(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】効率が改善されたヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20220112BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F25B45/00 C
F25B1/00 371C
F25B1/00 371E
F25B45/00 A
F25B45/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544084
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(85)【翻訳文提出日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 KR2019013145
(87)【国際公開番号】W WO2020101176
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0141188
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0142871
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0043404
(32)【優先日】2019-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0057587
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0094645
(32)【優先日】2019-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521145532
【氏名又は名称】イ、トン ウォン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、トン ウォン
(57)【要約】
本発明はヒートポンプに関する。より詳しくは、多数の負荷条件で効率を測定するヒートポンプにおいて、各負荷条件で目標高圧と目標低圧とを設定し、前記目標圧力を最優先で達成するヒートポンプに関する。特に時間経過に伴って負荷が徐々に変われば、圧縮器を負荷に合わせて徐々に制御して、消費電力の変動が小さい、効率が改善されたヒートポンプに関する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量圧縮器、凝縮器、膨張バルブおよび蒸発器を含む回路が密閉された冷媒ラインを通して連結され、凝縮器ファン、蒸発器ファン、前記回路に冷媒を充填または前記回路から冷媒を回収する冷媒(充填)量調節手段および制御器を含むヒートポンプであって、
前記制御器の役割は、1)外気温度および負荷を参照して室外熱交換器内部の目標圧力を設定し、2)内気温度および設定温度を参照して室内熱交換器内部の目標圧力を設定し、3)目標過冷度および目標過熱度を設定し、4)前記二つのファンの両方とも温度を調節するかまたは両方とも圧力を調節するかのいずれか一つになるように制御し、
4a)前記二つのファンの両方とも温度を調節する場合には、前記凝縮器ファンで過冷度を調節し、前記蒸発器ファンで過熱度を調節し、前記膨張バルブおよび冷媒(充填)量調節手段のいずれか一つで高圧を調節し、残りの一つで低圧を調節し[ケースa、a’]、
4b)前記二つのファンの両方とも圧力を調節する場合には、前記凝縮器ファンで高圧を調節し、前記蒸発器ファンで低圧を調節し、前記膨張バルブおよび冷媒(充填)量調節手段のいずれか一つで過冷度を調節し、残りの一つで過熱度を調節し[ケースb、b’]、
5)負荷を参照して単位時間当たりに所定の冷媒が圧縮(g/s)されるように前記圧縮器を制御することを含み、時間が0時から24時になるにつれて負荷が徐々に変われば、前記ヒートポンプにおいて消費される電力も負荷と類似した形態に徐々に変わることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項2】
可変容量圧縮器、凝縮器、膨張バルブおよび蒸発器を含む回路が密閉された冷媒ラインを通して連結され、凝縮器ファン、蒸発器ファン、前記回路に冷媒を充填または前記回路から冷媒を回収する冷媒(充填)量調節手段および制御器を含むヒートポンプであって、
前記制御器の役割は、1)外気温度および負荷を参照して室外熱交換器内部の目標圧力を設定し、2)内気温度および設定温度を参照して室内熱交換器内部の目標圧力を設定し、3)目標過冷度および目標過熱度を設定し、4)前記二つのファンのいずれか一つは圧力を調節し、残りの一つは温度を調節するように制御し、
4a)前記蒸発器ファンが低圧を調節する時には、前記凝縮器ファンは過冷度を調節し、前記膨張バルブおよび冷媒(充填)量調節手段のいずれか一つは高圧を調節し、残りの一つは過熱度を制御し[ケースd、d’]、
4b)前記凝縮器ファンが高圧を調節する時には、前記蒸発器ファンは過熱度を調節し、前記膨張バルブおよび冷媒(充填)量調節手段のいずれか一つは低圧を調節し、残りの一つは過冷度を制御し[ケースe、e’]、
5)負荷を参照して単位時間当たりに所定の冷媒が圧縮(g/s)されるように前記圧縮器を制御することを含み、時間が0時から24時になるにつれて負荷が徐々に変われば、前記ヒートポンプにおいて消費される電力も負荷と類似した形態に徐々に変わることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項3】
前記冷媒(充填)量調節手段は冷媒を貯蔵する貯蔵空間、前記回路から前記冷媒貯蔵空間に冷媒を回収する回収バルブ、および前記冷媒貯蔵空間から前記回路に冷媒を充填する充填バルブを含んで構成され、
前記冷媒充填回収手段は前記膨張バルブと並列に設けられ、
前記回収バルブは凝縮器出口と連結され、
前記充填バルブは低圧と連結されることを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記冷媒(充填)量調節手段が前記膨張バルブの役割を兼ねるように、前記制御器は、前記回収バルブと前記充填バルブの開度を同時に増やすかまたは同時に減らす制御を実行することを特徴とする、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
可変容量圧縮器、凝縮器、膨張バルブおよび蒸発器を含む回路が密閉された冷媒ラインを通して連結され、凝縮器ファン、蒸発器ファン、前記回路に冷媒を充填または前記回路から冷媒を回収する冷媒(充填)量調節手段および制御器を含むヒートポンプであって、
前記制御器は冷房期間エネルギー消費効率(以下、「CSPF」)を計算する温度範囲で曲線に補正した目標凝縮温度および目標蒸発温度を用い、
前記曲線は
図12の様式の性能係数テーブルにおいて外気温度が低い側に現れ、
前記テーブルにおいて第1地点(CSPF計算に用いられる外気最大温度において目標蒸発温度)と第2地点(CSPF計算に用いられる外気最小温度において目標蒸発温度)とを連結する直線の右側に前記曲線(「外気が低い側の蒸発温度の曲線補正」)が現れることを特徴とするヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率が改善されたヒートポンプ(Heat pump having improved efficiency)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプは、熱源から「ヒートシンク」と呼ばれる目的地に熱を伝達する装置である。ヒートポンプは、冷たい空間において熱を吸収し、暖かい空間に熱を放出する。エアコンを含む空調装置(HVAC:Heating Ventialating and Air Conditioning)および冷蔵庫がヒートポンプの代表的な例である。そして、ヒートポンプを使う機器としては、冷水/温水を提供する浄水機、乾燥機、洗濯機、自動販売機などが挙げられる。
【0003】
ヒートポンプは、圧縮器、凝縮器、膨張バルブおよび蒸発器を含んで構成される。一般に、エアコンは扇風機より電気を約20倍多く消費すると知られている。それに基づいて計算してみれば、圧縮器は90%の電気を消費し、凝縮器ファンおよび蒸発器ファンは各々5%の電気を消費する。
【0004】
従来技術においては、圧縮器の消費電力を減らすために、インバータ圧縮器を用いて、負荷が小さければ低い周波数で稼動した。圧縮器の入口圧力と出口圧力との差が大きくなれば、同一な周波数で稼動しても、圧縮器は、電気をさらに多く消費する。多数の負荷条件で測定を行う冷房期間エネルギー消費効率(CSPF)および統合冷房効率(IEER)は、積極的に目標低圧と目標高圧を達成してこそヒートポンプ効率が改善されるにもかかわらず、従来には圧縮器の入口圧力と出口圧力を最優先達成目標に設定し制御しなかったので効率が低いという問題がある。
【0005】
そして、US2009/00137001および韓国特許出願KR10-2016-0072934号などにおいては、電気消費の大きい圧縮器により目標圧力(低圧)を達成するので消費電力の変動が大きいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許出願KR10-2007-7009952号(US2009/0013700 A1)
