(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ガス状媒体を搬送および/または制御するための燃料電池システム用搬送ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220516BHJP
F04F 5/44 20060101ALI20220516BHJP
F04F 5/16 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
F04F5/44 D
F04F5/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557473
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2020056422
(87)【国際公開番号】W WO2020200670
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019204723.8
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】リヒター アルミン
【テーマコード(参考)】
3H079
5H127
【Fターム(参考)】
3H079AA14
3H079AA18
3H079AA23
3H079BB05
3H079CC03
3H079DD03
3H079DD16
5H127AB04
5H127AC06
5H127AC07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA58
5H127EE20
(57)【要約】
ガス状媒体を、特に水素を搬送および/または制御するための燃料電池システム(31)用搬送ユニット(1)であって、加圧状態にあるガス状媒体の推進ジェットによって駆動されるジェットポンプ(4)と、配量弁(6)とを備え、前記搬送ユニット(1)の出口が燃料電池(29)のアノード入力部(15)と流動的に結合され、前記ジェットポンプ(4)が吸込領域(7)と、混合管(18)と、ディフューザ(20)とを有し、前記ディフューザ(20)が少なくとも間接的に前記燃料電池(29)の前記アノード入力部(15)と流動的に結合され、前記ジェットポンプ(4)を、少なくとも部分的に、前記混合管(18)の第1の縦軸線(39)に対し平行に延びる第1の流動方向(V)の方向において前記ガス状媒体が貫流する前記搬送ユニット(1)。その際、本発明によれば、前記混合管(18)の前記第1の縦軸線(39)に対し傾斜して前記ディフューザ(20)の第2の縦軸線(40)が延び、または、湾曲して延びている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状媒体を、特に水素を搬送および/または制御するための燃料電池システム(31)用搬送ユニット(1)であって、加圧状態にあるガス状媒体の推進ジェットによって駆動されるジェットポンプ(4)と、配量弁(6)とを備え、前記搬送ユニット(1)の出口が燃料電池(29)のアノード入力部(15)と流動的に結合され、前記ジェットポンプ(4)が吸込領域(7)と、混合管(18)と、ディフューザ(20)とを有し、前記ディフューザ(20)が少なくとも間接的に前記燃料電池(29)の前記アノード入力部(15)と流動的に結合され、前記ジェットポンプ(4)を、少なくとも部分的に、前記混合管(18)の第1の縦軸線(39)に対し平行に延びる第1の流動方向(V)の方向において前記ガス状媒体が貫流する前記搬送ユニット(1)において、前記混合管(18)の前記第1の縦軸線(39)に対し傾斜して前記ディフューザ(20)の第2の縦軸線(40)が延びていること、または、湾曲して延びていることを特徴とする搬送ユニット(1)。
【請求項2】
前記ディフューザ(20)の第1の壁部(17)が、少なくとも部分的に、前記混合管(18)の前記第1の縦軸線(39)に対し平行に延び、前記ディフューザ(20)の、前記第1の壁部(17)に対向している第2の壁部(19)が、前記第1の縦軸線(39)に対し角度(β)を成して延び、前記第1の壁部(17)が、前記ディフューザ(20)の、前記アノード入力部(15)とは逆の側で延び、前記第2の壁部(19)が、前記ディフューザ(20)の前記アノード入力部(15)に向いた側で延びていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項3】
前記ディフューザ(20)の第1の壁部(17)が、湾曲した延在部(23)を有し、前記ディフューザ(20)の、前記第1の壁部(17)に対向している第2の壁部(19)が、少なくともほぼ直線状の延在部を有し、且つ前記混合管(18)の前記第1の縦軸線(39)に対し角度(β)を成して延びていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項4】
前記ディフューザ(20)の前記第2の縦軸線(40)が、前記アノード入力部(15)の方向に傾斜していることを特徴とする、請求項2または3に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項5】
前記ディフューザ(20)の前記第2の縦軸線(40)が、次のように円弧状に延びていること、すなわち前記第2の縦軸線が、前記ディフューザ(20)の始端領域において、前記混合管(18)の前記第1の縦軸線(39)に対し少なくともほぼ平行に延び、前記ディフューザ(20)の終端領域において、前記混合管(18)の前記第1の縦軸線(39)に対し少なくともほぼ垂直に延びるように、円弧状に延びていることを特徴とする、請求項3に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項6】
結合部材(26)および/または排出用曲げ管(22)が、前記ディフューザ(20)と前記燃料電池(29)の前記アノード入力部(15)との間にあって、これらを少なくとも間接的に互いに流動的に結合することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項7】
