(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】湿気硬化性ポリオレフィン配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20220526BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545783
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2019074938
(87)【国際公開番号】W WO2020164005
(87)【国際公開日】2020-08-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】チャン、カイナン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】テルラジャ、マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB032
4J002BB052
4J002BB072
4J002BB101
4J002BB201
4J002EE047
4J002EG038
4J002EJ066
4J002EQ026
4J002FD076
4J002FD157
4J002FD208
4J002GH00
4J002GQ00
(57)【要約】
【解決手段】 (加水分解性シリル基)官能性ポリオレフィンプレポリマーと、鉄(II)アセチルアセトナートまたは鉄(III)アセチルアセトナートである化合物と、を含み、各化合物が、独立して、非置換であるかまたは置換されている、湿気硬化性ポリオレフィン配合物。また、それを作製および使用する方法、それから作製される硬化ポリオレフィン、ならびにそれを含有するかまたはそれから作製される物品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物であって、
(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーと、
(B)鉄(II)アセチルアセトナートまたは鉄(III)アセチルアセトナートである化合物を含む、縮合硬化触媒系であって、各アセチルアセトナートが、非置換であるか、または独立して1~5個のアルキル基で置換されており、各アルキル基が、非置換である(「鉄(アルキル)アセチルアセトナート」と総称される)、縮合硬化触媒系と、を含み、
前記湿気硬化性ポリオレフィン配合物のうち、それぞれ、(A)の量が、79.0~99.99重量パーセント(重量%)であり、(B)の量が、21.0~0.01重量%であり、
前記(A)(加水分解性シリル基)官能性ポリオレフィンプレポリマーが、エチレンとアルケニル官能性加水分解性シランとの反応器コポリマーである、湿気硬化性ポリオレフィン配合物。
【請求項2】
前記(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーが、制限(i)~(iii):(i)各加水分解性シリル基が、独立して、式(R
2)
m(R
3)
3-mSi-の1価の基であり、式中、下付き文字mが、1、2、または3の整数であり、各R
2が、独立して、H、HO-、(C
1-C
6)アルコキシ、(C
2-C
6)カルボキシ、フェノキシ、(C
1-C
6)アルキル)-フェノキシ、((C
1-C
6)アルキル)
2N-、(C
1-C
6)アルキル(H)C=NO-、または((C
1-C
6)アルキル)
2C=NO-であり、各R
3が、独立して、(C
1-C
6)アルキルまたはフェニルである;(ii)(A)のポリオレフィン部分が、ポリエチレン系、ポリ(エチレン-コ-(C
3-C
40)アルファ-オレフィン)系、またはそれらの組み合わせである;ならびに(iii)(i)および(ii)の両方である、のいずれか1つを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。
【請求項3】
前記(B)縮合硬化触媒系が、(B1)~(B3):(B1)前記鉄(II)(アルキル)アセチルアセトナート、(B2)前記鉄(III)(アルキル)アセチルアセトナート、および(B3)(B1)と(B2)との組み合わせ、のいずれか1つである、請求項1または2に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。
【請求項4】
前記鉄(アルキル)アセチルアセトナートの各(アルキル)アセチルアセトナートが、独立して、非置換アセチルアセトナートまたは(C
1-C
6)アルキル置換アセチルアセトナートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。
【請求項5】
添加剤(C)~(L):(C)有機過酸化物、(D)スコーチ遅延剤、(E)酸化防止剤、(F)トリー遅延剤(水トリーおよび/または電気トリー遅延剤)、(G)着色剤、(H)水分捕捉剤、(I)ヒンダードアミン光安定剤、(J)加工助剤、(K)水分発生剤、および(L)(C)~(K)のいずれか2つ以上の組み合わせ、から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。
【請求項6】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物を作製する方法であって、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーおよび(B)縮合硬化触媒系を含む構成成分を混合して、前記(A)および(B)を含む混合物を得ることと、前記混合物を溶融または押出して、請求項1~5のいずれか一項に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物を作製することと、を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物、または請求項6に記載の方法によって作製される前記湿気硬化性ポリオレフィン配合物を湿気硬化させて、湿気硬化ポリオレフィン生成物を得ることよって作製される、湿気硬化ポリオレフィン生成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物、または請求項6に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。
【請求項9】
導電性コアと、前記導電性コアを少なくとも部分的に取り囲むポリマー層と、を含む、被覆導体であって、前記ポリマー層の少なくとも一部分が、請求項7に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。
【請求項10】
電気を伝導する方法であって、請求項9に記載の被覆導体の伝導性コア全体に電圧を印加して、前記伝導性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物および関連する態様。
【0002】
序論
本分野のまたは本分野に関する特許出願公開および特許は、US2009/0156737(A1)、US2011/0046304(A1)、US2011/0098420(A1)、US2014/0329090(A1)、US2016/0319081(A1)、US2018/0244828(A1)、US4293597、US4461867、US5945466、US5985991、US7365145、US7485729(B2)、US7527838(B2)、US8877885(B2)、US9006357(B2)、US9175188(B2)、US9328205(B2)、およびUS9976028(B2)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願者は、ある特定の遷移金属アセチルアセトナート化合物に基づく硬化触媒系が、湿気硬化性ポリオレフィンの縮合を強化し、ひいては環境的に安全な非毒性触媒として有用であることを発見した。当社の技術的解決策は、(加水分解性シリル基)官能性ポリオレフィンプレポリマーと、鉄(II)アセチルアセトナートまたは鉄(III)アセチルアセトナートである化合物と、を含み、各化合物が、独立して、非置換であるかまたは置換されている、湿気硬化性ポリオレフィン配合物を含む。また、それを作製および使用する方法、それから作製される硬化ポリオレフィン、ならびにそれを含有するかまたはそれから作製される物品も含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
概要および要約は、参照により本明細書に組み込まれる。実施形態は、実施例を含む、以下の番号付けされた態様および詳細な説明を含む。
【0005】
