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特表2022-529647電気透析による高純度酸化アルミニウム
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  • 特表-電気透析による高純度酸化アルミニウム 図1
  • 特表-電気透析による高純度酸化アルミニウム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】電気透析による高純度酸化アルミニウム
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/62 20060101AFI20220616BHJP
   C01F 7/743 20220101ALI20220616BHJP
   C01F 7/56 20220101ALI20220616BHJP
   C01F 7/306 20220101ALI20220616BHJP
   C01F 7/32 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C01F7/62
C01F7/743
C01F7/56
C01F7/306
C01F7/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561754
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 US2020028634
(87)【国際公開番号】W WO2020214887
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/835,585
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/850,261
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521452968
【氏名又は名称】ネクストケム,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンズ 3世,ジョセフ ジェー.
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA04
4G076AA14
4G076BA39
4G076BA50
4G076BD02
4G076BE20
4G076BG01
4G076BH01
4G076CA14
4G076CA36
4G076DA30
(57)【要約】
本発明は、電気透析により高純度アルミニウム塩溶液を製造するための方法、及び高純度アルミニウム塩を最終的に高純度酸化アルミニウムに変換するための方法について記載する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度アルミニウム塩水溶液を製造するための方法であって、
アルミニウム塩を溶かした初期アルミニウム塩溶液を提供する工程と、
前記初期アルミニウム塩水溶液を電気透析に供して、前記初期アルミニウム塩水溶液から一価及び多価の陽イオンを除去する工程であって、前記初期アルミニウム塩水溶液から不要な一価及び/又は多価の陽イオンを低減させて精製アルミニウム塩水溶液を製造する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、前記精製アルミニウム塩水溶液から完全に除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期アルミニウム塩水溶液の前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、Na、K、Li、Ca、Cr、Zn、Cu、Ti、Mg、Mn、Ba、Sr、V、Ni、Pb、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Mo、Fe、Si、若しくは他の陽イオン、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記初期アルミニウム塩水溶液の前記アルミニウム塩が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、1-ヘキサノールアルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(polyaluminum chloride:PAC)、塩化アルミニウム水和物(aluminum chlorohydrate:ACH)、酢酸アルミニウム、アルミニウムコリン溶液、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミニウム塩が、アルミニウムを含有する粘土に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミニウム粘土が、カオリン若しくはボーキサイト、又は他のアルミナ粘土である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、アルミナ三水和物(alumina trihydrate:ATH)、又はアルミニウム金属に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩水溶液から精製アルミニウム塩を結晶化させる工程を含む、方法。
【請求項13】
前記精製アルミニウム塩を前記精製アルミニウム塩水溶液から分離する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩水溶液の水性部分を蒸発させる工程であって、精製アルミニウム塩を得る工程、を含む方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩水溶液を酸で処理する工程であって、精製アルミニウム塩の沈殿物を得る工程、を含む方法。
【請求項16】
前記酸が、塩酸、硝酸、硫酸、又はそれらの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記精製アルミニウム塩を高純度アルミニウム塩溶液又は他の溶液で処理する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記精製アルミニウム塩を高純度アルミニウム塩溶液で洗浄する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記精製アルミニウム塩を、高純度飽和アルミニウム塩溶液で洗浄する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩を加熱、焙焼、焼成、噴霧焙焼、若しくは油滴処置、又は他の加熱プロセスに供して、精製酸化アルミニウムを提供する工程を含む、方法。
【請求項21】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として、合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
アルミニウム塩水溶液から一価及び多価の金属陽イオンを除去する方法であって、
アルミニウム塩を溶かした初期アルミニウム塩溶液を提供する工程と、
前記初期アルミニウム塩水溶液を電気透析に供して、前記初期アルミニウム塩水溶液から一価及び多価の陽イオンを除去する工程であって、前記初期アルミニウム塩水溶液から不要な一価及び/又は多価の陽イオンを低減させて精製アルミニウム塩水溶液を製造する工程と
を含む方法。
【請求項26】
