(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】人の眼に画像を投影するための光結合装置および方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220121BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20220121BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/32
G02B5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528956
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2019077435
(87)【国際公開番号】W WO2020104097
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】102018220034.3
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ピラード,ゲール
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA45
2H249AA02
2H249AA12
2H249AA60
2H249CA05
2H249CA15
2H249CA22
(57)【要約】
本発明は、照射装置(2)から人の眼(4)に画像を投影するための光結合装置(3)であって、互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの層(3a,3b)を備え、少なくとも2つの層(3a,3b)は眼(4)までの距離が異なっており、それぞれの層(3a,3b)が少なくとも部分的に反射特性をもつように構成されており、少なくともいずれか1つの層(3a)により、少なくとも1つの層(3a)における反射によって少なくとも1つの反射された第1の部分ビーム(100c,101c,102c)が提供され、少なくとも2つの層(3a,3b)の第2の層(3a,3b)よりも眼(4)までの距離が短い少なくとも2つの層(3a,3b)の第1の層(3a)が部分的に透過特性をもつように構成されており、これにより、入射ビーム(100,101,102a)から少なくとも1つの第2の部分ビーム(100a,101a,102a)が形成され、少なくとも1つの第2の部分ビーム(100a,101a,102a)が第1の角度(202’,203’,204’)で透過され、後方に位置する第2の層(3b)によって、反射された第2の部分ビーム(100b,101b,102b)として少なくとも部分的に反射され、反射された第1および第2の部分ビーム(100c,101c,102c;100b,101b,102b)によって、それぞれ異なる複数のアイボックス(EB1,EB2)の位置(10,11)が眼(4)の瞳孔(4a)に提供される光結合装置(3)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射装置(2)から人の眼(4)に画像を投影するための光結合装置(3)であって、
互いに間隔(50)をおいて配置された少なくとも2つの層(3a,3b)を備え、
前記少なくとも2つの層(3a,3b)は眼(4)までの距離が異なっており、
それぞれの層(3a,3b)が少なくとも部分的に反射特性をもつように構成されており、少なくともいずれか1つの層(3a)により、当該少なくとも1つの層(3a)における反射によって少なくとも1つの反射された第1の部分ビーム(100c,101c,102c)が提供され、
少なくとも2つの層(3a,3b)の第2の層(3a,3b)よりも眼(4)までの距離が短い少なくとも2つの層(3a,3b)の第1の層(3a)が部分的に透過特性をもつように構成されており、これにより、入射ビーム(100,101,102)から少なくとも1つの第2の部分ビーム(100a,101a,102a)が形成され、少なくとも1つの第2の部分ビーム(100a,101a,102a)が第1の角度(202’,203’,204’)で透過され、後方に位置する第2の層(3b)によって、反射された第2の部分ビーム(100b,101b,102b)として少なくとも部分的に反射され、反射された第1および第2の部分ビーム(100c,101c,102c;100b,101b,102b)によって、複数のアイボックス(EB1,EB2)のそれぞれ異なる位置(10,11)が眼(4)の瞳孔(4a)に提供される、光結合装置(3)。
【請求項2】
