(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】バッテリーセルホルダーおよびバッテリーシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20220202BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20220202BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20220202BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20220202BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20220202BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220202BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20220202BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20220202BHJP
H01M 10/643 20140101ALN20220202BHJP
H01M 10/6561 20140101ALN20220202BHJP
H01M 10/6567 20140101ALN20220202BHJP
H01M 10/6557 20140101ALN20220202BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/213
H01M50/291
H01M50/289 101
H01M50/298
H01M10/613
H01M50/569
H01M50/262 E
H01M10/643
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M10/6557
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530854
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079546
(87)【国際公開番号】W WO2020108901
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】102019211359.1
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018220687.2
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ツィールケ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アリシック,ハリス
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB03
5H031CC01
5H040AA07
5H040AS05
5H040AT01
5H040AY05
5H040CC05
5H040CC13
5H040DD07
5H040DD13
5H040JJ03
5H040LL06
5H043AA16
5H043BA19
5H043CA03
5H043DA27
(57)【要約】
本発明は、複数のバッテリーセル(7)を収容するよう構成された非弾性材料から成るハウジング(3)と、複数の貫通口(40)を有しており、各貫通口が1つのバッテリーセル(7)を収容するように構成されている弾性中間ユニット(4)と、弾性中間ユニット(4)がバッテリーセル(7)を挟持するよう弾性変形するように、弾性中間ユニット(4)にプリロード(F1)をかけるように構成されたプリロード機構(5)とを含むバッテリーセルホルダーに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 複数のバッテリーセル(7)を収容するよう構成された非弾性材料から成るハウジング(3)と、
- 弾性中間ユニット(4)と、
- 前記弾性中間ユニット(4)がバッテリーセル(7)を挟持できるように弾性変形させるために、前記弾性中間ユニット(4)にプリロード(F1)をかけるように構成されたプリロード機構(5)と
を含むバッテリーセルホルダー。
【請求項2】
前記弾性中間ユニット(4)が複数の貫通口(40)を有しており、各貫通口が1つのバッテリーセル(7)を収容するために構成されている、請求項1に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項3】
