(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】エッチング組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20220314BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/308 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544926
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 US2020014609
(87)【国際公開番号】W WO2020159771
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クネーア、エミル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ボイチャック、ウィリアム エー.
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043BB30
5F043DD07
5F043DD13
5F043DD14
5F043EE05
5F043EE07
(57)【要約】
本開示は、酸化コバルト水酸化物層を実質的に形成すること無しに半導体基板から窒化チタン(TiN)を選択的に除去するのに例えば有用なエッチング組成物を対象とする。本開示は、特定のエッチング組成物が、半導体デバイス中においてCo層上にCoOx水酸化物層を形成すること無くTiNを選択的にエッチングでき、そのことにより遅滞無しに後続のCoエッチングを行うことを可能にする、という予想外の発見に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも1種の酸化剤、
2)少なくとも1種の不飽和カルボン酸、
3)少なくとも1種の金属腐食抑制剤、及び
4)水
を含むエッチング組成物。
【請求項2】
約0と約7の間のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の酸化剤が過酸化水素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の酸化剤は、前記組成物に対して約0.5重量%~約20重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の不飽和カルボン酸は、3~10個の炭素原子を有するカルボン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の不飽和カルボン酸は、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、プロペン酸、3-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、又は9-ウンデシレン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の不飽和カルボン酸は、前記組成物に対して約0.005重量%から約3重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の金属腐食抑制剤は置換または無置換のアゾールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記アゾールはトリアゾール、イミダゾール、又はテトラゾールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の金属腐食抑制剤は、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基によって任意に(optionally)置換されたベンゾトリアゾールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の金属腐食抑制剤は、ベンゾトリアゾール、5-アミノベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、4-クロロベンゾトリアゾール、5-ブロモベンゾトリアゾール、4-ブロモベンゾトリアゾール、5-フルオロベンゾトリアゾール、4-フルオロベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、4-メチルベンゾトリアゾール、4-エチルベンゾトリアゾール、5-エチルベンゾトリアゾール、4-プロピルベンゾトリアゾール、5-プロピルベンゾトリアゾール、4-イソプロピルベンゾトリアゾール、5-イソプロピルベンゾトリアゾール、4-n-ブチルベンゾトリアゾール、5-n-ブチルベンゾトリアゾール、4-イソブチルベンゾトリアゾール、5-イソブチルベンゾトリアゾール、4-ペンチルベンゾトリアゾール、5-ペンチルベンゾトリアゾール、4-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、5-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-ベンゾトリアゾール、5-t-ブチルベンゾトリアゾール、5-(1’1’-ジメチルプロピル)-ベンゾトリアゾール、5-(1’1’3’-トリメチルブチル)ベンゾトリアゾール、5-n-オクチルベンゾトリアゾール、及び5-(1’1’3’3’-テトラメチルブチル)ベンゾトリアゾールからなる群から選択される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の金属腐食抑制剤は、前記組成物に対して、約0.005重量%~約3重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記水が、前記組成物に対して約60重量%~約98重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
