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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】中空繊維モジュール
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20220127BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220127BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220127BHJP
   B01D 63/04 20060101ALI20220127BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G01N33/574 A
G01N33/53 N
G01N33/543 575
G01N33/543 501
B01D63/04
B01D63/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021533342
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019084667
(87)【国際公開番号】W WO2020120583
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】PA201870809
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201970735
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521253549
【氏名又は名称】アクアポリン エーエス
【氏名又は名称原語表記】AQUAPORIN A/S
【住所又は居所原語表記】Nymollevej 78 2800 Kongens Lyngby Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】メーラー ミーケル ホルム
(72)【発明者】
【氏名】トルザスクス クジシトフ
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン マッズ フリース
(72)【発明者】
【氏名】グェン ゲン トゥン
(72)【発明者】
【氏名】アルバイセ シモン
(72)【発明者】
【氏名】サン グォフェイ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006HA02
4D006HA16
4D006HA91
4D006JA13C
4D006JA14A
4D006JA18A
4D006JA19A
4D006JA23A
4D006JA23C
4D006JA25A
4D006JA27A
4D006JB04
4D006KA33
4D006KD30
4D006MA01
4D006MA09
4D006MC09
4D006MC56
4D006MC62
4D006MC63
4D006PB02
(57)【要約】
複数の中空繊維カートリッジを備える中空繊維モジュールが開示される。各中空繊維カートリッジは、半透過性の中空繊維の束を備え、前記束は、その長さに沿って長手方向に延びるシェルによって取り囲まれ、樹脂で両端をポッティングされており、それによって、第1の溶液の処理のための内腔側の空間及び第2の溶液の処理のためのシェル側の空間を定める。シェルには、シェル側の空間で処理される第2の溶液を受け入れるためのポート及び処理された第2の溶液を排出するための別のポートが設けられている。前記中空繊維モジュールは、第1の溶液用の入口、及び第1の溶液を中空繊維カートリッジの各々の第1の端に分配するための分配器を備える、第1のエンドキャップと、処理された第1の溶液を、中空繊維カートリッジの各々の第2の端から収集するための収集器、及び処理された前記第1の溶液用の出口を備える、第2のエンドキャップとを備える。前記中空繊維モジュールはまた、第2の溶液用の入口、及び第2の溶液を中空繊維カートリッジの各々のポートに分配するための分配器を備える、第1のコネクタと、処理された前記第2の溶液を、中空繊維カートリッジの各々の別のポートから収集するための収集器、及び処理された第2の溶液用の出口を備える第2のコネクタとを備える。前記中空繊維モジュールは、膜面積の広い中空繊維モジュールについての市場の需要を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.複数の中空繊維カートリッジであって、その各中空繊維カートリッジは、半透過性の中空繊維の束を備え、前記束は、前記束の長さに沿って長手方向に延びるシェルによって取り囲まれ、樹脂で両端をポッティングされており、それによって、第1の溶液の処理のための内腔側の空間及び第2の溶液の処理のためのシェル側の空間を定め、前記シェルには、前記シェル側の空間で処理される前記第2の溶液を受け入れるためのポート及び処理された前記第2の溶液を排出するための別のポートが設けられた、複数の中空繊維カートリッジと、
b.前記第1の溶液用の入口、及び前記第1の溶液を前記中空繊維カートリッジの各々の第1の端に分配するための分配器を備える、第1のエンドキャップと、
c.処理された前記第1の溶液を、前記中空繊維カートリッジの各々の第2の端から収集するための収集器、及び処理された前記第1の溶液用の出口を備える、第2のエンドキャップと、
d.前記第2の溶液用の入口、及び前記第2の溶液を前記中空繊維カートリッジの各々のポートに分配するための分配器を備える、第1のコネクタと、
e.処理された前記第2の溶液を、前記中空繊維カートリッジの各々の別のポートから収集するための収集器、及び処理された前記第2の溶液用の出口を備える第2のコネクタと、
を備える、中空繊維モジュール。
【請求項2】
前記第1及び第2のエンドキャップは、これらの外周でカバーチューブと接続されており、前記カバーチューブは、前記長手方向に前記複数のカートリッジを内封している、請求項1に記載の中空繊維モジュール。
【請求項3】
前記第1及び第2のコネクタは、中心ロッドによって接続されている、請求項1又は2に記載の中空繊維モジュール。
【請求項4】
