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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】心臓修復デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220113BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61F2/24
A61B17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531129
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2019083143
(87)【国際公開番号】W WO2020109582
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】1819480.3
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1819489.4
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1819484.5
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1819490.2
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1820258.0
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1820990.8
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1904688.7
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1907110.9
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1911817.3
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1911812.4
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1913057.4
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1913360.2
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
2.テレスコ
3.PebaX
(71)【出願人】
【識別番号】521232289
【氏名又は名称】カーディオメク アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒオース, ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ヒオース, ハンス エミル
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB09
4C097DD10
4C097SB02
4C160BB01
4C160BB11
4C160MM33
4C160NN02
4C160NN09
(57)【要約】
線14を保持するために身体組織26に埋め込むためのアンカー9は、身体組織26と係合するための複数のフック62であって、畳まれたポジション及び畳まれていないポジションを有する複数のフック62を備え、アンカー9は弾性材料で作製され、それにより、アンカー9は、拘束力の付与によって畳まれたポジションに弾性的に変形されることができ、拘束力の付与がなくなると畳まれていないポジションに戻り、フック62は、フック62の長さに沿う開口部64,66を有して形成され、フック62の開口部64,66は、フック62の長さの一部又は全てに沿って延びるスリットを含む。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線を保持するために身体組織に埋め込むためのアンカーであって、前記身体組織と係合するための複数のフックであって、畳まれたポジション及び畳まれていないポジションを有する複数のフックを備え、前記アンカーは弾性材料で作製され、それにより、前記アンカーは、拘束力の付与によって前記畳まれたポジションに弾性的に変形されることができ、拘束力の付与がなくなると前記畳まれていないポジションに戻り、前記フックは、前記フックの長さに沿う開口部を有して形成され、前記フックの前記開口部は、前記フックの長さの一部又は全てに沿って延びるスリットを含む、アンカー。
【請求項2】
前記スリットは、前記フックが前記アンカーの基部に接合する前記フックの端部を越えて延びる、
請求項1に記載のアンカー。
【請求項3】
前記フックの前記開口部は、複数の穴を含み、前記複数の穴は縫合糸と接続され、単一の長さの縫合糸が前記複数の穴のうちのいくつかを通過する、
請求項1又は2に記載のアンカー。
【請求項4】
前記開口部は、前記フックの長さに沿って一列に並ぶ複数の分離したスリットを含む、
請求項1、2又は3に記載のアンカー。
【請求項5】
前記アンカーはチューブから形成され、前記チューブは、前記チューブの一端から延びる櫛歯を備えるように切断され、次いでこれらの櫛歯が湾曲され且つ熱処理を受けて前記フックを形成するようにされたものである、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアンカー。
【請求項6】
前記アンカーは係止機構を含み、前記係止機構は、前記係止機構に力が加えられていない場合に前記線をクランプするように構成される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のアンカー。
【請求項7】
前記係止機構は係止リングを含み、前記係止リングは、前記線の長さを調節するために、前記線を前記係止機構から解放するように弾性的に変形されることができる、
請求項6に記載のアンカー。
【請求項8】
人工索線を身体内に埋め込むためのカテーテルデバイスであって、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンカーを、弁尖アンカー又は乳頭アンカーである状態で備える、カテーテルデバイス。
【請求項9】
前記アンカーは、係止リングを有する係止機構を含む乳頭アンカーであり、前記カテーテルデバイスは、前記係止リングをその弾性的に変形されたポジションに保持するための係止リングホルダを有する乳頭アンカー展開機構を備え、前記乳頭アンカー展開機構は、前記係止リングから前記係止リングホルダを選択的に引き離すように構成され、それにより、前記索線は、前記乳頭アンカーの展開後、前記索線の長さの任意の必要な調節後に、所定位置に係止されることができる、
請求項8に記載のカテーテルデバイス。
【請求項10】
前記係止リングホルダは、Z字形状のフォークである、
請求項9に記載のカテーテルデバイス。
【請求項11】
請求項8、9又は10に記載のカテーテルデバイスであって、
前記カテーテルデバイスの長さに沿って前記カテーテルデバイスの遠位端から前記カテーテルデバイスの近位端に向かって延びる2部分式ハウジングセクションであって、前記カテーテルデバイスの使用中に心臓の乳頭筋と弁尖との間に配置されるように構成され、前記カテーテルデバイスの前記遠位端にある遠位部分と、前記遠位部分の近位側に位置する前記近位部分とを含む、2部分式ハウジングセクションと、
前記ハウジングセクションの前記近位部分にあり且つ前記心臓の前記弁尖に取り付けるために弁尖アンカーを展開するための弁尖アンカー展開機構と、
前記ハウジングセクションの前記遠位部分にあり且つ前記乳頭筋に取り付けるために乳頭アンカーを展開するための乳頭アンカー展開機構であって、前記遠位部分に対して遠位方向の外方に向かって前記乳頭アンカーを移動させることによって、前記乳頭アンカーを展開するように構成される、乳頭アンカー展開機構と、
前記2部分式ハウジングセクションの前記近位部分と前記遠位部分との間に位置する可撓ジョイントであって、前記近位部分の中心線に対して前記遠位部分の中心線が角度をつけることを可能にする、可撓ジョイントとを備え、
前記弁尖アンカー及び/又は前記乳頭アンカーは、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンカーである、カテーテルデバイス。
【請求項12】
請求項8~10のいずれか一項に記載のカテーテルデバイスであって、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンカーである弁尖アンカーを含み且つ弁尖アンカー展開機構を含み、前記弁尖アンカー展開機構は、前記弁尖アンカーの弁尖内への展開後の前記弁尖アンカーを引っ込めること及び再配置することを、第1形態及び第2形態を備え且つグラスピングデバイスを有するエジェクタユニットを介して可能にし、前記第1形態は、前記エジェクタユニットから前記弁尖アンカーを係合解除させることなく、前記弁尖アンカーの前記弁尖内への展開を可能にするように構成される形態であり、前記第2形態は、前記弁尖アンカーが前記エジェクタユニットから可逆的に解放される形態であり、前記第1形態では、前記エジェクタユニットの前記グラスピングデバイスは、前記弁尖アンカーの近位端を掴み、前記弁尖アンカーの遠位端は、前記弁尖に前記弁尖アンカーが埋め込まれることを可能にするように前記グラスピングデバイスによって妨げられず、前記第2形態では、前記エジェクタユニットの前記グラスピングデバイスは、前記弁尖アンカーから係合解除される、カテーテルデバイス。
【請求項13】
請求項8~10のいずれか一項に記載のカテーテルデバイスであって、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンカーである弁尖アンカーを含み且つ弁尖アンカー展開機構を含み、前記弁尖アンカー展開機構は、心臓弁の弁尖を掴むための機械的な把持デバイスを含み、前記把持デバイスは、畳まれた形態で前記弁尖アンカーを収容するための弁尖アンカーチューブを含み、前記把持デバイス及び前記弁尖アンカーは、使用時に、前記把持デバイスが前記弁尖を掴み、前記弁尖アンカーが前記弁尖アンカーチューブから押し出されることで前記弁尖をつき通し且つ前記弁尖アンカーを畳まれていない形態に形成することができ、それにより、前記弁尖アンカーのフック形状形成部が使用中に前記弁尖アンカーを前記弁尖に固定することができるように、構成され、前記機械的な把持デバイスは、前記カテーテルデバイスの本体に回動可能に結合される第1把持アームであって、前記第1把持アームが、前記カテーテルデバイスの前記本体から離れるように前記第1把持アームの外側端部を移動させるように前記カテーテルデバイスに対して回動することができるように、前記本体に結合される第1把持アームと、前記カテーテルデバイスの前記本体に回動可能及び/又はスライド可能に結合される第2把持アームであって、前記第2把持アームが、前記カテーテルデバイスの前記本体から離れるように、前記第2把持アームの外側端部を移動させるように前記カテーテルデバイスの前記本体に対して回動及び/又はスライドすることができるように、前記本体に結合される第2把持アームとを含み、前記第1及び第2の把持アームは、移動することで前記カテーテルデバイスの前記本体から離れたポイントで互いに接触することができるように構成される、カテーテルデバイス。
【請求項14】
前記弁尖アンカーは、前記カテーテルデバイスの前記遠位端から前記カテーテルデバイスの前記近位端に向かって延びる方向に前記弁尖アンカー展開機構から押し出されることができる、
請求項11、12又は13のいずれか一項に記載のカテーテルデバイス。
【請求項15】
前記弁尖アンカーの展開のためのU字形状ロッドを備える、
請求項8~14のいずれか一項に記載のカテーテルデバイス。
【請求項16】
人工索線を心臓に固定するために、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンカーを使用する方法であって、前記アンカーを前記心臓の組織に埋め込むためにアンカー展開デバイスを使用することを含む、方法。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアンカーを製造する方法であって、弾性的な金属チューブ内に切断を介して櫛歯を形成することと、前記櫛歯に開口部を形成することと、前記櫛歯をフック状の形態に変形することと、前記開口部を有するフックを形成するように前記櫛歯を熱処理することとを含む、方法。
【請求項18】
前記弾性的な金属チューブは、ニチノールのチューブである、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記切断は、レーザ切断を使用して行われる、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記チューブは、鋭利なエッジを除去するために、切断後に電解研磨される、
請求項17、18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記開口部は、変形及び熱処理を受ける前に、前記櫛歯へと切断を受ける、
請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記開口部はスリットを含み、前記スリットは単一のレーザの軌跡としてレーザ切断される、
請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
円形開口部が、単一のレーザの軌跡の前記スリットの端部に付加される、
請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓弁を修復するために人工索線を埋め込むためのデバイスの様々な部分に関し、且つ関連する方法に関する。本開示はまた、心臓修復のために使用され得る、身体組織内への埋め込みのためのアンカーを含む。
【背景技術】
【0002】
腱索は、心臓において乳頭筋を三尖弁及び僧帽弁につなぐ索状の腱である。これらの弁は、心臓内の血流及び血圧を制御するために、心臓の拍動に伴って開閉する弁尖からなる。
【0003】
僧帽弁疾患は、心臓外科医及び心臓専門医にとって重要な課題である。僧帽弁逆流は、先進国において僧帽弁の主要な病態生理学的状態となっている。逆流の最も重要な原因の1つは、僧帽弁弁尖の1つの逸脱である。修復を必要とする病理学的異常は、索、弁尖又は他の関連構造の断裂又は他の変性変化である。索が無傷のままである場合、僧帽弁の複数の弁尖は、同期し且つ弁の漏れを防ぐかたちで開閉する。正常な索は、急性的に破断して急性代償不全を引き起こし、心不全の形をとることがある。これは、通常、迅速な介入を必要とする緊急状態をもたらす。索への損傷はまた、変性プロセスに起因する破断又は伸長を含めて、よりゆっくりと起こり得、僧帽弁に漏出又は逆流を生じさせる。
【0004】
僧帽弁の外科的修復は、弁尖運動を制御するために、逸脱した弁尖を切除すること及び/又は新しい人工索線を埋め込むことを用いて、比較的標準化されてきている。さらに、僧帽弁リングが、僧帽弁の弁輪のサイズを縮小させるために高い頻度で配置される。断裂した又は伸びた索の外科的な置換は、僧帽弁逆流の排除又は最小化に非常に効果的である。現在、処置は、心臓切開手術の手技で行われている。これには、心肺バイパス法の使用と、心臓の停止とが必要がある。この外科的アプローチは、うまく機能しているが、非常に侵襲性の高い治療法であり、この治療法は、重篤な合併症、長い入院期間及び相当な費用を引き起こす可能性がある、非常に侵襲性の高い処置である。その結果、侵襲性の低いアプローチが好ましい。
【0005】
僧帽弁弁尖索を挿入することが、心尖を通って心臓に入る低侵襲外科的アプローチを用いて行われている。この技術は、Neochord Inc.社によって開発され、例えば、国際公開第2012/167120号(特許文献1)に記載されているが、依然として外科的切開を必要とし、僧帽弁弁尖索は、通常は固定されるべきものである乳頭筋に挿入されない。
【0006】
国際公開第2008/101113号(特許文献2)は、人工索線の埋め込みを含む、心臓の修復のためのシステムの別の例を記載している。記載される方法では、アンカーが、乳頭筋に取り付けられることができ、人工索線、縫合糸及びクリップによって僧帽弁の弁尖に連結される。クリップは、人工索線の長さの調節を可能にする。乳頭アンカー及び縫合糸を埋め込み且つ一緒に接合するためには、複雑な多段階プロセスが必要とされる。乳頭アンカーは、ニチノール等の形状記憶金属で形成され、乳頭アンカーを身体組織に引っ掛けるための複数の鋭い「花弁」を伴った「花」形状を有する。花形状は、チューブ形状へと扁平にされ、心臓に通される管内で保持される。その後、当該管及びアンカーは乳頭筋に押し付けられ、アンカーは当該管から押し出され、その結果、花弁が乳頭筋を突き刺し、乳頭筋を貫通して外方へ折り曲げられ、それにより、乳頭筋組織へのアンカーの確実な結合をもたらす。後に続く外科的処置では、人工索線がアンカーに取り付けられることができる。次いで、さらなる工程において、縫合糸は、弁尖に取り付けられ、この縫合糸は、クリップによって索に接合される。縫合糸は、弁尖に取り付けられるが、弁尖の近くに真空ポートを配置し、縫合糸をつき通すことができる当該真空ポート内に縫合糸を引き寄せることによって、取り付けられる。
【0007】
この技術は、心臓切開手術を回避しながらも、依然として一連の比較的複雑な工程を必要とすることが理解されるであろう。必要とされる工程の数は、リスクを増大させる。さらに、デバイスの複雑さは、体内に埋め込まれた部品が緩み、塞栓形成によって患者を傷つける危険性があることを意味する。特に、クリップがアンカーから緩む可能性がある。提案されているような、追加のクリップを伴った縫合糸の使用は、縫合糸が自然のままの索を近い状態で模倣しないため、心臓弁を効果的に修復できないことも考えられる。
【0008】
以前の特許出願である国際公開第2016/042022号(特許文献3)において、本出願人は、心臓弁を修復するために人工索線を埋め込むためのカテーテルデバイスを開示した。特許文献3のカテーテルデバイスは、心臓弁の弁尖をつかむための機械的な把持デバイスを含み、弁尖アンカーは、把持デバイス内に収容された状態にある。弁尖アンカーは、畳まれていない形態にあるグラップルフック形状を有して、ニチノール等の可撓性材料から形成されることができ、例えば、弁尖アンカーが把持デバイス内の弁尖アンカーチャネル内に拘束されると、畳まれた形態に弾性的に変形することができる。複数のフックは、弁尖アンカーが畳まれた形態にあるときに真っ直ぐになる。弁尖が把持デバイスによってつかまれると、弁尖アンカーは、把持デバイスから外に押し出されることで、弁尖を通ってフックを動作させることができ、その一方で、フックは、畳まれていない形態に弾性的に戻り、それによって、弁尖アンカーを弁尖内に固定する。
【0009】
特許文献3に記載されるデバイスはまた、ほぼ同様である畳まれることが可能なフックの構成を有する乳頭アンカーを使用する。乳頭アンカーは、畳まれた形態でカテーテルデバイスのチューブ内に保持され、当該チューブの外に押し出されることができ、このとき、フックが乳頭筋を通って動作されながらも、一方で、フックが畳まれていない形態に弾性的に戻り、それによって乳頭アンカーを乳頭筋に固定する。乳頭アンカーは、力が加えられないときに人工索線をクランプするための係止機構として作用する係止リングを含む。係止リングは、人工索線の長さを調節するために、弾性的に変形して、人工索線の長さを調節するために、係止機構から人工索線を解放することができる。
【0010】
特許文献3のデバイスは、この分野において著しい進歩をもたらしたが、設計をさらに改良することが有益であり得ることが見出された。本開示は、様々な点で、特許文献3に開示されているデバイスの設計に基づく新しい特徴に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/167120号
【特許文献2】国際公開第2008/101113号
【特許文献3】国際公開第2016/042022号
【発明の概要】
【0012】
本発明によれば、第7の態様で説明されるようなアンカー、第11の態様で説明されるようなアンカーを使用する方法、及び第15の態様で説明されるようなアンカーを製造する方法が、本明細書において提供される。
【0013】
第1の態様から見ると、本発明は、人工索線を埋め込むことによって心臓を修復するためのカテーテルデバイスを提供する。当該カテーテルデバイスは、心臓弁の弁尖に配置される弁尖アンカーであって、人工索線に結合されるように構成される弁尖アンカーと、心臓の弁尖に弁尖アンカー取り付けるために弁尖アンカーを展開するための弁尖アンカー展開機構であって、心臓弁の弁尖を掴むための機械的な把持デバイスを含み、把持デバイスは、畳まれた形態で弁尖アンカーを収容するための弁尖アンカーチューブを含む、弁尖アンカー展開機構とを備え、把持デバイス及び弁尖アンカーは、使用時に、把持デバイスが弁尖を掴み、弁尖アンカーが弁尖アンカーチューブから押し出されることで弁尖をつき通し且つ弁尖アンカーを畳まれていない形態に形成することができ、それにより、弁尖アンカーのフック形状形成部が使用中に弁尖アンカーを弁尖に固定することができるように、構成され、機械的な把持デバイスは、カテーテルデバイスの本体に回動可能に結合される第1把持アームであって、第1把持アームが、カテーテルデバイスの本体から離れるように第1把持アームの外側端部を移動させるようにカテーテルデバイスに対して回動することができるように、本体に結合される第1把持アームと、カテーテルデバイスの本体に回動可能及び/又はスライド可能に結合される第2把持アームであって、第2把持アームが、カテーテルデバイスの本体から離れるように、第2把持アームの外側端部を移動させるようにカテーテルデバイスの本体に対して回動及び/又はスライドすることができるように、本体に結合される第2把持アームとを含み、第1及び第2の把持アームは、移動することでカテーテルデバイスの本体から離れたポイントで互いに接触することができるように構成される。
【0014】
この構成は、様々な利点を提供することができる。例えば、第2把持アームがカテーテルデバイスの本体に回動可能に結合される、及び/又は第2把持アームが第1把持アームからの十分に高い力に反応することができる構成では、2つの把持アームを使用することは、弁尖が単一の把持アームと本体との間で把持されることを可能にするだけではなく、本体から離れたポイントで2つのアームの間で弁尖が把持されることを可能にする。これは、特許文献3に記載される構成である。このような2つの把持アームの使用は、索を機能させない弁尖セグメントである動揺された弁尖を追加で又は代替として安定させるに役立つことができる。当該弁尖セグメントは、心房内へ動揺し、従来技術のデバイスを用いては捕捉するのが困難であり得る。例えば、弁尖は、上方に移動する傾向があり、このことは、単一の把持アームのみを使用して弁尖を捕捉することを困難にし得る。これ故、この点に関して、第2把持アームは、心周期中に弁尖の動揺運動を安定させるのに役立つことができるため、「弁尖運動抑制器」であるとみなすことができる。第2把持アームの使用はまた、より水平な把持/接触の面(即ち、カテーテルデバイスの本体に対してより垂直である面)をも可能にし得、このことは、典型的には弁尖の上方から挿入される、本体の向きに対する拘束の両方の観点からも有益であり、そしてまた、弁尖アンカーの埋め込みが乳頭アンカーを埋め込むのと同じデバイスを使用して実施される例示的な実施形態に関して、さらなる利点を有する。特に、より垂直な把持位置を有する2つの把持アームの使用は、デバイスが1つの位置に留まる間に、弁尖アンカー及び乳頭アンカーの両方を埋め込む処置を実施するために当該デバイスを使用することを容易にし得る。これらの把持アームは、必ずしも剛性のある構造でなくてもよいが、所望の動作を達成するために必要に応じて可撓性を有してもよいことが理解されるであろう。
【0015】
いくつかの例では、2つの把持アームの使用は、弁尖の運動が、本体から離れたポイントで2つの把持アームの間に拘束されることを可能にする。これ故、第1把持アーム及び第2把持アームが互いに接触することができるポイント(複数可)(及びその近く)で、弁尖が存在するとき、これらの把持アームは弁尖と係合し、弁尖の移動を制限する。弁尖は、上方に移動する傾向があり、このことは、単一の把持アームのみを使用して弁尖を捕捉することを困難にし得る。これ故、この点に関して第2把持アームは、心周期中に弁尖のフ動揺運動を安定させるのに役立つことができるため、「弁尖運動抑制器」であるとみなすことができる。これ故、この実施形態では、第2把持アームは、弁尖の頂部に接触するためにカテーテルデバイスの本体から離れるようにスライド可能に移動されることができる。第1把持アームが次に、弁尖にも第2把持アームにも接触することなく、カテーテルデバイスの本体から離れるように回動可能に移動され、その後、弁尖又は第2把持アームに向かって回動して戻されるように、カテーテルデバイスは下方へ移動されてもよい。第1把持アームが回動して本体内に戻ると、第1把持アームは、例えば可撓アームであってもよい第2把持アームに接触し、2つのアームの間で弁尖を拘束する。第1把持アームによって第2把持アームに対してなされる接触は、この場合、スライド可能な接触であってもよく、第1把持アームが弁尖の拘束を維持しながら、本体に向かって回動して戻ることを可能にしてもよい。次に、第1把持アームは、それ自体とカテーテルデバイスの本体との間で弁尖を掴む。これ故、特許文献3において単一の把持アームについて同様に記載されるように、第1把持アームが引き戻されて第1把持アームと本体との間で弁尖を把持すると、第2把持アームは、弁尖を拘束し、弁尖が滑り出るのを防ぎ、これ故、第2把持アームの存在が、第1把持アームにおける弁尖の把持を確実にする。第2把持アームの使用は、より水平な把持面(即ち、カテーテルデバイスの本体に対してより垂直な面)も可能にし、このことは、典型的には弁尖の上方から挿入される、本体の向きに対する拘束の両方の観点からも有益であり、そしてまた、弁尖アンカーの埋め込みが乳頭アンカーを埋め込むのと同じデバイスを使用して実施される例示的な実施形態に関連して、さらなる利点を有する。特に、より垂直な接触位置を有する2つの把持アームの使用は、デバイスが1つの位置に留まる間に、弁尖アンカー及び乳頭アンカーの両方を埋め込む処置を実施するために当該デバイスを使用することを容易にし得る。これらの把持アームは、必ずしも剛性のある構造である必要はないが、所望の動作を達成するために必要に応じて可撓性を有してもよいことが理解されるであろう。
【0016】
改良された設計はまた、デバイスの大部分がニチノール又はステンレス鋼のような弾性金属から製造されることを可能にし、これは、再現性があり且つ安価である製造方法を可能にする。或いは、デバイスの大部分は、複合材料から製造されてもよく、この状態において、選択された部分は、必要に応じて、ニチノール又はステンレス鋼のような弾性材料から形成されてもよい。複合材料は、例えば、ガラス繊維強化PEEK又は炭素繊維強化PEEK(CRF PEEK)を含んでもよい。複合材料は、カテーテルデバイスが使用される任意の処置の間に監視することを可能にするために、超音波からの改善された画像化の利点を有し得る。複合材料は、X線画像ではそれほど可視ではないかもしれないが、放射線マーカ又は不透明なコントラストマーカーは、このような画像を提供するために、デバイス上に戦略的に配置されてもよい。必要に応じて、カテーテルデバイスの構成要素を射出成形するための複合材料も使用されてもよい。
【0017】
この態様の弁尖アンカー展開機構は、それ自体の利点を提供するだけでなく、以下に記載される本態様のカテーテルデバイスと相乗的に結びつくことも理解されるであろう。これ故、弁尖アンカー展開機構は、例えば弁尖アンカー展開機構が2部分式ハウジングセクションの近位部分に配置される状態で、第2の態様のデバイスにおいて弁尖アンカーを展開するために使用されることができる。代替として又は追加で、弁尖アンカー展開機構は、第6の態様に関連して開示されるエジェクタユニットの使用と組み合わされてもよい。
【0018】
動揺を伴う弁尖を捕捉することは、弁尖が心拍中に「上」及び「下」の両方に移動し得るため、困難であり得る。この態様の把持デバイスは、この問題に対処するために追加の把持アームを装備する。2つの把持アームは両方とも、カテーテルデバイスの本体に対して移動することができる。いくつかの例では、第1把持アームは、第2把持アームが第2把持アームの全移動範囲内で自由に回動及び/又はスライドすることができる前に第1把持アームがカテーテルデバイスの本体から離れるように特定の量だけ回動される必要があるように、第2把持アームを囲むように作用する。それは、一旦第1把持アームがある程度まで開かれると、第2把持アームがカテーテルデバイスの本体に対してのみ移動され得ることであってもよい。
【0019】
弁尖アンカーチューブは、第1把持アーム又は第2把持アームのいずれかの中に収容されてもよい。弁尖アンカーは、それぞれの把持アームの端部にある弁尖アンカーチューブの端部における開口部から押し出すことによって展開される。例示的な実施形態では、弁尖アンカーチューブは、第1把持アーム内にあり、第1把持アームはまた、上述のように第2把持アームを囲んでもよい。
【0020】
2つの把持アームは、独立した移動を可能にするために個別に操作されてもよい。或いは、2つの把持アームは、「ピンセット」機構と同様に同時に動くように、リンク連結されてもよい。2つの把持アームを使用することは、第2把持アームであってもよい上部把持アームが弁尖のための「屋根」をつくることを可能にし、移動を低減し、特に弁尖が完全な動揺状態である場合には掴みやすくすることができる。別の利点は、把持動作が、鉛直方向ではなくより水平方向であり、即ち、カテーテルデバイスの本体に対して平行ではなくより垂直であることである。
【0021】
一例では、第1把持アームは、45度以上、好ましくは鈍角で、本体から離れるような回動によって開かれるように構成されてもよい。第2把持アームは、第1把持アームが閉じているときに第1把持アームによって囲まれるように構成されてもよく、第1把持アームが開くと、カテーテルデバイスの本体内から外方へ揺動及び/又はスライドすることが可能であってもよい。次に、第2把持アームが回動する場合には、第2把持アームは、第1把持アームとは反対の回動方向で回動してもよく、回動によって第2把持アームの端部が第1把持アームの端部の移動経路に入るように構成されてもよい。第1把持アームの回動中心は、第2把持アームの回動中心と比較して、カテーテルデバイスの本体の長さに沿って間隔をあけて離れていてもよい。回動の中心は、回動プロセス中にデバイスの多少の変形があり得るため、固定されなくてもよいことに留意されたい。この場合、例えば、第1把持アームは、材料が可撓性を有するセクションの曲がりによって回動してもよく、当該セクションは、曲がりの程度に応じて回動中心の移動を引き起こすことができてもよい。第2把持アームがスライドする場合、第2把持アームは、カテーテルデバイスの本体から外方へ且つ第1把持アームの端部の移動経路内に、第2把持アームの端部を移動するようにスライドしてもよい。
【0022】
把持アームは、把持アームに接合されるレバーアームに接続される1つ以上のワイヤを引っ張ることによって移動されてもよい。第2把持アームがその端部を本体から離れるように開いた状態(即ち、本体から外方へ回動又はスライドされて状態)で、例えば第2把持アームが本体から45~90度の角度で延びた状態において、第1把持アームは、第2把持アームの端部に向かって閉方向に回動され、それにより、第1把持アームが第2把持アームの一部に接触するように移動してもよい。
【0023】
いくつかの例では、把持デバイスは、2つの把持アームの係合(接触)によって、弁尖を捕捉し及び/又は弁尖の移動を拘束してもよく、このことは、一方又は両方のアームの回動によって行われてもよい。第2把持アームはまた、把持動作中に個別に移動されてもよい。2つの把持アームは、第2把持アームの把持面を第1把持アームの把持面と係合するために移動されてもよい。
【0024】
把持デバイスは、最初に第2把持アームと第1把持アームとの間の接触ポイントで弁尖拘束することによって、弁尖を捕捉してもよい。次に、第1把持アームは、拘束された弁尖の第1把持アームによる把持が成功するように、閉じるように、即ちカテーテルデバイスの本体に向かって回動されてもよい。第2把持アームは、第1把持アームの運動中、所定位置に固定されたままであってもよい。
【0025】
第1把持アームであってもよい弁尖アンカーチューブを収容する把持アームの場合、把持面は、弁尖アンカーチューブの開口部の周囲に位置する把持プラットフォームであってもよい。弁尖が2つの把持アームの間又は把持アームとカテーテルデバイスの本体との間で把持されている間に、弁尖アンカーが、例えば上述の任意の技術を使用して配置され、次いで、把持デバイスは、例えば、第2把持アーム及び/又はカテーテルデバイスの本体から離れるように第1把持アームを回動させることによって、開かれる。この態様のデバイスが、第6の態様のデバイスと組み合わされ、これ故エジェクタユニットが存在する場合、弁尖の接続は、把持デバイスが開かれた後に試験されてもよく、それにより、エジェクタユニットから弁尖アンカーを解放する前に弁尖内で弁尖アンカーを適正に配置することを確実にしてもよい。
【0026】
第2把持アームは、2つのワイヤで作動されることができ、これにより、医師は、把持プロセスを補助するために、回動又はスライドの2つの方向に第2把持アームを動かすことができる。
【0027】
第2把持アーム、即ち弁尖運動抑制器は、可撓部材であってもよく、及び/又はワイヤを含んでもよい。ワイヤは、使用されていないときにカテーテルデバイスの本体の内部空間内に含まれる、収容される、格納される、及び/又は被覆され得るように、弾性材料で形成されてもよい。弾性材料は、例えば、ニチノール又はステンレス鋼であってもよい。これは、有利なことには、弁尖アンカーの配置中に第2把持アームの使用が所望されるか否かの決定をデバイスのユーザに与える。
【0028】
弾性的なワイヤを含む弁尖運動抑制器は、内部空間内に格納されるとき、弾性的に変形された状態にあってもよい。しかしながら、弁尖運動抑制器がカテーテルデバイスの本体から離れるように移動されると、弁尖運動抑制器は、非変形の状態に戻ることができる。弁尖運動抑制器は、その端部をカテーテルデバイスの本体から離れるように移動するために、内部空間から外にスライドされることができる。
【0029】
弁尖運動抑制器は、弁尖運動抑制器がその非変形の状態にあるときに、第1把持アームと第2把持アームとの間の弁尖の係合を確実にするために、弁尖のフレイルを抑制することができる複数の形状及び/又は構成を備えてもよい。
【0030】
一例では、第2把持アームは、デバイスの遠位端に向かって2つの近位のワイヤ端を押すことによって、デバイスの近位端から押し出されるループ状ニチノールワイヤであってもよく、ループ状ワイヤは、把持ハウジングの近位端から外に延びる。ワイヤのループは、有利なことには、弁尖に係合するときに弁尖運動抑制器を安定化させることができる。ワイヤのループは、弁尖の係合を補助する大きな表面積を包含し得る。
【0031】
ワイヤのループはまた、弁尖運動抑制器がカテーテルデバイス内に完全に引き込まれることを防ぐこともできる。即ち、ワイヤのループは、ワイヤの遠位端が常にカテーテルデバイスの本体の外側及び/又は同一平面にあるように、ピン等の内部空間の特徴部と係合することができる。これ故、ワイヤを備える弁尖運動抑制器の場合、ワイヤの一部及び/又はワイヤの端部は、カテーテルデバイスの本体の近位部分の外面の外側に/外面と面一に位置し得る。
【0032】
別の例では、第2把持アームは、端部が開放されている及び/又は緩んでいるワイヤであってもよく、即ち、変形されていない状態にあるときに端部のうちの少なくとも1つがカテーテルデバイスの本体の外側に位置するワイヤであってもよい。端部が開放され且つループを形成しないワイヤは、弁尖運動抑制器における弁尖の絡み合いを防ぐのに役立つ可能性がある。この構成では、弁尖運動抑制器は、弁尖の平面に平行な複数の曲がり及び/又は湾曲を含むことができ、このことは、有利なことには、弁尖運動抑制器と弁尖との間の係合の表面積を増加する。弁尖運動抑制器がカテーテルデバイス内に完全に引き込まれるのを防ぐために、ワイヤは、その端部にワイヤストッパを含むことができ、ワイヤストッパは、ワイヤストッパが内部空間よりも幅広及び/又は大きいような特徴部であってもよい。
【0033】
弁尖運動抑制器が、少なくとも1つの端部がカテーテルデバイスの本体の外側にあるように構成されるワイヤを備える場合、弁尖運動抑制器は、第2把持アームがカテーテルデバイスの本体から外にスライドする及び/又はカテーテルデバイスの本体から離れるように移動されると、弁尖又は周囲の組織を所望せずに突き通し且つ/又は損傷することがある。この不都合な効果を防ぐ目的で、ワイヤの端部が弁尖から離れる方向を指すように構成されるように、ワイヤの曲がり及び/又は湾曲が形成されることができる。例えば、ワイヤの端部は、弁尖の表面から離れるように湾曲されてもよく、又は、第2把持アームを動かす方向とは反対の方向を指してもよい。追加で及び/又は代替として、ワイヤの端部は、周囲の組織を突き刺す機会を減少するために、軟質な先端を備えてもよい。
【0034】
一例では、弁尖の非変形の形状は、渦巻きを含むことができ、当該渦巻は、弁尖と第2把持アームとの間に大きな係合面を形成する渦巻きを含むことができる。渦巻きはまた、カテーテルデバイスの本体の外側に位置するワイヤの端部が渦巻きの中心にあるように形成されてもよい。有利なことに、これは、ワイヤの端部の露出が減少するため、ワイヤの端部が周囲の組織を突き通し且つ/又は損傷する可能性を減少する。
