(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】読出し信号発生器および容量型装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/24 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
G01D5/24 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542350
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2020051258
(87)【国際公開番号】W WO2020152091
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019200923.9
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】デッセル,ケリン
(72)【発明者】
【氏名】シェリング,クリストフ
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077AA36
2F077HH08
2F077TT33
2F077TT82
2F077UU18
2F077UU21
(57)【要約】
本発明は、容量型装置(12)用の読出し信号発生器(10)、並びに、パルス周波数(tvar)を有するパルス読出し信号を、容量型装置(12)の少なくとも1つのコンデンサ装置(CsenseおよびCref)が直接的または間接的に電気的に接続されている読出し信号チャネル(17)で提供して、固有振動周期tresの固有振動を有する容量型装置(12)の少なくとも1つのコンデンサ装置(CsenseおよびCref)を、パルス読出し信号によって読み出す容量型装置(12)の動作方法に関する。パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスは、互いに時間的にオフセットされたn個の電圧ステージで読出し信号チャネル(17)に接続され(nは2以上の自然数)、連続して接続された2つの電圧ステージの間で、それぞれ時間オフセット△tiが維持され、電圧ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△tiについて、式(1)が成立する(mは0以上の自然数)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量型装置(12)用の読出し信号発生器(10)であって、
読出し信号発生器内部のクロック生成部または読出し信号発生器外部のクロック生成部(16)によって設定されたパルス周波数(t
var)を有するパルス読出し信号を、前記読出し信号発生器(10)の読出し信号チャネル(17)に供給して、前記読出し信号チャネル(17)に直接的または間接的に電気的に接続されて固有振動周期t
resの固有振動を有する前記容量型装置(12)の少なくとも1つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)を、前記パルス読出し信号によって読み出し可能であるように、前記クロック生成部を用いて制御可能である電圧信号生成装置(14)
を備え、
前記電圧信号生成装置(14)は、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスを、互いに時間的にオフセットされたn個の電圧ステージで前記読出し信号チャネル(17)に接続するように構成され(nは2以上の自然数)、
連続して接続された2つの電圧ステージの間で時間オフセット△t
iがそれぞれ存在し、前記電圧ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△t
iについて、
【数1】
が成立する(mは0以上の自然数)ことを特徴とする、読出し信号発生器(
10)。
【請求項2】
パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスに対して最大パルス強度V
pulsが定義可能であり、前記電圧信号生成装置(14)は、前記電圧パルスの前記n個の電圧ステージを、それぞれ等しいまたは異なる電圧ステージ高さ△V
iで、
【数2】
が成立するように前記読出し信号チャネル(17)に接続するように構成さ
れている、請求項1に記載の読出し信号発生器(10)。
【請求項3】
前記電圧信号生成装置(14)は、前記電圧パルスの前記n個の電圧ステージを、それぞれ同じ電圧ステージ高さ△V
i=V
puls/nで前記読出し信号チャネル(17)に接続するように構成されている、請求項2に記載の読出し信号発生器(10)。
【請求項4】
前記電圧信号生成装置(14)は、前記パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスを、互いに時間的にオフセットされたn
e個の電圧降下ステージで低減させるように構成されており、n
eは2以上の自然数であり、連続して実施される2つの電圧降下ステージの間には、それぞれ時間オフセット△te
iが存在し、前記電圧降下ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△te
iについては、
【数3】
が成立する(m
eは0以上の自然数)、請求項1から3のいずれか一項に記載の読出し信号発生器(10)。
【請求項5】
