(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(54)【発明の名称】高い誘電性能を有するポリ(アリーレンスルフィド)組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 81/02 20060101AFI20220401BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220401BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C08L81/02
C08K7/14
C08K3/34
C08K3/38
C08K3/013
H01Q1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549679
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2020054912
(87)【国際公開番号】W WO2020173943
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カロッツォ, パヴィーナ
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラクリシュナン, ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス, ローリー エル.
【テーマコード(参考)】
4J002
5J046
【Fターム(参考)】
4J002CN011
4J002DE137
4J002DG047
4J002DJ047
4J002DK007
4J002DL006
4J002DM007
4J002FA046
4J002GQ00
4J002GR00
5J046AA03
5J046RA01
(57)【要約】
本発明は、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと、少なくとも1種のフラットガラス繊維と窒化ホウ素及びタルクのうちの少なくとも1つとを含む組成物(C)に、並びに前記組成物(C)を組み入れた5G基地局構成要素に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー;
- 少なくとも1種のフラットガラス繊維;
- 窒化ホウ素及びタルクのうちの少なくとも1つ
を含む組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーがポリ(フェニレンスルフィド)である、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーを、前記組成物(C)の総重量に対して少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも35重量%の、より好ましくは少なくとも40重量%の、及び/又は最大でも80重量%の、好ましくは最大でも70重量%の、より好ましくは最大でも65重量%の濃度で含む、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維がフラットE-ガラス繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記フラットE-ガラス繊維が、6.0~7.0の範囲の、好ましくは約6.5の2.4GHzでの誘電率(Dk)を有する、及び/又は前記フラットE-ガラス繊維が、0.003~0.004の範囲の2.4GHzでの散逸率(Df)を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維がフラットD-ガラス繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記フラットD-ガラス繊維が、4.0~5.0の範囲の、好ましくは約4.5の2.4GHzでの誘電率(Dk)を有する、及び/又は前記フラットD-ガラス繊維が、0.003以下の、好ましくは約0.001の2.4GHzでの散逸率(Df)を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維を、前記組成物(C)の総重量に対して少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、より好ましくは少なくとも25重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも30重量%の、及び/又は最大でも50重量%の、好ましくは最大でも45重量%の、より好ましくは最大でも40重量%の濃度で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
窒化ホウ素が、少なくとも0.05μmの、好ましくは少なくとも0.1μmの、より好ましくは少なくとも0.2μmの、さらにいっそう好ましくは少なくとも1μmの及び/又は最大でも30μmの、好ましくは最大でも20μmの、より好ましくは最大でも18μmの、さらにいっそう好ましくは最大でも10μmの中央粒径を有する、請求項1~8いずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
タルクが、少なくとも0.05μmの、好ましくは少なくとも0.1μmの、より好ましくは少なくとも0.2μmの、さらにいっそう好ましくは少なくとも1μmの及び/又は最大でも30μmの、好ましくは最大でも20μmの、より好ましくは最大でも18μmの、さらにいっそう好ましくは最大でも10μmの中央粒径を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
