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2022-527476同定されたアデノシンフィンガープリントを利用したがんの処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(54)【発明の名称】同定されたアデノシンフィンガープリントを利用したがんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220526BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 31/6615 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20220526BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K45/06
A61K31/6615
A61K31/506
A61K33/24
A61K31/704
A61K31/282
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557643
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2020025242
(87)【国際公開番号】W WO2020205527
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/826,728
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521406684
【氏名又は名称】アーカス バイオサイエンシーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,エイミー エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】アショク,デビカ
(72)【発明者】
【氏名】ディレンツォ,ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウドヤヴァール,アクシャタ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ,マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,スティーブン ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086DA34
4C086EA10
4C086GA07
4C086GA08
4C086HA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法を提供する。確立されたアデノシンフィンガープリントは、血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の酵素活性の評価、及び/又は腫瘍におけるアデノシン機構タンパク質の発現レベルの評価を含む。本明細書において開示される方法は、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及びアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤からなる群から選択される治療剤を前記対象に投与することを含む。
【選択図】図5F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト並びにCD73阻害剤からなる群から選択される治療剤を対象に投与することを含む、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法であって、
対象におけるがんが、
(i)同型のがんを有する対象から得た血液中のCD73の典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中の可溶性CD73の濃度の増大、
(ii)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるCD73の典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるCD73の活性の増大、
(iii)CD73の免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるCD73の典型的な量と比較した、CD73の量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(iv)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるCD73の典型的な量と比較した、CD73の上方制御を示す、対象のがんの生検、
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する場合に、対象はCD73阻害剤を投与され、
対象におけるがんが、
(a)同型のがんを有する対象から得た血液中のTNAPの典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中のTNAPの濃度の増大、
(b)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるTNAPの典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるTNAPの活性の増大、
(c)TNAPの免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるTNAPの典型的な量と比較した、TNAPの量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(d)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるTNAPの典型的な量と比較した、TNAPの上方制御を示す、対象のがんの生検、
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストを投与される、
方法。
【請求項2】
対象におけるがんが、(i)から(iv)からなる群から選択される特徴の少なくとも2つを有する場合に、対象がCD73阻害剤を投与され、
対象におけるがんが、(a)から(d)からなる群から選択される特徴の少なくとも2つを有する場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストを投与される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象におけるがんが、(i)から(iv)からなる群から選択される特徴の少なくとも3つを有する場合に、対象がCD73阻害剤を投与され、
対象におけるがんが、(a)から(d)からなる群から選択される特徴の少なくとも3つを有する場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストを投与される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象におけるがんが、(i)から(iv)からなる群から選択される特徴の4つを有する場合に、対象がCD73阻害剤を投与され、
対象におけるがんが、(a)から(d)からなる群から選択される特徴の4つを有する場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストを投与される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象におけるがんが、(i)から(iv)及び(a)から(d)の各々から選択される特徴の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つを示す場合に、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストのみが投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
対象におけるがんが、(i)から(iv)及び(a)から(d)の各々から選択される特徴の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つを示す場合に、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト並びにCD73阻害剤の両方が投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象から得た血液中の可溶性CD73の濃度の増大が閾値1ng/mLを超える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象から得た血液中の可溶性CD73の濃度が閾値3ng/mLを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの活性の増大が、AMP-Glo加水分解アッセイによって決定され、且つ閾値を超えており、CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも10%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも20%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
免疫染色によって決定されるCD73及び/又はTNAPの量の増大が、同型のがんを有する対象から得た生検におけるCD73及び/又はTNAPの平均量を超える測定値である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
免疫染色によって決定されるCD73及び/又はTNAPの量の増大が、閾値を超えており、前記閾値が、少なくとも7%のCD73及び/又はTNAP染色区域である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
mRNAレベルによって決定される、対象から得た生検におけるCD73及び/又はTNAPの上方制御が、同型のがんを有する対象から得た生検におけるCD73及び/又はTNAPのmRNAの平均量を超える測定値である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの活性の増大が、同位体AMP加水分解アッセイによって決定され、且つ閾値を超えており、CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも10%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも20%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
対象から得た血液中の可溶性CD73又はTNAPの濃度が、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
血液中の可溶性CD73濃度、血液中のTNAP濃度、血液におけるCD73媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性、及び/又は血液におけるTNAP媒介AMP加水分解活性を決定するために使用される血液が、血漿又は血清である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが式(I)、
【化1】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物を有し、
式中、
G1はN又はCR3aであり、
G2はN又はCR3bであり、
G3はN又はCR3cであり、
R3a、R3b及びR3cの各々は独立してH又はC1~3アルキルであり、
R1a及びR1bは、
i) H
ii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたC1~8アルキル、
iii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換された-X1-O-C1~8アルキル、
iv) -C(O)-R6
v) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたY、及び
vi) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換された-X1-Y、
からなる群から各々独立して選択されるか、又は
vii) R1a及びR1bは、それらが結合する窒素と一緒に1~3つのR8置換基で必要に応じて置換された5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ヘテロシクロアルキルはO、N及びSからなる群から選択される0~2つの追加のヘテロ原子環頂点を有し、
各YはC3~8シクロアルキル又は、O、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、
R2及びR4は各々独立してH又はC1~3アルキルであり、
Ar1はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR9で必要に応じて置換されており、
Ar2はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR10で必要に応じて置換されており、
Ar1及びAr2の5~6員環のヘテロアリールはO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を各々独立して有し、
各X1はC1~6アルキレンであり、
各R5はヒドロキシル、C3~8シクロアルキル、フェニル、-O-フェニル、-C(O)ORa及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R6はC1~8アルキル又はYであり、それぞれはヒドロキシル、-O-フェニル、フェニル及び-O-C1~8アルキルからなる群から選択される1~3つの置換基で必要に応じて置換されており、
各R7はC1~8アルキル、ヒドロキシル、-O-C1~8アルキル、オキソ及びC(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各R8はC1~8アルキル、ヒドロキシル及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R9は、C1~8アルキル、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-X1-O-X1-O-C1~8アルキル、-C(O)ORa、ハロゲン、シアノ、-NRbRc、Y、-X1-C3~8シクロアルキル及び-X2-Zからなる群から独立して選択され、X2はC1~6アルキレン、-C1~6アルキレン-O-、-C(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され、ZはO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、前記R9置換基の各々は1~3つのR11で必要に応じて置換されており、
各R10は、C1~8アルキル、ハロ、シアノ、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)NRdRe、及びO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロアリールからなる群から独立して選択され、前記R10置換基の各々は1~3つのR12で必要に応じて置換されているか、又はAr2の隣接した環頂点上の2つのR10は必要に応じて組み合わされて1~2つのハロゲンで必要に応じて置換された5員環の複素環を形成し、
各R11は、ヒドロキシル、ハロ、シアノ、-NRdRe、-C(O)ORa、フェニル、C3~8シクロアルキル、及びC(O)ORaで必要に応じて置換されたC1~4アルキルからなる群から独立して選択され、
各R12は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各RaはH又はC1~6アルキルであり、
各Rb及びRcは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)ORa及び-X1-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各Rd及びReは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキルからなる群から独立して選択され、
但し、G1及びG2が各々Nであり、G3がCHであり、R2がCH3であり、R1a及びR1bが各々Hである場合、Ar2は2-チエニル、フェニル、2-、3-若しくは4-メトキシフェニル、3-若しくは4-ハロフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,4-ジクロロフェニル又は2-若しくは4-メチルフェニル以外である、
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物1
【化2】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物2
【化3】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物3
【化4】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが、AZD4635、シフォラデナント(CPI-444)、NIR178、及びPBF-1129からなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
CD73阻害剤が式(i)、
【化5】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物を有し、
式中、
各R1は、水素、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル、必要に応じて置換されたアリール及び-C(R2R2)-O-C(O)-OR3からなる群から独立して選択されるか、又は2つのR1基は必要に応じて組み合わされて5~7員環を形成し、
各R2は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、
各R3は、H、C1~C6アルキル及び必要に応じて置換されたアリールからなる群から独立して選択され、
R5は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から選択され、
XはO、CH2及びSからなる群から選択され、
Aは以下からなる群から選択され:
【化6】
その各々は1~5つのR6置換基で必要に応じて置換されており、
式中、下付き文字nは0から3の整数であり、
Zは、CH2、CHR6、NR6及びOからなる群から選択され、
各R6は、H、CH3、OH、CN、F、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル及びOC(O)-C1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、必要に応じて隣接した環頂点上の2つのR6基は連結されて、環頂点として少なくとも1つのヘテロ原子を有する5~6員環を形成し、
Hetは以下からなる群から選択され:
【化7】
式中、波線は化合物の残部への結合点を示し、且つ、
Raは、H、NH2、NHR7、NHC(O)R7、NR7R7、R7、OH、SR7、及びOR7からなる群から選択され、
Rbは、H、ハロゲン、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH、及びOR7からなる群から選択され、
Rc及びRdは、H、ハロゲン、ハロアルキル、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH、OR7、SR7、SO2R7、-X1-NH2、-X1-NHR7、-X1-NR7R7、-X1-OH、-X1-OR7、-X1-SR7、及び-X1-SO2R7からなる群から独立して選択され、
Re及びRfは、H、ハロゲン、及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、
各X1はC1~C4アルキレンであり、且つ
各R7は、必要に応じて置換されたC1~C10アルキル、必要に応じて置換されたC2~C10アルケニル、必要に応じて置換されたC2~C10アルキニル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルケニル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルキニル、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルケニル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC2~C4アルキニルからなる群から独立して選択され、必要に応じて、窒素原子に結合する2つのR7基は共に連結されて、必要に応じてアリール環に融合される4~7員環の複素環を形成し、
但し、これらの化合物は、X、A及びHetの組合せが
【化8】
をもたらす化合物以外のものであり、
式中、RgはHであるか又は2つのRg基が組み合わされてアセトニドを形成し、かつ、
(1) Rc及びReは水素であり、Raは-OEt、-OCH2Ph、-SCH2Ph、-NH2、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、フェニルアミノ、ベンジルアミノ、2-フェニルエチルアミノ、N-ベンジル-N-エチルアミノ、ジベンジルアミノ、4-アミノベンジルアミノ、4-クロロベンジルアミノ、4-ニトロベンジルアミノ若しくは4-スルファモイルベンジルアミノであるか、又は
(2) Rcは水素であり、Raは-NH2であり、Reはブロモ、クロロ、アミノメチル又はチオエチルであるか、又は
(3) Rcは水素であり、Raはベンジルアミノであり、Reはブロモである、
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
CD73阻害剤が化合物A
【化9】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
CD73阻害剤が化合物B
【化10】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
CD73阻害剤が化合物C
【化11】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
CD73阻害剤が、オレクルマブ(MEDI-9447)、CPI-006、NZV930/SRF373、BMS-986179、及びTJ4309からなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
対象のがんの生検が、がんがPD-L1陽性であることを示す場合には、PD1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤を対象に投与することをさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
PD1及び/又はPD-L1阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、MEDI-0680、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308、PF-06801591、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042、及びSTI-1014からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
