(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ブラシレス電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 29/08 20060101AFI20220209BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20220209BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H02K29/08
G01B7/30 H
G01D5/245 110M
G01D5/245 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534354
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2018085604
(87)【国際公開番号】W WO2020125957
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フックス,オリバー
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
5H019
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA52
2F077AA27
2F077CC02
2F077CC07
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP11
2F077QQ15
5H019AA07
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB19
5H019BB23
5H019CC03
(57)【要約】
本発明は、ハウジング(2)と、ハウジング(2)の中で回転可能に支承されたシャフト(3)に配置された少なくとも1つのロータ(4)と、ハウジング固定されたステータ(7)とを有するブラシレス電気機械(1)、特にブラシレス直流モータに関し、ロータ(4)には、シャフト(3)に回転不能に配置された多極の磁気リング(9)と、径方向で磁気リング(9)の外側円周にハウジング固定されて付属する少なくとも1つの磁界感応センサ(10)とを有する、無接触式に作動するロータ位置認識装置が付属する。ロータ(4)の極対数(z
4)と磁気リング(9)の極対数(z
9)とを互いに素に製作することが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)の中で回転可能に支承されたシャフト(3)に配置された少なくとも1つのロータ(4)と、ハウジング固定されたステータ(7)とを有するブラシレス電気機械(1)、特にブラシレス直流モータであって、前記ロータ(4)には、前記シャフト(3)に回転不能に配置された多極の磁気リング(9)と、径方向で前記磁気リング(9)の外側円周にハウジング固定されて付属する少なくとも1つの磁界感応センサ(10)とを有する、無接触式に作動するロータ位置認識装置が付属する、ブラシレス電気機械において、前記ロータ(4)の極対数(z
4)と前記磁気リング(9)の極対数(z
9)とが互いに素であることを特徴とするブラシレス電気機械。
【請求項2】
前記ロータ(4)は4の極対数(z
4)を有することを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス電気機械。
【請求項3】
前記磁気リング(9)は5の極対数(z
9)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のブラシレス電気機械。
【請求項4】
前記磁気リング(9)の極対数(z
9)は前記ロータ位置認識装置の回転角セグメントの数を規定することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のブラシレス電気機械。
【請求項5】
前記センサの信号に依存して前記磁気リング(9)の回転角セグメントを決定し、判定された回転角セグメント(I~V)に依存して回転角(φ
mech)を決定するように特にセットアップされた制御装置(11)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のブラシレス電気機械。
【請求項6】
前記制御装置(11)は回転角セグメント(I~V)を判定するために前記ロータ(4)を第1の回転方向で第1の回転角セグメント(I)へと回転させるための第1の電流によって前記ステータ(7)を負荷し、監視装置が存在し、該監視装置によって前記ロータ(4)が回転運動に関して監視されることを特徴とする、請求項5に記載のブラシレス電気機械。
【請求項7】
前記監視装置は回転運動を回転方向に関して監視するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載のブラシレス電気機械。
【請求項8】
前記制御装置(11)は前記ロータ(4)を前記第1の回転方向と反対向きの回転方向で2つの回転角セグメント(β
1)の分だけ回転させるための第2の電流によって前記ステータ(7)を負荷し、前記監視装置が前記ロータ(4)を回転運動に関して監視することを特徴とする、請求項6または7に記載のブラシレス電気機械。
