(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】フレキシブルラミネーション用の接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20220113BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220113BHJP
C08G 18/70 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/48 091
C08G18/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531041
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2019081436
(87)【国際公開番号】W WO2020109027
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ギリェルミ・ロドリゲス・フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エドゥアルド・ポンテル
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034DA01
4J034EA11
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
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4J034HC13
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4J034HC71
4J034QA05
4J034QA07
4J034QC05
4J034RA06
4J034RA08
4J040EF031
4J040EF281
4J040JA01
4J040JB02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA08
(57)【要約】
本発明は、植物油系ポリオールおよびNCO末端化合物を含むフレキシブルラミネーション用、特に食品包装用の接着剤組成物、ならびに植物油系ポリオールを製造する方法に関する。さらに、本発明は、フレキシブルラミネーションにおける本発明の接着剤組成物の使用、および本発明の接着剤組成物を含む物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)植物油系ポリオールおよび
b)NCO末端化合物
を含むフレキシブルラミネーション用の接着剤組成物であって、
該植物油系ポリオールは、
i)不飽和エポキシ化植物油;
ii)アルコール;
iii)有機酸;および
iv)無機酸
を含む反応混合物(A)から得られることを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項2】
植物油系ポリオールは、再生可能な資源に由来すること、および/または、反応(A)における再生可能な材料の含有量が、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づいて90重量%超、好ましくは95重量%超、特に98重量%超であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
反応混合物(A)は、以下:
i)25~95重量%、好ましくは30~95重量%の不飽和エポキシ化植物油;
ii)2~20重量%、好ましくは5~15重量%のアルコール;
iii)0.5~7重量%、好ましくは1~5重量%の有機酸;および
iv)0.5~7重量%、好ましくは1~5重量%の無機酸
を含み、前記重量%は、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づくことを特徴とする、請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
反応混合物は、本質的に触媒、特にフルオロホウ酸を含まないことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
反応混合物(A)は、EU No.10/2011に規定された食品安全規制、並びに21 CFR 175.105および21 CFR 182.1073に要約された米国の食品接触規制に準拠することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
不飽和エポキシ化植物油は、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、オリーブ油、カノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、菜種油、桐油、またはこれらの油のいずれかの混合物からなる群から選択される植物油に由来することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
不飽和エポキシ化植物油は、植物油の二重結合の数に基づいて、0.05~10%、好ましくは0.1~9%のエポキシ酸素含有量を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項8】