態様1.湿気硬化性ポリオレフィン配合物であって、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーと、(B)鉄(II)アセチルアセトナートまたは鉄(III)アセチルアセトナートである化合物を含む縮合硬化触媒系であって、各アセチルアセトナートが、独立して、非置換である(「acac」と略記される)か、または1~5個のアルキル基で置換され(「アルキル-acac」と略される)、各アルキル基が、非置換である(「鉄(アルキル)アセチルアセトナート」または「鉄(アルキル)acac」と総称される)、縮合硬化触媒系と、を含み、湿気硬化性ポリオレフィン配合物のうち、それぞれ、(A)の量が、79.0~99.99重量パーセント(重量%)であり、(B)の量が、21.0~0.01重量%である、湿気硬化性ポリオレフィン配合物。湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、(A)および(B)のみからなり得る。あるいは、湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、(A)、(B)を含んでもよく、さらに(A)または(B)ではない少なくとも1つの添加剤を含んでもよく、全て湿気硬化性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて、(A)の量は79.1~99.89重量%であり得、(B)の量は0.01~20.8重量%であり得、少なくとも1つの添加剤の総量は0.10~20.89重量%であり得る。任意選択的な添加剤およびその量の例については、後述する。
【0006】
態様2.(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーが、制限(i)~(iii):(i)各加水分解性シリル基が、独立して、式(R2)m(R3)3-mSi-の1価の基であり、式中、下付き文字mが、1、2、または3の整数であり、各R2が、独立して、H、HO-、(C1-C6)アルコキシ、(C2-C6)カルボキシ、フェノキシ、(C1-C6)アルキル)-フェノキシ、((C1-C6)アルキル)2N-、(C1-C6)アルキル(H)C=NO-、または((C1-C6)アルキル)2C=NO-であり、各R3が、独立して、(C1-C6)アルキルまたはフェニルである;(ii)(A)のポリオレフィン部分が、ポリエチレン系、ポリ(エチレン-コ-(C3-C40)アルファ-オレフィン)系、またはそれらの組み合わせである;ならびに(iii)(i)および(ii)の両方である、のいずれか1つを特徴とする、態様1に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。各R2は、HおよびHO-を含まなくてもよく、あるいはフェノキシおよび(C1-C6)アルキル-フェノキシを含まなくてもよい。各R2は、独立して、(C1-C6)アルコキシ、(C2-C6)カルボキシ、((C1-C6)アルキル)2N-、(C1-C6)アルキル(H)C=NO-、または((C1-C6)アルキル)2C=NO-;あるいは、(C1-C6)アルコキシ;あるいは(C2-C6)カルボキシ;あるいは((C1-C6)アルキル)2N-;あるいは(C1-C6)アルキル(H)C=NO-;あるいは((C1-C6)アルキル)2C=NO-であり得る。
【0007】
態様3.(B)縮合硬化触媒系が、(B1)~(B3):(B1)鉄(II)(アルキル)アセチルアセトナート(Fe(II)((アルキル)acac)2と記載され得る)、(B2)鉄(III)(アルキル)アセチルアセトナート(Fe(III)((アルキル)acac)3と記載され得る)、および(B3)(B1)と(B2)との組み合わせ、のいずれか1つである、態様1または2に記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。(B3)の組み合わせは、(B1)と(B2)とのブレンド、および/または(B1)と(B2)との反応の反応生成物であり得る。
【0008】
態様4.鉄(アルキル)アセチルアセトナートの各(アルキル)アセチルアセトナートが、独立して、非置換アセチルアセトナートまたは(C1-C6)アルキル置換アセチルアセトナート、あるいは非置換アセチルアセトナート(すなわち、2,4-ペンタンジオナート)、あるいは(C1-C6)アルキル置換アセチルアセトナート(すなわち、(C1-C6)アルキル置換2,4-ペンタンジオナート)である、態様1~3のいずれか1つに記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。各(C1-C6)アルキル置換アセチルアセトナートは、独立して、1~5個の(C1-C6)アルキル基、あるいは1~4個の(C1-C6)アルキル基、あるいは1~3個の(C1-C6)アルキル基、あるいは2~5個の(C1-C6)アルキル基、あるいは2~4個の(C1-C6)アルキル基、あるいは1個の(C1-C6)アルキル基、あるいは2個の(C1-C6)アルキル基を有し、各(C1-C6)アルキル基は、非置換である。非置換アセチルアセトナートは、式H3CC(=O)C(H)=C(O-)CH3のエノラートとして描画され得る。あるいは、少なくとも1つの(アルキル)アセチルアセトナート、あるいは1つを除く全ての(アルキル)アセチルアセトナート、あるいは各(アルキル)アセチルアセトナートは、独立して、アルキル置換アセチルアセトナートであり得、任意の残りの(アルキル)アセチルアセトナートは非置換であり得る。アルキル置換アセチルアセトナートは、式Ra
3CC(=O)C(Rb)=C(O-)CRc
3のエノラートとして描画され得、Ra~Rcの少なくとも1つは、非置換(C1-C6)アルキルであり、任意の残りのRa~Rcの各々は、独立して、Hまたは非置換(C1-C6)アルキルである。いくつかの態様では、最大で2つ、あるいは、Ra~Rcのうちの1つだけが、非置換(C1-C6)アルキルであり、任意の残りのRa~Rcの各々は、Hである。いくつかの態様では、各RaおよびRcは、Hであり、Rbは、非置換(C1-C6)アルキルである。いくつかの態様では、全てのRaおよびRbならびに2つのRcは、Hであり、1つのRcは、非置換(C1-C6)アルキルである。いくつかの態様では、非置換(C1-C6)アルキルは、メチルである。いくつかの態様では、各非置換(C1-C6)アルキルは、独立して、非置換(C1-C3)アルキル、あるいは非置換(C4-C6)アルキル、あるいは非置換(C2-C5)アルキル、あるいはメチル、あるいはエチル、あるいは非置換(C3)アルキル基、あるいは非置換(C4)アルキル基、あるいは非置換(C5)アルキル基、あるいは非置換(C6)アルキル基である。アルキル置換アセチルアセトナートの例は、3-メチル-アセチルアセトナート(Rbは、メチルであり、各RaおよびRcは、Hである)および1,1,5,5-テトラメチル-アセチルアセトナート(Rbは、Hであり、2つのRaは、メチルであり、2つのRcは、メチルであり、残りのRaおよびRcは、Hである)である。各(アルキル)アセチルアセトナートは、独立して、非置換アセチルアセトナートまたはメチル置換アセチルアセトナート、あるいは3-メチル-アセチルアセトナートまたは1,1,5,5-テトラメチル-アセチルアセトナートであるメチル置換アセチルアセトナート、あるいは非置換アセチルアセトナートである。
【0009】
態様5.添加剤(C)~(L):(C)有機過酸化物、(D)スコーチ遅延剤、(E)酸化防止剤、(F)トリー遅延剤(水トリーおよび/または電気トリー遅延剤)、(G)着色剤、(H)水分捕捉剤、(I)ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、(J)加工助剤、(K)水分発生剤、および(L)(C)~(K)のいずれか2つ以上の組み合わせ、から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物。(L)の組み合わせは、任意の2つ、あるいは任意の3つ、あるいは(D)、(E)、(F)、および(I)の各々であり得る。
【0010】
態様6.湿気硬化性ポリオレフィン配合物を作製する方法であって、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーおよび(B)縮合硬化触媒系を含む構成成分を混合して、(A)および(B)を含む混合物を得ることと、混合物を溶融または押出して、態様1~5のいずれか1つに記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物を作製することと、を含む、方法。作製方法は、(A)、(B)、および添加剤(C)~(L)から選択される少なくとも1つの添加剤を含む構成成分を混合し、(A)、(B)、および(C)~(L)の少なくとも1つを含む混合物を得ることと、混合物を溶融または押出して、(A)、(B)、および(C)~(L)の少なくとも1つの添加剤を含む配合物の実施形態を作製することと、を含み得る。混合により(C)を加える代わりに、(A)、(B)、および(D)~(K)のいずれかを含む溶融または押出ステップの後に、添加剤(C)有機過酸化物を配合物に浸漬して、浸漬した(C)有機過酸化物をさらに含む配合物を得ることができる。
【0011】
態様7.態様1~5のいずれか1つに記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物、または態様6に記載の方法によって作製される湿気硬化性ポリオレフィン配合物を湿気硬化させて、湿気硬化ポリオレフィン生成物を得ることよって作製される、湿気硬化ポリオレフィン生成物。湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、その固体状態または溶融状態で湿気硬化され得る。
【0012】
態様8.態様1~5のいずれか1つに記載の湿気硬化性ポリオレフィン配合物、または態様6に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。例として、基板、フィルム、ラミネートの層、およびパイプへのコーティングがある。