【0035】
弁尖運動抑制器が格納される内部空間は、カテーテルの主軸に平行なカテーテルデバイスの長さに沿って延びるチャネル、経路、及び/又は導管を備えてもよい。しかしながら、内部空間が機械的な把持デバイスと出会う場所では、内部空間は、弁尖運動抑制器が内部空間から外にスライドして弁尖と係合し得るように、カテーテルデバイスの本体の外面に向かって角度を付けられてもよい。内部空間は、弁尖運動抑制器がカテーテルデバイスの本体の表面に垂直に内部空間を離れるように角度を付けられてもよい。
【0036】
弁尖運動抑制器のワイヤ構成要素は、心臓への治療介入での使用に容易に利用可能である、ガイドワイヤ等の既製のワイヤであってもよい。よって、カテーテルデバイスの操作者は、手術中に弁尖の運動を抑制するのに適切であると思われるワイヤを選択することができる。言い換えれば、同一の所定のサイズの異なるワイヤは、所望に応じて、異なる剛性及び/又は先端構造(即ち、曲がり、湾曲及び/又はループ)で実装されてもよい。例えば、第1ワイヤが所望通りに機能しない場合、類似又は異なる特性を有する第2ワイヤが使用され得る。そのため、弁尖運動抑制器は、カテーテルデバイスの内部空間内に永久的に格納されなくてもよいが、特に困難な処置中において、格納デバイスから選択され、カテーテルデバイスのポート内に挿入されてもよい。このアプローチは、規制承認が既に付与されているワイヤ構成要素、及び/又はユーザが他のタイプの心臓への治療介入から熟知しているワイヤ構成要素を使用することができるというさらなる利点を有する。
【0037】
第1把持アームは、単一のワイヤ又は複数のワイヤを用いて作動されることができる。第1把持アームのためのヒンジ機構が本体の材料と一体的に形成され、当該材料の弾性変形によって本体から離れる回動される場合、利点が得られる。また、ヒンジ機構と同様に、第1把持アームも本体の材料と一体的に形成されてもよい。或いは、第1把持アームは、フライス加工されたピース又はレーザ切断されたピースのような別個に形成されたアームセクション含んでもよく、この状態において、別個のアームセクションが、例えば接着又は溶接によって本体のヒンジ機構に取り付けられてもよい。
【0038】
わずかに異なる構成では、第2把持アームは、第1把持アームの基部(回動「軸」に近いいずれかの場所)に取り付けられてもよい。この第2把持アームは、ニチノール等の弾性材料であってもよい。デフォルトの形態では、第2把持アームは、第1把持アームの把持面(内面)に向かうわずかな圧力を伴って第1把持アームの把持面に追従してもよく、当該圧力は、第2把持アームの材料の張力によって引き起こされる。この構成は、開くために力が必要とされる「逆」ピンセットと比較されることができる。逆ピンセットは、第1把持アームを開くように引っ張る力がない限り第1把持アームの移動に追従し、当該力は、例えば、引張ワイヤの形態のものであってもよく、又は第1把持アームと第2把持アームとの間に配置される楔状体の形態のものであってもよい。
【0039】
いくつかの例では、カテーテルデバイスの本体は、ニチノール等の弾性金属から形成されてもよく、この状態において、ヒンジは、弾性金属に形成される弾性的なジョイントによって提供されてもよい。その場合、単一のワイヤが、本体と共に弾性的なジョイントを曲げて第1把持アームの端部を本体から離れるように回動させることによって、第1把持アームを弾性的に変形するために使用されることができ、この状態において、第1把持アームは、ワイヤに力が加わらなくなると、そのレストポジションに弾性的に戻る。この利点は、第1把持アームの弾性力が、力がワイヤから解放されるときに第2把持アームに対して第1把持アームを所定位置に保持でき、この場合に、弁尖上の把持を確実に保持するために別のワイヤを引っ張る必要がないことである。しかしながら、第2のワイヤがは、必要に応じてバックアップとして実装されてもよい。
【0040】
他の例では、カテーテルデバイスの本体は、炭素繊維強化又はガラス繊維強化PEEK等の複合材料から形成されてもよい。次いで、第1把持アームは、ピンジョイントを使用してカテーテルデバイスの本体に接合されてもよく、ピンは、第1把持アームの回動軸を形成する。同様に、第2把持アームが弾性金属のシートを含む場合、当該アームの回動可能な要素は、カテーテルデバイスの本体の表面上に位置する別のピンジョイントによって形成されてもよい。本明細書で言及されるピンジョイントは、回動ジョイント又はヒンジジョイントであってもよく、即ち、前述の部材を接合するピン又は円筒形部材を伴ったかみ合い特徴部を備えてもよく、ピンはジョイントの回動軸を形成する。次いで、第2把持アームの運動は、上述のように、1つ以上の引張ワイヤによって制御されてもよい。第2把持アームが上述のように単一のワイヤを備える場合、内部空間は、カテーテルデバイスの内外への弁尖運動抑制器の通過を可能にするように、複合材料の中を通って形成されてもよい。
【0041】
代替として又は追加で、第1把持アームは、「閉じられた形態にとどまらない形態」で熱処理を受けることができる。これは、第1把持アームが、デバイスの本体に向かっても第2把持アームに向かっても、組織を掴むことを可能にする。
【0042】
第1把持アーム及びヒンジの両方をカテーテルの本体と一体的に形成するために、カテーテルの本体は、外側チューブを備えてもよく、この状態において、第1把持アームは、外側チューブのジョイントセクションとして形成される。第1把持アームの塑性変形を伴わずに曲がりを可能にする弱化ヒンジセクションを提供するために、スリット及び/又はパターンの幾つかの形態がチューブに形成されることができる。
【0043】
別の構成では、ヒンジ付き把持アームが使用されもよい。その場合、第1把持アームはフライス加工されてもよく、その場合の作動は、閉鎖のためのバネ及び開放のためのワイヤ、これらの逆、又は2つのワイヤ(1つは開放のため、1つは閉鎖のため)を用いて行われてもよい。デバイス内で切断されるプーリを使用して、引張ワイヤからの引張力を再指向することができる。
【0044】
把持面の一方又は両方は、摩擦を伴って弁尖を保持するように構成されてもよい。例えば、把持面は、高い摩擦係数を有する材料を使用してもよく、及び/又は、把持面は、畝状プロファイル又は鋸歯状プロファイルのような、摩擦を増大させるためのテクスチャ又は表面プロファイルを有してもよい。弁尖アンカーチューブの端部は、典型的には、把持面の1つに開口している。弁尖アンカーチューブは、その畳まれた形態の弁尖アンカーよりもわずかに大きいサイズのほぼ円筒形のチャネルの形態をとってもよい。
【0045】
弁尖アンカーは、弾性材料から形成されてもよく、力が加えられない場合に畳まれていな形態をとり、例えば弁尖アンカーチューブ内に拘束される場合に畳まれた形態に弾性的に変形することができるように構成されてもよい。弁尖アンカーのさらなる可能な特徴は、以下の種々の点で説明される。
【0046】
弁尖アンカーが、下から弁尖内に、即ち乳頭筋が位置する側から弁尖内に配置され得る場合、有利である。下からの弁尖アンカーの好ましい配置を容易にするために、カテーテルデバイスは、弁尖アンカーチューブの開放端が把持デバイスの近位端(上記で定義された向きにおける心臓の場合の「上」端)にあり、且つ弁尖アンカーが、カテーテルデバイスの遠位端から近位端に向かって移動してチャネルから外に押し出され得るように構成される。これ故、第1把持アームの端部はまた、弁尖アンカーチューブの端部を有してもよく、これは、カテーテルデバイスの近位端に向かって延びる方向に弁尖アンカーを方向付けるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルデバイスは、以下でさらに説明されるように、弁尖アンカーの展開のためのU字形状ロッドを含む。
【0047】
いくつかの例では、第2把持アームは、第1把持アームと同様の方法で、テーテルデバイスの本体から切り出されてもよく、例えば、第1把持アームに対して本体の反対側で本体の一部分から切断されてもよい。この第2把持アームは、その基部に、デバイスから引き出されるきつい曲がりを可能にする切断特徴部を有することができ、剛性を高めるために熱成形されてもよい。
【0048】
いくつかの例では、第1把持アームに機械的なヒンジを使用して、カテーテルデバイス本体がニチノール等の弾性金属で作製されることができ、一方、第1把持アーム自体は、他の方法で別個に形成されるステンレス鋼からフライス加工される。代替として、本体は、弾性金属から切断された把持アームと共にフライス加工されてもよく、又はデバイス全体が、フライス加工されてもよく、又は付加的な製造によって作製されてもよい。
【0049】
弁尖アンカーチューブは、その内側端部上の平らにされたセクションで熱処理されてもよく、当該セクションは、第1把持アームの「回動中心」を通過して延びる。これは、第1把持アームを開くように引っ張るためのレバーとして作用することができる。
【0050】
第2把持アームは、ニチノール等の金属シートから切断され、弾性的に変形された状態でカテーテルデバイスの本体内に配置されてもよい。この変形は、純粋に、第2把持アームが本体内に挿入されるためのより小さなプロファイルをとることを可能にし、それにより、第2把持アームが本体内に入ると、第2把持アームは非変形の状態に拡張することになることである。或いは、一旦第2把持アームが本体内に入ると、ある程度の弾性的な変形が残っていてもよく、それにより、例えば、第2把持アームは、弾性力を介してそれ自体を所定の位置に保持する、及び/又は、第2把持アームは、第1把持アームが開くと弾性的に広がることによって自動的に展開することができる。第2把持アームは、剛性を向上する及び/又は把持面を提供するために、例えば光度曲線又は凸曲線を伴って熱処理を用いて形成されてもよい。把持デバイスの把持強度を高めるために、波形又はバーブ付きのエッジを設けられてもよい。追加で又は代替として、異なる曲がり特性を提供するために、スリットが第2把持アームの表面に配置されてもよい。いくつかの例では、第2把持アームのためのヒンジ機構は、2つの穴を使用することによって本デバイスに形成され、この状態において、穴に嵌合するピンが第2把持アームに形成される。これは、上述したように弾性的な変形を有する第2把持アームを挿入することによって、及び、ピンが穴と係合してヒンジを形成するポジションにまで第2把持アームが完全に又は部分的に展開されることを可能にすることによって、組み立てることができる。ワイヤは、第2把持アームを上下に移動させるために第2把持アームに取り付けることができ、又は、ワイヤは、一方向にばね負荷をかけられ、他方向に引っ張られてもよい。
【0051】
この態様の2つのアーム付き把持部が、第2の態様及びその可撓ジョイントと組み合わされる場合、一例では、第2の態様の2部分式ハウジングセクションが、必要な形状に切断された単一のチューブ状セクションから作製され、この状態において、第1把持アームは、カテーテルデバイスの本体を形成する2部分式ハウジングセクションの近位部分に設けられ、第1把持アームは、有利なことには、同じチューブ状セクションから切断される。このようにして、レーザカットニチノール等の単一のチューブ状セクションからカテーテルデバイスの多くの特徴部を作り出すことが可能になる。代替として、第2の態様の2部分式ハウジングセクションは、上述のように、ヒンジで結合された2つの部分から作製され、この場合、カテーテルデバイスは、おそらく複合材料を含む材料の組み合わせから形成されてもよい。
【0052】
第2の態様から見て、本発明は、弁尖アンカーと乳頭アンカーとの間に延びる人工索線を埋め込む処置の一部として、弁尖アンカーと乳頭アンカーとを心臓に埋め込むためのカテーテルデバイスを提供する。当該カテーテルデバイスは、
カテーテルデバイスの長さに沿ってカテーテルデバイスの遠位端からカテーテルデバイスの近位端に向かって延びる2部分式ハウジングセクションであって、カテーテルデバイスの使用中に心臓の乳頭筋と弁尖との間に配置されるように構成され、カテーテルデバイスの遠位端にある遠位部分と、遠位部分の近位側に位置する近位部分とを含む、2部分式ハウジングセクションと、
ハウジングセクションの近位部分にあり且つ心臓の弁尖に取り付けるために弁尖アンカーを展開するための弁尖アンカー展開機構と、
ハウジングセクションの遠位部分にあり且つ乳頭筋に取り付けるために乳頭アンカーを展開するための乳頭アンカー展開機構であって、遠位部分に対して遠位方向の外方に向かって乳頭アンカーを移動させることによって、乳頭アンカーを展開するように構成される、乳頭アンカー展開機構と、
2部分式ハウジングセクションの近位部分と遠位部分との間に位置する可撓ジョイントであって、近位部分の中心線に対して遠位部分の中心線が角度をつけることを可能にする、可撓ジョイントとを備える。
【0053】
この態様のデバイスは、乳頭アンカーを挿入するための新しい方法を提供し、当該方法は、医師が、弁尖アンカーを最初に配置した後に、又は弁尖アンカーを配置/弁尖を掴む準備ができたデバイスを配置した後に(後者の状況では乳頭アンカーが最初に配置されている)、デバイスを移動させることを必要とせずに、弁尖アンカー及び乳頭アンカーを埋め込むことを可能にし得る。特許文献3に記載されるデバイスとは対照的に、カテーテルは、乳頭アンカーが配置される前に、必ずしも心臓内の異なる向き又は位置に移動される必要はない。代わりに、可撓ジョイントが、カテーテルデバイスの残りの部分が動いていない間に、遠位部分が乳頭筋領域に向かって角度付けられることを可能にしてもよい。ジョイントの可撓性はまた、遠位部分の遠位端が乳頭筋に対してより均等に押すことを可能にし、即ち、遠位端の断面全体にわたってより均等に身体組織に対して遠位端が押すことを確実にすることができる。同様に、これは、乳頭アンカーが断面全体の周りの身体組織と係合することができるので、乳頭アンカーの効果的な埋め込みを確実にする。
【0054】
これ故、このデバイスは、もつれの危険性を低減し、埋め込み処置に必要な時間を最小限にもする。特許文献3では、アンカーを配置する方法が記載されているが、乳頭アンカー展開機構及びそのハウジングの設計は、アンカーピンの全てが身体組織と良好に係合することを確実にするために、より大きな注意を必要とする。本明細書では、「ピン」という用語は、「フック」という用語と交換可能に使用され、アンカーの同じ要素が各ケースで記載されていることに留意されたい。
【0055】
任意選択的に、可撓ジョイントはまた、伸長可能であってもよい。これ故、2部分式ハウジングセクションの近位部分と遠位部分との間に、伸縮可撓ジョイントが存在してもよい。伸縮可撓ジョイントは、遠位部分が、ジョイントの伸長を介して近位部分から離れるように移動され、それによって、カテーテルデバイスの遠位端を心臓内にさらに伸長させることを可能にしてもよい。このようにして、デバイスは、カテーテルデバイスの残りの部分が動いていない間に、乳頭筋領域に向かう方向に乳頭アンカーと共にハウジングセクションの遠位部分を移動するように伸ばされることができる。可撓(及び伸縮)ジョイントの弾性は、身体組織に対する過剰な力を回避するように作用することができ、埋め込み中の外傷の危険性を低減することも、組み合わせた状態で作用する伸長機構及び曲がり機構を用いて均一な押圧力を確実にすることを補助することもできる。
【0056】
乳頭アンカーは、複数のピンから構成されてもよく、複数のピンは、アンカーがハウジングセクションの遠位部分から外へ出て展開形態に移動すると、身体組織内にフックを形成するように構成される。いくつかの例では、特許文献3の設計と同様の設計の乳頭アンカーを使用することができる。他の例では、乳頭アンカーは、ピンに沿ったスリットのような、以下で説明されるようなさらなる特徴部を有してもよい。また、第2の態様の提案されるデバイスは、ねじ付きアンカー又はバーブ付アンカーのような、距離を置いて配置される必要のある他のタイプのアンカーと共に使用されてもよい。
【0057】
上述したように、ハウジングセクションの2つの部分の間に可撓ジョイントを追加することによって、より信頼性の高い展開と絡み合いの機会の低減とが達成されることができる。ジョイントの可撓性はまた、デバイスがカテーテル内の曲がり部を通って移動するのに役立ちもし、これは、ハウジングセクションが、1つの長い剛性のあるセクションではなく、互いに対して曲がることができる2つのより短い真っ直ぐなセクションに分割されるためである。可撓ジョイントは、近位部分の中心線に対して遠位部分の中心線が角度をつけることを可能にし、これらの中心線は、デバイスがレスト状態であるときにカテーテルの中心線と一列に並んでもよい。デバイスは、典型的には円筒形である角柱形状を有し、これ故、中心線は角柱の断面の中心に沿っていてもよいことが理解されるであろう。デバイスの使用中、ハウジングセクションの近位部分の中心線は、ハウジングセクションを支持するカテーテルの隣接部分の中心線と一列に並んだままであってもよく、一方、遠位部分の中心線は、異なる角度になっていてもよい。
【0058】
伸縮可能なジョイントの任意の特徴は、遠位部分が近位部分から離れるように移動されることを可能にすることで、カテーテルデバイスの遠位端を心臓内にさらに伸ばす。これ故、この特徴は、2部分式ハウジングセクションの全長を変化させるテレスコ式効果を有する。伸縮可撓ジョイントが使用される場合、これは、必要な可撓性及び伸縮性を提供するために、2つの別個の機構を有してもよい。これ故、2つの部分の間で曲げるように構成される機構と、何らかのかたちのテレスコ式効果を介して伸長するための別個の機構とが存在してもよい。この場合、テレスコ式効果は、スライドスリーブの構成によって、折り畳み式又はヒンジ式の構造によって、及び/又は、弾性的に押しつぶされることが可能な構造によってもたらされてもよい。本明細書に示される例示的な実施形態を含む他の例では、伸縮可撓ジョイントは、曲がり機能及び伸縮機能の両方を提供する単一の「曲がり可能な」部分を有してもよい。これは、例えば、(伸縮曲がり可能な飲用ストローと共にあるような)ベローズ構成のような折り畳み可能及び/若しくは弾性的に押しつぶし可能な構造、又は、コイルバネ若しくは一組の平行な蛇行経路のような1つ以上の押しつぶし可能なコイル形状及び/若しくは波形状の成形部を有する構造であってもよい。
【0059】
2部分式ハウジングセクションは、任意の好適な材料、即ち医学的に好適な材料の2つのチューブ状セクションから形成されてもよい。ステンレス鋼又はニチノールが使用されてもよい。代替として、炭素繊維強化又はガラス繊維強化PEEK等の複合材料が使用されてもよい。カテーテルデバイスは、そのような材料と、デバイスの異なる部分の要求される特性に応じて選択される当該部分のための材料との組み合わせを介して、形成されてもよい。超音波が通過することを可能にし且つ同時に十分な強度を有する材料が好ましく、炭素繊維強化PEEKは、これらの要求を十分に満たし、製造コストを下げる構成要素の射出成形も可能にする。繊維強化プラスチックは、通常、X線上では見えないので、全ての構成要素において戦略的に配置される放射線不透過性マーカが使用され、それにより、超音波画像に対する相補的な情報として、X線上のデバイス構成要素(複数可)の互いに対する位置及び向きを決定してもよい。
【0060】
いくつかの例示的な実施形態では、伸縮曲がり可能な要素が、ニチノール又は別の形状記憶金属等の可撓性を有し且つ弾性を有する材料で作製されるチューブの壁内に、押しつぶし可能な形態を設けることによって、形成される。レーザ切断が、必要な形態を提供するために使用されてもよい。伸縮可撓ジョイントは、必要とされる機能を達成するために、任意の好適なパターンで切断され得る。例えば、当該ジョイントは、規則的なバネ(例えば、螺旋バネ)として形成されてもよい。伸縮可撓ジョイントは、遠位端が心臓の壁と接触する間に、所望の曲がりパターン及び非対称の力を達成するために、非対称に切断されてもよい。薄壁シリコーン要素は、押しつぶし可能な形態に切断されたチューブの可能な代替物である。例えば、元の長さの何倍にも引き伸ばすことができる薄壁シリコーンチューブである。その場合、シリコーンチューブ部分は、好適な支持ブラケットを介して把持セクション及び乳頭アンカーセクションに接続されてもよい。
【0061】
伸縮可撓ジョイントは、以下でさらに説明されるように、乳頭アンカーの挿入のための処置の間、伸長され得る。伸縮可撓ジョイントはまた、挿入前において、独立して伸長されるか、又は圧縮テンションがかけられた状態にあり、その後、解放されてもよい(これにより、デバイスをより長くし、心臓の壁を押す)。
【0062】
可撓性を有し且つ伸縮可能である特徴を個別に、即ち、弁尖アンカーの配置と直接関連させずに使用することも可能である。これ故、この処置は、2つの段階、即ち、縫合糸を弁尖に取り付けるための段階と、乳頭アンカーを配置するための段階とに分けることができる。段階が個別に行われる場合、テレスコ式のチューブを使用して伸縮可能な機能の全部又は一部を提供することにより、デバイスはそのアプローチと共により短くされることができるので、利点があり得る。
【0063】
ジョイントは、ワイヤ、索又は組織がジョイントによって挟まれるのを防ぐために、内部及び/又は外部に機械的なシールドを有してもよい。これは、伸縮ジョイントと共に引き伸びる可撓膜、例えばジョイントの外側に載る薄いスリーブの形態であってもよい。膜は、ジョイントの上方及び下方でユニットの外側に固定されるシリコーン膜であってもよい。例えば、膜は、接着剤で固定されてもよい。或いは、シリコーン(又は他の可撓性材料)の可撓層が可撓ジョイント上にオーバーモールドされて、ジョイントの移動中の挟み込みの危険性を低減してもよい。食道ステント又はステントグラフトを覆うために行われるものと同様のファブリック被覆技術がジョイントに適用されてもよい。
【0064】
いくつかの例では、伸縮可撓ジョイントを使用する場合、伸縮可撓ジョイントは、伸縮可撓ジョイントが圧縮された場合にカテーテルデバイスの遠位端までの全てに延びるチューブセクションによって覆われてもよい。このチューブセクションは、例えば、薄壁のニチノールチューブであってもよい。これにより、伸縮可能ジョイントは、その全ての移動変化する長さにわたって完全に覆われることが可能になる。被覆チューブは、デバイス内の曲がり量を減少させることができ、それ故、例えばパターンを切断することによって、被覆チューブがデバイスに取り付けられる場所の真上に、さらなる可撓セクションが追加されてもよい。被覆チューブは、デバイス本体に溶接又は接着されてもよい。
【0065】
デバイスを制御するために操作者によって使用される送達ハンドルは、デバイスの下側セクションがどれだけ伸長されるかに関係なく索を適正な張力で保持するために、デバイスの下側セクションが伸長されるときに人工索線(複数可)が伸長されるように、結合されてもよい。追加で又は代替として、定荷重バネ等の定張力デバイスが送達ハンドル内に配置されて、索の適正な張力を達成し、これ故、索線(複数可)内の任意の緩みを除去してもよい。線(複数可)を張った状態に保つことにより索から弛みを除去することは、索自体とデバイス内の任意の他の構成要素との間での索の絡み合いを防ぐことができる。
【0066】
伸縮可撓ジョイントは、移動/機能のための異なる手段を可能にするために、伸長された、圧縮された又は中間のどこかのデフォルトの「バネ形態」で形成され得る。当該ジョイントはまた、部分的に引き伸ばされて熱処理されることもでき、このことは材料の使用の減少を可能にすることができる。
【0067】
弁尖アンカー及び/又は弁尖アンカー展開機構は、特許文献3の機構と同様であってもよい。代替として又は追加で、弁尖アンカー及び弁尖アンカー展開機構は、以下に説明されるような特徴を有してもよい。
【0068】
乳頭アンカーは、その展開前にハウジングセクションの遠位部分内に収容される。乳頭アンカーは、ハウジングセクションの遠位部分と同様の断面を有してもよい。例えば、アンカーが遠位部分に保持される場合、両方ともチューブ状の形態を有してもよい。上記のように、アンカーは、アンカーのピンが乳頭アンカーの展開中に身体組織内にフックを形成することを可能にする、畳まれた形態及び畳まれていない形態を有してもよい。乳頭アンカー展開機構は、特許文献3のものと同様の形態をとってもよく、及び/又は、以下で説明されるように、さらなる又は代替の特徴を有してもよい。
【0069】
一例では、乳頭アンカー展開機構は、乳頭アンカーを2部分式ハウジングセクションの遠位部分に対して遠位方向に押すための第1のワイヤ又はロッドを含む。乳頭アンカーが身体組織、即ち乳頭筋の組織及び/又は乳頭筋に隣接する組織に埋め込まれた後に、カテーテルデバイスから乳頭アンカーを係合解除するために、乳頭アンカーを乳頭アンカー展開機構から解放するための第2のワイヤ又はロッドがさらにあってもよい。
【0070】
乳頭アンカーは、乳頭アンカーに取り付けられた索線を有してもよく、特許文献3に記載され且つ以下に説明されるように、係止リング等の係止機構を含んでもよく、係止機構は、係止機構に力が加えられていないときに索線をクランプするためのものである。係止リングは、索線の長さを調節するために、係止機構から線を解放するために弾性的に変形されることができてもよい。乳頭アンカー展開機構は、係止リングをその弾性的に変形されたポジションに保持するための係止リングホルダを含んでもよく、乳頭アンカー展開機構は、係止リングから係止リングホルダを選択的に引き離すように構成され、それにより、索線は、乳頭アンカーの展開後、索線の長さの任意の必要な調節後に、所定位置に係止されることができる。この係止ホルダは、後述するように、Z字形状を有することができる。
【0071】
可撓ジョイントは、例えば、2部分式ハウジングセクションの遠位部分が枢動機構を介して又は弾性的に変形可能な要素を介して近位部分に結合された状態で、ヒンジ要素を含んでもよい。例えば、ハウジングセクションの2つの部分は、ヒンジ要素によって互いに結合された複合材部品又は金属部品であってもよい。
【0072】
いくつかの例では、可撓ジョイントは、ニチノール又はステンレス鋼のワイヤ等の1つ以上のワイヤを介して制御可能である。押すこと及び/又は引っ張ることによって、可撓ジョイントの角度の制御を可能にするワイヤが存在してもよい。例えば、3つのワイヤが存在してもよく、当該3つのワイヤは、ハウジングセクションの支持セクションに分配される及び/又は可撓ジョイントに取り付けられ、それにより、例えば、ジョイントも伸縮可能である場合のような複雑な移動を達成する。これらのワイヤは、1つ以上のワイヤが押されるか又は引っ張られると、このことにより、ハウジングセクションの遠位部分の移動が制御されるように構成されてもよい。例えば、ワイヤは、伸縮可撓ジョイントの角度又は伸長を変化させてもよい。3つのワイヤは、弁尖を把持部内に依然として保持しながら、配置された乳頭アンカーを回収するためにデバイスを伸ばすために、押すこと又は解放することによって使用されるように構成されてもよい。ワイヤはまた、乳頭アンカーのより最適な配置のために、心臓壁に対してより垂直になるように遠位部分に角度を付けるために使用されるように構成されてもよい。
【0073】
いくつかの例では、ヒンジ要素は、1つ以上のヒンジ引張ワイヤを介して制御可能である。ヒンジ引張ワイヤ(複数可)は、上述の1つ以上のワイヤの形態であってもよい。ヒンジ要素を制御するように構成されるヒンジ引張ワイヤ(複数可)は、カテーテルデバイスの内側に据わる及び/又はカテーテルデバイスの前部を通過するように構成されてもよい(「前部」は、弁尖アンカー展開機構が配置され得るカテーテルデバイスシャフトの側部を指す)。ヒンジ要素を制御するように構成されるヒンジ引張ワイヤ(複数可)はまた、カテーテルデバイスの中心軸から半径方向にオフセットされるように、即ち、カテーテルデバイスの中心軸ではなくカテーテルデバイスの壁に近接するように構成されてもよい。
【0074】
ヒンジ要素を制御するように構成されるヒンジ引張ワイヤ(複数可)が上述のように構成される場合、ヒンジ引張ワイヤ(複数可)は、偏向ワイヤとして作用してもよく、即ち、ヒンジ引張ワイヤ(複数可)は、ヒンジ引張ワイヤ(複数可)の使用を通じて2部分式ハウジングセクションの遠位部分が2部分式ハウジングセクションの近位部分に対して角度が付けられたときに、ヒンジ引張ワイヤ(複数可)が、可撓ジョイントのヒンジ要素が角度を付けられる方向と同じ方向にカテーテルデバイスのデバイスシャフトを偏向させることができるように、構成されてもよい。これは、カテーテルデバイスからの乳頭アンカーの展開中に心臓の壁に作用する力を増加する効果を有し得る。ヒンジ要素の作動及びデバイスシャフトの偏向は、ヒンジ引張ワイヤの操作中における順次又は同時のものであってもよい。例えば、ヒンジ引張ワイヤの操作中、デバイスシャフトは、ヒンジ要素が曲がると同時に偏向してもよく、又は、当該引張ワイヤの操作中、ヒンジ要素が、最初に曲がり、デバイスシャフトが次に偏向してもよい。さらに、ヒンジ引張ワイヤ(複数可)が作動されると、カテーテルデバイスのデバイスシャフトは、目標の方向に操向されてもよい。これは、乳頭アンカー展開中に、2部分式ハウジングセクションの遠位部分が心臓の目標とする壁に対して垂直であることを確実にするのを有益に補助する。
【0075】
いくつかの例では、可撓性を有する(及び任意選択的に伸縮可能である)ジョイントは、カテーテルデバイス全体の構造構成要素としても作用する弾性チューブ(例えば、ニチノールチューブ)からレーザで切断され、それにより、チューブはまた、2部分式ハウジングセクションの遠位部分及び近位部分も形成する。異なるタイプのパターンが組織に向かうチューブエッジに適用され、それにより、異なる摩擦及び/又は潜在的な「引っかけるもの」を達成することで、埋め込み中にデバイスを安定に保つことができる。一例は、組織に向かって増大する表面を伴った波形パターンエッジ又はフランジである。新たな索の挟み込みを回避するために、ジョイント内の縫合糸を覆うシースが実装されることができ、アンカーの配置が確認されると、縫合糸シースは引っ込められる/開放されることができる。
【0076】
第2の態様のカテーテルデバイスを使用する例は、以下のことを含むことができる。つまり、(1)デバイスが、最初に、最終的な配置の近くに配置されることと、(2)可撓ジョイントが、遠位部分を乳頭筋に向かって移動させるように角度が付けられ、且つ、遠位部分内の乳頭アンカーと共にあるワイヤ/ロッドが、例えば、乳頭アンカー(又は乳頭アンカー押圧チューブ)とハウジングセクションの遠位部分の内部表面との間の摩擦に起因して、遠位部分と共に移動することと、(3)遠位部分の遠位端が、身体組織に出会い、力が加えられると、身体組織からの反力が最終的に、乳頭アンカーを所定位置に保持する力を超え、この時点で、組織がデバイスの基部の下方で平坦になるように押されて全てのピンを組織内に正確に配置する最大の機会を与え、ピンの端部が次いで遠位部分の遠位端を超えて移動することで身体組織に出会うように、力がアンカーに加えられることができ、このことが、ロッド又はワイヤからアンカーへの追加の力を介して行われることができ、又は、有利なことには、このことが、アンカー上のプレテンションを通じて行われることができ、当該プレテンションは、遠位部分上の身体組織からの力が力と摩擦とのバランスを十分に変化させることで乳頭アンカーが(紙のステープラと同様に)放出されるまで、遠位部分との摩擦によって保持されることと、(4)乳頭アンカーピンが、外に折れ曲がった状態になり、非拘束の乳頭アンカーのフック形状に形を成し、それによって身体組織と係合し、この時点で、接続は、操作者によって引張試験される、並びに/又は、X線及び/若しくは超音波で視覚的に確認されることができることと、(5)接続が満足されるものでない場合、乳頭アンカーが、デバイス内に引き戻され、アンカーと身体組織との改善された結合を試みるために再配置されることができることと、である。同じデバイスはまた、弁尖アンカーを埋め込んでもよく、このことは、乳頭アンカーの埋め込み後に行われることができ、又は乳頭アンカーの埋め込み前に任意に行われることができる。乳頭アンカーの埋め込み中、弁尖アンカー展開機構は、弁尖アンカーの展開の有無にかかわらず、弁尖を掴むために使用されてもよい。
【0077】
乳頭アンカーを埋め込むための第2の態様のカテーテルデバイスの操作は、紙のステープラと比較されることができ、その理由が、デバイス端部上の力(押されているとき)が、ステープラと同様に、乳頭アンカーを端部から外に且つ端部に隣接する材料の中に送ることになるためであることが理解されるであろう。典型的な例では、デバイスが所定位置にあり且つ弁尖が固定される(例えば、特許文献3におけるような又は以下で説明されるような把持部内で固定される)と、乳頭アンカーが配置されることができ、乳頭アンカーの配置が承認された場合には弁尖アンカーが配置されることができ、承認されない場合、弁尖は取り外され、乳頭アンカーは再配置のために回収されてもよい。デバイスの中心の可撓ジョイントはまた、カテーテルを通る移動を改善し、特に、弧状部を通る移動を改善するが、それは、2つのより短い構成要素が1つの可撓ジョイントに接続されるので、より容易な湾曲の通過が可能になるためである。
【0078】
いくつかの例では、弁尖アンカーの作動は、乳頭アンカーの展開と関連付けられることができ、このことは、弁尖及び乳頭アンカーが少なくとも部分的に同時に展開されてもよいことを意味する。これは、処置をより容易及び/又はより速くすることができる。
【0079】
第3の態様から見ると、本発明は、線を保持するために身体組織に埋め込むためのアンカーを含むアンカーシステムを提供する。アンカーは、身体組織と係合するための複数のフックであって、畳まれた形態及び畳まれていない形態を有する複数のフックを含み、アンカーは、弾性材料で作製され、それにより、アンカーは、拘束力の付与によって畳まれた形態に弾性的に変形されることができ、拘束力の付与がなくなると畳まれていないポジションに戻り、フックのそれぞれの端部は、先端部を含み、先端部は、アンカーが畳まれた形態にあるときに、アンカーの中心軸に向かって湾曲するように形成される。
【0080】
理解されるように、フックが身体組織と係合するために、各フックの先端部は、目標の身体組織をつき通すことができなければならない。それ故、先端部の端は、通常、鋭い及び/又は尖っている。アンカーが畳まれた形態にある場合に、フックの先端部がアンカーの中心軸に向かって湾曲していること、即ち、先端部のまさに端がフックの他のなんらかの部分の内方に向かうように離間していることを必要とすることによって、先端部の端は、アンカーを弾性的に変形させるための拘束力をもたらすコンテナデバイスの内面に接触しないことが有利である。例えば、畳まれた形態になるようにアンカーを拘束するコンテナデバイスがチューブ状デバイスである場合には、先端部は、先端部の端が内面に接触しないように、チューブ状デバイスの内面から離れるように湾曲されることになる。代わりに、フックのより滑らかな部分は、内面に対して接線方向に横たわり、アンカーのフックとコンテナデバイスとの間の接触ポイントでとなる。これ故、畳まれた形態では、アンカーの最も外側の部分は、フックの先端部の端から間隔をあけて位置するフックの部分であってもよく、この状態において、先端部の端は、上記最も外側の部分の内側に位置し、アンカーの中心軸に向かって延在する。それ故、フックの各々の先端部は、アンカーを拘束するコンテナデバイスの内壁をこすること及び/又は引っ掻くことができない。これは、コンテナデバイスへの損傷を防ぐと共に、コンテナチューブ材料の削り屑が生成される危険性を回避する。この削り屑は、目標の身体組織の領域に所望されずに堆積され得る。材料の少量の堆積は無視できるように見えるが、削り屑は、出血及び/又は脳卒中を生じ得る塞栓症を引き起こす可能性がある。
【0081】
アンカーは、弾性金属、例えば、ニチノール又はステンレス鋼で作製されてもよく、一方、コンテナデバイスは、複合材料、例えば、強化繊維又は粒子と共にマトリクスを含む材料、例えば、炭素強化(CRF)PEEKで作製されてもよい。アンカーの金属は、コンテナデバイスの複合材料を容易に損傷し得ることが理解されるであろう。
【0082】
アンカーシステムは、アンカーと共にコンテナデバイスを含んでもよい。これ故、アンカーシステムは、アンカーを畳まれた形態に保持するコンテナデバイスを備えてもよく、この場合、アンカーの先端部は、コンテナデバイスから離れるように内方へ向かって湾曲する。コンテナデバイスは、アンカーの畳まれた形態の外周の周りに拘束を与えてもよく、コンテナデバイスは、上述したようなチューブ状コンテナデバイス、例えば円形チューブであってもよい。
【0083】
アンカーが畳まれた形態にある場合にアンカーの中心軸に向かって先端部を湾曲させることによって生じるさらなる利点は、身体組織への埋め込み中にコンテナデバイスからアンカーを放出するために必要とされる力がより小さいことである。アンカーとコンテナデバイスの内面との間に滑らかな接触ポイントを有することによって、アンカーとコンテナデバイスとの間の摩擦係数が低減する。これ故、埋め込み中にアンカーを放出するのに必要な力が小さくて済む。
【0084】
アンカーが畳まれた形態にある場合のアンカーの中心軸に向かう先端部の湾曲は、例えば、反転湾曲、反対の湾曲、又はS字状の湾曲のうちの少なくとも1つとして説明され得る。換言すれば、畳まれた形態では、フックは、アンカーの中心軸に向かって延びる第1湾曲部分を含んでもよい。次いで、フック及び先端部は、第2湾曲部分においてアンカーの中心軸から離れるように湾曲してもよく、その後、先端部が、第3湾曲部分においてアンカーの中心軸に向かって背方へ湾曲するように形成されてもよい。これ故、フックの湾曲は、フックが少なくとも1つの変曲点を有するようなものであってもよい。
【0085】