請求項1に記載の光結合装置であって、少なくとも2つの前記層(3a,3b)が、前記光結合装置(3)に入射する前記ビーム(100,101,102)のエネルギーを、反射された異なる第1および第2の部分ビーム(100c,101c,102c;100b,101b,102b)に一様に分割するように構成されている、光結合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光結合装置であって、第1の層(3a)が、複数の第2の部分ビーム(100a1,100a2,100a3,100b1,100b2,100b3)を形成するように構成されており、さらなる第2の部分ビーム(100a1,100a3)のうちの1つの第2のビーム(100a1,100a3)が、前記第1の角度(202’,203’,204’)に関して角度差(60)をもって透過される、光結合装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光結合装置であって、前記第1の層(3a)が、垂直方向における少なくとも1つのさらなる前記第2の部分ビーム(100a1,100a3)の前記角度差(60)を提供するように構成されている、光結合装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光結合装置であって、さらなる前記第2の部分ビーム(100a1,100a3,100b1,100b3)の総数が偶数である、光結合装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の光結合装置であって、前記第1の角度(202’,203’,204’)が、前記光結合装置(3)に入射する前記ビーム(100,101,102)の入射角(202,203,204)以下である、光結合装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の光結合装置であって、
前記光結合装置(3)が、反射された第1および第2の部分ビーム(100c,101c,102c;100b,101b,102b;400,401,402,403,404,405,406)の奇数の総数を提供するように構成され、特に総数が7であり、反射された第1および第2の部分ビーム(100c,101c,102c;100b,101b,102b;400,401,402,403,404,405,406)のうちの少なくとも1つの部分ビーム(400)が、瞳孔(4a)の中心に配置されたアイボックス(EB0)の位置を提供する、光結合装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光結合装置であって、反射されたさらなる前記第1および第2の部分ビーム(401,402,403,404,405,406)が、前記瞳孔(4a)の縁部に広範囲に配置された複数のアイボックス(EB1,EB2,EB3,EB4,EB5,EB6)の位置を提供する、光結合装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光結合装置であって、前記瞳孔(4a)の縁部における前記アイボックス(EB1,EB2,EB3,EB4,EB5,EB6)の位置が、対称的に、特に均等に分配して配置されている、光結合装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の光結合装置であって、少なくとも1つの前記層(3a,3b)が、少なくとも1つのホログラムおよび/または回折素子を含む、光結合装置。
【請求項11】
人の眼に画像を投影するための投影システム(1)であって、照射装置(2)、特にレーザスキャナと、請求項1から10までのいずれか1項に記載の光結合装置(3)とを備える投影システム(1)。
【請求項12】
人の眼(4)に画像を投影する方法であって、
互いに間隔(50)をおいて配置された少なくとも2つの層(3a,3b)の第1の層(3a)に投影されるべき画像のために入射ビーム(100,101,102)を照射するステップ(S1)であって、少なくとも2つの層(3a,3b)は眼(4)までの距離が異なるステップ(S1)と、
眼(4)までの距離がより短い第1の層(3a)に入射ビーム(100,101,102)を部分的に反射させるステップ(S2)であって、反射された少なくとも1つの第1の部分ビーム(100c,101c,102c)を提供するステップ(S2)と、
入射ビーム(100,101,102)を第1の角度(202’,203’,204’)で第1の層(3a)を通って部分的に透過させるステップ(S3)であって、少なくとも1つの第2の部分ビーム(100a,101a,102a)を提供するステップ(S3)と、