前記電圧信号生成装置(14)はn個のステージを含み、前記n個のステージの各々が、前記パルス読出し信号の前記電圧パルスの前記n個の電圧ステージの1つを前記読出し信号チャネル(17)にそれぞれ接続するように、互いに時間的にずれて起動可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の読出し信号発生器(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の読出し信号発生器(10)と、
前記固有振動周期t
resの固有振動を有し、前記読出し信号チャネル(17)に直接的または間接的に電気的に接続され、前記読出し信号チャネル(17)に供給される前記パルス読出し信号によって読み出し可能である前記少なくとも1つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)と
を備えた容量型装置(12)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)として、少なくとも2つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)が含まれ、前記少なくとも2つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)は、それぞれ同じ前記固有振動周期t
resの固有振動を有する、請求項6に記載の容量型装置(12)。
【請求項8】
前記少なくとも2つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)として、少なくとも1つの測定コンデンサ装置(C
sense)と、少なくとも1つの基準コンデンサ装置(C
ref)とを備えた請求項7に記載の容量型装置(12)。
【請求項9】
容量型圧力センサ、容量型加速度センサ、容量型回転速度センサまたはマイクロフォンである、請求項6から8のいずれか一項に記載の容量型装置(12)。
【請求項10】
容量型装置(12)の動作方法であって、
パルス周波数(t
var)を有するパルス読出し信号を、前記容量型装置(12)の少なくとも1つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)が直接的または間接的に電気的に接続されている読出し信号チャネル(17)で提供するステップと、
固有振動周期t
resの固有振動を有する前記容量型装置(12)の前記少なくとも1つのコンデンサ装置(C
senseおよびC
ref)から前記パルス読出し信号によって読み出すステップと
を備え、
前記パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスが、互いに時間的にオフセットされたn個の電圧ステージで前記読出し信号チャネル(17)に接続され(nは2以上の自然数)、連続して接続された2つの電圧ステージの間には、前記電圧ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△t
iについて、
【数4】
が成立するように(mは0以上の自然数)、それぞれ時間オフセット△t
iが維持される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量型装置用の読出し信号発生器に関する。同様に、本発明は容量型装置に関する。さらに本発明は、容量型装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、例えばDE102016107299A1(独国特許出願公開第102016107299号明細書)に記載されている励振信号発生器のような、容量型装置から読み出すための信号発生器が公知である。
図1は、従来技術に係る容量型装置から読み出すための信号発生器の動作方法を説明するための図である。
【0003】
以下に説明する従来の信号発生器は、例として、信号発生器がパルス動作時のパルス電圧信号によって容量型測定装置から読み出すことにより、1つの測定用容量(のみ)を有する容量型測定器を動作させる。
図1の図示において、横軸は時間軸tであり、縦軸によって、パルス動作で動作する容量型測定装置の測定用容量の(アナログ)応答信号の電圧強度Uが示されている。
図1の図示から分かるのは、パルス電圧信号が、測定用容量の調整可能な少なくとも1つの電極部品を機械的に励振することにより、従来技術に係る信号発生器のパルス電圧信号が、測定用容量を読み出す際に測定用容量の応答信号に(過渡的な)ノイズを発生させていることである。従来の信号発生器のパルス電圧信号は、意図せずに測定用容量の機械的な固有モードを励起することが多い。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する容量型装置用の読出し信号発生器、請求項6の特徴を有する容量型装置、および請求項10の特徴を有する容量型装置の動作方法を提供する。
【0005】
本発明は、例えば容量型センサ装置またはマイクロフォンなどの容量型装置の(略)ノイズフリー/過渡ノイズフリーのパルス動作をもたらす手段を提供する。このようにして、特にパルス動作時の容量型装置の低エネルギー消費などの容量型装置のパルス動作の利点を、容量型装置の読み出し時にそれぞれの測定信号に(過渡的な)ノイズが発生することなく利用することができる。したがって、本発明は、潜在的なユーザがパルス動作で動作する容量型装置の採用をより頻繁に決定するようになるため、エネルギー節約に寄与するものである。
【0006】
読出し信号発生器の有利な一実施形態では、パルス読出し信号の各電圧パルスに対して最大パルス強度V