有利なことには、アンカーの湾曲は、埋め込み中にアンカーを身体組織内に引っ張るのを補助し、これ故、埋め込み中にアンカーを押すのに必要な力を低減する。アンカーがその畳まれた形態からその畳まれていない形態に広がると、アンカーの湾曲は、「はね返り」力をもたらし、この場合、アンカーのフックの湾曲は、アンカーを身体組織を貫通するように引っ張るのを補助する。この有利な効果は、畳まれた形態にある場合にアンカーの中心軸に向かって背方へ湾曲しないフックを有するアンカーによっては示されない。
【0086】
畳まれた形態にある場合に中心軸に向かって背方へ湾曲していないフックを有するアンカーは、埋め込みの間に大量の軸方向の力がアンカーに加えられない限り、身体組織内にいかなる特定の距離も突き通すことなく、畳まれていない形態に即座に曲がって戻る傾向がある。しかしながら、先端部が中心軸に向かって湾曲するように形成されるフックを有するアンカーは、フックの先端部が畳まれていない形態に移動するにつれて中心軸から外側に湾曲し始める前に、身体組織内により大きな距離で突き通す傾向があることになる。これ故、減少された軸方向力が、コンテナデバイスからアンカーに加えられることでアンカーの初期の突き刺しを生じさせることが必要であり、場合によっては、これは、コンテナデバイスの遠位端が身体組織の表面に接触する限り、アンカーの展開がアンカーを組織内に引き込むように作用することに伴う力でなくてもよい。先端部の内側への湾曲から生じるアンカーのはね返り力は、アンカーのフックの軌道を容易にし、当軌道は、アンカーに組織内へより深い湾曲に沿って移動させ、それにより記載されるような引張効果を引き起こす。
【0087】
アンカーが畳まれていない形態の場合、フックは、アンカーの中心軸から離れるように、引っ掛けフック型の形状で延びてもよい。これ故、アンカーは、畳まれた形態から畳まれていない形態に移動するときに、先端部がアンカーの中心軸から離れるように外方へ移動するように構成されてもよい。畳まれていない形態では、フックは、少なくとも1つの変曲点を有する湾曲を有してもよく、例えば、フックの湾曲方向は、先端部で反転してもよい。これ故、フックの畳まれていない形態は、フックの長さの大部分に沿って延びる第1湾曲方向を伴った第1湾曲部分を有し、続いて、フックの先端部にある反対の湾曲方向を伴った第2湾曲部分を有してもよい。この形態は、畳まれた形態に畳まれたときに、先端部が上述のように中心軸に向かって内側に湾曲するようになることを確実にするために使用することができる。
【0088】
上記のような畳まれていない形態でのアンカーのフックの湾曲は、アンカーの平面的な広がりを有利なかたちで増大し、これ故、アンカーが広げられたときにアンカーによって覆われる表面積を増大する。アンカーは、一旦埋め込まれると組織のより大きな表面積を覆うため、組織に作用するアンカーの力は、より大きな面積にわたって等しく広がる。これは、アンカーが埋め込まれる身体組織上の歪みを低減する。これは、より低い質又はより弱い身体組織にアンカーを埋め込む際に特に有利である。
【0089】
アンカーは、フックがそこから延びる本体部分を備えてもよい。例えば、本体部分は、チューブ状壁を含んでもよく、この状態において、フックは、チューブ状壁から、例えば、チューブ状壁の端部から延びてもよい。これ故、畳まれた形態における上述の湾曲部では、第1湾曲部分は、チューブ状壁から延び、これに続いて、他の湾曲部分(複数可)がチューブ状壁からさらに延びてもよい。例示的な実施形態では、フックは、畳まれていない形態及び畳まれた形態の両方において滑らかな湾曲を伴って本体部分から延びる。その場合、フックが本体部分(例えば、チューブ状壁)に接合されるポイント又は当該ポイントに近いポイントにおいて湾曲に段状の変化は存在しない。フックは、初期湾曲を伴って本体部分から延びてもよく、当該初期湾曲は、畳まれていない形態及び畳まれた形態の両方において、本体部分の軸方向の広がりと整列する接線を有してもよい。フックの湾曲は、段状変化を全く含まず、それにより、当該湾曲は、常に、鋭い角を有さない連続的な湾曲である。
【0090】
先端部の湾曲は、畳まれた形態において、各フックの端が身体組織の表面に垂直になるように構成されることをもたらしてもよく、即ち、アンカーが身体組織に埋め込まれる場合、先端部の端が、身体組織の表面に垂直な方向で身体組織を最初に突き刺すように、身体組織に押し込まれてもよい。典型的には、これは、少なくとも先端部の遠位部分が、アンカーの長手方向軸と平行であること、及び/又はアンカーが埋め込まれるときのアンカーの移動方向と平行であることを含むことになる。有利なことには、フックの端を身体組織に対して垂直にすることによって、アンカーを身体組織内に埋め込むのに必要な力が小さくなる。これは、アンカーを組織内に押し込む力が最初に埋め込みが行われる先端部の端に伝達される変換について高変換が存在するためである。さらに、フックの端が、アンカーが埋め込まれるべき身体組織に対して垂直であることを必要とすることによって、アンカーを身体組織と整列させることがより容易になる。
【0091】
同様に、先端部の湾曲は、畳まれた形態において、各フックの先端部が、身体組織の表面に対して斜めの角度を有するように構成されることをもたらしてもよく、即ち、アンカーが身体組織に埋め込まれる場合、先端部の端が、ンカーの中心軸に対して内側に/身体組織の表面に対して鋭角に角度が付けられた方向で身体組織を最初に突き刺すように、身体組織に押し込まれてもよい。これ故、畳まれた形態の場合に、先端部が中心軸に向かって湾曲してもよく、少なくとも先端部の端部分が中心軸に向かって斜めに延びてもよい。先端部の湾曲の角度は、アンカーが埋め込まれるべき身体組織の表面の法線に対して0~30度の範囲内の任意の値であってもよい。種々の実施形態では、先端部の湾曲の値の範囲は、0~5度、0~10度、0~15度、0~20度、0~25度、又は5~15度をとることができる。有利なことには、アンカーの先端部を身体組織に対してわずかに傾斜させることによって、アンカーを身体組織内に完全に埋め込むために必要とされる軸方向の力が小さくなる。力は、アンカーコンテナチューブによってアンカーに加えられてもよく、アンカーコンテナチューブは、軸力を加えるための複数のワイヤ及び/又はロッドを備える。これは、アンカーのフックによってもたらされるはね返り力が、アンカーを身体組織内に引っ張るのを補助するからである。アンカーのフックによって示されるはね返り力は、アンカーの先端部が身体組織に最初に埋め込まれるときにどの程度の内向きに湾曲しているかに応じて増える。
【0092】
これ故、アンカーが埋め込まれるべき身体組織の表面に対する先端部の角度の考慮は、アンカーを身体組織に完全に埋め込むために必要とされる力を低減するためになされ得ることが理解されるであろう。
【0093】
フックの先端部は、身体組織をつき通すために尖った端部まで延在するテーパセクションを含んでもよい。先端部はまた、テーパセクションの前に拡大セクションを含んでもよく、拡大セクションはフックの先行部分よりも幅広である。各フックの先端部の形状は、涙滴、葉及び/又は花弁の形状であってもよい。即ち、先端部は、身体組織に係合するための尖っている端を含む概ね卵状の形状を備えてもよい。先端部の形状は、先端部の最も幅広い部分がフックの先行部分の幅よりも広く、尖先がフックの幅よりも狭い幅であるようなものであってもよい。
【0094】
先端部がフックの残りの部分よりも全体的に幅広であるような先端部の形状は、アンカーと身体組織との係合を強化することを有利なかたちで補助し得る。組織の再成長が、埋め込まれたアンカーで発生する場合、組織は、身体組織を通って延びるフックの周りで再成長し得る。各フックの先端部の最も幅広い部分がフックの先行する部分よりも幅広であるため、組織の再成長が生じた後では、先端部自体の形状がさらに固定するような特徴を形成するので、埋め込まれているアンカーを取り出すためには、より大きな力が必要とされる。
【0095】
この態様のアンカーは、弁尖アンカーとして、又は乳頭アンカーとして使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0096】
アンカーは、フックがフックの長さに沿った開口部を備えて形成されることをさらに含んでもよい。アンカーフックに開口部を追加することによって、より大きな幅のフックが使用されることができ、それによって、塑性変形を伴わずに、畳まれた形態と畳まれていない形態との間で依然として大きな変形を可能にしつつ、保持強度を増加させることができる。より大きな幅のフックの増加した表面積はまた、力の分布を広げる補助をする。開口部はまた、組織がスリットの間で成長することを可能にすることによって治癒を促進することができ、無垢のフックを備える場合のように、容易に引き出され得る「ソックス」を細胞が形成する場合よりもむしろ、アンカーと組織との間のより信頼性のある接続を時間の経過と共に生み出すことができる。
【0097】
アンカーが索線のような線を解放可能に保持することができ、それ故、アンカーが、力が加えられないときに線をクランプするための係止機構を備えることができ、係止機構が、線の長さを調節するために、係止機構から線を解放するために弾性的に変形されることができる場合に、利点が生じる。これは、以下に説明するような係止リングを使用してもよい。
【0098】
いくつかの例では、フックの開口部は、複数の穴(約0.2~0.4mmの直径を有する複数の穴等)を含み、この状態において、これらの開口部が縫合糸に接続され、単一の長さの縫合糸は、複数の穴のいくつか、又は複数の穴の全てを通過する。縫合糸は、各穴で結ばれてもよい。縫合糸は、例えば、Dyneema縫合糸(又はDacron等の他の同様の縫合糸)であってもよい。ニチノールのような弾性材料は、鼓動する心臓から生じる周期的な負荷を含む、高い周期的な負荷を受ける間に疲労で折損する傾向がある。複数の穴を通る縫合糸の使用によって、アンカーピンにフェイルセーフを追加することが可能である。アンカーのフックが破損した場合、アンカーは縫合糸によって依然として一緒に保持され、このことは、塞栓症の危険性を低減する一方で、組織の内部成長のための余分な時間ももたらす。これ故、たとえアンカーが早い段階で破損したとしても、アンカーは塞栓を起こさず、依然としていくらかの力を保持することができ、この理由は、拡張されているアンカーは、1つ以上のフックが折損したとしても、その進入穴を通して引っ張られるには大きすぎるためである。このように縫合糸を使用することは、組織が成長するための「開口部」も多くすることにもなる。複数の穴は、フックの他の開口部に加えて作製される円形の穴であってもよく、例えば、後述するようなスリットに加えて作製されるような円形の穴であってもよい。
【0099】
開口部に通される縫合糸の使用に代わるものとして、アンカーは、可能なオーバーモールド部を含んでもよく、オーバーモールド部は、フックの鋭利な先端部を除いてアンカー全体の周りに設けられてもよい。このようなオーバーモールド部に好適な材料はePTFEである。別の代替案は、アンカーを包む織布パウチを使用することである。これらの解決策の両方は、アンカーに折損がある場合に、アンカーが塞栓を起こさないようにする。ePTFEの使用はまた、組織の内部成長のさらなる利益を与える。
【0100】
アンカーはチューブから形成されてもよく、当該チューブは、チューブの一端から延びる櫛歯を備えるように切断され、この状態において、次いでこれらの櫛歯が湾曲され且つ熱処理を受けてフック及び先端部を形成してもよい。複数の開口部が、櫛歯が湾曲される前又は後に、櫛歯に切り込まれることができるが、典型的には、1つの切断段階のみが存在するようにするために、櫛歯が湾曲される前とされることができる。この構造に関連して開口部を使用することの追加の利点は、小径のチューブが中心の開口部と共により曲げやすくなることであり、その理由は、チューブの弧が2つのより小さな弧に分割されるためである。その結果、細いチューブのより広い部分が、櫛歯を作製するために安全に利用されることができ、このことは、追加の強度をさらに与える。保持力が増し且つ柔軟性が増す結果として、アンカーフックは、より少ない疲労荷重を受け、このことは次に、埋め込みをより長く持続させる。
【0101】
開口部は、一連の穴として形成されてもよく、又は、櫛歯の長さに沿って延びてそれによってフックの湾曲に沿って延びるスリットとして形成されてもよい。スリットを使用することの利点は、各フックが2つの「脚」からなることであり、2つの「脚」は、「脚」の一方での折損が塞栓を起こすことになることを意味せず且つアンカーが依然として他方の脚によって所定位置に保持されることになることを意味する。同時に、新たな「V」字形状の脚が、スリットも他の開口部も有しない「破損した」直線状のフックよりも、組織内に効果的に成長する可能性が高く、塞栓症の危険性をさらに低減する。
【0102】
開口部は、複数のより小さなスリットを一列に含んでもよく、又は異なるタイプのパターンを有していてもよい(ジグザグ、バーブ又は波形パターンが例である)。フックの長さに沿って、異なるパターンを有する複数の小さな穴が、スリットの代わりに又はスリットに加えて、作製されてもよい。これは、組織が穴を通って成長する場合に追加の保持力をもたらすことができる。また、縫合糸が、上述したように折損の発生時に安全性を高めるために、複数のフックに通されることも可能になる。また、スリットは、フックがアンカーの基部内に接合するフックの端部を越えて延びてもよく、それによって基部をより可撓にもするが、アンカーは、上述したようなチューブの形状をした部品であってもよい。いくつかの例では、スリットは単一のレーザの軌跡として切断されてもよい。円形開口部が、このような切断部の端部に付加されることができ、それにより、高歪みのポイントの発生を防ぐことができる。
【0103】
一例では、アンカーは、ニチノール又はステンレス鋼のような弾性金属で作製されるチューブから切断される。レーザ切断が使用されてもよい。レーザ切断は、上述したように櫛歯を切断することを含むことができ、櫛歯は、湾曲するように熱処理を受けることができる。アンカーは、熱処理及び/又は電解研磨されてもよい。面取りされたエッジが、アンカーが電解研磨を受ける前に、特定の部分においてアンカーに導入されてもよい。開口部は、開口部のエッジに沿って、例えばスリットのエッジに沿って、バーブ付き又は波形のプロファイルを含んでもよい。スリットが使用される場合、スロット付きフックは、フックが展開されたときに増加した距離を有する形態で熱処理を受けることができる。次いで、バーブ付きプロファイルは、ピンが真っ直ぐである(バーブが互いに向かい合っている)ときに、隠されることができる。この例では、アンカーが非拘束形態になると、スリットが離れるように移動し、バーブ付きプロファイルが係合される。
【0104】
種々の態様において、本発明は、上記のカテーテルデバイス及びアンカーの使用、特に、人工索線を心臓に埋め込むための処置中のこれらのデバイスの使用に及ぶ。さらに、本発明は、チューブからのレーザ切断のような上述の様々な方法のステップを含む、上述のカテーテルデバイス及びアンカーの製造に及ぶ。アンカーのいずれについても、又は、本明細書で説明される他のレーザ切断部分について、面取りされたエッジは、レーザ切断部分(例えばアンカー)が電解研磨を受ける前に、導入されてもよい。第3の態様の特徴及び上記で説明される他の任意に選択される特徴は、上記及び以下で説明される他の態様と組み合わされてもよく、これにより、これら他の態様のアンカーは、第3の態様に従って形成されるフックを有する。
【0105】
第4の態様から見ると、本発明は、線を身体組織に取り付けるためにアンカーを身体組織に埋め込むためのカテーテルデバイスを提供する。カテーテルデバイスは、
カテーテルデバイスの長さに沿ってカテーテルデバイスの遠位端からカテーテルデバイスの近位端に向かって延びるハウジングセクションであって、カテーテルデバイスの遠位端にある遠位部分と、遠位部分の近位側に位置する近位部分とを含む、ハウジングセクションと、
ハウジングセクションの遠位部分にあり且つ身体組織にアンカーを取り付けるためにアンカーを展開するためのアンカー展開機構であって、遠位部分に対して遠位方向の外方に向かってアンカーを移動させることによって、アンカーの収容ポジションからアンカーを展開するように構成される、アンカー展開機構と、
展開の前では遠位部分においてアンカー展開機構によってその収容ポジションで保持されるアンカーであって、アンカーは、線を保持するために身体組織に埋め込まれるためのものであり、アンカーは、身体組織と係合するための複数のフックであって、畳まれたポジション及び畳まれていないポジションを有する複数のフックを含み、アンカーは弾性材料で作製され、それにより、フックは、拘束力の付与によって畳まれたポジションに弾性的に変形されることができ、拘束力の付与がなくなると畳まれていないポジションに戻り、フックは、アンカーが遠位部分内で収容ポジションにある間、畳まれたポジションで保持される、アンカーとを備え、
ハウジングの遠位部分は、アンカー及び/又はアンカー展開機構の対応する非円形形態部と係合するための非円形形状部を有し、それにより、アンカーが遠位部分に保持される場合に、アンカーの移動は、非円形形状部と非円形形態部との間の係合に起因して、遠位部分の長手方向軸の周りのアンカーの回動に関して拘束される。
【0106】
この構成において、遠位部分の非円形形状部とアンカー又はアンカー展開機構の非円形形態部との相互作用は、アンカーが遠位部分内にある間、アンカーが要求される向きを有することを確実にする。アンカーの回動は、拘束され、有利なことには、アンカー及びカテーテルデバイスが通常の使用中にさらされ得る大きさの力に関して少なくとも防がれ得る。典型的には、拘束は、設計公差を伴って、非円形形態部を非円形形状部内でかみ合わせることによってもたらされ、当該設計公差は、好適な製造技術、材料及び設計原理に従ったものである。これらの非円形要素は、円形でない任意の形状をとってもよい。いくつかの選択肢が以下に説明される。形状/形態における非円形の性質は、円形の形態をモディファイすることによって達成されてもよく、例えば、円形の形態をキー付きジョイントであるように適合させることによって達成されてもよい。この場合、キー又はキー溝が、形状の非円形部分に寄与する。カテーテルデバイスは、線と共にアンカーを心臓に埋め込むためのものであってもよく、アンカーは、線と共に乳頭筋へ埋め込むための乳頭アンカーであってもよく、線は、例えば、腱索が破損した場合に心臓を修復するために使用されるような線であり、例えば、人工索線である。これ故、回動の拘束は、心臓内でのカテーテルデバイスのこのような使用中にアンカーに望ましくない回動をさせようとする力、又は送達されたアンカーを回収するときに生じる力に抵抗するように設計されてもよく、それにより、引っ込められる前にアンカーの正しい向きを見つけることができる。心臓へのアンカーの埋め込みのためのカテーテルデバイスのさらなる特徴は、以下に説明され、第4の態様のカテーテルデバイスが、以下に記載されるようなさらなる特徴と組み合わされてもよいことが理解されるであろう。
【0107】
非円形形状部は、アンカーが収容ポジションにある場合にアンカー及びアンカー展開機構を収容するための凹部の周りで遠位部分の内側内に形成される形状部であてもよい。非円形形状部は、その遠位端にファネル状形状部を含んでもよい。ファネル状形状部は、アンカーとアンカー展開機構とのガイド付き係合を可能にすることができる。例えば、非円形形状部は、遠位部分の遠位端に近づくにつれて徐々に広がってもよい。遠位部分の外形は、異なる形状であってもよく、例えば、非円形形状部は、円形チューブ等のカテーテルデバイスの残りの外側部分と同様の形状を有するチューブ状形状であってもよい。有利なことには、内側の非円形形状部と比較して異なる外形を使用することにより、遠位部分の壁の厚さが変化してもよい。代替として又は追加で、遠位部分の内部の非円形形状部は、遠位部分の壁の厚さの変化を生むために、偏心して、即ちオフセットして配置されてもよい。壁のより厚いセクションは、索チャネルのようなカテーテルデバイスの他の特徴部をより良好に収容することができてもよい。このように変化する厚さを利用することによって、カテーテルデバイスの全体的な幅/直径を増加させることなく、このような特徴を追加することができる。これ故、いくつかの例では、遠位部分の壁のより厚いセクションは、索チャネルを含む。索チャネルは、遠位部分の長さに沿ったスリットであってもよく、当該スリットは、遠位部分の弾性を増大させる機能も有益に有することもでき、当該機能は、遠位部分がアンカー及びアンカー展開機構を受け入れるときに遠位部分が柔軟であることを可能にする。
【0108】
アンカーは、後述するように、弾性的に変形可能な係止セグメントを有する係止機構を含んでもよい。或いは、係止機構は、締まり嵌め部等によって、線の移動を捕捉又は拘束するために、回動的又は直線的な意味で移動する部品を介する等で、別の形態をとってもよい。係止機構は、アンカーの展開後に線を所定位置に係止するためのものであってもよい。アンカー展開機構は、アンカーが遠位部分内に収容される場合に係止セグメントを変形されたポジションに保持するように構成されてもよく、有利なことには、係止セグメントは、変形されたポジションにある場合に非円形形態をとり、この状態において、この非円形形態部は、カテーテルデバイスの遠位部分の非円形形状部の一部と係合してもよい。これ故、カテーテルデバイスの遠位部分の非円形形状部のこの部分は、変形された係止セグメントを有するアンカーと係合するように構成されてもよく、この場合、アンカーが遠位部分内にある間、それぞれの非円形要素は、互いに係合し、それによって、遠位部分内でのアンカーの回動を拘束する。一例では、係止セグメントは、変形されていないときにはチューブ状であり、アンカーのチューブ状壁と整合してもよく、この状態において、係止セグメントの変形が、アンカーのチューブ状壁との整合から外れるように係止セグメントを移動し、これ故、遠位部分の非円形形状部の関連部分と係合するために非円形形態部を形成する。アンカーは、円形のチューブ状壁を有してもよく、この状態において、変形された係止セグメントは、卵状の形状を有する非円形形態部を有し、非円形形態部では、係止セグメントの一部がアンカーのチューブ状壁を越えて外側に突出してもよい。その場合、カテーテルセグメントの遠位部分は、変形された係止セグメントを有するアンカーの断面と相補的に嵌まるために、対応する卵状断面、又は他の何らかの非円形断面を有してもよい。これ故、遠位部分は、この非円形断面を有する第1チューブ状凹部を含んでもよく、この場合、第1チューブ状凹部は、係止セグメントの近位側に位置するアンカー壁の部分を収容するために、第2チューブ状凹部と隣接して形成される。これ故、第2チューブ状凹部は、係止セグメントの近位側のアンカー壁の周囲に同軸上で嵌まるように構成される円形チューブ状の形態を有してもよい。アンカーの係止機構のさらなる任意選択的な特徴は、以下に記載される。
【0109】
アンカー及び/又は遠位部分の遠位端は、ガイド付きの係合を可能にするために、アンカーが遠位部分と係合する間、弾性的に変形するように構成されてもよい。これ故、アンカーの係合は、アンカー及び/又は遠位端の弾性的な曲がりによっていくらかの不整合に対処する能力を用いて、行われてもよい。アンカーは、弾性材料から形成されるため、本質的に可撓性を有してもよい。遠位端は、先端部から遠位端の長さに沿って近位方向に延びるスリットを使用すること等によって、ある程度の曲がりを可能にするように適合されてもよい。
【0110】
アンカー展開機構は、展開中のアンカーを保持し且つアンカーに取り付けられた線の調節を容易にする調節ハウジングを備えてもよい。また、調節ハウジングは、所望位置でのアンカーの展開が成功すると、線が好適な長さに調節された状態で線を切断するためのカッターを含んでもよい。いくつかの例では、調節ハウジングの外側部分は、非円形形態部を有する。カテーテルデバイスの遠位部分の非円形形状部の一部は、調節ハウジングの外側部分と、それぞれの非円形要素が互いに係合する状態で係合し、それによって調節ハウジングの回動を拘束するように構成されてもよく、これ故、アンカーが遠位部分内にある間にアンカーが調節ハウジングに取り付けられることによって、アンカーが回動しないように保つことを補助するように構成されてもよい。調節ハウジングの外側部分は、その近位端において、即ち、アンカーと結合する調節ハウジングの遠位端と反対側において、非円形形態部を有してもよく、この状態において、カテーテルデバイスの遠位部分は、この非円形形態部を受け入れるための形状を有する。この場合、調節ハウジングの近位端は、遠位部分のための非円形形態部における対応する部分と近位端との円滑なガイド付き係合を可能にするために、湾曲した、面取りされた、又は斜めにされたエッジを介する等でテーパ形状を有利なかたちで有してもよい。
【0111】
カッター(及びカッターを動作するためのワイヤ)と調節ハウジングとを収容することができるシャフトは、2つの内部空間、つまり、1つの索(即ち、線)内部空間及び1つのカッターワイヤ内部空間を有して構築されることができる。この構成は、索内部空間の周りの編組を用いて補強を受けてもよい。編組は、シャフトの引張強度及び圧縮強度を増加させるレーザカットハイポチューブを備えてもよい。レーザカットハイポチューブは、カッターのヘッド上に直接溶接されてもよい。これは、カッターとレーザカットハイポチューブとの間の強力な結合を確実にし、このことは、乳頭アンカーの調節及び/又は再展開が必要とされる場合に、乳頭アンカーのより信頼性のある回収を可能にする。編組複合チューブは、ワイヤ内部空間を形成するために、レーザカットハイポチューブの外側に配置されてもよい。ケブラーワイヤ又は同様の材料のワイヤが、シャフトの引張強さを増加するためにシャフトの長さに沿って配置されてもよい。シャフト内に配置される構成要素及びチューブは、シャフトの十分な可撓を可能にするために、(例えば、PebaXリフローによって)PebaXを含むがこれに限定されない軟質ポリマー内に埋め込まれてもよい。複合チューブはまた、カッターワイヤの作動中にチューブが軟質ポリマーから引きはがされるのを防ぐために、遠位端において固定されてもよい。複合チューブは、例えば、フラットリボンコイル、ステンレス鋼のハイポチューブのリング又はカラーを用いて遠位端において固定されてもよい。
【0112】
アンカー及び調節ハウジングは、相対的な回動が防がれた状態で、必要な向きで互いに係合するように構成されてもよい。この文脈において、上記のように、回動は、カテーテルデバイスの軸に沿ったねじれ方向に拘束され、即ち、目的は、カテーテルデバイスの長手方向軸の周りの回動に対してアンカーを正確に方向付けることである。しかしながら、アンカーと調節ハウジングとの係合中のいくらかの相対回動は、妨害の危険性なく正確な位置合わせを確実にするために、可能にされることが有利である。これ故、アンカー及び調節ハウジングはそれぞれ、キー付きジョイントを含み且つ互いに同軸上で係合する円形部品を有してもよく、それにより、同軸上での配置中に正しい位置合わせを確実にしてもよい。これ故、アンカー及び調節ハウジングの一方は、キー特徴部を含んでもよく、他方は、キー特徴部を受け入れるためのキー溝を含んでもよい。キー溝の始点におけるファネル状/テーパ状の形状が、キー特徴部がキー溝と係合する前におけるある程度の位置ずれ及びガイド付き回動を許容するために使用されてもよい。
【0113】
遠位部分は、上述したような変形された係止セグメント等のアンカーの非円形形態部と、上述した外側部分等の調節ハウジングの非円形形態部との両方と係合するように構成される非円形形状部を有してもよい。これ故、遠位部分の非円形形状部は、アンカーと係合するための第1部分と、調節ハウジングと係合するための第2部分とを有する複雑な形状であってもよい。これは、2つの係合の両方が遠位部分内のアンカーの回動の拘束に寄与するため、各要素を個別に使用することと比較して、さらなる利点を有することができる。組み合わされた2つの係合はまた、関与する部分の異なる特性を通じて、さらなる利点を有することもできる。当該特性は、調節ハウジングとの比較で異なる程度のアンカーの剛性でありアンカーがより容易に弾性的に変形される剛性、及び/又は、非円形形状部と非円形形態部とのはめ合い中のより大きな程度の可撓性であり、例えば、遠位部分の非円形形態部が調節ハウジングの周りに嵌まる場合と比較して、遠位部分の非円形形態部がアンカーの周りに嵌まる場合の寸法のより大きな差を介する可撓性、及び/又は、上述のようなスリットの使用による等での遠位部分の遠位端のより大きな可撓性である。
【0114】
いくつかの例では、アンカーは、以下でさらに説明されるアンカーのように、比較的可撓性を有する形態を伴って弾性材料から形成される。アンカーは、調節ハウジングよりも容易に弾性的に変形され、調節ハウジングは、より可撓性の低い形態を伴った中実部分を含んでもよく、及び/又は、より弾性の低い材料から形成されてもよい。例えば、アンカーは、ニチノール等の可撓性金属で形成される比較的薄い壁を有してもよい。調節ハウジングは、中実形状であってよく、、及び/又は、ステンレス鋼、ポリマー材料又は複合材料(例えば、CRF PEEK)等のより剛性のある材料で形成されるより厚い壁を有してもよい。これ故、アンカーと遠位部分との再係合中に、アンカーの非円形形態部と遠位部分の非円形形状部の関連部分との係合は、比較的高い程度の回動の不整合に対処するために、アンカー及び/又は遠位部分の遠位端の弾性的な変形によって行われてもよく、一方、調節ハウジングと遠位部分との再係合は、調節ハウジングの非円形形態部と遠位部分の非円形形状部の関連部分との係合である。
【0115】
例えば、初期展開がアンカーと身体組織との間の十分に確実な接続を与えない場合、使用中に、畳まれていない形態から畳まれ且つ収容された形態に戻すようにアンカーを移動することが必要とされ得る。カテーテルデバイスは、アンカー及びアンカー展開機構と遠位部分との再係合を容易にするように構成されてもよく、これには、第1に、アンカーの遠位部分との再係合が、アンカーの非円形形態部及び/又はハウジングの遠位部分の弾性を介して比較的大きな回動の不整合を修正することを可能にすることによって再係合を容易にし、第2に、調節ハウジングの外側部分と遠位部分との再係合を有することで、調節ハウジングのより剛性の高い形態に起因して、遠位部分内でのアンカーの回動に対してより大きな拘束を適用するように再係合を容易にしてもよい。カテーテルデバイスの遠位部分の非円形形状部の第1部分は、アンカーの完全に収容された位置からデバイスの遠位端に向かって遠位方向に第1距離だけ延在してもよい。カテーテルデバイスの遠位部分の非円形形状部の第2部分は、調節ハウジングの完全に収容された位置からデバイスの遠位端に向かって遠位方向に第2距離だけ延在してもよい。上記の2段階の再係合プロセスを容易にするために、第1距離は第2距離よりも大きくてもよい。この状態において、第1部分はこれ故、第3の距離だけ第2距離よりも大きくなることができる。一例ので構成は、第1距離は、4~8mmの範囲であってもよく、第2距離は、2~5mmの範囲であってもよい。
【0116】
これ故、アンカーは、第3距離にわたって、遠位部分と弾性的に係合し、次いで、これにより、調節ハウジングが、第2距離にわたって遠位部分の第2部分と係合する前に、アンカーの回動方向の整合に対して何らかの修正が与えられることができる。調節ハウジングは、第2距離にわたって遠位部分の第2部分と係合するが、アンカーは、第1距離に沿ってさらに進むが、遠位部分の非円形形状部の第1部分と係合したままである。
【0117】
調節ハウジングは、アンカーの収容中及び展開中にアンカーに接続するアンカーホルダを形成してもよく、アンカーホルダは、アンカーの展開が成功した後にアンカーを解放してもよい。アンカーホルダの外側部分は、非円形形態部を有してもよく、当該非円形形態部は、遠位部分と係合するための調節ハウジングの上述の非円形形態部を提供してもよい。アンカーホルダは2つの部分に設けられ、この2つの部分は、これらの2つの部分の間の相対的な回動がそれぞれの非円形形状部によって防がれる状態で、組み合ってもよい。非円形形状部は、正しい位置合わせのための平らな表面を含んでいてもよい。アンカーホルダの2つの部分は、アンカーと係合するためのピストンと、ピストンを保持するためのピストンハウジングとを備えてもよく、この状態において、ピストンは、ピストンハウジングに対するスライド移動のために作動させることができる。
【0118】
ピストンは、アンカーの変形可能な要素と係合するためのピストン楔状部を含んでもよく、この変形可能な要素は、有利なことには、上述のような係止セグメントである。ピストン楔状部は、ピストンの遠位端における楔形状セクションであってもよい。楔形状セクションは、有利なことには、係止セグメントを係合させ、その形状により係止セグメントを均等に係合解除するのを補助する。ピストン楔状部は、係止セグメントとアンカーの壁との間に押し込まれて、係止セグメントを弾性的に変形させるように構成されてもよく、有利なことには、係止セグメントの非円形形態部を形成し且つ係止セグメントを開いて線の調節を可能にする。その場合、アンカーが収容ポジションにあるとき、ピストン楔状部は、係止セグメントと係合される。ピストン楔状部は2脚フォークであってもよく、2脚フォークは、線がフォークの2つの脚(櫛歯)の間を通ることを可能にする開口部を有してもよい。
【0119】
ピストン楔状部は、乳頭アンカーの任意の他の壁と接触することなく、係止セグメントと係合されてもよい。これ故、アンカーホルダ及びアンカーは、ピストン楔状部が係合されると、その後、ピストン楔状部がアンカーの壁から離間するように構成されてもよい。ピストン楔状部が単独でアンカーの係止セグメントと接触するがアンカーの他のいかなる壁とも接触しないことを有利に必要とすることによって、ピストン楔状部は、アンカーからよりすくない摩擦を受ける。このように、カテーテルデバイスからのアンカーの展開中、アンカーは、ピストン楔状部がアンカーと共に移動することなく展開してもよく、これにより、係止セグメントの係止を確実にすることができる。アンカーホルダ内のピストンの配置は、片持ち梁として作用し、片持ち梁は、係止セグメントの弾性力によってピストン楔状部がアンカーの壁に向かって引っ張られることを防ぐ。これ故、ピストン及びピストン楔状部は、好適な剛性を有する材料で作製されてもよく、それにより、ピストン楔状部は、ピストンのカンチレバー作用による反力及び反対方向に作用する係止セグメントによってピストン楔状部に加えられる力によって、形状を崩してまで曲げられない。
【0120】
ピストンは、調節ハウジングのカッターを含んでもよく、このカッターは、ピストンがアンカーから引き抜かれるときに、線を切断するように構成される。ピストン上のカッターは、剪断作用を介して等で線を切断するためにピストンハウジングの表面と相互作用するように構成される切断面であってもよい。これ故、ピストン楔状部が使用される場合、ピストンの引き抜きは、線をアンカーの所定の位置に係止することを可能にしてもよく、このとき、係止セグメントは、その非変形のポジションに戻り且つ線をアンカー壁にクランプし、一方、線がカッターによって同時に切断される。このようにして、アンカーが正しく配置され線の長さが必要とされると、ピストンが調節及び切断処置を補助する。
【0121】
内部カムが、アンカー係止セグメントを開ポジションに保持するのを補助するために、設けられてもよい。内部カムは、係止セグメントの変形されていない状態にある係止セグメントの内側にカムが収まる非拡張形態と、変形された状態、即ち、上述した非円形の形態の係止セグメントの内側にカムが収まる拡張形態とを有してもよい。カムは、非拡張形態よりも拡張形態の方が広い開口部をカムの中心に有してもよい。ピストンは、カムの開口部をより広い状態に付勢し且つこれ故カムを拡張するためのカム楔状部を備えてもよい。カム楔状部は、上述のピストン楔状部に加えて設けられてもよく、それにより、単一のピストンは、その遠位端にフォーク状の形態を有し、フォークの少なくとも1つの櫛歯がカム楔状部を提供し、フォークの少なくとも1つの櫛歯がピストン楔状部を提供する。カムは、係止セグメントの開放を補助するように構成されてもよく、存在する場合には、アンカーを調節カテーテルに固定するように作用してもよい。カムは、調節ハウジング上のカムホルダによって所定位置に保持されてもよい。
【0122】
カテーテルデバイスは、例えば、アンカーを展開するために遠位部分から遠位方向に外向きに調節ハウジング及びアンカーを押すために、遠位部分に対する調節ハウジングの移動を制御するための機構を含んでもよい。この機構は、カテーテルデバイスのハウジング内に位置する調節カテーテルを含んでもよい。調節カテーテルは、調節ハウジングを前進又は後退させるために、カテーテルデバイスの長さに沿って前方又は後方に移動させることができる。ワイヤ及び/又はロッドが、手動又はコンピュータ制御される動きを伴って、調節ハウジングの動きを制御するために使用されてもよく、手動又はコンピュータ制御される動きは、身体外に配置されるように構成される制御システムを介して行われる。
【0123】
カテーテルデバイスは、ピストンハウジングに対するピストンの移動を制御するための機構を含んでもよい。これは、好適なタイプのワイヤ及び/又はロッドを含んでもよい。この機構は、アンカーをピストンハウジングから離れるように移動させるために、ピストンをピストンハウジングから外方へスライドさせるように構成されてもよい。当該機構は、ピストンをアンカーから係合解除させるか又はアンカーをピストンと共にピストンハウジングに向かって引き戻すように、ピストンをピストンハウジングに引き戻すようにさらに構成されてもよい。線が好適に配置され且つ調節された後に、アンカーの展開を完了させるために、ピストンは、アンカーから引き戻され、それ故、存在する場合には、楔状体を係止セグメントから取り外す等して、係合解除させるべきである、ということが理解されるであろう。しかしながら、アンカーが正しく配置されていないと判定された場合、ユーザは、アンカーをピストンハウジングに向かって引き戻すことを決定してしてもよく、それにより、アンカーを調節ハウジングと共に遠位部分内に引き戻すことで、アンカーを身体組織から引き出し且つフックを畳まれ且つ収容されるポジションに畳んでもよい。