PD1及び/又はPD-L1阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
全エクソームシークエンシング(WES)によって決定される対象の腫瘍遺伝子変異量(TMB)が2.0未満である場合に、化学療法剤を対象に投与することをさらに含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
化学療法剤が、プラチナをベースとした又はアントラサイクリンをベースとした化学療法剤を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びドキソルビシンからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
がんが、前立腺、結腸、直腸、膵臓、頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚(黒色腫及び基底癌を含む)、中皮内膜、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、乳房(トリプルネガティブ乳がんを含む)、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、副腎腺、甲状腺、腎臓、若しくは骨のがんであるか、又は、神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫(カポジ肉腫を含む)、絨毛癌、皮膚基底細胞癌、若しくは精巣セミノーマである、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
アデノシンの細胞外産生を標的にする及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する治療剤を対象に投与することを含む、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法であって、
対象におけるがんが、
(i)同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度の増大、
(ii)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるCD73又はTNAPの活性の増大、
(iii)1つ以上のアデノシン機構タンパク質の免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較した、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(iv)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較した、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の上方制御を示す、対象のがんの生検、
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する、
方法。
【請求項36】
がんが、(i)から(iv)から選択される少なくとも2つの特徴を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
がんが、(i)から(iv)から選択される少なくとも3つの特徴を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
がんが、(i)から(iv)から選択される少なくとも4つの特徴を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
特徴(i)から(iv)のいずれか1つにおける1つ以上のアデノシン機構タンパク質がCD73又はTNAPである、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度の増大が、同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質のいずれか1つの平均濃度を超えた測定値である、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの活性の増大が、AMP-Glo加水分解アッセイによって決定され、且つ閾値を超えており、CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも10%である、請求項35から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも20%である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
免疫染色によって決定される1つ以上のアデノシン機構タンパク質の量の増大が、同型のがんを有する対象から得た生検の1つ以上のアデノシン機構タンパク質のいずれか1つの平均量を超える測定値である、請求項35から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
mRNAレベルによって決定される、対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の上方制御が、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質のいずれか1つの平均量を超える測定値である、請求項35から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの活性の増大が、同位体AMP加水分解アッセイによって決定され、且つ閾値を超えており、CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも10%である、請求項35から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
CD73及び/又はTNAP媒介AMP加水分解の前記閾値が、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも20%である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
対象の血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度が、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される、請求項35から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度、血液におけるCD73媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性、及び/又は血液におけるTNAP媒介AMP加水分解活性を決定するために使用される血液が、血漿又は血清である、請求項35から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤が、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)阻害剤、CD73阻害剤、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)阻害剤、CD38阻害剤及びCD39阻害剤からなる群から選択される、請求項35から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤が、アデノシンA1受容体(A1R)アンタゴニスト、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/若しくはアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト、又はアデノシンA3受容体アンタゴニスト(A3R)である、請求項35から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤が、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストである、請求項35から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが式(I)、
【化12】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物を有し、
式中、
G1はN又はCR3aであり、
G2はN又はCR3bであり、
G3はN又はCR3cであり、
R3a、R3b及びR3cの各々は独立してH又はC1~3アルキルであり、
R1a及びR1bは、
i) H
ii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたC1~8アルキル、
iii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換された-X1-O-C1~8アルキル、
iv) -C(O)-R6
v) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたY、及び
vi) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換された-X1-Y、
からなる群から各々独立して選択されるか、又は
vii) R1a及びR1bは、それらが結合する窒素と一緒に1~3つのR8置換基で必要に応じて置換された5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ヘテロシクロアルキルはO、N及びSからなる群から選択される0~2つの追加のヘテロ原子環頂点を有し、
各YはC3~8シクロアルキル又は、O、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、
R2及びR4は各々独立してH又はC1~3アルキルであり、
Ar1はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR9で必要に応じて置換されており、
Ar2はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR10で必要に応じて置換されており、
Ar1及びAr2の5~6員環のヘテロアリールはO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を各々独立して有し、
各X1はC1~6アルキレンであり、
各R5はヒドロキシル、C3~8シクロアルキル、フェニル、-O-フェニル、-C(O)ORa及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R6はC1~8アルキル又はYであり、それぞれはヒドロキシル、-O-フェニル、フェニル及び-O-C1~8アルキルからなる群から選択される1~3つの置換基で必要に応じて置換されており、
各R7はC1~8アルキル、ヒドロキシル、-O-C1~8アルキル、オキソ及びC(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各R8はC1~8アルキル、ヒドロキシル及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R9は、C1~8アルキル、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-X1-O-X1-O-C1~8アルキル、-C(O)ORa、ハロゲン、シアノ、-NRbRc、Y、-X1-C3~8シクロアルキル及び-X2-Zからなる群から独立して選択され、X2はC1~6アルキレン、-C1~6アルキレン-O-、-C(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され、ZはO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、前記R9置換基の各々は1~3つのR11で必要に応じて置換されており、
各R10は、C1~8アルキル、ハロ、シアノ、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)NRdRe、及びO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロアリールからなる群から独立して選択され、前記R10置換基の各々は1~3つのR12で必要に応じて置換されているか、又はAr2の隣接した環頂点上の2つのR10は必要に応じて組み合わされて1~2つのハロゲンで必要に応じて置換された5員環の複素環を形成し、
各R11は、ヒドロキシル、ハロ、シアノ、-NRdRe、-C(O)ORa、フェニル、C3~8シクロアルキル、及びC(O)ORaで必要に応じて置換されたC1~4アルキルからなる群から独立して選択され、
各R12は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各RaはH又はC1~6アルキルであり、
各Rb及びRcは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)ORa及び-X1-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各Rd及びReは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキルからなる群から独立して選択され、
但し、G1及びG2が各々Nであり、G3がCHであり、R2がCH3であり、R1a及びR1bが各々Hである場合、Ar2は2-チエニル、フェニル、2-、3-若しくは4-メトキシフェニル、3-若しくは4-ハロフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,4-ジクロロフェニル又は2-若しくは4-メチルフェニル以外である、
請求項51に記載の方法。
【請求項53】
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物1
【化13】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物2
【化14】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物3
【化15】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが、AZD4635、シフォラデナント(CPI-444)、NIR178及びPBF-1129からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤がA1Rアンタゴニストである、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤がA3Rアンタゴニストである、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD73阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
CD73阻害剤が式(i)、
【化16】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物を有し、
式中、
各R1は、水素、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル、必要に応じて置換されたアリール及び-C(R2R2)-O-C(O)-OR3からなる群から独立して選択されるか、又は2つのR1基は必要に応じて組み合わされて5~7員環を形成し、
各R2は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、
各R3は、H、C1~C6アルキル及び必要に応じて置換されたアリールからなる群から独立して選択され、
R5は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から選択され、
XはO、CH2及びSからなる群から選択され、
Aは以下からなる群から選択され:
【化17】
その各々は1~5つのR6置換基で必要に応じて置換されており、
式中、下付き文字nは0から3の整数であり、
Zは、CH2、CHR6、NR6及びOからなる群から選択され、
各R6は、H、CH3、OH、CN、F、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル及びOC(O)-C1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、必要に応じて隣接した環頂点上の2つのR6基は連結されて、環頂点として少なくとも1つのヘテロ原子を有する5~6員環を形成し、
Hetは以下からなる群から選択され:
【化18】
式中、波線は化合物の残部への結合点を示し:
Raは、H、NH2、NHR7、NHC(O)R7、NR7R7、R7、OH、SR7及びOR7からなる群から選択され、
Rbは、H、ハロゲン、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH及びOR7からなる群から選択され、
Rc及びRdは、H、ハロゲン、ハロアルキル、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH、OR7、SR7、SO2R7、-X1-NH2、-X1-NHR7、-X1-NR7R7、-X1-OH、-X1-OR7、-X1-SR7及び-X1-SO2R7からなる群から独立して選択され、
Re及びRfは、H、ハロゲン及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、
各X1はC1~C4アルキレンであり、
各R7は、必要に応じて置換されたC1~C10アルキル、必要に応じて置換されたC2~C10アルケニル、必要に応じて置換されたC2~C10アルキニル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルケニル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルキニル、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルケニル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC2~C4アルキニルからなる群から独立して選択され、必要に応じて窒素原子に結合する2つのR7基は連結されて、必要に応じてアリール環に融合される4~7員環の複素環を形成し、
但し、これらの化合物は、X、A及びHetの組合せが
【化19】
をもたらす化合物以外のものであり、
式中、RgはHであるか又は2つのRg基が組み合わされてアセトニドを形成し、かつ、
(1) Rc及びReは水素であり、Raは-OEt、-OCH2Ph、-SCH2Ph、-NH2、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、フェニルアミノ、ベンジルアミノ、2-フェニルエチルアミノ、N-ベンジル-N-エチルアミノ、ジベンジルアミノ、4-アミノベンジルアミノ、4-クロロベンジルアミノ、4-ニトロベンジルアミノ若しくは4-スルファモイルベンジルアミノであるか、又は
(2) Rcは水素であり、Raは-NH2であり、Reはブロモ、クロロ、アミノメチル又はチオエチルであるか、又は
(3) Rcは水素であり、Raはベンジルアミノであり、Reはブロモである、
請求項59に記載の方法。
【請求項61】
CD73阻害剤が化合物A
【化20】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
CD73阻害剤が化合物B
【化21】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
CD73阻害剤が化合物C
【化22】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
CD73阻害剤がオレクルマブ(MEDI-9447)、CPI-006、NZV930/SRF373、BMS-986179及びTJ4309からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がTNAP阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項66】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がENPP1阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項67】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD38阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項68】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD39阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項69】
対象のがんの生検が、がんがPD-L1陽性であることを示す場合には、PD1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤を対象に投与することをさらに含む、請求項35から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
PD1及び/又はPD-L1阻害剤がペムブロリズマブ、ニボルマブ、MEDI-0680、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308、PF-06801591、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042及びSTI-1014からなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
PD1及び/又はPD-L1阻害剤がペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブからなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
WESによって決定される対象のTMBが2.0未満である場合に、化学療法剤を対象に投与することをさらに含む、請求項35から71に記載の方法。
【請求項73】
化学療法剤がプラチナをベースとした又はアントラサイクリンをベースとした化学療法剤を含む、請求項72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
化学療法剤がシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
がんが、前立腺、結腸、直腸、膵臓、頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚(黒色腫及び基底癌を含む)、中皮内膜、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、乳房(トリプルネガティブ乳がんを含む)、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、副腎腺、甲状腺、腎臓又は骨のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫(カポジ肉腫を含む)、絨毛癌、皮膚基底細胞癌若しくは精巣セミノーマである、請求項35から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
1つ以上のアデノシン機構タンパク質の発現及び/又は活性を改変するがんを有すると同定された対象を処置する方法であって、それを必要とする対象にアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤を投与することを含む方法。