アルコールは、エタノール、第2世代エタノール、バイオマス由来のアルコールおよびグリコール、セルロースおよびその誘導体に由来するアルコールおよびグリコール、糖およびその誘導体に由来するアルコールおよびグリコール、並びにそれらの混合物および配合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
有機酸は、酢酸、乳酸、コハク酸、カプロン酸および脂肪酸、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
無機酸は、鉱酸、好ましくは硝酸、リン酸、ポリリン酸、硫酸、ポリ亜リン酸、塩酸、過塩素酸およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項11】
NCO末端化合物は、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイレンジイソシアネート(TDI)の異性体、メチレントリフェニルトリイソシアネート(MIT)、水和MDI(H12MDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、並びにそれらの二量体、三量体、オリゴマーおよびポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の接着剤組成物に使用される植物油系ポリオールの製造方法であって、以下の工程:
a)不飽和エポキシ化植物油、アルコール、有機酸および無機酸を含む反応混合物を提供する工程;
b)反応混合物を70~130℃、好ましくは80~120℃の温度に加熱する工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記方法は、洗浄工程および/または中和工程を含まないことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
特に食品包装の製造のための、フレキシブルラミネーションにおける請求項1~11のいずれかに記載の接着剤組成物の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれかに記載の接着剤組成物を含む、好ましくは食品包装である物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物油系ポリオールおよびNCO末端化合物を含む、フレキシブルラミネーション用、特に食品包装用の接着剤組成物、ならびに植物油系ポリオールの製造方法に関する。さらに、本発明は、フレキシブルラミネーションにおける本発明の接着剤組成物の使用、および本発明の接着剤組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の不足に対する意識の高まりを踏まえ、従来の石油系材料を、環境への影響が少ない再生可能な資源から得られた材料に置き換える努力が続けられている。しかし、工業規模で入手可能な適切な材料を特定することは別として、従来使用されていた材料の交換は、異なる製品特性および性能につながり、ほとんどの場合劣っている。多くの技術分野で適切な材料が特定されているが、特に、追加の安全性と規制措置を考慮に入れる必要がある用途では、例えば、製品が、食品包装業界などで食品や医薬品と接触する場合には、石油系材料の交換が課題である用途が今なおある。ポリウレタン接着剤は、食品包装の製造に使用されており、例えば、EU No.10/2011に要約されているヨーロッパの食品接触法、およびCFR175.105および21CFR182.1073に要約されている米国の食品接触規制に定められているすべての必要な安全要件に適合していることが知られている。したがって、再生可能な材料に基づいており、引用された安全規制の要件を満たすポリウレタンを提供することが望ましい。上記の目的を達成するための1つのアプローチは、植物油などの再生可能な資源から得られたポリオールを、所望のポリウレタンを製造するための出発物質として使用することである。
【0003】
不飽和植物油から製造されたポリオール、いわゆるバイオポリオールまたはバイオ系ポリオールは、特に硬質および軟質フォームの製造のためのポリウレタン配合物に広く使用されている。フレキシブルラミネーションのポリウレタン接着剤の製造におけるこのタイプのバイオ系ポリオールの使用は、主に高粘度、高機能性、低安定性などのポリマー特性のために、依然として非常に制限されている。
【0004】
食品包装の製造におけるフレキシブルラミネーションに使用されるポリウレタン接着剤は、無溶媒型接着剤と溶媒型接着剤に分類できる。無溶媒型接着剤の場合、非常に厳しい課題は、低粘度、適切な反応性、および使用するポリオールと使用する他の材料との適合性の間の適切なバランスを達成することである。溶媒型接着剤の場合、遊離イソシアネート値が低く、分子量が大きいことが、工業規模での接着剤製造で直面する主な課題である。
【0005】
US 6,433,121は、エポキシ化およびヒドロキシル化を含む連続する2段階プロセスを使用して、植物油または動物油から直接天然油系ポリオールを製造する方法を開示している。開示されたプロセスは、ペルオキシ酸を天然油に添加することに関する。前記ペルオキシ酸および前記天然油は反応して、エポキシ化天然油を形成し、アルコール、水および触媒量のフルオロホウ酸の混合物に中間精製なしで直接、前記エポキシ化天然油を添加する。水分含有量は、全成分の約10重量%~30重量%であり、前記エポキシ化天然油は、前記混合物と反応して、天然油系ポリオールを形成する。記載された方法は、最終的なポリオールに対する使用される触媒の悪影響を回避するために、洗浄工程および中和工程をさらに含む。
【0006】