前記弾性中間ユニット(4)が、多孔板状で、弾性であり、一体的な嵌込体である貫通口(40)を有する、請求項2に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項4】
前記ハウジング(3)が複数の部分から成っており、かつ前記プリロード機構(5)が前記ハウジングにプリロードをかけるよう構成されており、これにより前記弾性中間ユニット(4)が弾性変形し、それによって前記バッテリーセル(7)が挟持される、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項5】
前記プリロード機構(5)が、とりわけネジ結合部を使って、調整可能なプリロード(F1)を提供するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項6】
前記プリロード機構が所定のプリロード(F1)だけを施し、かつとりわけ溶接結合部および/またはクリップ結合部を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項7】
- 前記プリロード機構(5)が複数のピン要素(50)を含んでおり、
- 前記弾性中間ユニット(4)が、貫通口(40)の間の移行領域に複数の補助孔(43)を有しており、
- それぞれ1つのピン要素(50)が1つの補助孔(43)内に配置されており、かつ前記ピン要素の直径(D2)が少なくとも部分的には、前記補助孔(43)の直径(D1)より大きい、
請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項8】
前記ハウジングが組立の際に前記ピン要素(50)と接触し、かつ前記ハウジングが前記ピン要素を前記補助孔(43)に押し込むように構成されている、請求項7に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項9】
前記ピン要素(50)が自由端で、先細りしている、とりわけ円錐形に先細りしている領域(53)を有している、請求項7または8に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項10】
前記弾性中間ユニット(4)が、前記バッテリーセル(7)の軸方向に互いに離隔して配置されている第1の弾性要素(41)および第2の弾性要素(42)を含んでいる、請求項1から9のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項11】
前記弾性中間ユニット(4)に隣接して配置された突っ張り要素(6)をさらに含んでいる、請求項1から10のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項12】
前記突っ張り要素(6)が、前記第1および第2の弾性要素の間で前記貫通口の軸方向に配置されている、請求項11に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項13】
前記突っ張り要素(6)が複数の個々のスリーブを含んでおり、または前記突っ張り要素が、複数の貫通口(60)をもつ多孔板状の一体的な要素である、請求項11または12に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項14】
前記ハウジング(3)が土台(31)および蓋(32)を有している、請求項1から13のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項15】
前記弾性中間ユニット(4)が複数の弾性個別要素(45)を含んでいる、請求項1に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項16】
前記弾性中間ユニット(4)が、複数の挟持領域をもつ1つだけの弾性の単一部品である、請求項1に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項17】
突っ張り要素(6)をさらに含んでおり、前記弾性中間ユニット(4)が前記突っ張り要素(6)に、とりわけ前記突っ張り要素(6)の上面および下面に配置されている、請求項15または16に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項18】
前記弾性中間ユニット(4)が前記突っ張り要素(6)に固定されている、請求項17に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項19】
前記弾性中間ユニット(4)および前記突っ張り要素(6)が、非弾性の担持要素と前記担持要素に射出成形された弾性中間要素とから成る2成分部材を構成している、請求項18に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項20】
