番号】W WO2020099031
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】102018128470.5
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート ケアンヒェン
(57)【要約】
本発明は、流体力学的な作業媒体回路を形成する作業室を備えた高速回転式の流体力学的な調整コンバータに関し、作業室内には少なくとも1つのポンプホイールと、少なくとも1つのタービンホイールと、少なくとも1つのガイドホイールとが位置決めされており、ポンプホイールは、作業媒体により遠心方向または遠心方向-斜め方向に通流されるようになっており、タービンホイールは、作業媒体により向心方向または向心方向-斜め方向に通流されるようになっており、タービンホイールの入口グリッド縁部は、ポンプホイールおよびタービンホイールの回転軸線に関して、ポンプホイールの入口グリッド縁部に比べて小さな半径上に位置しているかまたは等しい半径上に位置している。本発明による流体力学的なコンバータは、作業室内で、作業媒体の流れ方向においてポンプホイールの上流側に第1のガイドホイールが設けられており、第1のガイドホイールは、作業媒体が遠心方向にのみ通流するようにまたは斜め方向-遠心方向に通流するように配置されており、出力伝達に影響を及ぼすために用いられることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体力学的な作業媒体回路を形成する作業室(10)を備えた流体力学的なコンバータ(11)であって、前記作業室(10)内に、少なくとも1つのポンプホイール(1)と、少なくとも1つのタービンホイール(2)と、少なくとも1つのガイドホイール(3,4,5)とが位置決めされており、
前記ポンプホイール(1)は、作業媒体により遠心方向または遠心方向-斜め方向に通流されるようになっており、前記タービンホイール(2)は、前記作業媒体により向心方向または向心方向-斜め方向に通流されるようになっており、
前記タービンホイール(2)の入口グリッド縁部(7)は、前記ポンプホイール(1)および前記タービンホイール(2)の回転軸線(8)に関して、前記ポンプホイール(1)の入口グリッド縁部(9)に比べて小さな半径上に位置しているかまたは等しい半径上に位置している、流体力学的なコンバータ(11)において、
前記作業室(10)内で、前記作業媒体の流れ方向において前記ポンプホイール(1)の上流側に第1のガイドホイール(3)が設けられており、該第1のガイドホイール(3)は、前記作業媒体が遠心方向にのみ通流するようにまたは斜め方向-遠心方向に通流するように配置されていることを特徴とする、流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項2】
前記第1のガイドホイール(3)の入口グリッド縁部(14)は、前記ポンプホイール(1)および前記タービンホイール(2)の前記回転軸線(8)に関して、少なくとも実質的に、前記タービンホイール(2)の前記入口グリッド縁部(7)の半径に相当する半径上に位置している、請求項1記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項3】
前記第1のガイドホイール(3)の前記入口グリッド縁部(14)の前記半径は、前記タービンホイール(2)の前記入口グリッド縁部(7)の前記半径の0.8倍~1.2倍または0.9倍~1.1倍または0.95倍~1.05倍である、請求項2記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項4】
前記第1のガイドホイール(3)は、前記作業媒体の流れ方向において前記ポンプホイール(1)の直前に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項5】
前記作業室(10)内に第2のガイドホイール(4)が設けられており、該第2のガイドホイール(4)は、前記作業媒体が軸方向にのみ、または斜め方向-軸方向に、または軸方向-斜め方向に通流するように配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項6】
前記第1のガイドホイール(3)は、ガイドホイール回転軸線(6)を中心として変位可能な、前記作業媒体流に対して可変に傾くことができるガイドベーンを備えて構成されており、前記ガイドホイール回転軸線(6)は特に、前記ポンプホイール(1)および前記タービンホイール(2)の前記回転軸線(8)に対して平行にまたは斜めに延在している、請求項1から5までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項7】
