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特表2022-519250電気液圧による動力式車両ブレーキ装置
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  • 特表-電気液圧による動力式車両ブレーキ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】電気液圧による動力式車両ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20220314BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20220314BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20220314BHJP
   B60T 15/48 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
B60T8/34
B60T13/138 A
B60T17/00 Z
B60T15/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544690
(86)(22)【出願日】2019-11-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019083200
(87)【国際公開番号】W WO2020160811
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】102019201536.0
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】フォレルト,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブレッサー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハグスピエル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リートミュラー,ヨルグ
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB06
3D048BB59
3D048CC41
3D048DD02
3D048HH14
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH32
3D048HH66
3D048HH75
3D048QQ07
3D048RR06
3D049BB04
3D049BB39
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH20
3D049HH26
3D049HH39
3D049HH41
3D049HH42
3D049HH47
3D049QQ04
3D049RR04
3D246BA02
3D246CA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GA17
3D246GB01
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA45A
3D246LA33Z
3D246LA44Z
3D246LA57Z
3D246LA61Z
3D246LA63Z
3D246MA21
(57)【要約】
電気液圧による動力式車両ブレーキ装置(1)の動力式ブレーキ圧発生器(3)のピストンシリンダユニット(5)を、圧力制限弁(26)と制御可能な弁(27)とによって無圧のブレーキ液貯留容器(10)と結合させる。前記圧力制限弁(26)は、前記動力式ブレーキ圧発生器(3)による増圧中に前記車両ブレーキ装置(1)の液圧式車輪ブレーキ(2)の吸入弁(14)が閉じられるときの、前記車両ブレーキ装置(1)内での圧力ピークを阻止する。前記制御可能な弁(27)により、スリップコントロール中にブレーキ液を前記ブレーキ液貯留容器(10)から順次吸い込むことまたは排出させる。
【選択図】 図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器(3)を備え、前記動力式ブレーキ圧発生器に少なくとも1つの液圧式車輪ブレーキ(2)が吸入弁(14)を介して接続されている、電気液圧による動力式車両ブレーキ装置において、前記動力式ブレーキ圧発生器(3)が、前記動力式ブレーキ圧発生器(3)内の圧力を制限する圧力制限弁(26)を有していることを特徴とする電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項2】
前記動力式ブレーキ圧発生器(3)が制御可能な弁(27)を有し、前記制御可能な弁内に前記圧力制限弁(26)が統合され、または、前記制御可能な弁に対し液圧的に並列に前記圧力制限弁(26)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項3】