前記結合部材(26)の第4の縦軸線(44)が、前記アノード入力部(15)内で、前記ガス状媒体の第2の流動経路(IV)に対し平行に延び、前記ディフューザ(20)の前記第2の縦軸線(40)が、前記ディフューザ(20)の前記終端領域において、前記結合部材(26)の前記第4の縦軸線(44)に対し少なくともほぼ平行に延びていることを特徴とする、請求項6に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項8】
前記ジェットポンプ(4)が加熱要素(11)を有し、前記ジェットポンプ(4)および/または前記排出用曲げ管(22)および/または前記結合部材(26)が、比熱容量の小さな材料または合金から製造されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項9】
前記搬送ユニット(1)が、構成要素として、ジェットポンプ(4)、配量弁(6)および/または側路圧縮器(10)および/または水分離器(24)を有し、これらが前記燃料電池(29)のエンドプレート(2)上に次のように位置決めされ、すなわち前記搬送ユニット(1)の前記構成要素の間および/または内部で流動管がもっぱら前記エンドプレート(2)に対し平行に延びるように位置決めされ、前記エンドプレート(2)が前記燃料電池(29)と前記搬送ユニット(1)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の搬送ユニット(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の搬送ユニット(1)を備えた燃料電池システム(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池駆動部を備えた車両で使用するために設けられている、ガス状媒体を、特に水素を搬送および/または制御するための燃料電池システム用搬送ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の分野では、液状燃料以外にガス状燃料も将来的に役割を増してくる。特に燃料電池駆動部を備えた車両では、水素ガス流を制御せねばならない。この場合、ガス流は液状燃料噴射時のように不連続的に制御されるのではなく、ガスは少なくとも1つのタンクから、特に高圧タンクから取り出されて、平均圧力導管システムの供給導管を介して搬送ユニットへ誘導される。この搬送ユニットは、ガスを低圧力導管システムの結合導管を介して燃料電池へ案内する。
【0003】
特許文献1から、ガス状媒体、特に水素を搬送するために、加圧状態にあるガス状媒体の推進ジェットによって駆動されるジェットポンプと配量弁とを備えた燃料電池システム用搬送ユニットが知られている。その際、搬送ユニットは弁・ジェットポンプ組み合わせ装置として実施されていてよく、構成部材として、第1の供給部と、吸込領域と、混合管と、ディフューザとを有し、この場合ディフューザは、排出用曲げ管を介して燃料電池のアノード入力部と流動的に結合されている。その際オプションで、排出用曲げ管とアノード入力部との間に結合部材が設けられていてよい。その際、搬送ユニットを用いて媒体を、特に駆動媒体をノズルによって排出させることができ、媒体はその後再循環媒体と混合される。その際、駆動媒体の流れは配量弁を用いて制御することができる。ガス状媒体が弁・ジェットポンプ装置を貫流した後に燃料電池のアノード入力部内へ流入できるためには、弁・ジェットポンプ装置が燃料電池に配置されているので、転向を行わなければならない。この転向は、特許文献1から知られている搬送ユニットの場合、少なくともほぼ排出用曲げ管の領域でのみ行われ、この場合ガス状媒体が搬送ユニットから燃料電池内へ流動できるようにするため、転向は少なくともほぼ直角におよび/または少なくともほぼ90゜で行われる。
【0004】
特許文献1から知られている搬送ユニットには、ある種の欠点がある可能性がある。
【0005】
搬送ユニットの領域でのガス状媒体の転向は、少なくともほぼもっぱら排出用曲げ管の領域で行われるため、もっぱらこの領域で少なくともほぼ直角の転向を、特に少なくともほぼ90゜だけ行わねばならない。その際、混合管の第1の流動方向および/またはディフューザの第2の流動方向は、燃料電池のアノード入力部の第2の流動経路に対し少なくともほぼ直角に延びており、この場合第2の流動経路は、特に燃料電池内へのガス状媒体の流入方向を形成している。このため、特に排出用曲げ管の領域において、ガス状媒体と搬送ユニットの壁部との間での流動損失および/または摩擦損失および/または圧力損失が高くなる。これは、ガス状媒体の転向を生じさせるために使用できる、ジェットポンプの第1の縦軸線の方向での長さが短いからである。加えて、この従来技術に示されている搬送ユニットにおいては、特に排出用曲げ管の流動領域で、搬送ユニットおよび/または燃料電池システムの効率にとって不具合な渦流および/または流動剥離が生じることがある。これにより、搬送ユニットおよび/または燃料電池システム全体の効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014221506号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、ガス状媒体を、特に水素を搬送および/または再循環するための燃料電池システム用搬送ユニットが提案される。なお、水素を以下ではH2と記載する。
【0008】