前記分配器又は前記収集器は、前記入口又は前記出口とそれぞれ流体接続している複数のチューブを備え、前記チューブは、中空繊維カートリッジのポートを収容するよう適合されている、請求項1から3のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項5】
前記複数のチューブは、前記分配器又は前記収集器の軸に沿って2段階の高さで前記分配器又は前記収集器の外周に配置されている、請求項1から4のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項6】
前記第1又は第2のエンドキャップの前記カートリッジに対向する側には、前記中空繊維カートリッジの対応する端を収容するためのカップ形状の受器が設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項7】
カップ形状の受器には、その内壁上に、中空繊維カートリッジの前記シェルに当接するための周辺フランジが設けられている、請求項1から6のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項8】
Oリングなどの封止部材が、カップ形状の受器の内面と、前記中空繊維シェル又は対応するアダプタの外面との間に設けられている、請求項1から7のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項9】
前記中空繊維カートリッジに近い側の端において前記中空繊維シェルの面に前記アダプタが固定されており、他端には、前記封止部材が設けられている、請求項8に記載の中空繊維モジュール。
【請求項10】
前記第1のエンドキャップの前記分配器及び/又は前記第2のエンドキャップの前記収集器は、2つの隣接するカップ形状の受器の間に、これらの受器の間で液体の交換を可能にするために底部に設けられた開口部を備える、請求項1から9のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項11】
前記第1又は第2のエンドキャップは、前記第1又は第2のコネクタと一体である、請求項1から10のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項12】
前記コネクタの分配器又は収集器は、前記複数の中空繊維カートリッジを収容する第1のチューブプレート、前記複数の中空繊維カートリッジの前記端を収容する第2のチューブプレート、及び前記エンドキャップによって境界を定められた第2の溶液チャンバを備え、前記第1及び第2のチューブプレートは、前記複数の中空繊維カートリッジの前記ポートのいずれかの側に配置されている、請求項11に記載の中空繊維モジュール。
【請求項13】
第1のチューブプレートは、前記複数の中空繊維カートリッジをカバーチューブの内部で液密に配置している、請求項11又は12に記載の中空繊維モジュール。
【請求項14】
第2のチューブプレートは、その外周において前記エンドキャップの内部に液密に取り付けられており、前記キャップは、第2の溶液チャンバの境界を定めるようにカバーチューブの軸方向に延びる、請求項11から13のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項15】
前記エンドキャップの分配器又は収集器は、前記第2のチューブプレート及び前記エンドキャップの内部によって境界を定められた第1の溶液チャンバを備え、前記第1の溶液チャンバは、前記第1の溶液の前記入口又は出口及び前記中空繊維カートリッジの前記端と流体連通するように構成されている、請求項11から14のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項16】
3つ以上の中空繊維カートリッジが、前記中空繊維モジュール内に存在する、請求項1から15のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項17】
6つ又は7つの中空繊維カートリッジが、前記中空繊維モジュール内に存在する、請求項1から12のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つのカートリッジなどの複数の中空繊維カートリッジを備える中空繊維モジュールに関する。1つのモジュール内の多数の中空繊維カートリッジの集合によって、膜面積の広いモジュールについての産業上の需要を満たす。
【背景】
【0002】
モジュール設計において、膜面積を益々拡大する傾向がある。中空繊維モジュールについて、より広い膜面積を得る一つの方法として、中空繊維モジュールの束内の繊維の数を単に増加させることが挙げられる。しかしながら、特定の閾値を超えると、1つのモジュールの膜面積を広げるこの方法は、膜モジュールの生産プロセスを複雑にしてしまう。
【0003】
中空繊維モジュールを生産するとき、中空繊維の束は、ポリマー樹脂を使用してモジュールの各端でキャスト(ポッティング)される。使用されるポリマー樹脂が繊維の端の辺りで均一にキャストされ、気泡を回避することが重要である。これらの効果を得るための好ましい方法は、例えば、米国特許第4,190,411号で開示されるようなポリマー樹脂をスピンダウンさせるための遠心分離機を使用することである。ポッティング材料の遠心キャスティングは、より小さいモジュール及び/又はより小さい繊維について良好に機能するが、モジュールが特定の閾値サイズを超えると、遠心ポッティング法は実現可能ではなく、静置ポッティングが生産の好ましい選択肢となる。しかしながら、繊維の大きな束、特に透析繊維、及び小さい径の繊維について静的な方法を使用することは難しいことが分かっている。
【0004】
本発明は、膜面積を広げた中空繊維モジュールを提案する。
【摘要】
【0005】
本発明の目的は、
a.複数の中空繊維カートリッジであって、その各中空繊維カートリッジは、半透過性の中空繊維の束を備え、前記束は、前記束の長さに沿って長手方向に延びるシェルによって取り囲まれ、樹脂で両端をポッティングされており、それによって、第1の溶液の処理のための内腔側の空間及び第2の溶液の処理のためのシェル側の空間を定め、前記シェルには、前記シェル側の空間で処理される前記第2の溶液を受け入れるためのポート及び処理された前記第2の溶液を排出するための別のポートが設けられた、複数の中空繊維カートリッジと、
b.前記第1の溶液用の入口、及び前記第1の溶液を前記中空繊維カートリッジの各々の第1の端に分配するための分配器を備える、第1のエンドキャップと、