反射された第2の部分ビーム(100b,101b,102b)として、少なくとも1つの第2の部分ビーム(100a,101a,102a)を第2の層(3b)で反射するステップ(S4)であって、反射された第1の部分ビームおよび第2の部分ビーム(100c,101c,102c;100b,101b,102b)によって、眼(4)の瞳孔(4a)に複数のアイボックス(EB1,EB2)の異なる位置(10,11)を提供するステップ(S4)とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の眼に画像を投影するための光結合装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、人の眼に画像を投影する方法に関する。
【0003】
本発明は、一般に、任意の光結合装置に適用可能であるが、本発明は、頭部で支持される結合システム、例えば、拡張現実を表示するための眼鏡に関して説明するものである。
【背景技術】
【0004】
拡張現実を表示するためのシステムは、実像を虚像と重ね合わせる。このようなシステムは、例えば、自動車産業の分野においてはヘッドアップディスプレイとして知られており、またはコンピュータアプリケーションの分野においても「スマートメガネ」として知られており、周辺に対して代替的または付加的に、人の眼に画像を投影することができる。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0362734号明細書により、レーザスキャナシステムによってユーザの眼の瞳孔を通して網膜に画像が直接に投影されるシステムが知られている。このために、ユーザの瞳孔に光を偏向させるホログラフィック結合素子が使用される。
【0006】
国際公開第2017/0117991号パンフレットにより、結合素子を有するヘッドアップディスプレイが知られており、この結合素子は表示ユニットの画像を観察者に向けるものである。このために、結合素子は複数のホログラフィック層を有し、それぞれの層は干渉パターンを有する。これらのホログラフィック層は、スイッチオンまたはスイッチオフできるように、切換可能に構成することができる。
【0007】
ドイツ特許出願公開10201422489号明細書により、結合素子を有するヘッドアップディスプレイシステムも知られており、この結合素子は観察位置に光を向けることができる。この結合素子は、1つ以上のホログラム、特に多重化ホログラムを有することができる。ホログラムは、円板状に構成され、視線方向に前後に配置することができ、それぞれのホログラムは、アイボックスを有する部分を定めるものである。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、本発明は、照射装置から人の眼に画像を投影するための光結合装置を提供し、この光結合装置は、互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの層を備え、これらの少なくとも2つの層は眼までの距離が異なっており、それぞれの層は少なくとも部分的に反射特性をもつように構成されており、少なくともいずれか1つの層により、少なくとも1つの層における反射によって少なくとも1つの反射された第1の部分ビームが提供され、少なくとも2つの層の第2の層よりも眼までの距離が短い少なくとも2つの層の第1の層が部分的に透過特性をもつように構成されており、これにより、入射ビームから少なくとも1つの第2の部分ビームが形成され、少なくとも1つの第2の部分ビームが第1の角度で透過され、後方に位置する第2の層によって、反射された第2の部分ビームとして少なくとも部分的に反射され、反射された第1および第2の部分ビームによって、複数のアイボックスのそれぞれ異なる位置が眼の瞳孔に提供される。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、照射装置、特にレーザスキャナと、請求項1から10までのいずれか1項に記載の光結合装置とを備える、人の眼に画像を投影するための投影システムを提供する。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、人の眼に画像を投影する方法であって、
互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つの層の第1の層に投影されるべき画像のために入射ビームを入射させるステップであって、少なくとも2つの層は眼までの距離が異なるステップと、
眼までの距離がより短い第1の層に入射ビームを部分的に反射させるステップであって、反射された少なくとも1つの第1の部分ビームを提供するステップと、
第1の角度で入射ビームを第1の層を通って部分的に透過させるステップであって、少なくとも1つの第2の部分ビームを提供するステップと、