前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、前記精製アルミニウム塩水溶液から完全に除去される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記初期アルミニウム塩水溶液の前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、Na、K、Li、Ca、Cr、Zn、Cu、Ti、Mg、Mn、Ba、Sr、V、Ni、Pb、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Mo、Fe、Si、若しくは他の陽イオン、又はそれらの混合物を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記初期アルミニウム塩水溶液の前記アルミニウム塩が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、1-ヘキサノールアルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム水和物(ACH)、酢酸アルミニウム、アルミニウムコリン溶液、又はそれらの混合物を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記アルミニウム塩が、アルミニウムを含有する粘土に由来する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記アルミニウム粘土が、カオリン若しくはボーキサイト、又は他のアルミナ粘土である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、アルミナ三水和物(ATH)、又はアルミニウム金属に由来する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項25に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩水溶液から精製アルミニウム塩を結晶化させる工程を含む、方法。
【請求項37】
前記精製アルミニウム塩を前記精製アルミニウム塩水溶液から分離する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項25に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩水溶液の水性部分を蒸発させる工程であって、精製アルミニウム塩を得る工程、を含む方法。
【請求項39】
請求項25に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩水溶液を酸で処理する工程であって、精製アルミニウム塩の沈殿物を得る工程、を含む方法。
【請求項40】
前記酸が、塩酸、硝酸、硫酸又はそれらの混合物である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記精製アルミニウム塩を高純度アルミニウム塩溶液又は他の溶液で処理する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記精製アルミニウム塩を高純度アルミニウム塩溶液で洗浄する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記精製アルミニウム塩を、飽和高純度アルミニウム塩溶液で洗浄又は処理する、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
請求項36から43のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
前記精製アルミニウム塩を加熱、焙焼、焼成、噴霧焙焼、若しくは油滴処置、又は他の加熱プロセスに供して、精製酸化アルミニウムを提供する工程を含む、方法。
【請求項45】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として、合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月16日に出願された「電気透析による高純度酸化アルミニウム(HIGH PURITY ALUMINUM OXIDE VIA ELECTRODIALYSIS)」と題する米国非仮特許出願第16/850261号の優先権を主張し、また、2019年4月18日に出願された「電気透析による高純度酸化アルミニウム(HIGH PURITY ALUMINUM OXIDE VIA ELECTRODIALYSIS)」と題する米国仮特許出願第62/835585号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、電気透析により高純度アルミニウム塩溶液を製造するための方法、及び最終的に高純度酸化アルミニウムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高純度アルミナは、Alが99.9%を超える純度を有することが望ましい。高純度酸化アルミニウムの用途は非常に多い。例えば、高純度アルミナは、セラミック加工、透光性アルミナの作製の分野、蛍光灯用の発光組成物、バイオセラミックス、LED照明製品、リチウムイオン電池用及び金属研磨用のセパレータにおいて使用されている。また、高純度アルミナは、ヴェルヌイユ(Verneuil)結晶化技術による単結晶を作製するための原材料となる。
【0004】
高純度のアルミナを得るには、種々のプロセスを用いることができる。いくつかのプロセスでは、出発材料としてアルミニウムが利用される。このような場合、アルミニウムは有機酸の塩又はアルコラートに変換され、次いで加水分解又は熱分解されて最後にアルミナが得られる。場合によってはアルコールの再生が可能であるにもかかわらず、このアルミナのコストは、金属アルミニウムを用いる必要があるためかなり高コストである。
【0005】
他のいくつかの経路は不純な水酸化アルミニウム生成物から出発するが、その多くは鉱物から出発するアルミニウム工業で得られるものである。これらの経路は中間鉱物塩を経ることからなり、中間鉱物塩を結晶化することによって不純物の大部分を除去することが可能である。このようにして得られる生成物は熱分解されて純粋なアルミナを形成する。この原理によるいくつかの他の手順は、水酸化アルミニウム、硫酸、及びアンモニアから出発して形成されるアンモニウムミョウバンの結晶化に基づくが、そのような塩を用いたこの稼動方法には多くの欠点がある。
【0006】
他の手法には、数多くの工程による酸化アルミニウムの作製及び精製が含まれる。例えば、米国特許第7,837,961号明細書及び同第10,081,553号明細書では、材料の複数回の洗浄、(各)中間生成物の単離、浸出、各溶液の濃縮、(各)中間生成物の再溶解、各成分のさらなる単離、乾燥、粉砕、及び各プロセスの様々な工程からの複数成分の単離が必要である。
【0007】
多段階処理という要件により、所望の高純度酸化アルミニウムに関連する稼動コスト及び資本コストが増大するとともに、処理中の望ましくないイオンによる汚染の可能性が増大する。
【0008】
さらに、不純物が生成物に導入されないように、現行のプロセスで使用する材料としては、高純度水及び高純度陰イオン(類)、高純度HCl、高純度アルミニウム金属、又は高純度1-ヘキサノールなどが使用されなければならない。(米国特許第10,081,553号明細書を参照されたい)。高純度材料を使用する要件はすべて、高純度酸化アルミニウムを作製するためのコストを増大させる。
【0009】
したがって、上述の現行の欠点の1つ又は複数を克服する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,837,961号明細書
【特許文献2】米国特許第10,081,553号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明は、驚くべきことに、高価なアルミニウム金属又は複雑なプロセスを必要とせずに、高純度アルミナ(high purity alumina:HPA)を作製するための、非常に単純で簡潔な費用節減の手法を提供する。本発明は、一般に、高純度アルミニウム塩溶液を製造するための方法、及び最終的に高純度酸化アルミニウムを製造するための方法に関する。
【0012】
本明細書に記載の方法は、アルミニウム塩を溶かした初期アルミニウム塩水溶液を提供し、続いてその初期アルミニウム塩水溶液を、陽イオン透過膜及び陰イオン透過膜又はバイポーラ膜を備えた電気透析環境に供して、初期アルミニウム塩水溶液から一価及び/又は多価の陽イオンを除去するものである。
