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特表2022-512705流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法
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  • 特表-流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法 図1
  • 特表-流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20220131BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20220131BHJP
   G06F 30/28 20200101ALI20220131BHJP
   F28F 99/00 20060101ALI20220131BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20220131BHJP
   G06F 119/08 20200101ALN20220131BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/10 200
G06F30/28
F28F99/00
G06F119:14
G06F119:08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520931
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2019025340
(87)【国際公開番号】W WO2020083521
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】18020558.5
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツル、ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイタルカ、アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC05
5B146DJ01
5B146DJ07
(57)【要約】
本発明は、流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法に関し、装置又は装置の少なくとも一部の理論的な、特に、数値的なシミュレーションが実行され(201)、コンクリートを材料として含まない装置の少なくとも1つの要素が、理論的シミュレーションにおいて、コンクリートから製造される少なくとも1つのコンクリート要素によって置き換えられ(202)、装置の負荷分析が、理論的シミュレーションの助けにより実行される(204)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れるプロセス工学的装置(1)の理論分析方法であって、
前記装置(1)又は前記装置(1)の少なくとも一部の理論的な、具体的には、数値的なシミュレーションが実行され(201)、
前記理論的シミュレーションにおいて、コンクリートを材料として含まないことを特徴とする前記装置(1)の少なくとも1つの要素が、コンクリートから製造される少なくとも1つのコンクリート要素によって置き換えられ(202)、
前記装置の負荷分析が、前記理論的シミュレーションの助けにより実行される(204)、方法。
【請求項2】
有限要素法が、前記装置又は前記装置(201)の少なくとも一部の前記理論的シミュレーションとして実行され、前記少なくとも1つの要素が有限要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの要素が、少なくとも1つの接触要素であり、前記接触要素を介して隣接要素間で力が伝達される(202)、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの要素及び前記少なくとも1つのコンクリート要素が、隣接要素への力伝達に関して同じ又は少なくともほぼ同じ特性を有する(202、203)、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコンクリート要素が、少なくとも1つの隣接要素に対して完全又は少なくともほぼ完全に圧縮力を伝達する特性を有する(203)、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコンクリート要素が、少なくとも1つの隣接要素に、引張力を最大で所定閾値まで伝達する特性を有する(203)、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定閾値が、前記装置(1)の破断、特に、構造体の開口を表す(203)、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定閾値が、