反射された第2の部分ビームとして、少なくとも1つの第2の部分ビームを第2の層で反射するステップであって、反射された第1の部分ビームおよび第2の部分ビームによって眼の瞳孔に複数のアイボックスの異なる位置を提供するステップと
を含む、人の眼に画像を投影するための方法を提供する。
【0011】
第2の部分ビームに関する用語「第1の角度」は、平面、この場合には層の法線に対する第2の部分ビームの角度として理解されるべきである。例えば、入射ビームが角度に関して変化せずに第2の部分ビームとして層を透過する場合、層に入射するビームの入射角および第1の角度は同じである。
【0012】
「アイボックス」との用語は、特に、人の少なくとも1つの眼が投影画像を完全に見ることができる3次元空間を意味すると理解される。言い換えれば、「アイボックス」とは、人が光結合装置を用いて投影システムの機能を利用もしくは認識することができる空間領域である。
【0013】
このようにして達成される利点の1つは、互いに異なる間隔を有する複数のアイボックスをユーザの瞳孔に簡単に生成することができ、これにより、ユーザの眼の動きが考慮され、ユーザは眼を動かした場合にも、瞳孔の異なる位置に配置された複数のアイボックスによって鮮明な画像を見る。さらに、複数のアイボックスにより、得られるアイボックスがより大きく、これにより、より高い解像度を有する画像が可能となり、同時にアイボックスが十分に大きいことが利点である。
【0014】
本発明のさらなる特徴、利点、およびさらなる実施形態が、以下に記載され、または記載により開示される。
【0015】
有利な実施形態によれば、少なくとも2つの層は、光結合装置への入射ビームのエネルギーを、反射された異なる第1および第2の部分ビームに一様に分割するように構成されている。これにより、瞳孔の異なる複数のアイボックスにおいて投影画像に異なる輝度が生じることを防止することができる。したがって、異なる複数のアイボックス内の投影画像は、実質的に同じ輝度を有する。
【0016】
さらなる有利な実施形態によれば、第1の層は、複数の第2の部分ビームを形成するように構成されており、さらなる第2の部分ビームのうちの1つの第2の部分ビームは、第1の角度に関して角度差をもって透過される。このことは、入射ビームのうち透過される部分から生じるさらなる第2の部分ビームの角度差により、反射された部分ビームのアイボックスに対してずらされたさらなるアイボックスを眼に簡単に生成できることが利点である。
【0017】
さらなる有利な実施形態によれば、第1の層は、垂直方向における少なくとも1つのさらなる部分ビームの角度差を提供するように構成されている。このようにして、ユーザの瞳孔に少なくとも1つのさらなるアイボックスを生成することができ、このアイボックスは、角度差に応じて、例えば瞳孔の中心に対して垂直方向にずらして配置することができる。アイボックスの横方向のずれは、特に、第2の層の適切な入射角および/または間隔によって提供される。
【0018】
さらなる有利な実施形態によれば、さらなる第2の部分ビームの総数は偶数である。このことは、特に1つ以上のホログラムを含む層の単純な構成または配置を可能にする。なぜならば、これにより、例えば、入射ビームをそれぞれ2つのさらなる第2の部分ビームに対称的に分割することが可能だからである。
【0019】
さらなる有利な実施形態によれば、第1の角度は、光結合装置への入射ビームの入射角以下である。角度が同じである場合、ビームは、特に簡単にそれぞれの層を通って透過することができる。第1の角度が入射ビームの入射角よりも小さく構成される場合、ビームは垂線に向かってさらに透過され、このことは、少なくとも2つの層の間の厚さを低減することを可能にする。
【0020】
さらなる有利な実施形態によれば、光結合装置は、反射された第1および第2の部分ビームの総数が奇数であるように構成されており、特に総数は7であり、反射された第1および第2の部分ビームのうちの少なくとも1つは、瞳孔の中心に配置されたアイボックスの位置を提供する。このようにして達成される利点の1つは、十分な数のアイボックスが可能であり、同時にアイボックスを提供するための層ができるだけ少ないことである。これにより、小型の光結合装置を提供することができる。
【0021】
さらなる有利な実施形態によれば、反射されたさらなる第1および第2の部分ビームは、瞳孔の縁部に広範囲に配置された複数のアイボックスの位置を提供する。このことは、眼が動いた場合に、これまでは縁部にのみ位置していたアイボックスが瞳孔の中心に移動し、眼が動いた場合にも、シャープな画像が実質的に常に利用可能になることが利点である。
【0022】