【0013】
態様9.導電性コアと、導電性コアを少なくとも部分的に取り囲むポリマー層と、を含む、被覆導体であって、ポリマー層の少なくとも一部分が、態様7に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。ポリマー層全体は、湿気硬化ポリオレフィン生成物を含み得る。導電性コアは、線形(例えば、ワイヤのような)であり得、長さと、線形形状の長さだけ互いに間隔を置いて配置された近位端および遠位端とを有し、ポリマー層は、近位端および遠位端を除いて、導電性コアを完全に取り囲むことができる。被覆導体は、1つ以上の追加のポリマー層(独立して、湿気硬化ポリオレフィン生成物を含んでもよいかまたは含まなくてもよい)、および/または外側シールド層(例えば、金属シースまたはスリーブ)をさらに含み得る。
【0014】
態様10.電気を伝導する方法であって、態様9に記載の被覆導体の伝導性コア全体に電圧を印加して、伝導性コアを通る電気の流れを生成することを含む、方法。導電性コアは、長さと、長さだけ離れた近位端および遠位端とを有してもよく、電気は、導電性コアの長さを近位端から遠位端に、またはその逆に流れることができる。
【0015】
湿気硬化性ポリオレフィン組成物。湿気硬化性ポリオレフィン配合物中の全ての構成成分の総重量は100.00重量%である。湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、水を含まなくてもよく(無水)、あるいは水をさらに含んでもよい。
【0016】
湿気硬化性ポリオレフィン組成物は、一部配合物、あるいは複数部配合物、例えば、二部配合物であり得る。二部配合物は、第1および第2の部を含むことができ、第1の部は、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーおよび(B)縮合硬化触媒系から本質的になり、第2の部は、(A)の追加の部分および任意選択的に構成成分(C)~(L)のうちのいずれか1つ以上から本質的になる。
【0017】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、連続的(モノリシック)または分割された固体形態であり得る。湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、顆粒および/またはペレットを含み得る。湿気硬化性ポリオレフィン配合物を調製するために使用される混合ステップの前に、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーもまた、分割された固体形態(例えば、顆粒またはペレット)であってもよい。
【0018】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーを、担体樹脂中の(B)縮合硬化触媒系の分散液を含む触媒マスターバッチと組み合わせて、(A)、(B)、および担体樹脂を含む湿気硬化性ポリオレフィン配合物の実施形態を得ることによって作製され得る。(B)の担体樹脂は、追加量の(A)、またはポリエチレンホモポリマー、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/アクリレートコポリマー、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)等のシリコンを含まないエチレン系ポリマーであり得る。触媒マスターバッチ中の(B)の濃度は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物中の(B)の標的濃度の最大20倍であり得る。触媒マスターバッチは、3重量%を超える量(B)を有する湿気硬化性ポリオレフィン配合物の実施形態であり得る。同じまたは異なる(A)の追加量であるベースポリマーの量を様々な量の触媒マスターバッチと組み合わせることによって、触媒マスターバッチを使用して、様々なより低い濃度の(B)を有する湿気硬化性ポリオレフィン配合物の他の実施形態を経済的に作製することができる。
【0019】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、構成成分(A)および(B)から本質的になり得る。この表現は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物のこの実施形態が、構成成分(i)~(xi):(i)非置換または置換イミダゾール、(ii)非置換または置換ポリエステル、(iii)非置換または置換ポリエーテル、(iv)非置換または置換尿素、(v)スズ、(vi)アミン-カルボン酸塩、(vii)アミン(例えば、トリエチルアミン)およびアンモニウム化合物(例えば、式HN(CH2CH3)3Clを有する塩化トリエチルアンモニウム)、(viii)金属カルボン酸塩(この場合、金属は、カルシウムまたは鉄以外の任意の金属であるか、あるいは鉄以外の金属である)、(ix)カルボキサミジンおよびグアニジン(「(アザ)カルボキサミジン」と総称される)、(x)(i)~(ix)のいずれか8つ、ならびに(xi)(i)~(ix)の各々、のいずれか1つから選択される添加構成成分を含まなくてもよいことを意味することから本質的になる。例えば、湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、スズ、あるいはジブチルスズジラウレートをさらに含んでもよく、(i)~(iv)および(vi)~(ix)のいずれか1つ、あるいはいずれか7つ、あるいは各々を含まなくてもよい。あるいは、湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、スズを含まなくてもよく、(i)~(iv)および(vi)~(ix)のいずれか1つ、あるいはいずれか7つ、あるいは各々を含まなくてもよい。「添加構成成分」は、意図的に導入される成分を意味する。構成成分(i)~(xi)のいくつかは、前述の構成成分(例えば、構成成分(A)~(L))の中に不純物として存在するか、またはその合成から持ち越される場合があり(例えば、(A)に持ち越されたオレフィン重合触媒)、それによって湿気硬化性ポリオレフィン配合物に不注意で導入される。これらの不純物が、湿気硬化性ポリオレフィン配合物の性能に、有益または有害な測定可能な影響を与えることは予想されない。湿気硬化性ポリオレフィン配合物が、構成成分(i)~(xi)のいずれも含まない場合、次いで、湿気硬化ポリオレフィン生成物、製造物品、およびそれから作製される被覆導体、ならびにそれらを作製または使用する方法もまた、同じ構成成分(i)~(xi)のいずれも含まなくてもよい。構成成分(A)および(B)から本質的になる湿気硬化性ポリオレフィン配合物の実施形態は、上記で明示的に除外されていない任意の構成成分のうちの1つ以上をさらに含有し得る。除外されていないそのような1つ以上の構成成分の例は、任意選択的な添加剤(C)~(L)である。
【0020】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、構成成分(A)、(B)、および任意選択的に、添加剤(C)~(L)のうちのゼロ、1つ、またはそれ以上からなり得る。湿気硬化性ポリオレフィン配合物のこの実施形態は、明示的に含まれていない構成成分を除外する。
【0021】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物の実施形態が所与の構成成分を含まない場合、それを含むかまたはそれから作製される物品もそれを含まず、それから作製される湿気硬化ポリオレフィン生成物もそれを含まず、それを含むかまたはそれから作製される物品もそれを含まず、それを作成または使用する方法およびその使用法もそれを含まない。
【0022】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、鉄(アルキル)アセチルアセトナートを欠く比較の湿気硬化性ポリオレフィン配合物と比較して強化された耐スコーチ性を特徴とし得る。耐スコーチ性は、後述のムービングダイレオメーター(MDR)を使用したスコーチ時間試験方法、および(K)-1シュウ酸カルシウム一水和物である(K)水分発生剤も1.5重量%含む湿気硬化性ポリオレフィン配合物の実施形態によって測定される。いくつかの態様では、湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、強化された耐スコーチ性を特徴とし得る。
【0023】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物の実施形態は、鉄(アルキル)アセチルアセトナートを欠く比較の湿気硬化性ポリオレフィン配合物から作製される比較の湿気硬化ポリオレフィン生成物と比較して強化された耐熱クリープ性を特徴とする湿気硬化ポリオレフィン生成物の実施形態に湿気硬化することができる。湿気硬化性ポリオレフィン配合物、およびそれから作製される湿気硬化ポリオレフィン生成物のそのような実施形態は、(K)水分発生剤を含まない(欠いている)。熱クリープ試験用の湿気硬化ポリオレフィン生成物の実施形態は、後述するテープ押出および硬化方法によって作製される。湿気硬化ポリオレフィン生成物のそのような実施形態の耐熱クリープ性は、後述する熱クリープ試験方法によって測定される。
