IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラッパポート ファミリー インスティテュート フォー リサーチ イン ザ メディカル サイエンシズの特許一覧

特表2022-512228別の治療薬と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤による癌の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】別の治療薬と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤による癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220126BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220126BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 N
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/00
A61P27/16
A61P35/02
A61P35/04
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533334
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 IL2019051368
(87)【国際公開番号】W WO2020121315
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】16/219,203
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521249058
【氏名又は名称】ラッパポート ファミリー インスティテュート フォー リサーチ イン ザ メディカル サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャケッド,ユヴァル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZC412
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
(57)【要約】
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療に応答しない癌患者を、ICIによる癌患者の治療に応答して生成された複数の宿主駆動型耐性因子の中から選択された優勢な因子の活性を遮断する薬剤と組み合わせて該ICIで患者を治療する方法が提供され、これらの因子は、癌患者のICIによる治療に対する好ましくない応答を予測する倍率変化を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者を免疫チェックポイント阻害剤(ICI)で治療する方法であって、
(i)前記ICIによる治療セッション後の時点で前記癌患者から得られた血漿、全血、血清、または末梢血単核球から選択された血液試料に対してアッセイを実施して、前記ICIによる治療に応答して、宿主(「前記癌患者」)によって駆動される複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のレベルを決定する工程であって、前記複数の因子のうちの1つ以上が、個別化された形態で、前記ICIによる前記治療に対する前記癌患者の応答性または非応答性を促進する、工程と、
(ii)前記ICIによる前記治療セッションの前の時点で前記癌患者から得られた、工程(i)の前記血液試料と同じ種類の血液試料中の前記因子のそれぞれのレベルを決定することによって、工程(i)の前記複数の宿主駆動型耐性因子のうちの前記1つ以上のそれぞれの基準レベルを得る工程と、
(iii)工程(i)の各宿主駆動型耐性因子の前記レベルを同じ因子について工程(ii)の前記基準レベルと比較することによって、工程(i)の前記複数の宿主駆動型耐性因子のうちの前記1つ以上のそれぞれについての倍率変化を確立する工程と、
(iv)工程(i)の前記複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された前記倍率変化に基づいて、前記癌患者が前記ICIによる前記治療に対して好ましい、または好ましくない応答を有することを決定する工程と、
(iva)前記複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された前記倍率変化に基づいて、前記癌患者が前記ICIによる前記治療に対して好ましくない応答を有する場合、前記好ましくない応答を示している倍率変化を示す前記1つ以上の宿主駆動型耐性因子の中で、優勢な因子を選択し、治療有効量の、前記優勢な因子またはその受容体の活性を遮断する薬剤と組み合わせた、治療有効量の前記ICIで前記患者を治療する工程、あるいは、
(ivb)前記複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された前記倍率変化に基づいて、前記癌患者が前記ICIによる前記治療に対して好ましい応答を有する場合、前記ICI単独による前記癌患者の前記治療を継続する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療に応答しない癌患者の治療のための方法であって、前記方法が、前記癌患者に、治療有効量の前記ICIを、治療有効量の、優勢な因子、またはその受容体の活性を遮断する薬剤と組み合わせて、前記癌患者に投与することを含み、前記優勢な因子が、前記ICIによる前記癌患者の治療に応答して生成される複数の宿主駆動型耐性因子の中から選択され、前記複数の宿主駆動型耐性因子が、前記ICIによる前記治療に対する前記癌患者の好ましくない応答を予測する倍率変化を有し、前記倍率変化が、(i)前記ICIによる治療セッション後に前記癌患者から得られた、血漿、全血、血清または末梢血単核球から選択される血液試料中の各宿主駆動型耐性因子のレベルを、(ii)前記ICIによる前記治療セッション前に前記癌患者から得られた、(i)と同じ種類の血液試料からの同じ因子について得られた基準レベルと比較することによって確立される、方法。
【請求項3】
工程(i)および工程(ii)の前記血液試料が、両方とも血漿である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ICIによる前記治療セッションが、
(a)前記ICIによる最初の治療セッションであり、工程(i)の前記血液試料が、前記最初の治療セッション後、約20、24、30、36、40、48、50、60、72時間以上(最大1週間以上、最大2週間以上または最大3週間以上を含む)の時点で前記癌患者から得られ、工程(ii)の前記基準血液試料が、前記ICIによる前記最初の治療セッション前、約72時間以下を含む時点(約60、50、48、40、36、30、24、または20時間以下を含む)、または前記ICIによる前記最初の治療セッションの直前を含む時点で前記癌患者から得られるか、
(b)前記ICIによる前記最初の治療セッションではない複数の治療セッションのうちの1つであり、血液試料が、2つの連続する治療セッションの間の任意の時点で前記癌患者から得られ、前記血液試料が、同時に、工程(i)の前記血液試料であり、工程(ii)による前記基準血液試料が、工程(i)による次のセッションアッセイのためのものであるか、あるいは
(c)2つの連続する治療セッションの間の時間が、前記ICIに応じて2週間または3週間であり、前記血液試料が、前記ICIによる前記最初の治療セッションではない前記治療セッション後、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、または21日目に得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の宿主駆動型耐性因子のうちの前記1つ以上のそれぞれについての前記倍率変化は、その値が約1.5以上である場合、増加/上方制御を意味し、有意かつ前記ICIによる前記治療に対する前記癌患者の好ましくない応答を予測するとみなされ、あるいは前記倍率変化は、その値が約0.5以下である場合、減少/下方制御を意味し、有意かつ前記癌患者の前記ICIによる前記治療に対する好ましい応答を予測するとみなされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ICIによる前記治療に対する前記癌患者の好ましいか、または好ましくない応答の前記予測が、前記宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上、任意に2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、20個以上、または25個以上の有意な倍率変化に基づく、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ICIが、PD-1、PD-L1、CTLA-4、A2AR、BT-H3、BT-H4、BT-H5、BTLA、IDO1、KIR、LAG-3、TDO、TIM-3、TIGIT、VISTA、またはこれらの組み合わせから選択される免疫チェックポイントに対する阻害剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ICIが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、AMP-224、MEDI0680、もしくはスパルタリズマブから選択される抗PD-1モノクローナル抗体、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブもしくはMDX-1105から選択される抗PD-L1モノクローナル抗体、イピリムマブもしくはトレメリムマブから選択される抗CTLA-4モノクローナル抗体、レラトリマブ、LAG525もしくはREGN3767から選択される抗LAG-3モノクローナル抗体、TSR022もしくはMBG453から選択される抗TIM-3モノクローナル抗体、抗KIRモノクローナル抗体リリルマブ、抗TIGITモノクローナル抗体OMP-31M32、抗VISTAモノクローナル抗体JNJ-61610588(オンバチリマブ)、またはこれらの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、(a)2つのICIの組み合わせであって、ニボルマブ(抗PD-1)およびイピリムマブ(抗CTLA-4)、ニボルマブ(抗PD-1)およびアテゾリムマブ(抗PD-L1)、ならびにデュルバルマブ(抗PD-L1)およびトレメリムマブ(抗CTLA-4)から選択される、2つのICIの組み合わせ、(b)前記ICIと、CD40、ICOS、OX40、およびCD137(4-IBB)から選択されるT細胞共刺激分子に対するアゴニストモノクローナル抗体との組み合わせ、または(c)前記ICIと、化学療法、標的癌療法、および放射線療法を含む1つ以上の従来の癌療法との組み合わせ、により治療される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記宿主駆動型耐性因子が、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、酵素および可溶性受容体を含む分子因子であり、前記因子が腫瘍形成促進性または転移促進性因子であり得、前記腫瘍形成促進因子が、血管新生促進、炎症誘発性/走化性、または増殖性成長因子であり得る、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記宿主駆動型耐性因子が、ADAMTS1、アンフィレグリン、Axl、CCL5/RANTES、CCL17/TARC、EGF、エオタキシン-2、FGF-21、Gas6、G-CSF、GM-CSF、HGF、IFN-ガンマ、IL-1Rアルファ、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、TACI、M-CSF、MMP-9、PDGF-BB、プロMMP9、またはSCFを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ICIが抗PD-1であり、前記抗PD-1治療に応答して上方制御される前記宿主駆動型耐性因子が、(i)G-CSF、GM-CSFおよびPDGF-BBを含む血管新生促進因子、(ii)CCL17/TARC、CCL5/RANTES、G-CSF、GM-CSF、IFN-ガンマ、IL-1Rアルファ、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33およびM-CSFを含む炎症誘発性および/または走化性因子、(iii)FGF-21、Gas6およびHGFを含む増殖性成長因子、ならびに(iv)前記転移促進因子MMP-9から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ICIが抗PD-L1であり、抗PD-L1治療に応答して上方制御される前記宿主駆動型耐性因子が、(i)G-CSFおよびSCFを含む血管新生促進因子、(ii)エオタキシン-2、G-CSF、IL-1ra、IL-6、IL-7、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、SCF、およびTACIを含む炎症誘発性および/または走化性因子、(iii)アンフィレグリン、Axl、EGF、およびHGFを含む増殖性成長因子、ならびに(iv)ADAMTS1およびプロMMP9を含む転移促進因子から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記選択された優勢な因子が、前記癌患者の前記ICIによる前記治療に対する好ましくない応答を示す、1.5以上の倍率変化を有し、前記優勢な因子またはその受容体を遮断する薬剤と組み合わせた前記ICIによる前記癌患者の治療を進める、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記ICIおよび前記優勢な因子または前記その受容体を遮断する前記薬剤が、いずれかの順序で同時にまたは逐次的に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記優勢な因子が、アンフィレグリン、EGF、EGFR、FGF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、MMP9、PDGF、TNF-αおよびVEGF-Aを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記優勢な因子が、MMP9であり、前記ICIが、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、前記癌患者が、SB-3CTなどのMMP9阻害剤と組み合わせた前記ICIで治療される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記優勢な因子が、アンフィレグリンであり、前記ICIが、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、前記癌患者が、抗アンフィレグリン抗体と組み合わせた前記ICIで治療される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記優勢な因子が、IL-6であり、前記ICIが、抗CTLA-4、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、前記癌患者が、(i)シルツキシマブ、オロキズマブ、エルシリモマブ、クラザキズマブ、ゲリリムズマブ、EBI-031およびシルクマブを含む、抗IL-6モノクローナル抗体、またはそのバイオシミラー、(ii)BCD-089、トシリズマブ、LusiNEX、およびサリルマブを含む、抗IL-6Rモノクローナル抗体またはそのバイオシミラー、(iii)ナノボディボバリリズマブ、ならびに(iv)オラムキセプトを含むIL-6Rアンタゴニストから選択される抗IL-6または抗IL-6受容体(抗IL-6R)と組み合わせた前記ICIで治療される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記抗PD-1モノクローナル抗体が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、AMP-224、MEDI0680、もしくはスパルタリズマブであり、前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、もしくはMDX-1105であり、前記抗CTLA-4モノクローナル抗体が、イピリムマブもしくはトレメリムマブ、またはこれらの組み合わせである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記癌が、膀胱癌、骨癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、大腸癌、大腸直腸癌、食道癌、胃癌、胃腸癌、神経膠芽細胞腫、頭頚部癌、頭頚部扁平上皮癌、肝細胞癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、黒色腫、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、皮膚癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、泌尿生殖器癌、もしくは子宮癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫ならびに肉腫を含む、原発性または転移性癌である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
