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特表2022-527162CARを発現する遺伝的にリプログラミングされたTREG
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(54)【発明の名称】CARを発現する遺伝的にリプログラミングされたTREG
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220524BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20220524BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220524BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220524BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220524BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220524BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220524BHJP
   C07K 16/12 20060101ALN20220524BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/24
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K48/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P11/06
A61P37/08
A61P1/04
A61P3/10
A61P19/02
A61P9/00
A61P17/06
A61P25/00
A61P5/14
A61P21/04
A61P7/06
A61P9/10
A61P29/00 101
A61P17/00
A61K35/17 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/0783
C07K19/00
C07K16/28
C07K16/12
C07K14/725
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557247
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 IL2020050360
(87)【国際公開番号】W WO2020194306
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/823,711
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/898,471
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519112058
【氏名又は名称】ガビッシュ-ガリラヤ バイオ アプリケーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】グロス、ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】ウェインスタイン-マロム、ハダス
(72)【発明者】
【氏名】ポズナー、サラ
(72)【発明者】
【氏名】クローナー、アミット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA26
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA31
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA36
4C084ZA45
4C084ZA55
4C084ZA591
4C084ZA66
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZC06
4C084ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB43
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA45
4C087ZA55
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZC06
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
活性化キメラ抗原受容体(aCAR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が提供され、上記aCARは(i)共生腸内細菌叢の抗原、及び、消化管の粘膜固有層(LP)又は粘膜下層に特有の自己細胞表面抗原から選択される抗原に特異的に結合する細胞外結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;(iii)T細胞を活性化及び/又は共刺激する少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメイン;及び任意選択で(iv)細胞外ドメインと膜貫通ドメインをつなぐストーク領域を含む。aCARをコードする核酸分子を含む組成物及びベクター、ならびにそのベクターを含み、aCARを発現する制御性T細胞を調製する方法が、対象の免疫系の過剰な活性に現れる疾患、障害又は状態を治療又は予防する方法と同様にさらに提供され、その方法は、表面にaCARを発現する哺乳類Tregを上記対象に投与することを含む。制御性T細胞は任意選択的に、安定したTr1表現型を付与する膜結合ホモ二量体IL-10を発現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化キメラ抗原受容体(aCAR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記aCARが:
(i)共生腸内細菌叢の抗原、及び、消化管の粘膜固有層(LP)又は粘膜下層に特有の自己細胞表面抗原から選択される抗原に特異的に結合する細胞外結合ドメイン;
(ii)膜貫通ドメイン;
(iii)T細胞を活性化及び/又は共刺激する少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメイン;及び任意選択で
(iv)前記細胞外ドメインと前記膜貫通ドメインをつなぐストーク(stalk)領域を含む核酸分子。
【請求項2】
膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記抗原は、共生腸内細菌叢のトル様受容体(TLR)-リガンド抗原である、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記TLR-リガンド抗原は、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9及びTLR10のリガンドから選択される、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記TLR-リガンド抗原は、ペプチドグリカン;トリアシルリポペプチドなどのリポペプチド;リポテイコ酸;リポ多糖;フラジェリン;細菌CpG含有DNA及びウイルスCpG含有DNAから選択される、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記細胞外結合ドメインは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10の細胞外ドメイン;及び前記TLR-リガンド抗原に特異的に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)から選択される、請求項4又は5に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記細胞外結合ドメインは、ペプチドグリカンに特異的に結合するscFvである、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記細胞内ドメインは、例えば、CD3ζ、CD3η鎖、又はFcRγ鎖の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)に;例えば、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10のトル/IL-1受容体ドメイン(TIR)に;あるいは、例えば、B細胞受容体ポリペプチド、CD27、CD28、CD278(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFRII、Fas、CD30の共刺激シグナル伝達要素に;又はそれらの組み合わせに相同である少なくとも1つのドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記細胞内ドメインは、TIRがTLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10に由来するTIR-CD28-FcRγから選択されるシグナル伝達要素;及びCD28-FcRγのシグナル伝達要素のタンデム配置を含む、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記膜貫通ドメインは、I型膜貫通タンパク質の膜貫通領域、人工疎水性配列、CD28、CD3ζ、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10の膜貫通ドメイン、及びFc受容体から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記aCARは前記細胞外ドメインと前記膜貫通ドメインをつなぐストーク領域を含み、前記ストーク領域は、CD28、CD8α、CD8βのストーク及びIgG又はIgDの重鎖から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記抗原は、共生腸内細菌叢のトル様受容体(TLR)-リガンド抗原であり;前記細胞内ドメインは、例えば、CD3ζ、CD3η鎖、又はFcRγ鎖の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)に;例えば、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10のトル/IL-1受容体ドメイン(TIR)に;あるいは、例えば、B細胞受容体ポリペプチド、CD27、CD28、CD278(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFRII、Fas、CD30の共刺激シグナル伝達要素に;又はそれらの組み合わせに相同である少なくとも1つのドメインを含み;前記膜貫通ドメインは、I型膜貫通タンパク質の膜貫通領域、人工疎水性配列、CD28、CD3ζ、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10の膜貫通ドメイン、及びFc受容体から選択され;前記aCARは前記細胞外ドメインと前記膜貫通ドメインをつなぐストーク領域を含み、前記ストーク領域は、CD28、CD8α、CD8βのストーク及びIgG又はIgDの重鎖から選択される、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記TLR-リガンド抗原は、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9及びTLR10のリガンドから選択され;前記細胞内ドメインは、TIRがTLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10に由来するTIR-CD28-FcRγから選択されるシグナル伝達要素;及びCD28-FcRγのシグナル伝達要素のタンデム配置を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記TLR-リガンド抗原は、ペプチドグリカン;トリアシルリポペプチドなどのリポペプチド;リポテイコ酸;リポ多糖;フラジェリン;細菌CpG含有DNA及びウイルスCpG含有DNAから選択される、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記細胞外結合ドメインは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10の細胞外ドメイン;及び前記TLR-リガンド抗原に特異的に結合するscFvから選択される、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記scFvはペプチドグリカンに特異的に結合する、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記aCARはペプチドグリカンに特異的に結合するscFvを含み、ストーク領域はCD8αのヒンジを含み、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通ドメインを含み、細胞内ドメインはCD28-FcRγのシグナル伝達要素のタンデム配置を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記aCARは、TLR2などのTLRを含み、細胞内ドメインは、任意選択で不活性化突然変異を含む、前記TLRのTIRドメインに連結されたCD28-FcRγのシグナル伝達要素;又はCD3ζのシグナル伝達要素のタンデム配置を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記ホモ二量体IL-10は、第1のIL-10単量体のC末端が第1のフレキシブルリンカーを介して第2のIL-10単量体のN末端に連結されるように一本鎖構成で連結された第1及び第2のIL-10単量体を含む、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記第1のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列番号5]を有する、請求項19に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記ホモ二量体IL-10は、フレキシブルヒンジを介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結され、前記フレキシブルヒンジは、CD8αのヒンジ領域、IgGの重鎖のヒンジ領域、IgDの重鎖のヒンジ領域;IL-10Rβ鎖の細胞外ストレッチ;及び最大28アミノ酸のアミノ酸スペーサー、例えば1つのGly4Ser(Gly3Ser)2配列[配列番号36]及び配列SSQPTIPI[配列番号40]の追加の8アミノ酸ブリッジからなる21アミノ酸スペーサーを含む第2のフレキシブルリンカーから選択されるポリペプチドを含む、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記膜貫通-細胞内ストレッチは、HLA-A、HLA-B又はHLA-C分子、好ましくはHLA-A2;又はIL-10Rβ鎖から選択されるヒトMHCクラスI分子の重鎖に由来する、請求項21に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記ホモ二量体IL-10は、本質的に完全なIL-10Rβ鎖のN末端に連結されている、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記ホモ二量体IL-10は、第1のIL-10単量体のC末端が第1のフレキシブルリンカーを介して第2のIL-10単量体のN末端に連結されるように一本鎖構成で連結された第1及び第2のIL-10単量体を含み;前記ホモ二量体IL-10は、フレキシブルヒンジを介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結され、前記フレキシブルヒンジは、CD8αのヒンジ領域、IgGの重鎖のヒンジ領域、IgDの重鎖のヒンジ領域;IL-10Rβ鎖の細胞外ストレッチ;及び最大28アミノ酸のアミノ酸スペーサー、例えば1つのGly4Ser(Gly3Ser)2配列[配列番号36]及び配列SSQPTIPI[配列番号40]の追加の8アミノ酸ブリッジからなる21アミノ酸スペーサーを含む第2のフレキシブルリンカーから選択されるポリペプチドを含み;前記ホモ二量体IL-10の前記膜貫通-細胞内ストレッチは、HLA-A、HLA-B又はHLA-C分子、好ましくはHLA-A2;又はIL-10Rβ鎖から選択されるヒトMHCクラスI分子の重鎖に由来する、請求項2~23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記第1のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列番号5]を有する、請求項24に記載の核酸分子。
【請求項26】
前記ホモ二量体IL-10は、本質的に完全なIL-10Rβ鎖のN末端に連結されている、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸分子を含むウイルスベクターなどのベクター。
