IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-防食性が向上したインジェクタ 図1
  • 特表-防食性が向上したインジェクタ 図2
  • 特表-防食性が向上したインジェクタ 図3
  • 特表-防食性が向上したインジェクタ 図4
  • 特表-防食性が向上したインジェクタ 図5
  • 特表-防食性が向上したインジェクタ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】防食性が向上したインジェクタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/14 20060101AFI20220323BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
F02M61/14 320A
F02M61/16 K
F02M61/16 F
F02M61/14 320J
F02M61/16 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545879
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2019087144
(87)【国際公開番号】W WO2020160834
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】102019201507.7
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ユング,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ベック,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】グラーザー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハーラー,ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ,ネリー
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA32
3G066BA50
3G066BA65
3G066CC01
(57)【要約】
本発明は、ハウジング(32)と、環状のホールシール(4)を収容するために設置されている、ハウジング(32)に配置された収容部(6)であって、インジェクタ(3)の外側面を第1の外部領域(33)と第2の外部領域(34)とに分割する収容部(6)と、ホールシールを橋渡し接続する貫通路を流体に提供するために、第1の外部領域(33)と第2の外部領域(34)とを接続する橋渡接続部(5)と、を含む、流体を噴射するインジェクタに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ハウジング(32)と、
- 環状のホールシール(4)を収容するために設置されている、前記ハウジング(32)に配置された収容部(6)であって、
- 前記インジェクタ(3)の外側面を第1の外部領域(33)と第2の外部領域(34)とに分割する収容部(6)と、
- ホールシール(4)を橋渡し接続する貫通路を流体に提供するために、前記第1の外部領域(33)と前記第2の外部領域(34)とを接続する橋渡接続部(5)と、
を含む、流体を噴射するインジェクタ。
【請求項2】
前記橋渡接続部(5)は、前記第1の外部領域(33)と前記第2の外部領域(34)とを接続する、前記ハウジング(32)に構成された溝(50)である、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
前記収容部(6)は、第1の外側に突出したフランジ(7)と、第2の外側に突出したフランジ(8)とを有し、前記第1のフランジ(7)および前記第2のフランジ(8)は、その間に前記ホールシール(4)を収容するために設置されている、請求項1または2に記載のインジェクタ。
【請求項4】
前記第1のフランジ(7)および/または前記第2のフランジ(8)は前記インジェクタの軸方向(X-X)に中断されている、請求項3に記載のインジェクタ。
【請求項5】
前記橋渡接続部(5)は前記ハウジング(32)の前記収容部(6)の領域に、前記第1および第2の外部領域(33、34)の間に貫通路を提供するために、取り付けられたホールシール(4)の前記ハウジング(2)への完全な当接を回避するように設置された、少なくとも1つの突出領域(51;52)を有する、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項6】
