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特表2022-520778治療目的で投与可能な高用量非水クルクミノイド溶液
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  • 特表-治療目的で投与可能な高用量非水クルクミノイド溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】治療目的で投与可能な高用量非水クルクミノイド溶液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/121 20060101AFI20220325BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 9/54 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61K31/121
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/02
A61K9/12
A61K9/02
A61K9/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021546836
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 AU2020050081
(87)【国際公開番号】W WO2020163899
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】2019900438
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521353702
【氏名又は名称】ハルステッド,ヨセフ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハルステッド,ヨセフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA60
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB29
4C076DD25Z
4C076DD30Z
4C076DD38E
4C076FF15
4C076FF25
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA51
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA86
4C206NA02
(57)【要約】
方法は、クルクミノイドをグリセロールに溶解して投与可能溶液を作製することを含む。アルカリ塩は、グリセロール中のクルクミノイドの溶解性を、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超(および実施形態では、十分なアルカリ塩の添加で、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド200ミリグラム超まで)に増大させるために、グリセロールに添加される。結果として得られる投与可能溶液は、水性エマルジョンを必要とせずにそのまま(筋肉内注射などによって)投与され得、クルクミノイドの沈殿なしで24時間超保管され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミノイドをグリセロールに溶解して投与可能溶液を作製することであって、グリセロール中のクルクミノイドの溶解性を、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超に増大させるために、アルカリ塩がグリセロールに添加されること、および前記投与可能溶液の治療目的での投与を含む、方法。
【請求項2】
1ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド100ミリグラム超の濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
6ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約200ミリグラムの濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
13ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約250ミリグラムの濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
16ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
投与は、クルクミノイドをグリセロールに溶解してから24時間超後の前記投与可能溶液の投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
投与は、前記投与可能溶液のそのままでの投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
投与は、前記投与可能溶液の水の添加なしでの投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与可能溶液は、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
クルクミノイドは、クルクミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
クルクミノイドは、クルクミン、クルクミンの代謝物、テトラヒドロクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、およびクルクミンエステルからなる群から選択されるクルクミノイドの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ塩は、炭酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ塩は、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
