(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】燃料電池システムのための動作ストラテジを設定する方法および回路アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04313 20160101AFI20220318BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20220318BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20220318BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20220318BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20220318BHJP
【FI】
H01M8/04313
H01M8/00 Z
H01M8/04694
H01M8/04537
H01M8/0432
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/00 A
H01M8/04225
H01M8/04302
B60L58/30
B60L50/75
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541213
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2020050899
(87)【国際公開番号】W WO2020152006
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019200949.2
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハーン セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ヨッヘン
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD01
5H125BD02
5H125BD10
5H125BD14
5H125CA18
5H125DD01
5H125EE27
5H125EE32
5H125EE33
5H125EE37
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE52
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB66
5H127DB91
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC90
5H127EE04
5H127FF08
5H127FF12
(57)【要約】
本発明は、特に車両の形式の電力発生装置(1)の燃料電池システム(2)のための動作ストラテジを電力発生装置(1)の動作方式に依存して設定する方法であって、検出ユニット(3)によって電力発生装置(1)の少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)を検出するステップと、検出ユニット(3)によって電力発生装置(1)の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)を検出するステップと、設定ユニット(8)によって、電力発生装置(1)の少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)と少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)にもとづいて燃料電池システム(2)のための動作ストラテジを設定するステップと、包含する方法に関する。本発明は、さらに、対応する回路アセンブリ(10)、コンピュータプログラム(20)、およびコンピュータプログラム(20)が記憶される記憶手段に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両の形式の電力発生装置(1)の燃料電池システム(2)のための動作ストラテジを前記電力発生装置(1)の動作方式に依存して設定する方法であって、
-検出ユニット(3)によって前記電力発生装置(1)の少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)を検出するステップと、
-前記検出ユニット(3)によって前記電力発生装置(1)の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)を検出するステップと、
-設定ユニット(8)によって、前記電力発生装置(1)の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)と前記少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)にもとづいて前記燃料電池システム(2)のための前記動作ストラテジを設定するステップと、を包含する、方法。
【請求項2】
前記電力発生装置(1)の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)として、
-前記電力発生装置(1)の現在動作状態、
-車両の形式の前記電力発生装置(1)の現在車両速度、
-前記電力供給装置(1)の少なくとも1つのシステムコンポーネントの現在動作温度、
-前記電力供給装置(1)のトラクションバッテリ(4)の現在充電状態SOC、および/または
-前記電力供給装置(1)のすべての電気的コンポーネントの目標電力、が検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電力発生装置(1)の前記少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)として、
-前記電力発生装置の少なくとも1つの機能部品の劣化データ、
-前記電力発生装置(1)のスイッチオン/オフ数、
-車両の形式の前記電力発生装置(1)のストップフェーズの頻度および/または継続時間、
-車両の形式の前記電力発生装置(1)の停止フェーズの頻度および/または継続時間、
-車両の形式の前記電力発生装置(1)における駆動電力の平均必要量、
-車両の形式の前記電力発生装置(1)のナビゲーションシステムのナビゲーションデータにもとづく予測動作パラメータ(P4)、ならびに/あるいは