前記第2のガイドホイール(4)は、固定のガイドホイール(4)として構成されている、請求項5、または請求項5および6記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項8】
前記第2のガイドホイール(4)は複数のガイドベーン(4.1,4.2)を有しており、これらのガイドベーン(4.1,4.2)は隣り合う2つの群で、前記作業室(10)内に相前後して位置決めされており、第1群の前記ガイドベーン(4.1)の数は、第2群の前記ガイドベーン(4.2)の数よりも少なくなっている、請求項5、特に請求項6または7の一方に記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項9】
前記作業室(10)内には3つのガイドホイール(3,4,5)が設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項10】
前記作業室(10)内に第3のガイドホイール(5)が設けられており、該第3のガイドホイール(5)は、前記作業媒体が軸方向にのみ通流するように位置決めされている、請求項5、特に請求項6から9までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項11】
前記第2のガイドホイール(4)は、前記第1のガイドホイール(3)よりも大きな直径上に位置決めされており、前記第3のガイドホイール(5)は、前記第1のガイドホイール(3)よりも小さな直径上に位置決めされている、請求項10記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項12】
前記第1のガイドホイール(3)または前記第3のガイドホイール(5)は、ガイドホイール回転軸線(6)を中心として変位可能な、当該コンバータ(11)の運転中に前記作業媒体流に対して傾くことができるガイドベーンを備えて構成されており、特に変位可能な前記ガイドベーン無しで構成された、前記2つのガイドホイール(3,5)のうちの一方は、前記作業媒体回路に関して前記作業室(10)を半径方向内側において画定する壁部材を支持している、請求項6を引用しない、請求項11記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項13】
前記作業室(10)の内径(DI):前記作業室(10)の外径(DA)の比は、0.2未満または0.1未満である、請求項1から12までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項14】
前記ポンプホイール(1)および前記タービンホイール(2)の回転軸線(8)の方の前記作業室(10)の幅(B):前記作業室(10)の外径(DA)の比は、0.5未満または0.4未満である、請求項1から13までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項15】
前記ポンプホイール(1)の前記入口グリッド縁部(9)の半径は、前記タービンホイール(2)の前記入口グリッド縁部(7)の前記半径の1.1倍~1.3倍、特に1.2倍である、請求項1から14までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項16】
ベーンホイールの配置、特に前記ポンプホイールおよび前記タービンホイールの位置決めは、1.8~2.0の範囲内の、タービンホイール回転数とポンプホイール回転数との間の設計回転数比、ならびに最大2.3の作業範囲を可能にする、請求項1から15までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)。
【請求項17】
駆動機械(12)と、該駆動機械(12)により駆動される多相ポンプ(13)とを備えたユニットにおいて、
前記駆動機械(12)と前記多相ポンプ(13)との間の駆動結合部に、請求項1から16までのいずれか1項記載の流体力学的なコンバータ(11)が設けられていることを特徴とする、ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、流体力学的な作業媒体回路を形成する作業室内に、少なくとも1つのポンプホイールと、少なくとも1つのタービンホイールと、少なくとも1つのガイドホイールとを備えた流体力学的なコンバータに関する。
【0002】