グリセロールを、グリセロールの融点と沸点との間に加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記クルクミノイド溶液を濾過して任意の未溶解アルカリ塩を除去することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クルクミノイド溶液を冷却させること、および前記クルクミノイド溶液を濾過して任意の未溶解または沈殿クルクミノイドを除去することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
0.02~0.22μmのフィルタを通す、前記クルクミノイド溶液の抗菌性濾過をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
投与は、注射を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
注射は、筋肉内注射を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
注射は、皮下、皮内、腹膜腔内、および腹腔内注射の少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
投与は、鼻腔内噴霧送達、胃酸を回避する腸溶性カプセルを使用する送達、および坐剤による直腸または結腸送達の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
グリセロールに溶解したクルクミノイドを含む投与可能溶液であって、クルクミノイドがグリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超の濃度まで溶解するように、アルカリ塩がグリセロールに添加される、投与可能溶液。
【請求項26】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約200ミリグラムの濃度を含み、13ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項25に記載の投与可能溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、治療目的で投与可能な高用量非水クルクミノイド溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
クルクミンは、一部の植物によって化学的に生成される鮮黄色であり、ショウガ科Zingiberaceaeの一員であるターメリック(ウコン)の主要なクルクミノイドである。クルクミンは、ジアリールヘプタノイドであり、ターメリックの黄色い色の原因の天然フェノールであるクルクミノイドの群に属する。主なクルクミノイドとしては、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、およびテトラヒドロクルクミンが挙げられる。
【0003】
クルクミノイドは、酸性水溶液から晶出し、アルカリ性水溶液中で分解する。例えば、2009年12月31日のUS20090324703A1(Frautschy)は、クルクミンがフェルラ酸およびバニリン分解産物に加水分解するpH7.0超の水溶液中で、クルクミンが不安定であることを記述している。さらに、Physical and Chemical Stability of Curcumin in Aqueous Solutions and Emulsions:Impact of pH,Temperature,and Molecular Environment.Journal of Agricultural and Food Chemistry.Kharat,Mahesh & Du,Zheyuan & Zhang,Guodong & Mcclements,David.(2016)65.10.1021/acs.jafc.6b04815によれば、「クルクミンは、アルカリ性水溶液(pH≧7.0)中での化学分解に非常に不安定であり、酸性水溶液(pH<7)から晶出する傾向があった」。
【0004】
したがって、水系溶液中のクルクミノイドの注射剤を投与することは、実用的ではない。さらに、クルクミノイドは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、およびエタノールなどの非水溶液、ならびに潜在的に他の有機溶媒に可溶であるが、しかしながら、エタノールは、注射されると痛みを伴いかつ有毒であり、DMSOは、一般に注射に使用されず、特定の状況では神経毒であることが示されており、注射後数時間、不快臭を引き起こす。
【0005】
2012年11月1日のWO 2012/146057 A1(Chenら)は、第1に、pH調整剤(pH 5.9の酸性環境を維持するようにpHを調整する乳酸および炭酸ナトリウム調整剤)を含むクルクミン溶液を調製すること、ならびにアルカリ性水性エマルジョンが使用直前に添加される(または混合から18時間以内に使用される)第2の段階を含む、2段階のプロセスによってこの問題を解決しようと試みる。
【0006】
例えば、Chenの例4は、pH 5.9の酸性環境を維持するように乳酸および炭酸ナトリウムを含むpH調整剤で調整された、プロピレングリコールおよびグリセリンの溶液中のクルクミンの混合物を教示する。Chenは、溶液が、「保管中のクルクミノイドの沈殿を防ぐために、使用時に」水調製物を含有するエマルジョンと混合されて晶出を防ぐことをさらに教示する。
【0007】
したがって、Chenは、酸性環境を維持するpH調整剤を使用してクルクミンの分解を回避し、適用直前に水性エマルジョンを添加して沈殿の影響を低減する。
【0008】
しかしながら、問題なことに、Chenにより教示されたプロセスは、沈殿を回避するために適用直前の水性エマルジョンの添加を必要とし、したがって、Chenにより教示された溶液を、18時間超の期間、使用できる状態で保管することはできない(Chenの要約を参照)。
【0009】
クルクミノイドの投与に関する他の先行技術は、同様に水系溶液を教示する。