c.処理された前記第1の溶液を、前記中空繊維カートリッジの各々の第2の端から収集するための収集器、及び処理された前記第1の溶液用の出口を備える、第2のエンドキャップと、
d.前記第2の溶液用の入口、及び前記第2の溶液を前記中空繊維カートリッジの各々のポートに分配するための分配器を備える、第1のコネクタと、
e.処理された前記第2の溶液を、前記中空繊維カートリッジの各々の別のポートから収集するための収集器、及び処理された前記第2の溶液用の出口を備える第2のコネクタと、
を備える、中空繊維モジュールを提供することである。
【0006】
産業上の目的のために、膜面積の広いモジュールが、一般的に、大量の供給液を処理するために好ましい。膜面積を広げる需要を満たす一つの方法は、標準モジュールを並列に接続することであり得る。しかし、より多くの量を提供するこの方法は手間がかかり、標準モジュールを間違って接続するリスクを増加させる。別の可能性としては、中空繊維のより大きい束を備えるモジュールを用意することが挙げられる。しかしながら、現在の好ましい遠心ポッティングプロセスを単に拡大することによって、満足する製品を得ることは可能ではなかった。
【0007】
本発明は、他の場合に用意され得るよりも広い膜面積を提供するという産業上の需要を満たす。
【0008】
エンドキャップの使用によって、1次元、すなわち、長さの次元で中空繊維モジュールの境界を定めるが、一般的に、エンドキャップ間の空間を覆うことも有用である。したがって、本発明の特定の実施形態では、前記第1及び第2のエンドキャップは、これらの外周でカバーチューブと接続されており、前記カバーチューブは、前記長手方向に前記複数のカートリッジを内封している。このカバーチューブは、一般的に円筒形であり、ユーザに製品を知らせるラベルを表面に取り付ける可能性を提供する。
【0009】
中空繊維モジュールの安定性を増加させるために、前記第1及び第2のコネクタは、中心ロッドによって接続されていることが、通常好ましい。安定性が増すことにより、中空繊維モジュールが、極端な圧力下でさえ漏れを発生させることなく機能したままとなる。中心ロッドを使用する別の利点は、第1及び第2のコネクタが互いに対して同じ位置のままとなり、それによって、中空繊維カートリッジにかかるトルクを防止又は低減することである。
【0010】
好ましい実施形態では、前記分配器又は前記収集器は、前記入口又は前記出口とそれぞれ流体接続している複数のチューブを備え、前記チューブは、中空繊維カートリッジのポートを収容するよう適合されている。各モジュールは、一般に、1つの入口ポートのみを有するため、分配器のチューブの数は、通常、モジュールの数に対応する。前記チューブは、前記入口に接続され得る。一実施形態では、複数の流路が、1つの入口につながる共通のジョイントで交わる。好適には、前記チューブ及びそこから延びる前記流路の第1の部分が、前記中空繊維カートリッジ及び前記コネクタの組み立てを可能にするために前記中空繊維カートリッジの前記ポートに対応するキャビティを形成する。
【0011】
前記分配器と同様に、前記収集器は、複数のチューブを備える。この複数のチューブは、前記出口と流体接続されており、中空繊維カートリッジのポートを収容するよう適合されている。各カートリッジは、一般に、1つの入口ポートのみを有するため、チューブの数は、カートリッジの数に対応する。前記チューブは、前記コネクタに設けられた複数の流路によって前記出口に接続され得る。一実施形態では、前記流路は、1つの出口につながる共通のジョイントで交わる。好適には、前記チューブ及びそこから延びる前記流路の第1の部分が、前記中空繊維カートリッジ及び前記コネクタの組み立てを可能にするために前記中空繊維カートリッジの前記ポートに対応するキャビティを形成する。
【0012】
本発明の一態様では、前記複数のチューブは、前記分配器又は前記収集器の軸に沿って2段階の高さで前記分配器又は前記収集器の外周に配置されている。2段階の高さの適用により、機械的な安定性が増し、分配器の直径が短くなる。同様に、前記複数のチューブは、前記収集器の軸に沿って交互に分散されていることが好ましい。前記分散器及び前記収集器のチューブは、中空繊維カートリッジを収容するためにペアで配置され得る。好ましい態様では、前記中空繊維カートリッジの軸は、前記中空繊維モジュールの軸に平行である。更に、各中空繊維カートリッジの軸は、前記中空繊維モジュールの軸から同じ半径距離に好適に配置されている。好適には、前記中空繊維カートリッジの軸は、隣接する中空繊維カートリッジの間で同じ角度で配置されている。したがって、前記中空繊維モジュールが3つの中空繊維を備えるとき、中空繊維モジュールの軸に対する2つの隣接する中空繊維の軸間の角度は、好適には120度である。この角度は、4つの中空繊維カートリッジが使用されると90度、6つの中空繊維カートリッジが使用されると60度、などである。
【0013】
好ましい態様では、前記第1又は第2のエンドキャップの前記カートリッジに対向する側には、前記中空繊維カートリッジの対応する端を収容するためのカップ形状の受器が設けられている。このカップ形状の受器は、束内の繊維の内腔側の均等な充填を可能にする。内腔側の均等又は一様な充填により、利用可能な膜面積をより十分に使用することになり、効率がより高くなる。前記カップ形状の受器の縁は、収容を可能にするために前記中空繊維カートリッジの前記シェルの外径と比較して直径が少し広い。
【0014】
好ましい設計では、カップ形状の受器には、その内壁上に、中空繊維カートリッジの前記シェルに当接するための周辺フランジが設けられている。前記周辺フランジと前記シェルの縁との間の境界面には、この組立体を漏れから守るためにOリングなどのガスケットが設けられ得る。
【0015】
代替の実施形態によれば、Oリングなどの封止部材が、カップ形状の受器の内面と、前記中空繊維シェル又は対応するアダプタの外面との間に設けられている。この封止部材の位置によって、漏れのリスクが低減されるように半径方向の力の吸収が保証される。代替の実施形態の実装では、前記アダプタは、前記中空繊維カートリッジに近い側の端において前記中空繊維シェルの面に固定されており、他端には、前記封止部材が設けられている。
【0016】