さらなる有利な実施形態によれば、瞳孔の縁部におけるアイボックスの位置は、対称的に、特に均等に分かれて配置される。このことは、均等な配置では、例えば、入射角に対して同じ角度変化によって入射ビームを対称的に分割することによって瞳孔において垂直な異なる複数のアイボックスが簡単に可能となるので、結合装置の層の単純な配置および構成が可能であることが利点である。
【0023】
さらなる有利な構成によれば、少なくともいずれか1つ層は、少なくとも1つのホログラムおよび/または回折素子を含む。したがって、光結合装置への入射ビームのための光学機能を簡単に提供することができる。「回折素子」との用語は、特に、例えばレーザビームの形態の光ビームを形成するための光学素子として理解されるべきである。回折素子によって、光学格子における光ビームの回折が行われる。
【0024】
本発明のさらなる重要な特徴および利点が、従属請求項、図面、および図面に基づいた関連する図の説明から明らかになる。
【0025】
言うまでもなく、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した特徴および以下にさらに説明する特徴は、それぞれ示した組合せだけでなく、他の組み合わせにおいても、または単独でも使用することもできる。
【0026】
本発明の好ましい構成および実施形態を図面に示し、以下の説明において詳述するが、同じ参照符号は、同じ、または類似の、または機能的に同じ構成要素または素子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態による投影システムを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による投影システムを示す図である。
【
図3】y軸に沿った視線方向からみた本発明の一実施形態による光結合装置を示す図である。
【
図4】x軸に沿った視線方向からみた
図3による光結合装置の部分図である。
【
図5】本発明の一実施形態による光結合装置によって生成された、ユーザの瞳孔の平面におけるアイボックスの配置を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による投影システムを概略的に示す。
【0029】
図1には投影システム1が示されている。投影システム1は、光結合装置3に光を作用させるレーザスキャンシステム2を備える。例として、
図1にはビーム100,101,102が示されており、これらのビームは、異なる角度で光結合装置3に入射する。この場合、光結合装置3は、観察方向に人の眼4に対して異なる間隔をおいて配置された2つの層3a,3bを有する。
【0030】
詳細には、レーザスキャンシステム2は、少なくとも1つの波長の異なる複数の角度で光結合装置3の方向に光ビーム100,101,102を放射する。
図1において、光ビーム101は、垂線に対して角度α(参照符号200)を有する。この場合、ビーム100,102は、それぞれ、中心のビーム101に対して上方もしくは下方へ角度θ/2(参照符号201)だけずらされている。
【0031】
ビーム100,101,102の進路を以下に説明する。レーザスキャンシステム2によって放射されたビーム101は、最初に光結合装置3の第1の層3aに入射し、そこで角度200に相当する角度203で部分的に反射され(反射されたビーム101c)、このビーム101cは、眼4の特定の位置10に垂直に入射する。第1の層3aは、反射特性をもつだけでなく、透過特性をもつようにも構成されている。したがって、第1の層3aは、入射ビーム101の一部(透過されたビーム101a)を透過させる。このビーム101aは、さらなる進路で、光結合装置3の第2の層3bに入射する。そこで、ビーム101aは、角度200と同じ大きさである角度203’で第2の層3bによって完全に反射され、眼4の別の位置11に垂直に入射する。層3a,3bは互いに間隔をおいて配置されているので、2つの位置10,11は、同様に、互いに横方向の間隔300をおいて配置されている。
【0032】
2つのさらなる光ビーム100,102の進路、および関連する角度202,202’,204,204’は類似している。したがって、これらの光ビーム100,102は、一方では第1の層3aによって部分的に反射され(反射されたビーム100c,102c)、他方では第1の層3aによって第2の層3bの方向にさらに透過される(ビーム100a,102a)。次に、これらの光ビーム100,102は第2の層3bで反射され(ビーム100b,102b)、これにより、反射されたビーム100b,102bは位置11に入射し、ビーム100c,102cは位置10に入射する。角度202,202’,203,203’、および204,204’が2つの平行な層3a,3bにそれぞれステップ角を形成するので、角度203’は、他の角度202’および204’と同様に、「第1の角度」に対応する。この場合、ビーム100b,102bもしくは100c,102cは、眼4のそれぞれの位置においてこれらのビームの間で角度205をなし、いわゆる視野を形成する。この視野は、実質的に瞳孔による網膜の走査角度によって決定され、特に、光結合装置3に対するレーザスキャンシステム2の位置に依存する。異なる層3a,3bにおける「クロストーク」、すなわち多重反射は、次に示されるように視野が適宜に制限されることによって防止することができる。