【0010】
例えば、2015年6月18日のWO 2015/086516A1(Grahnら)は、生分解性水性潤滑剤を製造する目的で、アルカリ塩およびクルクミンを加えた、グリセロールの水溶液を主張する。しかしながら、Grahnは、潤滑剤の一部としての水および溶解したクルクミンを必要とするため、Grahnにより教示された溶液は、含水アルカリ性環境中で急速に分解されるであろう。さらに、Grahnによれば、クルクミンは単に抗酸化剤として添加され、したがって、クルクミンの分解は、発明の抗酸化目的に必ずしも悪影響を与えないことになる。しかしながら、Grahnにより教示された溶液は、ヒトへの注射に適さないであろう。
【0011】
同様に、2011年1月6日のWO 2011/002929 A1(Modakら)は、しばしば、クルクミノイドを含み、乳酸および水酸化ナトリウムによって酸性pHに緩衝され、最低50重量%の水を含む、植物成分の組成物を教示する。しかしながら、上記の表1に示すように、クルクミンは、水またはグリセロールに易溶ではなく、おそらく、注射による体内投与用ではなく、外用クリームの一部としてこれらの様々な組成物に含まれる。
【0012】
さらに、2008年4月10日のWO 2008/042944 A2(Modak)は、5mg/mlのクルクミノイドおよび50%超の水を含み、pHに言及していない、経口投与用組成物を教示する。Modakにより開示された組成物は、水に可溶ではなく、注射されると用量依存的に毒性の強い二酸化チタンなどの成分の添加のため、注射または任意の他の手段による体内投与を意図せず、適してもいない。
【0013】
2015年5月6日のCN 104585730 Aは、まず、クルクミンをプロピレングリコールおよび酢酸に溶解し、続いて、酢酸ナトリウム溶液の添加によってpHを4~5に上昇させ、次いで、10:1の水対溶液比に水で希釈することによって安定化された、クルクミンの水溶液を開示する。結果として得られる溶液は、pH 4~5で、約10~15mg/mlを保持する。pH 4~5での酢酸の注射は、非常に痛みを伴い、そのため、この溶液は、食品以外での投与に適さない。
【0014】
あるいは、界面活性剤もしくはコサーファクタントを用いて、水溶液中のクルクミノイドの溶解性もしくは懸濁性を増大させること、またはポリエチレングリコール200/400/600もしくは他の有機溶媒などの非水溶媒中のクルクミンのエマルジョンもしくはナノ懸濁液を作り出すことが、可能な場合がある。例えば、Preparation and characterization of intravenously injectable curcumin nanosuspension,Drug Delivery,18:2 Yan Gaoら(2011)では、懸濁液中のクルクミンのナノ粒子は、PEG-400で調製されたクルクミンの注射剤に比べて認容性が良好であり得ることが示されている。
【0015】
さらに、以下の表を参照すると、クルクミノイドは、水に難溶である。
【表1】
【0016】
したがって、Chenは、クルクミンの溶解性を約1.5mg/ml(Chenの要約を参照)に増大させるために、プロピレングリコール(例えば、Chenの例4を参照)に頼る。
【0017】
しかしながら、筋肉内注射の最大用量は5mlであり、皮下注射の最大用量は2mlであり、鼻腔内投与の最大用量は0.1mlであり、坐剤の最大用量は2mlであるため、Chenにより教示された溶液は、それぞれ7.5mg、3mg、0.15mg、または3mgの比較的少ない用量しか送達することができない(例えば、「大きな筋肉群への注射は、成人で5mlを超えるべきではない」と述べる、Drawing up and administering intramuscular injections:a review of the literature.Journal of Advanced Nursing 31巻,3号Rodger,Michael A.;King,Lindy、「腹部に注射される場合、3mlまでの体積が良好な認容性を示すが、一般に受け入れられている最大体積はおよそ1.5mlである」と述べる、Subcutaneous Injection of Drugs:Literature Review of Factors Influencing Pain Sensation at the Injection Site.Advances in Therapy.2019年11月,36巻,11号.Iris Usach Rafael MartinezTeodora FestiniJose-Esteban Peris、ならびに「予想される[鼻腔内]用量は、およそ100~200μlの体積に収まるべきである」と述べる、Drug Discovery and Development-From Molecules to Medicine.Degenhard Marx,Gerallt WilliamsおよびMatthias Birkhoff.発行:2015年6月3日を参照)。
【0018】
さらに、クルクミノイドは、経口投与後のピーク血漿レベルが1~2時間以内に現れる程度まで、急速に分解されるか、代謝されるか、または体内から排出される。ラットモデルにおいて静脈内注射により投与されたクルクミンは、典型的には、投与後1~24時間以内に血漿から99%除去される。
【0019】
したがって、静脈内注射剤は、臨床環境でのみ投与可能であり、投与されたクルクミノイドは、投与から約24時間以内に体内から除去されていることになるため、Chenによる1.5mg/mlの用量を有する溶液は、診療所または病院への毎日の通院を必要とするであろう。
【0020】
そのため、適用時にさらなる調製を必要とせずにそのまま投与され得る、非水性で、高用量の、貯蔵寿命が長い(すなわち、24時間超)クルクミノイド溶液の必要性が、したがって存在する。
【0021】
本明細書で先行技術情報が参照される場合、そのような参照は、情報がオーストラリアまたは任意の他の国における当該技術分野の技術常識の一部を形成することの承認を構成するものではないことが理解されるべきである。
【発明の概要】
【0022】
