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特表2022-513504マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントを備えたシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントを備えたシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20220201BHJP
【FI】
G01C19/5776
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534957
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019083395
(87)【国際公開番号】W WO2020126454
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018222608.3
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ギーセルマン,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ランメル,ゲルハルト
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB04
2F105BB07
2F105CD11
(57)【要約】
- クロッキングシステムコンポーネント(1)であって、 - 固有周波数(f_osc)の振動を励起可能なマイクロメカニカル振動素子と、 - 振動素子の固有周波数(f_osc)から、所定の目標クロック周波数(f_odr_nom)へとプリトリミングされたクロック周波数(f_odr)を発生させる第1の回路手段(2)とを備えたクロッキングシステムコンポーネント(1)を有し、 - 目標クロック周波数(F_odr_nom)からの、クロック周波数(f_odr)の残存する差異(a_odr)のためのメモリ手段(4)を有し、この差異(a_odr)はクロッキングシステムコンポーネントに対して個別に決定されており、かつ - 発生したクロック周波数(f_odr)および保存された差異(a_odr)に基づいてシステム(100)の少なくとも一部のための基準タイムベースを発生させる処理機構(10)を有するシステム(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- クロッキングシステムコンポーネント(1)であって、
- 固有周波数(f_osc)の振動を励起可能なマイクロメカニカル振動素子と、
- 前記振動素子の前記固有周波数(f_osc)から、所定の目標クロック周波数(f_odr_nom)へとプリトリミングされたクロック周波数(f_odr)を発生させる第1の回路手段(2)とを備えたクロッキングシステムコンポーネント(1)を有し、
- 前記目標クロック周波数(f_odr_nom)からの、前記クロック周波数(f_odr)の残存する差異(a_odr)のためのメモリ手段(4)を有し、前記差異(a_odr)が前記クロッキングシステムコンポーネントに対して個別に決定されており、かつ
- 前記発生したクロック周波数(f_odr)および前記保存された差異(a_odr)に基づいて前記システム(100)の少なくとも一部のための基準タイムベースを発生させる処理機構(10)を有するシステム(100)。
【請求項2】
前記システム(100)がセンサシステムとして形成されており、その際、マイクロメカニカルセンサ構造を備えた角速度センサが、前記クロッキングシステムコンポーネント(1)として機能すること、すなわち、
- 前記センサ構造内に少なくとも1つの振動素子が形成されており、前記少なくとも1つの振動素子が、測定信号捕捉のために固有周波数(f_osc)の振動を励起されることによって、および
- 前記第1の回路手段(2)が設けられており、前記第1の回路手段(2)が前記固有周波数(f_osc)から、前記角速度センサのセンサデータのための出力サンプリングレートを決定するクロック周波数(f_odr)を発生させることによって機能すること、
