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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】カム式ころ軸受管類クランプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20220629BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61M39/28 100
A61M5/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565080
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020030957
(87)【国際公開番号】W WO2020227067
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/842,881
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド・デルブルッゲ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC03
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066EE18
4C066JJ10
4C066LL30
4C066QQ14
4C066QQ15
(57)【要約】
アンビル及びカムアセンブリを含む流体注入器システムの可撓性管内の流体流れを調整するためのクランプが記述される。アンビルは、可撓性管を受容するための受容面を含む。カムアセンブリは、中実カムか、転動可能な外輪と中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する内輪か、のどちらかを含む。内輪は、外輪に対して回転可能である。内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪をアンビルの受容面に対して相対的に転動させて、外輪とアンビルとの間で可撓性管を可逆的に圧縮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体注入器システムの可撓性管の内部における流体流れを調整するためのクランプであって、
前記可撓性管の少なくとも一部分を受容するための受容面を具備するアンビルと、
カムアセンブリであって、
転動可能とされる外輪と、
中心軸線と前記中心軸線から離隔された回転軸線とを有している内輪であって、前記中心軸線を中心として前記外輪に対して回転可能とされる前記内輪と、
を具備する前記カムアセンブリと、
を備えている前記クランプにおいて、
前記回転軸線を中心として前記内輪を回転させることによって、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管が可逆的に圧縮されるように、前記外輪が前記アンビルの前記受容面に対して相対的に転動される、クランプ。
【請求項2】
前記カムアセンブリの前記内輪が、
流体が前記可撓性管の内腔を通じて流れるように、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管が実質的に圧縮されない、第1の位置と、
前記可撓性管を通る流体流れを妨げることによって、前記可撓性管の圧縮された領域を横断する流体流通が阻止されるように、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管の前記内腔が全圧縮される、第2の位置と、
に至るまで回転可能とされる、請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記カムアセンブリの前記内輪が、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管を少なくとも部分的に圧縮するように回転可能とされ、これにより前記可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通過する流体の流量が制御される、請求項1又は2に記載のクランプ。
【請求項4】
前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管に作用する圧縮力が、転がり圧縮力の約0.1%~約100%であり、且つ、滑り圧縮力の約99.9%~約0%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項5】
前記カムアセンブリが、前記内輪と前記外輪との間に複数の転動体を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項6】
前記内輪の前記中心軸線と前記回転軸線とが、前記可撓性管の長手方向軸線に対して垂直に延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項7】
前記内輪の前記中心軸線と前記回転軸線とが、前記可撓性管の長手方向軸線に対して平行に延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項8】
前記アンビルの前記受容面が、前記可撓性管の少なくとも一部分を受容するための溝を形成している、請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項9】
前記外輪が、前記受容面の前記溝と協働する少なくとも1つの環状突起を備えている、請求項8に記載のクランプ。
【請求項10】
前記クランプが、前記回転軸線を中心として前記内輪を回転させるためのシャフトを具備するモータを備えている、請求項1~9のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項11】
前記外輪の少なくとも一部分が、前記外輪と前記可撓性管との間における滑りを防止するためのテクスチャード加工面を有している、請求項1~10のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項12】
前記外輪の前記テクスチャード加工面が、前記外輪が前記可撓性管から離隔する方向に回転することを防止するように形成されている、請求項11に記載のクランプ。
【請求項13】
前記アンビルが、戻り止めを形成しており、
前記回転軸線を中心とする前記内輪の回転によって、前記外輪と前記アンビルの前記戻り止めとの間において前記可撓性管が圧縮される、請求項1~12のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項14】
前記アンビルの前記受容面のセクションの少なくとも一部分が、実質的に平面である、請求項1~13のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項15】
前記外輪が前記可撓性管と係合する前記外輪の接触点が、前記可撓性管が可逆的に圧縮される場合に前記可撓性管と持続的に接触した状態を維持する、請求項1から11のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項16】
流体注入器システムであって、
前記流体注入器システムが、
少なくとも1つの流体リザーバからの少なくとも1つの流体を加圧及び送達するための少なくとも1つの注入器と、
少なくとも1つの可撓性管を具備する流体経路セットであって、少なくとも1つの流体リザーバと流体流通している前記流体経路セットと、
コントローラと、
前記流体経路セットの少なくとも1つの前記可撓性管を通過する流体流れを調整するための少なくとも1つのクランプと、
を備えており、
少なくとも1つの前記クランプが、
少なくとも1つの前記可撓性管の少なくとも一部分を受容するための受容面を具備するアンビルと、
転動可能な外輪と、中心軸線及び前記中心軸線から離隔された回転軸線を具備する内輪であって、前記中心軸線を中心として前記外輪に対して回転可能とされる前記内輪と、を備えたカムアセンブリと、
を備えており、
前記回転軸線を中心とする前記内輪の回転によって、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管を可逆的に圧縮するように、前記外輪が前記アンビルの前記受容面に対して相対的に転動され、
前記コントローラが、前記カムアセンブリの前記内輪の回転を制御するようにプログラム又は構成されている、流体注入器システム。
【請求項17】
前記コントローラが、
流体が前記可撓性管の内腔を通じて流れるように、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管が実質的に圧縮されない、第1の位置と、
前記可撓性管を通過する流体流れを妨げることによって、前記可撓性管の圧縮された領域を横断する流体流通が阻止されるように、前記外輪と前記アンビルとの間において前記可撓性管の前記内腔が全圧縮される、第2の位置と、
に至るまで、前記カムアセンブリの前記内輪を回転させるようにプログラム又は構成される、請求項16に記載の流体注入器システム。
【請求項18】