癌の治療において、前記治療に応答しない患者で使用するための免疫チェックポイント阻害剤(ICI)であって、前記治療が、治療有効量の前記ICIを、治療有効量の、優勢な因子、またはその受容体の活性を遮断する薬剤と組み合わせて投与することを含み、前記優勢な因子が、前記ICIによる前記癌患者の治療に応答して生成される複数の宿主駆動型耐性因子の中から選択され、前記複数の宿主駆動型耐性因子が、前記ICIによる治療に対する前記癌患者の好ましくない応答を予測する倍率変化を有し、前記倍率変化が、(i)前記ICIによる治療セッション後に前記癌患者から得られた、血漿、全血、血清または末梢血単核球から選択される血液試料中の各宿主駆動型耐性因子のレベルを、(ii)前記ICIによる治療セッション前に前記癌患者から得られた、(i)と同じ種類の血液試料からの同じ因子について得られた基準レベルと比較することによって確立される、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項23】
前記ICIが、PD-1、PD-L1、CTLA-4、A2AR、BT-H3、BT-H4、BT-H5、BTLA、IDO1、KIR、LAG-3、TDO、TIM-3、TIGIT、VISTA、またはこれらの組み合わせから選択される免疫チェックポイントに対する阻害剤である、請求項22に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項24】
前記ICIが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、AMP-224、MEDI0680、およびスパルタリズマブから選択される抗PD-1モノクローナル抗体、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブおよびMDX-1105から選択される抗PD-L1モノクローナル抗体、イピリムマブおよびトレメリムマブから選択される抗CTLA-4モノクローナル抗体、レラトリマブ、LAG525およびREGN3767から選択される抗LAG-3モノクローナル抗体、TSR022およびMBG453から選択される抗TIM-3モノクローナル抗体、抗KIRモノクローナル抗体リリルマブ、抗TIGITモノクローナル抗体OMP-31M32、抗VISTAモノクローナル抗体JNJ-61610588(オンバチリマブ)、またはこれらの組み合わせである、請求項23に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項25】
(a)2つのICIの組み合わせであって、ニボルマブ(抗PD-1)およびイピリムマブ(抗CTLA-4)、ニボルマブ(抗PD-1)およびアテゾリムマブ(抗PD-L1)、またはデュルバルマブ(抗PD-L1)およびトレメリムマブ(抗CTLA-4)から選択される、2つのICIの組み合わせ、(b)前記ICIと、CD40、ICOS、OX40、およびCD137(4-IBB)から選択されるT細胞共刺激分子に対するアゴニストモノクローナル抗体との組み合わせ、あるいは(c)前記ICIと、化学療法、標的癌療法、および放射線療法を含む1つ以上の従来の癌療法様式との組み合わせから選択される、請求項23または24に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項26】
前記宿主駆動型耐性因子が、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、酵素および可溶性受容体を含む分子因子であり、前記因子が、腫瘍形成促進性または転移促進性因子であり得、前記腫瘍形成促進因子が、血管新生促進、炎症誘発性/走化性、または増殖性成長因子であり得る、請求項22~25のいずれか一項に記載免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項27】
前記宿主駆動型耐性因子が、ADAMTS1、アンフィレグリン、Axl、CCL5/RANTES、CCL17/TARC、EGF、エオタキシン-2、FGF-21、Gas6、G-CSF、GM-CSF、HGF、IFN-ガンマ、IL-1Rアルファ、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、TACI、M-CSF、MMP-9、PDGF-BB、プロMMP9、またはSCFを含む、請求項26に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項28】
前記ICIが抗PD-1であり、前記抗PD-1治療に応答して上方制御される前記宿主駆動型耐性因子が、(i)G-CSF、GM-CSFおよびPDGF-BBを含む血管新生促進因子、(ii)CCL17/TARC、CCL5/RANTES、G-CSF、GM-CSF、IFN-ガンマ、IL-1Rアルファ、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33およびM-CSFを含む炎症誘発性および/または走化性因子、(iii)FGF-21、Gas6およびHGFを含む増殖性成長因子、および(iv)転移促進因子MMP-9から選択される、請求項27に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項29】
前記ICIが抗PD-L1であり、前記抗PD-L1治療に応答して上方制御される前記宿主駆動型耐性因子が、(i)G-CSFおよびSCFを含む血管新生促進因子、(ii)エオタキシン-2、G-CSF、IL-1ra、IL-6、IL-7、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、SCF、およびTACIを含む炎症誘発性および/または走化性因子、(iii)アンフィレグリン、Axl、EGF、およびHGFを含む増殖性成長因子、ならびに(iv)ADAMTS1およびプロMMP9を含む転移促進因子から選択される、請求項27に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項30】
前記選択された優勢な因子が、1.5以上の倍率変化を有する、請求項22~29のいずれか一項に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項31】
前記ICIおよび前記優勢な因子またはその受容体を遮断する前記薬剤が、いずれかの順序で同時にまたは逐次的に投与される、請求項30に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項32】
前記優勢な因子が、アンフィレグリン、EGF、EGFR、FGF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、MMP9、PDGF、TNF-αおよびVEGF-Aを含む、請求項26~31のいずれか一項に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項33】
前記優勢な因子が、MMP9であり、前記ICIが、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、前記癌患者が、SB-3CTなどのMMP9阻害剤と組み合わせた前記ICIで治療される、請求項32に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項34】
前記優勢な因子が、アンフィレグリンであり、前記ICIが、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、前記癌患者が、抗アンフィレグリン抗体と組み合わせた前記ICIで治療される、請求項32に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項35】
前記優勢な因子が、IL-6であり、前記ICIが、抗CTLA-4、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、前記癌患者が、(i)シルツキシマブ、オロキズマブ、エルシリモマブ、クラザキズマブ、ゲリリムズマブ、EBI-031およびシルクマブを含む、抗IL-6モノクローナル抗体、またはそのバイオシミラー、(ii)BCD-089、トシリズマブ、LusiNEX、およびサリルマブを含む、抗IL-6Rモノクローナル抗体またはそのバイオシミラー、(iii)ナノボディボバリリズマブ、ならびに(iv)オラムキセプトを含むIL-6Rアンタゴニストから選択される抗IL-6または抗IL-6受容体(抗IL-6R)と組み合わせた前記ICIで治療される、請求項32に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項36】
前記抗CTLA-4モノクローナル抗体が、イピリムマブもしくはトレメリムマブであり、前記抗PD-1モノクローナル抗体が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、AMP-224、MEDI0680、もしくはスパルタリズマブであり、および前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、もしくはMDX-1105、またはこれらの組み合わせである、請求項33~35のいずれか一項に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。
【請求項37】
前記癌が、膀胱癌、骨癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、大腸癌、大腸直腸癌、食道癌、胃癌、胃腸癌、神経膠芽細胞腫、頭頚部癌、頭頚部扁平上皮癌、肝細胞癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、黒色腫、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、皮膚癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、泌尿生殖器癌、もしくは子宮癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫ならびに肉腫を含む、原発性または転移性癌である、請求項22~36のいずれか一項に記載の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月13日に出願された非仮米国出願第16/219,203号の優先権の利益を主張する。先の出願の開示は、その一部とみなされ、参照によりその全体が本出願の開示に組み込まれる。
【0002】
本発明は、腫瘍学の分野にあり、特に、別の治療薬と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤による癌患者の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床腫瘍学の治療に対する主な障害の1つは、初期腫瘍応答が観察される場合でも、腫瘍がしばしば療法に対して耐性を生じることである。多くの研究は、薬剤耐性を促進し、腫瘍の再増殖を説明できる腫瘍細胞の変異および遺伝的異常の寄与に焦点を合わせてきた。しかし、研究は、宿主が癌療法に応答して、腫瘍形成促進および転移促進効果を生成し、それが次に腫瘍の再増殖に寄与し、したがって薬物の抗腫瘍活性を無効にすることを示した(レビューについては、Katz and Shaked,2015;Shaked,2016を参照されたい)。
【0004】
抗癌治療に対する宿主媒介応答は、分子反応および/または細胞応答であり得る。化学療法薬で治療すると、宿主の骨髄由来細胞(BMDC)が骨髄区画から動員され、治療された腫瘍にコロニーを形成し、腫瘍の血管新生および癌の再増殖に寄与し、それによって療法に対する耐性を促進する(Shaked et al.,2006,2008)。癌療法はまた、マクロファージおよび抗原提示細胞などの様々な免疫細胞の腫瘍形成促進活性化を誘発する(Beyar-Katz et al.,2016;De Palma and Lewis,2013;Kim et al.2012;Ma et al.,2013)。全体として、これらの前述の研究は、異なる抗癌治療に対する宿主媒介の分子および細胞応答が、免疫細胞の活性化または養成、ならびに様々な腫瘍形成促進因子の分泌を伴うことを示している。これらの併用効果は、腫瘍の再増殖および療法への耐性に寄与する。この比較的新しい現象は、癌の進行および癌療法に対する耐性を理解する上でパラダイムシフトをもたらした。
【0005】
最近、新しい治療法である免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を使用した免疫療法が、癌療法に革命をもたらしている。このような免疫調節薬は、黒色腫、前立腺癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、およびまたいくつかの血液悪性腫瘍などの進行性悪性腫瘍(ステージIVを含む)の治療に目覚ましい成功を収めている(Postow et al.,2015)。ヒトの免疫系は癌性細胞に対する応答を認識して開始することができるが、この応答は腫瘍由来の阻害によって回避されることが多く、免疫寛容をもたらす。これに関して、腫瘍抗原特異的CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびやナチュラルキラー(NK)細胞などの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍微小環境にコロニーを形成することが判明している(Gajewski et al.,2013)。しかし、腫瘍部位では、それらは腫瘍細胞に対して作用する能力を完全に欠いている(Ostrand-Rosenberg and Sinha,2009)。これは、癌細胞、間質細胞、または骨髄由来抑制細胞(MDSC)および制御性T細胞(Treg)などの他の抑制免疫細胞によって分泌される因子の直接的な阻害効果によるものである(Makkouk and Weiner,2015)。例えば、IL-10は様々な種類の癌で頻繁に上方制御され、免疫系を抑制することが示された(Sato et al.,2011)。したがって、腫瘍細胞に対する免疫系を負に調節する分子を特定することは、腫瘍に対する免疫細胞の活性化を支援する免疫調節薬の開発につながる。
【0006】