【0124】
カッターがその所望の運動範囲を超えるのを防ぐために、カッターは、カッターの上端及び下端に配置される2つの停止特徴部を搭載してもよい。カッターがハウジング内のその上方ポジションよりも遠くに移動するのを防ぐために、カッターワイヤがハウジング及び/又はカッターに通され、それにより、カッターを上方ポジションに停止させてもよい。カッターワイヤが破断したとしても、カッターと、カッターに取り付けられ且つ動作されるワイヤとは両方とも、ハウジング内に含まれているので、当該カッター及び当該ワイヤは、ハウジングの上端から逸出することができない。カッターがハウジング内のその下方ポジションよりもさらに移動するのを防止ぐために、カム又は内部カムが下方ポジション停止特徴部として機能してもよい。
【0125】
調節ハウジングは、カテーテルデバイスに対する調節ハウジングの移動を防止するために、カテーテルデバイスのハウジングセクションと係合するためのラッチ係合部を含んでもよく、これは、アンカーが解放され得ない確実な状態を提供するためものであってもよい。このような確実な状態は、カテーテルデバイスが、以下の実施例のように、心臓に到達するように血管を通じて操向される等、展開ポジションに操向されている間に有益となることができる。ラッチ係合部は、カテーテルデバイスの長手方向軸に沿って延びる軸の周りに枢軸回転されてもよく、それにより、ラッチ係合部が、ハウジングセクションと係合及び係合解除するように、例えば、ハウジングセクションに形成された凹部又はスロットへの係合を用いて係合及び係合解除するように、スウィングすることが可能になってもよい。ワイヤ又はロッドが、ワイヤが除去されるまで固定状態を維持するためにラッチ係合部の移動をブロックするワイヤのように、ラッチ係合部の作動のために、含まれてもよい。ラッチ係合部は、係合解除ポジションに向かってバネ負荷及び付勢を受けてもよく、それにより、ワイヤが除去され且つラッチ係合部が解放されると、ラッチ係合部は、バネ力の影響下で係合解除ポジションに移動してもよい。
【0126】
いくつかの例では、アンカーは、係止機構を設けられ、係止機構は、係止機構に力が加えられていないときに索をクランプし、また、その埋め込み中に索の長さを調節するために、索を解放するために弾性的に変形されることができる。上述のように、係止機構は、弾性的に変形可能な係止セグメントを含んでもよい。係止セグメントは、アンカーの壁に形成され、1つ以上のスリットによって壁から分割されてもよい。アンカーは、力が加えられないときにはスリットが、線をクランプするために、間隙なしで又は比較的狭い間隙を伴って閉じられるように構成されてもよく、一方、好適な力が係止セグメント及び/又は壁に加えられるときには、係止セグメント及び/又は壁は、線が解放されるように、スリット(複数可)によって提供される開口部を広げるように弾性的に変形するように構成されてもよい。アンカーは、チューブ状本体セクションを有してもよく、その場合、係止セグメントは、チューブの壁に形成されてもよい。係止セグメントは、2つの側面に平行なスリットを有するバンドであってもよく、それにより、バンドは、スリットを開放するために、力を加えることによって、壁との平面から引き出されることができる。有利なことには、この係止セグメントの移動は、アンカーのための非円形形態部を作り出してもよい。このような係止セグメントは、上述したピストンのようなスリット(複数可)内にホルダをスライドさせることによって開いた状態に保持することができる。
【0127】
ハウジングセクションは、任意の好適な材料、即ち医学的に好適な材料の1つ以上のチューブ状セクションから形成されてもよい。ステンレス鋼又はニチノールが使用されてもよい。ポリマー材料も選択肢である。代替として、炭素繊維強化又はガラス繊維強化PEEK等の複合材料が使用されてもよい。カテーテルデバイスは、そのような材料と、デバイスの異なる部分の要求される特性に応じて選択される当該部分のための材料との組み合わせを介して、形成されてもよい。超音波が通過することを可能にし且つ同時に十分な強度を有する材料が好ましく、炭素繊維強化PEEKは、これらの要求を十分に満たし、製造コストを下げる構成要素の射出成形も可能にする。繊維強化プラスチックは、通常、X線上では見えないので、全ての構成要素において戦略的に配置される放射線不透過性マーカが使用され、それにより、超音波画像に対する相補的な情報として、X線上のデバイス構成要素(複数可)の互いに対する位置及び向きを決定してもよい。
【0128】
上述したように、カテーテルデバイスは、線と共にアンカーを心臓に埋め込むためのものであってもよく、アンカーは、線と共に乳頭筋へ埋め込むための乳頭アンカーであってもよく、線は、例えば、人工索線である。カテーテルデバイスはまた、弁尖アンカーと乳頭アンカーとの間に延在する人工索線を埋め込むための処置の一部として、乳頭アンカーと共に弁尖アンカーを心臓内に埋め込むために構成されてもよい。これ故、カテーテルデバイスは、弁尖アンカー及び弁尖アンカー展開機構をさらに含んでもよい。
【0129】
これ故、ハウジングセクションは、2部分式ハウジングセクションであってもよく、2部分式ハウジングセクションは、カテーテルデバイスの使用中に、心臓の乳頭筋と弁尖との間に配置されるように構成され、2部分式ハウジングセクションは、カテーテルデバイスの遠位端にある遠位部分と、遠位部分の近位側に位置する近位部分とを備え、遠位部分は、乳頭アンカー展開機構、即ち、上述のようなアンカー及び調節ハウジングを保持し、近位部分は、弁尖アンカー展開機構を保持する。
【0130】
弁尖アンカー及び/又は弁尖アンカー展開機構は、特許文献3のものと同様であってもよい。代替として又は追加で、弁尖アンカー及び弁尖アンカー展開機構は、以下に説明されるような特徴を有してもよい。
【0131】
第4の態様のカテーテルデバイスを使用する例は、以下のことを含むことができる。つまり、(1)デバイスが、最初に、最終的な配置の近くに配置されることと、(2)遠位部分が、アンカーを受け入れるべき身体組織に向かって移動されることと、(3)遠位部分の遠位端が、身体組織に出会い、力が加えられると、身体組織からの反力が最終的に、アンカーを所定位置に保持する力を超え、この時点で、組織がデバイスの基部の下方で平坦になるように押されてアンカーの全てのフックを組織内に正確に配置する最大の機会を与え、フックの端部が次いで遠位部分の遠位端を超えて移動することで身体組織に出会うように、力がアンカーに加えられることができ、このことが、ロッド又はワイヤからアンカー若しくはアンカー展開機構への追加の力を介して行われることができ、又は、有利なことには、このことが、アンカー上のプレテンションを通じて行われることができ、当該プレテンションは、遠位部分上の身体組織からの力が力と摩擦とのバランスを十分に変化させることでアンカーが(紙のステープラと同様に)放出されるまで、遠位部分との摩擦によって保持されることと、(4)アンカーフックが、外に折れ曲がった状態になり、非拘束のアンカーのフック形状に形を成し、それによって身体組織と係合し、この時点で、接続は、操作者によって引張試験される、並びに/又は、X線及び/若しくは超音波で視覚的に確認されることができることと、(5)接続が満足されるものでない場合、アンカーが、デバイス内に引き戻され、アンカーと身体組織との改善された結合を試みるために再配置されることができることと、である。
【0132】
第5の態様から見ると、本発明は、アンカーを身体組織内に埋め込むための第4の態様のカテーテルデバイスを使用する方法を提供し、この方法は、アンカー展開機構を使用してアンカーを身体組織内に展開することを含む。この方法は、アンカー展開機構及びカテーテルデバイスからアンカーを係合解除する前に、アンカーの接続を試験することを有利なかたちで含んでもよい。アンカーの不満足な展開の場合、この方法は、アンカーを身体組織から引き抜くことと、アンカーをアンカー展開機構と共に遠位部分に戻すこととを含んでもよく、この状態において、遠位部分の非円形形状部は、アンカーが遠位部分内でその収容形態に戻されると、アンカーが正しい向きになるように、アンカー及び/又はアンカー展開機構の対応する非円形形態部と係合するようになる。この方法は、本開示の他のデバイス及び方法の態様に関連して以下で説明する他の特徴の任意のものを有するデバイスの使用を含んでもよい。
【0133】
第6の態様から見ると、本発明は、人工索線を心臓に埋め込むための処置中に弁尖アンカーを埋め込むためのカテーテルデバイスを提供する。このカテーテルデバイスは、心臓の弁尖に取り付けるための弁尖アンカーと、弁尖アンカーを展開するための弁尖アンカー展開機構と、を備え、弁尖アンカー展開機構は、弁尖アンカーの弁尖内への展開後の弁尖アンカーを引っ込めること及び再配置することを、第1形態及び第2形態を備え且つグラスピングデバイスを有するエジェクタユニットを介して可能にし、第1形態は、エジェクタユニットから弁尖アンカーを係合解除させることなく、弁尖アンカーの弁尖内への展開を可能にするように構成される形態であり、第2形態は、弁尖アンカーがエジェクタユニットから可逆的に解放される形態であり、第1形態では、エジェクタユニットのグラスピングデバイスは、弁尖アンカーの近位端を掴み、弁尖アンカーの遠位端は、弁尖に弁尖アンカーが埋め込まれることを可能にするようにグラスピングデバイスによって妨げられず、第2形態では、エジェクタユニットのグラスピングデバイスは、弁尖アンカーから係合解除される。
【0134】
弁尖アンカーは、後退チューブ/カテーテルと共に後退されてもよく、これは、弁尖アンカーが後退チューブの内側に畳まれるように索を引っ張ることによってなされてもよい。後退チューブは、弁尖(デバイスが除去された状態)又は、プアーな位置(部分的に係合されている、自由に浮遊している、絡み合っている等)に配置された弁尖アンカーにのみ取り付けられた索の頂部に配置されてもよい。後退チューブは、先端部に可撓セクション(先端部が弁尖アンカー基部を見つけることを可能にし、後退を可能にする)を有しても有していなくても偏向可能なシャフトであってもよい。
或いは、後退シャフトは、弁尖アンカーの基部と係合するように構成される可撓チューブであってもよい。いずれの構成においても、埋め込み組織及び元々ある組織に対する任意の望まない損傷を防ぐために、後退チューブが弁尖アンカーの基部にあることを、索に張力を加える前に確認するために、先端部にマーカーバンドが必要とされる。
【0135】
弁尖アンカーが自由に浮遊しているとき(いかなるものにも取り付けられていない)に、弁尖アンカーを後退させる別の代替法は、弁尖アンカーが、遠位端において又は乳頭アンカーハウジング壁の開口部を通して、乳頭アンカーハウジングの内側で畳まれることができるまで、索に張力をかけることである。
【0136】
特許文献3を検討して分かるように、この以前の提案では、弁尖アンカー展開機構の把持部が弁尖を保持すると、弁尖アンカーは押し出され、押し出された後、弁尖アンカーは、同じ機構で回収されることができない。特許文献3のデバイスを用いて弁尖アンカーを回収することは可能であるが、これを行うために記載されているのは、1つの比較的複雑な方法のみであり、当該方法は、別個の回収カテーテルを含む。第6の態様のカテーテルデバイスを用いれば、医師に追加の制御を与えるために、「エジェクタユニット」が導入され、当該ユニットは、弁尖アンカー展開機構が弁尖アンカーを展開し回収もすることを可能にする。
【0137】
第6の態様のデバイスの特徴は、第2の態様の特徴と組み合わされてもよく、それによって、それぞれの利点を達成することが理解されるであろう。さらに、弁尖を取り外すこと及び交換する能力は、乳頭アンカーが可撓性を有し且つ任意選択的に伸縮可能であるジョイントの使用を介して挿入されている間に、カテーテルデバイスを弁尖の所定位置保持する能力の利点と組み合わさるため、この組み合わせには相乗効果がある。これにより、外科医は、2つのアンカーの挿入と、弁尖アンカーにおけるその位置から離れたデバイスの任意の有意な動きが必要とされるよりも前の接続のチェックに関して、最大限に柔軟であることが可能になる。デバイスはまた、乳頭固定位置又はその周りの他の方法に適応するために、弁尖アンカー配置位置から移動されてもよい。
【0138】
デバイスを保持するテレスコ式シャフトには、4つの引張ワイヤが取り付けられてもよく、それにより、遠位の先端部は、アンカー(複数可)を配置するための正しい弁位置を位置決めするために移動することができる。
【0139】
弁尖アンカーは、畳まれていない形態のフック形状を有し、例えば、弁尖アンカー展開機構によって拘束される場合に畳まれた形態に弾性的に変形することができる可撓性材料から形成されてもよい。弁尖アンカーの材料はニチノールであってもよい。弁尖アンカーの形状は、弁尖アンカーが畳まれた形態にあるときに真っ直ぐになるフックを含んでもよい。畳まれていない形態のフック形状は、例えば、グラップルフック形状であってもよい。弁尖アンカーは、特許文献3の形態と同様の形態を有してもよく、及び/又は以下に記載されるような特徴を有してもよい。例示的な実施形態では、弁尖アンカー及び弁尖アンカー展開機構は、弁尖アンカー展開機構から弁尖アンカーが押し出されたときに、フックが畳まれていない形態に弾性的に戻る間に、弁尖を通してフックを駆動することができ、それによって弁尖アンカーを弁尖内に固定するように、構成されてもよい。
【0140】
例示的なデバイスでは、索は、弁尖アンカーが配置された後に、デバイス内の溝の内側に据わり、索の張力(短縮)を加えることが、索が据わっている溝から索を解放するために使用されてもよい。システムのたるみを取り除くことは、索がデバイスの周りに巻き付き合併症を生み出す機会を減らすことができる。たるみを減少させるデバイスの一例は、一定の力のバネのようなある種の定張力デバイスであってもよい。定張力デバイスは、デバイスの送達ハンドル内に配置されてもよい。
【0141】
エジェクタユニットは、弁尖アンカーの内側の弁尖アンカー展開機構内に配置されてもよい。この構成により、エジェクタユニット及び弁尖アンカーが弁尖アンカー展開機構内にある場合、エジェクタユニットは、第1形態において、グラスピングデバイスと共に弁尖アンカーを保持する。弁尖アンカー展開機構は、アンカーを展開して、アンカーを弁尖に埋め込むことができる。例示的な実施形態では、グラスピングデバイスは、この展開中に第1形態のままであるように構成されてもよく、この状態において、エジェクタユニットは、弁尖アンカーが埋め込まれた後にのみ第2形態に移動するように構成されてもよい。弁尖アンカーが埋め込まれた状態で、グラスピングデバイスは、グラスピングデバイスが第1形態にある間に、エジェクタユニットから弁尖アンカーに力が加えられることによって、弁尖へのアンカーの接続を試験するために使用されることができる。接続を試験する別の方法は、弁尖が弁尖アンカーに取り付けられ、それによってカテーテルデバイスに保持された状態で、即ち弁尖アンカーが解放される前に、血流と比較して弁尖の動きを評価することである。弁尖アンカーが十分に係合されている場合、弁尖の移動は、十分に係合されていない場合よりも制限される。その後、エジェクタユニットが第2形態に移動すると、エジェクタユニットのグラスピングデバイスが開き、このポイントで、医師はさらに、例えば、索線に加えられた張力を介して、弁尖へのアンカーの接続を試験することができる。医師が満足しない場合(例えば、アンカーの移動が多すぎる場合、及び/又は、線への力に対する抵抗が十分でない場合)、弁尖アンカーは、引き戻され、別の位置に配置されることができる。この試験中にグラスピングデバイスが第1形態から変化しない場合、その後の処置は、エジェクタユニット及び弁尖アンカーの展開を逆の状態にすることによって、例えば、エジェクタユニット及び弁尖アンカーの部品を弁尖アンカー展開機構に引き戻すことによって、実行されてもよい。第2形態が、アンカーの接続が適切でないと決定される前に用いられると、アンカーを後退させるために、エジェクタユニットはまず、グラスピングデバイスが弁尖アンカーと再係合するように、第1形態に戻すように移動され、その後、エジェクタユニット及び弁尖アンカーの展開は、例えば、エジェクタユニット及び弁尖アンカーの部品を弁尖アンカー展開機構内に引き戻すことによって、逆の状態にされる。
【0142】
第6の態様のデバイスの使用は、不完全に接続された弁尖アンカーが、処置を中止し、開始することを必要とするリスクを低減し、この低減されたリスクは、処置の効率及び患者の健康にとって明らかな利益を有する。さらに、引き込み可能な特徴は、医師が、より容易に、カテーテルデバイスに弁尖アンカーを装填及び再装填することを可能にし得る。単一の外科的処置において複数の索状線を配置する必要がある場合、再装填操作が必要となり得る。デバイスの組み立て中の方法のステップも改善される。
【0143】
いくつかの例では、弁尖アンカー及びエジェクタユニットの両方が、展開前に弁尖アンカー展開機構の弁尖アンカーチューブの内部に収容され、この状態において、エジェクタユニットは、アンカーよりも弁尖アンカー展開機構の内部にさらに収容される。弁尖アンカーチューブは、弁尖アンカーの形状と相補的な形状、即ち同様の断面形状を有してもよい。いくつかの例では、弁尖アンカー及びチューブの両方が円形断面を有し、弁尖アンカーが変形された形態にあり、チューブ内に配置される。上述のように、弁尖アンカーは、フック形状に広がってもよく、この場合、弁尖アンカーは、チューブ状本体セクションから延びるフックを含んでもよい。エジェクタユニットもまた、弁尖アンカーの形状に相補的な形状、即ち、同様の断面形状を有してもよく、これ故、これもまた、円形断面であってもよい。
【0144】
弁尖アンカーチューブは、弁尖に向けることができる開口部を有する。この開口部は、全体としてカテーテルデバイスの遠位端になくてもよい。実際、弁尖アンカーから乳頭筋における乳頭アンカーまで延在する人工索線の効果的な埋め込みに必要とされるように、弁尖アンカーが弁尖の底部から弁尖を通って容易に挿入され得るように、弁尖アンカーチューブの開口部は、有利なことには、カテーテルデバイスの近位端に向けられてもよい。弁尖アンカーチューブは、特許文献3に開示されるような把持部の構成内にあってもよく、及び/又は以下に記載されているような特徴を有してもよい。これ故、弁尖アンカー展開機構は、弁尖アンカーの展開中に弁尖を把持するための把持部を含んでもよい。カテーテルデバイスが、この態様の提案されるエジェクタユニットを、以下で説明されるように特許文献3とは異なる把持部と組み合わせる場合、即ち、弁尖アンカーが、カテーテルデバイスの本体に対してある角度で把持部と共に配備される場合、利点を提供することができる。
【0145】
弁尖アンカーチューブを用いた構成では、弁尖アンカーは、弁尖アンカーとエジェクタユニットの両方をチューブに沿って前進させることによって展開されるように構成されてもよく、この状態において、弁尖アンカーは、ピンが弁尖アンカーチューブの開口部を離れるにつれてフック形状のフックに形成されるその遠位端のピンを有する。これは、上述したように、弁尖が弁尖アンカー展開機構の把持部に把持されている間に行うことができる。上述のように、一旦弁尖アンカーが埋め込まれると、接続は、位置及び保持強度に関して試験され得る。必要であれば、弁尖アンカーを弁尖アンカーチューブ内に引き戻して、弁尖から解放することができる。アンカーの接続が許容できる場合は、弁尖アンカーを解放するために、エジェクタユニットはさらに進められてもよい。
【0146】
これ故、いくつかの例では、弁尖アンカーチューブに沿ったエジェクタユニットの移動によって、例えば、グラスピングデバイスがチューブ内の特定の位置に達したときにグラスピングデバイスを開くことを可能にすることによって、第1形態から第2形態への変更を作動させてもよい。一例では、エジェクタユニットは、第1形態として拘束形態を有し、第2形態として非拘束形態を有する。第1形態では、エジェクタユニットは、グラスピングデバイスを用いて弁尖アンカーを保持し、このグラスピングデバイスは、例えば、弁尖アンカーと端部で係合するように構成される2つ以上のグラップルフックを備えてもよい。1つの可能な構成において、グラップルフックは、弁尖アンカーに形成された穴と係合する端部を有し、当該端部は、好ましくは、弁尖アンカーチューブに沿った遠位方向に対して弁尖アンカーの近位端と係合する。グラスピングデバイスは、弁尖アンカーチューブに対する半径方向の移動きを介して、弁尖アンカーと係合及び係合解除してもよい。かくして、拘束された第1形態は、弁尖アンカーチューブの壁を含み、エジェクタユニットが弁尖アンカーと係合したままになるように強制するために、グラスピングデバイス(グラップルフックのような)の外方への半径方向の動きを阻止してもよい。拘束されていない第2形態では、グラスピングデバイスは、例えば、離れるように移動するグラップルフックを介して、弁尖アンカーを解放する。第1形態から第2形態への移行は、エジェクタユニットの移動によって、弁尖アンカーチューブの壁から拘束が除去されるポイントへと起こる可能性があり、その結果、グラスピングデバイスは、例えば、グラップルフックの半径方向外向き移動によって開く。これは、エジェクタユニットの一部が弁尖アンカーチューブから外へ、即ち、チューブの遠位端の開口部から外へ移動することによるものであり得るか、又は、弁尖アンカーチューブの壁の切欠きと整列するエジェクタユニットの一部の移動によって生じ得る。
【0147】
弁尖アンカー展開機構内の弁尖アンカー及びエジェクタユニットの移動は、例えば、上述の弁尖アンカーチューブに沿って、ワイヤ及び/又はロッドによって作動させることができる。エジェクタユニットの後退のために、エジェクタユニットを引っ張るためのワイヤが設けられてもよい。エジェクタユニットの後退は、弁尖アンカーの埋め込みが成功した後、又は弁尖アンカーを再埋め込みできるようにするための弁尖アンカーの後退の一部として必要とされ得る。弁尖アンカーチューブは、上述のように、カテーテルデバイスの近位端に向かって方向付けられ得るので、エジェクタユニットの後退は、デバイスの遠位端に向かう引張力を必要とし、次いで、後退のためのワイヤは、プーリ等の周りを通過し得る。弁尖アンカーの展開、即ち、弁尖アンカーチューブに沿って弁尖アンカーと共にエジェクタユニットを、チューブ先端の開口部に向かって移動するためにロッドを使用してもよい。カテーテルデバイスの近位端に向かう押圧力を可能にするために、ロッドはU字ロッドであってもよい。これは、特許文献3に記載されているように構成されてもよい。展開のためのロッドはまた、後退のための引張力を加えることができてもよく、これ故、ロッドは単独で使用されてもよい。代替として、ロッドは、上述したようなワイヤが後退に使用される状態で、展開に使用されてもよい。別の代替例では、エジェクタユニットは、両方向への移動を提供する2つのワイヤ及びプーリによって移動させることができる。U字ロッドは、熱処理又は曲げられたワイヤを形成して製造されてもよい。1つ以上の曲がり部を用いて、U字形状及び弁尖アンカーを押す形状を作製する。
【0148】
エジェクタユニットを案内するために、弁尖アンカーチューブの壁に溝を設けてもよい。溝は、エジェクタユニットが上下に移動されている間、エジェクタユニットがチューブに対して単一の向きを維持することを保証することができる。溝は、エジェクタユニットの移動の範囲に、代替として又は追加で、最大限度を設定することができ、これ故、弁尖アンカーチューブから、又は、弁尖アンカーチューブへ、どちらの方向にも、遠すぎないようにすることができる。エジェクタユニットには、溝と係合するためのガイドピンが設けられていてもよい。有利なことには、溝内に狭部を設けて、エジェクタユニットが特定の位置に達したときを操作者に知らせるインジケータとして作用することができる。ガイドピンのサイズ及び狭部の幅は、ピンと溝内の狭部との係合が、さらなる移動がなされ得る前に、増大した力を必要とし、これ故、手術医師に触覚フィードバックを提供するように設定され得る。
【0149】
一例では、狭部のような力フィードバック機構が、弁尖アンカーが展開ポジションに移動されているが、エジェクタユニットが依然として第1形態にあり、それにより、アンカーがまだ引き込み可能であることを知らせるために設けられる。この場合、一旦、エジェクタユニットがさらに押される(例えば、ガイドピンが狭部セクションを越えるように押される)と、エジェクタユニットは、第2形態に移動する可能性があり、それにより、弁尖アンカーがエジェクタユニットから解放されることになる。これ故、一例では、上述したグラップルフックのようなエジェクタユニットの被拘束部は、ガイドピンが上記例において狭部を通過する場合のように、力フィードバック機構の作動点を越える移動があると、その拘束から解放され得る。代替として又は追加で、例えば、力を変化させることによって又は視覚的インジケータによって、エジェクタユニットの位置を示すことができるフィードバック機構が、カテーテルデバイスの操作ハンドルに存在してもよい。ガイドピン及び狭小溝のシステムの代替として、別の形態の力フィードバック機構、例えば、所与の荷重で所与のポイントで破断する「剪断ピン」縫合糸が、ガイドピンに作用してもよい。
【0150】
弁尖アンカー展開機構は、弁尖アンカーの展開中に弁尖アンカー展開機構から外に且つ弁尖アンカー展開機構から離れるように、線を方向付けるための線押圧体を含んでもよい。デバイスが使用されるとき、弁尖アンカーに取り付けられる線であってもよい。この線は、弁尖アンカーが埋め込まれた後に人工索線を形成するために、又は人工索線が弁尖アンカーに取り付けられることを可能にするために提供されてもよい。線は、GoreteX ePTFE縫合糸等の縫合糸であってもよい。線押圧体は、有利なことには、線を弁尖アンカー展開機構から離れるように方向付け、それにより、線を締め付けるため又は接続の試験のために埋め込まれた弁尖アンカーを引っ張るため等で、線は、後の操作のためにより容易にアクセスを受けることができる。線押圧体は、弁尖アンカーの展開の作用中に作動されてもよく、いくつかの例では、弁尖アンカーがエジェクタユニットから離れると作動される。これ故、エジェクタユニットが埋め込まれている弁尖アンカーから離れると、線押圧体が解放されることがある。線押圧体は、上述のグラップルフックと同様に、拘束状態から非拘束状態に遷移することができ、これ故、半径方向外側に移動して線を押し出すことができる。この状態において、拘束が一旦除去されると、この半径方向外側への移動が可能になり、線押圧体が解放される。拘束は、弁尖アンカーからのものであってもよく、これ故、エジェクタユニットが弁尖アンカー展開機構内に引き戻されると、拘束は除去されてもよい。その場合、線押圧体は、アームであってもよく、当該アームは、エジェクタユニットから弁尖アンカーに向かって軸方向前方に延びるが、アームが力を受けずレスト状態(静止状態)であるときは、弁尖アンカーチューブの半径方向外側に向かって半径方向に延びてもよい。弁尖アンカーの展開前では、線押圧体のアームは、弁尖アンカー内にその遠位端を配置するように弾性的に曲げられ、それにより、アームは、拘束され、弁尖アンカーとエジェクタユニットとが移動して離れるまで、その半径方向外側のポジションに移動することができない。いくつかの例では、エジェクタユニットが弁尖アンカー展開機構内に引き込まれ続けていると、線押圧体は、その非拘束状態のままであってもよく、この状態において、線押圧体も線も、弁尖アンカー展開機構内のスリット、例えば、弁尖アンカーチューブに沿ったスリットから押し出される。
【0151】
第6の態様のカテーテルデバイスは、乳頭アンカーと、乳頭筋に取り付けるための乳頭アンカーを展開するための乳頭アンカー展開機構とをさらに備えることができる。乳頭アンカー展開機構は、遠位部分に対して遠位方向に外方へ乳頭アンカーを移動させることによる乳頭アンカーの展開のために構成されてもよい。乳頭アンカー展開機構は、第2の態様を参照して上述したように、2部分式ハウジングセクション内に配置されてもよく、この場合、弁尖展開機構は、2部分式ハウジングセクションの近位部分内にあってもよい。或いは、乳頭アンカー展開機構は、特許文献3に記載されているものと同様であってもよい。いくつかの例では、弁尖アンカーの作動は、乳頭アンカーの展開と関連付けられてもよく、これは、弁尖及び乳頭アンカーが、例えば、単一の制御ワイヤ又はロッドによって作動される等、少なくとも部分的に同時に展開されるように構成されてもよいことを意味する。これは、処置をより容易及び/又はより速くすることができる。
【0152】
乳頭アンカー展開機構は、乳頭アンカーが過度に早く放出されることを防ぐ係止部を含んでもよい。この放出は、デバイスを保持する外側シャフトが圧縮されるが、その一方で、内側の乳頭アンカー展開シャフトが伸張しているか、又は外側シャフトが短くなるが元の長さを維持し、乳頭アンカーをそのハウジングから外に押し出す場合に起こり得る。係止部は、アンカー調節エジェクタ機構を所定の位置に保持するフリップ(アウト)タブであってもよく、タブは、トルクワイヤ、押圧ワイヤ、引張ワイヤ又は縫合糸で操作されてもよい。作動ワイヤ/縫合糸は、把持ハウジングを通るように経路を決められてもよく、把持ハウジングで支持されるか若しくは乳頭ハウジング内に支持されてもよく、又は、アンカー展開機構自体に固定されてもよい。第2形態では、係止機構は、乳頭アンカー展開機構の内側に据わり、調節カテーテルの内側を通るワイヤによって作動されてもよい。上記のように、ワイヤ(複数可)及び/又はロッドは、エジェクタユニットを展開及び/又は後退させるために使用されることができる。他のバリエーションでは、エジェクタユニットは、スライドシースを介して移動されてもよく、スライドシースは、エジェクタユニット上のつまみラグに係合してもよい。このシースは、弁尖アンカーチューブの周囲にぴったりと合うように適合してもよい。シースは、部分的なチューブであってもよく、例えば、弁尖アンカーチューブの周りを回る3/4チューブであってもよい。このような構成は、「スレッジ」又は「直動軸受」とも呼ばれる。シースは、移動したときに、エジェクタユニットのつまみラグを押す。シースは、1つ以上のワイヤ(複数可)又はロッド(複数可)によって作動されてもよく、当該ワイヤ又はロッドは、シースに回転関節を伴って接続されてもよい。例えば、操作者による引っ張り又は押し込みを受けることができる1つ以上のワイヤがあってもよい。ニチノールワイヤが使用されてもよい。シースは、引っ張り又は押し込みを受けた場合、弁尖アンカーチューブの外側に沿って移動し、例えば、弁尖アンカーチューブの開口部に向かって移動し、つまみラグを介してエジェクタユニットを押す。つまみラグは、上述したように、溝内のガイドピンであってもよい。
【0153】
エジェクタユニット及び/又は弁尖アンカーは、ニチノール等の弾性金属から製造されてもよい。エジェクタユニット及び/又は弁尖アンカーは、レーザ切断、熱処理及び電解研磨された金属チューブであってもよい。ガイドピン及び/又はつまみラグは、存在する場合には、レーザ溶接等によって、組み立て後に所定位置に溶接されてもよい。エジェクタユニットのグラップルフックは、所定位置で加熱処理又はレーザ溶接されていてもよく、グラップルフックは、弁尖アンカーとの係合に好適な任意の形状を有してもよい。弁尖アンカーチューブは、溶接、はんだ付け又は接着によって、弁尖アンカー展開機構に取り付けられてもよく、例えば、把持部に取り付けられてもよい。又は、弁尖アンカーチューブは、除去加工によって無垢片から切り取られてもよい。また、さらなる製造技術も使用されてもよい。追加のチューブが、弁尖アンカーチューブの隣に設けられてもよく、例えば、流体を供給するために又はワイヤを覆うために設けられてもよい。弁尖アンカーチューブの端部には、把持ティップがあってもよく、把持ティップは、弁尖アンカーチューブの周囲で側方に延び、それにより、弁尖アンカー展開機構の対向する把持要素に適合する把持プラットフォームを形成する。把持プラットフォームは、把持部の端部を樹脂で充填することによって形成されてもよい。弁尖アンカーチューブは、熱処理された(又は押しつぶされた)平坦セクション又は曲がりセクション等の、取り付けられるレバーアームを有してもよく、レバーアームは、把持部を開閉するために使用されるワイヤを取り付けるために、把持部の回動軸(回動軸は、把持アームの移動中に移動してもよい)を越えて伸びる。
【0154】
弁尖アンカーチューブは、索スリット内側で、把持部チューブセクションにレーザ溶接を受けてもよい。可能な把持構成のさらなる特徴は、特許文献3に開示されているものと同様であってもよく、及び/又は以下に記載されているものであってもよい。
【0155】
第7の態様から見ると、本発明は、線を保持するために身体組織に埋め込むためのアンカーを提供し、アンカーは、身体組織と係合するための複数のフックであって、畳まれたポジション及び畳まれていないポジションを有するフックを備え、アンカーは、拘束力を加えることによって畳まれたポジションに弾性的に変形することができ且つ拘束力が加えられないときに畳まれていないポジションに戻るように弾性材料で作製され、フックは、フックの長さに沿う開口部を有して形成され、フックの開口部は、フックの長さの一部又は全部沿って延びるスリットを含む。
【0156】
この態様のアンカーは、弁尖アンカーとして、又は乳頭アンカーとして使用されてもよいことが理解されるだろう。アンカーフックに開口部を追加することによって、より大きな幅のフックが使用されることができ、それによって、塑性変形を伴わずに、畳まれたポジションと畳まれていないポジションとの間で依然として大きな変形を可能にしつつ、保持強度を増加させることができる。より大きな幅のフックの増加した表面積はまた、力の分布を広げる補助をする。開口部はまた、組織がスリットの間で成長することを可能にすることによって治癒を促進することができ、無垢のフックを備える場合のように、容易に引き出され得る「ソックス」を細胞が形成する場合よりもむしろ、アンカーと組織との間のより信頼性のある接続を時間の経過と共に生み出すことができる。
【0157】
スリットを使用することの利点は、各フックが2つの「脚」からなることであり、2つの「脚」は、「脚」の一方での折損が塞栓症を起こすことになることを意味せず且つアンカーが依然として他方の脚によって所定位置に保持されることになることを意味する。同時に、新たな「V」字形状の脚が、スリットも他の開口部も有しない「破損した」直線状のフックよりも、組織内に効果的に成長する可能性が高く、塞栓症の危険性をさらに低減する
【0158】
この態様のアンカーは、それ自体の利点を提供するだけでなく、上記の態様のカテーテルデバイスと相乗的に結びつくことも理解されるであろう。これ故、開口部を有するフックを有するアンカーは、上記の態様の弁尖アンカー及び/又は乳頭アンカーに使用されてもよい。
【0159】
このアンカーが索線のような線を解放可能に保持することができ、それ故、アンカーが、力が加えられないときに線をクランプするための係止機構をさらに備えることができ、係止機構が、線の長さを調節するために、係止機構から線を解放するために弾性的に変形されることができる場合に、利点が生じる。これは、以下に説明するような係止リングを使用してもよい。
【0160】
いくつかの例では、フックの開口部は、複数の穴(約0.2~0.4mmの直径を有する複数の穴等)を含み、この状態において、これらの開口部が縫合糸に接続され、単一の長さの縫合糸は、複数の穴のいくつか、又は複数の穴の全てを通過する。縫合糸は、各穴で結ばれてもよい。縫合糸は、例えば、Dyneema縫合糸(又はDacron等の他の同様の縫合糸)であってもよい。ニチノールのような弾性材料は、鼓動する心臓から生じる周期的な負荷を含む、高い周期的な負荷を受ける間に疲労で折損する傾向がある。複数の穴を通る縫合糸の使用によって、アンカーピンにフェイルセーフを追加することが可能である。アンカーのフックが破損した場合、アンカーは縫合糸によって依然として一緒に保持され、このことは、塞栓症の危険性を低減する一方で、組織の内部成長のための余分な時間ももたらす。これ故、たとえアンカーが早い段階で破損したとしても、アンカーは塞栓を起こさず、依然としていくらかの力を保持することができ、この理由は、拡張されているアンカーは、1つ以上のフックが折損したとしても、その進入穴を通して引っ張られるには大きすぎるためである。このように縫合糸を使用することは、組織が成長するための「開口部」も多くすることにもなる。複数の穴は、フックの他の開口部に加えて作製される円形の穴であってもよく、例えば、後述するようなスリットに加えて作製されるような円形の穴であってもよい。
【0161】
開口部に通される縫合糸の使用に代わるものとして、アンカーは、可能なオーバーモールド部を含んでもよく、オーバーモールド部は、フックの鋭利な先端部を除いてアンカー全体の周りに設けられてもよい。このようなオーバーモールド部に好適な材料はePTFEである。別の代替案は、アンカーを包む織布パウチを使用することである。これらの解決策の両方は、アンカーに折損がある場合に、アンカーが塞栓を起こさないようにする。ePTFEの使用はまた、組織の内部成長のさらなる利益を与える。
【0162】
アンカーはチューブから形成されてもよく、当該チューブは、チューブの一端から延びる櫛歯を備えるように切断され、この状態において、次いでこれらの櫛歯が湾曲され且つ熱処理を受けてフックを形成してもよい。複数の開口部が、櫛歯が湾曲される前又は後に、櫛歯に切り込まれることができるが、典型的には、1つの切断段階のみが存在するようにするために、櫛歯が湾曲される前とされることができる。この構造に関連して開口部を使用することの追加の利点は、小径のチューブが中心の開口部と共により曲げやすくなることであり、その理由は、チューブの弧が2つのより小さな弧に分割されるためである。その結果、細いチューブのより広い部分が、櫛歯を作製するために安全に利用されることができ、このことは、追加の強度をさらに与える。保持力が増し且つ柔軟性が増す結果として、アンカーフックは、より少ない疲労荷重を受け、このことは次に、埋め込みをより長く持続させる。