【請求項9】
前記監視装置は回転運動を回転方向に関して監視するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のブラシレス電気機械。
【請求項10】
前記ロータ(4)が前記第2の電流によって前記第1の回転方向へ回転したことを前記監視装置が認識したとき、前記制御装置(11)は前記ロータ(4)を1つの回転角セグメント(β
1)の分だけ前記第1の回転方向へ回転させるための第3の電流によって前記ステータ(7)を負荷することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のブラシレス電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジングの中で回転可能に支承されたシャフトに配置された少なくとも1つのロータと、ハウジング固定されたステータとを有するブラシレス電気機械、特にブラシレス直流モータに関し、ロータには、シャフトに回転不能に配置された多極の磁気リングと、径方向で磁気リングの外側円周に付属するハウジング固定された少なくとも1つの磁界感応センサとを有する、無接触式に作動するロータ位置認識装置が付属する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス電気機械は従来技術から知られている。その駆動のために重要なのは、ステータを制御できるようにするために、ロータの現在の回転角ないし現在の回転角位置を正確に決定可能であることにある。現在の回転角位置の知見のもとでのみ、電気機械の正しい整流が可能である。たとえば、永久磁石励起型の同期機において信号発生器をロータに回転不能に付属させ、これに対して軸方向に、信号発生器の磁界を監視するセンサ素子を付属させることが知られており、それによって信号発生器の全360°の回転角をセンサによって判定可能である。それにより、現在の回転角がただちに既知になるので、電気機械をシステム始動後にただちに制御可能である。信号発生器が多極の磁気リングを有する構造も知られている。その場合の利点は、たとえばロータと、電気機械の機械的な出力部分(シャフトに固定的に配置された駆動ピニオン)との間にも磁気リングを配置可能なので、システムについて選択肢が増えるという点にある。しかしこのことは、センサがハウジング固定されて、磁気リングに対して径方向に配置されることを帰結する。それに伴い、ロータの機械的な回転角をセンサ信号から容易に一義的に判定可能ではなくなる。
【発明の概要】
【0003】
請求項1の構成要件を有する本発明の電気機械は、電気機械の好ましい構成が、ロータの回転角ないし回転角位置に対するセンサ信号の一義的な割当てを可能にするという利点を有する。そのために本発明では、ロータの極対数と磁気リングの極対数とが互いに素であることが意図される。互いに素である極対数によって、特にノギスまたはバーニヤの原理を用いて、磁気リングの回転角セグメントを、および検出された回転角セグメントに依存して現在の回転角を、センサ信号から最短の時間内で判定可能であることが実現される。このように本発明はわずかな付加コストだけで、回転角を一義的に決定するための好ましい解決法を提供する。それに伴って電気機械は、制御のために電流と電圧をいずれの方向へ調整しなければならないかが既知ではないので使用開始後ただちに制御可能ではないものの、回転角位置およびそれに伴って電流と電圧についての設定事項も、十分に短い時間内に十分に小さい負荷トルクをもって判定可能である。
【0004】
本発明の好ましい実施形態では、ロータは4の極対数を有する。それに伴い、このロータは頻繁に使用されるロータに対応しており、費用の付加コストなしに既存のロータを利用することができる。
【0005】
磁気リングは5の極対数を有するのが好ましく、それにより互いに素の極対数がもたらされる。磁気リングそのものはロータよりも低い複雑性で構成されるので、5に合わせた極対数の適合化は、またはその他の互いに素の極対数は、低コストに実行可能である。すなわち特に、電気機械はロータの4の極対数と磁気リングの5の極対数とを有する。
【0006】
このとき磁気リングの極対数は、ロータ位置認識装置の回転角セグメントの数を規定する。システム始動時に、ロータないし磁気リングが位置している回転角セグメントがまず判定され、次いで、検出された回転角セグメントに依存して、現在の回転角が決定される。そのために特に、好ましくは電気機械の制御装置により実施される、ないしは実施可能である、以下の方法が実施される。電気機械の初期化の後、機械的な角度が0~360°の角度範囲内で一義的に決定され、機械的な角度に依存し得るすべての修正を適用できるようになり、それにより、以後の動作において電気機械の好ましい整流が保証される。
【0007】
本発明の好ましい発展例では、ブラシレス電気機械は、上ですでに説明したように、センサの信号に依存して回転角セグメントを決定し、判定された回転角セグメントに依存して回転角を決定するように特にセットアップされた制御装置を有する。それにより、すでに挙げた利点がもたらされる。そのために制御装置は、センサと、特にセンサのセンサ出力部と、電気接続されるのが好都合である。特に制御装置は、磁気リングの磁界ならびにその向きとセンサに対する影響を評価するために、センサの出力信号を評価するように構成される。センサとして、TMRセンサ(TMR=磁気トンネル抵抗または磁気抵抗効果)が存在するのが好ましい。