前記弾性中間ユニット(4)が、補助孔(43)を有してまたは如何なる開口部もなしで形成されている、請求項15から19のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項21】
前記突っ張り要素(6)が複数の貫通口(60)を有しており、各貫通口(60)が1つのバッテリーセル(7)を収容するように構成されている、請求項17から20のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項22】
前記弾性中間ユニット(4)に配置されており、かつバッテリーセルの外装に電気接触するよう構成された電気接触要素(70)をさらに含んでいる、請求項1から21のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー。
【請求項23】
複数のバッテリーセル(7)および請求項1から22のいずれか一項に記載のバッテリーセルホルダー(2)を含むバッテリーシステム。
【請求項24】
前記バッテリーセル(7)と前記弾性中間ユニット(4)との間隙(9)内に冷媒を供給する冷却機構(10)をさらに含んでいる、請求項14に記載のバッテリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセルホルダーと、複数のバッテリーセルを備えたバッテリーシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、再充電可能な電気化学的エネルギー貯蔵器として多種多様な使用可能性を有することが好ましいとされる円筒形のバッテリーセル、とりわけリチウムイオンセルを出発点とする。この場合、通常は複数のバッテリーセルが電気的複合体として提供されている。このような典型的な円筒形のリチウムイオンバッテリーセルの寸法は、例えばサイズ「18650」(直径:18mm、高さ65mm)で標準化されている。しかしながらこのバッテリーセルは比較的大きな公差を有しており、これが、ハウジング内に複数のバッテリーセルを配置する場合に問題となり得る。さらにこのようなリチウムイオンバッテリーセルは、充電サイクルおよび放電サイクルの最中に体積変化を起こし、この体積変化が補償されなければならない。そのうえこのようなバッテリーセルおよびバッテリーシステムは、その利用中にしばしば、振動、揺れ、ガス状または液状の媒体流入および媒体流出による追加的な負荷を被り、これは、このようなバッテリーシステムを破壊し得る。それ故、バッテリーセルホルダーおよびバッテリーシステムの改善への要求が高まっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これに対して請求項1の特徴を有する本発明によるバッテリーセルホルダーは、バッテリーセルの製造公差が非常に大きくても、複数の方向での公差補償が可能であり、これによりバッテリーセルが、バッテリーセルホルダー内で確実に支持され得るという利点を有する。したがって、経験によれば常に異なる公差を有する様々なロットおよび/またはメーカのバッテリーセルの処理を明らかに簡略化することができる。さらに、本発明によるバッテリーセルホルダーによって保持されたバッテリーセルは、振動、揺れ、衝突、およびそれに類することに対して的確に防護され得る。とりわけ、揺れの確実な切離しが実現され得る。さらに、個々のバッテリーセルの追加的で接触に基づく熱結合が可能にされ、これが、長時間にわたる個々のバッテリーセルからの明らかにより良好な放熱をもたらす。これは本発明によれば、バッテリーセルホルダーが、非弾性材料、とりわけ硬質プラスチックから成るハウジングを有することによって達成される。このハウジングは、複数の個々のバッテリーセルを収容および支持するよう構成されている。バッテリーセルホルダーは、弾性中間ユニットをさらに含んでいる。さらにプリロード機構が設けられており、このプリロード機構は、弾性中間ユニットが変形して、この変形した弾性中間ユニットによってバッテリーセルが挟持されるように、弾性中間ユニットにプリロードをかけるよう構成されている。したがってプリロードをかける前は、弾性中間ユニットと、嵌め込まれた個々のバッテリーセルとの間にはそれぞれ間隙が存在しており、この間隙はその後、プリロード機構のプリロードの施しによって無くなる。したがってプリロードの施し後は、個々のバッテリーセルは、弾性中間ユニットと接触しており、かつ弾性中間ユニットによって確実に支持されている。
【0004】
従属請求項は、本発明の好ましい変形形態を示している。
【0005】
弾性中間ユニットは、複数の貫通口をもつ多孔板状で弾性の一体的な嵌込体を含むことが好ましい。このような嵌込体は、弾性材料から簡単かつ安価に大量生産され得る。
【0006】