特に興味深いのは、CTLA-4、PD-1およびそのリガンドであるPD-L1などの免疫チェックポイントタンパク質である。これらのチェックポイントタンパク質は、腫瘍細胞または他の免疫細胞によって発現され、CTLの疲弊に寄与する(Postow et al.,2015;Topalian et al.,2015)。具体的には、それらは免疫応答を阻止し、腫瘍細胞に対するT細胞殺傷効果を阻害する。そのため、免疫抑制効果を阻害するためにチェックポイント阻害剤が開発されている。現在、免疫チェックポイントCTLA-4およびPD-1またはそのリガンドPD-L1をブロックする抗体が開発されている(Pardoll,2012)。これらのICIは現在、診療所で様々な悪性腫瘍の治療に使用されており、いくつかの有望で目覚ましい成功を収めている(Romano and Romero,2015)。しかしながらICIは、癌患者の限られた部分(約10~20%)に対してのみ治療的有用性を示している。例えば、CTLA-4遮断抗体であるイピリムマブの臨床試験からのプールされたデータは、臨床応答の期間が約3年であり、最大10年続く可能性があることを明らかにした。しかしながら、この劇的な治療効果は、一部の患者(約20%)でのみ観察されている。したがって、患者の大多数は、このような治療に対して固有の耐性メカニズムを呈している。依然として、ICIに応答する患者の部分母集団を定義する分子的側面は完全には明らかではあない。腫瘍細胞によるPD-L1発現、遺伝子変異量(mutational burden)、リンパ球浸潤などのマーカーが、ICI免疫療法に応答する癌患者を予測できることが示唆されている。しかしながら、これらの前述のバイオマーカーは、ICI免疫療法に対する腫瘍の応答性またはICIに対する患者の耐性と常に相関しているわけではない。したがって、追加の可能なメカニズムは未だ不明である。
【0007】
両方とも2018年6月4日に出願され、それぞれWO2018/225062およびWO2018/225063として公開された本出願人の国際特許出願No.PCT/IL2018/050608およびNo.PCT/IL2018/050609において(その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる)、癌療法による癌治療に対する個別化された応答を予測する方法は、該癌療法に応答して癌患者によって循環に誘発される複数の因子/バイオマーカー(「宿主応答」)の特定および参照レベルと比較して、複数の因子のうちの1つ以上のそれぞれのレベルの変化が、該癌療法による治療に対する癌患者の好ましいか、または好ましくない応答をどのように予測するかを決定することを記載した。
【0008】
有望なICI免疫療法様式を含む癌療法のすべての様式に対する腫瘍耐性に寄与する宿主媒介性の細胞および分子メカニズムを明らかにすることが非常に望ましいであろう。これにより、そのような望ましくない宿主の効果を阻止する戦略の開発が可能になり、治療結果が改善され、癌療法に対する耐性を遅延させるであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、癌療法に応答して、癌患者(「宿主」)が免疫チェックポイント阻害剤(以降「ICI」)による癌免疫療法に対する一組の宿主駆動型耐性因子を生成し、宿主循環に誘発することができ、これがICIによる患者治療の有効性を制限または打ち消す可能性があり得ることを示す、本出願の背景セクションにおいて前述した以前の研究に基づく。これらの因子の決定により、ICIによる治療に対する患者の好ましいか、または好ましくない応答の個別化された形式での予測が可能になる。本明細書で互換的に「因子」または「バイオマーカー」と表示されるこれらの因子は、主にサイトカイン、ケモカイン、成長因子、可溶性受容体、酵素、および異なる器官または腫瘍微小環境のいずれかで、患者が治療されるICIによる癌療法に応答して、宿主細胞によって産生される他の分子である因子である。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、癌患者を免疫チェックポイント阻害剤(ICI)で治療する方法を提供し、この方法は、以下の工程:
(i)該ICIによる治療セッション後の時点で癌患者から得られた血漿、全血、血清、または末梢血単核球から選択された血液試料に対してアッセイを実施して、ICIによる治療に応答して、宿主(「癌患者」)によって駆動される複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のレベルを決定する工程であって、該複数の因子のうちの1つ以上が、個別化された形態で、ICIによる治療に対する癌患者の応答性または非応答性を促進する、工程と、
(ii)ICIによる該治療セッションの前の時点で癌患者から得られた、工程(i)の血液試料と同じ種類の血液試料中の該因子のそれぞれのレベルを決定することによって、工程(i)の複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のそれぞれの基準レベルを得る工程と、
(iii)工程(i)の各宿主駆動型耐性因子のレベルを同じ因子について工程(ii)の基準レベルと比較することによって、工程(i)の複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のそれぞれについての倍率変化を確立する工程と、
(iv)工程(i)の複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された倍率変化に基づいて、癌患者が該ICIによる治療に対して好ましいか、または好ましくない応答を有することを決定する工程と、
(iva)複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された倍率変化に基づいて、癌患者が該ICIによる治療に対して好ましくない応答を有する場合、該好ましくない応答を示している倍率変化を示す1つ以上の宿主駆動型耐性因子の中で、優勢な因子を選択し、治療有効量のICIと共に、選択された優勢宿主駆動型耐性因子(本明細書では「優勢な因子」)またはその受容体の活性を遮断する治療有効量の薬剤で患者を治療する工程、あるいは
(ivb)複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について(iii)で確立された倍率変化に基づいて、癌患者が該ICIによる治療に対して好ましい応答を有する場合、ICI単独による癌患者の治療を継続する工程と、を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療に応答しない癌患者の治療のための方法に関し、この方法は、癌患者に、治療有効量のICIを、治療有効量の、優勢な因子またはその受容体の活性を遮断する薬剤と組み合わせて、癌患者に投与することを含み、優勢な因子は、ICIによる癌患者の治療に応答して生成される複数の宿主駆動型耐性因子の中から選択され、複数の宿主駆動型耐性因子が、ICIによる治療に対する癌患者の好ましくない応答を予測する倍率変化を有し、倍率変化が、(i)ICIによる治療セッション後に癌患者から得られた、血漿、全血、血清または末梢血単核球から選択される血液試料中の各宿主駆動型耐性因子のレベルを、(ii)ICIによる該治療セッション前に癌患者から得られた、(i)と同じ種類の血液試料からの同じ因子について得られた基準レベルと比較することによって確立される。好ましくは、工程(i)および(ii)の血液試料は、両方とも血漿である。
【0012】
ある特定の実施形態では、本発明は、癌の治療で、該治療に応答しない患者で使用するための免疫チェックポイント阻害剤(ICI)に関し、治療有効量のICIを、優勢な因子、またはその受容体の活性を遮断する、有効量の薬剤と組み合わせて投与することを含み、優勢な因子は、ICIによる癌患者の治療に応答して生成される複数の宿主駆動型耐性因子の中から選択され、複数の宿主駆動型耐性因子が、ICIによる治療に対する癌患者の好ましくない応答を予測する倍率変化を有し、倍率変化が、(i)ICIによる治療セッション後に癌患者から得られた、血漿、全血、血清または末梢血単核球から選択される血液試料中の各宿主駆動型耐性因子のレベルを、(ii)ICIによる治療セッション前に癌患者から得られた、(i)と同じ種類の血液試料からの同じ因子について得られた基準レベルと比較することによって確立される。好ましくは、工程(i)および(ii)の血液試料は、両方とも血漿である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】乳癌のマウスモデルにおける原発腫瘍の増殖および生存に対するMMP9の遮断の効果を示している。図1Aは、抗PD-L1とMMP-2/MMP-9阻害剤SB-3CTとの組み合わせで治療されたマウスが、ビヒクル、抗PD-L1またはSB-3CT単独で治療されたマウスと比較して腫瘍サイズの縮小を呈することを示している。図1Bは、最後の実験日である27日目の腫瘍体積を示している。図1Cは、他の治療群と比較して、併用療法で治療されたマウスのより良好な生存を示している。
図1B】乳癌のマウスモデルにおける原発腫瘍の増殖および生存に対するMMP9の遮断の効果を示している。図1Aは、抗PD-L1とMMP-2/MMP-9阻害剤SB-3CTとの組み合わせで治療されたマウスが、ビヒクル、抗PD-L1またはSB-3CT単独で治療されたマウスと比較して腫瘍サイズの縮小を呈することを示している。図1Bは、最後の実験日である27日目の腫瘍体積を示している。図1Cは、他の治療群と比較して、併用療法で治療されたマウスのより良好な生存を示している。
図1C】乳癌のマウスモデルにおける原発腫瘍の増殖および生存に対するMMP9の遮断の効果を示している。図1Aは、抗PD-L1とMMP-2/MMP-9阻害剤SB-3CTとの組み合わせで治療されたマウスが、ビヒクル、抗PD-L1またはSB-3CT単独で治療されたマウスと比較して腫瘍サイズの縮小を呈することを示している。図1Bは、最後の実験日である27日目の腫瘍体積を示している。図1Cは、他の治療群と比較して、併用療法で治療されたマウスのより良好な生存を示している。
図2A】大腸癌のマウスモデルにおける原発腫瘍の増殖および生存に対する宿主由来のアンフィレグリンの遮断の効果を示している。図2A~2Bは、抗PD-L1、抗アンフィレグリン抗体(抗AREG)、または抗PD-L1と抗AREGとの併用療法で治療されたマウスの腫瘍体積を示している。図2Cは、他の治療群と比較して、併用療法で治療されたマウスのより良好な生存を示しているカプラン・マイヤー曲線である。
図2B】大腸癌のマウスモデルにおける原発腫瘍の増殖および生存に対する宿主由来のアンフィレグリンの遮断の効果を示している。図2A~2Bは、抗PD-L1、抗アンフィレグリン抗体(抗AREG)、または抗PD-L1と抗AREGとの併用療法で治療されたマウスの腫瘍体積を示している。図2Cは、他の治療群と比較して、併用療法で治療されたマウスのより良好な生存を示しているカプラン・マイヤー曲線である。
図2C】大腸癌のマウスモデルにおける原発腫瘍の増殖および生存に対する宿主由来のアンフィレグリンの遮断の効果を示している。図2A~2Bは、抗PD-L1、抗アンフィレグリン抗体(抗AREG)、または抗PD-L1と抗AREGとの併用療法で治療されたマウスの腫瘍体積を示している。図2Cは、他の治療群と比較して、併用療法で治療されたマウスのより良好な生存を示しているカプラン・マイヤー曲線である。
図3】抗PD-L1または抗CTLA-4による治療後のIL-6発現を示している。
図4A】抗PD-L1による治療後に誘発された宿主由来のIL-6を遮断することの、原発腫瘍の増殖およびマウスの生存への影響を示している。図4Aは、対照マウスまたは抗PD-L1または抗IL-6のみで治療されたマウスと比較して、抗PD-L1と抗IL-6との組み合わせで治療されたマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示している。図4B図4Aに相当するが、個々の動物の腫瘍増殖を示し、図4Cは、抗PD-L1と抗IL-6との両方の併用治療も他の治療群と比較してより良好な生存をもたらしたことを示している。
図4B】抗PD-L1による治療後に誘発された宿主由来のIL-6を遮断することの、原発腫瘍の増殖およびマウスの生存への影響を示している。図4Aは、対照マウスまたは抗PD-L1または抗IL-6のみで治療されたマウスと比較して、抗PD-L1と抗IL-6との組み合わせで治療されたマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示している。図4B図4Aに相当するが、個々の動物の腫瘍増殖を示し、図4Cは、抗PD-L1と抗IL-6との両方の併用治療も他の治療群と比較してより良好な生存をもたらしたことを示している。
図4C】抗PD-L1による治療後に誘発された宿主由来のIL-6を遮断することの、原発腫瘍の増殖およびマウスの生存への影響を示している。図4Aは、対照マウスまたは抗PD-L1または抗IL-6のみで治療されたマウスと比較して、抗PD-L1と抗IL-6との組み合わせで治療されたマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示している。図4B図4Aに相当するが、個々の動物の腫瘍増殖を示し、図4Cは、抗PD-L1と抗IL-6との両方の併用治療も他の治療群と比較してより良好な生存をもたらしたことを示している。
図5A】抗CTLA-4による治療後に誘発された宿主由来のIL-6を遮断することの、原発腫瘍の増殖および生存への影響を示している。BALB/cマウスを抗CTLA-4で治療すると、腫瘍増殖が減少し(図5A)、対照マウスと比較して生存率が向上し(図5B)、これらの効果は、両方の抗CTLA-4と抗IL-6抗体の両方による併用治療によってさらに改善された(図5A~5B)。
図5B】抗CTLA-4による治療後に誘発された宿主由来のIL-6を遮断することの、原発腫瘍の増殖および生存への影響を示している。BALB/cマウスを抗CTLA-4で治療すると、腫瘍増殖が減少し(図5A)、対照マウスと比較して生存率が向上し(図5B)、これらの効果は、両方の抗CTLA-4と抗IL-6抗体の両方による併用治療によってさらに改善された(図5A~5B)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法を説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論およびプロトコルに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的としており、他に定義されない場合、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されたい。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により明らかに別の意味が指示されない限り、複数の参照を含むことにも留意されなければならない。
【0016】
本明細書で使用される場合、「癌療法」という用語は、「癌療法様式(cancer-modality therapy)」という用語と交換可能に使用されてもよく、複数の参照、すなわち、単一の療法様式または2つ以上の療法様式の組み合わせを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「誘発される」、「駆動される」および「生成される」という用語は、癌治療に応答して癌患者によって循環に誘発される因子(「宿主応答」)を示すために交換可能に使用される。
【0018】
癌療法において、治療のサイクルは、薬物がある時点で患者に投与され(例えば、1日または2日にわたる注射)、その後、治療がないいくらかの時間(例えば、1、2、または3週間)があることを意味する。本明細書で使用される場合、「治療セッション」は、治療サイクルの開始時にICIが患者に投与される「ある時点」を指す。治療と休止時間は、1つの「治療サイクル」を構成する。患者がサイクルの終わりに達すると、再び次のサイクルを開始する。一連の治療サイクルは「コース」と呼ばれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤(ICI)」という用語は、単一のICI、ICIの組み合わせ、およびICIと別の癌療法との組み合わせを指す。ICIは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0020】