フランジシールの漏れを表す、及び/又は
プレート熱交換器として具体化された前記装置(1)の層の開口を表す(203)、及び/又は
具体的には、コイル又は巻き熱交換器として具体化された前記装置の束、特に束端部の開口を表す、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記装置の張力、変形、及び/又は温度場分析が、負荷分析として実行される(204)、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
流体が流れる前記プロセス工学的装置(1)が、熱交換器、特に、プレート熱交換器又はコイル若しくは巻き熱交換器として、又は相分離のためのカラム若しくは容器として設計される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を有する、計算ユニット。
【請求項12】
計算ユニットに、前記計算ユニット上で実行されるときに、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを記憶した機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法に関し、また、このような方法を実行するための計算ユニット及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス工学的プラントは、通常、目的志向の物理的及び/又は化学的及び/又は生物学的及び/又は核反応の流れを用いて物質変化及び/又は物質変換を実施するためのプラントを意味すると理解される。このような変化及び変換は、典型的には、化学反応、生物学的反応、又は核反応などの、粉砕、篩い分け、混合、熱伝達、精留、結晶化、乾燥、冷却、充填、及び重畳物質変換が挙げられる。例えば、真空はんだ付けされた(アルミニウム)プレートフィン熱交換器(PFHE)又はコイル巻き熱交換器(CWHE)などの流体が流れるプロセス工学的装置は、多数の利点(熱統合、コンパクト化、コスト)があるので、頻繁にプロセス工学的プラントに使用される。
【0003】
このような装置は、数値モデル又はシミュレーション、通常は有限要素法によって、シミュレートされ、理論的に検査され得る。このようにして、例えば、様々な設計の変形を、装置の計画又は設計段階の過程で架設及び稼働の前に、改善可能性について試験及び検査することができる。装置はまた、例えば、既に稼働されていてもよく、上記シミュレーションの助けにより、例えば、示される損傷を検出できるようにするため、装置の進行中の動作を監視することができる、又は今後の進展について検査することができる。
【0004】
これらのシミュレーションでは、具体的には、例えば、PFHEのフィンとプレートとの間、又はCWHEの隣接するチューブの間など、隣接する本体の接触点が、部分的に克服不能な障害を示すことが判明している。すなわち、2つ以上の本体(組み立てられた構造体)を有するFEMの場合、変形による本体接触の可能性がある。いわゆる有限接触要素が、衝撃作用、界面変形、接着、摩擦、又は本体接触の結果としての本体の分離など、このプロセス中に生じる機械的作用を処理するために使用される。
【0005】
接触要素は、通常、プロセス中に生じる本体接触及び力の伝達を計算で検出するために使用される。この計算の性質は非線形であるため、大抵の場合、収束問題及び計算終了という結果となる。具体的には、本明細書では、接触許容誤差は理想的には数マイクロメートルの範囲に収まるべきだが、大質量の結果として、プロセス工学的装置の変形はミリメートルの範囲となるという解決不能な問題が生じる。このことは、計算シミュレーションの過程で、克服することができない障害を招く。
【発明の概要】
【0006】
これを背景として、本発明は、流体が流れるプロセス工学的装置の理論分析方法は、また、独立請求項の特徴を有する計算ユニット及びコンピュータプログラムを提案する。好ましい実施形態は、従属請求項の主題と以下の説明である。