【請求項77】
アデノシン機構タンパク質が組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38、CD39、アデノシンA1受容体(A1R)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、アデノシンA2b受容体(A2bR)、アデノシンA3受容体(A3R)からなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
対象がヒト対象である、請求項1から77のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月29日に出願された米国仮出願第62/826,728号(その内容が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれる)についての優先権に基づく利益を主張する出願である。
【0002】
連邦支援研究開発の下でなされた発明に対する権利に関する記載
適用なし
【0003】
コンパクトディスクで提出される「配列表」、表又はコンピュータープログラムリスト添付資料の参照
適用なし
【発明の概要】
【0004】
一部の態様では、アデノシンの細胞外産生を標的にする及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する治療剤を対象に投与することを含む、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法であって、
対象におけるがんが、
(i)同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度の増大、
(ii)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるCD73又はTNAPの活性の増大、
(iii)1つ以上のアデノシン機構タンパク質の免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較した、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(iv)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較した、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の上方制御を示す、対象のがんの生検
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する方法が提供される。
【0005】
本明細書において提供される一部の態様は、血液中の可溶性CD73の濃度を検出するための、並びに試料におけるCD73媒介及び/又はTNAP媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性を決定するためのキット及び方法である。
【0006】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】CD73 ELISAアッセイの原理を概説する略図である。
図2A】末梢血中の可溶性CD73を定量するためのロバストなアッセイを示す図である。(A)は、健康なドナーから得た血漿と血清とにおける可溶性CD73の濃度をプロットしており、強い相関を示す。
図2B】末梢血中の可溶性CD73を定量するためのロバストなアッセイを示す図である。(B)は、アッセイの定量範囲を同定する、平行性評価をプロットしている。
図2C】末梢血中の可溶性CD73を定量するためのロバストなアッセイを示す図である。(C)は、健康な対象及びがんを有する対象の可溶性CD73のレベルをプロットしており、概して可溶性CD73のレベルががん患者において上昇していることを示している。
図3A】AMP-Glo(商標)を使用した、血清におけるAMP加水分解の決定を示す図である。(A)は、アッセイの原理を概説する略図を示す。
図3B】AMP-Glo(商標)を使用した、血清におけるAMP加水分解の決定を示す図である。(B)は、異なる条件下(+/-CD73阻害剤及び/又はTNAP阻害剤)での、健康なボランティアの血清におけるAMP加水分解をプロットしている。
図3C】AMP-Glo(商標)を使用した、血清におけるAMP加水分解の決定を示す図である。(C)は、健康なボランティア及びがん患者の血清のCD73タンパク質濃度とAMP加水分解活性との間の相関をプロットしている。
図4A】CD73及びTNAPについてのヒト腫瘍のTCGA分析を示す図である。The Cancer Genome Atlas試料における、RNAseqからのCD73(パネルA)及びTNAP(パネルB)の発現がプロットされている。数値は、試料100万当たりのlog2カウントの比を示している。試料はそれらのCD73/TNAP比に従って並べられており、CD73を多く発現する腫瘍ほど左、TNAPが多い腫瘍ほど右となっている。
図4B】CD73及びTNAPについてのヒト腫瘍のTCGA分析を示す図である。The Cancer Genome Atlas試料における、RNAseqからのCD73(パネルA)及びTNAP(パネルB)の発現がプロットされている。数値は、試料100万当たりのlog2カウントの比を示している。試料はそれらのCD73/TNAP比に従って並べられており、CD73を多く発現する腫瘍ほど左、TNAPが多い腫瘍ほど右となっている。
図5A-B】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるCD73の検出及び定量を示す図である。(A~D)は、ヒトFFPE腫瘍試料でのCD73の免疫染色(茶色)の代表的な画像を示している。示されている腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)(A、B)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)(C)、及び結腸直腸がん(CRC)(D)である。
図5C-D】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるCD73の検出及び定量を示す図である。(A~D)は、ヒトFFPE腫瘍試料でのCD73の免疫染色(茶色)の代表的な画像を示している。示されている腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)(A、B)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)(C)、及び結腸直腸がん(CRC)(D)である。
図5E】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるCD73の検出及び定量を示す図である。パネルEは、列挙したがんにおける腫瘍区域全体に対するパーセンテージとしてのCD73染色区域の定量を示している。
図5F】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるCD73の検出及び定量を示す図である。そして、パネルFは、Hスコアと染色区域のパーセントとの間の相関をプロットしている。
図6A-B】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるTNAPの検出及び定量を示す図である。(A~D)は、ヒトFFPE腫瘍試料でのTNAPの免疫染色(茶色)の代表的な画像を示している。示されている腫瘍は、卵巣がん(A)、非小細胞肺がん(NSCLC)(B)、乳がん(C)、及び結腸直腸がん(CRC)(D)である。
図6C-D】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるTNAPの検出及び定量を示す図である。(A~D)は、ヒトFFPE腫瘍試料でのTNAPの免疫染色(茶色)の代表的な画像を示している。示されている腫瘍は、卵巣がん(A)、非小細胞肺がん(NSCLC)(B)、乳がん(C)、及び結腸直腸がん(CRC)(D)である。
図6E】免疫染色を使用した、ヒト腫瘍におけるTNAPの検出及び定量を示す図である。パネルEは、列挙したがんにおける腫瘍区域全体に対するパーセンテージとしてのTNAP染色区域の定量を示している。
図7A-B】ヒト血漿における、13C5-AMPから13C5-アデノシンへのCD73媒介脱リン酸の阻害を示す図である。(A~C)は、化合物Aのある特定の試験濃度で残存する活性のパーセントの代表的なプロットを示している。示されているデータポイント及びプロットを使用して、ボランティア1(パネルA)、ボランティア2(パネルB)、及びボランティア3(パネルC)でのIC50を算出した。
図7C】ヒト血漿における、13C5-AMPから13C5-アデノシンへのCD73媒介脱リン酸の阻害を示す図である。(A~C)は、化合物Aのある特定の試験濃度で残存する活性のパーセントの代表的なプロットを示している。示されているデータポイント及びプロットを使用して、ボランティア1(パネルA)、ボランティア2(パネルB)、及びボランティア3(パネルC)でのIC50を算出した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I.総論
本開示は、対象におけるがんのアデノシンフィンガープリントの評価及び決定が、がんをより効果的に処置する方法を提供する、という発見に注目したものである。特に、がんのアデノシンフィンガープリントの決定は、特定の治療レジメンに対してより好ましい応答をする対象を同定する手段を提供する。
【0009】
II.定義
別途指示がない限り、以下の用語は、下に示す意味を有するものである。他の用語は、明細書全体の他の場所で規定される。
【0010】
用語「アルキル」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、他に記載されていない限り、指定された数の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する(すなわち、C1~8は、1~8個の炭素を意味する)。アルキルとしては、任意の数の炭素、例えば、C1~2、C1~3、C1~4、C1~5、C1~6、C1~7、C1~8、C1~9、C1~10、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C3~4、C3~5、C3~6、C4~5、C4~6及びC5~6が含まれる。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0011】
用語「アルキレン」は、示された数の炭素原子を持ち、少なくとも2つの他の基を連結している直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族ラジカル、すなわち2価の炭化水素ラジカルを指す。アルキレンに連結している2つの部分は、アルキレン基の同じ原子に連結していても、異なる原子に連結していてもよい。例えば、直鎖アルキレンは、-(CH2)n-の2価のラジカルであることができ、ここでnは1、2、3、4、5又は6である。代表的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、secブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書においてしばしばX1基又はX2基と称するアルキレン基は、置換型又は非置換型であり得る。X1又はX2を含む基が必要に応じて置換されている場合、必要に応じた置換は、その部分のアルキレン部においてなされてよいことが理解されたい。
【0012】
用語「シクロアルキル」は、示された数の環原子を有し(例えば、C3~6シクロアルキル)、完全に飽和しているか、又は環頂点間に1つを超えない二重結合を有する炭化水素環を指す。「シクロアルキル」はまた、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなどの二環式及び多環式炭化水素環を指すことが意図される。一部の実施形態では、本開示のシクロアルキル組成物は、単環式C3~6シクロアルキル部分である。
【0013】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、示された数の環頂点(又はメンバー)を有し、N、O、及びSから選択される1~5個の炭素頂点を置き換えるヘテロ原子を1~5個有するシクロアルキル環を指し、窒素及び硫黄原子は場合により酸化され、窒素原子(複数可)は場合により四級化されている。シクロヘテロアルキルは、単環式、二環式、又は多環式環系であってもよい。シクロヘテロアルキル基の非限定的な例としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、1,4-ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリン-S-オキシド、チオモルホリン-S,S-オキシド、ピペラジン、ピラン、ピリドン、3-ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジンなどが挙げられる。シクロヘテロアルキル基は、環炭素又はヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。
【0014】
本明細書で使用される場合、本明細書中に記載される任意の化学構造における単結合、二重結合、又は三重結合を横切る波線「
」は、分子の残部への単結合、二重結合、又は三重結合の結合点を表す。さらに、環(例えば、フェニル環)の中心へと伸びた結合は、任意の利用可能な環頂点における結合を示すことを意味する。環に結合しているように示される複数の置換基が、安定した化合物をもたらし、他の場合には立体的は互換性を有する環頂点を占めることは、当業者には明らかであろう。二価の成分の場合における表現は、いずれの方向(順方向又は逆方向)も含むことを意味する。例えば、基「-C(O)NH-」では、-C(O)NH-又は-NHC(O)-のいずれの方向の連結も含むことを意味し、同様に、「-O-CH2CH2-」は-O-CH2CH2-及び-CH2CH2-O-の両方を含むことを意味する。
【0015】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、他に記載されていない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことが意図される。例えば、用語「C1~4ハロアルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことが意図される。
【0016】
用語「アリール」は、他に記載されていない限り、単環、又は一緒に縮合しているか若しくは共有結合している多環(3つまでの環)であり得る、多価不飽和の、典型的には芳香族の炭化水素基を意味する。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。
【0017】
用語「ヘテロアリール」は、N、O、及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を含有するアリール基(又は環)を指し、窒素及び硫黄原子は場合により酸化され、窒素原子(複数可)は場合により四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリル、チエニルなどが挙げられる。ヘテロアリール環のそれぞれの置換基は、以下に記載される許容される置換基の群から選択され得る。
【0018】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」)は、一部の実施形態では、場合により、置換される。各タイプのラジカルの選択される置換基は、以下に提供される。
【0019】
場合により、アルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、及びアルキニルとしばしば呼ばれる基を含む)の置換基は、0から(2m'+1)の範囲の数の、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-CN(シアノ)、-NO2、アリール、アリールオキシ、オキソ、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから選択される様々な基であってよく、m'はこのようなラジカル中の炭素原子の総数である。R'、R''、及びR'''は、それぞれ独立して、水素;非置換C1~8アルキル;非置換アリール;1~3個のハロゲンで置換されたアリール、C1~8アルコキシ若しくはC1~8チオアルコキシ基;又は非置換アリール-C1~4アルキル基を表す。R'及びR''が同じ窒素原子に結合している場合、それらは窒素原子と組み合わされて、3、4、5、6、又は7員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことが意図される。
【0020】
場合により、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルラジカルの置換基は、場合により、C(O)OR'、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-CN(シアノ)、-NO2、アリール、アリールオキシ及びオキソから選択される様々な基で置換されるアルキルであってよい。R'、R''、及びR'''は、それぞれ独立して、水素;非置換C1~8アルキル;非置換アリール;1~3個のハロゲンで置換されたアリール、C1~8アルコキシ若しくはC1~8チオアルコキシ基;又は非置換アリール-C1~4アルキル基を表す。
【0021】
同様に、場合により、アリール及びヘテロアリール基の置換基は、多様であり、一般に、0から芳香族環系上の開放原子価(open valence)の総数までの範囲の数の、-ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-N3、ペルフルオロ(C1~C4)アルコキシ、及びペルフルオロ(C1~C4)アルキルから選択され; R'、R''、及びR'''は、独立して、水素、C1~8アルキル、C1~8ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C2~8アルケニル、及びC2~8アルキニルから選択される。他の適切な置換基としては、炭素原子1~6個のアルキレンテザー(tether)によって環原子に結合した上記アリール置換基のそれぞれが挙げられる。
【0022】
アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、場合により、式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基で置き換わっていてもよく、式中、T及びUは、独立して、-NH-、-O-、-CH2-、又は単結合であり、qは0~2の整数である。あるいは、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、場合により、式-A-(CRfRg)r-B-の置換基で置き換わっていてもよく、式中、A及びBは、独立して、-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-、又は単結合であり、rは1~3の整数であり、Rf及びRgは、それぞれ独立してH又はハロゲン(H of halogen)である。このようにして形成された新しい環の単結合の1つは、場合により、二重結合で置き換わっていてもよい。あるいは、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、場合により、式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基で置き換わっていてもよく、式中、s及びtは、独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、又は-S(O)2NR'-である。-NR'-及び-S(O)2NR'-中の置換基R'は、水素又は非置換C1~6アルキルから選択される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、及びケイ素(Si)を含むことが意図される。
【0024】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書に記載の化合物上に見られる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸又は塩基で調製される活性化合物の塩を含むことが意図される。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を有する場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態を、純粋な状態の又は適切な不活性溶媒中のいずれかの、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される無機塩基から誘導される塩の例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩としては、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなどを含めた第一級、第二級、及び第三級アミン、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を有する場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態を、純粋な状態の又は適切な不活性溶媒中のいずれかの、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などの無機酸から誘導されるもの、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的非毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、並びにグルクロン酸若しくはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S.M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照)。本発明のある特定の化合物は、化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも変換されることを可能にする塩基性及び酸性の両方の官能性を有する。
【0025】
化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の方法で単離することによって、再生することができる。化合物の親形態は、特定の物理的性質、例えば、極性溶媒への溶解性において様々な塩形態とは異なるが、他の点では、塩は、本発明の目的において化合物の親形態と等価である。塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境において化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグを、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバー中に配置した場合、本発明の化合物にゆっくりと変換させることができる。プロドラッグは、本明細書の他の場所に詳細に記載されている。
【0026】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境において化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグを、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバー中に配置した場合、本発明の化合物にゆっくりと変換させることができる。
【0027】
