(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(54)【発明の名称】軟組織付着点を使用した手術計画のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20220413BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20220413BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20220413BHJP
G06T 7/12 20170101ALI20220413BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B34/30
A61B17/56
G06T7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534136
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019067583
(87)【国際公開番号】W WO2020139711
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507280594
【氏名又は名称】マコ サージカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンプ エミリー
(72)【発明者】
【氏名】リアルノ サリー
(72)【発明者】
【氏名】ユルドゥルム ガクチェ
(72)【発明者】
【氏名】ナザダイ マーク エルズワース
(72)【発明者】
【氏名】クラーク ガヴィン
【テーマコード(参考)】
4C160
5L096
【Fターム(参考)】
4C160LL30
5L096AA09
5L096BA05
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA24
5L096DA01
5L096FA02
5L096FA67
5L096HA05
(57)【要約】
手術システムは、ロボット装置、該ロボット装置に搭載される手術ツール、及び処理回路を具備する。該処理回路は、生体構造の画像データを受け取り、該画像データに基づいて仮想骨モデルを生成し、該仮想骨モデルの軟組織付着点を識別し、該軟組織付着点に基づいてインプラントの配置を計画し、該インプラントの配置に基づいて制御対象を生成し、該ロボット装置を制御して、該手術ツールを該制御対象内に制限するように構成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット装置、
前記ロボット装置に搭載される手術ツール、及び
処理回路を具備する手術システムであって、
前記処理回路は、
生体構造の画像データを受け取り、
前記画像データに基づいて仮想骨モデルを生成し、
前記仮想骨モデルの軟組織付着点を識別し、
前記軟組織付着点に基づいてインプラントの配置を計画し、
前記インプラントの前記配置に基づいて制御対象を生成し、
前記ロボット装置を制御して、前記手術ツールを前記制御対象内に制限する、
ように構成される、前記手術システム。
【請求項2】
前記軟組織付着点が、後十字靭帯または前十字靭帯が大腿骨または脛骨に付着する部位に相当する、請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記軟組織付着点が、膝蓋靭帯が脛骨に付着する部位に相当する、請求項1に記載の手術システム。
【請求項4】
前記処理回路が、前記軟組織付着点に基づいて、前記インプラントの軸を前記軟組織付着点の内側縁と合わせることによって、前記インプラントの配置を計画するように構成される、請求項3に記載の手術システム。
【請求項5】
前記処理回路が、さらに、グラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成するように構成され、
前記グラフィカル・ユーザ・インタフェースは、前記仮想骨モデル、前記インプラント、及び前記軟組織付着点の視覚化を含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項6】
前記グラフィカル・ユーザ・インタフェースが、さらに、前記制御対象の視覚化を含む、請求項5に記載の手術システム。
【請求項7】
前記処理回路が、さらに、前記制御対象に対して前記軟組織付着点の含有を制限するように構成される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項8】
生体構造の画像データを受け取ること、
前記画像データに基づいて仮想骨モデルを生成すること、
前記仮想骨モデルの軟組織付着点を識別すること、
前記軟組織付着点に基づいてインプラントのサイズ及び配置を特定すること、
前記インプラントの前記サイズ及び前記配置に基づいて制御対象を生成すること、ならびに
前記制御対象に基づいてロボット装置に搭載された手術ツールを制約または制御すること、
を含む方法。
【請求項9】
前記画像データが、コンピュータ断層画像を含み、
前記コンピュータ断層画像を分割し、前記画像における1つ以上の骨を識別することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記軟組織付着点が、後十字靭帯または前十字靭帯が大腿骨または脛骨に付着する部位に相当する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記軟組織付着点が、膝蓋靭帯が脛骨に付着する部位に相当する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記インプラントの前記配置を前記特定することが、前記インプラントの軸を前記軟組織付着点の内側縁と合わせることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記仮想骨モデル、前記インプラント、及び前記軟組織付着点を視覚化するグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記グラフィカル・ユーザ・インタフェースが、さらに、前記制御対象を視覚化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記軟組織付着点に基づいて靭帯の作用線を予測すること、
前記仮想骨モデルを前記インプラントの仮想インプラントモデルで増強すること、
前記靭帯の前記作用線が前記仮想インプラントモデルと交差するかどうかを特定すること、及び、
前記靭帯の前記作用線が前記仮想インプラントモデルと交差することの特定に応じて、ユーザに注意を喚起すること、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記制御対象に対して前記軟組織付着点の含有を制限することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
1つ以上のプロセッサによって実行される場合、前記1つ以上のプロセッサに操作を実行させるプログラム命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記操作が、
生体構造の画像データを受け取ること、
前記画像データに基づいて仮想骨モデルを生成すること、
前記仮想骨モデルの軟組織付着点を識別すること、
前記軟組織付着点に基づいてインプラントのサイズ及び配置を特定すること、
前記インプラントの前記サイズ及び前記配置に基づいて制御対象を生成すること、ならびに
前記制御対象に基づいてロボット装置に搭載された手術ツールを制約または制御すること、
を含む、前記コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記操作が、前記制御対象に対して前記軟組織付着点の含有を制限することを含む、請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記操作が、
前記軟組織付着点に基づいて靭帯の作用線を予測すること、
前記仮想骨モデルを前記インプラントの仮想インプラントモデルで増強すること、
前記靭帯の前記作用線が前記仮想インプラントモデルと交差するかどうかを特定すること、及び、
前記靭帯の前記作用線が前記仮想インプラントモデルと交差することの特定に応じて、ユーザに注意を喚起すること、
を含む、請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記インプラントの前記配置の前記特定が、前記インプラントの軸を前記軟組織付着点の内側縁と合わせることを含む、請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月27日に出願された米国仮特許出願第62/785,427号の利益及び優先権を主張する。当該仮特許出願の全開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、コンピュータ支援及びロボット支援の外科手術のためのシステム及び方法の分野に関し、より具体的には、関節再建手術、例えば、人工膝関節全置換術(TKA)のためのコンピュータ支援及びロボット支援の手術システムの分野に関する。TKAは、膝の解剖学的構造の一部を補綴コンポーネントで置き換えることにより、変形性膝関節症及び他の患者の膝関節の損傷の治療に広く用いられる。人工膝関節全置換術では、患者の大腿骨及び脛骨は、通常、骨の表面を整えるための一連の平面的な切断を用いて、補綴に結合するように修正される。次いで補綴インプラントがその骨に結合され、人工関節が形成される。
【0003】
コンピュータ支援の手術システムは、骨の修正及び骨へのインプラントのアライメントを支援するTKA手術の計画及び実行を容易にする。しかしながら、従来のコンピュータ支援の手術システムは、多くの場合、軟組織、例えば、後十字靱帯(PCL)及び前十字靱帯(ACL)等の靭帯に関する問題に対処しておらず、手術の計画を立てる際に軟組織を考慮することもない。これにより、軟組織の医原性損傷、骨と軟組織間の付着点の弱化、インプラントコンポーネントによる靭帯の衝突、及び他の合併症が生じ得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示の1つの実装形態は、手術システムである。該手術システムは、ロボット装置、該ロボット装置に搭載される手術ツール、及び処理回路を具備する。該処理回路は、生体構造の画像データを受け取り、該画像データに基づいて仮想骨モデルを生成し、該仮想骨モデルの軟組織付着点を識別し、該軟組織付着点に基づいてインプラントの配置を計画し、該インプラントの配置に基づいて制御対象を生成し、該ロボット装置を制御して、該手術ツールを該制御対象内に制限するように構成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、該軟組織付着点は、後十字靭帯または前十字靭帯が大腿骨または脛骨に付着する部位に相当する。いくつかの実施形態では、該処理回路は、該軟組織付着点に基づいて、該インプラントの軸を該軟組織付着点の内側縁と合わせることによって、該インプラントの配置を計画するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態では、該処理回路は、さらに、グラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成するように構成される。該グラフィカル・ユーザ・インタフェースは、該仮想骨モデル、インプラント、及び軟組織付着点の視覚化を含む。いくつかの実施形態では、該グラフィカル・ユーザ・インタフェースは、該制御対象の視覚化を含む。いくつかの実施形態では、該処理回路は、該制御対象に対して該軟組織付着点の含有を制限するように構成される。