【0013】
精製アルミニウム塩水溶液は、初期アルミニウム塩水溶液から不要な一価及び/又は多価の非アルミニウム陽イオンを低減又は完全に除去して製造される。
【0014】
その結果得られる精製アルミニウム塩水溶液は、初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有し、例えば、酸化アルミニウムを基準として、Na、K、Li、Ca、Cr、Zn、Cu、Ti、Mg、Mn、Fe、Si、若しくは他の陽イオン、又はそれらの混合物を合計して1000ppm未満~約1ppm以下、例えば900ppm、800ppm、700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、100ppm、50ppm、25ppm、10ppm、5ppm、1ppm、0.5ppm、0.2ppm、0.1ppm、0.05ppm、0.02ppm、0.01ppm、0.001ppm含有し、精製アルミニウム塩を提供する。
【0015】
得られる精製アルミニウム塩水溶液は、精製アルミニウム塩を単離するための様々なプロセスに供することができ、次いで、精製アルミニウム塩を高純度酸化アルミニウムに変換するための様々な方法に供することができる。その結果得られる高純度酸化アルミニウムは、約3N(純度99.9%、不純物レベルがわずか0.1%すなわち1000ppm)~約6N(純度99.9999%、不純物レベルがわずか0.0001%、すなわち1ppm)の範囲の純度を有する。
【0016】
本実施形態は、当技術分野で知られている現行のプロセスにまさるいくつかの利点を提供する。
【0017】
電気透析を使用して高純度アルミニウム塩水溶液を作製することにより、最終的に高純度酸化アルミニウムを作製するための低コストで効率的なプロセスが提供される。
【0018】
アルミニウム塩水溶液から不純物を直接除去することは、プロセス制御の手だてとなる。
【0019】
本明細書に記載の実施形態により、単一の処理工程、例えば電気透析において、アルミニウム塩水溶液から不要な不純物を除去する機能が提供される。
【0020】
電気透析プロセスによってアルミニウム塩水溶液から除去されたナトリウム及びカルシウムなどの不純物は、その後の結晶化又は蒸発のプロセス中に母液中で濃縮されることがない。これにより、母液の浄化要件を最小限に抑えて、母液を効率的に再生することができる。
【0021】
本明細書に記載の実施形態は、アルミニウム源、アルミニウム塩源、水源、及び陰イオン源を含む、より低純度で低コストの原料を使用する手だてとなる。
【0022】
さらに、全体的な電気透析プロセスの性質による本明細書に記載の実施形態に関連する資本コスト、及び必須である高価な装置に関連する資本コストははるかに低いものである。現行の多くの商業的プロセスでは、酸化アルミニウムの適切な純度を達成するために多数の処理工程が必要である。
【0023】
複数の実施形態を開示するが、本発明のさらに他の実施形態が、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。明らかなように、本発明は、すべて本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な明白な態様において改変が可能である。したがって、詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】単層膜を用いた電気透析プロセスの基本的な構成要素及び稼動を示す図である。
図2】2区画構成でバイポーラ膜を用いた電気透析プロセスの基本的な構成要素及び稼動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲において、「含む」及び「含まれる」という用語は非限定的な用語であり、「含む(含まれる)が、…に限定されない」を意味すると解釈されるべきである。これらの用語は、「から本質的になる」及び「からなる」という、より限定的な用語を包含する。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、事物は、文脈が特に指示しない限り、複数である場合を含むことに留意されたい。同様に、「1つ又は複数の」、「少なくとも1つの」が付く用語、及びそれらが付かない同じ用語は、本明細書では互換的に使用することができる。また、「含む」、「によって特徴付けられる」、及び「有する」という用語は、互換的に使用することができることにも留意されたい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「高純度酸化アルミニウム」(Al)という用語は、約3N(純度99.9%、不純物レベルがわずか0.1%、すなわち1000ppm)以上の純度を有する酸化アルミニウムを指す。いくつかの実施例では、「高純度酸化アルミニウム」という用語は、約3N~約6N(純度99.9999%、不純物レベルがわずか0.0001%、すなわち1ppm)の範囲の純度を有する酸化アルミニウムを指す。
【0028】
電気透析(「Electrodialysis:ED」)は、電位勾配の影響下でイオンがイオン透過膜を通って、ある溶液から別の溶液に輸送される電気化学プロセスである。イオンの電荷によって、イオン交換ポリマーから作られた前記膜を通ってイオンが運ばれる。2つの端部電極間に電圧を印加すると、膜を横切ってイオン輸送が起こるのに必要な電位場が発生する。電気透析に使用される膜は、正又は負の電荷を有するイオンを選択的に輸送し、反対の電荷のイオンを排除する機能を有するので、電解質の有用な濃縮、除去、又は分離を電気透析によって達成することができる。電気透析の商業的用途には、飲料水を作り出すための汽水からの塩の除去、塩製造に向けた第1の工程として、海水から塩濃度20%までの塩の濃縮、乳児用調製粉乳を製造するための乳清からのミネラルの低減、及び醤油からの塩の低減が含まれる。
【0029】
電気透析プロセスに使用される装置は、一般に電気透析スタックと呼ばれる。電気透析のための電気透析スタックの必須要素は、陽極、陰極、陽イオン透過膜、及び陰イオン透過膜である。バイポーラ電気透析のための電気透析スタックの必須要素は、陽極、陰極、陽イオン透過膜又は陰イオン透過膜、及びバイポーラ膜であり、又は、3区画バイポーラ電気透析スタックの場合は、陽イオン透過膜及び陰イオン透過膜、並びにバイポーラ膜である。
【0030】
図1は、単層膜を用いた電気透析プロセスの基本的な構成要素及び稼動を示す図である。このように、陽イオン透過膜及び陰イオン透過膜は、陽極と陰極との間に交互に配置される。このような形でイオン透過膜を組み立てると、2組の別個の区画が形成される。第1の組の区画又はセルは、陽極側の陰イオン透過膜及び陰極側の陽イオン透過膜からなる。この組のセルは、電圧が印加されたときにイオンがこれらのセルから除去されるように、陽極及び陰極に対して配向される。この組の区画の溶液は、供給流、希釈流、又は減少流と呼ばれる。第2の組の区画又はセルは、陰極側の陰イオン透過膜及び陽極側の陽イオン透過膜からなる。この組のセルは、電圧が電極に印加されたときにイオンがこれらのセルに受容され濃縮されるように、陽極及び陰極に対して配向される。この第2の組の区画における溶液は、受容流、濃縮流、又は富化流と呼ばれる。このように、電気透析プロセスの正味の効果は、供給溶液から受容溶液に電解質を移動させ、受容溶液においてその電解質を濃縮することである。
【0031】
図2は、2区画構成でバイポーラ膜を用いた電気透析プロセスの基本的な構成要素及び稼動を示す図である。このように、バイポーラ膜及び陽イオン透過膜は、陽極と陰極との間に交互に配置される。このような形でバイポーラ膜及び陽イオン透過膜を組み立てると、2組の別個の区画が形成される。第1の組の区画又はセルは、陰極側の陽イオン透過膜及び陽極側のバイポーラ膜からなる。この組の区画の溶液は、供給流、希釈流、又は減少流と呼ばれる。電圧が印加されると、Hがバイポーラ膜によってアルミニウム塩供給流に提供され、不要な陽イオンが、これらのセルから減少する。第2の組の区画又はセルは、陽極側の陽イオン透過膜及び陰極側のバイポーラ膜からなる。この組のセルは、電圧が電極に印加されたときに電解質がこれらのセルに受容され濃縮されるように、陽極及び陰極に対して配向される。この第2の組の区画における溶液は、受容流、濃縮流、又は富化流と呼ばれる。このように、バイポーラ電気透析プロセスの正味の効果は、供給溶液から受容溶液に電解質を移動させ、受容溶液においてその電解質を濃縮することである。Ca(OH)及びMg(OH)などの金属水酸化物の沈殿を防止するために、塩酸などの適切な酸を受容区画に添加して受容溶液のpHを調整してもよい。