窒化ホウ素及び/又はタルクを、前記組成物(C)の総重量に対して少なくとも5重量%の、好ましくは少なくとも7重量%の、より好ましくは少なくとも10重量%の、及び/又は最大でも30重量%、好ましくは最大でも20重量%、より好ましくは最大でも15重量%の濃度で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)であって、前記組成物が、
- ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー;
- 少なくとも1種のフラットガラス繊維;
- 窒化ホウ素及びタルクのうちの少なくとも1つ
から本質的になる組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む5G基地局構成要素。
【請求項14】
請求項13に記載の5G基地局構成要素であって、前記構成要素がアンテナハウジングである5G基地局構成要素。
【請求項15】
請求項13に記載の5G基地局構成要素であって、前記構成要素が、ラジエーター、オシレーター及び誘電体の中から選択される5G基地局構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年2月27日出願の米国仮特許出願第62/811094号及び2019年9月23日出願の欧州特許出願第19199011.8号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ポリ(アリーレンスルフィド)組成物に、特に、高い誘電性能を有するポリ(アリーレンスルフィド)組成物に関する。本発明は、さらに、前記ポリ(アリーレンスルフィド)組成物を組み入れた第5世代(5G)基地局構成要素に、特に前記ポリ(アリーレンスルフィド)組成物を組み入れた5G基地局アンテナハウジングに関する。
【背景技術】
【0003】
第5世代(5G)無線システムは、第4世代(4G)の現在の遠隔通信標準を越えて次期モバイル遠隔通信標準を表す。
【0004】
5G標準は、現在の4G標準よりも大きい容量、高いデータ転送速度及び高い信号感度を可能にし、こうして単位エリア当たりの接続機器のより高い密度及びより高い又は無制限のデータ量の消費を可能にする。
【0005】
携帯電話利用者の数及び彼らのデータに対する需要が上昇するので、5G基地局は、現在の4Gセルラーネットワークを構成する基地局よりもはるかに速い速度ではるかにより多くのトラフィックを処理しなければならない。この目的のために、5G基地局は、4G基地局よりもさらに多くのアンテナを支えることができるべきであり;この技術は、大量マルチ入力マルチ出力(MIMO)と呼ばれ、5G基地局がさらに多くの利用者からの信号を即座に送信し及び受信し、こうしてモバイルネットワークの容量を増加させることを可能にするであろう。
【0006】
それ故、5G基地局の開発のために及び特に5G基地局アンテナに好適である材料、すなわち、誘電率の観点から及び、最も重要には、散逸率の観点から満足できる誘電特性;低い線熱膨張率;低い収縮及び良好な機械的特性を有する材料の必要性が感じられる。
【0007】
ポリ(フェニレンスルフィド)と、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムネオジム及びチタン酸バリウムストロンチウム/ジルコン酸マグネシウムのようなセラミック材料と、ガラス繊維のような補強充填材とを含む組成物が、良好な誘電特性を有するが、強度及び延性のような機械的特性を犠牲にした材料として国際公開第97/20324号パンフレットから公知である。それ故、前記特性は、5G基地局での適用にとって満足できるものではない。
【発明の概要】
【0008】
第1態様では、本発明は、
- ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー;
- 少なくとも1種のフラットガラス繊維;
- 窒化ホウ素及びタルクの少なくとも1つ
を含む組成物[組成物(C)]に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、上記の組成物(C)を含む5G基地局構成要素に関する。
【0010】
本出願人は、意外にも、本発明による組成物(C)が、強度及び延性などの優れた機械的特性を有しながら、優れた誘電性能並びに著しく低減した収縮及びCLTE、内部応力の低減を示すことを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本説明において、特に示さない限り、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0012】
「Dk」は誘電率を言う。
【0013】
「Df」は散逸率を言う。
【0014】
「CLTE」は線熱膨張率を言う。
【0015】
「収縮異方性」は、流れ方向及び横断方向における収縮の差を意味する。
【0016】
「誘電率」は、電磁放射線と相互作用する及び、それに対応して、材料を通って移動する電磁信号を破壊する材料の能力を言う。したがって、所与の周波数における材料の誘電率が低ければ低いほど、その周波数における材料による電磁信号の破壊は少なくなる。
【0017】
「散逸率」は、材料における誘電損失の大きさである。したがって、散逸率が低ければ低いほど、材料にとっての誘電損失は低くなる。
【0018】
前記のように、本発明による組成物(C)は、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと、少なくとも1種のフラットガラス繊維と窒化ホウ素及びタルクの少なくとも1つとを含む。
【0019】
