(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】付加製造によって製造された部品を備えるヒーター
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20220124BHJP
A24F 40/70 20200101ALI20220124BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021525064
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2019080907
(87)【国際公開番号】W WO2020108974
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デスナーク シモン
(72)【発明者】
【氏名】ファンクレイネスト ルイ-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ランケル ピーテル
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC12
4B162AC22
4B162AD06
4B162AD23
4B162AE02
(57)【要約】
エアロゾル発生装置(100)用のヒーター(1)を製造する方法であって、方法は、ヒーター本体フレーム(10)および発熱体(20)を備えるヒーター本体を形成することを含み、ヒーター本体は、発熱体(20)が加熱チャンバー(30)を加熱するために適切であるように、エアロゾル発生物品(200)を受容するための加熱チャンバー(30)の境界(31)の少なくとも一部分を画定し、ヒーター本体の少なくとも一部は付加製造によって製造されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置のためのヒーターの製造方法であって、
ヒーター本体フレームおよび発熱体を備えるヒーター本体を形成することであって、前記ヒーター本体が、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の少なくとも一部分を画定し、これによって前記発熱体が前記加熱チャンバーを加熱するために適切である、形成すること、を含み、
前記ヒーター本体フレームの少なくとも一部が、付加製造によって製造されている、方法。
【請求項2】
前記ヒーター本体を形成する前記工程が、付加製造を使用して発熱層を製造することによって前記発熱体を製造することを含み、前記発熱層が、内側空洞壁および空洞開口によって区切られた空洞を画定し、そのため前記エアロゾル発生物品を受容するための前記加熱チャンバーの前記境界の前記部分が前記内側空洞壁および前記空洞開口によって画定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒーター本体を形成する前記工程が、前記内側空洞壁上に熱伝導層を提供することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒーター本体を形成する前記工程が、前記内側空洞壁の反対側にある前記発熱層の側面上に絶縁層を提供することをさらに含む、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒーター本体を形成する前記工程が、付加製造によって前記ヒーター本体フレームの少なくとも一部を製造することと、付加製造によって前記ヒーター本体フレーム上に直接、前記発熱体の少なくとも一部を製造することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒーター本体フレームが、空気吸込み口および空気出口を有する空気チャネルを形成し、前記空気出口が、加熱されたエアロゾルが前記加熱チャンバーを離れることを可能にするように設計されていて、好ましくは前記発熱体が、前記空気チャネル内に提供された、かつ付加製造によって製造された発熱層を備える、請求項1または請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記発熱体が、付加製造によって製造された、かつ前記空気チャネル内に提供された静的加熱構造を備え、好ましくは前記静的加熱構造が、前記空気チャネルの内壁から延びる突出部を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エアロゾル発生物品を受容するための前記加熱チャンバーの前記境界の前記部分がアンダーカット形状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エアロゾル発生装置を製造する方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載のヒーターを製造することと、