前記圧力制限弁(26)の開弁圧が調整可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項4】
前記圧力制限弁(26)と前記制御可能な弁(27)とが、前記動力式ブレーキ圧発生器(3)を無圧のブレーキ液貯留容器(10)と結合させていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項5】
前記動力式ブレーキ圧発生器(3)がピストンシリンダユニット(5)を有し、そのピストン(6)がただ1つのピストンパッキン(28)だけを用いて前記ピストンシリンダユニット(5)のシリンダ(9)内で密封されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項6】
前記車両ブレーキ装置(1)が筋力式または補助力式ブレーキ圧発生器(22)を有し、前記筋力式または補助力式ブレーキ圧発生器を用いて前記車輪ブレーキ(2)が操作可能であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置を作動させる方法であって、前記車両ブレーキ装置(1)がスリップコントロールを実行し、スリップコントロール中に前記制御可能な弁(27)を一時的に開くことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、制御可能な弁(27)が開いている間に、ピストンシリンダユニット(5)のピストン(6)を移動させることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の構成を備えた、電気液圧による動力式車両ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筋力式ブレーキマスタシリンダと電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器とを備えた、電気液圧による動力式車両ブレーキ装置を開示している。電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器はピストンシリンダユニットを有し、そのピストンは、ブレーキ圧発生のため、ねじ式伝動装置を介して電動機によりピストンシリンダユニットのシリンダ内で変位可能である。常用制動は、動力式ブレーキ圧発生器によってブレーキ圧を増圧する動力制動として行われ、その際ブレーキマスタシリンダはブレーキ圧に対する目標値設定器として用いられる。ブレーキマスタシリンダを操作しない自律式動力制動も同様に可能である。動力式ブレーキ圧発生器の不具合時または故障時には、ブレーキマスタシリンダを用いて筋力によって車両ブレーキ装置を操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/150120A1号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
請求項1の構成を備えた、本発明の電気液圧による動力式車両ブレーキ装置は、電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器を有し、動力式ブレーキ圧発生器には液圧式車輪ブレーキが吸入弁を介して接続されている。車両ブレーキ装置は、少なくとも1つの液圧式車輪ブレーキ、好ましくは複数の液圧式車輪ブレーキを有し、その際好ましくは各車輪ブレーキに1つの吸入弁が付設されている。択一的に、複数の車輪ブレーキまたはすべての車輪ブレーキが1つの吸入弁に接続されていてもよい。
【0005】
本発明による車両ブレーキ装置は、1つのブレーキ回路、または、それぞれ1つまたは複数の車輪ブレーキを備えた複数のブレーキ回路を有していてよい。乗用車に対しては、車両ブレーキ装置は、特に、それぞれ2つの車輪ブレーキを備えた2つのブレーキ回路を有している。
【0006】
圧力制限弁は、動力式ブレーキ圧発生器内の圧力を制限する。これにより、車両ブレーキ装置を損傷または破壊させることがある、車両ブレーキ装置内の許容しがたいほどの高い圧力が回避される。特に、車両ブレーキ装置の許容最大圧以下の、動力式ブレーキ圧発生器による高速で且つ大きなブレーキ圧増圧の場合には、許容最大圧に到達したときに動力式ブレーキ圧発生器をオフにし、車輪のロックを避けるために吸入弁を閉じると、動力式ブレーキ圧発生器が動的作用によってブレーキ圧をさらに許容最大圧の50%まで或いはそれ以上に増圧させることがある。動力式ブレーキ圧発生器の駆動方向の逆転を意味する逆方向通電は、車両ブレーキ装置内の許容最大圧を越えることを低減させるものの、それを阻止するものではない。本発明による圧力制限弁は、許容最大圧を越えることを回避させる。
【0007】
従属請求項は、請求項1に記載した本発明の有利な構成および更なる構成を対象としている。