【特許文献2】韓国特許出願KR10-2016-0072934号
【特許文献3】韓国特許出願KR10-2013-0084665号(US2015/0020536 A1)
【特許文献4】韓国特許出願KR10-2016-7026740号(US2016/0370044 A1)
【特許文献5】韓国特許出願第10-2007-0084960号
【特許文献6】US2011/0041523 A1
【特許文献7】US7,010,927 B2
【特許文献8】US9,738,138 B2
【特許文献9】US2017/0059219 A1
【特許文献10】US2017/0115043 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Myung Sup Yoon、Jae Hun Lim、Turki Salem M AL Qahtani、and YujinNam、「Experimental study on comparison of energy consumption between constant and variable speed air-conditioners in two different climates」、Asian Conference on Refrigeration and Air-conditioning June 2018、Sapporo、JAPAN
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多数の負荷条件で効率を測定するヒートポンプにおいて、各負荷条件で目標高圧と目標低圧とを設定し、前記目標圧力を最優先で達成するようにする。また、電気消費の大きい圧縮器により目標圧力を達成しないようにして、効率が改善されたヒートポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヒートポンプは、可変容量圧縮器C、凝縮器HEX_C、膨張バルブEXVおよび蒸発器HEX_Eを含む回路が密閉された冷媒ラインを通して連結され、凝縮器ファンFN_C、蒸発器ファンFN_E、前記回路に冷媒を充填または前記回路から冷媒を回収する冷媒(充填)量調節手段RAAMおよび制御器224を含み、前記制御器224の役割は、1)外気温度および負荷を参照して室外熱交換器HEX_EX内部の目標圧力を設定し、2)内気温度および設定温度を参照して室内熱交換器HEX_IN内部の目標圧力を設定し、3)目標過冷度SC_tおよび目標過熱度SH_tを設定し、4)前記二つのファンの両方とも温度を調節するかまたは両方とも圧力を調節するかのいずれか一つになるように制御し、4a)前記二つのファンの両方とも温度を調節する場合には、前記凝縮器ファンFN_Cで過冷度SCを調節し、前記蒸発器ファンFN_Eで過熱度SHを調節し、前記膨張バルブEXVおよび冷媒(充填)量調節手段RAAMのいずれか一つで高圧HPを調節し、残りの一つで低圧LPを調節し[ケースa、a’]、4b)前記二つのファンの両方とも圧力を調節する場合には、前記凝縮器ファンFN_Cで高圧HPを調節し、前記蒸発器ファンFN_Eで低圧LPを調節し、前記膨張バルブEXVおよび冷媒(充填)量調節手段RAAMのいずれか一つで過冷度(SCを調節し、残りの一つで過熱度SHを調節し[ケースb、b’]、5)負荷を参照して単位時間当たりに所定の冷媒が圧縮(g/s)されるように前記圧縮器Cを制御することを含み、時間が0時から24時になるにつれて負荷が徐々に変われば、前記ヒートポンプにおいて消費される電力も負荷と類似した形態に徐々に変わることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るヒートポンプは、可変容量圧縮器C、凝縮器HEX_C、膨張バルブEXVおよび蒸発器HEX_Eを含む回路が密閉された冷媒ラインを通して連結され、凝縮器ファンFN_C、蒸発器ファンFN_E、前記回路に冷媒を充填または前記回路から冷媒を回収する冷媒(充填)量調節手段RAAMおよび制御器224を含み、前記制御器224の役割は、1)外気温度および負荷を参照して室外熱交換器HEX_EX内部の目標圧力を設定し、2)内気温度および設定温度を参照して室内熱交換器HEX_IN内部の目標圧力を設定し、3)目標過冷度SC_tおよび目標過熱度SH_tを設定し、4)前記二つのファンのいずれか一つは圧力を調節し、残りの一つは温度を調節するように制御し、4a)前記蒸発器ファンFN_Eが低圧LPを調節する時には、前記凝縮器ファンFN_Cは過冷度SCを調節し、前記膨張バルブEXVおよび冷媒(充填)量調節手段RAAMのいずれか一つは高圧HPを調節し、残りの一つは過熱度SHを制御し[ケースd、d’]、4b)前記凝縮器ファンFN_Cが高圧HPを調節する時には、前記蒸発器ファンFN_Eは過熱度SHを調節し、前記膨張バルブEXVおよび冷媒(充填)量調節手段RAAMのいずれか一つは低圧LPを調節し、残りの一つは過冷度SCを制御し[ケースe、e’]、5)負荷を参照して単位時間当たりに所定の冷媒が圧縮(g/s)されるように前記圧縮器Cを制御することを含み、時間が0時から24時になるにつれて負荷が徐々に変われば、前記ヒートポンプにおいて消費される電力も負荷と類似した形態に徐々に変わることを特徴とする。
【0011】
この時、前記冷媒(充填)量調節手段RAAMは冷媒を貯蔵する貯蔵空間RS、前記回路から前記冷媒貯蔵空間RSに冷媒を回収する回収バルブvvd、および前記冷媒貯蔵空間RSから前記回路に冷媒を充填する充填バルブvvcを含んで構成され、前記冷媒充填回収手段RCRMは前記膨張バルブEXVと並列に設けられ、前記回収バルブvvdは凝縮器HEX_C出口と連結され、前記充填バルブvvcは低圧と連結されることが好ましい。
【0012】
また、前記冷媒(充填)量調節手段RAAMが前記膨張バルブEXVの役割を兼ねるように、前記制御器224は、前記回収バルブvvdと前記充填バルブvvcの開度を同時に増やすかまたは同時に減らす制御を実行することが好ましい。
【0013】
本発明に係るヒートポンプは、可変容量圧縮器C、凝縮器HEX_C、膨張バルブEXVおよび蒸発器HEX_Eを含む回路が密閉された冷媒ラインを通して連結され、凝縮器ファンFN_C、蒸発器ファンFN_E、前記回路に冷媒を充填または前記回路から冷媒を回収する冷媒(充填)量調節手段RAAMおよび制御器224を含み、前記制御器224は冷房期間エネルギー消費効率(以下、「CSPF」)を計算する温度範囲で曲線に補正した目標凝縮温度HP_tおよび目標蒸発温度LP_tを用い、前記曲線は
図12の様式の性能係数テーブルにおいて外気温度が低い側に現れ、前記テーブルにおいて第1地点(CSPF計算に用いられる外気最大温度において目標蒸発温度)と第2地点(CSPF計算に用いられる外気最小温度において目標蒸発温度)とを連結する直線の右側に前記曲線(「外気が低い側の蒸発温度の曲線補正」)が現れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒートポンプ制御方法によれば、多数の負荷条件で効率を測定するヒートポンプにおいて、各負荷条件で目標高圧と目標低圧とを設定し、前記目標圧力を最優先で達成するヒートポンプが提供される。また、電気消費の大きい圧縮器により目標圧力を達成しないようにして、効率が改善されたヒートポンプを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の第1制御~第4制御の理解を助ける図である。
【
図5】本発明の制御順の種類を羅列した一例である。
【
図6】本発明に好適なヒートポンプ回路の一例である。
【
図7】本発明に好適なヒートポンプ回路の他の一例である。
【
図8】本発明に好適なヒートポンプ回路のまた他の一例である。
【
図9】本発明に好適なヒートポンプ回路のまた他の一例である。
【
図10】本発明に好適な主要部品の役割を表で整理したものである。
【
図11】本発明に好ましいCSPFを計算する例示である。
【
図12】本発明に好ましいCSPFを計算する他の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳しく説明する。この時、添付された図面において、同一な構成要素は可能な限り同一な符号を付していることに留意しなければならない。本明細書において、単数型は、特に言及しない限り複数型も含む。本明細書で用いられる「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」に言及された構成要素、ステップおよび/または動作は、一つ以上の他の構成要素、ステップおよび/または動作の存在または追加を排除するものではない。
【0017】
また、以下にて説明する本明細書および請求範囲で用いられた用語や単語は通常的または辞典的な意味に限定して解釈してはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈しなければならない。そして、本発明の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される公知の構成および機能に関する詳しい説明を省略する。
【0018】