一態様では、本発明は、癌患者を免疫チェックポイント阻害剤(ICI)で治療する方法を提供し、この方法は、以下の工程:
(i)該ICIによる治療セッション後の時点で癌患者から得られた血漿、全血、血清、または末梢血単核球から選択された血液試料に対してアッセイを実施して、ICIによる治療に応答して、宿主(「癌患者」)によって駆動される複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のレベルを決定する工程であって、該複数の因子のうちの1つ以上が、個別化された形態で、ICIによる治療に対する癌患者の応答性または非応答性を促進する、工程と、
(ii)ICIによる該治療セッションの前の時点で癌患者から得られた、工程(i)の血液試料と同じ種類の血液試料中の該因子のそれぞれのレベルを決定することによって、工程(i)の複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のそれぞれの基準レベルを取る工程と、
(iii)工程(i)の各宿主駆動型耐性因子のレベルを同じ因子について工程(ii)の基準レベルと比較することによって、工程(i)の複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上のそれぞれについての倍率変化を確立する工程と、
(iv)工程(i)の複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された倍率変化に基づいて、癌患者が該ICIによる治療に対して好ましいか、または好ましくない応答を有することを決定する工程と、
(iva)複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について工程(iii)で確立された倍率変化に基づいて、癌患者が該ICIによる治療に対して好ましくない応答を有する場合、該好ましくない応答を示している倍率変化を示す1つ以上の宿主駆動型耐性因子の中で、優勢な因子を選択し、治療有効量のICIと共に、選択された優勢宿主駆動型耐性因子(本明細書では「優勢な因子」)またはその受容体の活性を遮断する治療有効量の薬剤で患者を治療する工程、あるいは
(ivb)複数の宿主駆動型耐性因子のうちの1つ以上について(iii)で確立された倍率変化に基づいて、癌患者が倍ICIによる治療に対して好ましい応答を有する場合、ICI単独による癌患者の治療を継続する工程と、を含む。
【0021】
癌患者の「好ましい応答」は、癌患者のICIによる治療に対する「応答性」を示し、すなわち、ICIと応答性がある癌患者の治療は、腫瘍退縮、腫瘍縮小もしくは腫瘍壊死、免疫系による抗腫瘍応答などの望ましい臨床転帰をもたらし、腫瘍の再発、腫瘍の増殖もしくは腫瘍の転移を防止または遅延する。この場合、上記の工程(ivb)で定義されているように、ICI単独で応答性がある癌患者の治療を継続することが可能である。
【0022】
癌患者の「好ましくない応答」は、腫瘍形成促進性、例えば血管新生促進性、炎症誘発性/走化性もしくは増殖性成長因子、または転移促進因子であり得る宿主駆動型耐性因子の誘発による、ICIによる治療に対する癌患者の「非応答性」を示し、したがってICIと非応答性の癌患者の治療は、望ましい臨床転帰をもたらさず、腫瘍の拡大、再発、および転移などの望ましくない転帰をもたらすであろう。望ましい臨床転帰を達成するために、工程(iva)で上記で定義された優勢な因子を遮断し、ICIと選択された優勢な因子の活性を遮断する治療薬との組み合わせで非応答性の癌患者を治療する必要がある。
【0023】
したがって、一実施形態では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療に応答しない癌患者の治療のための方法に関し、この方法は、癌患者に、治療有効量のICIを、優勢な因子、またはその受容体の活性を遮断する、有効量の薬剤と共に、癌患者に投与することを含み、優勢な因子は、ICIによる癌患者の治療に応答して生成される複数の宿主駆動型耐性因子の中から選択され、複数の宿主駆動型耐性因子が、ICIによる治療に対する癌患者の好ましくない応答を予測する倍率変化を有し、倍率変化が、(i)ICIによる治療セッション後に癌患者から得られた、血漿、全血、血清または末梢血単核球から選択される血液試料中の各宿主駆動型耐性因子のレベルを、(ii)ICIによる治療セッション前に癌患者から得られた、(i)と同じ種類の血液試料からの同じ因子について得られた基準レベルと比較することによって確立される。
【0024】
好ましい実施形態では、工程(i)および(ii)の血液試料は、両方とも血漿である。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、ICIによる治療セッションは、複数の治療セッションのうちの1つである。ある特定の実施形態では、ICIによる複数の治療セッションのうちの1つは、該ICIによる最初の治療セッションであり、工程(i)の血液試料は、該最初の治療セッション後、約20、24、30、36、40、48、50、60、72時間以上(最大1週間以上、最大2週間以上、または最大3週間以上を含む)で癌患者から得られ、および工程(ii)の基準血液試料は、ICIによる該最初の治療セッション前、約72時間以下を含む時点(約60、50、48、40、36、30、24または20時間以下を含む)、またはICIによる該最初の治療セッションの直前を含む時点で癌患者から得られる。
【0026】
ある特定の実施形態では、ICIによる癌患者の複数の治療セッションのうちの1つは、ICIによる治療が開始されるときの最初の治療セッションである。この場合、工程(ii)の基準/ベースライン試料、好ましくは血漿は、治療を開始する前約72時間以下を含む時点(約60、50、48、40、36、30、24または20時間以下を含む)で、またはICIによる該最初の治療セッションの直前に癌患者から得られる。次いで、ICIによる該最初の治療セッション後、約20、24、30、36、40、48、50、60、72時間以上(最大1週間以上、最大2週間以上、または最大3週間以上を含む)で癌患者から得られた血液試料、好ましくは血漿で決定された因子の濃度レベルの間で比較が行われる。
【0027】
本発明の他の特定の実施形態では、ICIによる癌患者の治療セッションは、ICIによる最初の治療セッションではない複数の治療セッションのうちの1つである。この場合、血液試料は、ICIによる2つの連続する治療セッションの間の任意の時点で前記癌患者から得られ、血液試料が、同時に、工程(i)の血液試料であり、工程(ii)による基準血液試料が、工程(i)による次のセッションアッセイのためのものある。2つの連続する治療セッションの間の時間は、特定のICIに対して承認された治療プロトコルに依存し、例えば、ICIに応じて2週間または3週間であり得、血液試料は、2つの連続したセッションの間の1、2、3、7、14、または21日目に採取され得る。
【0028】
本発明によれば、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答して宿主/癌患者によって生成される複数の因子のレベルは、ICIによる治療後に患者から得られる血液試料、好ましくは血漿において決定される。次いで、各因子について得られた値(pg/mLでの因子濃度)が、同じ癌患者からあらかじめ採取された血液試料、好ましくは血漿で測定された同じ因子の濃度のベースラインレベルである基準レベルと比較される(以下「基準/ベースライン試料」)。基準/ベースライン試料と比較される、ICIによる治療後に癌患者から得られた血液試料で特定された因子のうちの1つ以上のレベルの変化は、各因子についての倍率変化によって定義される。各因子の倍率変化は、因子の治療:基準/ベースライン値の比率を計算することによって決定される。
【0029】
複数の宿主促進型耐性因子のうちの1つ以上のそれぞれの倍率変化は、その値が因子の約1.5以上である場合、有意かつICIによる治療に対する癌患者の好ましくない応答を予測するとみなされ、上方制御を意味し、または倍率変化は、その値が0.5以下である場合、有意かつ癌患者の該ICIによる治療に対する好ましい応答を予測するとみなされ、因子の下方制御を意味する。
【0030】
本発明によれば、ICIによる治療に対する癌患者の好ましいか、または好ましくない応答の予測は、宿主促進型耐性因子のうちの1つ以上、任意に2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、20個以上、または25個以上の有意な倍率変化に基づく。
【0031】
ICIによる治療に応答して癌患者の循環に誘発される因子/バイオマーカーには、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、酵素、および可溶性受容体などの分子因子が挙げられる。因子は、腫瘍形成促進因子または転移促進因子であり得る。腫瘍形成促進因子は、血管新生促進、炎症誘発性/走化性、または増殖性成長因子であり得る。
【0032】
ある特定の実施形態では、治療セッションは、治療が開始されたときの、癌患者の複数の治療セッションの最初のセッションである。この場合、比較は、ICIによる治療を最初に開始した後に癌患者から得られた血液試料、好ましくは血漿で決定された因子と、ICIによる試料を開始する前に癌患者から得られた基準/ベースライン血液試料、好ましくは血漿で見られる同じ因子との間で行われる。結果は、患者を治療する腫瘍内科医が癌患者の治療を継続するかどうか、または継続する方法を決定するのに役立ち得る。
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、ICIで治療されている癌患者において治療応答を監視するために実施される。この場合、治療セッションは、いくつかの治療セッションのうちの1つであるが、最初の治療セッションではない。結果は、治療を継続するかどうか、または継続する方法を決定する際に、腫瘍内科医を支援するであろう。
【0034】
ある特定の実施形態では、腫瘍形成促進因子について決定された倍率変化は、癌療法に対する患者の好ましい応答を予測し、決定は、スケジュールされたものと同じICIで治療を継続することであり得る。
【0035】
ある特定の実施形態では、腫瘍形成促進因子について決定された倍率変化は、ICIに対する患者の好ましくない応答を予測する。この場合、腫瘍形成促進因子の特定の生物学的活性に応じて、同じICIで治療を継続することを決定することができるが、例えば、因子が炎症誘発性である場合は抗炎症薬を治療に追加するか、または因子が血管新生促進性である場合は抗血管新生薬を治療に追加することによって、腫瘍形成因子の生物学的活性を遮断する薬剤を追加してもよい。
【0036】
免疫チェックポイントは、免疫活性化の調節因子である。それらは、免疫恒常性の維持および自己免疫の予防において重要な役割を果たす。癌では、免疫チェックポイントメカニズムがしばしば活性化されて、発生期の抗腫瘍免疫応答を抑制する。免疫チェックポイント分子は、癌免疫療法の優れた標的とみなされている。免疫チェックポイント分子の遮断を引き起こす免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、複数の種類の癌で使用される可能性のある癌免疫療法薬の開発に適した候補とみなされており、すでに使用されているか、開発中である。
【0037】
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)薬の開発の標的としての候補である免疫チェックポイントの例としては、PD-L1およびPD-L2の2つのリガンドを有するPD-1(プログラム細胞死1)、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、A2AR(アデノシンA2A受容体)(別名ADORA2A)、BT-H3(CD276とも呼ばれる)、BT-H4(VTCN1とも呼ばれる)、BT-H5、BTLA(BおよびTリンパ球アテニュエーター)(CD272とも呼ばれる)、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子-3)、TDO(トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ)、TIM-3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)、VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)が挙げられる。
【0038】
本発明のある特定の実施形態では、ICIは、PD-1経路を中和/遮断するPD-1またはPD-L1に対するモノクローナル抗体(mAb)である。ある特定の実施形態では、抗PD-1mAbは、進行性または切除不能な黒色腫、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)、および頭頸部の再発性扁平上皮癌(SCCH)の治療について承認または試験されたペムブロリズマブ(キートルーダ(Keytruda)、以前はランブロリズマブと呼ばれていた)である。ある特定の実施形態では、抗PD-1mAbは、ニボルマブ(オプジーボ)であり、NSCLC、RCC、黒色腫および結腸直腸癌(CRC)について承認または試験されている。ある特定の実施形態では、抗PD-1mAbは、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、および急性骨髄性白血病について承認または試験されたピジリズマブ(CT0011)である。ある特定の実施形態では、抗PD-1mAbは、REGN2810、AMP-224、MEDI0680、またはPDR001である。
【0039】
本発明のある特定の他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1に対するmAbである。ある特定の実施形態では、抗PD-L1mAbは、複数の癌に対して承認されたアテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンシオ)、またはデュルバルマブ(インフィンジ)である。アテゾリズマブは、ベバシズマブ、ゲムシタビン、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンフルニンエンチノスタット、ダラツムマブ、MPDL3280A、カルボプラチン、Nab-パクリタキセル、ラジウム-223ジクロリド、オビヌツズマブなどの1つまたは2つの他の抗癌剤と組み合わせて試験されている。
【0040】
本発明のある特定の他の実施形態では、ICIは、CTLA-4に対するmAb抗体である。ある特定の実施形態では、抗CTLA-4は、進行性/転移性黒色腫および去勢抵抗性前立腺癌について承認または試験されたイピリムマブ(ヤーボイ)である。ある特定の他の実施形態では、抗CTLA-4mAbは、トレメリムマブ(以前のチシリムマブ)である。
【0041】
ある特定の実施形態では、ICIは、以下の:(i)MGA271などの抗B7-H3、(ii)エパカドスタットなどの抗IDO、(iii)リリルマブなどの抗KIR、(iv)レラトリマブ(BMS-986016)、LAG525、REGN3767などの抗LAG-3、(v)TSR022またはMBG453などの抗TIM-3、および(vi)JNJ61610588などの抗VISTAを含む阻害剤である。
【0042】
ある特定の実施形態では、2つのICIの組み合わせが本発明に従って使用される。ある特定の実施形態では、組み合わせは、抗PD-1および抗CTLA-4、例えば、ニボルマブ-イピリムマブおよびREGN2810-イピリムマブを含む。ある特定の実施形態では、組み合わせは、抗PD-L1および抗CTLA-4、例えば、デュルバルマブ-トレメリムマブを含む。ある特定の実施形態では、組み合わせは、抗PD-1および抗PD-L1、例えば、ニボルマブ-アテゾリムマブを含む。ある特定の実施形態では、組み合わせは、抗LAG-3および抗PD-1、例えば、レラトリマブ-ニボルマブまたはREGN3767-REGN2810を含む。ある特定の実施形態では、組み合わせは、抗PD-1およびIDO阻害剤、例えば、ペムブロリズマブおよびエパカドスタットならびにニボルマブ-エパカドスタットを含む。
【0043】
CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、グルココルチコイド誘発性TNFR(GITR、CD357)、CD40などの共刺激分子は、活性化T細胞、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Treg、およびその他の免疫細胞によって発現される。免疫チェックポイントPD-1の阻害およびアゴニスト抗体による共刺激分子の刺激は、免疫応答を強化するための補完的な戦略であり、したがって、組み合わせて使用するための強力な理論的根拠を提供する。したがって、ある特定の実施形態では、本発明は、ICIと、抗ICOS mAb、例えば、MEDI-570またはBMS-986226;抗OX40 mAb、例えば、MOXR0916、KHK4083、MEDI0562またはMEDI6469;抗CD40 mAb;ならびに抗CD137(4-IBB)mAb例えば、ウレルマブまたはウトミルマブを含むT細胞共刺激分子に対するアゴニストmAbとの組み合わせを包含する。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、ICIは、化学療法、標的癌療法、および放射線療法を含む1つ以上の従来の癌療法と組み合わせて投与される。ICIと放射線療法の組み合わせは、複数の臨床試験で試験されている。
【0045】
ある特定の実施形態では、ICIは、化学療法薬の単一または組み合わせであり得る併用化学療法、またはメトロノミック化学療法で使用される。ペムブロリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル、ペムブロリズマブ+ゲムシタビン+ドセタキセル、ニボルマブ+ゲムシタビン+シスプラチン、イピリムマブ+カルボプラチン+パクリタキセルの組み合わせ、およびその他の組み合わせが試験されたか、または臨床試験で試験されている。
【0046】
ある特定の実施形態では、ICI療法は、「分子標的療法」と呼ばれることもある標的癌療法と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、標的療法薬は、ボルテゾミブ(ベルケイド)、スニチニブ(スーテント)などの小分子である。ある特定の実施形態では、標的療法薬は、ベバシズマブ(アバスチン)、パニツムマブ(ベクチビックス)、ダラツムマブ(ダルザレックス)などのモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、抗PD-1は、RCCの治療について試験されたスニチニブ(スーテント)またはパゾパニブ(ヴォトリエント)と組み合わせて、または抗CTLA-4イピリムマブとBRAF阻害剤ダブラフェニブ(タフィンラー)との組み合わせで使用される。
【0047】
ある特定の実施形態では、ICI療法は、抗血管新生療法、例えば、VEGFを標的とするmAbと組み合わせて使用される。したがって、組み合わせはイピリムマブとベバシズマブの組み合わせであってもよい。
【0048】
ある特定の実施形態では、ICI療法は、癌ワクチン、免疫調節剤、免疫刺激性サイトカイン、例えば、GM-CSF、IFN-α、TGF-β、IL-10、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、およびIL-21、または腫瘍溶解性ウイルスなどの他の免疫療法と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、抗CTLA-4イピリムマブまたは抗PD-1ペムブロリズマブは、腫瘍溶解性ウイルスのタリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherparepvec)(T-VEC)と組み合わせて使用される。
【0049】
本発明によれば、癌療法は、膀胱癌、骨癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、大腸癌、大腸直腸癌、食道癌、胃癌、胃腸癌、神経膠芽細胞腫、頭頚部癌、頭頚部扁平上皮癌、肝細胞癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、黒色腫、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、皮膚癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、泌尿生殖器癌、もしくは子宮癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫ならびに肉腫を含む、原発性または転移性癌が挙げられるが、これらに限定されない、疾患の全てのステージにおける、原発性または転移性の全ての種類の癌に関するものである。
【0050】
ある特定の実施形態では、癌は白血病であり、骨髄およびリンパ系を含む体の造血組織の癌である。ある特定の実施形態では、白血病は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)または慢性骨髄性白血病(CML)から選択される。ある特定の実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。
【0051】
ある特定の実施形態では、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。ある特定の実施形態では、癌は進行した(ステージIIIまたはIV)または転移性のNSCLCである。
【0052】
ある特定の実施形態では、癌は、転移性黒色腫、腎細胞癌(RCC)、古典的ホジキンリンパ腫(HL)、膀胱癌、メルケル細胞癌、頭頸部癌、またはミスマッチ修復機構欠損を伴う固形腫瘍である。
【0053】
癌患者への免疫チェックポイント阻害剤の投与後に本発明の方法によって特定された宿主駆動型因子/バイオマーカーは、(i)癌患者、および(ii)免疫チェックポイント阻害剤に特異的である。これは、癌患者に関する特定の情報を提供し、診断、治療の計画、治療がどの程度良く機能しているかの確認、または予後診断に役立つ個別化された形式での予測を可能にする「宿主応答」である。
【0054】
治療が単一のICIで行われる場合、宿主/患者によって生成される因子は、この特定のICIに特異的である。治療が2つのICIの組み合わせで行われる場合、宿主/患者によって生成される因子は、このICIの組合せに特異的である。治療がICIと別の癌療法との組み合わせで行われる場合、宿主/患者によって生成される因子はこの組み合わせに特異的である。
【0055】
ある特定の実施形態では、バイオマーカーは、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、酵素または可溶性受容体などの分子因子である。これらの因子のいくつかは、腫瘍に影響を及ぼし、腫瘍の血管新生および癌の再増殖に寄与する細胞を誘発し、それによって使用される療法に対する耐性を促進する。このような細胞の例には、サイトカインならびにG-CSFおよびSDF-1αなどの成長因子によって骨髄区画から動員され、その後、治療された腫瘍にコロニーを形成し、癌療法耐性、特に、排他的ではなく、化学療法耐性を促進する骨髄由来細胞(BMDC)が挙げられる。他の細胞は、マクロファージおよび抗原提示細胞などの免疫細胞、または腫瘍の進行に極めて重要な役割を果たす腫瘍微小環境内の間質細胞である。
【0056】
癌療法に対する腫瘍の耐性に寄与する宿主媒介性の細胞および分子メカニズムは、特定の癌療法によって宿主で生成される因子および/または細胞の生物学的機能に基づいている。各因子は、1つ以上の生物学的機能または活性を示し得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、因子は腫瘍形成性であり、腫瘍増殖に寄与する。ある特定の実施形態では、腫瘍形成因子は血管新生促進性である。他の実施形態では、腫瘍形成因子は炎症誘発性/走化性である。さらに他の実施形態では、腫瘍形成因子は増殖性成長因子である。
【0058】
特定の実施形態では、血管新生促進因子には、ANG(アンギオゲニン)、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、bNGF(塩基性神経成長因子)、カテプシンS、ガレクチン-7、GCP-2(顆粒球走化性タンパク質、CXCL6)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、GM-CSF(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、コロニー刺激因子2、CSF2としても知られている)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-ABから選択されるPDGF(血小板由来成長因子)、PlGF(またはPLGF、胎盤成長因子)、PlGF-2、SCF(幹細胞因子)、SDF-1(CXCL12、間質細胞由来因子-1)、Tie2(またはTIE-2、内皮受容体チロシンキナーゼ)、VEGF-A、VEGF-CおよびVEGF-D、VEGF-R1、VEGF-R2、VEGF-R3から選択されるVEGF(血管内皮成長因子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
特定の実施形態では、炎症誘発性および/または走化性因子には、6Ckine(CCL21、エクソダス-2)、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、BLC(CXCL13、Bリンパ球化学誘引物質またはB細胞誘引ケモカイン1(BCA-1)、BRAK(CXCL14)、CD186(CXCR6)、ENA-78(CXCL5、上皮細胞由来好中球活性化ペプチド78、)、エオタキシン-1(CCL11)、エオタキシン-2(CCL24)、エオタキシン-3(CCL26)、EpCAM(上皮細胞接着分子)、GDF-15(成長分化因子15、マクロファージ阻害サイトカイン-1、MIC-1としても知られる)、GM-CSF、GRO(成長調節腫瘍遺伝子)、HCC-4(CCL16、ヒトCCケモカイン4)、I-309(CCL1)、IFN-γ、IL-1α、IL-1β、IL-1R4(ST2)、IL-2、IL-2R、IL-3、IL-3Rα、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-8 RB(CXCR2、インターロイキン8受容体、β)、IL-11、IL-12、IL-12p40、IL-12p70、IL-13、IL-13 R1、IL-13R2、IL-15、IL-15Rα、IL-16、IL-17、IL-17C、IL-17E、IL-17F、IL-17R、IL-18、IL-18BPa、IL-18Rα、IL-20、IL-23、IL-27、IL-28、IL-31、IL-33、IP-10(CXCL10、インターフェロンγ誘発性タンパク質10)、I-TAC(CXCL11、インターフェロン誘発性T細胞アルファ化学誘引物質)、LIF(白血病抑制因子)、LIX(CXCL5、リポ多糖誘発CXCケモカイン)、LRP6(低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質-6)、MadCAM-1(粘膜アドレッシン細胞接着分子1)、MCP-1(CCL2、単球走化性タンパク質1)、MCP-2(CCL8)、MCP-3(CCL7)、MCP-4(CCL13)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子、コロニー刺激因子1(CSF1)としても知られる)、MIF(マクロファージ遊走阻止因子)、MIG(XCL9、γインターフェロンによって誘発されるモノカイン)、MIP-1γ(CCL9、マクロファージ炎症性タンパク質-1γ)、MIP-1α(CCL3)、MIP-1β、MIP-1δ(CCL15)、MIP-3α(CCL20)、MIP-3β(CCL19)、MPIF-1(CCL23、骨髄性前駆細胞阻害因子1)、PARC(CCL18、肺および活性化調節ケモカイン)、PF4(CXCL4、血小板因子4)、RANTES(CCL5、regulated on activation,normal T cell expressed and secreted)、レジスチン、SCF、SCYB16(CXCL16、小さな誘発性サイトカインB16)、TACI(膜貫通活性化因子およびCAMLインタラクター)、TARC(CCL17、CC胸腺および活性化関連ケモカイン)、TSLP(胸腺間質リンホポイエチン)、TNF-α(腫瘍壊死因子-α)、TNF R1、TRAIL-R4(TNF関連アポトーシス誘発性リガンド受容体4)、TREM-1(骨髄細胞で発現する誘発性受容体1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
ある特定の実施形態では、成長因子には、アクチビンA、アンフィレグリン、Axl(AXL、受容体型チロシンキナーゼ)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、BMP4(骨形成タンパク質4)、カテプシンS、EGF(上皮成長因子)、FGF-1(線維芽細胞成長因子1)、FGF-2(bFGF、塩基性FGFとしても知られている)、FGF-7、FGF-21、フォリスタチン(FST)、ガレクチン-7、Gas6(成長停止特異的遺伝子6)、GDF-15、HB-EGF(ヘパリン結合性EGF)、HGF、IGFBP-1(インスリン様成長因子結合タンパク質-1)、IGFBP-3、LAP(レイテンシ-関連ペプチド)、NGF R(神経成長因子受容体)、NrCAM(神経細胞接着分子)、NT-3(ニューロトロフィン-3)、NT-4、PAI-1、TGF-α(形質転換成長因子-α)、TGF-β、およびTGF-β3、TRAIL-R4(TNF関連アポトーシス誘発リガンド受容体4)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
ある特定の実施形態では、転移促進因子には、ADAMTS1(トロンボスポンジンモチーフ1を有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ1)、カテプシンS、FGF-2、フォリスタチン(FST)、ガレクチン-7、GCP-2、GDF-15、IGFBP-6、LIF、MMP-9(マトリックスメタロペプチダーゼ9、92kDaゼラチナーゼまたはゼラチナーゼB(GELB)としても知られる)、プロMMP9、RANTES(CCL5)、SDF-1(間質細胞由来因子-1、CXCL12としても知られる)およびその受容体CXCR4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
因子はまた、抗腫瘍形成因子、例えば、抗血管新生、抗炎症および/または抗増殖成長因子であってもよい。
【0063】
ある特定の実施形態では、ICIに対する宿主応答性を示す循環因子には、ADAMTS1、アンフィレグリン、Axl、CCL5/RANTES、CCL17/TARC、EGF、エオタキシン-2、FGF-21、Gas6、G-CSF、GM-CSF、HGF、IFN-ガンマ、IL-1Rアルファ、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、TACI、M-CSF、MMP-9、PDGF-BB、プロMMP9、SCFが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明によれば、抗PD-1治療に応答して上方制御された因子の多くは、血管新生、炎症、走化性および増殖などの腫瘍形成促進および転移促進プロセスにおける中心的存在である。上方制御された血管新生促進因子には、G-CSF、GM-CSF、およびPDGF-BBが挙げられる。上方制御された炎症誘発性および/または走化性因子には、CCL17/TARC、CCL5/RANTES、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IL-1Rα、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33、およびM-CSFが挙げられる。上方制御された増殖性成長因子には、FGF-21 Gas6、およびHGFが挙げられる。上方制御された転移促進因子には、MMP-9が挙げられる。
【0065】