本発明のある特定の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態、例えば水和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶又は非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって企図される用途について等価であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0028】
本発明のある特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し; ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体、及び個々の異性体(例えば、分かれた鏡像異性体)は、全て本発明の範囲内に包含されることが意図される。立体化学的描写が示されている場合、異性体の1つが存在し、他の異性体が実質的に存在しない化合物を指すことが意図される。別の異性体が「実質的に存在しない」とは、2つの異性体の少なくとも80/20の比、より好ましくは90/10、又は95/5若しくはそれを超える比を示す。一部の実施形態では、異性体の1つが、少なくとも99%の量で存在する。
【0029】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子の1つ以上に原子同位体の非天然の割合を含有してもよい。同位体の非天然の割合は、自然界に見出される量から、問題の原子が100%を構成する量までの範囲と定義することができる。例えば、化合物は、放射性同位体、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、若しくは炭素-14(14C)、又は非放射性同位体、例えば重水素(2H)若しくは炭素-13(13C)を組み込んでもよい。このような同位体バリエーションは、本出願の他の場所に記載されたものに追加の有用性を提供することができる。例えば、本発明の化合物の同位体バリアントは、追加の有用性、例えば以下に限定されないが、診断及び/若しくは画像化試薬として、又は細胞傷害性/放射性毒性治療剤としての有用性を見出すことができる。さらに、本発明の化合物の同位体バリアントは、治療中の安全性、忍容性、又は効力の増強に寄与し得る変化した薬物動態特性及び薬力学特性を有することができる。本発明の化合物の全ての同位体バリエーションは、放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0030】
用語「患者」又は「対象」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を指すために互換的に使用される。
【0031】
用語「投与」、「投与する」などは、それらが例えば対象、細胞、組織、臓器又は体液に適用される場合、例えばA2aR/A2bRの阻害剤(又は、本明細書に記載される別の阻害剤又はアンタゴニスト)又はそれを含む医薬組成物の、対象、細胞、組織、臓器又は体液への接触を指す。細胞との関連で、投与は試薬の細胞への接触(例えば、in vitro又はex vivoの)、並びに試薬の液体への接触を含み、ここで液体は細胞と接触している。
【0032】
用語「処置する」、「処置すること」、「処置」などは、対象を侵す疾患、障害若しくは状態の根底にある原因の少なくとも1つ、又は対象を侵す疾患、障害、状態に関連した症状の少なくとも1つを一時的又は恒久的に排除、低減、抑制、軽減又は改善するために、疾患、障害又は状態又はその症状が診断、観察された後などに開始される一連の行動(例えば、本明細書に記載されるA2aR/A2bRの阻害剤又は別の阻害剤若しくはアンタゴニストを投与すること)を指す。したがって、処置は、活動性の疾患を阻止すること(例えば、疾患、障害又は状態又はそれに関連した臨床症状の発生又はさらなる発達を抑えること)を含む。
【0033】
本明細書で使用される用語「処置を必要とする」は、対象が処置を必要とするか又はその恩恵を受けるという医師又は他の看護人による判断を指す。この判断は、医師又は看護人の専門知識の領域内にある様々な因子に基づいてなされる。
【0034】
用語「予防する」、「予防すること」、「予防」などは、一般的に特定の疾患、障害又は状態の素因を有する対象との関連で、疾患、障害、状態などを起こす対象のリスクを一時的又は恒久的に予防、抑制、阻止若しくは低減するか(例えば、臨床症状の不在で決定される)又はその発症を遅らせるような方法で(例えば、疾患、障害、状態又はその症状の発症前に)開始される一連の行動(例えば、本明細書に記載されるA2aR/A2bR阻害剤又は別の阻害剤若しくはアンタゴニストを投与すること)を指す。ある特定の場合には、これらの用語は、疾患、障害若しくは状態の進行を遅らせること、又は有害であるかさもなければ望ましくない状態へのその進行を阻止することも指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「予防を必要とする」は、対象が予防的医療を必要とするか又はその恩恵を受けるという医師又は他の看護人による判断を指す。この判断は、医師又は看護人の専門知識の領域内にある様々な因子に基づいてなされる。
【0036】
「治療的有効量」という語句は、対象へ投与したときに疾患、障害又は状態の任意の症状、態様又は特徴に任意の検出可能な正の効果を及ぼすことが可能な量での、単独での又は医薬組成物の一部としての、及び単回投与での又は一連の投与の一部としての対象への薬剤の投与を指す。治療的有効量は関連する生理的効果を測定することによって確認することができ、それは投薬レジメン及び対象の状態などの診断分析に関連して調整することができる。例として、投与後の特定の時間のA2aR/A2bR阻害剤(又は、例えば本明細書に記載される別の阻害剤又はアンタゴニスト)の血清レベルの測定は、治療的有効量が使用されたかどうかの指標となることができる。
【0037】
「変化をもたらすのに十分な量で」という語句は、特定の療法の投与の前(例えば、ベースラインレベル)及び後に測定される指標のレベルの間に検出可能な差があることを意味する。指標には、任意の客観的なパラメーター(例えば、血清濃度)又は主観的なパラメーター(例えば、対象の健康感覚)が含まれる。
【0038】
用語「小分子」は、約10kDa未満、約2kDa未満又は約1kDa未満の分子量を有する化合物を指す。小分子には、限定されずに、無機分子、有機分子、無機の構成成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子及び合成分子が含まれる。治療上、小分子は大分子より細胞に透過性であり、分解に感受性でなく、免疫応答を導き出す可能性が低い。
【0039】
用語「リガンド」は、例えば、受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用することができるペプチド、ポリペプチド、膜関連若しくは膜結合分子、又はその複合体を指す。リガンドは天然及び合成のリガンド、例えば、サイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、突然変異タンパク質(mutein)及び抗体に由来する結合性組成物、並びに小分子を包含する。この用語は、アゴニストでもアンタゴニストでもないが、その生物学的特性、例えば、シグナル伝達又は接着に有意に影響することなく受容体に結合することができる薬剤も包含する。さらに、この用語は、例えば化学的又は組換え方法によって膜結合リガンドの可溶性バージョンに変更された膜結合リガンドを含む。リガンド又は受容体は完全に細胞内であってよく、すなわち、それはサイトゾル、核又は一部の他の細胞内コンパートメントに存在することができる。リガンド及び受容体の複合体は、「リガンド-受容体複合体」と呼ばれる。
【0040】
用語「阻害剤」及び「アンタゴニスト」又は「活性化因子」及び「アゴニスト」は、例えば、リガンド、受容体、補因子、遺伝子、細胞、組織又は臓器などの活性化などのための阻害性又は活性化作用の分子をそれぞれ指す。阻害剤は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体又は細胞を減少、ブロック、阻止、活性化を遅延、不活化、脱感作又は下方制御する分子である。活性化因子は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体又は細胞を増加、活性化、促進、活性化を増強、感作又は上方制御する分子である。阻害剤は、構成的活性を低減、ブロック又は不活性化する分子として規定することもできる。「アゴニスト」は、標的と相互作用して標的の活性化の増加を引き起こすか促進する分子である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用に対抗する分子である。アンタゴニストは、アゴニストの活性を阻止、低減、阻害又は中和し、アンタゴニストは、特定されたアゴニストがない場合でさえも標的、例えば標的受容体の構成的活性を阻止、阻害又は低減することもできる。
【0041】
用語「モジュレートする」、「モジュレーション」などは、本明細書に記載されるアデノシン関連タンパク質の機能又は活性を直接的又は間接的に増減する分子(例えば、活性化因子又は阻害剤)の能力を指す。モジュレーターは単独で作用することができるか、又はそれは補因子、例えばタンパク質、金属イオン又は小分子を使用することができる。モジュレーターの例には、小分子化合物及び他の生物有機化学分子が含まれる。小分子化合物の多数のライブラリー(例えば、コンビナトリアルライブラリー)が市販されており、モジュレーターを特定するための出発点の役割をすることができる。当業者は、所望の特性を有する1つ以上の化合物を特定するためにそのような化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる、1つ以上のアッセイ(例えば、生化学的又は細胞をベースとしたアッセイ)を開発することができる。その後、熟練薬学者は、例えばその類似体及び誘導体を合成して評価することによって、そのような1つ以上の化合物を最適化することができる。活性化因子の特定において、合成及び/又は分子モデリング研究を利用することもできる。
【0042】
分子の「活性」は、分子のリガンド又は受容体への結合、触媒活性、遺伝子発現又は細胞のシグナル伝達、分化若しくは成熟を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性のモジュレーションなどを記載するか指すことができる。用語「増殖活性」は、例えば正常な細胞分裂並びにがん、腫瘍、形成異常、細胞形質転換、転移及び血管新生を促進するか、そのために必要であるか、それと特異的に関連する活性を包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「同等の」、「同等の活性」、「と同等の活性」、「同等の効果」、「と同等の効果」などは、定量的及び/又は定性的に見ることができる相対語である。これらの用語の意味は、それらが使用される状況に頻繁に依存する。例として、両方が1つの受容体を活性化する2つの薬剤は、定性的観点から同等の効果を有すると見ることができるが、当技術分野認定のアッセイ(例えば、用量反応アッセイ)又は当技術分野認定の動物モデルで決定される通り、1つの薬剤が他の薬剤の活性の20%を達成することができるだけであるならば、2つの薬剤は定量的観点から同等の効果が欠如していると見ることができる。1つの結果を別の結果と(例えば、1つの結果を参照標準と)比較する場合、「同等」は、1つの結果が参照標準から35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満それることを頻繁に(常にではないが)意味する。特定の実施形態では、それが参照標準から15%未満、10%未満又は5%未満それる場合、1つの結果は参照標準と同等である。一例であり、限定するものではないが、活性又は効果は、有効性、安定性、溶解性又は免疫原性を指すことができる。
【0044】
「実質的に純粋な」は、構成成分が組成物の全含有量の約50%より多く、及び典型的には全ポリペプチド含有量の約60%より多くを占めることを示す。より典型的には、「実質的に純粋な」は、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%又はそれより多くが目的の構成成分である組成物を指す。一部の場合には、ポリペプチドは組成物の全含有量の約90%より多く、又は約95%より多くを占める。
【0045】
用語「特異的に結合する」又は「選択的に結合する」は、リガンド/受容体、抗体/抗原又は他の結合対を指す場合、タンパク質及び他の生物物質の不均一集団中のタンパク質の存在の決定因子である結合反応を示す。したがって、指定された条件下で、特定のリガンドは特定の受容体に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない。企図された方法の抗体又は抗体の抗原結合性部位に由来する結合性組成物は、その抗原、又はその変異体若しくは突然変異タンパク質に、任意の他の抗体又はそれに由来する結合性組成物による親和性よりも少なくとも2倍大きいか、少なくとも10倍大きいか、少なくとも20倍大きいか、少なくとも100倍大きい親和性で結合する。特定の実施形態では、抗体は、例えばスキャッチャード分析によって決定される通り、約109リットル/molを超える親和性を有する(Munsen, et al. 1980 Analyt. Biochem. 107:220-239)。
【0046】
例えば細胞、組織、臓器又は生物体の「応答」という用語は、生化学的又は生理的挙動、例えば、生物学的コンパートメントの中の、濃度、密度、接着又は移動、遺伝子発現率又は分化状態の変化を包含し、ここで、変化は活性化、刺激又は処置と、又は遺伝的プログラミングなどの内部機構と相関している。ある特定の状況では、用語「活性化」、「刺激」などは、内部機構並びに外部又は環境の因子によって調節される細胞活性化を指し、用語「阻害」、「下方制御」などは反対の効果を指す。
【0047】
用語「アデノシン機構タンパク質」又は「アデノシン機構mRNA」又は「アデノシン機構遺伝子」は、アデノシンの細胞外産生、及び/又はアデノシン媒介シグナル伝達経路に関与するタンパク質、mRNA又はコードするDNAをそれぞれ指す。これらのタンパク質及び対応するmRNAの例には、限定されずに、アデノシンA2a受容体(A2aR)、アデノシンA2b受容体(A2bR)、アデノシンA1受容体(A1R)、CD26、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38及び/又はCD39が含まれる。
【0048】
用語「アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤」は、アデノシンの細胞外産生に関与する1つ以上のタンパク質のモジュレーターを指す。モジュレーターの例には、小分子化合物、抗体及び干渉RNAが含まれる。アデノシンの細胞外産生に関与するタンパク質には、限定されずに、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38及び/又はCD39が含まれる。したがって、これらのタンパク質を標的にすることが公知であるモジュレーターは、現開示に関連する。
【0049】
用語「アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤」は、アデノシンが、アデノシン受容体タンパク質、しばしば内在性膜タンパク質に結合することを低減するか完全に阻止するアンタゴニストを指す。アデノシンによって活性化されるタンパク質受容体には、限定されずに、アデノシンA1受容体(A1R)、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)が含まれる。したがって、これらの受容体を標的にすることが公知であるアンタゴニストは、現開示に関連する。
【0050】
III.実施形態の詳細な記載
本明細書において、対象のがんのアデノシンフィンガープリントを、特定の治療レジメンに対してより好ましい応答をする対象を同定する手段として確立する方法が開示されている。対象におけるアデノシンフィンガープリントの確立は本明細書においてさらに記載されるが、これには、以下の1つ以上を決定することが通常含まれる:対象の血液における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の発現レベル、対象の腫瘍の生検から得た1つ以上のアデノシン機構タンパク質の発現レベル(又はmRNAレベル)、対象の血液又は腫瘍における特定のアデノシン機構タンパク質の活性。
【0051】
したがって、本明細書において、アデノシンの細胞外産生を標的にする及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する治療剤を対象に投与することを含む、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法であって、
対象におけるがんが、
(i)同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度の増大、
(ii)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるCD73又はTNAPの活性の増大、
(iii)1つ以上のアデノシン機構タンパク質の免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較した、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(iv)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較した、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の上方制御を示す、対象のがんの生検
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する、
方法も提供される。
【0052】
アデノシン機構タンパク質
腫瘍微小環境での細胞外アデノシンは、様々な腫瘍モデルにおいて免疫抑制効果を有することが示されている。したがって、細胞外アデノシンの産生及び/又はアデノシンシグナル伝達に関与するタンパク質(アデノシン機構タンパク質)は、アデノシンの免疫抑制効果をブロックする、低減させる、又は阻害するための、考えられる候補である。アデノシン機構タンパク質としては、限定はしないが、アデノシンA2a受容体(A2aR)、アデノシンA2b受容体(A2bR)、アデノシンA1受容体(A1R)、CD26、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38、及び/又はCD39が含まれる。
【0053】
アデノシン機構タンパク質の発現レベル及び/又は活性レベルについての情報を医療関係者に提供する診断試験は、特定の治療レジメンに対してより好ましい応答をする対象を同定する手段を提供する。以下に記載するように、がんのアデノシンフィンガープリントを評価することによって、アデノシン機構タンパク質についての貴重な情報が得られる。
【0054】
がんのアデノシンフィンガープリント
がんのアデノシンフィンガープリントを使用して、がんを有する対象のための適切な治療法を同定し選択するための決定に影響を与えることができる。アデノシンフィンガープリントとしては、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の発現レベル及び/又は活性の評価が含まれ得る。発現レベルは、がん試料中のmRNAの量、すなわち、がん試料中の発現したタンパク質の量、がんを有する対象の血液中の発現したタンパク質の量、又はこれらの評価のそれぞれの組合せであり得る。活性の評価は、アデノシン機構タンパク質の触媒活性を評価する、血液試料又はがんから得た試料を使用する酵素アッセイを一般に利用する。
【0055】
アデノシン機構タンパク質の血中濃度の評価。1つ以上のアデノシン機構タンパク質の血中濃度を決定することによって、がんを有する対象において発現している関連タンパク質の量についての情報が提供される。血液試料中の分析物の濃度を決定する多くの方法が知られている。1つのこのような例は、サンドイッチELISAアッセイである。実施例1は、対象の血液試料中の可溶性CD73の量の決定についての説明を提供している。多くの他の類似の又は関連する方法を使用して、1つ以上のさらなるアデノシン機構タンパク質の濃度を決定することができる。
【0056】
一部の実施形態では、対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度の増大は、関連性がある(relevant)とみなされる。増大は、同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の典型的な濃度と比較して決定される。一部の実施形態では、所与のアデノシン機構タンパク質の典型的な濃度は、同型のがんを有する対象から得た血液における閾値である。一部の実施形態では、所与のアデノシン機構タンパク質の典型的な濃度は、同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の平均濃度である。一部の実施形態では、増大は、がんと診断される前の対象における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の濃度と比較したものである。
【0057】
一部の実施形態では、アデノシンフィンガープリントを評価する場合、可溶性CD73の濃度が、関連のある閾値であるとみなされる。例えば、一部の実施形態では、対象から得た血液における可溶性CD73の濃度約1ng/mLが、関連性のある閾値であるとみなされる。一部の実施形態では、閾値は3ng/mLである。一部の実施形態では、閾値は8ng/mLである。
【0058】
一部の実施形態では、アデノシンフィンガープリントの決定の文脈において、アデノシン機構タンパク質のレベルの上昇は、参照標準レベルと比較した相対的増大の測定によって決定される。参照標準レベルは、同型のがんを有する対象における所与のタンパク質の閾値又は平均レベルであり得る。例えば、一部の実施形態では、がんを有する対象から得た血液中の可溶性CD73の濃度は、参照標準レベルと比較して少なくとも1%の増大がある場合、関連性があるとみなされる。一部の実施形態では、参照標準レベルと比較して約2、3、4、5、10、15、20、25、又はそれを超えるパーセントの増大は、関連性があるとみなされる。
【0059】
AMP加水分解アッセイを使用するアデノシン機構タンパク質の酵素活性の評価。1つ以上のアデノシン機構タンパク質の酵素活性を決定することによって、がんを有する対象において発現している関連タンパク質の活性についての情報が提供される。これらの決定は、がんを有する対象から採取した血液試料から行うことができる。血液試料中のタンパク質の活性を決定する多くの方法が知られている。本開示におけるCD73又はTNAPの活性を測定するための1つの特に関連するアッセイは、本願の実施例2において記載されているAMP-Glo加水分解アッセイである。
【0060】
CD73、TNAP、又は別のタンパク質によって媒介されるAMP加水分解の量は、多くの異なる手段で報告され得る。一部の実施形態では、試料におけるCD73及び/又はTNAP媒介加水分解は、試料におけるAMP加水分解活性全体に対するパーセントとして報告される。アデノシンフィンガープリントの決定の文脈において、AMP加水分解アッセイの結果は、アデノシンの細胞外産生を標的にする1つ以上の薬剤又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤での処置が適切であることを示し得る。
【0061】
