IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レンチング アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-515537セルロースフィラメント糸又は繊維から液体除去するプロセス
<>
  • 特表-セルロースフィラメント糸又は繊維から液体除去するプロセス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】セルロースフィラメント糸又は繊維から液体除去するプロセス
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/00 20060101AFI20220210BHJP
   D01D 5/06 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D01D5/06 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538188
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2019086559
(87)【国際公開番号】W WO2020136109
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】18248174.7
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピリクサマー、ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】シュレンプ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセンバウアー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ライター、エルンスト
(72)【発明者】
【氏名】ノイントイフェル、マーティン
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB04
4L035EE20
4L045AA02
4L045DA02
4L045DA32
4L045DA33
4L045DB01
4L045DC05
(57)【要約】
本発明は、リヨセルセルロース連続フィラメント糸から非常に高い製造スピードで実行可能に液体除去するプロセスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性三級アミンオキシド中におけるセルロースのリヨセル紡糸溶液からのリヨセル型セルロースフィラメント束又は糸から液体を除去するプロセスであって、前記リヨセル型セルロースフィラメント束又は糸は等式(1)が満たされるような条件下でローラの周に沿ってガイドされ(guided around a roller)、ここでa_spは296m/s以上であるプロセス、
(1) a_sp = r×ω×タイター/40
式中、rはローラの半径(m)であり、ωは角速度(1/s)であり、タイター(dtex)は束/糸のタイターであって、ただし20以上である。
【請求項2】
rは0.010~0.200mであり、好ましくは0.0125~0.150mである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記タイターは20~400dtexである、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ローラは駆動ローラである、前記請求項のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ローラはフィラメントの移動により回転(driven)する、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記リヨセル型セルロースフィラメント束又は糸は前記ローラの外周表面の12.5%(45°)以上、好ましくは25%(90°)以上と接している、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記リヨセル型セルロースフィラメント束又は糸を新たな(fresh)洗浄液と接触させる間欠的(intermittent)ステップを伴わずに、2つ又はそれ以上の液体除去用ローラが設けられている、請求項1~6のうちいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記リヨセル型セルロースフィラメント束又は糸を新たな(fresh)洗浄液と接触させる(intermittent)ステップを伴って、2つ又はそれ以上の液体除去用ローラが設けられている、請求項1~6のうちいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
