(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】フォーム材料の製造における使用のため及びメルトフロー調整剤としての使用のための解重合ポリスチレンから誘導されたスチレンコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/50 20060101AFI20220131BHJP
C08F 12/08 20060101ALI20220131BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20220131BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20220131BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
C08F8/50
C08F12/08
C08L25/04
C08L51/06
C08J9/04 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533652
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 CA2019051814
(87)【国際公開番号】W WO2020118453
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513011063
【氏名又は名称】グリーンマントラ リサイクリング テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ドメニク ディ モンド
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スコット
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074AA32L
4F074AA98
4F074AB05
4F074BA53
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4J002BC031
4J002BC032
4J002BC052
4J002BC062
4J002BN152
4J002EB066
4J002FD326
4J100AB02P
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA09
4J100HA51
4J100HB16
4J100HB17
4J100HB36
4J100HE14
4J100JA28
4J100JA58
4J100JA64
4J100JA67
(57)【要約】
ポリスチレンフィードストックの解重合により生成したスチレン系ポリマーを使用して合成樹脂配合物を製造できる。いくつかの実施形態において、ポリスチレンフィードストックはリサイクルポリスチレンフォームを含む。いくつかの実施形態において、スチレン系ポリマーはヴァージンポリスチレンと同様の分子量を有する。いくつかの実施形態において、スチレン系ポリマーは高い分子量を有し、合成樹脂配合物に必要とされるバージンポリスチレンの量を減少させる。いくつかの実施形態において、スチレン系ポリマーは低い分子量を有し、リサイクルポリスチレンのメルトフローを増加及び均一化することによって、合成樹脂配合物において使用できるリサイクルポリスチレンの量を増加させる。合成樹脂配合物は、ビーズ法発泡、押出法発泡及び/又はグラファイトポリスチレンフォーム製品や、硬質ポリスチレン及びABS製品を製造するために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンフィードストックの解重合により生成したスチレン系ポリマーを含む合成樹脂配合物。
【請求項2】
前記スチレン系ポリマーが5,000amu以上150,000amu以下の分子量を有する、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項3】
前記スチレン系ポリマーが25g/分以上1,000g/分以下のメルトフローインデックスを有する、請求項2に記載の合成樹脂配合物。
【請求項4】
前記スチレン系ポリマーが、リサイクルポリスチレンのメルトフローを増加及び均一化することにより、前記合成樹脂配合物において使用できる前記リサイクルポリスチレンの量を増加させる、請求項2に記載の合成樹脂配合物。
【請求項5】
前記スチレン系ポリマーがPS及び/又はABSプラスチックのメルトフローを増加させる、請求項2に記載の合成樹脂配合物。
【請求項6】
前記スチレン系ポリマーがPS及び/又はABSプラスチックの押出のためのスループットを増加させる、請求項2に記載の合成樹脂配合物。
【請求項7】
前記スチレン系ポリマーが前記合成樹脂配合物の0.5~20質量%である、請求項2に記載の合成樹脂配合物。
【請求項8】
前記スチレン系ポリマーが前記合成樹脂配合物の少なくとも20質量%である、請求項2に記載の合成樹脂配合物。
【請求項9】
前記合成樹脂配合物が押出法発泡ポリスチレンフォーム製品を製造するために使用される、請求項1の合成樹脂配合物。
【請求項10】
前記押出法発泡ポリスチレンフォーム製品が絶縁材である、請求項9に記載の合成樹脂配合物。
【請求項11】
前記押出ポリスチレン製品が梱包材である、請求項9に記載の合成樹脂配合物。
【請求項12】
前記合成樹脂配合物がビーズ法発泡ポリスチレンフォーム製品を製造するために使用される、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項13】
前記ビーズ法発泡ポリスチレンフォーム製品がコンクリートである、請求項12に記載の合成樹脂配合物。
【請求項14】
前記合成樹脂配合物がグラファイトポリスチレンフォーム製品を製造するために使用される、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項15】
前記ポリスチレンフィードストックがバージンポリスチレンを含む、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項16】
前記ポリスチレンフィードストックがリサイクルポリスチレンを含む、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項17】
前記リサイクルポリスチレンがポリスチレンフォームである、請求項16に記載の合成樹脂配合物。
【請求項18】
前記スチレン系ポリマーがバージンポリスチレンの分子量と同様の分子量を有する、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項19】
前記スチレン系ポリマーが150,000amu以上230,000amu以下の分子量を有する、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項20】
前記スチレン系ポリマーが1g/10分以上25g/10分以下のメルトフローインデックスを有する、請求項19に記載の合成樹脂配合物。
【請求項21】