-車両の形式の前記電力発生装置(1)のCar2X受信器のCar2Xデータにもとづく予測動作パラメータ(P4)、が検出されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、前記ハイブリッド車のスタート/ストップ自動装置の作動時に、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、前記ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつ前記トラクションバッテリ(4)の前記充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態に相当すると確認され、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より小さいと確認されることが予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より少ないと確認される場合、前記燃料電池システム(2)が前記コンプレッサ(5)を含めてスイッチオフされるように設定されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、前記ハイブリッド車のスタート/ストップ自動装置の作動時に、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、前記ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつ前記トラクションバッテリ(4)の前記充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態に相当すると確認され、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より小さいと確認されることが予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より多いと確認される場合、前記燃料電池システム(2)が、続いて予め定めることのできる期間の間、さらに空転で動作する前記コンプレッサ(5)を除いてスイッチオフされるように設定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、前記ハイブリッド車のスタート/ストップ自動装置の作動時に、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、前記ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつ前記トラクションバッテリ(4)の前記充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態より低いと確認され、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より小さいと確認されることが予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より多いと確認される場合、前記燃料電池システム(2)を連続的に動作させるように設定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が少なくとも予め定めることのできる期間の間、予め定めることのできる閾値より小さく、かつ前記ハイブリッド車のイグニッションがオンであることが確認される場合、前記燃料電池システム(2)を連続的に動作させるように設定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、前記ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつ前記トラクションバッテリ(4)の前記充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態より低いことが確認される場合、前記燃料電池システム(2)が連続的に動作し、かつ前記充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態に相当するまで前記ハイブリッド車の前記トラクションバッテリ(4)が充電されるように設定されていて、続いて前記燃料電池システム(2)の初期電力が予め定めることのできる電力値に低減されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記必要とされ、要求される燃料電池電力がゼロに等しく、かつ前記ハイブリッド車が運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される場合、
-前記少なくとも1つの累積動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、前記車両の停止時間が予め定めることのできる基準停止時間より長いと確認される場合、
前記燃料電池システム(2)が前記コンプレッサ(5)を含めてスイッチオフされるように設定されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、前記ハイブリッド車が前記運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される、および
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、前記ハイブリッド車の予め定めることのできる数の停止時間が予め定めることのできる期間にわたってそれぞれ目標時間より短かったと確認される場合、前記燃料電池システム(2)が、予め定めることのできる期間に、さらに空転で動作する前記コンプレッサ(5)を除いてスイッチオフされるように設定されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、前記ハイブリッド車が前記運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される場合、および
-前記トラクションバッテリ(4)の前記充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態より低い場合、前記燃料電池システム(2)が予め定めることのできる期間の間なお連続的に動作し、続いて前記コンプレッサ(5)を含めてスイッチオフされるように設定されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記電力発生装置(1)がトラクションバッテリ(4)を有するハイブリッド車の形式で形成され、前記燃料電池システム(2)が前記燃料電池システム(2)の燃料電池スタック(7)に空気を供給するためのコンプレッサ(6)を有する空気供給ユニット(5)を備え、前記燃料電池システム(2)の前記動作ストラテジは、