【0008】
請求項2は、圧力制限弁に対し液圧的に並列に配置されている制御可能な弁、たとえば電磁弁を提供する。圧力制限弁は、制御可能な弁内に統合されていてよい。制御可能な弁により、たとえばスリップコントロール中に、ブレーキ液をブレーキ液貯留容器から動力式ブレーキ圧発生器を用いて吸い込むことで、ブレーキ液をスリップコントロールのために十分提供するか、或いは、スリップコントロールに対し過剰なブレーキ液を排出することが可能である。
【0009】
請求項5は、動力式ブレーキ圧発生器がピストンシリンダユニットを有し、そのピストンがただ1つのピストンパッキンだけを用いてピストンシリンダユニットのシリンダ内で密封されていることを提供する。1つよりも多いパッキンで密封する必要はない。というのは、本発明による圧力制限弁は車両ブレーキ装置内の最大圧を制限するからである。ピストンパッキンはピストンを取り囲んで、ピストンとシリンダとの間を周部で密封する。
【0010】
本明細書および図面に開示されているすべての構成要件は、本発明の実施形態において、それ自体個別に実現されていてよく、或いは、基本的に任意の組み合わせで実現されていてよい。1つの請求項のすべての構成要件ではなく、1つまたはいくつかの構成要件だけを有する発明の実施形態は、基本的に可能である。
【0011】
次に、本発明を図面に図示した実施形態を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による電気液圧による動力式車両ブレーキ装置の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による車両ブレーキ装置1は、4つの液圧式車輪ブレーキ2を備えた乗用車のために設けられており、それぞれのブレーキ回路ごとに2つの液圧式車輪ブレーキ2を備えた2回路型ブレーキ装置として実施されている。他の実施形態が可能であり、たとえば単回路型ブレーキ装置もしくは2つより多いブレーキ回路を備えた多回路型ブレーキ装置、および/または、他の数量の車輪ブレーキ2、および/または、ブレーキ回路に対する車輪ブレーキ2の他の割り当て態様が可能である。
【0014】
車両ブレーキ装置1は、ピストンシリンダユニット5を備えた電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3を有し、ピストンシリンダユニットのピストン6は、ブレーキ圧を発生させるため、電動機7により、シリンダ9内のねじ駆動部8または他の回転・並進式変速装置を介して軸線方向に変位可能である。ピストンシリンダユニット5はプランジャーユニットと呼ぶこともでき、ピストン6はプランジャーピストンと呼ぶこともできる。
【0015】
動力式ブレーキ圧発生器3には、厳密に言えば、動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ9には、ここではプランジャーバルブ11と記す弁と、第1の仕切弁12と、ブレーキ圧調整弁装置13とを介して、車輪ブレーキ2が接続されている。両ブレーキ回路に分割するため、2つのプランジャーバルブ11は液圧的に並列に、2つの第1の仕切弁12は液圧的に同様に並列に、そしてそれぞれ1つのプランジャーバルブ11と1つの第1の仕切弁12とは液圧的に直列に配置されている。ブレーキ圧調整弁装置13を介してそれぞれ2つの車輪ブレーキ2が1つのプランジャーバルブ11と1つの第1の仕切弁12とを介して動力式ブレーキ圧発生器3に接続されている。
【0016】
ブレーキ圧調整弁装置13は、各車輪ブレーキ2のために、吸入弁14と排出弁15とを有している。吸入弁14を介して車輪ブレーキ2は第1の仕切弁12に接続され、より正確には、各ブレーキ回路内では、それぞれ1つの吸入弁14を備えた2つの車輪ブレーキ2が1つの第1の仕切弁12に接続されている。排出弁15を介して車輪ブレーキ2はハイドロポンプ16の吸込側に接続され、これらハイドロポンプは1つの共通の電動機17により駆動可能である。各ブレーキ回路のために1つのハイドロポンプ16が設けられており、その吸込側にはそれぞれのブレーキ回路の車輪ブレーキ2が排出弁15を介して接続されている。
【0017】
排出弁15とハイドロポンプ16との間では、ブレーキ液を中間貯留するために、ハイドロアキュムレータ18がハイドロポンプ16の吸込側に接続され、ブレーキ液は、ブレーキ圧コントロール中および/またはスリップコントロール中に排出弁15が開いたときに車輪ブレーキ2から排流される。
【0018】
吸入弁14と排出弁15とは、各車輪ブレーキ2内の車輪ブレーキ圧を個別に調整することができるブレーキ圧調整弁装置13を形成している。ハイドロポンプ16とともにスリップコントロールが可能であり、特にアンチロックコントロール、トラクションコントロールおよび/またはダイナミックドライブコントロールもしくは電子スタビリティプログラムが可能である。これらのスリップコントロールに対しては、略語ABS,ASRおよび/またはFDRもしくはESPが慣用されている。ダイナミックドライブコントロールおよび電子スタビリティプログラムは口語的にはアンチスキッドコントロールとも呼ばれる。このようなスリップコントロールはそれ自体公知であり、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0019】