【数1】
【0033】
したがって、角度200が60°であり、角度201が30°である場合、視野205は90°に制限されている。考えられる他の可能性は、第1の層3aが、レーザスキャンシステム2によって放射されるビームの入射点の位置に応じた反射角を提供するように構成されていることである。例えば、第1の層3aへのα-θ/2の入射角によるビーム102は、入射角200によるビームおよび入射角α+θ/2によるビーム100とは異なる光学機能を「見る」ことができる。したがって、光結合装置3によって提供される光学機能は、表面上の異なる複数の位置に対して異なる特性を有する。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態による投影システムを概略的に示す。
【0035】
図2は、実質的に、
図1による投影システム1の簡略化された図を示す。
図1とは異なり、
図2には、レーザスキャンシステム2によって放射される1つのビーム100のみが示されており、このビームは、角度α(参照符号200)で第1の層3aに入射する。この場合、ビーム100は反射され(反射されたビーム100c)、眼4の瞳孔4aの中心にアイボックスEB1を生成する。第1の層3aに入射するレーザスキャンシステム2のビーム100も透過される(ビーム100a)が、単に入射角α200ではなく、角度α
2(参照符号202’)でさらに透過され、したがって、「第1の角度」を形成する。このようにして透過されたビーム100aは、次に、第2の層3bに入射し、この第2の層3bは、透過されたビーム100aを反射し、ビーム100aは、瞳孔4aの縁部に第2のアイボックスEB2を生成もしくは提供する。2つの層3a,3bの間の間隔および瞳孔4a上の2つのアイボックスEB1,EB2の間の間隔300は、以下のように決定することができる。
【数2】
【0036】
瞳孔が3.5mmの直径を有し、角度α(参照符号200)が60°であり、2つのアイボックスEB1、EB2の間の間隔が1.75mmであり、2つの層3a,3bの間に屈折率n2=1.5を有する材料が配置されていると仮定すると、2.475mmの厚さd1が得られる。
【0037】
第2の層3bへの入射角である「第1の角度」が、上記の説明にしたがって、例えば65°まで増大される場合、厚さは、次式にしたがって0.816mmに低減されうる。
【数3】
【0038】
これにより、光結合装置3の設置スペースを低減することができる。
【0039】
図3は、y軸線に沿った視線方向からみた本発明の一実施形態による光結合装置を概略的に示し、
図4は、x軸線に沿った視線方向からみた
図3による光結合装置の部分を示し、
図5は、本発明の一実施形態による光結合装置によって生成された、ユーザの瞳孔の平面におけるアイボックスの配置を示す。
【0040】
図3は、前後に互いに平行に配置された全部で5つの層3a,3b,3c,3d,3eを有する光結合装置3を示す。さらに、レーザスキャンシステム(図示しない)の入射ビーム100も示されている。入射ビーム100は、第1の層3a(反射されたビーム401)で反射され、人の瞳孔(図示しない)に第1のアイボックスEB1を形成するか、もしくはそのようなものを提供する。さらに、第1の層3aは、入射ビーム100が3つの部分ビーム100a1,100a2,100a3を生成するように、入射ビーム100を透過させる。3つの部分ビーム100a1,100a2,100a3のうちの1つの部分ビーム100a2は角度変化なしに透過され、2つの部分ビーム100a1,100a3は異なった垂直方向の向きで第2の層3bの方向に透過される。
【0041】
したがって、第1の層3aによって透過された3つの部分ビーム100a1,100a2,100a3は、さらなる進路において第2の層3bに入射する。この場合、入射した3つのビーム100a1,100a2,100a3のうちの中央のビーム100a2は、角度変化なしにさらに透過され、それぞれの垂直方向差を有する2つのさらなるビーム100a1,100a3は、第2の層3b(反射ビーム402,403)によって反射され、第2および第3のアイボックスEB2、EB3を形成するか、もしくはそのようなものを提供する。