-前記ハイブリッド車の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)の検出時に、前記ハイブリッド車において必要とされる電力が前記燃料電池システム(2)の最低電力より少なく、かつ前記ハイブリッド車が前記運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される場合、
前記燃料電池システム(2)が、前記トラクションバッテリ(4)の充電状態が予め定めることのできる目標状態に相当するまで、前記トラクションバッテリ(4)が充電される予め定めることのできる期間の間なお連続的に動作し、続いて予め定めることのできる時間の間、さらに空転で動作する前記コンプレッサ(5)を除いてスイッチオフされるように設定されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータプログラム(20)であって、コンピュータによって前記コンピュータプログラム(20)を実行した場合に、前記コンピュータに請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータプログラム(20)が記憶される記憶手段であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成および形成されている、記憶手段。
【請求項15】
特に車両の形式の電力発生装置(1)の燃料電池システム(2)のための動作ストラテジを請求項1~12の方法による前記電力発生装置(1)の動作方式に依存して設定する回路アセンブリ(10)であって、
-前記電力発生装置(1)の少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)と、前記電力発生装置(1)の少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータ(P2、P3、P4)とを検出する検出ユニットと、
-前記電力発生装置(1)の前記少なくとも1つの現在動作パラメータ(P1)と前記少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータ(P2、P3、P4)にもとづいて前記燃料電池システム(2)のための前記動作ストラテジを設定する設定ユニットと、
を備える、回路アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力発生装置(Leistungserzeugungsvorrichtung)の燃料電池システムのための動作ストラテジもしくは動作方式を、特に車両の形式の電力発生装置のスタート/ストップ動作および/またはスイッチオン/オフ動作に関して、電力発生装置の動作方式をもとにして設定する方法および回路アセンブリに関する。さらに、本発明は、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムが記憶される記憶手段、および動作ストラテジを相応に設定するための回路アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを有する駆動システムを備える車両では、燃料電池において水素と反応させて水もしくは水蒸気を、およびそれに伴い電気化学的変換によって電力を生成するために、通常、周囲空気からの酸素が酸化剤として利用される。
【0003】
車両のイグニッションがオンであるか、もしくは車両が完全にオフにされていないか、もしくは車両の作動できる状態が初期化されているスタート/ストップ動作、および車両が少なくとも実質的にスイッチオフもしくはオンされる車両の手動でのスイッチオフ/オンは、車両の連続動作と比較して機能コンポーネントにとってしばしば著しい熱的、機械的、物理的、および/または化学的な過負荷となる。過負荷は、車両および車両のコンポーネントの寿命を相応に短縮させ得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、特に移動型燃料電池システム、もしくは対応する車両の形式の電力発生装置に関するが、本発明による解決策は、スタート/ストップシステム、ならびに/あるいは燃料電池システムの規則的なスイッチオンおよびオフが重要である据置型の燃料電池システムの領域においても使用することができる。
【0005】
本発明の範囲内で、少なくとも部分的に上記の問題点が考慮される請求項1に記載の方法が提案される。さらに、請求項13に記載のコンピュータプログラム、請求項14に記載の記憶手段、および請求項15に記載の回路アセンブリが提案される。本発明の有利な実施形態は、以下の説明、従属請求項、および図から明らかになる。その際、方法との関連で説明される特徴および詳細は、当然のことながら本発明によるコンピュータプログラム、本発明による記憶手段、本発明による回路アセンブリとの関連でも当てはまり、それぞれ、その逆もしかりであり、それにより個々の発明の態様の開示に関して常に相互参照される、もしくは相互参照され得る。
【0006】
本発明の第1の態様では、特に車両の形式の電力発生装置の燃料電池システムのための動作ストラテジを電力発生装置の動作方式に依存して設定する方法が提案される。方法は、
-検出ユニットによって電力発生装置の少なくとも1つの現在動作パラメータを検出するステップと、
-検出ユニットによって電力発生装置の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータを検出するステップと、
-設定ユニットによって、電力発生装置の少なくとも1つの現在動作パラメータと少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータをもとにして燃料電池システムのための動作ストラテジを設定するステップと、を包含する。
【0007】
本発明による方法を用いて、電力発生装置の使用プロファイルに対する、もしくは使用プロファイルのための動作ストラテジの適応的適合もしくは種々な動作ストラテジ間の切替えを履歴的な(historisch)、現在の、および/または将来のデータにもとづいて現今に、オンラインで、および電力供給装置の寿命にわたって実現することができる。
【0008】
燃料電池システムの動作ストラテジは、特に、スタート/ストップ自動装置によって実現されるスタート/ストップ動作方式、および/または電力発生装置のスイッチオン/オフ動作方式に依存して設定される。すなわち燃料電池システムの動作ストラテジは、認識されたスタート/ストップ動作および/または認識された電力発生装置のスイッチオン/オフ動作に依存して設定され得る。動作ストラテジとは、燃料電池システムもしくは燃料電池システムの機能コンポーネントが開ループ制御および/または閉ループ制御される、あるいはされている様式と解され得る。