さらに少なくとも1種のpH調整剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のpH調整剤が塩基又は酸を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記塩基が金属イオンを含まず、4級アンモニウム水酸化物又はアルキル水酸化物ではなく、そして、前記酸は飽和カルボン酸又はハロゲン化水素ではない、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
水溶性アルコール、水溶性ケトン、水溶性エステル、及び水溶性エーテルからなる群から選択される有機溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記有機溶媒は、前記組成物に対して、約2重量%~約20重量%である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
TiNフィーチャを含む半導体基板を請求項1~18のうちいずれか一項に記載の組成物に接触させて前記TiNフィーチャを除去すること、
を含む方法。
【請求項20】
前記接触ステップの後で前記半導体基板をリンス溶媒でリンスすることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記リンスステップの後で前記半導体基板を乾燥させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記半導体基板中に酸化コバルト水酸化物層を実質的に形成しない、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
半導体デバイスである、請求項19に記載の方法により形成された物品。
【請求項24】
前記半導体デバイスは集積回路である、請求項23に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング組成物、及びエッチング組成物を用いるプロセスに関する。特に、本開示は、エッチングされた基板上(over the etched substrate)に不動態層(passive layer)を実質的に形成すること無しに窒化チタン(TiN)を選択的にエッチングすることができるエッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、微小電子デバイス、シリコンチップ、液晶ディスプレイ、MEMS(マイクロ電気機械システム)、プリント配線板、等々における電子回路及び電子コンポーネントの寸法を急速に減少させ、それらの密度を急速に増加させている。それらの中の集積回路を積層あるいは重ね合わせる際の各回路層間の絶縁層の厚さは絶えず減少し、フィーチャサイズはより小さくなってきている。フィーチャサイズが縮小したことに伴って、パターンはより小さなものとなってきており、デバイス性能パラメータはより厳しく、かつより堅固なものとなってきている。その結果、これまでは許容することが可能であった様々な問題は、より小さいフィーチャサイズのためにもはや許容できず、あるいはより大きな問題となってきている。
【0003】
先進的集積回路の生産において、高められた密度に付随する問題を最小化し、性能を最適化するために、高k絶縁体及び低k絶縁体の両方並びに取り揃えられたバリア層材料が用いられてきた。
窒化チタン(TiN)は半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS(マイクロ電気機械システム)、プリント配線板、等々のために利用され、また、貴金属、アルミニウム(Al)及び銅(Cu)による配線のためのグラウンド層及びキャップ層として利用されている。半導体デバイスにおいて、窒化チタンはバリア金属、ハードマスク、又はゲート金属として用いられうる。これらの用途のためのデバイスの構築においては、TiNをエッチングする必要がしばしば存在する。TiNの様々な種類の用途及びデバイス環境においては、他の層が接触し、又はその他の様式で、TiNがエッチングされるのと同時に他の層が曝される。これら他の材料(例えば、金属導電体、誘電体、及びハードマスク)の存在する状況においては、TiNを高度に選択的にエッチングすることが、デバイス収率及び長寿命のためには必須である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
関連出願への相互参照
本願は、2019年1月31日に出願された米国仮出願番号62/799,079からの優先権を主張し、該米国仮出願の内容はその全体が本開示中に参照により取り込まれる。
【0005】
ある種のエッチング組成物は、半導体デバイス中においてCo層上にCoOx水酸化物層を形成すること無くTiNを選択的にエッチングでき、そのことにより遅滞無しに後続のCoエッチングが可能となる、という予想外の発見に本開示は基づく。
【0006】
1つの態様では、本開示は、1)少なくとも1種の酸化剤、2)少なくとも1種の不飽和カルボン酸、3)少なくとも1種の金属腐食抑制剤、及び4)水を含むエッチング組成物を1つの特色とする。
別の態様では、本開示は、TiNフィーチャを含む半導体基板を本開示に記載のエッチング組成物と接触させて該TiNフィーチャを除去することを含む方法を1つの特色とする。
さらに別の態様では、本開示は前記方法によって形成される物品であって、半導体デバイス(例えば、集積回路)である物品を1つの特色とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示における定義では、他に断りの無い限り、記載された全てのパーセント値は組成物の全重量に対する重量パーセントであると理解すべきである。他に断りの無い限り、大気温度(ambient temperature)とは摂氏約16度(℃)と摂氏約27度(℃)の間と定義される。
【0008】
本開示における定義では、「水溶性」物質(例えば、水溶性のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、等々)とは、25℃で水中において0.5重量%以上(例えば、1重量%以上又は5重量%以上)の溶解度を有する物質のことを指す。
【0009】
互変異性化とは単結合及び隣接する二重結合のスイッチを伴う、水素原子又はプロトンの形式的な移動と本開示では定義される。トリアゾール化合物との言及(mention)、記載(description)、及びクレーム中の記載(claim)は、トリアゾール環系における互変異性化の活性化エネルギーが低いことから、トリアゾール化合物の互変異性体をも含む。