液体除去の間のフィラメントの張力が、フィラメントあたり2cN以上である、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記フィラメントの張力が0.4cN/dtex以下である、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロースフィラメント糸(yarn)又は繊維(fiber)の製造に関し、つまり、脱水(例えば、洗浄液/凝固浴残渣等の除去)に関係する製造プロセスにおけるプロセスステップに関する。
【背景技術】
【0002】
連続フィラメント糸は、短繊維を用いて作られた糸から製造された生地と比べて独自の特性を有する生地を製造するために、織物産業において広く用いられている。連続フィラメント糸とは、糸の任意の長さを通じて全ての繊維が連続的である糸のことである。連続的フィラメント糸は、一般的には10~300又はそれ以上の数の個別フィラメントからなり、これらは互いに平行であり、製造される際の糸の軸にも平行である。糸は、ポリマー又はポリマー誘導体の溶液又は溶融物を押し出し、製造された糸をボビン又はリール上に巻き付けることで、又は遠心巻き付け(centrifugal winding)によりケーク(cake)を形成することで、製造される。
【0003】
剛性ポリマー連続フィラメント糸は一般的である。例えば、ナイロン連続フィラメント糸、ポリエステル連続フィラメント糸及びポリプロピレン連続フィラメント糸は、種々の生地において用いられている。これらは、製造する糸に必要なフィラメント数に対応した数の孔を有する紡糸口金を通じて溶融ポリマーを溶融紡糸することにより製造される。溶融ポリマーが固化し始めたら、ポリマー分子を配向させ糸の特性を向上させるために、糸を延伸(draw)してもよい。
連続フィラメント糸は、乾燥紡糸により二酢酸セルロース及び三酢酸セルロース等のセルロース誘導体から紡糸してもよい。ポリマーを適切な溶媒に溶解し、それから紡糸口金を通じて押し出す。押し出し後に溶媒は迅速に蒸発し、ポリマーがフィラメントの形状に凝固して糸を形成する。新たに製造された糸は、ポリマー分子を配向させるために延伸(draw)してもよい。
【0004】
連続フィラメント糸は、ビスコースプロセスを用いてセルロースから製造することもできる。セルロースは、水酸化ナトリウム及び二硫化炭素との反応によりキサントゲン酸セルロースに変換され、それから水酸化ナトリウム溶液に溶解される。一般にビスコースと呼ばれるこのセルロース溶液は、紡糸口金を通して酸浴中へと押し出される。水酸化ナトリウムは中和され、セルロースが凝固する。同時に、キサントゲン酸セルロースは酸との反応により再度セルロースへと変換される。新たに形成されたフィラメントはセルロース分子を配向させるために延伸され、フィラメントから反応物を除去するために洗浄され、乾燥されてボビンに巻き取られる。このプロセスのより早期のバージョンでは、湿潤糸は遠心巻き取り器-Topham Box-を用いてケークへと収集された。糸のケークはそれから、ボビンに巻き取られる前に、オーブンで乾燥される。
連続フィラメントセルロース糸は、キュプラプロセスを用いても製造される。セルロースは、水酸化銅アンモニウム(cuprammonium hydroxide)の溶液に溶解される。得られた溶液を水浴中に押し出し、水浴により水酸化銅アンモニウムは希釈され、セルロースが凝固する。得られた糸を洗浄、乾燥し、ボビンに巻き取る。
ビスコースプロセス又はキュプラプロセスにより製造されたセルロース連続フィラメント糸は、織り、編み、又はその他の生地形成プロセスにより生地にすることができる。製造された生地は、外套用のライニング、婦人用ブラウス及びトップス、ランジェリー、及び礼拝用ラグ(prayer rugs)を含め、種々の用途に用いられる。糸は、タイヤ及びその他のゴム製品の補強における使用のためにも製造される。
【0005】
連続フィラメントセルロース糸から構成された生地は高い艶(lustre)を有することができる。これらの生地は水分の扱いが良好で、着用者の心地よさを向上する。これらの生地は、連続フィラメント合成糸を用いて構成された生地ほどは容易に静電気を発生しない。