さらに好ましいのは、バッテリーセルホルダーが、複数の部分から成るハウジング、とりわけ2つの部分から成るハウジングを含むことであり、この場合、プリロード機構はハウジングにプリロードをかけるよう構成されており、これにより弾性中間ユニットが弾性変形し、それによってバッテリーが挟持される。したがってプリロードは、ハウジングの外からハウジングへ、およびハウジングを介して弾性中間ユニットへと伝達され得る。よってプリロード機構がハウジングの内部に配置される必要はなく、これにより、バッテリーセルが非常にコンパクトに配置され得る。
【0007】
さらに好ましいのは、プリロード機構が調整可能なことである。これにより、プリロードを変えることができ、したがってとりわけバッテリーセルの異なる寸法偏差に反応することができる。調整可能なプリロード機構は、例えばネジ結合部または調整可能なバネ要素またはこれに類似する構成を使って実現され得る。
【0008】
代替的に、プリロード機構は、プリロード機構が所定のプリロードだけを施すよう構成されている。この解決策は特に安価であるが、幾つかの個々のバッテリーセルの公差が異なる場合、バッテリーセルへのそれぞれのプリロードが異なり得る。ただしこれは受け入れ可能であり、バッテリーセルの使用時に欠陥を生じさせることはない。このようなプリロード機構は例えば、ハウジングの例えば蓋と土台の間の溶接結合部によって、または土台上で蓋を保持するクリップ要素もしくはこれに類似する構成によって実現され得る。
【0009】
さらに好ましいのは、代替的な一形態によるバッテリーセルホルダーが、複数のピン要素を備えたプリロード機構を有することである。この場合の弾性中間ユニットは、バッテリーセルを収容するための貫通口の間の移行領域に複数の補助孔を有している。これに関し、それぞれ1つのピン要素が1つの補助孔内に配置されている。この場合、このピン要素は少なくとも部分的には、補助孔の直径より大きな直径を有している。これにより補助孔の拡張が起こり、したがって弾性中間ユニットの弾性変形が生じる。これによりバッテリーセルが挟持される。ピン要素は、例えば円錐形の端部と、補助孔の直径より大きな直径をもつ円筒形の部分とを有しており、または代替的に、全体的に円錐形のもしくは他の形式で先細りしている本体によって形成されている。ピン要素がヘッドを有することが好ましく、これにより補助孔への押込および補助孔からの取出が簡略化される。
【0010】
バッテリーセルホルダーは、組立の際に、複数の部分から成るハウジングがピン要素と接触するような、およびハウジングがピン要素を補助孔に押し込むよう構成されているような構造であることが好ましい。
【0011】
これに関してはハウジングに、ピン要素の領域で突出領域が設けられ得ることが好ましい。
【0012】
さらに好ましいのは、弾性中間ユニットが、少なくとも1つの第1の弾性要素および第2の弾性要素を含むことである。両方の弾性要素は、バッテリーセルホルダー内で、貫通口の軸方向に互いに離隔して配置されている。これにより、嵌め込まれたバッテリーセルは、2箇所で弾性中間ユニットによって、つまり第1および第2の弾性要素によって確実に支持され得る。
【0013】
費用節減のため、第1および第2の弾性要素が同じ構造であることが好ましい。
【0014】
さらに好ましいのは、バッテリーセルホルダーが、非弾性材料から成る突っ張り要素を含んでおり、この突っ張り要素が弾性中間ユニットに隣接して配置されていることである。突っ張り要素は、第1および第2の弾性要素の間で貫通口の軸方向に配置されることが好ましい。ここで、この突っ張り要素は、プリロード機構が複数の部分から成るハウジングにプリロードをかけて第1および第2の弾性要素が弾性変形する際に、突っ張り支持部として役立つ。
【0015】
突っ張り要素は、第1および第2の弾性要素内の貫通口に応じて位置合わせされた複数の個々のスリーブを含むことが好ましい。代替的には、突っ張り要素は、第1および第2の弾性要素内の貫通口に応じて位置合わせされた複数の貫通口をもつ多孔板状の一体的な要素を含んでいる。
【0016】
ハウジングが土台および蓋を有することが好ましい。この土台および/または蓋には、個々のバッテリーセルの電気接触のための開口部が設けられることが好ましい。土台はカップ形に形成されることが好ましい。
【0017】
弾性中間ユニットが複数の貫通口を含むことが好ましく、これに関し、各貫通口は1つのバッテリーセルを収容するために構成されている。これによりバッテリーセルは弾性中間ユニットによって包囲される。各貫通口は、1つずつのバッテリーセルを収容するために構成されている。プリロードをかける前は、弾性中間ユニットの貫通口と、嵌め込まれた個々のバッテリーセルとの間にそれぞれリング状の間隙が存在しており、この間隙は、プリロードの施しによって無くなる。
【0018】
本発明のさらなる好ましい一形態によれば、弾性中間ユニットは、複数の弾性個別要素を有している。これにより、弾性中間ユニットの重量を有意に減らすことができ、かつ弾性中間ユニットのために必要な設置スペースが最小化され得る。
【0019】
