(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】酸症の予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/11 20060101AFI20220117BHJP
A61P 3/12 20060101ALI20220117BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220117BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/203 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20220117BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20220117BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/145 20060101ALI20220117BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220117BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220117BHJP
【FI】
A61K31/11
A61P3/12
A61P3/00
A61P11/00
A61K31/352
A61K31/203
A61K31/55
A61K31/18
A61K31/12
A61K31/4184
A61K33/24
A61K31/136
A61K31/145
A61K31/198
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531387
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 KR2019016720
(87)【国際公開番号】W WO2020111866
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0151767
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0098083
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518189840
【氏名又は名称】ハイムバイオ カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ベ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソ ニョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ギョン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ミン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、セ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジン サム
(72)【発明者】
【氏名】キム、ホン ヨル
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD01
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4C086AA01
4C086AA02
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4C206JA13
4C206JA72
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZC21
(57)【要約】
本発明は、酸症の予防または治療用薬学組成物に関し、前記薬学組成物は、生物体内に蓄積された酸濃度を減少させるのに著しい効果があるので、医学および保健分野において大きく利用されることが期待される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトラール(citral)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、酸症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記薬学組成物は、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記薬学組成物は、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記薬学組成物は、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、請求項3に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記酸症は、代謝酸症、または呼吸酸症である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記代謝酸症は、乳酸酸症である、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項7】
シトラール(citral)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、酸症の予防または改善用食品組成物。
【請求項8】
前記食品組成物は、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
前記食品組成物は、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、請求項8に記載の食品組成物。
【請求項10】
前記食品組成物は、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、請求項9に記載の食品組成物。
【請求項11】
前記酸症は、代謝酸症、または呼吸酸症である、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項12】
前記代謝酸症は、乳酸酸症である、請求項11に記載の食品組成物。
【請求項13】
個体に、シトラール(citral)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む組成物を投与する段階を含む、酸症を予防または治療する方法。
【請求項14】
前記酸症は、代謝酸症、または呼吸酸症である、請求項13に記載の酸症を予防または治療する方法。
【請求項15】
前記代謝酸症は、乳酸酸症である、請求項14に記載の酸症を予防または治療する方法。
【請求項16】
CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む、酸症を予防または治療する方法のための用途の組成物。
【請求項17】
前記酸症は、代謝酸症、または呼吸酸症である、請求項16に記載の酸症を予防または治療する方法のための用途の組成物。
【請求項18】