流体力学的なコンバータは数十年来周知であり、例えば鉄道車両の流体力学的な変速機に起動コンバータまたは走行コンバータとして設けられる。これにより、流体力学的な出力伝達機として用いられるコンバータの数に応じて、自動2段変速機または自動多段変速機も達成され得る。起動コンバータはその設計点を一般に、タービン回転数:ポンプ回転数の回転数比に、すなわち、タービンホイールの回転数とポンプホイールの回転数との間の、つまり0.4~0.6の、極端な起動コンバータの場合はちょうど0.3の回転数比に有している。走行コンバータは、相応する0.8~0.9の回転数比を有していることが多い。これにより、タービンホイールは設計点において、すなわち車両の定格速度において、ポンプホイールよりも低速で回転するようになっている。走行コンバータの場合、鉄道車両に設けられた冷却装置の設計に応じて1.3~約1.5の回転数比までのタービンホイールが使用され得る。
【0003】
このような流体力学的なコンバータは、例えば独国特許発明第102010018160号明細書に開示されており、この場合、ポンプホイールは、作業室内の循環流の作業媒体により少なくとも部分的に遠心方向に通流されるようになっており、コンバータの場合には、ポンプホイールおよびタービンホイールとは異なり回転しないためにガイドベーンリングとも呼ばれるガイドホイールは、循環流の作業媒体により少なくとも部分的に向心方向に通流されるようになっており、循環流の作業媒体の、タービンホイールに対する流入方向は、流体力学的なコンバータの軸方向の回転軸線に対して平行に延在しているのに対し、循環流の作業媒体の、タービンホイールからの流出方向は、部分的に向心方向にかつ部分的に軸方向に、つまり斜め方向に延在している。
【0004】
工業的に使用するために、流体力学的なコンバータは、変位可能なガイドホイールを備えて影響を及ぼすことができるコンバータとして構成されることが多い。複数の、つまり一方は変位可能であり、他方は固定のガイドホイールが設けられていてもよい。変位可能なガイドホイールでは、運転中にベーンが変位可能であり、これにより、コンバータの出力受取りと出力伝達とを無段式に変更することができる。
【0005】
このような流体力学的なコンバータの1つの実施例は、例えば独国特許発明第102007005426号明細書に開示されている。
【0006】
工業的に使用するための従来の流体力学的なコンバータの場合にも、回転数比は大抵、高いトルク伝達のために制限されており、設計の点で、説明した起動コンバータおよび走行コンバータに相応する。
【0007】
国際公開第0214706号に開示された、機械セットにおいて使用するための流体力学的なコンバータの場合には、駆動装置がガスタービンであり、作業機械は圧縮機である。この場合は、20MWまたはこれを上回るオーダの極めて高い出力が問題となっている。この極端な出力に基づき、機械も極めて大きな回転質量を有している。流体力学的なコンバータは、極めて小さなλ値を有している。タービンホイールの回転数とポンプホイールの回転数との間の回転数比は、1のオーダである。効率は、0.75以上のオーダである。ポンプホイールは実質的に遠心方向に通流されるようになっており、タービンホイールは実質的に向心方向に通流されるようになっており、この場合、ポンプホイールベーンの入口縁部と、タービンホイールベーンの出口縁部とは、互いに対向している。ポンプホイールベーンの入口縁部およびタービンホイールベーンの出口縁部は、ポンプホイールベーンの出口縁部およびタービンホイールベーンの入口縁部よりも、コンバータ回転軸線の近くに位置している。
【0008】
独国特許発明第102004011033号明細書に開示された、遠心方向通流式のポンプホイールと、向心方向通流式のタービンホイールとを備えた流体力学的なコンバータでは、ポンプホイールの出口縁部が、タービンホイールの入口縁部よりも大きな半径上に位置している。さらに、ポンプホイールのベーンの入口縁部が、タービンホイールのベーンの入口縁部よりも大きな半径上に位置していてもよい。ポンプホイールとタービンホイールとの間の半径方向外側の領域にはガイドベーンが設けられており、タービンホイールとポンプホイールとの間の半径方向内側の領域には、軸方向に通流されるガイドベーンが設けられている。
【0009】
国際公開第2010062269号は、上述した形式の流体力学的なコンバータを起点として、向心方向に通流されるポンプホイールを、向心方向または軸方向に通流されるタービンホイールの半径方向外側に配置することを提案する。この場合はガイドベーンもやはり、ポンプホイールの上流側で向心方向に通流されるように位置決めされてよい。
【0010】
本発明の根底を成す課題は、特に従来周知の走行コンバータの回転数比を上回る、設計点における高い回転数比、ならびに設計点を中心とした広範な作業範囲に適した流体力学的なコンバータを提供することにある。
【0011】
本発明による課題は、請求項1記載の特徴を備えた流体力学的なコンバータにより解決される。従属請求項には、本発明の有利で特に目的に合った構成が記載されている。