【0032】
図1及び図2は、陽イオンのNa+、Ca++、K+、及び陰イオンのCl-の動きを示す例であり、説明のために示されている。当業者に知られているように、アルミニウムイオン、及び水又は他の分子などの他の材料が存在してもよい。
【0033】
3区画バイオポーラシステムなどの他の構成も可能であり、他の構成も本明細書に記載の実施形態の範囲内であることを理解されたい。
【0034】
特定の電流、電圧などは必要でなく、通常の電気透析条件の最大約1.2V/セル対及び500アンペア/mの電流密度が従来型の電気透析に適しており、最大約1.8V/セル対及び600アンペア/mの電流密度がバイポーラ電気透析に適している。
【0035】
電気透析又はバイポーラ電気透析のいずれかでAl塩溶液を処理することにより、陽イオンが、Al塩供給溶液から選択的かつ効率的に除去され、受容溶液に輸送される。不要な陽イオンがAl塩溶液から分離され、システムから効率的に除去されることが当該プロセスの利点である。
【0036】
電気透析スタック構成要素、タンク、ポンプ、バルブ、配管、及び機器などの電気透析システムの構成要素のための構造材料には、プロセスを付加的な不純物で汚染することなく電気透析プロセスの化学的環境及び稼動環境に耐えることができる非汚染性材料、コーティング、又はライナを含むことができる。例としては、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride:PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)、後塩素化ポリ塩化ビニル(chlorinated polyvinyl chloride:CPVC)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)、ゴム、ポリプロピレン、ガラス、ビニルエステル樹脂、及び化学的に適合性の熱可塑性樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
アルミニウム塩に含有される不純物は、高純度金属、高純度酸、及び高純度水から作製されたアルミニウム塩と同等レベルまで、アルミニウム塩溶液から電気透析を用いて効率的かつ選択的に除去することができる。このように、本明細書に記載の実施形態は、電気透析プロセスの特有の特性により、水、酸、及びアルミニウム原料が高純度であることを必ずしも必要としないという利点を提供する。
【0038】
例えば、電気透析プロセスは以下を含む。
【0039】
すなわち、陽イオン膜及び陰イオン膜を備えた従来型の電気透析スタックを設けること、又はバイポーラ膜及び陽イオン膜を備えたバイポーラ電気透析スタックを設けることを含む。例示的な膜には、アストム社のネオセプタCMBなどの陽イオン膜及びアストム社のネオセプタAHAなどの陰イオン膜、並びにアストム社のバイポーラ膜が含まれる。他の製造業者からの陽イオン膜、陰イオン膜、及びバイポーラ膜も使用してもよい。
【0040】
アルミニウム塩は、供給タンク内に配置され、区画の陰極側の陽イオン膜及び区画の陽極側の陰イオン膜、又は区画の陽極側のバイポーラ膜及び区画の陰極側の陽イオン膜からなるスタックの供給区画を通って循環される。
【0041】
受容溶液は、塩酸などの電解質を加えた水、アルミニウム塩の溶液、又は電気透析に適した他の溶液とすることができる。受容溶液は、受容タンク内に配置され、区画の陰極側の陰イオン膜及び区画の陰極側の陽イオン膜、又は区画の陽極側のバイポーラ膜及び区画の陰極側の陽イオン膜からなるスタックの受容区画を通って循環される。
【0042】
各溶液は、電気透析プロセス及び適切な直流電力の印加によって従来行われているように、電気透析スタックを通して循環される。電気透析プロセスで従来行われているように、電極リンス溶液が設けられ、電極区画を通って循環される。
【0043】
各溶液は、電気透析プロセスの前、間、又は後に任意選択で濾過することができる。
【0044】
電気透析プロセスは、電気透析に適した温度、圧力などの任意の物理的条件下で行うことができる。
【0045】
陽イオンにはナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、及びカリウムが含まれるがこれらに限定されず、これらは、アルミニウム塩供給溶液から選択的かつ効率的に除去され、受容溶液に輸送される。
【0046】
受容溶液は、処分、再生、又はさらに電気透析によって処理及び精製することができる。
【0047】
アルミニウム塩生成物に含有されるアルミニウムは、電気透析システムの供給ループ内に含有される生成物溶液中に実質的に残る。
【0048】
適切なアルミニウム塩には、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、1-ヘキサノールアルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(polyaluminum chloride:PAC)、塩化アルミニウム水和物(aluminum chlorohydrate:ACH)、酢酸アルミニウム、アルミニウムコリン溶液、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
[Al]:[配位子]は、多様な比とすることができる。例えば、AlClなどのアルミニウム塩、ポリ塩化アルミニウム、又は式Al(OH)6-xCl(式中、xは任意の整数又は分数であり、得られる分子式は可溶性アルミニウム化合物又はHClを含む溶液中の任意のアルミニウム塩を表す)によって定義されるAl(OH)Cl(アルミニウムクロロハイドレート)を使用してもよい。
【0050】
アルミニウム塩は、限定するものではないが、カオリン又はボーキサイトなどのアルミニウムを含有する粘土、水酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物(aluminum trihydrate:ATH)、アルミニウム金属、又はそれらの混合物を含む供給源から得ることができる。
【0051】
これらのアルミニウム源は、Na、K、Li、Ca、Mg、Mn、Fe、Siなどの一価及び多価の陽イオンを含む不純物を含有する。
【0052】
本明細書に記載の電気透析プロセスは、アルミニウム塩を作製するための出発材料として、高純度のアルミニウム金属又は他のアルミニウム源を、本明細書のプロセスのために必要としないという利点を提供する。これによって実質的なコスト削減となり、また、高純度アルミニウム金属以外の代替ベースのアルミニウム源材料を使用する機能も提供される。
【0053】
電気透析プロセスは、アルミニウム塩溶液から一価及び多価の陽イオンなどの汚染物質を除去するのに効率的である。最後に精製アルミニウム塩溶液となる初期アルミニウム塩溶液において、汚染源となり得る一価及び多価の陽イオンの例には、Na、K、Li、Ca、Cr、Zn、Cu、Ti、Mg、Mn、Ba、Sr、V、Ni、Pb、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Mo、Fe、Si、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
一般に、アルミニウム塩溶液(受容流/富化流及び減少流/供給流)は水系である。すなわち、電気透析プロセスで使用される溶液は水を含むが、例えば、1-ヘキサノールなどの非水性溶媒、又は他のアルミニウムアルコキシド、及びコリン水溶液(例えば、米国特許第5,225,229号明細書を参照されたい)も含むことができる。部分的には電気透析プロセスの性質により、そのプロセスにおいて高純度水を使用する必要はない。本明細書に記載のプロセスにおいて精製水を必要としないことは、実質的なコスト削減及び廃棄物の低減になる。