本明細書では、非水性の投与可能なクルクミノイド溶液を調製することを含み、より具体的には、クルクミノイドをグリセロールに溶解することを含む方法が提供される。グリセロールは、ヒトの食用または注射に適した非水溶媒である。しかしながら、上で概説したように、クルクミンは、グリセロールに辛うじて可溶である。
【0023】
発明者らの実験は、クルクミンが、意外にも、理由はこれまでにまだ十分に理解されていないが、おそらくクルクミノイドが典型的には弱酸であるため、アルカリ塩の添加で、グリセロールにより易溶になることを見出した。
【0024】
そのため、上記表を参照すると、溶液1ミリリットル当たりクルクミノイド約10ミリグラムの最大用量しか達成することができないプロピレングリコール、ポリエチレングリコール200、およびポリエチレングリコール400などの担体を使用して達成可能なものより高い濃度まで、クルクミノイドが溶解するように、アルカリ塩がグリセロールに添加される。水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを含む他のアルカリ塩が、潜在的に使用され得るが、発明者らが好適であると見出した1つのアルカリ塩は、炭酸ナトリウムであった。
【0025】
例えば、発明者らは、グリセロール1ミリリットル当たり0.1mg~20mgの炭酸ナトリウムの添加は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミン0~300mgの濃度を達成したことを見出した。
【0026】
したがって、本投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20mg超(典型的には、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20~250mg)の用量を可能とし、これは、例えば、数日/数週にわたって間質液および血流中に徐々に溶解する、溶液の高用量筋肉内デポ剤を可能とし、毎日の注射/来診を回避する。
【0027】
したがって、先行技術の溶液とは対照的に、本製剤は水性ではなく、それにより、クルクミノイドの沈殿および分解の問題を回避する。したがって、本投与可能溶液は、沈殿または化学分解なしで24時間超保管され得、Chenにより教示された溶液のように18時間以内に使用される必要がない。
【0028】
さらに、本投与可能溶液は、水性エマルジョンの事前添加を必要とせずに、そのまま直接適用され得る。
【0029】
Chenを含む先行技術は、グリセロール中のクルクミノイドの溶解性を、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超に増大させるために、アルカリ塩がグリセロールに添加される、クルクミノイドおよびグリセロールの非水性投与可能溶液の作製を教示せず、または明白に示唆しない。
【0030】
一態様によれば、クルクミノイドをグリセロールに溶解して投与可能溶液を作製することであって、グリセロール中のクルクミノイドの溶解性を、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超に増大させるために、アルカリ塩がグリセロールに添加されること、および投与可能溶液の治療目的での投与を含む、方法が提供される。
【0031】
アルカリ塩は、グリセロール中のクルクミノイドの溶解性を、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超に増大させるために、グリセロールに添加され得、投与可能溶液は治療目的で投与される。
【0032】
1ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加され得る。
【0033】
投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド100ミリグラム超の濃度を含み得る。
【0034】
6ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加され得る。
【0035】
投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約200ミリグラムの濃度を含み得る。
【0036】
13ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加され得る。
【0037】
投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約250ミリグラムの濃度を含み得る。
【0038】
16ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加され得る。
【0039】
投与は、クルクミノイドをグリセロールに溶解してから24時間超後の投与可能溶液の投与を含み得る。
【0040】
投与は、投与可能溶液のそのままでの投与を含み得る。
【0041】
投与は、投与可能溶液の水の添加なしでの投与を含み得る。
【0042】
投与可能溶液は、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含まない場合がある。
【0043】
クルクミノイドは、クルクミンであり得る。
【0044】
クルクミノイドは、クルクミン、クルクミンの代謝物、テトラヒドロクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、およびクルクミンエステルからなる群から選択されるクルクミノイドの少なくとも1つであり得る。
【0045】
アルカリ塩は、炭酸ナトリウムを含み得る。
【0046】
アルカリ塩は、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの少なくとも1つを含み得る。
【0047】
方法は、グリセロールを、グリセロールの融点と沸点との間に加熱することをさらに含み得る。
【0048】
方法は、クルクミノイド溶液を濾過して任意の未溶解アルカリ塩を除去することをさらに含み得る。
【0049】
方法は、クルクミノイド溶液を冷却させること、およびクルクミノイド溶液を濾過して任意の未溶解または沈殿クルクミノイドを除去することをさらに含み得る。
【0050】