【0163】
開口部は、複数のより小さなスリットを一列に含んでもよく、又は異なるタイプのパターンを有していてもよい(ジグザグ、バーブ又は波形パターンが例である)。フックの長さに沿って、異なるパターンを有する複数の小さな穴が、スリットに加えて、作製されてもよい。これは、組織が穴を通って成長する場合に追加の保持力をもたらすことができる。また、縫合糸が、上述したように折損の発生時に安全性を高めるために、複数のフックに通されることも可能になる。また、スリットは、フックがアンカーの基部内に接合するフックの端部を越えて延びてもよく、それによって基部をより可撓にもするが、アンカーは、上述したようなチューブの形状をした部品であってもよい。いくつかの例では、スリットは単一のレーザの軌跡として切断されてもよい。円形開口部が、このような切断部の端部に付加されることができ、それにより、高歪みのポイントの発生を防ぐことができる。
【0164】
一例では、アンカーは、ニチノールのような弾性金属で作製されるチューブから切断される。レーザ切断が使用されてもよい。レーザ切断は、上述したように櫛歯を切断することを含むことができ、櫛歯は、湾曲するように熱処理を受けることができる。アンカーは、熱処理及び/又は電解研磨されてもよい。面取りされたエッジが、アンカーが電解研磨を受ける前に、特定の部分においてアンカーに導入されてもよい。開口部は、開口部のエッジに沿って、例えばスリットのエッジに沿って、バーブ付き又は波形のプロファイルを含んでもよい。スリットが使用される場合、スロット付きフックは、フックが展開されたときに増加した距離を有する形態で熱処理を受けることができる。次いで、バーブ付きプロファイルは、ピンが真っ直ぐである(バーブが互いに向かい合っている)ときに、隠されることができる。この例では、アンカーが非拘束形態になると、スリットが離れるように移動し、バーブ付きプロファイルが係合される。
【0165】
種々の態様において、本発明は、上記のカテーテルデバイス及びアンカーの使用、特に、人工索線を心臓に埋め込むための処置中のこれらのデバイスの使用に及ぶ。さらに、本発明は、チューブからのレーザ切断のような上述の様々な方法のステップを含む、上述のカテーテルデバイス及びアンカーの製造に及ぶ。アンカーのいずれについても、又は、本明細書で説明される他のレーザ切断部分について、面取りされたエッジは、レーザ切断部分(例えばアンカー)が電解研磨を受ける前に、導入されてもよい。
【0166】
第8の態様から見て、本発明は、弁尖アンカーと乳頭アンカーとの間に延びる人工索線を埋め込むための処置中に、心臓内に弁尖アンカーと乳頭アンカーとの両方を埋め込むための第2の態様のカテーテルデバイスを使用する方法を提供する。この方法は、弁尖アンカー展開機構を使用して弁尖アンカーを弁尖内に展開することと、乳頭アンカー展開機構を乳頭筋と近接させるために可撓ジョイントに角度を付けることと(任意選択で、代替として又は追加で、伸縮可能である場合、ジョイントを伸ばすこと)と、乳頭アンカー展開機構を使用して乳頭筋内に乳頭アンカーを展開することとを含む。この方法は、様々なデバイス態様のうちの任意のものを参照して上述した他の特徴のうちの任意のものを有するデバイスの使用、及び/又は、以下に説明する方法の特徴を含んでもよい。この方法は、乳頭アンカーの展開の前に、例えば、上記のような試験を介して、弁尖アンカーの接続を試験することを含んでもよい。
【0167】
第9の態様から見ると、本発明は、人工索線を埋め込むための処置中に心臓内に弁尖アンカーを埋め込むための第6の態様のカテーテルデバイスを使用する方法を提供する。この方法は、エジェクタユニットが最初にその第1形態のまま維持している状態で、弁尖アンカー展開機構を用いて、弁尖アンカーを弁尖内に展開することと、その後に、エジェクタユニットを第2形態への移動させることで、弁尖アンカーを解放することとを含む。本方法は、有利なことには、上述したような試験を介する等して、エジェクタユニットを第1形態から第2形態に移動させる前に、弁尖アンカーの接続を試験することを含んでもよい。本方法は、弁尖アンカーの接続が不十分であることが判明した場合にエジェクタユニットを第1形態に保つことと、エジェクタユニットを使用して弁尖アンカーを弁尖アンカー展開機構内に引き込むことと、後に、再度接続を試験する前に、弁尖アンカー展開機構を使用して弁尖アンカーを再展開することとを含んでもよい。これは、好適な接続が達成されるまで繰り返すことができ、その時点で、弁尖アンカーを解放するために、エジェクタユニットは第2形態に移動されるべきである。この方法は、様々なデバイスの態様の任意のものを参照して上述した他の特徴、及び/又は、上述した第2又は第8の態様に関連して説明した方法の特徴、又は、以下の他の態様のうちの任意のものを有するデバイスの使用を含んでもよい。
【0168】
第10の態様から見て、本発明は、人工索線を埋め込むことによって心臓を修復するための第1の態様のカテーテルデバイスを使用する方法を提供する。この方法は、第2把持アームをカテーテルデバイスの本体から離れるように移動させることと、第1把持アームをカテーテルデバイスの本体から離れるように移動させることとを含み、第1把持アームを第2把持アームと接触させるように第1把持アームを回動させることで、カテーテルデバイスの本体から離れたポイントで弁尖を掴むことと、第1把持アームを第2把持アームと接触させるように第1把持アームを回動させることで弁尖を拘束し、その後に把持アームを回動させることで第1把持アームとカテーテルデバイスの本体との間で弁尖を掴むことと、弁尖アンカーを弁尖アンカーチューブから押し出して弁尖をつき通し且つ弁尖アンカーを畳まれていない形態に形成することで、弁尖アンカーのフック形状形成部により弁尖に弁尖アンカーを固定することとのうちの少なくとも1つをさらに含む。この方法は、様々なデバイス態様のうちの任意のものを参照して上述した他の特徴のうちの任意のものを有するデバイス、及び/又は本明細書の方法態様で説明だれる方法特徴の使用を含んでもよい。
【0169】
第11の態様から見ると、本発明は、人工索線を心臓に固定するための第7の態様のアンカーを使用する方法を提供する。この方法は、アンカーを心臓の組織に埋め込むためにアンカー展開デバイスを使用することを含む。アンカーは、乳頭アンカーとして使用されてもよく、この状態において、これ故、この方法は、乳頭アンカー展開機構の使用を含む。或いは、アンカーは、弁尖アンカーとして使用さてもよく、この状態において、これ故、この方法は、弁尖アンカー展開機構の使用を含む。この方法は、様々なデバイス態様のうちの任意のものかを参照して上述した他の特徴のうちの任意のものを有するデバイスの使用、及び/又は、本明細書の方法態様で説明した方法特徴を含んでもよい。この方法は、例えば、上記のような試験を介して、心臓の組織へのアンカーの接続を試験することを含んでもよい。
【0170】
第12の態様から見ると、本発明は、第2の態様のカテーテルデバイスを製造する方法を提供する。この方法は、弾性的な金属チューブの切断を介して可撓性を有し且つ任意選択的に伸縮可能であるジョイントを形成することを含む。任意選択的に、同じ弾性的な金属チューブが、2部分式本体セクションの遠位部分及び近位部分を形成するために使用されもし、これにより、遠位部分及び近位部分は、可撓ジョイントを用いて一体的に形成される。ニチノールチューブが使用されてもよく、及び/又は、切断工程がレーザ切断を使用してもよい。レーザ切断チューブは、切断後、鋭利なエッジを除去するために電解研磨されてもよい。
【0171】
第12の態様の方法を使用して第2の態様のデバイスを形成することができることは、特に有益であると考えられるが、上述のように他の製造方法が使用されてもよいことに留意されたい。第12の態様の方法は、カテーテルデバイスに、種々のデバイス態様を参照して上述した特徴の任意のものを与えることを含んでもよい。
【0172】
第13の態様から見ると、本発明は、第6の態様のカテーテルデバイスのためのエジェクタユニットを製造する方法を提供する。この方法は、弾性的な金属チューブ内に切断を介して櫛歯を形成することと、フック状の形態を形成するために、熱処理を用いて前記櫛歯の端部を変形させることとを含む。エジェクタユニットは、第6の態様の任意の特徴に関連して上述した特徴を与えられてもよい。製造方法は、第6の態様におけるようなカテーテルデバイスを提供することと、エジェクタユニットを弁尖アンカーと共にカテーテルデバイスに挿入することとを含んでもよい。ニチノールチューブが使用されてもよく、及び/又は、切断工程はレーザ切断を使用してもよい。レーザ切断チューブは、切断後、鋭利なエッジを除去するために電解研磨されてもよい。
【0173】
第14の態様から見ると、本発明は、第1の態様のカテーテルデバイスを製造する方法を提供し、この方法は、弾性的な金属チューブの切断を介してカテーテルデバイスの本体と一体的に第1把持アームのヒンジを形成することを含む。この方法は、第1把持アームの全体を、ヒンジを含んで本体と一体的に形成することを任意選択で含んでもよい。このようにして第1の態様のデバイスを形成することができることは、特に有益であると考えられるが、上述のように、他の製造方法が使用されてもよいことに留意されたい。ニチノールチューブが使用されてもよく、及び/又は、切断工程はレーザ切断を使用してもよい。レーザ切断チューブは、切断後、鋭利なエッジを除去するために電解研磨されてもよい。第12の態様の方法は、カテーテルデバイスに、種々のデバイス態様を参照して上述した特徴の任意のものを与えることを含んでもよい。この方法は、第12の態様の方法と組み合わされて、それにより、第1把持アームのヒンジ(及び任意選択で第1把持アームの残りの部分も)を備える単一の統一された本体セクションを形成してもよく、第1把持アームのヒンジ(及び任意選択で第1把持アームの残りの部分)は、遠位部分及び近位部分が可撓ジョイントによって接続される2部分式ハウジングセクションと同じ一体的なセクションで形成されてもよい。
【0174】
第15の態様から見ると、本発明は、第7の態様のアンカーを製造する方法を提供し、この方法は、弾性的な金属チューブ内に切断を介して櫛歯を形成することと、櫛歯に開口部を形成することと、櫛歯をフック状の形態に変形することと、開口部を有するフックを形成するように前記櫛歯を熱処理することとを含む。アンカーは、第7の態様の任意の特徴に関連して上述したような特徴を与えられてもよい。このようにして第7の態様のアンカーを形成することができることは、特に有益であると考えられるが、上述のように他の製造方法が使用されてもよいことに留意されたい。ニチノールチューブが使用されてもよく、及び/又は、切断工程はレーザ切断を使用してもよい。レーザ切断チューブは、切断後、鋭利なエッジを除去するために電解研磨されてもよい。
【0175】
上述の態様のいずれにおいても、弁尖アンカーは、弾性材料から形成されてもよく、力が加えられない場合に畳まれていない形態をとり、例えば弁尖アンカーチューブ内に拘束される場合に畳まれた形態に弾性的に変形することができるように構成されてもよい。弁尖アンカーは、形状記憶材料、例えば、形状記憶金属で作製されてもよい。ニチノールが、弁尖アンカーのために使用されもよい。いくつかの例示的な実施形態では、弁尖アンカーは、レーザ切断ニチノールチューブから作製される。アンカーは、望ましくない粗い又は鋭いエッジを除去するために、レーザ切断後に電解研磨を受けてもよい。エッジは、例えば、アンカーが使用されているときに縫合糸又はワイヤがエッジ部分に当接し得る場合に、より大きな湾曲を導入するために、電解研磨の前に面取りされてもよい。
【0176】
上記態様のいずれかの弁尖アンカーの1つの例示的な形態は、畳まれていない形態にある場合のグラップルフック形状である。これ故、弁尖アンカーは、シャフトの周囲で半径方向に離間した複数のフックを有する直線状の中央シャフトを備えてもよい。畳まれた形態にある場合、フックは真っ直ぐになる。弁尖アンカーは、チューブを切断して一端に鋭利な櫛歯を形成し、それを次にフックに曲げ、チューブの他端がシャフトを形成することによって、好都合に製造されてもよい。シャフトは、畳まれていない形態におけるフックの半径方向の広がりに比べて比較的小さい直径を有してもよい。例えば、シャフトは、フックの最大半径方向広がりの30%以下の直径、例えば20%以下の直径を有していてもよい。一例では、シャフトは直径1~2mmであり、フックは約5~25mmの直径にわたって延びている。ニチノール等の形状記憶材料を使用する場合、ニチノールチューブをレーザ切断した後、櫛歯が曲げられ、グラップルフック形状に熱処理されてもよい。
【0177】
弁尖アンカーは、フックの周りに生体適合性材料の1つ以上のシース、例えばePFTEのシースを備えてもよい。この材料は、身体組織のつき通しを妨げないように、フックの端部をフリーのままにして、フックの大部分の周りに配置されてもよい。単一のシースを使用して、シースがアンカーの中心を横切って延在し、アンカーの2つの側部で2つのフックに通されることを可能にする切り抜き手段によって、2つのフックのためのカバーを提供してもよい。このようなシースは、アンカーの中心を橋渡しするチューブの片側に沿って、1つ又は複数の開口部を有するチューブであってもよく、これ故、2つのフックが中心の2つの側部の開口部に通されることを可能にする。シースを有するこのようなフックを製造する方法は、例えば、フックをePTFEチューブに通すことによって、アンカーのフックを1つ以上のシースに挿入することを含んでもよい。このアプローチによる付加的な利点は、人工索線をシースの周囲に巻き付け、アンカーの中心の所定の位置に係止することができることである。これは、フックに個々のチューブ及び/又はシースを通す場合には不可能であり、線のより容易な経路を可能にする。
【0178】
第16の態様から見ると、本発明は、線を保持するために身体組織内に埋め込むためのアンカーを提供する。このアンカーは、畳まれていない形態と畳まれた形態とを有する弾性材料を含み、畳まれていない形態は、身体組織内に配置するための形態であり、畳まれた形態は、アンカーの展開前に使用するための形態であり且つ展開前にアンカーチューブ内にアンカーを配置することを可能にするように構成される形態であり、アンカーは、拘束力の適用によって畳まれた形態に弾性的に変形されるように構成され、拘束力が適用されないと畳まれていない形態に戻り、アンカーが畳まれていない形態にある場合、アンカーは、アンカーの中心の一方の側方とは反対方向に延びる2つのアンカーピンを含む細長の形態を有し、一方、アンカーが畳まれた形態にある場合、2つのピンは、両方とも同じ方向に延び、ピンの端部は、身体組織をつき通すように構成される。
【0179】
いくつかの例では、心臓の弁尖等のいくつかのタイプの身体組織は、心臓壁等の他のタイプの身体組織ほど効果的に治癒しないことが見出された。これ故、いくつかの例では、身体への損傷を最小限にするように設計されたアンカーを提供することが有益である。このような非外傷性アンカーは、特に、アンカーの形態が、身体組織がその周囲で容易に成長することを可能にする場合、利点を提供し得る。提案されるアンカーの細長の形態は、弁尖等の薄い身体組織への損傷を最小限に抑えることができ、同時に、組織がアンカーの周囲で成長することができるように、埋め込み後の組織との密接な接触も可能にする。アンカーの周りの組織の密接な接触及び成長は、アンカーがいったん埋め込まれると、アンカーの回動及び並進が防止されることを意味する。弁尖アンカーとして使用される場合、アンカーピンの端部は、埋め込み中に弁尖をつき通し、弁尖を通過することができ、アンカーが畳まれていない形態をとる場合、細長の形態は、弁尖の一方の側にある2つのピンの外側部分と、アンカーの中心と、弁尖の反対側にある2つのピンの中央部分とともに、弁尖に通される。これは、埋め込み後に弁尖の表面に対して配置されるピンの比較的大きな表面積により弁尖に対する最小限の外傷を可能にする。さらに、アンカーは、薄いプロファイルを有してもよく、これは、弁尖等の薄い本体への埋め込みにより理想的である。
【0180】
この態様のアンカーは、弁尖アンカーとして、又は乳頭アンカーのような他の形態の組織のために使用されてもよいが、本明細書の実施例では、以下に説明されるように弁尖アンカーとして使用される。アンカーは、アンカー展開機構内に含まれてもよく、アンカー展開機構は、カテーテルデバイスの一部であってもよい。具体的には、アンカーは、様々なデバイス態様を参照して上述したタイプのカテーテルデバイスを含む、人工索線を心臓内に配置するためのカテーテルデバイス等の、弁尖アンカー展開機構内に設けられてもよい。これ故、アンカーチューブは、上述のデバイスの弁尖アンカー展開チューブであってもよい。
【0181】
畳まれていない形態は、アンカーの中央部のいずれか一方の側と反対方向に延びる2つのアンカーピンを備える細長の形態であり、細長の形態は、略直線形状であってもよい。畳まれた形態では、2本のピンは両方とも同じ方向に伸びており、畳まれた形態がU字型を有する例もある。ピンの端部は、身体組織をつき通すように構成され、これ故、端部は、尖った形状及び/又は鋭利なエッジを有する鋭利なセクションであってもよい。
【0182】
一例では、アンカーは、その幅を横切る湾曲を有する細長のプレートから形成される。細長のプレートは、例えば、少なくとも5:1の長さ対幅比、例えば、5:1~15:1の長さ対幅比を有してもよい。典型的には、アンカーの長さ(畳まれていない形態)は、5~10mmであってもよい。幅を横切る湾曲は、アンカーの剛性を増加し、これ故アンカーが畳まれていない形態に向かって押し戻す力を増加するために使用される。アンカーが畳まれると、湾曲は扁平になる。つまり、さらに畳むには比較的小さな力しか必要としない。元の湾曲は、扁平であるときにアンカー材料の弾性ひずみの量に影響を与え、それが今度は、アンカーを畳まれていない形態に戻すことを促す弾性力に影響を与える。典型的な湾曲は、プレートの厚さが0.05~0.5mmの範囲である場合、半径1~5mmの範囲であってもよい。湾曲したプレートを得るために、アンカーは、変形されて熱処理された平板から形成されてもよい。或いは、湾曲したプレートは、必要な曲率のチューブから切断された部分として提供されることができる。後者のアプローチは、必要とされる曲率を提供するために既存のチューブ状セクションを使用することができるので、より少ない製造工程を含むことができる。
【0183】
代替の例では、アンカーは、チューブの弾性的な曲げを可能にするために、その長さの中心に弱化セクションを有するチューブ状本体から形成される。この場合、ピンの端部は、チューブを横切る斜めの切れ目によって設けられてもよく、中空の注射針のものと同様の鋭利な先端を残してもよい。チューブの長さの中心における弱化セクションは、チューブに1つ以上の開口部を切り込むことによって提供され得る。この例では、チューブ状本体の長さ対直径の比は、少なくとも5:1、例えば、5:1~15:1の長さ対幅の比であってもよい。典型的には、アンカーの長さ(畳まれていない形態)は、5~10mmであってもよい。チューブの壁の厚さは、0.05~0.5mmであってもよい。
【0184】
アンカーは、弾性金属、例えばニチノール等の形状記憶金属で形成されてもよい。
【0185】
アンカーは、曲げ特性を変化させるために、及び/又は組織成長を増強するために、及び/又は配置された後の水平移動を防止するために使用される形状を有する、切欠き又はエッジ部分を含んでもよい。例えば、スリット、穴、バーブ、陥凹部又は畝状部が使用されてもよい。埋め込まれた後のアンカーの側方移動又は回動移動を防ぐための特徴が存在する場合がある。これ故、身体組織と接触したときにピンが横方向に移動するのを阻止するために、アンカーピンの長さに沿って、上述したような畝状部又は他の特徴部が設けられてもよい。第6の態様のアンカーのフックの開口部に関連して上述したような特徴を有するピンに開口部が存在してもよい。このような開口部は、第7の態様のアンカーを製造する方法に関連して上述したように形成されてもよい。
【0186】
アンカーは、身体組織における成長を促進するために、特に心臓組織における改善された内部成長のために、コーティング又は被覆を有してもよい。コーティング又は被覆は、アンカーの主要部分を覆ってもよいが、ピンの端部を露出させたままにしてもよい。そのようなコーティング又は被覆のための材料の一例は、ePTFEである。別の可能性はDacronである。他の生体適合性材料が使用されてもよい。アンカーは、ePTFEシース等の生体適合性材料のシースで覆われてもよく、これは、アンカーが畳まれていない形態にある状態で、アンカーを材料のチューブに通すことによって組み立てられてもよい。ファブリック又は織物材料が使用されてもよい。ePTFEは、心臓組織において優れた内部成長を有し、心臓手術において十分に証明されている。ePTFEで覆われたアンカーは、弁尖内に成長する可能性があり、保持強度をさらに増大させ、さらに塞栓形成の機会を減少する。
【0187】
材料のシースを使用する場合、これは、例えば、シース及びアンカーの穴に縫合糸を通すことによって、アンカーに縫合されてもよい。これは、シース及び縫合が破損したアンカーの部分を一緒に保持するので、アンカーが折損した場合に塞栓形成の機会を減少するだけでなく、カバーが反転又は引っ張られて「塊」になることを防ぐのに役立ち得る。
【0188】
アンカーに取り付けられた人工索線があってもよい。線は、取り付けられるアンカーを通して複数回接着され、結び目が付けられ、又は通されてもよく、線は、力を分配し且つある角度で引っ張られた場合に水平移動を防ぐために、ループ又は同様のものを有して2つの位置に取り付けられてもよい。1つ又は複数の射出成形部品が、人工索線の取り付けポイントにおけるアンカーの線と金属部品との間の摩耗を低減するために使用されてもよい。線入口ポイントの周りに射出成形された保護を有する2つの取り付けポイントを使用する利点は、線入口点が、一旦配置されたアンカーの水平移動を防ぎ得ることである。
【0189】
上述のように、アンカーは、アンカー展開機構内に含まれてもよく、アンカー展開機構は、カテーテルデバイスの一部であってもよい。一例では、これは、人工索線を心臓に埋め込むための処置中にアンカーを埋め込むためのカテーテルデバイスであり、カテーテルデバイスは、アンカーと、アンカーを展開するためのアンカー展開機構と、アンカーを解放可能に掴むためのエジェクタユニットとを備える。エジェクタユニットは、アンカーの中心でアンカーに取り外し可能に取り付けられてもよい。いくつかの例では、アンカー展開機構は、エジェクタユニットを介して身体組織内にアンカーを展開した後に、アンカーを引っ込めること及び再配置することを可能にし、エジェクタユニットは、第1形態及び第2形態を備え且つグラスピングデバイスを有し、第1形態は、エジェクタユニットからアンカーの係合を解除することなく身体組織内へのアンカーの展開を可能にするように構成される形態であり、第2形態は、エジェクタユニットからアンカーが可逆的に解放される形態であり、第1形態では、エジェクタユニットのグラスピングデバイスがアンカーの中心を把持し、一方、アンカーのピンがグラスピングデバイスによって妨げられないことによって身体組織内に埋め込まれることを可能にし、第2形態では、エジェクタユニットのグラスピングデバイスがアンカーから解放される。
【0190】
本例のエジェクタユニットは、第4の態様に関して上述したエジェクタユニットと同様の形態をとることができることが理解されよう。これ故、エジェクタユニットの構造及び機能は、上述のようにしてもよく、エジェクタユニット及び展開機構は、上述のように相互作用してもよい。展開機構は、上記の弁尖アンカーチューブと同様に、アンカーチューブを含んでもよい。アンカーは弁尖アンカーであってもよい。
【0191】
アンカーは、エジェクタユニットのグラスピングデバイスがアンカーとより良好に係合できるようにするために、例えば、対応するフック又は開口部を介してタブ又はフックと係合して凹部と係合するようにするために、アンカーの中心においてアンカーの幅の両側にタブ又は凹部を備えてもよい。
【0192】
第17の態様から見ると、本発明は、第16の態様によるアンカーを製造する方法を提供する。この方法は、アンカーが畳まれていない形態の状態で、アンカーを弾性材料から形成することを含む。この方法は、湾曲したプレートとして、又は上述のようにチューブ状本体から、アンカーを形成することを含んでもよい。アンカーが湾曲したプレートから形成される場合、本方法は、湾曲したプレートを必要な湾曲と同じ半径のチューブから切り出すことを含んでもよい。これは、アンカーに必要な湾曲プロファイルを製造する簡単な方法を提供することが見いだされた。或いは、アンカーは、平坦なシートから切り取られ、次いで、湾曲した形状に熱処理されてもよい。この方法は、アンカーの弾性材料の周りに生体適合性材料のシース、例えばePFTEのシースを提供することを含んでもよい。この方法は、アンカーのピンをシースに挿入すること、例えば、アンカーをePTFEチューブに通すことを含んでもよい。これは、第1ピンの一端をシースに通し、細長の形態のアンカーを引いてシースに通すことによって行うことができる。シースは、アンカーの中心と2つのピンの大部分又は全体とを囲み、ピンの端部を露出させたままにしてもよい。或いは、シースは、2つのピンの大部分を囲み、ピンの端部は露出され、シースからの制限がより少ない状態でアンカーの曲がりを可能にするように、中心に開口部を有してもよい。このシースの形状は、グラップルフック形状のアンカーについて上述したものと同様である。
【0193】
第18の態様から見ると、本発明は、人工索線を心臓に固定するための第16の態様のアンカーを使用する方法を提供し、この方法は、アンカーを心臓の組織に埋め込むためにアンカー展開デバイスを使用することを含む。アンカーは、乳頭アンカーとして使用されてもよく、これ故、この方法は、乳頭アンカー展開機構の使用を含んでもよい。或いは、アンカーは、弁尖アンカーとして使用されてもよく、これ故、この方法は、弁尖アンカー展開機構の使用を含んでもよい。この方法は、様々なデバイス態様の任意のものを参照して上述した他の特徴の任意のものを有するデバイスの使用、及び/又、は他の方法態様において上述した方法特徴を含んでもよい。この方法は、例えば、上記のような試験を介して、心臓の組織へのアンカーの接続を試験することを含んでもよい。
【0194】
上述の態様の任意のものに関連して、新たな人工索線が弁尖を下方に引っ張ることができるように、弁尖アンカーが下から、即ち乳頭筋が位置する側から弁尖内に配置されることができれば有利である。しかしながら、心臓にアクセスするための最も便利な経路は、カテーテルが弁尖の上方から入ることを含む。下からの弁尖アンカーの配置を容易にするために、上記の態様の任意のもののカテーテルデバイスは、弁尖アンカーチューブの開放端が把持デバイスの近位端(上記で定義された方向に心臓にある場合、「上」端)にあり、且つ弁尖アンカーが、カテーテルデバイスの遠位端から近位端に向かって移動するチューブから押し出され得るように構成されてもよい。カテーテルデバイスは、弁尖アンカーを展開するためのU字形状のロッドを含んでもよい。このロッドは、弁尖アンカーを作動させるために使用されるワイヤの端部のU字形状のピースであってもよい。或いは、U字型の一端に別個のワイヤが取り付けられたU字形状のロッドであってもよい。いずれの構成においても、U字形状の自由端は、弁尖アンカーの端部に当接し、ワイヤが引っ張られると、アンカーをカテーテルデバイスの近位端に向かって押すように構成される。U字形状ロッドは、アンカーに力を加えて引っ張ったときにその形状を保持するのに十分な剛性を有するべきである。U字形状ロッドの自由端にボールが配置され、当該ロッドが弁尖アンカー(又は、存在する場合、エジェクタユニット)と最良の係合をすることを可能にしてもよい。このようにして、弁尖を下から突き通すことができる。
【0195】
弁尖アンカーチューブが第1把持アームのような把持アーム内にあるとき、U字形状ロッドは把持アーム内に延びてもよい。この場合、U字形状ロッドは、把持アームの開閉時に曲がるために十分な弾性を有する必要がある。U字形状ロッドは、曲がり動作を補助するために、可撓なセクション、例えば、狭くなった断面のセクションを有してもよい。U字形状ロッドは追加で又は代替として、ニチノールであってもよい好適な弾性材料で作製されてもよい。有利なことには、U字形状ロッドの弾性は、把持アームを閉ポジションに戻すためのバネとして作用してもよい。
【0196】
或いは、U字ロッドワイヤが、把持部が開いている間に曲げが必要ないように作製されてもよく、U字ロッドの端部が、把持部が回動している間に弁尖アンカーチューブの壁に接触しないほど小さい場合には、U字ロッドワイヤ把持部が開いている間に曲がる必要がない。これは、U字ロッドが偏向することを可能にするための要件によって制限されない、より大きな動作角度を有利に可能にする。
【0197】
上記態様の任意のカテーテルデバイスは、弁尖アンカーに取り付けられた人工索線を含んでもよい。人工索線を取り付けるために、弁尖アンカーに、穴又は目が設けられてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、索は、カテーテルデバイス内で、索を引っ張る又は押すことを可能にするワイヤに接合される。このようなワイヤを使用することにより、索の短縮及び長さの調節が可能になる。人工索線は、Gore-TeX(登録商標)縫合糸、又は、細いニチノールワイヤ、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ワイヤ等の他の好適な生体適合性材料、又はニチノール又は高強度縫合糸等の強靭なコアとPTFE又はePTFE等の外側コーティングとを含む複合ワイヤであってもよい。人工索線は、Dyneemaコアを通すことができるePTFE縫合チューブを含んでもよい。このDyneemaコアは、上述したように、弁尖アンカーに通されるのと同じ縫合糸であってもよい。人工索線のePTFE-Dyneemaチューブ構造は、さらに、例えば、ニチノールワイヤをDyneemaコアと一緒にePTFEチューブに通すことによって、弁尖アンカーの反対端のワイヤ(好ましくはニチノール)に連結されてもよい。ePTFEチューブ及びDyneemaワイヤは、次に、最小限の摩擦で新たな人工索線の調節を可能にするために、ニチノールワイヤ上にクリンプ、接着、又は同様の方法によって取り付けられることができる。このような調節は、調節カテーテルを介して行われてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、カテーテルデバイスはまた、乳頭筋に取り付けるための乳頭アンカーを保持する。人工索線は、弁尖アンカーから乳頭アンカーまで伸びている可能性がある。いくつかの実施形態では、特許文献2のように、介在クリップなしで、人工索線が2つのアンカーを直接接合する。これは、人工索線が元々ある天然の索をより密接に模倣することができ、これ故、心臓に対する修復がより効果的であることを意味する。
【0198】
調節カテーテルは、乳頭アンカーを引っ込めるのに十分に強い引張力を及ぼすことができるように、その壁内にステンレス鋼ワイヤを有してもよい。調節カテーテルは、調節及び切断機構の作動を可能にする、壁内の1つ以上の小さな内部空間をさらに有してもよい。ステンレス鋼チッピングは、シャフトの一方又は両方の端部に取り付けられてもよく、これは、例えば、溶接、結び、接着剤、又は材料リフローによってシャフト自体とシャフトの壁の内側のステンレス鋼ワイヤとに機械的に接合されることができ、或いは、シャフトの壁のステンレス鋼ワイヤは、ステンレス鋼チッピングの特徴部の周りにループ状にされてもよい(これは、上述したタイプのアンカーホルダのピストンハウジング等の調節ハウジングに接続されてもよく、又は調節ハウジングの一部を形成してもよい)。ステンレス鋼のチッピングは、乳頭アンカー切断及び調節機構にレーザ溶接されてもよい。
【0199】
上記の態様のいずれかでも、乳頭アンカーは、弾性材料から形成されてもよく、力が加えられない場合に畳まれていないポジションをとるように構成され、且つ、例えばカテーテルデバイスの乳頭アンカーハウジング内に拘束される場合に畳まれたポジションに弾性的に変形することができるように構成されてもよい。デバイスは、フックで乳頭筋をつき通し且つフックが畳まれていないポジションにカールするときにアンカーを乳頭筋と確実に係合させるために、乳頭アンカーが乳頭アンカーハウジングから押し出されることができるように構成されてもよい。乳頭アンカーは、形状記憶材料、例えば形状記憶金属で作製されてもよい。ニチノールは、乳頭アンカーのための好ましい材料である。1つの好ましい実施形態において、乳頭アンカーは、レーザ切断ニチノールチューブから作製される。
【0200】
乳頭アンカーは、乳頭筋の組織をつき通し且つ当該組織と係合するための複数のフックを含んでもよい。弁尖アンカーと同様に、グラップルフック形状が可能であるが、乳頭アンカーのための好ましい設計は、フックの範囲に対してわずかに広いチューブセクションを使用する。これ故、いくつかの例示的な実施形態では、乳頭アンカーは、チューブの一端から延びる複数のフックを有するチューブセクションを含み、フックは、チューブの直径の3倍未満、例えばチューブの直径の約2倍の直径にわたって延在する。
【0201】
弁尖アンカーと同様に、乳頭アンカーは、チューブを切断して一端に鋭利な櫛歯を形成し、次いで、チューブの他端がアンカーの本体を形成する状態でフックに曲げられることによって、都合よく製造されてもよい。ニチノール等の形状記憶材料が使用される場合、ニチノールチューブをレーザ切断した後、櫛歯が曲げられ、フック形状に熱処理されてもよい。アンカーは、望ましくない粗い又は鋭いエッジを除去するために、レーザ切断後に電解研磨を受けてもよい。
【0202】
上記の態様及び任意の特徴のいずれにおいて、乳頭アンカーは、存在する場合、人工索線を解放可能にクランプするための機構を与えられてもよい。一例では、乳頭アンカーは係止機構を備え、当該係止機構は、力が加えられていない場合に索をクランプし、索の埋め込み中に索の長さの調節のために索を解放するように弾性的に変形されることができる。これは、弁尖アンカー及び乳頭アンカーが埋め込まれた後、心臓機能を監視しながら、修復が有効であることを保証するために、新たな索は好適に張力をかけられることができ、次いで、アンカーにかかる力を解放することによって索がクランプされることができることを意味する。埋め込み後、係止機構は、力が加えられていない場合に索をクランプするため、索は、弁尖と乳頭筋との間に正しい張力で保持されることになる。乳頭アンカーは、電解研磨される前にレーザ切断されてもよい。アンカーのエッジに面取りを導入することにより、索の長さの調節中に、エッジにあたる索線の摩擦を減少させてもよい。
【0203】
係止機構は、アンカーの壁に形成され且つ1つ又は複数のスリットによって壁から分割された、弾性的に変形可能な係止セグメントを備えてもよい。アンカーは、力が加えられない場合に、スリットが、線をクランプするために、間隙なしで又は比較的狭い間隙を伴って閉じられるように構成されてもよい。一方、アンカーは、好適な力が係止セグメント及び/又は壁に加えられる場合に、係止セグメント及び/又は壁が、線が解放されるように、スリットによって設けられる開口部を広げるように弾性的に変形するよういに構成されてもよい。アンカーは、チューブ状本体セクションを有してもよく、その場合、係止セグメントは、チューブの壁に形成されてもよい。係止セグメントは、スリットを開放するために、力を加えることによって、バンドが壁との平面から引き出されることができるように、2つの側面に平行なスリットを有するバンドであってもよい。
【0204】
このような係止セグメントは、ホルダをスリット(複数可)内にスライドさせることによって開いた状態に保持することができる。アンカーは、埋め込み前にアンカーを畳まれていないポジションに保持するためのアンカーハウジングと、係止機構を開いた状態に保持するためのホルダと、線と、線に取り付けられたアンカーとを備えるシステムで使用されてもよい。ホルダは、スリット(複数可)内に挿入するためのプロングを有するZ字形状フォークを含んでもよい。Z字形状フォークの使用は、アンカーハウジング内の縫合糸の経路が好適な湾曲を有することを可能にすることができる。
【0205】
ほつれ及び/又は切断の危険性を軽減するために、そして、切断することなくしっかりとクランプすることができるアンカーを提供するために、電解研磨を使用することが重要であると考えられる。乳頭アンカーについては、その長さの調節を受けた人工索線が受けるアンカーのエッジ上の摩擦は、電解研磨前にエッジをレーザ切断面取りすることにより低減され得る。これ故、チューブをレーザ切断することを含む方法、及びレーザ切断アンカーのようなレーザ切断チューブ要素を含むデバイスについては、レーザ切断後に電解研磨が有利に使用される。
【0206】
ここで、本発明の特定の例示的な実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0207】
図1図1は、僧帽弁を通ってカテーテルデバイスを挿入するための処置を示す。
図2図2は、2つの把持アームを使用する機械的な把持機構の動作を示す。
図3図3は、2つの把持アームを使用する機械的な把持機構の動作を示す。
図4図4は、2つの把持アームを使用する機械的な把持機構の動作を示す。
図5図5は、2つの把持アームを使用する機械的な把持機構の動作を示す。
図6図6は、2つの把持アームを使用する機械的な把持機構の動作を示す。
図7図7は、1つの把持アームを有する僧帽弁の弁尖の把持を示す。