【0008】
特に、制御装置は回転角セグメントを判定するために、まず、ロータを第1の回転方向で第1の選択された回転角セグメントへと回転させるための第1の電流によってステータを負荷し、監視装置が存在し、該監視装置によってロータが回転運動に関して監視されることが意図される。機械ないしロータが開始時に止まったままであるときには、ロータはすでに選択された第1の回転角セグメントに位置している。そのときは回転角セグメントの知見のもとで、センサ信号に依存して、回転角セグメントを用いて回転角位置が決定される。しかし、ロータが運動ないし回転をしていることが認識されたときは、ロータがその初期位置では、選択された第1の回転角セグメントに位置していなかったことが明らかとなる。このことは、正確な回転角セグメントの探索の範囲をすでに限定する。制御装置は、少なくとも1つの揮発性または不揮発性のメモリを有するのが好ましく、判定された結果が後の利用のために該メモリに保存される。特に、ロータが回転しているか否か、している場合にはどの方向(たとえば左または右)にであるかが保存される。
【0009】
したがって監視装置ないし制御装置は、回転運動を回転方向に関して監視するように構成されるのが好ましい。第1の制御の回転運動のときに検出された回転方向に依存して、回転角セグメントの選択をさらに限定する、ロータの第2の制御が制御装置により行われる。回転方向の知見によって、ロータが第1の回転方向へ予想通り動いているか、それとも逆の回転方向に動いているかを確認可能である。ロータが予想される回転方向に動いているか逆の回転方向に動いているかに応じて、その後、特定の回転方向という目的をもって、ロータが制御装置によって第2の電流により制御ないし負荷される。
【0010】
制御装置は、ロータが第1の回転方向ないし予想される回転方向とは逆の回転方向に動いているとき、次のステップで、好ましくは第1の回転方向と逆の回転方向へロータを2つの回転角セグメントだけ回転させるための第2の電流でステータが負荷され、監視装置によってその後の回転運動が監視されるように構成されるのが特別に好ましい。ロータが動いていないとき、すなわち、設定可能な時間の経過後にロータの停止が確認されたとき、ロータが極対数比率4:5を有する前述した実施例では(方法の開始時の回転方向に応じて)第3または第4のセグメントに位置していることが決定される。それに伴って回転角セグメントが既知となり、センサ信号に依存して回転角位置を一義的に判定可能である。
【0011】
制御装置は、監視装置によってその次の回転運動を回転方向に関して監視するように、ないしは回転運動の回転方向を確認するように構成されるのが好ましい。その際に、上で説明した手順が行われる。特に、検出された回転方向が第2の回転方向と比較され、すなわち、第1の回転方向とは逆の回転方向と比較される。そのために、メモリに保存されている回転方向と回転運動が読み出されて、制御装置により相互に比較される。そのために制御装置は、特に、マイクロプロセッサおよび/または集積回路により具体化される評価ロジックを有する。ロータが意図される方向と逆の方向へ動いているとき、ロータを1つの回転角セグメントだけ反対方向へ回転させるための第3の電流によりステータが負荷される。このときにロータは停止したままでなければならず、現在の回転角セグメントを確認可能である。修正の方向に応じて、ロータないし磁気リングはシステム始動時に第2または第4の回転角セグメントに位置していたことになる。
【0012】
その他の利点や好ましい構成要件および構成要件組合せは、上記の説明ならびに特許請求の範囲から明らかとなる。次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ブラシレス電気機械を示す簡略化した斜視図である。
【
図2】好ましい動作方法を説明するためのグラフである。
【
図4】本方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、シャフト3が回転可能に支承されたハウジング2を有するブラシレス電気機械1を簡略化した図面で示している。シャフト3にはロータ4が、および自由端に駆動ピニオン5が、回転不能に配置されている。シャフト3は複数の軸受6により、特に転がり軸受により、ハウジング2で回転可能に支承されている。さらにロータ4には、少なくとも1つの通電可能なステータ巻線を有するステータ7が付属しており、ステータ7はロータ4に対して同軸に配置されている。
【0015】
さらに、ロータ4と駆動ピニオン5との間には、多極の磁気リング9の形態の磁気式の信号発生器8がシャフト3に回転不能に配置されている。磁気リング9には、磁界感応式に構成されたセンサ10がハウジング固定されて付属している。このようにセンサ10は、信号発生器8の信号受信器としての役目を果たす。
【0016】
ロータ4と磁気リング9の極対数は互いに素に構成されている。本実施例では、ロータ4は極対数z4=4を有し、磁気リング9は極対数z9=5を有する。センサ10と磁気リング9からなるセンサ装置によって、特に電気機械1のシステム始動のためにロータ4の回転角位置が、以下に説明する方法を実施するようにセットアップされた制御装置11を用いて決定される。