【0042】
3つのビーム100a1,100a2,100a3のうちの中央のビーム100a2は、上述のように、さらに透過され、一方では第3の層3cによって反射され(反射されたビーム400)、これにより、さらなるアイボックスEBOを形成するか、もしくはそのようなものを提供する。第1の層3aと同様に、第3の層3cは、透過された3つのビーム100b1,100b2,100b3を生成し、3つの透過ビーム100b1,100b2,100b3のうちの2つのビーム100b1,100b3は異なる垂直方向の向きを有する。これらの3つのビーム100b1,100b2,100b3は、第2の層3bと同様に機能する第4の層3dに入射する。中央のビーム100b2は、不変の垂直方向の差をもって、第5の層3eの方向にさらに透過される。2つの他のビーム100b1,100b3、すなわち異なった垂直方向の向きを有するビームは、第4の層3dによって反射され(反射されたビーム405,406)、さらなるアイボックスEB5、EB6を生成するか、もしくはそのようなものを提供する。
【0043】
層3dを透過したビーム100b2は最終的に第5の層3eに入射し、第5の層3eによって反射され(反射されたビーム404)、さらなるアイボックスEB4を提供する。
【0044】
図4は、第1の層3aにおける垂直方向のビーム分割を詳細に示す。この場合、2つの層3a,3bの間の間隔50は、アイボックスEB2,EB3の間の所望の垂直方向の間隔301が適宜に提供されるように構成されている。言い換えれば、入射ビーム100は第1の層3aにおいて、第2の層3bの方向にさらに透過されるビーム100a2と、2つのさらなる部分ビーム100a1,100a3とに分割され、これら2つの部分ビームはそれぞれ透過されたビーム100a2の方向から角度60で偏向される。これら2つの部分ビーム100a1,100a3は、第2の層3bによって反射され(反射されたビーム402,403)、2つのアイボックスEB2,EB3を生成する。横方向もしくは垂直方向のそれぞれの間隔300,301は、次のように計算または設定することができる。瞳孔直径が3.5mm、対応する半径4arが1.75mmであり、瞳孔4aの縁部のアイボックスEB1,EB2,EB3が瞳孔中心までそれぞれ60°(角度61)だけオフセットされていると仮定すると、0.875mmの横方向の差(参照符号300)、および1.516mmの垂直方向の差(参照番符号01)が得られる。2つの層3a,3bの間の厚さ50は、横方向の差300および対応する入射角に基づいて計算することができる。例えば、第2の層3bへの65°の入射角が仮定される場合、0.505mmの厚さ50が得られる。垂直方向の差を有する部分ビーム100a1,100a3によって提供されるはずのビーム角度(参照符号60)は、次の式にしたがって計算される。
【数4】
【0045】
レーザスキャンシステム2は、クロストークを防止するために、角度60が垂直方向の走査振幅に対して十分に大きくなるように構成されている。例えば、垂直方向の走査振幅がΩで示される場合、角度60は、ω-Ω/2>Ω/2よりも大きい必要がある。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態による方法のステップを示す。
【0047】
図6は、人の眼に画像を投影する方法のステップを概略的に示す。このプロセスは、以下のステップを含む。
【0048】
第1のステップS1において、互いに間隔をおいて配置されており、眼までの距離が異なる少なくとも2つの層の第1の層に、投影されるべき画像のために入射ビームが照射される。
【0049】
さらなるステップS2において、眼までの距離がより短い第1の層に入射ビームが部分的に反射され、これにより、反射された少なくとも1つの第1の部分ビームが提供される。
【0050】
さらなるステップS3において、入射ビームは第1の角度で第1の層を通って部分的に透過され、これにより、少なくとも1つの第2の部分ビームが提供される。
【0051】
さらなるステップS4において、少なくとも1つの第2の部分ビームは、反射された第2の部分ビームとして第2の層で反射される。
【0052】
反射された第1および第2の部分ビームによって、複数のアイボックスの異なる位置が眼の瞳孔に提供される。
【0053】
要約すると、本発明の少なくとも1つの実施形態は、次の利点のうちの少なくとも1つを有する。
・簡単な構造、
・安価な製造、
・確実な結像、
・広い視野、
・多様な使用分野、特にスマートグラス。
【0054】
好ましい例示的な実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、むしろ多様に変更可能である。
【国際調査報告】