【0010】
概して、本開示は、1)少なくとも1種の酸化剤、2)少なくとも1種の不飽和カルボン酸、3)少なくとも1種の金属腐食抑制剤、及び4)水を含むエッチング組成物(例えば、TiNを選択的に除去するためのエッチング組成物)を1つの特色とする。
【0011】
本開示のエッチング組成物は、マイクロ電子用途で用いるのに適した少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の酸化剤を含むことができる。適切な酸化剤の例は、酸化性の酸又はその塩(例えば、硝酸、過マンガン酸、又は過マンガン酸カリウム)、過酸化物(例えば、過酸化水素、ジアルキルペルオキシド、過酸化水素尿素)、過スルホン酸(persulfonic acid)(例えば、ヘキサフルオロプロパン過スルホン酸、メタン過スルホン酸、トリフルオロメタン過スルホン酸、又はp-トルエン過スルホン酸)及びその塩、オゾン、過カルボン酸(例えば過酢酸)及びその塩、過リン酸及びその塩、過硫酸及びその塩(例えば、過硫酸アンモニウム又は過硫酸テトラメチルアンモニウム)、過塩素酸及びその塩(例えば、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、又は過塩素酸テトラメチルアンモニウム)、並びに過ヨウ素酸及びその塩(例えば、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム、又は過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム)を含むがこれらに限定されない。これらの酸化剤は、一種のみで用いることも、組み合わせて用いることもできる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の酸化剤は、本開示のエッチング組成物の全重量に対して、0.5重量%以上(例えば、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.2重量%以上、約1.4重量%以上、約1.5重量%以上、約1.6重量%以上、約1.8重量%以上、約2重量%以上、又は約3重量%以上)~約20重量%以下(例えば、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、又は約8重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、酸化剤が(例えば、エッチング組成物に溶解することができるTiOx型材料を形成することにより)半導体基板上のTiNの除去を促進及び増強すると考えられる。さらに、理論に拘束されることを望むものではないが、酸化剤は半導体基板中の露出した金属(例えばCo)上に酸化層(例えばCoOx)を形成しうると考えられる。
【0013】
一般的には、本開示のエッチング組成物は少なくとも1種(例えば2種、3種、又は4種)の不飽和カルボン酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、不飽和カルボン酸は1つ又は複数(例えば2つ又は3つ)の炭素-炭素間二重又は三重結合及び/又は1つ又は複数(例えば2つ又は3つ)のカルボン酸基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記不飽和カルボン酸は、非芳香族及び/又は非環状(例えば、環構造を有しない)であってもよい。例えば、前記不飽和カルボン酸は、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、プロペン酸、3-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、又は9-ウンデシレン酸を含んでいてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の不飽和カルボン酸は、本開示のエッチング組成物の全重量に対して、約50ppmあるいは約0.005重量%以上(例えば、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)~約3重量%以下(例えば、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、不飽和カルボン酸は、半導体基板中のCoOx層上の不動態CoOx水酸化物層の形成を最小化又は防止することができると考えられる。
【0015】
一般的に、本開示のエッチング組成物は少なくとも1種(例えば2種、3種、又は4種)の金属腐食抑制剤を含むことができる。腐食抑制剤の例は、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物及びテトラゾール化合物等の、置換又は無置換のアゾール化合物を含む。トリアゾール化合物には、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、置換トリアゾール、又は置換ベンゾトリアゾールが含まれうる。トリアゾール化合物の例は、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、又は、C1~C8アルキル基(例えば5-メチルトリアゾール)、アミノ基、チオール基、メルカプト基、イミノ基、カルボキシ基及びニトロ基等の置換基によって置換されたトリアゾール、を含むがこれらに限定されない。具体例には、トリルトリアゾール、5-メチル-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、等々が含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の金属腐食抑制剤は、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基によって任意に(optionally)置換されたベンゾトリアゾールを含んでいてもよい。