一実施形態では、前記中空繊維モジュールは、単に、第1の溶液用の1つの入口を備える。しかしながら、第1の溶液をより十分に分配するために2つ以上の入口が設けられてもよい。第1の溶液がエンドキャップに入った場合、好適には、前記第1のエンドキャップの前記分配器及び/又は前記第2のエンドキャップの前記収集器は、2つの隣接するカップ形状の受器の間に、これらの受器の間で液体の交換を可能にするために底部に設けられた開口部を備える。繊維内腔から離れた開口部の位置によって、内腔側に入る前に流体が混合されることが可能となり、それによって、繊維の内腔がより確実に均等に充填される。前記中空繊維カートリッジの他端の前記エンドキャップは、処理された第1の溶液をカップに収集し、この処理された第1の溶液は、カップの底部の流路を通じて出口に案内される。
【0017】
本発明の一態様では、前記第1又は第2のエンドキャップは、前記第1又は第2のコネクタと一体である。この一体構造によって、中空繊維モジュールについての構成要素の数が低減され、構造が単純化する。好適には、前記コネクタの分配器又はコネクタ収集器は、前記複数の中空繊維カートリッジを収容する第1のチューブプレート、前記複数の中空繊維カートリッジの前記端を収容する第2のチューブプレート、及び前記エンドキャップによって境界を定められた第2の溶液チャンバを備え、前記第1及び第2のチューブプレートは、前記複数の中空繊維カートリッジの前記ポートのいずれかの側に配置されている。前記第2の溶液チャンバは、前記第2の溶液用の前記入口又は出口及び前記シェル側の空間と前記ポートを介して流体連通する。
【0018】
好適には、前記第1のチューブプレートは、前記複数の中空繊維カートリッジをカバーチューブの内部で液密に配置している。通常、2つの第1のチューブプレートが、前記カバーチューブのいずれかの端に取り付けられる。前記モジュール内の前記複数の中空繊維カートリッジの更なる固定のために、前記カバーチューブの内部には更なるチューブプレートが配置され得る。
【0019】
通常、前記第2のチューブプレートは、その外周において前記エンドキャップの内部に液密に取り付けられており、前記キャップは、第2の溶液チャンバの境界を定めるようにカバーチューブの軸方向に延びる。前記複数の中空繊維カートリッジの端を前記第2のチューブプレートに液密に取り付け、前記第2のチューブプレートの周囲を前記エンドキャップに更に取り付けることで、前記入口又は出口及び前記内腔側の空間と前記カートリッジの端を介して液体連通する、封止された第1の溶液チャンバが提供され得る。したがって、前記エンドキャップの分配器又は収集器は、前記第2のチューブプレート及び前記エンドキャップの内部によって境界を定められた第1の溶液チャンバを備え、前記第1の溶液チャンバは、前記第1の溶液の前記入口又は出口及び前記中空繊維カートリッジの前記端と流体連通するように構成されている。
【0020】
カートリッジの数は、通常、2つ以上であり、例えば、3つ以上の中空繊維カートリッジが前記中空繊維モジュール内に存在する。十分な膜面積を得るために、4つ以上の中空繊維カートリッジを使用することが一般的に望ましい。本発明の好ましい態様では、6つ又は7つの中空繊維カートリッジが前記中空繊維モジュール内に存在する。本発明の別の好ましい態様では、7つの中空繊維カートリッジが中空繊維モジュール内に存在する。
【0021】
本発明の中空繊維モジュールの実用的な用途は、正浸透(Forward Osmosis:FO)のためである。半透過性の中空繊維膜が非対称的であり、一部の物質を拒絶し、他の物質の通過を可能にする選択的な外層を有する場合、この選択的な外層は、中空繊維の内部又は外部に配置され得る。内部に外層が設けられた中空繊維を使用する中空繊維モジュールについて、第1の溶液は、通常、濃縮のための供給溶液であり、第2の溶液は、中空繊維の外層によって拒絶される溶質を含むドロー溶液である。典型的には、水は、浸透圧により膜を介して交換され、それによって、第1の(供給)溶液は、濃縮/脱水され、第2の(ドロー)溶液は、希釈される。選択的な外層が繊維の外部に設けられる場合、供給溶液は、一般的に、濃縮のためにシェル側に渡される第2の溶液であり、ドロー溶液は、中空繊維の内腔側に導入される。正浸透プロセスは、水フラックス(流動)を増加させるために静水圧(PAFO)によって補助され得る。
【0022】
本発明の中空繊維モジュールの別の実用的な用途としては、逆浸透(Reverse Osmosis:RO)又はナノ濾過(Nanofiltration:NF)のために使用される。典型的には、供給される水は膜を通して透過させ、供給される他の成分を保持するために、供給液に浸透圧を超える静水圧をかける。
【0023】
中空繊維膜は、国際公開第14108827号、国際公開第2017137361号、国際公開第2018141985号、国際公開第2018167221号、又は国際公開第18087289号で開示されるようなアクアポリン水チャネルによって提供され得、これらはすべて参照によって本説明に組み込まれる。
【0024】
好ましい実施形態では、中空繊維は、導入されたアクアポリン水チャネルを有する薄膜複合膜(Thin Film Composite:TFC)層で内部又は外部がコーティングされる。本説明及び請求項で使用される「中空繊維」という用語はまた、毛細管及び管状膜を網羅することが解される。サポート中空繊維が、最初に、シェル内で束ねられポッティングされる。サポート中空繊維は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、又はポリケトンなどのポリマーで調製され得る。サポート中空繊維は、一般に限外濾過に使用されるサイズで細孔を有する。
【0025】
TFC層は、一般的に、ジアミン又はトリアミンを含む水溶液と、ジアシルハライド又はトリアシルハライドを含む無極性溶液との間の反応として調製される。より具体的には、水溶液は、ポリエチレンイミン(PEI)、洗浄剤可溶化アクアポリン水チャネル、及びジアミン又はトリアミンを含む自己集合ナノ構造を含む。無極性溶液は、無極性有機溶媒中にジアシルハライド又はトリアシルハライドを含む。最初に、中空繊維の内部を、中空繊維が水溶液を吸収することを可能にするのに十分な期間、水溶液と接触させる。余分な水溶液の除去及び任意選択的な乾燥の後、無極性溶液が追加され、反応物間の界面重合が可能になる。
【0026】
PEIは、約3,000Da~約5,000Daなどの約2,000Da~約10,000Daの平均分子量を有する、実質的に線状又は分岐ポリマーであり得る。アクアポリン水チャネルは、一般的に、N,N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド(LDAO)、オクチル-グルコシド(OG)、n-ドデシルβ-D-マルトシド(DDM)、又はそれらの組合せからなる群から選択される洗浄剤で可溶化される。ジアミン又はトリアミンは、約1%~約5%(w/w)の濃度で水溶液に好適に存在するm-フェニレンジアミン(MPD)であり得る。