補助的に、ハイドロポンプ16の吸込側は、それぞれ1つの逆止弁19と1つの吸込弁20とにより無圧のブレーキ液貯留容器10に接続されており、その結果ハイドロポンプ16は、ブレーキ圧の発生またはブレーキ圧の増大のために、ブレーキ液をブレーキ液貯留容器10から吸い込むことができる。逆止弁19は、ブレーキ液貯留容器10の方向から吸込弁20およびハイドロポンプ16の方向に貫流を可能にする。
【0020】
本発明による車両ブレーキ装置1は、フットブレーキペダル21を用いて操作可能な2回路型ブレーキマスタシリンダ22を筋力式ブレーキ圧発生器として有し、2回路型ブレーキマスタシリンダには、それぞれのブレーキ回路において、車輪ブレーキ2がそれぞれ1つの第2の仕切弁23と、第1の仕切弁12と、ブレーキ圧調整弁装置13の吸入弁16とを介して接続されており、その結果車両ブレーキ装置1は筋力によっても操作可能である。第2の仕切弁23と、第1の仕切弁12と、吸入弁16とは、液圧的に直列に配置されている。2回路型ブレーキマスタシリンダ22は、図示していないブレーキ倍力装置を有していてよく、この場合は補助力ブレーキ圧発生器と呼ばれる。
【0021】
基本的には、動力による車両ブレーキ装置1の操作が設けられており、その際ブレーキ圧は、電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3を用いて発生させる。電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3の不具合時または故障時には、スリップコントロールのハイドロポンプ16を用いたブレーキ圧発生、或いは、選択的にブレーキマスタシリンダ15を用いたブレーキ圧発生が可能である。ブレーキマスタシリンダ15は、それ自体は、電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3が機能できるときに車輪ブレーキ2内で調整すべき車輪ブレーキ圧のための目標値発生器として用いられる。
【0022】
両ブレーキ回路のうちの1つでは、ペダルストロークシミュレータ24がシミュレータバルブ25を介してブレーキマスタシリンダ22に接続されている。ペダルストロークシミュレータ24は、ばね付勢されるハイドロアキュムレータであり、ハイドロアキュムレータ内には、シミュレータバルブ25が開いたときにブレーキ液をブレーキマスタシリンダ22から排出させることができ、その結果、第2の仕切弁23が閉じられる動力制動の際には、ブレーキマスタシリンダ22内のピストンが変位可能であり、且つフットブレーキペダル21が可動であることで、車両ドライバーには普段のペダル感覚を提供する。
【0023】
電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3を用いて制動を導入するために、高い車輪ブレーキ圧を迅速に発生させると、ロックリミットに到達するか、これを越えたりして、車輪ブレーキ2を用いて制動される車輪をロックさせるか、ロックさせ始めたときに、スリップコントロールが車輪ブレーキ2の吸入弁14を閉じる。乾いた道路で車輪がブロックし始めるときの車輪ブレーキ2内の典型的な車輪ブレーキ圧は、たとえばほぼ90バールと120バールの間であり、たとえばほぼ150ないし200ミリ秒内に到達する。吸入弁14が閉じると、電動機7の通電が中断され、このことは動力式ブレーキ圧発生器3がオフになったと理解してもよい。動的作用のため、動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のピストン6は電動機7の通電がオフになってすぐに止まったままになるのではなく、ピストン6は停止する前にわずかな距離だけシリンダ9内をさらに移動する。
【0024】
10000バール/秒の典型的な増圧勾配の場合、電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ9内でのブレーキ圧は、電動機7の通電が8ないし10ミリ秒オフになった後にピストン6がさらに移動することにより、少なくとも80バール高くなることが予想され、これによって車両ブレーキ装置1内の許容最大圧を越えて、車両ブレーキ装置1が損傷または破壊される恐れがある。8ないし10ミリ秒は、圧力センサを用いてシリンダ9内の圧力上昇を検知してから単一の/複数の吸入弁14が閉じるまでに経過する典型的な時間である。ピストン6を可能な限り迅速に停止させるために、仮に吸入弁14が閉じる際に電動機7がブレーキ圧発生時にその回転方向とは逆の方向に通電されたとしても、ブレーキ圧が許容できないほど上昇し、車両ブレーキ装置1を損傷または破壊させることがある。
【0025】