請求項1を参照すると、ディフューザの第2の縦軸線は、混合管の第1の縦軸線に対し傾斜して延び、または、湾曲して延びている。このようにして、搬送ユニットの領域におけるガス状媒体の転向をもっぱら排出用曲げ管の領域で行うのではなく、排出用曲げ管の領域で必要な流動転向の角度を狭めるガス状媒体の転向を、すでにディフューザの領域で少なくとも部分的に行うという利点を得ることができる。このようにして、搬送ユニットの領域でのガス状媒体の転向を、特にディフューザおよび/または排出用曲げ管の領域での転向を、より長い流動距離にわたって、および/または、より小さな転向により、特定の長さの流動距離で得ることができる。その際、ガス状媒体と搬送ユニットの壁部との間での流動損失および/または摩擦損失および/または圧力損失を低減できる。というのは、転向が流動技術的により好ましく行われ、ガス状媒体と搬送ユニットの壁部との摩擦が低減されるからである。また、搬送ユニットの結合部材および/または燃料電池のアノード入力部の領域では、不具合な渦流および/または流動剥離も低減される。というのは、転向がより安定して行われ、且つディフューザの領域で大きくなっている直径との協働で行われ、これによってたとえば局部的に強い流速変化による不具合な流動変化を回避できるからである。その際、ディフューザ内でのガス状媒体の流速が低減され、他方同時に媒体は転向を蒙り、これによって燃料電池内への流入挙動を改善させることができる。このようにして、インパルスエネルギー、運動エネルギー、圧力の損失がほぼ回避され、或いは、少なくとも減少するという利点を得ることができる。さらに、転向が改善されるため、搬送される媒体、特にH2と、搬送ユニットの幾何学的流動構成部の表面、特にディフューザおよび排出用曲げ管の終端領域の表面との間に、可能な限り小さな摩擦を得ることができる。さらに、流動転向により、および/または、排出用曲げ管での転向によるガス状媒体の運動方向の変化により発生することがある圧力損失および/または摩擦損失を低減させることができる。このようにして、搬送ユニットおよび/または弁・ジェットポンプ装置および/または燃料電池システム全体の効率を改善できる。加えて、本発明による搬送ユニットの構成により、たとえばすべての車両における既存の構成空間によって全構成長さが予め与えられている場合、より大きな転向半径を得ることができるという利点が得られ、これによってガス状媒体と幾何学的流動構成部の表面との摩擦による搬送ユニット内での流動エネルギー損失をさらに低減させることができる。これは、搬送ユニットの高い効率という利点を提供するとともに、搬送ユニットのコンパクトな構成を提供する。
【0009】
従属項で取り上げられている処置により、請求項1に記載した搬送ユニットの有利な更なる構成が可能である。従属項は、本発明の有利な更なる構成に関わる。
【0010】
搬送ユニットの有利な更なる構成によれば、ディフューザの第1の壁部は、少なくとも部分的に、混合管の第1の縦軸線に対し平行に延び、ディフューザの、第1の壁部に対向している第2の壁部は、混合管の第1の縦軸線に対し角度を成して延び、この場合第1の壁部は、ディフューザの、アノード入力部とは逆の側で延び、第2の壁部は、ディフューザのアノード入力部に向いた側で延びている。このようにして、ガス状媒体の転向をも同時に可能にさせるようなディフューザを形成することができる。したがって、ディフューザ内への転向領域の組み込みが得られ、これによって、搬送ユニットのコンパクトな構成を生じさせることができる。加えて、混合管に対し平行に延びる第1の壁部により、流動領域の簡潔でコスト上好ましい製造を達成することができる。
【0011】
特に有利な更なる構成によれば、ディフューザの第1の壁部は、湾曲した延在部を有し、ディフューザの、第1の壁部に対向している第2の壁部は、少なくともほぼ直線状の延在部を有し、且つ混合管の第1の縦軸線に対し角度を成して延びている。このようにして、第2の流動方向におけるガス状媒体の連続的に増大する転向を得ることができ、この場合第2の流動軸線は特に円弧状に延びている。第2の壁部が湾曲して延びているため、流動損失および/または摩擦損失および/または圧力損失を阻止できる。というのは、たとえば第2の壁部が転向エッジを備えて直線状に延びていれば、渦流および/または流動剥離が発生することがあるからである。したがって、搬送ユニットおよび/または燃料電池システム全体の効率を向上させることができる。さらに、ガス状媒体と流動領域の壁部との摩擦が大きくなったときに発生することがあるエネルギー損失を、搬送ユニットの本発明による構成によって低減させることができる。このようにして、より高い効率を生じさせることができるので、搬送ユニットおよび/または燃料電池システムの作動コストを低減させることができる。
【0012】
搬送ユニットの特に有利な構成によれば、ディフューザの第2の縦軸線は、アノード入力部の方向に傾斜している。このようにして、排出用曲げ管での第3の流動方向の角度を減少させることができるという利点が得られる。というのは、ガス状媒体はすでにディフューザの領域で少なくとも部分的にアノード入力部への流入方向に転向されるからである。その際、特に燃料電池のエンドプレートに取り付けられている搬送ユニットの流動抵抗は、搬送ユニット内でのガス状媒体の必要な流動転向により、減少する。というのは、ディフューザの傾斜している第2の縦軸線により、ガス状媒体はすでに流速の減少を蒙る領域で転向されるからである。したがって、排出用曲げ管の領域ではガス状媒体の軽微な転向のみを行えばよい。というのは、少なくとも、同方向への部分的な転向がすでにディフューザの領域で行われたからである。その際、ガス状媒体に必要なほぼ直角の転向のための搬送ユニットの流動抵抗を低減させることができ、これによって搬送ユニットのジェットポンプ効果を改善させることができ、媒体はより高速で、および/または、より高圧で、および/または、より高質量流で燃料電池内へ流入することができる。
【0013】
搬送ユニットの有利な構成によれば、ディフューザの第2の縦軸線は、次のように円弧状に延び、すなわち第2の縦軸線が、ディフューザの始端領域において、混合管の第1の縦軸線に対し少なくともほぼ平行に延び、ディフューザの終端領域において、混合管の第1の縦軸線に対し少なくともほぼ垂直に延びるように、円弧状に延びている。このようにして、一方では、少なくともほぼ直角の流動技術的に最適化された転向を得ることができ、この場合両流動方向は少なくともほぼ互いに直交して延びる。エッジ状の迂回を回避することにより、および/または、本発明に従ってディフューザの始端領域および終端領域を構成することにより、ガス状媒体がディフューザに対して流出入する際の渦流および流動剥離の低減を得ることができる。というのは、この領域で流動の急激な方向転換が阻止されるからである。したがって、円弧状に延びるディフューザの第2の縦軸線によるガス状媒体の流動方向の転換および/または変更により、圧力損失および摩擦損失を低減でき、これによって搬送ユニットおよび/または弁・ジェットポンプ装置および/または燃料電池システム全体の効率を改善させることができる。