【0007】
本開示の別の実装形態は、方法である。該方法は、生体構造の画像データを受け取ること、該画像データに基づいて仮想骨モデルを生成すること、該仮想骨モデルの軟組織付着点を識別すること、該軟組織付着点に基づいてインプラントのサイズ及び配置を特定すること、該インプラントのサイズ及び配置に基づいて制御対象を生成すること、該制御対象に基づいてロボット装置に搭載された手術ツールを制約または制御することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、該画像データは、コンピュータ断層画像を含み、この場合、該方法はまた、該コンピュータ断層画像を分割し、該画像内で1つ以上の骨を識別することを含む。いくつかの実施形態では、該軟組織付着点は、後十字靭帯または前十字靭帯が大腿骨または脛骨に付着する部位に相当する。該軟組織付着点は、膝蓋靱帯が脛骨に付着する部位に相当し得る。いくつかの実施形態では、インプラントの配置の特定は、該インプラントの軸を該軟組織付着点の内側縁と合わせることを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、該方法はまた、該仮想骨モデル、インプラント、及び軟組織付着点を視覚化するグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成することを含む。該グラフィカル・ユーザ・インタフェースは、さらに、該制御対象を視覚化し得る。いくつかの実施形態では、該方法は、該軟組織付着点に基づいて靭帯の作用線を予測すること、該仮想骨モデルを該インプラントの仮想インプラントモデルで増強すること、該靭帯の作用線が該仮想インプラントモデルと交差するかどうかを特定すること、及び、該靭帯の作用線が該仮想インプラントモデルと交差することの特定に応じて、ユーザに注意を喚起することを含む。該方法は、該制御対象に対して該軟組織付着点の含有を制限することを含み得る。
【0010】
本開示の別の実装形態は、1つ以上のプロセッサによって実行される場合、該1つ以上のプロセッサに操作を実行させるプログラム命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体である。該操作には、生体構造の画像データを受け取ること、該画像データに基づいて仮想骨モデルを生成すること、該仮想骨モデルの軟組織付着点を識別すること、該軟組織付着点に基づいてインプラントのサイズ及び配置を特定すること、該インプラントのサイズ及び配置に基づいて制御対象を生成すること、及び該制御対象に基づいてロボット装置に搭載された手術ツールを制約または制御することが含まれる。
【0011】
いくつかの実施形態では、該操作には、該制御対象に対して該軟組織付着点の含有を制限することが含まれる。いくつかの実施形態では、該操作には、該軟組織付着点に基づいて靭帯の作用線を予測すること、該仮想骨モデルを該インプラントの仮想インプラントモデルで増強すること、該靭帯の作用線が該仮想インプラントモデルと交差するかどうかを特定すること、及び、該靭帯の作用線が該仮想インプラントモデルと交差することの特定に応じて、ユーザに注意を喚起することが含まれる。いくつかの実施形態では、インプラントの配置の特定には、該インプラントの軸を該軟組織付着点の内側縁と合わせることが含まれる。
【0012】
本概要は、例示に過ぎず、いかなる方法によっても限定することを意図しない。本明細書に記載の装置またはプロセスの他の態様、発明の特徴、及び利点は、添付の図面と合わせて本明細書に記載する発明を実施する形態で明らかになるであろう。該図面では、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】例示的な実施形態による、ロボット支援の手術システムの図である。
【
図2】例示的な実施形態による、
図1の手術システムの処理回路のブロック図である。
【
図3】例示的な実施形態による、関節の関節鏡視下手術を容易にするためのプロセスのフローチャートである。
【
図4】例示的な実施形態による、膝関節鏡視下手術における衝突を防ぐためのプロセスのフローチャートである。
【
図5】例示的な実施形態による、膝関節鏡視下手術における衝突を回避するインプラントの配置を計画するための骨の画像を使用する図である。
【
図6】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第一の図である。
【
図7】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第二の図である。
【
図8A】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第三の図である。
【
図8B】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第四の図である。
【
図8C】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第五の図である。
【
図8D】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第六の図である。
【
図8E】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第七の図である。
【
図9】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第八の図である。
【
図10】例示的な実施形態による、インプラントコンポーネントの回旋アライメントを特定するためのプロセスのフローチャートである。
【
図11】例示的な実施形態による、
図10のプロセスの一部の図である。
【
図12】例示的な実施形態による、
図10のプロセスの一部の図である。
【
図13】例示的な実施形態による、
図2の処理回路によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの第五の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで
図1を参照すると、例示的な実施形態による、整形外科手術のための手術システム100が示されている。一般に、手術システム100は、外科手術の計画及び実行を容易にするように構成される。手術システム100は、患者の解剖学的構造、例えば、
図1に示すように、テーブル105に座ったまたは横たわった状態の患者104の脚102を治療するように構成される。脚102は、大腿骨106及び脛骨108を含み、全膝関節鏡視下手術では、その間に人工膝インプラントが埋め込まれる。手術システム100は、さらにまたは代替的に部分的膝関節鏡視下手術、全及び/または部分的股関節鏡視下手術、他の関節手術、脊髄手術、及び任意の他の外科手術(例えば、脳神経外科、整形外科、泌尿器、婦人科、歯科、ENT、腫瘍)の計画及び実行を容易にするように構成され得る。該手術を容易にするため、手術システム100は、ロボット装置120、追跡システム122、及びコンピュータシステム124を含む。
【0015】
ロボット装置120は、コンピュータシステム124の制御下、患者の解剖学的構造(例えば、患者104の大腿骨106)を修正するように構成される。ロボット装置120の1つの実施形態は、ハプティック装置である。「ハプティック」とは、触覚を指し、ハプティックの分野は、とりわけ、オペレータに対してフィードバックを返すヒューマン・インタラクティブ装置に関する。フィードバックには、触感、例えば、振動等が含まれ得る。フィードバックにはまた、ユーザに対して力、例えば、正の力または運動に対する抵抗を与えることが含まれ得る。ハプティックの使用法の1つは、該装置のユーザに対して、その装置の操作に対する誘導または制限を与えることである。例えば、ハプティック装置は、外科医が外科手術を行うために操作することができる手術ツールと結合される場合がある。該手術ツールの外科医による操作は、該手術ツールの操作の過程で該外科医にフィードバックを返すハプティックの使用を介して誘導される場合も制限される場合もある。
【0016】
ロボット装置120の別の実施形態は、自律ロボットまたは半自律ロボットである。「自律」とは、その状況に関する情報を集めること、一連の行動を特定すること、及びその一連の行動を自動的に行うことにより、人による制御から独立してまたは半ば独立して行動するロボット装置の能力を指す。例えば、かかる実施形態では、ロボット装置120は、追跡システム122及びコンピュータシステム124と通信して、患者の骨または軟組織における一連の切断を直接的な人の介入なしで自律的に完了し得る。様々な実施形態によれば、ロボット装置120は、無制限の外科医が制御する動作、触覚的に制約される動作、及び/または自動的もしくは自律的なロボット動作の様々な組み合わせを行い得る。
【0017】
ロボット装置120は、ベース130、ロボットアーム132、及び手術ツール134を具備し、コンピュータシステム124及び追跡システム122に通信可能に結合される。ベース130は、ロボットアーム132のための可動基盤を提供し、ロボットアーム132及び手術ツール134が、必要に応じて患者104及びテーブル105に対して再配置されるようにする。ベース130はまた、下記のロボットアーム132及び手術ツール134の機能に必要な電力系統、演算器、モータ、及び他の電子または機械システムを含み得る。
【0018】
ロボットアーム132は、手術ツール134を支持するように、及びコンピュータシステム124が指示するフィードバックを返すように構成される。いくつかの実施形態では、ロボットアーム132は、ユーザが手術ツール134を操作できるようにし、該ユーザに力のフィードバックを返す。かかる実施形態では、ロボットアーム132は、関節136及びマウント138を具備し、これらは、ユーザが、ロボットアーム132及び手術ツール134を、許容可能な姿勢を介して自由に移動及び回転することができるように構成されたモータ、アクチュエータ、または他の機構を具備すると同時に、コンピュータシステム124が指示する通りに、ロボットアーム132及び手術ツール134の動きの一部を制約または阻止する力のフィードバックを返す。以下で詳細に説明するように、ロボットアーム132は、それにより、制御対象の境界に沿って力のフィードバック(例えば、振動、該境界への進出を防ぐまたはそれに抵抗する力)を返しながら、外科医が、その対象内で手術ツール134を完全に制御することができるようにする。いくつかの実施形態では、ロボットアーム132は、ロボットアーム132を必要に応じて配置するため及び/またはある特定の手術タスク、例えば、大腿骨106の切断等を完了するため、手術ツール134を、直接的なユーザの操作なしで、コンピュータシステム124が指示する通り、自動的に新たな姿勢に移動するように構成される。