【0007】
流体が流れるプロセス工学的装置は、熱交換器、特に、プレート熱交換器又はコイル若しくは巻き熱交換器として設計され得る。更に、本装置は、具体的には、カラム(取付具を有する中空の細長い柱)として、又は相分離器(取付具を有する容器)として具体化されることも考えられる。特に、本装置は、互いに接触している少なくとも2つの本体を有する。
【0008】
本方法の範囲内で、装置又は装置の少なくとも一部の、理論的な、特に、数値的なシミュレーションが実行される。理論的シミュレーションでは、材料としてコンクリートを含まないことを特徴とする装置の少なくとも1つの要素が、コンクリートから製造された少なくとも1つのコンクリート要素によって置換又は表現され、装置の負荷分析が、理論的シミュレーションの助けにより行われる。
【0009】
シミュレーションは、例えば、計画された装置の寸法又は設計仕様を試験及び検査するために、例えば、計画又は設計段階の過程で、装置の架設又は稼働前に作成し、実行することができる。また、装置が既に稼働されており、例えば、示される損傷を早期に検出できるようにするため、装置の実行動作がシミュレーションの助けを借りて監視される、又は今後の進展が検査されることも考えられる。
【0010】
負荷分析の過程で、特に負荷下の装置の挙動が検査される。このような応力は、例えば、装置の動作中に、例えば、装置に作用する温度及び圧力の変化に起因して生じ得る。同様に、これらは、好都合なことに、装置が動作しておらず、駆動されていないときに発生する負荷、例えば、機械的応力、変形、歪みなどの自重の結果として装置が受ける負荷であってもよい。
【0011】
本発明の文脈において、コンクリート以外の材料、具体的には、はんだ付けされた接続部又は鋼若しくはアルミニウム上、特に、溶接された接続部上のはんだ又ははんだ付け剤などの金属から製造される装置の特定の要素は、コンクリートから製造されたコンクリート要素による理論的シミュレーションにおいて真似る又はシミュレートすることができるが、これは、このようなコンクリート要素又は材料としてのコンクリートが、一般に、接触点で生じる力及び力伝達に関して金属接触点に匹敵する特性を有するためである。
【0012】
具体的には、コンクリート及びコンクリート要素は、特に、本体接触に関して、対応する要素についての理論的シミュレーションにおいてシミュレートされるべき負荷に関する行動特性を有する。コンクリート要素における対応する力及び力伝達のシミュレーション又は計算は、好都合なことに、数値計算方法にとって問題がないことが分かっている。
【0013】
装置の対応する要素をコンクリート要素で置き換えることにより、収束問題、計算終了、又は更にはシミュレーション及びそのアルゴリズムにとって解決不可能な問題を引き起こすことなく、装置の本体内の負荷、具体的には、別の本体と接触した際に生じる力又は力伝達による変形又は拡張を計算することが可能となる。したがって、本発明は、流体が流れるプロセス工学的装置の信頼性の高い理論分析を可能にする。
【0014】
少なくとも1つの要素は、有利には、少なくとも1つの接触要素であり、その接触要素によって2つの隣接要素間で力が伝達される。具体的には、少なくとも1つの接触要素は、隣接要素と物理的に分離せず、直接物理的に接続されている。具体的には、隣接要素はそれぞれ、接触要素によって力を交換する、具体的には、接触する又は接続される別々の本体の部分である。例えば、理論的シミュレーション用の装置は、構成要素(本体)に概念的に分割することができ、各構成要素は次に、様々な小要素に細分化され、構成要素間の任意の接触点が、接触要素によってシミュレートされる。したがって、隣接する本体間で力を伝達する接触要素、具体的には、変形又は歪みを招く可能性がある力又はその伝達を伝える接触要素は、対応するコンクリート要素として好都合にシミュレートされる。
【0015】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの要素及び少なくとも1つのコンクリート要素は、隣接要素への力伝達に関して同じ又は少なくともほぼ同じ特性を有する。この文脈において、同じ又は少なくともほぼ同じ特性とは、特に、少なくとも1つの要素の力差と、少なくとも1つのコンクリート要素の力差とが、所定の値、具体的には最大5%以下、更に、具体的には最大3%、より具体的には最大1%異なることを意味すると理解されるべきである。この力差は、具体的には、それぞれの要素又はコンクリート要素に作用する力と、その隣接要素に作用する力との間の差として理解されるべきである。
【0016】
