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  • 特表-締結素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】締結素子
(51)【国際特許分類】
   F16B 15/00 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
F16B15/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535548
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019083476
(87)【国際公開番号】W WO2020126474
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18214539.1
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ スエドホフ, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ボーヴェ, シモン
(72)【発明者】
【氏名】グエルテキン, ファーカン
(57)【要約】
本発明は、打ち込み方向を規定する軸部を備えるボルト、釘、またはピンなどの締結素子に関し、軸部は、打ち込み方向を向いた前端部と打ち込み方向の反対側を向いた後端部とを有し、軸部は、その周縁部に、打ち込み方向に対して鋭角をもって傾斜した外形隆起部を有する。1つの態様によれば、外形隆起部は、締結方向を向いた前方側面と締結方向の反対側を向いた後方側面とを有し、前方側面は、後方側面よりも大きな断面積を有する。さらなる態様によれば、締結素子は、ボール状部分を有する先端領域を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み方向を規定する軸部であって、打ち込み方向を向いた前端と、前記打ち込み方向の反対側を向いた後端と、前記軸部の周縁部における外形隆起部とを含む軸部を備え、
前記軸部の前記前端に隣接して釘状先端を有する先端領域をさらに備え、
前記軸部は、前記打ち込み方向に垂直に配向された、1つの断面積を有する断面を有し、
前記先端領域は、
前記打ち込み方向に測定された先端長さと、
前記打ち込み方向に垂直に配向された断面であって、その断面積は前記先端領域から前記軸部への移行部では前記軸部の断面積と同じでありそして前記軸部から前記釘状先端に向かって減少する断面と、を備え、
前記先端領域は、ボール状部分を備える、
締結素子。
【請求項2】
前記先端領域は、前記先端領域から前記軸部への移行部および前記釘状先端のそれぞれから、打ち込み方向で測定して等距離にある先端領域中間点を有し、
前記先端領域中間点における前記先端領域の前記断面の前記断面積は、前記軸部の前記断面の断面積の25%を超える、請求項1に記載の締結素子。
【請求項3】
前記先端領域中間点における前記先端領域の前記断面の前記断面積は、前記軸部の前記断面の前記断面積の50%を超える、請求項2に記載の締結素子。
【請求項4】
前記先端領域中間点における前記先端領域の断面の断面積は、前記軸部の断面の断面積の70%を超え、特に75%を超える、請求項3に記載の締結素子。
【請求項5】
前記軸部は、前記外形隆起部の領域で測定された軸部直径を有し、前記先端領域の長さは、前記軸部直径の1.1~1.6倍である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の締結素子。
【請求項6】
前記軸部の断面の断面積は、前記打ち込み方向において大幅な変化はしない、請求項1から5までのいずれか1項に記載の締結素子。
【請求項7】
前記先端領域の断面の断面積は、前記軸部から前記釘状先端まで着実に減少する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の締結素子。
【請求項8】
前記外形隆起部は、前記軸部から前記先端領域内まで連続する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の締結素子。
【請求項9】
前記外形隆起部は、前記釘状先端まで実質的に連続する、請求項8に記載の締結素子。
【請求項10】
前記外形隆起部は、前記打ち込み方向に対して鋭角をもって傾斜している、請求項1から9までのいずれか1項に記載の締結素子。
【請求項11】
前記外形隆起部の傾斜角度が、前記打ち込み方向に対して20度未満である、請求項10に記載の締結素子。
【請求項12】
前記外形隆起部は、前記締結方向を向いた前方側面と前記締結方向の反対側を向いた後方側面とを有し、前記前方側面は前記後方側面よりも大きい断面積を有する、請求項10または11に記載の締結素子
【請求項13】
前記軸部は、2個または少なくとも3個、特に少なくとも4個の前記外形隆起部を有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の締結素子。
【請求項14】
前記外形隆起部は、前記軸部の前記周縁部に均等に分布する、請求項13に記載の締結素子。
