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特表2022-512134自律走行する陸上車両のための電気液圧による動力式車両ブレーキ装置
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  • 特表-自律走行する陸上車両のための電気液圧による動力式車両ブレーキ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】自律走行する陸上車両のための電気液圧による動力式車両ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20220126BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20220126BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/138 A
B60T13/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532211
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2019076030
(87)【国際公開番号】W WO2020126138
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018222488.9
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シュトレンゲルト,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】三好 照剛
(72)【発明者】
【氏名】クンツ,アルミン
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
3D048BB01
3D048CC54
3D048HH14
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH37
3D048HH42
3D048HH50
3D048HH53
3D048HH58
3D048HH61
3D048HH70
3D048HH75
3D048HH77
3D048QQ04
3D048QQ07
3D049BB01
3D049CC02
3D049HH11
3D049HH12
3D049HH20
3D049HH30
3D049HH39
3D049HH41
3D049HH43
3D049HH45
3D049HH51
3D049HH53
3D049QQ02
3D049QQ04
(57)【要約】
冗長性のある2つの動力式ブレーキ圧発生器(3,4)を備えた、公道上を自律走行する自動車のための電気液圧による動力式車両ブレーキ装置(1)は、一方の動力式ブレーキ圧発生器(3,4)の不具合時および故障時に、他方の動力式ブレーキ圧発生器(あ4,3)がドライバーの介入なしに自動車を制動させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の動力式ブレーキ圧発生器(3)と、第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)とを備え、両動力式ブレーキ圧発生器に液圧車輪ブレーキ(2)が接続されている、公道上を自律走行する陸上車両のための電気液圧による動力式車両ブレーキ装置において、両動力式ブレーキ圧発生器(3,4)がブレーキ液貯留容器(10)に接続されていることを特徴とする電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項2】
前記第1の動力式ブレーキ圧発生器(3)が直接に、および/または、前記第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)が1つまたは複数の弁(19,20)によって、前記ブレーキ液貯留容器(10)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項3】
前記第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)が、逆止弁(19)によって、および/または動力操作される弁(20)によって、前記ブレーキ液貯留容器(10)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項4】
前記第1の動力式ブレーキ圧発生器(3)がピストンシリンダユニット(5)を有し、および/または、前記第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)がハイドロポンプ(14)を有していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項5】