本発明によれば、抗PD-L1治療に応答して上方制御された因子の多くは、炎症、走化性および増殖などの腫瘍形成促進および転移促進プロセスにおける中心的存在である。上方制御された血管新生促進因子には、G-CSF、およびSCFが挙げられる。上方制御された炎症誘発性および/または走化性因子には、エオタキシン-2、G-CSF、IL-1ra、IL-6、IL-7、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、SCF、およびTACIが挙げられる。上方制御された増殖性成長因子には、アンフィレグリン、Axl、EGF、およびHGFが挙げられる。上方制御された転移促進因子には、ADAMTS1およびプロMMP9が挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「優勢な因子」という用語は、生細胞および生物にとって不可欠である生物学的プロセスに影響を与えるシグナル伝達経路の上流にあり得る強力な因子を意味する。これらの生物学的プロセスには、増殖、炎症、転移などが含まれ、最終的に生物学的プロセスの活性化または阻害につながるいくつかのシグナル伝達経路で構成されている。「シグナル伝達経路」は、同じ経路内のタンパク質が互いにシグナルを伝達する一連の事象である。経路の最初のタンパク質がシグナルを受信した後、それは別のタンパク質を活性化し、これが別のタンパク質を活性化するなど、最終的には1つ以上の細胞機能の活性化につながる。
【0067】
「優勢な因子」は、他の多くの因子/タンパク質と高度に相互作用し、高度に影響を与える重要な因子であり得る。本発明によれば、優勢な因子は、文献に基づいて因子のタンパク質間相互作用を特定するアルゴリズムに基づいて選択される。因子がより多くの相互作用を有する場合、それはハブとして機能し、従ってそれは優勢な因子である。「タンパク質間相互作用」という用語は、シグナル伝達またはタンパク質活性の活性化または阻害をもたらす、2つ以上のタンパク質間の物理的相互作用またはクロストークを指す。「タンパク質ハブ」という用語は、生物学的プロセスにおいて中心的かつ本質的な役割を果たし、したがって、宿主に耐性を与え、癌療法様式による癌患者の治療の有効性を制限または打ち消す可能性がある、高度に接続されたタンパク質を指す。
【0068】
「遮断する」、「中和する」または「阻害する」という用語は、本明細書では互換的に使用され、選択された優勢な因子がその機能/生物学的活性を発揮するのを防ぐ薬剤の能力を指す。
【0069】
優勢な因子には、アンフィレグリン、EGF、EGFR、FGF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、MMP-9、PDGF、TNF-αおよびVEGF-Aが挙げられる。
【0070】
優勢な因子としてのそれらの必要条件を説明するために、これらの因子のいくつかの特性が、本明細書に提供される。インターロイキン-1β(IL-1β、IL-1b)は、マクロファージを含む様々な免疫細胞によって産生されるIL-1ファミリーのサイトカインメンバーである。これは炎症反応の強力なメディエーターであり、細胞増殖およびアポトーシス、ならびに細胞分化などのいくつかの生物学的プロセスに関与していることも知られている。IL-1bは主に、炎症誘発性カスケードを開始するタンパク質として調査された。CASP1、IL1RA、IL1R1、CMA1、IL1RB、IL1A、IL1R2などの酵素と物理的に相互作用し、MAPK8IP2、ZNF675およびUBEN2Nと遺伝的に相互作用し、また、A2M、CXCL8、IL18、CAASp1、IL1R1などと共発現している。したがって、IL-1bは、細胞増殖、アポトーシス、分化、炎症、血管新生など、いくつかの生物学的経路に影響を与える多数のタンパク質との相互作用のハブとして機能する。
【0071】
別な優勢な因子はインターロイキン-6(IL-6)であり、これは、主に炎症誘発性因子として作用するだけでなく、時には筋肉細胞によって産生される抗炎症性因子としても作用し、その結果、IL-1、IL-10およびTNF-αなどの多くの炎症誘発性タンパク質を下方制御するサイトカインである。IL-6は、骨形成、血液脳関門の破壊、マクロファージの活性化、および自然免疫系への寄与など、多くの生物学的プロセスに関与し、好中球およびB細胞の合成を刺激し、障害、ストレスおよびうつ病などの神経活動にも関与する。IL6は多数のタンパク質と相互作用し、影響を及ぼし、これはHRH1、OSM、IL6ST、IL6R、およびZBTB16と物理的に相互作用し、PTPRE、CSF3、CCL2、CXCL8、CXCL3、ICAM1 SELE、NFKBIZなどの多数のタンパク質と共発現されることが見出されている。IL6は、LRPPRC、OSM、PTPRE、PIAS1、およびIL6Rなどのタンパク質によって媒介される多くの経路に関与している。そのため、IL6は、免疫細胞の活動、細胞の発生、および細胞間相互作用に関与する多くの生物学的プロセスの優勢な因子として機能する。
【0072】
さらに優勢な因子である血管内皮成長因子A(VEGF-A)は、新しい血管の形成を刺激する成長因子である。血管新生(内皮細胞の増殖)ならびに脈管形成(骨髄由来の内皮細胞前駆体およびその分化)の両方に関与している。VEGFは、胎児の胚細胞の発達および神経の発達に重要であり、白血球の増殖および分化、炎症、ならびに加齢性黄斑変性症および大多数の癌などのいくつかの疾患に関与している。NRP1、NRP2、KDR、FLT1、PGF、THBS1、SPARC、GCP1およびVEGFCなどの多数のタンパク質と物理的に相互作用し、これは、SEMA3F、SHB、THBS1、FLT1およびVEGFCと共発現し、PGF、CD2AP、IQGAP1、NEDD4を含む様々な経路のタンパク質に関与しており、これは、血管新生、腫瘍形成、細胞生存性、増殖および分化などの多くの生物学的プロセスに影響を及ぼす。そのため、VEGF-Aは優勢な因子であり、通常の生理学的状態ならびに病状の両方における様々な生物学的プロセスの重要な因子であると考えられている。
【0073】
ある特定の実施形態では、選択された優勢な因子は、癌患者のICIによる治療に対する好ましくない応答を示す、1.5以上の倍率変化を示し、該ICIによる患者の治療が、該優勢な因子またはその受容体を遮断する薬剤と組み合わせて進めることができる。
【0074】
優勢な因子には、アンフィレグリン、EGF、EGFR、FGF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、MMP9、PDGF、TNF-αおよびVEGF-Aを含む因子から選択される。
【0075】
ある特定の実施形態では、優勢な因子が、MMP9であり、ICIが、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、癌患者が、SB-3CTを含むMMP-9阻害剤と組み合わせたICIで治療される。
【0076】
ある特定の実施形態では、優勢な因子が、アンフィレグリンであり、ICIが、抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体であり、癌患者が、抗アンフィレグリン抗体と組み合わせたICIで治療される。
【0077】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0078】
序論
前述のように、最近の臨床試験では、患者がICIに耐性を示す場合、またはICI療法に応答しない場合があることが報告されている(Sharma et al.,2017)。本明細書において、癌患者、すなわち宿主が、ICI療法に応答して腫瘍形成促進因子を生成し、それが次に腫瘍の再増殖、進行、および治療への耐性に寄与することを説明する。このメカニズムに寄与する因子を特定するために、非腫瘍および腫瘍担持免疫担当マウスの両方で、インビボ実験を実施する。このアプローチにより、ICIの治療的抗腫瘍活性と宿主細胞に対するこれらの薬剤の効果とを区別することが可能となる。抗PD1、抗PD-L1、抗CTL-4モノクローナル抗体を含む、診療所で広く使用されているICIに焦点を当て、特定のICIに応答または耐性があることが知られているマウス腫瘍モデルを使用する。たとえば、CT26結腸およびEMT-6乳癌細胞株は、それぞれ抗CTLA-4および抗PD-L1に応答するが(Duraiswamy et al.,2013;Swart et a.,2013)、MC38結腸および4T1乳房癌細胞株は、我々の研究室でもテストされているように、一部のICI(抗PD-1を含む)に対して耐性があるか、または中程度の応答しかない(De Henau et al.,2016;Kodumudi et al.,2016)(図示せず)。
【0079】
材料および方法
材料
以下の抗体は、BioXCell,West Lebanon,NH,USAから購入した:InVivoMab抗マウス-CTLA-4(カタログ番号BE0131)、InVivoMab抗マウス-IL-6(カタログ番号BE0046)、InVivoMab抗マウス-PD-1(カタログ番号BEO146)、InVivoPlus抗マウス-PD-L1(カタログ番号BEO101)、およびInVivoMAbアイソタイプ対照IgG2b抗体(カタログ番号BE0090)。SB-3CT(IUPAC名:2-(((4-フェノキシフェニル)スルホニル)メチル)チイラン)は、MedKoo Biosciences Inc(カタログ番号406563)から購入した。抗アンフィレグリン(カタログ番号AF989)はR&D systemsから購入した。SB-3CTの10mMストック溶液を100%のDMSO(Sigma)中で調製した。インビボ実験では、ストック溶液を、通常の生理食塩水中10%のDMSO中で、1.25mg/mlの最終濃度に希釈した。
【0080】
(i)腫瘍細胞培養物:マウスEMT6乳癌およびCT26マウス結腸癌の細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC,USA)から購入した。細胞は、本物のストックから解凍されてから4ヶ月以内に培養に使用され、定期的にテストされ、マイコプラズマを含まないことが分かった(EZ-PCRマイコプラズマテストキット、Biological Industries,Israel)。EMT6細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養し、CT26細胞を、RPMI 1640培地で培養し、両方の培地には、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Biological Industries,Israel)が補充されていた。細胞を5%のCO中で37℃で培養した。
【0081】
(ii)動物処置プロトコルおよび腫瘍モデル:ナイーブな8~10週齢の雌のBALB/c、SCIDまたはNOD-SCIDマウス(Harlan,Israel)を本研究で使用した。実験は、Technion(Haifa,Israel)の動物倫理委員会に従って実施した。マウスに抗PD-1または無関係のIgGラット抗マウス抗体(BioXCell,West Lebanon,NH,USA)を腹腔内注射した。
【0082】
他の実験では、ナイーブな8~10週齢の雌雄のBALB/cまたはC57bl/6マウス(Harlan,Israel)に抗PD-L1または無関係のIgGラット抗マウス抗体(BioXCell,West Lebanon,NH,USA)を腹腔内注射た。すべての場合において、抗体を、200μg/20grマウスの用量で、1週間にわたって1日おきに投与した(合計3回の注射)。
【0083】
宿主由来のIL-6を阻害することで抗CTLA-4治療の有効性が改善されるかどうかを調べるために、EMT6マウス乳癌細胞(5×10)を8~10週齢のBALB/cマウスの乳腺脂肪体に同所移植した。腫瘍サイズは、幅×長さ×0.5の式を使用してベルニエノギスを用いて定期的に評価された。いくつかの実験では、マウスにEMT6細胞(25×10)を尾静脈から注射して、実験的な肺転移を形成した。マウスの生存を毎日監視した。腫瘍が140mmのサイズに達したときに、マウス(n=5)を、200μgの抗CTLA-4、200μgの抗IL-6または2つの抗体の組み合わせを、3日毎に1回、腹腔内(IP)注射した(合計で7回の注射)。対照マウス(n=8)は未処置のままにした。腫瘍の成長を定期的に監視し、腫瘍のサイズが1500mmに達したときに、マウスを殺処分した。
【0084】
宿主由来のMMP-9を阻害することで抗PD-L1療法の有効性が改善されるかどうかを調べるために、0.5×10個のEMT6 GFPネズミ乳癌細胞(以前に、Munoz et al.,2006において他の細胞株について記載された、EMT6-F2と呼ばれる高選択性転移性クローン)を、8週齢の雌BALB/cマウス(n=7)の乳腺脂肪体に同所移植した。腫瘍のサイズが100mmに達したとき、マウスに200μgの抗PD-L1、50μgのSB-3CT(MMP-2/MMP-9選択的阻害剤)(Kruger A.,2005、Bonfil RD.,2006)、または抗PD-L1とSB-3CTとの組合せをIP注射した。対照マウスまたは抗PD-L1単剤療法で治療されたマウスにビヒクル対照(25%DMSO/65%PEG-200/10%PBSを注射した。腫瘍の増殖およびマウスの生存を監視し、エンドポイント(腫瘍のサイズが約1500mmに達したとき、または27日目に最大になったとき)にマウスを殺処分した。
【0085】
宿主由来のアンフィレグリンを阻害することが、抗PD-L1療法の効力を改善するかどうかを決定するために、2×10CT26細胞を8~10週齢BALB/cマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍のサイズが50mmに達したとき、マウスに、200μgの抗PD-L1、5μgの抗AREG(Fujiu K.,2017で以前に実証された)、または抗PD-L1と抗AREGとの組み合わせを、3日ごとにIP注射した。対照マウスを未処置のままにした。腫瘍の増殖およびマウスの生存を監視した。
【0086】
(iii)ELISAによるIL-6の定量化:7週齢の見処置雌BALB/cマウス(n=4)に、200μgの抗PD-L1または抗CTLA-4を、3日ごとに合計3回、腹腔内注射した。対照マウス(n=4)は未処置のままにした。24時間後、マウスを殺処分し、心臓穿刺によりEDTAコーティングチューブに血液を採取した。全血を、室温にて1300gで10分間遠心分離することにより血漿を単離した。上清(血漿層を表す)を採取し、IL-6のレベルを、ELISA(IL-6マウスELISAキット、100712 Abcam)によって製造業者の指示に従って決定した。
【0087】
(iv)血漿試料および馴化培地調製:対照IgG、抗PD-1、または抗PD-L1処置マウスからの血液を、心臓穿刺によってEDTAコーティングチューブに採取した。続いて、全血を1000g、4℃で20分間遠心分離することにより血漿を単離した。血漿は、さらに使用するまで-80℃でアリコートで保存した。骨髄由来細胞は、IgGまたは抗PD-1処置マウスの大腿骨からフラッシュされた。骨髄細胞(1×10細胞/ml)を、馴化培地(CM)を生成するために、無血清DMEM中で24時間培養した。
【0088】
(v)抗体アレイ:3つのタンパク質プロファイリング実験を実施した。最初の実験では、IgGまたは抗PD-1で処置された雌のBALB/cマウスから抽出された血漿試料を、処置群ごとにプールした(n=5/群)。試料をメンブレンベースのProteome Profiler Mouse XL Cytokine Array(R&D Systems;カタログ番号:ARY028)に、製造業者の指示に従って適用し、合計で111個の因子をスクリーニングした。2番目の実験では、IgGまたは抗PD-L1で処置された雌もしくは雄のBALB/cまたはC57bl/6マウスから抽出された血漿試料を、群ごとにプールした(n=7/群)。試料を、スライドガラスベースのQuantibody Mouse Cytokine Array(RayBiotech、カタログ番号:QAM-CAA-4000)に、製造業者の指示に従って適用し、合計で200個の因子をスクリーニングした。3番目の実験では、IgGまたは抗PD-1で処置した雌のBALB/cまたはSCIDマウスから抽出した血漿試料を、群ごとにプールした(群ごとにn=7)。試料を、スライドガラスベースのQuantibody Mouse Cytokine Array(RayBiotech、カタログ番号:QAM-CAA-4000)に、製造業者の指示に従って適用し、合計で200個の因子をスクリーニングした。メンブレンベースのアレイの場合、現像されたX線フィルムのピクセル密度は、透過モード濃度計および画像解析ソフトウェアを使用して解析された。スライドガラスベースのアレイの場合、蛍光の読み取り値は、レーザー蛍光スキャナーによって検出された。すべての場合において、データは正規化され、アレイ上の各因子の倍率変化は、処置:対照値の比率を計算することによって決定した。