前記橋渡接続部(5)は、前記第1の外部領域と前記第2の外部領域とを接続する非直線状の貫通路を画定するラビリンス(53)を有する、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項7】
前記橋渡接続部(5)は前記ハウジング(32)内に、前記ハウジング(32)を通って延在し、前記ホールシール(4)のための前記収容部(6)を少なくとも部分的に、特に完全に橋渡し接続する貫通路を有する、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項8】
前記収容部(6)に配置されている、特にエラストマーからなるホールシール(4)をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のインジェクタ。
【請求項9】
前記ハウジング(32)はプラスチックからなる射出成形ハウジングである、請求項1から8のいずれか一項に記載のインジェクタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のインジェクタ、特に燃料インジェクタを含む内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食性が向上した、流体を噴射するインジェクタ、特に燃料インジェクタに関する。また、本発明は、このようなインジェクタを有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する内燃機関では、通常、燃料インジェクタを収容するインジェクタホールがシリンダヘッドに設けられている。インジェクタホールへの外部からの液体や汚れ等の侵入を防止するために、インジェクタホールを周辺から密閉する、いわゆるホールシールが設けられている。しかし現在、例えば高圧洗浄機によるエンジン洗浄時に、ホールシールを介してインジェクタホールに液体が侵入することが確認されている。この液体は、高温になる内燃機関の作動時であっても、密閉しているホールシールを通って周辺に戻ることはできないが、インジェクタの構造部材の腐食や、極端な場合には電気的な短絡を引き起こす。したがって、改良されたホールシールを有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これに対して、請求項1の特徴を有する、流体を注入するための本発明にかかるインジェクタは、インジェクタが取り付けられた状態で、インジェクタに残る液体によって引き起こされる可能性のある腐食や、電気的な問題も回避できるという利点を有する。インジェクタは、取付状態でインジェクタホール内に配置されており、インジェクタホールはホールシールによって周辺から密閉されている。インジェクタの作動中に、水などの液体は、インジェクタホールの領域に集積でき、本発明にかかる解決手段によって周辺に排出できる。これは本発明によれば、インジェクタがハウジングと、ハウジングに環状に配置された収容部とを含むことによって達成される。収容部は、ホールシールを収容するために設置されている。ここで収容部は、インジェクタの軸方向の外側面を第1の外部領域と第2の外部領域とに分割し、本発明によれば、第1の外部領域と第2の外部領域との間に橋渡接続部が提供されている。橋渡接続部は、流体のための貫通路を提供し、貫通路はホールカバーを橋渡し接続する。これにより、インジェクタホールに集積した流体を周辺に排出することができる。
【0004】
従属請求項は、本発明の好ましい改善形態を示す。
【0005】
好ましくは、橋渡接続部は、ハウジングの第1の外部領域と第2の外部領域とを接続する、ハウジングに構成された溝を含む。ここで、溝は、インジェクタがホールシールに取り付けられた状態で、ホールシール内に半径方向に構成され、流体の交換を可能にする。特に好ましくは、溝は直線状に設けられている。溝は、インジェクタの中心軸と平行に配置されていてもよいし、インジェクタの中心軸に対して斜めに配置されていてもよい。また、複数の溝が、ホールカバーのための収容部を橋渡し接続するために、ハウジングの周縁部に沿って設けられていてもよい。
【0006】
さらに好ましくは、収容部は、第1の外側に突出したフランジと、第2の外側に突出したフランジとを含み、第1および第2のフランジは、環状に構成されており、その間にホールシールを収容するために設置されている。ここで、橋渡接続部は、好ましくは、流体のための貫通路を提供するために、第1のフランジおよび第2のフランジにそれぞれ中断部を有する。
【0007】