【0012】
本発明による流体力学的なコンバータは、作業媒体の流体力学的な作業媒体回路を形成する作業室を有している。作業媒体としては特に油が考慮されるが、別の媒体、例えば水または水混合物、特に水・グリコール混合物等も考慮される。作業室内には、少なくとも1つのポンプホイールと、少なくとも1つのタービンホイールと、少なくとも1つのガイドホイールとが、作業媒体の流れ方向に連続して位置決めされている。この場合、流れ方向において一般に、ポンプホイールにガイドホイールが続いており、ガイドホイールにタービンホイールが続いている。さらに別のガイドホイールが、例えば流れ方向においてポンプホイールの上流側に設けられていてよく、この場合、このガイドホイールは、有利には変位可能である、すなわち、このガイドホイールの各ガイドベーンまたは少なくとも一部は、ベーン回転軸線とも呼ばれる回転軸線を中心としてそれぞれ回転可能であり、これにより、ガイドホイールは、作業媒体流に対して可変に傾くことができるようになっている。変位可能なガイドホイールが設けられている場合には、影響を及ぼすことができる流体力学的なコンバータとも言う。
【0013】
本発明によるコンバータは、特にいわゆる高速回転式のコンバータとして構成されている、すなわち特に大きな設計回転数比を有しており、このことについては後で説明する。
【0014】
本発明に基づき、ポンプホイールは作業媒体により遠心方向に、特に遠心方向にのみ、または遠心方向-斜め方向に通流されるようになっており、タービンホイールは作業媒体により向心方向に、特に向心方向にのみ、または向心方向-斜め方向に通流されるようになっている。
【0015】
よって作業媒体は、向心方向でタービンホイールに流入し、タービンホイールから向心方向にまたは部分的に向心方向にかつ部分的に軸方向に流出する。
【0016】
タービンホイールの入口グリッド縁部の半径は、ポンプホイールの入口グリッド縁部に比べて小さくなっているかまたは等しくなっている。タービンホイールのこのような入口グリッド縁部は、タービンホイールのベーンの入口縁部と呼ばれることもあり、タービンホイールのベーンの流入縁部を表す。相応して、出口グリッド縁部または出口縁部は、タービンホイールのベーンの流出縁部を表す。同じことが、その他のホイール、すなわちポンプホイールと、1つまたは複数のガイドホイールとにも当てはまる。
【0017】
有利には、流体力学的なコンバータは、単一のタービンホイールを備えた単段式の流体力学的なコンバータとして構成されている。
【0018】
好適にはポンプホイールも1つだけ設けられており、このポンプホイールは、作業媒体が遠心方向にのみ通流するようにまたは遠心方向-斜め方向に通流するように配置されている。これにより、作業媒体は遠心方向でポンプホイールに流入しかつポンプホイールから遠心方向に流出する、もしくは遠心方向でポンプホイールに流入しかつポンプホイールから部分的に遠心方向にかつ部分的に軸方向に流出する。
【0019】
本発明では、例えば回転軸線を中心として変位可能な第1のガイドホイールが設けられており、この場合、このガイドホイールは、好適には作業媒体が遠心方向にのみ通流するようにまたは斜め方向-遠心方向にも通流するように、作業室内に配置されている。よって作業媒体は、第1のガイドホイールに遠心方向に、または部分的に遠心方向にかつ部分的に軸方向に流入し、第1のガイドホイールから遠心方向に流出する。この場合は調整ベーンが、ガイドホイールの、遠心方向にのみ通流される領域に配置される。
【0020】
第1のガイドホイールは作業室内で、作業媒体の流れ方向においてポンプホイールの上流側に、特にポンプホイールの直前に配置されている。ポンプホイールの直前に第1のガイドホイールを配置した場合、第1のガイドホイールの出口とポンプホイールの入口との間に別のベーンホイールまたは別のベーンは一切設けられていない、すなわち、ガイドホイールのベーンの出口グリッド縁部もしくは出口縁部は、ポンプホイールのベーンの入口グリッド縁部もしくは入口縁部に対向している。
【0021】
さらに、好適には第2のガイドホイールが設けられており、第2のガイドホイールは、作業媒体が軸方向にのみ、斜め方向-軸方向にまたは軸方向-斜め方向に通流するように、作業室内に配置されている。よって作業媒体は、第2のガイドホイールに部分的に半径方向にかつ部分的に軸方向にまたは専ら軸方向にのみ流入し、かつ第2のガイドホイールから専ら軸方向にのみもしくは部分的に軸方向にかつ部分的に半径方向に流出する。
【0022】
第2のガイドホイールは、特に作業媒体の流れ方向において、作業媒体回路内でポンプホイールの下流側に配置されている。
【0023】