図8図8は、エジェクタデバイスを使用するデバイスにおける弁尖アンカーの展開を示す。
図9図9は、エジェクタデバイスを使用するデバイスにおける弁尖アンカーの展開を示す。
図10図10は、エジェクタデバイスを使用するデバイスにおける弁尖アンカーの展開を示す。
図11図11は、エジェクタデバイスを使用するデバイスにおける弁尖アンカーの展開を示す。
図12図12は、エジェクタデバイスを使用するデバイスにおける弁尖アンカーの展開を示す。
図13図13は、人工索線に結合された弁尖アンカーの配置中の弁の拡大図を示す。
図14図14は、乳頭アンカーの配置のための乳頭筋へのカテーテルデバイスの遠位端の移動を示す。
図15図15は、デバイスの治療カテーテル部分の引き抜き、及び任意の調節カテーテルによる索長の調節を示す。
図16図16は、縫合糸が通されたアンカー用のフックの一例を示す。
図17図17は、縫合糸が通されたアンカー用のフックの一例を示す。
図18図18は、乳頭アンカーの一例の畳まれた形態及び畳まれていない形態を示す。
図19図19は、乳頭アンカーの一例の畳まれた形態及び畳まれていない形態を示す。
図20図20は、カテーテルデバイスの本体の下部(遠位)部分の断面図であり、主要部分が乳頭アンカー展開機構の内側にどのように嵌合するかを示す。
図21図21は、図20の乳頭アンカー展開機構内の人工索線及び他の線のルーティングのための例示的な配置を示す。
図22図22は、図20の乳頭アンカー展開機構と、乳頭アンカーと第1把持アームとの間の人工索線の1つの可能な経路を含む、図2図6のような把持機構とを有する実施例の断面図である。
図23図23は、畳まれていないときに真っ直ぐな形態を有する弁尖アンカーを使用する弁尖アンカー展開機構の断面図である。
図24図24は、弁尖アンカーチューブを省略した図23の弁尖アンカー及びエジェクタユニットを示す。
図25図25は、展開後の図23の弁尖アンカーを示す。
図26図26は、アンカーの周りを覆う図23の弁尖アンカーを示す。
図27図27は、畳まれていない形態及び畳まれた形態の直線アンカーの代替形態を示す。
図28図28は、畳まれていない形態及び畳まれた形態の直線アンカーの代替形態を示す。
図29図29は、スライド索ホルダの使用によって変更された、図4図6のカテーテルデバイスと同様のカテーテルデバイスを示す。
図30図30は、乳頭アンカーと共に調節及び切断カテーテルの別の例を示す。
図31図31は、カテーテルデバイスのための2部分式ハウジングセクションの別の例の側面図である。
図32図32は、図32の2部分式ハウジングセクションを異なる図で示す。
図33図33は、そのハウジングセクションを通る条を有するカテーテルデバイスの別の例を示す。
図34図34は、図33のデバイスのハウジングセクションの遠位部分を示す。
図35図35は、図33のデバイスのアンカー及び調節ハウジングの斜視図であり、収容位置におけるアンカーの詳細を示すためにハウジングセクションが省略されている。
図36図36は、図33のデバイスのアンカー及び調節ハウジングの側面図であり、収容位置におけるアンカーの詳細を示すためにハウジングセクションが省略されている。
図37図37は、図33のデバイスのアンカー及び調節ハウジングの断面図であり、収容位置におけるアンカーの詳細を示すためにハウジングセクションが省略されている。
図38図38は、アンカーが展開された展開状態にある、図37と同様の断面図を示す。
図39図39は、図35図38の調節ハウジングのさらなる詳細を示す。
図40図40は、図35図38の調節ハウジングのさらなる詳細を示す。
図41図41は、調節ハウジングの内部カムを示す。
図42図42は、調節ハウジングの内部カムを示す。
図43図43は、図33のカテーテルデバイスの種々の部分の分解図である。
図44図44は、アンカーが展開され、展開された状態にあるアンカー及び調節ハウジングの側面図である。
図45図45は、係合ファネルを含む、デバイスの遠位部分における非円形の形状を示す。
図46図46は、ヒンジ引張ワイヤがどのように配置され得るかを示すカテーテルデバイスの側面図である。
図47A図47Aは、縫合糸及び/又は人工索を弁尖アンカーに取り付けるために使用され得る例示的な自己係止式結び目を示す。
図47B図47Bは、縫合糸及び/又は人工索を弁尖アンカーに取り付けるために使用され得る例示的な自己係止式結び目を示す。
図48A図48Aは、係止セグメントと係合したピストン楔状部の2つの異なる斜視図を示し、ピストン楔状部は、アンカーの内壁と接触していない。
図48B図48Bは、係止セグメントと係合したピストン楔状部の2つの異なる斜視図を示し、ピストン楔状部は、アンカーの内壁と接触していない。
図49A図49Aは、畳まれたポジションで外側に延びる先端部を有するアンカーを示す。
図49B図49Bは、畳まれたポジションで内側に延びる先端部を有するアンカーを示す。
図50A図50Aは、畳まれていないポジションにおける図49Aのアンカーを示す。
図50B図50Bは、畳まれていないポジションにおける図49Bのアンカーを示す。
図51図51は、カテーテルデバイスを操作することができるデバイスハンドルを示す。
図52A図52Aは、2アームの把持デバイスを示し、2つの把持アームは開放構成である。
図52B図52Bは、把持デバイスの2つの把持アームが、互いに閉鎖されている状態を示す。
図53A図53Aは、弁尖運動抑制器が弁尖の上にあり、第1把持アームが下から把持する(図示せず)状態で、モデル弁尖弁を通過する把持デバイスを示す。
図54A図54Aは、弁尖運動抑制器が弁尖の上にあり、第1把持アームが下から把持する(図示せず)状態で、モデル弁尖弁を通過する把持デバイスを示す。
図53B図53Bは、弁尖運動抑制器が依然として弁尖の上にあり、第1把持アームが下から把持している(図示せず)状態で、弁尖弁の下を通過する把持デバイスを示す。
図54B図54Bは、弁尖運動抑制器が依然として弁尖の上にあり、第1把持アームが下から把持している(図示せず)状態で、弁尖弁の下を通過する把持デバイスを示す。
図53C図53Cは、弁尖を把持する把持デバイスを示し、弁尖運動抑制器は、上から弁尖を把持し、第2アームは、下から把持する(図示せず)。
図54C図54Cは、弁尖を把持する把持デバイスを示し、弁尖運動抑制器は、上から弁尖を把持し、第2アームは、下から把持する(図示せず)。
図55A図55Aは、弁尖運動抑制器に適した代替配置を示す。
図55B図55Bは、弁尖運動抑制器に適した代替配置を示す。
図55C図55Cは、弁尖運動抑制器に適した代替配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0208】
本明細書で提示されるカテーテルデバイスは、僧帽弁の弁尖12の逸脱によって引き起こされる僧帽弁逆流に対処するために、僧帽弁索の非外科的な(血管内)挿入のために提案される。図面は、この目的のためのカテーテルデバイス2の種々のかたちを示すが、概略的な原理は、心臓内に1つ以上の人工索線14を挿入するために弁尖アンカー10及び乳頭アンカー9を埋め込むことに関して、各デバイスについて同じであることが理解されるであろう。人工索線(複数可)14は、逸脱弁尖12と乳頭筋26とに固定され、それにより正常な生体構造を再生成する。単一のカテーテルデバイス2は、弁尖アンカー10と乳頭アンカー9との両方を配置するために使用される。索14の長さは、僧帽弁逆流を排除するために、再び同じカテーテルデバイス2を使用して調節を受けることができる。これ故、新規のデバイスは、僧帽弁を修復するために単一の最小限の侵襲性の血管内処置が用いられることを可能にし、より侵襲性の高い処置及び/又は複数の手術を必要とするより以前のシステムと比較して顕著な利点をもたらす。
【0209】
血管内のアプローチは好ましいことであり、これ故、本デバイスはこのアプローチを使用する能力があるが、本デバイスは、もちろん、より侵襲性の高い処置を含む、種々の処置で使用することができることに留意されたい。利点の多くが維持されることになり、より侵襲性の高い処置が行われるに値する状況においてこのデバイスを使用することは、有益であり得る。さらに、上述のように、乳頭アンカー9の設計の複数の特徴は、他の目的のためのアンカーに使用され得ることが企図され、本開示は、この点に関して限定されることを意図されない。
【0210】
以下に説明するカテーテルデバイス2は、鼠径部の大腿静脈から始めて、静脈系を通って僧帽弁索を挿入するために使用することができる。カテーテルは右心房に前進される。次いで、左心房へのアプローチが、いわゆる経中隔穿刺によって得られ、その後、より大きなガイドカテーテルが左心房内へ前進される。次いで、心臓修復のためのカテーテルデバイス2が、ガイドカテーテルを通り且つ左心房内に導入される。
【0211】
X線及び超音波の誘導が本デバイスを位置決めするためにX線及び超音波誘導が使用され、以下により詳細に説明するように、自己拡張可能な弁尖アンカー10を使用して、僧帽弁弁尖12がつかまれ、新たな人工索線14が取り付けられる。次いで、人工索線14が、乳頭アンカー9を用いて、乳頭筋26に取り付けられる。有利なことに、図2~6、14及び20~22に示されるカテーテルデバイスは、弁尖12が依然として当該デバイスによってつかまれていながらも、乳頭アンカー9を配置するのに使用されることができる。そこで、索の長さは、いかなる僧帽弁逆流も排除するように調節することができる。次いで、余分な索が切断され、全てのカテーテルが抜きとられる。エコー及びドップラーの画像は、処置を実行し、結果を監視するために使用される。この血管内の技術をうまく使用すれば、僧帽弁修復の侵襲性、合併症及び費用を大幅に低減することができる。
【0212】
本デバイスの構造及び機能に関するより詳細は、図面を参照して以下に説明される。本デバイスの一形態を使用する処置は、以下のようにまとめることができる。
1)標準的なセルジンガー技術を用いて大腿静脈が進入を受け、ガイドカテーテルが導入される。
2)ガイディングカテーテルが、X線誘導の下で右心房に前進される。
3)X線及び経食道エコーにより誘導され、心房中隔の貫通後、左心房が進入を受ける。
4)左心房における入口部位の正しい位置が、ガイドカテーテル及び治療カテーテルの挿入のための適切な位置合わせを確実にするために、確認される。心房中隔の入口の穴が広げられ、ガイドカテーテルが左心房内に前進される。
5)治療カテーテルデバイス2が、ガイドカテーテルを通って前進され、僧帽弁の上方の左心房内に位置決めされる。
6)僧帽弁弁尖12の逸脱部分が、超音波を用いて探索され、治療カテーテルデバイス2が、左心室内に前進され、治療カテーテルデバイス2の把持部6を、当該逸脱部分を把持する位置に配置する。有益なことに、これには、図2図6を参照して以下により詳細に説明するように、2つの把持アーム30,32を備える把持部6が使用されることができる。
7)逸脱部分は把持され、正しい位置にあることを確実にした後に、弁尖アンカー10は、弁尖12を貫通して押し出され、弁尖12を開き且つ固定することが可能になる。
8)弁尖アンカー10の接続は、図8図12を参照してさらに後述するように、弁尖アンカー10がエジェクタユニット36を介してカテーテルデバイス2に取り付けられた状態を維持しつつ、試験を受けることができ、当該接続が十分である場合、カテーテルの遠位端部がさらに、乳頭筋26又は周囲の組織と接触するまで、左心室内へ前進され、この場合、図2図6及び図14に示すような伸縮可撓ジョイント34を使用するか、又は、伸びを有さずに角度を変えることができるように図31及び図32に示すような可撓ジョイントを使用することが有利である。
9)乳頭アンカー9が、乳頭筋26領域内に押し込まれ、そのハウジング8から外に押し出され、それにより乳頭アンカー9を乳頭筋26の内側で開放させる。
10)把持部6がまだ弁尖12をつかんでいる場合であれば、図8図12を参照して後述するように、弁尖アンカー12をエジェクタユニット36から解放すること等によって、弁尖12が解放される。
11)人工索線14の長さは、僧帽弁逆流がなくなるまで調節される。
12)カテーテルデバイス2が乳頭アンカー9から引き戻され、僧帽弁逆流の消失が心エコー検査によって再度確認される。
13)人工索線14の位置が、乳頭アンカー9のところで係止される。
14)余分な索線14が切断される。
15)必要であれば、追加の人工索線が配置され得る。
16)カテーテルデバイスが、完全に引き抜かれ、血管系から除去される。
【0213】
図1は、心臓内の要求位置にカテーテルデバイス2を操向するために使用されてきたガイドカテーテル22を示し、当該要求位置は、僧帽弁を通って隣り合って延在し、これ故2つの弁尖12の間にある部分である。カテーテルデバイス2は、4つの異なる主要部分から構成され、当該部分は、操向可能なカテーテルと、把持ハウジング4と、把持デバイス6と、乳頭アンカー9を保持する乳頭アンカーハウジング8とである。有利なことに、把持ハウジング4と乳頭アンカーハウジング8とは、図2図6図14及び図20図22に示すように、中央の伸縮可撓ジョイント34を有する2つの部分ハウジングセクションにおける近位部分4と遠位部分8とを形成することができる。これ故、図1(同様に図7図13及び図15)に示される処置が、把持ハウジング(近位部分)4及び乳頭アンカーハウジング(遠位部分)8に対して、この構成を使用し得ることが理解されるべきである。操向可能なカテーテルは、代替の構成と置き換えられてもよく、当該構成は、操向可能なカテーテルの周りの操向可能なシースと操向可能なカテーテル内の可撓チューブとを使用する構成である。
【0214】
図1は、把持デバイス6が閉じた状態の一例のカテーテルデバイスの正面図を示す。いくつかの構成の把持デバイス6は、図7に示されるように、把持ハウジング部分4に対して弁尖12を把持する単一の把持アーム30を使用する。他の構成では、把持デバイス6は、図2~6に示されるように、2つの把持アーム30,32を使用し、それにより、カテーテルデバイスの本体から離れて位置するポイントで、弁尖12が2つの把持アーム30,32の間で把持されることを可能にする。把持デバイス6は、弁尖アンカー10を心臓の弁尖12に取り付けるために弁尖アンカー10を展開するための弁尖アンカー展開機構の一部である。把持デバイス6は、展開前に畳まれた形態で弁尖アンカー10を収容するための弁尖アンカーチューブ38を含む。例示的な実施形態では、弁尖アンカーチューブ38は、例えば、図2及び図4に見られるように、(第1)把持アーム30内にある。把持デバイス6が弁尖12をつかむと、弁尖アンカー10は、弁尖アンカーチューブ38から押し出されて、弁尖12を穿孔し、弁尖アンカー10を畳まれていない形態に形成することができ、それにより、弁尖アンカー10の複数のフック形状形成部40が弁尖12内に弁尖アンカー10を固定する。
【0215】
弁尖アンカー10は、人工索線14に接続され、人工索線14は、第1把持アーム30(例えば、図8図12に示される)の表面に沿って延び且つ乳頭アンカーハウジング8を介して乳頭アンカー9(例えば、図20図22に示される)に通じる狭いチャネルの内側に据わることができる。チャネルは、新たな人工索線14の直径よりもわずかに小さくすることができ、及び/又は、薄いシールド構造(図示せず)を有することができる。これにより、人工索線14は、摩擦嵌合により所定位置に据わる。新たな人工索線14は、乳頭アンカーハウジング8内に入り、乳頭アンカー係止セクションを通り、係止切断ピース18を通り、Z字状フォーク20を通って延びる。これらのパーツは、図20図22を参照して以下にさらに詳細に記載される。新たな人工索線14は、(調節をより円滑にするために)カテーテルに沿って外側にまですべてにわたって戻るように延びるワイヤに取り付けられることができる。ワイヤはカテーテルを通って押されることができるため、ワイヤは、処置中に、引っ張ることによって索を短くすること、又は、索を長くすることを可能にする。
【0216】
把持ハウジング(近位部分)4及び乳頭アンカーハウジング(遠位部分)8を有する2部分式ハウジングセクションは、直径で約6~7mmであり、長さで約30mmであり得る。
【0217】
図2図6は、上述のような2つの把持アーム30,32を有する一例における把持機構6の動きのステップを示す。この把持機構6は、伸縮可撓ジョイントを含みもするハウジングセクションの一部であり、当該ジョイントは、弁尖12が把持機構6によって掴まれた後、乳頭アンカーハウジング8(遠位部分)が乳頭筋26に向かって移動されることを可能にする。この例では、弁尖12を掴むために、第1把持アーム30は、第1把持アーム3の端部42をカテーテルデバイスの本体から離れるように移動させるように回動され、この状態において、この回動は、当該本体の管状形態の弱化領域44を介して可能にされる。弁尖アンカーチューブ38は、第1把持アーム30の内側に据わり、この状態において、弁尖アンカーチューブ38の端部は、第1把持アーム30の端部42に開口部を有していることが分かる。第1把持アーム30が開放した状態において、第2把持アーム32は自由に回動して第2把持アーム32の端部46を本体の外側に向かって移動させる。この例では、第2把持アーム32は、2部分式ハウジングセクションの近位部分4の複数の穴に配置された複数のピン48によって形成されるヒンジの周りを回動するが、第2把持アーム32の端部46の同様の最終的な配置が、スライド移動を介して達成され得ることが理解されるであろう。第2把持アーム32が外方へ折り曲げられている状態において、第1把持アーム30は、2つの端部42,46が本デバイスの本体から間隔をあけて離れポイントで接触状態になるように閉じることができる。これにより、弁尖12が掴まれることが可能になる。弁尖12が所定位置にある状態において、弁尖アンカー10は、弁尖アンカーチューブ38から外に移動されることで、例えば図8図12に関連して後述するエジェクタユニット36を備える機構を介して、弁尖アンカー10を埋め込むことができ、この状態において、弁尖アンカー10の最終的な位置は、図13に示されるものと同様である。
【0218】
図7は、把持機構6の代替の形態を示し、把持機構6は把持ハウジング4に対して弁尖12を保持する単一の把持アームを用いて弁尖12を掴む。この把持機構は、図8図12のエジェクタユニット36機構を使用することもできる。
【0219】
把持アーム30,32(複数可)上の畝状表面が、当該把持アームが弁尖12を掴むのを補助するために与えられてもよい。3D超音波供給源及び/又は他の利用可能な供給源が、把持機構6が弁尖12の正しい部分を掴んでいることを確認するために、使用されることができる。
【0220】
把持機構6は、弁尖12の右側部分を掴むのに必要な回数だけ開閉されることができる。開閉は、1つのワイヤが把持機構6を引っ張って開放し且つ1つのワイヤが把持機構6を引っ張って閉鎖することを可能にするシステムによって、手助けを受けることができる。ワイヤ及び/又はロッドの種々の構成が、上述したような2つの把持アーム30、32を用いた例を制御するために、使用されることができる。把持機構6のポジションが確認されると、弁尖アンカー10は、弁尖アンカーチューブ38の端部から外に押し出されることができ、例えば、カテーテルの他端においてワイヤを引っ張ることによって押し出されることができる。図13は、フック形状形成部40が弁尖12と係合している状態で弁尖12内に配置された弁尖アンカー10の拡大図を示す。
【0221】
上述したように、図8図12に示すように、エジェクタユニット36が使用されてもよい。エジェクタユニット36を使用する状態において、弁尖アンカー展開機構は、弁尖アンカー10の弁尖12内への展開後に弁尖アンカー10を引っ込めること及び再位置決めすることを可能にする。これは、エジェクタユニット36を介して達成され、エジェクタユニット36は、図8及び図9に示されるような第1形態と図10及び図11に示されるような第2形態とを備えるグラスピングデバイス50を含む。
【0222】
第1形態では、グラスピングデバイスは、弁尖アンカー10がエジェクタユニット36から係合解除されていない状態で、弁尖アンカー10の弁尖12内への展開を可能にするように構成される。これ故、グラスピングデバイス50は、この例では図示のように2つの掴みフック50を備えるが、グラスピングデバイス50は、弁尖アンカー10を把持し、弁尖アンカー10をリリースすることなく、弁尖アンカーチューブ38に沿って、図8のような完全に収容された位置から、弁尖アンカー10が図9に示すように展開される位置まで、前進することができる。掴みフック50は、弁尖アンカーチューブ38内に拘束されるため、掴みフック50は弁尖アンカー10に保持される。これ故、エジェクタユニット36は、弁尖アンカー10が埋め込まれている間、第1形態のまま維持するように構成される。弁尖アンカー10が埋め込まれた状態において、グラスピングデバイス50及びエジェクタユニット36は、弁尖アンカー10の弁尖12への接続を、例えば、グラスピングデバイス50が第1形態である間にエジェクタユニットから弁尖アンカーに加えられる力によって、試験するために用いられることができる。
【0223】
グラスピングデバイス50は、弁尖アンカーチューブ38からの拘束がもはや存在しない場合に、例えば、図10に示すように掴みフック50が弁尖アンカーチューブの端部を越えて移動した場合に、第2形態に移動する。これ故、上記接続の試験が完了し、医師が弁尖アンカー10をリリースすることを決定する場合には、医師は、エジェクタユニット36をさらに前進させることができ、これにより、エジェクタユニット3が第2形態に移動することになる。この第2形態では、エジェクタユニット36のグラスピングデバイス50は、弁尖アンカー10から係合解除される。
【0224】
医師が、試験中に接続に満足しない場合(例えば、弁尖アンカー10の移動が多すぎる場合、及び/又は、線への力に対する抵抗が十分でない場合)、弁尖アンカー10は、引き戻され、別の位置に配置されることができる。この試験中にグラスピングデバイス50が第1形態から変化しない場合、その後の処置は、エジェクタユニット36及び弁尖アンカー10の展開を逆の状態にすることによって、例えば、エジェクタユニット36及び弁尖アンカー10の部品を弁尖アンカー展開機構に引き戻すことによって、実行されてもよい。第2形態が、弁尖アンカーの接続が適切でないと決定される前に用いられると、弁尖アンカー10を後退させるために、エジェクタユニット36はまず、グラスピングデバイス50が弁尖アンカー10と再係合するように、第1形態に戻すように移動されるべきであり、その後、エジェクタユニット36及び弁尖アンカー10の展開は、例えば、エジェクタユニット36及び弁尖アンカー10の部品を弁尖アンカーチューブ38内に引き戻すことによって、逆の状態にされる。
【0225】
溝52が、エジェクタユニット36を案内するために、弁尖アンカーチューブ38の壁に設けられる。溝52は、エジェクタユニット36が弁尖アンカーチューブ38に沿って移動される間、弁尖アンカーチューブ38に対して単一の向きを維持することを確実にする。溝52は、エジェクタユニット36の移動の範囲における最大限度を設定することができ、これ故、溝52は、弁尖アンカーチューブ38から外へ又は弁尖アンカーチューブ38の中へのいずれの方向にも、エジェクタユニット36が遠くに行きすぎるのを防ぎ得る。エジェクタユニット36は、溝52と係合するためのガイドピン56を有する。溝52内における狭部54が、設けられることで、エジェクタユニット36が特定の位置に達したときを操作者に知らせるためのインジケータとして作用する。ガイドピン56のサイズ及び狭部54の幅は、ガイドピン56と狭部54とが溝52内で係合することによって、さらなる移動が可能となる前に、必要とされる力が増加し、それ故手術する医師に触覚フィードバックを与えるように、設定される。
【0226】
図8図12の弁尖アンカー展開機構はまた、線押圧体58も含み、線押圧体58は、弁尖アンカー10の展開中に、弁尖アンカーチューブ38から外に且つ離れるように、人工索線14を指向するためのものである。線押圧体58は、人工索線を弁尖アンカーチューブ38から離れるように指向し、それにより、人工索線は、例えば、人工索線14を締め付けるため、又は接続の試験のために埋め込み状態の弁尖アンカー10を引っ張るため等の後の操作のために、より容易にアクセスを受けることができる。線押圧体58は、弁尖アンカー10の展開の作用中に作動される。この状態において、この作動は、弁尖アンカー10がエジェクタユニット36からリリースされたときにトリガされる。これ故、エジェクタユニット36が埋め込み状態の弁尖アンカー10から離れるように引き抜かれると、線押圧体50は解放される。
【0227】
図示の例では、線押圧体58は、拘束状態から非拘束状態に遷移し、人工索線14を押し出すように半径方向外側に向かって移動する。この状態において、弁尖アンカー10からの拘束が除去されると、この半径方向外側への移動が許可され、線押圧体が解放される。線押圧体58は、アームであり、当該アームは、エジェクタユニットから軸方向前方に延びるが、弁尖アンカー10に向かって延び、且つ、アームが力を加えられていない状態で静止しているときには弁尖アンカーチューブ38の半径方向外側に向かって延びる。弁尖アンカー10の展開に先立って、線押圧体58のアームは、図8及び図9に示すように当該アームの遠位端を弁尖アンカー10内に配置するように弾性的に曲げられ、それにより、図11に最もよく示すように弁尖アンカー10及びエジェクタユニット36が離れるように移動するまで、線押圧体58のアームは、拘束を受け、当該アームの半径方向外側の位置に移動することができない。エジェクタユニット36が弁尖アンカーチューブ38内に引き込まれ続けると、線押圧体58は、その非拘束状態を維持する。この状態において、線押圧体58も人工索線14も、図12に示すように、弁尖アンカーチューブ38内のスリットから外に押し出される。
【0228】
弁尖アンカー10が弁尖12内に埋め込まれている状態において、治療カテーテルの端部の乳頭アンカーハウジング8が乳頭筋26上に配置される。これは、伸縮可撓ジョイント34を用いることによって、図14に示すように行うことができる。この例では、伸縮可撓ジョイント34は、可撓性があり且つ曲がりくねっている複数のセクションが本体の管状形状部に切り込まれることによって、形成される。有利なことには、伸縮可撓ジョイント36が、乳頭アンカーハウジング8を提供する管状の遠位部分8と、把持ハウジング4を提供する管状の近位部分4とに一体的に形成される。さらに有利なことには、把持ハウジング4の管状形状部は、一体的に形成された把持アーム30を含むことができ、この状態において、管部分の弱化セクション44がヒンジをもたらす。伸縮可撓ジョイント34は、ワイヤ及び/又はロッド60を用いて(又は、乳頭アンカー9を押し出すこともできる調節カテーテル21を介して)伸ばされることができ、ワイヤ及び/又はロッド60は、ジョイント34の弾性的要素を伸長させるための力を加えることができる。この伸長は、ハウジング部分8内で乳頭アンカー9を移動させて乳頭筋26に当接させて配置する又は乳頭筋26に接近させるために用いられ、これは、遠位ハウジング部分8内のワイヤ及び/又はロッドと乳頭アンカー8とが共に、ジョイント34が伸びるにつれてハウジング8と共に移動するためである。これは、乳頭アンカー9(又は乳頭アンカー押圧チューブ)とハウジングセクションの遠位部分8の内面との間の摩擦を要因とするものであり得る。位置は、3D超音波供給源及び/又は他の利用可能な供給源によって確認されることができる。
【0229】
遠位部分8の遠位端が身体組織に出会った場合に、さらなる力が加えられると、身体組織からの反力は、最終的に、乳頭アンカー9を所定位置に保持する力を超える。この時点で、身体組織は、遠位部分8の基部の下方で平坦に押され、乳頭アンカー9の全てのピン62を組織内に正確に配置する最大の機会を与える。そして、次いで、ピン62の端部が遠位部分8の遠位端を越えて移動して身体組織に出会うように、力が乳頭アンカー9に加えられることができる。これは、ロッド又はワイヤ60から乳頭アンカー9に加えられる追加の力、若しくは調節カテーテル21を延ばす追加の力を介して行われ得、又は、有利なことには、これは、乳頭アンカー9上のプレテンション(若しくは調節カテーテル21と遠位部分8との間の摩擦)を通じて行われ得る。当該プレテンションは、遠位部分8上の身体組織からの力が力と摩擦とのバランスを十分に変化させることで乳頭アンカー9が紙のステープラと同様の方法で放出されるまで、遠位部分との摩擦によって保持される。乳頭アンカー9が放出されると、複数のピン62は、外に折れ曲がった状態になり、非拘束の乳頭アンカー9のフック形状に形を成し、それによって身体組織26と係合する。この時点で、接続は、操作者によって引張試験される、並びに/又は、X線及び/若しくは超音波で視覚的に確認されることができる。接続が満足されるものでない場合、乳頭アンカー9は、遠位部分8内に引き戻され、乳頭アンカー9と身体組織26との改善された結合を試みるために再配置されることができる。
【0230】
図15は、可能な次のステップを示す。本デバイスの主要部分4,8は、動作する弁尖12への影響を最小にするために後退される。調節カテーテル21は、図20図22に示すように調節カテーテル21の遠位端にZ字形状のフォーク20を備えることができ、調節カテーテル21は、乳頭アンカー9の場所に留まることができる。人工索線14の長さは、外部からのワイヤを用いて調節されることができる。当該長さは、連続的に調節され、弁尖12の機能が監視される。人工索線14の長さは、カテーテルを通って索ワイヤを引き戻すことによって減少させられることができる。当該長さはまた、索ワイヤを押すことによって増加させられることもでき、このことは、人工索線14を緩めることになり、弁尖12の動きが調節カテーテル21から外に人工索線14を引き出すことを可能にすることになる。調節カテーテル21のサイズが小さいことは、弁尖12の機能への本デバイスの効果が最小限に抑えられることを意味する。人工索線14の正しい長さは、3D超音波供給源及び/又は他の利用可能な供給源を用いて確認される。
【0231】
正しい長さが確認されると、本デバイスは乳頭アンカー9から係合解除される。このプロセスはまた、人工索線14を所定位置に係止し、いかなる過剰分も切り落とす。当該過剰分は、カテーテル内に留められ、カテーテルが取り外されるときに身体から引き抜かれる。図20図22は、以下に説明するように、Z字形状のフォーク20及び切断ピース18のさらなる詳細を含む。Z字形状のフォークは、乳頭アンカー9の係止セグメント28を開いた状態に保持するために使用される。係止セグメント28は、乳頭アンカー9のバンドであり、当該バンドは、人工索線14が通過するためのギャップを開放するように曲げられることができる。自然な形状の乳頭アンカー9では、力が加えられていないとき、この係止セグメント28は乳頭アンカー9の残りの部分と密接にフィットし、そのため、係止セグメント28は、人工索線14を所定位置に保持することになる。Z字形状のフォーク20は、人工索線14が正しい長さになるまで、係止セグメント28を開いた状態に保持するために使用される。切断ピース18は、人工索線14を切断し、人工索線14は、調節プロセスが完了すると、ブレードに対して引かれる。
【0232】
図16図19は、湾曲ピン62によって形成される複数のフック62を含む乳頭アンカー9のさらなる詳細を含む。図16及び図17は、フック62の1つの可能な形態を示し、当該フックは、中央スリット64と、縫合糸68が通される一連の穴66とを備える。上述のように、この縫合糸68とび穴66とは、フック62が、治癒中に身体組織とより良好に係合することを可能にし、破損の場合に乳頭アンカー9の本体に接続されているフック62の材料を保持することも可能にし得る。図16はフック62の畳まれた/拘束された形状を示しており、当該形状はまた、湾曲を形成するための熱処理の前に、乳頭アンカー9の製造中に管状セクションに形成される櫛歯の形状でもある。図17は、フック62の湾曲形態、即ち、畳まれていない/非拘束の形状を示す。
【0233】
図18及び図19は、乳頭アンカー9全体の一例を示し、畳まれた形態(図18)及び畳まれていない形態(図19)を再び示す。この乳頭アンカー9は、スリット64の形態の開口部を有するフック62を含み、当該開口部は、治癒中に身体とのより良好な係合も可撓性を失うことのない表面積の増加も含む上記のような種々の利点を与える。
【0234】
本デバイスは、乳頭アンカー9が正しく配置されない場合に乳頭アンカー9が身体内に逸脱するのを防ぐように作用する安全ワイヤ72を含むことができる。係止及び切断が行われ、乳頭アンカー9が乳頭筋26及び弁尖アンカー10に確実に固定されているのが確認されると、安全ワイヤ72は切断される。
【0235】
弁尖アンカーを展開するためには、U字ロッドが使用されることができる。このU字ロッド30は、把持アーム30内に収容され且つカテーテルの主要部分内に部分的に収容される。この状態において、U字形状の自由端は、弁尖アンカーチューブ38に沿って弁尖アンカー10(及び、存在する場合にはエジェクタユニット36)を押圧するために使用される。U字ロッドは、曲がり可能セクションを有し、それ故、把持部は、U字ロッドが内側にある間、開閉することができる。有利なことには、この曲がり可能セクションは、バネの一種として作用し、把持アーム30を閉位置に戻すために復元力を加えることができる。U字ロッドは、曲がり可能セクションの曲げを可能にするために、弾性的に高い程度に変形する能力を有する材料で作製される。好適な材料には、形状記憶材料が含まれ、例えばニチノール等の形状記憶金属が含まれる。形状記憶金属はまた、U字ロッドが剛性を有するようにすることができるという利点を有し、このことは、U字ロッドを用いた力の伝達をより効率的にする。U字ロッドは、U字セクションがより剛性を有するようにするために、細いニチノールワイヤと当該ワイヤの外側の複数のチューブで構成されてもよい。或いは、U字ロッドは、必要な特性を達成するために、複数のタイプの材料で作製されてもよい。
【0236】
上述したように、3D超音波又は蛍光透視法のような撮像技術が、本デバイスを案内する場合、及び、把持デバイス6内の弁尖12の正しい位置を確認するために、使用されることができる。これを補助するために、本デバイスのエコー源性は、研磨材吹き付け加工、機械的なテクスチャ、又は特別なコーティング、例えばエコー源性ポリマーコーティングによって向上されてもよい。把持デバイス6はまた、把持部6内の弁尖12の位置を確認するための検出システムを備えることができる。モディファイされた把持部(図示せず)において、流体ベースのセンサシステムが設けられる。このシステムは、把持ハウジング4の把持面に設けられた複数の穴を用いる。これらの穴は、チューブを通じて、注射器からの造影剤流体等の流体供給源に接続される。把持部が弁尖(又は他の組織)をつまんだ場合、穴は、流体の流れを妨げる組織によって塞がれることになる。これは、弁尖アンカーを展開するのに弁尖が正しい位置にあるかどうかを決定するために用いられ得る。本デバイスは、様々な数量の穴、例えば3つ又は4つの穴を有して構築され得、この状態において、開いた穴と閉じた穴との組み合わせが、把持部4内の弁尖/組織の位置を決定するために使用される。4つの弁が正方形のパターンで配置される場合には、2つの閉じた弁と2つの開いた弁とが、弁尖の正しい位置を表すことができる。一例において、センサシステムは、1~4の流体チャネルで構成され、当該流体チャネルは、把持アームと対向する器具の壁に配置されることができ、或いは、把持アームの先端部に配置される。チャネルは、器具のハンドル上のポートに接続され、この状態において、チャネルは、心エコー検査又は蛍光透視法のいずれにおいても見られ得る造影剤流体を注入されることができる。可視流体が存在しない(又は減少する)こと、及び/又は、両方のチャネルにおける流体を注入する抵抗が増加することは、弁尖アンカーの展開の前に弁尖が正しく配置されていることを操作者に知らせる。
【0237】
別の例では、監視回路を備えるポンプが、センサの複数のチューブを通じて、少量の水を絶えず圧送する。検出回路が、各チューブを通過する流量における圧力上昇又は変化を検出することができ、圧力の上昇は、閉塞されているチューブがいずれであるかを示すことができ、弁尖の組織が実際にはどの程度の厚さかについてある程度示す(より薄い組織は、より厚い組織と比較して、より少ない圧力上昇を引き起こす傾向がある)。例えば、監視デバイスは、弁尖が適正に把持された場合に緑色になる単純なLEDを搭載することができる。これにより、医師は、弁尖を正しく捕捉しているという確認を(超音波に加えて)さらに得ることになり、このことは、最終的にはより高い処置の成功率をもたらすことになる。わずかに異なる実施形態では、ポンプは、チューブの内外で流体をゆっくりと圧送するようにプログラムされることができ、このことは、処置が長時間かかる場合に追加の流体を必要としない。
【0238】
本デバイスは、もつれを防止するために、縫合糸/線の管理システムを含むことができる。縫合糸は、縫合糸を解放するための全ての準備ができるまで、スリット又はチューブの内側に保持され得、これにより、絡み合う機会が減少することになる。乳頭ハウジング8における縫合糸スリットが、ニチノールチューブ自体から切り取られる一方向「縫合糸弁」を備えてもよく、当該弁は、元々ある索が索チャネルに入ることを防止する。
【0239】
人工索線14は、様々な方法でアンカー(複数可)に取り付けられることができる。例えば、結びつけ、溶接又は接着を伴ったワイヤ通し穴である。人工索線14は、Gore-TeX(登録商標)縫合糸材料、又は細いニチノールワイヤで作製されてもよい。この好ましい実施形態は、Gore-TeX(登録商標)を使用し、それは、長さが調節されてしまうと切断が容易であるためである。人工索線14は、約0.1~0.6mmの直径を有する。弁尖アンカー10は、直径で約1~2mmであり、長さで約4~6mm(真っ直ぐな場合)である。