US 2010/0190951は、大豆系オリゴマーポリオールまたは置換オリゴマーポリオール、ならびにオリゴマーポリオールまたは置換オリゴマーポリオールを含むウレタンバイオエラストマーを調製するためのプロセスを提供している。
【0007】
US 2006/0041157は、不飽和修飾植物油系ポリオールを製造する方法を開示している。前記方法は、エポキシ化植物油と開環剤とを含む混合物を反応させて、オリゴマー修飾植物油系ポリオールを形成することを含み、該修飾植物油系ポリオールは、最終的に約20%のオリゴマーを含み、25°Cで約8Pas未満の粘度を有する。
【0008】
WO 2011/109720は、揮発性または移動性物質の減少された量を示す、フレキシブル包装業界で使用される2成分ラミネートポリウレタン接着剤に関するものである。二成分無溶媒ポリウレタン接着剤は20~40重量%の量の第1の植物油系ポリオールA、0.5~5重量%の量の第2の植物油系ポリオールB、および60~74重量%の量のポリイソシアネートCを含む第1の成分と、87~99重量%の量の第1の植物油系ポリオールA、および0.5~5重量%の量のポリオールEを含む第2の成分とを含む。植物油系ポリオールの使用が記載されているが、それらの植物油系ポリオールがどのように得られるかは特定されていない。
【0009】
WO 2006/012344は、エポキシ化植物油と開環剤を含む混合物を反応させて、オリゴマー修飾植物油系ポリオールを形成することを含む、オリゴマー修飾植物油系ポリオールを製造する方法を開示している。オリゴマー修飾植物油系ポリオールは、少なくとも約20%のオリゴマーを含み、25℃で8Pas未満の粘度を有する。記載されたプロセスによれば、エポキシ化植物油は、石油化学系ポリオールとブレンドされ、フルオロホウ酸が使用される。
【0010】
引用された先行技術の参考文献は、バイオ系ポリオールを製造するための多くのプロセスが最新技術で知られているが、それらのすべては、フルオロホウ酸または芳香族スルホン酸などの材料を使用するという共通点を有することを示している。これは、上記のそれぞれの規制には記載されていない。しかし、モノマーや添加物などのリストにない成分を使用すると、全体的な機械的および光学的特性は良好であるが、食品包装の製造には適さないバイオ系ポリオールをもたらす。さらに、ポリオール自体は植物系製品であっても、製造プロセスで使用される他の材料は石油系の資源からのものであるため、最終製品の再生可能な材料の含有量が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,433,121号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0190951号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0041157号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/109720号
【特許文献5】国際公開第2006/012344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
結果として、EU No.10/2011、並びに21CFR175.105および21CFR182.1073に要約されている米国の食品接触規制などの規制に記載されていない任意の材料および化合物の使用を避け、食品包装の製造に使用するのに適した再生可能材料の高い比率に基づく接着剤組成物の必要性が依然として存在する。
【0013】
したがって、本発明の目的は、食品包装に関して定められた公式の安全要件に準拠するような接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、上記の目的は、特定の植物油系ポリオールおよびNCO末端化合物を含む接着剤組成物によって解決されることを見出した。
【0015】
したがって、本発明の第1主題は、
a)植物油系ポリオール;
b)NCO末端化合物;
を含むフレキシブルラミネーション用の接着剤組成物であって、
該植物油系ポリオールは、
i)不飽和エポキシ化植物油;
ii)アルコール;
iii)有機酸;および
iv)無機酸
を含む反応物(A)から得られることを特徴とする接着剤組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、不飽和エポキシ化植物油は、分子の化学構造を改変して植物油に存在する二重結合のすべてではないが、一部をエポキシ化するように天然油を処理することによって調製される非天然植物油を示す。
【0017】
驚くべきことに、上記の接着剤組成物は、平均接着強度および最大シール強度に関して優れた接着特性を示すだけでなく、EU No.10/2011、並びに21 CFR175.105および21CFR182.1073に要約されている米国の食品接触規制で定められた公式の食品接触規制にも準拠していることが見出された。さらに、驚くべきことに、本発明の接着剤組成物は、無溶媒系と溶媒型系の両方で使用できることが見出された。
【0018】
本発明の接着剤組成物は、主に石油系の成分を含有する一般的に使用される組成物を置き換えるように特に設計されている。したがって、本発明の好ましい実施形態では、植物油系ポリオールは、再生可能な資源に由来し、および/または反応混合物(A)中の再生可能な材料の含有量が、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づいて、90重量%超、好ましくは95重量%超、特に98重量%超である。本発明の文脈における「再生可能資源」に由来する化合物は、石油系資源に由来しないが、木材などの自然の複製によって補充される再生可能資源から得られる化合物を示す。植物油系ポリオールは、石油由来の成分が存在しない再生可能資源のみから製造されるポリオールを示す。
