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特表2022-524499金属トリフルオロアセテートを使用してトリフルオロヨードメタンを生成するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(54)【発明の名称】金属トリフルオロアセテートを使用してトリフルオロヨードメタンを生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/361 20060101AFI20220425BHJP
   C07C 19/16 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C07C17/361
C07C19/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552792
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 US2020020598
(87)【国際公開番号】W WO2020180766
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/813,503
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/797,690
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チュンゴン、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハイユウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、テリス
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC26
4H006BC10
4H006BE53
4H006EA02
(57)【要約】
【解決手段】 本開示は、トリフルオロヨードメタンを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を提供する工程と、溶媒の存在下で金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとを反応させてトリフルオロヨードメタンを生成する工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロヨードメタン(CFI)を生成するためのプロセスであって、
金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を混合する工程と、
前記金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び前記溶媒を加熱して、前記金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドを反応させて、トリフルオロヨードメタン及び金属塩化物を生成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記トリフルオロヨードメタンを前記金属塩化物から分離する工程を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記金属トリフルオロアセテートと前記ヨウ素モノクロリドとのモル比が、約0.1:1~約2.0:1である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記溶媒が、約500体積ppm未満の水を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶媒が、イオン性液体及び極性非プロトン性溶媒の群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記溶媒が、イミダゾリウム塩、カプロラクタム水素硫酸塩、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホンの群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドが、触媒の存在下で反応する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒が、ヨウ化銅(I)、塩化鉄、及びヨウ化亜鉛(II)の群から選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記金属トリフルオロアセテート、前記ヨウ素モノクロリド、及び前記溶媒が、約100℃~約250℃の温度まで加熱される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トリフルオロヨードメタン(trifluoroiodomethane、CFI)を生成するためのプロセスに関する。具体的には、本開示は、トリフルオロヨードメタンを金属トリフルオロアセテートから生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフルオロヨードメタン(CFI)は、例えば、冷媒又は火災抑制剤として商業用途において有用な化合物である。トリフルオロヨードメタンは、地球温暖化係数が低く、オゾン破壊係数が低い、環境的に許容可能な化合物である。トリフルオロヨードメタンは、より環境的に害のある材料に取って代わることができる。
【0003】
金属トリフルオロアセテート及びヨウ素元素からトリフルオロヨードメタンを調製する方法が知られている。例えば、中国特許第102992943(B)号は、トリフルオロヨードメタン、二酸化炭素、及びヨウ化金属を生成するための、トリフルオロ酢酸ナトリウムとヨウ素元素との反応が開示されている。化学量論的に、ヨウ化元素からのヨウ素の半分は、所望のトリフルオロヨードメタンの代わりに、ヨウ化金属副生成物に変換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヨウ素は、トリフルオロヨードメタンを金属トリフルオロアセテートから製造するプロセスにおいて使用される最も高価な反応物質の1つである。したがって、金属トリフルオロアセテートからトリフルオロヨードメタンを生成する際にヨウ素をより効率的に使用するプロセスを開発する必要がある。
【0005】