pulsが定義可能であり、電圧信号生成装置は、電圧パルスのn個の電圧ステージを、それぞれ等しいまたは異なる電圧ステージ高さ△V
iで、次式が成立するように読出し信号チャネルに接続するように構成されている。
【数1】
【0007】
特に、電圧信号生成装置は、電圧パルスのn個の電圧ステージを、それぞれ同じ電圧ステージ高さ△V
i=V
puls/nで読出し信号チャネルに接続するように構成できる。読出し信号チャネルへの電圧信号の接続を、同じ電圧ステージ高さと時間オフセット
【数2】
とを有する少なくとも2つの部分ステップで行うことにより、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置が固有振動周期t
resで固有振動するように励起することが打ち消され、したがって、より低ノイズの信号検出に寄与するものである。
【0008】
読出し信号発生器の有利な一実施形態では、電圧信号生成装置は、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスを、互いに時間的にオフセットされたn
e個の電圧降下ステージで低減させるように構成されている。ここでn
eは2以上の自然数である。連続して実施される2つの電圧降下ステージの間には、時間オフセット△te
iがそれぞれ存在し、電圧降下ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△te
iに対しては、次式が成立する。
【数3】
ここでm
eは0以上の自然数である。
【0009】
本明細書で記載した方法により、パルス読出し信号の最大パルス強度を減少/低減させる際に、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置が固有振動周期tresで固有振動するように励起することを回避することができる。
【0010】
好ましくは、電圧信号生成装置は、n個のステージを含み、n個のステージの各々が、パルス読出し信号の電圧パルスのn個の電圧ステージの1つを読出し信号チャネルにそれぞれ接続するように、互いに時間的にオフセットして起動可能である。本明細書で記載したn個のステージの電圧信号生成装置は、比較的安価に製造可能であり、必要とする設置スペースも比較的小さい。したがって、本明細書に記載した電圧信号生成装置の実施形態は、容易に容量型装置内または容量型装置に離接して設置することができる。
【0011】
先行して記載した読出し信号発生器の実施形態の利点は、このような読出し信号発生器と、固有振動周期tresの固有振動を有し、読出し信号チャネルに直接的または間接的に電気的に接続されて読出し信号チャネルに供給されるパルス読出し信号によって読み出し可能である少なくとも1つのコンデンサ装置と、を備えた容量型装置においても確保されている。
【0012】
有利な一実施形態では、容量型装置は、その少なくとも1つのコンデンサ装置として、少なくとも2つのコンデンサ装置を含み、少なくとも2つのコンデンサ装置はそれぞれ、同一の固有振動周期tresの固有振動を有する。したがって、容量型装置の少なくとも2つのコンデンサ装置をノイズフリー/過渡ノイズフリーで読み出すために、同じパルス読出し信号を利用することができる。
【0013】
例えば、容量型装置は、少なくとも2つのコンデンサ装置として、少なくとも1つの測定コンデンサ装置と、少なくとも1つの基準コンデンサ装置とを含むことができる。したがって、本明細書に記載された発明は、基準測定値を考慮して測定を行う場合にも適用可能である。
【0014】
好ましくは、容量型装置は、容量型圧力センサ、容量型加速度センサ、容量型回転速度センサ、またはマイクロフォンである。しかしながら、本明細書に記載された容量型装置の実施例は、決定的に解釈されるものではないことに留意されたい。
【0015】
さらに、容量型装置を動作させるための対応する方法を実施しても、上で既に説明した利点がもたらされる。本方法は、上記の読出し信号発生器および/または容量型装置の実施形態にしたがってさらに構成可能であることに留意されたい。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点を、以下に図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来技術に係る容量型装置から読み出すための信号発生器の動作方法を説明する図である。
【
図2a】容量型装置の動作方法の一実施形態を説明するための図である。
【
図2b】容量型装置の動作方法の一実施形態を説明するための図である。
【
図2c】容量型装置の動作方法の一実施形態を説明するための図である。
【
図2d】容量型装置の動作方法の一実施形態を説明するための図である。
【
図3a】読出し信号発生器、またはそれと協働する容量型装置の一実施形態の概略的な部分図および全体図である。
【
図3b】読出し信号発生器、またはそれと協働する容量型装置の一実施形態の概略的な部分図および全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2a~
図2dは、容量型装置の動作方法の一実施形態を説明するための図である。
【0019】
以下に説明する方法は、少なくとも1つのコンデンサ装置を有する各容量型装置に使用可能である。少なくとも1つのコンデンサ装置は、それぞれ2つの電極部品からなる電気装置であると理解でき、2つの電極部品のうち少なくとも1つは、2つの電極部品間に接続される容量が変化するように変形および/または調節可能である。単に一例として、以下に説明する方法は、その少なくとも1つのコンデンサ装置が、それぞれアクチュエータ電極としての膜と、それぞれ固定されたステータ電極とを含む容量型装置に対して実施されるものである。