【0014】
搬送ユニットの有利な更なる構成によれば、結合部材および/または排出用曲げ管は、ディフューザと燃料電池のアノード入力部との間にあって、これらを少なくとも間接的に互いに流動的に結合する。加えて、結合部材の第4の縦軸線は、アノード入力部内で、ガス状媒体の流動経路IVに対し平行に延びていてよく、ディフューザの第2の縦軸線は、ディフューザの終端領域において、結合部材の第4の縦軸線に対し少なくともほぼ平行に延びている。このようにして、ガス状媒体の加速および/または減速を阻止することができ、この場合この加速および/または減速は、たとえば搬送ユニットと燃料電池、特にアノード入力部との間に、複数の転向部を備えた外部配管システムを使用する場合に発生することがある。その際に、複数の転向部を備えた外部配管システムを貫流する際に内部摩擦および外部摩擦により失われるエネルギーがガス状媒体から奪われるのを阻止することができる。このようにして、インパルスエネルギー、運動エネルギー、圧力の損失がほぼ回避される、または、少なくとも低減されるという利点を得ることができる。加えて、このようにして、特に結合部材および/または排出用曲げ管の流動的に最適化された実施態様により、搬送される媒体、特にH2と搬送ユニットの幾何学的流動構成部の表面との間に可能な限り小さな摩擦を得ることができる。さらに、外部配管システム内での転向によるガス状媒体の流動転向および/または運動方向の変化によって発生することがある圧力損失および/または摩擦損失を低減させることができる。このようにして、搬送ユニットおよび/または弁・ジェットポンプ装置および/または燃料電池システム全体の効率を改善させることができる。さらに、このようにして、ジェットポンプとアノード入力部との間の流動結合が可能な限り短くおよび/または少なくともほぼ流動転向なしに実現されるという利点を得ることができる。したがって、摩擦損失が低減するので、搬送ユニットの効率を、よって燃料電池システム全体の効率を向上させることができる。さらに、結合部材をジェットポンプの本体内に組み込めば、搬送ユニットの改善されたコールドスタート能力を達成できる。というのは、結合部材は特に寸法が比較的大きいため、よって比較的緩速に冷却されるため、流動横断面でのアイスブリッジの形成が特に短い滞留時間の場合に困難になるからである。
【0015】
搬送ユニットの有利な構成によれば、ジェットポンプは加熱要素を有し、ジェットポンプおよび/または排出用曲げ管および/または結合部材は、比熱容量の小さな材料または合金から製造されている。このようにして、本発明による搬送ユニットの迅速な加熱が特にコールドスタートプロシージャの範囲内で得られるという利点を得ることができる。搬送ユニットおよび/または燃料電池システム全体が低温時に作動される前に、加熱要素にはエネルギーが、特に電気エネルギーが供給され、この場合加熱要素はこのエネルギーを熱および/または加熱エネルギーに変換する。このプロセスは、熱エネルギーが迅速に搬送ユニット全体に浸透して、既存のアイスブリッジを除去させ得る搬送ユニットの他の構成部材の比熱容量が小さいことによって有利な態様で支援される。搬送ユニットの部品をより迅速に加熱することにより、特に入熱による融解によって既存のアイスブリッジをより迅速に除去することができる。加えて、コールドスタート過程では、加熱要素をオンにした後、短時間で加熱エネルギーがノズルのほうへ浸透し、ノズルおよび配量弁のアクチュエータの領域で既存のアイスブリッジを加熱し、したがって除去させることができる。これにより、搬送ユニットの構成部材の損傷による故障確率を低減させることができる。このようにして、アイスブリッジをより迅速に溶かして除去させることができるので、搬送ユニットのコールドスタート能力を、よって燃料電池システム全体のコールドスタート能力を改善させることができる。また、わずかなエネルギーを、特に使用する加熱要素による電気エネルギーおよび/または熱エネルギーを、搬送ユニット内へ供給すればよい。これによって、特に周囲の低温度および/または車両の長い停車時間による頻繁なコールドスタート過程での搬送ユニットと燃料電池システム全体の作動コストを低減させることができる。さらに、本発明に従った材料を使用することにより、搬送ユニットによって搬送される媒体に対する、および/または、たとえば化学物質のような搬送ユニットの周囲から来る他の成分に対する高い耐久性も得ることができる。これも搬送ユニットの寿命を向上させ、ハウジングの材料損傷による故障確率を低減させることができる。
【0016】
搬送ユニットの特に有利な更なる構成によれば、搬送ユニットは、構成要素として、ジェットポンプ、配量弁および/または側路圧縮器および/または水分離器を有している。その際、搬送ユニットおよび/またはその構成要素は、燃料電池のエンドプレート上に次のように位置決めされ、すなわち搬送ユニットの前記構成要素の間および/または内部で流動管がもっぱらエンドプレートに対し平行に延びるように位置決めされ、この場合エンドプレートは燃料電池と搬送ユニットとの間に配置されている。このようにして、燃料電池での、および/または、燃料電池システム内での搬送ユニットのコンパクトな配置を生じさせることができ、これによって車両全体の中での燃料電池システムの必要スペースおよび構成空間を減少させることができる。
【0017】