【0027】
ジアシルハライド又はトリアシルハライドは、0.05%~約1%(w/v)の濃度で無極性溶液に存在し得るベンゼン-1,3,5-トリカルボニルクロリド(TMC)であり得る。一般的に、無極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、又はそれらの混合物である。
【0028】
本発明の中空繊維モジュールは、個々に使用され得るか、又はいくつかのモジュールが、フローシステム内で組み合わされて使用され得る。2つ以上のモジュールが一緒に使用されるとき、それらは、直列若しくは並列又はそれらの組合せで接続され得る。直列接続で2つ以上のモジュールを備えるフローシステムは、膜面積が広がり、供給溶液のより効果的な処理を可能にする。
【0029】
前述の目的及び他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。更なる実装の形態が、従属請求項、説明、及び図面から明らかである。
【0030】
これらの態様及び他の態様は、以下で説明される実施形態から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示の以下の詳細説明部分では、以下の図面に示される例示的な実施形態を参照して、態様、実施形態、及び実装をより詳細に説明する。
図1-2】図1はモジュールの斜視図であり、図2はエンドキャップの上からの図である。
図3】内部を見るためのモジュールの断面図を示す。
図4図3の実施形態の詳細な例示を示す。
図5】モジュールの拡大断面図を示す。
図6】コネクタの一部を示す。
図7】部分的に切断したコネクタを示す。
図8】内部から見たモジュールのキャップを示す。
図9】6つのカートリッジのうちの2つのみが存在するモジュールの分解図を示す。
図10】カートリッジが互いから延びて配置された実施形態を示す。
図11】カップ形状の受器と中空繊維カートリッジとの間でアダプタを使用する第2の実施形態を示す。
図12】エンドキャップがコネクタと一体である実施形態を開示する。
図13】エンドキャップが取り外された第3の実施形態の詳細を示す。
【詳細説明】
【0032】
以下で説明する実施形態では、本明細書で、先に説明された又は示された対応する構造及び特徴と同じ又は同様の構造及び特徴は、単純化のために先に使用されたものと同じ参照数字によって示される。
【0033】
図1から図9は、本発明の同じ実施形態を示す。中空繊維モジュール1は、6つの中空繊維カートリッジ2を内封する。各カートリッジは、図示しない半透過性の中空繊維、すなわち、一部の種類の物質に対して透過性があるが、他の種類の物質に対して透過性がない中空繊維の束を備える。半透過性の繊維の束の周囲で、シェル3が提供される。シェル3は、中空繊維の束の長さに沿って長手方向に延びる。束の端9及び12において、繊維は、ポリマー樹脂を使用してポッティングされる。このポリマー樹脂は、樹脂マトリックス内で個々の繊維を固定し、樹脂がシェルの縁と実質的に面一になるようにシェル3の端の内側に接続する。半透過性の繊維の束は、繊維の中空の内部が、液体の求心性の流れ又は遠心性の流れに利用可能であるように、ポリマー樹脂でポッティングされる。
【0034】
シェル内の繊維のポッティングにより、内腔側の空間が、繊維の内部空間(内腔)によって定められ、シェル側の空間が、シェルの内部及びポリマー樹脂マトリックスの内部によって境界を定められた繊維の外部空間によって定められる。シェル3には、溶液を受け入れるためのポート5'、及び処理された溶液を排出するための別のポート5''が設けられている。ポート5'及び5''は、溶液が入口ポート5'から出口ポート5''に運ばれるとき、半透過性の膜を介して物質が交換されることを可能にするために、カートリッジの長さに沿って互いに間隔を空けられている。図示される実施形態では、ポートは、カートリッジの軸から半径方向に延びるタップである。しかしながら、ポート5'が単に、供給源から溶液を受け入れることができる開口部であり、ポート5''が、処理された溶液を容器に渡すための開口部である場合を含む、他の実施形態が想定可能である。
【0035】
6つの中空繊維カートリッジが、モジュール内に配置されている。モジュールの端には、第1のエンドキャップ6が設けられている。キャップは、半透過性の膜によって処理される第1の溶液用の入口7を備える。第1のエンドキャップの内部では、分配システムが、中空繊維カートリッジの各々の第1の端9に第1の溶液の流れを分配する。モジュール1の他端には第2のエンドキャップ10が設けられている。第2のエンドキャップ10の内部には、処理された第1の溶液を6つの中空繊維カートリッジの各々の第2の端から収集するために、収集器が設けられている。処理された第1の溶液の流れは、単一の流れに収集され、出口13で排出される。
【0036】
第1及び第2のエンドキャップ6、10は、これらの外周でカバーチューブ20を介して接続されている。カバーチューブは、長手方向に複数のカートリッジを収容する。エンドキャップには、モジュールを組み立てるために、締結手段が一方のエンドキャップから他方のエンドキャップに延びることを可能にするために、互いに対向する多数の開口部26が設けられている。あるいは、中空繊維モジュールは、円筒形カバーチューブの縁を第1及び第2のエンドキャップの外周に各端で接着又は熱溶融することによって組み立てられてもよい。後者の実施形態では、開口部は省かれ得る。
【0037】
中空繊維モジュールはまた、第2の溶液用の入口15を備える第1のコネクタ14を備える。この入口は、中空繊維カートリッジの各々のポート5に第2の溶液を分配するための分配器16と液体連通する。分配器は、ポート及び分配器が係合すると水密の接続を可能にするための中空繊維カートリッジのポートと相補的な構造を備える。任意で、中程度の圧力、すなわち、10バール以下でさえ水密の係合を確実にするために、ポートの端にOリング又は接着剤が配置され得る。あるいは、ポート及びチューブが、共に熱溶融又は溶着され得る。
【0038】
分配器16は、コネクタの軸から半径方向に延びる多数のチューブ22を備える。分配器の中心で、これらのチューブは、入口に流体接続されている。チューブ22の数は、中空繊維モジュールの中空繊維カートリッジの数と等しい。半径方向に延びるチューブは、中空繊維カートリッジのポート5を収容するよう適合される。
