(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ハロゲン置換化合物およびその調製方法と適用
(51)【国際特許分類】
C07D 295/15 20060101AFI20220131BHJP
C07D 231/14 20060101ALI20220131BHJP
A01N 43/56 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07D295/15 CSP
C07D231/14
A01N43/56 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541708
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2019126839
(87)【国際公開番号】W WO2021022761
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】201910709834.2
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521317427
【氏名又は名称】宿遷市科莱博生物化学有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUQIAN KEYLAB BIOCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 1, Zhongxing Road, Ecological Chemical Industry Park, Suyu District Suqian, Jiangsu 223800, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 明春
(72)【発明者】
【氏名】李 慶毅
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BB09
(57)【要約】
本発明は、ハロゲン置換化合物の調製方法に関し、式Iで表されるピペラジン誘導体を式VIで表されるハロゲン化アセチルハライド誘導体と反応させて式IIで表されるハロゲン置換化合物を生成する。本発明はまた、ハロゲン置換化合物からピラゾール誘導体を調製するための調製方法に関し、式IIで表されるハロゲン置換化合物をメチルヒドラジンと反応させ、ピラゾール環を閉じて式IVで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を生成させ、または、メチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾンと反応させ、式IIIで表されるヒドラゾン化合物を生成させ、酸の存在下で、ピラゾール環を閉じて式IVで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を生成させる。本発明はまた、中間体化合物の構造に関する。 本発明のハロゲン置換化合物およびピラゾール誘導体の調製方法は、工業生産に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン置換化合物であって、式IIで表される構造を有し、
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は、水素、塩素、フッ素、またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であることを特徴とする
ハロゲン置換化合物。
【請求項2】
以下の反応式に示すように、式Iで表されるピペラジン誘導体を式VIで表されるハロゲン化アセチルハライド誘導体と反応させて、式IIで表されるハロゲン置換化合物を生成し、
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は水素、塩素、フッ素またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であることを特徴とする
請求項1に記載のハロゲン置換化合物の調製方法。
【請求項3】
以下の反応式に示すように、式IIで表されるハロゲン置換化合物をメチルヒドラジンと反応させ、ピラゾール環を閉じて式IVで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を生成し、
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は、水素、塩素、フッ素、またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であることを特徴とする
請求項1に記載のハロゲン置換化合物の調製方法によってピラゾール誘導体を調製するための調製方法。
【請求項4】
R
1がOR
Aの場合、以下の反応式に示すように、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を、アルカリ性溶液で加水分解し、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成し、
ことを特徴とする
請求項3に記載のハロゲン置換化合物の調製方法によってピラゾール誘導体を調製するための調製方法。
【請求項5】
R
1がR
Aの場合、以下の反応式に示すように、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を酸化反応させ、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成し、
ことを特徴とする
請求項3に記載のハロゲン置換化合物の調製方法によってピラゾール誘導体を調製するための調製方法。
【請求項6】
以下の反応式に示すように、
式IIで表されるハロゲン置換化合物をメチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾンと反応させ、式IIIで表されるヒドラゾン化合物を生成し、
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は、水素、塩素、フッ素、またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であり、