加えて、このようにして、搬送機構の構成要素と燃料電池との間のダイレクトな、可能な限り短い流動管を形成することができる。さらに、搬送ユニット内でのガス状媒体の流動転向回数および/または運動方向変化回数を可能な限り少ない回数に低減させることができる。これは、流動管の長さおよび/または流動転向の回数による搬送ユニット内部での流動損失および/または圧力損失を低減できるという利点を提供する。加えて、さらに、搬送ユニットの構成要素の間および/または内部での流動管が板状の担持要素に対し平行に延びているのが有利である。これでもってガス状媒体の流動転向はさらに低減され、それによって流動損失をさらに低減させることができる。これにより、搬送ユニットの効率を改善させて、搬送機構を作動させるためのエネルギー消費を低減させることができる。加えて、構成要素はそれぞれエンドプレートと結合させねばならないので、このようにして構成部材相互の簡単な位置決めを実現できるという利点が得られる。これによって、組み立てに必要な部品数を低減でき、これも搬送機構のコスト節減につながる。さらに、搬送機構の構成要素相互のアライメントミスによる組み立てミスの確率が低減され、この点も作動中の搬送ユニットの故障確率を低減させる。
【0018】
本発明は、ここで説明した実施態様と、その中で強調した見解とに限定されない。むしろ、請求の範囲によって記載した範囲内で、当業者の行為の範囲内であれば、多数の変形、および/または、請求の範囲に記載した構成要件の組み合わせ、および/または、利点の組み合わせが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
次に、本発明を図面を用いてより詳細に説明する。
【
図1】搬送ユニットと燃料電池とを備えた燃料電池システムの概略部分断面図である。
【
図2】第1実施形態による搬送ユニットの概略断面図である。
【
図3】第2実施形態による搬送ユニットの概略断面図である。
【
図4】第1実施形態による、流動方向に対し直交して延びる少なくとも1つの横断面A-Aの概略断面図である。
【
図5】第2実施形態による、流動方向に対し直交して延びる少なくとも1つの横断面A-Aの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の図示は、搬送ユニット1を備えた燃料電池システム31の概略断面図であり、この場合搬送ユニット1は弁・ジェットポンプ組み合わせ装置8を有している。その際、弁・ジェットポンプ組み合わせ装置8は配量弁6とジェットポンプ4とを有し、この場合配量弁6はたとえば螺合部によりジェットポンプ4と結合されており、特にジェットポンプ4の本体13と結合されている。
【0021】
その際ジェットポンプ4は、その本体13内に、第1の供給部28と、第2の供給部36aと、吸込領域7と、混合管18と、ディフューザ20と、排出用曲げ管22および/または結合部材26とを有している。配量弁6は、第2の供給部36bとノズル12とを有している。その際、配量弁6は特に第1の縦軸線39の方向で、特に混合管18の方向でジェットポンプ4内へ、特にジェットポンプ4の本体13に設けた開口部内へ押し込まれている。
【0022】
図1に示した燃料電池システム31は、加えて、構成部材として燃料電池29と、水分離器24と、側路圧縮器10とを有している。その際燃料電池29は、アノード出力部9および/またはアノード入力部15により、少なくとも間接的に水分離器24および/または側路圧縮器10および/または弁・ジェットポンプ装置8と流動的に結合されている。その際に、再循環媒体が流動する。第1の流動経路IIIの方向にアノード出力部9を通って燃料電池29から出て、特に他のオプションの構成部材10,24および/または弁・ジェットポンプ装置8を貫流した後、アノード入力部15を経て第2の流動経路IVの方向において再び燃料電池29内に入る。その際、第1の流動経路IIIと第2の流動経路IVとは少なくともほぼ平行に延びている。その際、構成部材である水分離器24および/または側路圧縮器10および/または弁・ジェットポンプ装置8は少なくとも間接的に互いに流動的に結合されている。構成部材である水分離器24と側路圧縮器10とはオプションの構成部材であり、必ずしも搬送ユニット1内および/または燃料電池システム31内に設ける必要はない。さらに、燃料電池29はエンドプレート2を有し、この場合アノード出力部9とアノード入力部15とはエンドプレート2を貫通して延びている。その際、エンドプレート2は、燃料電池29の、弁・ジェットポンプ装置8に向いた側にある。この場合、構成要素であるジェットポンプ4と、配量弁6および/または側路圧縮器10および/または水分離器24とは、燃料電池29のエンドプレート2上に次のように位置決めされており、すなわち搬送ユニット1の構成要素間の流動管、および/または、構成要素内部の流動管が、もっぱらエンドプレート2に対し平行に延びるように位置決めされており、この場合エンドプレート2は燃料電池29と搬送ユニット1との間に配置されている。その際、消費されなかったガス状媒体は、燃料電池29のアノード出力部9から、特にスタック部から、流動方向IIIにおいてエンドプレート2を通り、オプションの水分離器24とオプションの側路圧縮器10とを経て、弁・ジェットポンプ装置8の第1の供給部28内へ流入する。そこからガス状媒体は吸込領域7内へ流入し、一部はジェットポンプ4の混合管18内へ流入する。この場合の水分離器24の課題は、燃料電池29の作動時に発生して、ガス状媒体、特にH
2とともにアノード出力部9を通って弁・ジェットポンプ装置8内へ還流してくる水を、システムから排出させることである。したがって、ガス状および/または液状でありうる水が再循環ファン10および/またはジェットポンプ4および/または配量弁6内へ侵入することはない。というのは、水はすでに水分離器24によってガス状媒体からダイレクトに分離されて、燃料電池システム31から搬出されるからである。これにより、腐食による搬送ユニット1および/または燃料電池システム31の構成要素の損傷、特にこれら構成要素の可動部分の損傷を阻止することができ、これによって流動を受けるすべての構成要素の寿命が向上する。
【0023】
図1には、さらに、弁・ジェットポンプ組み合わせ装置8を被搬送媒体が少なくとも1つの流動方向に貫流することV,VI,VII,VIIIが図示されている。その際、弁・ジェットポンプ装置8の貫流領域の大部分は少なくともほぼ管状に形成され、搬送ユニット1内のガス状媒体、特にH
2であるガス状媒体を搬送および/または誘導するために用いられる。その際、弁・ジェットポンプ装置8には、一方では第1の供給部28によって再循環物が供給され、この場合再循環物とは、燃料電池29のアノード領域、特にスタック部から来る特に消費されなかったH