【0055】
本明細書に記載の電気透析プロセスによって、初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオン、例えば、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppm未満又はさらに少ない、1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含有する精製アルミニウム塩水溶液ができる。
【0056】
精製アルミニウム塩水溶液を得た後、その溶液を種々の処理に供して、最終的に純度が約3N(99.9%)~6N(99.9999%)以上の高純度酸化アルミニウムを作製することができる。
【0057】
一態様では、精製アルミニウム塩水溶液を分離工程に供して精製アルミニウム塩を回収する。これは、結晶化、溶液からの水の蒸発、遠心分離などの当技術分野で公知の方法によって行うことができる。
【0058】
別の態様では、精製アルミニウム塩水溶液は、塩酸、硝酸、又は硫酸などの酸で酸性化される。その結果得られる沈殿物を、次いで当技術分野で公知の方法により、回収することができる。
【0059】
分離及び単離のプロセスには、アルミニウム塩結晶及び母液混合物の沈降、濾過、又は遠心分離を含むことができるが、これらに限定されない。分離は、1つ又は複数の非汚染性の分離容器及びハンドリング装置で行うことができ、それらは、電気透析の構成に関する上記の非汚染性材料の1つを含むことができる。
【0060】
分離された精製アルミニウム塩(類)は、任意選択により洗浄液で洗浄して、アルミニウム塩結晶に付着し得る不純物を除去することができる。一例では、洗浄液は、HCl、濃塩酸などの高純度酸、高純度アセトン若しくは別の高純度溶媒、又はアルミニウム塩の高純度溶液(例えば、結晶が塩化アルミニウム結晶である場合、塩化アルミニウム溶液を洗浄液として使用することができる)、及び高純度水の少なくとも1つを含むことができる。一例では、酸性洗浄液(例えば、濃HClなどの高純度HCl)は、精製アルミニウム塩材料のかなりの部分が溶解して溶液に戻らないように、十分に高い濃度で使用される。精製アルミニウム塩材料の洗浄はまた、精製アルミニウム塩材料のかなりの部分が溶解しないように、十分に速く行うことができる。洗浄液は精製され、当該プロセスで再使用することができる。アルミニウム塩生成物は、得られる材料のサイズが当該プロセスの後半でより小さくなり得るように、任意選択で粉砕又は混転することができる。
【0061】
精製アルミニウム塩は、さらに処理することができる。一例では、精製アルミニウム塩水溶液又は結晶を、複数の熱処理法によって直接処理して、水及び陰イオンを除去し、高度精製酸化アルミニウムを提供することができる。別の方法では、精製アルミニウム塩溶液又は結晶を加熱して、高度精製酸化アルミニウムに変換することができる。
【0062】
例えば、精製アルミニウム塩の水溶液又は結晶を焼成に供して、高純度酸化アルミニウムを提供することができる。あるいは、単離された精製アルミニウム塩結晶を直接焼成することができる。精製アルミニウム塩水溶液の微細なミストを焼成炉内に噴霧して水及び陰イオンを除去し、そして、高度精製アルミニウム塩を変換して高度精製酸化アルミニウムを形成する。高度精製酸化アルミニウムは、上述の非汚染性材料の1つ、例えばテフロン(登録商標)から形成された非汚染性容器に回収することができる。
【0063】
別の実施形態では、精製アルミニウム塩溶液に焼成の一種である噴霧焙焼を行い、そして、高純度アルミニウム塩溶液を変換して高純度酸化アルミニウムを得ることができる。
【0064】
通常、焼成工程又は噴霧焙焼工程は、約300°C~約1800°C、より具体的には約500°C~約1300°C、より具体的には約800°C~約1200°Cの温度範囲にわたって行われる。一般に、約1000°C~約1300°Cの温度範囲では、アルミナのガンマ、シータ、カッパなどの相、又は他の相が所望のアルファアルミナに変換される。
【0065】
噴霧焙焼又は焼成により、Al塩溶液が分解され、例えばガンマ、シータ、カッパ、又は他の相の中間アルミナを形成するアルミナから、HCl及び水が分離される。所望であれば、中間アルミナをさらに加熱して、アルファアルミナなどの所望の結晶相を形成することができる。
【0066】
あるいは、アルミニウム塩溶液を噴霧乾燥して乾燥アルミニウム塩結晶を形成し、続いて乾燥アルミニウム塩を焼成することにより、HPAを提供することができる。
【0067】
別の実施形態では、精製アルミニウム水溶液を「油滴」プロセスに供して、酸化アルミニウムを作製することができる。前記溶液は熱油と接触させて、水及びHClを除去し、精製アルミニウム塩を酸化アルミニウムに変換させる。
【0068】
すべての場合において、焼成中のアルミニウム塩の分解から発生する配位子又は酸を捕捉し、次いでアルミナ三水和物、カオリン、又はアルミニウム金属などのアルミニウム源と反応させて、当該プロセスで使用するための初期Al塩を製造することができる。例えば、アルミニウム塩の溶液又は結晶を加熱して発生する塩酸及び水は、凝縮して塩酸溶液を形成する。この塩酸溶液は、アルミニウム三水和物、カオリン、アルミニウム金属などのアルミニウム源を溶解するために使用し、完全に再生することができる。
【0069】
得られる高純度酸化アルミニウムは、得られる材料のサイズがさらなる処理のためにより小さくなり得るよう、任意選択で洗浄、又は粉砕若しくは混転することができる。
【0070】
本明細書に示される高純度酸化アルミニウムは、多くの用途を有する。例えば、高純度酸化アルミニウム又はアルミナ粉末を使用して、高圧ナトリウムランプ用の半透明チューブ、時計カバー用のサファイア、高強度セラミック工具、磁気テープ用の研磨剤、GaN用の基板としての発光ダイオード、光電子機器用のシリコン・マイクロチップ・ウェハ、航空機用の窓及びカウル、車両ヘッドランプ用の保護窓、携帯電話及び他の電子デバイス、停止信号、外科用メス、医療用光ファイバプローブのマイクロ光学素子、バーコード用の光学スキャナ、紫外線CD及びDVD光学システム、プリズム、レンズ、光学プレート、光学音叉及びIR音叉の光システム、携帯電話、モバイルデバイス及び光ファイバシステムの表示窓、LED照明、触媒材料、リチウムイオン電池などの電気用途向け絶縁材料、浸食環境及び高温環境における化学製造のための機器(チューブ、るつぼ、漏斗、化学用ガラス製品)、研磨剤、電池部品、軸受、及び宝石を作ることができる。一価及び多価の陽イオンなどの不純物は、上記の材料に有害である。
【0071】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で具体的に言及されるすべての刊行物及び特許は、本発明に関連して使用され得るそれらの刊行物に記されている化学物質、機器、統計分析、及び方法論を記載及び開示することを含むすべての目的のために、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で引用されるすべての参考文献は、当分野の技術水準を示すものと解釈されるべきである。本明細書のいかなるものも、先行発明によって、本発明がその開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0072】
1から50まで連続して列挙される以下のパラグラフは、本明細書に記載する様々な実施形態の様々な態様を規定する。一実施形態において、第1のパラグラフ(1)で、本発明は以下を提供する。1.高純度アルミニウム塩水溶液を製造するための方法であって、
【0073】
アルミニウム塩を溶かした初期アルミニウム塩溶液を提供する工程と、
【0074】
前記初期アルミニウム塩水溶液を電気透析に供して、前記初期アルミニウム塩水溶液から一価及び多価の陽イオンを除去する工程であって、前記初期アルミニウム塩水溶液から不要な一価及び/又は多価の陽イオンを低減させて精製アルミニウム塩水溶液を製造する工程とを含む、方法。