【0020】
容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置では、それぞれその2つの電極部品のうちの少なくとも1つが、固有振動周期tresの固有振動と呼ばれ得る機械的な振動を有する。さらに、少なくとも1つのコンデンサ装置のこのような動作状態は、固有振動周期tresを有する少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動と呼ばれる。特に、固有振動周期tresは、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の基本モードの固有振動周期であると理解できる。したがって、固有振動周期tresは、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の基本モードの周波数の逆数であればよい。
【0021】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、容量型装置のパルス動作のために、パルス周波数を有するパルス読出し信号が、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置が直接的または間接的に電気的に接続された読出し信号チャネルで提供される。パルス読出し信号のパルス周波数は、容量型装置のパルス動作中に時間的に一定のパルス周波数であってもよいし、または容量型装置のパルス動作中に時間的に変化するパルス周波数であってもよい。パルス読出し信号は、好ましくは、(略)矩形のパルス形状を有する電圧信号であると理解できる。パルス読出し信号の電圧パルスの各々について、パルス期間/パルス長tpulsが定義されてもよく、パルス電圧信号の複数の電圧パルスは、容量型装置のパルス動作中に、選択的に同じパルス期間tpulsまたは異なるパルス期間tpulsを有してもよい。
【0022】
容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置は、パルス読出し信号によって読み出される。このように、パルス読出し信号は、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の動作原理/測定原理が一般的に連続的な電流供給を必要としないため、少なくとも1つのコンデンサ装置の読み出しにのみ使用される。しかし、従来は、少なくとも1つのコンデンサ装置は、その読み出し時に固有振動周期t
resの固有振動になることが多い。しかし、本明細書に記載される方法の一実施形態では、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスが、互いに時間的にオフセットされたn個の電圧ステージで読出し信号チャネルに接続されることにより、固有振動周期t
resを有する少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の励起が打ち消される。ここで、nは2以上の自然数である。さらに、連続して接続された2つの電圧ステージの間には、少なくとも1つの時間オフセット△t
iに対してこれら電圧ステージ間に以下の式(Gl.1)が成立するように、それぞれ時間オフセット△t
iが維持される。
【数4】
【0023】
ここで、mは0以上の自然数である。したがって、少なくとも1つの時間オフセット△tiは、△tmin=tres/nから△tmax=△tmin+m△tiまでの間の数値範囲にありる。ここで、mは、△tmaxがそれぞれのパルス期間tpulsよりも著しく小さくなるように選択されることが好ましい。(パルス期間tpulsは、n個の電圧ステージの読出し信号チャネルへの接続が完了してから、後に読出し信号チャネルに接続された電圧が減少/低減するまでの時間である。)
【0024】
n個の電圧ステージは、それぞれ電圧ステージの高さ△V
iを有しており、式(Gl.2)は、n個の電圧ステージの電圧ステージの高さ△V
iの和に対して成立するものである。
【数5】
【0025】
ここで、Vpulsは、読み出しチャネルに既に接続された電圧パルスの最大パルス強度である。
【0026】
したがって、パルス読出し信号の電圧パルスの読出し信号チャネルへの総接続時間t
totalは、以下の式(Gl.3)によって計算される。
【数6】
【0027】
したがって、時刻t
0で開始されたパルス読出し信号の電圧パルスのn個の電圧ステージが接続される間、読出し信号チャネルに現在接続されている電圧V(t)は、式(Gl.4)にしたがってt
0<t<t
0+t
totalで次式のようになる。
【数7】
【0028】
ここで、jはn以下の最大の自然数で、次式が成立する。
【数8】
【0029】
好ましくは、△tiからの偏差δに対して、△ti:|δ|<<tres/2n2が成立する。この場合、本明細書で記載された方法は特に高いロバスト性を有する。
【0030】
図2aの図示では、パルス読出し信号における電圧パルスのn個のステージの接続を例として2ステージ接続として図で再現しており、mは0に等しい。
図2aの図示では、横軸はそれぞれ時間軸tであり、一方、縦軸によって、読出し信号チャネルに接続される電圧V(t)が表されている。
【0031】
時刻t
0で、第1の電圧ステージが読み出しチャネルに接続される。第1の電圧ステージは、