2であり、再循環物は水および窒素を含んでいることもありうる。その際、再循環物は第1の供給部28を通って弁・ジェットポンプ装置8内へ流入する。他方、第2の供給部36により弁・ジェットポンプ装置8の外部からガス状駆動媒体、特にH
2が弁・ジェットポンプ装置8の繰り抜き部内および/または本体13内および/または配量弁6内へ流入し、この場合駆動媒体はタンク34から来るものであり、高圧状態にあり、特に6バール以上の状態にある。
【0024】
その際、第2の供給部36a,bは構成部材である本体13および/または配量弁6を通って延びている。配量弁6から駆動媒体は、アクチュエータ技術と完全に閉鎖可能な弁要素とにより、特に断続的に、ノズル12によって吸込領域7内および/または混合管18内へ排出される。ノズル12を通って流れて駆動媒体として用いられるH2は、再循環媒体に対し圧力差を有し、この場合再循環媒体は第1の供給部28から搬送ユニット1内へ流入し、また駆動媒体は特に少なくとも6バールのより高い圧力を有している。いわゆるジェットポンプ効果が生じるようにするため、たとえば搬送ユニット1の上流側に接続される側路圧縮器10を使用することにより、再循環媒体は小さな圧力と少ない質量流とで搬送ユニット1の中央流動領域内へ搬送される。その際駆動媒体は、前述した圧力差と、特に音速に近く、よってその下でも上でもよいような高速度とで、ノズル12を通って吸込領域7および/または混合管18の中央流動領域内へ流入する。
【0025】
その際ノズル12は、特に配量弁6から来て吸込領域7内および/または混合管18内へ流入するガス状媒体が流動できるような流動横断面の形態で内部繰り抜き部を有している。その際駆動媒体は、すでに吸込領域7および/または混合管18の中央流動領域内にある再循環媒体に衝突する。駆動媒体と再循環媒体との間の高速度差であるために、および/または、圧力差のために、これら媒体の間に内部摩擦および渦流が発生する。その際、迅速な駆動媒体とこれよりも著しく遅い再循環媒体との間の境界層に剪断応力が生じる。この応力はインパルス伝達を生じさせ、この場合再循環媒体は加速されて、引き裂かれる。運動量保存の法則の原理に従って混合が生じる。その際、再循環媒体が流動方向Vに加速され、再循環媒体に対し圧力降下が発生し、これによって吸込作用が投入されて、第1の供給部28の領域から更なる再循環媒体が順次搬送される。この効果をジェットポンプ効果と呼ぶことができる。
【0026】
配量弁6を用いた駆動媒体の供給・配量を制御することにより、再循環媒体の搬送率をコントロールすることができ、作動状態および作動要求に応じて燃料電池システム31全体のその都度の需要に適合させることができる。配量弁6が閉じた状態にあるような搬送ユニット1の作動状態を例に挙げると、この作動状態では、駆動媒体が第2の供給部36からジェットポンプ4の中央流動領域内へ順次流れるのを阻止することができ、その結果駆動媒体が流動方向VIIにおいてさらに吸込領域7および/または混合管18内へ流れ込んで再循環媒体になることがなく、したがってジェットポンプ効果は停止する。
【0027】
さらに、
図1のジェットポンプ4は、ジェットポンプ効果と搬送効率とを補助的に改善し、および/または、コールドスタート過程および/または製造コストおよび組み立てコストをさらに改善する技術的特徴を有している。その際、部品であるディフューザ20は、その内側流動横断面の領域において円錐形に延びており、特に第1の流動方向Vおよび第2の流動方向VIにおいて拡大している。その際、ノズル12と混合管18および/またはディフューザ20とは互いに同軸に延びていてよい。部品であるディフューザ20のこの形状により、運動エネルギーが圧力エネルギーに変換されるという有利な効果を生じさせることができ、これによって搬送ユニット1の可能な搬送体積をさらに高めることができ、それによって被搬送媒体、特にH
2をより多く燃料電池29に供給でき、これによって燃料電池システム31全体の効率を高めることができる。
【0028】
図1に示したように、弁・ジェットポンプ組み合わせ装置8はオプションの加熱要素11を有し、この場合弁・ジェットポンプ装置8および/または排出用曲げ管22および/または結合部材26は、比熱容量が小さな材料または合金から製造されている。このようにして、特に0゜以下の温度の場合にコールドスタート能力を改善できる。というのは、これによって、弁・ジェットポンプ装置8の流動領域にあるアイスブリッジを分解できるからである。その際、加熱要素11はジェットポンプ4の本体13内に組み込まれていてよく、または、その表面に配置されていてよい。
【0029】
本発明によれば、改善された配量機能と、吸込領域7および/または混合管18内への駆動媒体のより正確な配量とを可能にするため、配量弁6は比例弁6として実施されていてよい。搬送ユニット1の幾何学的流動構成および効率をさらに改善するため、ノズル12と混合管18とは回転対称に実施されており、この場合ノズル12はジェットポンプ4の混合管18に対し同軸に延びている。
【0030】
図2には、第1実施形態による搬送ユニット1の概略断面図が示されている。その際、搬送ユニット1の、特に本体13の内部流動輪郭の一部が図示されており、この場合これは、特にガス状媒体の貫流方向において、吸込領域7の領域と、混合管18の領域と、ディフューザ20の領域と、排出用曲げ管22の領域と、結合部材26の領域とを有している。混合管18と、ディフューザ20と、排出用曲げ管22と、結合部材26とはそれぞれそれぞれの縦軸線39,40,42,44を有している。これらそれぞれの縦軸線39,40,42,44に沿って、ガス状媒体のそれぞれの流動方向V,VI,VII,VIIIがこの領域で延びている。
【0031】
図示されているのは、ガス状媒体が吸込領域7から来て本体13の流動輪郭を少なくともほぼ完全に貫流し、燃料電池29のアノード入力部15にまで至っている点であり、この場合にガス状媒体は混合管18と、ディフューザ20と、排出用曲げ管22と、結合部材26とを貫流する。吸込領域7では、第2の供給部36から来る駆動媒体がノズル12により供給されて、特に燃料電池29から来る、第1の供給部28を通じて供給された再循環媒体と衝突する。