前記コントローラが、前記外輪と前記アンビルとの間で前記可撓性管を少なくとも部分的に圧縮することによって、前記可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通過する少なくとも1つの前記流体の流量を制御するように、前記カムアセンブリの前記内輪を回転させるようにプログラム又は構成されている、請求項16又は17に記載の流体注入器システム。
【請求項19】
前記流体注入器システムが、前記流体経路セットの内部における空気の存在を検出するための少なくとも1つの空気検出器を備えており、
少なくとも1つの前記クランプが、少なくとも1つの前記空気検出器の下流に配置されており、
前記コントローラが、前記空気の流れが少なくとも1つの前記クランプを通過することを防止するために、少なくとも1つの前記空気検出器による前記流体経路セットの内部における空気の存在の検出に応答して、前記カムアセンブリの前記内輪を前記第2の位置に至るまで回転させるようにプログラム又は構成されている、請求項17に記載の流体注入器システム。
【請求項20】
前記コントローラが、少なくとも1つの第2の流体リザーバのうち1つ又は複数の第2の流体リザーバ又は第2の流体管に向かう少なくとも1つの第1の流体の逆流を防止するために、前記カムアセンブリの前記内輪を第2の位置に至るまで回転させるようにプログラム又は構成されている、請求項17~19のいずれか一項に記載の流体注入器システム。
【請求項21】
流体注入器システムの可撓性管の内部における流体流れを調整するためのクランプであって、
前記可撓性管を受容するための受容面を具備するアンビルと、
転動可能とされる中実カムであって、中心軸線と前記中心軸線から離隔された回転軸線とを具備する前記中実カムを備えるカムアセンブリと、
を備えている前記クランプにおいて、
前記回転軸線を中心とする転動可能な前記中実カムの回転によって、前記転動可能な中実カムと前記アンビルとの間において前記可撓性管を可逆的に圧縮するために、前記転動可能な中実カムが前記アンビルの前記受容面に対して相対的に転動される、クランプ。
【請求項22】
転動可能な前記中実カムが、
流体が前記可撓性管の内腔を通じて流れるように、前記可撓性管が転動可能な前記中実カムと前記アンビルとの間において圧縮されない、第1の位置と、
流体流れが前記可撓性管を通過することを妨げることによって、前記可撓性管の圧縮領域を横断する流体流通が阻止されるように、転動可能な前記中実カムと前記アンビルとの間において前記可撓性管の前記内腔が全圧縮される、第2の位置と、
に至るまで回転可能とされる、請求項21に記載のクランプ。
【請求項23】
転動可能な前記中実カムが、前記転動可能な中実カムと前記アンビルとの間で前記可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって前記可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る流体の流量を制御するように回転可能である、請求項21又は22に記載のクランプ。
【請求項24】
転動可能な前記中実カムと前記アンビルとの間において前記可撓性管に作用する圧縮力が、転がり圧縮力の約0.1%~約100%であり、且つ、滑り圧縮力の約99.9%~約0%である、請求項21~23のいずれか一項に記載のクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月3日に出願された米国仮特許出願第62/842,881号明細書の利益を主張するものであり、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
開示の背景
本開示は、医療用注入器システム用の管類クランプの分野に関する。特に、本開示の管類クランプは、注入器構成要素及び流体経路に過度の応力をかけることなく、医療用注入器と患者との間の流体経路セットを通る流体流れを効果的に止めることができる。
【背景技術】
【0003】
多くの医療診断及び治療処置では、患者に1つ又は複数の流体が注入される。近年、血管造影法(AG)、コンピュータ断層撮影法(CT)、分子イメージング(PETイメージングなど)、磁気共鳴イメージング(MRI)などの処置で使用するために、流体を加圧注入するための幾つかの注入器作動シリンジ及び動力式注入器が開発されている。これらの処置では、造影剤などの医療用流体が、イメージングプロセス中に特定の脈管構造系、内臓、又は身体の各部分を強調表示するために使用され得る。医療用流体は、1つ又は複数のポンプ、シリンジ、又はそれらを組み合わせたものによる動力式注入器によって患者に送達され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者内に医療用流体を注入する準備をするとき、注入リザーバは、患者内への空気の不用意な注入を回避するために、医療用流体で完全に満たされ、空気が除去されることが重要である。血管造影法などの特定の処置では、少量の空気でも、注入処置中に脈管構造内に注入されると懸念が生じる場合がある。シリンジにおいて、又は流体経路上に空気検出器を含めることは、空気が存在すること、及び、空気が造影剤と共に注入される可能性があることをユーザに通知するのに役立つことができる。空気が検出されると、空気が患者の脈管構造に到達する前に注入処置を止めることが望ましい。しかしながら、コンプライアンス、すなわち、特に特定の処置中に医療用流体の注入に使用される圧力でのシステム構成要素の膨張又はたわみをもたらすシステム加圧のために、動力式注入器のモータを止めることにより注入を単に止めるだけでは、流体経路セットを通じて患者内に入る流体の流れを直ちに止めることはできない。さらに、2つ以上の流体の同時注入(「デュアルフロー注入」)の間、流体の流体粘度及び圧力の差により、一方の流体が他方の流体の流体経路及びリザーバ内へ逆流し、その結果、流体注入中に第2の流体が希釈され、体積が不正確になり、かつ/又は画像特性が低下する可能性がある。従って、流体流れを迅速かつ効果的に止め、注入処置中の逆流を防止する装置及び方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を考慮して、動力式流体注入処置中に医療用注入器管類などの管類内の流体の流れを迅速に止めるための装置及び方法の必要性が存在する。従って、本開示の幾つかの態様又は例は、流体注入器システムの可撓性管内の流体流れを調整するためのクランプを対象とする。クランプは、可撓性管の少なくとも一部分を受容するための受容面を含むアンビル、及びカムアセンブリを含む。カムアセンブリは、転動可能な外輪と中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する内輪)とを含む。内輪は中心軸線を中心に外輪に対して回転可能である。内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪をアンビルの受容面に対して相対的に転動させて、外輪とアンビルとの間で可撓性管を可逆的に圧縮する。
【0006】
幾つかの態様又は例では、カムアセンブリの内輪は、流体が可撓性管の内腔を流れることができるように、可撓性管が外輪とアンビルとの間で実質的に圧縮されない、第1の位置、及び、可撓性管の内腔が外輪とアンビルとの間で全圧縮されて可撓性管を通る流体流れを妨げ、従って可撓性管の圧縮された領域を横断する流体流通が阻止される、第2の位置まで回転可能である。
【0007】
幾つかの態様又は例では、カムアセンブリの内輪は、外輪とアンビルとの間で可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る流体の流量を制御するように回転可能である。
【0008】
幾つかの態様又は例では、外輪とアンビルとの間の可撓性管に作用する圧縮力は、転がり圧縮力の約0.1%~約100%及び滑り圧縮力の約99.9%~約0%である。
【0009】
幾つかの態様又は例では、カムアセンブリは、内輪と外輪との間に複数の転動体をさらに含む。
【0010】
幾つかの態様又は例では、内輪の中心軸線及び回転軸線は、可撓性管の長手方向軸線に対して垂直に延びる。
【0011】
幾つかの態様又は例では、内輪の中心軸線及び回転軸線は、可撓性管の長手方向軸線と平行に延びる。
【0012】
幾つかの態様又は例では、アンビルの受容面は、可撓性管の少なくとも一部分を受容するための溝を形成する。
【0013】
幾つかの態様又は例では、外輪は、受容面の溝と協働する少なくとも1つの環状突起を含む。
【0014】
幾つかの態様又は例では、クランプは、回転軸線を中心に内輪を回転させるためのシャフトを有するモータをさらに含む。
【0015】
幾つかの態様又は例では、外輪の少なくとも一部分は、外輪と可撓性管との間の滑りを防止するためにテクスチャード加工面を有する。
【0016】
幾つかの態様又は例では、外輪のテクスチャード加工面は、外輪が可撓性管から離れる向きに回転するのを妨げるように形成されている。
【0017】
幾つかの態様又は例では、アンビルは戻り止めを形成し、内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪とアンビルの戻り止めとの間で可撓性管を圧縮する。