電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ9内での圧力の上昇を許容できる値に制限するには、制御可能な弁、たとえば電磁弁は開弁が緩速でありすぎ、それ故本発明は、その代わりに、特に機械的な圧力制限弁26を設けるものであり、この圧力制限弁によってシリンダ9は、或いは一般的に言えば動力式ブレーキ圧発生器3は、ブレーキ液貯留容器10に接続されている。圧力制限弁26の開弁圧は好ましくは調整可能であり、車両ブレーキ装置1の許容最大圧に調整されており、これにより車両ブレーキ装置1の許容最大圧を越えることが回避される。
【0026】
図示し、説明している実施形態では、圧力制限弁26は補助的に電磁弁として実施され、すなわち一般的には制御可能な弁27として実施され、その結果開弁圧に到達していなくても開弁させることができる。
【0027】
圧力制限弁26は許容しがたいほどの高い圧力ピークを阻止するため、電気液圧による動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ9内でのピストン6の密封は、ピストンパッキン28を用いれば十分である。それ故、本発明によれば、ピストン6は1つのピストンパッキン28のみを有している。ピストンパッキン28は、ピストン6を取り囲んでピストン6とシリンダ9との間を周部において密封するパッキンリング、特にスラストパッキンリングまたはクワドリングである。
【0028】
図面では、圧力制限弁26は制御可能な弁27内に統合され、或いは、圧力制限弁26は同時に制御可能な弁27としても実施されている。たとえば、圧力制限弁26とは別個の、液圧的に圧力制限弁26に対し並列に配置されている制御可能な弁27も可能である(図示せず)。
【0029】
ブレーキ圧調整弁装置13の吸入弁14および排出弁15を用いたスリップコントロールの間、特に電動機17によるハイドロポンプ16の駆動時に、制御可能な弁27を開くことができ、その結果動力式ブレーキ圧発生器3は、排出弁15が開いている時に車輪ブレーキ2から排流されるブレーキ液を、ピストンシリンダユニット5のシリンダ9内でのピストン6の一方向または逆方向での移動によってブレーキ液貯留容器10内へ排出させることができ、或いは逆に、ブレーキ液をスリップコントロールのためにブレーキ液貯留容器10から吸い込むことができる。それ故、制御可能な弁27は両方向に貫流可能に実施されている。
【0030】
スリップコントロールの間に排出弁15が開いている時に、車輪ブレーキ2内にたとえば120バールの圧力が支配すると、ブレーキ液はこの圧力によって車輪ブレーキ2からハイドロアキュムレータ18内へ流動する。その際にブレーキマスタシリンダ22が操作されていると、ブレーキ液はブレーキマスタシリンダ22を通って無圧のブレーキ液貯留容器10内へ流れることができない。動力式ブレーキ圧発生器3のピストンシリンダユニット5のシリンダ9内でピストン6を戻すのではなく、制御可能な弁27を開くことによって圧力を下げることができる。これには、シリンダ9内でピストン6を密封するには1つのピストンパッキン28で十分であり、複数のピストンパッキン28は必要ないという利点もある。1つのピストンパッキン28だけでシリンダ9をより短く実施することができ、このことは、ピストンシリンダユニット5を有しているブレーキ圧調整アッセンブリの構造空間をより小さくさせる。これは、自動車のエンジンルーム内に取り付ける際の利点であり、事故時の安全性を向上させる。というのは、自動車の内燃エンジンが事故の際に客室の方向に変位するときに該内燃エンジンが横方向に配置されたピストンシリンダユニット5のシリンダ9に対し衝突するからである。前記ブレーキ圧調整アッセンブリは通常は自動車のいわゆる先端壁に固定されており、それ故事故時には客室の方向に変位してはならないものである。
【0031】
以上説明し図示した本発明の実施形態には、プランジャーバルブ11と、第1の仕切弁12と、吸入弁16と、排出弁17と、吸込弁20と、第2の仕切弁23と、シミュレータバルブ25と、制御可能な弁27である2ポート2位置方向制御電磁弁とが設けられ、この場合第1の仕切弁12と、吸入弁16と、第2の仕切弁23とは、その無電流基本位置で開いており、プランジャーバルブ11と、排出弁17と、吸込弁20と、シミュレータバルブ25と、制御可能な弁27とは、その無電流基本位置で閉じている。これら弁の他の実施形態を排除するものではない。たとえば、吸入弁14と排出弁15とを統合して3ポート2位置方向制御電磁弁を形成させることも可能である(図示せず)。
【符号の説明】
【0032】
1 車両ブレーキ装置
2 車輪ブレーキ
3 動力式ブレーキ圧発生器
5 ピストンシリンダユニット
6 ピストン
9 シリンダ
10 ブレーキ液貯留容器
14 吸入弁
15 排出弁
22 ブレーキマスタシリンダ(筋力式または補助力式ブレーキ圧発生器)
26 圧力制限弁
27 制御可能な弁
28 ピストンパッキン
図1
【国際調査報告】