第1のガイドホイールの入口グリッド縁部もしくは第1のガイドホイールのベーンの入口縁部は、ポンプホイールおよびタービンホイールの回転軸線に関して、好適には少なくとも実質的に、タービンホイールのベーンの入口グリッド縁部もしくは入口縁部の半径に相当する半径上に位置している。例えば第1のガイドホイールの入口グリッド縁部の半径は、タービンホイールの入口グリッド縁部の半径の0.8倍~1.2倍、特に0.9倍~1.1倍または0.95倍~1.05倍である。好適には、第1のガイドホイールの入口グリッド縁部の半径は、タービンホイールの入口グリッド縁部の半径の0.9倍である。
【0024】
ポンプホイールのベーンの入口グリッド縁部もしくは入口縁部の半径は、タービンホイールのベーンの入口グリッド縁部もしくは入口縁部の半径の好適には1.1倍~1.3倍、特に1.2倍である。
【0025】
第2のガイドホイールは、特に固定のガイドホイールとして構成されていてよく、したがって回転軸線を中心として変位可能もしくは作業媒体流に対して変位可能なベーンを有することは一切ない。
【0026】
1つの実施形態では、第2のガイドホイールには流出領域にスプリッターベーンが装備されている。つまり、第2のガイドホイールは複数のガイドベーンを有しており、これらのガイドベーンは隣り合う2つの群で、作業室内に相前後して位置決めされており、この場合、第1群のガイドベーンの数は、第2群のガイドベーンの数に比べて少ないか、または等しくなっていてもよい。第1群のガイドベーンは、例えば比較的長い軸方向延在長さ、特に半径方向延在長さよりも長い軸方向延在長さを有していてよい。作業媒体を案内するために、ガイドベーンは所定の厚さを有していてよい。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、作業室内に3つのガイドホイールが設けられており、例えば第1のガイドホイールは、作業室の半径方向通流領域に設けられており、第2のガイドホイールは、作業室の外径上で軸方向通流領域に設けられており、第3のガイドホイールは、作業媒体の流れ方向においてタービンホイールの下流側の作業室の内径上で軸方向通流領域に設けられている。第3のガイドホイールは、例えば作業媒体回路に関して作業室を半径方向内側において画定する、すなわち、作業室の経線輪郭を形成する構成部材もしくは壁部材に対する支持機能を有していてよい。
【0028】
作業室は、特に中空円環状である、すなわち作業室は、軸方向断面において流体力学的なコンバータの回転軸線の各側にリング形状を有しており、この場合、このリング形状は円環形状とは異なっていてよく、特にリング形状の全周にわたって可変の厚さもしくは可変の横断面を有していてよい。換言すると、作業媒体が通流するコンバータの作業室は、内側のリング状の経線プロファイル輪郭と外側のリング状の経線プロファイル輪郭とにより画定されており、これらの経線プロファイル輪郭は、コンバータの回転軸線を中心として対称に周方向に延びて、内部にベーンホイールが配置されたコンバータの作業室を形成している。通路幅、すなわち内側の経線プロファイル輪郭に対する外側の経線プロファイル輪郭の間隔は、特にコンバータの個々の区分における各要求に相応して、通流方向において適当な形で変化する。
【0029】
上述した変位可能な第1のガイドホイールと、固定の第2のガイドホイールとが設けられており、さらに作業室内に第3のガイドホイールが設けられている場合には、この第3のガイドホイールは、有利には作業媒体が軸方向にのみ通流するように位置決めされている。
【0030】
好適には、第2のガイドホイールは、第1のガイドホイールよりも大きな直径上に位置決めされており、第3のガイドホイールは第1のガイドホイールよりも小さな直径上に位置決めされている。
【0031】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの第4のガイドホイールが、作業室内に設けられている。このような第4のガイドホイールは、好適には作業媒体により、斜め方向-向心方向にまたは向心方向にのみ通流される。第4のガイドホイールは、好適には第2のガイドホイールとタービンホイールとの間に、特にタービンホイールの直前に位置決めされており、これにより第4のガイドホイールのベーンの出口グリッド縁部もしくは出口縁部は、別のホイールまたはベーンが介在すること無しに、タービンホイールの入口グリッド縁部にすぐ対向している。
【0032】
このような第4のガイドホイールは特に、ただし必ずではないが、スプリッターベーンを有さない単純な第2のガイドホイールと組み合わせられる。
【0033】
もちろん、第2のガイドホイールをスプリッターベーン無しの単純なガイドホイールとして構成し、第4のガイドホイールを、第2のガイドホイールの下流側で軸方向に通流されるようにまたは軸方向-斜め方向に通流されるように位置決めすることも可能である。