【請求項29】
少なくとも1つのベクターを含む組成物であって、前記組成物は請求項28に記載の1つのベクターを含むか;又は前記組成物は少なくとも2つのベクターを含み、ベクターの1つは、請求項1に記載の核酸分子を含み、別のベクターは、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む、組成物。
【請求項30】
哺乳類制御性T細胞(Treg)であって、請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項28に記載のベクター;又は、請求項1に記載の核酸分子を含む前記ベクターと、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むベクターとの組み合わせを含む哺乳類Treg。
【請求項31】
前記核酸分子にコードされた活性化キメラ抗原受容体(aCAR)を表面に発現する、請求項30に記載の哺乳類Treg。
【請求項32】
細胞表面マーカーCD49b及びLAG-3を提示する安定したTr1表現型を有する、請求項31に記載の哺乳類Treg。
【請求項33】
ヒトTregである、請求項30~32のいずれか一項に記載の哺乳類Treg。
【請求項34】
同種異系又は自家Tregを調製する方法であって、CD4T細胞を、請求項1又は2に記載の核酸分子又はそれを含むベクター;又は、請求項1に記載の核酸分子を含むベクターと、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むベクターとの組み合わせと接触させることにより、同種異系又は自家Tregを調製することを含む方法。
【請求項35】
対象の疾患、障害又は状態の治療又は予防に使用するための請求項30~32のいずれか一項に記載の哺乳類Tregであって、前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに器官及び骨髄移植などの免疫系の過剰な活性に現れる、哺乳類Treg。
【請求項36】
自己免疫疾患は、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;セリアック病;1型糖尿病;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群;ベーチェット病;強皮症;コラーゲン血管疾患;全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症;チャーグ-ストラウス症候群;乾癬;乾癬性関節炎;多発性硬化症;アディソン病;バセドウ病;橋本甲状腺炎;重症筋無力症;血管炎;悪性貧血;及びアテローム性動脈硬化症から選択される、請求項35に記載の哺乳類Treg。
【請求項37】
自己免疫疾患は、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;1型糖尿病;及びセリアック病から選択される、請求項36に記載の哺乳類Treg。
【請求項38】
自己免疫疾患は炎症性腸疾患である、請求項37に記載の哺乳類Treg。
【請求項39】
前記対象はヒトであり、前記哺乳類Tregはヒトのものである、請求項35~38のいずれか一項に記載の哺乳類Treg。
【請求項40】
前記Tregは同種異系Tregである、請求項39に記載の哺乳類Treg。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、膜結合IL-10を任意に発現する遺伝的にリプログラミングされた制御性T細胞、ならびに全身的な又は組織に限定された免疫抑制のいずれかを誘導し、免疫系の過剰な活性に現れる疾患を治療する際のそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
局所炎症を抑制し、免疫学的バランスを回復するためにCD4調節T細胞(Treg)を利用することは、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、移植片拒絶、移植片対宿主病などの多様な病態の治療に大きな期待を寄せられている。しかし、Tregは、1型制御性T細胞(Tr1細胞)を含め、天然型(nTregs)も誘導性(iTregs)も、ヒトCD4T細胞集団全体でごくわずかな割合しか形成しない。そのため、臨床的有効性と治療の安全性に重要な十分な数と安定した表現型で自家又は同種異系Tregをリクルートし、誘導し、又は操作するために設計されたTregベースの治療法の開発が緊急に必要とされている。
【0003】
iTregの重要なサブタイプである1型すなわちTr1細胞は、インターロイキン10(IL-10)の存在下で樹状細胞上の抗原に慢性的に曝露されると、TCR及び抗原特異的な方法で末梢において誘導される。Tr1細胞は、非増殖性(アネルギー)状態、IL-10及びTGF-βの高産生、及び細胞間接触に依存しない方法でエフェクターT細胞(Teff)を抑制する能力を特徴としている。最近の研究では、レンチウイルス形質導入によって達成された、ヒトCD4T細胞におけるIL-10の強制的な構成的発現が、これらの細胞にオートクリン様式で特に安定したTr1表現型を与えるのに十分であることが示された(1)。このプロトコルは、Tr1細胞のデノボ生成に対し洗練された解決策を提供するが、活性化に依存しない方法で構成的にIL-10を産生するTr1細胞をもたらす。臨床現場では、この制御されていないIL-10分泌は、全身性及び長期の免疫抑制のリスクをもたらし、Tr1細胞によって発揮される治療効果の意図された抗原又は組織選択性を失う。
【0004】
したがって、自己免疫疾患及び他の自己免疫関連障害のための効率的なTreg、特に効率的なTr1免疫療法の差し迫った必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本発明は、活性化キメラ抗原受容体(aCAR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、上記aCARが(i)共生腸内細菌叢の抗原、及び、消化管の粘膜固有層(LP)又は粘膜下層に特有の自己細胞表面抗原から選択される抗原に特異的に結合する細胞外結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;(iii)T細胞を活性化及び/又は共刺激する少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメイン;及び任意選択で(iv)細胞外ドメインと膜貫通ドメインをつなぐストーク(stalk)領域を含む核酸分子を提供する。
【0006】
特定の実施形態において、aCARをコードするヌクレオチド配列に加えて、上記核酸分子は、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、本発明のaCARをコードするヌクレオチド配列を含むが、ホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を欠く核酸分子を含む組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、上記組成物は、本発明のaCARをコードするヌクレオチド配列と、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結される、本明細書で定義されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列とを含む核酸分子を含む。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、本発明のaCARをコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子と、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結される、本明細書で定義されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む第2の物理的に別個の核酸分子とを含む組成物を提供する。
【0010】
さらに追加の態様では、本発明は、本明細書で定義されるような核酸分子のいずれか1つを含む、ウイルスベクターなどのベクターを提供する。
さらに別の態様では、本発明は、ウイルスベクターなどの少なくとも1つのベクターを含む組成物を提供し、ここで、前記組成物は本発明の1つのベクターを含むか、又は前記組成物は少なくとも2つのベクターを含み、ベクターの1つは、本発明のaCARをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、別のベクターは、本明細書で定義されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子のいずれか、又は本明細書で定義されるように細胞のゲノムに任意選択で組み込まれるベクターを含む哺乳類制御性T細胞(Treg)を提供する。
【0012】
さらに追加の態様では、本発明は、同種異系又は自家Tregを調製する方法を提供し、この方法は、CD4T細胞を、本発明のaCARをコードするヌクレオチド配列を単独で、又は、本明細書で定義されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列、それを含むレトロウイルスベクター、又は上記の実施形態のいずれか1つによる組成物と組み合わせて含む核酸分子と接触させることにより、mem-IL-10を伴うか否かにかかわらず、表面にaCARを発現する同種異系又は自家Tregを調製することを含む。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、対象の疾患、障害又は状態を治療又は予防する方法を提供し、前記対象に、表面にaCARを単独で、又は本明細書で定義されるホモ二量体IL-10と組み合わせて発現する哺乳類Tregを投与することを含み、前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに器官及び骨髄移植などの免疫系の過剰な活性に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】膜固定ホモ二量体IL-10の概略図を示す。
図2A図2A~Dは、T細胞における膜固定ホモ二量体IL-10(memIL-10)発現の分析、及びIL-10受容体(IL-10R)及びCD49bに対するその効果を示す。ヒトJurkat又は初代末梢血リンパ球由来CD4T細胞(A、B)及びマウスB3Z又はNOD脾臓CD4T細胞(C、D)に、ヒト又はマウスmemIL-10をコードする10μgのin vitro転写mRNAをそれぞれエレクトロポレーションした。トランスフェクションの24時間後(A~C)又は48時間後(D、左及び右)にフローサイトメトリーで細胞を分析した。ヒト又はマウスのmemIL-10及びIL-10R及びヒトCD49bを、それぞれヒト又はマウスのタンパク質に特異的なモノクローナル抗体によって分析した。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図3A】3A~Dは、細胞表面受容体に結合した天然IL-10ホモダイマー(A)及びIL-10の3つの膜固定型誘導体(mem-IL-10):(B)短リンカーを有するmem-IL-10;(C)長リンカーを有するmem-IL-10;及び(D)IL-10Rβに連結されたmem-IL-10(IL-10Rβ融合)の概略図を示す。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
図4】mRNAエレクトロポレーションの24時間後のJurkat細胞における3つのmemIL-10誘導体の細胞表面発現を示す。ヒトJurkatCD4T細胞に、示された各mRNAを10μgエレクトロポレーションした(sL及びlLは、それぞれ短リンカー及び長リンカーを表す)。24時間の細胞を、IL-10の表面発現についてフローサイトメトリーにより分析した。
図5A図5A~Cは、CD4T細胞におけるmemIL-10の発現がSTAT3の自発的なリン酸化を誘導することを示す。マウスCD4T細胞に、無関係なmRNA(Irr.mRNA)、短リンカーmemIL-10(sLmemIL-10)、長リンカーmemIL-10(lLmemIL-10)、又はIL-10Rβ鎖に連結されたIL-10(memIL-10Rβ)をコードするmRNAをエレクトロポレーションするか、又は20ng/mlの可溶性組換えIL-10(sIL-10)で処理した。24時間後、細胞を表面IL-10(A)、表面IL-10Rα鎖(B)、又は細胞内のリン酸化STAT3(pSTAT3)(C)のフローサイトメトリー分析に供した。
図5B】同上。
図5C】同上。
図6A図6A~Bは、memlL-10を発現するレトロウイルスで形質導入されたマウスCD4T細胞の分析を示す。形質導入後48時間(A)及び6日(B)の短リンカーmemIL-10形質導入マウスCD4T細胞(v-memIL-10)の表現型分析。分析は、同じ細胞培養で増殖するmemIL-10(+)及びmemlL-10(-)細胞で並行して行い、LAG-3、CD49b、及びPD-1で染色した。陽性対照として、形質導入されていない細胞を可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。モックは、レトロウイルスで形質導入された細胞と同じプロトコルで処理されたが、ウイルス粒子への曝露がない細胞である。
図6B】同上。
図7】活性化されたmemIL-10形質導入マウスCD4T細胞によるIL-10の分泌を示す。図6と同じ実験からの細胞を抗TCR-CD3 mAb(2C11)で刺激し、それらの増殖培地をIL-10 ELISAに供した。モック及び緑色蛍光タンパク質(GFP)で形質導入されたT細胞は陰性対照として機能した。
図8A図8A~Cは、memIL-10で形質導入されたヒトCD4T細胞の表現型の特徴解析を示す。CD4T細胞は、健康なドナーの血液サンプルから調製された末梢血単核細胞から磁気ビーズによって分離された。細胞を抗CD3及び抗CD28抗体及びIL-2の存在下で所望の数まで増殖させ、memIL-10又は無関係な遺伝子(Irr.)をコードする組換えレトロウイルスで形質導入するか、又は可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。細胞をIL-2の存在下で増殖させ、1日目(A)、5日目(B)、及び18日目(C)に示された細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析のためにサンプルを採取した。18日目に、細胞表面マーカーを比較するために、形質導入されていないTregを分析に追加した。各時点で、memIL-10を発現する細胞(陽性、実線の枠))を、IL-10を発現しない同じ培養物の細胞(陰性、点線の枠)と並べて分析した。
図8B】同上。
図8C】同上。
図9】memIL-10を形質導入したヒトCD4T細胞の表現型を決定する第2の実験を示している。細胞を調製し、memIL-10を形質導入し、4日後に、図8の凡例に記載されているように、示されたマーカーについて分析した。非形質導入(ナイーブ)及び模擬形質導入(モック)CD4細胞は陰性対照として機能した。MemIL-10陽性細胞を、同じ培養物からのmemIL-10陰性細胞、及び50、100、又は300ng/mlのsIL-10の存在下で増殖させたナイーブCD4T細胞と比較した。示されているのは、各サンプルで陽性に染色された細胞の%である。二重陽性は、LAG-3及びCD49bに対して陽性に染色された細胞の%である。
図10A図10A~Cは、3つのタイプの抗ペプチドグリカン(PGN)キメラ抗原受容体(CAR)(A)及びそれらの表面発現(B、C)の概略図を示す。(A、左)及び(A、中央)に示されているCAR構築物はTLR2に基づいており、(A、右)は従来のCARを表す。重鎖可変ドメイン、V;軽鎖可変ドメイン、V;単鎖可変フラグメント、ScFv;Toll/インターロイキン-1受容体ドメイン、TIR;*、TLR2のTIRドメインの不活性化変異。(B)TLR-2ベースのCARをコードするmRNAでトランスフェクトされたMCF7細胞のTLR2発現のフローサイトメトリー分析。TLR-2を自然に発現するヒトTHP-1細胞は、陽性対照(P.C.)として機能した。(C)抗PGN従来型CARをコードするmRNAでトランスフェクトされたK652細胞によるMycタグ発現のフローサイトメトリー分析。
図10B】同上。
図10C】同上。
図11】aCARの様々なメンバーの線形配置を示す。タグ(この場合はMycタグ)、T。
図12】2つの抗PGNモノクローナル抗体(mAb)、3C11(マウスIgG、ハイブリドーマから精製)及び3F6(マウスIgM、ハイブリドーマ上清)のPGNへの結合をELISA試験した結果を示す。OD450、450nmでの光学密度;Irr.Ab、対照の無関係なIgG。
図13】抗PGN CAR-T細胞のPGN特異的活性化を示している。T細胞活性化のための、活性化T細胞の核因子(NFAT)-LacZレポーター遺伝子を有するB3Z T細胞に、2つの抗PGN CAR(CAR-3C11及びCAR-3F6)又は対照としてのGFPのそれぞれをコードするmRNAをトランスフェクトした。次に、黄色ブドウ球菌由来のPGNの存在下又は非存在下で細胞を一晩インキュベートした。結果は、β-Gal活性について、比色クロロフェノールレッド-β-D-ガラクトピラノシド(CPRG)アッセイのODとして示されている。3C11ハイブリドーマから調製された抗PGN CAR、1564;3F6からの抗PGN CAR、1565。