【0009】
本発明による方法を用いて、燃料電池システムの種々な機能部品の質的低下もしくは劣化を最小化することができる。さらに、燃料電池システムの全効率を向上させることができる。燃料電池システムの動作方式をスタート/ストップ動作および/または電力発生装置のスイッチオン/オフ動作に適合可能なことによって、燃料電池システムの機能部品の過剰設計(Ueberauslegung)を防止する、もしくは機能部品に課せられる要件の低減を達成することができる。さらに、本発明による方法によって、動作ストラテジを走行状態に、および車両として形成された電力発生装置の運転者に柔軟に適合させることができる。アクタ、ならびに/あるいは水素再循環ブロワ、冷媒ポンプおよび/または調節弁などの機能部品を保護することができる。
【0010】
本発明による方法は、特に、気体軸受を有するアクタを備える燃料電池システムのために使用される。この軸受の変形形態にとって、スタートストップストラテジの適合は、効率および寿命に課せられる必要な要件を満たすことができるようにするために特に重要である。
【0011】
この方法によって、スタート/ストップ動作、および/または電力発生装置のスイッチオン/オフ動作時の、燃料電池システムの機能部品およびサブシステムにとって不都合な状態が阻止されるか、少なくともその数を低減することができる。
【0012】
電力供給装置(Leistungsversorgungsvorrichtung)のスイッチオンされた動作状態とは、電力供給装置がアクティブ状態にある動作状態と解される。その際、殊にイグニッションがアクティブであり、車両として形成された電力発生装置が走行準備のできた状態(fahrbereit)である。この動作状態において、必要な場合に燃料電池システムを自動的にオフにするか、または再びオンにすることができる。電力供給装置のスイッチオフされた動作状態とは、電力供給装置が利用者によって手動でスイッチオフされている、もしくはされた動作状態と解され得る。この場合、車両として形成された電力発生装置のイグニッションはもはやスイッチオンにされ得ない。電力供給装置が車両の形式で形成されている場合、車両はスイッチオフされた動作状態において停止されている、または少なくとも停止準備ができた状態とみなされ得る。
【0013】
少なくとも1つの現在動作パラメータおよび少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータをもとにして、種々な動作パラメータおよび/または境界条件に依存してスタート/ストップ動作ストラテジを変化させる、もしくは適合させることができる。可能な変形形態は、特にユーザによる手動のスイッチオフ過程、および電力発生装置のスタート/ストップ自動装置による自動スイッチオフ過程に適用可能である。
【0014】
現在動作パラメータとは、一時的に現在の、直接取出し可能もしくは測定可能な動作パラメータ、もしくはモデルにもとづいて算出されたパラメータと解され得る。この種の動作パラメータとは、検出された電圧および電流をもとにして算出される現在電力とも解され得る。方法は、殊に連続的に実行される。すなわち、所望の動作ストラテジが設定されると直ちに方法もしくは対応するルーチンが終了されるのではなく、特に予め定めることのできる時間の後に新たに進行し始める。
【0015】
車両は、殊に乗用車または貨物自動車の形式で形成されている。しかし路面車両に代えて、車両とは航空機、軌条車両、船舶、またはロボットとも解され得る。
【0016】
機能部品は、例えば、燃料電池スタックに、特に燃料電池システムの燃料電池スタックのカソード部に空気を供給するための燃料電池システムの空気供給システムのコンプレッサであり得る。この種のコンプレッサは、基本的に堅牢であるにもかかわらず、特にそれに形成された気体軸受にもとづいて制限的にしかスタート/ストップ可能でない。なぜなら、スタート/ストップ動作時に気体軸受に比較的大きい摩擦が生じ、それにより軸受が顕著な質的低下にさらされるからである。この種の機能部品の別の例は、燃料電池スタックであり、燃料電池スタックにおいては、スタック電力が過度に小さい、もしくは電流が相応に小さい場合にセル電圧が比較的大きく上昇し、それにより質的低下が著しく大きくなる。そのため本発明による方法を用いて、例えば、予め定めることのできる電力限界未満での燃料電池スタックの動作を許さないことを確保することができる。空気供給システムが複数のいわゆる摩擦スタート(Reibstart)、すなわち持ち上がり回転数(Abhebedrehzahl)未満の回転数での、気体軸受における固体摩擦を伴うスタート/ストップ過程をすでに終えた場合、空気供給システムもしくはコンプレッサを完全にスイッチオフすることを可能な限り少なくすることができ、すなわち可能な限り空転で動作させることができる。大抵の場合に長距離を走る車両では、スタート/ストップ過程の全数が全体として低いことから都市交通においてもスイッチオフが行われ得る。続いて、他の例を関連する従属請求項に関して説明する。
【0017】
本発明の一実施形態では、方法において電力発生装置の少なくとも1つの現在動作パラメータとして、
-電力発生装置の現在動作状態、
-車両の形式の電力発生装置の現在車両速度、
-電力供給装置の少なくとも1つのシステムコンポーネントの現在動作温度、
-電力供給装置のトラクションバッテリの現在充電状態SOC、および/または
-電力供給装置のすべての電気的コンポーネントの目標電力、が検出されることが可能である。
【0018】
現在動作状態に関して、特に、電力発生装置が手動でスイッチオンまたはスイッチオフされたか、あるいはされているか、すなわち電力発生装置のイグニッションがオンであるかオフであるかが検出される。現在動作温度は、例えば燃料電池システムの少なくとも1つの燃料電池スタックのものが検出され得る。電力供給装置のすべての電気的コンポーネントの目標電力とは、車両として形成された電力供給装置の電気システムにおける所望の、または必要な電力と解され得る。
【0019】
さらに、本発明による方法では、電力発生装置の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータとして、
-電力発生装置の少なくとも1つの機能部品の劣化データ、
-電力発生装置のスイッチオン/オフ数、
-車両の形式の電力発生装置のストップフェーズの頻度および/または継続時間、
-車両の形式の電力発生装置の停止フェーズの頻度および/または継続時間、
-車両の形式の電力発生装置における駆動電力の平均必要量、
-車両の形式の電力発生装置(1)のナビゲーションシステムのナビゲーションデータにもとづく予測動作パラメータ、ならびに/あるいは