【0024】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、特性(i)~(v):(i)熱クリープ試験方法に従って測定された3つの試験片の平均として、200℃で20分後に、20%~174%、あるいは20%~90%、あるいは25%~50%の熱クリープ、(ii)T90架橋試験方法に従って測定された7.1~12分のT90架橋時間、(iii)ムービングダイレオメーター(MDR)を使用した湿気硬化試験方法に従って測定した場合に、最大トルク(MH)から最小トルク(ML)を引いたもの(MH-ML)が、2.25~4.44デシニュートンメートル(dN*m)、あるいは2.50~4.00dN*mである、(iv)特性(i)~(iii)のいずれか2つ、および(v)特性(i)~(iii)の各々、のいずれか1つを特徴とし得る。試験方法については後述する。
【0025】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、構成成分(A)および(B)、ならびに任意選択的な構成成分のうちの0、1つ、またはそれ以上を含む。
【0026】
構成成分(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマー(「(A)プレポリマー」)。共有結合した縮合硬化性シリコン含有基を含むポリオレフィン分子。この場合、ポリオレフィン分子は、水ベースの縮合硬化を介してさらに重合して、ポリオレフィン分子の異なる鎖間に共有結合シロキシシリル架橋を形成し、それによって、異なる鎖の炭素原子に結合したシロキシシリル架橋(Si-O-Si)を含む、得られた湿気硬化ポリマー生成物の少なくとも1つのタイプの鎖に、1つより多くの構造単位を寄与することができる。。(A)プレポリマーのポリオレフィン部分は、ポリエチレン系であってもよく、これは、(A)プレポリマーがエチレンの重合により形成された主鎖を有することを意味する。あるいは、(A)プレポリマーは、ポリ(エチレン-コ-(C3-C40)アルファ-オレフィン)系であってもよく、これは、(A)プレポリマーがエチレンと少なくとも1つのアルファ-オレフィンとの共重合により形成された主鎖を有することを意味する。
【0027】
(A)プレポリマーは、エチレンおよびアルケニル-官能性加水分解性シランの反応器コポリマーであり得る。アルケニル-官能性加水分解性シランは、式(III)(R2)m(R3)3-mSi-(C2-C6)アルケニル(III)のものであり得、式中、m、R2、およびR3は、式(II)について上で定義したとおりである。(C2-C6)アルケニルは、ビニル、アリル、3-ブテニル、または5-ヘキセニルであり得る。(A)プレポリマーは、エチレンおよびビニルトリメトキシシランの反応器コポリマーであり得る。ビニルトリメトキシシランは、式(III)のアルケニル-官能性加水分解性シランの例であり、式中、下付き文字mは3であり、各R2は(C1-C6)アルコキシ(すなわち、メトキシ)であり、(C2-C6)アルケニルはビニル(-C(H)=CH2)である。
【0028】
あるいは、(A)プレポリマーは、US6,936,671などの、エチレンと、アルファ-オレフィンと、アルケニル-官能性加水分解性シランとの反応器コポリマーであり得る。
【0029】
あるいは、(A)プレポリマーは、典型的には、ジアキル過酸化物などのフリーラジカル開始剤により促進される、重合後の調合または押出ステップでの、加水分解性不飽和シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)を反応させてグラフト化することと、得られたシラングラフト化ポリマーを単離することとを含むプロセス(例えば、SIOPLAS(商標)プロセス)により作製されたポリマーなどの、それにグラフト化された加水分解性シリル基を有する炭素原子主鎖を有する、エチレンのホモポリマーであり得る。グラフト化ポリマーは、後の加工ステップで使用するためのものであり得る。SIOPLAS(商標)プロセスは、例えば、US3,646,155およびWO2019/005439(A1)に記載されている。MONOSIL(商標)プロセスは、例えば、US2016/0200843(A1)およびWO2019/005439(A1)に記載されている。
【0030】
あるいは、(A)プレポリマーは、エチレン、ならびに(C3-C40)アルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステル(例えば、(メタ)アクリレートアルキルエステル)のうちの1つ以上とのコポリマーであってもよく、ここで、そのコポリマーは、SIOPLAS(商標)プロセスにより作製されるような、それにグラフト化された加水分解性シリル基を有する主鎖を有する。
【0031】
あるいは、(A)プレポリマーは、典型的には、ジアキル過酸化物などのフリーラジカル開始剤により促進される、重合後の調合または押出ステップでの、加水分解性不飽和シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)を反応させてグラフト化することと、得られたシラングラフト化ポリマーを後の製造ステップで直ちに(単離することなく)使用することとを含むプロセス(例えば、MONOSIL(商標)プロセス)での使用に好適な、エチレンと、式(III)のアルケニル-官能性加水分解性シランなどの加水分解性シランと、過酸化物との混合物であり得る。
【0032】
あるいは、(A)プレポリマーは、SIOPLAS(商標)またはMONOSIL(商標)プロセスでの使用に好適な、エチレンと(C3-C40)アルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルのうちの1つ以上とのコポリマーと、式(III)のアルケニル-官能性加水分解性シランなどの加水分解性シランと、過酸化物との混合物であり得る。アルファ-オレフィンは、(C3-C40)アルファ-オレフィン、代替として(C3-C20)アルファ-オレフィン、代替として(C3-C10)アルファ-オレフィンであり得る。アルファ-オレフィンは、少なくとも4つの炭素原子を有し得る(すなわち、(C4)アルファ-オレフィン以上であり得る)。(C3-C10)アルファ-オレフィンの例は、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、および1-デセンである。過酸化物は、WO2015/149634(A1)の5頁6行目~6頁2行目に記載されているか、(C1)有機過酸化物に関して下に記載されているような有機過酸化物であり得る。
【0033】
あるいは、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマー((A)プレポリマー)は、(i)エチレンと加水分解性シランとの反応器コポリマー、(ii)エチレンと、加水分解性シランと、1つ以上のアルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルとの反応器コポリマー(例えば、US6,936,671)、(iii)炭素主鎖および炭素主鎖にグラフト化された加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー(例えば、SILOPAS(商標)プロセスにより作製された)、(iv)エチレンと、主鎖を有する1つ以上のアルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルと、その主鎖にグラフト化された加水分解性シランとのコポリマー(例えば、SILOPAS(商標)プロセスにより作製された)、(v)エチレンと、加水分解性シランと、有機過酸化物との混合物から形成されたコポリマー(例えば、MONOSIL(商標)プロセスにより作製された)、または(vi)エチレンと、1つ以上のアルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルと、加水分解性シランと、有機過酸化物との混合物から形成されたコポリマー(例えば、MONOSIL(商標)プロセスにより作製された)であり得る。
【0034】
(A)プレポリマーは、79.0~99.99重量%、あるいは85.0~99.99重量%、あるいは90.0~99.99重量%、あるいは95.0~99.99重量%の濃度で湿気硬化性ポリオレフィン配合物中に存在し得る。湿気硬化性ポリオレフィン配合物が少なくとも1つの添加剤をさらに含む場合、(A)の最大量は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物の総重量に基づいて、99.89重量%、あるいは99.0重量%であり得る。
【0035】
構成成分(B)縮合硬化触媒系。(B)縮合硬化触媒系は、(B1)~(B3):(B1)鉄(II)(アルキル)アセチルアセトナート、(B2)鉄(III)(アルキル)アセチルアセトナート、および(B3)(B1)と(B2)との組み合わせ、のいずれか1つを含む。(B)、あるいは湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、(アルキル)アセチルアセトナートではないいずれの有機アニオンも含まなくてもよい。
【0036】
(B1)と(B2)との(B3)組み合わせ。(B3)組み合わせは、(B1)鉄(II)(アルキル)アセチルアセトナートおよび(B2)鉄(III)(アルキル)アセチルアセトナートが、化学量論的比率で、あるいは非化学量論的比率で混合された場合に作製され得る。