【0017】
これに関してまず
図2は、電気機械1の挙動を機械的な回転角φ
mechを通して複数のグラフで示している。ここで一番上のグラフは、機械的な回転角φ
mechの特性曲線を示している。その下にあるグラフは、4の極対数を有するロータ4の電気的な回転角を示している。その下にあるグラフは、機械的な回転角4に対する磁気リング9の磁気的な回転角を示している。
図2の一番下の区画は、磁気リング9によりその5の極対数によって定義される回転角セグメントI~Vを示している。
【0018】
制御装置11は、ノギスまたはバーニヤの原理を用いてロータ4の現在の回転角を決定するために、まず、ロータ4の現在の回転角が位置している回転角セグメントを決定し、決定された回転角セグメントに依存して、センサにより検出される信号を用いて現在の回転角を決定するように構成される。負荷トルクが十分に小さければ、ノギスまたはバーニヤの原理を用いて、回転角セグメントを短い時間内に識別することができる。
【0019】
引き続き、正確な機械的な角度φがすべての角度修正を含めてただちに確定される。そのためにシステム始動時に、まずセンサ装置が初期化される。すなわち、磁気リング9がどの回転角セグメントにあるかが判定される。このことは、電界または電流の位置を通して正しい回転角セグメントを決定する、以下に
図3および
図4を参照して説明する方法によって解決される。
【0020】
極対数z9=5によって、本例では、ロータ4を無通電の状態のときに磁気的に係止することができる5つの異なる回転角位置が成立し、それによりロータの停止時には、ロータが存在し得る5つの異なる回転角セグメントI~Vが生じる。好ましい方法により、正しい回転角セグメントI~Vが判定される。そのために、ロータ4の係止が確実に保証されるようにするために、電気機械1が起動時に負荷トルクの少ない状態または負荷トルクがない状態に達することができる場合にのみ、本方法が実施されることが意図されるのが好ましい。
【0021】
図2が示すように、互いに素の極対数に基づき、18°の倍数の角度オフセットが生じる:360°/(z
4×z
9)=18°。このとき円のオーバーフローに基づいて次のことが成り立つ:3×18°の前進角α
4は、α
4’=-2×18°の前進角にも相当する。同様にα
5=4×18°の前進角は、α
5’=-1×18°の前進角に相当することが成り立ち、すなわち、ここではロータ4の回転方向が重要となる。より良い理解のために、以下においては次の前進角を適用する:0°;18°;36°;-36°;-18°。
【0022】
制御装置11により実施される以下に説明する方法により、電流の迅速なスイッチオンが可能であることが実現され、それにより特別に短い初期化時間が保証され、永久磁石励起型の直流電動機として構成される電気機械1がスイッチオン時にほぼ動かないままに保たれ、状況によっては、電流の短い高ランプだけですでにロータ4の現在の回転角の初期化と確認のために足りる。
【0023】
前提となるのは、ブロックされた電気機械1ないしブロックされたロータ4を除外できることである。
【0024】
本例では5つの異なる磁気リング9の角度オフセットがその極対数z5=5に基づいて存在するという知見を踏まえて、最大2回の修正によって近似法で正しい回転角セグメントI~Vを判定することができる。
【0025】
そのために、ステップS1でシステムが初期化された後に、まずステップS2で、ロータ4がセグメントIの方向に調節されるように、ステータが電流によって負荷される。このときステップS3で、ロータ4が回転運動に関して監視される。部分ステップS3aで、まず、この回転運動が事前設定された回転方向へ行われているか否かがチェックされ、部分ステップS3bで、所定の回転方向と逆の方向への回転運動が行われているか否かがチェックされる。回転方向にも、回転方向と逆にも検出がなされなかったために回転運動が行われていないことがこの照会で明らかになったときは(n)、ステップS4で、ロータ4がすでに回転角セグメントIに位置していることが確認される。
【0026】
しかし、照会S3aの答えが肯定であり(j)、ロータ4が所望の回転方向へ動いているときは、ステップS5で、第1の修正角β1として2つのセグメントの分だけ電流角が反対方向へ調節され、それにより、ロータが2つの回転角セグメントの分だけ逆の方向へと回転する。ロータ4が止まったままであれば、いずれの回転方向が開始時に選択されていたかに応じて、ロータ4がシステム始動時に第3のセグメントIIIにあったことになる。このことがステップS6でチェックされる。制御された方向とは逆の方向へ機械が動いたときは(j)、ステップS7で、第2の修正角β2として1つのセグメントの分だけ電流角があらためて反対方向へ調節される。そのときロータ4が停止しなければならない。修正の方向に応じて、システム始動時には磁気リング9が第2のセグメントIIにあったことになる。ステップS6での照会で、ロータ4が動かなかったことが明らかになったときは(n)、ステップS8で、ロータが第3のセグメントに位置していたこと、および以後の制御は必要ないことが確認される。
【0027】