前記スチレン系ポリマーが前記合成樹脂配合物に必要なバージンポリスチレンの量を減らす、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項22】
前記合成樹脂配合物が射出成形又は押出成形ABS製品を製造するために使用される、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項23】
前記合成樹脂配合物が硬質ポリスチレン製品を製造するために使用される、請求項1に記載の合成樹脂配合物。
【請求項24】
前記硬質ポリスチレン製品が容器である、請求項23に記載の合成樹脂配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Uses for Styrenic Polymers Derived from Depolymerized Polystyrene」と題された2018年12月14日に出願された米国出願シリアル番号第62/780,122の優先権を主張する。この‘122号出願の全内容は参照により本開示に援用される。
【0002】
発明の属する技術分野
本発明は、ポリスチレンの解重合によって合成されたスチレン系ポリマーを組み込んだフォーム又は硬質ポリスチレン材料の製造方法に関する。本発明は、また、ポリスチレンの解重合によって合成されたスチレン系ポリマーのポリマー加工におけるメルトフロー調整剤として使用することに関する。さらに、ポリスチレンは生分解性でないため、自然界に蓄積されてしまう。ポリスチレン廃棄物のほとんどが埋め立てられたり、焼却されたりしている。前者は材料の損失と土地の無駄につながり、後者は温室効果ガスの排出につながる。現在、ポリスチレン廃棄物のうち、二次ポリマーとしてリサイクルされているのはごく一部(北米やヨーロッパでは5%未満)である。
【背景技術】
【0003】
ポリスチレン廃棄物を発泡ポリスチレン製品の出発材料として使用する際の障壁の1つはその幅広い仕様性状である。具体的には、廃ポリスチレン(waste polystyrene)の広い分布の分子量及びメルトフロー特性は、押出法発泡ポリスチレンフォーム製品(extruded polystyrene foam products)及びビーズ法発泡ポリスチレンフォーム製品(expanded polystyrene foam products)などの材料に組み込まれるその能力を妨げる又は制限する。廃ポリスチレンを新しいフォーム配合物にリサイクルするこれまでの試みでは、廃ポリスチレンの組み込みは発泡剤の総質量の約15%に制限されている。15%を超える組み込みは、例えばセル構造及び圧縮強度などの最終的なフォーム製品の特性を損なう。
【0004】
例えば、ポリスチレンの解重合によって製造されるスチレン系ポリマーのいくつかの画分は、オレフィン含有量又は鎖の末端位置付近の長い脂肪族部分、狭い分子量分布、高いメルトフロー、及び/又は均一なメルトフローレートなど(これらに限定されない)の特定の構造的又は化学的特性を含むことが多い。さらに、ポリスチレンの解重合によって製造されたスチレン系ポリマーの高分子量画分は、押出法発泡ポリスチレンフォーム及びビーズ法発泡ポリスチレンフォームの製造に従来から使用されているバージンポリスチレンと同様の分子量分布を有する。
【0005】
ポリスチレンフィードストックの解重合によって製造されたスチレン系ポリマーの均一な性質、すなわち、狭い分子量分布及びメルトフローは、それらを、押出法発泡ポリスチレン(XPS)絶縁フォームボード、XPS容器、XPS梱包及び包装材、ビーズ法発泡ポリスチレン(EPS)梱包及び包装材、射出成形又は押出成形アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)を含むがこれらに限定されない様々な用途に使用できるフォーム配合物での使用に適するものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリスチレンの解重合によって生成したスチレン系ポリマーをフォーム製品の製造に組み込むことで、ポリスチレンフォーム材料を製造するために必要なバージンポリスチレンの量を減らすことができ、最終的には、温室効果ガス、埋め立てごみ、及びもっぱら化石又はバージンポリスチレンから誘導されたスチレン系フォーム製品を製造する必要性を低減するのに役立つと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、合成樹脂配合物は、リサイクルポリスチレン(recycled polystyrene)及び/又はバージンポリスチレン(virgin polystyrene)から製造されたポリスチレンフィードストックの解重合により生成したスチレン系ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、リサイクルポリスチレンはポリスチレンフォームである。
【0008】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーはバージンポリスチレンの分子量と同様の分子量を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは5,000amu以上230,000amu以下の分子量を有する。いくつかの好ましい実施形態では、分子量は20,000amu以上170,000amu以下である。さらに好ましい実施形態では、分子量は35,000amu以上130,000amu以下である。いくつかの最も好ましい実施形態では、分子量は45,000amu以上95,000amu以下である。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは1g/10分以上1000g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは50g/10分以上750g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは75g/10分以上650g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは100g/10分以上550g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは110g/10分以上500g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは、合成樹脂配合物に必要なバージンポリスチレンの量を減らすことができる。いくつかの実施形態では、スチレン系樹脂はバージンポリスチレンも含むことができる。いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーはスチレン系樹脂配合物の少なくとも20質量%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは、10,000amu以上150,000amu以下の分子量と、14g/分以上750g/分以下のメルトフローインデックスとを有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは、リサイクルポリスチレンのメルトフローを増加及び均一化することによって、スチレン系樹脂配合物において使用できるリサイクルポリスチレンの量を増加させることができる。いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーはスチレン系樹脂配合物の0.5~20質量%である。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは、フォーム製品のための樹脂配合物の密度を低下させることができ、当該スチレン系ポリマーを含まない樹脂配合物と比較して、製品の全質量を減少させることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記スチレン系ポリマーは押出機トルク及びダイ圧力を低下させることができ、それによって、当該スチレン系ポリマーを含まない樹脂配合物と比較して、フォーム製品の達成可能なスループットを増加させることができる。