【0037】
(B)縮合硬化触媒系は、それが(A)プレポリマーと組み合わされる前は実質的に純粋であることを特徴とし得る。「実質的に純粋」(B)は、(B)の総重量の90~100重量%、あるいは95~100重量%、あるいは98~100重量%、あるいは90、95、または98~99.99重量%であることを特徴とする。
【0038】
(B)縮合硬化触媒系は、無水形態(水和物を含まない)、あるいは水和物形態であり得る。無水形態の(B)は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物のスコーチを最小限に抑えるのに有益に役立ち得る。スコーチは、その押出中(例えば、押出機内で)の湿気硬化性ポリオレフィン配合物の早期湿気硬化である。水和物形態の(B)は、無水または低相対湿度環境において湿気硬化性ポリオレフィン配合物を湿気硬化させるための水分子のその場供給源として有益にさらに機能し得る。スコーチを最小限に抑えることと、その場で湿気硬化を可能にすることとのバランスは、湿気硬化性ポリオレフィン配合物中に水和物形態の(B)および(D)スコーチ遅延剤を使用することによって達成され得る。
【0039】
(B)縮合硬化触媒系の量は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物の11.0~3.1重量%、あるいは3.0~0.05重量%、あるいは1.0~0.10重量%(例えば、0.15重量%)であり得る。
【0040】
任意の構成成分(C)過酸化物:炭素原子、水素原子、および2つ以上の酸素原子を含有し、少なくとも1つの-O-O-基を有するが、ただし2つ以上の-O-O-基がある場合、各-O-O-基が、1つ以上の炭素原子を介して別の-O-O-基に間接的に結合していることを条件とする分子、またはそのような分子の集合体。(C)過酸化物は、構成成分(A)、(B)、および(C)を含む湿気硬化性ポリオレフィン配合物を、(C)過酸化物の分解温度以上の温度に加熱することを含む硬化のために湿気硬化性ポリオレフィン配合物に添加され得る。
【0041】
(C)過酸化物は、(C1)ヒドロカルビルヒドロ過酸化物であり得る。(C1)は、式RO-O-O-Hの化合物であり得、式中、ROは独立して、(C1-C20)アルキル基または(C6-C20)アリール基である。各(C1-C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、または1もしくは2つの(C6-C12)アリール基で置換されている。各(C6-C20)アリール基は、非置換であるかまたは1~4つの(C1-C10)アルキル基で置換されている。(C1)ヒドロ過酸化物は、1,1-ジメチルエチルヒドロ過酸化物、1,1-ジメチルプロピルヒドロ過酸化物、ベンゾイルヒドロ過酸化物、tert-ブチルヒドロ過酸化物、tert-アミルヒドロ過酸化物、またはクミルヒドロ過酸化物であり得る。クミルヒドロ過酸化物は、イソプロピルクミルヒドロ過酸化物、t-ブチルクミルヒドロ過酸化物、またはクミルヒドロ過酸化物、あるいはクミルヒドロ過酸化物(クメンヒドロ過酸化物、アルファ、アルファ-ジメチルベンジルヒドロ過酸化物、CAS番号80-15-9としても既知である)であり得る。
【0042】
(C)過酸化物は、(C2)有機過酸化物であり得る。(C2)は、式RO-O-O-ROのモノ過酸化物であり得、式中、各ROは独立して、上で定義されるとおりである。あるいは、(C2)は、式RO-O-O-Ra-O-O-ROのジ過酸化物であり得、式中、Raは、(C2-C10)アルキレン、(C3-C10)シクロアルキレン、またはフェニレンなどの二価炭化水素基であり、各ROは独立して、上で定義されるとおりである。(C2)有機過酸化物は、ビス(1,1-ジメチルエチル)過酸化物、ビス(1,1-ジメチルプロピル)過酸化物、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイル過酸化物、過安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミル過酸化物(「DTAP」)、ビス(アルファ-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチル過酸化物、t-ブチルクミル過酸化物、ジ-t-ブチル過酸化物、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミル過酸化物、4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、またはジ(イソプロピルクミル)過酸化物、またはジクミル過酸化物であり得る。(C2)有機過酸化物は、ジクミル過酸化物であり得る。
【0043】
2つ以上の異なる(C)過酸化物のブレンドを使用することができる。
【0044】
少なくとも1つ、あるいは各(C)過酸化物は、1つの-O-O-基を含有し得る。
【0045】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、(C)過酸化物を含まなくてもよい。(C)過酸化物は、存在する場合、本発明の配合物の0.01~4.5重量%、あるいは0.05~2重量%、あるいは0.2~0.8重量%であり得る。
【0046】
理論に拘束されることなく、(C)過酸化物の使用は、二重硬化機構を可能にし、湿気硬化性ポリオレフィン配合物の湿気硬化およびフリーラジカル硬化の生成物である湿気硬化ポリオレフィン生成物の実施形態が得られると考えられる。湿気硬化は、(A)の加水分解性シラン基の間に架橋を形成することができ、この場合、架橋は、C-Si-O-Si-C結合モチーフを有する。(C)過酸化物によって可能になるフリーラジカル硬化は、(A)のポリマー鎖間に炭素-炭素結合架橋を形成し得る。したがって、二重硬化生成物は、湿気硬化のみの生成物よりも高い架橋含有量を有し、したがって、湿気硬化のみの生成物と比較して、改善された機械的特性(例えば、弾性率、熱クリープ性能)を有することが期待される。
【0047】
任意選択的な構成成分(添加剤)(D)スコーチ遅延剤:早期硬化を抑制する分子、またはそのような分子の集合体。スコーチ遅延剤の例は、ヒンダードフェノール、セミヒンダードフェノール、TEMPO、TEMPO誘導体、1,1-ジフェニルエチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(アルファ-メチルスチレンダイマーまたはAMSDとも呼ばれる)、およびUS6277925(B1)、第2欄第62行~第3欄第46行に記載されているアリル含有化合物である。ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(D)を含まなくてもよい。(D)スコーチ遅延剤は、存在する場合、全て本発明の配合物および/または生成物の総重量に基づいて、その0.01~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0048】
任意の構成成分(添加剤)(E)酸化防止剤:酸化を阻害する有機分子、またはそのような分子の集合体。(E)酸化防止剤は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物に酸化防止特性を提供するように機能する。好適な(E)の例には、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD445)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾールとしても既知である)、CAS番号96-69-5、市販のLOWINOX TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4、6-トリオン(例えば、CYANOX1790)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(例えば、IRGANOX1010、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイルエステル(例えば、IRGANOX1035、CAS番号41484-35-9)、ジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(例えば、IRGANOX PS 800)、ステアリル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1076)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェニル(IRGANOX1726)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(例えば、IRGANOX1520)、および2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]pプロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX1024)が含まれる。(E)は、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても既知である)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、ジステアリルチオジプロピオネート、もしくはジラウリルチオジプロピオネート、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせであり得る。組み合わせは、トリス¥[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンとジステアリルチオジプロピオネートであってもよい。湿気硬化性ポリオレフィン配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物は、(E)を含まなくてもよい。(E)酸化防止剤は、存在する場合、湿気硬化性ポリオレフィン配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物の総重量の0.01~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0049】