図2bの図示の縦軸によって表されるように、アクチュエータ電極としてそれぞれ使用される容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置のダイヤフラムの第1の加速度a
1をトリガする(
図2bの図示の横軸は時間軸tである)。これは、t
0の時刻での第1の電圧ステージが、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動周期t
resの固有振動を励起すると言い換えることもできる。
【0032】
時間オフセットt
iの後、時刻t
0+△t
iで、第2の電圧ステージが読み出しチャネルに接続される。第2の電圧ステージは、
図2cの図示の縦軸によって表されているように、アクチュエータ電極としてそれぞれ使用される少なくとも1つのコンデンサ装置のダイヤフラムの第2の加速度a
2を励起する(
図2cの図示の横軸はまた時間軸tである)。
【0033】
例として、時刻t0と時刻t0+△tiとの間には、固有振動周期tresの半分の「理想的な」時間オフセットtres/2が存在する。そのため、第2の加速度a2では、第1の加速度a1と位相が逆になる。このように、第2の電圧ステージは、時刻t0+△ti以降の時刻t0で第1の電圧ステージによって励起された、固有振動周期tresを有する容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動を「減衰」させる作用がある。
【0034】
図2dの図示では横軸は時間軸tであり、一方、縦軸によって、アクチュエータ電極としてそれぞれ使用される少なくとも1つのコンデンサ装置のダイヤフラムの、時刻t
0以降のそのそれぞれの静止位置からの加速度a(t)の積分値∫2a(t)dtが表されている。
図2dの図示内容から、少なくとも1つのコンデンサ装置のそれぞれのダイヤフラムは、時刻t
0+△t
i以降、(略)動かないままであることが分かる。
【0035】
先行する2段落で記載した「減衰」の原理は、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスが3段階またはより多段階で接続される場合にも適宜作用する。それぞれの電圧パルスが少なくとも3つの連続的に接続した電圧ステージによって接続された場合でも、例えば、アクチュエータ電極としてそれぞれ使用される容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置のダイヤフラムは、(遅くとも)総接続時間ttotal以降(略)動かないままである。この有利な「減衰」は、比較的短い減衰時間の後に既に存在しており、この減衰時間は総接続時間ttotalに(略)等しい。減衰時間が短いことで、パルス読出し信号によってパルス動作で動作する容量型装置のノイズが低減する。
【0036】
好ましくは、それぞれの電圧パルスのn個の電圧ステージは、それぞれの電圧ステージの同一高さ△Vi=Vpuls/nを有する。それぞれの電圧パルスのn個の電圧ステージを接続する際のこのような方法は、固有振動周期tresを有する容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の特に有利な「減衰」をもたらす。
【0037】
また、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスが3個のステージまたはより多数のステージで接続される場合、n個の電圧ステージは、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスの総接続時間ttotal内に可能な限り均等に分布していることが好ましい。n個の電圧ステージを等間隔で分配することで、さらに、固有振動周期tresを有する容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の有利な「減衰」が向上する。特に、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスを3個のステージまたはより多数のステージに接続する場合、電圧ステージ間の少なくとも2つの時間オフセット△tiのすべてについて、△ti=ttotal/(n-1)が成立し得る。
【0038】
本明細書に記載された方法によってもたらすことができる、固有振動周期tresを有する容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の「減衰」は、容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置によって読み出される電気的な応答信号のノイズ/過渡ノイズの発生を防止する。このように、本明細書に記載された方法を実施することで、容量型装置の応答信号の評価も容易になる。さらに、本明細書に記載された方法を実施する際に得られる応答信号のノイズ/過渡ノイズがないことは、応答信号を参照して少なくとも1つの測定値を決定する際の精度の向上および/またはエラーのリスクの低減に寄与する。好ましくは、読出し信号は、n個の電圧ステージがすべて接続された後、すなわち、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスの総接続時間ttotal後に初めて取得される。
【0039】
また、読出し信号チャネルに接続されたパルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスの電圧の、その後の減少/低減は、互いに時間的にオフセットされたn
e個の電圧降下ステージで行うことができる。ここでn