【0016】
合成樹脂配合物の様々な実施形態は、ビーズ法発泡ポリスチレンフォーム製品、押出法発泡ポリスチレンフォーム製品、及び/又はグラファイトポリスチレンフォーム製品を製造するために使用することができる。特定の実施形態では、押出法発泡ポリスチレンフォーム製品は、絶縁又は梱包材である。特定の実施形態では、ビーズ法発泡ポリスチレンフォーム製品はコンクリートである。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記合成樹脂配合物を、例えば容器などの硬質ポリスチレン製品を製造するために使用することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記合成樹脂配合物を、例えば自動車トリム部品などの射出成形又は押出成形ABS部品を製造するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、スチレン系ポリマーを製造するためにポリスチレン材料を処理するプロセスを示すフローチャートである。
【0020】
【
図2】
図2は、フォーム配合物を製造するためにスチレン系ポリマーを使用するプロセスを示すフローチャートである。
【0021】
【
図3】
図3は、廃ポリスチレンフォームの解重合から製造されたスチレン系ポリマーであるポリマーAの高分子量画分のヒートフローを示すグラフである。
【0022】
【
図4】
図4は、廃ポリスチレンフォームの解重合から製造されたスチレン系ポリマーであるポリマーBの低分子量画分のヒートフローを示すグラフである。
【0023】
【
図5】
図5は、廃ポリスチレンフォームの解重合から製造されたスチレン系ポリマーであるポリマーCの低分子量画分のヒートフローを示すグラフである。
【0024】
【
図6】
図6は、廃ポリスチレンフォームの解重合から製造されたスチレン系ポリマーであるポリマーDの低分子量画分のヒートフローを示すグラフである。
【0025】
【
図7A】
図7Aは99.5%のバージンポリスチレン/0.5%のタルクを含む押出法発泡ポリスチレンの写真である。
【0026】
【
図7B】
図7Bは74.5%のバージンポリスチレン/25%のリサイクルポリスチレン/0.5%のタルクを含む押出法発泡ポリスチレンの写真である。
【0027】
【
図7C】
図7Cは、72.5%のバージンポリスチレン/25%のリサイクルポリスチレン/0.5%のタルクと、廃ポリスチレンの解重合により生成したスチレンポリマーを2%含む押出法発泡ポリスチレンの写真である。
【0028】
【
図7D】
図7Dは、70.5%のバージンポリスチレン/25%のリサイクルポリスチレン/0.5%のタルクと、廃ポリスチレンの解重合により生成したスチレンポリマーを4%含む押出法発泡ポリスチレンの写真である。
【0029】
【
図7E】
図7Eは、68.5%のバージンポリスチレン/25%のリサイクルポリスチレン/0.5%のタルクを含み、廃ポリスチレンの解重合により生成したスチレン系ポリマーを6%含む押出法発泡ポリスチレンの写真である。
【0030】
【
図7F】
図7Fは、64.5%のバージンポリスチレン/25%のリサイクルポリスチレン/0.5%のタルクを含み、廃ポリスチレンの解重合により生成したスチレン系ポリマーを10%含む押出法発泡ポリスチレンの写真である。
【0031】
【
図8A】
図8Aは、廃ポリスチレンから製造されたスチレン系ポリマーが0%であるバージンポリスチレンから製造された押出法発泡ポリスチレンの走査電子顕微鏡画像である。
【0032】
【
図8B】
図8Bは、廃ポリスチレンから製造されたスチレン系ポリマーが2%存在するバージンポリスチレンから製造された押出ポリスチレンの走査型電子顕微鏡画像である。
【0033】
【
図8C】
図8Cは、廃ポリスチレンから製造されたスチレン系ポリマーが4%存在するバージンポリスチレンから製造された押出法発泡ポリスチレンの走査型電子顕微鏡画像である。
【0034】
【
図8D】
図8Dは、廃ポリスチレンから製造されたスチレン系ポリマーが6%存在するバージンポリスチレンから製造された押出法発泡ポリスチレンの走査電子顕微鏡画像である。
【0035】
【
図8E】
図8Eは、廃ポリスチレンから製造されたスチレン系ポリマーが10%存在するバージンポリスチレンから製造された押出法発泡ポリスチレンの走査型電子顕微鏡画像である。
【0036】
【
図9】
図9はバージン及びリサイクルポリスチレンフィードストックのメルトフローに対するスチレン系ポリマーの効果を示すグラフである。
【0037】
【
図10】
図10は、種々のリサイクルポリスチレンフィードストックのメルトフローに対するスチレン系ポリマーの効果を示すグラフである。
【0038】
【
図11】
図11はバージンアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)フィードストックのメルトフローに対するスチレン系ポリマーの効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ポリスチレンフィードストックをスチレン系ポリマーに変換するプロセス及びその用途は、「Reactor for Treating Polystyrene Material」と題された国際出願PCT/CA2017/051166及び「Uses of Styrenic Polymers Derived Through Depolymerized Polystyrene」と題された米国出願第62/678,780号で議論された。これらの出願の全内容を参照により本明細書に援用する。
【0040】
本開示は、特に、スチレン系ポリマーを使用してフォーム樹脂配合物を製造する方法を教示する。
【0041】