【0039】
多数のチューブ22'及び22''は、モジュールの機械強度を増加させるために分配器の軸に沿って軸方向に分散されている。このように、3つのチューブ22'が、入口15及び出口19に最も近い第1の高さでコネクタの軸の周囲で外周に配置されており、3つの他のチューブ22''が、入口15及び出口19から離れた第2の高さで外周に配置されている。中空繊維カートリッジが第1及び第2のコネクタに接続されると、ポート5'は第1のコネクタのチューブ22'に接続され、ポート5''は第2のコネクタのチューブ22''に接続される。
【0040】
第2の溶液は、シェル側の空間で処理された後、ポート5''を通じて排出される。このポートは、第2のコネクタ17のチューブ22と係合する。チューブ22の各々は、コネクタの軸から半径方向に延び、それらが出口19に流体接続されているコネクタの収集器18で収集される。第1及び第2のコネクタは、同一のものであり得るが、中空繊維モジュールの内部で反対方向に配置され得る。
【0041】
図面で示される実施形態では、第1及び第2のコネクタ14及び17は、中心ロッド21によって接続されている。第1及び第2のコネクタが物理的に接続されていることにより、中空繊維モジュールの機械的な安定性が増し、半径方向に延びるチューブ22は、中空繊維カートリッジのポート5をチューブ22へと確実に容易に嵌める、互いに固定された距離に維持される。
【0042】
第1のエンドキャップ6には、中空繊維カートリッジの対応する端を収容するためのカップ形状のアダプタ23'及び23''が、カートリッジに対向する側に設けられている。入口7は、第1の溶液を、2つの隣接するカップ形状のアダプタに分配する。この第1の溶液は、底部に設けられた隣接するカップ形状の受器の間の開口部25を通じてすべてのカップ形状の受器に分配される。半径方向に延びるチューブが軸方向に異なる位置にあることから、カップ形状の受器は異なる深さを有する。このように、カップ形状の受器23'は、カップ形状の受器23''よりも深い。
【0043】
第1のエンドキャップ6のカップ形状の受器23'及び23''には、中空繊維カートリッジ2のシェル3の縁に当接するために内壁上に周辺フランジ24が設けられている。Oリングなどの封止部材が、特に、静水圧が第1の溶液にかけられるときに漏れを防止するために、フランジ24とシェルの縁との間に配置され得る。
【0044】
同様に、第2のエンドキャップ10には、中空繊維カートリッジの対応する端を収容するためのカップ形状のアダプタ23'及び23''が、カートリッジに対向する側に設けられている。出口13は、第1の溶液を、2つの隣接するカップ形状のアダプタから収集する。この第1の溶液は、底部に設けられた隣接するカップ形状の受器の間の開口部25を通じて他のカップ形状の受器から収集される。半径方向に延びるチューブ22'及び22''が軸方向に異なる位置にあることから、カップ形状の受器は異なる深さを有する。このように、カップ形状の受器23'は、カップ形状の受器23''よりも深い。
【0045】
第2のエンドキャップ10のカップ形状の受器23'及び23''には、中空繊維カートリッジ2のシェル3の縁に当接するために内壁上に周辺フランジ24が設けられている。Oリングなどの封止部材が、特に、静水圧が第1の溶液にかけられるときに漏れを防止するために、フランジ24とシェルの縁との間に配置され得る。
【0046】
第1及び第2の端の中間には、第1及び第2のコネクタ14、17の端部をそれぞれ受け入れることができる開口部27が設けられている。コネクタには、開口部の周囲でエンドキャップの内部に当接するフランジ28が設けられている。Oリングなどの弾力性のある封止部材が、モジュールが荒く扱われる際の衝撃を吸収するために設けられ得る。
【0047】
図10は、12個の中空繊維カートリッジ2を含む中空繊維モジュールを得るためにカートリッジが互いから延びて配置された本発明の実施形態を示す。モジュールの端には、第1のエンドキャップ6が設けられている。キャップは、半透過性の膜によって処理される第1の溶液用の入口7を備える。第1のエンドキャップの内部では、分配システムが、中空繊維カートリッジの各々の第1の端9に第1の溶液の流れを分配する。モジュール1の他端には第2のエンドキャップ10が設けられている。第2のエンドキャップ10の内部には、処理された第1の溶液を6つの中空繊維カートリッジの各々の第2の端から収集するために、収集器が設けられている。処理された第1の溶液の流れは、単一の流れに収集され、出口13で排出される。
【0048】
第1及び第2のエンドキャップ6、10は、これらの外周でカバーチューブ20を介して接続されている。カバーチューブは、長手方向に複数のカートリッジを収容する。エンドキャップには、モジュールを組み立てるために、締結手段が一方のエンドキャップから他方のエンドキャップに延びることを可能にするために、互いに対向する多数の開口部26が設けられている。あるいは、中空繊維モジュールは、円筒形カバーチューブの縁を第1及び第2のエンドキャップの外周に各端で接着又は熱溶融することによって組み立てられてもよい。後者の実施形態では、開口部は省かれ得る。
【0049】
中空繊維モジュールはまた、第2の溶液用の入口15を備える第1のコネクタを備える。この入口は、中空繊維カートリッジの各々のポート5に第2の溶液を分配するための分配器16と液体連通する。分配器は、ポート及び分配器が係合すると水密の接続を可能にするための中空繊維カートリッジのポートと相補的な構造を備える。任意で、中程度の圧力下、すなわち、10バール以下でさえ水密の係合を確実にするために、ポートの端にOリングが配置され得る。
【0050】
分配器16は、コネクタの軸から半径方向に延びる多数のチューブ22を備える。分配器の中心で、これらのチューブは、入口に流体接続されている。チューブ22の数は、中空繊維モジュールの中空繊維カートリッジの数と等しい。半径方向に延びるチューブは、中空繊維カートリッジのポート5を収容するよう適合される。
【0051】
第2の溶液は、シェル側の空間で処理された後、ポート5''を通じて排出される。このポートは、第2のコネクタ17のチューブ22と係合する。チューブ22の各々は、コネクタの軸から半径方向に延び、それらが出口19に流体接続されているコネクタの収集器18で収集される。第1及び第2のコネクタは、同一のものであり得るが、中空繊維モジュールの内部で反対方向に配置され得る。