代替的に、弾性中間ユニットは、複数の挟持領域をもつ厳密に1つの単一部品を含んでいる。この挟持領域は、複数のバッテリーセルを挟持するよう構成されている。この場合、ハウジングと挟持領域の間でバッテリーセルの挟持が起こることが好ましい。複数の結合領域が、挟持領域を相互に結合している。
【0020】
さらなる好ましい一形態によれば、バッテリーセルホルダーが突っ張り要素をさらに含んでいる。この場合、弾性中間ユニットが突っ張り要素に配置されている。突っ張り要素は、弾性中間ユニットの突っ張り支持に役立つ。複数の弾性個別要素が設けられている場合、突っ張り要素は、個々の弾性個別要素の突っ張り支持にも役立つ。
【0021】
弾性中間ユニットが突っ張り要素に固定されることが好ましい。これは、接着または溶接またはそれに類することによって行われることが好ましい。さらに好ましいのは、弾性中間ユニットおよび突っ張り要素が、非弾性の担持要素と、この担持要素に射出成形された弾性中間部材とから成る2成分部材を構成することである。これに関してはとりわけ、幾つかの弾性個別要素または1つだけの単一部品が、非弾性の担持要素に射出成形され得る。
【0022】
さらなる好ましい一形態によれば、弾性中間ユニットは補助孔を有している。代替的に、弾性中間ユニットは孔またはこれに類似する構成を有さない。
【0023】
さらに好ましいのは、突っ張り要素が複数の貫通口を有しており、各貫通口が1つのバッテリーセルを収容するために構成されていることである。これにより組立の際に、バッテリーセルが突っ張り要素の貫通口内で予め位置決めされ得る。
【0024】
さらに好ましいのは、バッテリーセルホルダーが少なくとも1つの電気接触要素を含んでおり、この電気接触要素が弾性中間ユニットに配置されており、かつバッテリーセルの外装に電気接触するよう構成されていることである。複数の電気接触要素が設けられることが好ましい。電気接触要素は、例えばケーブル、FPC、またはプリント基板の部分領域のような通電要素である。弾性中間ユニットが伸張すると、電気接触要素がバッテリーセルのセル体に一緒に押し付けられ、これにより、バッテリーセルが絶縁性外装を有していないかまたは絶縁性外装に開口部もしくはこれに類似する構成を有する場合、バッテリーセルが永続的に接触され得る。これにより、個々のバッテリーセルに接触でき、または並列接続された等電位のバッテリーセル複合体に電気接触でき、これによりバッテリーシステム全体が監視され得る。
【0025】
本発明はさらに、複数のバッテリーセルおよび本発明によるバッテリーセルホルダーを含むバッテリーシステムに関する。
【0026】
バッテリーシステムが、冷媒をハウジング内に供給する冷却機構を含むことが好ましい。これに関して特に好ましいのは、弾性中間ユニットが第1および第2の弾性要素を有する場合であり、これにより冷媒が、第1および第2の弾性要素によってバッテリーセルの傍らに形成される間隙内に流れることができ、かつバッテリーセルを冷却することができる。とりわけ冷媒が液状媒体であって空気ではない場合、バッテリーセルの傍らで、弾性中間ユニットの第1および第2の弾性要素により、密閉された冷却空間を提供でき、この冷却空間は、確実な密封を可能にする。
【0027】
本発明によるバッテリーシステムは、このバッテリーシステムの単純で重量最適化された構造により、とりわけ電動自転車に適している。
【0028】
以下に、本発明の好ましい例示的な実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるバッテリーセルホルダーを備えたバッテリーシステムの組み立てられた状態の一例を示す概略的な横断面図である。
【
図2】
図1のバッテリーシステムの組み立てられていない状態での概略的な横断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った概略的な縦断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿った概略的な縦断面図である。
【
図5】第2の実施形態によるバッテリーセルホルダーを備えたバッテリーシステムの組み立てられた状態の一例を示す概略的な横断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略的な断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略的な断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略的な断面図である。
【
図9】第4の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略図である。
【
図10】第4の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略図である。
【