【0019】
反応混合物(A)に存在する成分の含有量および比率は必要に応じて調整できるが、後の接着剤組成物の生成物の性能に関して最良の結果は、反応混合物(A)の成分の含有量が特定の制限内に保たれている場合に観測された。好ましい実施形態では、無溶媒反応混合物(A)中の不飽和エポキシ化植物油の含有量は、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づいて、25~95重量%、好ましくは30~95重量%である。不飽和エポキシ化植物油は、天然油、特に大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、オリーブ油、カノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、菜種油、桐油、またはこれらの油のいずれかの混合物からなる群から選択される植物油に由来することが好ましい。不飽和エポキシ化植物油は、好ましくは、それぞれの植物油の分子量に基づいて、0.05~10重量%、好ましくは0.1~9重量%のエポキシ酸素含有量(EOC)を有する。%オキシラン酸素とも呼ばれる特定の分子のエポキシ酸素含有量は、分子内のオキシラン酸素の重量パーセントを示す。
【0020】
不飽和エポキシ化植物油は、植物油の二重結合の100%未満をエポキシド基に変換する条件下で、植物油をペルオキシ酸と反応させて部分的にエポキシ化された植物油を形成することによって得ることができる。
【0021】
さらに好ましいのは、反応混合物(A)中のアルコールの含有量が、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づいて、2~20重量%、好ましくは5~15重量%である本発明の実施形態である。反応混合物(A)に使用されるアルコールは、好ましくは、再生可能な資源から得られる天然に存在するアルコールである。特に好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール、第2世代エタノール、バイオマス由来のアルコールおよびグリコール、セルロースおよびその誘導体に由来するアルコールおよびグリコール、糖およびその誘導体に由来するアルコールおよびグリコール、ならびにそれらの混合物および配合物からなる群から選択される。
【0022】
植物油系ポリオールを製造するための一般的なプロセスは、通常、フルオロホウ酸などの触媒を使用する。ただし、そのような触媒は、食品包装の安全規制に関しては重要ではないと規制に記載されていない。したがって、最終的なポリオールに微量の触媒が存在しないことを確認する必要がある。触媒の除去は、多くの場合、製造時間とコストの増加につながるいくつかの洗浄工程および中和工程とを含む退屈なプロセスである。驚くべきことに、一般的に使用される触媒は、本発明の接着剤組成物に使用される植物油系ポリオールの製造で回避できることが見出された。したがって、本発明の好ましい実施形態では、反応混合物(A)は、EU No.10/2011などの公式の食品安全規則、並びに21 CFR 175.105および21 CFR 182.1073に要約される米国の食品接触規則に記載されていない任意の化合物を本質的に含まない。さらに、好ましい実施形態では、反応混合物Aは本質的にフルオロホウ酸を含まない。本発明の意味における「本質的に含まない」とは、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に0.5重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の含有量を意味する。別の好ましい実施形態では、反応混合物Aは、EU No.10/2011に規定されている食品安全規制および21 CFR 175.105および21 CFR 182.1073に要約されている米国の食品接触規制に準拠している。理論に拘束されることはなく、特に、本発明で使用されるような有機酸と無機酸の混合物は、フルオロホウ酸などの化合物の必要性を不必要にすると考えられている。
【0023】
本発明の接着剤組成物に使用される植物油系ポリオールに由来する反応混合物(A)は、さらに有機酸を含む。反応混合物(A)中の有機酸の含有量は、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づいて、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%である。有機酸は、好ましくは、再生可能な資源から得られる天然に存在する有機酸である。好ましくは、有機酸は、酢酸、乳酸、コハク酸、カプロン酸および脂肪酸、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
不飽和エポキシ化植物油、アルコールおよび有機酸に加えて、反応混合物(A)も無機酸を含む。反応混合物(A)中の無機酸の含有量は、無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づいて、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%である。無機酸は、好ましくは、鉱源から得られる天然に存在する無機酸である。好ましくは、無機酸は鉱酸、特に硝酸、リン酸、ポリリン酸、硫酸、ポリ亜リン酸、塩酸、過塩素酸およびそれらの混合物からなる群から選択されるものである。