前記発熱体と電気的に接触する電源システムを提供することと、
筐体を提供し、かつ前記筐体内に前記ヒーターおよび前記電源システムを配設することと、を含む、方法。
【請求項10】
ヒーター本体フレームおよび発熱体を備えるヒーター本体であって、前記発熱体が前記加熱チャンバーを加熱するのに適切であるように、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の少なくとも一部分を画定するヒーター本体、を備えるヒーターであって、
前記ヒーター本体フレームの少なくとも一部が、付加製造によって製造されている、請求項1~8のいずれか一項に従って製造されたヒーター。
【請求項11】
前記加熱チャンバーの前記境界の前記部分がアンダーカット形状を有する、請求項10に記載のヒーター。
【請求項12】
エアロゾル発生装置であって、
請求項10または請求項11に記載のヒーターと、
前記ヒーターの前記発熱体と電気的に接触する電源システムと、
前記ヒーターおよび前記電源システムが中に配設される筐体と、を備える、エアロゾル発生装置。
【請求項13】
付加製造によって、請求項1~8のいずれか一項に記載の前記ヒーター本体フレームの少なくとも一部を製造する前記工程を実行するよう適合された付加製造装置。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の前記ヒーター本体フレームの少なくとも一部を付加製造によって製造する前記工程を、請求項13に記載の装置に実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置用のヒーターに関し、またこうしたヒーターの製造方法にも関する。より具体的に、本発明は外部ヒーターの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
外部ヒーターは、たばこ物品などのエアロゾル発生物品が中に挿入される加熱チャンバーを備える。ヒーターが熱を発生し、それ故に加熱チャンバーを加熱する時、エアロゾル発生物品は、加熱されたエアロゾルが放出されて消費者によって吸入されることができる温度に加熱される。エアロゾルには芳香、風味、ニコチン、および他の望ましい要素が含有されていてもよい。
【0003】
これらのヒーターはエアロゾル発生装置で使用される。この装置は通常、消費者のポケットまたはバッグの中に収まるようにコンパクトであり、またこの装置はヒーターに電力を提供するために、電池などの電源を備えてもよい。これ故に、ヒーターは、エアロゾル発生装置内に収容されるように効率的に設計されなければならず、その一方で、必要とされる熱を可能な限り長い時間の間、好ましくは電源の単一の充電でエアロゾル発生物品に提供することができなければならない。
【0004】
しかしながら、効率的なヒーターの設計および製造は非常に複雑である可能性があり、これはヒーターおよびエアロゾル発生装置のコストを増加させる。その上、ヒーターの所与のモデルが市販された後、新しいタイプのヒーターを提供することによって想定されるコストとリスクは通常、より長期間にわたって市場に残る、効率が劣るモデルをもたらすことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、必ずしも製造コストの増加につながることなく、ヒーターを作製するために選べる設計、形状、材料などにおいて柔軟性がより高い外部ヒーターの製造方法を提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によると、上記の欠点を最小限にすることを目指すエアロゾル発生装置用のヒーターを製造する方法が提供されている。
【0007】
この方法は、加熱本体フレームおよび発熱体を備えるヒーター本体を形成することを含み、ヒーター本体は、発熱体が加熱チャンバーを加熱するために適切であるように、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の少なくとも一部分を画定し、ヒーター本体の少なくとも一部は付加製造によって製造されている。
【0008】