以下では、説明の便宜上、特に言及しない限り、理想的なヒートポンプを用いて説明する。この時、制御器は、ヒートポンプの部品を制御して各部品の性能を調節する。以下の説明において、「調節して」、「制御して」、「制御される」などの記述があれば、制御器を別に言及しなくても、「制御器が前記記述が行われるように制御値を提供する」ことを意味する。また、制御器が実行する「制御」は、ある「役割」であってもよく、ある「順序」であっても良い。本明細書において、「制御」は、特に言及しない限り、「役割」として解釈しなければならない。また、本明細書において、用語「圧力」は、「その圧力で冷媒が沸騰する温度、すなわち、凝縮温度または蒸発温度」と解釈できることに留意しなければならない。
【0019】
<主な概念の説明>
熱交換器は、熱交換量をQ=c・m・dTで計算することができる。ここで、Qを同じにするmとdTの組み合わせは多い。上記の数式において、mは(例えば、熱交換物質が空気である場合)空気量、空気重さ、風速、熱交換器ファン速度、ファン消費電力などとして解釈することができる。この時、cは空気比熱または比例係数になるであろう。そして、温度差dT(熱交換器通過前の空気温度-通過後の空気温度)は、熱交換器内部で冷媒が沸騰する温度と流入空気の温度差によって変わりうる。本発明において、前記dTを減らす制御は、「熱交換器内部で冷媒が沸騰する温度と熱交換器と熱交換しようとする物質(例えば、空気)の温度差を減らす制御」を意味する。
【0020】
より詳しく説明すれば、熱交換器温度(熱交換器内部で冷媒が沸騰する温度)と空気温度が同じであれば熱交換は発生しない。したがって、前記温度差dTを減らす方法の一つは、熱交換器に流入される空気温度と熱交換器内部で冷媒が沸騰する温度(以下、「熱交換器温度」)との差を減らすものである。このためには、熱交換器の内部圧力を調節しなければならない。
【0021】
一般に、圧縮器の消費電力がファンの消費電力より遥かに大きいため、前記温度差dTが所定の値以上に大きい場合には、mを増やしdTを減らして目標熱交換量(Q=c・m・dT)を達成すれば、全体消費電力が減少して、ヒートポンプの効率が改善される。
【0022】
<要素技術の説明>
以下、
図1および
図2を参照して説明する。
ヒートポンプシステムに冷媒を注入することについて説明する。ヒートポンプの配管設置が完了すれば、先ず、真空ポンプを用いて前記配管の内部を真空にする。そして、外部(電子秤上にある)冷媒筒と低圧ラインを連結し圧縮器を稼動する。外部冷媒筒のバルブを開けば、外部冷媒筒からヒートポンプ内部に冷媒が充填される。設定された重さの冷媒が充填されれば、外部冷媒筒のバルブを閉める。すると、ヒートポンプにおいて高圧と低圧が適切に形成される。例えば、第1冷房サイクル(81)-(82)-(83)-(84)のようになる。ここで、冷媒を充填(以下、「第1制御」)すれば、高圧HPと低圧LPが全て(真空から低圧、真空から高圧に)増加(1)することが分かる。その逆に、冷媒を回収(以下、「第2制御」)すれば、高圧HPと低圧LPが全て(低圧から真空、高圧から真空に)減少(2)することが分かる。
【0023】
別に説明すれば、高圧と低圧が適切に形成されている冷房回路に、外部から前記回路の低圧に冷媒を追加的に充填すれば、前記追加された冷媒は、低圧にのみ全部があるのではなく(高圧・低圧が安定するまで)高圧に一部移動するようになる。ここで、冷媒を充填すれば(すなわち、第1制御をすれば)、高圧HPと低圧LPが全て増加(1)することが分かる。その逆に、冷媒を回収すれば(すなわち、第2制御をすれば)、高圧HPと低圧LPが全て減少(2)することが分かる。
【0024】
第1冷房サイクル(81)-(82)-(83)-(84)が形成された状態で、膨張バルブをさらに閉じる操作をすれば(以下、高圧と低圧の差が増加する「第3制御」)、高圧HPは増加し低圧LPは減少(3)して、第2冷房サイクル(91)-(92)-(93)-(94)のようになる。前記第3制御は、インバータ圧縮器をさらに速く駆動して実現することもできる。また、第2冷房サイクル(91)-(92)-(93)-(94)が形成された状態で、膨張バルブをさらに開ける操作をすれば(以下、高圧と低圧の差が減少する「第4制御」)、高圧HPは減少し低圧LPは増加(4)して、第1冷房サイクル(81)-(82)-(83)-(84)のようになる。前記第4制御は、インバータ圧縮器をさらに低い周波数で駆動して実現することもできる。この時、前記膨張バルブは、電子膨張バルブEEVであることが好ましい。
【0025】
第1制御(1)または第2制御(2)をすれば、高圧と低圧は全て増加(UU)するかまたは全て減少(DD)する。第3制御(3)または第4制御(4)をすれば、高圧が増加(u)すれば低圧は減少(d)し、高圧が減少(d)すれば低圧は増加(u)する。二つの圧力の両方とも一側に動く制御と互いに反対側に動く制御を組み合わせれば、一側の圧力を維持しつつ他側の圧力を調節することができる。
【0026】
例えば、第1制御(1)と第3制御(3)を同時にまたは(順序に関係なく)順次実行[(1)+(3)]すれば、高圧は増加し、低圧は相殺して変動しない。また、第1制御(1)と第4制御(4)を同時にまたは(順序に関係なく)順次実行[(1)+(4)]すれば、低圧は増加し、高圧は相殺して変動しない。また、第2制御(2)と第3制御(3)を同時にまたは(順序に関係なく)順次実行[(2)+(3)]すれば、低圧は減少し、高圧は相殺して変動しない。また、第2制御(2)と第4制御(4)を同時にまたは(順序に関係なく)順次実行[(2)+(4)]すれば、高圧は減少し、低圧は相殺して変動しない。この時、凝縮器ファンおよび蒸発器ファンを制御して過冷度および過熱度が設計値になるようにすることが好ましい。
【0027】
第3制御(3)と第4制御(4)を同時にまたは(順序に関係なく)順次実行[(3)+(4)]すれば、高圧と低圧を変更せずに単位時間当たりの冷媒循環量を調節することができる。より詳しくは、第3制御(3)では圧縮器の単位時間当たりの冷媒圧縮量をさらに増やして高圧と低圧の差をさらに増やし、第4制御(4)では膨張バルブをさらに開けて高圧と低圧の差をさらに減らせば、高圧と低圧は変わらないが、単位時間当たりに回路を循環する冷媒量(gram/sec、以下、「g/s」)はさらに増やすことができる。一方、第3制御と第4制御の制御対象を変えれば、回路を循環する冷媒量はさらに減らせることは当然である。
【0028】
以上、一側の圧力を維持しつつ他側の圧力を調節するのに必要な要素技術について説明した。本明細書では、高圧を「高圧で冷媒が沸騰する温度」、すなわち「凝縮温度」、低圧を「低圧で冷媒が沸騰する温度」、すなわち「蒸発温度」と解釈できることに留意しなければならない。
【0029】
<第1実施形態>
以下、
図2~
図4を参照して、本発明に係るヒートポンプにおいて、蒸発温度をさらに高くなるように制御する一実施形態(エアコン冷房モード)について説明する。
【0030】
図4は、蒸発器の蒸発温度をさらに高くなるように制御する順序の例である。制御順100は、第4制御(4)および第1制御(1)を連続して2回実行した例である。初期状態L0で、制御器は、ある必要により、目標低圧LP_tを現在低圧LP_0より高く設定する。すると、低圧が目標値と異なるようになり、低圧を目標値と同じにしようとするために、制御器は第4制御(4)を実行する。その結果、低圧は上がり、高圧は下がって、状態L1になる。所望のとおりに低圧が上がって蒸発温度はさらに高くなったが、高圧が下がって凝縮温度が目標凝縮温度HP_tより低くなった。ここで、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器が第1制御(1)を実行すれば、冷媒が充填されて高圧および低圧が全て上昇して状態L2になる。つまり、低圧の蒸発温度はさらに上昇して目標蒸発温度LP_tにさらに近くなり、高圧は目標凝縮温度HP_tを維持するようになる。状態L3および状態L4は、前記第4制御(4)および第1制御(1)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。すると、低圧はLP_riseに沿って上昇して目標低圧LP_tに到達するようになる。
【0031】
制御器の観点で制御順100について説明すれば、初期状態L0で、制御器は、ある必要により、目標低圧LP_tを現在低圧LP_0より高く設定する。制御器は、初期状態L0で低圧LP_0が目標値LP_tより低いことを認知し、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、膨張バルブをさらに開放する第4制御(4)を実行する。その結果、状態L1になる。状態L1で、制御器は、高圧が目標値より低いことを認知し、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、冷媒を充填する第1制御(1)を実行する。ここで、制御器の役割は、低圧が目標値を脱すれば膨張バルブを調節して目標値を達成し、高圧が目標値を脱すれば冷媒充填量を調節して目標値を達成することが分かる。
【0032】