一部の実施形態では、AMP加水分解アッセイを介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、CD73及び/又はTNAPの活性の増大は、関連性があるとみなされる。増大は、同型のがんを有する対象から得た血液におけるCD73及び/又はTNAPの典型的なAMP加水分解活性と比較して決定される。一部の実施形態では、CD73及び/又はTNAPの典型的なAMP加水分解活性は、同型のがんを有する対象における閾値である。一部の実施形態では、CD73及び/又はTNAPの典型的なAMP加水分解活性は、同型のがんを有する対象から得た血液中の1つ以上のアデノシン機構タンパク質の平均AMP加水分解活性である。一部の実施形態では、増大は、がんと診断される前の対象の血液中のCD73及び/又はTNAPのAMP加水分解活性と比較したものである。
【0062】
一部の実施形態では、AMP-Glo加水分解アッセイを介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、アデノシン機構タンパク質によるAMP媒介加水分解の閾値レベルは、関連性があるとみなされる。一部の実施形態では、このような結果としては、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも10%がCD73若しくはTNAPによって媒介されるという値、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも20%がCD73若しくはTNAPによって媒介されるという値、又は対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも50%がCD73若しくはTNAPによって媒介されるという値が含まれる。
【0063】
一部の実施形態では、アデノシン機構タンパク質の酵素活性の評価は、本願の実施例7において記載されている同位体AMP加水分解アッセイを使用して行われる。
【0064】
一部の実施形態では、同位体AMP加水分解アッセイを介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、CD73及び/又はTNAPの同位体AMP加水分解活性の増大は、関連性があるとみなされる。増大は、同型のがんを有する対象から得た血液中のCD73及び/又はTNAPの典型的な同位体AMP加水分解活性と比較して決定される。一部の実施形態では、CD73及び/又はTNAPの典型的な同位体AMP加水分解活性は、同型のがんを有する対象における閾値よりも増大している。一部の実施形態では、CD73及び/又はTNAPの典型的な同位体AMP加水分解活性は、同型のがんを有する対象から得た血液における1つ以上のアデノシン機構タンパク質の平均同位体AMP加水分解活性である。一部の実施形態では、増大は、がんと診断される前の対象の血液におけるCD73及び/又はTNAPの同位体AMP加水分解活性と比較したものである。
【0065】
一部の実施形態では、同位体AMP加水分解アッセイを介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、アデノシン機構タンパク質によるAMP媒介加水分解の閾値レベルは、関連性があるとみなされる。一部の実施形態では、このような結果としては、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも10%がCD73若しくはTNAPによって媒介されるという値、対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも20%がCD73若しくはTNAPによって媒介されるという値、又は対象の血液におけるAMP加水分解活性全体の少なくとも50%がCD73若しくはTNAPによって媒介されるという値が含まれる。
【0066】
免疫染色を使用する、腫瘍におけるアデノシン機構タンパク質の発現レベルの評価。免疫染色は、特定のタンパク質の存在を同定するため及び前記タンパク質の相対量を定量するための、良く確立された技術である。可視化及び定量のための前記タンパク質の標識に、多くの方法が利用可能である。典型的には、免疫染色は、がんを有する対象から得た腫瘍の生検を得ること、及び目的の標的に結合する標識抗体を適用することを含む。CD73及びTNAPの量を決定する典型的な方法は、実施例3で記載されている。当業者には、さらなるアデノシン機構タンパク質が、実施例3で記載される技術に類似の技術を使用して、又は当技術分野における公知の方法に基づいて評価され得ることが認識されよう。
【0067】
一部の実施形態では、免疫染色を介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、アデノシン機構タンパク質の増大は、関連性があるとみなされる。増大は、同型のがんを有する対象から得た生検におけるこのようなアデノシン機構タンパク質の典型的な量と比較して決定される。一部の実施形態では、所与のアデノシン機構タンパク質の典型的な量は、同型のがんを有する対象から得た生検における閾値である。一部の実施形態では、所与のアデノシン機構タンパク質の典型的な量は、同型のがんを有する対象から得た生検におけるこのようなアデノシン機構タンパク質の平均量である。一部の実施形態では、増大は、がんと診断される前の対象の同一の組織におけるアデノシン機構タンパク質の量と比較したものである。
【0068】
一部の実施形態では、免疫染色を介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、目的の分析物の染色区域のパーセントは、関連性がある閾値(relevant threshold)とみなされる。例えば、一部の実施形態では、1%の染色区域が、関連性がある閾値とみなされる。一部の実施形態では、7、10、20%以上の染色区域が、関連性がある閾値とみなされる。
【0069】
mRNAレベルの測定によるアデノシン機構タンパク質の評価。生体試料中の相対的mRNAレベルを同定する及び定量する多くの方法が、当技術分野において公知であり、これらのうちの各々は、アデノシン機構mRNAレベルの評価に適している。本明細書において意図されるように、一部の実施形態では、mRNAレベルを測定する方法は、対象から得た腫瘍の生検から行われる。アデノシン機構タンパク質のmRNAレベルを決定する典型的な方法は、実施例4で記載される。
【0070】
一部の実施形態では、mRNAレベルの測定を介して対象のアデノシンフィンガープリントを評価する場合、アデノシン機構mRNAの上方制御は、関連性があるとみなされる。上方制御は、同型のがんを有する対象から得た生検におけるアデノシン機構mRNAの典型的な量と比較して決定される。一部の実施形態では、所与のアデノシン機構mRNAの典型的な量は、同型のがんを有する対象から得た生検における閾値である。一部の実施形態では、所与のアデノシン機構mRNAの典型的な量は、同型のがんを有する対象から得た生検におけるこのようなアデノシン機構mRNAの平均量である。一部の実施形態では、増大は、がんと診断される前の対象の同一の組織におけるアデノシン機構mRNAの量と比較したものである。
【0071】
したがって、一部の実施形態では、本開示は、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト並びにCD73阻害剤からなる群から選択される治療剤を対象に投与することを含む、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法であって、
対象におけるがんが、
(i)同型のがんを有する対象から得た血液中のCD73の典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中の可溶性CD73の濃度の増大、
(ii)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるCD73の典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるCD73の活性の増大、
(iii)CD73の免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるCD73の典型的な量と比較した、CD73の量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(iv)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるCD73の典型的な量と比較した、CD73の上方制御を示す、対象のがんの生検
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する場合に、対象はCD73阻害剤を投与され、
対象におけるがんが、
(a)同型のがんを有する対象から得た血液中のTNAPの典型的な濃度と比較した、対象から得た血液中のTNAPの濃度の増大、
(b)AMP加水分解アッセイによって決定される、同型のがんを有する対象から得た血液におけるTNAPの典型的なAMP加水分解活性と比較した、対象から得た血液におけるTNAPの活性の増大、
(c)TNAPの免疫染色によって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるTNAPの典型的な量と比較した、TNAPの量の増大を示す、対象のがんの生検、及び
(d)mRNAレベルによって決定される、同型のがんを有する対象から得た生検におけるTNAPの典型的な量と比較した、TNAPの上方制御を示す、対象のがんの生検
からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを有する場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストを投与される、
方法を提供する。
【0072】
一部の実施形態では、対象におけるがんが、(i)から(iv)からなる群から選択される特徴の少なくとも2つ、3つ又は4つを有する場合に、対象がCD73阻害剤を投与され、又は
対象におけるがんが、(a)から(d)からなる群から選択される特徴の少なくとも2つ、3つ又は4つを有する場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストを投与される。
【0073】
一部の実施形態では、対象におけるがんが、(i)から(iv)及び(a)から(d)の各々から選択される特徴の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つを示す場合に、対象がアデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストのみが投与される。
【0074】
一部の実施形態では、対象におけるがんが、(i)から(iv)及び(a)から(d)の各々から選択される特徴の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つを示す場合に、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト並びにCD73阻害剤の両方が投与される。
【0075】
本明細書に記載されている1つ以上の特徴を評価することは、選択された治療薬に対して好ましい応答をする対象を同定するのに役立つ。これらの薬剤には、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤、及びアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤が含まれる。
【0076】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤
多くのタンパク質が体内でアデノシンの細胞外産生に関与することが公知である。例えば、細胞外アデノシンの生成につながる主要な経路は、ATPをADPに、次にAMPに加水分解するCD39、及びAMPをアデノシンに加水分解するCD73によるATPの逐次的な脱リン酸である。TNAPは、AMPからのアデノシンの産生に同じく寄与する。細胞外アデノシンの生成につながる代わりの機構は、CD38によるADPRへのNAD+の加水分解及びENPP1によるAMPへのADPRの加水分解である。ENPP1は、NAD+を加水分解してAMPを産生することもできる。したがって、アデノシンの細胞外産生に関与するタンパク質には、限定されずに、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38及び/又はCD39が含まれる。
【0077】
本明細書で企図されるように、本開示は、アデノシンの細胞外産生を標的にする1つ以上の薬剤を使用して、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法を提供する。
【0078】
組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)阻害剤。いくつかのTNAP阻害剤が、当技術分野で公知である。一部の実施形態では、記載される方法において有用なTNAP阻害剤は、各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO/2013/126608、WO/2006/039480又はWO/2002/092020に開示される薬剤である。一部の実施形態では、TNAP阻害剤は、式:
【化1】
を有する。
【0079】
CD73阻害剤。一部の実施形態では、記載されている方法に有用なCD73阻害剤は、式(i)の化合物:
【0080】
【化2】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物であり、
式中、
各R1は、水素、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル、必要に応じて置換されたアリール及び-C(R2R2)-O-C(O)-OR3からなる群から独立して選択されるか、又は2つのR1基は必要に応じて組み合わされて5~7員環を形成し、
各R2は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、
各R3は、H、C1~C6アルキル及び必要に応じて置換されたアリールからなる群から独立して選択され、
R5は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から選択され、
XはO、CH2及びSからなる群から選択され、
Aは以下からなる群から選択され:
【0081】
【化3】
その各々は1~5つのR6置換基で必要に応じて置換されており、
式中、下付き文字nは0から3の整数であり、
Zは、CH2、CHR6、NR6及びOからなる群から選択され、
各R6は、H、CH3、OH、CN、F、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル及びOC(O)-C1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、必要に応じて隣接した環頂点上の2つのR6基は連結されて、環頂点として少なくとも1つのヘテロ原子を有する5~6員環を形成し、
Hetは以下からなる群から選択され:
【0082】
【化4】
式中、波線は化合物の残部への結合点を示し:
Raは、H、NH2、NHR7、NHC(O)R7、NR7R7、R7、OH、SR7及びOR7からなる群から選択され、
Rbは、H、ハロゲン、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH及びOR7からなる群から選択され、
Rc及びRdは、H、ハロゲン、ハロアルキル、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH、OR7、SR7、SO2R7、-X1-NH2、-X1-NHR7、-X1-NR7R7、-X1-OH、-X1-OR7、-X1-SR7及び-X1-SO2R7からなる群から独立して選択され、
Re及びRfは、H、ハロゲン及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され、
各X1はC1~C4アルキレンであり、
各R7は、必要に応じて置換されたC1~C10アルキル、必要に応じて置換されたC2~C10アルケニル、必要に応じて置換されたC2~C10アルキニル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルケニル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルキニル、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルケニル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC2~C4アルキニルからなる群から独立して選択され、必要に応じて窒素原子に結合する2つのR7基は連結されて、必要に応じてアリール環に融合される4~7員環の複素環を形成し、
但し、これらの化合物は、X、A及びHetの組合せが
【0083】
【化5】
をもたらす化合物以外のものであり、
式中、RgはHであるか又は2つのRg基が組み合わされてアセトニドを形成し、かつ、
(1) Rc及びReは水素であり、Raは-OEt、-OCH2Ph、-SCH2Ph、-NH2、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、フェニルアミノ、ベンジルアミノ、2-フェニルエチルアミノ、N-ベンジル-N-エチルアミノ、ジベンジルアミノ、4-アミノベンジルアミノ、4-クロロベンジルアミノ、4-ニトロベンジルアミノ若しくは4-スルファモイルベンジルアミノであるか、又は
(2) Rcは水素であり、Raは-NH2であり、Reはブロモ、クロロ、アミノメチル又はチオエチルであるか、又は
(3) Rcは水素であり、Raはベンジルアミノであり、Reはブロモである。
【0084】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は化合物A:
【0085】
【化6】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0086】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は化合物B:
【0087】
【化7】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0088】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は化合物C:
【0089】
【化8】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0090】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は、その内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0267710号(2017年6月6日に出願の米国特許出願第15/400,748号を参照)に記載される分子である。
【0091】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は、その各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO2015/164573、WO2017/120508、WO2018/183635、WO2018/094148、WO2018/119284、WO2018/183635、WO2018/208727、WO2018/208980、WO2017/098421、WO2017/153952に開示される薬剤である。
【0092】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は、オレクルマブ(MEDI-9447)、CPI-006、NZV930/SRF373、BMS-986179又はTJ4309である。
【0093】
エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)阻害剤。一部の実施形態では、記載される方法で有用なエクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)阻害剤は、MV-626である。
【0094】
一部の実施形態では、記載される方法で有用なENPP1阻害剤は、その内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO2019/023635に開示される薬剤である。
【0095】
CD38阻害剤。一部の実施形態では、記載される方法で有用なCD38阻害剤は、ダラツムマブ又はイサツキシマブである。
【0096】
一部の実施形態では、CD38阻害剤は、その各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO/2019/034753、US2018/0298106、WO2019/034752に開示される薬剤である。
【0097】
CD39阻害剤。CD39は、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ-1としても知られる。一部の実施形態では、記載される方法で有用なCD39阻害剤は、IPH5201、SRF617又はTTX-030である。
【0098】
一部の実施形態では、CD39阻害剤は、その各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO2012/085132、WO2017/089334、WO2009/095478、WO2011/154453及びWO2018/224685に開示される薬剤である。
【0099】
本開示は、上記のいずれかの薬学的に許容される塩又は誘導体を包含する。
【0100】
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤
細胞外アデノシンによって活性化される多くの受容体が体内にある。すなわち、アデノシンの結合は、酵素活性を開始し、及び/又は細胞シグナルを伝播させる。アデノシンによる活性化は、4つのG共役アデノシン受容体: A1、A2a、A2b及びA3を通して起こる。アデノシンはA2a受容体(T細胞上で主に発現される)及びA2b受容体(骨髄細胞上で発現される)を通して主にシグナル伝達し、それはアデノシンによって刺激されたときにT細胞活性化の悪化につながる。あまり理解されていないが、A1受容体は乳房、結腸及び胃のがんなどのがんの病因に関与することが報告されており、A3受容体は結腸直腸及び乳がんに関与することが報告されている。腫瘍微小環境におけるアデノシンによるこれらの受容体の1つ以上の過剰活性化は、免疫抑制効果につながることがある。したがって、これらの受容体へのアデノシンの結合をブロックするかさもなければ阻止することができるアンタゴニストは、がんの処置で有用である。関連する受容体には、限定されずに、アデノシンA1受容体(A1R)、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体、及びアデノシンA3受容体(A3R)が含まれる。
【0101】
本明細書で企図されるように、本開示は、アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する1つ以上の薬剤を使用して、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象においてがんを処置する方法を提供する。
【0102】
アデノシンA1受容体(A1R)アンタゴニスト。一部の実施形態では、記載される方法で有用なA1Rアンタゴニストは、FK352、KW-3902(Rolofylline)、SLV320、BG9719(CVT-124)又はBG9928(Adentri)である。
【0103】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体アンタゴニスト。一部の実施形態では、記載されている方法で使用され得るアデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは式(I)の化合物
【0104】