任意選択的な構成成分(F)トリー遅延剤:水および/または電気トリーを抑制する分子、またはそのような分子の集合体。ツリーング遅延剤は、水ツリーング遅延剤または電気ツリーング遅延剤であり得る。水トリーイング遅延剤は、電界と湿気または水分との複合効果にさらされるとポリオレフィンが劣化するプロセスである、水トリーイングを抑制する化合物である。電気トリーイング遅延剤は、部分的な放電による固体電気絶縁における電気的事前分解プロセスである、電気トリーイングを抑制する化合物である。電気トリーイングは、水がない場合に発生し得る。水トリーイングおよび電気トリーイングは、被覆がポリオレフィンを含有する、被覆導体を含有する電気ケーブルについての問題である。(F)は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であり得る。ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(F)を含まなくてもよい。(F)トリー遅延剤は、本発明の配合物の総重量に基づいて、その0.01~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0050】
任意の構成成分(添加剤)(G)着色剤。例えば、顔料または染料。例えば、カーボンブラックまたは二酸化チタン。カーボンブラックは、ポリ(1-ブテン-コ-エチレン)コポリマー(マスターバッチの総重量の95重量%以上~100重量%未満)、およびカーボンブラック(マスターバッチの総重量の0重量%超~5重量%以下の配合物であるカーボンブラックマスターバッチとして提供され得る。カーボンブラックは、表面積対体積比が高いが、活性炭のそれよりも低い、微結晶化形態の準結晶炭素である。カーボンブラックの例は、ファーネスカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、導電性カーボン(例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、および膨張グラファイト小板)である。湿気硬化性ポリオレフィン配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物は、(G)を含まなくてもよい。(G)は、存在する場合、本発明の配合物の0.1~35重量%、あるいは1~10重量%であり得る。
【0051】
任意の構成成分(添加剤)(H)水分捕捉剤。(H)水分捕捉剤は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物の早期湿気硬化を抑制するように機能し、この場合、早期湿気硬化は、湿気硬化性ポリオレフィン配合物が周囲空気に早期にまたは長期に曝露されることから生じる。(H)の例は、オクチルトリエトキシシランおよびオクチルトリメトキシシランである。湿気硬化性ポリオレフィン配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物は、(H)を含まなくてもよい。(H)は、存在する場合、本発明の配合物の0.001~0.2重量%、あるいは0.01~0.10重量%であり得る。
【0052】
任意選択的な構成成分(添加剤)(I)ヒンダードアミン光安定剤:少なくとも1つの立体的にかさ高い有機基に結合し、劣化または分解の抑制剤として機能する塩基性窒素原子を含有する分子、またはそのような分子の集合体。(I)は、立体障害のあるアミノ官能基を有し、酸化的劣化を抑制し、(C)有機過酸化物を含有するポリオレフィン組成物の実施形態の保存期間を増加することもできる化合物である。好適な(I)の例は、ブタン二酸ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-エタノール(CAS番号65447-77-0、市販のLOWILITE62)を含むポリマー、およびN,N’-ビスホルミル-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ヘキサメチレンジアミン(CAS番号124172-53-8、市販のUvinul 4050 H)である。本発明の配合物および生成物は、(I)を含まなくてもよい。(I)ヒンダードアミン安定剤は、存在する場合、本発明の配合物の0.001~1.5重量%、あるいは0.002~1.0重量%、あるいは0.05~1.0重量%であり得る。
【0053】
任意選択的な構成成分(添加剤)(J)加工助剤:押出機およびダイ等の製造装置におけるポリマー溶融物の付着を低減し、材料の溶融破壊を低減する分子。(J)は、フルオロポリマー、ポリオルガノシロキサン、脂肪カルボン酸の金属塩、脂肪カルボキサミド、ワックス、エチレンオキシド(コ)ポリマー、および非イオン性界面活性剤であり得る。本発明の配合物および生成物は、(J)を含まなくてもよい。(J)加工助剤は、存在する場合、本発明の配合物の0.05~5重量%であり得る。
【0054】
任意選択的な構成成分(添加剤)(K)水分発生剤:(a)加熱すると水分子を放出する水和物分子、または(b)加熱すると分解して(副産物として)水分子を生成する潜在的な水供給源の分子。(K)(a)は、シュウ酸カルシウム一水和物等の第1族または第2族金属シュウ酸塩の水和物形態であり得る。(K)(b)は、スルホン酸と過酸化物との混合物であり得、この混合物は、加熱されると水を発生する。本発明の配合物および生成物は、(K)を含まなくてもよい。(K)水分発生剤は、存在する場合、本発明の配合物の0.5~2.5重量%、あるいは1.0~1.9重量%であり得る。
【0055】
本発明の配合物および/または生成物は、潤滑剤、鉱油、ブロッキング防止剤、金属不活性化剤(例えば、オキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジド(OABH))、助剤、核剤、または難燃剤をさらに含有し得る。
【0056】
いずれの任意の構成成分も、少なくとも1つの特徴または特性を、それを必要とする本発明の配合物および/または生成物に付与するのに有用であり得る。特徴または特性は、本発明の配合物および/または生成物が高い動作温度にさらされる操作または用途における本発明の配合物および/または生成物の性能を改善するのに有用であり得る。そのような操作または用途には、溶融混合、押出、成形、温水パイプ、および電力ケーブルの絶縁層が含まれる。
【0057】
化学物質
本明細書中の任意の化合物は、天然存在形態および/または同位体濃縮形態を含む、その全ての同位体形態を含む。同位体濃縮形態は、医療用途または偽造防止用途などのさらなる用途を有し得る。
【0058】
本明細書中の任意の化合物、化学組成物、配合物、材料、または生成物は、H、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zn、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、ランタノイド、およびアクチノイドからなる群から選択される化学元素のいずれか1つを含まなくてもよいが、ただしそれらに必要な化学元素(例えば、ポリオレフィンに必要なCおよびH)は除外されない。
【0059】
置換とは、1つ以上の炭素結合水素原子(C-HのH原子)が、同じ数の独立して選択された置換基(C-HのH原子当たり1つの置換基)により形式的に置換されて、最大1置換当たり(1置換を含める)、1つ以上の炭素結合置換基を形成したことを意味し、C-Hの全てのH原子が置換基によって置換される。
【0060】
「非置換」は、原子が炭素原子および水素原子からなることを意味する。
【0061】
非置換(C1-C6)アルキルは、独立して、直鎖、分岐鎖、または環状(非置換(C3-C6)アルキルである非置換(C1-C6)アルキルの場合)である。
【0062】
非置換(C3)アルキル基は、式C3H7の1価のラジカル(モノラジカル)である。例としては、-CH2CH2CH3および-CH(CH3)2である。非置換(C4)アルキル基は式C4H9のモノラジカルである。例としては、-CH2CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH3、-C(CH3)2CH3、-CH2CH(CH3)CH3、および-C(CH3)3である。非置換(C5)アルキル基は式C5H11のモノラジカルである。例としては、-CH2CH2CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH2CH3、-C(CH3)2CH2CH3、-CH2CH(CH3)CH2CH3、-CH2C(CH3)2CH3、-CH2CH2CH(CH3)CH3、-CH(CH2CH3)2、および-CH2C(CH3)3である。非置換(C6)アルキル基は式C6H13のモノラジカルである。例としては、-CH2CH2CH2CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3、-C(CH3)2CH2CH2CH3、-CH2CH(CH3)CH2CH2CH3、-CH2C(CH3)2CH2CH3、-CH2CH2CH(CH3)CH2CH3、-CH2CH2C(CH3)2CH3、-C(CH3)(CH2CH3)2、および-CH2CH2C(CH3)3である。