式IIIで表される前記ヒドラゾン化合物は、酸の存在下で、ピラゾール環を閉じて式IVで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を生成し、反応式は以下のとおりであり、
ことを特徴とする
請求項1に記載のハロゲン置換化合物の調製方法によってピラゾール誘導体を調製するための調製方法。
【請求項7】
R
1がOR
Aの場合、以下の反応式に示すように、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を加水分解し、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成し、
ことを特徴とする
請求項6に記載のハロゲン置換化合物の調製方法によってピラゾール誘導体を調製するための調製方法。
【請求項8】
R
1がR
Aの場合、以下の反応式に示すように、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を酸化反応し、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成し、
ことを特徴とする
請求項6に記載のハロゲン置換化合物の調製方法によってピラゾール誘導体を調製するための調製方法。
【請求項9】
農薬の調製方法であって、請求項2、3、および6のいずれか1項に記載の調製方法を含むことを特徴とする
農薬の調製方法。
【請求項10】
農薬の調製のための中間体としての、請求項3および6のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されたハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学合成の技術分野に属するハロゲン置換化合物の工業的合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン置換されたピラゾール誘導体、特に含フッ素ピラゾール誘導体は、多くの医薬品または農薬の中間体である。これらの含フッ素ピラゾール誘導体のうち、3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-カルボン酸は重要な農薬中間体であり、バイエルクロップサイエンス社の穀物用殺菌剤ビキサフェン(Bixafen)、BASF社の新規殺菌剤フルキサピロキサド(Fluxapyroxad)、シンジェンタ社のイソピラザム(Isopyrazam)とセダキサン(Sedaxane)など、多くの新規農薬において非常に重要な中間的役割を果たしている。
【0003】
国際特許WO1992/12970は、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸およびその殺菌剤としての使用を開示している。該方法では、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を対応する酸塩化物に変換した後、適切なアミンでそれを対応するアミドに変換し、それによってアミド系殺菌剤が製造される。
【0004】
3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸は、上記アミド系新規殺菌剤を合成する際の重要な中間体であるため、その合成プロセスに関する研究は化学者による広範な研究を呼び起こした。既存の調製方法は以下のように分類できる。
【0005】
一、主にBASF社とSyngenta社の特許で報告されているクライゼン縮合方法である。クライゼン縮合反応によりジフルオロ酢酸エチルからジフルオロアセト酢酸エチルを得て、続いてオルトギ酸トリエチルと縮合させて4,4-ジフルオロ-2-(エトキシメチレン)-3-オキソ酪酸エチルを得て、メチルヒドラジンで閉環した後、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(DFMMP)を生成させ、水酸化ナトリウムで加水分解し、塩酸で酸性化した後、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(DFPA)を得る。この方法はコストが高いため、すでに生産されている製品ラインを除いて、新規合成方法に対する研究には一般的に使用されない。
【0006】
二、Bayer特許WO2009043444におけるジメチルアミノエチルアクリレート方法であり、同様にWO2009133178においてBASF社はジメチルアミンをピペリジルに置き換えている。該方法では、ジメチルアミノアクリル酸エチルにジフルオロアセチルフルオリドガスを注入し、得られた中間体をメチルヒドラジンで直接閉環して、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(DFMMP)を生成させ、水酸化ナトリウムで加水分解し、塩酸で酸性化した後、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(DFPA)を得る。ここで、ジフルオロアセチルフルオリドガスは、テトラフルオロエチルエーテルの高温分解によって得られる。該方法は巧妙に設計されており、少ないステップと高い歩留まりの特徴があり、現在、コストの低い方法である。欠点は、装置に対する要件が高いことであり、また、この反応では、環境に影響を与える揮発性ジメチルアミンが大量に生成し、ピラゾール環を合成するためのメチルヒドラジン閉環の選択性という問題も解決されていない。
【0007】
三、Solvayの特許WO2012025469におけるジフルオロクロロアセチルクロリド方法である。該方法は、Solvayによって開発され、ジフルオロクロロアセチルクロリド(CDFAC)を出発原料として、ケテンと反応させた後、エタノールでクエンチすることによってジフルオロクロロアセト酢酸エチルを得て、クライゼン縮合と同様の方法で3-(ジフルオロクロロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルを得て、亜鉛粉末による還元またはパラジウム炭素による水素化により3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(DFMMP)を得て、水酸化ナトリウムで加水分解し、塩酸で酸性化した後、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(DFPA)を得る。該方法の欠点は、ステップが多く、原材料の供給源、および最終的な脱塩素化という問題であり、これはコストを増加させるだけでなく、3つの廃棄物も増加させる。