よって、特に、負荷分析にとって重要である、要素及び対応するコンクリート要素の特性は互いに同等である。それぞれの要素を対応するコンクリート要素と置き換えることにより、力作用下の装置の挙動を、好都合なことに、理論的シミュレーションの過程で、特に、どのくらいの力で装置の破断、欠陥、又は開口が生じるかについて検査することができる。具体的には、要素及び対応するコンクリート要素の両方で、破断、欠損、又は開口はそれぞれの場合において、同じ又は少なくともほぼ同じ力伝達で発生し、ここでも、これらの力伝達は、所定の値以下、具体的には最大5%以下、更に具体的には最大3%、より具体的には最大1%異なる。
【0017】
少なくとも1つのコンクリート要素は、好ましくは、圧縮力を完全に又は少なくともほぼ完全に、少なくとも1つの隣接要素に伝達する特性を有する。具体的には、圧縮力は、コンクリート要素から少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%伝達される。したがって、コンクリート要素から、例えば、具体的には、対応する置き換えられた要素からの圧縮力は完全に伝達され、具体的には、装置の破断又は開口を全く又は少なくともほとんど共有しない。
【0018】
特に好ましくは、少なくとも1つのコンクリート要素は、少なくとも1つの隣接要素に、最大で所定の閾値まで引張力を伝達する特性を有する。したがって、圧縮力とは対照的に、引張力は、具体的には、完全に妨げられずに伝達されるのではなく、シミュレーションにおいて、具体的には入力パラメータとして設定及び変更され得る最大閾値まで伝達される。したがって、具体的には、コンクリート要素の引張力のシミュレートされた伝達特性は、それぞれの置き換えられた要素の対応する特性に適合させることができる。
【0019】
有利には、所定閾値は、装置の破断を表す。破断は、具体的には、装置の故障、及び部品の保守、修理、又は交換につながり、ひいては、追加のコストに関連する可能性のある損傷として理解されるべきである。このような破断としては、好ましくは、構造体の開口、例えば、亀裂形成、元々接続された隣接要素からの要素の浮き、溶接、はんだ、又はねじ接続などの緩みが挙げられる。
【0020】
具体的には、コンクリート要素及び閾値の助けにより、対応する置き換えられた要素について、異なる引張力伝達特性を有する異なる材料をシミュレートし、装置における挙動、特に、これらの材料の使用による破断が生じるかどうか、及び破断が生じる場合、いつ起きるのかを検査することができる。したがって、例えば、装置の計画及び設計段階の過程で、望ましくないコストのかかる破断を発生させることなく、可能な限りエラーなしで装置を動作させるため、装置の様々な設計又は構造的変形を試験する、特に、改善可能性について検査することができる。
【0021】
置き換えられる要素、並びに置き換えるコンクリート要素及びそれぞれの閾値の選択に応じて、3つの特に好ましい実施形態を参照して以下に説明するように、異なる場所でのシミュレーションの助けにより、負荷分析をシミュレートすることができる。
【0022】
少なくとも1つの要素は、有利には、フランジ又はフランジ接続部の部分であり、特にフランジシールである。シミュレーションにおいて、フランジのこの部分、具体的には、鋼又はアルミニウムなどの金属製の部分は、有利なことに、コンクリート製の適切な要素で置き換えられる。有利には、所定閾値は、フランジシールの漏れを表す。気密のため、このようなフランジ接続部は、具体的には、特定の表面圧力、特に圧縮力を必要とする。これが、足りない又は省かれる場合、漏れが想定され得る。コンクリート要素により、この状態を簡易、正確、かつ迅速に計算することが可能である。具体的には、フランジシール上の表面圧力分布は、シミュレーションの過程で分析することができる。フランジ封止面の傾斜により、例えば、シールの外側領域のみを押圧することができ、その結果、力分布全体を変化させ、その結果、フランジの気密性に影響を与えることができる。コンクリート要素により、シミュレーション及び分析も容易である。
【0023】
好ましい実施形態では、装置は、プレート熱交換器として、具体的には、真空はんだ付け(例えば、アルミニウム)プレートフィン熱交換器(PFHE)として設計される。この場合、少なくとも1つの要素は、プレート熱交換器の本体の接続部の部分、好ましくははんだ付け接続部の部分である。このようなはんだ付け接続部は、具体的には、プレート又は分離プレートと、プロファイル又はフィンとの間であってもよい。
【0024】