「付加製造」という表現は、コンピュータ制御下で三次元アイテムの層を層ごとに形成するために材料を逐次的に堆積させるために採用される製造技法を指すために使用される。この表現は典型的に、インクジェットプリンターがインクを置くのとほぼ同一のやり方で材料の一連の層を置くプロセスである三次元印刷(以下3D印刷と称する)を指すために特に使用され、ここではプリントヘッドの複数の通過がアイテムを構築する。しかしながら、押出成形および焼結に基づくプロセスを含む、より幅広い様々な修正された付加製造プロセスが使用可能であることが理解されるべきであり、また「付加製造」という表現は、本出願において付加製造が3D印刷の形態であることが特に好ましいとしても、当該の代替技法を包含するとも解釈されるべきである。
【0009】
付加製造によって製造された発熱体の部品またはヒーター本体フレームの部品は、複雑な形状を有する場合がある。
【0010】
付加製造によって製造された発熱体の部品またはヒーター本体フレームの部品は、製造コストを低く保つ一方で、幅広い様々な材料で作製されてもよい。
【0011】
付加製造を使用してヒーター本体の少なくとも一部を製造することは、有利なことに、ヒーターとエアロゾル発生物品の間の熱の伝達が最適化されている、より効率的なヒーターの形成を容易にする場合がある。付加製造を使用することはまた有利なことに、ヒーター本体の少なくとも一部の製造コストを低く保つ場合がある。同様に、本発明の第一の態様の方法は、付加製造で設計変更をより簡単に行うことができるため、他の方法より汎用性が高い場合がある。例えば、新しい専用ツーリングまたは他の製造の再構成は、通常必要ない。これは、ツーリングの大幅な再構築または他の製造の構成を心配することなく、ある特定のヒーター設計の限定的なリリースを可能にする場合がある。結果として生じるヒーターはまた、よりコンパクトであることができ、また様々な装飾的特徴を備えることができる。
【0012】
ヒーター本体を形成する工程は、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の一部分が、内側空洞壁および空洞開口によって画定されるように、付加製造を使用して発熱層を製造することによって発熱体を製造することを含んでもよく、発熱層は内側空洞壁および空洞開口によって区切られる。
【0013】
この構成は、付加製造によって製造されたヒーター本体の部品が発熱体自体を構成する層であるため、有利である。こうした発熱層は、より効率的な熱伝達が中で達成される、内側空洞壁および空洞開口によって画定された加熱チャンバーを提供するために、付加製造の汎用性を利用することができる。
【0014】
発熱層の形状は、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の部分がアンダーカット形状を有するような形状であってもよい。
【0015】
本明細書において、「アンダーカット形状」という用語は、その開口の周りに画定された張り出しを有するチャンバーを大まかに示すために使用される。言い換えると、チャンバーは、チャンバーが固体の剛直な材料で完全に充填された場合、チャンバーから開口を通して固体の剛直な材料を取り出そうとする試みが、固体材料の一部分とチャンバーの対応する張り出した一部分との間の係合に起因して、結果として抵抗をもたらすことになるような形状にされる。アンダーカット陥凹部の一例は、二つの嵌合するパズルピースのメス部品である。
【0016】
アンダーカット形状の加熱チャンバーは、非アンダーカット形状の加熱チャンバーとは異なる(かつ一部の状況では好ましい)構成を提供する場合がある。例えば、アンダーカット形状の加熱チャンバーは、チャンバー内に配置された物品の選択された部分(複数可)へのより高いレベルの加熱を提供する場合がある。対照的に、非アンダーカットの加熱チャンバーは、物品の均質な加熱のみしか提供しない場合がある。こうした潜在的な利益にもかかわらず、アンダーカット形状の加熱チャンバーは、従来の技法では製造するのが困難である場合があるので、従来のエアロゾル発生装置では考慮されるものではない場合がある。
【0017】
付加製造によって製造された発熱体の部品またはヒーター本体フレームの部品は、管形状、カップ形状、押出成形輪郭、複雑な有機的形状、複数の幾何学的実体の組み合わせ、きめのある表面を有する管、クランプ、メッシュ様構造、グリッド様構造、曲面、または任意の他の形状などの他の複雑な形状を有してもよい。これらの形状はまた、従来の技法で製造された場合、重大なエンジニアリング上の課題を呈する場合があるため、従来のエアロゾル発生装置では考慮されない場合がある。
【0018】