【0063】
(アルキル)アセチルアセトナート:非置換または置換アセチルアセトンのモノアニオン誘導体(共役塩基)。非置換アセチルアセトンは、式CH3C(=O)CH2C(=O)CH3の化合物であり、式CH3C(=O)CHC(OH)CH3のエノール異性体を含む。非置換アセチルアセトナートは、式CH3C(=O)CH=C(O-)CH3のエノラートとして描画され、非置換アセチルアセトンをモノ脱プロトン化することによって形式的に作製される。アルキル置換アセチルアセトンは、少なくとも炭素結合したH原子を、上で定義したRa等の置換基で置き換えることにより、非置換アセチルアセトンから形式的に誘導される。アルキル置換アセチルアセトナートは、置換アセチルアセトンをモノ脱プロトン化することによって形式的に作製される。
【0064】
カルボキサミド:式C-C(=O)-Nの5価の官能基を有する化合物であり、官能基はヘテロ芳香族環の一部ではない。アミドとしても知られている。
【0065】
カルボキサミジン:式N-C(=N-)-Cの6価の官能基を有する化合物であり、官能基はヘテロ芳香族環の一部ではない。アミジンとしても知られている。
【0066】
グアニジン:式N-C(=N-)-Nの5価の官能基を有する化合物であり、官能基はヘテロ芳香族環の一部ではない。
【0067】
有機アニオン:炭化水素またはヘテロ炭化水素の負に帯電したイオン。負電荷(密度)は、炭素、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1つ以上の原子上に存在し得る。例えば、1-メチルエトキシド(2-プロパノールのアニオン)では、負電荷は酸素原子に存在する。非置換アセチルアセトン(非置換アセチルアセトンのアニオン)では、負電荷は2つの酸素原子に部分的に存在し、またC-3炭素原子に部分的に存在する。
【0068】
定義
「あるいは」は、異なる実施形態に先行する。
【0069】
周囲温度または室温:別途記載のない限り、23℃±1℃。
【0070】
態様:本発明の実施形態。「いくつかの態様」等は、番号付けされた態様および番号付けされていない態様を修飾する。
【0071】
ASTM:標準機構、ASTM International(West Conshohocken,Pennsylvania,USA)。
【0072】
比較例は、比較のために使用され、先行技術と見なされるべきではない。
【0073】
「含まないまたは欠いている」は、完全に存在しないこと、あるいは検出不可能であることを意味する。
【0074】
IEC:標準機構、国際電気標準会議(Geneva,Switzerland)。
【0075】
IUPACは、国際純正応用化学連合(IUPAC Secretariat(Research Triangle Park,North Carolina,USA))である。
【0076】
マスターバッチ:担体樹脂に分散した添加剤の濃縮混合物。
【0077】
「し得る(may)」は、必須ではなく、選択の許容を付与する。
【0078】
一般化されたフォーマット「金属(ローマ数字)」(例えば、「鉄(II)」または「Fe(III)」)では、ローマ数字(例えば、(II)または(III))は、金属(例えば、鉄またはFe)の形式的酸化状態(例えば、+2または+3)を示す。
【0079】
有効な:機能的に可能または効果的。
【0080】
任意選択的な(任意選択的に):存在しない(または除外される)こと、あるいは存在する(または含まれる)こと。
【0081】
PPMまたは百万分率:別途記載のない限り、重量に基づく。
【0082】
特性:別途記載のない限り、標準的な試験方法および既知の条件を使用して測定される。
【0083】
範囲:端点、部分範囲、およびその中に属する整数値および/または小数値を含むが、ただし整数の範囲は小数値を含まない。
【0084】
密度:ASTM D792-13、変位によるプラスチックの密度および比重(相対密度)の標準試験方法、方法B(水以外の液体中、例えば、液体2-プロパノール中で固体プラスチックを試験するため)に従って測定される。1立方センチメートル当たりのグラムの単位(g/cm3)。
【0085】
メルトインデックス「I2」:以前は「条件E」として知られていた190℃/2.16kgの条件を使用して、ASTM D1238-13に従って測定される。10分当たりのグラムの単位(g/10分)。
【実施例】
【0086】
高密度ポリエチレン1(HDPE1):0.965g/cm3の密度および8g/10分のメルトインデックス(I2)を有する高密度ポリエチレンホモポリマー。
【0087】
(加水分解性シリル基)-官能性プレポリマー(A)-1:98.5重量%のエチレンと1.5重量%のビニルトリメトキシシランとの反応器コポリマー。フリーラジカル開始剤を用いて、管状高圧ポリエチレン反応器内でエチレンとビニルトリメトキシシランとを共重合することによって調製した。The Dow Chemical CompanyからSI-LINK(商標)DFDA-5451として入手可能である。
【0088】
縮合硬化触媒系(B)-1:Fe(II)(acac)2、ここで、各acacは、非置換アセチルアセトナートである。Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd,Chinaから入手した。
【0089】
縮合硬化触媒系(B)-2:Fe(III)(acac)3、ここで、各acacは、非置換アセチルアセトナートであり、2,4-ペンタンジオナートとも称される。TCI Shanghai,Chinaから入手した。
【0090】
縮合硬化触媒系(B)-3:Fe(III)(3-メチル-acac)3、ここで、各3-メチル-acacは、3-メチル-アセチルアセトナートであり、3-メチル-2,4-ペンタンジオナートとも称される。欧州特許第2776162(B1)号の手順に従って合成した。
【0091】
縮合硬化触媒系(B)-4:Fe(III)(1,1,5,5-テトラメチル-acac)3、ここで、各1,1,5,5-テトラメチル-acacは、1,1,5,5-テトラメチル-アセチルアセトナートであり、2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナートとも称される。Strem Chemicalから入手した。
【0092】
酸化防止剤(E)-1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX 1010、CAS番号6683-19-8;BASF)
【0093】
酸化防止剤(E)-2:2’、3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX 1024;BASF)。
【0094】
水分発生剤(K)-1:シュウ酸カルシウム一水和物。ムービングダイレオメーター(MDR)機器を使用して実施される硬化実験の水供給源として使用される。
パートA:(K)-1水分発生剤を含む配合物
【0095】
湿気硬化性ポリオレフィン配合物の調合方法1:HAAKEミキサー(Thermo Fisher Scientific)内で、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマー(例えば((A)-1)を、120℃および毎分0回転(rpm)で5分間、次いで120℃および45rpmで2.5分間溶融する。完全に溶融した(A)に、(B)縮合硬化触媒系を素早く加える。内容物を120℃および45rpmで1分間混合する。必要に応じて、(K)水分発生剤(例えば、(K)-1)を少量ずつ加え、次いで120℃および45rpmで2分間混合を続ける。ミキサーから材料を取り出し、プラーク調製試験方法に従って試料をプレスしてプラークを形成する。
【0096】
プラーク調製試験方法:湿気硬化性ポリオレフィン配合物の調合方法1からの材料の試料を、120℃および0.5メガパスカル(MPa)で20秒間プレスしてプラークを形成し、1~4ミリメートル(mm)の厚さのプラークを得る。プラークの厚さは、とりわけ、その調製中(例えば、HAAKEミキサーにおいて)の配合物のスコーチの程度に応じて変化し得る。
【0097】