【0089】
(vi)統計分析:データを平均値±標準偏差(SD)として表す。差異の統計的有意性は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)と、それに続くGraphPad Prism 5ソフトウェア(La Jolla,CA)を使用したTukey ad hoc統計検定によって評価した。一部の実験では、2つの群のみを比較するときにスチューデントのt検定を使用した。すべての群間の差異を互いに比較した。ELISAによるIL-6の定量化では、差異の統計的有意性を両側の対応のないt検定によって評価した。腫瘍増殖実験では、統計的有意性は複数のT検定によって評価される。生存分析では、ログランクマンテル・コックス(Mantle-Cox)によって差異が評価される。差異は、0.05未満のp値で有意であるとみなされた。
【0090】
実施例1.循環宿主由来因子に対する免疫チェックポイント阻害剤療法の効果-マウスにおけるタンパク質プロファイリングアプローチ
以前の実験は、抗PD-1療法が循環中の因子の上方制御を誘発し、それが最終的に腫瘍細胞の攻撃性を促進することを示唆している。このような影響は、他の種類の免疫チェックポイント阻害剤療法に応答して生じ得る。抗PD-1および抗PD-L1療法に応答してレベルが変化する宿主由来の循環因子を特定するために、ナイーブ(腫瘍を担持しない)マウスを使用して3つのタンパク質アレイベースのスクリーニングを実施した。ナイーブマウスを使用することで、腫瘍とは無関係に、療法に応答して宿主によって特異的に生成される因子を特定することが可能となる。
【0091】
最初のスクリーニングでは、ナイーブな8~10週齢の雌BALB/cマウス(n=3)に、抗PD-1ラット抗マウス抗体(BioXCell,West Lebanon,NH,USA)を200μg/20grマウスの用量で、1週間にわたって1日おきに腹腔内注射した(合計で3回の注射)。対照マウス(n=3)にも、ラット抗マウスIgG抗体を同じ用量で同様に注射した。最初の注射から1週間後に、マウスを殺処分し、心臓穿刺によりEDTAコーティングチューブに血液を採取した。全血を、室温にて1300gで10分間遠心分離することにより血漿を単離した。上清(血漿試料を表す)を採取し、群ごとにプールした。アリコートは、さらに使用するまで-80℃で保存した。血漿試料をメンブレンベースのProteome Profiler Mouse XL Cytokine Array(R&D Systems;カタログ番号:ARY028)に適用し、合計で111個の因子をスクリーニングした。アレイによって検出されたサイトカイン、酵素、および成長因子の完全なリストを表1に示す。現像されたX線フィルムのピクセル密度は、透過モード濃度計および画像解析ソフトウェアを使用して解析された。正規化されたデータを分析して、抗PD-1治療に応答して循環レベルが変化した因子を特定した。具体的には、治療:対照値の比率を計算することにより、各因子についての倍率変化を決定した。1.5を超えるまたは0.5未満の倍率変化を示す因子は、抗PD-1治療に応答してそれぞれ上方制御または下方制御されると定義された。これらの因子およびそれぞれの倍率変化を表2に示す。抗PD-1治療に応答して上方制御された因子の多くは、血管新生、炎症、走化性および増殖などの腫瘍形成促進および転移促進プロセスにおける中心的存在である。上方制御された血管新生促進因子には、G-CSF、GM-CSF、およびPDGF-BBが挙げられる。上方制御された炎症誘発性および/または走化性因子には、CCL17/TARC、CCL5/RANTES、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IL-1Rα、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-33、およびM-CSFが挙げられる。上方制御された増殖性成長因子には、FGF-21 Gas6、およびHGFが挙げられる。上方制御された転移促進因子には、MMP-9が挙げられる。
【0092】
2番目のスクリーニングでは、ナイーブな8~10週齢の雌BALB/c、雄BALB/c、雌C57BI/6または雄C57Bl/6マウス(群あたりn=7のマウス)に抗PD-L1または対照IgG抗体(BioXCell,West Lebanon,NH,USA)を、1回の注射当たり200μg/20grマウスの用量で、1週間にわたって1日おきに腹腔内注射した(合計で3回の注射)。最後の投与から24時間後、マウスを殺処分して、採血し、血漿を調製した。各群からの血漿試料をプールし、スライドガラスベースのQuantibody Mouse Cytokine Array(RayBiotech、カタログ番号:QAM-CAA-4000)に、製造業者の指示に従って適用し、合計で200個の因子をスクリーニングした。アレイによって検出されたサイトカイン、酵素、および成長因子の完全なリストを表3に示す。治療:対照値の比率を計算することにより、タンパク質アレイ上の各因子についての倍率変化を決定した。1.5を超えるまたは0.5未満の倍率変化を示す因子は、抗PD-L1治療に応答してそれぞれ上方制御または下方制御されると定義された。これらの因子およびそれぞれの倍率変化を表4に示す。データは、異なるマウス系統間で比較した場合、または同じ系統の雄と雌との間で比較した場合、ア上方制御された因子および下方制御された因子のプロファイルが完全に重複しないことを示している。これは、抗PD-L1治療に対する応答が遺伝子型に依存していることを示唆している。これは、癌患者にも存在することが知られている差異を反映している可能性があり、したがって、患者の宿主の応答を個別化された方法でテストするための理論的根拠を提供する。抗PD-L1治療に応答して上方制御された因子の多くは、炎症、走化性および増殖などの腫瘍形成促進および転移促進プロセスにおける中心的存在である。上方制御された血管新生促進因子には、G-CSF、およびSCFが挙げられる。上方制御された炎症誘発性および/または走化性因子には、エオタキシン-2、G-CSF、IL-1ra、IL-6、IL-7、IL-33、I-TAC、MadCAM-1、MCP-5、SCF、およびTACIが挙げられる。上方制御された増殖性成長因子には、アンフィレグリン、Axl、EGF、およびHGFが挙げられる。上方制御された転移促進因子には、ADAMTS1およびプロMMP9が挙げられる。
【0093】
どの宿主細胞型がこれらの腫瘍形成促進因子を分泌するかについての洞察を得るために、抗PD-1または対照IgG抗体で治療したBALB/cマウスとSCIDマウスを比較して同様のスクリーニングを行った。SCIDマウスは、BALB/cバックグラウンドで重症複合免疫不全症(SCID)変異を持っているため、機能的な適応免疫細胞型(B細胞およびT細胞)を欠いている。ナイーブな8~10週齢の雌BALB/cまたはSCIDマウス(群あたりn=7のマウス)に、抗PD-1または対照IgG抗体(BioXCell,West Lebanon,NH,USA)を、1回の注射当たり200μg/20grマウスの用量で、1週間にわたって1日おきに腹腔内注射した(合計で3回の注射)。最後の投与から24時間後、マウスを殺処分して、採血し、血漿を調製した。各群からの血漿試料をプールし、スライドガラスベースのQuantibody Mouse Cytokine Array(RayBiotech、カタログ番号:QAM-CAA-4000)に、製造業者の指示に従って適用し、合計で200個の因子をスクリーニングした。アレイによって検出されたサイトカイン、酵素、および成長因子の完全なリストを表3に示す。治療:対照値の比率を計算することにより、タンパク質アレイ上の各因子についての倍率変化を決定した。1.5を超えるまたは0.5未満の倍率変化を示す因子は、抗PD-1治療に応答してそれぞれ上方制御または下方制御されると定義された。これらの因子およびそれぞれの倍率変化を表5に示す。いくつかの因子が抗PD-1治療に応答して上方制御されることが見出され、そのうちのいくつかはBALB/cマウスに特異的であり、SCIDマウスには特異的でははなかった(例えば、ADAMTS1、アンフィレグリン、I-TACおよびSCF)。これらの結果は、これらの特定の因子が抗PD-1治療に応答して適応免疫系の細胞によって分泌されることを示唆している。
【0094】
まとめると、これらの結果は、抗PD-1および抗PD-L1治療が、腫瘍の進行をサポートする応答を宿主に誘発し、免疫チェックポイント阻害剤療法の望ましい治療効果を打ち消すことを示している。
【0095】
実施例2.原発性乳腺腫瘍モデルにおけるICI療法に対する宿主由来のMMP-9レベルの低下の影響
マトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)は、細胞外マトリックスの分解に関与する亜鉛メタロプロテイナーゼファミリーに属する酵素である。MMP-9は、上皮間葉転換、細胞増殖、血管新生、骨形成、および創傷治癒を含む、腫瘍形成促進および組織再生の生物学的プロセスなど、様々な生物学的プロセスに関与している。MMP-9は、浸潤および転移に関与する重要な要因の1つである。MMP-9は、抗癌剤として開発された癌の様々な主要な生物学的経路に関与しているため、ICI療法に応答して誘発される主要な因子として機能し、その阻害により治療結果が改善され得る。
【0096】
MMP-9は、抗PD-1または抗PD-L1による治療後、BALB/cマウスで誘発されることが分かっており、これは、i)MMP-9は、抗PD-1治療に応答して、ナイーブBALB/cの骨髄由来細胞から分泌されること、ii)ナイーブBALB/cマウスでは、抗PD-1治療に応答してMMP9の血漿レベルが5.4倍に増加すること(表2)、iii)ナイーブBALB/cマウスにおける抗PD-L1治療に応答して、プロMMP-9の血漿レベルが2~3倍増加すること(表4)を実証している。宿主由来のMMP9の阻害が抗PD-1または抗PD-L1療法の有効性を改善するかどうかを調査するためにMMP2/MMP9選択的阻害剤SB-3CTを抗PD-1または抗PD-L1抗体と組み合わせて使用する。EMT6ネズミ乳癌細胞(5×10)を、8週齢のBALB/cマウス(Harlan,Israel)の乳腺脂肪体に同所的に移植した。腫瘍サイズは、幅×長さ×0.5の式を使用してベルニエノギスを用いて定期的に評価した。腫瘍のサイズが100mmに達すると、マウスをランダムに次の治療群に割り当てる(群当たりn=6のマウス):1)対照、ii)抗PD-1単剤療法、iii)抗PD-L1単剤療法、iv)MMP2/MMP9選択的阻害剤SB-3CT単剤療法、v)抗PD-1とSB-3CTとの併用療法、およびvi)抗PD-L1とSB-3CTとの併用療法。抗PD-1、抗PD-L1およびIgG対照抗体は、3日ごとに200μg/20gマウスの用量で腹腔内注射によって投与される。SB-3CTは、3日ごとに1mg/20gマウスの用量で腹腔内注射によって投与される。対照マウスには、IgG抗体とビヒクル(通常の生理食塩水中の10%のDMSO)を注射する。抗PD-1または抗PD-L1単剤療法を受けているマウスにも、ビヒクル(通常の生理食塩水中の10%のDMSO)を注射する。SB3-CT単剤療法を受けているマウスには、IgG対照抗体も注射される。腫瘍の増殖およびマウスの生存を監視する。エンドポイント(腫瘍が約1500mmサイズに達したとき、または実験が27日に達するまで)で、マウスを殺処分する。
【0097】
図1Aおよび1Bに示されている結果(それぞれ、経時的なおよび最終実験日である27日目の腫瘍体積)は、抗PD-L1とMMP-2/MMP-9阻害剤SB-3CTとの組み合わせで治療されたマウスが、ビヒクル、抗PD-L1またはSB-3CT単独で治療されたマウスと比べて、腫瘍サイズの縮小を示すことを実証している。抗PD-L1単独での治療に対する併用治療の利点は、個々のマウスでのより涼子な応答率によって実証され(それぞれ図1C、黒対灰色)、併用治療で治療された8匹のマウスのうちの3匹が、他のマウスと比較して、エンドポイント(27日目)で腫瘍サイズの縮小が示された。さらに、併用治療は腫瘍の増殖を阻害しただけでなく、マウスの生存率も改善した(図1D)。すなわち、併用療法で治療されたマウスは、対照マウス、抗PD-L1で治療されたマウス、またはSB-3CTで治療されたマウスと比較して生存率の増加を示した。これらの結果は、抗PD-L1治療と併用したMMP-2/MMP-9の阻害が治療有効性を改善することができることを示唆している。
【0098】
実施例3.原発性乳腺腫瘍モデルにおけるICI療法に対する宿主由来のアンフィレグリンレベルの低下の影響
アンフィレグリンは、上皮成長因子受容体(EGFR)のリガンドの1つである。研究により、腫瘍形成のいくつかの態様におけるアンフィレグリンの機能的役割が実証されている。アンフィレグリンの血漿レベルが、ナイーブBALB/cおよびC57/bl/6マウスでの抗PD-L1治療に応答して、アンフィレグリンの血漿レベルが2~3倍増加し(表4)、およびBALB/cマウスでの抗PD-1治療に応答して3.7倍増加する(表5)ことを示す、上記の実施例1に記載した発見に照らして、アンフィレグリンが選択された。
【0099】
アンフィレグリンは、増殖、浸潤、血管新生、転移、アポトーシスへの耐性など、腫瘍の発生に重要な多くの生物学的プロセスに関与していることが知られており、その発現が癌治療に対する非応答性を示していることを提案している。さらに、アンフィレグリンは重要な癌促進受容体である上皮成長因子受容体(EGFR)のリガンドの1つである。このように、それは腫瘍形成促進活性を有する優勢な因子であると考えられており、その阻害は治療有効性を改善することができる。
【0100】
宿主由来のアンフィレグリン(抗PD-1または抗PD-L1治療のいずれかに応答してBALB/cマウスで上方制御される)を阻害することで抗PD-L1療法の有効性が改善されるかどうかを調査するために、CT26結腸癌細胞を、BALB/cマウスに皮下移植した。腫瘍のサイズが50mmに達したとき、マウスを抗PD-L1、抗AREG、または抗PD-L1と抗AREGとの併用療法のいずれかで治療し、対照マウスを未処置のままにした。腫瘍の増殖およびマウスの生存を監視した。
【0101】
図2Aに示されているように、抗PD-L1と組み合わせた抗AREGによる治療は、対照マウスおよび抗AREG治療マウスと比較して低い腫瘍増殖を示した。併用療法と抗PD-L1で治療されたマウスの平均腫瘍体積の間に大きな差異は観察されなかったが、併用療法は治療されたマウスの25%で完全な応答(腫瘍の消失)を示し、一方抗PD-L1で治療されたマウスはこの現象を示さなかった(図2B;縦の破線は治療を施した日数を表す)。併用治療のより高い有効性は、マウスの生存と直接相関している(図2C)。したがって、抗PD-L1と組み合わせてアンフィレグリン阻害剤で治療されたマウスは、対照マウス、抗PD-L1で治療されたマウス、または抗AREG単剤療法で治療されたマウスと比較して、より良好な生存率を示した。
【0102】
実施例4.IL-6の発現は、ICI治療に応答して誘発される
IL-6は、ICI療法に応答して高度に誘発されることが上記で実証されたもう1つの優勢な因子である。提示されているように、IL-6は、BALB/cマウスでの抗PD-1治療に応答して15.6倍(表2)、ナイーブBALB/cおよびC57/bl/6での抗PD-L1治療に応答して1.7~1.8倍(表4)、ならびにSCIDマウスでの抗PD-1治療に応答して1.8倍(表5)増加した。
【0103】