しかし、現在利用可能な連続フィラメントセルロース糸から構成された生地は、一般的には、物理的性質が良好でない。乾燥強度及び引き裂き強度は、ポリエステル等の合成ポリマーから構成された生地と比べて良好ではない。セルロースと水との相互作用のために、湿潤強度は乾燥強度よりもずっと低い。擦過耐性は低い。水との相互作用はセルロースを軟化もし、その糸から構成された生地を湿潤化の際に不安定なものにする。
これらの欠点のため、元々は連続フィラメントセルロース糸を用いて構成されていた製品も今や、ポリエステル及びナイロン等の合成ポリマー連続フィラメント糸を用いて主に製造されている。
【0006】
しかしながら、合成糸は実際、ある欠点を示す。それらを用いて構成した生地は、セルロース糸から構成される生地が有する水分調整能(moisture handling capability)を有さない。合成生地は、静電気を発生しうる。人によっては、合成糸から構成された衣類は、セルロース含有生地と比べて、着たときの快適性がずっと低いと考える。
したがって、連続フィラメントセルロース糸から構成される現在利用可能な生地の良い(positive)特性を有しながらも、連続フィラメント合成糸を用いて構成された生地に通常関係する性能を有する生地及びその他の繊維製品を製造することを可能とする連続フィラメントセルロース糸についての要望が存在する。
【0007】
リヨセルプロセスにより製造された連続フィラメント糸は、ビスコースプロセスにより製造されたフィラメント糸よりも顕著に高い引張強さを有することが驚くべきことに見出された。これにより、生地は、より良好な強度、引き裂き強度、及び擦過耐性を有することができる。リヨセルフィラメントが湿潤化したときの強度の喪失は、ビスコースフィラメントの場合よりもずっと小さい。このことは、リヨセル生地は、濡れたときにより変形しにくいことを意味しており、より良好な生地安定性を与える。リヨセル生地は、対応する(equivalent)ビスコース生地と比べて、濡れたときにより強い。
リヨセル連続フィラメントから製造された生地は、連続フィラメントビスコース及びキュプラ生地が有する望ましい特性である、艶、水分調整特性(moisture handling properties)、及び低い静電気発生を有しうることも、驚くべき事に発見された。
【0008】
リヨセル技術は、セルロース木材パルプ又はその他のセルロース系原料を極性溶媒(例えば、n-メチルモルホリンn-オキシド、以後「アミンオキシド」と称する)に直接溶解して粘性で高度にずり減粘性の溶液を製造することに基づいた技術であり、前記溶液は種々の有用なセルロース系材料へと形成することができる。商業的には、上記技術は、繊維産業及び不織布産業において広範に用いられているセルロース短繊維のファミリー(オーストリア国レンチング町のLenzing AGから商標TENCEL(登録商標)で市販されている)を製造するのに用いられている。リヨセル技術によるその他のセルロース製品、例えばフィラメント、フィルム、ケーシング、ビーズ、及び不織ウェブ、も開示されてきた。
【0009】
欧州特許823945B1は、リヨセルプロセスによりセルロース紡糸溶液を押出し及び凝固させること、並びにフィラメントを延伸すること、並びにフィラメントをセルロース繊維へと切断することを含む、セルロース繊維を製造するプロセスを開示しており、前記セルロース繊維は種々の分野の用途に用いることができる。
欧州特許出願公開0853146A2は、セルロース系繊維を調製するプロセスを開示している。この文献の教示によると、繊維を得るために、大きく異なる分子量を有する2つの異なる原材料を混合する。WO98/06754は類似の方法を開示しており、該方法は、最初に2つの異なる原材料を別々に溶解し、その後に、調製した溶液を混合して紡糸溶液を得る。DE19954152A1は、比較的低い温度を有する紡糸液が用いられる、繊維の調製方法を開示している。
リヨセル紡糸液から製造されたセルロースフィラメント糸の利点がこれまで記載されている(Kruger(uはウムラウト), Lenzinger Berichter 9/94, S. 49 ff.)。しかし、紡糸効率に関する要求の増大により、リヨセルプロセスにおける紡糸速度を1分当たり数百メートルの値にまで増大させようとする試みがなされてきた。