スチレン系ポリマーを使用してフォーム樹脂配合物を製造する方法のいくつかの実施形態では、ポリスチレン材料をリサイクルする。ポリスチレン材料をスチレン系ポリマーに変換することは、固体ポリスチレン材料を選択すること;固体ポリスチレン材料を押出機で加熱して溶融ポリスチレン材料を生成させること;溶融ポリスチレン材料を濾過すること;溶融ポリスチレン材料を反応器で化学的解重合プロセスにかけてスチレン系ポリマー(1種以上)を生成させること;スチレン系ポリマーを冷却すること;及び/又はスチレン系ポリマー(1種以上)を精製することを含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは、例えばアクリレート、ケトン、エステル、アルデヒド、カルボン酸、アルコール及びアミンなどのさらなる活性部位を加えるために修飾することができる。活性部位は、官能化の目的を果たすことができる。いくつかの実施形態では、適合性(compatibility)を改善するため及び/又は機能を付加するために、例えば酸、アルコール、アセテート、アクリレート、ケトン、エステル、アルデヒド、アミン、及びアルケン、例えばヘキセンなど(これらに限定されない)の様々なモノマー及び/又はコポリマーを解重合生成物にグラフト化することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、適合性を改善するため及び/又は機能を付加するために、様々なモノマー及び/又はコポリマーが、オレフィンフィンガープリントを介して、及び/又は芳香族官能基を介して、グラフト化される。グラフト化は、特に、反応器中で、冷却後の流れに沿って、及び/又は別の容器の中で行うことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポリスチレン材料を、様々な温度でポリマーの粘度を調整するために、解重合に先立って特定の溶媒に溶解することができる。いくつかの実施形態では、ポリスチレンが反応床/容器内で解重合を受ける前にポリスチレンを溶解させるために、有機溶媒、例えばトルエン、キシレン類、シメン類又はテルピネン類などが使用される。特定の実施形態では、所望の生成物を分離又は抽出によって単離し、溶媒をリサイクルすることができる。
【0045】
少なくともいくつかの実施形態では、溶媒は必要とされない。
【0046】
特定の実施形態では、固体ポリスチレン材料はリサイクルポリスチレンである。いくつかの実施形態では、リサイクルポリスチレンはリサイクルポリスチレンフォーム及び/又は硬質ポリスチレンから製造されたペレットである。好適な廃ポリスチレン材料としては、混合ポリスチレン廃棄物、例えば、ビーズ法発泡ポリスチレン及び/又は押出法発泡ポリスチレンなど、及び/又は、硬質製品、例えば、フォーム食品容器など、又は包装製品などが挙げられるが、これらに限定されない。混合ポリスチレン廃棄物は、様々なメルトフロー及び分子量を含むことができる。いくつかの実施形態では、廃ポリスチレン材料フィードは、当該廃ポリスチレン材料フィードの総質量を基準として、ポリスチレン材料以外の材料を最高で25%まで含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、バージンポリスチレンもフィードストックとして使用することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリマーフィード材料は、バージンポリスチレンと、ポストインダストリアル(post-industrial)廃ポリスチレンと、ポストコンシュマー(post-consumer)廃ポリスチレンのうちの1つ、もしくは、バージンポリスチレンとポストインダストリアル廃ポリスチレン及びポストコンシュマー廃ポリスチレンのうちのいずれか1つとの組み合わせ、又は、バージンポリスチレンと、ポストインダストリアル廃ポリスチレンとポストコンシュマー廃ポリスチレンの組み合わせとの組み合わせ、あるいは、ポストインダストリアル廃ポリスチレンとポストコンシュマー廃ポリスチレンの組み合わせである。
【0049】
いくつかの実施形態では、ポリマーフィード材料を、メルトフロー及びオレフィン含有量が増加したより低い分子量のポリマーに変換することが望ましい。いくつかの実施形態では、この変換は、ポリスチレンフィード材料を加熱して溶融ポリスチレン材料を生じさせ、次いで、200℃~400℃の温度、好ましくは225℃~375℃の温度に置かれた反応ゾーン内で、溶融ポリスチレン材料を触媒材料と接触させることによって行われる。いくつかの実施形態では、触媒は必要とされない。
【0050】
解重合によって生じる分子量、多分散性、ガラス転移、メルトフロー及び/又はオレフィン含有量は、反応ゾーン内のポリスチレン材料の滞留時間に依存する。
【0051】
いくつかの実施形態では、解重合プロセスは、[Fe-Cu-Mo-P]/Al2O3、ゼオライト、又は他のアルミナ担持系などの触媒、及び/又は、熱解重合を利用する。いくつかの実施形態では、触媒は、透過性の容器に収容することができる。いくつかの実施形態では、触媒は、鉄、銅、モリブデン、リン及び/又はアルミナを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーの精製は、フラッシュ分離、吸収剤床、クレイポリッシング(clay polishing)及び/又はフィルムエバポレーターを利用する。
【0053】
図1は、ポリスチレン材料を処理するためのプロセス1を示す。プロセス1は、バッチで、又は連続プロセスで行うことができる。温度、ポリスチレンの流量、反応及び/又は変性段階の間にグラフト化されるモノマー/コポリマー、及び/又は、予熱、反応もしくは冷却セグメントの総数を含むがこれらに限定されないプロセス1のパラメータは、5,000amu以上230,000amu以下の様々な分子量のスチレン系ポリマーが生成するように変更することができる。例えば得られたスチレン系ポリマーがフォーム配合物に使用されることを意図されている場合などのいくつかの特定の実施形態では、スチレン系ポリマーは40,000amu以上200,000amu以下の範囲の様々な分子量を有することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、材料選択段階10において、ポリスチレンフィードが、処理のために選別/選択及び/又は調製される。いくつかの実施形態では、このフィードは、最高で25%までのポリオレフィンPP、PE、PET、EVA、EVOHや、より低レベルの望ましくない添加剤又はポリマー、例えばナイロン、ゴム、PVC、灰分、フィラー、顔料、安定剤、グリット(grit)及び/又は他の未知の粒子を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリスチレンフィードは150,000amu以上500,000amu以下の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、ポリスチレンフィードは200,000amu以上300,000amu以下の平均分子量を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、材料選択段階10で選択された材料はリサイクルポリスチレンを含む。他の又は同じ実施形態で、材料選択段階10で選択された材料はリサイクルポリスチレン及び/又はバージンポリスチレンを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、材料選択段階10で選択された材料は廃ポリスチレンフォームを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、溶媒添加段階20において、溶媒、例えばトルエン、キシレン類、シメン類又はテルピネン類などが、ポリスチレンが反応床/容器内で解重合を受ける前にポリスチレンを溶解するために使用される。