【化9】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物であり、
式中、
G1はN又はCR3aであり、
G2はN又はCR3bであり、
G3はN又はCR3cであり、
R3a、R3b及びR3cの各々は独立してH又はC1~3アルキルであり、
R1a及びR1bは、
i) H
ii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたC1~8アルキル、
iii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換された-X1-O-C1~8アルキル、
iv) -C-(O)R6
v) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたY、及び
vi) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換された-X1-Y、
からなる群から各々独立して選択されるか、又は
vii) R1a及びR1bは、それらが結合する窒素と一緒に1~3つのR8置換基で必要に応じて置換された5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ヘテロシクロアルキルはO、N及びSからなる群から選択される0~2つの追加のヘテロ原子環頂点を有し、
各YはC3~8シクロアルキル又は、O、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、
R2及びR4は各々独立してH又はC1~3アルキルであり、
Ar1はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR9で必要に応じて置換されており、
Ar2はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR10で必要に応じて置換されており、
Ar1及びAr2の5~6員環のヘテロアリールはO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を各々独立して有し、
各X1はC1~6アルキレンであり、
各R5はヒドロキシル、C3~8シクロアルキル、フェニル、-O-フェニル、-C(O)ORa及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R6はC1~8アルキル又はYであり、それぞれはヒドロキシル、-O-フェニル、フェニル及び-O-C1~8アルキルからなる群から選択される1~3つの置換基で必要に応じて置換されており、
各R7はC1~8アルキル、ヒドロキシル、-O-C1~8アルキル、オキソ及びC(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各R8はC1~8アルキル、ヒドロキシル及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R9は、C1~8アルキル、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-X1-O-X1-O-C1~8アルキル、-C(O)ORa、ハロゲン、シアノ、-NRbRc、Y、-X1-C3~8シクロアルキル及び-X2-Zからなる群から独立して選択され、X2はC1~6アルキレン、-C1~6アルキレン-O-、-C(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され、ZはO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、前記R9置換基の各々は1~3つのR11で必要に応じて置換されており、
各R10は、C1~8アルキル、ハロ、シアノ、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)NRdRe、及びO、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロアリールからなる群から独立して選択され、前記R10置換基の各々は1~3つのR12で必要に応じて置換されているか、又はAr2の隣接した環頂点上の2つのR10は必要に応じて組み合わされて1~2つのハロゲンで必要に応じて置換された5員環の複素環を形成し、
各R11は、ヒドロキシル、ハロ、シアノ、-NRdRe、-C(O)ORa、フェニル、C3~8シクロアルキル、及びC(O)ORaで必要に応じて置換されたC1~4アルキルからなる群から独立して選択され、
各R12は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各RaはH又はC1~6アルキルであり、
各Rb及びRcは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)ORa及び-X1-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各Rd及びReは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキルからなる群から独立して選択され、
但し、G1及びG2が各々Nであり、G3がCHであり、R2がCH3であり、R1a及びR1bが各々Hである場合、Ar2は2-チエニル、フェニル、2-、3-若しくは4-メトキシフェニル、3-若しくは4-ハロフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,4-ジクロロフェニル又は2-若しくは4-メチルフェニル以外である。
【0105】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは化合物1
【0106】
【化10】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0107】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは化合物2
【0108】
【化11】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0109】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは化合物3
【0110】
【化12】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0111】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは、米国特許出願公開第2018/0215730号(その内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2018年6月19日に出願の米国特許出願第15/875,106号も参照)に記載される分子である。
【0112】
一部の実施形態では、A2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは、AZD4635、シフォラデナント(CPI-444)、NIR178又はPBF-1129である。
【0113】
アデノシンA3受容体(A3R)アンタゴニスト。一部の実施形態では、記載される方法で有用なA3Rアンタゴニストは、その各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO2007/063539A1、US2003/0078232に記載される分子である。
【0114】
がんのタイプ
当業者は、本明細書に記載されている処置方法は、腫瘍の起源とは無関係であり、腫瘍のアデノシンフィンガープリントの評価に依存することを認める。このように、本開示は、がんの特定のタイプに限定されない方法を提供する。したがって、本開示は、前立腺、結腸直腸、膵臓、頸部(cervix)、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚(黒色腫及び基底癌を含む)、中皮内膜(mesothelial lining)、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、乳房(トリプルネガティブ乳がんを含む)、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、副腎腺、甲状腺、腎臓又は骨のがん、神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫(カポジ肉腫を含む)、絨毛癌、皮膚基底細胞癌及び精巣セミノーマを限定されずに含む、多くの異なるがんタイプの処置で有用である。
【0115】
本開示の一部の実施形態では、がんは、黒色腫、結腸がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、肉腫、卵巣がん、頭頸部がん、子宮頸がん又はカポジ肉腫である。
【0116】
本開示の一部の実施形態では、がんは、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首、皮膚、精巣、卵巣、肺、子宮内膜、目、前立腺、乳房又は肝臓のがん、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である。
【0117】
本開示の一部の実施形態では、がんは、精巣、卵巣、肺、子宮内膜又は副腎腺のがんである。
【0118】
本開示の一部の実施形態では、がんは、目、前立腺、乳房、腎臓、肝臓又は肺のがんである。
【0119】
一部の実施形態では、本開示は、がんの特定の型を有すると特定された対象を、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤、及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤、並びにその例が本明細書の他の場所で示される少なくとも1つの追加の治療薬によって処置する方法を提供する。
【0120】
併用療法
本開示は、本明細書に記載される治療剤の単独使用、又は1つ以上の活性治療剤との併用を企図する。追加の活性治療剤は、小さい化学分子、巨大分子、例えば、タンパク質、抗体、ペプチボディ、ペプチド、DNA、RNA、又はそのような巨大分子の断片、又は細胞若しくは遺伝子療法であってよい。そのような併用療法では、様々な活性薬剤は、異なる相補的作用機構をしばしば有する。そのような併用療法は、薬剤の1つ以上の用量低減を可能にし、それによって薬剤の1つ以上と関連する有害作用を低減又は排除することによって特に有利であるかもしれない。さらに、そのような併用療法は、根底にある疾患、障害又は状態に対して相乗的な治療又は予防効果を及ぼすことができる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「併用」は、別々に投与することができる、例えば、別々の投与のために別々に製剤化することができる(例えば、キットで提供され得る)療法、及び単一の製剤で一緒に投与する(すなわち、「共製剤」)ことができる療法を含むことを意味する。
【0122】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される治療剤は逐次的に投与又は適用される、例えば、1つの薬剤は1つ以上の他の薬剤の前に投与される。他の実施形態では、本明細書に記載される治療剤は同時に投与され、例えば、2つ以上の薬剤が同時又はほぼ同時に投与され、その2つ以上の薬剤は2つ以上の別々の製剤に存在することができるか、単一の製剤に併合する(すなわち、共製剤)ことができる。2つ以上の薬剤が逐次的に投与されるか又は同時に投与されるかを問わず、それらは本発明のために併用投与されるとみなされる。
【0123】
本開示のアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤は、その状況下で適当な任意の方法で少なくとも1つの他の(活性)薬剤と併用することができる。一実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤及び本明細書に記載される少なくとも1つの追加の治療剤による処置は、ある期間にわたって維持される。別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は低減又は中止され(例えば、対象が安定している場合)、本明細書に記載される治療剤による処置は一定の投薬レジメンで維持される。さらなる実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は低減又は中止され(例えば、対象が安定している場合)、本明細書に記載される治療剤による処置は低減される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬又はより短い処置レジメン)。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は低減又は中止され(例えば、対象が安定している場合)、本明細書に記載される治療剤による処置は増加される(例えば、より高い用量、より高い頻度の投薬又はより長い処置レジメン)。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は維持され、本明細書に記載される治療剤による処置は低減又は中止される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬又はより短い処置レジメン)。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置及び本明細書に記載される治療剤による処置は低減又は中止される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬又はより短い処置レジメン)。
【0124】
本開示は、確立されたアデノシンフィンガープリントを有する対象におけるがんを、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤、及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤及び少なくとも1つの追加の治療剤若しくは診断薬で処置及び/又は予防する方法を提供する。一部の実施形態では、追加の治療剤は、放射線、免疫調節剤若しくは化学療法剤である。本発明で使用することができる好適な免疫調節剤には、CD4OL、B7及びB7RP1;刺激性受容体に対する活性化モノクローナル抗体(mAb)、例えば、抗CD40、抗CD38、抗ICOS及び4-IBBリガンド;樹状細胞抗原ローディング(in vitro又はin vivo);樹状細胞がんワクチンなどの抗がんワクチン;サイトカイン/ケモカイン、例えば、ILL IL2、IL12、IL18、ELC/CCL19、SLC/CCL21、MCP-1、IL-4、IL-18、TNF、IL-15、MDC、IFNa/b、M-CSF、IL-3、GM-CSF、IL-13及び抗IL-10;細菌リポ多糖(LPS);インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤及び免疫刺激性オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0125】
ある特定の実施形態では、本開示は、シグナル伝達阻害剤(STI)と組み合わせた本明細書に記載される治療剤の投与を含む。本明細書で使用される場合、用語「シグナル伝達阻害剤」は、シグナル伝達経路の中の1つ以上のステップを選択的に阻害する薬剤を指す。本発明のシグナル伝達阻害剤(STI)には、以下のものが含まれる: (i) bcr/ablキナーゼ阻害剤(例えば、GLEEVEC)、(ii)キナーゼ阻害剤及び抗体を含む上皮増殖因子(EGF)受容体阻害剤、(iii) her-2/neu受容体阻害剤(例えば、HERCEPTIN)、(iv) Aktファミリーキナーゼ又はAkt経路の阻害剤(例えば、ラパマイシン)、(v)細胞周期キナーゼ阻害剤(例えば、フラボピリドール)、及び(vi)ホスファチジルイノシトールキナーゼ阻害剤。がん患者で腫瘍増殖の抑制のために、免疫調節に関与する薬剤を本明細書に記載される治療剤と併用することもできる。
【0126】
TMBは、対象のゲノムに存在する体細胞変異の総数を決定するのに有効なツールである。この情報は、実行可能な治療オプションの特定及び選択のために使用することができる。例えば、一部の実施形態では、対象における腫瘍遺伝子変異量(TMB)を用いて、追加の化学療法剤を投与すべき患者を特定するために使用される。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、全エクソームシークエンシング(WES)によって決定されるようにTMBが2.0未満である場合に、対象に化学療法剤をさらに投与することを含む。一部の実施形態では、TMBが2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10未満の場合に、対象に化学療法剤をさらに投与する。
【0127】
化学療法剤の例には、限定されずに、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホン酸塩、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamime)を含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドキセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン; 6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ及びプラチナ配位複合体、例えば、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート; CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;アントラサイクリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0128】
化学療法剤には、腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害する作用をする抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン及びトレミフェンを含む抗エストロゲン;並びに抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体も含まれる。ある特定の実施形態では、併用療法は、1つ以上の化学療法剤を含む化学療法レジメンを含む。ある特定の実施形態では、併用療法は、ホルモン又は関係するホルモン剤の投与を含む。
【0129】
本明細書に記載される治療剤と併用することができる追加の処置モダリティーには、放射線療法、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体及び毒素の複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、又は、そのような抗原提示細胞を刺激するために使用されるTLRアゴニストを含む抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)が含まれる。
【0130】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗腫瘍活性を有する免疫細胞ががん患者に投与される個人化免疫療法の新規で有望な形である、養子細胞療法と組み合わせた本明細書に記載される治療剤の使用を企図する。養子細胞療法は、例えばキメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように工学操作された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びT細胞を使用して探求されている。養子細胞療法は、個体からT細胞を収集すること、特異抗原を標的にするかそれらの抗腫瘍効果を増強するためにそれらを遺伝子改変すること、それらを十分な数まで増幅すること、及びがん患者への遺伝子改変T細胞の注入を一般的に含む。T細胞は、増量した細胞が後に再注入される患者から収集することができる(例えば、自家)か、ドナー患者から収集することができる(例えば、同種異系)。
【0131】
ある特定の実施形態では、本開示は、遺伝子発現を抑制するためのRNA干渉に基づく療法と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。RNAiは、より長い二本鎖RNAの小さい干渉RNA(siRNA)への切断で開始する。siRNAの1つの鎖は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体に組み込まれ、それは次に組み込まれるsiRNA鎖に少なくとも部分的に相補的であるmRNA分子を特定するために使用される。RISCはmRNAに結合するか切断することができ、その両方は翻訳を阻害する。
【0132】
本開示は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた本明細書に記載される治療剤の阻害剤の使用を企図する。
【0133】
全てのがんの特徴であるおびただしい数の遺伝的及びエピジェネティックな変化は、腫瘍細胞をそれらの正常な対応物から区別するために免疫系が使用できる抗原の多様なセットを提供する。T細胞の場合、T細胞受容体(TCR)による抗原認識を通して開始される応答の最終的な振幅(例えば、サイトカインの産生又は増殖のレベル)及び品質(例えば、生成される免疫応答のタイプ、例えばサイトカイン産生のパターン)は、共刺激及び阻害性シグナル(免疫チェックポイント)の間の平衡によって調節される。正常な生理的条件の下で、免疫チェックポイントは、自己免疫の予防(すなわち、自己寛容の維持)のために、及び免疫系が病原体感染症に応答している場合の傷害からの組織の保護のために重要である。免疫チェックポイントタンパク質の発現は、腫瘍によって重要な免疫抵抗性機構として異常調節されることがある。
【0134】
T細胞は、i)全ての細胞コンパートメントにおけるタンパク質に由来するペプチドを選択的に認識するそれらの能力、ii)抗原発現細胞を直接的に認識して死滅させるそれらの能力(細胞傷害性Tリンパ球(CTL)としても知られるCD8+エフェクターT細胞による)、及びiii)適応性及び先天性エフェクター機構を統合するCD4+ヘルパーT細胞により多様な免疫応答を編成するそれらの能力のために、内因性抗腫瘍免疫を治療的に操作する努力の主要な焦点であった。
【0135】
臨床場面では、抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす免疫チェックポイントの遮断は、ヒトがん療法において有望なアプローチであることを示した。
【0136】
T細胞媒介性免疫は複数の逐次的ステップを含み、それぞれは応答を最適化するために刺激性及び阻害性シグナルを相殺することによって調節される。免疫応答におけるほとんど全ての阻害性シグナルは細胞内シグナル伝達経路を最終的にモジュレートするが、多くは膜受容体を通して開始され、そのリガンドは膜結合しているか可溶性である(サイトカイン)。T細胞活性化を調節する共刺激及び阻害性の受容体及びリガンドは正常な組織と比較してがんでしばしば過剰発現されないが、組織でT細胞エフェクター機能を調節する阻害性のリガンド及び受容体は、腫瘍細胞上で、又は腫瘍微小環境に関連する非形質転換細胞上で一般的に過剰発現される。可溶性及び膜結合受容体-リガンド免疫チェックポイントの機能は、アゴニスト抗体(共刺激経路のために)又はアンタゴニスト抗体(阻害性経路のために)を使用してモジュレートすることができる。したがって、がん療法のために現在承認されているほとんどの抗体と対照的に、免疫チェックポイントをブロックする抗体は腫瘍細胞を直接的に標的にせず、むしろ内因性抗腫瘍活性を増強するためにリンパ球受容体又はそれらのリガンドを標的にする。(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer 12:252-64を参照)。