ならびに前記処理機構(10)が、センサデータを前記基準タイムベースに基づいて処理するために設計されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記クロック周波数(f_odr)を発生させるための前記第1の回路手段(2)が、少なくとも1つの位相ロックループ(PLL)を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記クロッキングシステムコンポーネント(1)および/または前記処理機構(10)が、前記差異(a_odr)のための第1のメモリ手段(5)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記クロッキングシステムコンポーネント(1)および/または前記処理機構(10)が、前記差異(a_odr)のための外部の第2のメモリ手段(20)へのアクセスを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項6】
独立したタイムベースを発生させる少なくとも1つのさらなるシステムコンポーネントが設けられていること、および前記さらなるシステムコンポーネントの前記独立したタイムベースが、前記基準タイムベースに基づいて較正可能および/または修正可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
所定の周波数の出力信号を発生させるための第2の回路手段を備えた少なくとも1つのオシレータコンポーネントが設けられており、前記回路手段の設計の基礎となるのが前記基準タイムベースであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
マイクロメカニカル角速度センサを備えたセンサシステムの動作方法であって、前記マイクロメカニカル角速度センサのセンサ構造内には少なくとも1つの振動素子が形成されており、
- 前記振動素子が、測定信号捕捉のために固有周波数(f_osc)の振動を励起され、
- 前記振動素子の前記固有周波数(f_osc)からクロック周波数(f_odr)を発生させ、前記クロック周波数(f_odr)が、所定の目標クロック周波数(f_odr_nom)へとプリトリミングされており、かつ前記角速度センサのセンサデータのための出力サンプリングレートを決定する動作方法において、
- 前記目標クロック周波数(f_odr_nom)からの、前記クロック周波数(f_odr)の前記角速度センサに対して個別の残存する前記差異(a_odr)が提供されること、ならびに
- 前記発生したクロック周波数(f_odr)および前記保存された差異(a_odr)に基づいて前記センサシステムの少なくとも一部のための基準タイムベースを発生させることを特徴とする動作方法。
【請求項9】
前記角速度センサのセンサデータが、前記基準タイムベースに基づいて処理されること、とりわけ、前記角速度センサのセンサデータが前記クロック周波数(f_odr)および前記差異(a_odr)を考慮して積分されることにより、前記角速度センサの相対的で空間的な向きが確定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基準タイムベースが、さらなるシステムコンポーネントによって発生した独立したタイムベースを較正および/または修正するために使用されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記独立したタイムベースの前記較正および/または修正が、前記角速度センサのセンサ動作中の選択可能な時点で行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記角速度センサが、前記独立したタイムベースの前記較正および/または修正のために特別にアクティブ化されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記基準タイムベースが、オシレータコンポーネントの出力信号の周波数を調整するために使用されることを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントを備えたシステム、とりわけセンサシステムに関する。本発明はさらに、センサシステムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで話題にしているシステムの本質は、マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントを含んでいることである。マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントとは、例えばプロジェクションモジュールの範疇で共振振動を励起されるマイクロミラーであり得る。この場合にはプロジェクションモジュールが、本発明の意味におけるシステムと言えるであろう。マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントのさらなる一例は、測定のために固有周波数振動を励起される検出質量を備えたマイクロメカニカル角速度センサである。励起面に平行で、励起方向に垂直に向いた軸を中心とするセンサの回転運動は、このような回転運動が、相応に方向づけられたコリオリの力を呼び起こすので、この励起面に垂直な、振動質量の転向として捕捉され得る。このような角速度センサはセンサ信号のための処理ユニットと一緒になって、既に本発明の意味におけるシステムである。しかしこのシステムは、またさらなるセンサコンポーネントおよび/またはそのほかの機能性をもつシステムコンポーネントも含み得る。