【0018】
幾つかの態様又は例では、アンビルの受容面のセクションの少なくとも一部分は実質的に平面である。
【0019】
幾つかの態様又は例では、外輪が可撓性管と係合する外輪の接触点は、可撓性管が可逆的に圧縮される場合に可撓性管と持続的に接触した状態を維持する。
【0020】
本開示の他の態様又は例は、少なくとも1つの流体リザーバから少なくとも1つの流体を加圧し送達するための少なくとも1つの注入器と、少なくとも1つの流体リザーバと流体流通する少なくとも1つの可撓性管を含む流体経路セットと、コントローラと、流体経路セットの少なくとも1つの可撓性管を通る流体流れを調整するための少なくとも1つのクランプと、を含む流体注入器システムを対象とする。少なくとも1つのクランプは、少なくとも1つの可撓性管の少なくとも一部分を受容するための受容面を含むアンビル、及びカムアセンブリを含む。カムアセンブリは、転動可能な外輪と中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する内輪とを含む。内輪は中心軸線を中心に外輪に対して回転可能である。内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪をアンビルの受容面に対して相対的に転動させて、外輪とアンビルとの間で可撓性管を可逆的に圧縮する。コントローラは、カムアセンブリの内輪の回転を制御するようにプログラム又は構成される。
【0021】
幾つかの態様又は例では、コントローラは、カムアセンブリの内輪を、流体が可撓性管の内腔を通じて流れることができるように可撓性管が外輪とアンビルとの間で実質的に圧縮されない、第1の位置、及び、可撓性管の内腔が外輪とアンビルとの間で全圧縮されて可撓性管を通る流体流れを妨げ、従って可撓性管の圧縮された領域を横断する流体流通が阻止される、第2の位置まで回転させるようにプログラム又は構成される。
【0022】
幾つかの態様又は例では、コントローラは、カムアセンブリの内輪を回転させて外輪とアンビルとの間で可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る少なくとも1つの流体の流量を制御するようにプログラム又は構成される。
【0023】
幾つかの態様又は例では、流体注入器システムは、流体経路セット内の空気の存在を検出するための少なくとも1つの空気検出器をさらに含む。少なくとも1つのクランプは、少なくとも1つの空気検出器の下流に配置される。コントローラは、少なくとも1つの空気検出器で流体経路セット内の空気の存在を検出するのに応答してカムアセンブリの内輪を第2の位置まで回転させて、少なくとも1つのクランプを通過する空気の流れを妨げるようにプログラム又は構成される。
【0024】
幾つかの態様又は例では、コントローラは、カムアセンブリの内輪を第2の位置まで回転させて、少なくとも1つの第2の流体リザーバ又は第2の流体管のうち1つ又は複数の中への少なくとも1つの第1の流体の逆流を妨げるようにさらにプログラム又は構成される。
【0025】
本開示の他の態様又は例は、流体注入器システムの可撓性管内の流体流れを調整するためのクランプを対象とする。クランプは、可撓性管を受容するための受容面を含むアンビル、及びカムアセンブリを含む。カムアセンブリは、中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する転動可能な中実カムを含む。転動可能な中実カムが回転軸線を中心に回転すると、転動可能な中実カムをアンビルの受容面に対して相対的に転動させて、転動可能な中実カムとアンビルとの間で可撓性管を可逆的に圧縮する。
【0026】
幾つかの態様又は例では、転動可能な中実カムは、流体が可撓性管の内腔を通じて流れることができるように可撓性管が転動可能な中実カムとアンビルとの間で圧縮されない、第1の位置、及び、可撓性管の内腔が転動可能な中実カムとアンビルとの間で全圧縮されて可撓性管を通る流体流れを妨げ、従って可撓性管の圧縮領域を横断する流体流通が阻止される、第2の位置まで回転可能である。
【0027】
幾つかの態様又は例では、転動可能な中実カムは、転動可能な中実カムとアンビルとの間で可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る流体の流量を制御するように回転可能である。
【0028】
幾つかの態様又は例では、転動可能な中実カムとアンビルとの間の可撓性管に作用する圧縮力は、転がり圧縮力の約0.1%~約100%及び滑り圧縮力の約99.9%~約0%である。
【0029】
本開示の他の態様又は例は、以下の番号付き条項に記載されている。
【0030】
条項1 流体注入器システムの可撓性管内の流体流れを調整するためのクランプであって、可撓性管の少なくとも一部分を受容するための受容面を備えるアンビルと、転動可能な外輪、及び中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する内輪であって、中心軸線を中心に外輪に対して回転可能である内輪を備えるカムアセンブリと、を備え、内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪をアンビルの受容面に対して相対的に転動させて、外輪とアンビルとの間で可撓性管を可逆的に圧縮する、クランプ。
【0031】
条項2 カムアセンブリの内輪が、流体が可撓性管の内腔を通じて流れることができるように可撓性管が外輪とアンビルとの間で実質的に圧縮されない、第1の位置、及び、可撓性管の内腔が外輪とアンビルとの間で全圧縮されて可撓性管を通る流体流れを妨げ、従って可撓性管の圧縮された領域を横断する流体流通が阻止される、第2の位置まで回転可能である、条項1に記載のクランプ。
【0032】
条項3 カムアセンブリの内輪が、外輪とアンビルとの間で可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る流体の流量を制御するように回転可能である、条項1又は2に記載のクランプ。
【0033】
条項4 外輪とアンビルとの間の可撓性管に作用する圧縮力が、転がり圧縮力の約0.1%~約100%及び滑り圧縮力の約99.9%~約0%である、条項1から3のいずれか一項に記載のクランプ。
【0034】
条項5 カムアセンブリが、内輪と外輪との間に複数の転動体をさらに備える、条項1から4のいずれか一項に記載のクランプ。
【0035】
条項6 内輪の中心軸線及び回転軸線が、可撓性管の長手方向軸線に対して垂直に延びる、条項1から5のいずれか一項に記載のクランプ。
【0036】
条項7 内輪の中心軸線及び回転軸線が、可撓性管の長手方向軸線と平行に延びる、条項1から5のいずれか一項に記載のクランプ。
【0037】
条項8 アンビルの受容面が、可撓性管の少なくとも一部分を受容するための溝を形成する、条項1から7のいずれか一項に記載のクランプ。
【0038】
条項9 外輪が、受容面の溝と協働する少なくとも1つの環状突起を備える、条項1から8のいずれか一項に記載のクランプ。
【0039】
条項10 回転軸線を中心に内輪を回転させるためのシャフトを有するモータをさらに備える、条項1から9のいずれか一項に記載のクランプ。
【0040】
条項11 外輪の少なくとも一部分が、外輪と可撓性管との間の滑りを防止するためにテクスチャード加工面を有する、条項1から10のいずれか一項に記載のクランプ。
【0041】
条項12 外輪のテクスチャード加工面が、外輪が可撓性管から離れる向きに回転するのを妨げるように形成されている、条項1から11のいずれか一項に記載のクランプ。
【0042】
条項13 アンビルが戻り止めを形成し、内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪とアンビルの戻り止めとの間で可撓性管を圧縮する、条項1から12のいずれか一項に記載のクランプ。
【0043】
条項14 アンビルの受容面のセクションの少なくとも一部分が実質的に平面である、条項1から13のいずれか一項に記載のクランプ。
【0044】
条項15 外輪が可撓性管と係合する外輪の接触点が、可撓性管が可逆的に圧縮される場合に可撓性管と持続的に接触した状態を維持する、条項1から14のいずれか一項に記載のクランプ。
【0045】
条項16 流体注入器システムであって、少なくとも1つの流体リザーバから少なくとも1つの流体を加圧し送達するための少なくとも1つの注入器と、少なくとも1つの可撓性管を備える流体経路セットであって、少なくとも1つの流体リザーバと流体流通する流体経路セットと、コントローラと、流体経路セットの少なくとも1つの可撓性管を通る流体流れを調整するための少なくとも1つのクランプと、を備え、少なくとも1つのクランプが、少なくとも1つの可撓性管の少なくとも一部分を受容するための受容面を備えるアンビルと、転動可能な外輪、及び中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する内輪であって、中心軸線を中心に外輪に対して回転可能である内輪を備えるカムアセンブリと、を備え、内輪が回転軸線を中心に回転すると、外輪をアンビルの受容面に対して相対的に回転させて、外輪とアンビルとの間の可撓性管を可逆的に圧縮し、コントローラが、カムアセンブリの内輪の回転を制御するようにプログラム又は構成される、流体注入器システム。