【0052】
図面で示される実施形態では、第1及び第2のコネクタ14及び17は、中心ロッド21によって接続されている。第1及び第2のコネクタが物理的に接続されていることにより、中空繊維モジュールの機械的な安定性が増し、半径方向に延びるチューブ22は、中空繊維カートリッジのポート5をチューブ22へと確実に容易に嵌める、互いに固定された距離に維持される。
【0053】
中空繊維カートリッジ2aの上部のセット及び中空繊維カートリッジ2bの下部のセットは、環状スペーサ27によって接続されている。したがって、第1の溶液は、中空繊維カートリッジ2aの内腔側の空間で処理されると、第2の端12aで、スペーサ、上部の中空繊維カートリッジ2aの第2の端12a、及び下部の中空繊維カートリッジ2bの第1の端9bによって定められる空間に排出される。続いて、第1の溶液は、スペーサの空間から下部のカートリッジ2bの内腔側の空間に運ばれる。
【0054】
第2の溶液はまず、中空繊維カートリッジ2bの下部のセットのシェル側の空間で処理される。カートリッジの下部のセットの出口19bは、中空繊維カートリッジ2aの上部のセットの入口15aと液体連通する。中空繊維カートリッジの上部のセット及び下部のセットが接続されることにより、より効果的な濾過のために第1の溶液が2度処理されることが可能になる。
【0055】
図11は、中空繊維カートリッジ2をカップ形状の受器23と接続するためにアダプタ29が使用される実施形態を開示する。このアダプタは、カップ形状の受器に近い側の端において、図示しないゴム製のOリングを収容するための溝32を備える。中空繊維カートリッジに近い側のアダプタの一部において、対応するねじ山を有する中空繊維シェルに確実に取り付けるためのねじ山が設けられている。内側の溝31には、中空繊維カートリッジのシェルとアダプタとの間の水密の係合を可能にするOリングが設けられている。外周の溝32内にOリングを配置することにより、係合がぐらつくことを可能にし、すなわち、漏れを発生させることなく細かな動きを可能にする。
【0056】
図12は、エンドキャップが分配器及び/又はコネクタと一体である本発明の実施形態を開示する。図13は、同じ実施形態の斜視図を示す。7つの中空繊維カートリッジが設けられており、ポート5が第2の溶液の出入りを可能にするための開口部である。図面では、1つの開口部のみが各中空繊維カートリッジについて設けられているが、中空繊維カートリッジのシェルの周囲に沿った2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの開口部位置など、カートリッジのシェルにおける更なる開口部を提案することは、当業者の能力の範囲内であろう。中空繊維カートリッジは、カバーチューブ20の両側に設けられ、開口部よりも下に配置された第1のチューブプレート33によってカバーチューブ20内の所定の位置で保持されている。第1のチューブプレート33には、チューブプレートの外周に近い6つの開口部及び中心の1つの開口部が設けられており、各モジュール内に7つの中空繊維カートリッジの収容を可能にする。第1のチューブプレート33は、その外周で、カバーチューブ内に中空繊維カートリッジを固定する構造を形成するためにカバーチューブの周囲に取り付けられている。
【0057】
中空繊維カートリッジの各々のポートを備える端部は、第1のチューブプレート33から突出し、その端で、第2のチューブプレート34に接続されており、それによって、エンドキャップが配置されているときに第2の溶液用のチャンバを形成する。第2の溶液チャンバは、第2の溶液用の入口又は出口及び複数の中空繊維カートリッジの開口部と流体接続しており、したがって、開口部5を介してシェル側の空間に分配するために、入口15から第2の溶液チャンバに第2の溶液が流れることを可能にする。
【0058】
1つの入口(又は出口)のみが図面のエンドキャップで示されているが、中空繊維モジュールの外周に沿って複数の入口を設けることは、当業者の能力の範囲内であろう。したがって、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上の入口が、第2の溶液の一様な分配のために外周に沿って設けられ得る。
【0059】
中空繊維モジュールで処理される第1の溶液は、入口7で入り、中空繊維カートリッジの端に分配される。処理された第1の溶液の対応する収集は、他端で示される。したがって、処理された第1の溶液は、中空繊維から、一方の側のチューブプレート34及び外周に沿ったエンドキャップの円筒形の壁によって境界を定められた第1の溶液チャンバ18に出る。処理された第1の溶液は、出口13から出る。第1の溶液チャンバへの1つの入口又は第1の溶液チャンバからの1つの出口のみが図面で示されているが、第1の溶液をより一様に分配するために、第1の溶液チャンバへの複数の入口及び第1の溶液チャンバからの複数の出口を設けることは、当業者の能力の範囲内であろう。更に、エンドキャップの内部には、一様な量の第1の溶液を混合し、中空繊維カートリッジの端に分配するために、流れの分配手段が設けられ得る。
実施例
【0060】
本発明に係る中空繊維モジュールの、正浸透構成における試験を実施した。供給溶液(すなわち、第1の溶液)は、500LPH(毎時リットル)の流量で逆浸透システムから直接得られる純水である。ドロー溶液は、1M塩化ナトリウムであり、200LPHの速度で導入された。結果は、水フラックス(Jw)が13.5LMHであり、逆塩フラックス(Js)が1.1GMHであった。特定の塩フラックスは、0.08g/Lとして計算され得る。
【0061】
中空繊維モジュールの圧力安定性は、360LPHの供給速度及び150LPHのドロー速度で試験された。膜差圧は、モジュールが漏れを発生させることなく耐えることができた1.54バールであった。特定の塩フラックスは、0.08g/Lで維持された。別の実験では、膜差圧は、漏れを発生させることなく6.5バールの入口圧力まで増加した。
【0062】
中空繊維モジュールには、向流及び並流モードで供給溶液及びドロー溶液が供給された。結果は、向流構成で、フラックスが12.09LMHであり、逆塩フラックスが1.16GMHであった。並流モードで、フラックスは、12.33LMHと測定され、逆塩フラックスは、1.14GMHであった。したがって、供給溶液及びドロー溶液の構成の方法に関わらず、モジュールは、実質的に同じ性能を有する。
【0063】