好ましい実施形態によれば、前記組成物(C)は、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと、少なくとも1種のフラットガラス繊維と窒化ホウ素及びタルクの少なくとも1つとを含む又はそれらから本質的になる。表現「から本質的になる」は、組成物(C)がポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと、少なくとも1種のフラットガラス繊維と窒化ホウ素及びタルクの少なくとも1つと、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらにいっそう好ましくは1重量%以下の他の構成成分とを含むことを意味することを意図する。
【0020】
ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー
ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーは、式-(Ar-S)-の繰り返し単位(RPAS)を、好ましくは少なくとも80モル%の量で、主構造単位として含み、ここで、Arは芳香族基である。Arの例としては、以下に示される式(I-A)~(I-K):
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1及びR2は、水素原子、1~12個の炭素原子のアルキル、1~12個の炭素原子のアルコキシ、6~24個の炭素原子のアリーレン、及びハロゲンの中から独立して選択される)
の基が挙げられる。
【0021】
前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーは、好ましくは、繰り返し単位(RPAS)を含み、ここで、Arは式(I-A)の基であり、より好ましくはここで、R1及びR2は水素原子である。したがって、前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーは、好ましくは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRYTON(登録商標)PPSとしてとりわけ商業的に入手可能である、ポリ(フェニレンスルフィド)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、各ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーが異なった繰り返し単位(RPAS)を有する、複数の異なったポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーを含む。
【0023】
前記組成物(C)は、前記少ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーを、組成物(C)の総重量に対して好ましくは少なくとも30重量%の、より好ましくは少なくとも35重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも40重量%の、及び好ましくは最大でも80重量%の、より好ましくは最大でも70重量%の、さらにいっそう好ましくは最大でも65重量%の濃度で含む。
【0024】
フラットガラス繊維
本明細書で用いるところでは、フラットガラス繊維は非円形横断面を有する。横断面は、ガラス繊維の長さに垂直な平面において取られ、横断面での最も長い寸法に相当する、主要寸法と、ガラス繊維の主要寸法及び長さの両方に垂直である、マイナー寸法とを有する。非円形横断面は、卵形、楕円形又は矩形であることができるが、それらに限定されない。
【0025】
主要寸法は、好ましくは少なくとも15μm、より好ましくは少なくとも20μm、さらにいっそう好ましくは少なくとも22μm、最も好ましくは少なくとも25μmである。主要寸法は、好ましくは最大でも40μm、より好ましくは最大でも35μm、さらにいっそう好ましくは最大でも32μm、最も好ましくは最大でも30μmである。いくつかの実施形態では、主要寸法は、15~35μm、好ましくは20~30μm、より好ましくは25~29μmの範囲である。
【0026】
マイナー寸法は、好ましくは少なくとも4μm、より好ましくは少なくとも5μm、さらにいっそう好ましくは少なくとも6μm、最も好ましくは少なくとも7μmである。マイナー寸法は、好ましくは最大でも25μm、より好ましくは最大でも20μm、さらにいっそう好ましくは最大でも17μm、最も好ましくは最大でも15μmである。いくつかの実施形態では、マイナー寸法は、5~20、好ましくは5~15μm、より好ましくは7~11μmの範囲である。
【0027】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維は、好ましくは少なくとも2の、より好ましくは少なくとも2.2の、さらにいっそう好ましくは少なくとも2.4の、最も好ましくは少なくとも3のアスペクト比を有する。前記少なくとも1種のフラットガラス繊維は、好ましくは最大でも8の、より好ましくは最大でも6の、さらにいっそう好ましくは最大でも4のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のフラットガラス繊維は、2~6、好ましくは2.2~4の範囲のアスペクト比を有する。アスペクト比は、前記少なくとも1種のフラットガラス繊維の主要寸法対マイナー寸法の比と定義される。アスペクト比は、ISO 1888に従って測定することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のフラットガラス繊維は、フラットE-ガラス繊維である。前記フラットE-ガラス繊維は、好ましくは6.0~7.0の範囲の、より好ましくは約6.5の2.4GHzでのDkを有する。前記フラットE-ガラス繊維は、好ましくは0.003~0.004の範囲の2.4GHzでのDfを有する。
【0029】
他の実施形態では、前記少なくとも1種のフラットガラス繊維は、フラットD-ガラス繊維、すなわち低誘電性ガラス繊維である。前記フラットD-ガラス繊維は、好ましくは4.0~5.0の範囲の、より好ましくは約4.5の2.4GHzでのDkを有する。前記フラットD-ガラス繊維は、好ましくは0.003以下の、より好ましくは約0.001の2.4GHzでのDfを有する。