【0046】
条項17 コントローラが、カムアセンブリの内輪を、流体が可撓性管の内腔を通じて流れることができるように可撓性管が外輪とアンビルとの間で実質的に圧縮されない、第1の位置、及び、可撓性管の内腔が外輪とアンビルとの間で全圧縮されて可撓性管を通る流体流れを妨げ、従って可撓性管の圧縮された領域を横断する流体流通が阻止される、第2の位置まで回転させるようにプログラム又は構成される、条項16に記載の流体注入器システム。
【0047】
条項18 コントローラが、カムアセンブリの内輪を回転させて外輪とアンビルとの間で可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る少なくとも1つの流体の流量を制御するようにプログラム又は構成される、条項16又は17項に記載の流体注入器システム。
【0048】
条項19 流体経路セット内の空気の存在を検出するための少なくとも1つの空気検出器をさらに備え、少なくとも1つのクランプが、少なくとも1つの空気検出器の下流に配置され、コントローラが、少なくとも1つの空気検出器で流体経路セット内の空気の存在を検出するのに応答してカムアセンブリの内輪を第2の位置まで回転させて、少なくとも1つのクランプを通過する空気の流れを妨げるようにプログラム又は構成される、条項16から18のいずれか一項に記載の流体注入器システム。
【0049】
条項20 コントローラが、カムアセンブリの内輪を第2の位置まで回転させて、少なくとも1つの第2の流体リザーバ又は第2の流体管のうち1つ又は複数の中への少なくとも1つの第1の流体の逆流を妨げるようにさらにプログラム又は構成される、条項16から19のいずれか一項に記載の流体注入器システム。
【0050】
条項21 流体注入器システムの可撓性管内の流体流れを調整するためのクランプであって、可撓性管を受容するための受容面を備えるアンビルと、中心軸線及び中心軸線から離隔された回転軸線を有する転動可能な中実カムを備えるカムアセンブリと、を備え、転動可能な中実カムが回転軸線を中心に回転すると、転動可能な中実カムをアンビルの受容面に対して相対的に転動させて、転動可能な中実カムとアンビルとの間で可撓性管を可逆的に圧縮する、クランプ。
【0051】
条項22 転動可能な中実カムが、流体が可撓性管の内腔を通じて流れることができるように可撓性管が転動可能な中実カムとアンビルとの間で実質的に圧縮されない、第1の位置、及び、可撓性管の内腔が転動可能な中実カムとアンビルとの間で全圧縮されて可撓性管を通る流体流れを妨げ、従って可撓性管の圧縮領域を横断する流体流通が阻止される、第2の位置まで回転可能である、条項21に記載のクランプ。
【0052】
条項23 転動可能な中実カムが、転動可能な中実カムとアンビルとの間で可撓性管を少なくとも部分的に圧縮し、それによって可撓性管の少なくとも部分的に圧縮された領域を通る流体の流量を制御するように回転可能である、条項21又は22に記載のクランプ。
【0053】
条項24 転動可能な中実カムとアンビルとの間の可撓性管に作用する圧縮力が、転がり圧縮力の約0.1%~約100%及び滑り圧縮力の約99.9%~約0%である、条項21から23のいずれか一項に記載のクランプ。
【0054】
本明細書で詳細に説明される様々な例のさらなる詳細及び利点は、添付の図面に関連して様々な例の以下の詳細な説明を検討することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本開示の一態様又は例による流体注入器システムの斜視図である。
図2図1の流体注入器システムの概略図である。
図3】本開示の一態様又は例による管類クランプの斜視図である。
図4】開位置にある図3の管類クランプの側面図である。
図5】閉位置にある図3の管類クランプの側面図である。
図6A】本開示の別の態様又は例による閉位置にある管類クランプの側面図である。
図6B】部分的閉位置にある図6Aの管類クランプの側面図である。
図7】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの側面図である。
図8】閉位置にある図7の管類クランプの正面図である。
図9】本開示の別の態様又は例による閉位置にある管類クランプの側面図である。
図10】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの正面図である。
図11】閉位置にある図10の管類クランプの正面図である。
図12】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの側面図である。
図13】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの側面図である。
図14】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの側面図である。
図15】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの側面図である。
図16】本開示の別の態様又は例による開位置にある管類クランプの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に説明のために、「上方の(upper)」、「下方の(lower)」、「右の(right)」、「左の(left)」、「垂直の(vertical)」、「水平の(horizontal)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「横の(lateral)」、「縦の(longitudinal)」という用語、及びこれらの用語の派生語は、作図で方向付けられているように本開示に関係するものとする。複数患者用使い捨てセットのシリンジに関して使用される場合、「近位の(proximal)」という用語は、シリンジから流体を送達するためのピストンに最も近いシリンジの部分を指す。
【0057】
「左の」、「右の」、「内側の(inner)」、「外側の(outer)」、「上に(above)」、「下に(below)」などの空間的又は方向的な用語は、本発明が様々な代替の向きを想定することができるので、限定するものと見なされるべきではない。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるすべての数字は、すべての場合において「約(about)」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。「およそ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に(substantially)」という用語は、規定値の±10%の範囲を意味する。
【0059】
本明細書で用いられる場合、「~の少なくとも1つ(at least one of)」という用語は、「~の1つ又は複数(one or more of)」と同義である。例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ(at least one of A,B,and C)」という句は、A、B、及びCのいずれか1つ、あるいはA、B、及びCのいずれか2つ以上の任意の組合せを意味する。例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」は、Aのみの1つ又は複数、あるいはBのみの1つ又は複数、あるいはCのみの1つ又は複数、あるいはAの1つ又は複数とBの1つ又は複数、あるいはAの1つ又は複数とCの1つ又は複数、あるいはBの1つ又は複数とCの1つ又は複数、あるいはA、B、及びCのすべての1つ又は複数、を含む。同様に、本明細書で用いられる場合、「~の少なくとも2つ(at least two of)」という用語は、「~の2つ以上(two or more of)」と同義である。例えば、「D、E、及びFの少なくとも2つ(at least two of D,E,and F)」という句は、D、E、及びFのいずれか2つ以上の任意の組合せを意味する。例えば、「D、E、及びFの少なくとも2つ」は、Dの1つ又は複数とEの1つ又は複数、あるいはDの1つ又は複数とFの1つ又は複数、あるいはEの1つ又は複数とFの1つ又は複数、あるいはD、E、及びFのすべての1つ又は複数、を含む。
【0060】
また、添付の図面に示され、以下の明細書に記載されている特定の装置及びプロセスは、本開示の単なる例示的な例であることも理解されたい。従って、本明細書に開示されている例に関連する特定の寸法及び他の物理的特性は、限定するものと見なされるべきではない。
【0061】