図14】2つの抗PGN CAR(CAR-3C11及びCAR-3F6)及び対照をコードするmRNAでエレクトロポレーションされ、グラム陰性菌又はグラム陽性菌に由来するPGNの存在下で培養されたB3ZレポーターT細胞を示す。24時間後、細胞をT細胞活性化のための比色CPRGレポーターアッセイに供した。3C11ハイブリドーマから調製された抗PGN CAR、1564;3F6からの抗PGN CAR、1565;3F6からの非生産的なCAR、1566;無関係なCAR、陰性対照;黄色ブドウ球菌PGN、SA;大腸菌PGN、EK。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
CD4制御性T細胞(Treg)に治療上の大きな期待を寄せられている特定の治療法の1つは、炎症性腸疾患(IBD)、つまりクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の治療である。IBDは、遺伝的に感受性の高い個人の腸管上皮バリアの損傷後の微生物成分に対する不適切な炎症反応に起因すると考えられている(2)。慢性炎症を選択的に抑制し、腸の恒常性を回復するためにTregを利用することは、IBDの治療法として広く探求されている(3~5)。しかし、この分野での進歩は、病因に関連する真のT細胞抗原に関する情報の全体的な欠如及びTreg特異性の全般的な捉えどころのなさに悩まされている。
【0016】
Treg標的としての食餌性抗原の使用が検討されているが(6)、本発明の発明者らは、リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン及びリポペプチドなどの共生腸内細菌叢の成分が上皮層を通過して粘膜固有層(LP)及び腸管関連リンパ組織(GALT)に到達することができ、臨床的に関連性があることを発見した。これらの物質はLPを出ることができるという証拠はあるが、それらの全身濃度は非常に低い(7~9)。特に、ペプチドグリカン(PGN)は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方の主要な高分子細胞壁成分であり、腸バリアを構成する様々な細胞によって、細胞内ではNOD2(10、11)により、又は細胞外ではTLR2(TLR2)により(12、13)感知される。
【0017】
現在、内因性TCRを介したTregと抗原の関与が、in vivoでの免疫抑制に重要であるという説得力のある証拠がある(14)。しかし、ペプチド/HLA-II複合体としてCD4Tregに提示され得る上記の障害に関連する真のT細胞抗原の選択は限られている。さらに、十分な数のTregによってそのような複合体を標的とする従来の戦略は、HLA-IIに依存し、非常に手間がかかる可能性がある(例えば、クローン病の治療のための自家OVA特異的Tregの拡張を参照)。対照的に、本発明のアプローチは、キメラ抗原受容体、又はCARを使用して、選択した細胞表面抗原に対してT細胞を遺伝的にリダイレクトする十分に確立された能力に基づいている。CARはもともと1980年代後半に本発明者の1人によって開発され(15)、今日では主にTeff細胞による腫瘍の選択的標的化のためのがん免疫療法で使用されている(16)。
【0018】
本発明によれば、2つの異なる抗PGN CARがPGN依存的にT細胞を活性化すること、及びグラム陰性菌及びグラム陽性菌からのPGNがT細胞を活性化するのに等しく有効であることが見出された。
【0019】
したがって、一態様では、本発明は、(i)共生腸内細菌叢の抗原及び消化管の粘膜固有層(LP)又は粘膜下層に特異的な自己細胞表面抗原から選択される抗原に特異的に結合する細胞外結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;(iii)T細胞を活性化及び/又は共刺激する少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメイン;及び任意選択で(iv)前記細胞外ドメインと前記膜貫通ドメインをつなぐストーク領域を含む活性化キメラ抗原受容体(aCAR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0020】
特定の実施形態において、aCARをコードするヌクレオチド配列に加えて、核酸分子は、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されるホモ二量体IL-10をコードする、本明細書ではmem-IL-10とも呼ばれるヌクレオチド配列をさらに含む。mem-IL-10及びそれを製造及び使用する方法は、国際公開第2019/180724号に開示されており、本明細書に完全に開示されているかのように参照により組み込まれる。
【0021】
特定の実施形態において、核酸分子は、本発明のaCARをコードするヌクレオチド配列を含むが、ホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を欠いている。
任意の関連技術を使用して、aCARにその標的への特異的結合を与える認識部分/結合ドメインを操作することができる。特定の実施形態において、細胞外ドメインは、(i)抗体、その誘導体又はフラグメント、例えばヒト化抗体;ヒト抗体;抗体の機能的フラグメント;ナノボディなどの単一ドメイン抗体;組換え抗体;及び単鎖可変フラグメント(ScFv);(ii)TLRの細胞外ドメイン、その誘導体又はフラグメント(TLR-リガンドの場合);(iii)抗体模倣物、例えばアフィボディ分子;アフィリン;アフィマー;アフィチン;アルファボディ;アンティカリン;アビマー;DARPin;ファイノマー;クニッツドメインペプチド;及びモノボディ;又は(iv)アプタマーを含む。
【0022】
原則として、選択したTLRリガンドに対して新しいscFvを調製する方法は、当業者に容易に利用可能であり、例えば、Abディスプレイ技術を使用して選択することができる(17)。
【0023】
特定の実施形態において、aCARの細胞外結合ドメインが特異的に結合する共生腸内細菌叢の抗原は、哺乳類、特にヒトの胃腸内微生物叢(腸内フローラ又は腸内細菌叢としても知られている、ヒトなどの哺乳類の消化管に無害な共存をする微生物)の抗原である。
【0024】
特定の実施形態において、共生腸内細菌叢の抗原は、嫌気性細菌の抗原であり、これは、腸内細菌の99%以上を占める。
特定の実施形態において、共生腸内細菌叢の抗原は、ヒト腸内の4つの優勢な細菌門のうちの1つに属する細菌、すなわち、ファーミキューテス(Firmicutes)、バクテロイデス(Bacteroidetes)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、及びプロテオバクテリア(Proteobacteria)の抗原、特に、バクテロイデス(Bacteroides)、クロストリジウム(Clostridium)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、ペプトコッカス(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、エスケリキア(Escherichia)又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の細菌の抗原である。
【0025】
特定の実施形態において、抗原は、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9及びTLR10のリガンドなどの、共生腸内細菌叢のトル様受容体(TLR)リガンド抗原である。
【0026】
特定の実施形態において、TLRの細胞外ドメインは、ヒトTLRの細胞外ドメインなどの、哺乳類TLRの細胞外ドメインであるか、又はそれに由来する。
特定の実施形態において、結合ドメインが結合するTLR-リガンド抗原は、表1から選択される。
【0027】
【表1】
【0028】
特定の実施形態では、抗原はペプチドグリカン;トリアシルリポペプチドなどのリポペプチド;リポテイコ酸;リポ多糖(LPS);フラジェリン;細菌CpG含有DNA及びウイルスCpG含有DNAから選択される。
【0029】
ムレインとしても知られるペプチドグリカンは、細菌の原形質膜(古細菌ではない)の外側にメッシュ状の層を形成し、細胞壁を形成する糖及びアミノ酸からなるポリマーである。糖成分は、β-(1,4)結合N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルムラミン酸の交互の残基で構成されている。N-アセチルムラミン酸には、3~5個のアミノ酸からなるペプチド鎖が結合している。それはTLR2のリガンドであり、したがって特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、TLR2結合ドメイン、その誘導体又はフラグメント、好ましくはヒトTLR2結合ドメイン、その誘導体又はフラグメントである。あるいは、細胞外結合ドメインは、ペプチドグリカンの特異的結合が可能な抗体、その誘導体又はフラグメント(例えば、scFv)である。このような抗体の例は、ペプチドグリカンモノクローナル抗体、クローン3F6B3、LifeSpan BioSciences、3C11(ATCC(登録商標)HB-8511(商標))、IgG1(κ)及び3F6(ATCC(登録商標)HB-8512(商標))、IgM(κ)であり、これらから抗ペプチドグリカンscFvは容易にクローニングされる。
【0030】
細胞外結合ドメインが結合するリポペプチドの非限定的な例は、PAM2Cys、PAM3Cys、O-パルミトイル-Ser、N’-パルミトイル-Lys、リポアミノ酸(LAA)及びジパルミチルグルタミン酸である(Taguchi. Micro and Nanotechnology in Vaccine Development. Micro and Nano Technologies 2017、149~170頁、第8章-Nanoparticle-Based Peptide Vaccines https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/lipopeptide.表2参照)。
【0031】
【表2-1】
【0032】
【表2-2】
【0033】
【表2-3】
【0034】
リポタイコ酸(LTA)は、グラム陽性菌の細胞壁の主成分である。LTAの構造はグラム陽性菌の種類によって異なり、長鎖のリビトール又はリン酸グリセロールを含み得る。それはTLR2のリガンドであり、したがって特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、TLR2結合ドメイン、その誘導体又はフラグメント、好ましくはヒトTLR2結合ドメイン、その誘導体又はフラグメントである。あるいは、細胞外結合ドメインは、LTAの特異的結合が可能な抗体、その誘導体又はフラグメント(例えば、scFv)である。そのような抗体の1つは、抗リポタイコ酸(LTA)mAb、クローン55、LifeSpan BioSciencesであり、そこから抗LTA scFvが容易にクローニングされる。
【0035】
リポグリカン及びエンドトキシンとしても知られるリポ多糖類は、脂質と、共有結合によって結合されたO抗原、外核及び内核から構成される多糖類とからなる大きな分子である。それらはグラム陰性菌の外膜に見られる。O-抗原は、LPS内に含まれる反復グリカンポリマーである。O抗原はコアオリゴ糖に結合しており、LPS分子の最も外側のドメインを含む。コアドメインには、リピドAに直接結合するオリゴ糖成分が常に含まれており、通常、ヘプトースや3-デオキシ-D-マンノ-オクタ-2-ウロソン酸(KDO、ケト-デオキシオクツロソン酸としても知られている)などの糖が含まれている。多くの細菌のLPSコアには、リン酸塩、アミノ酸、エタノールアミン置換基などの非炭水化物成分も含まれている。本明細書で使用されるリポ多糖という用語は、リポ多糖の低分子量形態であるリポオリゴ糖(「LOS」)も指す。それはTLR4のリガンドであり、したがって特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、TLR4結合ドメイン、その誘導体又はフラグメント、好ましくはヒトTLR4結合ドメイン、その誘導体又はフラグメントである。あるいは、細胞外結合ドメインは、LPSの特異的結合が可能な抗体、その誘導体又はフラグメント(例えば、scFv)である。そのような抗体の1つは、抗LPSmAb、クローンNYRChlam LPS、LifeSpan BioSciencesであり、そこから抗LPS scFvが容易にクローニングされる。
【0036】
フラジェリンは、重合して細菌べん毛のフィラメントを形成するサブユニットタンパク質であり、ほぼすべてのべん毛細菌に大量に存在する。それはTLR5のリガンドであり、したがって特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、TLR5結合ドメイン、その誘導体又はフラグメント、好ましくはヒトTLR5結合ドメイン、その誘導体又はフラグメントである。あるいは、細胞外結合ドメインは、フラジェリンの特異的結合が可能な抗体、その誘導体又はフラグメント(例えば、scFv)である。そのような抗体の1つは、抗フラジェリンmAb、クローンFLIC-1、LifeSpan BioSciencesであり、そこから抗フラジェリンscFvが容易にクローニングされる。
【0037】
本明細書で使用される「CpG含有DNA」という用語は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、すなわちシトシン三リン酸デオキシヌクレオチド(「C」)とそれに続くグアニン三リン酸デオキシヌクレオチド(「G」)を含む短い一本鎖合成DNA分子を指す。それはTLR9及び10のリガンドであり、したがって、特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、TLR9又は10結合ドメイン、その誘導体又はフラグメント、好ましくはヒトTLR9又は10結合ドメイン、その誘導体又はフラグメントである。あるいは、細胞外結合ドメインは、CpG含有DNAの特異的結合が可能な抗体、その誘導体又はフラグメント(例えば、scFv)である。
【0038】
特定の実施形態において、aCARの細胞外結合ドメインは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10、あるいはそれらの誘導体又はフラグメントの細胞外ドメイン;及び前記抗原に特異的に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)から選択される。
【0039】
特定の実施形態において、細胞外結合ドメインは、様々なグラム陰性菌及びグラム陽性菌由来のペプチドグリカンに結合する。
特定の実施形態において、細胞外結合ドメインは、ペプチドグリカンに特異的に結合するscFvであり、限定するものではないが、例えば、3C11(ATCC(登録商標)HB-8511(商標))、IgG1(κ)及び3F6(ATCC(登録商標)HB-8512(商標))、IgM(κ))などの、様々なグラム陰性及びグラム陽性細菌由来のPGNに結合するモノクローナル抗体に由来するscFvなどである。
【0040】
特定の実施形態において、scFvは、モノクローナル抗体3C11に由来し、配列番号7の重鎖可変ドメイン(V)(例えば、配列番号8に示される核酸分子によってコードされる)に、任意選択で第1のフレキシブルリンカー、例えば、配列番号6に示される核酸分子によってコードされる、例えば、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号5)のリンカーを介して連結された、配列番号3に示される軽鎖可変ドメイン(V)(リーダーペプチドも含み、例えば、配列番号4に示される核酸分子によってコードされる)を含む。
【0041】
特定の実施形態において、scFvは、モノクローナル抗体3F6に由来し、配列番号18の重鎖可変ドメイン(V)(例えば、配列番号19に示される核酸分子によってコードされる)に、任意選択で第1のフレキシブルリンカー、例えば、配列番号6に示される核酸分子によってコードされる、例えば、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号5)のリンカーを介して連結された、配列番号16の軽鎖可変ドメイン(V)(リーダーペプチドも含み、例えば、配列番号17に示される核酸分子によってコードされる)を含む。
【0042】
特定の実施形態において、ペプチドグリカンに結合する細胞外結合ドメインは、TLR2結合ドメイン、好ましくは、配列番号20に示される配列のヒトTLR2結合ドメイン(例えば、配列番号21のDNA配列によってコードされる)である。
【0043】
aCARの細胞内ドメインの役割は、結合ドメインがその特異的抗原に結合したときに、T細胞活性化シグナルを提供することである。本発明によれば、これらの抗原は、病因に関連するT細胞抗原であり、aCARは、これらの抗原を提示する組織にTregをリダイレクトし、Tregを活性化し、過剰なTeff活性を抑制するように設計されている。したがって、細胞内ドメインは、Tr1 T細胞などのTregを活性化するように設計されており、今日知られているか、まだ発見されていないかにかかわらず、総じてT細胞を、特にTregを活性化する任意のシグナル伝達要素(活性化又は共刺激)又はシグナル伝達要素の組み合わせを使用できる。同様に、任意のリンカー、フレキシブルヒンジ又はストーク、及び膜貫通ドメイン又は配列を、それが効率的に発現され機能するaCARに寄与する限り、本発明に従って使用することができる。本発明のaCARに容易に適用可能である、aCARで一般的に使用される様々な構成要素の包括的なレビューは、例えば、Dotti et al.(18)及びGuedan et al.(19)に見られる。