前記車両ブレーキ装置(1)が、前記車輪ブレーキ(2)内の車輪ブレーキ圧を調整するためのブレーキ圧調整弁装置(13)を有していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項6】
前記ブレーキ圧調整弁装置(13)が、弁(11,12)によって前記第1の動力式ブレーキ圧発生器(3)に接続され、および/または、直接に前記第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)に接続されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項7】
前記第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)が、弁(11,20)によって前記第1の動力式ブレーキ圧発生器(3)に接続されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項8】
前記車輪ブレーキ(2)が、排出弁(17)によって、前記第1の動力式ブレーキ圧発生器(3)および/または前記第2の動力式ブレーキ圧発生器(4)に接続されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項9】
前記車両ブレーキ装置(1)が筋力式ブレーキ圧発生器または補助力式ブレーキ圧発生器(22)を有し、この筋力式ブレーキ圧発生器または補助力式ブレーキ圧発生器を用いて前記車輪ブレーキ(2)が操作可能であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の構成を備えた、公道上を自律走行する陸上車両のための電気液圧による動力式車両ブレーキ装置に関するものである。「自律走行する」という記載は自律走行する可能性に関わるものであるが、しかしながら本発明による車両ブレーキ装置は、自律走行しない陸上車両またはより低いレベルで自律走行する陸上車両に対しても適用可能である。
【背景技術】
【0002】
レベル4(ドライバーに対し介入要求することができる)およびレベル5(最高レベル。ドライバーは必要ない)までの自律走行のためには、ドライバーの介入を必要とせずに、ほぼ確実な確からしさで車両ブレーキ装置の完全な故障を阻止する冗長型動力式車両ブレーキ装置が必要である。
【0003】
特許文献1は、2つのブレーキアッセンブリを備えた電気液圧による動力式車両ブレーキ装置を開示し、両ブレーキアッセンブリはそれぞれ、電気で制御可能な圧力源を備えた動力式ブレーキ圧発生器と、各車輪ブレーキ用のブレーキ圧調整弁装置とを有している。一方のブレーキアッセンブリは他方のブレーキアッセンブリに接続され、そして液圧車輪ブレーキは前記一方のブレーキアッセンブリに接続され、その結果車輪ブレーキは前記一方のブレーキアッセンブリを用いて操作可能であるとともに、前記一方のブレーキアッセンブリを通じて前記他方のブレーキアッセンブリを用いて操作可能である。これにより、1つのブレーキアッセンブリの不具合時または故障時に、ドライバーの介入なしに車輪ブレーキを他のブレーキアッセンブリを用いて操作可能である。その都度アクティブなブレーキアッセンブリは、車輪ブレーキ内の車輪ブレーキ圧を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014220440A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
請求項1の構成を備えた、本発明による電気液圧による動力式車両ブレーキ装置は、公道上でのレベル4およびレベル5までの自律走行に対し設けられている。レベル4は高度自律走行とも呼ばれ、車両の誘導を電子システムが継続的に受け持ち、該システムが走行タスクをもはや果たさない場合にだけドライバーに対し介入要求することを意味している。レベル5は完全自動化とも呼ばれ、ドライバーを必要としない。しかしながら、本発明による車両ブレーキ装置は、これよりも低いレベルおよび非自律走行に対しても使用可能である。
【0006】
本発明による電気液圧による動力式車両ブレーキ装置は、2つの冗長型動力式ブレーキ圧発生器を有し、これら冗長型動力式ブレーキ圧発生器には、1つまたは複数の液圧車輪ブレーキが、選択的に両動力式ブレーキ圧発生器のうちの一つまたは両動力式ブレーキ圧発生器を用いて操作可能であるように接続されている。これによって、両動力式ブレーキ圧発生器のうちの一つの不具合時または故障時での動力制動がドライバーの介入なしに可能である。両動力式ブレーキ圧発生器は特に無圧のブレーキ液貯留容器に接続され、この場合両動力式ブレーキ圧発生器は、ともに1つのブレーキ液貯留容器に、または、それぞれ1つの固有のブレーキ液貯留容器に接続されていてよい。