【0030】
第1実施形態では、前記組成物(C)は、フラットE-ガラス繊維を含む。第2実施形態では、前記組成物(C)は、フラットD-ガラス繊維を含む。さらなる実施形態では、前記組成物(C)は、フラットE-ガラス繊維とフラットD-ガラス繊維との混合物を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記フラットD-ガラス繊維は、以下の濃度で以下の構成成分を含む。
【0032】
【0033】
表1の濃度は、フラットD-ガラス繊維の総重量に対するものである。いくつかの実施形態では、選択される濃度は合計100重量%になる。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記フラットD-ガラス繊維は、1000MPa~5000MPa、好ましくは2000MPa~2500MPaの範囲の引張強度を有する。さらに又は代わりに、前記フラットD-ガラス繊維は、20GPa~90GPa、好ましくは50GPa~60GPaの範囲の引張弾性率を有する。引張強度及び引張弾性率は、ASTM D2343に従って測定することができる。
【0035】
前記組成物(C)は、前記少なくとも1種のフラットガラス繊維を、組成物(C)の総重量に対して好ましくは少なくとも10重量%の、より好ましくは少なくとも20重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも25重量%の、最も好ましくは少なくとも30重量%の、及び好ましくは最大でも50重量%の、より好ましくは最大でも45重量%の、さらにいっそう好ましくは最大でも40重量%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のフラットガラス繊維の濃度は、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~45重量%、より好ましくは35重量%~45重量%である。
【0036】
窒化ホウ素又はタルク
窒化ホウ素の中央粒径は、好ましくは少なくとも0.05μm、より好ましくは少なくとも0.1μm、さらにいっそう好ましくは少なくとも0.2μm、最も好ましくは少なくとも1μmである。窒化ホウ素の平均粒径は、好ましくは最大でも30μm、より好ましくは最大でも20μm、さらにいっそう好ましくは最大でも18μm、最も好ましくは最大でも10μmである。窒化ホウ素の平均粒径は、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~18μm、さらにいっそう好ましくは2μm~10μmである。
【0037】
タルクの中央粒径は、好ましくは少なくとも0.05μm、より好ましくは少なくとも0.1μm、さらにいっそう好ましくは少なくとも0.2μm、最も好ましくは少なくとも1μmである。タルクの平均粒径は、好ましくは最大でも30μm、より好ましくは最大でも20μm、さらにいっそう好ましくは最大でも18μm、最も好ましくは最大でも10μmである。タルクの平均粒径は、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~18μm、さらにいっそう好ましくは2μm~10μmである。
【0038】
窒化ホウ素及びタルクの中央粒度は、例えば会社Malvern製のそれぞれの装置(Mastersizer Micro若しくは3000)を用いる光散乱技法(動的若しくはレーザー)によってか又はDIN 53196に従ってふるい分析を用いて測定される。
【0039】
上で特定された範囲の中央粒径の窒化ホウ素及びタルクは、より良好な機械的特性及び誘電場へのより均質の空間応答を提供する。
【0040】
前記組成物(C)は、少なくとも1つの窒化ホウ素及びタルクを、組成物(C)の総重量に対して好ましくは少なくとも5重量%の、より好ましくは少なくとも7重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも10重量%の、及び好ましくは最大でも30重量%の、より好ましくは最大でも20重量%の、さらにいっそう好ましくは最大でも15重量%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの窒化ホウ素及びタルクの濃度は、5重量%~30重量%、好ましくは7重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~20重量%、さらにいっそう好ましくは約15重量%である。表現「少なくとも1つの窒化ホウ素及びタルク」は、様々な実施形態による、前記組成物が、窒化ホウ素を上で定義された濃度で、若しくはタルクを上で定義された濃度で、又は窒化ホウ素とタルクとの混合物を上で定義された濃度で含み得ることを意味することを意図する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、前記組成物(C)は、窒化ホウ素を、組成物(C)の総重量に対して少なくとも5重量%の、より好ましくは少なくとも7重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも10重量%の、及び好ましくは最大でも30重量%、より好ましくは最大でも20重量%、さらにいっそう好ましくは最大でも15重量%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、窒化ホウ素の濃度は、5重量%~30重量%、好ましくは7重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~20重量%、さらにいっそう好ましくは約15重量%である。
【0042】
組成物(C)
意外にも、本組成物(C)は優れた誘電特性、特に低いDfを示すことが見出された。