【0044】
特定の実施形態において、aCARの細胞内ドメインは、その結合ドメインの性質に関係なく、例えば、CD3ζ(ゼータ)、CD3η(イータ)鎖、又はFcRγ鎖の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)に;例えば、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10のトル/インターロイキン-1受容体(TIR)ドメインに;あるいは、例えば、B細胞受容体ポリペプチド、CD27、CD28、CD278(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFRII、Fas、CD30の共刺激シグナル伝達要素に;又はそれらの組み合わせに相同である少なくとも1つのドメインを含む。追加の細胞内ドメインは当業者には明らかであり、本発明の代替の実施形態に関連して使用することができる。
【0045】
特定の実施形態において、aCARの細胞内ドメインは、その結合ドメインの性質に関係なく、TIR、CD28及びFcRγのITAMの共刺激シグナル伝達エレメント(本明細書では、TIR-CD28-FcRγのシグナル伝達要素とも呼ばれる)であって、TIRは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10に由来する共刺激シグナル伝達エレメント;及びCD28及びFcRγのITAMの共刺激シグナル伝達エレメントのタンデム配置(本明細書ではCD28-FcRγのシグナル伝達要素とも呼ばれる)から選択されるシグナル伝達要素のタンデム配置を含む。
【0046】
CARの膜貫通ドメインは、その結合及び細胞内ドメインの性質に関係なく、I型、II型又はIII型の膜貫通タンパク質のいずれかを含む膜貫通ドメインを有する任意のタンパク質由来の膜貫通配列、又は人工的な疎水性配列を含み得る。本発明のCARの膜貫通ドメインは、二量体化しないように選択され得る。追加の膜貫通ドメインは当業者には明らかであり、本発明の代替の実施形態に関連して使用することができる。
【0047】
特定の実施形態において、aCARの膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメイン(例えば配列番号45に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、例えば配列番号44に示されるようなヒトCD28)、CD3-ゼータ、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9、TLR10及びFc受容体から選択される。
【0048】
特定の実施形態において、aCARは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインを連結するストーク領域を含み、これは、抗体のFcフラグメント又はそのフラグメント又は誘導体、抗体のヒンジ領域又はそのフラグメント又は誘導体、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工的スペーサー配列又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ストークは、Gly又はヒトIgG4などのIgGのCH1、CH2及びCH3ドメインなどのペプチドスペーサーを含み得る。
【0049】
特定の実施形態では、その結合ドメイン及び膜貫通ドメインの性質に関係なく、ストーク領域は、CD28(配列番号24;例えば、配列番号25に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)、CD8α(例えば、配列番号9に示され;例えば、配列番号10に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)、CD8β(例えば、配列番号26に示され;例えば、配列番号27に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)及びIgGの重鎖(例えば、配列番号28に示され;例えば、配列番号29に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)又はIgD(例えば、配列番号29に記載の)又はIgDの重鎖(例えば、配列番号30に示され;例えば、配列番号31に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)のストーク又はヒンジから選択される。
【0050】
特定の実施形態では、抗原は、共生腸内細菌叢のTLR-リガンド抗原である。前記細胞内ドメインは、例えば、CD3ζ、CD3η鎖、又はFcRγ鎖のITAMに;例えば、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10のTIRに;又は、例えば、B細胞受容体ポリペプチド、CD27、CD28、CD278(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFRII、Fas、CD30、又はそれらの組み合わせの共刺激シグナル伝達要素に相同である少なくとも1つのドメインを含み;前記膜貫通ドメインは、I型膜貫通タンパク質の膜貫通領域、人工疎水性配列、CD28、CD3ζ、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10の膜貫通ドメイン、及びFc受容体から選択され;aCARは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインを連結するストーク領域を含み、前記ストーク領域は、CD28、CD8α、CD8β、ならびにIgG又はIgDの重鎖のストーク又はヒンジから選択される。
【0051】
特定の実施形態では、TLR-リガンド抗原は、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9及びTLR10のリガンドから選択され;前記細胞内ドメインは、TIR-CD28-FcRγのシグナル伝達要素(ここで、TIRは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10に由来する);及びCD28-FcRγのシグナル伝達要素から選択されるシグナル伝達要素のタンデム配置を含む。
【0052】
特定の実施形態において、TLR-リガンド抗原は、ペプチドグリカン;トリアシルリポペプチドなどのリポペプチド;リポテイコ酸;リポ多糖;フラジェリン;細菌CpG含有DNA及びウイルスCpG含有DNAから選択される。
【0053】
特定の実施形態において、細胞外結合ドメインは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10、あるいはそれらの誘導体又はフラグメントの細胞外ドメイン;及び前記TLRリガンド抗原に特異的に結合するscFvから選択される。
【0054】
特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、ペプチドグリカン又はTLR2の細胞外ドメインに特異的に結合するscFvである。
特定の実施形態において、aCARは、PGNに特異的に結合するscFv、CD8αのヒンジを含むストーク領域、CD28の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン、及びCD28-FcRγのシグナル伝達要素のタンデム配置を含む細胞内ドメインを含む。
【0055】
特定の実施形態において、aCARは、完全なTLR2などの完全なTLRを含み、細胞内ドメインは、CD3ζ、及び野生型TIRの、又は不活性化突然変異(ヒトTLR2におけるPro681His突然変異(20)又は他の種のTLR2におけるそれに対応するもの)により無能力化されたTIRの、TLR2の細胞内ドメインを含む。あるいは、aCARは、TLR2などのTLRの細胞外結合ドメイン、及びCD3ζのシグナル伝達要素、例えば、CD3ζの完全な細胞内ドメインの形態のものを含む。
【0056】
特定の実施形態では、aCARは、TLR2などのTLRを含み、細胞内ドメインは、任意選択で不活性化突然変異を含む、前記TLRのTIRドメインに連結されたCD28-FcRγのシグナル伝達要素のタンデム配置を含む。
【0057】
特定の実施形態において、ホモ二量体IL-10は、第1のIL-10単量体のC末端が第1のフレキシブルリンカーを介して第2のIL-10単量体のN末端に連結されるように一本鎖構成で連結された第1及び第2のIL-10単量体を含む。
【0058】
フレキシブルペプチドリンカーは当技術分野でよく知られている。研究者によって設計された経験的リンカーは、一般に、その構造に応じてフレキシブルリンカー、リジッドリンカー、及びin vivoで切断可能なリンカーの3つのカテゴリに分類される。これらは(21~23)に定義されており、これらのそれぞれは、本明細書に完全に開示されているかのように参照により組み込まれる。
【0059】
上記のように、第1のリンカーはフレキシブルリンカーであり、その構造は、(21~23)に開示されているリンカーのいずれか1つから選択される。原則として、柔軟性を提供するために、リンカーは総じて小分子量、非極性(例えばGly)又は極性(例えばSer又はThr)のアミノ酸で構成されている(交互のGly及びSer残基を基礎配列とするなど)。リンカー及び付随するホモ二量体IL-10の溶解性は、荷電残基、例えば2つの正に帯電した残基(Lys)及び1つの負に帯電した残留物(Glu)を含めることによって高めることができる。リンカーは2~31アミノ酸まで変化させることができ、例えば12~18残基の長さで、連結されるパートナーのコンフォメーション又は相互作用に制約を課しないように各条件に最適化させることができる。
【0060】
特定の実施形態において、第1のフレキシブルリンカーは、配列番号6に示されるヌクレオチド配列によってコードされるように、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列番号5]を有する。
【0061】
特定の実施形態において、ホモ二量体IL-10は、フレキシブルヒンジを介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結され、フレキシブルヒンジは、CD8α(例えば、配列番号9に示され;例えば、配列番号10に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)のヒンジ領域、例えば配列番号24に示されるCD28(例えば、配列番号25に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)のヒンジ領域、例えば、配列番号26に示されるCD8β(例えば、配列番号27に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)のヒンジ領域、IgGの重鎖(例えば、配列番号28に示され;例えば、配列番号29に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)のヒンジ領域、IgDの重鎖(例えば、配列番号30に示され;例えば、配列番号31に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)のヒンジ領域;IL-10Rβ鎖の細胞外ストレッチ(配列番号32に示され;例えば、配列番号33に示されるヌクレオチド配列によってコードされている);及び、例えば、1つのGlySer(GlySer)配列(配列番号34;例えば、配列番号35に記載のヌクレオチド配列によってコードされる)、又は2つのGlySer(GlySer)配列とそれらの間に挿入された1つ又は2つのSer残基とを含む最大28アミノ酸のアミノ酸スペーサーを含む第2のフレキシブルリンカーから選択されるポリペプチドを含む。
【0062】
特定の実施形態では、第2のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列GlySer(GlySer)(本明細書では「短リンカー」と呼ばれる;配列番号36;例えば、配列番号37に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)を含む21アミノ酸配列を含む。
【0063】
特定の実施形態では、第2のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列GlySer(GlySer)Ser(GlySer)(本明細書では「長リンカー」と呼ばれる;配列番号38;例えば、配列番号39に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)を含む28アミノ酸のスペーサーと、例えば、配列番号41に示されるヌクレオチド配列によってコードされる配列番号40の連結ペプチドとからなる。
【0064】
特定の実施形態では、上記の実施形態のいずれか1つの第2のフレキシブルリンカーは、HLA-A2の連結ペプチドの膜近位部分に由来する配列SSQPTIPI(本明細書では「連結ペプチド」と呼ばれる;配列番号40;例えば、配列番号41に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)の8アミノ酸ブリッジをさらに含む。
【0065】
特定の実施形態において、mem-IL-10の膜貫通-細胞内ストレッチは、HLA-A、HLA-B又はHLA-C分子、好ましくは、HLA-A2(配列番号42に示され;例えば、配列番号43に示されるヌクレオチド配列によってコードされる);ヒトCD28(配列番号44に示され;例えば、配列番号45に示されるヌクレオチド配列によってコードされる);又はヒトIL-10Rβ鎖(配列番号46に示され;例えば、配列番号47に記載されているヌクレオチド配列によってコードされる)から選択されるヒトMHCクラスI分子の重鎖に由来する。
【0066】
特定の実施形態において、完全なmem-IL-10のアミノ酸配列は、例えば配列番号55に示されるヌクレオチド配列によってコードされ、配列番号54に示されるように、短い第2のフレキシブルリンカー及び連結ペプチドを介してHLA-A2の膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0067】
特定の実施形態において、完全なmem-IL-10のアミノ酸配列は、例えば配列番号57に示されるヌクレオチド配列によってコードされ、配列番号56に示されるように、長い第2のフレキシブルリンカー及び連結ペプチドを介してHLA-A2の膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0068】
特定の実施形態において、mem-IL-10は、第2のフレキシブルリンカーを介して(例えば、配列番号32に示されるように)IL-10Rβ細胞外ドメインに、そして任意選択でさらに、例えば、配列番号47に示されるヌクレオチド配列によってコードされる(例えば、配列番号46に示されるように)IL-10Rβ膜貫通及び細胞質ゾルドメインに融合される。
【0069】
特定の実施形態において、mem-IL-10は、(配列番号46に示され;例えば、配列番号47に示されるヌクレオチド配列によってコードされるように)短リンカーを介して本質的に完全なIL-10Rβ鎖のN末端に融合される。
【0070】
特定の実施形態では、ホモ二量体IL-10は、第1のIL-10単量体のC末端が第2のIL-10単量体のN末端に、第1のフレキシブルリンカーを介して連結され;前記ホモ二量体IL-10が、フレキシブルヒンジを介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結されるように一本鎖構成で連結された第1及び第2のIL-10単量体を含み、前記フレキシブルヒンジは、CD8αのヒンジ領域、IgGの重鎖のヒンジ領域、IgDの重鎖のヒンジ領域;;IL-10Rβ鎖の細胞外ストレッチ;及び1つのGly4Ser(Gly3Ser)2配列[配列番号36]及び配列SSQPTIPI[配列番号40]の追加の8アミノ酸ブリッジからなる21アミノ酸スペーサーなどの、最大28アミノ酸のアミノ酸スペーサーを含む第2のフレキシブルリンカーから選択されるポリペプチドを含み;前記ホモ二量体IL-10の前記膜貫通-細胞内ストレッチは、HLA-A、HLA-B又はHLA-C分子、好ましくはHLA-A2;又はIL-10Rβ鎖から選択されるヒトMHCクラスI分子の重鎖に由来する。
【0071】
【表3-1】
【0072】
【表3-2】
【0073】
特定の実施形態では、第1のフレキシブルリンカーはアミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列番号5]を有する
特定の実施形態では、ホモ二量体IL-10は、本質的に完全なIL-10Rβ鎖のN末端に連結されている。
【0074】
aCAR及びmem-IL-10構築物の非限定的な例は、実施例のセクションに開示されている。これらの構築物のドメインのアミノ酸配列の配列番号(SIN)及びそれらをコードする核酸配列を表3に開示する。
【0075】