【0032】
図2には、さらに、混合管18が第1の縦軸線39を有していることが示され、この場合第1の流動方向Vは少なくとも第1の縦軸線39に対しほぼ平行に延びている。ディフューザ20は第2の縦軸線40を有し、この場合第2の流動方向VIは第2の縦軸線40に対し平行に延びている。排出用曲げ管22は第3の縦軸線42を有し、この場合第3の流動方向VIIは第3の縦軸線42に対し平行に延びている。結合部材26は第4の縦軸線44を有し、この場合第4の流動方向VIIIは第4の縦軸線44に対し平行に延びている。その際、それぞれの領域の縦軸線39,40,42,44および/または流動方向V,VI,VII,VIIIは、異なるベクトルを有し、平行におよび/または同じ方向に延びておらず、その結果ガス状媒体はそれぞれの部分18,20,22,26で転向を蒙る。その際、ディフューザ20の第2の縦軸線40は混合管18の第1の縦軸線39に対し傾斜して実施されており、特に角度αだけ傾斜しており、この場合ディフューザ20の第2の縦軸線40はアノード入力部15の方向に傾斜している。さらに、排出用曲げ管22の第3の縦軸線42は混合管18の第1の縦軸線39に対し傾斜し、特に角度γだけ傾斜して実施されており、この場合排出用曲げ管22の第3の縦軸線42はアノード入力部15の方向に傾斜して実施されている。さらに、結合部材26の第4の縦軸線44は混合管18の第1の縦軸線39に対し傾斜して実施され、特に少なくともほぼ直角だけ傾斜しており、この場合結合部材26の第4の縦軸線44に対し平行に延びている第4の流動方向VIIIは、アノード入力部15のほうへ向けられている。
【0033】
さらに、
図2には、ディフューザ20の第1の壁部17が少なくとも部分的に混合管18の第1の縦軸線39に対し平行に延び、ディフューザ20の、第1の壁部17に対向している第2の壁部19は、第1の縦軸線39に対し角度βで延び、この場合第1の壁部17は、ディフューザ20の、アノード入力部15とは逆の側に延び、第2の壁部19はディフューザ20のアノード入力部15に向いた側に延びていることが示されている。その際、ガス状媒体はノズル12および/または混合管18の領域で第1の流動方向Vに流れ、そこからディフューザ20内へ流れ、この場合ガス状媒体は、ディフューザ20への混合管18の移行領域において方向転換を蒙り、その結果ガス状媒体はディフューザ20内で少なくともほぼ第2の流動方向VIに流れる。その際、角度βは角度αよりも大きい。
【0034】
図2は、ジェットポンプ4の内側にある流動領域に、それぞれの流動方向V,VI,VII,VIIIに対し特に直交して延びる複数の流動横断面が形成されることを示している。ディフューザ20の領域には、流動横断面がたとえば少なくとも1つの横断面A-Aとして形成され、この場合少なくとも1つの横断面A-Aは、第2の流動方向VIおよび/またはディフューザ20の第2の縦軸線40に対し直交して延びている。その際、横断面A-Aは第2の流動方向VIに大きくなっている。その際、特に横断面A-Aが大きくなっているために、ディフューザ20内ではガス状媒体の流速は減少することになる。加えて、第2の流動方向VIおよび/または第2の縦軸線40は、第1および第2の壁部17,19が少なくともほぼ直線状に延びているために、ディフューザ20の領域で少なくともほぼ直線状に延びており、その結果ガス状媒体も、ディフューザ20の領域では少なくともほぼ直線状に流れる。
【0035】
ガス状媒体は、ディフューザ20を貫流した後、排出用曲げ管22内に流れ、そこから結合部材26内へ流れる。その際、
図2には、排出用曲げ管22の領域で、第3の壁部21が、排出用曲げ管22の、アノード入力部15とは逆の側に延びていることが示されている。その際この第3の壁部21は、少なくとも部分的に直線状の延在部および/または少なくとも部分的に湾曲部23を有していてよく、この場合湾曲部23は特にある一定の半径を有していてよい。第3の壁部21の延在により、特に湾曲部23としての延在により、ガス状媒体を、排出用曲げ管22を貫流する際にアノード入力部15のほうへ誘導させることができる。その際、排出用曲げ管22の第3の縦軸線42および/またはガス状媒体の第3の流動方向VIIは、排出用曲げ管22の領域で混合管18の第1の縦軸線39に対し角度γでアノード入力部15のほうへ向かって延びている。その際、角度γは特に角度αおよび/または角度βよりも大きい。
【0036】
図2に示したように、ガス状媒体は、ディフューザ20および/または排出用曲げ管22および/または結合部材26を貫流する際に、対応する転向を蒙り、この場合ガス状媒体は、第1の流動経路IIIおよび/または第2の流動経路IVに対し少なくともほぼ直角に延びている第1の流動方向Vから、それぞれの流動経路III,IVに対し少なくともほぼ平行に延びている第4の流動方向VIIIへ転向される。
【0037】
図3には、第2実施形態による搬送ユニット1の概略断面図が示されている。その際、搬送ユニット1の内側流動輪郭の一部、特に本体13が図示されており、この場合本体は吸込領域7の領域と、混合管18の領域と、ディフューザ20の領域と、結合部材26の領域とを有している。混合管18と、ディフューザ20と、結合部材26とはそれぞれ、それぞれの縦軸線39,40,44を有している。これらそれぞれの縦軸線39,40,44に沿って、この領域でのガス状媒体のそれぞれの流動方向V,VI,VIIIが延びている。その際、ディフューザ20の第2の縦軸線40は円弧状に延びており、その結果ガス状媒体は、ディフューザ20を貫流する際にアノード入力部15のほうへ、特に連続的に転向される。
【0038】