所定閾値は、有利には、プレート熱交換器として具体化される装置の分離プレート及びプロファイルの開口又は分離を表す。プレート熱交換器のはんだ付けの間、プレート熱交換器のブロック内の不均一な温度分布は、加熱又は冷却中に生じることが多い。異なる熱膨張及び結果として生じる変形差に起因し、緩く又は不十分な堅固さで接続された分離プレート及びプロファイルのせいで、ブロック内に間隙が形成される可能性がある。このことは、十分にはんだ付けされていない分離プレート及びプロファイルの領域に問題をもたらし得る。理論的シミュレーションの助けにより、例えば、プレート熱交換器の製造プロセスの過程でのはんだ付け中のかかるエラーを回避するため、又は不十分にはんだ付けされる点を改善するために、このような破断の事例を、負荷分析の過程で十分に検査することができる。
【0025】
有利には、装置は、コイル巻き熱交換器(CWHE)として設計することができる。この場合、少なくとも1つの要素は、好ましくは、特に、複数の個々のチューブ又はラインを備える熱交換器の束内のチューブ間の接続部の部分である。更に、少なくとも1つの要素は、好ましくは束端部の部分であり、より好ましくは、自由に垂れ下がった束端部である。束の個々のチューブは、例えば、上記の熱交換器においてコア又はコアチューブの周りにらせん状に巻かれる。端部において、個々のチューブはそれぞれ、端プレートに接続する、例えば溶接又ははんだ付けすることができる。束端部において、複数のチューブは、多くの場合、支持されておらず、例えば、支持アームによって固定されておらず、主にコアチューブと端プレートとの間で自由に垂れ下がる。
【0026】
所定閾値は、有利には、コイル又は巻き熱交換器として具体化される装置の束、特に、束端部の開口を表す。このような開口は、特に、自重下で束を曲げることによって生じ得る。このような熱交換器の製造プロセスでは、自由束端部での緩みと併せて頻繁な回転に起因して、チューブがコアチューブの周りに巻かれるときに、束が開口する場合がある。したがって、製造過程において、ブラケットの引き裂き、及びその結果生じ得るチューブの損傷に至る可能性がある。この場合も、理論的シミュレーションの助けにより、そのような破断の事例を、製造プロセス中に十分に検査して、回避する又は適切に改善することができる。
【0027】
言うまでもなく、装置はまた、代替的な便宜的な方法で、例えば、相分離用のカラム又は容器として設計することもできる。装置の本体間に接触点が存在し、これらがコンクリート要素によってモデル化されることのみが必須である。特に、この方法は、分離、開口、又は破断が確立され得る接触点にとって特に好適である。
【0028】
好ましい実施形態では、装置の張力、変形、及び/又は温度場分析が、負荷分析として実行される。具体的には、装置内のそれぞれの機械的応力、変形又は膨張、及び/又は温度場分布を、少なくとも1つの要素とその隣接要素との間、更に特には、装置の全ての要素間で検査することができる。特に好ましくは、負荷分析の過程で、破断が生じるまでの負荷下での装置の挙動が検査される。
【0029】
好ましくは、有限要素法が、装置の理論的シミュレーション、又は少なくとも装置の一部として行われる。有限要素法(FEM)とは、偏微分方程式の複素系の数値解に基づく数値的方法である。これにより、装置は、単純な形状の有限数のサブ領域に分割される、すなわち、その単純な幾何学的形状に基づいて物理的又は熱油圧挙動を計算することができる有限要素に分割される。有限要素のそれぞれにおいて、偏微分方程式は、単純な微分方程式又は代数方程式によって置き換えられる。このようにして得られた方程式系が、偏微分方程式の近似解を得るために解かれる。1つの要素から隣接要素への移行中、本体全体の物理的挙動が、所定の連続性条件によってシミュレートされる。これは、原則として既知であり、広く普及しており、市場で入手可能なソリューションをこの目的のために使用することができる。しかしながら、本発明の文脈では、これらの有限要素の少なくとも1つの有限要素、特に有限接触要素が、少なくとも1つのコンクリート要素によって表される。
【0030】
本発明による計算ユニット、例えば、装置の制御装置は、具体的には、プログラミングによって設計され、本発明による方法を実行する。
【0031】
ソフトウェアの形態での本発明の実施は、特に、実行中の計算ユニットが追加のタスクにも使用され、任意の方法で利用可能である場合、特に低コストを実現できるために有利である。コンピュータプログラムを提供するための好適なデータキャリアは、具体的には、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM、DVDなどの磁気、電気、及び光学データキャリアである。コンピュータネットワーク(インターネット、イントラネットなど)を介したプログラムのダウンロードも可能である。