加えて、高い製造スピードにおいてさえ、製造されるフィラメント/糸/繊維が適切に洗浄されること、つまり処理材料の望まれない残留分(例えば、製造される材料には残っている必要の無い溶媒又はその他の添加物)が可能な限り除去されることが重要である。これに関し、典型的なリヨセルプロセスは、凝固浴の残留分(residual amounts)を除去するための最初のステップ、並びにその後の洗浄ステップを含む。これらのステップにおいて、フィラメント/糸/繊維から液体を除去する種々のオプションが存在し、それらオプションは当業界で用いられている。液体除去のための典型的な手段は、しばしば、フィラメント/糸/繊維に特定の機械的力を作用させる機器、例えば液体の拭き取り除去(wiping off)、液体の剥ぎ取り(stripping off)又は液体の絞り出しのための機器、の使用を含む。しかし、高い製造スピードに対する要求の増大のため、そのような液体除去のための手段はもはや適切でない場合が多く、なぜならそれらの手段は高い欠陥率につながってしまうからである。したがって、要求されている高い紡糸及び製造速度-もちろんフィラメントの品質を維持しながら-は、液体を除去するための信頼性があり一般的に使用可能な、かつ商業的に実行可能な手段がまだ知られていないという欠点を提示する。なぜなら、他のプロセス技術(ビスコース、合成フィラメント)による繊維及びフィラメントの製造に関する先行技術の教示はリヨセルプロセスには適用可能でないからである。適用可能でない理由は、押出しの直後に高度にポリマー延伸し、その後に液体交換(liquor exchange)により制御された溶媒除去を行うという厳しい要求のためである。
【0010】
したがって、連続フィラメントセルロース糸の高速調製は、新たなプロセス課題を提示する。これは主に、ずっと高い製造スピード、フィラメント均一性の要求、及び並外れたプロセス連続性の必要のためである。
・短繊維製造よりも10倍超速いフィラメント製造スピードが典型的であり、製造スピードをさらに増加させることを求める最近の要求は、プロセス制御の問題を増大させる。
・連続フィラメント糸製品においては、全ての個別フィラメントの特性は非常に狭い変動域内に収まっていなければならないが、これは例えば色素取り込みのばらつきなどの問題を防止するためである。例えば、デニール分布の分散係数は、5%未満でなければならない。一方、短繊維プロセスにおいては、個別フィラメント間の小さなばらつきを平均化によりならしてしまう余地がずっと大きい。なぜなら、各ベールの繊維は、必要な長さに切断され混合されたフィラメントから得られた数百万の個別繊維からなる構成されているからである。リヨセル短繊維の形成の例はEP823945B1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、高品質、非常に高い製造スピード、及び全体プロセスを商業的に実行可能とするプロセス制御を伴いながら、リヨセルフィラメント及びリヨセルマルチフィラメント糸からの信頼性高い液体除去を可能とするプロセスを提供することは、本開示の課題である。
【0012】
発明の簡単な説明
したがって、本発明は、請求項1に記載のプロセスを提供する。好ましい実施形態は、請求項2~10及び明細書に与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本開示に開示されたプロセスステップの模式的図示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
現在の技術における限界は、本開示に開示される発明によって乗り越えられた。つまり、本発明は、請求項1に記載の、リヨセルフィラメント及びリヨセルマルチフィラメント糸から液体を除去するプロセスを提供する。以下に、本発明を、用いられる関係するプロセスステップ及びパラメータとの関係で必要なプロセス制御を参照しながら詳細に説明する。これらのプロセスステップ及びそれらそれぞれの好ましい実施形態は適宜組み合わせることができ、たとえ本開示中に明示的な記載がなくとも、本願はそれら組み合わせをカバーし開示するものとする。
【0015】
本願発明者らは、フィラメント束又はマルチフィラメント糸が特定の条件下でローラ周に沿って(around a roller)ガイドされたならば、400m/分以上の製造スピードについて、拭き取り(wiping)、絞り(squeezing)、又は剥ぎ取り(stripping)機器を使用することを必要とせずに、フィラメント束又はマルチフィラメント糸からの良好な液体除去を可能とする望ましいプロセス制御を達成することができることを決定した。これらの条件は、束/糸内の異なるフィラメント間に、又はフィラメント自身内にトラップされた場合ですら、前記束/糸から大量の液体を除去することを確実にする。洗浄プロセスの効能は、望まれない材料がフィラメントの表面から除去されることだけでなく、フィラメント内からも除去されることを要求するため、上記の事項は重要である。このことは、最初の、凝固浴液の除去から、存在するなら後続の洗浄液(典型的には水)の除去まで、可能な限り多くの液体を良好に除去することを必要とする。洗浄液との接触の後にフィラメント束/糸に残存する洗浄液のうち非常に高い割合が除去された場合のみ、後続の洗浄ステップが必要とされるさらなる製品純化を達成できる。したがって、形成されるフィラメントに影響を与えることなく液体除去が可能な限り効率的であることが非常に重要である。