-車両の形式の電力発生装置のCar2X受信器のCar2Xデータにもとづく予測動作パラメータ、が検出されることが可能である。
【0020】
劣化データを検出するために、例えば、機能部品の少なくとも1つの動作時間をカウントする動作時間カウンタが評価され得る。劣化データを検出するために、モデルにもとづく劣化推定もしくは劣化計算をさらに使用することができる。少なくとも1つの予測動作パラメータは、殊にクラウド情報にもとづいて検出され得る。Car2Xデータを利用する場合、車両が信号機で停止中の場合に、例えば予想される停止継続時間の予測が可能であり、それにより燃料電池システムのスイッチオフか動作継続かを決定することが可能である。
【0021】
さらに、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成されてもよく、また燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備えてもよく、燃料電池システムの動作ストラテジは、
ハイブリッド車のスタート/ストップ自動装置の作動時に、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつトラクションバッテリの充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態に相当すると確認され、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より小さいと確認されることが予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より少ないと確認される場合、燃料電池システムがコンプレッサを含めてスイッチオフされるように設定される。
【0022】
この手法は、運転者が認識され、走行サイクルが認識もしくは検出されることにより、燃料電池電力が必要とされないというあまりない事例が生じることが認識された場合に使用され得る。これはアウトバーンを頻繁に走行もしくは長距離を走行する車両に当てはまり得る。これに加えて、トラクションバッテリの充電状態が高い、もしくは目標状態であることが認識される場合にこの方法が適用され得る。空気供給ユニットとは、酸素、または空気などの酸素含有流体を燃料電池スタック、特に燃料電池スタックのカソード部に導く酸素供給ユニットと解され得る。充電状態が目標状態に相当し得るとは、トラクションバッテリの充電値が予め定めることのできる閾値を超えるか、または予め定めることのできる目標値の範囲にあることと解され得る。ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より小さいことが、予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より少ないと確認されるとは、スタート/ストップ劣化の危険のある少なくとも1つのコンポーネントの(に関して)負荷プロファイルもしくは特性値が基準負荷プロファイルもしくは基準特性値より小さいことと解され得る。これは、例えばコンプレッサスタートの数の形式の特性値が、特に予め定めることのできる動作継続時間でコンプレッサスタートの基準数の形式の基準特性値より小さい場合に当てはまり得る。すなわちこの場合、負荷プロファイルは、実際数が基準数と比較される簡単なオン/オフ数であり得る。負荷プロファイルは、履歴的に現時点まで使用され得るが、予測により先見的に将来も一緒に考慮することができる。
【0023】
これに加えて、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え、燃料電池システムの動作ストラテジは、ハイブリッド車のスタート/ストップ自動装置の作動時に、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつトラクションバッテリの充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態に相当すると確認され、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より小さいと確認されることが予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より多いと確認される場合、燃料電池システムが、続いて予め定めることのできる期間の間、さらに空転で動作するコンプレッサを除いてスイッチオフされるように設定されることが可能である。
【0024】
この方法は、例えば頻繁に短距離走行または渋滞走行するため、燃料電池電力がそれほど頻繁に必要とされない場合に利用され得る。さらに、この方法は、トラクションバッテリの充電状態が高い、もしくは目標状態にある場合に適用され得る。それによって、コンプレッサスイッチオフの数を格段に低減することができ、それに対応してコンプレッサを保護することができる。ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少ないことが、予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より多く確認されるとは、少なくとも1つのスタート/ストップ劣化の危険のあるコンポーネントの(に関して)負荷プロファイルもしくは特性値が、基準負荷プロファイルもしくは基準特性値より大きいことと解され得る。これは例えばコンプレッサスタートの数の形式の特性値が、特に予め定めることのできる動作継続時間で、コンプレッサスタートの基準数の形式の基準特性値より大きい場合に当てはまり得る。すなわちこの場合、負荷プロファイルは、実際数が基準数と比較される簡単なオン/オフ数であり得る。負荷プロファイルは、履歴的に現時点まで使用され得るが、予測により先見的に将来も一緒に考慮することもできる。
【0025】
さらに、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え、燃料電池システムの動作ストラテジは、ハイブリッド車のスタート/ストップ自動装置の作動時に、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつトラクションバッテリの充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態より低いと確認され、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より小さいと確認されることが予め定めることのできる期間にわたって予め定めることのできる数より多いと確認される場合、燃料電池システムを連続的に動作させるように設定されることが可能である。
【0026】