【0032】
本発明の更なる利点及び実施形態は、明細書及び添付の図面から明らかになるであろう。
【0033】
上記及び下記の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、指定された特定の組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又はそれらだけでも使用され得ることを理解されたい。
【0034】
本発明は、例示的な実施形態を使用して図面に概略的に示され、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】プレート熱交換器として設計され、本発明による方法の好ましい実施形態に従って分析することができる、流体が流れるプロセス工学的装置の概略斜視図である。
【0036】
図2】本発明による方法の好ましい実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本明細書ではプレート熱交換器1の形態をとるプロセス工学的装置の外側図である。
【0038】
プレート熱交換器を制御又は調節するために、例えば制御ユニットとして設計された計算ユニット20が提供される。更に、プレート熱交換器1は、制御又は調節のために測定値を検出する十分な数のセンサ10、例えば、圧力及び/又は温度センサ10を備える。
【0039】
プレート熱交換器1は、例えば数メートルの長さと、例えば約1メートル又は数メートルの幅又は高さとを有する立方状中央本体8を有する。取付具6及び6aは、中央本体8の上面、中央本体8の側面、及び下面に見ることができる。中央本体8の下に位置し、示されている側と反対側に位置する取付具6及び6aは、部分的に隠れている。
【0040】
流体又はプロセス流は、接続片7を接続することによってプレート熱交換器1に供給する、又はプレート熱交換器1から除去することができる。取付具6及び6aは、接続片7を通って導入される流体を分配する、又はプレート熱交換器1から除去される流体を収集及び濃縮する役割を果たす。次いで、様々な流体流は、プレート熱交換器1内で熱エネルギーを交換する。
【0041】
図1に示すプレート熱交換器1は、熱交換の目的で、別個の通路内で互いに通過する流体流を供給するように設計されている。流の一部が互いに反対方向に流れ、別の部分が交差して又は同じ方向に流れるように誘導することができる。
【0042】
中央本体8は、本質的に、分離プレート、熱交換プロファイル(いわゆるフィン)、及び分配プロファイルの配置である。例えば、多数のプロファイルが、2つの分離プレートの間に配置され、2つの分離プレートに接続される。分離プレートとプロファイルを有する層が交互に並ぶ。熱交換プロファイル及び分配プロファイルを有する層は、通路と呼ばれる。
【0043】
プレート熱交換器1の側面では、分配プロファイルが、分配プロファイルアクセス(いわゆるヘッダー又は半シェル)を有する。流体は、取付具6及び6a並びに接続片7を介して、これらのアクセスを通って外側から関連通路へと導入されてもよい、又は、再度除去されてもよい。分配プロファイルアクセスは、取付具6及び6aによって隠される。
【0044】
したがって、中央本体8は、流れ方向に交互に平行に配置された通路及び分離プレートを有する。分離プレート及び通路はどちらも、大部分がアルミニウムで作製される。これらの側面では、アルミニウム製のサイドストリップによって通路が閉鎖され、その結果、側壁は、分離プレートを有する積層設計によって形成される。中央本体8の外側通路は、通路及び分離プレートに平行に位置するアルミニウム製カバー(カバープレート)によって閉鎖される。
【0045】
このような中央本体8は、例えば、分離プレートの表面にはんだを塗布し、次いで、分離プレート及び通路を互いの上に交互に積み重ねることによって製造することができる。カバーは、スタック8を上部又は下部で覆う。次いで、中央本体は、オーブン内で加熱することによってはんだ付けされる。
【0046】
このようなはんだ付けの間、加熱又は冷却中に、中央本体8内の不均一な温度分布が生じる。異なる熱膨張及びその結果生じる変形差に起因し、緩く又は不十分な堅固さで接続されたプロファイル及び分離プレートのせいで、中央本体8内に間隙が形成される可能性がある。これにより、後の圧力サンプルの場合、十分にはんだ付けされない層の領域に問題が生じ得る。したがって、例えば、十分にはんだ付けされていない領域による窪みの形成を通じて、内部の問題が、このようなはんだ付けブロック又は中央本体8上で発生し得る。