ヒーター本体を形成する工程は、内側空洞壁上に熱導電層を提供することをさらに含んでもよい。こうした構成で、熱伝導層は、物品が加熱チャンバー内にある時に、発熱層とエアロゾル発生物品の間に中間層を提供する。これは、より均質な熱分布を達成するために有用である場合がある。
【0019】
ヒーター本体を形成する工程はまた、内側空洞壁の反対側にある発熱層の側面上、すなわちヒーターの外面により近い側面上に絶縁層を提供することも含んでもよい。これは、ヒーターがエアロゾル発生装置の中に設置されている時に、ヒーターの外部表面、およびエアロゾル発生装置の外表面にも達する場合がある熱の量を低減するために役立つことができる。これは、ユーザーにとっての不快感のリスクを低減する場合がある。
【0020】
ヒーター本体を形成する工程は、ヒーター本体フレームを提供することと、付加製造によってヒーター本体フレーム上に直接、発熱体の少なくとも一部を製造することを含んでもよい。言い換えれば、付加製造によって発熱体を形成する層は、中間部品または製造工程を有しないで、ヒーター本体フレームの表面上に堆積されてもよい。
【0021】
ヒーター本体フレームは次に、付加製造によって、または任意の他の方法によって製造されてもよい。ヒーター本体フレームが提供されると、ヒーター本体フレームの表面上の発熱体を製造するために、付加製造が使用されてもよい。ヒーター本体フレームは、加熱チャンバーの境界の一部分を画定してもよく、また付加製造は有利なことに、こうした加熱チャンバー内の発熱体に、より良好な熱伝達を加熱チャンバーに通常与える形状および材料を提供するために使用される。
【0022】
ヒーター本体を形成する工程は、付加製造によってヒーター本体フレームを製造することを含んでもよい。ヒーターのこの特定の構成要素のためにこの技法を使用することによって、より複雑かつ効率的なヒーターを、高価な解決策を必要とすることなく作製することができる。ヒーター本体フレームは、加熱チャンバーの境界の一部分を画定してもよい。
【0023】
発熱体は、付加製造によって製造されたヒーター本体フレームに直接連結されてもよい。この解決策の利点は、ヒーター本体フレームの設計における柔軟性が、その形状および材料を、こうした本体フレームに連結される発熱体に適合させることを許容することである。
【0024】
本明細書で使用される「直接連結された」という用語は、発熱体とヒーター本体フレームの間にいかなる中間部品も有することなく、発熱体がヒーター本体フレームに連結されることを意味すると理解されるべきである。
【0025】
発熱体は抵抗構造を備えてもよい。抵抗構造は、抵抗コーティング、抵抗プレート、または抵抗コイルのうちの一つ以上であってもよい。抵抗構造は、付加製造によって製造されたヒーター本体フレームに直接連結されてもよい。
【0026】
付加製造によって製造されたヒーター本体フレームは、発熱体が熱を発生する時にそれらが熱的に接触するようなやり方で発熱体に連結されてもよく、それ故に発熱体から熱を排出し、かつヒーター本体の他の領域またはヒーターの外側に向かって熱を伝達する熱放散を提供する。発熱体から排出された熱は、例えば電池を備えるエアロゾル発生装置の中にヒーターが設置されている時、電池に伝達されてもよい。従って、電池は所望の動作温度に保たれうる。付加製造は通常、他の利点の中でも、より良好な熱伝達を提供するために、形状および材料の最適化を可能にするので、発熱体にとってより良好な熱放散を提供するように、ヒーター本体フレームを正確に設計および製造することができる。
【0027】
ヒーター本体フレーム全体が、付加製造によって製造されてもよい。結果として、ヒーターの外部部分はまた、複雑で最適化された形状を含むことができる。これらの最適化された形状は、エアロゾル発生装置内のヒーターのより良好な嵌合、または改善された外部外観、またはその両方を許容するために役立つ場合がある。
【0028】
ヒーター本体フレームは、空気吸込み口および空気出口を有する空気チャネルを形成してもよく、空気出口は、加熱エアロゾルが加熱チャンバーを離れることを可能にするように設計されている。空気チャネルは通常、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の少なくとも一部分を画定し、また発熱体は、空気吸込み口から空気出口への空気チャネルを通して進む空気の流れを加熱する、それ故にエアロゾル発生物品が加熱チャンバー内にある時にエアロゾル発生物品を加熱するために提供されている。これに加えて、または代替的に、エアロゾル発生物品と直接接触するように発熱体を提供することができる。付加製造を使用することによって、最適化された空気チャネルおよび/または発熱体を達成し、空気チャネルを備える従来のヒーターの熱伝達特性を向上させることができる。