特定の実施形態では、所望の生成物を分離又は抽出によって単離することができ、溶媒をリサイクルすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、材料選択段階10で選択された材料を、押出機中で、加熱段階30で加熱することができ、予濾過プロセス40にかける。いくつかの実施形態では、押出機は、入ってくるポリスチレンの温度及び/又は圧力を高めるために使用され、また、ポリスチレンの流量を制御するために使用される。いくつかの実施形態では、押出機は、ポンプと熱交換器の組み合わせによって補完されるか、又は完全に置き換えられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、溶融ポリスチレン材料は、溶融ポリスチレン材料の生成をもたらすために加熱されるポリスチレン材料フィードから誘導される。いくつかの実施形態では、ポリスチレン材料フィードは、ポリスチレンの一次バージン顆粒を含む。バージン顆粒は、様々な分子量及びメルトフローを含むことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、予濾過プロセス40は、加熱された材料から汚染物質を除去し、浄化するために、他の濾過技術/装置とともに、スクリーンチェンジャー及びフィルター床の両方を採用することができる。いくつかの実施形態では、結果として得られた濾過された材料は、次に、反応段階60に入る前に、濾過された材料をより高い温度にする任意の予熱段階50に移される。いくつかの実施形態では、予熱段階50は、他の装置及び技術の中でも、スタティックミキサー及び/又はダイナミックミキサー、並びに熱交換器、例えば内部フィン及びヒートパイプなどを使用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、反応段階60で材料は解重合する。この解重合は、純粋な熱反応であることができ、及び/又は、触媒を使用することができる。出発材料及び所望のスチレン系ポリマーに応じて、出発材料の分子量をわずかに又は極端に減少させるために、解重合を使用することができる。いくつかの実施形態では、使用される触媒は、ゼオライトもしくはアルミナ担持系、又はそれらの2種の組み合わせである。いくつかの実施形態では、触媒は[Fe-Cu-Mo-P]/Al2O3であり、これは、触媒材料を得るために、第一鉄-銅錯体をアルミナ又はゼオライト担体に結合させ、それを金属及び非金属を含む酸と反応させることによって調製される。他の適切な触媒材料としては、ゼオライト、メソポーラスシリカ、H-モルデナイト、アルミナなどが挙げられる。また、このシステムは、触媒の不在下で動作し、熱分解により低分子量ポリマーを生成することもできる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリマー材料の解重合は、触媒プロセス、熱プロセスであり、フリーラジカル開始剤を利用する、及び/又は放射線を利用する。
【0064】
いくつかの実施形態では、反応段階60は、特に、固定床、水平及び/又は垂直反応器、及び/又はスタティックミキサーなどの様々な技術/装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、反応段階60は、複数の反応器及び/又は複数のセクションに分割された反応器を使用する。
【0065】
いくつかの実施形態では、反応段階60の後、解重合した材料は任意の変性段階70に入る。少なくともいくつかの実施形態では、変性段階70は、酸、アルコール、アセテート及び/又はアルケン、例えばヘキセンなど(これらに限定されない)の様々なモノマー及び/又はコポリマーを、解重合生成物にグラフト化することを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、冷却段階80は、スチレン系ポリマーが任意の精製段階90に入る前に、スチレン系ポリマーを加工可能な温度まで下げるために、他の技術/装置とともに熱交換器を使用することができる。いくつかの実施形態では、冷却段階80の前に、例えば窒素ストリッピングなどの方法によるスチレン系ポリマーの浄化/精製が行われる。
【0067】
任意の精製段階90は、スチレン系ポリマーの精製及び/又は汚染除去を含む。精製段階90で使用できる技術/装置としては、溶媒、油、着色体、灰分、無機物及びコークスを除去するための、フラッシュ分離、吸収剤床、クレイポリッシング、蒸留、真空蒸留、及び濾過が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ガス、油及び/又はグリース、及び/又は低分子量の官能化ポリマーをスチレン系ポリマーから除去するために、薄膜式エバポレーター又はワイプ式フィルムエバポレーターが使用される。いくつかの実施形態では、油、ガス及び低分子量官能化ポリマーを、今度はプロセス1の様々な段階を実行するのに役立つように燃焼させることができる。特定の実施形態では、分離又は抽出によって所望の生成物を単離することができ、溶媒をリサイクルすることができる。
【0068】
プロセス1は、材料選択段階10で選択された初期の出発材料がスチレン系ポリマーになっている完成品段階100で終了する。少なくともいくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは、さらなる処理及び/又は精製を必要としない。他の実施形態では、最終生成物段階100で生じたスチレン系ポリマーはさらなる変性を必要とする。
【0069】
いくつかの実施形態では、生成した解重合生成物材料は、モノマー(スチレン)、芳香族溶媒、多芳香族化学種、油、及び/又は低分子量官能化ポリマー、例えばオレフィン含有量が増加したものなどを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは、5,000amu以上230,000amu以下の平均分子量と、1g/10分以上1000g/10分以下のメルトフロー(ASTM D1238により決定される)とを有する。いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは30℃以上115℃以下のガラス転移温度を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは5,000amu以上230,000amu以下の分子量を有する。いくつかの好ましい実施形態では、分子量は20,000amu以上170,000amu以下である。さらに好ましい実施形態では、分子量は35,000amu以上130,000amu以下である。いくつかの最も好ましい実施形態では、分子量は45,000amu以上95,000amu以下である。