【請求項15】
前記先端領域は、前記ボール状部分からなる、請求項1に記載の締結素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は締結素子に関し、特に、ボルト、釘またはピンのような締結素子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の締結素子、例えば、鋼製の釘およびボルトなどは、コンクリート、金属または岩石などの硬い受入材料に物品を締結するための締結技術で使用される。このために、締結素子は、特に、打ち込み方向に向かってテーパ形状の先端を備えた軸部を有し、軸部の他端に配置された軸部の直径よりも大きいヘッドを有する。打ち込み動作は、例えば、燃焼動力を用いた打ち込み装置による打撃または押し込みで高速で行われる。
【0003】
その周縁部に多数の外形隆起部とそれらの間に配置される溝とを有する軸部を含む締結素子は、公知である。外形隆起部を締結方向に対して傾斜させた設計手法もまた公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1057553号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示の1つの目的は、大きな締結力を有する締結素子を提供するところにある。
【0006】
締結素子は、打ち込み方向を規定する軸部を備え、この軸部は、打ち込み方向を向いた前端と打ち込み方向の反対側を向いた後端とを有する。軸部は、その周縁部に外形隆起部を有し、この外形隆起部は打ち込み方向に対して鋭角をもって傾斜していることが好ましい。また、軸部は、外形隆起部の領域において測定される軸部直径を有する。
【0007】
第1の態様によれば、外形隆起部は、締結方向を向いた前方側面と締結方向とは反対側を向いた後方側面とを有し、前方側面は後方側面よりも大きな面積を有する。その結果、外形隆起部において、打ち込み動作中に摩擦によって加熱されることで母材内に締結素子を保持する力に大きく寄与する領域は増大され、保持力への寄与がより小さい領域を縮小されることになり、締結素子全体の締結力は増大する。
【0008】
さらなる態様によれば、締結素子は、軸部の前端付近に釘状先端を有する先端領域を備え、この先端領域は、打ち込み方向において測定される先端長さと打ち込み方向に垂直に配向される断面とを有する。その断面は断面積を含む。断面積は、先端領域から軸部への移行部では軸部の断面積と同じ大きさであり、そして軸部から釘状先端に向かって減少する。また、先端領域はボール状部分を含み、好ましくは、先端領域はボール状部分からなる。釘状先端を起点とした先端領域のボール形状により、先端領域の断面積は急激に増加することで、打ち込み動作の開始時にかなりの摩擦熱が発生する。このことは、外形隆起部の表面が締結素子を母材に保持する力に対してより大きく寄与することを可能とし、よって、締結素子の締結力が増大する。
【0009】
有利な実施形態は、先端領域が先端領域中間点を有し、この先端領域中間点は、先端領域から軸部への移行部および釘状先端のそれぞれから打ち込み方向に測定して等距離に位置し、その先端領域中間点における先端領域の断面の断面積が、軸部の断面積の25%を超えることを特徴とする。好ましくは、先端領域中間点における先端領域の断面の断面積は、軸部の断面の断面積の50%を超え、特に好ましくは70%を超え、または75%を超える。
【0010】
有利な実施形態は、軸部が、外形隆起部の領域で測定される軸部直径を有し、先端領域の長さが、軸部直径の1.1~1.6倍であることを特徴とする。
【0011】
有利な実施形態は、外形隆起部の傾斜角度が打ち込み方向に対して20度未満であることを特徴とする。このことにより、打ち込み方向での締結素子への打撃が締結素子を確実に回転させ得る。状況によっては、外形隆起部は、締結素子の回転を前方駆動に変換させるねじ山としては適していない。
【0012】
有利な実施形態は、軸部の断面が、打ち込み方向に沿って大きく変化しない断面積を有することを特徴とする。
【0013】
有利な実施形態は、締結素子が、軸部の後端に隣接するヘッドを備えることを特徴とする。
【0014】
有利な実施形態は、軸部が2つまたは少なくとも3つ、好ましくは、少なくとも4つの外形隆起部を有することを特徴とする。外形隆起部は、軸部の周縁に均等に分布することがより好適である。
【0015】
有利な実施形態は、先端領域が断面を有し、その断面積が軸部から釘状先端まで着実に減少することを特徴とする。外形隆起部は、好ましくは、軸部から先端領域内まで連続する。特に好ましくは、外形隆起部は、釘状先端まで実質的に連続する。
【0016】
本発明のさらなる利点および手段は、従属請求項、以下の説明および図面から明らかになる。本発明は、例示的な実施形態として図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による締結素子の側面図である。
図2】締結素子の斜視図である。
図3】締結素子を製造するための圧延ダイである。
図4】締結素子の断面の様々な例示的実施形態である。