【0029】
発熱体は、空気チャネル内に提供された、かつ付加製造によって製造された発熱層を備えてもよい。有利なことに、これは、発熱層を空気チャネルの寸法に適合させて、その形状および材料における著しい制限なしに、より良好な熱伝達を提供することを可能にする場合がある。
【0030】
発熱体は、付加製造によって製造された、かつ空気チャネル内に提供された静的加熱構造を備えてもよい。
【0031】
静的加熱構造は、発熱体と空気チャネル内の空気との間の熱伝達を改善することができるという点で有益である可能性がある。これは、空気混合もしくは攪拌のうちの一つ以上によって、または乱流によって達成されてもよい。例えば、静的加熱構造は、空気チャネル内の空気を混合するために形作られてもよい(または空気の混合を促進する特徴を含んでもよい)。こうした改善は、静的加熱構造の製造における制約を低減する場合があるため、付加製造の使用によって強化されてもよい。空気チャネルの内壁から延びる突出部は、付加製造によって製造することができる好都合な静的加熱構造の一例である。他の静的加熱構造の例としては、トンネル、陥凹部、へこみ、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。発熱体が複数の静的加熱構造を備える場合、静的加熱構造は互いに接続されてもよい。
【0032】
静的加熱構造は、使用中に発熱体の残りの部分に対して移動するように構成されていない加熱構造である。
【0033】
有利なことに、ヒーター本体のさらなる部分を製造するために、付加製造を使用することができる。例えば、ヒーター本体は、付加製造によって形成された一つ以上のセンサーを備えてもよい。付加製造によって製造することができるヒーター本体の部品の他の例は、熱交換器、熱拡散器、熱反射体、絶縁体、およびハウジングである。
【0034】
センサーは、発熱体から加熱チャンバーへの熱伝達速度を適合させるために、加熱チャンバー内の温度を決定するために使用することができる。付加製造は、加熱チャンバーの適切な領域内にセンサーを提供するための安価で汎用性が高いやり方を提供する。センサーは最初に付加製造によって製造され、次いでヒーター本体の残りとともに組み立てられることができる。センサーは付加製造によって、ヒーター本体の対応する部品上に直接製造されてもよい。センサーは付加製造によって、ヒーター本体の他の部品と同じ製造工程で製造されてもよい。
【0035】
付加製造の使用から生じる制約の低減は、付加製造によって製造されたヒーター本体の部品を、所望に応じて追加的な加工工程に供することを可能にする。例えば、こうした部分にはドリル加工、フライス加工、研磨、切断、被覆、鋸で切ることなどを行うことができる。
【0036】
同様に、付加製造によって製造されたヒーター本体の部品(複数可)は、ヒンジ、スライド、回転、屈曲、曲げ、折り畳みなどによって他の部品に対して動くように構成されることができる。
【0037】
付加製造によって製造されたヒーター本体の部品は、付加製造を使用して鋳型を作製し、次いで鋳型によってヒーター本体の部品を鋳造することによって得られてもよい。その結果、より複雑な鋳型を製造することができ、これは次に従来の鋳型が採用された場合よりも高度な好みの形状でヒーター本体の部品を鋳造することを生じさせる。鋳造プロセスは、ロストワックス鋳造または任意の他の適切な鋳造プロセスを使用して実施されてもよい。
【0038】
付加製造によって製造されたヒーター本体の部品は、以下のポリマーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。PLA(ポリ乳酸)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン(ポリアミド)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリプロピレン、アクリル材料、ASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)、ポリカーボネート、HIPS(高衝撃性ポリスチレン)、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール。ポリマーは通常、製造される部分に所望の特性(本明細書に列挙された特性など)を提供する安価なやり方であるという点で有利である。
【0039】