方法は、0.02~0.22μmのフィルタを通す、クルクミノイド溶液の抗菌性濾過をさらに含み得る。
【0051】
投与は、注射を含み得る。
【0052】
注射は、筋肉内注射を含み得る。
【0053】
注射は、皮下、皮内、腹膜腔内、および腹腔内注射の少なくとも1つを含み得る。
【0054】
投与は、鼻腔内噴霧送達、胃酸を回避する腸溶性カプセルを使用する送達、および坐剤による直腸または結腸送達の少なくとも1つを含み得る。
【0055】
別の態様によれば、グリセロールに溶解したクルクミノイドを含む投与可能溶液であって、クルクミノイドがグリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超の濃度まで溶解するように、アルカリ塩がグリセロールに添加される、投与可能溶液が提供される。
【0056】
投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約200ミリグラムの濃度を含み得、13ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加され得る。
【0057】
発明の他の態様も開示される。
【0058】
本発明の範囲内にあり得る任意の他の形態にもかかわらず、ここで、開示の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】投与可能なクルクミン溶液を作製するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、実施形態による投与可能なクルクミン溶液の調製方法100を示す。方法100は、調製方法の例示的実施形態であり、それに対する変形が本発明の合目的範囲内で行われ得ることに留意すべきである。
【0061】
方法100は、ステップ101で、グリセロールをその融点と沸点との間(17℃~290℃)に加熱することを含み得る。
【0062】
ステップ102で、炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩を、グリセロールおよびアルカリ塩の加熱溶液に溶解して、グリセロール中に希釈され得るクルクミンの量を、グリセロール1ミリリットル当たり20ミリグラム超に増加させる。
【0063】
ステップ103は、結果として得られる溶液を濾過して任意の残渣および/または任意の未溶解塩を除去することを伴い得る。
【0064】
ステップ104は、(クルクミンなどの)クルクミノイドを溶液に添加し、クルクミノイドが部分的にまたは実質的に溶解するまで溶液を撹拌するか、または他の方法で混合するか、またはかき混ぜることを含む。代替の実施形態では、クルクミノイドを、アルカリ塩の添加前に添加してよい。代替の実施形態では、クルクミノイドは、クルクミンの代謝物、テトラヒドロクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミンエステル、およびそれらの混合物を含んでよい。
【0065】
発明者らは、グリセロール1ミリリットル当たり約0.1~20mg以上の炭酸ナトリウムの添加は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミン約0~300mg以上の、対応する比率の溶解性をもたらすことを見出した。炭酸ナトリウムおよびクルクミンの両方は、必要に応じて、より高い濃度で使用され得る。
【0066】
ステップ105は、結果として得られる溶液を濾過して、未溶解クルクミン、または未溶解アルカリ塩、または他の潜在的な混入物などの、任意の粒子状残渣を除去することを含み得る。
【0067】
ステップ106は、結果として得られる溶液を、0.02~0.22μmのフィルタなどを通す滅菌システムで濾過して、任意の混入物および芽胞を含む微生物を除去すること、またはグリセロールの前濾過、エタノールに溶解した状態でのクルクミンの前濾過に続くエタノールの留去、個々のもしくは組み合わされた成分の加熱滅菌、もしくは紫外線滅菌を含む、任意の他の好適な溶液滅菌方法を含み得る。
【0068】
ステップ107は、注射などによる、調製された溶液の治療目的での投与/ヒトへの適用を含み得る。
【0069】
注射は、筋肉内注射を含み得るが、実施形態では、皮下、皮内、腹膜腔内、および腹腔内注射も含み得る。
【0070】
あるいは、溶液は、潜在的に溶液への希釈剤の添加または噴霧器の使用を伴う、鼻腔内噴霧剤として送達され得る。
【0071】
溶液はまた、注射前に、クルクミンを溶液から懸濁微細粒子として沈殿させ得る水または他の貧溶媒と混合することによって、注射を介した投与に適したナノ懸濁液を作り出すのに使用され得る。溶液はまた、腸内用、または腸内での吸収を介して肝臓もしくは血流中への吸収を潜在的に増大させるための、坐剤または腸溶性カプセルに使用され得る。
【0072】
好ましい実施形態にしたがって、ヒト投与可能なクルクミノイド溶液は、以下を含み得る:
1-グリセロール、
2-グリセロールに溶解することができ、クルクミンまたは溶媒と過剰に反応することができない、炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩または化合物、
3-クルクミノイド(クルクミン、クルクミンの代謝物、テトラヒドロクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミンエステル、およびそれらの混合物を含む)、ならびに
4-実施形態の保存剤(単数もしくは複数)(またはグリセロールに可溶な安息香酸などの抗真菌剤もしくは抗菌剤)。
【0073】
炭酸ナトリウムは、グリセリン中のその比較的高い溶解性のため好適であり得るが、炭酸ナトリウムは、特に相応に高い用量比のクルクミン溶液では、注射されると周辺組織のpHを上昇させ得る。したがって、可能な好適な代替物としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、もしくはグリセロールの任意のアルカリ塩、または好適な非水溶媒に可溶な任意のアルカリ分子が挙げられる。
【0074】