【0075】
2.前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、前記精製アルミニウム塩水溶液から完全に除去される、パラグラフ1に記載の方法。
【0076】
3.前記初期アルミニウム塩水溶液の前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、Na、K、Li、Ca、Cr、Zn、Cu、Ti、Mg、Mn、Ba、Sr、V、Ni、Pb、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Mo、Fe、Si、若しくは他の陽イオン、又はそれらの混合物を含む、パラグラフ1に記載の方法。
【0077】
4.前記初期アルミニウム塩水溶液の前記アルミニウム塩が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、1-ヘキサノールアルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム水和物(ACH)、酢酸アルミニウム、アルミニウムコリン溶液、又はそれらの混合物を含む、パラグラフ1から3のいずれかに記載の方法。
【0078】
5.前記アルミニウム塩が、アルミニウムを含有する粘土に由来する、パラグラフ4に記載の方法。
【0079】
6.前記アルミニウム粘土が、カオリン若しくはボーキサイト、又は他のアルミナ粘土である、パラグラフ5に記載の方法。
【0080】
7.前記アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、アルミナ三水和物(ATH)、又はアルミニウム金属に由来する、パラグラフ4に記載の方法。
【0081】
8.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、パラグラフ1から7のいずれかに記載の方法。
【0082】
9.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ1から7のいずれかに記載の方法。
【0083】
10.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ1から7のいずれかに記載の方法。
【0084】
11.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ10に記載の方法。
【0085】
12.パラグラフ1から11のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0086】
前記精製アルミニウム塩水溶液から精製アルミニウム塩を結晶化させる工程を含む、方法。
【0087】
13.前記精製アルミニウム塩を前記精製アルミニウム塩水溶液から分離する、パラグラフ12に記載の方法。
【0088】
14.パラグラフ1から11のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0089】
前記精製アルミニウム塩水溶液の水性部分を蒸発させる工程であって、精製アルミニウム塩を得る工程、を含む方法。
【0090】
15.パラグラフ1から11のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0091】
前記精製アルミニウム塩水溶液を酸で処理する工程であって、精製アルミニウム塩の沈殿物を得る工程、を含む方法。
【0092】
16.前記酸が、塩酸、硝酸、硫酸、又はそれらの混合物である、パラグラフ15に記載の方法。
【0093】
17.前記精製アルミニウム塩を、高純度アルミニウム塩溶液、又は濃塩酸などの他の溶液で処理する、パラグラフ12から16のいずれかに記載の方法。
【0094】
18.前記精製アルミニウム塩を高純度アルミニウム塩溶液で洗浄する、パラグラフ12から16のいずれかに記載の方法。
【0095】
19.前記精製アルミニウム塩を、高純度飽和アルミニウム塩溶液で洗浄又は処理する、パラグラフ17又は18のいずれかに記載の方法。
【0096】
20.パラグラフ12から19のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0097】
前記精製アルミニウム塩を加熱、焙焼、焼成、噴霧焙焼、若しくは油滴処置、又は他の加熱プロセスに供して、精製酸化アルミニウムを提供する工程を含む、方法。
【0098】
21.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、パラグラフ20に記載の方法。
【0099】
22.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ20に記載の方法。
【0100】
23.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ20に記載の方法。
【0101】
24.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として、合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ20に記載の方法。
【0102】
25.アルミニウム塩水溶液から一価及び多価の金属陽イオンを除去する方法であって、
【0103】
アルミニウム塩を溶かした初期アルミニウム塩溶液を提供する工程と、
【0104】
前記初期アルミニウム塩水溶液を電気透析に供して、前記初期アルミニウム塩水溶液から一価及び多価の陽イオンを除去する工程であって、前記初期アルミニウム塩水溶液から不要な一価及び/又は多価の陽イオンを低減させて精製アルミニウム塩水溶液を製造する工程とを含む、方法。
【0105】
26.前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、前記精製アルミニウム塩水溶液から完全に除去される、パラグラフ25に記載の方法。
【0106】
27.前記初期アルミニウム塩水溶液の前記不要な一価及び/又は多価の陽イオンが、Na、K、Li、Ca、Cr、Zn、Cu、Ti、Mg、Mn、Ba、Sr、V、Ni、Pb、Co、Sb、As、B、Sn、Be、Mo、Fe、Si、若しくは他の陽イオン、又はそれらの混合物を含む、パラグラフ25に記載の方法。
【0107】
28.前記初期アルミニウム塩水溶液の前記アルミニウム塩が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、1-ヘキサノールアルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム水和物(ACH)、酢酸アルミニウム、アルミニウムコリン溶液、又はそれらの混合物を含む、パラグラフ25から27のいずれかに記載の方法。
【0108】
29.前記アルミニウム塩が、アルミニウムを含有する粘土に由来する、パラグラフ27に記載の方法。
【0109】
30.前記アルミニウム粘土が、カオリン若しくはボーキサイト、又は他のアルミナ粘土である、パラグラフ29に記載の方法。
【0110】
31.前記アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、アルミナ三水和物(ATH)、又はアルミニウム金属に由来する、パラグラフ28に記載の方法。
【0111】
32.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、パラグラフ25から31のいずれかに記載の方法。
【0112】
33.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ25から31のいずれかに記載の方法。
【0113】
34.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ25から31のいずれかに記載の方法。
【0114】