【0007】
その際、好ましくは、両動力式ブレーキ圧発生器のうちの第1の動力式ブレーキ圧発生器は直接に、すなわち中間接続される弁なしに、ブレーキ液貯留容器に接続され、および/または、両動力式ブレーキ圧発生器のうちの第2の動力式ブレーキ圧発生器は1つまたは複数の弁によってブレーキ液貯留容器に接続されている(請求項2)。
【0008】
好ましくは、第2の動力式ブレーキ圧発生器は、ブレーキ液貯留容器から第2の動力式ブレーキ圧発生器の方向に流動可能な逆止弁によって、および/または動力操作される弁によって、ブレーキ液貯留容器に接続されている(請求項3)。前記弁は特に電磁弁である。その限りでは、逆止弁と動力操作される1つまたは複数の前記弁とは好ましくは液圧的に直列に接続されている。
【0009】
本発明による車両ブレーキ装置は、それぞれ1つまたは複数の車輪ブレーキを備えた1つまたは複数のブレーキ回路を有していてよい。乗用車に対しては、車両ブレーキ装置は、特に、それぞれ2つの車輪ブレーキを備えた2つのブレーキ回路を有している。
【0010】
従属請求項は、請求項1に記載されている発明の有利な構成および更なる構成を対象としている。
【0011】
請求項5は、車輪ブレーキ内の車輪ブレーキ圧を好ましくは車輪別に調整するためのブレーキ圧調整弁装置を提供する。このようなブレーキ圧調整弁装置はそれ自体公知であり、本発明にとって強制的ではないが、通常のように各車輪ブレーキに対し吸入弁と排出弁とを有し、場合によっては車輪ブレーキの複数のグループに対しても、または、すべての車輪ブレーキに対しても吸入弁と排出弁とを有している。吸入弁と排出弁とを組み合わせて1つの弁としてもよい。ブレーキ圧調整弁装置を用いると、車輪ブレーキ内の車輪ブレーキ圧の調整以外に、したがって制動時の車輪ブレーキ力の調整以外に、アンチロックプログラム、トラクションコントロールプログラムおよびダイナミックドライブコントロール/電子スタビリティプログラムのようなスリップコントロールが可能であり、これらに対しては、略語ABS,ASRおよびFDR/ESPが慣用されている。電子スタビリティプログラムとも呼ばれるダイナミックドライブコントロールは、口語的にはアンチスキッドコントロールとも呼ばれる。
【0012】
請求項6は、ブレーキ圧調整弁装置が、弁によって第1の動力式ブレーキ圧発生器に接続され、および/または、直接に第2の動力式ブレーキ圧発生器に接続されていることを提供し、その結果ブレーキ圧調整弁装置は、存在する場合はブレーキマスタシリンダを用いて、および/または第2の動力式ブレーキ圧発生器を用いて車両ブレーキ装置を操作するために、弁を閉じることによって第1の動力式ブレーキ圧発生器から切り離し可能である。本発明による車両ブレーキ装置は、好ましくは次のように構成されており、すなわち第1の動力式ブレーキ圧発生器からブレーキ圧調整弁装置を切り離すことにより、車輪ブレーキも第1の動力式ブレーキ圧発生器から切り離されて、車輛ブレーキ装置の操作時に車輪ブレーキ内の車輪ブレーキ圧を、ブレーキマスタシリンダを用いておよび/または第2の動力式ブレーキ圧発生器を用いて調整可能であるように構成されている。
【0013】
請求項8は、車輪ブレーキが、特にブレーキ圧調整弁装置の一部である排出弁によって、第1の動力式ブレーキ圧発生器および/または第2の動力式ブレーキ圧発生器に接続されていることを提供する。1つまたは複数の排出弁を開くことによって1つまたは複数の車輪ブレーキ内の圧力が減少すると、本発明のこの実施態様では、ブレーキ液は1つまたは複数の車輪ブレーキから特に無圧のブレーキ液貯留容器内へ戻らずに、複数の動力式ブレーキ圧発生器へ流れる。これにより、その後の車輪ブレーキ圧の再度上昇のためにブレーキ圧を新たに構築する必要はなく、現在のブレーキ圧を上昇させるだけでよい。
【0014】
好ましくは、本発明による車両ブレーキ装置は、両動力式ブレーキ圧発生器に加えて、筋力式ブレーキ圧発生器または補助力式ブレーキ圧発生器を有している。「補助力」とは、ブレーキ倍力装置によって支援される筋力操作を意味している。筋力式ブレーキ圧発生器または補助力式ブレーキ圧発生器とは、特に、ハンドブレーキレバーまたはフットブレーキペダルを用いて操作可能なブレーキマスタシリンダであり、ブレーキマスタシリンダは、車両ブレーキ装置の動力操作の際に、車両ブレーキ装置のブレーキ圧に対する目標値設定器として用いられる。筋力式ブレーキまたは補助力式ブレーキは、特に一つの動力式ブレーキ圧発生器または両動力式ブレーキ圧発生器の不具合または故障の場合に対し、非自律走行の間ではなく、ドライバーが誘導を行う走行の間に設けられていてよい。
【0015】