例には、ベンゾトリアゾール、5-アミノベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール(例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、ハロ-ベンゾトリアゾール(ハロ=F、Cl、Br又はI)(例えば、5-クロロベンゾトリアゾール、4-クロロベンゾトリアゾール、5-ブロモベンゾトリアゾール、4-ブロモベンゾトリアゾール、5-フルオロベンゾトリアゾール、及び4-フルオロベンゾトリアゾール)、ナフトトリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、4-メチルベンゾトリアゾール、4-エチルベンゾトリアゾール、5-エチルベンゾトリアゾール、4-プロピルベンゾトリアゾール、5-プロピルベンゾトリアゾール、4-イソプロピルベンゾトリアゾール、5-イソプロピルベンゾトリアゾール、4-n-ブチルベンゾトリアゾール、5-n-ブチルベンゾトリアゾール、4-イソブチルベンゾトリアゾール、5-イソブチルベンゾトリアゾール、4-ペンチルベンゾトリアゾール、5-ペンチルベンゾトリアゾール、4-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、5-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-ベンゾトリアゾール、5-t-ブチルベンゾトリアゾール、5-(1’1’-ジメチルプロピル)-ベンゾトリアゾール、5-(1’1’3’-トリメチルブチル)ベンゾトリアゾール、5-n-オクチルベンゾトリアゾール、及び5-(1’1’3’3’-テトラメチルブチル)ベンゾトリアゾールが含まれる。
【0017】
イミダゾール化合物の例は、2-アルキル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-アルキルイミダゾール、2-メチル-4(5)-ニトロイミダゾール、5-メチル-4-ニトロイミダゾール、4-イミダゾールメタノール塩酸塩、及び2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、を含むがこれらに限定されない。
【0018】
テトラゾール化合物の例は、1-H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、5,5’-ビス-1H-テトラゾール、1-メチル-5-エチルテトラゾール、1-メチル-5-メルカプトテトラゾール、1-カルボキシメチル-5-メルカプトテトラゾール、等々、を含むがこれらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の金属腐食抑制剤は、本開示のエッチング組成物の全重量に対して、約50ppmあるいは約0.005重量%以上(例えば、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)~約3重量%以下(例えば、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下)であってもよい。
【0020】
一般的に、本開示のエッチング組成物は溶媒として水を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記水は、脱イオンされ超純粋であり、有機夾雑物を含まず、約4~約17メガオーム、又は約17メガオーム以上の最小抵抗率を有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、前記水は、エッチング組成物に対して、約60重量%以上(例えば、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、又は約95重量%以上)~約98重量%以下(例えば、約97重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、又は約70重量%以下)の量である。理論に拘束されることを望むものではないが、水の量が組成物の98重量%より大きいと、そのことがTiNエッチング速度に悪影響を与え、エッチングプロセスにおけるTiN除去を減少させると考えられる。また、理論に拘束されることを望むものではないが、本開示のエッチング組成物は、全ての他の成分を溶解した状態に維持し、エッチング性能の低下を避けるために、ある程度の水(例えば約60重量%以上)を含むべきであると考えられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意に(optionally)、少なくとも1種(例えば2種、3種又は4種)の有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒は、水溶性アルコール、水溶性ケトン、水溶性エステル、及び水溶性エーテルからなる群から選択することもできる。
【0022】
水溶性アルコールの種別(classes)は、アルカンジオール(アルキレングリコールを含むがこれに限定されない)、グリコール、アルコキシアルコール(グリコールモノエーテルを含むがこれに限定されない)、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、及び環構造を含む低分子量アルコール、を含むがこれらに限定されない。
【0023】
水溶性アルカンジオールの例は、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ピナコール、及びアルキレングリコール、を含むがこれらに限定されない。
【0024】
水溶性アルキレングリコールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコール、を含むがこれらに限定されない。
【0025】
水溶性アルコキシアルコールの例は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、及び水溶性グリコールモノエーテル、を含むがこれらに限定されない。
【0026】
水溶性グリコールモノエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテル、を含むがこれらに限定されない。
【0027】
水溶性飽和脂肪族一価アルコールの例は、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノール、を含むがこれらに限定されない。