付加製造の汎用性はまた、ポリマーと導電性粒子(銀粒子、銅粒子、金粒子、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素遷移金属粒子など)とを組み合わせる部品を製造することを許容する。
【0040】
他の材料も、付加製造によるヒーター部分の製造に適している。一部の例は、金属および金属合金、セラミック材料、炭素系材料、またはグラフェン系材料である。
【0041】
材料は数あるその能力の中でも、電気を伝導する能力、熱を伝導する能力、刺激(電気、光、レーザー、磁界、振動、プラズマ、誘導場、またはマイクロ波など)の影響下で発熱する能力、断熱する能力、高質の視覚的な表面仕上げを提供する能力、可撓性、強度、剛性または硬度の観点から良好な特性を有する能力、高い耐温度性を有する能力、化学的安定性を達成する能力、簡単に維持される能力、または良好な形状記憶挙動を有する能力に起因して選ぶことができる。
【0042】
発熱体およびヒーター本体フレームなどのヒーターの異なる部品は、付加製造によって作製される場合、同一の材料または異なる材料で作製されることができる。一つ以上の材料は、部品の要件に基づいて選択されてもよい。異なる部品が同一の付加印刷プロセスで製造されている場合でさえも、幾つかの材料を使用することができる。
【0043】
本発明の別の態様において、エアロゾル発生装置の製造方法が提供されていて、方法は、上記に詳述した実施形態のうちのいずれか一つによるヒーターを製造する工程と、発熱体と電気的に接触している電源システムを提供する工程と、筐体を提供する工程と、ヒーターおよび電源システムを筐体内に配設する工程とを含む。
【0044】
本発明の別の態様において、上記方法のうちのいずれかによって製造されたヒーターが提供されていて、従ってヒーターは、ヒーター本体フレームおよび発熱体を備え、発熱体が加熱チャンバーを加熱するために適切であるように、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の少なくとも一部分を画定するヒーター本体を含み、ヒーター本体の少なくとも一部は付加製造によって製造されている。
【0045】
本発明の別の態様において、ヒーター本体フレームおよび発熱体を備えるヒーター本体を備えるヒーターが提供されていて、ヒーター本体は、発熱体が加熱チャンバーを加熱するために適切であるように、エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーの境界の少なくとも一部分を画定し、加熱チャンバーの境界の一部分はアンダーカット形状を有する。
【0046】
本発明のこれらの態様によるヒーターは、本発明の第一の態様の方法について上記に詳述したのと同じ理由で有利である。
【0047】
発明の別の態様において、エアロゾル発生装置が提供されていて、エアロゾル発生装置は、上記に言及されたヒーターのうちのいずれかと、ヒーターの発熱体と電気的に接触している電源システムと、ヒーターおよび電源システムが中に配設されている筐体とを備える。
【0048】
こうしたヒーターの利点は、これらのヒーターのうちのいずれかを含むエアロゾル発生装置に等しく関連する。
【0049】
電源システムは、制御ユニットと、制御ユニットを発熱体に接続する電気的接続とを備えてもよい。制御ユニットおよび電気的接続はまた、付加製造から作製されてもよい。制御ユニットは、付加製造によって製造されたプリント基板(PCB)を備えてもよく、また電気的接続の電気回路はまた、付加製造によって作製されることができる。有利なことに、これは、ある特定のエアロゾル発生装置にとって適切である場合がある三次元回路またはPCBを生じさせる場合がある。
【0050】
発明の別の態様は、上記で説明した方法のうちのいずれか一つによるヒーター本体の少なくとも一部を付加製造することによって製造する工程を実行するように適合された付加製造装置と、装置にこれらの方法を実施させるための命令を含むコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムが保存されたコンピュータ可読媒体とを開示する。
【0051】
コンピュータ支援設計(CAD)は、強度、熱流、熱抵抗、熱伝達、熱分布、気流最適化、熱損失低減、重量、重量分布、材料節約、接触面最適化、プロセス時間、審美的外観、組立の容易さなどの特性における所望の要件に適合するヒーター本体の部品の設計において、付加製造と協働するために特に有用である。モデルは、各パラメータに対して選ばれた範囲内で最も良好な技術的解決策を提供するように、作り出されてもよく、または生成されてもよい。