【0008】
四、他の合成方法もある。1)EP2008996には、塩化ジクロロアセチル、ビニルエーテル化合物、メチルヒドラジンなどの材料から5つのステップで3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を合成することが報告される。コストを抑えられる利点があるが、反応条件が厳しく、塩化ジクロロアセチルとビニルエーテル化合物は-40~-20℃で反応させる必要があり、カルボキシル基を触媒によって加圧する反応では、反応温度は150℃であり、プロセス中に反応器内の圧力を絶えず変化させる必要があり、操作しにくく、そして異性体も分離しにくい。2)WO2009000442には、ジフルオロ酢酸エチルを原料とし、ヒドラジン水和物と反応させてヒドラジドを生成させ、メチル化後、プロピオン酸エチルで閉環して、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(DFMMP)を得ることが報告されているが、該方法の収率は高くなく、そしてプロピオン酸エチルの価格が高く、工業生産には適さない。
【発明の概要】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的問題は、ピラゾール誘導体の工業生産に適したハロゲン置換化合物と、該ハロゲン置換化合物の調製方法と、該ハロゲン置換化合物を中間体としてピラゾール誘導体を調製するための調製方法および使用を提供することである。
【0010】
上記技術的問題を解決するために本発明が提供する技術的解決手段は、式Iで表されるピペラジン誘導体を、式VIで表されるハロゲン化アセチルハライド誘導体と反応させ、式IIで表されるハロゲン置換化合物を生成させる、ハロゲン置換化合物の調製方法である。反応溶媒は好ましくはクロロホルムであり、触媒は好ましくはトリエチルアミンであり、反応式は以下のとおりである。
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は水素、塩素、フッ素またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であり、
好ましくは、X
1、X
2およびX
3はフッ素であり、R
4は水素であり、R
1はOC
2H
5またはCH
3である。
【0011】
上記技術的問題を解決するために本発明が提供する技術的解決手段は、式IIで表される構造を有するハロゲン置換化合物である。
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は、水素、塩素、フッ素、またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であり、
好ましくは、X
1およびX
2はフッ素であり、R
4は水素であり、R
1はOC
2H
5またはCH
3である。
【0012】
上記技術的問題を解決するために本発明が提供する技術的解決手段は、ハロゲン置換化合物からピラゾール誘導体を調製するための調製方法であり、式IIで表されるハロゲン置換化合物をメチルヒドラジンと反応させ、ピラゾール環を閉じて式IVで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を生成させる。反応式は以下のとおりである。
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は、水素、塩素、フッ素、またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であり、
好ましくは、X
1およびX
2はフッ素であり、R
4は水素であり、R
1はOC
2H
5またはCH
3であり、
R
1がOR
Aの場合、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体をアルカリ性溶液で加水分解し、アルカリ性溶液は好ましくは水酸化ナトリウム溶液であり、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成させ、R
1がR
Aの場合、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を酸化剤と酸化反応させ、酸化剤は好ましくは次亜塩素酸ナトリウム水溶液、次亜臭素酸ナトリウム水溶液または酸素であり、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成させる。反応式は以下のとおりである。
【0013】
上記技術的問題を解決するために本発明が提供する技術的解決手段は、ハロゲン置換化合物からピラゾール誘導体を調製するための調製方法であり、式IIで表されるハロゲン置換化合物をメチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾンと反応させ、式IIIで表されるヒドラゾン化合物を生成させる。反応式は以下のとおりである。
ここで、
R
1はOR
AまたはR
Aであり、ここで、R
AはC1~C8のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、置換基を有するC3~8のシクロアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、ヘテロアリール基、または置換基を有するヘテロアリール基であり、
R
4は、水素、塩素、フッ素、またはC1~C8のアルキル基であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、塩素またはフッ素であり、
好ましくは、X
1およびX
2はフッ素であり、R
4は水素であり、R
1はOC
2H
5またはCH
3であり、
式IIIで表される前記ヒドラゾン化合物は、酸、好ましくは硫酸の存在下で、ピラゾール環を閉じて式IVで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を生成させる。反応式は以下のとおりであり、
R
1がOR