ムービングダイレオメーター(MDR)を使用した湿気硬化試験方法:湿気硬化性ポリオレフィン配合物の調合方法1から得られた材料の4.5グラムの試料を、ASTM D5289-17(ローターレス硬化メーターを用いたゴム物性加硫の標準試験法)に従って180℃で硬化させる。プラーク調製試験方法によって作製されたプラークを使用して、MDRおよび以下の手順を用いて180℃での最小トルク(ML)を測定する。ムービングダイレオメーター(MDR)機器MDR2000(Alpha Technologies)で、試験試料を180℃で20分間加熱しながら、1分当たり100サイクル(cpm;1.67ヘルツ(Hz))で0.5弧度の振動変形のトルクの変化を監視する。測定された最低トルク値を、デシニュートンメートル(dN*m)で表される「ML」として示す。MLは、プラーク調製試験方法中の配合物の予備硬化の程度を示し、MDRを使用した本発明の湿気硬化の開始点である。本発明の湿気硬化(架橋)が進行すると、測定されるトルク値が増加し、最終的に最大トルク値に達する。最大または最高の測定トルク値をdN*mで表される「MH」として示す。他の全てが等しい場合、MHトルク値が大きいほど、架橋の程度が大きくなる。他の全てのものが等しい場合、トルク値がMLから1ポンド-インチ(1.1dN*m)に至るまでの時間が短いほど、試験試料の硬化速度は速い。逆に、トルク値MLから1ポンド-インチ(1.1dN*m)に至るのに必要な時間が長いほど、試験試料の硬化速度は遅い。MLは硬化プロセスのレオロジー変化を示し、値が高いほど架橋度が高いことを示す。ML=1.0lbf.in(1.1デシニュートンメートル(dN*m))に達するのに必要な硬化時間を記録する。1.00lb.-in.=0.113ニュートンメートル(N*m)。
【0098】
スコーチ時間試験方法。この方法は、ペレットとして調製された湿気硬化性ポリオレフィン配合物のスコーチに対する耐性を特徴付ける。スコーチに対する耐性は、MDRを使用した湿気硬化試験方法を用いて180℃で測定された最小トルク(ML)より1ポンド-インチ((lb.-in.)ここで、1.0lb.-in.=1.1dN*m)だけ上回るようにトルクを増加させるのにかかる時間の長さts1である。1.00lb.-in.=0.113ニュートンメートル(N-m)。ts1時間が長いほど、耐スコーチ性(スコーチ遅延性としても知られる)の程度が有利に大きくなる。湿気硬化性ポリオレフィン配合物は、180℃でのスコーチに対する耐性を特徴とし得る。(MDR ts1)8~16分のスコーチ時間試験方法に従って測定。試料がこのMDR ts1法に準拠する耐スコーチ性を示すと言うためには、測定される最大トルク(MH)値が測定される最小トルク(ML)値より少なくとも1.0dN*m高くなければならない(すなわち、MH-ML≧1.0dN*m)。MH-ML<1.0dN*mである場合、試料は耐スコーチ性を有しないことを特徴とする。
【0099】
T90架橋時間試験方法。この方法は、硬化速度を、90%の架橋に達するのに必要な時間の長さ(T90)(分)として特徴付ける。T90架橋時間は、MDRを使用した湿気硬化試験方法を用いて180℃で測定された最小トルクMLから最大トルクMHの90%(0.90MH)までトルクを増加させるのにかかる時間の長さである。
【0100】
比較例1~2(CE1~CE2):比較配合物を、Co(II)(acac)
2、Zn(II)(acac)
2、Cu(II)(acac)
2、またはTi(IV)(acac)
2(O-iPr)
2(ここで、O-iPrは、1-メチルエトキシドである)のうちの異なる1つ、および水分発生剤(K)-1を用いて調製し、上記の方法に従って試験した。表1に記載する結果を参照されたい。
【表1】
【0101】
表1に示すように、比較配合物は、実質的により小さな最大トルク値MHによって示されるような不十分な硬化を示した。
【0102】
本発明の実施例1~4(IE1~IE4):本発明の湿気硬化性ポリオレフィン配合物を、それぞれ、(B)-1 Fe(II)(acac)
2、(B)-2 Fe(III)(acac)
3、(B)-3 Fe(III)(3-メチル-acac)
3、または(B)-4 Fe(III)(1,1,5,5-テトラメチル-acac)
3のいずれか、および水分発生剤(K)-1を用いて調製し、上記の方法に従って試験した。表2に記載する結果を参照されたい。
【表2】
【0103】
表2に示すように、本発明の配合物IE1~IE4は、表1のCE1~CE4の最大トルク値よりも実質的により大きい最大トルク値MHによって示されるような、実質的な程度の架橋を有する硬化生成物を生成した。さらに、本発明の配合物IE1~IE4は、概して硬化速度がより速く、したがって、より短いT90架橋時間によって示されるように、より短い時間で硬化生成物が作製された。
パートB:(K)水分発生剤を含まない(欠く)配合物。
【0104】
触媒マスターバッチ1および2(本発明)の調製。160℃および10rpmのブラベンダーミキサー(Brabender GmbH&Co KG)の中に、完全に溶融するまでHDPE1を加える。溶融物に酸化防止剤(E)-1および(E)-2を加える。次いで、それぞれ、(B)縮合硬化触媒系(B)-1または(B)-2を加える。得られた配合物を、155℃および45rpmで2分間混合する。ミキサーから混合物を取り出し、プラーク調製試験方法を用いてホットプレスにより試料をプラークにする。プラークを小さなペレットに切断する。ペレットを短軸押出機に供給して、それぞれ触媒マスターバッチ1または2として湿気硬化性ポリオレフィン配合物の小さなペレットを作製する。触媒マスターバッチは、3.33重量%の酸化防止剤(E)-1および1.67重量%の酸化防止剤(E)-2、ならびに2.6重量%の(B)縮合硬化触媒系(例えば、(B)-1または(B)-2)を含有する。触媒マスターバッチはまた、(B)-3または(B)-4からも作製し得る。
【0105】
比較マスターバッチ1~5を、各々、触媒マスターバッチ1の調製手順と同じ手順により調製したが、ただし2.6重量%の(B)-1縮合硬化触媒系の代わりに、比較マスターバッチ1~4は、それぞれ、以下の構成成分:Zn(II)(acac)2、Co(II)(acac)2、Co(III)(acac)3、Cu(II)(acac)2、またはTi(IV)(acac)2(O-iPr)2うちの異なる1つを、1.3重量%含有していた。
【0106】
テープ押出および硬化方法:それぞれ重量/重量比5.8/94.2の、測定量の触媒マスターバッチ1(触媒マスターバッチ1の調製を参照)および(加水分解性シリル基)-官能性プレポリマー(A)-1を、ビニル袋内で乾燥ブレンドする。次いで、乾燥ブレンドを、160℃および45rpmで作動する単軸押出機に供給し、湿気硬化性ポリオレフィン配合物を、約3.5mmの幅を有する厚さ1mmのテープとして押出する。配合物は、(K)水分発生剤を含まない(含有しない)。次いで、押出されたテープから「ドッグボーン」形状の試験片を切り取り、90℃の水浴に3時間浸漬することによって試験片を硬化させ、本発明の湿気硬化ポリオレフィン生成物の実施例を作製する。熱クリープ試験方法に従って、湿気硬化ポリオレフィン生成物の熱クリープを測定する。
【0107】
熱クリープ試験方法。テープ押出および硬化方法によって調製された湿気硬化ポリオレフィン生成物の試験試料において、架橋の程度、ひいては硬化の程度を測定する。ASTM D2655-17(定格0~2000Vの電線およびケーブル用の架橋ポリエチレン絶縁の標準規格)に従って、20ニュートン/平方センチメートル(N/cm2)および200℃の負荷の下で、硬化した(90℃の水浴で3時間)試験試料((K)水分発生剤を含有しない)に熱クリープを受けさせる。20分後、最終的な長さを測定する。試験した試料の長さを冷却して測定する。伸長量を初期長さで割ると、熱クリープの測定値が割合で提供される。試験試料の伸びの程度を、熱クリープ条件前の試験試料の初期長さに対する、熱クリープ条件後の試験試料の長さのパーセント(%)として表す。熱クリープパーセントが低いほど、試験試料の荷重下での伸びの程度が低くなり、ひいては架橋の程度が大きくなり、ひいては硬化の程度が大きくなる。熱クリープ値が低いほど、架橋度が高いことを示唆する。
【0108】
比較例5~9(CE5~CE9):比較配合物を、それぞれ、比較マスターバッチ1~5のうちの異なるものから調製し、水分発生剤(K)を含まず、上記の方法に従って試験した。表3に記載する結果を参照されたい。
【表3】
【0109】
表3に示すように、CE5~CE7の比較配合物は、1分未満で全ての試験片の破砕(非常に長い破壊での伸長)によって示されるように、架橋が最小限であるか全くないと考えられ、したがって硬化生成物をもたらすことができなかった。CE8およびCE9の比較配合物は、いくらかの架橋を有していると考えられたが、熱クリープ値は、100%を超えていた。100%以上の熱クリープ値は、ケーブル(例えば、電源ケーブル)においてコーティング層として使用するための組成物を評価する場合、熱クリープ試験に「合格しない」ことを特徴とする。
【0110】
本発明の実施例5~6(IE5~IE6):本発明の湿気硬化性ポリオレフィン配合物を、それぞれ、触媒マスターバッチ1および2のうちの異なるものから調製し、水分発生剤(K)を含まず、上記の方法に従って試験した。表4に記載する結果を参照されたい。
【表4】
【0111】
表4に示すように、本発明の配合物は、全ての試験片が200℃で20分後に無傷のままであり、熱クリープ値が実質的に100%未満であったという事実によって示されるように実質的により大きな架橋を有する本発明の硬化生成物を生成し、ひいてはケーブル(例えば、電源ケーブル)においてコーティング層として使用するための組成物を評価する場合、熱クリープ試験を合格することを特徴とする。熱クリープ%が低いほど、架橋の程度が大きく、架橋の程度が大きいほど、湿気硬化ポリオレフィン生成物は、電力ケーブルの被覆層として使用するのにより好適となる。熱クリープにおける本発明の配合物の優れた性能は、比較配合物で得られた悲惨な結果からは予測できなかった。
【国際調査報告】