35.前記精製アルミニウム塩水溶液が、酸化アルミニウムを基準として合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ34に記載の方法。
【0115】
36.パラグラフ25から35のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0116】
前記精製アルミニウム塩水溶液から精製アルミニウム塩を結晶化させる工程を含む、方法。
【0117】
37.前記精製アルミニウム塩を前記精製アルミニウム塩水溶液から分離する、パラグラフ36に記載の方法。
【0118】
38.パラグラフ25から35のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0119】
前記精製アルミニウム塩水溶液の水性部分を蒸発させる工程であって、精製アルミニウム塩を得る工程、を含む方法。
【0120】
39.パラグラフ25から35のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0121】
前記精製アルミニウム塩水溶液を酸で処理する工程であって、精製アルミニウム塩の沈殿物を得る工程、を含む方法。
【0122】
40.前記酸が、塩酸、硝酸、硫酸、又はそれらの混合物である、パラグラフ39に記載の方法。
【0123】
41.前記精製アルミニウム塩を、高純度アルミニウム塩溶液、又は濃塩酸などの他の溶液で処理する、パラグラフ36から40のいずれかに記載の方法。
【0124】
42.前記高純度アルミニウム塩を高純度アルミニウム塩溶液で洗浄する、パラグラフ36から40のいずれかに記載の方法。
【0125】
43.前記精製アルミニウム塩を、飽和高純度アルミニウム塩溶液で処理又は洗浄する、パラグラフ41又は42のいずれかに記載の方法。
【0126】
44.パラグラフ36から43のいずれかに記載の方法であって、さらに、
【0127】
前記精製アルミニウム塩を加熱、焙焼、焼成、噴霧焙焼、若しくは油滴処置、又は他の加熱プロセスに供して、精製酸化アルミニウムを提供する工程を含む、方法。
【0128】
45.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準とし、不要な一価及び/又は多価の陽イオンの合計として、前記初期アルミニウム塩溶液よりも低レベルの一価及び多価の非アルミニウム陽イオンを含有する、パラグラフ44に記載の方法。
【0129】
46.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約1000ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ44に記載の方法。
【0130】
47.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として合計で約100ppm未満~約1ppmの1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ44に記載の方法。
【0131】
48.前記精製酸化アルミニウムが、酸化アルミニウムを基準として、合計で約10ppm未満若しくは約1ppm未満又はさらに少ない1つ又は複数の不要な一価及び/又は多価の陽イオンを含む、パラグラフ44に記載の方法。
【0132】
49.48までのパラグラフのいずれかのプロセスで提供される高純度アルミナ(HPA)。
【0133】
50.パラグラフ49に記載の高純度アルミニウムであって、前記HPAを、高圧ナトリウムランプ、時計カバー用のサファイア、高強度セラミック工具、磁気テープ用の研磨剤、GaN用の基板としての発光ダイオード、光電子機器用のシリコン・マイクロチップ・ウェハ、航空機用の窓及びカウル、車両ヘッドランプ用の保護窓、携帯電話及び他の電子デバイス、停止信号、外科用メス、医療用光ファイバプローブのマイクロ光学素子、バーコード用の光学スキャナ、紫外線CD及びDVD光学システム、プリズム、レンズ、光学プレート、光学音叉及びIR音叉の光システム、携帯電話、携帯電話の表示窓、モバイルデバイス及び光ファイバシステムの表示窓、LED照明、触媒材料、リチウムイオン電池などの電気用途向け絶縁材料、浸食環境及び高温環境における化学製造のための機器(チューブ、るつぼ、漏斗、化学用ガラス製品)、研磨剤、電池部品、軸受、及び宝石において使用する、高純度アルミニウム。
【0134】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明する。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に多くの変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、本出願に記載された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言によって記載された実施形態及びそれらの実施形態の均等物によってのみ限定されるものである。特に明記しない限り、すべてのパーセンテージは重量による。
【実施例
【0135】
[実施例1]電気透析による高純度塩化アルミニウム六水和物結晶の製造
【0136】
電気透析スタック及びシステム:本明細書の図1に記載されるように構成された10個のセル対を備え、アストム社のネオセプタCMB陽イオン膜及びアストム社のネオセプタAHA陰イオン膜を備える、ユーロディア・インダストリ(Eurodia Industrie)社によって提供されたEuro 2電気透析スタック。陽極溶液は希硫酸であり、陰極溶液は希塩酸であった。これらの溶液は、電極を収容する区画を通って循環され、各実施例においては、EDスタックの活性セルから膜によって分離されている。
【0137】
供給溶液:アルミナ三水和物、塩酸、及び水から製造し、分析結果を、酸化アルミニウムを基準とし溶液1として下の表1に記したポリ塩化アルミニウム溶液3000グラム。
【0138】
受容溶液:HClでpH2.5に調整した脱イオン水7900グラム。
【0139】
上記の供給溶液及び受容溶液をEuro 2システムの供給タンク及び受容タンクに入れた。循環ポンプを始動して、Euro 2 EDスタックを通して各溶液を循環させ、それぞれのタンクに戻した。供給溶液及び受容溶液の温度を40°Cに維持した。直流電源を17Vで始動し、電流を最大9アンペアで印加した。合計11.97アンペア時の電荷を流した。
【0140】
直流電力を停止し、循環ポンプを停止し、各溶液を各タンクから取り出した。
【0141】
上記の電気透析の稼動から得られた精製供給溶液を分析した。分析結果を、酸化アルミニウムを基準とし、溶液2として表1に記す。
【0142】
15.5グラムの濃HClを、撹拌しながら54.5グラムの精製希釈溶液に添加して、母液中に塩化アルミニウム六水和物(ACH)結晶を形成した。
【0143】
ACH結晶を、濾紙を備えたブフナー漏斗で濾過することによって母液から分離し、次いで100ミリリットルの濃HClで洗浄した。17.7グラムのACH結晶を回収し、分析した。分析結果を、酸化アルミニウムを基準とし、結晶1として表1に記す。
【0144】
上記のプロセスは、バッチ式で、又はAl塩供給溶液を連続的にシステムに添加し連続的に除去し、受容溶液を連続的に添加し連続的に除去する連続式で稼動してもよい。当該システムは、セミバッチ式、又はバッチ式と連続式との任意の組み合わせで稼動してもよい。
【0145】
本明細書に記載のすべての分析は、誘導結合プラズマ原子発光分光分析法(inductively coupled plasma-atomic emission spectroscopy:ICP-AES)としても知られる誘導結合プラズマ発光分光分析法(inductively coupled plasma optical emission spectrometry:ICP-OES)によって行った。不純物を特定するための他の適切な方法には、例えば、グロー放電質量分析法(例えば、Thermo Scientific Element GD Plus BD-MS)及び/又は蛍光X線分光法が含まれる。
【0146】