【0028】
水溶性不飽和非芳香族一価アルコールの例は、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オール、を含むがこれらに限定されない。
【0029】
環構造を含む水溶性低分子量アルコールの例は、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオール、を含むがこれらに限定されない。
【0030】
水溶性ケトンの例は、アセトン、プロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、2-ブタノン、5-ヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、3-ヒドロキシアセトフェノン、1,3-シクロヘキサンジオン、及びシクロヘキサノン、を含むがこれらに限定されない。
【0031】
水溶性エステルの例は、酢酸エチル、グリコールモノエステル(例えば、エチレングリコールモノアセテート及びジエチレングリコールモノアセテート)、並びにグリコールモノエーテルモノエステル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)を含むがこれらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の有機溶媒は、エッチング組成物の全重量に対して、約2重量%以上(例えば、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上、約8重量%以上、又は約10重量%以上)~約20重量%以下(例えば、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約12重量%以下、又は約10重量%以下)であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意に(optionally)、少なくとも1種(例えば2種、3種、又は4種)のpH調整剤、例えば酸又は塩基、をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記pH調整剤は金属イオンを含まない塩基であってもよい。適切な金属イオン非含有塩基は、4級アンモニウム水酸化物(例えば、TMAH等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物)、水酸化アンモニウム、モノアミン(アルカノールアミンを含む)、アミジン(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN))、並びにグアニジン塩(例えば、炭酸グアニジン)、を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記塩基は4級アンモニウム水酸化物(例えば、TMAH等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物)ではない。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記pH調整剤は有機酸、例えばスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸)であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、pH調整剤が有機酸の場合、該有機酸は前記不飽和カルボン酸又は1つ若しくは複数(例えば2つ、3つ、若しくは4つ)のカルボキシル基を含む飽和カルボン酸(例えば、クエン酸、シュウ酸、又は酢酸)ではない。いくつかの実施形態では、前記pH調整剤はハロゲン化水素ではない。
【0036】
一般的に、本開示のエッチング組成物中のpH調整剤は、エッチング組成物のpHを所望の値に調整するのに十分な量とすることができる。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、エッチング組成物の全重量に対して、約0.01重量%以上(例えば、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、又は約2重量%以上)~約6重量%以下(例えば、約5.5重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、又は約1重量%以下)であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物はpHが約0以上(例えば、約0.2以上、約0.4以上、約0.5以上、約0.6以上、約0.8以上、約1以上、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、若しくは約3以上)及び/又は約7以下(例えば、約6.5以下、約6以下、約5.5以下、約5以下、約4.5以下、約4以下、約3.5以下、若しくは約3以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、7超のpHを有するエッチング組成物は十分なTiNエッチング速度を有しないであろうと考えられる。さらに、0未満のpHを有するエッチング組成物は過剰なCoエッチングを生み出し、組成物中のある成分(例えば金属腐食抑制剤)が機能するのを妨げ、又は強い酸性のため組成物中のある成分を分解しうると考えられる。
【0038】
さらに、いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は添加剤を任意成分として含んでもよく、その例としては、追加的な腐食抑制剤、界面活性剤、追加的な有機溶媒、殺生物剤(biocides)、及び消泡剤が挙げられる。適切な消泡剤の例には、ポリシロキサン消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレングリコールメチルエーテルポリマー、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、及びグリシジルエーテルでキャップされたアセチレン性ジオールエトキシラート(例えば、本開示に参照により取り込まれる米国特許第6,717,019号に記載されたもの)が含まれる。適切な界面活性剤の例は、カチオン性でも、アニオン性でも、ノニオン性でも、両性でもよい。