図5】締結素子の断面の断面積の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および図2に締結素子10の側面図および斜視図を示す。締結素子10は、打ち込み方向30を規定するとともに、打ち込み方向30を向いた前端部21と打ち込み方向30の反対側を向いた後端部22とを有する軸部20を備える。軸部20は、打ち込み方向30に対して垂直に配向された断面を有し、その周縁部には、15度の鋭角をもって打ち込み方向に対して傾斜した複数の外形隆起部40が設けられている。2つの外形隆起部40の間のそれぞれには中間外形領域50が形成され、本実施形態では、溝として形成される。軸部20の後端22は、ヘッド60に隣接している。軸部20の前端21には、好ましくは尖った釘状先端71を有するボール状先端領域70が隣接している。外形隆起部40は、それぞれ、締結方向30を向いた前方側面41と、締結方向30の反対側を向いた後方側面42とを有し、軸部20から先端領域70に向かって釘状先端71まで続く。
【0019】
図3に、締結素子の製造に使用可能な圧延ダイ80を示す。図中に示していないが、軸部を有するブランクが、圧延ダイ80と圧延方向85に対して相似形状の嵌合ダイとの間で圧延される。圧延ダイ80は多数の溝90を有しており、圧延する間に、外形隆起部の輪郭が軸部の周縁部に圧延される。溝90は、圧延方向85に対して垂直に配向された軸部の長手方向に対して、鋭角αで傾斜しており、その結果、圧延された外形隆起部も、角度αだけ軸部の長手方向に対して傾斜している。
【0020】
軸部の前端に隣接する釘状先端を有する先端領域を生成するために、圧延ダイ80および嵌合ダイは、圧延中に互いに反対側に位置する領域を有する。これにより、前述の領域間に発生するギャップには溝90から離れる方向に先細りとなり、先端領域の材料が、圧延ダイ80と嵌合ダイとの間で圧搾される。その結果、先端領域は一方では成形され、他方では加熱されるので、余分な材料を先端領域から容易に熱的に分離することができる。いくつかの例示的な実施形態では、締結素子の外形隆起部が釘状先端まで延在するようにする場合、特許文献1による2つの釘ブランクスを引き離すことを含む熱プロセスが使用されることが好ましい。図示されていない例示的な実施形態では、圧延ダイおよび/または嵌合ダイのチャネルは、前述の先細りのギャップ内に延在する。
【0021】
図4は、いくつかの異なる例示的な実施形態による締結素子の軸部120の、打ち込み方向に対して垂直に配向された断面100を示している。各形態におけるそれぞれの軸部120は、それぞれの軸部120の周縁部に均等に分布する4つの外形隆起部140と、それらの間に配置された中間外形領域150を有する。図4の左側および中央に示される例示的な実施形態では、それらの中間外形領域150は溝として形成される。図4の右側に示された例示的な実施形態では、中間外形領域150は、平面として形成される。図示されていない例示的な実施形態では、中間外形領域は凹面として形成される。外形隆起部は、それらが円形断面の形状および中間外形領域のどちらに対しても、半径方向に突出している事により区別される。また、それぞれの軸部120は、外形隆起部の領域で測定される軸部直径dを有する。
【0022】
打ち込み方向に対する外形隆起部140の傾斜により、各々の外形隆起部140は、締結方向を向いた前方側面141と、締結方向の反対側を向いた後方側面142とを有する。前方側面141は、打ち込み動作中に後方側面142よりも大きい摩擦により加熱される。このとき、前方側面141が後方側面142よりも大きな面積を有することで、締結素子の締結力が全体として増大する。
【0023】
図5は、2つの例示的な実施形態における締結素子の断面の断面積の変化を図200に示している。図200には、締結素子の軸部220の領域に対する断面積の百分率が、釘状先端からの距離(ミリメートル)に対してプロットされている。締結素子の軸部の領域では、断面積は、打込み方向(100%)に沿って大きく変化しない。先端領域270において、断面積は、先端領域270から軸部220への移行部272における100%から始まって、針状先端(0mm、0%)まで着実に減少する。先端領域270は、移行部272および釘状先端のそれぞれから等距離にある先端領域中点273を有する。先端領域の中点273において、先端領域270の断面の断面積は、第1の例示的な実施形態(下の曲線)では軸部220の72%であり、第2の例示的な実施形態(上の曲線)では78%である。さらに、移行部272から釘状先端までの先端領域の先端長さは、第1の例示的な実施形態(下の曲線)では軸部直径の1.5倍であり、第2の例示的な実施形態(上の曲線)では1.2倍である
【0024】
本発明は、締結素子のいくつかの例示的な実施形態に基づいて説明された。記載された特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、各例示的な実施形態から他のすべての例示的な実施形態に、個別にまたは組み合わせて転用し得る。また、本発明による締結素子は、他の複数の目的にも使用され得ることが指摘される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】