【0052】
この理由から、コンピュータ実装設計を実施するように適合された付加製造装置は通常、こうした好ましい技術的解決策を達成するために好都合な装置であり、また装置がプログラムを実行する時に、装置が上記の方法のいずれかを実行することを可能にするコンピュータプログラム(またはプログラムを保存するコンピュータ媒体)も同様に好都合である。
【0053】
本発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、添付の図を参照して、例証的かつ非限定的な例によってのみ与えられる、好ましい実施形態の以下の詳細な説明に照らして、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、付加製造によって製造された発熱層を有する発熱体を備えるヒーターを描写する。
【
図2】
図2は、付加製造によって発熱体がヒーター本体フレーム上に直接製造されたヒーターを示す。
【
図3】
図3において、付加製造によって製造されたヒーター本体フレームを有するヒーターが描写されている。
【
図4】
図4は、空気チャネルと、空気チャネル内の付加製造によって製造された発熱体とを備えるヒーターを示す。
【
図5】
図5は、付加製造によって製造された部品を有するヒーターと、電源システムと、ヒーターおよび電源システムが中に配設されている筐体とを備えるエアロゾル発生装置を表す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、エアロゾル発生装置100用のヒーター1であって、その製造方法が、ヒーター本体フレーム10および発熱体20を備えるヒーター本体を形成することを含み、またヒーター本体の少なくとも一部が付加製造によって製造されている、エアロゾル発生装置100用のヒーター1を描写する。
図1の発熱体20は、付加製造を使用して発熱層21を製造することによって作製されている。
【0056】
本発明によるヒーター1のヒーター本体は、エアロゾル発生物品200を受容するための加熱チャンバー30の境界31の少なくとも一部分を画定する。発熱体20は、加熱器1が使用中である時に加熱チャンバー30を加熱するように構成されていて、これによってエアロゾル発生物品200が加熱チャンバー30内にある時にエアロゾル発生物品200に熱を伝達する。
【0057】
図1の実施形態において、境界31のこうした部分を画定するのは発熱層21である。より具体的に、発熱層21は、付加製造によって製造されると、内側空洞壁23および空洞開口24によって区切られた空洞22を作り出し、これによって境界31の一部分は内側空洞壁23および空洞開口24によって画定される。
【0058】
結果として得られる加熱チャンバー30は、先行技術の大半のヒーター本体において通常、効率を低減させるか、またはコストを上昇させる製造制限を受けない。
図1に表される通り、加熱チャンバー30内の熱の伝達を改善するために、加熱チャンバーの境界31の部分の形状は、アンダーカット形状を有し、こうした形状は、効率的なヒーターを作り出すための本発明の方法の柔軟性の一例である。
【0059】
図1の方法は、内側空洞壁23上の熱伝導層25と、発熱層21の反対側上の絶縁層26とを提供することをさらに含む。
【0060】
図1の実施形態において、発熱層21は付加製造によって製造されるため、この層は、アンダーカット形状または任意の他の複雑な効率的な形状を画定するために使用され、これによって、ヒーター本体フレーム10、および一部の実施形態において熱伝導層25および絶縁層26を、その形状に適応する発熱層21の周りに提供することができる。
【0061】
図2の実施形態において、ヒーター本体フレーム10は、任意の方法によって提供されている。付加製造は有利なことに、問題のヒーター1の熱的ニーズおよび設計ニーズにとって最も好都合な形状を有する発熱体20を、ヒーター本体フレーム10の所与の表面上に直接製造するために使用される。例として、
図2は、アンダーカット形状を有する加熱チャンバー30の境界31の一部分を画定する発熱体20を図示する。
【0062】
同様に、
図3の実施形態において、これは効率的なヒーター1を生じさせるために、付加製造によって製造されているヒーター本体フレーム10である。発熱体20は、例えば