eは2以上の自然数である。さらに、連続して実施される2つの電圧降下ステージの間で、少なくとも1つの時間オフセット△te
iについてこれら電圧降下ステージ間で以下の式(Gl.5)が成立するように、それぞれ時間オフセット△te
iを維持することができる。
【数9】
【0040】
ここで、m
eは0以上の自然数である。n
e個の電圧降下ステージは、それぞれ電圧降下ステージの高さ△Ve
iを有することができ、この場合、式(Gl.6)は、n
e個の電圧降下ステージの高さ△Ve
iの総和に対して成立する。
【数10】
【0041】
好ましくは、n
e個の電圧降下ステージは、それぞれ電圧降下ステージの同一高さ△Ve
i=V
puls/nを有する。したがって、読出し信号チャネル上のパルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスの総遮断時間te
totalは、以下の式(Gl.7)によって計算される。
【数11】
【0042】
読出し信号チャネルに接続されたパルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスの電圧を3段階またはより多段階で減少/低減させる場合には、ne個の電圧降下ステージも、それぞれの電圧パルスの総遮断時間tetotal内で可能な限り等間隔で分布していることが好ましい。特に、△tei=ttotal/(ne-1)が成立し得る。
【0043】
パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスの減少/低減が時刻te
0で開始される限り、式(Gl.8)によって、読出し信号チャネルに現在接続されているte
0<t<te
0+t
totalの電圧V(t)について次式が成立する。
【数12】
【0044】
ここで、jはn
e以下の最大自然数であり、次式が成立する。
【数13】
【0045】
また、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスを減少/低減させる際の、本明細書に記載の方法は、固有振動周期tresを有する容量型装置の少なくとも1つのコンデンサ装置の固有振動の特に有利な「減衰」を引き起こす。
【0046】
図3aおよび
図3bは、読出し信号発生器、またはそれと協働する容量型装置の一実施形態の概略的な部分図および全体図を示す。
【0047】
また、
図3aに概略的に示す読出し信号発生器10は、容量型装置12の励振信号発生器と呼ばれることもある。読出し信号発生器10は、容量型装置12の一部であってもよい。しかし、同様に、読出し信号発生器10は、それと協働する容量型装置12とは別に取り付けられてもよい。
【0048】
読出し信号発生器10は、少なくとも1つの電圧信号生成装置14を有し、この電圧信号生成装置14は、クロック生成部16によって制御可能である。なお、クロック生成部16は、読出し信号発生器内部クロック生成部であってもよいし、または読出し信号発生器外部クロック生成部16であってもよい。電圧信号生成装置14は、クロック生成部16によって設定されたパルス周波数tvarを有するパルス読出し信号を読出し信号発生器10の読出し信号チャネル17に供給するように、クロック生成部16によって制御可能である。読出し信号チャネル17に直接的または間接的に電気的に接続されている容量型装置12の少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefは、パルス読出し信号によって読み出し可能である。ただし、少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefは、固有振動周期tresの固有振動も有する。特に、固有振動周期tresは、少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefの固有振動の基本モードの固有振動周期であると理解することができる。
【0049】
電圧信号生成装置14は、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスを、互いに時間的にオフセットされたn個の電圧ステージで読出し信号チャネル17に接続するように構成されている。nは2以上の自然数である。さらに、電圧信号生成装置14は、連続して接続された2つの電圧ステージの間で、それぞれ時間オフセット△t
iを維持するように構成されており、電圧ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△t
iについて、既に上で引用した次の式(Gl.1)が成立する。
【数14】
ここで、mは0以上の自然数である。
【0050】
したがって、本明細書に記載の読出し信号発生器10はまた、固有振動周期tresを有する容量型装置12の少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefの固有振動を、「減衰」させる。また、少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefから読み出される応答信号は、それゆえ従来技術に比べてノイズが大幅に少なくなっている。本明細書で記載した読出し信号発生器10の使用により、容量型装置12は特に低ノイズの応答信号を提供する。読出し信号発生器10を使用する際には、応答信号の過渡的なノイズを抑制するためのさらなる対策を講じる必要はない。読出し信号発生器10を用いることで低ノイズの信号判定が可能となるため、それぞれ判定された容量型装置12の応答信号の評価には、低コストで必要な設置スペースの少ない評価装置18~22を用いることができる。