図11】第5の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略図である。
【
図12】第6の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略図である。
【
図13】第7の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、
図1~
図4を参照しながら、バッテリーセルホルダー2を備えたバッテリーシステム1を詳細に説明する。
【0031】
図1に示す、組み立てられた状態において明らかであるように、バッテリーセルホルダー2は、土台31および蓋32をもつ複数の部分から成るハウジング3を含んでいる。ここで、この土台31および蓋32にはそれぞれ、バッテリーセル7の電気接触のための複数の開口部30が設けられている。
【0032】
バッテリーセル7は、円筒形のバッテリーセルであり、例えばリチウムイオンセルであり得る。
【0033】
バッテリーセルホルダー2は、弾性中間ユニット4およびプリロード機構5をさらに含んでいる。この実施形態の弾性中間ユニット4の例は、第1の弾性要素41および第2の弾性要素42を含んでいる。第1の弾性要素41および第2の弾性要素42にはそれぞれ複数の貫通口40が設けられている。これに関しては
図1から分かるように、個々のバッテリーセル7が、弾性中間ユニット4の貫通口40より案内されている。そのため、貫通口40はバッテリーセル7を収容するように構成される。
【0034】
プリロード機構5は、この実施形態では、例示するようにプリロードF1をハウジング3にかけるクリップ状の挟持具である。これに関しては
図1で概略的に示しているように、挟持具は、土台にも蓋にもそれぞれプリロードF1をかけるため、土台31および蓋32を掴んでいる。この場合、このプリロードF1は、土台31および蓋32を介して弾性中間ユニット4の第1および第2の弾性要素41、42に伝達される。
【0035】
図1から明らかであるように、この実施形態のバッテリーセルホルダー2の例では、突っ張り要素6をさらに含んでいる。突っ張り要素6は、第1および第2の弾性要素41、42の間で貫通口の軸方向に配置されている。突っ張り要素6は、非弾性材料から製造されている。この実施形態では、例示される突っ張り要素6は一体的な部材であり、突っ張り要素6も、バッテリーセル7を収容するための貫通口60を有している。
【0036】
これに関し
図2は、プリロードなしでのバッテリーセルホルダー2の状態を示している。この場合、弾性中間ユニット4の弾性要素41、42は弾性変形していない。
図2から明らかであるように、基本的に、第1および第2の弾性要素41、42ならびに非弾性の突っ張り要素6は、幾何形状的に類似の構造であり、負荷がかかっていない状態では弾性要素41、42の貫通口40が、突っ張り要素6の貫通口60より大きい。
【0037】
プリロード機構5により、上で既に説明したようにプリロードF1がハウジング3に伝達される。ハウジング3は非弾性材料から製造されているので、このプリロードF1は、弾性中間ユニット4の第1および第2の弾性要素41、42に伝達される。このとき突っ張り要素6が突っ張り支持部として役立つ。これにより同時に、第1および第2の弾性要素41、42の弾性変形が生じ、これは
図1で矢印F2によって示唆されている。それにより、バッテリーセルホルダー2のプリロードのかかっていない状態では弾性要素41、42の傍らに存在している隙間8(
図2および
図3を参照)が除去され、第1および第2の弾性要素41、42が、バッテリーセル7に方向づけられた保持力をかける。
【0038】
これにより、バッテリーセル7の、とりわけその周長および/またはその長さに関する大きな製造公差も補償され得る。このとき、
図1と
図2との比較が示すように、第1および第2の弾性要素41、42の元の長さL0は、プリロードF1がかかることにより、減少した長さL1へと小さくなっている。さらに、プリロードがかかっていない状態での元の幅B0(
図2)は、プリロードがかかった状態での広がった幅B1(
図1を参照)へと大きくなっている。
【0039】
つまり第1および第2の弾性要素の弾性変形により、第1および第2の弾性要素41、42がバッテリーセル7に、密封もしながら当接する(
図1および
図4を参照)。すなわちバッテリーセルホルダー2と個々のバッテリーセル7との間の全面的な摩擦結合が達成され得る。これにより個々のバッテリーセルの確実でロバスト性のある保持が可能となる。第1および第2の弾性要素41、42を使った保持により、保持機能だけでなくこれに加えてさらに、例えば揺れおよび/または振動および/または衝突またはそれに類することのような外部からの力の影響の緩和が改善される。とりわけ、個々のバッテリーセル7は、複数の部分から成るハウジング3と直接的には接触しておらず、したがってこのような外部影響の、個々のバッテリーセル7への直接的な伝達は起こらない。