Aの場合、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体をアルカリ性溶液で加水分解し、アルカリ性溶液は好ましくは水酸化ナトリウム溶液であり、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成させ、R
1がR
Aの場合、式IVで表される前記ハロゲン置換アルキル-1-メチルピラゾール誘導体を酸化剤と酸化反応させ、酸化剤は好ましくは次亜塩素酸ナトリウム水溶液、次亜臭素酸ナトリウム水溶液または酸素であり、式Vで表されるハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生成させる。反応式は以下のとおりである。
【0014】
上記技術的問題を解決するために本発明が提供する技術的解決手段は、農薬を調製するための方法、ハロゲン置換化合物またはピラゾール誘導体を調製するための上記調製方法を含む。前記農薬は、アミド系殺菌剤であり、好ましくはビキサフェン、フルキサピロキサド、イソピラザムまたはセダキサンである。農薬の調製方法は、ハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を、好ましくはカルボン酸ハロゲン化物で、活性化ハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸に変換し、続いて、前記活性化ハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸をアミン、好ましくはアニリンと反応させて、アミド系殺菌剤を得る。具体的な調製方法については、国際特許WO1992/12970を参照されたい。
【0015】
上記技術的問題を解決するために本発明が提供する技術的解決手段は、上記調製方法によって調製されたハロゲン置換アルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の農薬調製のための中間体としての適用である。前記農薬は、アミド系殺菌剤であり、好ましくはビキサフェン、フルキサピロキサド、イソピラザムまたはセダキサンである。
【0016】
本発明には、以下のような優れた効果がある。
【0017】
(1)本発明においては、ハロゲン置換化合物の構造を最適化し、ハロゲン置換化合物の2つのNがピペラジンを形成するので、それによってハロゲン置換化合物は中心対称構造を得る。該構造のハロゲン置換化合物を用いてピラゾール誘導体を合成すると、反応副生成物が少なくなる。本発明の反応ステップは少なく、反応条件は一般的であり、40%までのアルキルヒドラジン化合物水溶液しか使用せず、各ステップの反応収率は高く、中間体の精製も容易で、製品の品質も高い。この対称型ジアミン構造は、3-ピペリジン環状アクリレート構造に比べて原子経済性がより高く、また、対称型ジアミンの沸点がより高いため、リサイクルしやすい。
【0018】
(2)本発明におけるハロゲン置換化合物の調製は、原料化合物およびハロゲン化アセチルハライド誘導体を用いて、より調製しやすく、直接購入することができ、原料コストが低い。
【0019】
(3)本発明においてピラゾール誘導体を調製する場合、まずハロゲン置換化合物とメチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾンを反応させた後、ピラゾール環を酸の存在下で閉じることができる。利点は、メチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾンがヒドラゾン保護基を形成し、これを単一の反応容器内で反応させることができ、さらに異性体を含まない閉環生成物が得られることが保証されることである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例1におけるN、N’-エチルジアクリレートピペラジンの高速液体クロマトグラムである。
【
図2】
図2は、実施例1におけるハロゲン置換化合物の高速液体クロマトグラムである。
【
図3】
図3は、実施例1における3-フルオロアルキル-1-メチルピラゾール-4-カルボン酸エチルのガスクロマトグラムである。
【
図4】
図4は、実施例1における3-フルオロアルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の高速液体クロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、以下の実施例は本発明のさらなる説明のためにのみ用いられ、本発明の保護範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、当業者であれば、上記本発明に従って、本発明にいくつかの非本質的な改良と調整を行うことができることを指摘する必要がある。
【0022】
本明細書で使用されているすべての専門用語および科学用語は、特に定義されていない限り、当業者によく知られている用語と同じ意味を持つ。例えば、C1~C8のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどの、炭素鎖長が1~8のアルキルを指す。C3~C8のシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの、炭素鎖長が3~8のシクロアルキル基を指す。2-メチルシクロプロピル、1-メチルシクロペンチル、4-メチルシクロヘキシルなどの、置換基を有するC3~C8のシクロアルキル基である。アリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどの、炭素鎖長が6~18の芳香族炭化水素の一価基を指す。3-メチルフェニル(m-トリル)、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル、4-クロロフェニルなどの、置換基を有するアリール基である。例えば、フラニル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、イミダゾリルなどのヘテロアリール基である。置換基を有するヘテロアリール基は、ヘテロアリール基の1つ以上の水素原子が置換基で置換されて形成される基である。
【0023】
本発明の実施例において、式VIで表されるハロゲン化アセチルハライド誘導体は、例として、ジフルオロアセチルフルオリドである。