【0051】
また、電圧信号生成装置14は、低コストで必要な設置スペースを少なく構成することができる。例えば、電圧信号生成装置14は、n個のステージの各々が、パルス読出し信号の電圧パルスのn個の電圧ステージのうちの1つを読出し信号チャネル17にそれぞれ接続するように、互いに時間的にずらして起動できるn個のステージを含んでいてもよい。
【0052】
原則として、最大パルス強度V
pulsは、パルス読出し信号の各電圧パルスに対して定義することができ、電圧信号生成装置14は、既に上述した以下の式(Gl.2)が成立するように、電圧パルスのn個の電圧ステージを、同一または異なる電圧ステージ高さ△V
iで、それぞれ読出し信号チャネル17に接続するように構成されている。
【数15】
【0053】
好ましくは、電圧信号生成装置14は、電圧パルスのn個の電圧ステージを、それぞれ同じ電圧ステージ高さ△Vi=Vpuls/nで読出し信号チャネル17に接続するように構成されている。本明細書に記載された方法は、さらに、固有振動周期tresを有する容量型装置12の少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefの固有振動を「減衰」させることに寄与する。
【0054】
容量型装置12は、その少なくとも1つのコンデンサ装置C
senseおよびC
refとして、少なくとも2つのコンデンサ装置C
senseおよびC
refを含んでいてもよい。好ましくは、少なくとも2つのコンデンサ装置C
senseおよびC
refは、それぞれ同じ固有振動周期t
resの固有振動を有する。また、少なくとも2つのコンデンサ装置C
senseおよびC
refは、ホイートストンブリッジ24aおよび24bの形態で相互に接続されていてもよい(
図3b参照)。さらに、少なくとも2つのコンデンサ装置C
senseおよびC
refは、少なくとも1つの測定コンデンサ装置C
senseおよび少なくとも1つの基準コンデンサ装置C
refであってもよい。少なくとも1つの測定コンデンサ装置C
senseでは、その2つの電極部品のうちの少なくとも1つが、それぞれの測定コンデンサ装置C
senseによって決定される測定値に応じて、変形および/または調整可能であり、測定コンデンサ装置C
senseの2つの電極部品の間に印加される容量が変化するようになっている。
【0055】
一方で、少なくとも1つの基準コンデンサ装置Crefでは、それぞれの測定変数に応じてその2つの電極部品の変形または調整が(略)防止される。
【0056】
容量型装置12は、容量型圧力センサ、容量型加速度センサ、容量型回転速度センサ、またはマイクロフォンであってもよい。単に一例として、
図3aおよび
図3bの実施形態では、容量型装置12は、2つのホイートストンブリッジ24aおよび24bを有する容量型圧力センサであり、2つのホイートストンブリッジ24aおよび24bの各々は、各2つの測定コンデンサ装置C
senseおよび各2つの基準コンデンサ装置C
refを有する(改善構成として、
図3bに示したコンデンサ装置C
senseおよびC
refの各々に対して、並列接続された複数のコンデンサ装置C
senseおよびC
refを2つのホイートストンブリッジ24aおよび24bに組み込むこともできる)。測定コンデンサ装置C
senseはそれぞれ、アクチュエータ電極として使用され、その外表面において優勢な圧力ために、基準圧力キャビティにアーチ状に入り得る、および/または、基準圧力キャビティからアーチ状に突出し得るダイヤフラムを有し、対向電極は、測定コンデンサ装置C
senseの各ダイヤフラムとそれに割り当てられた対向電極との間に圧力に応じた容量が印加されるように、測定コンデンサ装置C
senseの各基準圧力キャビティに配置されている。一方、基準コンデンサ装置C
refは「固定容量」として構成されており、そのダイヤフラムと割り当てられた対向電極との間で印加される容量は、(略)圧力に依存しない。
【0057】
読出し信号発生器10による2つのホイートストンブリッジ24aおよび24bの読み出し中に、2つのホイートストンブリッジ24aおよび24bからの信号を合計して、応答信号を生成してもよい。信号増幅器18は、応答信号を増幅してもよい。その後、増幅された応答信号は、ADC変換器20によってデジタル信号に変換されてもよい。フィルタ22は、複数のパルスにわたってデジタル信号を平均化してもよい。
【0058】
有利な改善構成として、電圧信号生成装置14は、パルス読出し信号の各電圧パルスを、互いに時間的にオフセットされたn
e個の電圧降下ステージで低減させるように構成することもできる。ここで、n
eは2以上の自然数である。2つの連続して実施される電圧降下ステージの間には、それぞれの時間オフセット△te
iが存在し、電圧降下ステージの間の少なくとも1つの時間オフセット△te
iについてそれぞれ上述の以下の式(Gl.5)が成立する。
【数16】
【0059】
ここで、meは0以上の自然数である。固有振動周期tresを有する容量型装置12の少なくとも1つのコンデンサ装置CsenseおよびCrefの固有振動の有利な「減衰」は、したがって、パルス読出し信号のそれぞれの電圧パルスが減少/低減された場合にも効果をもたらすことができる。
【0060】
また、読出し信号発生器10/その電圧信号生成装置14は、上記の方法ステップのさらなる方法ステップを実施するように構成されていてもよい。これらの方法ステップを繰り返し記載することは、ここでは省略する。
【国際調査報告】