【0047】
本発明の好ましい実施形態の枠組みでは、プレート熱交換器1の理論分析は、例えば、計画又は設計段階の過程で、架設又は稼働前にプレート熱交換器1の様々な設計変形を試験し、改善可能性について検査するために実行されるべきである。具体的には、プレート熱交換器1は、この分析の過程で、開口又は破断が、相互に緩く又は不十分に接続された層のために中央本体8内で形成された間隙の形態で発生し得るかどうか、及び発生する場合にはいつ発生するかについて検査されるべきである。
【0048】
図2は、本発明による方法の好ましい実施形態を示すブロック図である。
【0049】
工程201では、プレート熱交換器1又は装置の少なくとも一部の理論的な数値シミュレーションが実行される。この目的のために、プレート熱交換器1を複数の個々のサブ領域又は有限要素に細分する過程で、それらの単純な幾何学的形状に基づいて、その物理的又は熱油圧挙動を計算することができる。
【0050】
これらの有限要素の個々の例は、分離プレート又はプロファイルのそれぞれの部分である。分離プレートとプロファイルとの間のはんだ接触点は、有限接触要素によって表される。
【0051】
従来の数値シミュレーションの過程で、そのようなはんだ付けされた接合部は、接触要素によって数値的にシミュレートすることができ、これにより、プロセスで生じる本体接触及び力の伝達が計算で検出される。しかしながら、この計算の性質は非線形であり、収束問題及び計算終了につながる可能性があるため、大きな問題に関連する可能性がある。具体的には、許容可能な精度に関して、接触許容誤差が、理想的には数マイクロメートルの範囲であるべきという解決不可能な問題が生じ得る。しかしながら、中央本体の変形はミリメートルの範囲であってもよい。このことは、計算シミュレーション過程における克服できない障害につながる可能性がある。
【0052】
本方法の範囲内で、工程202で、2つの本体のはんだ付け接続部を説明する個々の有限要素は、それぞれ有限コンクリート接触要素として提供される。それぞれの置換コンクリート要素は、具体的には、形状、容積、及び質量の点で、置き換えられる要素に適しているが、置き換えられる接触要素とは全く異なり、はんだではなく、材料がコンクリートである。
【0053】
工程203では、シミュレーションにおいて閾値が設定される、又は予め決定される。具体的には、コンクリート又はコンクリート要素は、圧縮力を完全に伝達するが、コンクリートが破断するために、引張力を全く又はごくわずかしか伝達しない特性を有している。有限要素シミュレーションにおけるコンクリート要素は、いずれの場合も、最大で所定閾値まで引張力を伝達する。閾値に達すると、コンクリート要素は引張力をもはや伝達せず、それぞれのコンクリート要素は破断する。
【0054】
したがって、有限要素法では、この所定閾値は、プレート熱交換器1の破断、具体的には、構造体の開口、特に、中央本体8の加熱又は冷却中に発生する分離プレートからの通路又はプロファイルの開口又は分離を表す。
【0055】
コンクリート要素が開口する又は破断する負荷限界は、調節可能である。
【0056】
工程204で、有限要素法が工程203における所定閾値に従って実行され、プレート熱交換器1が数値的にシミュレートされる。この理論的シミュレーションの助けにより、プレート熱交換器1の負荷分析、特に、張力、変形、及び温度場分析が実行される。
【0057】
この温度場分析の過程で、特に、中央本体8内の不均一な温度分布がシミュレート及び分析され、これは、分離プレート及び通路のはんだ付け接続部が加熱及び後続の冷却によって生成されるときに行われる。張力及び変形の分析の過程で、不均一な温度分布のために生じ得る中央本体8の異なる熱膨張が、シミュレート及び分析される。更に、異なる熱膨張によって生じる中央本体8の変形差が、シミュレート及び分析される。
【0058】
具体的には、シミュレートされたプレート熱交換器の選択された設計又は寸法が最終的に中央本体8内の間隙形成、すなわち、不均一な温度分布、異なる熱膨張、及び変形差による、分離プレートと通路との間の接続の破断又は緩みをもたらすかどうかが、この負荷分析の過程でシミュレート及び分析される。
【0059】
これらの有限要素法の結果が、このような破断の発生を回避するため、プレート熱交換器1の製造及び稼働のために工程205で使用されてもよい。
図1
図2
【国際調査報告】