式VIで表されるハロゲン化ハロアセチル誘導体は、X
1、X
2およびX
3がフッ素であり、R
4が水素である場合、ジフルオロアセチルフルオリドである。
【0024】
ジフルオロアセチルフルオリドガスは、テトラフルオロエチルエーテルの高温分解により生成することができる。分解反応温度は200°C~400°Cで、触媒は酸化アルミニウムである。
【0025】
実施例1
本実施例におけるピラゾール誘導体の調製方法は、以下のステップを含む:
反応フラスコに、28.2g(0.1mol)のN,N’-エチルジアクリレートピペラジン(式Iで表されるように、R
1はOC
2H
5であり、高速液体クロマトグラムは
図1に示される)、200gのクロロホルム、22.2g(0.22mol)のトリエチルアミンを加え、温度を10℃~30℃に制御し、21.5g(0.22mol)のジフルオロアセチルフルオリド(DFAF)を注入し、ガス注入が完了した後、反応を一定の温度で5時間継続し、減圧下で溶媒を濃縮し、残留物に100gの水を加え、30分間撹拌し、ろ過し、乾燥させることにより、42.9gの対応するハロゲン置換化合物(式IIで表されるように、高速液体クロマトグラムは
図2に示される)を98%の収率で得た。
【0026】
39g(0.0889mol)のハロゲン置換化合物生成物を200gのクロロホルムに懸濁させ、撹拌しながら-25℃まで冷却し、20.5g(0.178mol)のメチルヒドラジン(MMH)を40%の濃度でゆっくりと滴下した後、一定の温度で30分間反応を継続し、室温まで昇温し、水層を分離し、有機層を濃縮乾固し、残留物に石油エーテルを加えて再結晶し、30.8gの3-フルオロアルキル-1-メチルピラゾール-4-カルボン酸エチル(EDFMPA)(式IVで表される)を85%の収率で得た。ガスクロマトグラムを
図3に示す。
【0027】
30.8g(0.151mol)の3-フルオロアルキル-1-メチルピラゾール-4-カルボン酸エチル(EDFMPA)を反応フラスコに入れ、水100g、水酸化ナトリウム6.7gを加え、70℃で2時間撹拌して反応させ、反応終了後、塩酸を滴下してpHを2に中和し、10℃まで冷却し、ろ過し、少量の冷水で洗浄し、乾燥させて25.2gの3-フルオロアルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(DFMPA)(式Vで表される)を95%の収率で得た。高速液体クロマトグラフィーで検出された純度は99%であり、高速液体クロマトグラムを
図4に示す。
【0028】
実施例2
本実施例におけるピラゾール誘導体の調製方法は、以下のステップを含む:
反応フラスコに、28.2g(0.1mol)のN,N’-エチルジアクリレートピペラジン(式Iで表されるように、R1はOC2H5である)、200gのクロロホルム、22.2g(0.22mol)のトリエチルアミンを加え、温度を10℃~30℃に制御し、21.5g(0.22mol)のジフルオロアセチルフルオリド(DFAF)を注入し、ガス注入が完了した後、反応を一定の温度で5時間継続し、反応終了後、26.8g(0.2mol)のメチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾン(BzH)を滴下して温度を50℃に昇温し、一定の温度で3時間反応させ、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物にクロロホルム200gおよび硫酸5gを加え、室温で8時間反応させ、水50gを加え、有機層を分離し、温度を60℃に昇温し、濃度10%の水酸化ナトリウム溶液90gを滴下した。滴下後、3時間反応を継続し、反応終了後、水層を分離し、塩酸を滴下してpHを2に中和し、10℃に冷却し、ろ過し、水で洗浄し、乾燥させることにより、26gの3-フルオロアルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(DFMPA)(式Vで表される)を、73.8%の総収率で得た。高速液体クロマトグラフィーで検出された純度は99%であった。
【0029】
実施例3
本実施例におけるピラゾール誘導体の調製方法は、以下のステップを含む:
反応フラスコに、22.2g(0.1mol)のN,N’-エチルジアクリレートピペラジン(式Iで表されるように、R1はCH3である)、200gのクロロホルム、22.2g(0.22mol)のトリエチルアミンを加え、温度を10℃~30℃に制御し、21.5g(0.22mol)のジフルオロアセチルフルオリド(DFAF)を注入し、ガス注入が完了した後、反応を一定の温度で5時間継続し、26.8g(0.2mol)のメチルヒドラジンベンズアルデヒドヒドラゾン(BzH)を滴下して温度を50℃に昇温し、一定の温度で3時間反応させ、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物にクロロホルム200gおよび硫酸5gを加え、室温で8時間反応させ、水50gを加え、有機層を分離し、有機層を濃縮乾固し、石油エーテルを加えて再結晶し、ろ過して乾燥させ、27.2gの3-トリフルオロメチル-1-メチル-4-アセチルピラゾール誘導体(式IVで表される)を78%の収率で得た。
【0030】
反応フラスコに、3-トリフルオロメチル-1-メチル-4-アセチルピラゾール誘導体25g(0.14mol)、酢酸80g、硝酸マンガン1g、および硝酸鉄1gを加え、温度を80℃に昇温し、酸素を注入して20時間反応させ、酢酸を減圧下で蒸発させ、残留物に水80gを加え、撹拌しながら温度を80℃に昇温し、10℃まで冷却し、ろ過し、乾燥させて24gの3-フルオロアルキル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(DFMPA)(式Vで表される)を、95%の収率で得た。高速液体クロマトグラフィーで検出された純度は99%であった。
【0031】
明らかに、上記の実施例は、本発明を明確に説明するための単なる例示であり、本発明の実施態様を限定するものではない。 当業者であれば、上記の説明に基づいて、異なる形態の他の変更または変形を行うことができる。ここにすべての実施形態をリストする必要はなく、不可能である。本発明の精神に由来するこれらの明らかな変更または変形は、依然として本発明の保護範囲内にある。
【国際調査報告】