本発明の核酸分子によってコードされる本発明のaCAR又はmem-IL-10を構成するポリペプチドは、本明細書で定義される特定のアミノ酸配列に限定されず、これらのオリゴペプチドの変異体又は相同体であり得るか、又は上記に開示されたものと実質的に同一であるアミノ酸配列を有し得る。本明細書で使用される「実質的に同一の」アミノ酸配列は、1つ以上の保存的又は非保存的アミノ酸置換、欠失、又は挿入により参照配列と異なるが、特にそのような置換が分子の活性部位ではない部位に生じ、ポリペプチドが本質的にその機能的特性を保持している場合の配列を指す。保存的アミノ酸置換は、例えば、あるアミノ酸を同じクラスの別のものに置換すること、例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に、極性アミノ酸を別の極性アミノ酸に、塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸に、酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸に置換することである。ペプチドから1つ以上のアミノ酸を欠失させて、その生物学的活性を大幅に変えることなくそのフラグメントを得ることができる。
【0076】
特定の実施形態において、完全な膜結合IL-10のアミノ酸配列、又は上記に開示された膜結合IL-10の様々なサブ領域のそれぞれ、すなわち、第1及び第2のIL-10の単量体が第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体、フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチは、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号5、9、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、54、56及び58と、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一である。
【0077】
特定の実施形態において、完全な膜結合IL-10のアミノ酸配列、又は上記に開示された膜結合IL-10の様々なサブ領域のそれぞれ、すなわち、第1及び第2のIL-10の単量体が第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体;フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに構築物全体は、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号5、9、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、54、56及び58と、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、又は99%同一である。
【0078】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、完全な膜結合IL-10又は上記に開示された膜結合IL-10の様々なサブ領域のそれぞれをコードするポリヌクレオチド配列、すなわち、第1及び第2のIL-10単量体が第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体;フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに構築物全体であって、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号6、10、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、55、57及び59と、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一であるものを含む。
【0079】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、完全な膜結合IL-10又は上記に開示された膜結合IL-10の様々なサブ領域のそれぞれをコードするポリヌクレオチド配列、すなわち、第1及び第2のIL-10単量体が第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体;フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに構築物全体であって、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号6、10、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、55、57及び59と、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、又は99%同一であるものを含む。
【0080】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、完全な膜結合IL-10又は上記に開示された膜結合IL-10の様々なサブ領域のそれぞれをコードするポリヌクレオチド配列、すなわち、第1及び第2のIL-10単量体が第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体;フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに構築物全体であって、配列番号6、10、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、55、57及び59のいずれかに示されるものを含む。
【0081】
特定の実施形態において、完全なCARのアミノ酸配列又はその様々なサブ領域又はそれらの組み合わせのそれぞれ、すなわち、V及びVドメインが第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されている、抗PGNscFv(3C11又は3L6に由来する)のV及びVドメイン;フレキシブルリンカー自体;ヒトTLR2結合ドメイン又は完全なヒトTLR2分子、CD8αヒンジ、IgDヒンジ、CD28膜貫通ドメイン、例えば、TIR、CD28、FcRγ又はCD3ζの少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメインであって、TIRがTLR2に由来するか、又は不活性化されている細胞内ドメインは、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号3、5、7、9、11、13、16、18、20、22、24、26、28、30、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、60、62、64及び66と、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一である。
【0082】
特定の実施形態において、完全なCARのアミノ酸配列又はその様々なサブ領域又はそれらの組み合わせのそれぞれ、すなわち、VL及びVHドメインが第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されている、抗PGNscFv(3C11又は3L6に由来する)のVL及びVHドメイン;フレキシブルリンカー自体;ヒトTLR2結合ドメイン又は完全なヒトTLR2分子、CD8αヒンジ、IgDヒンジ、CD28膜貫通ドメイン、例えば、TIR、-CD28、-FcRγ又はCD3ζの少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメインであって、TIRがTLR2に由来するか、又は不活性化されている細胞内ドメイン、又はCD28-FcRγのシグナル伝達要素は、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号3、5、7、9、11、13、16、18、20、22、24、26、28、30、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、60、62、64及び66と、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、又は99%同一である。
【0083】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、完全なCARのアミノ酸配列又はその様々なサブ領域又はそれらの組み合わせのそれぞれ、すなわち、VL及びVHドメインが第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されている、抗PGNscFv(3C11又は3L6に由来する)のVL及びVHドメイン;フレキシブルリンカー自体;ヒトTLR2結合ドメイン又は完全なヒトTLR2分子、CD8αヒンジ、IgDヒンジ、CD28膜貫通ドメイン、例えば、TIR、-CD28、-FcRγ又はCD3ζの少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含み、TIRはTLR2に由来するか、又は不活性化されているか、又はCD28-FcRγのシグナル伝達要素は、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、61、63、65及び67と、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一である。
【0084】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、完全なCARのアミノ酸配列又はその様々なサブ領域又はそれらの組み合わせのそれぞれ、すなわち、VL及びVHドメインが第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されている、抗PGNscFv(3C11又は3L6に由来する)のVL及びVHドメイン;フレキシブルリンカー自体;ヒトTLR2結合ドメイン又は完全なヒトTLR2分子、CD8αヒンジ、IgDヒンジ、CD28膜貫通ドメイン、例えば、TIR、-CD28、-FcRγ又はCD3ζの少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含み、TIRはTLR2に由来するか、又は不活性化されているか、又はCD28-FcRγのシグナル伝達要素は、表3における配列番号の1つに示される関連配列、例えば配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、61、63、65及び67と、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、又は99%同一である。
【0085】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、完全なCARのアミノ酸配列又はその様々なサブ領域又はそれらの組み合わせのそれぞれ、すなわち、VL及びVHドメインが第1のフレキシブルリンカーを介して一本鎖構成で連結されている、抗PGNscFv(3C11又は3L6に由来する)のVL及びVHドメイン;フレキシブルリンカー自体;ヒトTLR2結合ドメイン又は完全なヒトTLR2分子、CD8αヒンジ、IgDヒンジ、CD28膜貫通ドメイン、例えば、TIR、-CD28、-FcRγ又はCD3ζの少なくとも1つのシグナル伝達要素を含む細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含み、TIRはTLR2に由来するか、又は不活性化されているか、又はCD28-FcRγのシグナル伝達要素は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、61、63、65、67の1つに示される。
【0086】
追加の態様では、本発明は、上記の実施形態のいずれか1つによるaCARをコードするヌクレオチド配列を含むが、ホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を欠く核酸分子を含む組成物を提供する。
【0087】
別の態様では、組成物は、上記の実施形態のいずれか1つによるaCARをコードするヌクレオチド配列と、膜貫通-細胞内ストレッチに、任意選択で上記の実施形態のいずれか1つによるフレキシブルヒンジを介して連結されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列とを含む核酸分子を含む。
【0088】
さらなる態様において、本発明は、上記の実施形態のいずれか1つによるaCARをコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子と、膜貫通-細胞内ストレッチに、任意選択で上記の実施形態のいずれか1つによるフレキシブルヒンジを介して連結されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む第2の物理的に別個の核酸分子とを含む組成物を提供する。
【0089】
本発明の核酸分子は、この分野で周知の方法を使用してT細胞に送達される。例えば、MatuskovaとDurinikova(24)は、導入遺伝子を細胞に送達するための2つのシステム(ウイルス性及び非ウイルス性)があることを教示している。非ウイルス性のアプローチは、ポリマーナノ粒子、脂質、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション/ヌクレオフェクション、又はDNAコーティングされた微粒子の微粒子銃による送達によって表される。
【0090】
DNAが宿主細胞のクロマチンに組み込まれているか否かに応じて、本発明に従って使用することができるベクターには、2つの主要なタイプがある。ガンマレトロウイルス又はレンチウイルスに由来するものなどのレトロウイルスベクターは、統合されたプロウイルスとして核内に存続し、細胞分裂とともに複製する。他のタイプのベクター(例えば、ヘルペスウイルス又はアデノウイルスに由来するもの)は、エピソームの形で細胞内に残る。
【0091】
したがって、さらに追加の態様では、本発明は、上記の核酸分子のいずれか1つを含むウイルスベクターなどのベクターを提供する。
ベクターの例には、限定するものではないが、レンチウイルスベクター(例えば、自己不活化(SIN)レンチウイルスベクター)、レトロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ポックスウイルス、アルファウイルス、及びヘルペスウイルスなどのウイルスベクター、ハイブリッドベクター又はプラスミドトランスポゾン(例えば、眠り姫トランスポゾンシステム)又はインテグラーゼベースのベクターシステムが挙げられる。本発明の代替の実施形態に関連して使用され得る他のベクターは、当業者には明らかであろう。
【0092】
レトロウイルス科又はレトロウイルスファミリーのウイルスは、マウス幹細胞ウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ルース肉腫ウイルス、及びスプマウイルスなどのガンマレトロウイルス及びレンチウイルス属を含み、宿主ゲノムに永久に統合することにより長期的に安定した遺伝子発現を可能にするという独自の能力を有する。実際、(25)に記載されている固形腫瘍のCAR-T細胞を評価する52件の臨床試験のうち、24件はレトロウイルスベクターを使用し、9件はレンチウイルスベクターを使用している。また、B細胞悪性腫瘍の治療のためにFDAが承認した2つのCAR製品は、Kymriah(商標)(レンチウイルスベクター)及びYescarta(商標)(ガンマレトロウイルスベクター)である。したがって、本発明のウイルスベクターの好ましい候補は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター及びガンマレトロウイルスベクターであり得る。例えば、レトロウイルスは、モロニーネズミ白血病ウイルス又はネズミ幹細胞ウイルス配列(ガンマレトロウイルスベクター)に由来し得る。
【0093】
レトロウイルスベクターは、ウイルス遺伝子と導入遺伝子が複数のプラスミドにわたって分離されている「スプリットベクターシステム」として提供されることが多い。最も一般的に使用されるウイルスベクターシステムは、個別のエンベローププラスミドとパッケージングプラスミド、及びトランスファープラスミドで構成されている。この概念により、これらのベクターの安全な取り扱いと発現が保証される。したがって、本明細書で使用される「ウイルスベクター」という用語は、単一のベクターならびに2つ以上のベクターを指す。
【0094】
特定の実施形態において、核酸分子は、本発明のaCARをコードする単一のポリペプチドコーディングヌクレオチド配列、又は2つのポリペプチドコーディングヌクレオチド配列であって、一方が本発明のaCARをコードし、2つ目が上記で定義されたようなmem-IL-10をコードするものを含む。すなわち、ウイルスベクターの核酸分子は、追加の異なるタンパク質をコードしないが、プロモーターやターミネーターなどの追加の制御要素を含む場合がある。
【0095】
特定の実施形態において、ヌクレオチド配列それ自体又はベクターの核酸分子は、aCARをコードするヌクレオチド配列とホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列との間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。