図4において、制御順101は、制御順100と同様に第4制御(4)と第1制御(1)とを使うが、第1制御(1)を先に実行する場合である。初期状態L0aで、制御器は、ある必要により、目標低圧LP_tを現在低圧LP_0より高く設定する。すると、低圧が目標値と異なるようになり、低圧を目標値と同じにしようとするために、制御器は第1制御(1)を実行する。その結果、低圧は上がり、高圧は下がって、状態L1aになる。所望のとおりに低圧が上がって蒸発温度はさらに高くなったが、高圧が下がって凝縮温度が目標凝縮温度HP_tより高くなった。ここで、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器が第4制御(4)を実行すれば、高圧は下がり、低圧は上がって、状態L2aになる。つまり、低圧の蒸発温度はさらに上昇して目標蒸発温度LP_tにさらに近くなり、高圧は目標凝縮温度HP_tを維持するようになる。状態L3aおよび状態L4aは、前記第1制御(1)および第4制御(4)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。すると、低圧はLP_riseに沿って上昇して目標低圧LP_tに到達するようになる。
【0033】
制御器の観点で制御順101について説明すれば、初期状態L0aで、制御器は、ある必要により、目標低圧LP_tを現在低圧LP_0より高く設定する。制御器は、初期状態L0aで低圧LP_0が目標値LP_tより低いことを認知し、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、冷媒を充填する第1制御(1)を実行する。その結果、状態L1aになる。状態L1aで、制御器は、高圧が目標値より高いことを認知し、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、膨張バルブをさらに開放する第4制御(4)を実行する。ここで、制御器の役割は、高圧が目標値を脱すれば膨張バルブを調節して目標値を達成し、低圧が目標値を脱すれば冷媒充填量を調節して目標値を達成することが分かる。
【0034】
制御順100および101を比較して要約すれば、いずれも目標低圧LP_tを現在より高く設定し前記目標を達成する。そして、両方とも第1制御(1)および第4制御(4)を使う。しかし、前記第1制御および第4制御の目標は互いに変わっている。前記第1制御は冷媒を充填するが、一方では目標高圧を達成するのに使い、他方では目標低圧を達成するのに使う。別に表現すれば、第1制御(1)と第4制御(4)との順序を変えても同一な結果を得ることができる。このためには、各制御の目標を互いに変えなければならない。
【0035】
制御順100および101に示すように、第1制御(1)と第4制御(4)との順序が変わっても同じ効果を得ることができる。したがって、本発明において、制御順100は広義に解釈すれば制御順101を含むことは当然である。また、以下にて説明する各制御順150、200および250も広義に解釈しなければならない。
【0036】
図5において、制御順200は、第1制御(1)および第3制御(3)を連続して2回実行した一例である。初期状態H0で、制御器は、ある必要により、目標高圧HP_tを現在高圧HP_0より高く設定する。すると、高圧が目標値と異なるようになり、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器は冷媒を充填する第1制御(1)を実行する。その結果、高圧および低圧が全て上がって状態H1になる。所望のとおりに高圧が上がって、凝縮温度は目標凝縮温度HP_tにさらに近くなった。しかし、低圧も上がって、蒸発温度が目標蒸発温度LP_tより高くなった。低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、制御器が膨張バルブで第3制御(3)を実行すれば、高圧と低圧の差がさらに大きくなって、高圧は上がり、低圧は下がって、状態H2になる。つまり、高圧の凝縮温度はさらに上昇して目標凝縮温度HP_tにさらに近くなり、低圧は目標蒸発温度LP_tを維持するようになる。状態H3および状態H4は、前記第1制御(1)および第3制御(3)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。すると、高圧はHP_riseに沿って上昇して目標高圧HP_tに到達するようになる。
【0037】
制御器の観点で制御順200について説明すれば、初期状態H0で、制御器は、ある必要により、目標高圧HP_tを現在高圧HP_0より高く設定する。すると、高圧が目標値と異なるようになり、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器は冷媒を充填する第1制御(1)を実行する。その結果、状態H1になる。状態H1で、制御器は、低圧が目標値より高いことを認知し、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、膨張バルブをさらに閉じる第3制御(3)を実行する。ここで、制御器の役割は、高圧が目標値を脱すれば冷媒充填量を調節して目標値を達成し、低圧が目標値を脱すれば膨張バルブを調節して目標値を達成することが分かる。制御順200において、第1制御(1)と第3制御(3)との順序を互いに変えれば、制御器は、低圧は冷媒充填量をもって調節し、高圧は膨張バルブをもって調節することは当然である。
【0038】
図5において、制御順150は、第3制御(3)および第2制御(2)を連続して2回実行した例である。初期状態L5で、制御器は、ある必要により、目標低圧LP_tを現在低圧LP_0より低く設定する。すると、低圧が目標値と異なるようになり、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、制御器は膨張バルブで第3制御(3)を実行する。その結果、高圧は上がり、低圧は下がって、状態L6になる。所望のとおりに低圧が下がって蒸発温度はさらに低くなったが、高圧が上がって凝縮温度が目標凝縮温度HP_tより高くなった。高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器が第2制御(2)を実行すれば、冷媒が回収されて高圧および低圧が全て下降して状態L7になる。つまり、低圧の蒸発温度はさらに下降して目標蒸発温度LP_tにさらに近くなり、高圧は目標凝縮温度HP_tを維持するようになる。状態L8および状態L9は、前記第3制御(3)および第2制御(2)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。すると、低圧はLP_fallに沿って下降して目標低圧LP_tに到達するようになる。
【0039】
制御器の観点で制御順150について説明すれば、初期状態L5で、制御器は、ある必要により、目標低圧LP_tを現在低圧LP_0より低く設定する。制御器は、初期状態L5で低圧LP_0が目標値LP_tより高いことを認知し、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、膨張バルブをさらに閉じる第3制御(3)を実行する。その結果、状態L6になる。状態L6で、制御器は、高圧が目標値より高いことを認知し、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、冷媒を回収する第2制御(2)を実行する。ここで、制御器の役割は、低圧が目標値を脱すれば膨張バルブを調節して目標値を達成し、高圧が目標値を脱すれば冷媒充填量を調節して目標値を達成することが分かる。一方、制御順150において、第2制御(2)および第3制御(3)の順序を互いに変えれば、制御器は、低圧は冷媒充填量をもって調節し、高圧は膨張バルブをもって調節することは当然である。
【0040】
図5において、制御順250は、第2制御(2)および第4制御(4)を連続して2回実行した例である。初期状態H5で、制御器は、ある必要により、目標高圧HP_tを現在高圧HP_0より低く設定する。すると、高圧が目標値と異なるようになり、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器は冷媒を回収する第2制御(2)を実行する。その結果、高圧および低圧が全て下がって状態H6になる。所望のとおりに高圧が下がって、凝縮温度は目標凝縮温度HP_tにさらに近くなった。しかし、低圧も下がって、蒸発温度が目標蒸発温度LP_tより低くなった。低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、制御器が第4制御(4)を実行すれば、高圧と低圧との差がさらに減って、高圧は下がり、低圧は上がって、状態H7になる。つまり、高圧の凝縮温度はさらに下降して目標凝縮温度HP_tにさらに近くなり、低圧は目標蒸発温度LP_tを維持するようになる。状態H8および状態H9は、前記第2制御(2)および第4制御(4)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。すると、高圧はHP_fallに沿って下降して目標高圧HP_tに到達するようになる。
【0041】
制御器の観点で制御順250について説明すれば、初期状態H5で、制御器は、ある必要により、目標高圧HP_tを現在高圧HP_0より低く設定する。すると、高圧が目標値と異なるようになり、高圧を目標値HP_tと同じにしようとするために、制御器は冷媒を回収する第2制御(2)を実行する。その結果、状態H6になる。状態H6で、制御器は、低圧が目標値より低いことを認知し、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、膨張バルブをさらに開放する第4制御(4)を実行する。ここで、制御器の役割は、低圧が目標値を脱すれば膨張バルブを調節して目標値を達成し、高圧が目標値を脱すれば冷媒充填量を調節して目標値を達成することが分かる。要約すれば、制御器は、低圧は膨張バルブをもって調節し、高圧は冷媒充填量をもって調節する。制御順250において、第2制御(2)および第4制御(4)の順序を互いに変えれば、制御器は、低圧は冷媒充填量をもって調節し、高圧は膨張バルブをもって調節することは当然である。