【0019】
代替的な実施形態では、ロボット装置120は、ハンドヘルドロボット装置または他のタイプのロボットである。ハンドヘルドロボット装置では、該ハンドヘルドロボット装置の一部(例えば、エンドエフェクタ、手術ツール)は、該ハンドヘルドロボット装置の本体に対してロボット制御/作動され得る。ユーザは、必要に応じて該ハンドヘルドロボット装置を保持、支持、及び操作すると同時に、該ロボット作動部分は、該外科医の外科手術の実行を容易にするように制御される。例えば、該ハンドヘルドロボット装置は、手術用切断ツールを後退させ、ユーザが安全でない領域で該手術用切断ツールを操作するのを防ぐように制御可能であり得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、様々なタイプ、デザイン、構成等の様々なロボット装置で実行され得ることを理解されたい。
【0020】
示される実施形態では、手術ツール134は、骨を切断、研磨、ドリルでの穴開け、部分切除、再形成、及び/または他の方法で修正するように構成される。例えば、手術ツール134は、大腿骨106に一連の切断を行い、インプラントを受け入れるように大腿骨106及びまたは脛骨108を整えるように構成されてもよい。手術ツール134は、任意の適切なツールでよく、ロボット装置120に交換可能に接続できる複数のツールの1つでもよい。例えば、
図1に示すように、手術ツール134は、球状のバーである。手術ツール134は、例えば、ツールの軸と平行にまたはツールの軸と垂直に配列した刃を備えた矢状鋸でもよい。他の実施形態では、手術ツール134は、1つ以上の様々な他の医療タスク(例えば、軟組織の修正、補綴の移植、画像の生成、データの収集、後退または張力を加えること)を実行するように構成され得る。
【0021】
追跡システム122は、患者の解剖学的構造(例えば、大腿骨106及び脛骨108)及びロボット装置120(すなわち、手術ツール134及び/またはロボットアーム132)を追跡し、ロボットアーム132に結合された手術ツール134の制御を可能にして、該患者の解剖学的構造に対して手術ツール134が遂行する動作の位置及び方向を特定するように、ならびに大腿骨106、脛骨108、手術ツール134、及び/またはロボット装置120をコンピュータシステム124のディスプレイ上でユーザに見えるようにするように構成される。より具体的には、追跡システム122は、座標系に対して対象(例えば、手術ツール134、大腿骨106)の位置及び方向(すなわち、姿勢)を特定し、外科手術の間、該対象の姿勢を追跡する(すなわち、連続して特定する)。様々な実施形態によれば、追跡システム122は、任意のタイプのナビゲーションシステム、すなわち、非機械的追跡システム(例えば、光学追跡システム)、機械的追跡システム(例えば、ロボットアーム132の関節136の相対角度の測定に基づく追跡)、または非機械的及び機械的追跡システムの任意の組み合わせ等であり得る。
【0022】
図1に示す実施形態では、追跡システム122は、光学追跡システムを具備する。従って、追跡システム122は、脛骨108に結合された第一のフィデューシャルツリー140、大腿骨106に結合された第二のフィデューシャルツリー141、ベース130に結合された第三のフィデューシャルツリー142、手術ツール134に結合された1つ以上のフィデューシャル144、及びフィデューシャル(すなわち、フィデューシャルツリー140~142のマーカー)の三次元位置を検出するように構成される検出装置146を具備する。
図1に示すように、検出装置146は、1対のカメラ148を立体視的配置で具備する。フィデューシャルツリー140~142は、カメラ148に明瞭に現れるように、及び/またはカメラ148からのデータを使用して画像処理システムによって、例えば、赤外線放射(例えば、追跡システム122の要素から放出される)に対する反射率が高いことにより、容易に検出可能であるように構成されたマーカーであるフィデューシャルを含む。検出装置146のカメラ148の立体視的配置により、各フィデューシャルの位置が、三角測量法を介して3D空間で特定される。各フィデューシャルは、対応する対象と幾何学的関係を有するため、該フィデューシャルの追跡により、該対象の追跡が可能になり(例えば、第二のフィデューシャルツリー141の追跡により、追跡システム122が大腿骨106を追跡することができるようになる)、追跡システム122は、この幾何学的関係を特定または検証するためのレジストレーション処理を実行するように構成され得る。フィデューシャルツリー140~142のフィデューシャルの特有の配置(すなわち、第一のフィデューシャルツリー140のフィデューシャルは、第二のフィデューシャルツリー141のフィデューシャルとは異なる形状で配置される)により、該フィデューシャルツリー、ひいては追跡される対象を互いに区別することが可能になる。
【0023】
図1の追跡システム122、または手術ナビゲーション及び追跡に対するいくつかの他のアプローチを使用して、患者の解剖学的構造の特徴に切断を行うため、または該解剖学的構造の特徴を修正するために、手術ツール134を使用する際、手術システム100は、該解剖学的構造の特徴、例えば、大腿骨106に対する手術ツール134の位置を特定することができる。
【0024】
コンピュータシステム124は、医用画像または他のデータに基づいて手術計画を立て、手術ツール134及び患者の解剖学的構造の位置に関するデータを受け取り、該手術計画に従ってロボット装置120を制御するように構成される。特に、本明細書に記載の様々な実施形態によれば、コンピュータシステム124は、軟組織の位置及び付着点に基づいて患者に特異的な手術計画を立て、該手術計画に従う患者特異的な制御対象を用いてロボット装置120を制御するように構成される。従って、コンピュータシステム124は、追跡システム122及びロボット装置120に通信可能に結合され、ロボット装置120、追跡システム122、及びコンピュータシステム124の間の電子通信を容易にする。さらに、コンピュータシステム124は、ネットワークに接続される場合もあり、例えば、電子カルテシステムにアクセスすることによって、患者の病歴または他の患者のプロファイル情報、医用画像、手術計画、外科手術に関する情報を受け取り、外科手術の実施に関する様々な機能を果たす。コンピュータシステム124は、処理回路160及び入力/出力装置162を含む。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム124の第一のコンピュータ装置(例えば、外科医のオフィスに配置され、遠隔サーバで操作される)は、術前の特徴を提供し、コンピュータシステム124の第二のコンピュータ装置(例えば、手術室に配置される)は、ロボット装置120を制御し、術中の特徴を提供する。様々な実施形態によれば、本明細書でコンピュータシステム124に帰する特徴及び機能は、1つ以上の装置、サーバ、クラウドベースのコンピューティング資源等の任意の組み合わせまたはそれらの間の分散を用いて実装され得る。
【0025】
入力/出力装置162は、本明細書に記載の機能及びプロセスのために必要に応じてユーザの入力を受け取り、出力を表示するように構成される。
図1に示すように、入力/出力装置162は、ディスプレイ164及びキーボード166を具備する。ディスプレイ164は、処理回路160によって生成されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースを表示するように構成され、これには、例えば、手術計画に関する情報、医用画像、手術システム100の設定及び他の選択肢、追跡システム122及びロボット装置120に関する状況情報、ならびに追跡システム122によって提供されるデータに基づく追跡の視覚化が含まれる。キーボード166は、これらのグラフィカル・ユーザ・インタフェースへのユーザの入力を受け取り、手術システム100の1つ以上の機能を制御するように構成される。
【0026】
処理回路160は、外科手術に先立つ術前の手術計画の作成を容易にし、該手術計画の実行の際のコンピュータ支援及びロボット支援を容易にするように構成される。処理回路160の例示的な実施形態を
図2に示すとともに、それを参照して以下で詳細に説明する。
【0027】
さらに
図1を参照すると、いくつかの実施形態によれば、本明細書では「仮想骨モデル」とも呼ばれる患者の解剖学的構造の三次元表現を使用して、術前の手術計画が患者に特異的であるように開発される。「仮想骨モデル」は、骨に加えて軟骨または他の組織の仮想表現を含んでもよい。仮想骨モデルを得るため、処理回路160は、外科手術が行われる患者の解剖学的構造(例えば、大腿骨106)の画像データを受け取る。該画像データは、関連する解剖学的特徴を画像化するコンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、及び/または超音波を含めた任意の適切な医用画像技術を使用して作成され得る。該画像データは、その後分割され(すなわち、異なる解剖学的特徴に対応する画像の領域が区別される)、仮想骨モデルが得られる。例えば、特定の骨、靭帯、軟骨、及び他の組織を区別するために膝のMRIベースのスキャンデータが分割され、画像化された解剖学的構造の三次元モデルを得るために処理される。
【0028】
別の方法として、該仮想骨モデルは、骨モデルのデータベースまたはライブラリから三次元モデルを選択することによって得てもよい。1つの実施形態では、ユーザは、入力/出力装置162を使用して適切なモデルを選択してもよい。別の実施形態では、処理回路160は、格納された命令を実行し、患者に関する画像または他の情報に基づいて適切なモデルを選択する。データベースから選択された骨モデル(複数可)をその後、特定の患者の特徴に基づいて変形し、本明細書に記載の手術計画及び実施に用いる仮想骨モデルを作成する。
【0029】
術前の手術計画を次いで該仮想骨モデルに基づいて作成することができる。該手術計画は、処理回路160によって自動的に生成される場合もあれば、入力/出力装置162を介してユーザによって入力される場合も、これら2者のなんらかの組み合わせの場合もある(例えば、処理回路160は、ユーザが作成した計画の一部の特徴を制限する、ユーザが修正することができる計画を生成する等)。
【0030】
該術前の手術計画には、手術システム100を使用して作成されるべき患者の解剖学的構造に対する所望の切断、穴、または他の修正が含まれる。例えば、本明細書に記載の全膝関節鏡視下手術の場合、該術前の計画には、補綴の移植を容易にするための大腿骨106及び脛骨108の表面を形成するのに必要な切断が含まれる。従って、処理回路160は、手術計画の生成を容易にするため、補綴のモデルを受け取る場合、これにアクセスする場合、及び/またはこれを格納する場合がある。
【0031】