ICI治療後のIL-6発現の誘発は、ELISAを使用してさらに検証された。抗PD-L1、抗CTLA-4を注射したマウスまたは未処置のマウス(対照マウス)を、ELISA(IL-6マウスELISAキット、ab100712、Abcam)を使用して血漿中のIL-6レベルについて分析した。図4に示すように、抗PD-L1および抗CTLA-4で治療したマウスは、IL-6が検出できない対照マウスと比較して、IL-6濃度の顕著な誘発(それぞれ13.4および6.15pg/ml)を示した(それぞれ、0.03および0.02のp値)。この実験は、ナイーブなマウスを使用して行ったため、IL-6が腫瘍の存在とは無関係に、免疫チェックポイント阻害剤に応答して宿主細胞によって生成されることを示している。
【0104】
実施例5.抗PD-L1誘発性の宿主由来IL-6の遮断は、原発腫瘍の増殖を阻害し、マウスの生存を改善する
IL-6は、増殖、血管新生、炎症、分化、アポトーシスへの耐性など、腫瘍の発生に不可欠な多くの生物学的プロセスに関与していることが知られている。さらに、IL-6は炎症誘発性サイトカインであり、癌の予後因子として説明されている。IL-6は炎症誘発性カスケードの最上部に位置し、転移と相関することが実証されているため、腫瘍形成促進および転移促進活性を伴う主要な因子とみなされている。
【0105】
このため、宿主由来のIL-6の遮断が抗PD-L1治療の有効性を改善するかどうかを試験した。BALB/cマウスにCT26ネズミ結腸癌細胞を皮下注射した。腫瘍が50mmのサイズに達した時、マウスを、抗PD-L1、抗IL-6、または2つの抗体の組合せでIP注射し、対照マウスは、未処置のままにした。腫瘍の増殖を定期的に監視し、腫瘍のサイズが約2000mmに達したときに、マウスを殺処分した。図5Aに示すように、抗PD-L1と抗IL-6との組み合わせで治療したマウスは、対照、抗PD-L1、または抗IL-6で治療したマウスと比較して腫瘍増殖の縮小を示した(それぞれ、0.003、0.192および0.009のp値)。単一マウスの腫瘍増殖を比較すると、腫瘍増殖の阻害における抗PD-L1または抗IL-6治療と比較した併用治療の利点がより強調された。図5Bに示すように、抗PD-L1と抗IL-6との組み合わせで治療された6匹のマウスのうち4匹(57%)は、治療に対して完全な応答を示し、腫瘍が消失したが、一方抗PD-L1治療群では、6匹中1匹のマウス(16.7%)だけが完全な応答および腫瘍の消失を示した。
【0106】
図5Cに示すように、抗PD-L1と抗IL-6との併用治療は、腫瘍の増殖を縮小させただけではなく、対照、抗PD-L1、または抗IL-6(それぞれ、31、39.5および31日の生存期間の中央値)と比べて、マウスの生存期間を改善し(生存期間中央値は未定義)(それぞれ0.0026、0.3552および0.0386のp値)、約40日後の生存率は、抗PD-L1単独群の50%と比較して、約70%であった。
【0107】
実施例6.抗CTLA-4誘発宿主由来IL-6の遮断は、原発腫瘍の増殖を阻害し、マウスの生存を改善する
抗CTLA-4治療に応答して上方制御された宿主由来IL-6の遮断(図4に示す)が治療の有効性を改善するかどうかを研究するために、BALB/cマウスにEMT6ネズミ乳癌細胞を乳腺脂肪体に同所的に注射した。腫瘍が100mmのサイズに達した時、マウスに、抗CTLA-4、抗IL-6または抗CTLA-4と抗IL-6との組み合わせを、3日ごとに1回IP注射した(合計で4回の注射)。対照マウスを未処置のままにした。腫瘍の増殖を定期的に監視し、腫瘍のサイズが約1500mmに達したときに、マウスを殺処分した。
【0108】
図5Aは、対照、抗CTLA-4単独または抗IL-6処置マウスと比較して、併用治療(抗CTLA-4および抗IL-6)の増強された抗腫瘍効果を明確に示している(それぞれ、p値0.002、0.137および<0.001のp値)。さらに、抗CTLA-4と抗IL-6との併用治療で治療された5匹のマウスのうち3匹(60%)は、抗CTLA-4群の1匹のマウスとは対照的に、治療に対して完全な応答を示し、それらの腫瘍は約35日目に完全に消失し、併用治療が腫瘍の増殖を阻害するだけでなく、腫瘍を根絶したことを示している。
【0109】
抗CTLA-4と組み合わせて宿主由来のIL-6を遮断することも、マウスの生存を改善した。図5Bに示すように、抗CTLA-4を抗IL-6と組み合わせて治療したマウスは、抗CTLA-4、抗IL-6で治療したマウス、または対照(それぞれ、49、27および27日の生存期間中央値)と比較して、生存率の向上(生存期間中央値は未定義)を示し、p値はそれぞれ0.076、0.0008および0.0005であった。
【0110】
付録
【表1】
【表2】

【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【表5】

【0111】
参考文献
Beyar-Katz O,Magidey K,Ben-Tsedek N,Alishekevitz D,Timaner M,Miller V,Lindzen M,Yarden Y,Avivi I,Shaked Y.Bortezomib-induced proinflammatory macrophages as a potential factor limiting anti-tumour efficacy.J Pathol.2016 Vol.239,Issue 3.Version on line:29 APR 2016/DOI:10.1002/path.4723.
Bonfil RD,Sabbota A,Nabha S,Bernardo MM,Dong Z,Meng H,Yamamoto H,Chinni SR,Lim IT,Chang M,Filetti LC,Mobashery S,Cher ML,Fridman R.,Inhibition of human prostate cancer growth,osteolysis and angiogenesis in bone metastasismodel by a novel mechanism-based selective gelatinase inhibitor.,Int.J.Cancer.2006;118(11):2721-6
De Henau O,Rausch M,Winkler D,Campesato LF,Liu C,Cymerman DH,Budhu S,Ghosh A,Pink M,Tchaicha J,Douglas M,Tibbitts T,Sharma S,Proctor J,Kosmider N,White K,Stern H,Soglia J,Adams J,Palombella VJ,McGovern K,Kutok JL,Wolchok JD,Merghoub T.Overcoming resistance to checkpoint blockade therapy by targeting PI3Kgamma in myeloid cells.Nature.2016;539(7629):443-7.
De Palma M,Lewis CE.Macrophage regulation of tumor responses to anticancer therapies.Cancer Cell.2013;23(3):277-86.
Duraiswamy J,Kaluza KM,Freeman GJ,Coukos G.Dual blockade of PD-1 and CTLA-4 combined with tumor vaccine effectively restores T-cell rejection function in tumors.Cancer Res.2013;73(12):3591-603.
Fujiu K,Shibata M,Nakayama Y,Ogata F,Matsumoto S,Noshita K,Iwami S,Nakae S,Komuro I,Nagai R,Manabe I.A heart-brain-kidney network controls adaptation to cardiac stress through tissue macrophage activation.,Nat.Med.2017;23(5):611-622.
Gajewski TF,Schreiber H,Fu YX.Innate and adaptive immune cells in the tumor microenvironment.Nat Immunol.2013;14(10):1014-22.
Katz OB,Shaked Y.Host effects contributing to cancer therapy resistance.Drug Resist Updat.2015;19:33-42.
Kim KH,Sederstrom JM.Assaying Cell Cycle Status Using Flow Cytometry.Current protocols in molecular biology.2015;111:28 6 1-11.
Kim J,Denu RA,Dollar BA,Escalante LE,Kuether JP,Callander NS,Asimakopoulos F,Hematti P.Macrophages and mesenchymal stromal cells support survival and proliferation of multiple myeloma cells.British Journal of Haematology.2012;158(3):336-46.
Kodumudi KN,Siegel J,Weber AM,Scott E,Sarnaik AA,Pilon-Thomas S.Immune Checkpoint Blockade to Improve Tumor Infiltrating Lymphocytes for Adoptive Cell Therapy.PloS one.2016;11(4):e0153053.
Kruger A,Arlt MJ,Gerg M,Kopitz C,Bernardo MM,Chang M,Mobashery S,Fridman R.Antimetastatic activity of a novel mechanism-based gelatinase inhibitor,Cancer Res.2005;65(9):3523-6.
Ma Y,Adjemian S,Mattarollo SR,Yamazaki T,Aymeric L,Yang H,Portela Catani JP,Hannani D,Duret H,Steegh K,Martins I,Schlemmer F,Michaud M,Kepp O,Sukkurwala AQ,Menger L,Vacchelli E,Droin N,Galluzzi L,Krzysiek R,Gordon S,Taylor PR,Van Endert P,Solary E,Smyth MJ,Zitvogel L,Kroemer G.Anticancer chemotherapy-induced intratumoral recruitment and differentiation of antigen-presenting cells.Immunity.2013;38(4):729-41.
Makkouk A,Weiner GJ.Cancer immunotherapy and breaking immune tolerance:new approaches to an old challenge.Cancer Res.2015;75(1):5-10.
Munoz R,Man S,Shaked Y,Lee C,Wong J,Francia G,et al.Highly efficacious non-toxic treatment for advanced metastatic breast cancer using combination UFT-cyclophosphamidemetronomic chemotherapy.Cancer Res.2006;66:3386-91.
Ostrand-Rosenberg S,Sinha P.Myeloid-derived suppressor cells:linking inflammation and cancer.Journal of Immunology.2009;182(8):4499-506.
Pardoll DM.The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy.Nature reviews Cancer.2012;12(4):252-64.
Postow MA,Callahan MK,Wolchok JD.Immune Checkpoint Blockade in Cancer Therapy.J Clin Oncol.2015;33(17):1974-82.
Romano E,Romero P.The therapeutic promise of disrupting the PD-1/PD-L1 immune checkpoint in cancer:unleashing the CD8 T cell mediated anti-tumor activity results in significant,unprecedented clinical efficacy in various solid tumors.J Immunother Cancer.2015;3:15.
Sato T,Terai M,Tamura Y,Alexeev V,Mastrangelo MJ,Selvan SR.Interleukin 10 in the tumor microenvironment:a target for anticancer immunotherapy.Immunol Res.2011;51(2-3):170-82.
Shaked Y.Balancing efficacy of and host immune responses to cancer therapy:the yin and yang effects.Nat Rev Clin Oncol.2016.
Shaked Y,Ciarrocchi A,Franco M,Lee CR,Man S,Cheung AM,Hicklin DJ,Chaplin D,Foster FS,Benezra R,Kerbel RS.Therapy-induced acute recruitment of circulating endothelial progenitor cells to tumors.Science.2006;313(5794):1785-7.
Shaked Y,Henke E,Roodhart JM,Mancuso P,Langenberg MH,Colleoni M,Daenen LG,Man S,Xu P,Emmenegger U,Tang T,Zhu Z,Witte L,Strieter RM,Bertolini F,Voest EE,Benezra R,Kerbel RS.Rapid chemotherapy-induced acute endothelial progenitor cell mobilization:implications for antiangiogenic drugs as chemosensitizing agents.Cancer Cell.2008;14(3):263-73.
Sharma P,Hu-Lieskovan S,Wargo JA,Ribas A.Primary,Adaptive,and Acquired Resistance to Cancer Immunotherapy.Cell.2017;168(4):707-23.
Swart M,Verbrugge I,Beltman JB.Combination Approaches with Immune-Checkpoint Blockade in Cancer Therapy.Frontiers in Oncology.2016;6:233.
Topalian SL,Drake CG,Pardoll DM.Immune checkpoint blockade:a common denominator approach to Cancer Immunotherapy.Cancer Cell 2015;27(4):450-61.

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
【国際調査報告】