【0072】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは1g/10分以上1000g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは50g/10分以上750g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは75g/10分以上650g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは100g/10分以上550g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの好ましい実施形態では、スチレン系ポリマーは110g/10分以上500g/10分以下のメルトフローインデックスを有する。いくつかの実施形態では、得られるスチレン系ポリマーは、40,000amu以上200,000amu以下の分子量範囲、及び1g/10分以上750g/10分以下のメルトフロー範囲を有することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは、250℃で測定して100cps以上150,000cps以下の粘度を有する。いくつかの好ましい実施形態では、粘度は、250℃で測定して1,000~125,000cpsである。他の好ましい実施形態では、粘度は、250℃で測定して5,000~100,000cpsである。
【0074】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーは、225℃で測定して1,000cps以上150,000cps以下の粘度を有する。いくつかの好ましい実施形態では、粘度は、225℃で測定して1,500~120,000cps以下である。他の好ましい実施形態では、粘度は、225℃で測定して2,000~100,000cpsである。
【0075】
いくつかの実施形態では、得られるスチレン系ポリマーは50g/10分を超えるメルトフロー範囲を有することができる。いくつかの好ましい実施形態では、得られるスチレン系ポリマーは50g/10分以上500g/10分以下のメルトフロー範囲を有することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、得られるスチレン系ポリマーは、EPS、XPS及び/又はグラファイトポリスチレン(GPS)フォームを製造するために使用することができる。ポリスチレンフォームは、XPS絶縁フォームボード、XPS容器、XPS梱包及び包装材、EPS梱包及び包装材、絶縁コンクリート型枠、室内装飾モールディング、天井タイル、及び他の屋根、壁、床、地下及び構造的絶縁用途などを含むがこれらに限定されない様々な用途に使用することができる。
【0077】
ポリスチレンフォーム製品を製造するために、脱重合ポリスチレンから誘導されたスチレン系ポリマーを使用することができる。いくつかの実施形態では、これは、未変性の、すなわち脱重合されていない廃ポリスチレンと比較してより均一な分子量分布及びメルトフロー特性を有するスチレン系ポリマーの高分子量画分による。いくつかの実施形態では、解重合ポリスチレンから誘導されたスチレン系ポリマーは、分子量、分子量分布(多分散性)及びメルトフローインデックスを含むがこれらに限定されないバージンポリスチレンに匹敵する特性を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、最終フォーム生成物の、例えば密度、セル構造及び圧縮強度などの所望の特性を維持しながら、未変性の廃ポリスチレンフォームの百分率と比べてより高い百分率の、廃ポリスチレンフォームの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーをフォーム樹脂配合物において使用することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、廃ポリスチレンフォームの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーの画分は、リサイクルポリスチレンフィードストックのメルトフローを増加及び/又は均一化するために使用することができ、これにより、フォーム樹脂配合物において使用することができるリサイクルポリスチレンの量が増加する。
【0080】
いくつかの実施形態では、廃ポリスチレンフォームの解重合から誘導されたスチレンポリマーの画分を使用して、フォーム生成物の密度を低下させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、押出機のトルク及びダイの圧力を低下させるために、廃ポリスチレンフォームの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーの画分を使用することができ、これにより、フォーム生成物のスループットを増加させることができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、コートハンガー、蓋、玩具、家電製品、園芸用ポット、自動車部品及び容器を含むがこれらに限定されない硬質ポリスチレンベースの製品を製造するために、得られたスチレン系ポリマーを使用することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、自動車トリム部品などの射出成形又は押出成形ABS部品を製造するために、合成樹脂配合物を使用することができる。
【0084】
温度、圧力、ポリスチレンの流量、触媒の選択、反応及び/又は変性段階の間にグラフト化されたモノマー/コポリマー、並びに予熱、反応及び/又は冷却セグメントの総数及び/又は実行時間を含むがこれらに限定されないプロセス1の様々なパラメータは、フォーム樹脂配合物において使用することができるスチレン系ポリマー画分の収率を最大化するように変更することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、EPS及びXPSフォームはバージン及び/又はリサイクルポリスチレンの解重合によって製造されたスチレン系ポリマーを使用して製造することができる。いくつかの好ましい実施形態では、ポリスチレンフォームを製造するために使用されるスチレン系ポリマーは廃ポリスチレンフォームの解重合によって製造することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、フォーム樹脂配合物に対するスチレン系ポリマーの適合性を高め、より高い百分率のスチレン系ポリマーを配合物において使用できるようにするために、プロセス1のパラメータを最適化することができる。例えば、プロセス1の様々な反応条件を変更して、フォーム樹脂配合物に組み込むのに好適な最適又は好ましい分子量分布及びメルトフロー特性を有するスチレン系ポリマーを製造することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーをバージンポリスチレン及び/又は廃ポリスチレンフォームと組み合わせてフォーム生成物を生成させることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーの低分子量画分、すなわち、100,000amu未満の分子量及び10g/分を超えるメルトフローを有するスチレン系ポリマーは、入ってくるリサイクルポリスチレンの可変の低いメルトフローを増加及び均一化することによって、ポリスチレン合成樹脂配合物、フォーム配合物又は他の押出ポリスチレン製品において使用できるリサイクルポリスチレンの量を増加させるための添加剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、スチレン系ポリマーの低分子量画分は、ポリスチレンフォーム又は他の押出ポリスチレン製品を製造するために使用される配合物の0.5~20質量%であることができる。