処理回路160は、さらに、手術計画に従ってロボット装置120の制御対象を生成するように構成される。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、該制御対象は、軟組織の位置及び付着点に基づいて患者に特異的である。該制御対象は、様々なタイプの可能なロボット装置(例えば、ハプティック、自律等)に応じて様々な形態をとり得る。例えば、いくつかの実施形態では、該制御対象は、ロボット装置120が該制御対象内を移動するように制御するためのロボット装置120に関する指示を定義する(すなわち、追跡システム122からのフィードバックによって誘導される手術計画の1つ以上の切断を自律的に行うように)。いくつかの実施形態では、該制御対象は、ディスプレイ164での手術計画及びロボット装置120の視覚化を含み、手術ナビゲーションを容易にし、外科医が該手術計画に従うように誘導することを支援する(例えば、ロボット装置120の能動的制御も力のフィードバックもなく)。ロボット装置120がハプティック装置である実施形態では、該制御対象は、以下の節に記載するハプティック対象であり得る。
【0032】
ロボット120がハプティック装置である実施形態では、処理回路160は、特に、軟組織の位置及び付着点を考慮して、術前の手術計画に基づいて1つ以上のハプティック対象を生成するようにさらに構成され、外科手術の間に手術ツール134の制約を可能にすることにより、該手術計画の実施の際に外科医を支援する。ハプティック対象は、一次元で形成されても、二次元で形成されても、三次元で形成されてもよい。例えば、ハプティック対象は、線でも、平面でも、三次元ボリュームでもよい。ハプティック対象は、曲面で曲がっている場合及び/または平面を有する場合があり、任意の形状、例えば、漏斗形であり得る。ハプティック対象は、外科手術の間の手術ツール134の動きに関する様々な所望の結果を表すために作成され得る。三次元ハプティック対象の境界の1つ以上は、骨の表面に作成されるべき1つ以上の修正、例えば、切断を表し得る。平面のハプティック対象は、骨の表面に作成されるべき修正、例えば、切断を表し得る(例えば、インプラントを受け入れることが意図された表面の作成に対応する)。
【0033】
ロボット装置120がハプティック装置である実施形態では、処理回路160は、さらに、手術ツール134の仮想ツール表現を生成するように構成される。該仮想ツールには、1つ以上のハプティックインタラクションポイント(HIP)が含まれ、これは、物理的な手術ツール134の位置を表し、これと関連している。手術ツール134が球状バーである実施形態では(例えば、
図1に示すように)、HIPは、該球状バーの中心を表し得る。手術ツール134が不規則な形、例えば、矢状鋸の場合、該矢状鋸の仮想表現は、多数のHIPを含み得る。手術ツールに対してハプティック力を生成するために複数のHIPを使用することは、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる、2011年12月28日に出願された米国出願第13/339,369号、発明の名称「System and Method for Providing Substantially Stable Haptics」に記載されている。本発明の1つの実施形態では、矢状鋸を表す仮想ツールは、11のHIPを含む。本明細書で使用される、HIPへの言及は、「1つ以上のHIP」への言及も含むと見なされる。以下に記載の通り、HIPとハプティック対象の関係により、手術システム100が手術ツール134を制約することができるようになる。
【0034】
外科手術の遂行に先立って、患者の解剖学的構造(例えば、大腿骨106)は、任意の既知のレジストレーション技術により、患者の解剖学的構造の仮想骨モデルにレジストレーションされ得る。1つの可能なレジストレーション技術は、ポイントベースのレジストレーションであり、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる、2011年8月30日に付与された米国特許第8,010,180号、発明の名称「Haptic Guidance System and Method」に記載されている。別の方法として、レジストレーションは、ハンドヘルド放射線画像装置を使用する2D/3Dレジストレーションにより達成される場合があり、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる2012年7月30日に出願された米国出願第13/562,163号、発明の名称「Radiographic Imaging Device」に記載されている。レジストレーションはまた、手術ツール134の仮想ツール表現への手術ツール134のレジストレーションも含み、それにより、手術システム100が患者に対する(すなわち、大腿骨106に対する)手術ツール134の姿勢を特定及び監視することができる。レジストレーションにより、正確なナビゲーション、制御、及び/または力のフィードバックが外科手術の間に可能になる。
【0035】
処理回路160は、患者の骨(例えば、大腿骨106)の実世界の位置、手術ツール134、及びロボット装置120によって生成される力によって定義される1つ以上の線、平面、または三次元空間に対応する仮想ツール表現、仮想骨モデル、及び制御対象(例えば、仮想ハプティック対象)の仮想位置を監視するように構成される。例えば、追跡システム122によって追跡される外科手術の間に患者の解剖学的構造が移動する場合、処理回路160は、該仮想骨モデルをそれに応じて移動させる。該仮想骨モデルはそれ故、患者の実際の(すなわち、物理的な)解剖学的構造ならびに実際の/物理的な空間におけるその解剖学的構造の位置及び方向に対応するか、または関連付けられる。同様に、任意のハプティック対象、制御対象、またはその解剖学的構造に対してなされる切断、修正等に連結される手術計画の間に生成されるロボット装置120の他の計画された自動的動作もまた、患者の解剖学的構造と一致して動く。いくつかの実施形態では、手術システム100は、大腿骨106の動きを追跡及び処理する必要性を最小限に抑えるために、大腿骨106を実質的に固定するためのクランプまたはブレースを含む。
【0036】
ロボット装置120がハプティック装置である実施形態の場合、手術システム100は、HIPとハプティック対象の間の関係に基づいて手術ツール134を制約するように構成される。すなわち、処理回路160が追跡システム122によって供給されるデータを使用して、ユーザが、HIPをハプティック対象と仮想接触させるように手術ツール134を操作していることを検出する場合、処理回路160は、ロボットアーム132に対して制御信号を発生させ、手術ツール134の動きに対して制約を伝えるための触覚フィードバック(例えば、力、振動)をユーザに返す。一般に、本明細書で使用される、「制約する」という用語は、動きを制限する傾向を示すために使用される。しかしながら、手術ツール134に与えられる制約の形態は、関連するハプティック対象の形態に依存する。ハプティック対象は、任意の所望の形状または解剖学的構造で形成され得る。上記のように、3つの例示的な実施形態としては、線、平面、または三次元ボリュームが挙げられる。1つの実施形態では、手術ツール134のHIPは、直線的なハプティック対象に沿った動きに制限されるため、手術ツール134は制約される。別の実施形態では、該ハプティック対象は、三次元ボリュームであり、手術ツール134は、該三次元ハプティック対象の壁によって囲まれたボリュームの外側のHIPの動きを実質的に阻止することによって制約され得る。別の実施形態では、平面のハプティック対象は、該平面の外側及び該平面のハプティック対象の境界の外側のHIPの動きを実質的に阻止するため、手術ツール134は制約される。例えば、処理回路160は、計画された大腿骨106の平面的遠位切断に対応する平面のハプティック対象を確立し、該計画された遠位切断を実行するために必要な平面に手術ツール134を実質的に限定することができる。
【0037】
ロボット装置120が自律装置である実施形態の場合、手術システム100は、手術ツール134を該制御対象に応じて自律的に移動及び操作するように構成される。例えば、該制御対象は、切断が行われるべき大腿骨106に関連する領域を定義し得る。かかる場合には、ロボットアーム132の1つ以上のモータ、アクチュエータ、及び/または他の機構ならびに手術ツール134は、計画された切断を行うため、例えば、追跡システム122からの追跡データを使用して、手術ツール134を該制御対象内で必要に応じて移動及び操作させるように制御可能であり、閉ループ制御を可能にする。
【0038】
ここで
図2を参照すると、例示的な実施形態による処理回路160の詳細なブロック図が示されている。処理回路160は、プロセッサ200及びメモリ202を具備する。プロセッサ200は、汎用プロセッサとして、特定用途向け集積回路(ASIC)として、1つ以上のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)として、一群の処理コンポーネントとして、または他の適切な電子的処理コンポーネントとして実装され得る。メモリ202(例えば、メモリ、メモリ装置、記憶装置等)は、本出願に記載の様々なプロセス及び機能を完了するまたは容易にするためのデータ及び/またはコンピュータコードを格納するための1つ以上の装置(例えば、RAM、ROM、フラシュメモリ、ハードディスク記憶装置等)を具備する。メモリ202は、揮発性メモリを具備する場合もあれば、非揮発性メモリを具備する場合もある。メモリ202は、本出願に記載の様々な動作及び情報構造を支援するためのデータベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、または任意の他のタイプの情報構造を具備し得る。例示的な実施形態によれば、メモリ202は、処理回路160を介してプロセッサ200に通信可能に接続され、本明細書に記載の1つ以上の処理を実行する(例えば、処理回路160及び/またはプロセッサ200により)ためのコンピュータコードを具備する。
【0039】
図2に示すように、処理回路160はまた、ユーザ・インタフェース回路204、分割回路206、付着点識別回路208、インプラント配置回路210、手術計画回路212、術中制御回路214、及び通信用インタフェース216も具備する。様々な回路204~216は互いに、プロセッサ200及びメモリ202、ならびに通信用インタフェース216に通信可能に結合される。
図2には統合された装置として示すが、いくつかの実施形態では、処理回路160及びその要素(すなわち、プロセッサ200、メモリ202、回路204~214、及び通信用インタフェース216)は、複数のコンピュータ装置、サーバ、ロボット、クラウドリソース等に分散される場合もある。
【0040】
通信用インタフェース216は、
図1の処理回路160と、入力/出力装置162、追跡システム122、及びロボット装置120間の通信を容易にする。通信用インタフェース216はまた、処理回路160と、術前の画像システム218または患者の解剖学的構造の術前の医用画像を処理回路160に提供するように構成された他のシステム(例えば、電子カルテ、患者情報データベース)の間の通信を容易にする。通信用インタフェース216は、暗号及び暗号化の能力を含んで安全な通信セッションを確立し、サイバーセキュリティのリスクを阻止または実質的に軽減し、患者のカルテのプライバシー法及び規制を順守してもよい。