この方法変形形態は、燃料電池電力が規則的に、または現在必要とされない場合に使用され得る。この場合、燃料電池システムは可能な限り良好な効率で動作することができ、トラクションバッテリが充電され得る。燃料電池システムのオフ状態の間、必要とされる駆動電力が非常に小さい限り、車両はトラクションバッテリを用いて電気的に駆動され得る。この種の方法が使用される事例は、車両の渋滞走行もしくはストップ・アンド・ゴー走行であり得る。
【0027】
本発明の別の変形形態によれば、方法において、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え、燃料電池システムの動作ストラテジは、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が少なくとも予め定めることのできる期間の間、予め定めることのできる閾値より小さく、かつハイブリッド車のイグニッションがオンであることが確認される場合、燃料電池システムを連続的に動作させるように設定されることが可能である。
【0028】
この方法は、例えば市街地走行、渋滞走行、または短距離など、燃料電池電力が必要とされない状況がしばしば生じる場合に利用され得る。燃料電池システムを連続的に動作させるとは、燃料電池システムがスイッチオフされないことを意味する。予め定めることのできる閾値とは、燃料電池システムの許容最小電力と解され得る。トラクションバッテリが予め定めることのできる、特に最大充電状態に達し、かつ燃料電池システムが引き続きスイッチオフされ得ないか、もしくは引き続き連続的に動作すべき場合、電力発生装置および/または燃料電池システムの追加消費体(Zusatzverbraucher)がスイッチオンされ得る。それに伴い、必要とされる電力が予め定められた閾値より大きくなる。すなわち、ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの予め定めることのできる閾値より大きい、もしくは許容最小電力であり、かつハイブリッド車のイグニッションがオンであることが確認される場合、燃料電池システムは連続的に動作し得るか、もしくはスイッチオフされ得ない。
【0029】
これに加えて、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され得、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え得、燃料電池システムの動作ストラテジは、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、ハイブリッド車のイグニッションがオンであり、かつトラクションバッテリの充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態より低いことが確認される場合、燃料電池システムが連続的に動作し、かつ充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態に相当するまでハイブリッド車のトラクションバッテリが充電されるように設定され、続いて燃料電池システムの初期電力が予め定めることのできる電力値に低減される。
【0030】
このルーチンは、燃料電池電力が規則的に必要とされない場合に使用されることが好ましい。トラクションバッテリの充電状態が下方範囲であり、車両の静止中に電気システムの電力必要量が燃料電池システムの最低電力を上回る場合、燃料電池システムは決してスイッチオフされ得ない。燃料電池システムの最低電力とは、燃料電池システムを動作させることができる可能な最小限の電力値と解され得る。燃料電池システムの初期電力は電力生成の減少によって、および/または電力取り込み体(Leistungsabnehmer)の付加によって低減され得る。
【0031】
続いて、電力発生装置がスイッチオフされた、もしくは手動でスイッチオフされた動作状態にある方法の実施形態について説明する。一実施形態では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え、燃料電池システムの動作ストラテジは、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、必要とされ、要求される燃料電池電力がゼロに等しく、かつハイブリッド車が運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される場合、および
-少なくとも1つの累積動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、車両の停止時間が予め定めることのできる基準停止時間より長いと確認される場合、
燃料電池システムがコンプレッサを含めてスイッチオフされるように設定されることが可能である。
【0032】
この方法は、例えば通勤車両に適用され得る。典型的な通勤車両は、多くの場合、職場との間を往復するためにだけ使用され、それ以外のコースのために時々しか使用されない。そのような場合、車両停止フェーズは著しく長く、大抵の場合、例えば15分を優に超える。これらの車両、もしくはそのような走行挙動の車両では、この種のストラテジは、トラクションバッテリの充電状態が必要な閾値を上回る場合に有利に用いることができる。車両の停止時にトラクションバッテリの充電状態がこの閾値を下回るか、もしくは予め定めることのできる目標状態でない場合、バッテリを燃料電池システムの良好な効率で充電するための後から説明されるストラテジを使用することができる。必要とされる燃料電池電力の検出は、殊に、ハイブリッド車もしくは電力発生装置がスイッチオフされている場合に行われる。この場合、燃料電池システムの電力需要がゼロに等しいか、またはそうでないかが検出され得る。
【0033】
さらに、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え、燃料電池システムの動作ストラテジは、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、ハイブリッド車が運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される、ならびに
-ハイブリッド車の少なくとも1つの累積および/または予測動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車の予め定めることのできる数の停止時間が予め定めることのできる期間にわたってそれぞれ目標時間より短かったと確認される場合、燃料電池システムが、予め定めることのできる期間に、さらに空転で動作するコンプレッサを除いてスイッチオフされるように設定されることが可能である。
【0034】