別の実験では、モジュールは、水平位置及び鉛直位置に配置された。水平位置及び向流構成で、フラックスは、12.25LMHと測定され、逆塩フラックスは、1.18GMHと測定された。モジュールが鉛直位置に配置され、供給液が底部で導入されたとき、フラックスは、12.25LMHと測定され、逆塩フラックスは、1.15GMHと測定された。したがって、モジュールの位置に関わらず、性能は実質的に同じままである。
図1-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2020-10-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.複数の中空繊維カートリッジであって、その各中空繊維カートリッジは、半透過性の中空繊維の束を備え、前記束は、前記束の長さに沿って長手方向に延びるシェルによって取り囲まれ、樹脂で両端をポッティングされており、それによって、第1の溶液の処理のための内腔側の空間及び第2の溶液の処理のためのシェル側の空間を定め、前記シェルには、前記シェル側の空間で処理される前記第2の溶液を受け入れるためのポート及び処理された前記第2の溶液を排出するための別のポートが設けられた、複数の中空繊維カートリッジと、
b.前記第1の溶液用の入口、及び前記第1の溶液を前記中空繊維カートリッジの各々の第1の端に分配するための分配器を備える、第1のエンドキャップと、
c.処理された前記第1の溶液を、前記中空繊維カートリッジの各々の第2の端から収集するための収集器、及び処理された前記第1の溶液用の出口を備える、第2のエンドキャップと、
d.前記第2の溶液用の入口、及び前記第2の溶液を前記中空繊維カートリッジの各々のポートに分配するための分配器を備える、第1のコネクタと、
e.処理された前記第2の溶液を、前記中空繊維カートリッジの各々の別のポートから収集するための収集器、及び処理された前記第2の溶液用の出口を備える第2のコネクタと、
を備え、前記第1及び第2のエンドキャップは、これらの外周でカバーチューブと接続されており、前記カバーチューブは、前記長手方向に前記複数のカートリッジを内封している、中空繊維モジュール。
【請求項2】
前記第1及び第2のコネクタは、中心ロッドによって接続されている、請求項に記載の中空繊維モジュール。
【請求項3】
前記分配器又は前記収集器は、前記入口又は前記出口とそれぞれ流体接続している複数のチューブを備え、前記チューブは、中空繊維カートリッジのポートを収容するよう適合されている、請求項1又は2に記載の中空繊維モジュール。
【請求項4】
前記複数のチューブは、前記分配器又は前記収集器の外周に開放しており、該開放している位置は前記分配器又は前記収集器の軸に関して2段階の高さに軸方向に分散している、請求項1からのいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項5】
前記第1又は第2のエンドキャップの前記カートリッジに対向する側には、前記中空繊維カートリッジの対応する端を収容するためのカップ形状の受器が設けられている、請求項1からのいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項6】
カップ形状の受器には、その内壁上に、中空繊維カートリッジの前記シェルに当接するための周辺フランジが設けられている、請求項1からのいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項7】
Oリングなどの封止部材が、カップ形状の受器の内面と、前記中空繊維シェル外面との間に設けられている、請求項1からのいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項8】
前記中空繊維カートリッジに近い側の端において前記中空繊維シェルの面にアダプタが固定されており、
他端にはOリングなどの封止部材が、カップ形状の受器の内面と、前記アダプタの外面との間に設けられている、請求項1から7のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項9】
前記第1のエンドキャップの前記分配器及び/又は前記第2のエンドキャップの前記収集器は、2つの隣接するカップ形状の受器の間に、これらの受器の間で液体の交換を可能にするために前記カップ形状の受器の底部に設けられた開口部を備える、請求項1からのいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項10】
前記第1又は第2のエンドキャップは、前記第1又は第2のコネクタと一体である、請求項1からのいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項11】
前記コネクタの分配器又は収集器は、前記複数の中空繊維カートリッジを収容する開口部を有する第1のチューブプレート、前記複数の中空繊維カートリッジの前記端を収容する第2のチューブプレート、及び前記エンドキャップによって境界を定められた第2の溶液チャンバを備え、前記第1及び第2のチューブプレートは、前記複数の中空繊維カートリッジの前記ポートのいずれかの側に、前記複数の中空繊維カートリッジの長手方向に軸方向に配置されている、請求項10に記載の中空繊維モジュール。
【請求項12】
第2のチューブプレートは、その外周において前記エンドキャップの内面に液密に取り付けられており、前記キャップは、第2の溶液チャンバの境界を定めるようにカバーチューブの軸方向に延びる、請求項10又は11に記載の中空繊維モジュール。
【請求項13】
前記エンドキャップの分配器又は収集器は、前記第2のチューブプレート及び前記エンドキャップの内部によって境界を定められた第1の溶液チャンバを備え、前記第1の溶液チャンバは、前記第1の溶液の前記入口又は出口及び前記中空繊維カートリッジの前記端と流体連通するように構成されている、請求項10から12のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項14】
3つ以上の中空繊維カートリッジが、前記中空繊維モジュール内に存在する、請求項1から13のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【請求項15】
6つ又は7つの中空繊維カートリッジが、前記中空繊維モジュール内に存在する、請求項1から14のいずれかに記載の中空繊維モジュール。
【国際調査報告】