【0089】
図2は、フォーム樹脂配合物を製造するために、解重合プロセス(
図1に記載されているプロセスなど)によって製造されたスチレン系ポリマー生成物を使用するためのプロセス200を示す。まず、スチレン系ポリマー生成物をスチレン系ポリマー選択段階210で選択し、次いで、配合段階220で添加してフォーム樹脂を生成させる。
【実施例】
【0090】
例示的実施例
詳述したプロセスの例示的な実施形態では、一連の解重合したスチレン系ポリマー:ポリマーA、ポリマーB、ポリマーC及びポリマーDを生成させるために廃ポリスチレンフォームを使用した。
【0091】
ポリマーAは、175,000~225,000amuの分子量分布を有するスチレン系ポリマー生成物の高分子量画分であった。ポリマーB及びポリマーCは、50,000~75,000の分子量分布を有する低分子量のスチレン系ポリマー生成物であった。ポリマーDは約65,000の分子量を有していた。
【0092】
ポリマーA、ポリマーB、ポリマーC及びポリマーDのメルトフローインデックス及び示差走査熱量測定(DSC)値を表1に概説する。
【表1】
【0093】
ポリマーA、ポリマーB、ポリマーC及びポリマーDのヒートフローデータがそれぞれ
図3、
図4、
図5及び
図6のグラフに描かれている。
【0094】
これらの例示的な解重合スチレン系ポリマーを、次に、他の成分(表2、表3、表4及び表6を参照)と混合して様々な配合物を生成させ、それらの配合物を、次に、試験して、様々な特性を確認した。
【表2】
【表3】
【0095】
フォームを生成させるための高質量スチレン系ポリマーの使用例
表4に示されているように、ポリスチレンフィードストック(リサイクルPS-A)及びスチレン系ポリマー(ポリマーA)から調製したフォーム樹脂配合物を、フォーム製造に使用される従来のポリスチレン出発材料であるバージンポリスチレンEA3130を使用して製造した対照のフォーム樹脂配合物と比較した。
【0096】
解重合ポリスチレンを使用(少なくとも一定の百分率で)してフォームを製造できるかどうかを決定するために、配合物1~3(及び対照I)について初期試験を行った。
【0097】
スチレン系ポリマーを形成するために解重合されたポリスチレンフィードストックを使用することがフォーム製造に影響を及ぼすかどうかを決定するために、ポリマーAを、解重合プロセス1を経ていない未処理の廃ポリスチレンフォームであるリサイクルPS-Aと比較した。リサイクルPS-Aは約225,000~250,000amuの分子量分布を有していた。
【0098】
配合物1~3及び対照Iを、0.5pphの発泡剤FP-40と混合し、標準的なフォーム押出しを行った。各配合物の押出機条件を表5に示す。
【0099】
配合物1及び2の押出機条件は、対照Iの値と比較して適切な範囲内であり、スチレン系ポリマーを使用したフォーム製造は、大きなエネルギー入力を必要とせず、押出の間の装置負荷を増加させないことを示している。これらのデータは、スチレン系ポリマーを使用したフォームの製造は、既存の製造条件で行うことができ、製造装置の再編成を必要としないことを示している。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0100】
また、樹脂フォーム配合物をペレット状にした。各樹脂配合物についてフォーム生成が成功したかどうかは、得られた各ペレットが水に浮く能力により決定した(表6)。これは、水よりも密度の高い非フォーム形態のポリスチレンが、水よりも密度の低いポリスチレンフォームに適切に移行したことを示している。
【表8】
【0101】
表6に示されているように、100%廃ポリスチレンフォーム(配合物3)から形成された樹脂は、沈むペレットを生じた。このことは、機能的なフォーム組成が得られないことを示す。
【0102】
100%スチレン系ポリマー(配合物2)から形成された樹脂は、沈むペレット(4回中3回)と浮くペレット(4回中1回)を生じた。この結果は、廃ポリスチレンの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーを100%、あるいは少なくとも50%超使用することで、フォーム材料の製造が実現可能であることを示している。
【0103】
50%のバージンポリスチレンと50%のポリマーA(配合物1)から形成された樹脂は、浮くペレットを生じた。このことは、機能的なフォーム組成が達成されたことを示している。
【0104】
このデータは、また、少なくともいくつかの実施形態において、解重合から誘導されたスチレン系ポリマーは、最終的なフォーム生成物の低密度化を可能にし、より大きな浮力をもたらすことを裏付けている。
【0105】
50%のバージンポリスチレンと50%のリサイクルポリスチレンフォームを使用してフォームを製造する以前の試みは成功しなかった。50%のバージンポリスチレンと50%のポリマーAの組成物である配合物1が機能的なフォーム材料を製造できることは、廃ポリスチレンの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーが、フォーム製造に使用するのに有利な独特の特性を有し、そのような特性は未変性の、すなわち解重合されていない廃ポリスチレンフォームにないことを示している。
【0106】
フォームを生成させるための低質量スチレン系ポリマーの使用例
廃ポリスチレンの解重合から誘導された低分子量スチレン系ポリマーであるポリマーB及びポリマーCを、全体の配合の中で低濃度で添加剤として使用したフォーム試験も完了した。
【0107】
表4に示されているように、リサイクルPS-B及びスチレン系ポリマー(ポリマーB及びポリマーC)から調製されたフォーム樹脂配合物を、フォーム製造に使用される従来のポリスチレン出発材料であるバージンポリスチレン535Bを使用して製造された対照フォーム樹脂配合物と比較した。
【0108】
配合物4~57を発泡剤HCFO-1233zd(E)と混合し、標準的なフォーム押出成形を行った。配合物4~57は、造核剤として0.5%のタルクを使用した(20%マスターバッチを介して)。配合物4~57のすべてが好結果のフォーム生成物をもたらした。
【0109】
各配合物の押出機条件及び主要特性(フォーム密度及び供給量)を表5に示す。
【0110】
ポリマーB又はポリマーCを含む配合物の押出機条件は、ダイ圧力押出機トルクの低下をもたらした。これらの値は、対照配合物の値と比較して適切な範囲内にあり、そして、スチレン系ポリマーを使用したフォーム製造はより少ないエネルギー入力を必要とし、押出の間の装置負荷を減少させることを示している。
【0111】