前記代謝酸症は、乳酸酸症である、請求項17に記載の酸症を予防または治療する方法のための用途の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸症の予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸症とは、正常人の動脈血pH7.4±0.05を基準としてpHがこれより低い状態(水素イオン濃度が高い状態)を意味する。大きく、「呼吸酸症」と、「代謝酸症」とに区分し、代謝酸症の種類には、糖尿病性ケトン酸症、乳酸酸症、またはサリチル酸、メタノール、エチレングリコールなどの毒性物質の中毒などがある。そのうち、乳酸酸症は、体内に多量の乳酸が生産されて蓄積されることで酸塩基平衡が崩れて酸症が発生するもので、乳酸が45mg/dl超過、phが7.25以下の状態と定義する。細胞は、酸素の存在下でブドウ糖を代謝してエネルギーを生産するが、酸素が足りない状態でブドウ糖代謝が起こると乳酸が生成される。したがって、乳酸酸症は、低酸素性ショック、血液量減少、左心室不全などのように体内酸素化が減少した状態で主に発生し、局所的には、薬物・毒素(エタノール・メタノール)による影響や、腫瘍のようにエネルギー代謝が増加した状態でも組織内の乳酸が増加する。乳酸酸症が持続して酸塩基平衡が崩れると、筋肉の弱化、過呼吸、悪心、嘔吐、発汗、または昏睡状態の症状が現れ、ひどい場合は命を失うこともあるので、体内過剰蓄積された乳酸濃度を減少させて酸塩基平衡を維持することが重要である。
【0003】
しかし、乳酸酸症の治療のために酸素を十分に供給する以外に薬剤で乳酸濃度を調節可能な代案がなく、乳酸酸症の予防または治療のための治療剤の開発が要求されるのが現状である。
【0004】
したがって、本発明は、上記のような従来の技術上の問題点を解決するためになされたものであって、酸症の予防または治療用薬学組成物に関する。本発明の薬学組成物は、生物体内に蓄積された酸濃度を減少させるのに著しい効果があるので、医学および保健分野において大きく利用されることが期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来の技術上の問題点を解決するためになされたものであって、酸症の予防または治療用薬学組成物に関する。
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は、以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本願に記載された多様な具体例を図面を参照して記載する。下記の説明において、本発明の完全な理解のために、多様な特異的な詳細事項、例えば、特異的形態、組成物および工程などが記載されている。しかし、特定の具体例は、これらの特異的詳細事項の1つ以上なしに、または他の公知の方法および形態とともに実行されてもよい。他の例において、公知の工程および製造技術は、本発明を不必要にあいまいにしないようにするために、特定の詳細事項として記載されない。「一つの具体例」または「具体例」に対する本明細書全体にわたる参照は具体例と結びつけて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が本発明の一つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる多様な位置において表現された「一つの具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも本発明の同一の具体例を示さない。追加的に、特別な特徴、形態、組成または特性は、一つ以上の具体例においていかなる好適な方法で組み合わされてもよい。
【0007】
明細書において、特別な定義がなければ、本明細書に使われたすべての科学的および技術的な用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0008】
本発明の一具体例において、「酸症」とは、正常人の動脈血pH7.4±0.05を基準としてpHがこれより低い状態(水素イオン濃度が高い状態)を意味する。発生原因によって、肺での不十分な酸素吸収または減少した血流で組織に対する酸素供給が減少した「呼吸酸症」と、酸素の減少とは関係なく血中、または局所的に乳酸の量が増加する「代謝酸症」とに区分する。呼吸酸症を引き起こす原因には、出血によるショック、心臓麻痺、うっ血性心不全、肺浮腫、および激しい貧血などがある。代謝酸症は、酸の負荷やアルカリの損失、または腎臓の酸排泄障害の3つの機序の1つ以上によって発生するが、酸が増加する場合としては、糖尿病性ケトン酸症、乳酸酸症、またはサリチル酸、メタノール、エチレングリコールなどの毒性物質の中毒などがある。
【0009】
本発明の一具体例において、「乳酸酸症」とは、酸症の一種で、体内に多量の乳酸が生産されて蓄積されることで酸塩基平衡が崩れて酸症が発生するもので、乳酸が45mg/dl超過、pH7.45以下の状態と定義する。細胞は、酸素の存在下でブドウ糖を代謝してエネルギーを生産するが、酸素が足りない状態でブドウ糖代謝が起こると乳酸が生成される。したがって、乳酸酸症は、低酸素性ショック、血液量減少、左心室不全などのように体内酸素化が減少した状態で主に発生し、局所的には、薬物・毒素(エタノール・メタノール)による影響や、腫瘍のようにエネルギー代謝が増加した状態でも組織内の乳酸が増加する。乳酸酸症が持続して酸塩基平衡が崩れると、筋肉の弱化、過呼吸、悪心、嘔吐、発汗、または昏睡状態の症状が現れ、ひどい場合は命を失うこともあるので、体内過剰蓄積された乳酸濃度を減少させて酸塩基平衡を維持することが重要である。前記乳酸酸症を引き起こす原因には、肝疾患、腎臓疾患、糖尿病、白血病、後天性免疫欠乏症(AIDS)、糖原蓄積疾患、薬物と毒物、激しい感染(全身的敗血症と脳膜症)、腫瘍、筋ジストロフィーと正常ATPの生産に影響を及ぼす様々な遺伝的代謝およびミトコンドリア疾患、および激しい運動などがある。
【0010】
本発明の一具体例において、「治療」とは、目的とする疾病の緩和または/および改善のために行われる一連の活動を意味する。本発明の目的上、治療は、酸症が発生した状態で酸症の発生原因を除去したり、原因の除去が不可能な場合、発生した酸濃度を減少させて酸症の症状を改善させる活動を含む。
【0011】
本発明の一具体例において、「薬学組成物」とは、特定の目的のために投与される組成物を意味する。本発明の目的上、本発明の薬学組成物は、酸症を予防または治療するものであり、これに関与する化合物および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。また、本発明による薬学組成物は、組成物の総重量に対して、本発明の有効成分を0.1~50重量%含む。本発明の組成物に含まれる担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、および鉱物油が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明の一具体例において、「投与」とは、何らかの適切な方法で患者に本発明の組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限りいかなる一般的な経路を通して投与されてもよい。経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、腔内投与、腹腔内投与、硬膜内投与が行われるが、これに限定されない。