ディフューザ20の第2の縦軸線40の円弧状の延在は、流動領域の壁部17,19の成形から生ずるものである。その際、ディフューザ20の第1の壁部17は湾曲部23を有し、ディフューザ20の、第1の壁部17に対向している第2の壁部19は、少なくともほぼ直線状の延在部を有している。その際第2の壁部19は、混合管18の第1の縦軸線39に対し角度βで延びている。他の実施形態の例では、第2の壁部19は湾曲部を有していてもよい。その際、曲がって延びている第2の縦軸線40と第1の縦軸線39との間の角度αは、ディフューザ20での貫流が進むにしたがって、少なくともほぼ0゜の値から、アノード入力部15のほうへ向けられる少なくともほぼ90゜の値まで大きくなる。その際、ディフューザ20の第2の縦軸線40は次のように湾曲して延在しており、すなわち当該縦軸線がディフューザ20の始端領域において混合管18の第1の縦軸線39に対し少なくともほぼ平行に延び、ディフューザ20の終端領域において混合管18の第1の縦軸線39に対し少なくともほぼ垂直に延びるように延在しており、この場合特にディフューザ20の終端領域の開口部は、アノード入力部15のほうへ向けられている。
【0039】
さらに、
図3には、結合部材26の第4の縦軸線44がガス状媒体の第2の流動経路IVに対し平行にアノード入力部15において延びていることが示され、この場合ディフューザ20の終端領域でのディフューザ20の第2の縦軸線40は、結合部材26の第4の縦軸線44に対し少なくともほぼ平行に延びている。
【0040】
さらに、
図3は、ジェットポンプ4の内側にある流動領域に、それぞれの流動方向V,VI,VIIIに対し特に直交して延びる複数の流動横断面が形成されることを示している。これら流動横断面は、ディフューザ20の領域では、たとえば少なくとも1つの横断面A-Aとして形成され、この場合少なくとも1つの横断面A-Aは、第2の流動方向VIに対し、および/または、ディフューザ20の特に円弧状に延びている第2の縦軸線40に対し、直交して延びている。その際、横断面A-Aは第2の流動方向VIにおいて大きくなる。その際、特に横断面A-Aが大きくなるために、ディフューザ20においては、ガス状媒体の流速が減少することになる。加えて、第2の流動方向VIおよび/または第2の縦軸線40は、特に第1の壁部17が湾曲して延びているために、および/または、第2の壁部19が少なくともほぼ直線状に延びているために、ディフューザ20の領域で少なくともほぼ円弧状に延びており、その結果ガス状媒体もディフューザ20の領域で少なくともほぼ円弧状に流れ、特に、アノード入力部15のほうへ向いて流れる。
【0041】
図4には、第1実施形態にしたがって流動方向VIに対し直交して延びる少なくとも1つの横断面A-Aの概略断面図が示されている。その際、ディフューザ20のそれぞれの横断面A-Aは少なくともほぼ円形の形状を有している。流動横断面の、特に少なくともディフューザ20の始端領域においてアノード入力部15とは逆の側に延びている第1の壁部17と第2の壁部19とを通るように、第1の参照軸線48が延びている。この第1の参照軸線48に対し直交するように第2の参照軸線50が延びている。2つの参照軸線48,50の交点を通って、これら軸線48,50に対し直交するように、図示していない面内に第2の縦軸線40が延びている。
【0042】
図5には、第2実施形態にしたがって第2の流動方向VIに対し直交して延びる少なくとも1つの横断面A-Aの概略断面図が示されている。その際、それぞれの横断面A-Aは丸みを帯びた、特に楕円形および/または卵形の形状を有している。流動横断面の、特に少なくともディフューザ20の始端領域においてアノード入力部15とは逆の側に延びている第1の壁部17と第2の壁部19とを通るように、第1の参照軸線48が延びている。その際、楕円形の横断面の第1の参照軸線に対し直交して第2の参照軸線50が次のように延びており、すなわちこれが流動横断面の壁部の最大間隔の範囲にあるように、延びている。2つの参照軸線48,50の交点を通って、これら軸線48,50に対し直交するように、図示していない面内に第2の縦軸線40が延びている。
【0043】
オプションで、排出用曲げ管22および/または結合部材26の流動領域の横断面も、対応する少なくともほぼ円形および/または楕円形の形状を有していてよい。
【0044】
図4および
図5で説明した第1および第2の実施形態のようにして以下の利点を得ることができ、すなわちディフューザ20を貫流する際のガス状媒体の改善された転向が達成され、その際に摩擦損失および/または流動損失が低減され、他方アノード入力部15に向けてガス状媒体を転向させるために必要な構成空間を低減できる。したがって、搬送ユニット1および/またはジェットポンプ4を、提供される構成空間が狭い車両にも組付けできる。その際、ジェットポンプ4の流動横断面内の流動移行部は可能な限り流動に最適であるように実施されており、その結果ガス状媒体の渦流および/または流速の抑制が阻止される。
【0045】
少なくとも1つの横断面A-Aの特に第2実施形態では、搬送されるガス状媒体の大部分は、第2の参照軸線50の領域で第2の流動方向VIにディフューザ20を貫流し、したがってアノード入力部15のほうへより強い転向を蒙り得る。というのは、第2の参照軸線50は、特に少なくとも1つの横断面A-Aの第1実施形態に比べて、第2の壁部19および/またはアノード入力部15に対しより短い間隔を持っているからである。このことは、流動挙動の改善と、よりコンパクトな構成につながる。加えて、このようにして、ディフューザ20および/または搬送ユニット1全体によるガス状媒体の改善された流動誘導が得られる。
【0046】
さらに、
図4および
図5に示した横断面Aのこれら形状は、搬送ユニット1および/またはジェットポンプ4の実施形態に応じて、ディフューザ20の領域と、排出用曲げ管22の領域と、結合部材26の領域と、アノード入力部15の領域との任意の組み合わせで本発明による搬送ユニット1で使用できるが、燃料電池システム31の他のすべての流動領域でも使用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 搬送ユニット
2 エンドプレート
4 ジェットポンプ
6 配量弁
7 吸込領域
10 側路圧縮器
11 加熱要素
15 アノード入力部
17 ディフューザの第1の壁部
18 混合管
19 ディフューザの第2の壁部
20 ディフューザ
22 排出用曲げ管
23 湾曲部(湾曲した延在部)
24 水分離器
26 結合部材
29 燃料電池
31 燃料電池システム
39 第1の縦軸線
40 第2の縦軸線
42 第3の縦軸線
44 第4の縦軸線
【国際調査報告】