本発明の代替的な形態によれば、ホールカバーのための収容部の領域におけるハウジング上の橋渡接続部は、ハウジングの第1の外部領域と第2の外部領域とを接続する、流体のための貫通路を画定するために、取り付けられたホールシールの完全な当接を回避するように設置された少なくとも1つの突出領域を有する。この突出領域によって、ホールシールは取付状態でハウジングの外側面に直接当接しないため、第1の外部領域から第2の外部領域への、流体のための少なくとも1つの貫通路が生じる。好ましくは、複数の突出領域がハウジングの周縁部に沿って設けられ、したがってそれに応じて流体のための複数の貫通路が生じる。
【0008】
本発明の他の代替的な形態によれば、橋渡接続部は、ハウジングの第1の外部領域と第2の外部領域とを接続する、ハウジング内の少なくとも1つの貫通開口部を含む。ここで、貫通開口部はハウジングを通って延在し、ホールシールのための収容部が橋渡し接続されるように配置されている。ここで、貫通開口部は、ハウジング内に完全に設けられ、ホールシールを取り付けられた状態で完全に橋渡し接続することができ、または、貫通開口部がホールシールの収容部の一部のみを橋渡し接続し、ホールシールにおける残りの部分が溝および/または突出領域によって橋渡し接続される形態も考えられる。
【0009】
流体が外部からインジェクタホールに侵入することを可能な限り防止するために、橋渡接続部は好ましくはラビリンスとして構成されている。この場合、橋渡接続部は直線状の溝等として設けられるのではなく、ハウジングの第1の外部領域と第2の外部領域との間に直線状の接続部を設けないように、貫通路を1回以上迂回させる。
【0010】
さらに好ましくは、インジェクタは、特に弾性材料からなるホールシールを含み、ホールシールはハウジングの収容部内に配置されている。ホールシールは、例えば、Oリングなどの環状に閉じられたリングであってもよい。
【0011】
ハウジングは、好ましくはインジェクタのベース本体に射出成形された射出成形ハウジングである。これにより、橋渡接続部を、オーバーモールドするためのハウジングに容易に組み込むことができるため、橋渡接続部を製造するための追加の加工ステップが不要となる。これにより、防食性が向上したインジェクタを非常に容易かつ安価に製造することができる。
【0012】
さらに好ましくは、インジェクタは、シリンダヘッドと本発明にかかるインジェクタとを含むシリンダヘッド装置の一部である。
【0013】
また、本発明は、本発明にかかるインジェクタ、特に燃料インジェクタを有する内燃機関に関する。ここで、燃料インジェクタは、好ましくは内燃機関のシリンダヘッド内に配置されており、内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する。
【0014】
以下に、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シリンダヘッドのインジェクタホールに取り付けられた状態のインジェクタの概略図である。
図2】橋渡接続部を有する図1のインジェクタのハウジングの概略拡大図である。
図3】本発明の第2の実施形態にかかる橋渡接続部を有するインジェクタの概略断面図である。
図4図3のインジェクタの概略部分透視図である。
図5】本発明の第3の実施形態にかかるインジェクタの概略部分透視図である。
図6】ホールシールが取り付けられた図5のインジェクタの概略部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1および図2を参照して、本発明の好ましい第1の実施形態にかかるインジェクタ3を詳述する。
【0017】
図1は、インジェクタ3がインジェクタホール21に取り付けられている状態のインジェクタ3の取付状態を示す。内燃機関のシリンダヘッド2には、インジェクタホール21が設けられている。図1から明らかであるように、インジェクタ3は、内燃機関の燃焼室20に直接燃料を噴射する。
【0018】
インジェクタ3のハウジング32には、インジェクタホール21を周辺23から密閉するホールシール4が設けられている。ここで、図1からわかるように、インジェクタホール21においてインジェクタ3とシリンダヘッド2との間に隙間22が生じる。
【0019】
また、インジェクタ3には、燃料接続部30および電気接続部31が示されている。
【0020】
例えば高圧洗浄機によるエンジン洗浄時にインジェクタホール21の隙間22に集積した液体に、周辺23に逃げる手段を与えるために、本発明によれば、図2から詳細がわかる橋渡接続部5が設けられている。ここで、橋渡接続部5は、ハウジングの第1の外部領域33からハウジングの第2の外部領域34への流体貫通路を提供する。ここで、ハウジングの第1および第2の外部領域33、34への分割は、ハウジング上の収容部6によって画定され、収容部6は、ホールシール4を収容するために設置されている。
【0021】
図2からわかるように、収容部6は、ハウジングの外側面に環状に設けられた第1の外向きに突出したフランジ7と、第2の外向きに突出したフランジ8とを含む。
【0022】