【0043】
前記組成物(C)は、また、低い収縮異方性並びに流れ方向及び横断方向における低いCLTEを示す。
【0044】
さらに、組成物(C)は、破断時引張応力、破断時引張歪み、引張弾性率及びノッチ付き耐衝撃性などの、優れた機械的特性を有する。
【0045】
5G基地局
用語「5G基地局」は、無線リンクによってネットワークと携帯電話利用者との間のコミュニケーションを維持するためにモバイル遠隔通信ネットワークに用いられる、幾つかのアンテナなどの、無線送信機/受信機を意味することを意図する。
【0046】
その特性のために、前記組成物(C)は、5G基地局構成要素中へ望ましくも統合することができる。5Gコミュニケーション頻度において、シグナル減衰は、Dfにより敏感であり、低いDfは、基地局適用でシグナル減衰を管理することができる。加えて、低いCLTEは、金属と接触したときに熱膨張を管理することができる。良好な機械的特性は、加工中に及び5G基地局での最終使用部品において特に望まれる。
【0047】
好ましい実施形態によれば、前記5G基地局構成要素は、アンテナハウジングである。本明細書で興味のある5G基地局の他の構成要素には、ラジエーター、オシレーター及び誘電体が含まれるが、それらに限定されない。
【0048】
用語「アンテナ」は、電磁波の送信及び受信に用いられるデバイスを意味する。用語「ラジエーター」は、アンテナシステムにおいて無線周波数(RF)エネルギーを放出する個別導体を意味する。用語「オシレーター」は、周期的な、振動する電子信号、多くの場合正弦波又は方形波を生み出し、及び電源からの直流(DC)を交流(AC)信号に変換する電子回路を意味する。用語「誘電体」は、一般にマイクロ波及びミリメートル波帯域における、無線波のための共振器として機能するように設計されている、誘電(非導電)材料、通常セラミックの一片を意味する。
【0049】
本発明はこれから以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0050】
実験の部
原材料
Ryton(登録商標)QA200Nは、Solvay Specialty Polymers USAから商業的に入手可能なポリ(アリーレンスルフィド)である。
【0051】
CNG3PA-820は、日東紡から商業的に入手可能なフラットD-ガラス繊維である。
【0052】
CSG3PA-820は、日東紡から商業的に入手可能なフラットE-ガラス繊維である。
【0053】
銘柄Boronid S1-SFの窒化ホウ素は、約3μmの中央粒径を有し、ESKから商業的に入手可能である。
【0054】
銘柄NX5の窒化ホウ素は、約5μmの中央粒径を有し、Momentiveから商業的に入手可能である。
【0055】
銘柄NX9の窒化ホウ素は、約9μmの中央粒径を有し、Momentiveから商業的に入手可能である。
【0056】
Mistron Vapor powderは、約2μmの中央粒径のタルクであり、Imerys Talcから商業的に入手可能である。
【0057】
銘柄Sachtoperse HPの硫酸バリウムは、約0.2μmの中央粒径を有し、Huntsmanから商業的に入手可能である。
【0058】
約1~2μmの中央粒径を有する銘柄396141のチタン酸ストロンチウムは、及びSigma Aldrichから商業的に入手可能である。
【0059】
方法
配合
下の表2及び3に示される組成物を、48:1のL/D比を有するCoperion(登録商標)ZSK-26共回転2軸スクリュー押出機を用いて200rpm及び13~18kg/時間で配合した。バレル温度設定点は、305℃であり、ダイ温度設定点は、300℃であった。
【0060】
13の組成物C1~C13を形成した。組成物C1、C2、C4、C10及びC13はカウンター例である。組成物C1~C7(表1)を形成するために、ガラス繊維CSG3PA-820(40重量%)を使用した。組成物C8~C13(表2)を形成するために、ガラス繊維CNG3PA-820(40重量%)を使用した。
【0061】
成形
試験検体を、300℃~350℃の溶融温度及び135℃~150℃の成形温度でASTM D3641に従って組成物から射出成形した。
【0062】
試験
誘電特性(Dk及びDf)は、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定した。2インチ×3インチ×1/8インチの寸法を有する射出成形ディスクの機械加工試料に関して測定値を取った。
【0063】
引張特性(破断時引張歪み、破断時引張応力、引張弾性率)は、射出成形試験検体を使用してASTM D638に従って測定した。
【0064】
ノッチ付きIzod衝撃強度は、射出成形試験検体を使用してASTM D256によって測定した。
【0065】
熱たわみ温度(HDT)は、射出成形試験検体を使用して66psiでASTM D648によって測定した。
【0066】
線熱膨張係数(CLTE)は、射出成形試験検体を使用してASTM D696によって測定した。
【0067】
結果
表2は、CSG3PA-820(すなわち、フラットE-ガラス繊維)を含む検体C1~C7を使って実施されたトライアルの全体セットを示す。表3は、CNG3PA-820(すなわち、フラットD-ガラス繊維)を含む検体C8~C13を使って実施されたトライアルの全体セットを示す。本明細書で用いるところでは、「(#)」で表示された検体はカウンター例である。
【0068】
【0069】
表2から明らかなように、本発明の対象である、検体C3、C5、C6及びC7は、検体C1、C2及びC4に対して、成形方向及び横断方向に優れた機械的特性及び低い収縮を有しながら、両方向に誘電特性(すなわち、低いDk及びDf)とCLTEとの望ましい組み合わせを提供する。C2は、C5、C6及びC7によって示されるものよりも低いDkの観点からとりわけ、良好な誘電特性を示すけれども、そのCLTEは、はるかにより高く、それ故5G基地局での適用にとって満足できるものではない。