流体リザーバ、シリンジ、流体ラインなどの流体注入器システムの構成要素に関して使用される場合、「遠位の(distal)」という用語は、患者に最も近い前記構成要素の部分を指す。流体リザーバ、シリンジ、流体ラインなどの流体注入器システムの構成要素に関して使用される場合、「近位の」という用語は、流体注入器システムの注入器に最も近い前記構成要素の部分(すなわち、患者から最も遠い前記構成要素の部分)を指す。流体リザーバ、シリンジ、流体ラインなどの流体注入器システムの構成要素に関して使用される場合、「上流側(upstream)」という用語は、患者から離れかつ流体注入器システムの注入器に向かう方向を指す。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素の「上流側」にあると言及される場合、第1の構成要素は、第2の構成要素よりも注入器の近くに配置される。流体リザーバ、シリンジ、流体ラインなどの流体注入器システムの構成要素に関して使用される場合、「下流側(downstream)」という用語は、患者に向かいかつ流体注入器システムの注入器から離れる方向を指す。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素の「下流側」にあると言及される場合、第1の構成要素は、第2の構成要素よりも患者の近くに配置される。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「キャパシタンス(capacitance)」及び「インピーダンス(impedance)」という用語は、流体注入器システムの流体リザーバ、シリンジ、流体ライン、及び/又は他の構成要素などの注入器構成要素の体積膨張を、かかる構成要素で流体が加圧されかつ/又は構成要素に加えられた力による機械的たるみを取り込んだ結果であると呼ぶために互換的に使用される。キャパシタンス及びインピーダンスは、幾つかの血管造影処置では1,200 psi程度であり得る高い注入圧力に起因する可能性があり、その結果、構成要素の一部内に保持される流体の体積が、注入処置のために選択された所望の量又は構成要素の静止体積を超える可能性がある。さらに、様々な構成要素のキャパシタンスは、適切に考慮されていない場合、構成要素の体積膨張がそうした構成要素の測定圧力の人為的な低下を引き起こし得るため、流体注入器システムの圧力センサの精度に悪影響を及ぼし得る。
【0063】
図面の幾つかの図を通して同様の参照文字が同様の部分を指している図面を参照すると、本開示は、一般に、流体注入器システム内の流体流れを調整するためのクランプに関する。最初に図1及び図2を参照すると、本開示による流体注入器システム1000の一例が、ハウジング11と少なくとも1つのシリンジ12などの少なくとも1つの流体リザーバとを含む。流体注入器システム1000は、シリンジ12の円筒部内のプランジャ14を駆動する、シリンジ12のそれぞれに関連するピストン13をさらに含む。少なくとも1つのシリンジ12は、一般に、シリンジポート15においてハウジング11と解放可能に相互作用するように適合される。少なくとも1つのシリンジ12は、アップライトやダウンライトなどの任意の形で方向付けられるか、又は任意の角度で配置され得る。流体注入器システム1000は、一般に、注入処置中に少なくとも1つの流体Fを患者に送達するように構成される。流体注入器システム1000は、イメージング造影剤、生理食塩水溶液、又は任意の所望の医療用流体などの少なくとも1つの医療用流体Fで満たされるべき少なくとも1つのシリンジ12を解放可能に受容するように構成される。各シリンジ12は、異なる医療用流体Fで満たされ得る。流体注入器システム1000は、図示のようにマルチシリンジ注入器であってもよく、複数のシリンジ12が、並んで又は別の空間的関係で配向されてもよく、注入器システム1000に関連するそれぞれのピストンによって別々に作動される。
【0064】
引き続き図1及び図2を参照すると、流体注入器システム1000は、医療処置中に、少なくとも1つのシリンジ12に関連するプランジャ14を少なくとも1つのピストン13で駆動することにより、少なくとも1つの医療用流体Fを患者の脈管構造内に注入するために使用され得る。少なくとも1つのピストン13は、プランジャ14上で往復操作可能であってもよい。係合すると、少なくとも1つのピストン13は、バイアル、ボトル、静脈内バッグなどのバルク流体リザーバ(図示せず)から少なくとも1つのシリンジ12内へ医療用流体Fを引き込むために、プランジャ14を少なくとも1つのシリンジ12の近位端に向かって移動させることができる。少なくとも1つのピストン13は、少なくとも1つシリンジ12から流体Fを押し出すために、プランジャ14を少なくとも1つのシリンジ12の遠位端19に向かってさらに移動させることができる。流体経路セット170は、各シリンジ12を、流体Fを各シリンジ12から患者に血管アクセス部位で送達するための可撓性投与管176と流体流通した状態に置くために、各シリンジ12と流体流通するように構成された少なくとも1つの管又は管セットを含むことができる。
【0065】
図2に示すように、流体経路セット170は、シリンジ12の1番目のものに流体接続された第1の可撓性管172とシリンジ12の2番目のものに流体接続された第2の可撓性管174とを含むことができる。流体経路セット170の第1の可撓性管172及び第2の可撓性管174は、患者に接続するための遠位可撓性管176の中に、又は患者に接続された1つ又は複数の介在構成要素、例えば投与可撓性管もしくはカテーテルなどに併合することができる。流体経路セット170の第1の可撓性管172、第2の可撓性管174、及び遠位可撓性管176はそれぞれ、ポリマーなどの可撓性で可逆的に圧縮可能な材料で形成され得る。本明細書に用いられる場合、「可逆的に圧縮可能(reversibly compressible)」という用語は、流体経路セット170の可撓性管又はこの管の一部の断面形状が、管に力を加えることにより変化することができ、加えられた力を解放すると、流体経路セット170の可撓性管が管の元の形状に戻ることを意味する。例えば、流体経路セット170の可撓性管の外側表面に力を加えて、流体経路セット170の可撓性管の内側側壁上の直径方向に対向する点を接合させ、それによって流体経路セット170の可撓性管の内腔の断面積を変えることができる。
【0066】
引き続き図2を参照すると、流体注入器システム1000は、流体注入器システム1000の少なくとも1つのピストン13及び他の構成要素の作動を制御するためのコントローラ200をさらに含むことができる。流体注入器システム1000は、コントローラ200のメモリ又はコントローラがアクセスできるメモリに保存された1つ又は複数の注入プロトコルに従って1つ又は複数の注入処置を実行することができる。コントローラ200は、流体経路セット170内の空気の存在を検出するように構成された少なくとも1つの空気検出器アセンブリ210と通信することができる。コントローラ200は、空気が患者内に注入されるのを防止するために、空気検出器アセンブリ210が流体経路セット170の管類内の空気を検出するのに応答して少なくとも1つのシリンジ12の作動を止めるように構成され得る。少なくとも1つのシリンジ12の作動を止めることは、少なくとも1つのシリンジ12のピストン13の遠位移動を停止させること、及び/又は、本開示の転動カムピンチ弁などの少なくとも1つの弁を閉位置まで移動させ、下流側管類の一部が圧縮されて少なくとも1つの弁を通り過ぎる流体流れを妨げること、を含むことができる。
【0067】
シリンジ、コントローラ、空気検出器、及び流体経路セットを含む適切な非限定的な動力式注入器システムのさらなる詳細及び例が、米国特許第5,383,858号明細書、米国特許第7,553,294号明細書、米国特許第7,666,169号明細書、米国特許第8,945,051号明細書、米国特許第10,022,493号明細書、及び米国特許第10,507,319号明細書に記載されており、これらの特許明細書の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0068】
引き続き図2を参照すると、流体注入器システム1000は、流体経路セット170に沿った様々な位置に配置された1つ又は複数の管類クランプ又は弁300をさらに含むことができる。管類クランプ300はそれぞれ、患者への医療用流体Fの流れを調整するための遮断弁及び/又は流量制御弁の形をとることができる。図2に示す態様又は例では、管類クランプ300のうち1つが、流体経路セット170の第1の可撓性管172、第2の可撓性管174、及び遠位可撓性管176上にそれぞれ設けられる。幾つかの態様又は例では、管類クランプ300は、流体経路セット170の遠位可撓性管176上にのみ設けられてもよい。幾つかの態様又は例では、管類クランプ300のうち1つ又は複数が、流体注入器システム1000のハウジング11又は他の構成要素に直接取り付けられてもよい。
【0069】
管類クランプ300はそれぞれ、流体経路セット170を通る流体Fの流れを調整するために、コントローラ200によって制御可能であり得る。例えば、管類クランプ300のいずれか又はすべては、少なくとも1つの空気検出器アセンブリ210が流体経路セット170内の空気を検出するのに応答して、コントローラ200によって閉じられ得る。各管類クランプ300が閉じられると、流体経路セット170の可撓性管類172、174、及び/又は176を可逆的に圧縮して、流体経路セット170を通る流体流れを停止させる。このようにして管類クランプ300が閉じられると、医療用流体Fがクランプ300の下流に進むのを妨げ、それにより、流体経路セット170及び/又はシリンジ12内のキャパシタンスの解放されるため空気が患者内に注入されるのを防止する。対照的に、少なくとも1つのピストン13の移動を停止させるだけで、流体経路セット170及び/又はシリンジ12内のキャパシタンスが軽減され、解放された体積の流体Fが管類を通じて流れるので、医療用流体F、及び医療用流体に含まれる空気も、患者内に注入されることが可能となり得る。