ステップS3bでの照会で、ロータ4が第1の回転方向と逆向きに回転したことが明らかになったときは(j)、ステップS9で、ロータが2つの回転角セグメント(β1=+36°)の分だけ逆の方向へ回転するように、ステータ7が電流によって負荷される。これに続く照会S10で、回転角運動が所望の方向に行われたか否かがあらためてチェックされる。それが該当するとき(j)、ステップS11で、ロータ4が1つの回転角セグメントβ2=-18°の分だけ第1の回転方向と反対に回転するように、ステータ7が再度電流によって負荷され、それにより、ロータ4がいま第5の回転角セグメントVにあることを確認可能である。
【0028】
ステップS10での照会で、ロータ4が動いていないことが明らかになったとき、それ以上の制御は必要なく、ステップS12で、ロータ4がすでに回転角セグメントIVにあったことが確認される。
【0029】
そのために
図3は、本実施例についての方法を表で示している。第1の列には、セグメントI~Vが列記されている。第2の列には、前進角αが記載されている。第3の列には、電流の第1のスイッチオンの後に検出される速度Ω
1が記載されている。この速度は、特にセンサ10の信号によって算出される。第4の列には、第1の修正角β
1が記載されており、第5の列には、電流の第2のスイッチオンのときに達成される速度Ω
2が記載されており、最後の列には第2の修正角β
2が記載されている。
【0030】
上述した方法ないし制御装置11は、ロータ4および磁気リング9のどのような互いに素の極対数の組合せの場合にも適用可能ないし利用可能であり、その場合、一義的な情報を得るために個々のステップが相応に適合化される。
【符号の説明】
【0031】
1 ブラシレス電気機械
2 ハウジング
3 シャフト
4 ロータ
7 ステータ
9 磁気リング
10 磁界感応センサ
11 制御装置
【手続補正書】
【提出日】2021-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)の中で回転可能に支承されたシャフト(3)に配置された少なくとも1つのロータ(4)と、ハウジング固定されたステータ(7)とを有するブラシレス電気機械(1
)であって、前記ロータ(4)には、前記シャフト(3)に回転不能に配置された多極の磁気リング(9)と、径方向で前記磁気リング(9)の外側円周にハウジング固定されて付属する少なくとも1つの磁界感応センサ(10)とを有する、無接触式に作動するロータ位置認識装置が付属する、ブラシレス電気機械において、前記ロータ(4)の極対数(z
4)と前記磁気リング(9)の極対数(z
9)とが互いに素であることを特徴とするブラシレス電気機械。
【請求項2】
前記ロータ(4)は4の極対数(z
4)を有することを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス電気機械。
【請求項3】
前記磁気リング(9)は5の極対数(z
9)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のブラシレス電気機械。
【請求項4】
前記磁気リング(9)の極対数(z
9)は前記ロータ位置認識装置の回転角セグメントの数を規定することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のブラシレス電気機械。
【請求項5】
センサの信号に依存して前記磁気リング(9)の回転角セグメントを決定し、判定された回転角セグメント(I~V)に依存して回転角(φ
mech)を決定するように特にセットアップされた制御装置(11)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のブラシレス電気機械。
【請求項6】
前記制御装置(11)は回転角セグメント(I~V)を判定するために前記ロータ(4)を第1の回転方向で第1の回転角セグメント(I)へと回転させるための第1の電流によって前記ステータ(7)を負荷し、監視装置が存在し、該監視装置によって前記ロータ(4)が回転運動に関して監視されることを特徴とする、請求項5に記載のブラシレス電気機械。
【請求項7】
前記監視装置は回転運動を回転方向に関して監視するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載のブラシレス電気機械。
【請求項8】
前記制御装置(11)は前記ロータ(4)を前記第1の回転方向と反対向きの回転方向で2つの回転角セグメント(β
1)の分だけ回転させるための第2の電流によって前記ステータ(7)を負荷し、前記監視装置が前記ロータ(4)を回転運動に関して監視することを特徴とする、請求項6または7に記載のブラシレス電気機械。
【請求項9】
前記監視装置は回転運動を回転方向に関して監視するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のブラシレス電気機械。
【請求項10】
前記ロータ(4)が前記第2の電流によって前記第1の回転方向へ回転したことを前記監視装置が認識したとき、前記制御装置(11)は前記ロータ(4)を1つの回転角セグメント(β
1)の分だけ前記第1の回転方向へ回転させるための第3の電流によって前記ステータ(7)を負荷することを特徴とする、請求項8または9に記載のブラシレス電気機械。
【請求項11】
前記ブラシレス電気機械は、ブラシレス直流モータである、請求項1から10までのいずれか1項に記載のブラシレス電気機械
【国際調査報告】