【0070】
【0071】
表3に言及すると、本発明の対象である、検体C8、C9、C11及びC12は、検体C10及びC13と比較して、成形方向及び横断方向に優れた機械的特性及び低い収縮を有しながら、両方向に誘電特性とCLTEとの望ましい組み合わせを提供する。
【0072】
上記の結果から、より多くの量(15重量%)のBoronid S1-SF及びタルクを含む検体が、より少ない量(7重量%)のそれらを含む検体よりも、低いDfのような誘電特性、及びCLTEの観点から、より良好な性能を提供することが指摘される。
【0073】
表2及び3に報告される結果を比較すると、フラットD-ガラス繊維を含む検体C8、C9、C11及びC12が、フラットE-ガラス繊維を含む検体C3、C5、C6及びC7よりも著しく良好な誘電特性(すなわち、より低いDk及びDf)並びに横断方向にはるかに低い収縮を示すことが指摘される。検体C11及びC12における横断CLTEが、検体C3、C5、C6及びC7よりもはるかに低いことがまた指摘される。
【0074】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー;
- 少なくとも1種のフラットガラス繊維;
- 窒化ホウ素及びタルクのうちの少なくとも1つ
を含む組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーがポリ(フェニレンスルフィド)である、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーを、前記組成物(C)の総重量に対して少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも35重量%の、より好ましくは少なくとも40重量%の、及び/又は最大でも80重量%の、好ましくは最大でも70重量%の、より好ましくは最大でも65重量%の濃度で含む、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維がフラットE-ガラス繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記フラットE-ガラス繊維が、6.0~7.0の範囲の、好ましくは約6.5の2.4GHzでの誘電率(Dk)を有する、及び/又は前記フラットE-ガラス繊維が、0.003~0.004の範囲の2.4GHzでの散逸率(Df)を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維がフラットD-ガラス繊維
又はフラットE-ガラス繊維とフラットD-ガラス繊維との混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記フラットD-ガラス繊維が、4.0~5.0の範囲の、好ましくは約4.5の2.4GHzでの誘電率(Dk)を有する、及び/又は前記フラットD-ガラス繊維が、0.003以下の、好ましくは約0.001の2.4GHzでの散逸率(Df)を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のフラットガラス繊維を、前記組成物(C)の総重量に対して少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、より好ましくは少なくとも25重量%の、さらにいっそう好ましくは少なくとも30重量%の、及び/又は最大でも50重量%の、好ましくは最大でも45重量%の、より好ましくは最大でも40重量%の濃度で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
窒化ホウ素が、少なくとも0.05μmの、好ましくは少なくとも0.1μmの、より好ましくは少なくとも0.2μmの、さらにいっそう好ましくは少なくとも1μmの及び/又は最大でも30μmの、好ましくは最大でも20μmの、より好ましくは最大でも18μmの、さらにいっそう好ましくは最大でも10μmの中央粒径を有する、請求項1~8いずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
タルクが、少なくとも0.05μmの、好ましくは少なくとも0.1μmの、より好ましくは少なくとも0.2μmの、さらにいっそう好ましくは少なくとも1μmの及び/又は最大でも30μmの、好ましくは最大でも20μmの、より好ましくは最大でも18μmの、さらにいっそう好ましくは最大でも10μmの中央粒径を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
窒化ホウ素及び/又はタルクを、前記組成物(C)の総重量に対して少なくとも5重量%の、好ましくは少なくとも7重量%の、より好ましくは少なくとも10重量%の、及び/又は最大でも30重量%、好ましくは最大でも20重量%、より好ましくは最大でも15重量%の濃度で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)であって、前記組成物が、
- ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー;
- 少なくとも1種のフラットガラス繊維;
- 窒化ホウ素及びタルクのうちのうちの少なくとも1つ
から本質的になる組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む5G基地局構成要素。
【請求項14】
請求項13に記載の5G基地局構成要素であって、前記構成要素がアンテナハウジングである5G基地局構成要素。
【請求項15】
請求項13に記載の5G基地局構成要素であって、前記構成要素が、ラジエーター、オシレーター及び誘電体の中から選択される5G基地局構成要素。
【国際調査報告】