本発明において、有効量は、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分および他の成分の種類および含有量、剤形の種類および患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、同時使用される薬物を含めた多様な因子に応じて調節可能である。成人の場合、前記治療用薬学組成物を1回50ml~500mlの量で体内投与可能であり、化合物の場合、0.1ng/kg-10mg/kg、モノクロナール抗体の場合、0.1ng/kg-10mg/kgの用量で投与可能である。投与間隔は、1日1回~12回であってもよいし、1日12回投与の場合には、2時間ごとに1回ずつ投与することができる。また、本発明の薬学組成物は、目的とする癌幹細胞の治療のために、単独または当業界にて公知の他の治療法、例えば、化学療法剤、放射線および手術とともに投与可能である。さらに、本発明の薬学組成物は、免疫反応を増進するために考案された他の治療、例えば、当業界にて周知のようなアジュバントまたはサイトカイン(またはサイトカインをコーディングする核酸)と混合して投与可能である。バイオリスティック(biolistic)伝達または生体外(ex vivo)処理のような他の標準伝達方法が用いられてもよい。生体外処理において、例えば、抗原提示細胞(APCs)、樹状細胞、末梢血液単核球細胞、または骨髄細胞を患者または適当な供与者から得て、本薬学組成物で生体外で活性化された後、その患者に投与される。
【0013】
本発明の一具体例において、「食品組成物」とは、本発明において目的とする適応症の予防または改善のために多様に用いられるものであって、本発明の組成物を有効成分として含む食品組成物は、各種食品類、例えば、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、お菓子、餅、パンなどの形態に製造できる。本発明の食品組成物は、毒性および副作用がほとんどない既存の食品用摂取物から改良されて構成されたものであるので、予防の目的で長期間服用の際にも安心して使用可能である。本発明の組成物が食品組成物に含まれる時、その量は全体重量の0.1~100%の比率で添加することができる。ここで、前記食品組成物が飲料形態に製造される場合、指示された比率で前記食品組成物を含有する以外に特別な制限点はなく、通常の飲料のように、様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。すなわち、天然炭水化物として、ブドウ糖などのモノサッカライド、果糖などのジサッカライド、スクロースなどのポリサッカライド、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールなどを含むことができる。前記香味剤としては、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど)および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)などが挙げられる。その他、本発明の食品組成物は、様々な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用可能である。このような添加剤の比率は、通常、本発明の組成物100重量部あたり0.1~100重量部の範囲から選択されることが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明の一具体例において、シトラール(citral)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む酸症の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
前記薬学組成物は、好ましくは、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含むものである。
【0016】
前記薬学組成物は、さらに好ましくは、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含むものである。
【0017】
また、前記薬学組成物は、さらに好ましくは、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含むものである。
【0018】
前記酸症とは、代謝酸症、または呼吸酸症であることが好ましく、さらに好ましくは、乳酸酸症であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の他の具体例において、シトラール(citral)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む酸症の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0020】
前記食品組成物は、好ましくは、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含むものである。
【0021】
前記食品組成物は、さらに好ましくは、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含むのである。
【0022】
また、前記食品組成物は、さらに好ましくは、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含むものである。
【0023】
前記酸症とは、代謝酸症、または呼吸酸症であることが好ましく、さらに好ましくは、乳酸酸症であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明のさらに他の具体例において、個体に、シトラール(citral)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む組成物を投与する段階を含む酸症を予防または治療する方法を提供する。
【0025】
前記酸症とは、代謝酸症、または呼吸酸症であることが好ましく、さらに好ましくは、乳酸酸症であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明のさらに他の具体例において、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-1-benzopyran-7-yl]oxy]methyl]-benzoic acid、または3-[[[3-[4-[(methylsulfonyl)amino]phenyl]-4-oxo-4H-chromen-7-yl]oxy]methyl]benzoic acid)、シアナミド(cyanamide)、レチノイン酸(retinoic acid)、モリネート(molinate)、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N-acetyl-N-acetoxy-4-chlorobenzenesulfonamide)、フェニルグリオキサール(phenylglyoxal)、ベノミル(benomyl)、シスプラチン(cis-diamminedichloridoplatinum;CDDP)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、ダイジン(daidzin)、パルギリン(pargyline)、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物(phospho(enol)pyruvic acid monosodium salt hydrate)、キヌレン酸(kynurenic acid)、ジエチルアミノベンズアルデヒド(diethylaminobenzaldehyde;DEAB)、ジスルフィラム(disulfiram)、および3-ヒドロキシキヌレニン(3-hydroxy-DL-kynurenine)から構成されたグループより選択されるいずれか1つ以上を有効成分として含む酸症を予防または治療する方法のための用途の組成物を提供する。