【0240】
弁尖アンカーのピンは、異なる強度及び/又はより速い治癒を達成するために、様々な異なるプロファイルで切断されることができる。弁尖アンカー10は、レーザ切断を用いてチューブ類から切断されるため、異なる形状を製造するのが容易である。当該アンカーのピンは、例えば、真っすぐな縁(最小限の摩擦)又は摩擦を増加させるためのプロファイルを有してもよく、例えば、当該プロファイルは、滑らかな鋸歯、尖った鋸歯又はバーブ付のプロファイル等である。当該アンカーの形状は、処置の要件に基づいて変えることができる。様々なアンカー設計が、外科医が患者の評価に基づいて選択するために、利用されることができる。
【0241】
弁尖アンカーのピンと同様に、乳頭アンカーのピンは、異なる引き抜き強度及び/又はより速い治癒を達成するために、様々な異なる形状で切断されることができる。当該アンカーのピンは、例えば、真っすぐな縁(最小限の摩擦)又は摩擦を増加させるためのプロファイルを有してもよく、例えば、当該プロファイルは、滑らかな鋸歯、尖った鋸歯又はバーブ付のプロファイル等である。当該アンカーの形状は、処置の要件に基づいて変えることができる。様々なアンカー設計が、外科医が患者の評価に基づいて選択するために、利用されることができる。
【0242】
図20図22は、乳頭アンカー9とカテーテルデバイスの索及び切断ピース18との相互作用を示す。切断ピース18は、好適な生体適合性材料で作製され、好ましくはレーザを用いて切断され且つある材料を研削除去することによって鋭利にされる。当該材料は、例えば、ステンレス鋼、チタン又はチタン合金であってもよい。ニチノールも使用することができる。Z字形状のフォーク20は、乳頭アンカー9内で係止リングと係止セグメント28との間の索のための部屋を作るために、係止セグメント28を開いた状態に保持するために使用される。
【0243】
上述したように、乳頭アンカー9が配置され且つ送達デバイスが引っ込められると、索ワイヤ14が索の長さを調節するために使用される。オプショナルなワイヤ係止部(図示せず)は、人工索線14を長さの解析中に、一時的に調節された状態の人工索線14を穏やかにつまむために、引っ張られることができ、ワイヤ索は外側からさらに保持されることになる。正しい長さが達成されると、係止ワイヤ70が引っ張られ、係止ワイヤ70は、ニチノールのZ字形状部20を曲げ/引っ込め、係止セグメント28を解放することによって索を所定位置に係止する。次に、切断ピース18が引っ張られ、切断ピース18のニチノールナイフが、人工索線14と乳頭アンカーホルダ縫合糸72の1つのストランドとに係合する。ここで、乳頭アンカー9は、調節及び切断のデバイス18,20から自由になる。
【0244】
係止セグメント28を開いた状態に保持するためにZ字形状のニチノールフォーク20を使用することにより、縫合糸/索の経路は非常に穏やかな湾曲を得ることができる。当該使用により、縫合糸は、把持部の開口部と一直線にあるデバイスから出ることも可能になる。これは、乳頭アンカーにできるだけ良好な荷重条件を与えるために重要である(索は、最適な保持強度のために正しい位置で乳頭アンカーから出る)。
【0245】
一実施形態では、カッター18は、薄いシートのニチノールから作製され、薄いシートのニチノールは、ブレードが曲面の周りで引っ張られることを可能にする。これにより、カッター18は、比較的長いスライドアクションする構成要素の占有面積を最小限にすることを可能にする(カッター18は、例えば切断面に対して垂直に引っ張られることができ、極めて少ないスペースを占める)。Z字フォーク20は、レーザ切断され且つ熱処理されたニチノールシート部分から製造されることができる。この場合、特定の複数のセクションが、より薄く研削され、それにより、異なる厚さを得ることができ、且つ当該部分に沿って曲げられることができる。シンプルな一時的なワイヤ係止部を追加することが可能である。当該ワイヤ係止部が引っ張られた場合に、当該ワイヤ係止部は、索14に接続されているワイヤを外側で保持する(図示せず)ことに加えて、一時的に調節された長さを維持するために、索14を穏やかに絞ることになる。なお、調節デバイス21内部の支持体は図示されていない。調節「ボックス」の頂部に設けられる面取りは、乳頭アンカー9を回収する必要がある場合に、デバイスが乳頭アンカー9を見つけることを可能にすることになる。
【0246】
一実施形態では、乳頭アンカー9に接続される押し出しチューブは、複数のマーカを含み、当該マーカは、乳頭アンカーと弁尖アンカーとの間の距離におけるおおよその標点として使用されることができる。これは、医師が、最終的な調節を行う前に索をおおよそ調節することを可能にし得るが、それは、最終的な調節が、最終的な索の長さがどの程度の長さであるべきかについてハンチングを通常有するためである。
【0247】
カッター18がその所望の運動範囲を超えるのを防止するために、カッター18は、カッター18の上端及び下端に配置される2つの停止特徴部を備えてもよい。カッター18がハウジング内のその上方位置よりも遠くに移動するのを防止するために、カッターワイヤが、ハウジング及び/又はカッターに通され、それにより、カッター18を上方位置で停止させてもよい。カッターワイヤが破断したとしても、カッター18と、カッターに取り付けられ且つ当該カッターによって動作するワイヤとは、両方がハウジング内に収容されるため、ハウジングの上方端部から逸出することができない。カッター18がハウジング内のその下方位置よりも遠くに移動するのを防止するために、カムが使用されてもよい。
【0248】
カッター18及び調節デバイス21(図示せず)を収容するカテーテルデバイス2の部分のシャフトは、2つの内部空間、即ち、1つの索内部空間と1つのカッター内部空間とを有して構成されることができる。この構造は、索内部空間の周りの編組を用いて補強を受けることができる(シャフトもまた、デバイスを操作するために使用される引張ワイヤを収容するために必要とされるいかなる内部空間を含んでもよく、当該内部空間もまた、編組を用いて補強を受けてもよい)。編組に加えて、Kevlar又は他の同様の材料を主材料として作製されるワイヤが、シャフトの長さに沿って延びる当該構造に実装され、それにより、デバイス2の引張強度を増加させてもよい。追加として又は代わりとして、複合材チューブが、内部空間の周りに配置されてもよい。シャフトの構成要素及びチューブ類は、十分な曲がりを可能にするために、(例えば、PebaXリフローによって)PebaX等の軟質ポリマーに埋め込まれることもできる。複合材チューブはまた、カッターワイヤの作動中にチューブが軟質ポリマーから外に引きはがされるのを防ぐために、遠位端において固定されてもよい。複合材チューブは、例えば、フラットリボンコイル、ステンレス鋼のハイポチューブのリング又はステンレス鋼のカラーを用いて、遠位端において固定されてもよい。
【0249】
索内部空間の周りの編組は、レーザカットハイポチューブを備えてもよく、当該ハイポチューブは、シャフトの構造の引張強度及び圧縮強度を増加させる。レーザカットハイポチューブは、異なるセクションが異なる曲がりパターンを有することでシャフトの所望の動きに適合するように、「曲がりのあつらえ」を受けることができる。レーザカットハイポチューブはまた、カッター18のヘッド上に直接溶接されることもできる。カッターヘッドとレーザカットハイポチューブとの間の強い接合は、再調節が所望される場合、乳頭アンカーのより信頼性の高い回収を可能にする。編組された複合材チューブは、ワイヤ内部空間を形成するために、レーザカットハイポチューブの外側に配置されてもよい。
【0250】
場合によっては、元々ある索がデバイスにとって問題となり得る。既存の索の1つが、新たな人工索線14の出口のために設けられる穴内に巻き込まれると、汚損の危険性が存在する。この危険性を排除する1つの方法は、一方向の索出口を有することであり、それにより、人工索線14は、デバイスから外へ進むことしかできず、デバイスの中に進むことができないが、この特徴は、本質的ではない。
【0251】
乳頭ハウジング8の内側には、乳頭アンカー9のピンを保持し且つ乳頭アンカー9が回動するのを防止するために、小さな切り込みノッチが壁部にあり、それにより、ピンは、新たな索14のための開口部の中で外側へ畳まれることができる。
【0252】
上述したように、アンカーの1つの形態は、グラップルフック形状である。弁尖アンカー10についての固有の利点を有する別の可能なものは、細長の直線状本体又は細長の管状形態等の細長の形状を有するアンカーである。このようなアンカー10の例が図23図28に示される。細長のアンカー10は、上述したグラップルフック形状のアンカー10の代わりに使用されることができ、これ故、例えば、カテーテルデバイスにおいて使用されることができ、図1図22に示すように乳頭アンカーと対にすることができる。
【0253】
図23図26は、弁尖アンカー10として使用される場合の細長のアンカー10の1つの有利な形態を示す。図23図26の弁尖アンカー10は、図25及び図26に示される、身体組織内に配置するための畳まれていない形態と、図23及び図24に示される、弁尖アンカー10の展開前に使用するための畳まれた形態とを有する。畳まれていない形態は、U字形状であり、且つ、上述の弁尖アンカーの展開機構と同様の機構を使用する展開の前に、弁尖アンカー10をアンカーチューブ38内に配置することを許容する。これ故、本例の実施には、グラスピングデバイス50を介して弁尖アンカー10を掴むエジェクタユニット36が使用され、エジェクタ機構36はまた、縫合糸押圧体(線押圧体)58も含む。弁尖アンカー10は人工索線14に取り付けられ、今度は、人工索線14が、上述のような乳頭アンカーに取り付けられることができる。弁尖アンカーの展開機構の機能及び構造は、当該アンカーが図示されるような異なる形態を有することを除いて、概して上述の通りである。
【0254】
細長の弁尖アンカー10は、図23及び図24に示すようにU字形状を有する畳まれた形態に弾性的変形されることができ、この状態において、図23は、弁尖アンカーチューブ38を含む断面を示し、図24は、弁尖アンカーチューブ38が図から省略された状態の畳まれた形態を示す。細長の弁尖アンカー10は、畳まれた形態でU字形状のアームを形成する2つのピン82を含む。ピン82の各々の端部に尖っている先端84がある。U字形状に畳むことは、人工索線14が取り付けられる場所であるアンカーの中心部80を中心とする。エジェクタユニット36は、上述したものと同様のフック付きアーム50を介して、中心部80の両側で細長の弁尖アンカー10を掴む。細長の弁尖アンカー10は、弁尖アンカーチューブ38の壁から拘束力を加えることによって、U字形状に保持される。細長の弁尖アンカー10は、拘束力が加えられない場合に、畳まれていない形態に戻ることになり、この状態は、細長の弁尖アンカー10が弁尖アンカーチューブ38の端部から外に押し出されてしまうと生じる。図25は、この形態を示しており、この状態において、エジェクタユニット36もまた、細長の弁尖アンカー10を解放するために、その第2形態に移動されている。上述のように、エジェクタユニット36は、上述したような形態及び機能、例えば、図8図12に関連して説明したような形態及び機能を有することができる。畳まれていない形態では、細長の弁尖アンカー10は、細長の形態へと外側へ真っ直ぐに延び、細長の形態では、2つのアンカーピン82は、互いに反対方向に延び、好ましくは平行且つ反対方向に延び、この状態において、1つのピン82が中心部80のいずれかの側部にあり、中心部80では人工索線14が取り付けられる。
【0255】
これ故、細長の弁尖アンカーがその畳まれたU字形状にあり且つ弁尖アンカー展開機構を介して弁尖アンカーチューブ38の端部から外に前進された場合、アンカーピン82の端部84が弁尖12を穿孔し且つ貫通することになる。細長の弁尖アンカー10の中心部80が接近し、次いで、アンカーチューブ38の端部を越えて通過すると、細長の弁尖アンカー10は、図25に示される形状へと外側へ真っ直ぐに延びることになる。これ故、細長の弁尖アンカー10が畳まれていない形態をとる場合、細長の形態は、弁尖12の一方の側部の2つのピン82の外側部分、細長の弁尖アンカー10の中心部80、及び弁尖12の反対の側部の2つのピン82の中心部分と共に、弁尖12に通されることになる。
【0256】
図26は、可能なさらなる有利な特徴を示し、図26では、細長の弁尖アンカー10は、ePTFEのシース86で包囲される。ePFTEのシース86の目的は、治癒中に弁尖アンカー内に及び弁尖アンカーの周囲で組織が成長するのを促進することと、弁尖アンカー10を保護し且つ弁尖アンカー10が折れた場合でも単一のピースとして留まるのを可能にすることとである。シース86は、縫合糸によって弁尖アンカー10の本体に取り付けられる。
【0257】
図23の例では、アンカーは、その幅を横切る湾曲を伴った細長のプレートから形成される。幅を横切る湾曲は、アンカーの剛性を増加し、且つこれによりアンカーが畳まれていない形態に向かって押し戻る力を増加するために、用いられる。アンカーが畳まれると、底部の湾曲は扁平になる。このことは、さらに畳むには比較的小さな力しか必要としないことを意味する。元々ある湾曲は、湾曲が扁平である場合のアンカー材料の弾性ひずみの量に影響を与え、今度は、元々ある湾曲は、アンカーを畳まれていない形態に戻すように付勢する弾性力に影響を与える。典型的な湾曲は、プレートの厚さが0.05~0.5mmの範囲である場合、半径1~5mmの範囲であり得る。湾曲したプレートを得るために、アンカーは、変形され且つ熱処理を受ける平板から形成されてもよい。或いは、湾曲したプレートは、必要な曲率のチューブから切断されたセクションとして提供されることができる。後者のアプローチは、必要とされる曲率を提供するために既存の管状セクションを使用することができるため、より少ない製造工程を含むことができる。
【0258】
代替例では、図27及び28に示すように、細長の弁尖アンカー10は、その中心部80に弱化セクションを有するチューブ状本体から形成されることができ、これにより、チューブの管の弾性的な曲げを可能にする。この細長の弁尖アンカー10は、図23図26の細長の弁尖アンカー10のように、U字形状に畳まれ、細長のほぼ真っ直ぐな形態に広がることができる。細長の弁尖アンカー10が、上述のように弁尖アンカーチューブ38及びエジェクタユニット36を介して展開され得ることは、理解されるであろう。ピン82の尖っている端部84を設けるために、斜めの切断がチューブを横切ってなされ、中空の注射針のものと同様の尖っている端部84を残す。チューブの中心部80における弱化セクションは、例えば図27及び28に示されるように、チューブ内への1つ以上の開口部を切り取ることによって与えられることができる。
【0259】
カテーテルデバイスの可能なさらなる特徴は、図29に示される。この特徴は、スライド索ホルダ88であり、スライド索ホルダ88は、伸縮可撓ジョイント34を通り且つハウジングの遠位部分8内の乳頭アンカー9に至る人工索線14の経路内で、使用されることができる。スライド索ホルダ88は、デバイスの近位端に対する所定位置に固定され、これ故、伸縮可撓ジョイント34が伸びる場合に、近位部分4に対して移動しない。そのとき、スライド索ホルダ88は、ハウジングの遠位部分8に対してスライドする。スライド索ホルダ88は、伸縮可撓ジョイント34内で人工索線14を挟むリスクを低減する。下部の大きくなったセクションに最もよく見られるように、スライド索ホルダ88は、人工索線14を保持するチャネル90を含む。さらに、ハウジングが省略されている右上の図に最もよく見られるように、スライド索ホルダ88は、スライド移動を案内するためのサイドレールを有して形成されるプロファイルを有する。
【0260】
さらに、スライド索ホルダ88は、把持アーム30と共に近位のハウジングセクション4内で移動する可撓ヒンジセクションのような他の任意の可撓ジョイント内で、人工索線14を挟むリスクを低減することができる。縫合糸押し出しデバイスが、ユーザがスライド索ホルダ88のチャネル90から人工索線14を選択的に押し出すことを可能にするように、設けられることができる。その場合、細い線が、チャネル90内の人工索線14の下方に配置されてもよい。この状態において、細い縫合糸が、小さなスライド楔状体に接続され、それにより、スライド楔状体は、引っ張られた場合に、人工索線14をチャネル90から外に押し出すために、チャネル90の内側を移動する。この特徴により、ユーザは、人工索線14をデバイスから解放するポイントを選択することが可能になり、これにより、もつれの危険性がさらに低減される。
【0261】
また、細いワイヤを使用して、弱いポイントに沿って破断すること、又は、スリットを中心にチューブを展開することによって、最初は閉じられているチャネルを裂いて開くことも可能である。このことは、人工索線14が最初は包囲されているが、ワイヤが引っ張られた場合、保護カバーが、開放される、又は、さもなければチャネル90の外面から取り除かれ、そして、人工索線14は、チャネル90から逸出すること、又は縫合糸押し出しデバイスを介して押し出されることが可能になることを意味し得る。
【0262】
図30は、複数の特徴部を有する調節及び切断カテーテル21を乳頭アンカー9と共に配置するための代替的な方法を示す。図示の構成は、線クランプ機構を開ポジションに保持し、乳頭アンカー9を調節カテーテル21に固定し、余分な人工索線14を切断する方法を提供する。
【0263】
内側カム91は、乳頭アンカー係止セグメント28を開ポジションに保持し、即ちスリットが開いた状態で保持することができ、カム91は、有利なことには、複数のタスクを同時に実行する。カム91は、係止セグメント28のスリットを開くことができ、また、乳頭アンカー9を調節カテーテル21に固定することもできる。さらに、切断セクション94が、カム91を開ポジションに保持するカム楔状体95に嵌まり合うことができ、余分な人工索線14を同じ動きで切断することを可能にする。これにより、調節カテーテル21を通って延びるワイヤの必要性が低減する。カム91は、所定位置に保持され、作動時にカムが捩れること又は曲がることを防ぐホルダによって支持される。調節ハウジング92は、複数の突出特徴部又は調節ハウジング92の外周の周りの締まり嵌め部を有してもよい。締まり嵌め部は、デバイスの遠位部分の内側の支持ブラケットと所定位置でスナップ係合する。これにより、調節カテーテル21が、伸縮可撓ジョイント34を伸ばし、次いで、正しい量の逆圧が組織によってカテーテルデバイスの遠位部分8にかけられると、乳頭アンカー9を押し出すことを、調節ハウジング92は可能にする。
【0264】
この例では、乳頭アンカー9の係止セグメント28は、内部カム91を用いて開状態に保持される。カム91は、レストポジション(図30には示されていないが、以下の図41及び図42には同様の構成があることに留意されたい)と、図30に示されるような1つの開放ポジションとを有する。この状態において、開放ポジションにあるカム91と、乳頭アンカー9と係止セグメント28とは、内側に拘束力を加えることによって開状態に保持される。カム91は、その状態移動中、構造的にカム91を支持するハウジング92によって所定位置に保持される。さらに、調節ハウジング92は、線チャネル93と、切断ピース96及びカム楔状体ピース95の組み合わせ体のためのスライドチャネル99とを含む。カム楔状体95がカムの楔状体溝98に係合し且つアンカー係止リング28が開状態に保持される場合、人工索線14は、比較的自由な経路を伴って、線チャネル93に通され、且つ開状態の係止リング28に通されることができる。一旦、切断楔状体96内の取り付け穴100を通って接続されたワイヤ97が引っ張られると、楔状体95は楔状体溝98から係合解除し、カム91は、そのレストポジションに戻り、人工索線14をクランプし、乳頭アンカー9を調節ハウジング92から解放する。カム91の解放中又は解放直後に、切断ナイフ94は人工索線14と係合する。カム91及び切断楔状体96は、厳しい公差の機械加工に適応するために、円筒形状を有してもよい。また、切断エッジの一方又は両方は、平坦又は円形のブレードを取り付けられてもよい。追加の2つの脚部があるフォーク構造(図示せず)もまた、縫合糸14の調節中にアンカーの係止セグメント28が完全な開状態であることを確実にために含まれてもよく、当該フォーク構造は、係止セグメント28を開状態に保持する楔状体96に接続されてもよい。
【0265】
調節ハウジング92は、複数の特徴部又は調節ハウジング92の外周の周りの締まり嵌め部(図示せず)を有してもよく、締まり嵌め部は、デバイスの遠位部分8の特徴部と所定位置でスナップ係合する。これにより、調節カテーテル20が、伸縮可撓ジョイント34を伸ばし、次いで、正しい量の逆圧が組織26によってデバイスの遠位部分8にかけられると、乳頭アンカー9を押し出すことを、調節ハウジング92は可能にする。図30の構成は、所定位置にあるカテーテルデバイスの先の実施形態のいずれとも組み合わせることができ、又は、乳頭アンカー9を保持するための他の構成及び係止リング28を操作するための他の構成とも組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0266】
調節ハウジング92は、係止タブ(図示せず)のための溝(図示せず)を有してもよく、係止タブは、前述のような乳頭アンカー9の早過ぎる放出を防ぐために、所定位置に乳頭アンカー9を保持する。係止機構は、乳頭アンカー9内に係り止まるトルクワイヤに接続されるタブとすることができる。好適な係止機構は、図34図36のデバイスを参照して後述するようなラッチ係合部を含むことができる。
【0267】
図31及び図32において、カテーテルデバイス2の2部分式ハウジングセクションの設計の変形例が示される。図31は、可撓ジョイント34’が角度付けられ且つ把持デバイス6が開状態であるハウジングセクションの側面図である。図32は、索線チャネル90’が見える状態である真っ直ぐな形態の2部分式ハウジングセクションを示す。2部分式ハウジングセクションのこの設計は、デバイスの他の特徴が同じのままである状態で、上述の可撓性を有し且つ伸縮可能であるバージョンの代わりに使用されてもよい。このようなデバイスを使用する単一の処置において、両方のアンカーの埋め込みを確実に完了することが可能であることが見出された。この場合、可撓ジョイント34’は、遠位端の伸長を使用することなく乳頭アンカー9を埋め込むために、遠位端が乳頭筋26に向かって角度を付けられることを可能にする。この変形例はまた、様々な材料を使用することが可能であることも示すが、その理由は、2部分式ハウジングセクション(複数可)及び把持部が、繊維強化PEEK等の複合材料から形成されてもよいからである。このこともまた、上述のようなカテーテルデバイス2のための他の構成に適用される変形例であり得る。このタイプの複合材料は、画像誘導手術中に超音波撮像を介してデバイスのより大きな視認性を与えることができ、この状態において、当該視認性は、図示されるように、複数のディンプル102の使用等の追加の反射光増強特徴部によって任意選択的にさらに増強される。2部分式ハウジングセクションの2つの部分は、ヒンジ要素104によって接合され、ヒンジ要素104は、1つ以上のワイヤを介して作動させられることができる(図46参照)。デバイスを作動する引張ワイヤは、ヒンジ要素の周囲に有利なかたちで巻き付けられ、このことは、引張方向の低い摩擦の遷移をもたらす。デバイスの他の特徴は、把持機構6及びアンカー展開システムのような、上述したものと同様とすることができる。
【0268】
図33は、カテーテルデバイス2の別の例の断面図を示す。把持アーム30は、弁尖アンカー10を展開する準備が整っている閉ポジションで把持ハウジング4と係合しているのが見て取れる。
【0269】
把持アーム30の内側の弁尖アンカーチャネルは、1つ以上の回動防止溝122を備えて製造されてもよく、回動防止溝122は、把持アーム30の弁尖アンカーチャネルの内側に沿って延びる1つ以上のスリット又は溝122の形態である。当該溝122は、好適な係合機構(図示せず)に係合する場合に、展開中の弁尖アンカー10の回動を防ぐのを補助する。この例では、弁尖アンカー10の複数のフックの先端の少なくとも1つが、溝122(複数可)の内側をスライドし、弁尖アンカー10が回動することを防ぐ。非円形の長円形状(図示せず)もまた、弁尖アンカー10の望まれない回動を防ぐために利用され得る。
【0270】
調節カテーテル21が、図33のカテーテルデバイス2を通ってカテーテルデバイス2の遠位端にまで延びている。上述したように、調節カテーテル21は、複数のワイヤ及び/又はロッド60を用いて可撓ジョイント34の伸長を制御することができる。同じワイヤ及び/又はロッド60はまた、展開のために乳頭アンカー9を押し出しもする。上述したように、乳頭アンカー9は、拘束されていない形態で多数のフックを形成する多数のピン62を含み、さらに、乳頭アンカー9は、乳頭アンカー9の壁内に配置される係止セグメント28を含む。乳頭アンカー9は乳頭アンカーハウジング8内に収容される。さらに、乳頭アンカーハウジング8内には、調節ハウジング92が収容される。調節ハウジングは、ピストン110と、アンカーホルダ106と、カム91とを備える。乳頭アンカー9の望まれない展開を防止するために、図34に示すように、ラッチ係合部113を使用する展開係止機構111が、乳頭アンカーハウジング8内に配置されてもよい。展開係止機構111は、ラッチ係合部113及び展開係止ワイヤ112に作用する係止バネを介して作動される。ラッチ係合部113、係止バネ、及び展開係止ワイヤ112は、ニチノール等の好適な弾性的に変形可能な合金から形成されてもよい。ラッチ係合部113は、調節ハウジング92をハウジング8に対して所定位置に係止するために、乳頭アンカーハウジング8の陥凹スロット115と係合される。展開係止ワイヤ112は、ラッチ係合部113を操作するために、調節カテーテル21内に配置されてもよい。展開係止ワイヤ112は、ラッチ係合部113からカテーテルデバイス2の近位端まで延びる。展開係止ワイヤ112は、必要に応じて、展開係止ワイヤとラッチ係合部113との再係合を容易にするのを補助することができる可撓チューブ(図示せず)内に封入されることもできる。
【0271】
図35は、乳頭アンカーハウジング8のない状態の係止ポジションにある展開係止機構111を示す。保持ピン116は、ラッチ係合部113の一端を、乳頭アンカーハウジング8と係合されるように永久的に拘束し、且つ、ラッチ係合部113の枢軸として作用する。展開係止ワイヤ112は、ラッチ係合部113の他端を、アンカーホルダ106の面取りされた面取り空洞114と係合されるように一時的に拘束し、アンカーホルダ106は、乳頭アンカー9の複数のフックと反対の乳頭アンカー9の端部に蓋をする。
【0272】
図36に示されるように、展開係止ワイヤ112は、引き戻され得る。一旦引き戻されると、展開係止ワイヤ112は、アンカーホルダ106の面取り空洞114と係合するようには、ラッチ係合部113をもはや拘束しない。次いで、係止バネは、以下に説明するようにラッチ係合部113を移動させることができる。
【0273】
図36内の拡大図に示されるように、展開係止ワイヤ112からの拘束がない場合、ラッチ係合部113は、アンカーホルダ106の面取り空洞114内で静止しているだけである。調節カテーテル21内の複数のワイヤ及び/又はロッド60からの前進方向の圧力が操作されると、前進方向の圧力がアンカーホルダ106及び乳頭アンカー9に加えられ、このことは、次にアンカーホルダ106をラッチ係合部113から解放する。これは、展開モーション中にラッチ係合部113を偏向させる面取り空洞114の形状を要因として、達成される。有利なことには、カテーテルデバイス2のオペレータが展開係止機構111をアンカーホルダ106と再係合させたい場合、アンカーホルダ106の近位端上の面取り部は、ラッチ係合部113を偏向させることで、面取り空洞114とレストポジションで再係合させることができる。次いで、展開係止ワイヤ112は、ラッチ係合部113と再係合されることができる。従って、展開係止機構111は、乳頭アンカー9の展開を可能にする又は防ぐために、必要に応じて好適に係合及び係合解除され得る。
【0274】
係止展開ワイヤ112は、面取り空洞114に対してラッチ係合部113を拘束するために使用されてもよく、それにより、ラッチ係合部113は、その代わりに非変形のポジションを有し、それにより、ラッチ係合部113は、面取り空洞114内で静止しないことが理解されよう。しかしながら、ラッチ係合部113が静止して開形態にある場合には、再係合される展開係止機構111の能力が失われる可能性がある。
【0275】
図37は、調節ハウジング92が頂部に取り付けられた状態で展開されていない場合の乳頭アンカー9の断面図を示す。調節ハウジング92内には、アンカーホルダ106、ピストン110及びカム91が収容される。ピストン110は、カム91及び乳頭アンカー9を弾性的に変形するように構成されるフォーク楔状部形成部95と、アンカーホルダ106の切断セクション94と組み合わせて索14を切断するように構成される切断楔状部96とを備える。フォーク楔状部は、2つの主要部分を有するとみなすことができる。即ち、フォーク楔状部は、フォーク楔状部95の少なくとも1つの櫛歯がカム91を開くために使用されるカム楔状部と、フォーク楔状部95の少なくとも1つの櫛歯が係止セグメント28を開くために使用されるピストン楔状部とを有するとみなすことができる。ピストン楔状部の尖っている端部は、ピストン楔状部と係止セグメント28とが係合する場合に係止セグメント28を偏向させるのを有利なかたちで補助し、ピストン楔状部とのアンカー9の係合/展開をより容易にする。カム91がフォーク楔状部95によって係合を受けた場合、カム91は乳頭アンカー9の係止機構28を開ポジションに弾性的に変形する。図37に示す形態では、開放係止機構28と、調節ハウジング92内でのピストン110の位置決めとによって、索14は、最小限の摩擦でスライドして通ることが可能になる。索14は、乳頭アンカー9の上方で弁尖アンカー10(図示せず)に取り付けられる。これ故、この形態において、索の長さを容易に調節することができる。ピストン110は、理想的には、引張ワイヤ(図示せず)をピストン110に取り付けることを可能にするピストンワイヤ位置97を特徴とする。引張ワイヤは、理想的には、切断楔状部96及び切断セクション94に近位の経路を通ることなく、(調節カテーテル21内の別個の内部空間の内側で)調節カテーテル21を通って配置される。ピストン引張ワイヤが引っ張られると、ピストン110は、乳頭アンカー9から離れる方向にスライドする。
【0276】
図38は、調節ハウジング92が頂部に取り付けられた状態で展開された場合の乳頭アンカー9の断面図を示す。ピストン110は、展開中に乳頭アンカー9から離れるようにスライド可能に移動する。そうすることにより、ピストンのフォーク楔状部95はもはや、カム91及び係止セグメント28と係合されない。カム91はもはや弾性的に変形せず、カム91及び乳頭アンカー9の係止セグメント28は、それらのレスト/非変形ポジションに戻る。その際、索14は所定位置に係止され、索14の長さはもはや調節可能ではない。同時に、係止機構28がその非変形ポジションに戻ると、切断セクション94及び切断楔状部96が索14を切断する。これ故、1つのモーションにおいて、乳頭アンカー9は展開されることができ、索14が所定位置に好適に取り付けられることができる。ピストン引張ワイヤを切断位置より上方のピストン引張ワイヤ位置97に配置することによって、ピストン引張ワイヤは、同じ作用で切断されることを回避することができ、これ故、もし再調節が必要とされる場合でも、デバイスを完全に操作可能な状態にしておく。
【0277】
ピストン110がその所望の運動範囲を超えないようにするために、ピストン110は、ピストン110の上端及び下端に配置される2つの停止特徴部を搭載してもよい。ピストン110がハウジング92内のその上方位置よりも遠くに移動するのを防ぐために、カッターワイヤ(図示せず)がハウジング及び/又はピストンに通されることでピストン110を上方位置で停止してもよい。カッターワイヤが破断したとしても、ピストン110と、ピストン110に取り付けられ且つ当該ピストンによって動作するワイヤとは、両方がハウジング92内に収容されているため、ハウジング92の上方端部から逸出することができない。ピストン110がハウジング92内のその下方位置よりも遠くに移動するのを防ぐために、カム91がある。
【0278】
図39図42は、調節ハウジング92と乳頭アンカー9との相互作用をより詳細に示す。
【0279】
図39は、乳頭アンカー9のフックが拘束されていない場合の乳頭アンカー9の頂部に取り付けられる調節ハウジング92を示す。調節ハウジング92は、ステンレス鋼のような材料又はCRF PEEKのような複合材料、又は、切断エッジがステンレス鋼であり得るが、構造的な要素が複合材料であり得る組み合わせで、形成されてもよい。ピストン110のフォーク楔状部95(この実施形態では、3つの脚部を備えるが、1つ又は複数の脚部又は櫛歯を備えることができる)は、乳頭アンカー9の係止機構28と係合される。フォーク楔状部95は、係止機構28がその非変形ポジションに戻るのを防ぎ、これ故、係止機構28を通過する索線14の調節を可能にする。切断楔状部96は、フォーク楔状部95に対応する櫛歯の1つに配置される。
【0280】
図40は、乳頭アンカー9を有しない調節ハウジング92を示す。調節ハウジング92は、アンカーホルダ106、ピストン110及びカム91を備える。調節ハウジング92は、調節形態で示され、ピストン110がフォーク楔状部95を介してカム91と係合することでカム91をワイドポジションに弾性的に変形させることによって、示される。図40はまた、アンカーホルダ106の係合部分108も示す。係合部分108は、特定の向きで乳頭アンカーハウジング内に嵌まることで回動が制限されるような形状とされる。
【0281】
図41は、変形ポジションで乳頭アンカー9と係合されるカム91の鳥瞰図である。変形は、ピストン110がカム91とフォーク楔状部95のカム楔状部分を介して係合する結果生じる。カム91の変形は、卵状の形状を表すように乳頭アンカーの係止機構28を拘束する。係止機構28の卵状の形状は、索14が最小限の摩擦で係止機構28を通過することを可能にするだけでなく、乳頭アンカー9が乳頭アンカーハウジング8内に配置される場合に乳頭アンカー9の回動を制限するのに利用できる乳頭アンカー9の形状も生み出す。
【0282】
図42は、非変形ポジションにあるカム91の鳥瞰図である。この形態では、ピストン110はカム91と係合されていない。そのため、カム91は、乳頭アンカー9の係止機構28と係合しない。非変形の場合の係止機構28は、乳頭アンカー9のチューブ状形状にマッチする。
【0283】
図43は、頂部に取り付けられた調節ハウジング92を有する乳頭アンカー9の2つの斜視図と、乳頭ハウジング8の3つの斜視図とを示す。アンカーホルダ106の係合部分108は、複数の斜めに傾斜したエッジを有する卵形状の断面を特徴とする。乳頭アンカー9を乳頭アンカーハウジング8に挿入する間、乳頭アンカーハウジング8の湾曲を含む内部形状は、互いの相補的な湾曲形状のために係合部分108を偏向させる。これ故、乳頭アンカー9は、係止セグメント28の卵状の形状が乳頭アンカーハウジング8の相補的な内部形状と係合することになるように、乳頭アンカー9自体の方向を合わせる。
【0284】
乳頭アンカーハウジング8の内部形状は、乳頭アンカーハウジング8の遠位端から見た図43の中間の斜視図において明確に見ることができる。近位端に向かって、アンカーハウジング106の係合部分と相補的な形状は、係止機構28と相補的な卵状の形状から段階的に変化する。ファネル状の形状が、アンカーハウジング106の係合部分108を偏向させることを補助し、それにより、乳頭アンカーハウジング8内に乳頭アンカー9を挿入するために、正しい向きが容易に達成される。ファネル状部分は、回動移動を大きく制限する乳頭アンカーハウジング8内の対応するスロットとアンカーホルダ106とが係合する前に、比較的大きな回動の位置ずれを修正することを可能にする。
【0285】
係止機構28、アンカーホルダ106の係合部分108及び乳頭アンカーハウジング8の内部形状の特定の形状は、乳頭アンカー9の回動を制限する。乳頭アンカー9が可能である回動を制限することは、乳頭アンカー9を目標の展開位置に適切に位置合わせすることを確実にするのに有利である。さらに、アンカーホルダ106の係合部分108は、アンカーホルダ106をカテーテルデバイス2の遠位部分8内により容易に挿入するのを補助するために、面取りすることを特徴とすることができる。
【0286】
また、乳頭アンカー9の回動を制限することは、索14と、係止展開ワイヤ112と、ピストン引張ワイヤと、乳頭アンカー9を展開するために使用されるワイヤ/ロッド60とのねじれを防ぐことも補助することができる。
【0287】
係止展開ワイヤ112、ピストン引張ワイヤ、及び乳頭アンカー9を展開するために使用されるワイヤ/ロッド60等の多数のワイヤが、カテーテルデバイス2の遠位部分8に配置されて、カテーテルデバイス2の適正な機能性を保証する。しかしながら、カテーテルデバイス2の遠位部分8は、曲がる及び/又は伸びるように作動することができるため、カテーテルデバイス2の様々な構成要素を操作するためにカテーテルデバイス2内で使用されるワイヤ/ロッドの一部又は全てに、弛みが生まれ得る。これにより、カテーテルデバイス2の適正な機能に影響を及ぼす可能性があるワイヤ同士の絡み合いが発生する可能性がある。ワイヤ/ロッドが張った状態を維持することを確実にするために、定張力デバイスが、カテーテルデバイス2内で用いられてもよい。定張力デバイスは、カテーテルデバイス2を操作するために使用されるハンドル内に配置されてもよい。定張力デバイスの一例は、定荷重バネを含むが、これに限定されない。