【0003】
振動する質量およびその吊りバネから成るオシレータは、通常は、駆動部のエネルギーを最小化するために、および振動の安定性を最大化するために、高い品質で設計される。このオシレータの振動周波数は、温度および経年劣化に対して非常に安定している。ただし、同じ構造のセンサの固有周波数に、製造に起因して非常に高いバラツキがある。
【0004】
オシレータの固有周波数は、通常は、それを基に出力サンプリングレートを導出するために使用される。その際、通常はフラクショナル位相ロックループ(英語:fractional PLL)が用いられ、このフラクショナル位相ロックループが、オシレータの振動周波数f_oscから、比率n/mで、周波数f_odr(英語:output data rate、つまり出力サンプリングレート)のクロックを生成し、すなわち
f_odr=f_osc*n/m
である。
【0005】
値nおよびmは、整数で選択されることが好ましく、通常は角速度センサのトリミング(英語:trimming)の際に、f_oscを測定し、かつf_odrを目標クロック周波数f_odr_nomの前後の許容範囲内に収めるのに適切な値nおよびmを算出することにより、部品個別に決定される。これらの値は、通常はセンサ内の、トリミングパラメータのための不揮発性メモリ内に保存される。
【0006】
大きな値は高すぎる電流消費量および大きなチップ面積を生じさせるであろうから、係数nおよび除数mの絶対量は、構造形態に基づいて制限されている。ただしnおよびmの制限された値により、出力サンプリングレートが制限された精度でしか、つまり目標クロック周波数または目標サンプリング周波数f_odr_nomからのある程度の、例えば一桁のパーセントの範囲内の差異a_odrを伴ってしか調整できないことも一緒に生じる。
【0007】
例えば固有周波数f_osc=25kHzおよび目標クロック周波数f_odr_nom=6.4kHzに対し、値mは、式:
m=round(f_osc*n/f_odr_nom)
に従って、値nに依存して決定される。
【0008】
この例では、値mに関し、選択された値n=8に対して、
m=round(25kHz*8/6.4kHz)=round(31.25)=31
が生じる。
【0009】
しかしながら値m=31では、実際の出力サンプリングレートf_odr=6.452kHzとなり、つまり実際の出力サンプリングレートは目標サンプリングレートより約0.8%高い。この差異a_odrは、次のように定義される。
a_odr=f_odr/f_odr_nom
上記の例では、
a_odr=6.452kHz/6.4kHz=1.008
である。
【0010】
測定された角速度信号を処理する際にはしばしば、例えば角度位置により空間内の向きを決定するためのアルゴリズムの一部として、角速度測定値の積分が行われる。この向きは、例えばロール角、ピッチ角、およびヨー角(英語:roll、pitch、heading)によって表され得る。積分が、角速度測定値および時間間隔1/f_odr_nomからの積の合計によって行われ、ただし実際のサンプリングレートf_odrにf_odr_nomからの差異がある場合、これは、積分値に誤差係数a_odrがかかっていることになる。
【0011】
この誤差は、確かに従来は受け入れられていたが、しかしながら積分結果が不正確になるという欠点をもつ。
この問題を回避するため実際には、例えば別の時間標準(例えば水晶オシレータ)により、センサのサンプリングレートの予測値からの差異が測定され、この差異が、センサ値の積分の際に時定数の修正として考慮される。これは、別個の周波数標準を必要とし、この測定がシステムの複雑さを増大させ、かつ一部ではそれ自体が不正確さをはらんでいるという欠点をもつ。
【発明の概要】
【0012】
本発明の基礎となるアイデアは、マイクロメカニカルなクロッキングシステムコンポーネントを、システムまたはシステムの少なくとも一部のための、部品から独立した非常に正確な基準タイムベースを発生させるために利用することである。有利なのは、この基準タイムベースが、クロッキングシステムコンポーネントの部品個別の固有周波数から独立しており、かつ固有周波数を基に回路手段を使って発生させたクロック周波数f_odrからも独立していることである。このために本発明によれば、所定の目標クロック周波数f_odr_nomからの、クロック周波数f_odrの部品個別の差異a_odrが提供される。この差異a_odrは、通常はクロッキングシステムコンポーネントの製造プロセスの最後に決定される。