【0070】
管類クランプ300は、代替的又は追加的に、空気検出に応答して流体流れを停止させる以外の機能を実行するために利用され得る。幾つかの態様又は例では、流体経路セット170の第1の可撓性管172上に設けられた管類クランプ300は、2つのシリンジと関連する管類との間の圧力差に起因する、第2の可撓性管174及び/又は第2のシリンジ12から第1の可撓性管172又は第1のシリンジ内への加圧医療用流体Fの逆流を防止するために、コントローラ200によって閉じられ得る。同様に、第2の可撓性管174上の管類クランプ300は、第1の可撓性管172及び/又は第1のシリンジ12内のより高い加圧流体からの逆流を防止するために閉じられてもよい。幾つかの態様又は例では、管類クランプ300のいずれか又はすべてが、注入プロトコルに従って医療用流体Fの流量を制限又は制御するために、コントローラ200によって部分的に閉じられてもよい。例えば、第1の可撓性管172に関連する閉鎖管類クランプ300は、第1の可撓性管172を通る第1の流体の流体流れを部分的に減少させることができる。流体流量の減少は、流体経路閉鎖率、流体圧力、上流側管類キャパシタンス、流体粘度、クランプ両端間の圧力降下などに関連する変数を用いたアルゴリズムに従って計算され得る。
【0071】
流体注入器システム1000について一般的に説明したので、次に、図3図16を参照して管類クランプ300のさらなる詳細を提供する。本明細書の様々な実施形態によれば、本開示は、カム式転動管クランプ(cammed rolling tube clamp)の形をとる管類クランプを提供する。最初に図3図5に示す態様又は例を参照すると、管類クランプ300は、アンビル310及び偏心回転カムアセンブリ320を含む。図4は、開位置にある管類クランプ300を示し、図5は、閉位置にある管類クランプ300を示す。アンビル310は、流体経路セット170の可撓性管類の外面の一部など、可撓性管類400の少なくとも一部分を受容するための受容面312を含む。カムアセンブリ320は、互いに同心に配置された内輪322及び外輪324を含むことができる。外輪324は、内輪322に対して自由に回転可能であり得る。幾つかの態様又は例では、内輪322と外輪324との間の回転摩擦を低減するために、内輪322と外輪324との間に複数の軸受又はローラなどの複数の転動体323を設けることができる。図4及び図5に示す実施形態では、転動体323は、玉やシリンダなどの複数のローラを含むことができる。他の態様又は例では、内輪322と外輪324との間の転動体323は、滑り軸受、液体軸受、空気軸受などであってもよい。他の態様又は例では、内輪322は、例えば内輪322の外面と外輪324の内面との間の低摩擦表面間接触により、外輪324を直接当接支持することができる。
【0072】
内輪322は、中心軸線L及び回転軸線Lを有することができる。回転軸線Lは、中心軸線Lと平行であるが、中心軸線Lから離隔される。従って、内輪322は、シャフト332が関連モータ330によって回転させられるときに、回転軸線Lを中心に偏心して回転する。回転軸線Lは、内輪322が回転軸線Lを中心に回転してカムアセンブリ320の外面とアンビル310との間の距離を変化させるように、アンビル310に対して固定され得る。従って、可撓性管類400がアンビル310の受容面312上に配置された状態で、内輪322が回転軸線Lを中心に回転すると、外輪324と受容面312との間で可撓性管400をはさみ可逆的に圧縮することができる。より詳細には、内輪322の回転は、外輪324をアンビル310の受容面312に対して相対的に移動させて可撓性管400を圧縮又は減圧し、それによって可撓性管類400を通る流路を縮小又は閉鎖する。
【0073】
外輪324は、シャフト332が回転させられるときに内輪322の周りを自由に回転するので、外輪324は、外輪324の外面と可撓性管類400との間の最小滑り接触だけで、可撓性管類400と転がり接触して係合する。図4に示すように、内輪322が可撓性管類400をはさむように回転させられると、外輪324は接触点Pで可撓性管400と係合する。内輪322が図5に示す全閉位置に向かってさらに回転させられると、外輪324は可撓性管類400に沿って転がり、従って、外輪324が可撓性管類400に係合する接触点Pは、可撓性管類400が可逆的に圧縮されるときに実質的に一定のままである。外輪324と可撓性管類400との間のこの転がり接触は、可撓性管類400に対する最小摩擦抗力を生成し、それによって可撓性管類400への損傷を防止し、可撓性管類400の使用可能寿命を延ばす。幾つかの実施形態によれば、本開示のカム式転動クランプは、外輪324とアンビル310との間の可撓性管400に、転がり圧縮力の約0.1%~約100%及び滑り圧縮力の約99.9%~約0%である圧縮力を加えることができる。他の実施形態では、転がり圧縮力は、管類400に加えられる力の51%~100%であってもよく、滑り圧縮力は、管類400に加えられる力の0%~49%であってもよい。他の実施形態では、転がり圧縮力は、管類400に加えられる力の75%~100%であってもよく、滑り圧縮力は、管類400に加えられる力の0%~25%であってもよく、他の実施形態では、転がり圧縮力は、管類400に加えられる力の85%~100%であってもよく、滑り圧縮力は、管類400に加えられる力の0%~15%であってもよく、あるいは90%~100%の転がり圧縮力及び0%~10%の滑り圧縮力であってもよい。
【0074】
本明細書で使用される場合、「開(open)」という用語は、可撓性管類400に関連して使用される場合、可撓性管類400の内側側壁402が実質的に圧縮されず、従って、可撓性管類400の内腔404の断面積が自然な弛緩した状態での断面積と同じであることを意味する。「全閉(fully closed)」という用語は、可撓性管類400が、内側側壁402の直径方向に対向する点P、Pが互いに接触するように可逆的に圧縮され、それによって内腔404の断面積を実質的にゼロに減少させることを意味する。従って、内腔404を通る流体流れが妨げられる。「閉(closed)」という用語は、「全閉」という用語と互換的に使用され得る。「部分的開(partially open)」及び「部分的閉(partially closed)」という用語は、可撓性管類400が、内側側壁402の直径方向に対向する点P、Pが互いに近づくように可逆的に圧縮されて、内腔404の断面積を可撓性管類400の自然な弛緩した状態に対して減少させることを意味する。しかしながら、「部分的開」及び/又は「部分的閉」であるときの内腔404の断面積はゼロより大きい。
【0075】
引き続き図3図5を参照すると、カムアセンブリ320は、シャフト332を介してモータ330に接続され得る。シャフト332は、内輪322に偏心回転を与えるために、内輪322の回転軸線Lと同軸であってもよい。モータ330及びアンビル310は取付板340に取り付けることができ、取付板340は、流体注入器システム1000のハウジング11又は別の構成要素に取付可能であり得る。モータ330は、シャフト332及び内輪322の回転位置の正確な制御を可能にするサーボモータやステッパモータなどとすることができる。モータ330の回転から内輪322を直接回転させることにより、管類クランプ300の迅速な応答が可能になり得る。例えば、血管造影注入処置などの幾つかの処置では、1200 psiもの高い圧力が利用され得る。1200 psiの注入圧力及び25~40 mL/秒の流体流量で、気泡は、管類の内径(ID)に応じて管経路内を最大で4フィート移動することができる。例えば、およそ1200 psiで、気泡は、0.072インチIDの管類内を30 mL/秒の流量で80ミリ秒にわたって3.2 mLに相当する距離を移動することができる。そのような実施形態の3.2 mL容積の距離等価は、80ミリ秒の間に移動した管類の長さのおよそ4フィートであり得る。様々な実施形態では、管類クランプ300は、図4の開位置から図5の全閉位置まで約200ミリ秒未満で、例えば約40ミリ秒~約100ミリ秒で、又は他の実施形態では約40ミリ秒~約80ミリ秒で回転することができる。この迅速な応答時間は、特に高圧注入処置の場合、空気が患者に到達する前にコントローラ200(図2参照)から信号を受信すると、管類クランプ300が閉位置(図5)に確実に到達できるようにすることができる。他の実施形態では、シャフト332とカムアセンブリ320との間の中間に1つ又は複数の中間歯車が存在してもよく、歯車比は、シャフト332に対するカムアセンブリ320の相対回転を変化させる。他の実施形態では、内輪322の中心軸線Lと回転軸線Lとの間のオフセットを増大させると、気泡検出時に管類クランプ300が閉位置に到達するためのより迅速な応答時間をもたらすことができる。
【0076】