【0034】
有利なのは、作業室の内径:作業室の外径の比が、0.2未満または0.1未満の場合である。1つの実施形態では、(経線輪郭の上側における)内径:外径の比は、相応して0.1である。
【0035】
好適には、ポンプホイールおよびタービンホイールの回転軸線の方の作業室の幅:作業室の外径の比は、0.5未満または0.4未満、例えば0.38または0.485である。
【0036】
本発明による流体力学的なコンバータを備えたユニットは、例えば駆動機械と多相ポンプとを有しており、この場合、多相ポンプは駆動機械により駆動される。駆動機械と多相ポンプとの間の駆動結合部に、本発明による流体力学的なコンバータが設けられている。
【0037】
多相ポンプは、特に液体・ガス混合物の圧送に適しており、多相ポンプのポンプインペラの上流側にエアポケットが形成されないように対策が講じられている。これにより、ポンプのドライランが排除されている。
【0038】
好適には、多相ポンプが気体を自動的に吸い込むことができるように、多相ポンプの吸込み側は、所定の量だけ絞られている。
【0039】
このような多相ポンプにより、本発明の1つの実施形態では、特に油および/または気体が圧送される。
【0040】
本発明による流体力学的なコンバータは、例えば1.8~2.0の設計回転数比および最大2.3の作業範囲を有することができる。
【0041】
変位可能なガイドホイールのベーンは、ガイドホイール内に最大に開放された流れ通路~完全に閉じられた流れ通路を形成するために適した回転範囲内で、好適には個別に回転可能である。軸方向内側のガイドホイールが設けられている場合、このガイドホイールは、タービンホイールとポンプホイールとの間の領域に所望の経線プロファイル輪郭を形成するために設けられていてよく、さらに、変位可能なガイドホイールのガイドベーンを変位させるための構成部材を収容していてよい。
【0042】
流体力学的なコンバータの個々のベーンホイールのベーン数は、全ての要求を考慮して比較的少なく構成されていてよい。
【0043】
本発明によるコンバータは、良好な完全性を有しており、このことは、広範に及ぶ効率特性線を意味する。つまり効率は、例えば1.3~2.2の回転数比範囲において、75%を上回ることができる。さらに効率は、1.4~2.4の回転数比範囲で75%を上回ることもできる。回転数比は、ポンプホイールの回転数に対するタービンホイールの回転数を表す。ピーク効率は、80~82%であるか、またはそれどころかこれを上回っていてもよい。
【0044】
例えば78または80%超の最大効率を有する設計回転数比範囲は、例えば1.8~2.2である。
【0045】
ポンプホイールの圧力の数値psiは、例えば1.25~3であってよく、吐出量phiは、少なくともほぼ1.1であってよい。ポンプホイールの電力消費量(ラムダ値)は、好適には少なくともほぼ0.6×10である。
【0046】
ラムダ特性線は、増加する回転数比にわたり、やや下降するように構成されていてよい。
【0047】
本発明の1つの実施形態では、コンバータは、変換が常に0.7未満であるように、すなわち、結合点が存在せず、タービンホイールのトルクが回転数比範囲全体にわたりポンプホイールのトルクよりも小さくなるように構成されている。
【0048】
ポンプホイールの直前に変位可能なガイドホイールを好適に配置することは、特に良好に段階付けられた特性線図を可能にし、ひいてはコンバータの出力伝達に良好な影響を及ぼし得るということを可能にする。段階付けとは、調整ホイールベーン(第1のガイドホイールのベーン)の回転角度に比例する、ポンプホイールの電力消費量およびタービンホイールトルクの個々の特性線の間隔を意味する。この場合、ポンプホイールの直前に変位可能なガイドホイールを配置することは、作業媒体回路内に適宜に位置決めされていれば、遠心方向にのみ通流されるガイドホイールによっても、軸方向に通流されるガイドホイールによっても達成され得る。
【0049】
流体力学的なコンバータは、好適には回転数を制限するようになっている、すなわち、回転数が作業範囲回転数比の上限を上回って増加すると、タービンホイールは、作業媒体の循環質量流の破壊をもたらし、ひいてはこれに関連して即座に限界点に達する。特に流体力学的なコンバータは、回転数比が3を上回ると、コンバータ自体が回転数を制限するようになっている。
【0050】
ベーンホイールの配置、特にポンプホイールおよびタービンホイールの位置決めは、1.8~2.0の範囲内の、タービンホイール回転数とポンプホイール回転数との間の設計回転数比、ならびに最大2.3の作業範囲を可能にするように行われる。よってこの形式のコンバータは、高速回転式のコンバータである。