【0025】
特に好ましい実施形態では、反応混合物(A)は以下:
i)25~95重量%、好ましくは30~95重量%の不飽和エポキシ化植物油;
ii)2~20重量%、好ましくは5~15重量%のアルコール;
iii)0.5~7重量%、好ましくは1~5重量%の有機酸;および
iv)0.5~7重量%、好ましくは1~5重量%の無機酸
を含み、重量%は、それぞれ無溶媒反応混合物(A)の総重量に基づく。
【0026】
本発明による接着剤組成物は、無溶媒および溶媒系で使用できる。驚くべきことに、反応混合物(A)から得られる本発明の接着剤組成物に使用される植物油系ポリオールが、5000g/モル以下の数平均分子量Mnを有する場合、必要な特性の良好なバランスを達成し得ることが見出された。したがって、好ましい実施形態では、植物油系ポリオールは、GPCによって決定される、500~5000g/モル、好ましくは800~3000g/モルの数平均分子量Mnを有する。分子量は、屈折率検出器を備えたWaters HPLC装置を使用して測定できる。標準ポリスチレンを用いて検量線を確立し、THFが適切な希釈剤として機能する。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、植物油系ポリオールは、ASTM D-4274に従って決定される、好ましくは1~250mg KOH/g、好ましくは5~250mg KOH/gのヒドロキシル価(OH価)を有する。ヒドロキシル価は、遊離ヒドロキシル基を含む化学物質1グラムのアセチル化に利用された酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。ヒドロキシル価は、化学物質の遊離ヒドロキシル基の含有量の尺度であり、通常、化学物質1グラムのヒドロキシル含有量に相当するミリグラム単位の水酸化カリウム(KOH)の質量の単位で表される。
【0028】
上記のように、適切なバイオ系ポリオールを提供する際に直面する課題の1つは、高粘度である。驚くべきことに、これらの問題は本発明では観察されなかった。むしろ、接着剤組成物中に存在する植物油系ポリオールは、所望の用途に十分に適した粘度を有することが見出された。したがって、好ましい実施形態では、植物油系ポリオールは、ブルックフィールドRTVを使用して、25℃でASTM D-4878に従って決定される、0.1~500Pas、好ましくは0.1~400Pasの粘度を有する。
【0029】
本発明による接着剤組成物は、NCO末端化合物をさらに含む。NCO末端化合物に関して特別な要件はないが、NCO末端化合物は好ましくはジイソシアネートである。好ましい実施形態では、NCO末端化合物は、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイレンジイソシアネート(TDI)の異性体、メチレントリフェニルトリイソシアネート(MIT)、水和MDI(H12MDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ならびにそれらの二量体、三量体、オリゴマーおよびポリマーからなる群から選択される。
【0030】
適切な(ポリ)イソシアネートプレポリマーは、OH基および/またはNH基を含む化合物と過剰のポリイソシアネートとの反応生成物である。適切なプレポリマーは、例えば、ジオールを過剰のイソシアネートと反応させることによって得ることができる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、NCO末端化合物もまた、再生可能な資源に由来する。したがって、NCO末端化合物は、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0032】
本発明のさらなる主題は、本発明による接着剤組成物に使用される植物油系ポリオールの製造方法である。本発明の方法は、以下の工程:
a)不飽和エポキシ化植物油、アルコール、有機酸および無機酸を含む反応混合物を提供する工程;および
b)ステップa)の反応混合物を70~130℃、好ましくは80~120℃の温度に加熱する工程
を含む。
【0033】
驚くべきことに、本発明の方法は、溶媒を必要とせずに、穏やかな条件下で、所望の植物油系ポリオールを生成することが見出された。したがって、好ましい実施形態では、本発明による方法は、溶媒なしで実施され、それにより、有毒廃棄物を低減することによって、接着剤組成物の持続可能性を改善する。
【0034】
さらに驚くべきことに、本発明の方法は、食品安全規制に準拠していないフルオロホウ酸または他の化合物などの一般的に使用される触媒のいずれも存在しない状態で実施できることが見出された。これには、最終製品から重要な化合物を除去するために中和工程および/または洗浄工程が必要ないという利点がある。したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法は、洗浄工程および/または中和工程を含まない。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、さらに蒸留工程c)を含む。蒸留は、好ましくは100~130℃、好ましくは105~125℃の温度で実施される。蒸留副産物は後続のプロセスで再利用できるため、廃棄物の発生を最小限に抑えることができる。
【0036】
さらに好ましい実施形態では、有機酸および無機酸は、有機酸および無機酸の全量がそれぞれ添加されるまで、長期間にわたってバッチで段階的に添加される。有機酸および無機酸が添加されるバッチは、それぞれ、好ましくは、添加される有機酸および無機酸の全量の10~40重量%を構成する。