本開示は、金属トリフルオロアセテートをヨウ素モノクロリドと反応させることによってトリフルオロヨードメタンを生成するためのプロセスを提供する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、トリフルオロヨードメタンを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を提供する工程と、溶媒の存在下で金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとを反応させてトリフルオロヨードメタンを生成する工程と、を含む。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、トリフルオロヨードメタンを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を混合する工程と、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を加熱して、金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドを反応させて、トリフルオロヨードメタン及び金属塩化物を生成する工程と、を含む。
【0008】
添付の図面を考慮して、実施形態についての以下の記載を参照することによって、本開示の上述及び他の特性、並びにそれらを達成する様式がより明らかになり、より良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、以下の式1による脱炭酸ヨウ素化による金属トリフルオロアセテート(metal trifluoroacetat、CFCOOM)及びヨウ素モノクロリド(iodine monochloride、ICI)反応物からトリフルオロヨードメタン(CFI)を製造するための液相プロセスを提供する。
式1:CFCOOM+ICI→CFI+CO+MCl
式中、Mは、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、又はセシウムなどのアルカリ金属、カルシウム又はマグネシウムなどのアルカリ土類金属、あるいは鉄、亜鉛、又は銅などの遷移金属であり得る。したがって、金属トリフルオロアセテートとしては、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸銅、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。式1に示すように、ヨウ素モノクロリドからトリフルオロヨードメタンへのヨウ素のほぼ完全な変換のためのプロセス化学において、固有の化学的制限は存在しない。
【0010】
ヨウ素利用の改善に加えて、ヨウ素モノクロリドの使用は、トリフルオロヨードメタンの製造における他の利点を提供する。ヨウ素モノクロリドは、塩素原子とヨウ素原子との間の電気陰性とサイズとの差により、極性が高い。これにより、塩-ヨウ素結合が高度に分極可能になり、ヨウ素原子は部分的に正の特性を有し、塩素原子は部分的に負の特性を有する。ヨウ素原子の正の特性により、ヨウ素モノクロリドは正のヨウ素源となる。すなわち、ヨウ素は正に帯電したイオンとして利用可能である。式1の反応に基づいて、トリフルオロヨードメタンの形成には正のヨウ素が必要である。塩素-ヨウ素結合は極性が高いため、ヨウ素-ヨウ素結合の反応性に比べて反応性が高くなる。したがって、ヨウ素元素と比較して、ヨウ素モノクロリドはより反応性が高くなる。ヨウ素が正のヨウ素としてのみ利用可能であるため、トリフルオロヨードメタンの収率を向上させることができる。加えて、ヨウ素モノクロリドはまた、ヨウ素元素(113.7℃)よりも融点(27℃)が低いため、プロセスが比較的容易になり、大幅なエネルギー節約をもたらし得る。反応において生成される金属塩化物は、ヨウ素元素を使用したプロセスで生成された反応生成物よりも著しく腐食性が低く、より安全であり得る。
【0011】
金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドは、無水である。反応中のいずれの水も、二次反応経路に加勢的に働き、トリフルオロメタン(CFH)などの望ましくない副生成物を形成する可能性があるため、反応物中の水はできるだけ少なくすることが好ましい。加えて、ヨウ素モノクロリドは、水と反応して、塩化水素、ヨウ化水素、及び酸素を形成する。また、望ましくない副生成物の形成に加えて、水の存在は、以下の式2の反応に基づいて、ヨウ素モノクロリドの分解をもたらすため、直接的な影響による反応に利用できる量が減少し、生産性が低下する。
式2:ICl+HO→HCl+HI+1/2O
【0012】
反応は、溶媒中で実施される。液相中の反応を実施するために有用な溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、イオン性液体、極性非プロトン性溶媒、又はこれらの組み合わせが挙げられる。イオン性液体の例としては、イミダゾリウム塩及びカプロラクタム硫酸塩が挙げられる。高沸点を有する極性非プロトン性溶媒の例としては、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホンが挙げられる。
【0013】
溶媒は、水を実質的に含まない。実質的に水を含まないということは、溶媒中の水の量が約500百万分率(parts per million、ppm)、約300ppm、約200ppm、約100ppm、約50ppm、約30ppm、約20ppm、若しくは約10ppm、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の値未満の量であることを意味する。前述のppm値は、溶媒及び任意の水の重量によるものである。好ましくは、溶媒中の水の量は、約100ppm未満である。より好ましくは、溶媒中の水の量は約50ppm未満である。最も好ましくは、溶媒中の水の量は約10ppm未満である。
【0014】
金属トリフルオロアセテートは、商業的な量で容易に入手可能である。例えば、トリフルオロ酢酸ナトリウム及びヨウ素モノクロリドは、シグマアルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)から入手することができる。溶媒はまた、商業的な量で容易に得ることができる。例えば、スルホランはまた、シグマアルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)から入手することができる。