【0288】
上述のような定張力デバイスは、カテーテルデバイス2の近位部分4に配置されているU字ロッドワイヤ30と共に使用するために実装することもでき、U字ロッドワイヤ30は、カテーテルデバイス2のシャフトの曲がり又は操向に起因する絡み合いの影響を依然として受けやすい。同様に、上述のような定張力デバイスは、調節及び展開の前にカテーテルデバイス2内に人工索14が配置される場合には、人工索14と共に使用するために実装することができる。
【0289】
図44は、ピストン110がカム91と係合される場合の乳頭アンカー9の別の図を示す。係止機構28は、弾性的に変形し且つ乳頭アンカー9の壁から突出する。突出部の卵状の形状は、乳頭アンカーハウジング8内での乳頭アンカー9の回動を制限するために利用される。係合部108の斜めに傾斜した形状も見ることができ、当該形状は、乳頭アンカーハウジング8内に乳頭アンカー9を挿入する場合に確実に正しい向きにするようにアンカーホルダ106の偏向を補助する。また、キー付きジョイント構成120も見られ、キー付きジョイント構成120は、乳頭アンカー9が調節ハウジング92のアンカーホルダ106と係合するときに、乳頭アンカー9をガイドし位置合わせするための構成である。例示的な乳頭アンカー9の円形チューブ形態は、アンカーホルダ106の遠位部分の外側の円筒への同軸上の配置に適合する。乳頭アンカー9における切欠き部は、アンカーホルダ106の突出部とかみ合うことで、キー付きジョイント120をもたらすことができる。切欠き部及び突出部の反対の配置も使用できることが理解されるであろう。
【0290】
図45は、ハウジングの遠位部分8のための可能である有利な特徴のさらなる詳細を示す。この例では、ハウジングは、乳頭アンカーハウジング8内に非円形のはめあい溝118を含み、はめあい溝118は、上述のような係止セグメント28の卵状の形状との係合を可能にするように形成されてもよい。乳頭アンカー9とアンカーハウジング108とのガイド付き係合を可能にするために、ファネル状セクション117が設けられ、それにより、乳頭アンカー9の大まかな位置合わせを容易にする。一旦係合が完了すると、キー溝118は、乳頭アンカー9が乳頭アンカーハウジング8、即ちハウジングの遠位部分8に沿ってさらにスライドされる間、非円形の乳頭アンカー9及び/又はアンカーホルダ106のいかなる回動も防ぐ。図45に最も良く示されている別の特徴は、乳頭アンカーハウジング8の長さに沿って延びる索チャネル124の存在である。このチャネル124は、索線14を配置するためのスペースを割り当てる。索チャネル124は、乳頭アンカーハウジング8の長さに沿うスリットを介して形成されるため、索チャネル124は、乳頭アンカーハウジング8の剛性を減少するようにも作用し、アンカー9が係合/再係合されるときにいくらかの弾性的な変形を可能にする。有利なことには、索チャネル124は、乳頭アンカーハウジング8の壁のうちのより厚いセクション126に配置され、この状態において、このより厚いセクション126は、ハウジング8内の陥凹部の非円形の形状と、この非円形の形状が偏心して配置されるという事象、即ちこの非円形の形状が乳頭アンカーハウジング8の外側形状の中心に対して偏心して配置されるという事象とを要因として、形成されている。
【0291】
図46は、カテーテルデバイス2の可撓ジョイント34’のヒンジ要素104を作動させるためのヒンジ引張ワイヤ204が配置され得る方法を示す。単一のヒンジ引張ワイヤ204が図に示されているが、複数のヒンジ引張ワイヤ204が、可撓ジョイント34’のヒンジ要素104の所望の動作を達成するための利用されることができる。ヒンジ引張ワイヤ204は、カテーテルデバイス2のシャフトを通り、2部分式ハウジングセクションの近位部分4を通り、ヒンジ要素104に至る。ヒンジ要素104は、近位部分4の中心線に対してカテーテルデバイスの遠位部分8の中心線を角度付けするように構成される。上述したように、デバイスを作動させるヒンジ引張ワイヤ204は、ヒンジ要素104の周囲に有益なかたちで巻き付けられてもよく、このことは、引張方向の低摩擦の遷移をもたらす。
【0292】
図46に見られるように、ヒンジ引張ワイヤ204は、カテーテルデバイス2に対して中心から外れており、代わりにカテーテルデバイス2の壁に近接して配置される。これ故、ヒンジ引張ワイヤ204は、デバイス2の前方サイドの内側、即ち、機械的な把持デバイス6が配置されるカテーテルデバイス2のサイドの内側に据わるように経路付けされる。カテーテルデバイス2の遠位部分8に角度を付けるために、ヒンジ引張ワイヤ204が引っ張られる。ヒンジ引張ワイヤ204をデバイス2の前方サイドの内側に配置することによって、カテーテルデバイス2のシャフトもまた、遠位部分8が近位部分8に対して角度を付けられる方向に偏向される。ヒンジ要素104の作動及びデバイス2の偏向は、ヒンジ引張ワイヤ204の操作中における順次又は同時のものであってもよい。例えば、ヒンジ引張ワイヤの操作中、デバイスシャフトは、ヒンジ要素が曲がると同時に偏向してもよく、又は、当該引張ワイヤの操作中、ヒンジ要素が、最初に曲がり、デバイスシャフトが次に偏向してもよい。これ故、有益なことに、デバイス2のシャフトは、デバイス2の遠位部分8が角度をつけられるときに、ヒンジ引張ワイヤ204によって操向されてもよい。さらに、これは、アンカー展開中に遠位部分8が心臓の目的とする壁に対して垂直に配置されることを確実にする補助をする。
【0293】
図47A及び図47Bは、人工索14を弁尖アンカー10に取り付けるために利用され得る例示的な結び目を示す。弁尖アンカー10は、本明細書で説明される弁尖アンカー10の実施形態のいずれによるものであってもよい。特に示されている結び目は、自己係止式であり、即ち、弁尖アンカー10に取り付けられていない人工索14の端部から張力が加えられた場合に安定した結び目が形成される。図に示す例示的な自己係止結び目は、弁尖アンカー10の接合部の引張強度を、従来の結び目を実施する弁尖アンカー10の引張強度と比較して、最大2.5倍の率まで増加することができる。
【0294】
アンカー10の基部に位置する複数のアンカー穴65は、結び目を収容する。アンカー穴65は、人工索14にかなりの量の摩擦を与える多くのねじ切りパターンを可能にする。弁尖アンカー10から与えられる摩擦は、アンカー穴65から外に滑り出るという人工索14の変化を低減する。時間の経過と共にアンカー基部内で組織が内部成長し、それにより、結び目は、結び目の強度を時間の経過とともに向上する。
【0295】
図48A及び図48Bに示されるように、ピストン110のピストン楔状部は、ピストン楔状部が乳頭アンカー9の内壁9’に決して接触しないように構成されてもよい。係止セグメント28が、(例えば、人工索長14の調節のために)開ポジションにあることが要求される場合、ピストン楔状部は、乳頭アンカー壁9’と係合することなく、係止セグメント28と係合する。有利なことには、もしピストン楔状部が乳頭アンカー壁9’と接触したような場合よりも、ピストン楔状部と乳頭アンカー壁9’との間には、より小さい接触表面積しか存在しないため、ピストン110と乳頭アンカー9との間の摩擦が少ない。これ故、アンカーホルダ110からの乳頭アンカーの展開中、ピストン楔状部は、アンカー9と共に移動せず、これにより、ピストン楔状部が所望のかたちで係止セグメント28と係合解除することを確実にする。
【0296】
依然として、図48A及び図48Bに示される実施形態を参照すると、係止セグメント28は、その弾性のため、ピストン楔状部に接触力を加え、当該接触力は、ピストン楔状部が乳頭アンカー壁9’に接触するようにピストン110に移動を促すことができる。この望ましくない力を克服するために、ピストン110は、ピストン110がカンチレバーとして作用してピストン楔状部が乳頭アンカー壁9’に向かって引っ張られるのを防ぐように、アンカーホルダ106内に配置される。ピストン楔状部が、係止セグメント28により加えられる力に応じてピストン110により与えられる片持ち作用の反力によって、係止セグメント28に向かって曲げられないことを確実にするために、ピストン110及びピストン楔状部は、好適な剛性を有する材料で作製されてもよい。容易に理解されるように、図48A及び図48Bに示されるような実施形態のピストン110は、ピストン110と本明細書で説明されるピストン110の特徴とに関する実施形態のうちの任意の他の実施形態と適合性がある。
【0297】
本明細書に記載されるように、ワイヤ、ロッド及び/又は縫合糸は、カテーテルデバイス2内で操作及び/又は調節されるために引っ張られる必要があり得る。これらの構成要素が実行するように設計される操作のいくつかは、制限された力を必要とし得る。このような力がこれらの構成要素に加えられている時をデバイス2のオペレータが知るのを補助するために、クラッチが利用されることができ、当該クラッチは、一定のトルクが解放される場合に解除される。種々の実施形態において、クラッチが係合している時をオペレータが知ることを可能にすることは有益である。それ故、クラッチがラチェット式クラッチである場合、クラッチが可聴なクリックを生成することによってクラッチが係合されていることを、操作者が通知されることができる。本発明で実装することができるクラッチのタイプは、ラチェット式クラッチに限定されず、実際には、本明細書に記載の実施形態に適合する任意の既知のクラッチとすることができる。例えば、Оリングスクイズ式クラッチが実装されることができる。この例では、当該クラッチは、一定のトルクに達すると解除され、それにより、当該クラッチが係合されるワイヤ、ロッド及び/又は縫合糸にさらなる力が加えられるのを防ぐ。
【0298】
図49A及び図49Bに示されるように、アンカー9は、畳まれた形態である。図49Aは、アンカー9の中心軸に向かって湾曲していない複数の先端部160を有するアンカー9を示すが、図49Bは、アンカー9の中心軸に向かって湾曲している複数の先端部160’を有するアンカー9を示す。図50A及び図50Bは、アンカー9の複数のフック62が畳まれていない形態でどのように形づくられるかを示す。図50Aは、図49Aのような先端部160の畳まれていない形態を示し、一方、図50Bは、図49Bのように湾曲した先端部160’の畳まれていない形態を示す。
【0299】
図49Bに示すアンカー9に焦点を合わせると、アンカー9は、アンカーの基部109からアンカーの遠位端まで延びる複数のフック62を備える。各フック62の端部は先端部160’を含む。フックはまた、当該フックの長さに沿って延びる開口部64を有し得る。先端部160’は、アンカー9の中心軸に向かって湾曲しており、それにより、アンカー9が、コンテナデバイス(例えば、上述のようなカテーテルデバイス2の遠位部分4)によって、その畳まれた形態で拘束力によって拘束される場合、図49Bの先端部64は、それらの尖っている端でコンテナデバイスの内壁に接触しない。その代わりに、コンテナチューブとアンカー9との間の接触ポイントは、先端部160’及び/又はフック62との間の接線接触であり、それにより、より滑らかな部分がアンカー9とコンテナデバイスとの間の接触を行う。より滑らかな接触がなされるにつれて、目標の身体組織への埋め込み中、アンカー9をそのハウジングから放出するために必要とされる力はより小さくなる。加えて、先端部160’の内側への湾曲は、先端部160’とコンテナデバイスの内面との間の擦り傷及び/又は引っ掻き傷の発生を防ぐ。これは、次いで、コンテナデバイスが作製される材料の削り屑の生成を防ぐ。この削り屑は、目標の身体組織の周囲の領域に堆積される場合があり、そうでなければ、多量の出血及び/又は脳卒中を生じ得る塞栓症をもたらす場合もある。削り屑の生成は、コンテナデバイスがアンカー9よりも柔らかい材料で作製されている場合に最もよく見られる。例えば、この問題は、コンテナデバイスがCRF PEEKで作製され、アンカー9がニチノール又はステンレス鋼のいずれかで作製される場合に生じる。
【0300】
図49Bにも見られるように、アンカー9の中心軸に向かって背方に湾曲する先端部160’の湾曲は、先端部160が、アンカーが埋め込まれるべき目標の身体組織の表面に垂直であることを確実にするのを補助し得る。これにより、アンカー9を身体組織内に押す力がアンカー9の先端部160’により効率的に伝達されるため、アンカー9を埋め込むのに必要な軸方向の力が最小限に抑えられる。アンカー9を押す力は、アンカーコンテナチューブによって加えられることができ、アンカーコンテナチューブは、上述のように、多数のワイヤ及び/又はロッド60を備える。アンカー9は、他の図面を参照して本明細書に記載されるような機構を介して展開されてもよく、例えば、上述のようなアンカーホルダ106及び/又はピストン110を含む機構を介して展開されてもよい。
【0301】
図49Bに見られる先端部160’の湾曲は垂直であるように示されているが、アンカー9の先端部160’は、アンカーが埋め込まれるべき目標の身体組織の表面に対して斜めに角度が付けられてもよく、即ち、アンカー9の中心軸に向かって湾曲してもよいことが理解されるであろう。これ故、先端部160’の湾曲は、アンカー9が埋め込まれるべき目標の身体組織の表面の法線に対して0~30度の範囲内であってもよい。種々の実施形態では、先端部160’の湾曲の値の範囲は、0~5度、0~10度、0~15度、0~20度、0~25度、又は5~15度をとることができる。
【0302】
アンカー9のフック62及び先端部160’の湾曲は、埋め込み中に目標の身体組織を通してアンカー9を引っ張るのを補助する。この効果は、アンカー9がその畳まれた形態からその畳まれていない形態に広がるときに示される「はね返り」力によって実現される。先端部160’がアンカー9の中心軸に向かう湾曲を表すとき、フック62はアンカー9の展開中に組織を通って引っ張られる。その結果、アンカー9を目標の身体組織に埋め込む間に必要とされる力が低減される。アンカー9の先端部160’が、埋め込みのために身体組織の表面に対する垂直に対して角度をなしていることによって達成される利点の検討は、アンカーを埋め込むために必要とされる力が効果的に低減され得るように考慮されるべきであることが理解される。
【0303】
畳まれた形態(図49Aに示されるような形態)にある場合に中心軸に向かって背方へ湾曲していないフック62を有するアンカー9は、埋め込みの間に大量の軸方向の力がアンカー9に加えられない限り、目標の身体組織内にいかなる特定の距離も突き通すことなく、畳まれていない形態(図50Aに示されるような形態)に即座に曲がって戻る傾向がある。しかしながら、先端部が中心軸に向かって湾曲するように形成されるフックを有するアンカー9(図49B及び図50Bに示されるようなアンカー)は、フック62の先端部160’が畳まれていない形態(図50Bに示されるような形態)に移動するにつれて中心軸から外側に湾曲し始める前に、目標の身体組織内により大きな距離で突き通す傾向があることになる。その理由は、先端部160’の内側への湾曲が、身体組織の最初の突き刺しを内側へ向けさせる及び/又はアンカー9の軸と平行にさせるためである。これ故、減少された軸方向力が、コンテナデバイスからアンカー9に加えられることでアンカー9の初期の突き刺しを生じさせることが必要であり、場合によっては、これは、コンテナデバイスの遠位端が目標の身体組織の表面に接触する限り、アンカー9の展開がアンカー9を組織内に引き込むように作用することに伴う力でなくてもよい。先端部160’の内側への湾曲から生じるアンカー9のはね返り力は、アンカー9のフック62の軌道を容易にし、当軌道は、アンカー9に組織内へより深い湾曲に沿って移動させ、それにより上述のような引張効果を引き起こす。
【0304】
先端部160’の尖っている端とコンテナチューブの内面との間の接触を防ぐ先端部160’の湾曲は、以下のように最もよく説明されることができる。図49Bの畳まれた形態では、フック62は、アンカー9の中心軸に向かって延びる第1湾曲部分を有する。次いで、フック62及び先端部160は、アンカー9の中心軸から離れて延在する第2湾曲部分を有する。最後に、先端部160’がアンカー9の中心軸に向かって背方へ湾曲する第3湾曲部分があり、それにより、先端部160’の尖っている端が、拘束力を加えているコンテナチューブの内面から離れるように角度をつけられる。このように、フック62の湾曲は、少なくとも1つの変曲点を表す。言い換えれば、先端部160及び/又はフック62の湾曲は、反転湾曲、反対の湾曲、又はS字状の湾曲のうちの少なくとも1つとして説明され得る。
【0305】
畳まれていない形態の場合、図50Bに示すように、フック64は、アンカー9の中心軸から離れるように、引っ掛けフック型の形状で延びる。畳まれていない形態では、図50A及び図50Bの円で囲まれた部分を比較することによって分かるように、フックは、少なくとも1つの変曲点を備える湾曲を有し、フックの湾曲方向は先端部160’で反転し、この状態において、当該フックは、図50Aのアンカー9のために使用される代替の湾曲とは異なる形状を有する。
【0306】
図50A及び図50Bにおいても分かるように、図50Bの畳まれていない形態で示されるアンカー9のフック62は、図50Aの畳まれていない形態で示されるアンカー9のフック62よりも、より大きな平面的な広がりをカバーする。先端部160’が展開される場合に先端部160’が上述のように湾曲されることを必要とすることによって、展開されたアンカー9によってカバーされる表面積が増加する。これは、アンカー9によって加えられる力を、より大きな領域にわたるアンカー9が埋め込まれるべき身体組織にわたって広げ、これにより、アンカーの埋め込み中に組織にかかる歪みを低減する。
【0307】
図49A図49B図50A及び図50Bに示されるように、先端部160,160’は、先端部160,160’の最も広い部分がフック62の前述した部分よりも広くなるように形づくられてもよい。組織の再成長が、一旦埋め込みが完了しているアンカー9の周りで発生する場合、組織は、身体組織を通って延びるフック62の周りで再成長し得る。先端部160,160’の最も幅広い部分がフック62の前述した部分よりも幅広であるため、埋め込まれたアンカー9を取り出すためには、より大きな力が必要とされる。これは、アンカー9の埋め込みを有益に強化する。
【0308】
先端部160,160’の形状は、涙滴、葉又は花弁の形状として説明することができる。即ち、先端部160,160’は、アンカー9の埋め込み中に身体組織に係合するための尖っている端を有する全体として卵状の本体を含む。卵状の本体は、好ましくはフック62に隣接し、この状態において、尖っている端はアンカー9の遠位端にある。
【0309】
先端部160,160’の形状は、上述のように図49A、49B、50A及び50Bに示されるが、先端部160,160’は、代わりとして、フック62から先端部160,160’の端まで延在するテーパ部を備えてもよい。
【0310】
図49A図49B図50A及び図50Bには示されていないが、アンカー9は、本明細書で説明されるアンカー9に好適な他の特徴のいずれをも含んでもよい。例えば、開口部64は、図示される開口部64に限定される必要はない。さらに、アンカー9の基部109は、本明細書で説明されるように、係止セグメント28を備えてもよい。
【0311】
図51は、カテーテルデバイス2を操作及び制御するためのデバイスハンドル200と、カテーテルデバイスのための操向可能なイントロデューサ(図示せず)を表す。デバイスハンドル200は、ラック部202を備え、ラック部202の上には、1つ以上のラック移動台206,206’,206”が取り付けられることができる。ラック移動台206,206’,206”は、1つ以上の操作ハンドル220,221,222が取り付けられることができる複数の支持部を提供する。次いで、操作ハンドル220,221,222は、カテーテルデバイス2の引張ワイヤシース224内に収容される1つ以上の引張ワイヤを作動させるために使用され、それにより、上述のようなカテーテルデバイス2の機能を制御する。引張ワイヤシース224は、24フレンチサイズのカテーテル等のカテーテル、又はカテーテルデバイスと共に使用するのに好適な任意の他のサイズとすることができる。引張ワイヤシース224内に配置される複数の引張ワイヤは、引張ワイヤシース224の複数の壁を通って又は引張ワイヤシース224の中心に沿って、引張ワイヤの所望される機能性に対する必要に応じて配置されてもよい。引張ワイヤシース224は、操向可能であってもよく、これ故操縦可能なカテーテルであってもよい。
【0312】
図51に示されるラック部202は、少なくとも2つの支持部が搭載されるベース構造体を備える。第1支持部203aは、ラック部202の遠位端に位置し、一方、第2支持部203bは、ラック部202の近位端に位置する。支持部203a,203bは、レール203cための取付面を提供する。第2支持部203bは、第1支持部203aよりも、ラック部202の表面からより大きく上昇した高さであることが見られるが、レール203cのための取付面を提供するために、様々な支持形状及び構造が利用され得ることは容易に理解されるであろう。レール203cは、ラック移動台206,206’,206”がスライド可能に取り付けられ得る支持構造を提供する。ラック部202の複数の好適な構成がカテーテルデバイス2のデバイスハンドル200に実装され得ることは容易に理解されるであろう。例えば、ラック部202は、3つ以上の支持部203a,203bを含んでもよく、レール203cは、ラック移動台206,206’,206”がレール203cにスライド可能に取り付けられ得る限り、複数の形態をとることができる。
【0313】
図51には3つのラック移動台206,206’,206”が示されるが、任意の数のラック移動台206,206’,206”がデバイスハンドル200において適宜利用されてもよい。ここで、単一のラック移動台206に焦点を当てると、ラック移動台206は、シート状金属の単一のピースから形成される。ラック移動台206は、折り曲げられた形状を含み、この状態において、ラック移動台206の第1部分は、ラック移動台206の第2部分に垂直である。第1ラック部分は、レール203cの平面と平行な平面内に存在してもよく、ラック移動台206をレール203c上にスライド可能に取り付けることを可能にする複数の脚部を備えてもよい。その場合、つまみねじ207が、ラック移動台206をレール203cに締め付け固定するために使用されてもよく、それにより、ラック移動台206がその所望の位置することを防ぐ。これ故、図51に示される送達ハンドル200の組み立て中(及びその逆の分解中)、ラック移動台206,206’,206”は、ラック部202の近位端からレール203c上へと滑り込まされることができる。その後、つまみねじ207,207’,207”は、それぞれの位置でラック移動台206,206’,206”を締め付け固定するために締め付けられる。有利なことに、これにより、ラック移動台206,206’,206”は、いかなる特殊な工具を使用することなくラック部202に取り付けられる及び/又はラック部202から取り外されることが可能になる。次いで、デバイスハンドル200の構成要素は、任意の操作又は処置に続いて、比較的容易に滅菌のために取られることができる。
【0314】
さらに、単一のラック移動台206を参照すると、シート状金属の単一のピースの第2部分は、第1部分に対して垂直であってもよい。第2部分は、ラック移動台206の曲がり部から最も遠い第2部分の端部に、スロットを含んでもよく、当該スロットは、半円形、卵形状、又は、複数の締め付け固定デバイスが取り付けられ得る任意の他の好適な断面のスロットであってもよい。ラック移動台206の第2部分はまた、スロットに隣接して配置されるフランジも含んでもよく、当該フランジは、つまみねじ217を受け入れるように構成される。

締め付け固定デバイスは、複数のワッシャ、Оリング及び/又は締め付け固定具を含んでもよく、複数のワッシャ、Оリング及び/又は締め付け固定具は、それら自体が、引張ワイヤシース224及び操作ハンドル220,221,222の支持をもたらす。ワッシャ、Оリング及び/又は締め付け固定具に加えて又はこれらの代わりに、丸くなった溝を含む複数のディスク216,216’,216”が、引張ワイヤシース224の周りに配置され、且つ、対応するラック移動台206,206’,206”のスロット上に位置決めされてもよい。つまみねじ217,217’,217”は、各ラック移動台206,206’,206”のフランジに通されることで、各ディスク217,217’,217”の回動を拘束し、これ故、必要に応じて引張ワイヤシース224の回動を拘束してもよい。
【0315】
次に、図51に示す操作ハンドル220、221及び222に移ると、複数のスペーサ及びワッシャ、複数のОリング、並びに/又は複数の締め付け固定具は、操作ハンドル220,221,222を、引張ワイヤシース224に沿ったそれらの所望の位置に堅固に保つ。スペーサ及びワッシャ、Оリング、並びに/又は締め付け固定具自体も、引張ワイヤシース224の周りに配置され得る。3つの送達ハンドル220,221,222が、送達ハンドル200に取り付けられて示されているが、カテーテルデバイス2及び関連するイントロデューサの所望の操作を達成するために、任意の数量の送達ハンドル220,221,222が、送達ハンドル200に取り付けられてもよいことが、容易に理解されるであろう。
【0316】
第1ラック移動台206と第2ラック移動台206’との間に取り付けられて示される操作ハンドル220に焦点を当てると、操作ハンドル220は、複数の歯車及び/又はダイヤル226a,226b,226cを含んでもよい。各歯車及び/又はダイヤル226a,226b,226cは、引張ワイヤシース224内に配置される引張ワイヤの作動を制御することができる。操作ハンドル220は、操向可能なイントロデューサの操向動作を制御するために使用され、例えば、歯車及び/又はダイヤル226a,226b,226cのいずれの1つによって作動される引張ワイヤも操向可能なイントロデューサのための操向制御機構又はねじれ制御機構の一部である状態で、使用される。
【0317】
操作ハンドル220,221,222の構成は、ユーザの好みに合うように、所望の処置と整合するように、変更されることができる。例えば、操縦可能なイントロデューサのためのワイヤの制御の代わりに、歯車及び/又はダイヤル226a,226b,226cのいずれの1つによって作動される引張ワイヤも、カテーテルデバイス2のヒンジ要素104を操作する引張ワイヤ204等であってもよいが、これに限定されない。同様に、操作ハンドル221及び222のための歯車、ダイヤル及び他の制御入力部は、カテーテルデバイス2の種々の要素を制御してもよい。1つの構成において、近位の操作ハンドル220は、操縦可能なイントロデューサもカテーテルデバイス2の前進も制御し、中間の操作ハンドル221は、弁尖を掴むこと及び弁尖アンカーを埋め込むことに関連するカテーテルデバイス2の様々な機能を制御し、近位の操作ハンドル222は、人工索14の調節及び/又は切断のような、人工索14の埋め込みに関連するさらなる操作を制御する。さらに、対応するラック移動台206,206’,206”上の操作ハンドル220,221,222の相対位置は、24フレンチサイズ224の遠位端でデバイスの要素を移動させるために変更されてもよく、例えば、近位のラック移動台206”のスライドは、乳頭アンカー9を前進させ、それによって乳頭筋に乳頭アンカー9を埋め込んでもよい。
【0318】
カテーテルデバイスの歯車及び/又はダイヤル226a,226b,226cによって制御される各引張ワイヤに加えられる張力及び/又は偏向の量を示すために、複数のインジケータ227a,227b,227cもまた、操作ハンドル220の外面に配置されてもよい。当該インジケータは、引張ワイヤの現在の挙動/位置決めと共に、引張ワイヤに現在加えられている張力の程度をカテーテルデバイス2の操作者に示すためのフィードバックインジケータとして使用されてもよい。インジケータ227a,227b,227cは、上述の様々なクラッチ構成に加えて及び/又は当該構成の代わりに使用されてもよい。
【0319】
操作ハンドルの機能は、単一の操作ハンドル220に関してのみ説明されているが、本明細書で説明される特徴のいくつか又はすべては、送達ハンドル200のうちの他の操作ハンドル221,222に適用されてもよいことが容易に理解されるであろう。
【0320】
図52A及び図52Bは、カテーテルデバイス2の本体を示す。本体は、近位部分4と遠位部分8とを含み、2つの部分は、ヒンジ要素104で互いに接続される。遠位部分4は、上述したように、そして、先の図に示すように、乳頭アンカー9を収容することができる。ヒンジ要素104は、可撓ジョイントを参照して上述したように、そして、先の図に示すように、動作することができる。ガイドワイヤ1が、カテーテルデバイス2を通って延び、遠位部分8から外に延出する。カテーテルデバイス2の本体は、複合材料、例えば、ガラス繊維強化PEEK、又は炭素繊維強化PEEKで形成されることができる。カテーテルデバイス2の近位部分4は、ジョイントの位置でポリマーをリフローさせることによって、カテーテルデバイス2の操向可能なカテーテルに接合されてもよい。
【0321】
カテーテルデバイス2の近位部分4に焦点を当てると、機械的な把持デバイス6が見られる。機械的な把持デバイス6は、第1把持アーム30及び第2把持アーム32を含み、この状態において、機械的な把持デバイス6は、前述の実施形態のうちの1つに従ったものである。図52Aは、カテーテルデバイス2の本体から離れるように移動された第1把持アーム30及び第2把持アーム32を示す。機械的な把持デバイス6は、第1把持アーム30が第2把持アーム32に出会うように移動するように構成され得る。第1把持アーム30は、2つのアーム30、32の間で接触が行われるまで移動されてもよい。第2把持アーム32が弁尖10の頂部に配置されて弁尖10の運動を抑制するように構成される状態において、第1把持アーム30は、次いで、カテーテルデバイス2の本体の近位部分4内に戻るように回動可能に移動され得る。そのようにすると、第1把持アーム30は、拘束された弁尖10を、それ自体とカテーテルデバイス2の本体との間で掴むことができる。弁尖アンカー10は、上述の実施形態のいずれに従っても、第1把持アーム30内に収容されてもよい。
【0322】
図52A及び図52Bに示すように、第2把持アーム32は、ループ状のワイヤを含む弁尖運動抑制器32であってもよい。当該ワイヤは、好適な弾性材料、例えば、ニチノール又はステンレス鋼で作製され得る。これ故、弁尖運動抑制器32がカテーテルデバイス2の本体内に収容されていない場合には、弁尖運動抑制器32は、非変形の状態となる。弁尖運動抑制器32の弾性は、弁尖運動抑制器32が、心周期中の弁尖10の運動を抑制することを可能にし、一方、第1把持アーム30が、2つのアーム30,32の間で拘束される弁尖10を損傷することなく、弁尖運動抑制器32に接触することを可能にする。弁尖運動抑制器32の弾性は、弁尖運動抑制器32が、第1把持アーム30と接触する状態になるときに図52Bに示すように湾曲することを可能にし、これ故、拘束されるときに弁尖10の損傷をもたらす可能性のある弁尖10のいかなる挟み込みを回避するのに役立つ。
【0323】
弁尖運動抑制器32は、カテーテルデバイス2の内部空間(図示せず)内に収容されてもよい。当該内部空間内に収容される場合、弁尖運動抑制器32は、弾性的に変形した状態を含む。内部空間は、機械的な把持デバイス6の位置に近位である近位部分4の表面に出会うように角度をつける前のカテーテルデバイス2の主軸に対して、平行に延びてもよい。内部空間は、弁尖運動抑制器が図52A及び52Bに示されるように角度が付けられるように、角度が付けられてもよい。
【0324】
ループ状のワイヤ内に形成されるループは、弁尖運動抑制器32がカテーテルデバイス2内に完全に引き込まれるのを防ぐことができる。例えば、内部空間の端部は、近位部分4の表面に位置する、内部空間の開口部を横切って延びるピンを特徴としてもよい。ループ状のワイヤは、ループ状のワイヤがカテーテルデバイス内にスライドして移動された場合にピンと係合してもよく、これにより、弁尖運動抑制器32がカテーテルデバイス2内にさらに引き込まれることを防ぐ。それ故、ループ状のワイヤは、図52A及び52Bに示されるように、近位部分4の外面と同一平面上の位置から、カテーテルデバイス2の本体から離れるポジションに移動し得る。
【0325】
図53A図53B及び図53Cは、操作の様々な段階におけるモデルの僧帽弁である弁尖12と係合する弁尖運動抑制器32を示す。例えば、カテーテルデバイス2は、トップダウンのアプローチ(即ち、左心房から左心室へのアプローチ)からで僧帽弁にアプローチし得る。図53Aに示すように、弁尖運動抑制器32は、その内部空間から外にスライドされ、弁尖12の頂面と係合する。ループは、弁尖12と弁尖運動抑制器32との間に十分な接触があるように、好適な大きな距離にわたって延在する。第1把持アーム30は閉じたままである。次に、図53Bに示すように、第1把持アーム20がカテーテルデバイス2の本体から離れるように外方へ回動される前に、カテーテルデバイス2は僧帽弁を通って下方に移動される。最後に、第1把持アーム30は、弁尖運動抑制器32に向かって移動されてもよく、それにより、弁尖12は、弁尖運動抑制器32と第1把持アーム30との間の接触力を介して機械的な把持デバイス6によってしっかりと拘束される。当該接触はスライド可能な接触であってもよく、それにより、第1把持アーム30は、弁尖10が依然として拘束された状態でカテーテルデバイス2の本体に向かって戻るように回動することができ、その後、弁尖は、機械的な把持デバイス6において、第1把持アーム30とカテーテルデバイス2の本体との間で掴まれる。次いで、弁尖アンカー10(先の図におけるような)は、弁尖12内に展開され且つ埋め込まれることができ、この状態において、弁尖12の運動は、把持の動作の間、抑制される。
【0326】
図53A図53B、及び図53Cは、ループ状のワイヤを含む弁尖運動抑制器32を示すが、弁尖運動抑制器32は、その目的とする機能を達成するために、複数の形状及び/又は構成を備えてもよい。例えば、図54A図54B及び図54Cは、端部が開放されているワイヤ片を含む弁尖運動抑制器32’の代替の実施形態を示し、当該ワイヤの端部は、カテーテルデバイス2の本体の外側に位置する。図54A図54B及び図54Cに示される弁尖運動抑制器32’のアーチを形成する原理は、上述のように、図53A図54B及び図54Cそれぞれに示されるような弁尖運動抑制器32の原理と整合する。
【0327】
単一のワイヤ片を含む弁尖運動抑制器32’が、弁尖運動抑制器32を収容する内部空間内にスライドして戻されるときに、カテーテルデバイス2内に完全に引き込まれることを防ぐために、ワイヤストッパ(図示せず)が、カテーテルデバイス2の本体の外側に位置するワイヤの端部に配置されてもよい。ワイヤストッパは、ワイヤストッパが内部空間内に収容され得ないように、内部空間によって形成される開口部よりも好適に大きい形状である必要があることが理解されるであろう。
【0328】
弁尖運動抑制器32’が内部空間内に引き込まれると、弁尖運動抑制器32’は、その非変形状態からその弾性的な変形状態に弾性的に変形することになる。例えば、ワイヤは、真っ直ぐになってもよく、ワイヤが収容される内部空間の形状を含んでもよい。
【0329】
図54A図54B及び図54Cに示される弁尖運動抑制器32’は、ワイヤの端部に向かう渦巻き形状を含む。渦巻き形状は、弁尖12と係合するためのより大きな表面積をもたらす。加えて、ワイヤの端部は、渦巻き形状の中心に位置してもよい。これにより、ワイヤの端部が取り囲まれ、それにより、ワイヤの端部が、ワイヤが接触する組織を突き刺す及び/又は損傷する可能性が低くなる。渦巻き形状は、ピッグテール形状として記載されてもよい。拘束力が(即ち、内部空間の内壁によって)加えられると、ワイヤは真っ直ぐになり得るが、拘束力が除去されると(即ち、ワイヤが内部空間からの外に移動され、ワイヤの端部がカテーテルデバイスの本体から離れると)、ワイヤは、図示されるように渦巻き形状に巻かれ得る。
【0330】
図55A図55B及び図55Cは、弁尖運動抑制器32’の代替の構成を示し、各構成は、上述の例と同様に実施されることができる。図示するように、弁尖運動抑制器32’は、弁尖12との係合の有効な表面積を増加する複数の曲がり及び/又は湾曲を含むことができる。非変形の状態では、ワイヤ片は、当該ワイヤ片が備えて形成される曲がり及び/又は湾曲を表す。しかしながら、内部空間内に引き込まれると、弾性的なワイヤは変形し且つ真っ直ぐになり、内部空間の構造と相補する形状をとることが理解されるであろう。図54A図55Cに示すように、端部が開放されたワイヤを含む弁尖運動抑制器32’は、弁尖12等の周囲組織をワイヤがつきさす及び/又は損傷する可能性を低減するために、ワイヤの端部に軟質な先端材を備えてもよい。
【0331】
弁尖運動抑制器32,32’のワイヤ構成要素は、心臓への治療介入での使用に容易に利用可能である、ガイドワイヤ等の既製のワイヤであってもよい。よって、カテーテルデバイス2の操作者は、手術中に弁尖12の運動を抑制するのに適切であると思われるワイヤを選択することができる。言い換えれば、同一の所定のサイズの異なるワイヤは、所望に応じて、異なる剛性及び/又は先端構造(即ち、曲がり、湾曲及び/又はループ)で実装されてもよい。例えば、第1ワイヤが所望通りに機能しない場合、類似又は異なる特性を有する第2ワイヤが使用され得る。そのため、弁尖運動抑制器32,32’は、カテーテルデバイス2の内部空間内に格納されなくてもよいが、弁尖12内への弁尖アンカー10の特に困難な挿入中において、格納デバイスから選択され、カテーテルデバイス2のポート内に挿入されてもよい。
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【国際調査報告】