【0041】
ユーザ・インタフェース回路204は、一人以上のユーザに対して入力/出力装置162を介して提供するための様々なグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成し、入力/出力装置162へのユーザ入力を受け取り、解析し、解釈するように構成される。例示的なグラフィカル・ユーザ・インタフェースを
図6~9に示すとともに、それを参照して詳細に説明する。以下で詳細に説明するように、ユーザ・インタフェース回路204は、様々な回路206~214に通信可能に結合され、回路206~214からのグラフィカル・ユーザ・インタフェースの表示のための情報を受け取り、回路206~214にユーザ入力を提供する。
【0042】
分割回路206は、術前の画像システム218から医用画像を受け取り、該医用画像を分割し、該医用画像に基づいて三次元仮想骨モデルを生成するように構成される。様々な実施形態では、医用画像は、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波等を含めた様々な画像技術の1つ以上を使用してキャプチャしてもよい。本明細書に記載の実施形態では、分割回路206は、主にCT画像を受け取りかつ利用するとともに、以下の説明は、CT画像/画像化に言及する。しかしながら、様々な他の実施形態では、処理回路160は、CT画像に加えてまたはそれとは別の方法として、様々な他のタイプの医用画像、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、及び/または二次元x線/蛍光透視像からの三次元再構成/モデリングを含めたx線を使用してもよいことを理解されたい。
【0043】
分割回路206が受け取るCT画像は、患者の大腿骨106及び/または脛骨108の複数の表示をキャプチャする。該複数の表示は、一連のスライス、すなわち、患者の脚に沿った複数の位置の各々での断面図であり得る。各CT画像はそれ故、所与の位置での患者の脚の二次元スライスを示し得る。CT画像の位置及び順序は既知であり得る。
【0044】
分割回路206は、CT画像に示される周囲組織、液体等から骨(例えば、大腿骨106及び脛骨108)を区別するために分割するように構成される。例えば、分割回路206は、各CT画像に示される骨の境界を特定し得る。いくつかの実施形態では、分割回路206は、自動画像処理技術(自動分割)を使用して該境界を自動的に特定する。他の実施形態では、分割回路206は、各画像の境界の表示を入力するようにユーザに指示するグラフィカル・ユーザ・インタフェースへの組み込み用のCT画像をユーザ・インタフェース回路204に提供する。すべての画像を完全に分割するユーザ入力が受け取られる場合もあれば、ユーザ入力と自動分割のなんらかの組み合わせが使用される場合もある。例えば、ユーザは、自動分割の精度を確認し、必要に応じて調整するように指示される場合もある。
【0045】
分割回路206は、さらに、分割されたCT画像に基づいて仮想骨モデル(すなわち、三次元モデル)を生成するように構成される。示される実施形態では、分割回路206は、大腿骨106及び脛骨108の仮想骨モデルを生成する。分割回路206は、分割の過程で定義された各CT画像スライスにおける骨の境界を使用し、画像スライスを重ねて該境界を順番に既知の間隔で離して編成し、該境界と一致する表面を生成してもよい。分割回路206は、それにより、三次元表面、ボクセルの集合、または所与の座標系におけるなんらかの他の表現として定義される仮想骨モデルを生成し得る。
【0046】
付着点識別回路208は、分割回路206から仮想骨モデルを受け取り、該仮想骨モデル上の1つ以上の軟組織付着点を識別する。軟組織付着点とは、骨に軟組織が付着する骨の部位、例えば、靭帯が骨に付着する点または領域の仮想骨モデルの座標系における表現である。様々な実施形態によれば、また、様々な軟組織及び/または手術の場合、軟組織付着点は、点、線、表面、ボクセルもしくはボクセルの集合、またはなんらかの他の表現として定義され得る。
【0047】
本明細書で示される実施形態では、付着点識別回路208は、患者の後十字靭帯(PCL)が患者の脛骨108に付着する部位に相当するPCL付着点を識別する。いくつかの実施形態では、付着点識別回路208はまた、患者の前十字靭帯(ACL)が患者の脛骨108に付着する部位に相当するACL付着点も識別する。付着点識別回路208はまた、ACL及びPCLが大腿骨106に付着する部位に相当する靭帯付着点も識別し得る。様々な他の軟組織付着点もまた識別され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、付着点識別回路208は、軟組織付着点を自動的に識別する。例えば、付着点識別回路208は、該仮想骨モデルの表面の極値、変曲点、または他の識別可能な特徴を特定し得る。別の例として、付着点識別回路208は、機械学習を介して訓練されたニューラルネットワークを動作させて、軟組織付着点を識別する。
【0049】
いくつかの実施形態では、付着点識別回路208は、ユーザ・インタフェース回路204に対して、該仮想骨モデルの軟組織付着点を選択するようにユーザに指示するグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成するように指示することにより、軟組織付着点を識別する。ユーザ・インタフェース回路204は、該仮想骨モデルを視覚化し、入力/出力装置162を用いて該仮想骨モデルの点(複数可)を選択するためのツールを提供するグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成し得る。付着点識別回路208は、該ユーザ入力を受け取り、該ユーザ入力に基づいて1つ以上の軟組織付着点を定義し得る。
【0050】
インプラント配置回路210は、手術用インプラントのサイズ及び配置を、該仮想骨モデル及び軟組織付着点に基づいて特定するように構成される。いくつかの実施形態では、インプラント配置回路210は、脛骨108のPCL付着点に基づいて、全膝関節鏡視下手術の場合に脛骨インプラント及び大腿骨インプラントの配置を特定するように構成される。かかる実施形態では、インプラント配置回路210は、脛骨108の仮想骨モデルに仮想脛骨インプラントを重ね合わせ、大腿骨106の仮想骨モデルに仮想大腿骨インプラントを重ね合わせる。インプラント配置回路210は、PCL付着点に基づいて該仮想骨モデルに該仮想脛骨インプラントを配置する(例えば、該PCL付着点の干渉を回避するため、該PCL付着点に基づいて回旋及び被覆率を最適化するため)。
図5は、靭帯の衝突が生じ得るかどうかを特定するため、骨モデルのPCL付着点を識別するための画像の使用(フレームA及びB)ならびに骨モデルへのインプラントモデルの配置(フレームC)、ならびにPCLに対するインプラントの計画された配置の関係を視覚的に描写するための画像の使用(フレームD)を示す。このアライメントを示すグラフィカル・ユーザ・インタフェースを
図6~7に示す。
【0051】
いくつかの実施形態では、インプラント配置回路210は、大腿骨106及び脛骨108上のPCL付着点ならびにPCL及びACLのACL付着点に基づいてACL及びPCLの作用線を予測するように構成される。すなわち、インプラント配置回路210は、脛骨108及び大腿骨106の間でACL及びPCLの位置を予測する仮想ACLモデル及び仮想PCLモデルを生成するように構成される。インプラント配置回路210は次いで、膝の全可動域を通して該仮想脛骨インプラント及び仮想大腿骨インプラントによる仮想ACLモデル及び仮想PCLモデルの衝突(すなわち、妨害、挟み込み、制限等)を避けるように該仮想脛骨インプラント及び仮想大腿骨インプラントを配置し得る。インプラント配置回路210は、それにより、インプラントコンポーネントによるACLまたはPCLの衝突の阻止を容易にし得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、ユーザ・インタフェース回路204は、例えば、
図6~9に示すように、及びそれを参照して詳細に説明されるように、仮想骨モデルに重ね合わされた仮想インプラントの配置を示すグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成する。該グラフィカル・ユーザ・インタフェースにより、ユーザが該仮想インプラントの配置を調整することができるようになり得る。かかる実施形態では、インプラント配置回路210は、ユーザが利用可能な配置の選択肢を制限し、該ユーザが該仮想インプラントを付着点と干渉するようにまたはACLもしくはPCLに衝突するように配置することを阻止する場合がある。他の実施形態では、インプラント配置回路210は、入力/出力装置162に対して提供される注意または警告(例えば、テキストメッセージ、警報)を発し、該ユーザに対して該干渉または衝突を知らせつつ、かかる配置の選択をユーザに許可する場合がある。
【0053】
手術計画回路212は、インプラント配置回路210から、仮想インプラントが配置された仮想骨モデルを受け取る。手術計画回路212は、大腿骨106及び脛骨108を整えてインプラント配置回路210によって特定された位置に該インプラントを受け入れるために必要な大腿骨106及び脛骨108に対する切断を計画するように構成される。すなわち、手術計画回路212は、インプラント配置回路210によって、該仮想大腿骨及び脛骨インプラントが該仮想骨モデルに配置される位置と同じ位置に、大腿骨及び脛骨インプラントを大腿骨106及び脛骨108に配置することができるように、大腿骨106及び脛骨108がどのように修正される必要があるかを特定する。手術計画回路212は、大腿骨106及び脛骨108になされるべき一連の計画された平面的な切断を含む手術計画を決定し得る。
【0054】
手術計画回路212は、1つ以上の軟組織付着点に基づいて、計画された切断を調整するように構成され得る。例えば、手術計画回路212は、計画された切断が軟組織付着点と交差することも、軟組織付着点を弱化することも、軟組織付着点に付着した軟組織と交差することも、なんらかの他の方法で軟組織を傷つける危険を及ぼすこともないことを保証するように構成され得る。インプラント配置回路210によって特定された位置にインプラントを配置するためにかかる切断が必要とされる場合、手術計画回路212は、インプラント配置回路210に対してエラーまたは警告メッセージを送信し、インプラント配置回路210が該インプラント配置を見直すことを要求する場合がある。
【0055】
計画された切断に基づいて、手術計画回路212は、計画された切断の各々に対して制御対象(例えば、仮想ハプティック対象)を生成し、これらは、該1つ以上の軟組織付着点に基づく。従って、手術計画回路212は、該軟組織付着点を使用して、患者に特異的な制御対象を生成する。すなわち、手術計画回路212は、該制御対象の1つ以上を定義して、該手術ツールが1つ以上の軟組織付着点に影響を与えることを制約する。例えば、ある制御対象は、脛骨108の遠位面に行われるべき平面的な切断に対応し得る。手術計画回路212は、該制御対象が脛骨のPCL付着点と交差しないように該制御対象を成形し得る。