さらに、調製された溶液は、特に高用量溶液では、比較的粘性があり得るため、溶液は、注射前に、その粘性を低下させるように処理され得る。そのような処理としては、注射前の溶液の加温、または注射前もしくは製造プロセス中の希釈剤の添加が挙げられ得る。好ましくは、希釈剤は、注射される溶液の50%未満の体積を構成する。
【0075】
前述の記載は、説明のために、特定の専門語を使用して発明の完全な理解を提供した。しかしながら、発明を実行するために特定の詳細は必要とされないことが当業者には明らかであろう。したがって、発明の特定の実施形態の前述の記載は、例示および説明のために提供される。それらは、網羅的であること、または発明を開示された正確な形態に限定することを意図せず、明らかに、上記教示を考慮して多くの修正および変形が可能である。実施形態は、発明の原理およびその実際の適用を最も良く説明するために選ばれ、記載され、それにより、他の当業者が、発明および様々な実施形態を様々な修正とともに企図された特定の使用に適するように最も良く利用することを可能とする。以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、発明の範囲を定めることを意図する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2020-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミノイドをグリセロールに溶解して投与可能溶液を作製することであって、グリセロール中のクルクミノイドの溶解性を、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超に増大させるために、アルカリ塩がグリセロールに添加されること、および前記投与可能溶液の治療目的での投与を含む、方法。
【請求項2】
1ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド100ミリグラム超の濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
6ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約200ミリグラムの濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
13ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約250ミリグラムの濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
16ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
投与は、クルクミノイドをグリセロールに溶解してから24時間超後の前記投与可能溶液の投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
投与は、前記投与可能溶液のそのままでの投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
投与は、前記投与可能溶液の水の添加なしでの投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与可能溶液は、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
クルクミノイドは、クルクミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
クルクミノイドは、クルクミン、クルクミンの代謝物、テトラヒドロクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、およびクルクミンエステルからなる群から選択されるクルクミノイドの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ塩は、炭酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ塩は、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
グリセロールを、グリセロールの融点と沸点との間に加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記クルクミノイド溶液を濾過して任意の未溶解アルカリ塩を除去することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クルクミノイド溶液を冷却させること、および前記クルクミノイド溶液を濾過して任意の未溶解または沈殿クルクミノイドを除去することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
0.02~0.22μmのフィルタを通す、前記クルクミノイド溶液の抗菌性濾過をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
投与は、注射を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
注射は、筋肉内注射を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
注射は、皮下、皮内、腹膜腔内、および腹腔内注射の少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
投与は、鼻腔内噴霧送達、胃酸を回避する腸溶性カプセルを使用する送達、および坐剤による直腸または結腸送達の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
グリセロールに溶解したクルクミノイドを含む投与可能溶液であって、クルクミノイドがグリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド20ミリグラム超の濃度まで溶解するように、アルカリ塩がグリセロールに添加され、前記投与可能溶液は、グリセロール1ミリリットル当たりクルクミノイド約200ミリグラムの濃度を含み、13ミリグラム超のアルカリ塩が、グリセロールに添加される、投与可能溶液。
【国際調査報告】