【0013】
第1の態様によればこの課題は、
- 固有周波数の振動を励起可能なマイクロメカニカル振動素子と、
- 振動素子の固有周波数から、所定の目標クロック周波数へとプリトリミングされたクロック周波数を発生させる第1の回路手段とを備えたクロッキングシステムコンポーネントを有し、
- 目標クロック周波数からの、クロック周波数の残存する差異のためのメモリ手段を有し、この差異はクロッキングシステムコンポーネントに対して個別に決定されており、かつ
- 発生したクロック周波数および保存された差異に基づいてシステムの少なくとも一部のための基準タイムベースを発生させる処理機構を有するシステムによって解決される。
【0014】
第2の態様によればこの課題は、マイクロメカニカル角速度センサを備えたセンサシステムの動作方法であって、このマイクロメカニカル角速度センサのセンサ構造内には少なくとも1つの振動素子が形成されており、
- この振動素子が、測定信号捕捉のために固有周波数の振動を励起され、
- この振動素子の固有周波数からクロック周波数を発生させ、このクロック周波数が、所定の目標クロック周波数へとプリトリミングされており、かつ角速度センサのセンサデータのための出力サンプリングレートを決定する動作方法において、
- 目標クロック周波数からの、クロック周波数の角速度センサに対して個別の残存する差異が提供されること、ならびに
- 発生したクロック周波数および保存された差異に基づいてセンサシステムの少なくとも一部のための基準タイムベースを発生させることを特徴とする動作方法によって解決される。
【0015】
システムの有利な変形形態は、それぞれ従属請求項の対象である。
システムの有利な一変形形態は、システムがセンサシステムとして形成されており、その際、マイクロメカニカルセンサ構造を備えた角速度センサが、クロッキングシステムコンポーネントとして機能すること、すなわち、
- センサ構造内に少なくとも1つの振動素子が形成されており、この少なくとも1つの振動素子が、測定信号捕捉のために固有周波数の振動を励起されることによって、および
- 回路手段が設けられており、この回路手段が固有周波数から、角速度センサのセンサデータのための出力サンプリングレートを決定するクロック周波数を発生させることによって機能すること、
- ならびに処理機構が、センサデータを基準タイムベースに基づいて処理するために設計されていることを特徴とする。
【0016】
システムのさらなる有利な一変形形態は、クロック周波数を発生させるための回路手段が、少なくとも1つの位相ロックループを含むことを特色とする。こうすることで、クロック周波数が高い精度で生成され得る。
【0017】
システムのさらなる有利な一変形形態は、クロッキングシステムコンポーネントおよび/または処理機構が、差異のためのメモリ手段を備えていることを特徴とする。これにより、差異が後の使用のために提供され得る。
【0018】
システムのさらなる有利な一変形形態は、クロッキングシステムコンポーネントおよび/または処理機構が、差異のための外部のメモリ手段へのアクセスを有することを特色とする。こうすることで、差異が外部からもアクセス可能に形成されることが有利である。
【0019】
システムのさらなる有利な一変形形態は、独立したタイムベースを発生させる少なくとも1つのさらなるシステムコンポーネントが設けられていること、およびこのさらなるシステムコンポーネントの独立したタイムベースが、基準タイムベースに基づいて較正可能および/または修正可能であることを特徴とする。これにより、さらなるシステムコンポーネントが非常に高い精度で動作され得ることが有利である。
【0020】
システムのさらなる有利な一変形形態は、所定の周波数の出力信号を発生させるための第2の回路手段を備えた少なくとも1つのオシレータコンポーネントが設けられており、この回路手段の設計の基礎となるのが基準タイムベースであることを特色とする。こうすることで、所定の周波数の出力信号が非常に正確に発生し得る。
【0021】
方法のさらなる有利な一変形形態は、角速度センサのセンサデータが、基準タイムベースに基づいて処理されること、とりわけ、角速度センサのセンサデータがクロック周波数および差異を考慮して積分されることにより、角速度センサの相対的で空間的な向きが確定されることを特徴とする。これにより、センサの非常に正確なセンシング挙動が提供され得ることが有利である。
【0022】