【0027】
前記酸症とは、代謝酸症、または呼吸酸症であることが好ましく、さらに好ましくは、乳酸酸症であるが、これに限定されるものではない。
【0028】
以下、前記本発明を段階ごとに詳しく説明する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、酸症の予防または治療用薬学組成物に関し、本発明の薬学組成物は、生物体内に蓄積された酸濃度を減少させるのに著しい効果があるので、医学および保健分野において大きく利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施例による、酸症治療候補物質の酸症減少効果を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明において、スクリーニングした乳酸酸症治療用候補物質の乳酸濃度の減少効果を確認した結果、いずれも乳酸濃度の減少効果があることが明らかになった。より具体的には、同一濃度で処理した陽性対照群(シュウ酸ナトリウム50uM)と比較する時、シトラール、CVT-10216、シアナミド、およびレチノイン酸からなるグループは約5%の乳酸減少効果があり、モリネート、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド、およびフェニルグリオキサールからなるグループは約10%の乳酸減少効果があり、ベノミル、シスプラチン、クロルプロパミド、ダイジン、パルギリン、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物、およびキヌレン酸からなるグループは約15%の乳酸減少効果があり、ジエチルアミノベンズアルデヒド、ジスルフィラム、および3-ヒドロキシキヌレニンからなるグループは約20%の乳酸減少効果があることが明らかになった。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0033】
実施例1:酸症治療用候補物質のスクリーニング
本発明の発明者らは、酸症治療物質を開発するために多様な候補物質をスクリーニングした結果、下記表1の物質を導出した。
【0034】
【0035】
実施例2:酸症治療用候補物質の酸濃度の減少効果の確認
前記表1に記載の候補物質の乳酸濃度の減少効果を確認した。
【0036】
このために、まず、米国細胞株銀行(ATCC)から得たA549癌細胞(adenocarcinomic human alveolar basal epithelial cells;cat.CCL-185)を、10%ウシ胎児血清、および1%抗生-真菌剤が含まれたRPMI1640培養液で37℃、5%CO
2環境で培養し、3日間隔で継代した。乳酸は、低酸素状態(hypoxia)で当該作用が活性化される時に多量生成されるが、癌細胞は、細胞が過剰に密集しており、非常に活発なエネルギー消費活動をするので、乳酸を多量生成させることが知られている。
前記細胞を24ウェルプレートに3×10
5cell/wellの濃度でまき、一晩培養した後に、表1の候補物質それぞれをDMSO(Dimethyl Sulfoxide)に溶解して50uMの濃度で処理し、24時間追加的に培養した。候補物質の陰性対照群には何ら処理せず、陽性対照群としては、従来の乳酸酸症治療剤として知られているシュウ酸ナトリウム(sodium oxamate)を同一濃度(50uM)、または10倍濃度(50mM)で処理した。以後、細胞培養液を、DPBS(Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline)に希釈した希釈液50μlと乳酸アッセイ用反応バッファー(Lactate assay reaction buffer、Promega、Madison、WI、USA)50μlとを混合して、96ウェルプレートに入れて、室温で1時間反応させた後に、分光光度計(Synergy HTX Multi-Reader、BioTek)で発光を測定した。同時に各試料の細胞数を細胞生存率分析キット(Cell Counting Kit-8)で測定し、陰性対照群の細胞数に比べて各試料で同一の細胞数対比の乳酸測定値が比較できるように算出した。すべての実験は3回繰り返して、平均を
図1に示した。
【0037】
実験の結果、程度の差があるだけで、本発明においてスクリーニングした乳酸酸症治療用候補物質はいずれも乳酸濃度の減少効果があることが明らかになった。より具体的には、同一濃度で処理した陽性対照群(シュウ酸ナトリウム50uM)と比較する時、シトラール、CVT-10216、シアナミド、およびレチノイン酸からなるグループは約5%の乳酸減少効果があり、モリネート、N-アセチル-N-アセトキシ-4-クロロベンゼンスルホンアミド、およびフェニルグリオキサールからなるグループは約10%の乳酸減少効果があり、ベノミル、シスプラチン、クロルプロパミド、ダイジン、パルギリン、ホスホ(エノール)ピルビン酸モノナトリウム塩水和物、およびキヌレン酸からなるグループは約15%の乳酸減少効果があり、ジエチルアミノベンズアルデヒド、ジスルフィラム、および3-ヒドロキシキヌレニンからなるグループは約20%の乳酸減少効果があることが明らかになった。
【0038】
以上、本発明の特定の部分を詳細に述べたが、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好ましい実施形態に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されるわけではない点は自明である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付した請求項とその等価物によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
乳酸酸症は、低酸素性ショック、血液量減少、左心室不全などのように体内酸素化が減少した状態で主に発生し、局所的には、薬物・毒素(エタノール・メタノール)による影響や、腫瘍のようにエネルギー代謝が増加した状態でも組織内の乳酸が増加する。乳酸酸症が持続して酸塩基平衡が崩れると、筋肉の弱化、過呼吸、悪心、嘔吐、発汗、または昏睡状態の症状が現れ、ひどい場合は命を失うこともあるので、体内過剰蓄積された乳酸濃度を減少させて酸塩基平衡を維持することが重要である。
【0040】
本発明の薬学組成物は、生物体内に蓄積された酸濃度を減少させるのに著しい効果があるので、医学および保健分野において大きく利用されることが期待される。
【国際調査報告】