【0016】
つまり、必要とされる高い製造速度(400m/分以上)のために、本発明は、ローラ周に沿ってガイドされているフィラメントの比加速度(specific acceleration)(a_sp)を40dtexあたり296m/s以上に調整することにより、40dtex以上のフィラメント束/糸についての効率的液体除去のための手段を提供する。この比加速度は以下の等式(1)により記載することができる。

(1) a_sp = r×ω×タイター/40

式中、rはローラの半径(m)であり、ωは角速度(1/s)であり、タイター(dtex)は束/糸のタイターであって、ただし20以上である。したがって、任意の所与のタイター及び製造スピード(角速度に関係する)のための適切なプロセス条件は、上記等式を満足する条件の下で液体除去プロセスが実行されるように、変数を適切に選択することにより決定することができる。
【0017】
プロセスパラメータを上記のとおり設定することで高度に効率的な液体除去を確実なものとできることが、予想外にも見出された。これに関し、本開示に記載のプロセスは400m/分以上の製造スピード、特に400~2000m/分の製造スピード、に適用可能であることが見出された。このような高い製造スピードでは液体除去のためのローラの周に沿ってフィラメント束/糸を高速で移動させることが必要とされるが、当該高い製造スピードでも製造されたフィラメントには悪影響は主張されない。にも関わらず、上記の等式が満足される限りにおいて、望まれる効率的な液体除去が得られる。
【0018】
本発明によれば、フィラメント束/糸がそれに沿ってガイドされるローラの半径は10~200mmの範囲であることが好ましく、好ましくは12.5~150mmである。フィラメント束/糸のタイターは好ましくは20(必要な最小タイター)~500dtexの範囲であり、より好ましくは40~400dtexの範囲である。
【0019】
加えて、フィラメント束/糸はローラ外周の12.5%(45°)以上と接触していることが有利であり、25%(90°)以上と接していることがより好ましいと決定された。このことは、大量の液体がフィラメント又はフィラメント束/糸の内部から外部へと移動し、それによってスピン除去(放り出す(catapulted)/遠心除去)される、のに十分な長さの時間、フィラメント束/糸がローラ表面と接触することを確実なものとする。
【0020】
したがって、本発明は、効率的かつ簡潔な液体除去を可能とするように製造スピード、束/糸のタイター、及びローラ半径の間の関係付けを提供することによって、高い製造スピードでもフィラメント束/糸から液体を除去する効率的な手法を提供する。
【0021】
本発明の教示は、凝固浴液の最初の除去、及び/又は、存在するならその後に行われる洗浄液の除去、のために用いてもよい。本発明によれば、本開示に記載の液体除去用の1つ又は複数のローラはリヨセルマルチフィラメント糸の製造のためのプロセス中に存在してもよく、2つの液体除去用ローラの間での追加の洗浄ステップ(つまり、洗浄液との新たな接触)を伴っても伴わなくてもよい。
【0022】
上記のとおりローラが所与の製造スピードにおいてフィラメント束/糸をローラの周に沿ってガイドすることを可能とする限りにおいて、ローラの種類は、表面材料等を含め、重要ではない。リヨセルプロセスで用いられる通常のローラを用いてよい。ローラのスピードは、典型的にはフィラメント束/糸のスピードと概ね同じであり、ローラはローラの動きを生み出す手段を含んでいても(駆動ローラ)、あるいはフィラメントの移動がローラの動きを生み出してもよい。ローラスピードとフィラメントスピードが実質的に同じという用語は、本発明によれば、両スピードが互いからプラスマイナス10%以内の差異であり、より好ましくはプラスマイナス5%以内の差異であることを意味する。フィラメント張力については、フィラメント張力が2cN以上である場合に有利であることが見出された。
以下の実施例は本発明をさらに例示説明するものである。
【0023】
リヨセルフィラメント紡糸プロセスからのマルチフィラメント糸を、本発明に従って、洗浄水との接触後に液体除去ステップに供した。関係するプロセスパラメータ(vは製造スピードである)を以下の表にまとめて示す。記入されている「A」は、液体除去後に問題/欠陥が検出されなかったこと、加えて液体の大部分が実際にフィラメント束/糸から除去されたことを示す。
【0024】
【表1】

図1
【国際調査報告】