方法のさらなる有利な一変形形態は、基準タイムベースが、さらなるシステムコンポーネントによって発生した独立したタイムベースを較正および/または修正するために使用されることを特色とする。これにより、さらなるシステムコンポーネントによって発生した独立したタイムベースが非常に正確に形成され得る。
【0023】
方法のさらなる有利な一変形形態は、独立したタイムベースの較正および/または修正が、角速度センサのセンサ動作中の選択可能な時点で行われることを特色とする。これにより、角速度センサの省電流動作が支援される。
【0024】
方法のさらなる有利な一変形形態は、角速度センサが、独立したタイムベースの較正および/または修正のために特別にアクティブ化されることを特色とする。こうすることでも、角速度センサの省電流動作が支援される。
【0025】
システムのさらなる有利な一変形形態は、基準タイムベースが、オシレータコンポーネントの出力信号の周波数を調整するために使用されることを特色とする。これにより、オシレータコンポーネントの出力信号の周波数が非常に正確に提供され得る。
【0026】
以下に、さらなる特徴および利点と共に、複数の図に基づいて本発明を詳細に説明する。同じまたは機能が同じ素子は、図では同じ符号を有している。
開示された方法の特徴は、相応の開示された装置の特徴から類似的に明らかであり、かつその逆である。これは、とりわけシステムに関する特徴、技術的利点、および実施形態が、システムに関する相応の実施形態、特徴、および利点から、センサシステムの動作方法に関する相応の実施形態、特徴、および利点から類似的に明らかであり、かつその逆であることを意味する。簡略化のため、図ではそれぞれ前出の図に対する変化だけを解説する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来のシステムを示す図である。
図2】提案されたシステムの第1の実施形態を示す図である。
図3】提案されたシステムの第2の実施形態を示す図である。
図4】提案されたシステムの第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によるシステムにより、フラクショナル位相ロックループによるサンプリングレートの生成時に生じる差異係数を、角速度測定値を処理する際に考慮することが、このためにさらなる周波数標準を必要とせずに可能にされることが有利である。その際、MEMSオシレータの高い精度および安定性が利用可能にされるべきである。
【0029】
本発明により、既に製造中に、角速度センサのトリミングの際に、部品個別の差異aodrが決定および保存され、この値が、後のセンサデータ処理で利用するために提供され得ることが有利である。
【0030】
提案されたシステムおよび方法の利点は、
- センサデータ処理の精度が向上し、このためにさらなる時間標準を必要とせず、
- MEMSオシレータにより、非常に正確なタイムベースが、センサデータ処理のそのほかの目的または時間/周波数測定のためにも、追加的な費用なしで提供され得ることにある。
【0031】
図1は、センサシステムの形態の従来のシステム100を示している。このシステム100は、クロッキングシステムコンポーネント1としての角速度センサ素子1を含んでおり、このクロッキングシステムコンポーネント1は第1の回路手段2を備えており、この第1の回路手段2は、PLLと、さらにこのPLLに関する値を有するレジスタとを含んでおり、これにより、クロッキングシステムコンポーネントの振動周波数から、センサ信号のサンプリングレートとして理解されるべきクロック周波数または出力データレートf_odrが生成される。
【0032】
出力素子4により、信号が出力データレートf_odrで処理機構10に出力される。
図2は、センサシステムとして形成された本発明によるシステム100の第1の実施形態を示している。この形態では第1のメモリ手段5が認識され、この第1のメモリ手段5内に差異a_odrが保存され、かつ処理機構10に供給され得る。このメモリ手段は、図2に示した例示的実施形態では、クロッキングシステムコンポーネント1の、詳しくは角速度センサ素子の構成要素である。処理機構10は、角速度信号を出力データレートに同期して積分、つまり合計して、差異a_odrを用いて修正するホストシステム(例えばアプリケーションプロセッサ)として形成され得る。
【0033】
差異a_odrは、角速度センサの製造時に1回だけ確定される部品個別の係数である。
角速度センサ信号は、例えば、センサ信号のサンプル値を経過時間にわたって合計することにより、向きの決定に利用され得る。その際、実際のサンプリング周期Δt_real=1/f_odrに、目標サンプリング周期Δt_nom=1/f_odr_nomからの差異がある場合、これにより誤差が生じ、この誤差は、既知の差異a_odrにより次のように修正され得る。