【0039】
一般的に、本開示のエッチング組成物は比較的高いTiN/誘電材料(例えば、SiN、ポリシリコン、高k誘電体、AlOx、SiOx、又はSiCO)エッチング選択性を有して(つまり、誘電材料エッチング速度に対するTiNエッチング速度の比が高くて)もよい。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は約2以上(例えば、約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、若しくは約50以上)及び/又は約500以下(例えば約100以下)のTiN/誘電材料エッチング選択性を有してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は前記添加成分のうちの1つ又は複数(複数の場合は任意の組み合わせ)を特に含まない(exclude)ものであってもよい。そのような成分は、有機溶媒、pH調整剤、ポリマー(例えば、カチオン性又はアニオン性ポリマー)、酸素スカベンジャー、4級アンモニウム塩又は4級アンモニウム水酸化物、アミン、アルカリ塩基(例えばNaOH、KOH、及びLiOH)、消泡剤以外の界面活性剤、消泡剤、フッ化物含有化合物、研磨剤(例えば、カチオン性又はアニオン性研磨剤)、シリケート、ヒドロキシカルボン酸(例えば、2個を超えるヒドロキシ基を含むもの)、カルボン酸及びポリカルボン酸(例えばアミノ基を含むもの又は含まないもの)、シラン(例えばアルコキシシラン)、環状化合物(例えばアゾール(ジアゾール、トリアゾール、又はテトラゾール)、トリアジン、及び2個以上の環を含む環状化合物、例えば置換若しくは無置換のナフタレン、又は置換若しくは無置換のビフェニルエーテル)、緩衝剤、非アゾール腐食抑制剤、ハライド塩、並びに金属塩(例えば金属ハライド)からなる群から選択される。
【0041】
本開示のエッチング組成物は単に成分(複数形)を一緒に混合することで調製でき、又はキット中の2つの組成物をブレンドすることで調製することもできる。キット中の第1の組成物は酸化剤(例えば、H2O2)の水溶液であってもよい。キット中の第2の組成物は、2つの組成物のブレンドにより所望の本開示のエッチング組成物が生み出されるように、本開示のエッチング組成物の残りの成分を所定の比で濃縮形態で含んでいてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのTiNフィーチャ(例えば、TiNフィルム又はTiN層)を含む半導体基板をエッチングする方法を特色とする。いくつかの実施形態では、前記TiNフィーチャはCo充填ビア又はトレンチの周りのライナー又はバリア(例えば、約1nmの厚さを有する)であってもよく、又はCo充填ビア又はトレンチの側壁をコーティングするフィルムであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記方法は、少なくとも1つのTiNフィーチャを含む半導体基板を本開示のエッチング組成物に接触させて前記TiNフィーチャを除去することを含んでもよい。前記方法は、前記接触ステップの後で前記半導体基板をリンス溶媒でリンスすること、及び/又は、前記リンスステップの後で前記半導体基板を乾燥させること、をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法の利点は、該方法が、エッチング組成物に曝された半導体基板中のCoOx層上に酸化コバルト水酸化物(CoOx水酸化物又はCoOx-OH)層を実質的に形成しないことである。例えば、前記方法は、前記半導体基板上にCoOx水酸化物層を約5オングストローム超(例えば、約3オングストローム超又は約1オングストローム超)は形成しない。理論に拘束されることを望むものではないが、CoOx-OH層は不動態状であり得、バリアとして働いてCoOx-OH層で被覆されたCoOX層又はCoがその後にエッチング又は除去されることを防ぎ得る、と考えられる。したがって、その後にCoOx層又はCoのエッチングを行うためには、このようなCoOx-OH層は除去する必要があるが、このことは効率を減少させ、半導体製造プロセスの時間及びコストを増加させる。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記エッチング方法は:
(A)TiNフィーチャを含む半導体基板を提供するステップ;
(B)前記半導体基板を本開示に記載のエッチング組成物と接触させるステップ;
(C)前記半導体基板を1種又は複数種の適切なリンス溶媒でリンスするステップ;及び
(D)任意に(optionally)、(例えば、リンス溶媒を除去するものの、前記半導体基板の一体性を損ない(compromise)はしない任意の適切な手段により)前記半導体基板を乾燥させるステップ
を含む。
【0045】
本開示に記載の半導体基板(例えばウエハ)は、典型的には、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAs等のIII~V族化合物、又はそれらの任意の組み合わせで構成される。前記半導体基板は、相互接続フィーチャ(例えば、金属線及び誘電材料)等の露出した集積回路構造を追加で含んでもよい。相互接続フィーチャに用いられる金属及び金属合金は、アルミニウム、銅と合金化したアルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、及びタングステン、を含むがこれらに限定されない。前記半導体基板は、層間絶縁体(interlayer dielectrics)層、ポリシリコン層、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、炭化ケイ素層、酸化チタン層、及び炭素ドープ酸化ケイ素層も含んでいてもよい。
【0046】
半導体基板は任意の適切な方法でエッチング組成物と接触させられてよく、その例としては、エッチング組成物をタンクに配置して半導体基板を前記エッチング組成物中に浸漬(immersing)させる及び/又は沈める(submerging)、エッチング組成物を半導体基板上にスプレーする、エッチング組成物を半導体基板上に流す(streaming)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