【0015】
反応物は、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとのモル比が約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約0.95、約0.99、若しくは約1という低いモル比、又は約1.01、約1.05、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.8、若しくは約2.0という高いモル比、あるいは前述の値のいずれか2つの間に定義された任意の範囲内、例えば、約0.1~約2.0、約0.5~約1.5、約0.6~約1.4、約0.7~約1.3、約0.8~約1.2、約0.9~約1.1、約0.95~約1.05、約0.99~約1.01、約1~約2、約0.8~約1.5、又は約0.95~約1.2で、反応のために提供され得る。好ましくは、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとのモル比は、約0.8~約1.5であり得る。より好ましくは、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとのモル比は、約1~約1.2であり得る。最も好ましくは、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとのモル比は、約1であり得る。
【0016】
反応は、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、若しくは約170℃の低温、又は約180℃、約190℃、約200℃、約210℃、約220℃、約230℃、約240℃、若しくは約250℃の高温、あるいは前述の値のいずれか2つの間に定義された任意の範囲内、例えば、約100℃~約250℃、約110℃~約240℃、約120℃~約230℃、約130℃~約220℃、約140℃~約210℃、約150℃~約200℃、約160℃~約190℃、約170℃~約180℃、約120℃~約130℃、約110℃~約180℃、又は約120℃~約250℃で実施することができる。好ましくは、反応物は、約110℃~約250℃の温度まで加熱される。より好ましくは、反応物は、約120℃~約180℃の温度まで加熱される。最も好ましくは、反応物は、約175℃の温度まで加熱される。
【0017】
圧力は重要ではない。好都合な動作圧力は、約10KPa~約4,000KPa、好ましくはほぼ周囲圧力、又は約100KPa~約250KPaの範囲であり得る。
【0018】
反応は、触媒の存在下で、又は触媒の不在下で実施されてもよい。触媒は、例えば、ヨウ化銅(I)、塩化鉄、又はヨウ化亜鉛(II)などの金属触媒であってもよい。触媒は、相間移動触媒であってもよい。相間移動触媒は、第四級アンモニウム塩及び第四級ホスホニウム塩の群から選択され得る。第四級アンモニウム塩の非限定的な例は、テトラメチルアンモニウムクロリド(tetramethylammonium chloride、TMAC)であり、第四級ホスホニウム塩の非限定的な例は、テトラフェニルホスホニウムブロミド(tetraphenylphosphonium bromide、TPPB)である。
【0019】
反応は、液相反応器内で実施される。液相反応器は、セミバッチ又は連続撹拌タンク反応器(continuously stirred tank reactor、CSTR)であってもよい。反応は、バッチプロセス又は連続プロセスとして実施することができる。
【0020】
トリフルオロヨードメタンを含む反応の揮発性生成物は、凝縮及び回収され得るため、不揮発性金属塩化物副生成物からトリフルオロヨードメタンを分離することができる。
【0021】
反応の揮発性有機生成物の組成は、ガスクロマトグラフィ(gas chromatography、GC)分析及びガスクロマトグラフィ質量分光(gas chromatography-mass spectroscopy、GC-MS)分析によって測定することができる。揮発性有機化合物の各々に対する全揮発性有機化合物のGC面積百分率(GC面積%)を反応で生成される揮発性有機化合物の相対濃度の測定値として提供するために、揮発性有機化合物の各々に対してGC分析によって提供されるグラフ面積を組み合わせてもよい。
【0022】
本発明は、例示的な設計に対するものとして説明したが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。更に、本出願は、本発明が関連する技術分野における既知の又は慣習的な実践に属する本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
【0023】
本明細書で使用するとき、「前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちのいずれか2つから選択され得ることを意味する。例えば、1対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択されてもよい。
【実施例
【0024】
実施例1
金属トリフルオロアセテートとヨウ素元素からのCFIの比較製造
この実施例では、トリフルオロ酢酸ナトリウム(sodium trifluoroacetate、CFCOONa)及びヨウ素元素からトリフルオロヨードメタンを製造することが、比較目的のために実証される。20gの量のトリフルオロ酢酸ナトリウム及び38gの量のヨウ素元素をParr Instrument Company(イリノイ州モリーン)の300mLの反応器に添加した。反応器に凝縮器を装備した。反応器を300psigまで圧力試験し、次いで排気した。60mLの量のスルホランを反応器に添加して、トリフルオロ酢酸ナトリウムとヨウ素元素とのモル比が約0.98:1である反応混合物を形成した。反応物及び溶媒は、シグマアルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)から入手し、更に精製することなく使用した。
【0025】
反応混合物を約175℃まで加熱した。反応に触媒は使用されなかった。反応が進行するにつれて、揮発性ガス状生成物及び副生成物が生成された。凝縮器を出る揮発性ガスは、ドライアイスで冷却された製品収集筒内に収集された。
【0026】