図3に破線で描写されている通り、こうした表面上に抵抗コーティング27を提供することによって、ヒーター本体フレーム10の表面に直接連結されてもよい。ヒーター本体フレーム10の表面は、熱伝達または任意の他の特性の観点からより良好な効率を達成するために選ばれた形状を既に有しているため、抵抗コーティング27は、ヒーター本体フレーム10によって与えられる効率的な形状を変更することなく、発熱体を簡単に提供するための特に適切な解決策である。加熱チャンバー30の境界31は、ヒーター本体フレーム10の形状に従って抵抗コーティング27によって区切られる。ヒーター本体フレーム10全体は、付加製造によって製造することができ、または代替的に、加熱チャンバー30の形状を画定する部分のみが付加製造によって製造されてもよい。
【0063】
図3の効率的なヒーター本体フレーム10は、付加製造のための適切な形状および材料を選ぶことによって、発熱体20からの最適な熱放散を提供するために設計されてもよい。例えば、設計は、発熱体20からヒーター1の外側に熱を伝達するように、またはヒーター1がエアロゾル発生装置(
図5を参照のこと)内に設置された時にヒーター1が電池により近くなることが意図されたヒーターの区域に熱を伝達するように構成されてもよく、これによって電池は所望の動作温度に保たれる。
【0064】
図4の実施形態において、ヒーター本体フレーム10は、空気吸込み口41および空気出口42を有する空気チャネル40を形成し、空気出口42は、加熱されたエアロゾル43が加熱チャンバー30を離れることを可能にするように設計されている。加熱チャンバー30の境界31の少なくとも一部分は、この実施形態において、内側チャネル40を構成するヒーター本体フレーム10の内壁によって画定される。すなわち、空気チャネル40は加熱チャンバー30を少なくとも部分的に形成する。
【0065】
描写された実施形態において、付加製造は、空気チャネル40内の発熱層21を含む発熱体20を提供するために採用されている。一例として、発熱層21は、ヒーター本体フレーム10の内壁に取り付けることができる。
図4に表された実施形態において、発熱体20は、これも付加製造によって製造された静的加熱構造28をさらに有する。この実施例の静的加熱構造28はフィン形状の突出部を備え、この突出部のために正確な形状、配向、オフセットが選択されて最適な熱伝達を提供する。フィン形状の突出部は付加製造によって製造されている。この技法はまた、へこみまたは熱トンネルなどの発熱体20の追加的な部分を製造するためにも使用することが可能である。突出部および任意の他の発熱体部品は一実施形態において、互いに接続することができる。
【0066】
図4のヒーターがどのように機能するかをより明瞭に例示するために、エアロゾル発生物品200が加熱チャンバー30内に描写されている。外気44は、空気吸込み口41を通して空気チャネル40に入り、そしてエアロゾル発生物品22に向かって案内される間、静的加熱構造28によって加熱、混合、攪拌される。発熱層21は、追加的な熱を加熱チャンバー30の中に、具体的にはエアロゾル発生物品200が収容されている領域に供給する。エアロゾル発生物品は、空気チャネル40に沿って流れる加熱された空気と混合し、かつ空気出口42を通して空気チャネル40を離れる、加熱されたエアロゾル43を生成する。
【0067】
図5は、上記の実施形態のうちのいずれか一つに従って製造されたヒーター1を備える、エアロゾル発生装置100を示す。エアロゾル発生物品200は、ヒーター1の加熱チャンバー30内に収容されている。使用時に、ヒーター1の発熱体20と電気的に接触する電源システムは、発熱体20にエネルギーを提供し、この発熱体20はエアロゾル発生物品200に熱を伝達して、吸入可能な加熱エアロゾル43を生成する。
【0068】
図5の電源システムは、電池110と、制御ユニット115と、電池110および制御ユニット115を発熱体20に接続する電気的接続125とを備える。制御ユニット115は、エアロゾル発生物品がチャンバー内にあり、加熱されたエアロゾル43を得るために熱が必要とされる時に、発熱体20が加熱チャンバー30に熱を伝達するように、電池110から発熱体20への電気エネルギーの供給を調節する。
【0069】
制御ユニット115および電気的接続125はまた、付加製造から恩恵を受ける場合がある。一例として、制御ユニット115は、付加製造によって製造されたプリント基板(PCB)を備えてもよく、電気的接続の電気回路はまた、付加製造によって作製されることができる。有利なことに、これは、ある特定のエアロゾル発生装置にとって適切である可能性がある三次元回路またはPCBを生じさせることができる。
【0070】
筐体105はヒーター1と、制御ユニット115と、電池110と、電気的接続125とを収容し、エアロゾル発生装置100の外部カバーを形成する。
【国際調査報告】