本開示のエッチング組成物は、約85℃の温度まで(例えば、約20℃~約80℃、約55℃~約65℃、又は約60℃~約65℃)効率的に用いることができる。この範囲内ではTiNのエッチング速度は温度と共に上昇し、このため、より高温でのプロセスはより短い時間で実行することができる。逆に、より低いエッチング温度は、普通は、より長いエッチング時間を必要とする。
【0048】
用いられる具体的なエッチング方法、厚さ、及び温度に依存して、エッチング時間は広い範囲で変動しうる。浸漬バッチ型プロセスでのエッチングの場合、適切な時間の範囲は、例えば、約10分以下(例えば、約1分~約7分、約1分~約5分、又は約2分~約4分)である。シングルウエハプロセスのためのエッチング時間は、約30秒~約5分(例えば、約30秒~約4分、約1分~約3分、又は約1分~約2分)の範囲であってもよい。
【0049】
本開示のエッチング組成物のエッチング能をさらに高める(promote)ために機械的攪拌手段を用いることができる。適切な撹拌手段の例には、エッチング組成物を基板上(over)で循環させること、エッチング組成物を基板上(over)に流す(streaming)又はスプレーすること、エッチングプロセス中に超音波又はメガソニックによる撹拌を行うこと、が含まれる。地面(ground)に対する半導体基板の向きは任意の角度であってよい。水平又は垂直の向きが好ましい。
【0050】
エッチングの後に、前記半導体基板は適切なリンス溶媒で約5秒~約5分、撹拌手段を用いて又は用いずにリンスしてもよい。異なるリンス溶媒を用いる複数のリンスステップを用いてもよい。適切なリンス溶媒の例は、脱イオン(DI)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、を含むがこれらに限定されない。これに代えて又はこれに加えて、pH8超での水性リンス(例えば希水酸化アンモニウム水溶液)を用いることもできる。リンス溶媒の例は、希水酸化アンモニウム水溶液、脱イオン水、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール、を含むがこれらに限定されない。リンス溶媒は、本開示に記載のエッチング組成物を適用する(apply)のに用いられる手段と同様の手段を用いて適用することができる。エッチング組成物は、リンスステップの開始の前に半導体基板から除去されていてもよいし、リンスステップの開始の際には依然として半導体基板と接触していてもよい。いくつかの実施形態では、リンスステップで用いられる温度は16℃と27℃の間である。
【0051】
任意に(optionally)、半導体基板はリンスステップの後で乾燥させられる。当業界で知られている任意の適切な乾燥手段を用いることができる。適切な乾燥手段の例には、スピン乾燥、半導体基板を横切るように乾燥ガスを流すこと、ホットプレート又は赤外線ランプ等の加熱手段を用いて半導体基板を加熱すること、マランゴニ乾燥、rotagoni乾燥、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。乾燥時間は用いられる具体的な方法に依存することになるが、典型的には、30秒~数分のオーダーである。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のエッチング方法は、本開示に記載の方法により得られる半導体基板から半導体デバイス(例えば、半導体チップ等の集積回路デバイス)を形成することをさらに含む。
【0053】
以下の実施例を参照して本開示をより詳細に説明するが、実施例は例示目的のものであり、実施例が本開示の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0054】
記載されたパーセントは、いずれも、他に断りが無い限りは重量基準(重量%)である。試験中の制御された撹拌は、他に断りが無い限り、1インチの撹拌棒を300rpmで用いて行った。
【0055】
一般的手順1
配合ブレンディング
計算された量の溶媒に、配合の残りの成分を、撹拌しながら加えることにより、エッチング組成物のサンプルを調製した。均一な溶液を達成した後、任意的(optional)添加剤を、該添加剤を使用する場合には、添加した。
【0056】
一般的手順2
材料及び方法
一般的手順1により調製した試験溶液中で、一般的手順3に記載の手順に従って、ブランケットテストクーポンをエッチング及び材料適合性について評価した。
【0057】
フィルムについてのブランケットフィルムエッチング速度測定を、0.5インチ×1.0インチの評価用テストクーポンへと角切りされた、パターン形成されていない直径300mmの市販ウエハを用いて行った。試験に用いられた一次ブランケットフィルム材料は、(1)シリコン基板上に設けられた厚さ約130オングストロームのTiNフィルム、及び(2)シリコン基板上に設けられた厚さ約2000オングストロームのCoフィルム、(3)シリコン基板上に設けられた厚さ約290オングストロームのSiNフィルム、(4)シリコン基板上に設けられた厚さ約460オングストロームのAlOxフィルム、並びにシリコン基板上に設けられた厚さ約210オングストロームのSiOxフィルム、を含んでいた。
【0058】
ブランケットフィルムテストクーポンを、処理前及び処理後の厚さについて測定して、ブランケットフィルムエッチング速度を決定した。前記TiN、SiN、AlOx、及びSiOxフィルムについては、処理前及び処理後にWoollam VASEを用いたエリプソメトリーによりフィルム厚を測定した。Coフィルムについては、処理前及び処理後にCDE RESMAP4点プローブを用いてフィルム厚を測定した。
【0059】
CoOx-OH層を、Woolamエリプソメーターを用いて以下のとおり測定した。最初に、いくつかの(several)異なる予備清浄化されたCoフィルムを用いて、自然の(native)CoOx層を有するCoフィルムをエリプソメトリーモデルに基づいて測定し、不透明(opaque)なCo金属層上にのみ厚さ約10オングストロームのCoOx層が検出されたことを確認した。続いて、このCoOx層を第1層として用いて、この10オングストロームCoOx層上のCoOx-OH層の厚さを測定するためのエリプソメトリーモデルを確立した。CoOx層及びCoOx-OH層の存在はXPSで確認した。