生成物収集筒内に収集された揮発性ガス中の有機化合物の組成をガスクロマトグラフィ(GC)により測定した。各有機化合物のGC分析によって提供されるグラフ領域を組み合わせて、有機化合物の相対濃度の測定値として、有機化合物の各々に対する全有機化合物のGC面積百分率(GC面積%)を提供した。結果を以下の表に示す。
実施例2
金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドからのCFIの製造
【0027】
この実施例では、上記の式1によるトリフルオロ酢酸ナトリウム(CFCOONa)及びヨウモノクロリド(iodine monochloride、ICl)からのトリフルオロヨードメタンの製造が示される。20gの量のトリフルオロ酢酸ナトリウムをParr Instrument Company(イリノイ州モリーン)の300mLの反応器に添加した。反応器に凝縮器を装備した。反応器を300psigまで圧力試験し、次いで排気した。25gの量のヨウ素モノクロリド及び60mLのスルホランを反応器に添加して、トリフルオロ酢酸ナトリウムとヨウ素モノクロリドとのモル比が約0.95:1である反応混合物を形成した。反応物及び溶媒は、シグマアルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)から入手し、更に精製することなく使用した。
【0028】
反応混合物を約175℃まで加熱した。反応に触媒は使用されなかった。反応が進行するにつれて、揮発性ガス状生成物及び副生成物が生成された。凝縮器を出る揮発性ガスは、ドライアイスで冷却された製品収集筒内に収集された。
【0029】
生成物収集筒内に収集された揮発性ガス中の有機化合物の組成をガスクロマトグラフィ(GC)により測定した。各有機化合物のGC分析によって提供されるグラフ領域を組み合わせて、有機化合物の相対濃度の測定値として、有機化合物の各々に対する全有機化合物のGC面積百分率(GC面積%)を提供した。結果を以下の表に示す。
【0030】
以下の表に示すように、ヨウ素モノクロリドを使用することで、ヨウ素元素の使用と比較して、トリフルオロヨードメタンに対する選択性が高くなり、他の副生成物の生成が低減される。
【表1】
【0031】
態様
態様1は、トリフルオロヨードメタン(CFI)を生成するプロセスであって、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を提供する工程と、溶媒の存在下で金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとを反応させてトリフルオロヨードメタンを生成する工程と、を含むプロセスである。
【0032】
態様2は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとのモル比が約0.1:1~約2.0:1である、態様1に記載のプロセスである。
【0033】
態様3は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートとヨウ素源とのモル比が約0.8:1~約1.5:1である、態様1に記載のプロセスである。
【0034】
態様4は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートとヨウ素源とのモル比が約1.1:1~約1.2:1である、態様1に記載のプロセスである。
【0035】
態様5は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートとヨウ素源のモル比が約1:1である、態様1に記載のプロセスである。
【0036】
態様6は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0037】
態様7は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸カリウム及びトリフルオロ酢酸ナトリウムの群から選択される少なくとも1種である、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0038】
態様8は、提供する工程において、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸ナトリウムからなる、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0039】
態様9は、提供する工程において、有機溶媒が約500体積ppm未満の水を含む、態様1~8のいずれかに記載のプロセスである。
【0040】
態様10は、提供する工程において、有機溶媒が約100体積ppm未満の水を含む、態様1~8のいずれかに記載のプロセスである。
【0041】
態様11は、提供する工程において、有機溶媒が約50体積ppm未満の水を含む、態様1~8のいずれかに記載のプロセスである。
【0042】
態様12は、提供する工程において、約10体積ppm未満の水を含む、態様1~8のいずれかに記載のプロセスである。
【0043】
態様13は、提供する工程において、溶媒は、イオン性液体及び極性非プロトン性溶媒の群から選択される少なくとも1種である、態様1~12のいずれかに記載のプロセスである。
【0044】
態様14は、溶媒が、イミダゾリウム塩、カプロラクタム水素硫酸塩、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホンの群から選択される少なくとも1種である、態様13に記載のプロセスである。
【0045】
態様15は、溶媒がスルホランからなる、態様14に記載のプロセスである。
【0046】
態様16は、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとの反応が更に触媒の存在下で行われる、態様1~15のいずれかに記載のプロセスである。
【0047】
態様17は、触媒が、ヨウ化銅(I)、塩化鉄、及びヨウ化亜鉛(II)の群から選択される少なくとも1種を含む、態様16に記載のプロセスである。
【0048】
態様18は、触媒がヨウ化銅(I)からなる、態様17に記載のプロセスである。
【0049】
態様19は、触媒が塩化鉄からなる、態様17に記載のプロセスである。
【0050】
態様20は、触媒がヨウ化亜鉛(II)からなる、態様17に記載のプロセスである。
【0051】
態様21は、反応させる工程において、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が約100℃~約250℃の温度である、態様1~20のいずれかに記載のプロセスである。