明細書および図面に開示されているすべての構成要件は、それ自体で個別に、または、基本的に任意の組み合わせで、本発明の実施態様において実現されていてよい。1つの請求項のすべての構成要件ではなく、1つまたはいくつかの構成要件のみを有しているような発明の実施態様が基本的に可能である。
【0016】
次に、図面に図示されている実施形態に関して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による電気液圧方式の動力式車両ブレーキ装置の液圧回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面に図示した本発明による電気液圧方式の動力式車両ブレーキ装置1は、レベル4またはレベル5までで公道上を自律走行する陸上車両、すなわち乗用車のために設けられている。レベル4は自律走行を意味し、その際ドライバーに対し介入要求することができ、レベル5は最高レベルで、ドライバーの介入を必要としない自律走行を意味している。より低いレベルおよび非自律走行が可能である。
【0019】
本発明による車両ブレーキ装置1は、4つの液圧車輪ブレーキ2を備えた2回路型ブレーキ装置として形成され、4つの液圧車輪ブレーキのうちそれぞれ2つが両ブレーキ回路の一つに接続されている。
【0020】
車両ブレーキ装置1は、第1の動力式ブレーキ圧発生器3と、第2の動力式ブレーキ圧発生器4とを有している。両動力式ブレーキ圧発生器3,4は冗長性があり、車両ブレーキ装置1は選択的に一方または両方の動力式ブレーキ圧発生器3,4を用いても操作することができる。
【0021】
図示し、説明する本発明の実施形態では、第1の動力式ブレーキ圧発生器3はピストンシリンダユニット5を有し、そのピストン6は、ブレーキ圧を発生させるため、電動機7により、シリンダ9内のねじ駆動部8または他の回転・並進式変速装置を介して軸線方向に変位可能である。ピストンシリンダユニット5はプランジャーユニットと呼ぶこともでき、ピストン6はプランジャーピストンとも呼ぶことができる。第1の動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ7は、図示し、説明する本発明の実施形態では、無圧のブレーキ液貯留容器10にダイレクトに、すなわち弁を中間接続することなく、接続されている。
【0022】
第1の動力式ブレーキ圧発生器3には、厳密にいえば、第1の動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ9には、ここではプランジャーバルブ11と記す弁と、第1の仕切弁12と、ブレーキ圧調整弁装置13とを介して、車輪ブレーキ2が接続されている。2つのブレーキ回路に分割するため、2つのプランジャーバルブ11は液圧的に並列に、2つの第1の仕切弁12は液圧的に同様に並列に、そしてそれぞれ1つのプランジャーバルブ11と1つの第1の仕切弁12とは液圧的に直列に配置されている。ブレーキ圧調整弁装置13を介してそれぞれ2つの車輪ブレーキ2が1つのプランジャーバルブ11と1つの第1の仕切弁12とを介して第1の動力式ブレーキ圧発生器3に接続されている。
【0023】
第2の動力式ブレーキ圧発生器4は各ブレーキ回路内にハイドロポンプ14を有し、たとえば電動機15により共通に駆動可能なピストンポンプまたは(内歯)歯車ポンプを有している。それぞれ2つの車輪ブレーキ2は、各車輪ブレーキ2のための吸入弁16を介して、複数のハイドロポンプ14のうちの1つのハイドロポンプの吐出側に接続されている。
【0024】
各車輪ブレーキ2は、それぞれ1つの排出弁17を介して第2の動力式ブレーキ圧発生器4のハイドロポンプ14の吸込側に接続され、その際車輪ブレーキ2は排出弁17を介して同じハイドロポンプ14の吸込側に接続され、このハイドロポンプの吐出側には、車輪ブレーキが吸入弁16を介して接続されている。ハイドロポンプ14の吸込側には、排出弁17とハイドロポンプ14との間にハイドロアキュムレータ18が接続されている。
【0025】
ブレーキ液貯留容器の方向に見て、第2の動力式ブレーキ圧発生器4のハイドロポンプ14の吸込側は、ブレーキ液貯留容器10からそれぞれのハイドロポンプ14の方向に貫流可能なそれぞれ1つの逆止弁19と吸込弁20とを介してブレーキ液貯留容器10に接続されており、その結果車輪ブレーキ2を操作するためのブレーキ圧の発生は、吸込弁20が開いている時に第2の動力式ブレーキ圧発生器4を用いて可能である。
【0026】
本発明は、説明した動力式ブレーキ圧発生器3,4に限定されるものではなく、動力式ブレーキ圧発生器の他の実施形態が可能である(図示せず)。
【0027】
上述したように、車両ブレーキ装置1は、選択的に両動力式ブレーキ圧発生器3,4のいずれかを用いて操作することができ、その結果両動力式ブレーキ発生器3,4のうちの一方の故障時または不具合時に、車両ブレーキ装置1をドライバーの介入なしに両動力式ブレーキ圧発生器3,4のうちの他方による動力によって操作することができる。車両ブレーキ装置1の動力操作のこのような冗長性は、レベル4およびレベル5での自律走行に対する前提である。