この手法は、例えば配送車の場合に、運転者が短期間の間に車両を頻繁に停止させる場合に利用され得る。本発明に関してここで述べておきたいのは、ハイブリッド車がスイッチオフされるか、またはされている場合に燃料電池システムが必ずスイッチオフされる、またはされている必要はないということである。停止時間の頻度および/または長さは、ハイブリッド車に搭載されたGPSシステムによって、および/またはハイブリッド車の加速度センサによって検出され得る。ハイブリッド車の運転者がハイブリッド車を始動させず、予め定めることのできる時間値を超えた場合、コンプレッサがスイッチオフされ得る。必要とされる電力の検出は、殊に、ハイブリッド車がスイッチオフされている場合に実行される。この場合、燃料電池システムの電力需要がゼロに等しいか、またはそうでないかが検出され得る。
【0035】
さらに、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成されてよく、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備えてよく、燃料電池システムの動作ストラテジは、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、ハイブリッド車が運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される場合、および
-トラクションバッテリ(4)の充電状態SOCが予め定めることのできる目標状態より低い場合、燃料電池システムが予め定めることのできる期間の間、なお連続的に動作し、少なくともこの期間においてトラクションバッテリが充電され、続いて燃料電池システムがコンプレッサを含めてスイッチオフされるように設定される。
【0036】
これによっても、とりわけ、燃料電池システムがたまにしかスイッチオンおよびオフされない場合に有利な消費量が達成され得る。トラクションバッテリの充電に代えて、例えばハイブリッド車の後処理および/または調整のために燃料電池システムおよび/または電力発生装置の十分な、もしくは予め決定可能な数の消費体をオンにすることもできる。
【0037】
さらに、本発明による方法では、電力発生装置がトラクションバッテリを有するハイブリッド車の形式で形成され、燃料電池システムが燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給するためのコンプレッサを有する空気供給ユニットを備え、燃料電池システムの動作ストラテジは、
-ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータの検出時に、ハイブリッド車において必要とされる電力が燃料電池システムの最低電力より少なく、かつハイブリッド車が運転者によって手動でスイッチオフされたことが確認される場合、および
-少なくとも1つの累積動作パラメータ(P2、P3、P4)の検出時に、車両の停止時間が予め定めることのできる基準停止時間より短いと確認される場合、
燃料電池システムが、トラクションバッテリの充電状態が予め定めることのできる目標状態に相当するまでトラクションバッテリが充電される予め定めることのできる期間の間、なお連続的に動作し、続いて予め定めることのできる時間の間、まださらに空転で動作するコンプレッサを除いてスイッチオフされるように設定されることが可能である。
【0038】
例えば配送交通またはタクシー運転に見られる短い車両停止時間が認識された場合、燃料電池システムは、まずトラクションバッテリを充電し得る。その後、コンプレッサを空転モードで引き続き動作させることができる。車両停止時間に相応してアフターラン時間(Nachlaufzeit)を適応させることができる。停止時間が時間的限界を超えた場合、コンプレッサを含めて全燃料電池システムが相応の手法で停止される。ハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータを検出した場合、さらに、トラクションの充電状態SOCが検査され得る。すなわち、動作ストラテジの問題となっている設定のためのさらなるパラメータとして充電状態を利用することができる。
【0039】
本発明の別の態様では、コンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、コンピュータによってコンピュータプログラムを実行した場合に、コンピュータに上記の方法を実行させる命令を含む。したがって、本発明によるコンピュータプログラムは、本発明による方法に関して詳細に説明したのと同じ利点を伴う。コンピュータプログラムは、例えばJAVA(登録商標)、C++、またはC#などのあらゆる適切なプログラミング言語でコンピュータ可読命令コードとして実装されていてもよい。コンピュータプログラムは、例えばデータディスク、リムーバブルディスクドライブ、揮発性または不揮発性メモリ、あるいは記憶装置/プロセッサなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶されていてもよい。命令コードは、コンピュータまたは制御装置他のプログラミング可能な装置、のような特に車両制御装置を所望の機能が実行されるようにプログラミングすることができる。さらに、コンピュータプログラムが、例えばインターネットなどのネットワーク上で提供されるか、もしくはされていてもよく、必要な場合にユーザによってコンピュータプログラムをそこからダウンロードすることができる。選択された方法ステップを、例えばクラウドサーバで実行することができ、続いて車両に実装することができる。コンピュータプログラムは、ソフトウェアのみならず、1つまたは複数の特殊な電子回路によっても、すなわちコンピュータプログラム製品の形式のハードウェア、または任意に掛け合わせた形式で、すなわちソフトウェアコンポーネントおよびハードウェアコンポーネントによって実現されてもよいし、もしくはされていてもよい。本発明の範囲内で、さらに、記憶手段に記憶されるコンピュータプログラムを有する記憶手段が提供される。記憶手段とは、本発明による方法を実行するためのコンピュータプログラムがインストールされた制御装置、特に車両制御装置と解され得る。
【0040】
別の態様では、特に車両の形式の電力発生装置の燃料電池システムのための動作ストラテジを先に説明した方法による電力発生装置の動作方式に依存して設定する回路アセンブリが提供される。回路アセンブリは、電力発生装置の少なくとも1つの現在動作パラメータと、電力発生装置の少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータを検出する検出ユニットと、電力発生装置の少なくとも1つの現在動作パラメータと少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータにもとづいて燃料電池システムのための動作ストラテジを設定する設定ユニットと、を備える。それにより本発明による回路アセンブリも上記の利点を伴う。回路アセンブリは、ハードウェアコンポーネントのみならず、ソフトウェアコンポーネントによっても提供され得る。