【0040】
さらに従来例との比較では、弾性中間ユニット4が例えばポリマーから製造されている場合の弾性中間ユニット4の熱伝導率(λ_ポリマー 約0.2W/mK)が、例えば空気の熱伝導率(λ_空気 約0.0024W/mK)より明らかに優れているので、放熱の改善が達成され得る。
【0041】
弾性中間ユニット4を使用することで、さらに、例えば欠陥が生じて熱いガスおよび/または液体が個々のバッテリーセル7から流出した際に、個々のバッテリーセルの相互の、および周囲に対しての隔離が可能となる。よってこれに加えてバッテリーシステム1の安全性も改善され得る。
【0042】
分かり易くするために、
図3は、
図2のIII-III線に沿った縦断面を示しており、この場合、各々個々のバッテリーセル7の傍での、第2の弾性要素42に対するリング状の隙間8が分かり易くなっている。この隙間8はもちろん、第1の弾性要素41でも同じように、負荷がかかっていない状態、つまりプリロードがかかっていない状態では存在している。
図4は、
図1のIV-IV線に沿った縦断面を示しており、したがってプリロードがかかった状態を、例示的に第2の弾性要素42において示しており、このプリロードがかかった状態では、第1および第2の弾性要素41、42が弾性変形しており、よって個々のバッテリーセル7に密接にかつ密封しながら当接している。これにより、それぞれまだプリロードがかかっていない状態では存在している隙間8は完全に無くなっている。
【0043】
さらに
図3および
図4から明らかであるように、個々のバッテリーセル7は、互いにずれて2列で配置されており、これにより特にコンパクトで省スペースの構造が達成されている。
【0044】
さらに、第1および第2の弾性要素41、42によるダブルの支持により、個々のバッテリーセル7の確実な保持および外部影響からの切離しが達成されている。
【0045】
図5は、本発明の第2の実施形態によるバッテリーシステム1の一例を示しており、これに関し、同じまたは機能的に同じ部分は同じ符号で表している。例示した第1の実施形態とは異なり
図5に例示する実施形態は、例えばハウジング3へのプリロードF1を変化させ得るネジ結合部のような調整要素51を備えた、調整可能なプリロード機構5を有している。さらに例示した第1の実施形態とは異なり、例示する第2の実施形態では、突っ張り要素6の貫通口60の直径が、ハウジング3にプリロードを施して最終的に組み立てた状態でも、突っ張り要素6と個々のバッテリーセル7の間に間隙9が残っているように選択されている。弾性中間ユニット4の第1および第2の弾性要素41、42の密封により、この間隙9は例えば冷却機構10による冷却に使用でき、冷却機構10は例えば液状またはガス状の冷媒を間隙9に貫流させる。
【0046】
その他の点では、この例示的な実施形態は先に例示した実施形態に対応しており、同様の説明が当てはまる。
【0047】
図6~
図8は、本発明の第3の実施形態に係るバッテリーセルホルダー2の一例を示す概略的な断面図である。
【0048】
図6および
図6のVII-VII線に沿った断面を示す。
図7の断面図から明らかであるように、このバッテリーセルホルダーは、第1の弾性要素41および第2の弾性要素42を備えた弾性中間ユニット4を含んでいる。第1および第2の弾性要素41、42は同じ構造である。これに加え、上述した例示的な実施形態とは異なりこの第1および第2の弾性要素41、42には複数の補助孔43が設けられている。これに関しては
図6から明らかであるように、補助孔43は、弾性要素の材料内で、貫通口40の間の中間領域44に設けられている。
図6から明らかであるようにこの場合は、第1の弾性要素41に4つの補助孔43が形成されている。
【0049】
図7からさらに明らかであるように、第1および第2の弾性要素41、42の間には突っ張り要素6が配置されている。上述した例示的な実施形態でのように、突っ張り要素6は、第1および第2の弾性要素41、42にプリロードがかかっている際に突っ張り支持部として役立つ。
【0050】
第3の実施形態に例示されるプリロード機構5はピン要素50を含んでおり、ピン要素50の詳細は
図8から明らかである。ピン要素50は、ヘッド51と、本体52と、ピン要素のヘッドとは反対側の端部にある円錐形の領域53とを含んでいる。これに関し、変形していない状態の補助孔43の直径D1(
図7を参照)は、ピン要素50の本体52の直径D2より小さい。円錐形の領域53により、ピン要素50を簡単に補助孔43に入れることができ、かつ押し込むことができ、これにより第1および第2の弾性要素41、42の弾性変形が生じる。プリロードF1によるピン要素50の押し込みにより、第1および第2の弾性要素41、42が弾性変形し、これは
図8で矢印F2によって示唆されている。これにより、弾性変形した中間ユニット4によるバッテリーセル7の挟持が行われる。