【0028】
吸入弁16と排出弁17とはブレーキ圧調整弁装置13を形成し、ブレーキ圧調整弁装置を用いて各車輪ブレーキ2での車輪ブレーキ圧を個別に調整することができる。第2の動力式ブレーキ圧発生器4のハイドロポンプ14とともにスリップコントロールが可能であり、特にアンチロックプログラム、トラクションコントロールプログラムおよび/またはダイナミックドライブコントロールまたは電子スタビリティプログラムが可能である。これらのスリップコントロールに対しては、略語ABS,ASRおよび/またはFDRもしくはESPが慣用されている。ダイナミックドライブコントロールおよび電子スタビリティプログラムは口語的にはアンチスキッドコントロールとも呼ばれる。このようなスリップコントロールはそれ自体公知であり、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0029】
本発明による車両ブレーキ装置1は、フットブレーキペダル21を用いて操作可能な2回路型ブレーキマスタシリンダ22を筋力ブレーキ圧発生器として有し、2回路型ブレーキマスタシリンダには、それぞれのブレーキ回路において、車輪ブレーキ2がそれぞれ1つの第2の仕切弁23と、第1の仕切弁12と、ブレーキ圧調整弁装置13の吸入弁16とを介して接続されており、その結果車両ブレーキ装置1は車両ドライバーの筋力によっても操作可能である。第2の仕切弁23と、第1の仕切弁12と、吸入弁16とは、液圧的に直列に配置されている。
【0030】
基本的には、動力による車両ブレーキ装置1の操作が設けられており、その際ブレーキ圧は、第1の動力式ブレーキ圧発生器3を用いて発生させ、第1の動力式ブレーキ圧発生器3の不具合時または故障時には第2の動力式ブレーキ圧発生器4を用いて発生させる。ブレーキ圧発生の順序を逆にしてもよい。ブレーキマスタシリンダ15は、ドライバー運転時での車輪ブレーキ2内の車輪ブレーキ圧のための目標値設定器として用いられ、この場合ブレーキ圧は両動力式ブレーキ圧発生器3,4のうちの一方を用いて発生させ、ブレーキ圧の高さは、第1の動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5がブレーキ圧を発生させる場合には当該ピストンシリンダユニット5のピストン6を用いて、および/または、ブレーキ圧調整弁装置13を用いて制御または調整する。自律運転の場合、車輪ブレーキ圧に対する目標値は自律車両誘導に由来している。
【0031】
ドライバー運転の場合、第1の動力式ブレーキ圧発生器3の不具合時または故障時には、ブレーキ圧は第2の動力式ブレーキ圧発生器4を用いて、または、ブレーキマスタシリンダ22を用いて発生させることができる。
【0032】
両ブレーキ回路の一方では、ペダルストロークシミュレータ24がシミュレータバルブ25を介してブレーキマスタシリンダ22に接続されている。ペダルストロークシミュレータ24はばね付勢されているハイドロアキュムレータであり、ハイドロアキュムレータには、シミュレータバルブ25が開いている時にブレーキ液をブレーキマスタシリンダ22から排出させることができ、その結果第2の仕切弁23が閉じられる動力制動の場合、車両ドライバーに通常のペダル感覚を伝えるために、ブレーキマスタシリンダ22内のピストンが変位可能であり、フットブレーキペダル22が可動である。
【0033】
以上説明し、図示した本発明の実施形態では、プランジャーバルブ11と、第1の仕切弁12と、吸入弁16と、排出弁17と、吸込弁20と、第2の仕切弁23と、シミュレータバルブ25とは2ポート2位置切換え電磁弁であり、この場合第1の仕切弁12と、吸入弁16と、第2の仕切弁23とは、その無電流の基本位置において開いており、プランジャーバルブ11と、排出弁17と、吸込弁20と、シミュレータバルブ25とは、その無電流の基本位置で閉じている。車輪ブレーキ圧のより優れたコントロールクオリティを目的として、吸入弁13は比例弁として実施されているが、しかしこれは本発明にとって強制的なものではない。これら弁の他の実施形態は不可能ではない。たとえば、吸入弁16と排出弁17とを統合して3ポート2位置電磁弁とすることも可能である(図示せず)。
【符号の説明】
【0034】
1 動力式車両ブレーキ装置
2 車輪ブレーキ
3 第1の動力式ブレーキ圧発生器
4 第2の動力式ブレーキ圧発生器
5 ピストンシリンダユニット
10 ブレーキ液貯留容器
11 プランジャーバルブ
13 ブレーキ圧調整弁装置
14 ハイドロポンプ
17 排出弁
19 逆止弁
20 吸込弁
22 ブレーキマスタシリンダ(筋力式ブレーキ圧発生器または補助力式ブレーキ圧発生器)
図1
【国際調査報告】