【0096】
特定の実施形態において、ヌクレオチド配列それ自体又はベクターの核酸分子は、aCARをコードするヌクレオチド配列とホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列との間にウイルス自己切断2Aペプチドを含む。特に、ウイルスの自己切断2Aペプチドは、Thosea asignaウイルス(TaV)のT2A、口蹄疫ウイルス(FMDV)のF2A、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)のE2A、及び豚テシオウイルス-1(PTV1)のP2Aからなる群から選択され得る。
【0097】
別の態様では、本発明は、ウイルスベクターなどの少なくとも1つのベクターを含む組成物を提供し、ここで、組成物は、上記で定義された1つのベクターを含むか;又は、前記組成物は、少なくとも2つのベクターを含み、ベクターの1つは、上記で定義されたaCARをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、別のベクターは、上記で定義されるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。
【0098】
選択したTreg細胞の種類は、臨床実施を成功させるために重要である。Tr1細胞はCD4(+)FoxP3(+/-)Tregのサブセットであり、IL-10の存在下で樹状細胞上の抗原に慢性的に曝露されると、末梢においてTCR特異的及び抗原特異的に誘導される(26、27)。これらの細胞は、非増殖性(アネルギー)状態、IL-10及びTGF-βの高産生、しかしIL-2は最小限の産生、IL-4もIL-17も産生せず、細胞-細胞間接触に依存しない方式でTeffを抑制する能力があることによって特徴づけられる。最近の研究では、レンチウイルス形質導入によって達成された、ヒトCD4T細胞におけるIL-10の強制発現が、これらの細胞にオートクリン様式で安定したTr1表現型を与えるのに十分であることが示された(1)。この研究はまた、これらの細胞をIL-2に曝露すると、これらのIL-10に誘導されたTr1細胞のアネルギー状態が一時的に逆転する可能性があることも示した。重要なことに、2つの細胞表面マーカーであるCD49bとLAG-3が同定されており、これらはヒト(及びマウス)Tr1細胞上で安定的かつ選択的に共発現し、細胞集団の純度に関する分離とフローサイトメトリー分析を可能にする(28)。
【0099】
本発明では、IL-10のメンブレンアンカー誘導体(mem-IL-10)をコードする遺伝子を使用する。このメンブレンIL-10構築物は、抗原刺激がない場合のIL-10分泌を回避しながら、Tr1表現型の永続的な保存を保証するIL-10駆動のセーフロックとして機能する(国際公開第2019/180724号)。安全面では、IL-10はT細胞の増殖をシグナル伝達しないため、IL-10シグナル伝達経路の自律的活性化は、制御されていない細胞増殖のリスクとは関連しない。
【0100】
したがって、さらなる態様において、本発明は、上記で定義された核酸分子のいずれか1つ、又はレンチウイルスベクター及び任意選択で上記のように細胞のゲノムに組み込まれたレトロウイルスベクターなどのベクターを含む哺乳類制御性T細胞(Treg)を提供する。
【0101】
特定の実施形態において、哺乳類Tregは、上記の実施形態のいずれか1つによるaCARをその表面上に発現し、任意選択で、哺乳類Tregは、膜貫通-細胞内ストレッチに、任意選択で上記の実施形態のいずれか1つによるフレキシブルヒンジを介して連結されたホモ二量体IL-10を、その表面上にさらに発現する。
【0102】
特定の実施形態では、哺乳類細胞上に発現されるaCARの細胞外ドメインは、PGNに特異的に結合するscFv又はTLR2結合ドメインなどのTLR結合ドメインである。
【0103】
本発明はさらに、様々なTLR結合ドメインを有する2つ以上のaCARをコードするヌクレオチド配列及びベクター、上記2つ以上のaCARを含む組成物、及び上記2つ以上のaCARを発現するTregを企図する。例えば、TLR2結合ドメインを有するaCAR及びTLR1又はTLR6結合ドメインを有する別のaCARの発現は、TLR1又はTLR6-aCARとのTLR2-aCARのヘテロ二量体の形成を促進し、それによってリガンドレパートリーを拡張する。これらのaCARは、TIR-ゼータ細胞内ドメインを有することが好ましい。
【0104】
特に、本発明のaCARを発現する哺乳類Tregは、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されたホモ二量体IL-10も表面上に発現する。
【0105】
特定の実施形態において、哺乳類Tregは、細胞表面マーカーCD49b及びLAG-3を提示する安定なTr1表現型を有する。特に、本明細書で定義される膜結合ホモ二量体IL-10を発現するTregは、細胞表面マーカーCD49b及びLAG-3を提示する安定したTr1表現型を有する。本発明のCARのみを発現し、本明細書で定義される膜結合ホモ二量体IL-10を発現しないTregは、本発明の目的には有用であるが安定性が低く変更される可能性のある「従来のTreg」の表現型を有する傾向がある。
【0106】
特定の実施形態において、哺乳類TregはヒトTregである。
特定の実施形態において、哺乳類Tregは、同種異系又は自家Tregである。
さらに追加の態様では、本発明は、同種異系又は自家Tregを調製する方法を提供し、この方法は、CD4T細胞を、上記の実施形態のいずれか1つによるaCARをコードするヌクレオチド配列を単独で、又は、上記の実施形態のいずれか1つによるホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列と組み合わせて含む核酸分子、それを含むベクター、又は上記の実施形態のいずれか1つによる組成物と接触させることにより、mem-IL-10を伴うか否かにかかわらず、表面にaCARを発現する同種異系又は自家Tregを調製することを含む。上記のように、本明細書で定義される膜結合ホモ二量体IL-10を発現する本発明の方法によって調製されたTregは、細胞表面マーカーCD49b及びLAG-3を提示する安定なTr1表現型を有する。本発明のCARのみを発現し、本明細書で定義される膜結合ホモ二量体IL-10を発現しないTregは、本発明の目的には有用であるが安定性が低く変更される可能性のある「従来のTreg」の表現型を有する傾向がある。
【0107】
CD4T細胞などのT細胞を分離及び調製する方法は、当技術分野でよく知られており(1)、この分野の大手企業からの市販のキット及びプロトコルに依存することが多い:
1.ThermoFisher Scientific:末梢血単核細胞(PBMC)からの手付かずのヒトCD4+T細胞の分離:
https://www.thermofisher.com/il/en/home/references/protocols/proteins-expression-isolation-and-analysis/cell-separation-methods/human-cell-separation-protocols/isolation-of-untouched-human-cd4-t-cells.html;
2.Miltenyi Biotec:CD4+T細胞分離キット、ヒト;
https://www.miltenyibiotec.com/CA-en/products/macs-cell-separation/cell-separation-reagents/microbeads-and-isolation-kits/t-cells/cd4-t-cell-isolation-kit-human.html
3.STEMCELL Technologies:EasySep(商標)ヒトCD4+T細胞分離キット;
https://www.stemcell.com/easysep-human-cd4-t-cell-isolation-kit.html
4.BD Biosciences:ヒトナイーブCD4T細胞濃縮セット
https://www.bdbiosciences.com/eu/reagents/research/magnetic-cell-separation/human-cell-separation-reagents/human-naive-cd4-t-cell-enrichment-set---dm/p/558521
免疫細胞は、例えば、本明細書に記載の適切な核酸分子で、例えば、RNAトランスフェクション、又は真核細胞又は上記のウイルスベクターなどのベクターでの複製及び/又は転写に適したプラスミドへの組み込みによってトランスフェクションされ得る。特定の実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターから選択される。
【0108】
レトロウイルスベクターと、カプシドタンパク質がヒト細胞の感染に機能する適切なパッケージングラインとの組み合わせも使用できる。PA12(29)、PA317(30)、及びCRIP(31)などの、いくつかの両種性ウイルス産生細胞株が知られている。あるいは、VSVG、RD114、又はGALVエンベロープでシュードタイピングされた粒子などの非両種性粒子を使用することもできる。細胞は、例えば、Bregniらの方法(32)、又はウイルス上清のみ又は濃縮ベクターストックとの培養、例えば、Xuら(33)及びHughesら(34)の方法により、プロデューサー細胞との直接共培養によってさらに形質導入することができる。
【0109】
組換えレトロウイルス及びレンチウイルスベクターを作成し、それらをT細胞の形質導入に使用する方法は、通常、Invitrogen、Sigma、Clontech、Cell Biolabs、SBI、Genecopoeia、及びその他の多くの企業が提供するパッケージング細胞、プラスミド、トランスフェクション試薬などを含む市販キットを使用して行われる。したがって、これらの方法は、市販のキットに付属のガイドラインに従って行われる。
【0110】
要するに、Addgeneのウェブサイトのγ-レトロウイルスガイドに教示される非限定的な例によれば、以下の要素が必要である:(a)目的の導入遺伝子をコードするγ-レトロウイルストランスファープラスミド:導入遺伝子配列は長鎖末端反復(LTR)配列によってフランキングされ、これは、トランスファープラスミド配列の宿主ゲノムへの組み込みを容易にする。典型的には、ウイルス形質導入時に宿主ゲノムに組み込まれるのは、LTRの間の、かつLTRを含む配列である;(b)パッケージング遺伝子(ウイルスGag-Pol):Gagは構造前駆体タンパク質であり、Polはポリメラーゼである;及び(c)エンベロープ遺伝子(感染性を変えるために偽型化されてもよい)。
【0111】
非限定的な例として、上記の3つの要素(エンベロープ、パッケージング、及びトランスファー)は、293Tパッケージング細胞株にコトランスフェクションされる3種類のプラスミドによって提供される。このシステムは、トロピズムを変更するために様々なエンベロープを使用して、偽型γ-レトロウイルスに最大のフレキシビリティを提供する。簡潔に述べると、様々なエンベローププラスミドは様々なトロピズムを持つウイルスの生成をもたらすことができる。組換えレトロウイルス株の調製方法及びヒトCD4T細胞のレトロウイルス形質導入のための方法の詳細な非限定的な例は、以下の実施例の欄に述べる。
【0112】
別の態様では、本発明は、対象の疾患、障害又は状態を治療又は予防する方法であって、前記対象に、aCARを単独で、又は上記の実施形態のいずれか1つのホモ二量体IL-10と組み合わせて表面に発現する哺乳類Tregを投与することを含む方法を提供する。ここで、前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに臓器及び骨髄移植などの免疫系の過剰な活性として現れる。
【0113】
同様の態様において、本発明は、対象の疾患、障害又は状態の治療又は予防に使用するための哺乳類Tregであって、aCARを単独で、又は上記の実施形態のいずれか1つのホモ二量体IL-10と組み合わせて表面に発現する哺乳類Tregを提供する。ここで、前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに臓器及び骨髄移植などの免疫系の過剰な活性として現れる。
【0114】
同様の態様において、本発明は、対象の疾患、障害又は状態の治療又は予防用の医薬の製造における、aCARを単独で、又は上記の実施形態のいずれか1つのホモ二量体IL-10と組み合わせて表面に発現する哺乳類Tregの使用を提供する。ここで、前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに臓器及び骨髄移植などの免疫系の過剰な活性として現れる。
【0115】
自己免疫疾患として定義される特定の疾患は、当技術分野でよく知られている。例えば、自己免疫疾患の百科事典(The Encyclopedia of Autoimmune Diseases)、Dana K.Cassell、Noel R.Rose、Infobase Publishing、2014年5月14日に開示されており、参照により本明細書に完全に開示されるかのように組み込まれる。
【0116】
以下は、腸の疾患を引き起こす、又はそれに関連する自己免疫疾患及び炎症性疾患の非限定的な例である。
全身性自己免疫疾患には、コラーゲン血管疾患、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、及びチャーグ-ストラウス症候群が含まれる。これらの障害は、胃腸管、肝胆道系、膵臓のあらゆる部分に関係し得る。これらは、根底にある疾患過程の病態生理学的特徴によって影響を受ける様々な胃腸症状を引き起こし得る。これらの自己免疫疾患に由来する胃腸症状には様々な種類があり、限定するものではないが、口腔潰瘍、嚥下障害、胃食道逆流症、腹痛、便秘、下痢、便失禁、偽閉塞、穿孔、胃腸出血などが挙げられる。
【0117】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、病因が不明な自己免疫疾患であり、組織学的検査では、組織や細胞に損傷を与える自己抗体や免疫複合体の沈着により特徴づけられる。症状は通常全身性であり、疲労、倦怠感、食欲不振、発熱、体重減少が含まれる。この疾患は主に20~50歳の女性(女性:男性、10:1)に発症する。SLEの胃腸症状は一般的である。消化管症状はSLEの患者によく見られ、原発性胃腸障害、治療の合併症、又はSLE自体が原因である可能性がある。消化管のどの部分もSLEに関与し得る。
【0118】
関節リウマチは、病因が不明な自己免疫疾患であり、人口の1%に影響を及ぼし、20~50歳の女性では3:1の発症傾向がある。古典的な臨床症状は、持続性の炎症性滑膜炎による慢性対称性多発性関節炎である。胃腸に症状が現れることが一般的である。
【0119】
シェーグレン症候群は、広範な臓器特異的及び全身性の症状によって裏付けられる一般的な自己免疫疾患である。シェーグレン症候群の患者では一貫してB細胞の活性化が見られ、B細胞とT細胞は標的臓器に侵入してそれを破壊する。シェーグレン症候群は通常、40歳から50歳の女性(女性:男性、9:1)に発症する。シェーグレン症候群は成人人口の約2%に発症するが、半分以上では診断されないままである。その結果、シェーグレン症候群の発症からその診断までの期間は、ある推定によれば、平均して10年もの長さになることがよくある。シェーグレン症候群の患者は、消化管全体に障害を受ける可能性がある。
【0120】
ベーチェット病は、若い患者に発生する原因不明の広範な血管炎であるが、すべての年齢の人々がこの病気を発症する可能性がある。ベーチェット病は、全身の血管、特に静脈の損傷に起因する自己免疫疾患である。ベーチェット病の正確な原因は不明である。この病気のほとんどの症状は血管炎によって引き起こされる。これは、初めはブドウ膜炎と口腔及び陰部潰瘍との関連として定義された。しかし、現在、臨床スペクトルには、血管、神経、関節、腎臓、胃腸の症状も含まれている。胃腸ベーチェット病は、広範囲の病変部位及び病変の種類を示す。
【0121】
進行性全身性硬化症(強皮症)は、病因が不明な結合組織病であり、30~50歳の女性が男性の4倍の頻度で発症する。このタイプの硬化症は、内臓器官の線維化につながるコラーゲンの過剰産生を特徴としている。コラーゲンの過剰産生は、免疫系が染色体の動原体を攻撃し始める自己免疫機能障害に起因すると考えられている。これは近くの遺伝子の遺伝的奇形につながる。胃腸管のどの部分も強皮症に関与し得る(Cojocaru M,Cojocaru IM,Silosi I,Vrabie CD.Gastrointestinal manifestations in systemic autoimmune diseases. Maedica (Buchar).2011;6(1):45-51.)。
【0122】
炎症性腸疾患(IBD)は、結腸と小腸の炎症状態のグループである。クローン病と潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の主な種類である。クローン病は小腸と大腸、ならびに口、食道、胃、肛門に影響を及ぼし、潰瘍性大腸炎は主に結腸と直腸に影響を及ぼす。IBDは環境的要因と遺伝的要因の相互作用の結果として発生する複雑な疾患であり、腸の免疫応答と炎症につながる。
【0123】
セリアック病又はシリアック病は、主に小腸に影響を与える長期的な免疫障害である。古典的な症状には、慢性下痢、腹部膨満、吸収不良、食欲不振などの胃腸の問題や、小児の間では正常に成長できないことが含まれる。