【0060】
一般的手順3
ビーカーテストによるエッチング評価
250rpmで連続して撹拌しながら200gのサンプル溶液を含む600mLガラスビーカー内で全ブランケットフィルムエッチング試験を50℃で行った(ただしCFE-1は30℃で試験した)が、ここで蒸発による損失を最小化するためにParafilm(登録商標)カバーを常に所定の位置にセットしておいた。一面がサンプル溶液に曝されたブランケット絶縁膜(dielectric film)を有する全てのブランケットテストクーポンを、ビーカースケールの試験のために、ダイアモンドスクライブで0.5インチ×1.0インチ平方のテストクーポンサイズへと角切りした。それぞれの個別テストクーポンは、単一の4インチ長のロック付きプラスチックピンセットクリップを用いて定位置へと保持された。一端をロック付きピンセットクリップによって保持されたテストクーポンを600mLガラスビーカー中に吊し、200gの試験溶液に、溶液を連続的に250rpm50℃で撹拌しながら浸漬した。各サンプルクーポンを撹拌された溶液中に配置した直後に、前記600mL HDPEビーカーの最上部をParafilm(登録商標)でカバーして再封(reseal)した。(一般的手順3Aに記載の)処理時間が経過するまで、前記テストクーポンを前記撹拌された溶液中に静かに保持した。試験溶液中で処理時間が経過した後、サンプルクーポンは前記600mLガラスビーカーからすぐに取り出し、一般的手順3Aに従ってリンスした。最後のIPAリンスステップ後に、全てのテストクーポンを、手持ち窒素ガスブロアーを用いたフィルター済み窒素ガス吹き飛ばし(blow off)ステップに供して、IPAの全ての痕跡を強制的に除去して、試験測定用の最終的な乾燥サンプルを製造した。
【0061】
一般的手順3A(ブランケットテストクーポン)
一般的手順3による2~10分の処理時間の直後に、クーポンを、300mL量のIPAに穏やかに撹拌しながら15秒浸漬し、次に300mLのIPAに穏やかに撹拌しながら15秒浸漬し、そして、300mLの脱イオン水中で穏やかに撹拌しながら15秒最終リンスした。処理は一般的手順3に従って完了させた。
【0062】
実施例1
配合例1(FE-1)及び公知の配合CFE-1(これは、29%NH4OH水溶液を1部、30%H2O2水溶液を2部、及び脱イオン水を30部含む)を一般的手順1に従って調製し、一般的手順2及び3に従って評価した。配合及び試験結果を表1はまとめられている。
【0063】
【0064】
表1に示されるように、市販の配合物CFE-1はほどほどのTiNエッチング速度を示したものの、CoOx層上に不動態CoOx水酸化物層を形成した(つまり、5.1オングストロームの厚さを有する)。このことは、配合物が次のCoエッチングを行うことを妨げた。対照的に、FE-1はそれよりいくぶん高いTiNエッチング速度を示し、CoOx層上に不動態CoOx水酸化物層を形成しなかった(つまり、0オングストロームの厚さを有し、このことはCoOx水酸化物層が形成されなかったことを意味する)が、このことは、CoOx水酸化物層が存在しないため、配合物が次のCoエッチングを遅滞なく行うことを可能にする。
【0065】
実施例2
配合例2(FE-2)及び比較配合例2~9(CFE-2~CFE-9)を一般的手順1に従って調製し、一般的手順2及び3に従って評価した。配合及び試験結果は表2にまとめられている。
【0066】
【0067】
表2に示されるように、比較配合物CFE-2~CFE-9は全て、クロトン酸ではない有機酸又は有機塩を含んでいた。1回目のCoエッチングの後、比較配合物のうち2つのみ(つまり、CFE-2及びCFE-3)が不動態CoOx-OH層を生じず、それ以外の比較配合物は厚い不動態CoOx-OH層を形成したか又はCo層にダメージを受けた。しかし、2回目のCoエッチング後には、比較配合物CFE-2及びCFE-3もまた不動態CoOx-OH層を形成した。対照的に、1回目のCoエッチング後でも2回目のCoエッチング後でも、配合物FE-2(クロトン酸を含む)は実質的な厚さを有する不動態CoOx-OH層を形成しなかった。
【0068】
実施例3
配合例3~7(FE-3~FE-7)及び比較配合例10~12(CFE-10~CFE-12)を一般的手順1に従って調製し、一般的手順2及び3に従って評価した。配合及び試験結果は表3にまとめられている。
【0069】
【0070】
表3に示されるように、比較配合物CFE-10及びCFE-12はクロトン酸を含まず、不動態CoOx-OH層を形成した。加えて、比較配合物CFE-11は金属腐食抑制剤を含まず(この結果、過剰なCoエッチングとなった)、やはり不動態CoOx-OH層を形成した。対照的に、配合物FE-3、FE-4、FE-6、及びFE-7はより少ないCoOx-OH層を形成したか、CoOx-OH層を何ら形成しなかった。配合物FE-5は、比較的低いpH、抑制剤の量が比較的少ないこと、比較的低い抑制効率を有する抑制剤を用いていること等の複数の因子の組み合わせのために比較的厚いCoOx-OH層を形成したと考えられる。
【0071】
実施例4
配合例8~9(FE-8~FE-9)を一般的手順1に従って調製し、一般的手順2及び3に従って評価した。配合及び試験結果は表4にまとめられている。
【0072】
【0073】
表4に示されるように、FE-8及びFE-9両組成物はクロトン酸を含み、比較的高いpHを有していて過剰なCoエッチングを抑制するものであった。結果は、どちらの配合物も不動態CoOx-OH層を形成しなかったことを示した。加えて、配合物FE-8及びFE-9どちらも、比較的高いTiN/SiN、TiN/AlOx、及びTiN/SiOxエッチング選択性を示し、これにより、TiNの除去中に配合物に曝された半導体基板におけるSiN、AlOx、及びSiOxの除去を減少させた。
【0074】
本発明を、発明の特定の実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、改変及びバリエーションも、記載されまたクレームされた事項の精神及び範囲内であることが理解されよう。
【国際調査報告】