【0052】
態様22は、反応させる工程において、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が約110℃~約250℃の温度である、態様1~20のいずれかに記載のプロセスである。
【0053】
態様23は、
反応させる工程において、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が約120℃~約180℃の温度である、態様1~20のいずれかに記載のプロセスである。
【0054】
態様24は、
反応させる工程において、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が約170℃~約180℃の温度である、態様1~20のいずれかに記載のプロセスである。
【0055】
態様25は、トリフルオロヨードメタン(CFI)を生成するプロセスであって、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を混合する工程と、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒を加熱して、金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドを反応させて、トリフルオロヨードメタン及び金属塩化物を生成する工程と、を含むプロセスである。
【0056】
態様26は、トリフルオロヨードメタンを金属塩化物から分離する工程を更に含む、態様25に記載のプロセスである。
【0057】
態様27は、プロセスが連続プロセスである、態様25又は26のいずれかに記載のプロセスである。
【0058】
態様28は、プロセスがバッチプロセスである、態様25又は26に記載のプロセスである。
【0059】
態様29は、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、態様25~28のいずれかに記載のプロセスである。
【0060】
態様30は、金属トリフルオロアセテートとヨウ素モノクロリドとのモル比が約0.1:1~約2.0:1である、態様25~29のいずれかに記載のプロセスである。
【0061】
態様31は、金属トリフルオロアセテートとヨウ素源とのモル比が約0.8:1~約1.5:1である、態様25~29のいずれかに記載のプロセスである。
【0062】
態様32は、金属トリフルオロアセテートとヨウ素源とのモル比が約1.1:1~約1.2:1である、態様25~29のいずれかに記載のプロセスである。
【0063】
態様33は、金属トリフルオロアセテートとヨウ素源とのモル比が約1:1である、態様25~29のいずれかに記載のプロセスである。
【0064】
態様34は、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、態様25~33のいずれかに記載のプロセスである。
【0065】
態様35は、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸カリウム及びトリフルオロ酢酸ナトリウムの群から選択される少なくとも1種である、態様25~33のいずれかに記載のプロセスである。
【0066】
態様36は、金属トリフルオロアセテートが、トリフルオロ酢酸ナトリウムからなる、態様25~33のいずれかに記載のプロセスである。
【0067】
態様37は、有機溶媒が約500体積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0068】
態様38は、有機溶媒が約100体積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0069】
態様39は、有機溶媒が約50体積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0070】
態様40は、約10体積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0071】
態様41は、溶媒が、イオン性液体及び極性非プロトン性溶媒の群から選択される少なくとも1種である、態様25~40のいずれかに記載のプロセスである。
【0072】
態様42は、溶媒が、イミダゾリウム塩、カプロラクタム水素硫酸塩、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホンの群から選択される少なくとも1種である、態様41に記載のプロセスである。
【0073】
態様43は、溶媒がスルホランからなる、態様42に記載のプロセスである。
【0074】
態様44は、金属トリフルオロアセテート及びヨウ素モノクロリドが触媒の存在下で反応する、態様25~43のいずれかに記載のプロセスである。
【0075】
態様45は、触媒が、ヨウ化銅(I)、塩化鉄、及びヨウ化亜鉛(II)の群から選択される少なくとも1種を含む、態様44に記載のプロセスである。
【0076】
態様46は、触媒がヨウ化銅(I)からなる、態様45に記載のプロセスである。
【0077】
態様47は、触媒が塩化鉄からなる、態様45に記載のプロセスである。
【0078】
態様48は、触媒がヨウ化亜鉛(II)からなる、態様45に記載のプロセスである。
【0079】
態様49は、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が、約100℃~約250℃の温度まで加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。
【0080】
態様50は、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が、約110℃~約250℃の温度にまで加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。
【0081】
態様51は、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が、約120℃~約180℃の温度にまで加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。
【0082】
態様52は、金属トリフルオロアセテート、ヨウ素モノクロリド、及び溶媒が、約170℃~約180℃の温度まで加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。

【国際調査報告】