【0037】
本発明による接着剤組成物は、食品包装の製造に特に適している。したがって、本発明のさらなる主題は、特に食品包装の製造のための、フレキシブルラミネーションにおける本発明の接着剤組成物の使用である。
【0038】
接着剤組成物は、特に食品包装製造の分野において、特にフレキシブルラミネーション用途に適切である。このタイプの用途では、2つ以上のフィルム、特に紙、プラスチックフィルム、および/またはアルミニウム箔が接着剤を使用して一緒に結合されて、食品用の柔軟なパッケージを作製する。したがって、本発明のさらなる主題は、本発明による接着剤組成物を含む物品である。好ましくは、接着剤組成物は、硬化状態で本発明の物品に含まれる。特に好ましい実施形態では、本発明の物品は食品包装である。
【実施例】
【0039】
本発明は、本発明の精神および範囲を限定するものとして決して理解されるべきではない以下の実施例を参照してより詳細に説明される。
【0040】
試験方法:
ヒドロキシル価は、ASTM D-4274に記載されているように、KOHを用いた標準的な滴定手順を使用して測定された。結果は、物質1グラムあたりのmgKOHとして表される。
【0041】
ポリマーの粘度は、ASTM D-4878に記載されているように、スピンドル番号21、速度50rpm、温度25°CのブルックフィールドRVTを使用して測定した。
【0042】
得られた物質の酸価は、ASTM D-4662に記載されているように、KOHを用いた標準的な滴定手順を使用して測定された。結果は、物質1グラムあたりのmgKOHとして表される。酸価は、物質中の遊離カルボン酸基の含有量として理解できる。
【0043】
ポリオールの分子量(Mn)分布は、屈折率検出器を使用してWatersHPLC装置で測定した。標準ポリスチレンをキャリブレーションに使用し、THFを希釈剤として使用した。
【0044】
積層体の接着強度値は、ASTMメソッドF-904-16に従い、280mm/minの分離速度を使用して、万能試験機で幅2.54cmのサンプルを使用して測定した。
【0045】
最大シール強度値は、ASTM R88-00(2001)に従って同じ試験機で測定された。
【0046】
実施例:
植物油系ポリオール
以前に、部分的にエポキシ化されていた不飽和植物油を反応器に導入し、続いてアルコールを添加した。反応混合物を反応器内で80~110℃の範囲の温度に加熱し、有機酸および無機酸のバッチを添加し、バッチは、ぞれぞれ、有機酸および無機酸の総量の10~40重量%を構成した。有機酸および無機酸の別のバッチを加える前に、反応混合物を80~110℃の範囲の温度で2時間維持した。有機酸および無機酸の最終バッチを加える前に、反応混合物を再び所定の温度範囲に保った。次に、反応混合物を80~110℃の温度で20~35時間維持した。反応の完了後、所望の植物油系ポリオールが蒸留によって得られた。得られたポリオールは、上記の方法に従って測定して、平均分子量Mnが1131g/モルであり、多分散度が1.56であった。ヒドロキシル価および酸性度数は、それぞれ117mgKOH/gおよび0.71mgKOH/gであると決定された。粘度は、ブルックフィールドRTVを使用して、25°CでASTMD-4878に従って決定された0.4Pasであると測定された。
【0047】
本発明の実施例:
温度計、加熱マントル、攪拌機および窒素ガスフラッシュ入口を備えた1200mlの丸底フラスコに、以下のように充填した:芳香族イソシアネートを反応器に加え、続いて植物油系ポリオールを順次加えた。反応器の温度を75℃に設定し、反応を2時間行った。無溶媒接着剤02を反応器から排出し、イソシアネートレベルおよび粘度を上記の試験方法に従って測定した。
【0048】
比較例:
温度計、加熱マントル、スターラー、窒素ガスフラッシュ入口を備えた1200mlの丸底フラスコに、以下のように充填した。芳香族イソシアネートを反応器に添加し、次いでプロピレングリコール(分子量1000~2000g/モル)および植物油を順次添加した。反応器の温度を75℃に設定し、反応を2時間行った。無溶媒接着剤01を反応器から排出し、イソシアネートレベルおよび粘度を上記の試験方法に従って測定した。
【0049】
適用テスト:
比較用接着剤01を、10部の接着剤01および8部の硬化剤の固定比率で、市販の硬化剤と混合して、以下に記載のラミネーションを実行した。
【0050】
無溶媒接着剤02を、10部の接着剤02および8部の硬化剤の固定比率で、市販の硬化剤と混合して、以下に記載のラミネーションを実行した。
【0051】
混合物は、Nordmeccanica Labo Combi ラミネーション機で、さまざまなフィルム(下の表を参照)に適用され、標準のフレキシブル包装フィルムにラミネートされた。
【0052】
【0053】
フレキシブル積層体1:PETフィルム(12ミクロン)/接着剤/ポリエチレンフィルム(60ミクロン)、接着剤コーティング重量:2.1g/m2、
フレキシブル積層体2:金属化PET(12ミクロン)/接着剤/ポリエチレンフィルム(60ミクロン):接着剤コーティング重量:2.1g/m2、
フレキシブル積層体3:金属化BOPP(14ミクロン)/接着剤/BOPP(14ミクロン):接着剤コーティング重量:2.1g/m2。
【0054】
得られた接着強度およびシール強度の結果は、ラミネーション用の合成ポリオールを含む接着剤組成物に代えて、再生可能な資源に基づくポリオールを含む本発明の接着剤組成物を使用できることを明確に示している。
【国際調査報告】