引き続き図4及び図5に示す実施形態を参照すると、内輪322の中心軸線L及び回転軸線Lは、可撓性管類400の長手方向軸線Lに対して実質的に垂直に延びることができる。この配置構成では、カムアセンブリ320を閉位置まで回転させることにより、可撓性管類400内に流体の方向性脈動を引き起こすことができる。より詳細には、外輪324と可撓性管類400との間の転がり接触は、外輪324によって圧縮された可撓性管類400の部分内の流体を変位させることができる。図4に示すように、内輪322の矢印Aの方向の回転は、可撓性管類400が圧縮されるときに、矢印Cの方向の流体の脈動を引き起こすことができる。逆に、内輪322の矢印Bの方向の回転は、可撓性管類400が圧縮されるときに、矢印Dの方向の流体の脈動を引き起こすことができる。従って、管類クランプ300は、患者及び流体注入器システム1000の他の構成要素に対して臨床的に望ましい方向に流体脈動をもたらすように配置され操作され得る。例えば、検出された空気に応答して管類を閉じるときに、任意の潜在的な流体脈動を患者の上流側に又は患者から離れる向きに方向付けることができることが望ましい場合がある。
【0077】
図4及び図5に示す態様又は例では、内輪322は、可撓性管類400がアンビル310の受容面312上に配置された状態で、回転軸線Lを中心に連続的に回転可能、すなわち360°回転可能であってもよい。図5に示す閉位置では、内輪322の中心軸線Lは、アンビル310と内輪322の回転軸線Lとの間にある。従って、カムアセンブリ320は、可撓性管類400が完全に閉じられると最も偏心した位置にある。続いて、カムアセンブリを図4の開位置まで移動させるには、内輪322を、回転軸線Lを中心に矢印Aか矢印Bのいずれかの方向に回転させることができる。他の態様又は例では、図6A及び図6Bに示すように、内輪322は完全に360°回転していなくてもよい。むしろ、管類クランプ300の閉位置は、内輪322の最も偏心した位置ではない。すなわち、可撓性管類400が完全に閉じられた状態で、内輪322の中心軸線Lは、アンビル310と内輪322の回転軸線Lとの直接間にはない。従って、カムアセンブリ320を図6Aに示す閉位置から開位置に戻すには、内輪322を矢印Bの方向に回転させなければならないが、矢印Aの方向に回転させると、可撓性管類400をさらに圧縮し変形させる可能性がある。図6Bは、部分的閉位置にあるカムアセンブリ320及び可撓性管類400を示し、この位置では、内腔404の断面は開位置に対して減少している。断面経路の流路は、例えば、100%開~0%開の任意の断面流路、及びその間のすべての可能な量が達成され得るように、カムアセンブリ320の転動によって制御され得る。他の実施形態では、特定の断面経路流路値がコントローラによって選択されてもよく、カムアセンブリ320は、選択された流路値を達成するために適切な量だけ転動され得る。他の実施形態では、カムアセンブリ320の特定の転動位置に関連する値は、例えば管類の直径又は管の肉厚の変化によって経時的に変化し得る。コントローラは、下流側流量検出器によって読み取られた流量値を利用してカムアセンブリ320のロール位置を調整し、それによって所望の断面流路値を与えることにより、これらの変化をリアルタイムで調整し修正することができる。
【0078】
幾つかの態様又は例では、アンビル及びハンマーもしくはカムは、例えば、管類内で空気が検出されたときに空気が患者の脈管構造に到達するのを防止するために、可撓性管類400を完全に切断することができる。これらの実施形態によれば、可撓性管類が切断されると、患者に接続された管類の遠位端における圧力勾配が逆転し、その結果、患者の脈管系の内側にあるカテーテル先端の圧力が大気圧よりもいくらか高い圧力にあり、管類の遠位部分の切断端部は0ゲージ圧である大気圧にある。流体は、カテーテルから管類の切断端部に即座に流れるので、空気、造影剤、及び/又は生理食塩水がすべて、患者に入るのを妨げられる。可撓性管類を切断すると、診断手順は終了し、診断手順を継続する場合は、滅菌使い捨て管類及びカテーテルを交換しなければならない。これらの実施形態によれば、管類を切断することは、検出された空気が患者に到達するのを防止するためのフェイルセーフプロトコルと見なすことができる。
【0079】
ここで図7及び図8を参照すると、管類クランプ300の他の態様又は例では、内輪322の中心軸線L及び回転軸線Lは、可撓性管類400の長手方向軸線Lと実質的に平行に延びる。転がり接触は可撓性管類400の長手方向軸線Lを横断して生じるので、流体脈動は、内輪322が回転する方向にかかわらず、矢印Cの方向と矢印Dの方向との間で実質的に平衡が保たれるか又は均等化され得る。従って、図7及び図8の配置構成は、実質的に平衡が保たれるか又は均等化された脈動が臨床的に望ましいときに使用され得る。さらに、図7及び図8の例は、図7及び図8の例が可撓性管400の比較的小さい部分を圧縮することができるので、図4及び図5の例よりも小さい脈動を誘導することができる(他の点では寸法的に同一のカムアセンブリ320を想定する)。アンビル310は、カムアセンブリ320が開位置と閉位置との間で可撓性管類400を横断して横方向に転動するときに可撓性管類400をアンビル310上の定位置に保つために、受容面312から上方に突出する1つ又は複数のガイドタブ313を含むことができる。1つ又は複数のガイドタブ313は、可撓性管類400の長手方向軸線Lに垂直な力に抗して可撓性管類400を定位置に保つように配置され得る。しかしながら、1つ又は複数のガイドタブ313は、外輪324とアンビル310との間の可撓性管類400の可逆的な圧縮を妨げるべきではない。幾つかの態様又は例では、アンビル310は、図10及び図11に関連して本明細書で説明するように、カムアセンブリ320が開位置と閉位置との間で可撓性管類400を横断して横方向に転動するときに可撓性管類400をアンビル310上の定位置に保つために、溝を形成することができる。幾つかの態様又は例では、可撓性管類400は、クリップ又は他の締結具でアンビル310に固定され得る。他の実施形態では、受容面312上の1つ又は複数の表面テクスチャが、カムアセンブリ320の横移動中に可撓性管類400の望まれない移動を防止することができる。可撓性管類400の長手方向軸線Lに対して実質的に平行又は垂直に延びる内輪322の中心軸線L及び回転軸線Lを有するクランプの実施形態が示されているが、内輪322の中心軸線L及び回転軸線Lと可撓性管類400の長手方向軸線Lとの間の他の角度が考えられ、本開示の範囲内にある。
【0080】
ここで図9を参照すると、管類クランプ300の別の態様又は例が示されており、アンビル310の受容面312は、外輪324を閉位置で受容するための少なくとも1つの戻り止め314を形成する。この実施形態によれば、外輪324は、管類クランプ300が閉位置にあるときに、戻り止め314内に少なくとも部分的に延びることができる。戻り止め314は、カムアセンブリ320の逆回転を物理的に妨げることができる。従って、例えば可撓性管類400内の圧力又はモータ330への電力損失に起因する、管類クランプ300の不用意な開放を防止することができる。幾つかの態様又は例では、戻り止め314は、モータ330に電流が供給されない場合でも、外輪324及び可撓性管類400を閉位置に保持することができる。従って、幾つかの実施形態では、外輪324と戻り止め314との間の嵌合は、可撓性管類400内の流体圧力がカムアセンブリ320を開位置まで押しやるのを妨げるのに十分であり得る。戻り止め314の幾何形状は、モータ330に供給される所定の電流に対応する所定の回転力が、戻り止め314から外輪324を解放して管類クランプ300を開位置に戻すために必要とされるように選択され得る。戻り止め314を除いて、図9の管類クランプ300は、図4図8の管類クランプ300と本質的に同様であり得る。
【0081】
ここで図10及び図11を参照すると、管類クランプ300の別の態様又は例が示されており、アンビル310の受容面312は、可撓性管類400をアンビル310及びカムアセンブリ320の外輪324に対して特定の位置にインデックスを付けかつ/又は保持するための溝又はチャネル316を形成する。幾つかの実施形態では、溝又はチャネル316は円弧状であり、可撓性管類400の外径と実質的に同じか又はそれより大きい半径を有することができる。様々な実施形態によれば、外輪324は、管類クランプ300が閉位置にあるときに可撓性管400を溝又はチャネル316内に圧縮するために、溝又はチャネル316に相補的でありかつ溝又はチャネルと協働する環状突起326を含む。溝又はチャネル316、及び環状突起326を除けば、図10及び図11の管類クランプ300は、図4図8の管類クランプ300と本質的に同様であり得る。
【0082】
ここで図12を参照すると、管類クランプ300の別の態様又は例が示されており、アンビル310の受容面312は、可撓性管400がカムアセンブリ320を少なくとも部分的に取り囲むか又は包み込むように、可撓性管400の長手方向軸線Lと平行に湾曲している。湾曲した受容面312は、可撓性管類400との追加の係合領域を提供するとともに、可撓性管が管類クランプ300内に適切に配置されているという視覚フィードバック及び/又は触覚フィードバックを医療従事者に提供する。
【0083】