図8~9は、かかる制御対象の図を示すとともに、それを参照して以下に詳細に説明する。
【0056】
術中制御回路214は、手術計画回路212によって生成された手術計画の実施を容易にするように構成される。術中制御回路214は、追跡システム122及びロボット装置120と通信可能であり、レジストレーション、ナビゲーション、及び追跡を、例えば、
図1を参照して上記で説明した通りに行う。術中制御回路214は、1つ以上の軟組織付着点をレジストレーション及び追跡し得る。術中制御回路214はまた、手術計画回路212によって生成された制御対象に基づいてロボット装置120を制御するように構成される。ロボット装置120がハプティック装置である実施形態では、術中制御回路214は、手術ツール134を該制御対象に、例えば、
図1を参照して上記で説明した通りに限定するようにロボット装置120を制御する。ロボット装置120が自律的または自動的ロボット装置である実施形態では、術中制御回路214は、手術ツール134を、切断(複数可)を実行するために、例えば、
図1を参照して上記で説明した通りに制御対象内で移動させるようにロボット装置120を制御する。術中制御回路214は、それにより、手術計画回路212によって生成された制御対象に従って、ロボット装置120を制御することにより、該外科手術の間に1つ以上の軟組織付着点を保護し得る。
【0057】
ここで
図3を参照すると、例示的な実施形態による、1つ以上の軟組織付着点の位置を使用して関節の関節鏡視下手術を容易にするためのプロセス300のフローチャートが示されている。プロセス300は、
図1の手術システム100及び
図2の処理回路160によって実行することができ、以下の説明ではこれらを参照する。以下に説明するように、プロセス300は、全膝関節鏡視下手術を容易にする。しかしながら、プロセス300は、様々な他のシステムで実行される場合もあること、ならびに他の手術の中でも特に、部分的膝関節鏡視下手術、両十字靭帯温存人工膝関節全置換術、部分的股関節鏡視下手術、及び全股関節鏡視下手術、再再建膝及び股関節手術を含めた様々な他の手術に適用される場合もあることを理解されたい。
【0058】
ステップ302では、処理回路160は、目的の解剖学的構造、例えば、患者104の脚102の脛骨108及び大腿骨106のコンピュータ断層撮影(CT)画像を受け取る。該CT画像は、処理回路160と通信可能な術前画像システム218(例えば、CTスキャナ)によってキャプチャしてもよい。該CT画像は、脚102に沿った様々な位置での脚102の断面スライスを示す二次元画像の集合を含み得る。
【0059】
ステップ304では、該CT画像は、該画像に示される様々な組織及び構造を区別するために分割される。例えば、各CT画像における脛骨108または大腿骨106に対応する領域が特定され得る。各CT画像における脛骨108または大腿骨106の輪郭を描く境界線が定義及び保存され得る。いくつかの実施形態では、処理回路160は、脛骨108または大腿骨106に対応する領域を残りの画像(すなわち、軟組織または他の解剖学的構造を示す画像の一部)から区別するために該CT画像を自動的に分割する。他の実施形態では、処理回路160は、各CT画像において脛骨108または大腿骨106の境界の表示をユーザが手動で入力できるようにするグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成する。さらに他の実施形態では、自動分割及びユーザ入力のなんらかの組み合わせを使用して、該分割プロセスの効率及び精度を高める。処理回路160は、それにより、脛骨108に沿った様々な層で脛骨108及び/または大腿骨106の形状/境界を示す分割CT画像を取得する。
【0060】
ステップ306では、処理回路160は、該分割CT画像に基づいて脛骨108及び/または大腿骨106の仮想骨モデルを生成する。すなわち、各分割CT画像で定義された脛骨108及び/または大腿骨106の境界を、各CT画像間の分離が既知の状態で重ねる。画像の積み重ねをその後処理して、脛骨108及び/または大腿骨106を表す三次元仮想骨モデル(例えば、仮想脛骨モデル及び仮想大腿骨モデル)を生成し得る。
【0061】
ステップ308では、1つ以上の軟組織付着点を該仮想骨モデル上で識別する。すなわち、脛骨108または大腿骨106に軟組織が付着する1つ以上の部位が、該仮想骨モデル及び/または該CT画像から特定される。該仮想骨モデルの座標系における該部位の座標が特定され、軟組織付着点として定義される。例えば、PCLが脛骨108に付着する部位に相当するPCL付着点は、この方法で識別及び定義され得る。いくつかの実施形態では、処理回路160は、1つ以上の軟組織付着点の位置をユーザが表示または調整することができるようにするグラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成する。かかるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの例を
図6~7に示すとともに、それを参照して詳細に説明する。いくつかの実施形態では、処理回路160は、1つ以上の軟組織付着点を自動的に識別するように構成される。
【0062】
いくつかの実施形態では、軟組織付着点は、該CT画像に現れる骨密度情報を使用して識別される。例えば、軟組織に付着する骨の部位は、骨の他の領域より密度が高い場合がある。これらの高密度領域は、CT画像から区別される可能性があり、例えば、CT画像ではより不透明に見える場合もより明るく見える場合もある。処理回路160は、画像認識技術または自動分割法を用いて、高骨密度と関連するCT画像内の1つ以上の領域を識別し、それらの領域を軟組織付着点と関連付ける場合もある。処理回路160は、それにより、軟組織付着点をCT画像によってキャプチャされた骨密度情報に基づいて自動的に識別し得る。
【0063】
ステップ310では、インプラントのサイズ及び配置が、識別された軟組織付着点に基づいて決定される。例えば、処理回路160は、脛骨インプラント及び大腿骨インプラントの仮想インプラントモデルを生成し得る。処理回路160は、その後、該仮想インプラントモデルを該仮想骨モデルに重ね合わせ、サイズ決定、配置、方向、アライメント等を評価する場合がある。該仮想骨モデルに重ね合わされた仮想インプラントモデルを示すグラフィカル・ユーザ・インタフェースの例を
図6~7に示すとともに、それを参照して詳細に説明する。
【0064】
処理回路160は、インプラントモデルが1つ以上の軟組織付着点に、該付着点を覆うこと、該付着点の除去または弱化を必要とすること、または該インプラントによる腱の衝突を引き起こすことによって干渉しないことを保証し得る。一例として、処理回路160は、脛骨108のPCL付着点に基づいて膝インプラントの脛骨コンポーネントのサイズ、位置、及び/または回旋を決定し得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、処理回路160は、PCL及び膝蓋靱帯に対応する該脛骨コンポーネントベースの付着点の回旋または方向を特定する。より具体的には、該PCL付着点と該膝蓋靱帯付着点を接続する線を使用して、脛骨コンポーネントの回旋が設定され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の軟組織付着点は、回旋が定義または操作され得る目印として使用される。
【0066】
ステップ312では、処理回路160は、ステップ310で特定されたインプラントのサイズ及び配置に基づいて、ならびに1つ以上の軟組織付着点に基づいて患者に特異的な制御対象を生成する。該制御対象は、手術ツール134による大腿骨106及び脛骨108に対する切断または他の修正を容易にし、ステップ310で特定された位置に該大腿骨及び脛骨インプラントを受け入れるように大腿骨106及び脛骨108を整えるように構成される。該制御対象は、該軟組織付着点との交差または他の干渉を回避するように成形及び配置され得る。
【0067】
ステップ314では、該制御対象に基づいて手術ツール134が制御及び/または制約される。ロボット装置120が自律ロボットシステムである実施形態では、手術ツール134は、大腿骨106及び/または脛骨108を修正するために1つ以上の制御対象を介して自律的に移動するように制御される。該制御対象は、該仮想骨モデル上の1つ以上の軟組織付着点を回避するように成形されるため、該ロボット装置は、実際の大腿骨106もしくは脛骨108上の対応する付着部位または該付着部位に付着する靭帯もしくは他の組織と接触しないように制御される。ロボット装置120がハプティック装置である実施形態では、処理回路160は、手術ツール134を該制御対象内に制約するようにロボット装置120を制御する。手術ツール134は、それにより、該靭帯または他の組織が1つ以上の付着部位に付着する該付着部位との接触が制約される。一連の外科的切断は、それにより、靭帯または他の軟組織を医原性損傷から保護し、弱化した付着点に伴う合併症のリスクを制限しつつ行われ得る。
【0068】
ここで
図4を参照すると、例示的な実施形態による、インプラントコンポーネントによる患者のACL及び/またはPCLの衝突を阻止するためのプロセス400が示されている。プロセス400は、
図1の手術システム100により、
図2に示す処理回路160で行われ得る。人工膝関節全置換術への応用を本明細書では記載するが、プロセス400は、部分的膝関節形成術、早期介入膝手術等にも使用され得る。プロセス400は、特に、両十字靭帯温存膝関節形成術に適合し得る。プロセス400は、
図3に示すプロセス300のステップ310の例であり得る。
【0069】
ステップ402では、処理回路160は、CT画像に基づいてACL/PCLの作用線を予測する。該CT画像、該仮想骨モデル、及び/または識別された大腿骨106及び脛骨108のACL及びPCLの付着点に基づいて、処理回路160は、該ACL及びPCLが膝の全可動域に広がる空間を予測する。例えば、処理回路160は、ACL及び/またはPCLのモデルを生成して、該仮想骨モデルに追加し得る。
【0070】
ステップ404では、処理回路160は、該インプラントによるACLまたはPCLの衝突の可能性を特定する。処理回路160は、仮想インプラントモデルを生成し、
図3を参照して上記で説明した通り、該仮想骨モデルに該仮想インプラントモデルを重ね合わせる場合がある。該ACL/PCLモデルもまた含まれ得る。処理回路160は、それにより、仮想骨モデル、仮想インプラントモデル、及び仮想靭帯モデルを含む仮想モデルを獲得し得る。処理回路160は、全可動域にわたって該仮想モデルを調べ、衝突の可能性を示す該仮想インプラントモデルと該仮想靭帯モデル間の任意の重なりを検出し得る。該仮想インプラントモデルと該仮想靭帯モデル間の重なりは、該インプラントが、表されるように該モデルに取り付けられる場合に衝突が起こり得ることを示す。
【0071】