【0042】
従来のエアコンは、ある程度稼動して、冷房負荷が減少(すなわち、熱交換要求量が減少)した場合(または外気温度が下がって負荷が減少した場合)には、室外機ファンFN_EXが最大速力以下で回転するようになる。この時、凝縮器において熱交換温度差が大きい場合には、本発明の制御順250で蒸発温度を維持しつつ凝縮温度を下げることが好ましい。すると、室外熱交換器HEX_EXの熱交換量(Q=c・m・dT)を負荷の大きさに対応する所定の値に維持しつつ、dTを減らし、mを増やして、エアコンの電気消費を減らすことができる。
【0043】
従来のエアコンは、ある程度稼動して、冷房負荷が減少(すなわち、熱交換要求量が減少)ある場合には、室内機ファンFN_INが最大速力以下で回転するようになる。この時、蒸発器において熱交換温度差が大きい場合には、本発明の制御順100に凝縮温度を維持しつつ蒸発温度を高めることが好ましい。すると、室内熱交換器HEX_INの熱交換量(Q=c・m・dT)を負荷の大きさに維持しつつ、dTを減らし、mを増やして、エアコンの電気消費を減らすことができる。
【0044】
ここで、mを増やすとは、「ファンの回転速度をさらに高める」または「単位時間当たりに移送した空気重さをさらに増やす」と解釈することができる。そして、dTを減らすとは、実際に圧縮器の消費電力を減らすこと(例えば、インバータ圧縮器駆動周波数を下げること)、圧縮器を別に制御しなくても[制御順250の結果または制御順100の結果]高圧と低圧との差が減って圧縮器の消費電力が下がることを含む。
【0045】
過冷度SCが一定の値に維持される状態で、高圧が低くなれば、単位重さの冷媒で蒸発器HEX_Eにおいて交換できる熱量が増加する。より詳しく説明すれば、(低圧と)過冷度SCを所定の値に維持しつつ高圧を下げれば、すなわち、制御順250を実行すれば、(p-h線図)高圧において飽和液点と飽和蒸気点の距離がさらに遠くなる。その結果、同一な量の冷媒で(室内/室外)熱交換器において熱交換をさらに多くすることができる。この時、(冷房または暖房)に必要な熱交換要求量が変わらなかったとすれば、1)単位時間当たりの冷媒循環量(g/s)を減らして(例えば、インバータ圧縮器駆動周波数を下げて)圧縮器において消費される電力を減らすことができる。そして、2)圧縮器両端の圧力差が減って圧縮器において消費される電力を減らすことができる。
【0046】
また、過熱度SHが一定の値に維持される状態で、低圧が高くなれば、低圧において冷媒密度が高くなって単位時間当たりの冷媒循環量(g/s)が増加し、(室内/室外)熱交換器において交換できる熱量が増加する。この時、(冷房または暖房)に必要な熱交換要求量が変わらなかったとすれば、1)単位時間当たりの冷媒循環量(g/s)を減らして(例えば、インバータ圧縮器駆動周波数を下げて)圧縮器において消費される電力を減らすことができる。また、2)圧縮器両端の圧力差が減って圧縮器において消費される電力を減らすことができる。
【0047】
したがって、負荷が定格より小さく、dTが所定の値より大きい場合には、制御順100または/および250を実行すれば、ヒートポンプの効率は改善される。多数の先行実験により多数の条件(例えば、外気温度、設定温度、内気温度など)で好ましい目標高圧HP_tおよび目標低圧LP_tを求めることができることは当然である。
【0048】
本発明のヒートポンプの制御概念は暖房にも適用できることは当然である。したがって、本明細書で説明した冷房モードの「目標蒸発温度」は、「室内熱交換器HEX_INの熱交換温度」と解釈することが好ましい。そして、「目標凝縮温度」は、「室外熱交換器HEX_EXの熱交換温度」と解釈することが好ましい。
【0049】
<第2実施形態>
以下、
図6を参照して、本発明に好適なヒートポンプ600の一例を説明する。
ヒートポンプ600は、圧縮器C、凝縮器HEX_C、膨張バルブEXVおよび蒸発器HEX_Eを含む「回路」が密閉された冷媒ラインを通して連結される。そして、前記膨張バルブEXVと並列に冷媒貯蔵タンクRS1が設けられる。前記膨張バルブEXVの入口と前記タンクRS1の入口との間には、「回路」から冷媒を回収する回収バルブvvdが設けられる。そして、前記膨張バルブEXVの出口と前記タンクRS1の出口との間には、「回路」に冷媒を充填する充填バルブvvcが設けられる。以下では、前記冷媒貯蔵タンクRS1、前記回収バルブvvdおよび前記充填バルブvvcを括って「冷媒(充填)量調節手段RAAM」と称する。
【0050】
以下、ヒートポンプ600の設置時に冷媒を充填する一例を説明する。先ず、ヒートポンプ600の配管を設けた後にバルブEXV、vvd、vvcを開け、外部真空ポンプを用いて「回路」と冷媒貯蔵タンクRS1の内部を真空状態にする。そして、回収バルブvvdと充填バルブvvcとを完全に閉じる。ヒートポンプ600の外部冷媒筒を前記「回路」に連結し、圧縮器Cを稼動する。そして、外部冷媒筒バルブを開ければ、外部冷媒筒からヒートポンプ600に冷媒が充填される。設計量の冷媒が充填されれば、外部冷媒筒バルブを完全に閉める。
【0051】
以下、ヒートポンプ600の「回路」から冷媒を回収して冷媒貯蔵タンクRS1に貯蔵する第2制御(2)について説明する。冷媒回収バルブvvdを開ければ、「回路」の高圧は高く、貯蔵タンクRS1の内部は真空であるため、「回路」から貯蔵タンクRS1に凝縮された冷媒が回収されて膨張する。一定量の冷媒が貯蔵タンクRS1に回収されれば、(高圧と貯蔵タンク内部の圧力とが同じになって)これ以上冷媒が回収されなくなる。この時、低圧に連結された冷媒充填バルブvvcを少し開けて貯蔵タンクRS1内部の膨張された冷媒を排出すれば、貯蔵タンクRS1の内部圧力が低くなるため、凝縮された冷媒回収が続く。
【0052】
以下、ヒートポンプ600の「回路」に冷媒を充填する第1制御(1)について説明する。回収バルブvvdは、閉じられている状態で充填バルブvvcを開ければ、圧縮器の吸入力によって冷媒貯蔵タンクRS1内部の冷媒が移動して「回路」に充填される。最終的には、低圧ラインの圧力と冷媒貯蔵タンクRS1の内部圧力とが同じになるまで冷媒が「回路」に充填される。
【0053】
本実施形態において、第3制御(3)および第4制御(4)に関する説明は、本発明の要素技術の説明で詳細にしたので省略する。以上の説明から、ヒートポンプ600において、本発明の要素技術である第1制御(1)~第4制御(4)が可能である。
【0054】
図7のヒートポンプ700は、冷媒充填バルブvvcが貯蔵タンクRS2と圧縮器C入口との間に設けられた場合を例示したものである。
【0055】
図8のヒートポンプ800は、
図6のヒートポンプ600において、膨張バルブEXVを除去し、冷媒貯蔵タンクRS1を気液分離が可能な貯蔵タンクRS3に変更し、前記気液分離器RS3内部の気体を圧縮器Cで注入(より広い意味の用語は「供給」)できるように変更したものである。この時、前記回収バルブE_vvdと前記充填バルブE_vvcとの開度を同時に増やすかまたは同時に減らす制御をして膨張バルブEXVの機能を実行する。冷媒の充填および回収は、ヒートポンプ600と同様の原理で可能であるので詳細な説明は省略する。
【0056】
図6~
図8の冷媒(充填)量調節手段RAAMは、膨張バルブEXVと並列に設けられたものとして解釈しなければならない。
【0057】
<第3実施形態>
以下、
図6を参照して、本発明に好適なヒートポンプ600の冷房モード制御方法の一例を説明する。ヒートポンプ600の回路構成は前述したので省略する。本発明において、制御器224は、以下の第1役割~第7役割を含むことが好ましい。
【0058】
1)可変容量圧縮器の制御:制御器224は、圧縮器Cが設定された冷媒量を単位時間当たりに圧縮(g/s)するように制御する。前記圧縮量(g/s)は、冷房負荷を参照して計算することができる。インバータ圧縮器Cの場合は、負荷に対応して設定された周波数で稼動する。低圧および過熱度SCが一定に維持されるのであれば、その条件で冷媒の密度は一定であるため、前記圧縮器Cが単位時間当たりに圧縮する冷媒量(g/s)は駆動周波数別に計算されるであろう(以下、「単位時間当たりの冷媒圧縮量の制御」)。本発明において、圧縮行程距離が可変する圧縮器を使用できることは当然である。
【0059】
2)凝縮器ファン速度の制御:凝縮器HEX_Cの出口で測定された冷媒の過冷度SCが目標過冷度SC_tになるように、制御器224は凝縮器ファンFN_Cの速度を制御する(以下、「凝縮器ファンで過冷度の制御」)。
【0060】
3)蒸発器ファン速度の制御:蒸発器HEX_Eの出口で測定された冷媒の過熱度SHが目標過熱度SH_tになるように、制御器224は蒸発器ファンFN_Eの速度を制御する(以下、「蒸発器ファンで過熱度の制御」)。
【0061】