【0137】
遮断の候補である、そのいくつかは各種の腫瘍細胞で選択的に上方制御される免疫チェックポイント(リガンド及び受容体)の例には、PD1(プログラム細胞死タンパク質1);PD-L1(PD1リガンド); BTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター); CTLA4(細胞傷害性T-リンパ球関連抗原4); TIM3(T細胞膜タンパク質3); LAG3(リンパ球活性化遺伝子3); TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体);並びにそれらの構造的特色に基づいて2つのクラス: i)キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)及びii) C型レクチン受容体(II型膜貫通型受容体ファミリーのメンバー)に分類することができるキラー阻害性受容体が含まれる。両方の受容体(例えば、2B4(CD244としても知られる)受容体)及びリガンド(例えば、ある特定のB7ファミリー阻害性リガンド、例えば、B7-H3(CD276としても知られる)及びB7-H4(B7-S1、B7x及びVCTN1としても知られる))を含めて、他のあまり明確でない免疫チェックポイントが文献に記載されている。(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer 12:252-64を参照)。
【0138】
本開示は、前記の免疫チェックポイント受容体及びリガンド並びに未記載の免疫チェックポイント受容体及びリガンドの阻害剤と組み合わせた本明細書に記載される治療剤の使用を企図する。PD1及びPD-L1抗体ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、ペムブロリズマブ(Merck)、セミプリマブ(Sanofi and Regeneron)、アテゾリズマブ(Roche)、デュルバルマブ(AstraZeneca)及びアベルマブ(Merck)を含む、免疫チェックポイントのある特定のモジュレーターが今日利用でき、他のものが開発中である。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、対象のがんからの生検が、がんがPD-L1陽性であることを示す場合に、PD1及びPD-L1阻害剤を投与することを含む。PD-L1状態を決定する方法は当技術分野で知られており、本願の実施例6は、PD-L1状態を決定するためのFDA承認製品を参照している。一部の実施形態では、対象のがんからの細胞の少なくとも1%がPD-L1を発現している場合に、がんはPD-L1陽性であると考えることができる。一部の実施形態では、対象のがんからの細胞の少なくとも10%がPD-L1を発現している場合、がんはPD-L1陽性であると考えることができる。一部の実施形態では、対象のがんからの細胞の少なくとも50%がPD-L1を発現している場合、がんはPD-L1陽性であると考えることができる。同様のアッセイを、対象の腫瘍における他の免疫チェックポイントの状態を決定するために実施することができる。
【0140】
本発明の一態様では、本明細書に記載される治療剤は、(i)刺激性(共刺激性を含む)受容体のアゴニスト、又は(ii) T細胞上の阻害性(共阻害性を含む)シグナルのアンタゴニストである免疫腫瘍薬と組み合わされ、その両方は抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす。刺激性及び阻害性分子のある特定のものは、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーである。共刺激性又は共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの1つの重要なファミリーはB7ファミリーであり、それはB7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA)及びB7-H6を含む。共刺激性又は共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの別のファミリーは、同族のTNF受容体ファミリーメンバーに結合する分子のTNFファミリーであり、それはCD40及びCD4OL、OX-40、OX-40L、CD70、CD27L、CD30、CD3OL、4-1BBL、CD137 (4-1BB)、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LT13R、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンフォトキシンa/TNF13、TNFR2、TNFa、LT13R、リンフォトキシンa1132、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRを含む。
【0141】
別の態様では、免疫腫瘍薬は、T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-B、VEGF及び他の免疫抑制サイトカイン)又は免疫応答を刺激するためにT細胞活性化を刺激するサイトカインである。
【0142】
一態様では、T細胞応答は本明細書に記載される治療剤と、(i)T細胞活性化を阻害するタンパク質のアンタゴニスト(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1及びTIM-4、及び/又は(ii)T細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト、例えば、B7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX4OL、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3及びCD2の1つ以上との組合せによって刺激することができる。がんの処置のために本明細書に記載される治療剤と組み合わせることができる他の薬剤には、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニスト又はNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが含まれる。例えば、本明細書の化合物はKIRのアンタゴニスト、例えばリリルマブと組み合わせることができる。
【0143】
併用療法のためのさらに他の薬剤には、CSF-1Rアンタゴニスト、例えば、RG7155(WO11/70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)又はFPA-008(WO11/140249、WO13169264、WO14/036357)を含むCSF-1Rアンタゴニスト抗体を限定されずに含む、マクロファージ又は単球を阻害又は枯渇(deplete)する薬剤が含まれる。
【0144】
別の態様では、本明細書に記載されるタンパク質/受容体を標的にする開示された薬剤は、正の共刺激受容体をライゲーションするアゴニスト剤、阻害性受容体を通してシグナル伝達を弱めるブロッキング剤、アンタゴニスト、及び抗腫瘍T細胞の頻度を全身性に増加させる1つ以上の薬剤、腫瘍微小環境の中の異なる免疫抑制経路を克服する薬剤(例えば、阻害性受容体係合(engagement)(例えば、PD-Ll/PD-1相互作用)をブロックする、Tregsを枯渇若しくは阻害する(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)を使用して、又はex vivoの抗CD25ビーズ枯渇によって)、又はT細胞アネルギー若しくは消耗を覆す/阻止する)並びに腫瘍部位で先天性免疫活性化及び/又は炎症を誘発する薬剤の1つ以上と使用することができる。
【0145】
一態様では、免疫腫瘍薬はCTLA-4アンタゴニスト、例えば拮抗的CTLA-4抗体である。好適なCTLA-4抗体には、例えば、YERVOY(イピリムマブ)又はトレメリムマブが含まれる。
【0146】
別の態様では、免疫腫瘍薬はPD-1アンタゴニスト、例えば拮抗的PD-1抗体である。好適なPD-1抗体には、例えば、OPDIVO(ニボルマブ)、KEYTRUDA(ペムブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514、WO2012/145493)、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308、PF-06801591が含まれる。免疫腫瘍薬はピジリズマブ(CT-011)を含むこともできるが、PD-1結合に対するその特異性は疑問視されている。PD-1受容体を標的にする別のアプローチは、AMP-224と呼ばれる、IgGlのFc部分に融合しているPD-L2の細胞外ドメイン(B7-DC)で構成される組換えタンパク質である。
【0147】
別の態様では、免疫腫瘍薬はPD-L1アンタゴニスト、例えば拮抗的PD-L1抗体である。好適なPD-L1抗体には、例えば、MPDL3280A(RG7446、WO2010/077634)、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS-936559(WO2007/005874)、MSB0010718C(WO2013/79174)、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042及びSTI-1014が含まれる。
【0148】
別の態様では、免疫腫瘍薬は、LAG-3アンタゴニスト、例えば拮抗的LAG-3抗体である。好適なLAG3抗体には、例えば、BMS-986016(WO10/19570、WO14/08218)又はIMP-731若しくはIMP-321(WO08/132601、WO09/44273)が含まれる。
【0149】
別の態様では、免疫腫瘍薬はCD137(4-1BB)アゴニスト、例えばアゴニストCD137抗体である。好適なCD137抗体には、例えば、ウレルマブ及びPF-05082566(WO12/32433)が含まれる。
【0150】
別の態様では、免疫腫瘍薬はGITRアゴニスト、例えばアゴニストGITR抗体である。好適なGITR抗体には、例えば、BMS-986153、BMS-986156、TRX-518(WO06/105021、WO09/009116)及びMK-4166(WO11/028683)が含まれる。
【0151】
別の態様では、免疫腫瘍薬はOX40アゴニスト、例えばアゴニストOX40抗体である。好適なOX40抗体には、例えばMEDI-6383又はMEDI-6469が含まれる。
【0152】
別の態様では、免疫腫瘍薬はOX4OLアンタゴニスト、例えば拮抗的OX40抗体である。好適なOX4OLアンタゴニストには、例えばRG-7888(WO06/029879)が含まれる。
【0153】
別の態様では、免疫腫瘍薬はCD40アゴニスト、例えばアゴニストCD40抗体である。さらに別の実施形態では、免疫腫瘍薬はCD40アンタゴニスト、例えば拮抗的CD40抗体である。好適なCD40抗体には、例えば、ルカツムマブ又はダセツズマブが含まれる。
【0154】
別の態様では、免疫腫瘍薬はCD27アゴニスト、例えばアゴニストCD27抗体である。好適なCD27抗体には、例えばバルリルマブが含まれる。
【0155】
別の態様では、免疫腫瘍薬はMGA271(B7H3へ)(WO11/109400)である。
【0156】
投薬
本開示のアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤は、例えば、投与の目標(例えば、所望される解決の程度);製剤が投与される対象の年齢、体重、性別及び健康状態及び体調;投与経路;並びに疾患、障害、状態又はその症状の性質に依存する量で対象に投与することができる。投薬レジメンは、投与される薬剤に関連するいかなる有害作用の存在、性質及び程度を考慮することもできる。有効薬量及び投薬レジメンは、例えば、安全性及び用量漸増試験、in vivo研究(例えば、動物モデル)及び当業者に公知である他の方法から容易に決定することができる。
【0157】
一般に、投薬パラメーターは、投薬量が対象に不可逆的に毒性であるかもしれない量(最大耐量(MTD))未満であり、対象に測定可能な効果をもたらすのに必要な量以上である必要がある(dictate)。そのような量は、例えば、投与経路及び他の因子を考慮した、ADMEに関連した薬物動態学的及び薬力学的パラメーターによって決定される。
【0158】
有効用量(ED)は、それを受け取る対象の一部で治療応答又は所望の効果をもたらす薬剤の用量又は量である。薬剤の「半有効量」又はED50は、それが投与される集団の50%において治療応答又は所望の効果をもたらす薬剤の用量又は量である。ED50は薬剤の効果の合理的な期待の尺度として一般的に使用されるが、それは必ずしも臨床医が全ての関連する因子を考慮して適当であると考える用量でない可能性がある。したがって、一部の状況では有効量は計算されたED50より高く、他の状況では有効量は計算されたED50未満であり、さらに他の状況では、有効量は計算されたED50と同じである。
【0159】
さらに、本明細書に記載される治療剤を標的にする薬剤の有効用量は、対象に1つ以上の用量で投与される場合に健康対象と比較して所望の結果をもたらす量であってよい。例えば、特定の障害を経験している対象のために、有効用量はその障害の診断パラメーター、尺度、マーカーなどを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は90%を超えて改善するものであってよく、ここで100%は正常な対象によって示される診断パラメーター、尺度、マーカーなどと規定される。
【0160】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される治療剤は、所望の治療効果を得るために、1日につき対象の体重1kgあたり約0.01mg~約50mg又は約1mg~約25mgの投薬量レベルで、1日に1回以上投与することができる(例えば、経口)。
【0161】
経口剤の投与のために、組成物は、1.0~1000ミリグラムの活性成分、特に1.0、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0ミリグラムの活性成分を含有する錠剤、カプセルなどの形で提供することができる。
【0162】
経口投薬に加えて、本明細書に記載されるある特定の薬剤のための好適な投与経路には、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、皮下(例えば、注射又はインプラント)、腹腔内、大槽内、関節内、腹腔内、大脳内(実質内)及び脳室内)及び眼内が含まれる。規定の期間中に本明細書に記載される薬剤を放出するために、皮下又は筋肉内に一般的に投与されるデポー注射を利用することもできる。
【0163】
ある特定の実施形態では、所望の薬剤、本明細書に記載される治療剤の投薬量は、「単位剤形」に含有される。「単位剤形」という語句は物理的に別々の単位を指し、各単位は、所望の効果をもたらすのに十分である本明細書に記載される治療剤の所定量を、単独で又は1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて含有する。単位剤形のパラメーターは特定の薬剤及び達成すべき効果に依存することが理解される。
【0164】
キット及び検出方法
本開示は、本明細書に記載される治療剤及びその医薬組成物を含むキットも企図する。キットは一般的に下記のように様々な構成成分を収容する物理的構造の形であり、例えば上記の方法の実施で利用することができる。
【0165】
キットは、対象への投与に好適な医薬組成物の形であってよい本明細書に開示される化合物の1つ以上(例えば、無菌の容器で提供される)を含むことができる。本明細書に記載される化合物は、即時使用可能である形(例えば、錠剤又はカプセル)で、又は、例えば投与の前に再構成若しくは希釈を必要とする形(例えば、粉末)で提供することができる。本明細書に記載される化合物がユーザーによって再構成されるか希釈される必要がある形である場合、キットは、本明細書に記載される化合物と一緒に又は別々にパッケージされる希釈剤(例えば、無菌水)、緩衝剤、薬学的に許容される賦形剤などを含むこともできる。併用療法が企図される場合、キットはいくつかの薬剤を別々に含有することができるか、それらはキット中で既に組み合わされてもよい。キットの各構成成分は個々の容器の中に封入されてもよく、様々な容器の全ては単一のパッケージ内にあってもよい。本発明のキットは、その中に収容される構成成分を適切に維持するのに必要な条件(例えば、冷蔵又は凍結)のために設計することができる。
【0166】
キットは、その中の構成成分のための識別情報及び使用説明書(例えば、投薬パラメーター、作用機構、薬物動態及び薬力学、有害作用、禁忌症等を含む活性成分の臨床薬理学)を含むラベル又は添付文書を含有することができる。ラベル又は添付文書は、製造業者情報、例えば、ロット番号及び有効期限日を含むことができる。ラベル又は添付文書は、例えば、構成成分を収容する物理的構造の中に組み入れられても、物理的構造の中に別々に含まれても、キットの構成成分(例えば、アンプル、チューブ又はバイアル)に貼り付けられてもよい。
【0167】
ラベル又は添付文書は、コンピューター可読媒体、例えばディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリディスク)、光学ディスク、例えばCD-若しくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープ、又は電子記憶媒体、例えばRAM及びROM、又はこれらのハイブリッド、例えば磁気/光学式記憶媒体、FLASH(登録商標)媒体又は記憶型カードをさらに含むことができるか又はその中に組み込まれてもよい。一部の実施形態では、実際の使用説明書はキット中に存在しないが、離れた供給源から、例えばインターネットを通して、使用説明書を得るための手段が提供される。
【0168】
可溶性CD73のキット及び検出方法。ある特定の態様では、試料中の可溶性CD73(sCD73)を決定するためのキットもまた、本明細書において提供される。キットには、sCD73捕捉抗体及び標識sCD73検出抗体が含まれる。一部の実施形態では、捕捉抗体は、7G2、Thermo Scientific #41-0200である。一部の実施形態では、標識sCD73検出抗体は、AD2クローン、BioLegend #344017である。
【0169】
一部の実施形態では、標識sCD73検出抗体はビオチン化抗体であり、キットは、ストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ、及びホースラディッシュ-ペルオキシダーゼによる酵素変換後に検出可能なホースラディッシュペルオキシダーゼ基質をさらに含む。一部の実施形態では、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質は、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)又は2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸](ABTS)である。
【0170】
一部の実施形態では、キットは、被覆緩衝剤、洗浄緩衝剤、及びブロック緩衝剤の1つ以上をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、ブロック緩衝剤をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、被覆緩衝剤をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、洗浄緩衝剤をさらに含む。一部の実施形態では、被覆緩衝剤は、約0.2MのNaHCO3緩衝剤、pH9.6を含む。一部の実施形態では、洗浄緩衝剤は、PBS中に約0.1%のTween20を含む。一部の実施形態では、ブロック緩衝剤は、PBS中に約0.02%のTween20+1%ウシ血清アルブミン+10μg/mlのウシIgG+10μg/mlのマウスIgGを含む。
【0171】
さらなる態様では、試料中の可溶性CD73(sCD73)の量を測定する方法もまた、本明細書において提供される。方法は、
a)試料を、固定化された抗CD73抗体と接触させて、捕捉されたsCD73を形成させること、
b)捕捉されたsCD73を標識抗CD73抗体と接触させて、サンドイッチ型のsCD73を形成させること(ここで、標識抗CD73抗体は、固定化された抗CD73抗体が結合する部分とは異なるsCD73部分に結合する)、
c)サンドイッチ型のsCD73をイメージング溶液と接触させて、検出可能なシグナルを生成させること、
d)検出可能なシグナルを測定すること
を含む。
【0172】
一部の実施形態では、捕捉抗体は、7G2、Thermo Scientific #41-0200である。一部の実施形態では、標識sCD73検出抗体は、AD2クローン、BioLegend #344017である。
【0173】
ステップa)は、固定化された抗CD73抗体とsCH73との間の捕捉sCD73複合体を試料中で形成させるためのインキュベーション時間を含む。インキュベーション時間は数分間からのどれでもよく、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、若しくは8時間、若しくはそれを超える時間、又は一晩であり得る。さらに長い時間も許容される。ステップa)と同様に、ステップb)も、数分間からの範囲であり得る、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、若しくは8時間、若しくはそれを超える時間、又は一晩のインキュベーション時間を含む。一部の実施形態では、ステップb)のインキュベーション時間は、約1時間である。ステップa)及びb)と同様に、ステップc)もまた、数分間からの範囲であり得る、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、若しくは8時間、若しくはそれを超える時間、又は一晩のインキュベーション時間を含む。一部の実施形態では、ステップc)のインキュベーション時間は約1時間である。
【0174】
一部の実施形態では、本方法は、ステップa)、ステップb)、及びステップc)の後に、洗浄緩衝剤での1つ以上の洗浄ステップをさらに含む。洗浄は、所望のインキュベーション時間後に典型的には行われる。一部の実施形態では、洗浄緩衝剤は、PBS中に約0.1%のTween20を含む。
【0175】
一部の実施形態では、本方法は、ブロック緩衝剤をさらに含む。一部の実施形態では、ブロック緩衝剤は、ステップa)の前に試料に含まれている。一部の実施形態では、ブロック緩衝剤はまた、ステップb)で標識抗CD73抗体と共に含められる。一部の実施形態では、ブロック緩衝剤はまた、ステップc)でイメージング溶液と共に含められる。一部の実施形態では、ブロック緩衝剤は、PBS中に約0.02%のTween20+1%ウシ血清アルブミン+10μg/mlのウシIgG+10μg/mlのマウスIgGを含む。
【0176】
ELISAアッセイにおいて、多くのイメージング溶液が有用である。標識抗CD73抗体の標識の同一性によって、適切なイメージング溶液が決定される。典型的には、イメージング溶液には、蛍光性又は化学発光性の試薬又は基質が含まれる。例えば、標識抗CD73抗体の標識がビオチンである場合、イメージング溶液は一般に、アビジン又はストレプトアビジンを含み、当該アビジン又はストレプトアビジンは、フルオロフォアにコンジュゲートしているか、又は、結び付いて検出可能なシグナルを形成し得る若しくは基質を検出可能なシグナルに酵素変換し得るさらなる薬剤にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、アビジン又はビオチンは、ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートしている。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)によって変換されるとシグナルを形成する、HRPの適切な基質としては、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)又は2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸](ABTS)が含まれる。