【0124】
特定の実施形態において、自己免疫疾患は、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;セリアック病;1型糖尿病;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群;ベーチェット病;強皮症;コラーゲン血管疾患;全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症;チャーグ-ストラウス症候群;乾癬;乾癬性関節炎;多発性硬化症;アディソン病;バセドウ病;橋本甲状腺炎;重症筋無力症;血管炎;悪性貧血;及びアテローム性動脈硬化症から選択される。
【0125】
特定の実施形態において、自己免疫疾患は、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;1型糖尿病;及びセリアック病から選択される。
特定の実施形態において、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患である。
【0126】
特定の実施形態において、対象はヒトであり、前記哺乳類Tregはヒトのものである。
いくつかの実施形態において、Tregは、同種異系Tregである。
【0127】
上記で定義された疾患を治療する方法で使用されるTregは、リプログラミングされたTr1細胞に腸管ホーミング能力を備えさせ、炎症性環境においてIL-6の存在下でTregの安定性及び機能を維持するために、対象に投与する前にレチノイン酸と接触させることができる。
【0128】
定義:
本明細書で使用される「核酸分子」という用語は、DNA又はRNA分子を指す。
タンパク質に関して本明細書で使用される「細胞外ドメイン」という用語は、タンパク質の領域を意味し、これは、細胞内で正常に発現される場合、細胞の外側に位置する。
【0129】
抗原又はエピトープに特異的に結合する、scFvなどの細胞外結合ドメインの文脈で本明細書で使用される「特異的結合」、「特異的に結合する」又は「特異的結合が可能」という用語は、異なる無関係な抗原又はエピトープへのscFvの相対的結合と比較した、意図されたリガンド又は抗原へのscFvの相対的結合を指す。これはアビディティ(T細胞上のCARコピーの数、標的細胞の表面上の抗原分子の数、及び使用される特定のCARの親和性)に依存するため、機能的な定義は、特定のscFvが目的の特異的抗原又はエピトープに対してELISAで有意なシグナルを提供するか、又は、scFvを提示するCARでトランスフェクトされた細胞がFACSアッセイにおいて目的の抗原又はエピトープで明確に標識されるが、異なる無関係な抗原又はエピトープを使用した同じアッセイでは検出可能なシグナルは得られないことである。
【0130】
選択的結合には、例えば、結合親和性、結合特異性、及び結合アビディティなどの結合特性が含まれる。結合親和性とは、結合ドメインがそのエピトープ結合部位に存在する時間の長さを指し、結合ドメインがそのエピトープに結合する強度と見なすことができる。結合親和性は、結合ドメインの平衡解離定数(KD)として説明できる。これは、平衡状態でのKd/Ka比として定義される。ここで、Kaは結合ドメインの結合速度定数であり、kdは結合ドメインの解離速度定数である。結合親和性は、会合と解離の両方によって決定され、高い会合も低い解離も、単独では高い親和性を確認することはできない。会合速度定数(Ka)又はオンレート定数(Kon)により、単位時間あたりの結合イベントの数、又は抗体と抗原がその抗体-抗原複合体に可逆的に会合する傾向を測定できる。会合速度定数はM-1 s-1で表され、次の記号で表される:[Ab]×[Ag]×Kon。会合速度定数が大きいほど、抗体がその抗原に結合する速度が速くなるか、抗体と抗原の間の結合親和性が高くなる。解離速度定数(Kd)又はオフレート定数(Koff)により、単位時間あたりの解離イベントの数 結合ドメイン-抗原複合体がその構成分子、すなわち結合ドメインと抗原に可逆的に分離(解離)する傾向を測定できる。解離速度定数はs-1で表され、次の記号で表される:[Ab+Ag]×Koff。解離速度定数が小さいほど、抗体はその抗原に強く結合するか、抗体と抗原の間の結合親和性が高くなる。平衡解離定数(KD)により、平衡状態で結合ドメイン-抗原複合体が解離する速度と等しい新しい結合ドメイン-抗原複合体が形成される速度を測定できる。平衡解離定数はMで表され、抗体の場合はKoff/Kon=[Ab]×[Ag]/[Ab+Ag]として定義される。ここで、[Ab]は抗体のモル濃度、[Ag]は抗原のモル濃度、[Ab+Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、系が平衡状態にあるとき、すべての濃度がそのような構成要素のものになる。平衡解離定数が小さいほど、抗体はその抗原に強く結合するか、抗体と抗原の間の結合親和性が高くなる。
【0131】
本明細書に開示されるような結合ドメイン又はそれを含むaCARの結合特異性はまた、そのような結合ドメイン/aCARが、無関係のエピトープと比較してそのエピトープを識別できる比率として特徴付けられ得る。例えば、本明細書に開示される結合ドメイン/aCARは、無関係なエピトープと比較して、そのエピトープに対し、例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも64:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも35:1、又は少なくとも40:1の結合特異性比を有し得る。
【0132】
抗原又はエピトープに特異的に結合するものとして本明細書に記載されるaCARの結合ドメインは、抗原又はエピトープに特異的に結合することができることを意味し、必ずしもいつでもそれに結合するわけではないことは明らかである。
【0133】
ScFvはモノクローナル抗体に由来し、モノクローナル抗体は、特定の抗原に結合できる抗体の1つの種のみを含む抗体分子の実質的に均質な集団である。つまり、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在する可能性のある自然発生の変異を除いて同一である。定義上、モノクローナル抗体は単一のエピトープ又は抗原部位に結合するため、その抗原構造によって定義される。ScFvは、CARの結合ドメインとして一般的に使用される。
【0134】
モノクローナル抗体をコードする既知の配列を使用してscFvをクローニング及び生成する方法、ならびにscFv配列をCARのフレームワークに組み込む方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、文献(21、35、44-50、36-43)に記載されているように、特定の抗原に特異的なscFvをコードする配列を、ストーク-膜貫通-細胞内ドメインの上流(すなわち、N末端)にクローニングすることができる。
【0135】
本願で使用する「治療する」という用語は、所望の生理学的効果を得る手段を指す。効果は、疾患及び/又は疾患に起因する症状を部分的に又は完全に治癒するという観点で治療的であり得る。この用語は、疾患を抑制すること、すなわちその発症を阻止すること、又は疾患を改善すること、すなわち疾患の退行を引き起こすことを指す。
【0136】
本願で使用する場合、「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳類」という用語は、診断、予後診断、又は治療が望まれる任意の対象、特に哺乳類の対象を指し、例えばヒトである。
【0137】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、1つ又は複数の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用して従来の方法で製剤化することができる。担体は、組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0138】
担体、投与方法、剤形などの以下の例示は既知の可能性として列挙されており、この中から本発明で使用するための担体、投与方法、剤形などを選択することができる。しかしながら当業者は、まずは選択された任意の所与の製剤及び投与方法を試験して、それが所望の結果を達成するか判断すべきであることを理解するであろう。
【0139】
投与方法には、限定するものではないが、非経口、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経粘膜(例えば、経口、鼻腔内、口腔、膣、直腸、眼内)、くも膜下腔内、局所及び皮内経路が含まれる。投与は全身的又は局所的であり得る。
【0140】
「担体」という用語は、活性剤と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。医薬組成物中の担体は、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドン又はポビドン)、トラガカントガム、ゼラチン、デンプン、ラクトース又はラクトース一水和物などの結合剤;アルギン酸、トウモロコシ澱粉などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、又はラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤又は界面活性剤;及びコロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤を含み得る。
【0141】
組成物は、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、防腐剤を添加した単位剤形、例えばアンプル又は複数回投与容器で提供することができる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳濁液などの形態をとることができ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの配合剤を含むことができる。
【0142】
本明細書で使用される「末梢血単核細胞(PBMC)」という用語は、リンパ球、単球又はマクロファージなどの、丸い核を有する任意の血球を指す。血液からPBMCを単離する方法は、当業者には容易に明らかである。非限定的な例は、血液の層を分離する親水性多糖類であるフィコールを使用して血漿の層の下に単球及びリンパ球のバフィーコートを形成させて全血からこれらの細胞を抽出するか、又は、赤血球と白血球の少ない血漿をドナーに戻して白血球濃縮物を調製する白血球アフェレーシスによるものである。
【0143】
明確にするために、そして教示の範囲を制限することなく、特に明記しない限り、本明細書に記載の量、パーセンテージ又は比率、及び他の数値を表すすべての数は、すべての場合において「約」が付されたものとして解釈されるべきである。したがって、本明細書に記載されている数値パラメータは、所望の結果に応じて変化し得る近似値である。例えば、各数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈できる。
【0144】
本明細書で使用される「約」という用語は、示された値より上又は下の10%以内の値も含まれることを意味する。
実施例
実施例1.フレキシブルリンカーによって直列に連結され、かつ短いヒンジ領域を介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結された2つのIL-10単量体。
【0145】
ここで使用されている特定の構築体では、配列GSTSGSGKPGSGEGSTKGのフレキシブルリンカーによって2つのIL-10単量体が直列に連結されてホモ二量体を作成し、これをHLA-A2重鎖に由来する膜貫通-細胞内ストレッチに、GlySer(GlySer)及びHLA-A2の連結ペプチドの膜近位部分に由来する配列SSQPTIPIの追加の8アミノ酸のブリッジフレキシブルリンカーを含む21アミノ酸のスペーサーを有するフレキシブルヒンジ領域によって連結させた(図1)。次に、ヒト及びマウスCD4T細胞におけるmemIL-10及びIL-10Rの表面発現を確認した(図2)。
【0146】
CD49bインテグリンの上昇は(A)に見ることができ、IL-10受容体(IL-10R)の上方制御は組換えIL-10(rIL-10、(B))によって誘導されたものと同様であった。マウスmemIL-10は、トランスフェクションの48時間後に明確に発現され(D、左)、予想通り、memlL-10は、使用した抗マウスIL-10R mAbの結合をブロックした。これは、シス結合を示唆している(51)。
【0147】
実施例2.フレキシブルリンカーによって直列に連結され、かつ長いヒンジ領域又はIL-10Rβ鎖を介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結された2つのIL-10単量体。
【0148】
我々の元のmemIL-10構築体は、ヒト及びマウスの両方とも、(8アミノ酸長の剛性スペーサーに加えて)21アミノ酸のフレキシブルリンカーを含むヒンジを組み込んでいた(ここではSmemIL-10(Sは短いリンカー、下記参照)。
【0149】
memIL-10を最適化するために、この膜サイトカインの2つの新しいバージョンを設計しクローニングした。最初にクローニングした1つ目では、IL-10Rとの最適な結合を促進するため、memIL-10に長いリンカーペプチド(30アミノ酸であり、長いことからLmemIL-10と呼ぶ)を提供した。(図3、左下)。別の誘導体を作成するために、IL-10Rα鎖にあるIL-10結合部位に直接アクセスできるように設計された新しい足場として、IL-10Rβ鎖のN末端に二量体IL-10を融合させ、これをmemIL-l0RB(図3、右下)と呼ぶ。実際、図4から、ヒトジャーカット細胞における3つの産物の表面発現が確認される。注目すべきことに、memIL-10RB融合タンパク質の表面発現のレベルはIL-10Rα鎖の利用可能性に依存すると予想される。3つの異なるmemIL-10構成の発現及び機能を評価するために、マウスCD4T細胞に3つの構築体をコードするmRNAをトランスフェクションし、表面発現(図5A)、表面IL-10Rの下方制御(図5B)及びSTAT3の自発的リン酸化(図5C)についてアッセイした。実際、ジャーカット細胞で得られた結果と一致して、短いリンカー及び長いリンカーを持つ構築体は、memILL-10Rβよりもはるかに高いレベルで発現され、優れた機能を発揮する。これは、表面IL-10Rの大幅な減少及びpSTAT3のより強い誘導から明白である。短いリンカー構築体(sLmemIL-10)は、長いリンカー構築体(lLmemIL-10)よりも、pSTAT3を誘導する能力が繰り返し実験(図示略)においても優れていたため、さらなる実験用に選択した。
【0150】
実施例3.レトロウイルス形質導入マウスCD4T細胞におけるmemIL-10の発現及び特徴解析。
レトロウイルス形質導入T細胞におけるmemIL-10の発現及び機能を試験するために、C57BL/6(B6)マウスから磁気ビーズで精製された脾臓CD4T細胞を最初に使用した。memIL-10形質導入細胞に対する陰性対照として、偽形質導入細胞(Mock)を使用した。これらの実験では、可溶性IL-10(sIL-10)を陽性対照として使用した。図6は、3つのTr1関連マーカーLAG-3、CD49b、及びPD-1の発現について、同じ培養で増殖させた形質導入細胞及び非形質導入細胞と偽形質導入細胞を、トランスフェクション後48時間及び6日にフローサイトメトリー分析した結果を示す。3つのマーカーの明確な上昇は、実際に2日目で既に観察され、6日目も持続し、予想された表現型を示している。形質導入されたT細胞がTCRを介した活性化によりIL-10を分泌する能力により、Tr1のような機能的特性の獲得が確認された(図7)。
【0151】
実施例4.memIL-10の長期発現と表現型の特徴
memIL-10の長期発現は、レトロウイルス形質導入によって達成される。対照の非Tr1CD4T細胞として、CD4T細胞にEGFP遺伝子をマーカーとして形質導入する。我々は最初に、いくつかのin vivo疾患モデルに関連するNOD及びC57BL/6(B6)マウスのCD4T細胞をTr1細胞に分化させるための効果的なプロトコル(マウスの場合は(52、53)、ヒトのCD4T細胞の場合は(1)に記載されている詳細なガイドラインに従って、照射されたAPC、TCR刺激、サイトカイン、その他の培養条件の必要性を調べる)を確立することを試みた。この目的のために、フローサイトメトリー分析を使用して、LAG-3及びCD49bの獲得をmemIL-10の発現と相関させる。追加の表現型分析(すべてEGFP+非Tr1細胞と比較)により、in vitroでの増殖速度、分化の状態(CD45RO+、CD45RA-、CD62L)、活性化マーカー(CD40L、CD40、CD25、FOXP3、CD161、及びCD137)及びIL-10に関連するマーカー(PD-1、ICOS-L、ICOS及びIL-10R)のレベルを決定する。memIL-10誘導Tr1細胞の機能を、それらがTCRを介した活性化に応答して分泌するIL-10、TGF-β、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5及びTNF-αなどのサイトカインのパターンを介して最初に評価する。アネルギー状態を評価するために、CFSE希釈アッセイを使用して、抗CD3及び抗CD28Abの存在下、及び可溶性IL-2及びIL-15の非存在下又は存在下での増殖能を分析する。