図4図12に示す様々な態様又は例のいずれでも、外輪324は、可撓性管類400との係合を改善するために外面上に表面特徴を含むことができる。例えば、外輪324の表面は、可撓性管類400に対する外輪324の把持を増大させるために、テクスチャード加工面を有することができる。幾つかの実施形態によれば、テクスチャード加工面の外輪324は、2マイクロインチ~125マイクロインチの範囲、又は他の実施形態では、20マイクロインチ~75マイクロインチの範囲の表面粗さを有することができる。幾つかの態様又は例では、外輪324のテクスチャード加工面は、外輪324が可撓性管類400上へ転がるよりも可撓性管類400から転がり落ちることの方が困難であるように形成されている。従って、外輪324のテクスチャード加工面は、外輪324を閉位置にとどまるよう誘導することができる。他の実施形態によれば、アンビル310の受容面312は、アンビル310の受容面312上での可撓性管類400の位置を維持するのを助けるように構成されたテクスチャード加工面を含むことができる。
【0084】
図4図12に関連して論じた態様又は例では、内輪322は、外輪324をアンビル310に向かって移動させるように回転させられる。他の態様又は例では、図13図15に示すように、アンビル310は、随意に内輪322が静止したままで、カムアセンブリ320に向かって移動され得る。例えば、外輪324は、図4図8に関連して説明したのと実質的に同じ方法で、内輪322に対して回転して接触点Pで可撓性管類400に対して転がり接触を提供することができる。図13に示す例では、アンビル310は、例えば管類クランプ300を閉位置まで移動させるときに、アンビル310と外輪324との間で可撓性管類400を少なくとも部分的に圧縮するために、受容面312に対して垂直に矢印Eの方向に移動され得る。他の態様又は例では、アンビル310は、アンビル310と外輪324との間で可撓性管類400を圧縮するために、受容面312に対してある角度で矢印Fの方向に移動され得る。他の実施形態では、アンビル310は、システムのばね力定数に関連する方向Eの力でアンビル310をカムアセンブリ320の方へ押しやる、ばねなどの圧縮性部材334に関連付けられてもよい。これらの実施形態によれば、圧縮性部材334のばね力定数は、システムが閉位置にあるときに可撓性管類400の閉鎖を確実にする一方で、加えられる圧縮力が可撓性管類400を変形させないか又は恒久的に変えないことを確実にするように選択され得る。
【0085】
図14に示す例では、アンビル310は、アンビル310と外輪324との間で可撓性管類400をさらに圧縮するために矢印Gの方向に動かされるくさび又はランプとすることができる。図13図14に示す例では、アンビル310は、リニアアクチュエータや親ねじなどのリニアモータ又はばね334によって移動され得る。図15に示す例では、アンビル310は、アンビル310と外輪324との間で可撓性管類400を圧縮するために、ピボット点Pを中心に回転させられ得る。アンビル310は、ピボット点Pで、ステッピングモータやサーボモータなどのモータ336に接続され得る。
【0086】
図3図16に関連して説明される管類クランプ300の態様及び例は、遮断弁、流量制御弁、又はこれらの弁を組み合わせたものとして構成及び使用され得る。遮断弁として構成される場合、管類クランプ300の内輪322は、可撓性管類400が実質的に圧縮されない開位置と可撓性管類400が全圧縮される閉位置との間で回転させられ得る。管類に関して本明細書で用いられる「全圧縮(fully compressed)」という用語は、管類の内部内腔が、流体が流れることができないゼロ値又は無視できる値の断面積まで縮小されるように、可撓性管類400の少なくとも1つの領域が圧縮されることを意味する。
【0087】
流量制御弁として構成される場合、管類クランプ300は、可撓性管類400を様々な度合いだけ可逆的に圧縮するために、複数の部分的開位置及び/又は部分的閉位置の間で回転させられ得る。例えば、内輪322は、開位置と全閉位置との間の有限数の位置又は無限数の位置のいずれかの位置まで回転させられ、従って、縮小した内腔断面を通る流体流れの制御を行うことができる。従って、可撓性管類400の内部内腔の断面積は、内輪322の回転位置に応じて制御され得る。幾つかの実施形態によれば、可撓性管類400の内腔404の断面積は、可撓性管類400を通る流体の既知のかつ/又は経験的に導出された流量に対応するように選定され得る。幾つかの態様又は例では、管類クランプ300は、内輪322の位置を決定するためにエンコーダを含むことができ、コントローラ200は、モータ330を作動させて、可撓性管類400を通る流体の所望の流量に関連する所望の位置まで内輪322を回転させるように構成され得る。幾つかの態様又は例では、流体注入器システム1000は、管類クランプ300を通る流体の流れを測定するために、管類クランプ300の下流に少なくとも1つの流量センサを含むことができる。コントローラ200は、少なくとも1つの流量センサによって測定される所望の流量を達成するために、モータ330を作動させて内輪322を回転させることができる。
【0088】
幾つかの態様又は例では、管類クランプ300は、モータ電流に基づいてコントローラ200によって制御され得る。特に、コントローラ200は、カムアセンブリ320の閉位置又は他の少なくとも部分的に圧縮された位置に対応する所定の電流がモータ330によって引き出されるまで、内輪322を回転させるように構成され得る。モータ電流の測定は、可撓性管類400の使用可能寿命にわたって受けるクリープを考慮に入れることができ、クリープは、可撓性管類400を圧縮するのに必要な力を変化させ得る。例えば、幾つかの実施形態では、コントローラは、少なくとも1つの下流側流量センサで測定された流量値を利用して、カムアセンブリ320のモータ電流及び位置を下流側流体経路内の流体の流量でベンチマークテストにかけ、所望の流量を達成するために又は可撓性管類400を全圧縮するために必要な回転量を更新することができる。
【0089】
図3図15に関連して説明した管類クランプ300の態様及び例では、カムアセンブリ320は、内輪322及び内輪322に対する外輪324を含む。ここで図16を参照すると、幾つかの態様又は例では、管類クランプ300は、図3図15の態様のカムアセンブリ320の代わりに、シャフト332に偏心して取り付けられた転動可能な中実カム328を含むことができる。シャフト332が回転軸線Lを中心に回転すると、転動可能な中実カム328の外面とアンビル300の受容面312との間の距離を変えることができる。従って、可撓性管類400がアンビル310の受容面312上に配置されたときに、シャフト332が回転軸線Lを中心に回転すると、転動可能な中実カム328をアンビル310の受容面312に対して相対的に移動させて可撓性管類400を圧縮又は減圧し、それによって内腔404を通る流路を縮小又は遮断することができる。転動可能な中実カム328を除いて、これらの例の特徴及び動作は、図3図15の例と本質的に同一であり得る。
【0090】
幾つかの実施形態によれば、図16の管類クランプ300は、転動可能な中実カム328とアンビル310との間の可撓性管400に、転がり圧縮力の約0.1%~約100%及び滑り圧縮力の約99.9%~約0%である圧縮力を加えることができる。他の実施形態では、転がり圧縮力は、管類400に加えられる力の51%~100%であってもよく、滑り圧縮力は、管類400に加えられる力の0%~49%であってもよい。
【0091】
流体注入器システム、管類クランプ、及びそれらの操作方法の例が前述の説明で提供されたが、当業者は、本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、これらの例に対して修正及び変更を加えることができる。従って、前述の説明は、制限するものではなく例示的するためのものである。本明細書に上述した開示は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲と同等の意味及び範囲内にあるすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
11 ハウジング
12 シリンジ
13 ピストン
14 プランジャ
15 シリンジポート
17 流体経路セット
19 遠位端
170 流体経路セット
172 第1の可撓性管、可撓性管類
174 第2の可撓性管、可撓性管類
176 可撓性投与管、遠位可撓性管
200 コントローラ
210 空気検出器アセンブリ
300 閉鎖管類クランプ、アンビル、弁、
310 アンビル、受容面
312 受容面
313 ガイドタブ
314 戻り止め
316 溝、チャネル
320 偏心回転カムアセンブリ
322 内輪
323 転動体
324 外輪、内輪
326 環状突起
328 転動可能な中実カム
330 関連モータ
332 シャフト
334 圧縮性部材、リニアモータ、ばね
336 モータ
340 取付板
400 可撓性管類、可撓性管
402 内側側壁
404 内腔
1000 流体注入器システム
F 医療用流体
中心軸線
回転軸線
長手方向軸線
直径方向に対向する点
直径方向に対向する点
接触点
ピボット点
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】