【0034】
アルゴリズムにおける修正は、例えば空間軸において、次のように行われる。
【0035】
【数1】
【0036】
式中、
φ:角速度センサ値ωの集合の角度合計
Δt_real:実際のサンプリング周期
Δt_nom:目標サンプリング周期
f_odr:実際のサンプリング周波数
f_odr:目標サンプリング周波数
a_odr:サンプリング周波数の差異係数

図3は、提案されたシステム100のさらなる一実施形態を示している。
【0037】
この場合には、外部の第2のメモリ手段20が設けられており、この外部の第2のメモリ手段20により差異a_odrが保存され、かつ処理機構10に供給され得る。外部のメモリ手段20は、例えば処理機構10もしくはホストシステムのメモリ、またはメーカによって提供され、トリミングパラメータを有するデータバンク、またはセンサシステムのユーザがアクセスし得るクラウドであり得る。
【0038】
図4は、提案されたシステム100のさらなる一実施形態を示している。この形態でも、差異a_odrを格納するための第2の外部に形成されたメモリ手段20が設けられていることが認識される。この例示的実施形態では、角速度センサ1の出力データレートf_odrが、オシレータ30によりタイムベースを発生させるために利用され、このタイムベースが、角速度センサ信号の処理の基礎となり、システムのそのほかの箇所でも利用され得る。これに加えてオシレータ30には差異a_odrが供給され、したがってオシレータ30によって発生したタイムベースは、確かに角速度センサ素子の部品個別の固有周波数から導出されているが、この固有周波数からは独立している。オシレータ30のタイムベースが処理機構10に供給され、この場合、処理機構10は、このように修正されたオシレータ周波数を、角速度センサ信号の積分の基礎とする。
【0039】
差異a_odrは、センサデータを処理するアルゴリズムにおける直接的な使用の代わりに、独立したタイムベースを較正または補正するために、例えば不正確なRCオシレータをその後のセンサハブ(例えばセンサデータを処理するためのマイクロコントローラ)の形態での処理機構10内で較正するために利用される。
【0040】
これは、タイムベースの精度が、角速度信号の処理に役立つだけでなく、そのほかのセンサデータの処理にも利用され得るという利点を有する。
場合によっては、オシレータ30により、またさらなるシステムコンポーネント、例えばセンサまたは処理ユニット40にも、独立したタイムベースが付与され得る。
【0041】
オシレータ30は、後続の部品40に出力信号を非常に正確な周波数で提供するために、分周比n1/m1の正確なフラクショナルPLLまたはFLL(Frequency locked Loop)としても形成され得る。この場合には差異a_odrは、センサの出力サンプリングレートf_odrおよび差異a_odrに基づいて正確な周波数信号を生成するために利用される。この場合、正確なフラクショナルPLLまたはFLLの分周比n1/m1が、値a_odrの分だけ修正される。
【0042】
こうすることで、例えば、シリアルインターフェイスモジュール(UART、USBなど)の動作のための、無線送信器および/または無線受信器(例えばブルートゥース)用の周波数標準が、このためにさらなる水晶を必要とせずに生成され得る。
【0043】
センサシステムとして形成されたシステム100のさらなる一実施形態では、独立したタイムベースは、角速度センサがオンになっているときにのみ較正される。角速度センサがオフになっているときは、独立したタイムベースはその内在精度で働き続ける。この形態は、角速度センサが、RCオシレータに基づくタイムベースの電流消費量(例えば300nA)より桁違いに高い電流消費量(例えば950μA)を有するので有利である。さらにこれにより、角速度センサ信号が処理されるべき場合に優先的に、タイムベースの高い精度が提供される。
【0044】
適用事例によっては、それが必ずしも角速度信号の処理に役立たないとしても、常に高い精度が要求される場合に独立したタイムベースを較正するために角速度センサを選択的に接続することもできる。
【0045】
上では一貫して、システム100が、センサ信号を処理するための非常に正確なタイムベースを決定するためにトリミング誤差の補正が可能な角速度センサシステムとして開示されたのではあるが、クロッキングシステムコンポーネント1がマイクロミラーであり、かつシステム100が光学システム、例えばマイクロプロジェクタシステムとして形成されることも考えられる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】