4)膨張バルブ開度の制御:膨張バルブEEVを現在よりさらに開ければ、高圧は下がり、低圧は上がる。その逆に、膨張バルブEEVを現在よりさらに閉じれば、高圧は上がり、低圧は下がる。本発明では、二つの圧力のうち一側の圧力を目標圧力になるように、制御器224が膨張バルブEXVを制御する。以下、制御器224が膨張バルブで低圧を調節することを最優先達成目標にする場合には、「膨張バルブで低圧制御」という。そして、高圧を調節することを最優先達成目標にする場合には、「膨張バルブで高圧制御」という。このために、前記膨張バルブEXVは、電子膨張バルブEEVであることが好ましい。
【0062】
5)冷媒(充填)量調節手段RAAMの制御:冷媒を回路に充填すれば高圧と低圧が全て上がり、回収すれば全て下がる。本発明では、二つの圧力のうち一側の圧力を目標圧力になるように、制御器224が冷媒(充填量)調節手段を制御する。以下、制御器が冷媒(充填量)調節手段で高圧を調節することを最優先達成目標にする場合には、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで高圧制御」という。そして、低圧を調節することを最優先達成目標にする場合には、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで低圧制御」という。
【0063】
6)目標凝縮温度の設定:制御器224は、公式1のように外気温度Taを参照して、外気温度より所定の値c1だけ高く目標凝縮温度HP_tを設定することが好ましい。
Tc=Ta+c1 (式1)
例)c1=10.0、負荷の大きさに関係なく、Tc=Ta+10.0
そして、公式2のように外気温度および負荷大きさを参照して設定することも好ましい。
Tc=Ta+c1+c2×Qc/Qc_max (式2)
例)c1=10.0、c2=1.0、定格凝縮負荷Qc_max=10.0kW、
凝縮負荷Qc=2kWであれば、Tc=Ta+10.2℃、
凝縮負荷Qc=4kWであれば、Tc=Ta+10.4℃
【0064】
7)目標蒸発温度の設定:制御器224は、公式3のように内気温度Tinを参照して、内気温度より所定の値e1だけ低く目標蒸発温度を設定することが好ましい。
Te=Tin-e1 (式3)
例)e1=15.0、負荷の大きさに関係なく、Te=Tin-15.0
そして、公式4のように内気温度Tinおよび負荷大きさを参照して設定することも好ましい。
Te=Tin-(e1+e2×Qe/Qe_max) (式4)
例)e1=10.0、e2=10.0、定格蒸発負荷Qe_max=10.0kW
蒸発負荷Qe=3kWであれば、Te=Tin-13.0℃
蒸発負荷Qe=9kWであれば、Te=Tin-19.0℃
【0065】
一方、様々な環境(例えば、外気温度、内気温度、湿度、設定温度など)で多数の先行実験により目標凝縮温度HP_tおよび目標蒸発温度LP_tを求めることができ、前記求められた値を制御器224が使用できることは当然である。そして、制御器は、負荷の変動に応じて随時にまたは所定の制御周期で前記目標値HP_t、LP_tを設定できることは当然である。
【0066】
以下、
図5の制御順100を参照して、低圧を上げようとする場合(高圧は維持)の好ましい制御順について説明する。現在[初期状態L0]より低圧を上げようとするため、制御器224は、目標低圧LP_tを現在LP_0より高く設定する。すると、現在低圧LP_0と目標低圧LP_tが異なるため、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、「膨張バルブで低圧制御」が動作して、膨張バルブを現在よりさらに開放する第4制御(4)をする。前記第4制御(4)により、高圧は下がり、低圧は上がって、状態はL0からL1になる。前記第4制御(4)により、高圧が目標値HP_tを脱した。そのため、目標高圧HP_tを維持するために、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで高圧制御」が動作して、回路に冷媒を充填する第1制御(1)をする。前記第1制御(1)により高圧および低圧が全て上昇して、状態はL1からL2になる。その結果、高圧は初期状態L0と同じ値を維持するようになり、低圧は目標低圧LP_tにさらに近くなる。状態L3および状態L4は、前記第4制御(4)および第1制御(1)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。
【0067】
以下、
図5の制御順150を参照して、低圧を下げようとする場合(高圧は維持)の好ましい制御順について説明する。現在[初期状態L5]より低圧を下げようとするため、制御器224は、目標低圧LP_tを現在LP_0より低く設定する。すると、現在低圧LP_0と目標低圧LP_tとが異なるため、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、「膨張バルブで低圧制御」が動作して、膨張バルブを現在よりさらに閉じる第3制御(3)をする。前記第3制御(3)により、高圧は上がり、低圧は下がって、状態はL5からL6になる。前記第3制御(3)により、高圧が目標値HP_tを脱した。そのため、目標高圧HP_tを維持するために、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで高圧制御」が動作して、回路から冷媒を回収する第2制御(2)をする。前記第2制御(2)により高圧および低圧が全て下がって、状態はL6からL7になる。その結果、高圧は初期状態L5と同じ値を維持するようになり、低圧は目標低圧LP_tにさらに近くなる。状態L8および状態L9は、前記第3制御(3)および第2制御(2)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。
【0068】
制御順200および250は、前述した制御順100および150と類似した枠組みで説明が可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
以下、
図4の制御順101を参照して、低圧を上げようとする場合(高圧は維持)の好ましい制御順について説明する。現在[初期状態L0a]より低圧を上げようとするため、制御器224は、目標低圧LP_tを現在LP_0より高く設定する。すると、現在低圧LP_0と目標低圧LP_tとが異なるため、低圧を目標値LP_tと同じにしようとするために、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで低圧制御」が動作して、冷媒を充填する第1制御(1)をする。前記第1制御(1)により高圧と低圧が全て上がって、状態はL0aからL1aになる。前記第1制御(1)により、高圧が目標値HP_tを脱した。そのため、目標高圧HP_tを維持するために、膨張バルブで高圧制御」が動作して、膨張バルブをさらに開放する第4制御(4)をする。前記第4制御(4)により、高圧は下がり、低圧は上がって、状態はL1aからL2aになる。その結果、高圧は初期状態L0aと同じ値を維持するようになり、低圧は目標低圧LP_tにさらに近くなる。状態L3aおよび状態L4aは、前記第4制御(4)および第1制御(1)を順次もう一度繰り返したものを図示したものである。
【0070】
本実施形態で説明した制御順100を広義に解釈すれば制御順101を含むものとして解釈しなければならない。より詳しくは、制御順100および101は、全て冷媒を充填する第1制御(1)と膨張バルブをさらに閉じる第4制御(4)を使う。冷媒を充填する制御により、制御順100では低圧を調節し、制御順101では高圧を調節した。そして、膨張バルブをさらに閉じる制御により、制御順100では低圧を調節し、制御順101では高圧を調節した。要約すれば、第1制御(1)と第4制御(4)の順序を変えても同一な結果を得ることができる。このためには、第1制御(1)と第4制御(4)との目標を互いに変えなければならない。
【0071】
<第4実施形態>
図9を参照して、本発明のヒートポンプの冷房モードにおいて、主要部品に対する制御器224の好ましい役割について説明する。本発明の制御順100~250は、
図9においてケースaとして実現されることができる。より詳しく説明すれば、制御器224は、以下の第1~第7役割を実行して制御順100~250を実行することができる。
【0072】
1)目標凝縮温度HP_tの設定:制御器224は、外気温度、負荷などを参照して、室外熱交換器(凝縮器)内部で冷媒が沸騰する目標温度(目標凝縮温度)を設定する役割をする。朝から昼になるにつれて外気温度および負荷が徐々に上昇する場合には、目標凝縮温度HP_tを現在HPより高く徐々に設定することができる。
【0073】
2)目標蒸発温度LP_tの設定:制御器224は、内気温度、設定温度などを参照して、室内熱交換器(蒸発器)内部で冷媒が沸騰する目標温度(目標蒸発温度)を設定する役割をする。内気温度と設定温度の差が小さい場合、そして現在の蒸発器ファンFN_Eの速度が設計定格以下である場合、目標蒸発温度LP_tを現在より高く設定することができる。
【0074】
3)冷媒圧縮量の制御:所定の設定された冷媒量を単位時間当たりに圧縮(g/s)するように、制御器224は、可変容量圧縮器Cを制御する役割をする。例えば、低圧および過熱度SCが一定の値を維持するのであれば、その条件で冷媒の密度は一定であるため、前記圧縮器Cが単位時間当たりに圧縮する冷媒量(g/s)は、圧縮器駆動周波数別に計算されるであろう[
図9においてA]。
【0075】
4)過熱度の制御:過熱度SHが目標過熱度SH_tになるように、制御器224は、蒸発器ファンFN_Eの速度を制御する役割をする[