【0051】
ピン要素50へのプリロードF1が、様々なやり方で施され得ることを補足しておく。このために、例えば別個の追加的なプリロード機構を設けることができ、または
図6~
図8には示していないハウジングに突起もしくはバネもしくはこれらに類似する構造が配置されており、この突起もしくはバネもしくはこれらに類似する構造が、ハウジングが組み立てられる際に、補助孔43内に緩く差し込まれているピン要素50にプリロードをかけ、したがって、ハウジングを組み立てる際に同時にピン要素50が補助孔43内に押され、かつバッテリーセル7が挟持される。
【0052】
その他の点では、この例示的な実施形態は先に例示した実施形態に対応しており、同様の説明が当てはまる。
【0053】
図9および
図10は、本発明の第4の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示している。上述した実施形態の例とは異なり第4の実施形態のバッテリーセルホルダーの例は、複数の弾性個別要素45を含んでいる。
図9から明らかであるように、弾性個別要素は、バッテリーセル7の間の中間領域に配置されている。これに関し、各弾性個別要素45は3つのバッテリーセルに接触している。さらに、各弾性個別要素45が1つの補助孔43を有しており、この補助孔43には、第3の実施形態で例を挙げて説明したように、個々の弾性個別要素45の弾性伸張を引き起こすためにピン要素またはこれに類似する構造が差し込まれ得る。
図9および
図10から明らかであるように、空所60を有する非弾性の突っ張り要素6(担持要素)がさらに設けられており、この空所60内に個々のバッテリーセル7が配置されている。この場合、個々の弾性個別要素45は、非弾性の突っ張り要素6に固定されている。
図10で示したように弾性個別要素45は突っ張り要素6の上面および下面に配置されている。これは、突っ張り要素6への個別要素45の射出成形によって達成されることが好ましい。代替的には、個別要素45は、接着または溶接またはそれに類することによっても突っ張り要素6に固定され得る。
【0054】
図11は、本発明の第5の実施形態によるバッテリーセルホルダーの一例を示している。第5の実施形態の例は実質的に第4の実施形態の例に対応しており、第4の実施形態の例とは異なり、突っ張り要素6の形成が異なっている。
図11から明らかであるように、この突っ張り要素6はS字形であり、バッテリーセル7の間の内側の中間領域にのみ設けられている。この突っ張り要素6は、第4の実施形態に例示したように複数の個々の弾性個別要素45を担持しており、この個別要素45はそれぞれ1つの空所43を有している。この場合、バッテリーセル7は、個別要素45とハウジング3の間で挟持されている。これにより、バッテリーセルホルダーの重量がさらに減少し得る。この場合、上述した実施形態の例のように、突っ張り要素6の上側および下側に弾性個別要素45が設けられ得る。
【0055】
図12は、実質的に第5の実施形態の例に対応するような本発明の第6の実施形態を例示している。第5の実施形態の例とは異なり第6の実施形態の例は、補助開口部のない弾性個別要素45を有している。つまり、弾性個別要素45の弾性変形は、露出している表面にプリロードをかけることによってのみ行われる。突っ張り要素6は、
図11でのようにS字形に形成されている。
【0056】
図12の実施形態の例については代替的に、弾性中間ユニット4が2成分部材として射出成形されてもよく、この場合、弾性個別要素45の間の結合ブリッジだけが非弾性材料からもたらされることを補足しておく。
【0057】
図13は、実質的に
図9および
図10の第4の実施形態の例に対応している本発明の第7の実施形態を例示している。第7の実施形態の例では追加的に電気接触要素70がさらに設けられており、弾性中間ユニット4は
図9の弾性中間ユニット4に対応している。この電気接触要素70はそれぞれ弾性中間ユニット4に配置されている。より正確には、電気接触要素70は弾性中間ユニット4の弾性個別要素45に配置されている。これに関し、
図13は組み立てられた状態を示しており、したがって弾性個別要素45の変形が生じている。この変形により、電気接触要素70はバッテリーセル7の外装に押し付けられている。バッテリーセル7は、電気接触要素70によって接触される領域では絶縁性材料を有していない。したがって電気接触要素70によるバッテリーセル7の永続的な電気接触が可能にされ得る。バッテリーセルの接続に応じて、個々のバッテリーセルが接触され得、または並列接続されたバッテリーセル複合体ではすべてのバッテリーセルが電気接触されることもできる。それにより例えばバッテリーセル7の簡単な電圧監視が行われ得る。電気接触要素70は、ケーブルまたはプリント基板の一部または金属ピンまたはこれに類似する構成であることが好ましい。
【国際調査報告】