ステップ406では、処理回路160は、衝突の可能性に基づいて、該インプラントのサイズ及び位置を選択する。すなわち、処理回路160は、衝突の可能性を排除する、または衝突のリスクを最小限に抑えるためのインプラントのサイズ及び位置を選択する。例えば、処理回路160は、該仮想モデルが、該仮想インプラントモデルと該仮想靭帯モデル間に重なりを生成することなく全可動域にわたって調べられ得るように、該インプラントのサイズ及び位置を変更し得る。処理回路160は、
図5を参照して上記で説明した通り、画像を使用して衝突を回避するための該インプラントの適切なサイズ及び位置を特定する。グラフィカル・ユーザ・インタフェースが提供され、これが、計画されたインプラントのサイズ及び位置をユーザが変更することができるようにする実施形態では、処理回路160は、提案された計画インプラント位置が、衝突を引き起こすと予測されることをユーザに示す警告または注意を生成する場合がある。処理回路160はまた、衝突が予測される選択肢または衝突のリスクが閾値を超える選択肢をユーザが選択することを阻止する場合もある。
【0072】
ステップ408では、処理回路160は、MRI画像を用いて該仮想モデル及び該衝突予測を検証する。処理回路160は、術前画像システム218からMRI画像を受け取り得る。該MRI画像は、膝における大腿骨、脛骨、膝蓋骨、軟骨、及び靭帯(例えば、ACL、PCL、膝蓋靭帯)を区別するように分割され得る。骨、靭帯、及び軟骨の1つ以上の三次元モデルを、例えば、上記のCT画像に関して記載した方法と同じ方法を使用して生成してもよい。計画されたインプラントの仮想モデルを、該MRIベースの三次元モデルに配置してもよい。これらのモデルを次いで使用し、CTベースのモデルが正確に衝突または非衝突を予測したことを検証し得る。例えば、該MRIベースのモデルが非衝突を予測し、該CTベースのモデルが非衝突を予測する場合、該MRIベースのモデルが該CTベースのモデルを検証し、該インプラントの計画された位置が承認され得る。該プロセスは、プロセス300のステップ312及び314に関して上記で説明した通り、軟組織の衝突の可能性を阻止するように選択されたがインプラントのサイズ及び位置に基づいて、患者に特異的な制御対象の生成を続け得る。
【0073】
ここで
図6~9を参照すると、例示的な実施形態による、処理回路160によって(例えば、ユーザ・インタフェース回路204によって)生成され、入力/出力装置162によって表示される(すなわち、ディスプレイ164に示される)グラフィカル・ユーザ・インタフェース500の様々な図が示されている。
図6~9の各々では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、大腿骨106の仮想骨モデル(仮想大腿骨モデル550)の視覚化を示す上段502及び脛骨108の仮想骨モデル(仮想脛骨モデル552)の視覚化を示す下段504を含む。グラフィカル・ユーザ・インタフェース500はまた、仮想大腿骨モデル550と仮想脛骨モデル552の3組の視覚化に対応する3列も含む。第一列506は、仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552の正面図を示し、第二列508は、仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552の遠位図を示し、第三列510は、仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552の側面図を示す。さらに、
図6、7、8A、及び9は、仮想大腿骨インプラント554の視覚化及び仮想脛骨インプラント556の視覚化を含む。グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、それにより、計画されたインプラントの配置をユーザに対して表示する。
【0074】
図6に示される構成では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、仮想大腿骨モデル550、仮想大腿骨インプラント554、仮想脛骨モデル552、及び仮想脛骨インプラント556の断面図を示す。円558は、仮想脛骨モデル552のPCL付着点を取り囲む(例えば、それを中心とする)。いくつかの実施形態では、円558の位置は、該PCL付着点の位置の定義を変更するようにユーザによって調整可能である。破線560は、該PCL付着点と関連する高さまたは平面を示す。いくつかの実施形態では、破線560は、該PCL付着点の位置を移動するようにユーザによって調整可能である。
図6に示すように、仮想脛骨インプラント556は、該PCL付着点と干渉しないように配置される。
【0075】
図6に示される構成では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、仮想大腿骨モデル550、仮想大腿骨インプラント554、仮想脛骨モデル552、及び仮想脛骨インプラント556の三次元レンダリングを示す。仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552は、大腿骨106及び脛骨108に対して計画された切断の効果を示すように修正される。すなわち、手術中に除去されるべき大腿骨106及び脛骨108の部分は、仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552からも除去されている。ユーザは、その後、計画された切断が、1つ以上の軟組織付着点に変更、損傷、交差、干渉、またはその他の方法で影響を与えるかどうかを確認してもよい。グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、矢印ボタン600を具備し、これにより、ユーザが、仮想大腿骨インプラント554及び仮想脛骨インプラント556の位置、サイズ、回旋等を調整することができるようになる。
【0076】
図8Aに示される構成では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、仮想大腿骨モデル550、仮想大腿骨インプラント554、仮想脛骨モデル552、及び仮想脛骨インプラント556の断面図を示す。
図8Aでは、仮想境界700は、制御対象の境界を示す。仮想境界700は、手術ツール134が該制御対象及びロボット装置120によって交差することを制限される境界を定義する。
図8に示すように、仮想境界700は、凹型のノッチ702を含み、そこで仮想境界700は、強調表示704が示すPCL付着点に沿って曲がる。仮想境界700は、それにより、該制御対象が、手術ツール134を該PCL付着点への到達から制限するように構成されることを示す。
【0077】
図8B~Cに示される構成では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、計画された脛骨の切断に対応する仮想境界700を含む仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552の断面図を示す。
図8Bは、右膝の図を示し、
図8Cは、左膝の図を示す。
図8B~Cに示すように、仮想大腿骨モデル550及び仮想脛骨モデル552は、患者の大腿骨及び脛骨の様々な領域の骨密度を示すCT画像及び/または他の医用画像を含むように可視化され得る。これは、ユーザにとって、1つ以上の軟組織付着点を識別する際、インプラントとの係合に適した強い骨の領域を識別する際、及び/または他の計画もしくは診断目的に有用であり得る。
図8B~Cに示すように、仮想大腿骨インプラント554及び仮想脛骨インプラント556は、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500からは見えず、簡易化された図を提示しており、それにより、仮想境界700により容易にされる計画された切断をユーザがはっきりと見えるようになる。
【0078】
図8D~Eに示すように、より高密度の骨の領域は、色分けされた領域、陰影領域、または他の区分によって示される領域としてグラフィカル・ユーザ・インタフェース500に示され得る。示される例では、区分750は、骨の高密度領域を示す。点752は、該骨の高密度領域の質量中心を示す。領域754は、PCL及び/またはPCL付着点に対応する。区分750、点752、及び/または領域754は、インプラント計画を容易にし得る。例えば、外科医(ユーザ)は、仮想脛骨インプラント556の溝を点752に合わせ(
図8Eに示すように)、内/外旋を最適化することができる。別の例として、外科医は、脛骨切除の内反/外反回旋を調整し、切断面の密度を最適化することができる。様々なさらなる有利なアライメント及び計画は、区分750、点752、及び/または領域754をグラフィカル・ユーザ・インタフェース500に含めることによって容易にされ得る。
【0079】
図9に示される構成では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、仮想大腿骨モデル550、仮想大腿骨インプラント554、仮想脛骨モデル552、及び仮想脛骨インプラント556の三次元レンダリングを示す。
図9はまた、仮想境界700も示す。示される実施形態では、該制御対象は、平面制御対象であり、仮想境界700が第二列508の遠位図からのみ見えるように配向される。グラフィカル・ユーザ・インタフェース500は、矢印ボタン600を具備し、これにより、ユーザが、仮想大腿骨インプラント554及び仮想脛骨インプラント556の位置、サイズ、回旋等を調整することができるようになる。仮想脛骨インプラント556の位置、サイズ、回旋等を調整するためのユーザ入力に応じて、処理回路160は、該制御対象を適切に合わせる。グラフィカル・ユーザ・インタフェース500の仮想境界700は、同様に更新される。従って、該ユーザは、仮想脛骨インプラント556の位置、サイズ、回旋等を調整することにより、必要に応じて仮想境界700を調整してもよい。
【0080】
ここで
図10~12を参照すると、例示的な実施形態による、膝蓋靭帯の脛骨への付着に基づくインプラントの回旋アライメントを特定するプロセス1000が図示されている。
図10は、プロセス1000のフローチャートを示す。
図11~12は、プロセス1000の説明に有用な図を示す。プロセス1000は、
図1の処理回路160によって実行することができる。プロセス1000は、
図3のプロセス300の実施形態の一部、例えば、
図3のステップ304~310として含まれ得る。
【0081】
ステップ1002では、膝蓋靭帯付着点(脛骨結節)を識別するために脛骨及び膝蓋靭帯がCT画像から識別される。すなわち、該CT画像は、該脛骨結節及び/または膝蓋靭帯に対応するCT画像のピクセルまたは座標を定義するように分割される。該画像を分割して膝蓋靭帯及び脛骨を識別することにより、膝蓋靭帯が脛骨に付着する(例えば、分割された領域が互いに隣接する)領域の識別が容易になる。いくつかの実施形態では、処理回路160は、自動的に、該CT画像において脛骨結節及び/または膝蓋靭帯を識別する(すなわち、自動分割)。他の実施形態では、処理回路160は、グラフィカル・ユーザ・インタフェースを生成し、これがユーザに、膝蓋靭帯及び/または脛骨結節の位置の表示(例えば、輪郭、領域)の入力を指示する。処理回路160は、ユーザ入力を受け取り、該ユーザ入力に基づいて、脛骨結節及び/または膝蓋靭帯の位置を識別し得る。例えば、