【0051】
以下に、本発明を実施例と図面とに基づき例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明による高速回転式の流体力学的なコンバータの実施例を示す図である。
図2】駆動機械と、流体力学的なコンバータと、多相ポンプとを備えた本発明によるユニットの実施例を示す図である。
図3】ベーンホイールの配置が変更された、図1に対応する別の図である。
図4】第2のガイドホイールのスプリッターベーンを備えたベーンホイールのユニットが設けられた、図3に対応する図である。
【0053】
図1には、回転軸線8の一方の側の、流体力学的なコンバータ11の作業室10の軸方向断面が略示されている。作業室は、中空円環状の作業室10のもしくはこの作業室10の経線プロファイルの外側の輪郭線に対してそれぞれ内径DIと、外径DAと、幅Bとを有している。
【0054】
作業室10内には、遠心方向通流式のポンプホイール1ならびに向心方向-斜め方向通流式のタービンホイール2が配置されている。タービンホイール2の入口グリッド縁部7は、ポンプホイール1の入口グリッド縁部9よりも小さな半径上に位置している。ポンプホイール1は、作業室10の直径のほぼ中間に配置されており、タービンホイール2は少なくとも、実質的に作業室10の内径DIまで延在している。
【0055】
タービンホイール2とポンプホイール1との間、つまり作業室10の半径方向内側の領域には固定のガイドホイール5が配置されており、半径方向外側にやや離れたポンプホイール1の入口グリッド縁部9の上流側には変位可能なガイドホイール3が位置決めされている。さらに、作業室10の半径方向外側の領域には、別のガイドホイール4が設けられている。
【0056】
本発明では、ポンプホイール1の上流側のガイドホイール3は第1のガイドホイール3と呼ばれ、第1のガイドホイール3は、ガイドホイール回転軸線6を中心として変位可能である。作業室10の半径方向外側の領域に設けられたガイドホイール4は、第2のガイドホイール4と呼ばれ、第2のガイドホイール4は、2つの群のガイドベーン4.1,4.2を有しており、この場合、第2群のガイドベーン4.2の数は、第1群のガイドベーン4.1の数に比べて多くなっているかまたは等しくなっている。作業室10の半径方向内側の領域に設けられたガイドホイール5は、第3のガイドホイール5と呼ばれる。
【0057】
第1のガイドホイール3は、入口グリッド縁部14と出口グリッド縁部15とを有している。出口グリッド縁部15は、ポンプホイール1の入口グリッド縁部9にすぐ対向している。第1のガイドホイール3の入口グリッド縁部14は、回転軸線8に対して平行に位置決めされているため、作業媒体は、第1のガイドホイール3を遠心方向にのみ通流する。
【0058】
図2には、駆動機械12と、駆動機械12により駆動され、液体・空気混合物または液体・気体混合物を圧送する多相ポンプ13とを有するユニットが示されている。この場合、多相ポンプ13の駆動は、例えば図1に略示したような、本発明に基づき構成された流体力学的なコンバータ11を介して行われる。
【0059】
図3では、第2のガイドホイール4が単純なガイドホイールとして、すなわちスプリッターベーン無しで構成されている。代わりに第2のガイドホイール4には、作業媒体の流れ方向において下流側に第4のガイドホイール16が後置されている。第4のガイドホイール16は、タービンホイール2の直前に位置決めされており、図示の実施例では向心方向にのみ通流される。ただし択一的に、斜め方向-向心方向の通流部が設けられていてもよい。
【0060】
図4に示す構成では、第4のガイドホイールが再び省かれる。代わりに第2のガイドホイール4はスプリッターベーンを備えて構成されていて、第1群のガイドベーン4.1と第2群のガイドベーン4.2とを有しており、この場合、第1群のガイドベーン4.1の向きおよび/または第1群のガイドベーン4.1の数は、第2群のガイドベーン4.2の向きおよび/または第2群のガイドベーン4.2の数とは異なっている。
【符号の説明】
【0061】
1 ポンプホイール
2 タービンホイール
3 第1のガイドホイール
4 第2のガイドホイール
4.1 第1群のガイドベーン
4.2 第2群のガイドベーン
5 第3のガイドホイール
6 ガイドホイール回転軸線
7 入口グリッド縁部
8 回転軸線
9 入口グリッド縁部
10 作業室
11 流体力学的なコンバータ
12 駆動機械
13 多相ポンプ
14 入口グリッド縁部
15 出口グリッド縁部
16 第4のガイドホイール
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】