【0177】
一部の実施形態では、試料は血液である。一部の実施形態では、試料は、血液試料から単離された血清である。一部の実施形態では、試料は、血液試料から単離された血漿である。
【0178】
当業者には、異なるアデノシン機構タンパク質のレベルが、類似のサンドイッチELISA法を使用して測定され得ることが認識されよう。
【0179】
可溶性アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性のキット及び検出方法。さらなる態様では、試料におけるCD73媒介及び/又はTNAP媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性を決定するためのキットもまた、本明細書において提供される。一部の実施形態では、試料におけるCD73媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性を決定するためのキットは、CD73阻害剤及びAMP-Glo(商標)を含む。一部の実施形態では、試料におけるTNAP媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性を決定するためのキットは、TNAP阻害剤及びAMP-Glo(商標)を含む。
【0180】
一部の実施形態では、本明細書において記載されるキットは、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、SAHデヒドロラーゼ(dehydrolase)阻害剤、及びADK阻害剤をさらに含む。これらの阻害剤は、試料中でのバックグラウンドのアデノシン分解の減少を促進し得る。一部の実施形態では、アデノシンデアミナーゼ阻害剤はEHNAである。一部の実施形態では、SAHデヒドロラーゼ阻害剤はアリストロマイシン(aristromycin)である。一部の実施形態では、ADK阻害剤はヨードツベルシジンである。
【0181】
一部の実施形態では、キットは、アデノシン一リン酸(AMP)をさらに含む。
【0182】
さらなる態様では、試料におけるCD73媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性を決定する方法もまた、本明細書において提供される。本方法は、
a)試料をCD73阻害剤、アデノシン一リン酸(AMP)、及びAMP-Glo(商標)と接触させて、CD73i試料を形成させること、
b)個別の試料アリコートをアデノシン一リン酸(AMP)及びAMP-Glo(商標)と接触させて、ベースライン試料を形成させること、
c)CD73i試料及びベースライン試料について、特定の時間後の最終RLUシグナルを測定すること、並びに
d)CD73i試料の最終RLUとベースライン試料の最終RLUとの間の差を評価して、試料におけるCD73媒介AMP加水分解活性を決定すること、
を含む。
【0183】
さらなる態様では、試料におけるTNAP媒介アデノシン一リン酸(AMP)加水分解活性を決定する方法もまた、本明細書において提供される。本方法は、
a)試料をTNAP阻害剤、アデノシン一リン酸(AMP)、及びAMP-Glo(商標)と接触させて、TNAPi試料を形成させること、
b)個別の試料アリコートをアデノシン一リン酸(AMP)及びAMP-Glo(商標)と接触させて、ベースライン試料を形成させること、
c)TNAPi試料及びベースライン試料について、特定の時間後の最終RLUシグナルを測定すること、並びに
d)TNAPi試料の最終RLUとベースライン試料の最終RLUとの間の差を評価して、試料におけるTNAP媒介AMP加水分解活性を決定すること、
を含む。
【0184】
一部の実施形態では、CD73i試料、TNAPi試料、及びベースライン試料は、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、アリストロマイシンデヒドロラーゼ阻害剤、及びADK阻害剤の1つ以上をさらに含む。一部の実施形態では、CD73i試料及び/又はTNAPi試料は、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、SAHデヒドロラーゼ阻害剤、及びADK阻害剤をさらに含む。一部の実施形態では、アデノシンデアミナーゼ阻害剤はEHNAである。一部の実施形態では、SAHデヒドロラーゼ阻害剤はアリストロマイシンである。一部の実施形態では、ADK阻害剤はヨードツベルシジンである。
【0185】
最終RLUシグナルを測定するための特定の時間は、いくつかの因子に依存する。これらのうちの主なものは、試料と共に含まれるAMPの量(ステップa及びステップb)であるが、それは、RLUが、特定の時間が経過した後に残存するAMPの尺度であるためである。25μMのAMPを使用する場合、シグナルの測定可能な変化を観察するためには、分単位の反応時間で通常は十分である。一部の実施形態では、特定の時間は、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、又はそれを超える時間である。一部の実施形態では、特定の時間は8分である。
【0186】
一部の実施形態では、試料は血液である。一部の実施形態では、試料は血清である。一部の実施形態では、試料は血漿である。
【0187】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の作製方法及び使用方法についての完全な開示及び記載を当業者に提供するために示され、発明者が彼らの発明と考えるものの範囲を限定するものではなく、それらは、下の実験が実行されたことを表すことでも、実行することができる実験の全てであることを表すものでもない。現在時制で書かれる例示的な記載は必ずしも実行されておらず、むしろ、それらの記載はその中に記載される性質のデータなどを作成するために実行することができることを理解すべきである。使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するように努めたが、多少の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。
【0188】
[実施例1]
サンドイッチELISAを介する、ヒト血液中の可溶性CD73の量の決定
サンドイッチELISAを介してヒト血液中の可溶性CD73の量を決定する方法は、マイクロタイタープレートのウェルを被覆している捕捉抗体、目的の分析物を含有する試料、洗浄緩衝剤、及び、結合した標的を検出するために使用される、ビオチンにコンジュゲートした二次抗体を含む。ビオチン化抗体の二次検出は、HRP-ストレプトアビジン、それに続く発色基質又は化学発光基質を使用して行われる。CD73 ELISAアッセイの原理を図1に概説する。
【0189】
材料及び方法
試薬及び機器
- sCD73捕捉抗体(7G2、Thermo Scientific #41-0200)
- 被覆緩衝剤:
- 0.2MのNaHCO3緩衝剤、pH9.6(Thermo Scientific #28382)
- 洗浄緩衝剤:
- PBS中に0.1%のTween20
- ブロック緩衝剤:
- PBS中に0.02%のTween20+1%ウシ血清アルブミン+10μg/mlのウシIgG(Jackson ImmunoResearch #001-000-003)+10μg/mlのマウスIgG(Jackson ImmunoResearch #015-000-003)
- CD73タンパク質標準
- ビオチン化sCD73検出抗体(AD2クローン、BioLegend #344017)
- ストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Thermo Scientific #21130)
- 化学発光ELISA試薬(Thermo Scientific #37069)
- 96ウェルマイクロタイタープレート、平底、白色、高結合ポリスチレン(Costar #3922)
- プレート用の粘着性ホイルシール
- EnVisionプレートリーダー
【0190】
プロトコル
プレートの被覆:
1.マイクロタイタープレートのウェルを、抗sCD73 mAb(2μg/ml、100μl)で、4℃で一晩被覆する。インキュベーションのためにプレートを密閉する。
2.ウェルを、PBS中に0.1%のTween 20(Tween/PBS、各洗浄で350μl)で4回洗浄する。
3.ブロック緩衝剤(200μl)で少なくとも4時間、室温でブロックする。
4.ウェルを4回洗浄する。
- プレートをすぐに使用するか、又は、ウェル内に洗浄緩衝剤を入れきつく密閉し、4℃で保存する。
【0191】
ELISAアッセイ:
1.各試料をブロック溶液に希釈し(又は試料及び標準のための希釈系列を作製し)、次いで、各試料(100μl)をウェルに添加する。
2.プレートを密閉し、4℃で一晩インキュベートする。
3.ウェルを4回洗浄する。
4.ビオチン化抗CD73 mAb(0.5μg/ml、ブロック溶液中に100μl)を添加する。
5.プレートを密閉し、室温で1時間インキュベートする。
6.ウェルを4回洗浄する。
7.ストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(100μl、ブロック溶液中に1:10000で希釈した)をウェルに添加する。
8.室温で再び1時間インキュベートする。
9.ウェルを4回洗浄する。
10.化学発光ELISA試薬で、製造者の指示に従って発生させる。
a.等量部のルミノール/エンハンサー及び安定なペルオキシド溶液(溶液は室温で24時間安定である-暗所で保存する)を混合する。
b.100μlのワーキング溶液を各ウェルに添加する。
c.プレートを1000×gで2分間回転させて、全ての泡沫を除去する。
d.ウェル内の化学発光反応の強度をルミノメーターで測定する(1~5分間の範囲が最適である)。
【0192】
データ分析
EnVisionプレートリーダーから得た生の発光データを、標準曲線に対して内挿して、絶対的sCD73レベルを決定する。未希釈の各試料における濃度を、希釈系列の全てのウェルから計算し、また、これらの値を互いに比較することで、希釈の線形性を評価する。
【0193】
上記のアッセイを使用して、健康なドナーの血清及びヘパリンナトリウム血漿を評価して、可溶性CD73を測定した。図2Aに示すように、測定値は非常に相関していた。アッセイの定量範囲を決定するために、試料の平行評価を行った。図2Bは、このアッセイが許容可能なアッセイ平行性を示すことを示している。図2Cは、健康な対象とがんを有する対象との間の血清中sCD73の比較を示している。CD73のレベルは、健康なドナーよりもがん患者で全体として高かった。
【0194】
[実施例2]
AMP-Glo加水分解アッセイを介する、ヒト血液中の可溶性CD73及び/又はTNAPの量の決定
本明細書に記載されるアッセイによって、血液試料中のCD73及び/又はTNAPによるAMP加水分解活性の量の決定が可能となる。この決定は、25μMのAMP、CD73阻害剤及び/又はTNAP阻害剤の存在下でAMP-Glo(商標)アッセイを使用して行われる。AMP-Glo(商標)は、AMPを産生する生化学的反応から生じる発光シグナルを生じさせる、均一的な生化学的アッセイである。AMP Gloアッセイの原理を図3Aに概説する。
【0195】
材料及び方法
試薬
- CD73阻害剤(化合物A)
- AMP-Glo(商標)(カタログ番号V5011、Promega Corporation)
- PBS-リン酸緩衝生理食塩水(カタログ番号10010023、Gibco)
- TNAP阻害剤カクテル:
- 625μMのTNAP阻害剤(CAS 496014-13-2、Calbiochem)
- 10μMのEHNA、アデノシンデアミナーゼ阻害剤(カタログ番号E114-25 mg、Sigma)
- 4μMのアリストロマイシン、SAHデヒドロラーゼ阻害剤(カタログ番号SC-233890、Chem Cruz)
- 10μMの5-ヨードツベルシジン、ADK阻害剤(カタログ番号I100-5MG、Sigma)
【0196】
材料及び機器
- 96ウェルアッセイプレート(カタログ番号3992、Corning)
- EnVisionリーダー
【0197】
ヒト血清におけるAMP加水分解活性の決定
健康なボランティア及びがん患者の全血から単離された血清を、-80℃で保存した。各ドナーから得た50μlの血清を、4=×500ulのアリコートに移した。試料を次いで、以下の条件でa~dと標識する:a)化合物Aなし、TNAP阻害剤カクテルなし、b)10μMの化合物A、TNAP阻害剤カクテルなし、c)化合物Aなし、TNAP阻害剤カクテルあり、d)10μMの化合物A、TNAP阻害剤カクテルあり。条件c及びdには、1:200のTNAP阻害剤カクテルを添加し(0.25μL)、一方、条件b及びd(10μMの化合物Aあり)には、1:100の化合物Aの1mM溶液を添加する(最終濃度は10μM)。試料を次いで混合し、37℃で1時間インキュベートし、その後、18μL/ウェルの試料を、最終濃度が25μMのAMP 2μLを含有する低容積の96ウェルAMP Glo(商標)アッセイプレートに移す。マルチチャネルピペットを使用して、試料を6~10回混合し、室温で8分間インキュベートし、その後、キットによって提供されるR1溶液20μLで反応を停止させる。8分の時点は、ヒト血清にCD73阻害剤を添加しないアッセイにおける最良のウィンドウを提供するAMPスパイク・イン後の時点を決定するための一連の実験の後に選択した。試料をR1と一度混合したら、調製前のR2溶液+AMP glo試薬を、ウェル当たり40μLでウェルに添加する。最終反応混合物を30分間インキュベートし、その後、Wallac EnVisionリーダーで読み取って、発光を測定する。
【0198】
AMP Gloアッセイデータの分析
AMP Gloアッセイのデータは、複数の手段で分析することができる。生データは、Envision Readerから得た生の発光単位(Raw Luminescence Units)(RLU)の形態である。データは、RLU値、残存するAMPのパーセント(0分と比較した、8分間の反応時間の最後に残存するAMP)、加水分解活性(TNAP阻害剤の存在下及び非存在下での、最高量のCD73阻害剤を含有していたウェルを用いた試験試料におけるRLUの比較)として表すことができる。
【0199】
上記のアッセイを使用して、健康なボランティアの血清を、CD73阻害剤及び/又はTNAP阻害剤の存在下で試験した。測定された発光(RLU)値を図3Bに示す。健康な対象及びがんを有する対象における、CD73の加水分解活性のパーセントとCD73タンパク質濃度との間の相関を、図3Cに示す。
【0200】
[実施例3]
免疫染色を使用するCD73及び/又はTNAPの量の決定
エクト5'ヌクレオチダーゼ(CD73)及び組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)タンパク質を、Cell Signaling Technologyの抗NT5E/CD73 D7F9A抗体クローン及びSino Biologicalの抗抗アルカリ性ホスファターゼ/ALPL R034抗体クローンを使用した抗原賦活化の後に、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織において検出した。シングルプレックス抗体染色の検出は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗ウサギIgG及び3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)の色素原沈殿物を使用して行った。CD73及びTNAP両方の同時検出を、上記の抗体クローンを使用してマルチプレックス蛍光アッセイで行い、そして、HRPを使用して蛍光色原体を沈殿させた。染色陽性区域、染色陽性細胞のパーセンテージ、Hスコア、組合せ陽性スコア(combined positive score)(CPS)、及び腫瘍割合スコア(tumor proportion score)(TPS)を、画像分析プログラムを使用して計算した。シングルプレックス色素原染色では、QuPath Quantitative Pathology & Bioimage Analysisプログラムを使用した。マルチプレックス蛍光では、Indica labsのHALOソフトウェアを使用した。図5A~D及び図6A~Dは、CD73及びTNAPの免疫染色の代表的な画像をそれぞれ示す。図5E及び図6Eは、CD73及びTNAPの染色区域の定量を、腫瘍区域全体に対するパーセンテージとしてプロットしている。図5Fは、染色区域のパーセントとHスコアとの間の相関をプロットしている。
【0201】
[実施例4]
CD73、TNAP、又は他のアデノシン機構mRNAの量の決定
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織からのRNA抽出を、Qiagen RNeasy FFPEキット(#73504)を使用して行う。組織切片は外科用メスを使用して顕微鏡スライドから削り取るか、又は切片はマイクロ遠心チューブに直接置く。NanoString分析を、nCounter SPRINTプロファイラーのnCounter腫瘍学又は免疫学パネルを使用して、抽出されたRNAで行い、次いで、nSolverソフトウェアパッケージを使用して分析する。リアルタイムPCRを、Applied Biosystems QuantStudio 6 Flex Real-time PCRシステムのTaqmanプローブを使用して、抽出されたFFPE RNAから生成されたcDNAで行う。
【0202】
[実施例5]
対象における腫瘍遺伝子変異量(TMB)の決定
本明細書において記載される、対象における腫瘍遺伝子変異量(TMB)を決定する方法は、Goodman et al. Tumor Mutational Burden as an Independent Predictor of Response to Immunotherapy in Diverse Cancers. Mol Cancer Ther. (2017). 16(11):2598-2608において公開されている。
【0203】
[実施例6]
対象のPD-L1状態の決定
対象のPD-L1状態を決定する多くの方法が知られている。1つの有用な方法は、FDAによって承認されたPD-L1 IHC 22C3 pharmDx装置及びDako North America, Inc.によって開発された方法の使用を介するものである。
【0204】
[実施例7]
同位体AMP加水分解アッセイを使用するCD73及び/又はTNAPの量の決定
アッセイの設計
ヒト血漿中のCD73の活性を、13C5-AMPから13C5-アデノシンへの脱リン酸をモニタリングするLC-MS/MS方法を使用してin vitroで評価した。2,5-ジメトキシ-N-(キノリン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(TNAP阻害剤)、エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA、アデノシンデアミナーゼ阻害剤)、5-ヨードツベルシジン(アデノシンキナーゼ阻害剤)、及びアリステロマイシン(S-アデノシル-L-ホモシステイン加水分解酵素阻害剤)からなる阻害剤カクテルを使用して、神経組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)をブロックし、13C5-アデノシンを安定化させた。
【0205】
非線形回帰分析によってIC50値を推定した。
【0206】
アッセイ条件
pH7.4のヒト血漿(50μL)を、CD73阻害剤(化合物A)(0から10μM)、並びにEHNA(10μM)、ジメトキシ-N-(キノリン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(625μM)、5-ヨードツベルシジン(10μM)、及びアリステロマイシン(4μM)と共に1時間プレインキュベートした。反応は5μMの13C5-AMPで開始し、ウォーターバスを振盪しながら37℃で1分間にわたり進行させた。反応を、内部標準(cIMP、5ng/mL)を含む4倍容積の0.4M過塩素酸を添加することによって停止させた。試料を15分間ボルテックスし、次いで、4200rpmで20分間、10℃で遠心分離した。分析方法の節で記載するように、LC-MS/MSによって上清を分析した。
【0207】
分析方法及びデータ分析
質量分析計の入手及び組込みは、Applied Biosystems-Sciex Analystソフトウェア(バージョン1.6.3)で行った。
【0208】
機器:
- API 4000質量分析計(Applied Biosystems、Foster City、CA)
- API 6500質量分析計(Applied Biosystems、Foster City、CA)
- Shimadzu Nexera X2 UHPLC System(Shimadzu Scientific Instruments、Canby、OR)
カラム:Atlantis dC18、100Å、3.0×100mm、3μm(Waters、Milford、MA)
注射容積:0.5μL
流量:0.80mL/分
HPLC勾配:
【0209】
イオン化モード:エレクロトスプレー(ESI)
検出モード:正のMRM(Q1/Q3トランジション:13C5-アデノシンでm/z 273.14/136.10、cIMPでm/z 330.98/137.10)
【0210】
CD73阻害剤を有さない試料の分析によって、試料中のCD73活性についての情報が提供される。CD73阻害剤及び/又はTNAP阻害剤を用いて同一の評価を行うことによって、AMPのCD73媒介脱リン酸化とTNAP媒介脱リン酸との相対的寄与の評価が可能になる。
【0211】
CD73阻害剤の滴定を使用して、データを以下の4パラメーター方程式(変数勾配あり)に近似することによって、GraphPad Prism Version 5.0(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)に含まれるアルゴリズムを使用して、IC50値を推定した。
【0212】
【数1】
【0213】
2人のボランティアから得た代表的なIC50値を、以下の表1及び図7A~Cに示す。
【0214】
【表1】
【0215】
発明者に既知である本発明を実行するための最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態が本明細書に記載される。上述の記載を読むことによって、開示される実施形態の変形形態が当業者に明らかになることができ、当業者はそのような変形形態を適宜用いることができると予想される。したがって、本明細書で具体的に記載されるのと別の方法で本発明が実施されること、及び適用法によって許可される通り、本発明がそれに添付される特許請求の範囲で列挙される発明主題の全ての改変形及び同等物を含むことが意図される。さらに、本明細書で別途指示されない限り、又は文脈によって別途明らかに否定されない限り、その全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組合せが本発明によって包含される。
【0216】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、受託番号及び他の参考文献は、各個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に及び個々に示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A-B】
図5C-D】
図5E
図5F
図6A-B】
図6C-D】
図6E
図7A-B】
図7C
【国際調査報告】