図10は、脛骨結節での膝蓋靭帯の外側境界として識別される分割境界1008を示す。
【0082】
ステップ1004では、脛骨結節での膝蓋靭帯の内側縁が識別される。換言すれば、処理回路160は、膝蓋靭帯が脛骨に付着する脛骨結節での膝蓋靭帯の最内側点(すなわち、
図11の最も内側の点1110)を特定する。この点を識別するためには、膝蓋靭帯と脛骨間の付着を示す脛骨結節の高さでのCT画像の「スライス」が選択される(例えば、
図11のCT画像1101)。その高さでは、脛骨結節及び/または膝蓋靭帯の最内側点が、ステップ1002からの分割データに基づいて、例えば、膝蓋靭帯に対応する分割された領域から、該CT画像の内側境界に最も近い点を選択することにより特定される。処理回路160は、それにより、脛骨結節及び/または膝蓋靭帯の内側縁と関連する座標を特定する。
【0083】
ステップ1006では、人工インプラントの脛骨コンポーネントの回旋が、該脛骨コンポーネントの軸と脛骨結節及び/または膝蓋靭帯の内側縁を(すなわち、脛骨上の膝蓋靭帯の付着領域の最内側を)合わせることによって特定される。処理回路160は、仮想骨モデルに対して合わせるための該脛骨コンポーネントの仮想インプラントモデル(例えば、仮想脛骨インプラント556)を生成する(例えば、プロセス300のステップ306で生成されるように)。該仮想インプラントモデルのいくつかの表示において、例えば、
図11に示すように、該仮想インプラントモデルは、該仮想インプラントモデルの1つ以上の回旋を定義する2本以上の軸の表現1100を含み得る。より具体的には、表現1100は、脛骨108のCT画像1001に重ね合わせた仮想脛骨インプラントの回旋アライメントを示す。
【0084】
図11に示すように、表現1100の第一の軸1102は、実質的に端から端(すなわち、内側から外側)に延在し得るとともに、第二の軸1004は、該CT画像の平面(すなわち、脛骨の長さと実質的に平行な法線ベクトルによって定義される平面)において第一の軸1102と垂直な向きであり得る。該仮想インプラントモデルの回旋アライメントは、該CT画像の平面における第一の軸1102と第二の軸1104の交点1106の周りで、第一の軸1102及び第二の軸1104を回旋させることによって調整され得る。
【0085】
ステップ1006では、処理回路160は、第二の軸1104が、膝蓋靭帯と脛骨の間の付着点/領域で膝蓋靭帯の内側縁と交差するように該仮想脛骨モデルの回旋を定義する。
図11に示すように、第二の軸1104は、膝蓋靭帯に対応する分割境界1108の最内側点1110を通って延在する。換言すれば、該仮想脛骨インプラントの回旋は、
図11に示される第二の軸1104が、ステップ1004で識別された最内側座標を確実に通過するように設定される。
【0086】
ステップ1008では、該仮想脛骨インプラントの回旋アライメントは、インプラントの大腿骨コンポーネントの仮想モデル(例えば、仮想大腿骨インプラント554)の回旋アライメントを特定するために使用される。例えば、該仮想脛骨インプラントの回旋アライメント及び該仮想大腿骨インプラントの回旋アライメントは、予め設定された幾何学的関係を有する場合があり、これは、処理回路160によって、該仮想脛骨インプラントの回旋アライメントに基づいて該仮想大腿骨インプラントの回旋アライメントを特定するために使用され得る。
図12は、大腿骨上の仮想大腿骨インプラントの配置(すなわち、大腿骨のCT画像1202に重ね合わせた)の表現1200を示す。
図12に示すように、該仮想大腿骨インプラントのアライメントの表現1200は、該仮想脛骨インプラントのアライメントの表現1100と一致する。
【0087】
処理回路160は、それにより、該インプラントの回旋アライメントを、脛骨の膝蓋靭帯の付着点に基づいて特定する。
【0088】
上記のように、プロセス1000は、プロセス300の下位部分として実行され得る。従って、ステップ1008の後、処理回路160は、該インプラントの他のサイズ決定または配置の特徴を特定し(すなわち、ステップ310)、特定されたインプラントの配置及び脛骨への膝蓋靭帯の付着点に基づいて制御対象を生成し(すなわち、ステップ312)、該制御対象に基づいて手術ツール134を制約または制御し得る(すなわち、ステップ314)。
【0089】
いくつかの実施形態では、プロセス1000はさらに、溝の密度を軸平面、冠状面、及び矢状面での脛骨ベースプレートの方向を特定するのに使用して、中立インプラントアライメントを達成するステップを含む。いくつかの実施形態では、冠状及び矢状密度プロファイルを使用して、最適なインプラントの固定のための良好なボーンストック(bone stock)が特定され得る。
【0090】
ここで
図13を参照すると、例示的な実施形態による、グラフィカル・ユーザ・インタフェース1300が示されている。グラフィカル・ユーザ・インタフェース1300は、処理回路160により(例えば、ユーザ・インタフェース回路204により)生成され、入力/出力装置162によって表示される(すなわち、ディスプレイ164に示される)。いくつかの実施形態では、グラフィカル・ユーザ・インタフェース1300は、グラフィカル・ユーザ・インタフェース500の一部、例えば、
図7の第二列508及び下段504に見られる部分に対応する。
【0091】
図13の実施形態では、手術ツール134のツール可視化1302が、仮想脛骨モデル552の断面端面図に重ね合わされる(例えば、CT画像によって示される脛骨上)。ツール可視化1302の位置は、リアルタイムで更新され、実際の脛骨108に対する手術ツール134の実際の位置を、例えば、追跡システム122によって生成される追跡/ナビゲーションデータに基づいて示し得る。グラフィカル・ユーザ・インタフェース1300はまた、仮想境界700及び該PCL付着点の位置を強調表示するインジケータ1304も含む。ユーザ(例えば、外科医)は、それにより、外科手術の間に、手術ツール134、仮想境界700、及びグラフィカル・ユーザ・インタフェース1300上でインジケータ1304によって示される付着点の相対位置を見る場合がある。該ユーザは、それにより、該付着点に対して手術ツール134を使用して行われる切断の適切な配置及び/または方向合わせが支援され得る。
【0092】
本開示は、PCL及びACLに焦点を合わせているが、本明細書に記載のシステム及び方法は、内側側副靱帯(MCL)等の他の軟組織の識別及び保護に適応し得る。様々なかかる可能性が本開示に企図される。
【0093】
本明細書で使用される、「回路」という用語は、本明細書に記載の機能を実行するように構造化されたハードウェアを含み得る。いくつかの実施形態では、それぞれの「回路」は、本明細書に記載の機能を実行するように該ハードウェアを構成するための機械可読媒体を含み得る。該回路は、処理、電気回路、ネットワーク・インタフェース、周辺機器、入力装置、出力装置、センサー等が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の電気回路コンポーネントとして具体化され得る。いくつかの実施形態では、回路は、1つ以上のアナログ回路、電子回路(例えば、集積回路(IC)、ディスクリート回路、システム・オン・チップ(SOC)回路等)、電気通信回路、ハイブリッド回路、及び任意の他のタイプの「回路」の形態をとり得る。この関連で、該「回路」は、本明細書に記載の操作を達成するためまたは達成を容易にするための任意のタイプのコンポーネントを含み得る。例えば、本明細書に記載の回路は、1つ以上のトランジスタ、論理ゲート(例えば、NAND、AND、NOR、OR、XOR、NOT、XNOR等)、抵抗器、マルチプレクサ、レジスタ、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、配線等を含み得る。
【0094】
該「回路」はまた、1つ以上のメモリまたは記憶装置に通信可能に結合された1つ以上のプロセッサを含み得る。この関連で、該1つ以上のプロセッサは、該メモリに格納された命令を実行する場合もあれば、該1つ以上のプロセッサに他の方法でアクセス可能な命令を実行する場合もある。いくつかの実施形態では、該1つ以上のプロセッサは、様々な方法で具体化され得る。該1つ以上のプロセッサは、少なくとも本明細書に記載の操作を行うのに十分な形で構築され得る。いくつかの実施形態では、該1つ以上のプロセッサは、複数の回路によって共有され得る(例えば、回路A及び回路Bは、いくつかの例示的な実施形態では、メモリの異なる領域によって格納される、または他の方法でアクセスされる命令を実行し得る同じプロセッサを含む場合もあれば、共有する場合もある)。代替的にまたはさらに、該1つ以上のプロセッサは、1つ以上のコプロセッサとは独立してある特定の操作を行うようにまたは他の方法で実行するように構造化され得る。他の例示的な実施形態では、2つ以上のプロセッサがバスを介して結合され、独立、並列、パイプライン、またはマルチスレッドの命令実行を可能にし得る。各プロセッサは、1つ以上の汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、またはメモリによって提供される命令を実行するように構造化された他の適切な電子データ処理コンポーネントとして実装され得る。該1つ以上のプロセッサは、シングルコア・プロセッサ、マルチコア・プロセッサ(例えば、デュアルコア・プロセッサ、トリプルコア・プロセッサ、クアドコア・プロセッサ等)、マイクロプロセッサ等の形をとり得る。いくつかの実施形態では、該1つ以上のプロセッサは、当該装置の外側であってもよく、例えば、該1つ以上のプロセッサは、遠隔プロセッサ(例えば、クラウドベースのプロセッサ)でもよい。代替的にまたはさらに、該1つ以上のプロセッサは、当該装置の内部及び/またはローカルであり得る。この関連で、所与の回路またはそのコンポーネントは、ローカルに(例えば、ローカルサーバ、ローカルコンピュータシステム等の一部として)配置される場合もあれば、遠隔に(例えば、クラウドベースのサーバ等のリモート・サーバの一部として)配置される場合もある。その目的で、本明細書に記載の「回路」は、1つ以上の位置にわたって分散されたコンポーネントを含み得る。
【0095】
これら様々な例示的な実施形態に示すシステム及び方法の構築及び配置は例示に過ぎない。本開示では、ほんのわずかな実施形態を詳細に記載してきたが、多くの修正が可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、、形状及び比率、パラメータ値、材料の使用、色、方向等の変動)。例えば、要素の位置を逆にしてもよいし、他の方法で変更してもよく、個別の要素または位置の性質または数を変更しても変化させてもよい。従って、すべてのかかる修正は、本開示の範囲に含まれることが意図される。任意のプロセスまたは方法のステップの順序または配列は、変化させてもよいし、代替的な実施形態に応じて並べ直してもよい。他の置換、修正、変更、及び省略は、本開示の範囲から逸脱することなく例示的な実施形態の設計、操作条件及び配置においてなされ得る。
【国際調査報告】