アルミニウム塩溶液、アルミニウム塩結晶、又はHPAを、Spectro ARCOS EOP(真正面プラズマすなわちアキシャル測光)ICP-OESを用いて、微量元素について分析した。このICP-OESでは、テキサス・サイエンティフィック・プロダクツ(Texas Scientific Products)社から供給されているOptiMist(登録商標)VORTEXネブライザー及びサイクロン式スプレーチャンバ、並びにグラス・エクスパンション(Glass Expansion)社から供給されており、石英アウターチューブと2.4 mmのサファイアインジェクタとを備えたD-Torchが利用されている。HPA試料を硫酸で消化し、硝酸で希釈し、元素分析測定を行った。較正は、同様の条件下で作製された既知の濃度の様々な一価又は多価の陽イオンの標準溶液を使用して行った。HPA標準用のアルミニウム源は、ハイ・ピュリティ・スタンダーズ(High Purity Standards)社から入手した20mg/mL標準(#SM-1934-001-1L)であった。
【0147】
検出限界未満の元素は除外する。
【0148】
【表1】
【0149】
[実施例2]高純度塩化アルミニウム溶液の製造
【0150】
実施例2の電気透析処理は、Eurodia EUR6B-20電気透析スタックで行った。スタックは、寸法安定性電極(dimensionally stable electrode:DSE)の陽極及び陰極、並びにネオセプタAHA陰イオン透過膜及びネオセプタCMB陽イオン透過膜の組み合わせからなっていた。電気透析膜は20対あり、稼動表面積はそれぞれ0.056mであった。電気透析プロセスには、フッ素化膜を含め、他の陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を使用することができる。
【0151】
供給タンクは75リットルのポリプロピレンタンクであり、イワキ社の遠心ポンプを使用して供給溶液を電気透析スタックに循環させた。運転中、入口圧力、流量、及び温度を監視した。受容タンクは75リットルのポリプロピレンタンクであり、イワキ社の遠心ポンプを使用して供給溶液を電気透析スタックに循環させた。運転中、この溶液の入口圧力、流量、pH、及び温度も監視した。電極リンスシステムは、陽極溶液及び陰極溶液用の2つの20リットルポリプロピレンタンクからなり、それぞれイワキ社の遠心循環ポンプを備えていた。直流電力は、ソレンセン(Sorensen)社のDCS40-25電源によってスタックに供給された。処理中に電流及び電圧のデータを収集した。
【0152】
当該システムは、バッチ式で、又はAl塩供給溶液を連続的にシステムに添加し連続的に除去し、受容溶液を連続的に添加し連続的に除去する連続式で稼動してもよい。当該システムは、セミバッチ式、又はバッチ式と連続式との任意の組み合わせで稼動してもよい。
【0153】
アルミニウム三水和物、塩酸、及び水の反応から製造し、分析結果をPAC溶液として表2に示したポリ塩化アルミニウム塩溶液60,000グラムを、供給溶液タンクに入れた。導電率が150mS/cmの塩酸溶液55,000グラムを受容溶液タンクに入れた。導電率が150ms/cmの塩酸溶液を陰極溶液タンクに入れ、導電率が150ms/cmの硫酸溶液を陽極溶液タンクに入れた。上記の4つの溶液を遠心ポンプによって電気透析スタックのそれぞれの区画を通して循環させ、それぞれのタンクに戻した。各溶液を電気浸漬ヒータによって40°Cに加熱し、稼動の間、温度を40°Cに維持した。25アンペア及び20Vの直流電力を印加した。合計80アンペア時の電荷を流した。直流電力及び循環ポンプを止め、供給溶液を分析し、分析結果を、高純度(high purity:HP)-PAC溶液として表2に記した。すべての溶液及び高純度アルミナの分析は、ICP-OESを用いて行った。
【0154】
この実施例で記載されているAl塩は、一例にすぎない。式Al(OH)Cl6-によって記載される任意のAl塩を含め、他のAl塩化物の塩を使用することができる。
【0155】
【表2】
【0156】
[実施例3]高純度硫酸アルミニウム溶液の製造
【0157】
使用した電気透析スタックの説明:ユーロディア・インダストリ社から供給され、アストム社のネオセプタAHA及びCMBの10対の活性セルを備え、希硫酸電極リンス溶液を備えたEuro 2電気透析スタックシステム。
【0158】
分析結果が下の表3に示されている硫酸アルミニウム溶液3000グラムを供給溶液タンクに入れた。7900グラムの同じ溶液を受容溶液タンクに入れた。EDスタックを通して各溶液を循環させ、各タンクに戻した。直流電力を17ボルト及び5アンペアで印加した。合計10アンペア時を印加した。直流電力及び循環ポンプを止め、供給溶液を分析し、分析結果を、HP-硫酸アルミニウム溶液として表3に記した。すべての溶液の分析は、ICP-OESを用いて行った。
【0159】
【表3】
【0160】
[実施例4]HP PAC溶液からの高純度アルミナの製造
【0161】
実施例2に記載の方法によって製造したHP PAC溶液の試料をオーブン内で加熱乾燥させた。次いで、その乾燥ポリ塩化アルミニウムをマッフル炉に入れ、炉を1050°Cに加熱した。試料をその温度で1時間保持し、次いで冷却した。このように製造された高純度アルミナの分析結果を、HP PACからのHPAとして表2に示す。
【0162】
[実施例5]塩化アルミニウム六水和物結晶化からの高純度アルミナの製造
【0163】
実施例2に記載の方法によって製造したHP-PAC溶液を、塩酸を添加することによって塩化アルミニウム溶液に変換した。得られた塩化アルミニウム溶液の分析結果を、HP AlCl溶液として表2に示す。HP AlCl溶液190ポンドをガラス被覆のジャケット付き撹拌容器に入れた。撹拌機を運転しながら蒸気を容器のジャケットに当て、沸騰するまで溶液を加熱した。溶液から水を蒸発させ、同時にHP AlCl溶液を添加して一定重量を維持した。このようにして、約31.5%のAlCl溶液濃度が得られるまで溶液を濃縮した。この時点で結晶が形成し始め、母液濃度で約25%のAlCl・6HO結晶スラリーが得られるまで前記プロセスを続けた。約40ポンドのスラリーを容器から取り出し、遠心分離によって結晶を母液から分離し、母液を容器に戻した。HP AlCl溶液を容器に添加して、容器内で、AlCl・6HO/母液のスラリー190ポンドを維持した。このようにして前記プロセスを繰り返し、晶析装置を半連続式で稼動した。母液から分離した結晶を分析した。その結果をHP AlCl・6HOとして表2に示す。
【0164】
AlCl・6HO結晶の一部を、HP AlCl・6HO結晶を脱イオン水に溶解して作った飽和HP AlCl溶液でリンスして、母液及びHP AlCl・6HOの表面に付着した不純物を除去した。リンス溶液と結晶との重量比は0.25:1であった。リンス溶液を遠心分離によってHP AlCl・6HO結晶から分離した。リンスしたHP AlCl・6HO結晶をICP-OESによって分析し、その結果を、リンス後HP AlCl・6HOとして表2に記した。
【0165】
HP AlCl・6HO結晶の一部をマッフル炉内で1050°Cで1時間焼成して、HP AlCl・6HOを分解し、高純度アルミナを製造した。このように製造された高純度アルミナをICP-OESによって分析した。この高純度アルミナの分析結果をHPAとして表2に記す。
【0166】
リンス後HP AlCl・6HO結晶の一部をマッフル炉内で1050°Cで1時間焼成してHP AlCl・6HOを分解し、リンスして高純度アルミナを製造した。このように製造された高純度アルミナをICP-OESによって分析した。この高純度アルミナの分析結果をリンス後HPAとして表2に記す。
【0167】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に変更が加えられてもよいことを認識するであろう。背景技術における参考文献を含み、本明細書を通して引用されたすべての参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に具体的に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】