【0152】
実施例5.Tエフェクター細胞に対する形質導入細胞の阻害効果の評価。
形質導入細胞がその阻害効果を隣接するTeff細胞に対して発揮する能力を調べるために、1つのT細胞集団のみを選択的に活性化し、他のT細胞集団を活性化できないようにする共培養設定を設計する(明らかに、抗TCR/CD3 Abは共培養中のすべてのT細胞を活性化する)。この目的のため、キメラH-2K-CD3ζ(K-CD3ζ)及びH-2K-CD3ζ(K-CD3ζ)MHC-I重鎖をコードする、我々が作成した2つの遺伝子を利用する。我々は既に、両遺伝子が、TCRクロスリンクに匹敵する規模のAbを介したクロスリンク後にT細胞を選択的に活性化することを示している。次の一連の機能実験では、これらのツールを使用して、mRNAをトランスフェクションしたTr1細胞とTeff細胞を様々な比率で3~4日間混合し、CFSE希釈及び細胞内IFN-γ染色を使用して、(非活性化又はRFP+非Tr1細胞に対する)活性化Tr1細胞の、活性化Teffの増殖及びエフェクター機能の両方を抑制する能力を評価する。
【0153】
実施例6.IL-10形質導入細胞のin vivo持続性及びヒト疾患のマウスモデルにおける抑制機能の評価。
シンジェニック野生型マウスにおけるIL-10形質導入NOD又はB6 CD4T細胞のin vivo持続性及びその表現型の維持を評価するために、T1D実験系において我々が最近確立したプロトコル(54)を使用する。簡潔に述べると、10×10個の細胞を尾静脈に注射する。注射の1、7、及び14日後に脾臓及び末梢リンパ節を採取し、CD4+IL-10+LAG-3+CD49b+T細胞をフローサイトメトリーで識別する(注射していないマウスのバックグラウンド染色レベルと比較する)。
【0154】
次に、T1DやIBDなどのヒト疾患のマウスモデルを使用して、生体内の生理学的条件下でのmemIL-10形質導入T細胞の実際の抑制機能を試験する。
実施例7.レトロウイルス形質導入ヒトCD4T細胞におけるmemIL-10の発現及び特徴解析。
【0155】
ヒトCD4T細胞のレトロウイルス形質導入の表現型及び機能の結果を評価するために、イスラエルのマーゲン・ダビド公社の血液サービスセンターを通じて健康なドナーから得た血液試料からCD4T細胞を単離した。2つの独立したex-vivo実験の1回目が図8に示されている。この実験では、細胞を形質導入後18日間培養し、形質導入後1、5、及び18日目に、マーカーLAG-3、CD49b、PD-1、4-1BB、CD25及びIL-10Rαの表現型分析をフローサイトメトリーで行った。我々の結果から、予想されるTr1表現型に関連するこれらすべての細胞表面マーカーが、実験の全期間にわたって同じ培養皿で増殖させたmemIL-10陰性細胞と比較して、memIL-10発現細胞で有意に増加したことが確認される。
【0156】
2回目の実験は別の血液試料に対して行われ、LAG-3、CD49b、及びPD-1(図9)について行われたフローサイトメトリーは、1回目の実験で得られた結果と一致している。これらの2つの実験から、レトロウイルス形質導入を介したヒトCD4T細胞におけるmemIL-10の長期発現は、これらの細胞にTR-1のような表現型を与えると結論付けることができる。
【0157】
実施例8.炎症性腸疾患(IBD)治療用途
本発明は、炎症を起こした腸での免疫寛容を回復するために、IBD関連抗原にCAR-Tregをリダイレクトするための適切な抗原を同定する必要性に対する解決策を提供する。
【0158】
このアプローチは、次の概念に基づいている。
・Tregは、腸上皮を通過可能な共生微生物叢又は食物のいずれかに由来する一般的な腸抗原に対して遺伝的にリダイレクトされる。
【0159】
・最初の選択肢として、Tregのリターゲティングは、TLR2の細胞外部分を含むキメラ抗原受容体(CAR)を介して実行される。これは、一般的な細菌成分であるペプチドグリカンと追加の腸内微生物抗原に自然に結合する。あるいは、PGNに対する従来のscFvベースのCARが生成される。
【0160】
・選択したTregは1型制御性T細胞(Tr1)であり、これは、TCRを介した抗原との関与に続いて、主に大量のIL-10及びTGF-βの分泌を通じて、細胞間非依存的に炎症性T細胞を抑制できる。
【0161】
・ヒトCD4T細胞におけるIL-10の強制発現は、Tr1表現型の誘導と維持の両方に十分であるため、膜結合型IL-10の発現は、オートクリン方式でこの特性を利用するための新しいデバイスとして機能する。
【0162】
・最近同定された2つの表面マーカーであるCD49bとLAG-3は、Tr1細胞上で選択的かつ安定して発現され、精製及びその後のTr1表現型の保存についての分析を可能にする。
【0163】
・(任意に、適切な候補抗原の特定を条件とする:同じTr1細胞で共発現する食餌性抗原に特異的な抑制性CARは、CAR-Tregの抑制機能を一時的に遮断する独自の手段として機能する(例えば感染の場合))。
【0164】
・リダイレクトされたTr1細胞の腸管ホーミングは、注入前にオールトランスレチノイン酸とインキュベートすることで強化できる。
実施例9.免疫標的デバイス
この例では、TregをPGNにリダイレクトするためのTLR2ベースのCARの遺伝子工学について説明する。フラジェリン又は他のTLR-CARに対するTLR5ベースのCARは、同じガイドラインに従って構築される。2つのクローニング戦略を図10に示す。1つ目(図10A、左)は全長TLR2を利用する。この例ではCD3を含むT細胞シグナル伝達部分は、TLR2トルIL-1受容体ドメイン(TIR)のC末端に遺伝的に継ぎ足されている。PGNへの結合は、TLR2とCD3ζを介して、又はよく研究されたPro681His変異をヒトTLR2TIRに組み込んだ場合にのみ(20)CD3ζを介して(ここでは*の印をつける)、2つのシグナルを同時に送達すると予想される。2つ目の戦略では、TLR2細胞外ドメイン(エクトドメイン)を従来のヒンジ-CD3ζCARスキャフォールドに継ぎ足す(図10A、中央)。ヒンジ領域はヒトIgG又はIgD重鎖に由来する。図10A、右は、抗体単鎖Fv(scFv)フラグメントに基づく「古典的な」CARを示す。本発明の文脈において、この構成は、例えば、選択した抗PGN/フラジェリンmAbのscFv部分を使用した抗PGN又は抗フラジェリンCARの生成に利用することができる。
【0165】
我々の知る限り、TLRベースのCARはこれまでに説明されたことはない。それらは、TLR認識及びシグナル伝達とT細胞活性化シグナル伝達とのカップリング(図10A、左、*なしのように)又はTLR認識(ただしシグナル伝達なし)とT細胞活性化シグナル伝達とのカップリング(図10A、左、*あり及び図10A中央)のいずれかを可能にすることができる。これらのTLR-CARによるTLRを介した認識は、異なるTLRによる複数の天然リガンドの生理学的認識を再現することが期待される。
【0166】
実施例10.抗PGN aCARの構築と特性評価。
材料と方法
抗PGNmAbを産生する2つのB細胞ハイブリドーマからのscFv遺伝子セグメントの構築
抗PGN CARを生成するために、ATCCから、様々なグラム-及びグラム+細菌のPGNと特異的に反応するmAbを産生する2つのマウスB細胞ハイブリドーマを取得した。これらは:
1.3C11(ATCC(登録商標)HB-8511(商標))、IgG1(κ)
https://www.atcc.org/Products/All/HB-8511.aspx#generalinformation
2.3F6(ATCC(登録商標)HB-8512(商標))、IgM(κ)
https://www.atcc.org/products/all/HB-8512.aspx#generalinformation
である。これら両方のハイブリドーマのV及びV遺伝子の完全なDNA配列が決定されており(アウトソーシング、Hylabs、レホボト、イスラエル)、それらのscFvs誘導体のクローニングに役立てた。次に、これらの遺伝子セグメントを、我々が研究室で以前に構築した第2世代のCARバックボーンに組み込んだ(図11を参照:Lead、リーダーペプチド;Li、リンカー;T、Mycタグ;ヒンジ、CD8α由来;Tm、CD28膜貫通型)。CARの調製方法の詳細については、参照により本明細書に完全に開示されているかのように組み込まれる(21)(46)(47)(48)(49)(50)を参照されたい。
【0167】
抗PGN CAR1564(3C11):scFV-CD28-γのDNA配列
5’非翻訳配列(配列番号2)-リーダーペプチド+V(配列番号4)-リンカー(配列番号6)-V(配列番号8)-Mycタグ(配列番号69)-CD8αヒンジ(配列番号10)-CD28膜貫通及び細胞内ドメイン配列(配列番号12)-FcRγ細胞内ドメイン(配列番号14)-3’非翻訳配列(配列番号15)。
【0168】
1564(3C11):scFV-CD28-γ、タンパク質のアミノ酸配列
リーダーペプチド+V(配列番号3)-リンカー(配列番号5)-V(配列番号7)-Mycタグ(配列番号68)-CD8αヒンジ(配列番号9)-CD28膜貫通及び細胞内ドメイン配列(配列番号11)-FcRγ細胞内ドメイン(配列番号13)
1565(3F6):scFV-CD28-γのDNA配列:
5’非翻訳配列(配列番号2)-リーダーペプチド+V(配列番号17)-リンカー(配列番号6)-V(配列番号19)-Mycタグ(配列番号69)-CD8αヒンジ(配列番号10)-CD28膜貫通及び細胞内ドメイン配列(配列番号12)-FcRγ細胞内ドメイン(配列番号14)-3’非翻訳配列(配列番号15)。
【0169】
1565(3F6):scFV-CD28-γのアミノ酸配列
リーダーペプチド+V(配列番号16)-リンカー(配列番号5)-V(配列番号18)-Mycタグ(配列番号68)-CD8αヒンジ(配列番号9)-CD28膜貫通及び細胞内ドメイン配列(配列番号11)-FcRγ細胞内ドメイン(配列番号13)
結果:
2つの抗PGNmAb、3C11(マウスIgG、ハイブリドーマから精製)及び3F6(マウスIgM、ハイブリドーマ上清)を、「エッペンドルフELISA」を使用して黄色ブドウ球菌からのPGNの結合についてアッセイし、PGNに特異的に結合することが分かった(図12)。
【0170】
抗PGN CAR-T細胞の活性化。T細胞活性化のための活性化T細胞の核因子(NFAT)-LacZレポーター遺伝子を担持するB3Z T細胞(H-2Kbの状況下でOVA(257~264)(SIINFEKL)を特異的に認識するTCRを発現するT細胞ハイブリドーマ)を、2つの抗PGN CAR(CAR-3C11及びCAR-3F6)又は対照としての緑色蛍光タンパク質(GFP)のそれぞれをコードするmRNAでトランスフェクションした。次に、黄色ブドウ球菌由来のPGNの存在下又は非存在下で細胞を一晩インキュベートした。結果は、β-Gal活性の比色クロロフェノールレッド-β-D-ガラクトピラノシド(CPRG)アッセイのODとして示されている(図13)。
【0171】
次の実験では、同じB3ZレポーターT細胞に2つの抗PGN CAR及び対照をコードするmRNAをエレクトロポレーションし、今回はグラム陰性菌(大腸菌)又はグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)の両方に由来するPGNの存在下で培養した。24時間後、細胞をT細胞活性化のための比色CPRGレポーターアッセイに供した(図14)。
【0172】
図13及び14から、両方の抗PGN CARがPGN依存的にT細胞を活性化することを示していることが明らかである。グラム陰性菌及びグラム陽性菌からのPGNは、T細胞の活性化に同等に効果的であった。
【0173】
実施例11.TLR2-aCARの構築と特性評価。
TLR2-TIR(*)-ゼータCARの構築
TLR2-TIR(*)-ゼータCARの一般構造を図10Aの左側に示す。このシリーズの2つのCARをコードする遺伝子は、モジュラー制限部位支援クローニングを使用して構築されている。TLR-2-TIR-ゼータCARの遺伝子は、リーダーペプチド、エクトドメイン、膜貫通型及び野生型TIRエンドドメインをコードするヒトTLR-2cDNAと、それに続くヒトCD3ζの完全な細胞内部分を含む。681番目のコドンのCがAに置換してProがHisコドンに変化していることを除いて、同じ構成要素がTLR-2-TIR(*)-ゼータCARをコードする遺伝子に含まれており、ヒトTLR2 TIRでよく研究されているPro681His変異が生成される(20)。
【0174】
TLR2-IgD-ゼータCARの構築
TLR-2-TIR(*)-ゼータCARと同様に、TLR-2-IgD-ゼータCARは、認識部分としてTLR2エクトドメインを保持する。これは、ヒトIgDヒンジとCD3ζの膜貫通及び細胞内部分とを含む従来の第1世代CARバックボーンに継ぎ足される(図10A、中央)。
【0175】
TLR-2aCARの発現
TLR-2ベースのCARの完全性と細胞表面発現は、これらのCARをコードするin vitro転写mRNAのエレクトロポレーション後のフローサイトメトリー分析によって確認された(図10B)。
【0176】
実施例13.抗PGN aCARにリダイレクトされたTr1 T細胞の抗PGNエフェクターT細胞を阻害する能力。
一連の2者間及び3者間共培養実験では、抗PGN CAR又はTLR2-CARでトランスフェクトされたTr1細胞(培養中のPGNによって活性化され、任意選択でmemIL-10コーディングベクターでトランスフェクトされたもの)が、GFP標識活性化Teff及びスタンバイCD4Teff(K-CD3ζを発現し、抗KAbによって活性化されるもの)を抑制する能力を様々な細胞比で調べる。読み出しには、IFN-γ、IL-1、IL-6、TNF-α、TGF-βの細胞内染色、それぞれのマーカーを発現する細胞のゲーティングが含まれる。
【0177】
実施例14.腸管ホーミング
CAR発現Tregは、上記のようにレチノイン酸と接触させることにより、腸管ホーミング能力を備えてもよい。
【0178】
TLR2又はscFv抗PGNベースのCAR(我々のCD28-FCRγシグナル伝達ドメインはヒトとマウスの両方のT細胞で作用する)及びメンブレンIL-10(ヒトIL-10はマウス受容体に結合して活性化する)をコードするレトロウイルスベクターは、2つの別々のレトロウイルスベクターとして、又は一緒に双方向ベクターとして構築される。インタクトな可溶性IL-10も対照としてクローニングされる((1)に基づく)。表面発現を検証する。ヒトT細胞をPGNに特異的にリダイレクトするTFR2CARの能力、及び構成的シグナル伝達をトリガーするメンブレンIL-10の能力を評価する(後者には、我々が既に生成したIL-10レポーター遺伝子を用いる)。
【0179】
TFR2/scFv抗PGNベースのCARは、遺伝子改変Tr1細胞によって抑制されるヒト及びマウスPGN特異的Teff細胞の容易に利用可能なソースの生成にも役立つ。
【0180】
このアプローチのin vivo評価は、以下の理論的根拠を利用している:トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)及びオキサゾロン誘発性大腸炎は、直腸内投与によってエタノールに溶解したこれらのハプテン物質を使用するIBDの2つの広く研究されているマウスモデルシステムである(55)。これらのシステムは、以前はBALB/cマウスで確立されており、養子移入されたトリニトロフェニル(TNP)リダイレクトTregの研究に利用されていた。これらは、BALB/cバックグラウンドで抗TNP CARを発現するトランスジェニックマウス(56)、又は野生型BALB/cマウスから単離されたCD4(+)CD25(+)Tregのレトロウイルス形質導入(57)のいずれかに由来する。TNPリダイレクトTregは、TNBS誘発性大腸炎を抑制することができたが、オキサゾロン誘発性疾患に対しては効果がなかく、影響を受けたマウスがTNBSにも曝露された場合にのみ、この大腸炎を抑制することができた(56)。この抗原特異的抑制は、Eshharの研究室で実践されているプロトコルを実験的に適用して対処される次の推測を提唱する:BALB/c由来TLR2-CAR Tr1細胞は、腸内に遍在するPGNの存在により、TNBS及びオキサゾロン誘発性大腸炎の両方を抑制すると予想されるのに対し、TNP-CAR Tr1細胞は、TNBS誘発性疾患のみを抑制すると予想される。さらに、健康なBALB/cマウスへの養子移入後、PGNリダイレクトTr1細胞は抗原によって絶えず活性化され、その結果持続するが、抗原がない場合、TNPによりリダイレクトされた対応物は短命で消失すると予想される。(これらのTr1細胞は、CD4Teff細胞のプールから誘導され、内因性TCRを介して同族の自己抗原によって一定の刺激を受けることができる天然のTregに由来しないことに注意されたい)。
【0181】
したがって、PGN特異的であるがTNP特異的ではないTr1細胞は、疾患誘発のずっと前に投与されたとしても、TNBS(及びオキサゾロン)によって誘発された大腸炎からの保護を提供できると予想される。この推測の検証は、予測された安定したTr1表現型とリプログラミングされたT細胞の長期的な機能を強力にサポートするであろう。
【0182】
参考文献
【0183】
【表4-1】
【0184】
【表4-2】
【0185】
【表4-3】
【0186】
【表4-4】
【0187】
【表4-5】
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2022527162000001.app
【国際調査報告】