ここで、第1および第2のフランジ7、8は互いに平行であり、それぞれがインジェクタ3の軸方向X-Xに直交する平面内に位置する。第1のフランジ7と第2のフランジ8との間には収容底部9が設けられ、収容底部9で図2には図示されていないホールシールが密閉する。
【0023】
ここで、図2からさらにわかるように、第1および第2のフランジ7、8にそれぞれ中断部7a、8aが設けられ、中断部7a、8aを通って橋渡接続部の溝50が延在する。これにより、ハウジングは、中断部7a、8aおよび収容底部9の領域内でより深くなるため、第1の外部領域33から第2の外部領域34への貫通路が存在し、この貫通路を介して、インジェクタホール内の液体または蒸発した液体が周辺23に逃げることができる。
【0024】
この実施形態では、溝50は直線状であり、インジェクタの中心軸X-Xと平行に配置されている。しかしながら、溝50がインジェクタの中心軸に対して斜めに配置されていることも可能である。また、ハウジング32の周辺部に沿って、複数の溝およびそれに対応する複数の中断部が収容部6に設けられていることも可能である。
【0025】
したがって、ホールシール4を橋渡し接続する接続部5を設けることにより、インジェクタホール内のインジェクタの腐食を従来技術に比べて大幅に低減することができる。インジェクタホール内に存在する液体は、橋渡接続部5の貫通路を介して周辺23に逃げることができる。また、本発明によれば、インジェクタホール21内に残る液体によって発生し得る、電気的な問題を回避することができる。
【0026】
図3および図4は、本発明の好ましい第2の実施形態にかかるインジェクタ3を示す。同一または機能的に同一の部分は、第1の実施形態と同じ参照符号で示される。
【0027】
第2の実施形態では、橋渡接続部5は、インジェクタ3のハウジング32の外側面に設けられたラビリンス53を含む。図3はまた、取り付けられたホールシール4を概略的に示しており、ホールシール4はこの実施形態では環状に閉じられたリングであり、このリングは正方形の断面を有し、その上にシールリップ40が一体的に形成されている。ラビリンス53は、溝または細長い凹部として、第1の環状フランジ7、第2の環状フランジ8、および収容底部9の両方に構成されている。これにより、橋渡接続部のために第1のフランジ7および第2のフランジ7の中断部を設ける必要がない。ラビリンス53を有するこの形態は、特に、外部からのインジェクタホール21の方向への液体の進入が、ラビリンス53によって困難になるという利点を有する。インジェクタホール21から周辺23へ液体が逃げるための複数の貫通路を提供するために、このような複数のラビリンス53が、好ましくはハウジングの周縁部に沿って設けられていることに留意されたい。それ以外は、この実施形態は第1の実施形態に対応するため、そこに記載された説明を参照することができる。
【0028】
図5および図6は、本発明の第3の実施形態にかかるインジェクタ3を示している。同一または機能的に同一の部分は、第1の実施形態と同じ参照符号で再度示される。
【0029】
図5および図6からわかるように、第1の実施形態では、インジェクタ3は、ホールシール4を収容するための収容部6を有しており、この収容部6は、第1の環状フランジ7と第2の環状フランジ8とを含む。第1フランジ7と第2フランジ8との間には収容底部9が設けられているため、ホールシール4を確実に取り付けることができる。ここで、第1の実施形態とは異なり、第3の実施形態では、橋渡接続部5としての溝は設けられておらず、収容底部9に第1の突出領域51および第2の突出領域52が構成されている。図5からわかるように、第1および第2の突出領域51、52は、収容底部9から突出している。また、第1および第2の突出領域51、52は、第1のフランジ7と第2のフランジ8とを接続する。この形態により、ホールシール4が収容部6に取り付けられる際に、ホールシール4が収容底部の収容底部に沿った全周縁部に当接しておらず、第1および第2の突出領域51、52の領域において、収容底部9から僅かに離間していることが確実になる。これにより、特に第1および第2の突出領域51、52に隣接する貫通路が提供されるため、ホールシール4のための収容部6の橋渡し接続が設けられる。したがって、流体は、このようにして生成された貫通路を介して、インジェクタホール21から周辺23へと到達することができる。この時、第1および第2の突出領域51、52の高さは、収容底部9におけるホールシール4の当接を確実に中断するために、それほど大きい必要はない。したがって、第1および第2の突出領域51、52が設けられているにもかかわらず、収容部6によるインジェクタ3でのホールシール4の確実な保持が保証される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】