押出機トルクとダイ圧力の低下は、廃ポリスチレンの解重合から誘導されたポリマーがXPSフォーム製造のスループットの増加を可能にすることを示している。
【0112】
これらのデータは、スチレン系ポリマーを使用したフォーム製造が、既存の製造条件下で実施可能であり、製造装置の再編成を必要としないことを示している。
【0113】
図7Aは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーが0%であるバージンポリスチレン(配合物4)から製造されたフォームを示す写真である。
【0114】
図7Bは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーが0%であるバージンポリスチレン及びリサイクルポリスチレン(配合物10)から製造されたフォームを示す写真である。
【0115】
図7Cは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを2%存在させてバージンポリスチレン及びリサイクルポリスチレン(配合物11)から製造されたフォームを示す写真である。
【0116】
図7Dは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを4%存在させてバージンポリスチレン及びリサイクルポリスチレン(配合物12)から製造されたフォームを示す写真である。
【0117】
図7Eは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを6%存在させてバージンポリスチレン及び廃ポリスチレン(配合物13)から製造されたフォームを示す写真である。
【0118】
図7Fは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを10%存在させてバージンポリスチレン及び廃ポリスチレン(配合物14)から製造されたフォームを示す写真である。
【0119】
表7から分かるように、ポリマーB又はポリマーCを含む製造されたフォームの密度は、概して、対照と比較して低かった。
【0120】
樹脂フォーム配合物のサンプルを採取し、走査型電子顕微鏡画像を撮影して、フォームの完全性(integrity)とオープンセル含有量を測定した。フォームの完全性及びオープンセル含有量は、廃ポリスチレンの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーを含めることによって悪影響を受けなかった
【0121】
図8Aは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーが0%であるバージンポリスチレンから製造されたフォーム(配合物4)を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0122】
図8Bは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを2%存在させてバージンポリスチレン(配合物5)から製造されたフォームを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0123】
図8Cは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを4%存在させてバージンポリスチレン(配合物6)から製造されたフォームを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0124】
図8Dは、廃ポリスチレンから生成したスチレン系ポリマーを6%存在させてバージンポリスチレン(配合物7)から製造されたフォームを示す走査電子顕微鏡写真である。
【0125】
図8Eは、廃ポリスチレンから生成されたスチレン系ポリマーを10%存在させてバージンポリスチレン(配合物8)から製造されたフォームを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0126】
このデータは、廃ポリスチレンの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーがフォーム製造に使用するのに有利な独特の特性を有することを示している。かかる特性は密度調整剤及びスループット調整剤を含む。
【0127】
メルトフロー調整剤としてのスチレン系ポリマーの例
バージン又はリサイクルポリスチレンフィードストックのメルトフローを増加させるためにスチレン系ポリマーの低分子量画分を使用できるかどうかを決定するため、表7に示すように、約65,000amuの分子量を有するスチレン系ポリマーであるポリマーC又はポリマーDをバージン又はリサイクルポリスチレンフィードストックに加えた。その後、各スチレン系ポリマー-ポリスチレン樹脂ブレンドのメルトフローを試験し、未処理のバージン又はリサイクルポリスチレン(PS)フィードストックと比較した。各ブレンドについて得られたメルトフローインデックスも表7に示されている。
【表9】
【0128】
対照IIは配合物58~62の対照としての役割を果たし、対照IIIは配合物63~67の対照としての役割を果たし、対照IVは配合物68~72の対照としての役割を果たし、対照Vは配合物73~75の対照としての役割を果たし、対照VIは配合物76~80の対照としての役割を果たす。
【0129】
表7に示されているように、スチレン系ポリマーの百分率が増加するにつれて、バージン及びリサイクルポリスチレンフィードストックの両方の得られたメルトフローインデックスが増加した。
【0130】
図9は、樹脂ブレンド対照II、対照III及び配合物58~67のメルトフローインデックスの変化率(%)を示すグラフである。
【0131】
図10は、樹脂ブレンド対照IV、対照V及び配合物68~75のメルトフローインデックスの変化率(%)を示すグラフである。
【0132】
図11は、樹脂ブレンド対照VIと配合物76~80のメルトフローインデックスの変化率(%)を示すグラフである。
【0133】
これらのデータは、バージン及びリサイクルポリスチレンとABSの両方のメルトフローを増加させるためにスチレン系ポリマーの低分子量画分を使用できることを示している。リサイクルポリスチレンのメルトフローを増加させることで、例えば合成樹脂配合物、フォーム樹脂配合物、並びに硬質ポリスチレンやABS製品を得るための配合物などの用途に使用する能力を付与することができる。
【0134】
これらのデータは、総合すると、廃ポリスチレンの解重合から誘導されたスチレン系ポリマーは、合成樹脂配合物において使用するのに有利である独特の特性を有することを示している。これらの独特の特性は、解重合プロセス中に付与され、これらの独特の特性としては、少なくとも、未変性のリサイクル/廃ポリスチレンのものと比べて狭い分布の分子量及びメルトフローが挙げられる。
【0135】
本発明の特定の要素、実施形態及び用途を示し、説明してきたが、特に前述の教示に照らして、本開示の範囲から逸脱することなく変更を加えることができるため、本発明はこれに限定されないことが理解されるであろう。さらに、請求項の全てが、参照によって好ましい実施形態の説明に援用される。
【国際調査報告】