図9においてSH_tとFN_Eの交差点a]。
【0076】
5)過冷度の制御:過冷度SCが目標過冷度SC_tになるように、制御器224は、凝縮器ファンFN_Cの速度を制御する[
図9においてSC_tとFN_Cの交差点a]。
【0077】
6)低圧の制御:低圧LPが目標圧力LP_tになるように、制御器224は、膨張バルブEXVを制御する役割をする。より詳しくは、膨張バルブを調節すれば、高圧と低圧とが共に変更される。この時、制御器は、低圧が目標値になるように制御する「膨張バルブで低圧制御」役割をする[
図9においてLP_tとEXVの交差点a]。
【0078】
7)高圧の制御:高圧HPが目標圧力HP_tになるように、制御器224は、冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御する役割をする。冷媒を充填または回収すれば、高圧と低圧とが同時に上がるかまたは下がる。この時、制御器は、高圧が目標値になるように制御する「冷媒(充填)量調節手段RAAMで高圧制御」役割をする[
図9においてHP_tとRAAMの交差点a]。
【0079】
制御器224が前記第1~第7役割を実行するにおいて特に要求される順序はない。極端な例として、各部品に制御器が1個ずつ割り当てられ、各制御器は独立した目標を有し、その目標を達成するために制御を実行すれば良い。
【0080】
一方、
図5の制御順100~250が実行されるためには、現在圧力と目標圧力が異なるべきであるため、目標圧力を設定する前記第1または第2役割が他の役割より優先的に実行されなければならないであろう。例えば、制御順100は、目標蒸発温度LP_tを現在より高く設定する(第2役割)。すると、低圧が目標値と異なるため、「膨張バルブで低圧制御」が自動で動作する(第6役割)。そして、前記第6役割により高圧が変更され、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで高圧制御」が自動で動作する(第7役割)。
【0081】
制御順150は、制御順100のように前記第2、第6および第7役割で実現される。但し、前記第2の役割において目標蒸発温度LP_tを現在より低く設定することが制御順100とは異なる。
【0082】
制御順200および250は、目標凝縮温度を設定する第1役割が先に実行される。すると、高圧が目標値と異なるため、「冷媒(充填)量調節手段RAAMで高圧制御」が自動で動作する(第7役割)。そして、前記第7役割により低圧が変更され、「膨張バルブで低圧制御」が自動で動作する(第6役割)。
【0083】
以上、目標高圧または目標低圧を設定すれば、低圧制御(第6役割)および高圧制御(第7役割)が自動で動作して本発明の制御順100~250が実行されることを説明した。
【0084】
第1実施形態および第3実施形態において、膨張バルブEXVと冷媒(充填)量調節手段RAAMの制御目標を変えた制御順101と101は同じ結果になることを説明した。これを
図9のケースaに適用すればケースa’になる。より詳しくは、制御器が冷媒(充填)量調節手段RAAMで低圧を調節し[
図9においてLP_tとRAAMの交差点a’]、膨張バルブで高圧を調節すれば[
図9においてHP_tとEXVの交差点a’、以下、「
図9において」は省略する]、ケースa’になる。
【0085】
以下にて説明する
図9のケースb~eでは、第1~第3役割はケースaと同様であり、第4~第7役割が異なる。
【0086】
図9のケースbおよびb’は、全ての圧力(高圧、低圧)をファン速度で制御し、過熱度と過冷度を膨張バルブと冷媒(充填)量調節手段で制御することを図示したものである。より詳しくは、凝縮器ファンFN_Cの速度を制御して高圧HPを調節し[HP_tとFN_Cの交差点b]、蒸発器ファンFN_Eの速度を制御して低圧LPを調節する[LP_tとFN_Eの交差点b]。そして、膨張バルブEXVで過熱度SHを調節し[SH_tとEXVの交差点b]、冷媒(充填)量調節手段RAAMで過冷度SCを調節すれば[SC_tとRAAMの交差点b]、ケースbになる。
【0087】
第1実施形態および第3実施形態において、膨張バルブEXVと冷媒(充填)量調節手段RAAMの制御目標を変えた制御順101と101は同じ結果になることを説明した。これを
図9のケースbに適用すればケースb’になる。より詳しくは、ケースbにおいて膨張バルブEXVと冷媒(充填)量調節手段RAAMの制御目標を互いに変えれば、ケースb’になる。冷媒(充填)量調節手段RAAMで過熱度SHを調節し[SH_tとRAAMの交差点b’]、膨張バルブEXVで過冷度SCを調節すれば[SC_tとEXVの交差点b’]、ケースb’になる。
【0088】
前記ケースa、a’、bおよびケースb’は、ファン(蒸発器ファン、凝縮器ファン)が全て圧力(高圧、低圧)を制御するか、または全て温度(過熱度、過冷度)を調節する。
【0089】
以下、高圧HPが目標高圧HP_tになるように、制御器224が冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御する役割をする時にはx1と称し、制御器224が膨張バルブEXVを制御する役割をする時にはx2と称し、制御器224が凝縮器ファンFN_Cの速度を制御する役割をする時にはx3と称する。
【0090】
そして、低圧LPが目標低圧LP_tになるように、制御器224が冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御する役割をする時にはy1と称し、制御器224が膨張バルブEXVを制御する役割をする時にはy2と称し、制御器224が蒸発器ファンFN_Eの速度を制御する役割をする時にはy3と称する。
【0091】
前記高圧を調節するx1~x3と、低圧を調節するy1~y3とを組み合わせれば、下記の7つの組み合わせにより高圧と低圧を調節することができる。すなわち、(x1、y2)(x1、y3)(x2、y1)(x2、y3)(x3、y1)(x3、y2)および(x3、y3)である。ここで、ケースaは(x1、y2)組み合わせであり、ケースa’は(x2、y1)組み合わせであり、ケースbは(x3、y3)組み合わせであることが分かる。
【0092】
一方、
図9のケースdおよびeは、二つのファン(蒸発器ファン、凝縮器ファン)のうち一つは圧力を制御し、残りの一つは過熱度または過冷度のいずれか一つの温度を制御する場合である。
【0093】
より詳しくは、ケースdは、(x1、y3)組み合わせであって、蒸発器ファンFN_Eの速度を制御して低圧y3を調節し[LP_tとFN_Eの交差点d]、膨張バルブEXVを制御して過熱度SHを調節する[SH_tとEXVの交差点d]。冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御して高圧HPを調節する[HP_tとRAAMの交差点d]。そして、凝縮器ファンFN_Cの速度を制御して過冷度SCを調節する[SC_tとFN_Cの交差点d]。
【0094】
ケースdにおいて膨張バルブEXVと冷媒(充填)量調節手段RAAMの制御目標を互いに変えれば、ケースd’になる。より詳しくは、膨張バルブEXVを制御して高圧HPを調節し[HP_tとEXVの交差点d’]、冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御して過熱度SHを調節する[SH_tとRAAMの交差点d’]。一例として、過熱度が目標より高ければ、冷媒を前記手段で充填して目標過熱度SH_tを達成する。ここで、ケースd’は、(x2、y3)組み合わせであることが分かる。
【0095】
ケースeは、(x3、y2)組み合わせであって、凝縮器ファンFN_Cの速度を制御して高圧HPを調節し[HP_tとFN_Cの交差点e]、蒸発器ファンFN_Eの速度を制御して過熱度SHを調節する[SH_tとFN_Eの交差点e]。膨張バルブEXVを制御して低圧LPを調節する[LP_tとEXVの交差点e]。そして、冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御して過冷度SCを調節する[SC_tとRAAMの交差点e]。
【0096】
ケースeにおいて膨張バルブEXVと冷媒(充填)量調節手段RAAMの制御目標を互いに変えれば、ケースe’になる。より詳しくは、膨張バルブEXVを制御して過冷度SCを調節し[SC_tとEXVの交差点e’]、冷媒(充填)量調節手段RAAMを制御して低圧LPを調節する[LP_tとRAAMの交差点e’]。ここで、ケースe’は、(x3、y1)組み合わせであることが分かる。
【0097】
<産業効果>
以下、
図10を参照して、本発明の利点を簡単に説明する。
図10は、本明細書で言及した(非特許文献)先行技術から引用したものであって、インバータエアコンを24時間稼動しつつ測定した結果である。
【0098】
図10において、室内負荷IdLdは四角形で、外気温度OdTは円で、室内温度IdTは点で表示されている。そして、消費電力Pdは実線で表示されている。室内温度IdTが約26℃から28℃の間に適切に制御されている。時間が0時から24時になるにつれて外気温度OdTと室内負荷IdLdが徐々に変わり、その形態は類似している。
【0099】