【0041】
本発明を改良する他の措置は、図に模式的に示される本発明の種々の実施例についての以下の記載から明らかになる。請求項、明細書、または図からわかるすべての特徴および/または利点は、構造的詳細および空間的配置を含めて単独でも種々の組み合わせでも本発明にとって重要であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施形態による方法を説明するためのフローチャートの模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による回路アセンブリを説明するための模式的なブロック回路図である。
【
図3】本発明による回路アセンブリを有する車両の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1~
図3において同じ機能および動作原理の要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。
【0044】
続いて、
図1を参照して、ハイブリッド車の形式の電力発生装置1の燃料電池システム2のための動作ストラテジをハイブリッド車の動作方式に依存して設定する方法について説明する。このために、第1ステップS1において、検出ユニット3によってハイブリッド車の少なくとも1つの現在動作パラメータP1が検出される。厳密には、少なくとも1つの現在動作パラメータP1として、ハイブリッド車1の現在動作状態、ハイブリッド車の現在車両速度、ハイブリッド車の少なくとも1つのシステムコンポーネントの現在動作温度、ハイブリッド車のトラクションバッテリ4の現在充電状態SOC、および/またはハイブリッド車の電気システムにおける所望の電力が検出される。
【0045】
これに加えて、検出ユニット3によって、ハイブリッド車の少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータP2、P3、P4が検出される。厳密には、ハイブリッド車の少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータP2、P3、P4として、例えばハイブリッド車の少なくとも1つの機能部品の劣化データ、またはハイブリッド車のスイッチオン/オフ数などの劣化状態に関する情報P2、ハイブリッド車のストップフェーズの頻度および/または継続時間、車両の形式のハイブリッド車の停止フェーズの頻度および/または継続時間、あるいはハイブリッド車における駆動電力の平均必要量などのハイブリッド車の運転者、または運転者の走行プロファイルに関する情報P3、ならびに/あるいはハイブリッド車のナビゲーションシステムのナビゲーションデータ、および/またはハイブリッド車のCar2Xデータなどの予測データP4が検出され、上記のように使用される。
【0046】
続いて、第2ステップS2において、少なくとも1つの現在動作パラメータP1と電力発生装置の少なくとも1つの累積および/または予想動作パラメータP2、P3、P4とを用いて燃料電池システム2のために適した動作ストラテジが検出され得る。これは検出ユニット3によって新たに実行され得る。
【0047】
適切な動作ストラテジが検出されると直ちに、第3ステップS3において、検出された燃料電池システム2のための動作ストラテジが設定ユニット8によって設定され得る。次いで、今では存在する動作パラメータにもとづいて、方法が予め定めることのできる仕方で新たに始まり得る。動作ストラテジの切替もしくは適応は、任意の1つの変形形態から別のいずれかの変形形態へ行うことができる。
【0048】
図2において、
図3に示される回路アセンブリ10の特定の部分がブロック回路図の形式で示されている。
図2に見て取れるように、燃料電池スタック7もしくは燃料電池スタック7のカソード部に、燃料電池システム2の空気供給ユニット5によってハイブリッド車の周囲17からの空気が供給され得る。空気供給ユニット5は、空気フィルタ16とコンプレッサ6とインタークーラ12とを有する。インタークーラの下流には、バイパス弁13を有するバイパス管路が形成され、燃料電池システム2をスイッチオフした場合に空気がこのバイパス弁を介してカソード部の傍らを通過するように導かれ得る。燃料電池スタック7、もしくは燃料電池スタック7のカソード部の下流には遮断弁19が配置され、バイパス弁13が開かれる場合には、カソード部に酸素欠乏を起こすためにこの遮断弁が遮断する。
図2に示されるシステムは、電気モータ14と関連するインバータ15とをさらに有する。
【0049】
図3において、トラクションバッテリ4と燃料電池システム2と燃料タンク18を有するハイブリッド車の形式の電力発生装置1が示されている。ハイブリッド車は、ハイブリッド車の燃料電池システム2のための動作ストラテジをハイブリッド車の動作方式に依存して設定するための回路アセンブリ10を有する。ハイブリッド車は、検出ユニット3と設定ユニット8とを有する制御装置11をさらに備える。制御装置11には、さらに上記の方法を実行するためのコンピュータプログラム20がインストールされている。
【0050】
図示された実施形態の他に、本発明はさらなる形成原理を可能にする。すなわち本発明は、図を参照して説明された実施例に限定されるものとみなされるべきでない。特に、
図1に示されるフローチャートもしくは対応する方法の範囲内で、従属請求項との関連で詳細に説明した上記の方法形態を実行することができる。
【0051】
さらに、ハイブリッド車では、通常、ハイブリッド車をスイッチオフした場合に、アフターラン手順の最終段階において水素再循環ポンプおよび冷媒ポンプをオフにすることができることに留意されたい。それでも、例えば配送運転におけるハイブリッド車の短い停止フェーズを認識した場合は、少なくともこれらのアクタを引き続き動作させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電力発生装置
2 燃料電池システム
3 検出ユニット
4 トラクションバッテリ
5 空気供給ユニット5
6 コンプレッサ
7 燃料電池スタック
8 設定ユニット
10 回路アセンブリ
11 制御装置
12 インタークーラ
13 バイパス弁
14 電気モータ
15 インバータ
17 周囲
18 燃料タンク
19 遮断弁
20 コンピュータプログラム
SOC 充電状態
P1、P2、P3、P4 動作パラメータ
【国際調査報告】