測定された消費電力Pdは、約1時間半を周期に騰落を繰り返している。その騰落幅が1.5kW程度であるものもある。これは、従来技術(例えば、US2009/00137001および韓国出願第KR10-2016-0072934号)が、ヒートポンプにおいて電気を最も多く消費する圧縮器で低圧を制御するためである。電気消費の小さい他の部品(例えば、膨張バルブ)または手段(例えば、冷媒充填量調節手段)で目標圧力を達成するのであれば、前記消費電力の騰落幅は数ワットから数十ワット以内に安定化することができる。その結果、ヒートポンプの消費電力も、室内負荷IdLdと類似した形態Pd2に徐々に変わるであろう。
【0100】
この時、圧縮器は、熱交換要求量IdLdに適するように制御されることが好ましい。例えば、圧縮器の入口圧力および過熱度が所定の値に制御されているのであれば、圧縮器入口の冷媒密度もある値に固定される。したがって、熱交換要求量IdLdに好適な冷媒量を単位時間当たりに圧縮(g/s)しようとすれば、インバータ圧縮器の周波数を制御すれば良い。
図10のように室内負荷IdLdが徐々に変われば、インバータ圧縮器の周波数も徐々に変わるであろう。そして、消費電力Pd2も室内負荷と類似した形態に徐々に変わるであろう。
【0101】
本発明において、従来のヒートポンプ消費電力Pdから約1時間半の間隔で現れる数kWの電力変動を除去できることによって発電所の予備電力を下げることができる。そして、圧力を能動的に生成する圧縮器駆動周波数が徐々に変わるため、高圧および低圧も徐々に変わるので、制御プログラムが単純になる。その結果、従来よりも高いレベルの最適化が可能となって、エネルギー効率の向上が予想される。
【0102】
<第5実施形態>
以下、本発明に好適なヒートポンプの冷房モード制御において、目標凝縮温度HP_tおよび目標蒸発温度LP_tを設定する一例を説明する。
図11の左側は、凝縮温度Tcと蒸発温度Teの組み合わせに対する性能係数(以下、「COP」)をテーブルに作ったものである。そして、
図11の右側は、前記COPを用いて冷房期間エネルギー消費効率(以下、「CSPF」)を計算した一例である。
【0103】
先ず、
図11のCOPテーブルにおいて、コラムAには、外気温度Taが高い値から低い値に1℃の間隔で記録されている。コラムBには、前記外気温度Taでの凝縮温度Tcの目標値が記録されている。前記目標凝縮温度HP_tは、公式1を用いて外気温度Taより10℃高く設定したものである。コラムDは、蒸発温度Teを8℃にし、凝縮温度はコラムBの値を用いて計算したCOPを示したものである。コラムE~Mは、コラムDと同様の方法で計算されたCOPを示したものである。前記COP計算において、蒸発温度Teは8℃から17℃の間の値であり、凝縮温度TcはコラムBの値である。
【0104】
以下、目標蒸発温度LP_tを選定する方法について説明する。
図11のCOPテーブルにおいて、凝縮温度Tcが最も高く(53℃)蒸発温度が最も低い(8℃)地点(以下、「第1地点」)から、凝縮温度Tcが最も低く(25℃)蒸発温度が最も高い(17℃)地点(以下、「第2地点」)を連結する直線をひく。そして、前記直線下の(斜めの数字で表示された)COP値をコラムRに記録し、CSPFを計算する時に用いる。そして、前記直線下の(斜めの数字で表示された)COPに適用された蒸発温度TeをコラムCに記録する。コラムCの蒸発温度Teが目標蒸発温度LP_tである(以下、「蒸発温度の直線補正」)。
【0105】
以下、CSPFを計算する方法について説明する。
図11において、CSPF計算は、コラムN~Rを用いて計算する。コラムNには、外気温度Taが記録されている。コラムRには、前記外気温度TaにおいてヒートポンプのCOP(
図11において直線下の斜めの数字)が記録されている。コラムO~Qには、地域別の外気温度に対するエアコン稼動時間が記されている。コラムOはインド、コラムPは韓国であり、コラムQはISO 16358値である。前記コラムのエアコン稼動時間を用いてCSPFを計算すれば、インドは6.33、韓国は6.98、そしてISO 16358の場合は7.60になる。
【0106】
以上の方法において、外気温度が低くなるほど目標蒸発温度を高くなるように設定した。これは、一般に、外気温度が低くなるほど、冷房負荷が下がるので可能である。この時、熱交換量はQ=c・m・dTで計算されるものを利用し、Qは負荷を満たすようにする。より詳しくは、dTを下げて、ヒートポンプにおいて電気を最も多く消費する圧縮器の電力消費を減らし、mを高めて、QがdTを下げる前と同じにする。ここで、dTを下げるとは、冷媒の蒸発温度を高くして(すなわち、低圧を高くして)熱交換器に流入される空気との温度差を減らせば良い。
【0107】
以下、CSPFをさらに改善する方法について説明する。
図12のCOPテーブルにおいて、前記第2地点の近く(すなわち、蒸発温度17℃、凝縮温度25℃~31℃)では、前記二つの地点を連結する直線下のCOPより高い値のCOPを目標COPに選定する。そして、前記目標COPが計算される蒸発温度Teを目標蒸発温度LP_tにする。そして、前記目標COPをCSPF計算に用いる。具体的な数値として、例えば、外気温度Taが28℃である場合、前記直線下のCOPは6.50である。前記値より高いCOP値のうち(曲線下の)7.14を選択する。そして、前記COPが計算される蒸発温度Teの15℃を目標蒸発温度LP_tに選定する。前記第2地点近くの曲線から選択されたCOPは直線から選択されたCOPより高く、エアコン稼動時間も相対的に多いことにより、CSPFは以前より大きく改善される(以下、「外気が低い側の蒸発温度の曲線補正」)。
【0108】
以上の説明で選択されたCOPの一例を視覚的に表現すれば、
図12に点線で表示された曲線のように例示することができる。
図12において、前記曲線下の(斜めの数字で表示された)COP値を用いてCSPFを計算すれば、直線下のCOP値を用いた場合より改善される。つまり、インドは6.33から6.82、韓国は6.98から7.68、そしてISO 16358は7.60から8.40にCSPFが改善される。この時、前記「外気が低い側の蒸発温度の曲線補正は」、
図12の様式において(前記第1地点と第2地点とを連結する)直線の右側に現れる。
【0109】
本実施形態においては、コラムRに表示された1セットの目標COP値を用いて多数地域のCSPFを計算した。実際の実現では、各地域別に最適化された目標凝縮温度HP_tおよび目標蒸発温度LP_tを用いてCSPFを計算することができる。別に表現すれば、各地域別にCSPFを計算するのに用いられる外気の最大温度と最小温度を第1地点および第2地点にして目標蒸発温度を選定することができる。したがって、凝縮温度および蒸発温度の最小および最大値は各地域別に異なりうる。
【0110】
一方、幾つかの負荷において(例えば、100%、75%、50%および25%負荷)負荷別の性能係数を求め、各負荷別の稼動時間を考慮した重みを付与して計算する統合冷房効率(IEER)にも本実施形態の概念が適用できることは当然である。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明した。
【0112】
本発明では、ヒートポンプを冷房モードで運転する場合について詳しく説明したが、暖房モードにも本発明の概念を使用できることは当然である。そして、各々、一つの圧縮器、一つの室外熱交換器HEX_EXおよび一つの室内熱交換器HEX_INをもって説明したが、複数の熱交換器、複数の圧縮器をもって本発明が実現できることは当業者にとって当然である。また、先行技術文献に例示されているヒートポンプ回路に発明の概念および制御方法を適用できることは当然である。
【0113】
本明細書では、空気と熱交換するものとして説明したが、液体と熱交換できることは当業者にとって当然である。したがって、本発明において、空気は水を含む「流体」として解釈しなければならない。この時、熱交換器に流体を供給するファンは、熱交換器に液体を流すポンプを含むことは当然である。
【0114】
以上、本発明に対してその好ましい実施形態を説明したが、これは例示に過ぎず、本技術分野における通常の知識を有した者であれば、これより様々な変形された実施形態が可能であることを理解しなければならない。したがって、本明細書と図面に開示された本発明の実施形態は、本発明の技術内容を容易に説明し、本発明の理解を助けるために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のヒートポンプは、熱交換量は維持しつつ高圧と低圧との差を最小化してエネルギー効率が改善されるため、産業上の利用可能性が非常に高い。より詳しくは、ヒートポンプにおいて電気を最も多く消費する圧縮器は、圧縮器の入口圧力と出口圧力の差が大きくなれば、同一な周波数で稼動しても電気をさらに多く消費する。本発明によれば、圧縮器の入口圧力と出口圧力を最優先達成目標に設定し制御して、従来よりも効率が改善されたヒートポンプが提供されるため、産業上の利用可能性が非常に高い。
【0116】
また、本発明では、従来のヒートポンプにおいて約1時間半の間隔で現れる数kWの電力変動を除去することができるため、発電所の予備電力を下げることができる。そして、圧力を能動的に生成する圧縮器駆動周波数が徐々に変わるため、高圧および低圧も徐々に変わるので、制御プログラムが単純になる。その結果、従来よりも高いレベルの最適化が可能となって、従来よりも効率が改善されたヒートポンプが提供されるため、産業上の利用可能性が非常に高い。
【国際調査報告】