(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】チアゾリン抗痛覚過敏薬の製造方法及び多形体
(51)【国際特許分類】
C07D 277/18 20060101AFI20220629BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20220629BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220629BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220629BHJP
C07D 263/58 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C07D277/18
A61K31/426
A61P25/04
A61P29/00
C07D263/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565878
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 US2020021883
(87)【国際公開番号】W WO2020231496
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520453744
【氏名又は名称】セルシィ セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ダックス,スコット エル.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC70
4C086BC82
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA08
(57)【要約】
本明細書では、チアゾリン抗痛覚過敏薬、化合物1を製造する方法及びその多形体が提供される。本明細書に記載される方法は、廉価な試薬を使用し、且つ商業規模の量で化合物1を提供することができる。ヒトへの投与に好適な化合物1の医薬組成物も提供される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
の化合物を製造する方法であって、
【化2】
の構造を有するアミン化合物を、
【化3】
と塩基及び第1の溶媒の存在下で反応させて、式II:
【化4】
の中間生成物を形成するステップ;及び
前記中間生成物を酸及び第2の溶媒と接触させて、前記式Iの化合物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記塩基は、アルカリ金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属水酸化物は、LiOH、NaOH、KOH及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属水酸化物は、NaOHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の溶媒は、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の溶媒は、極性プロトン性溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶媒は、水である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式IIの中間生成物は、前記酸及び前記第2の溶媒との接触前に単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸は、無機酸又は有機酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸は、無機酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸は、塩酸(HCl)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記式Iの化合物は、少なくとも約98%のエナンチオマー純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記式Iの化合物は、約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記式Iの化合物は、約0.010%~約0.020%w/wのBO-Imp-1と、約0.002%~約0.004%w/wのBO-Imp-5とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式I:
【化5】
の化合物であって、約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む化合物。
【請求項16】
約0.010%~約0.020%w/wのBO-Imp-1と、約0.002%~約0.004%w/wのBO-Imp-5とを含む、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
約0.01%~約0.10%w/wのBO-Imp-1と、約0.05%~約0.3%w/wのCmp Imp-3とを含む、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
0.05%w/w未満の、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4及びBO-Imp-5のそれぞれを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも約98%のエナンチオマー純度を有する、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
請求項15に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項21】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
式I:
【化6】
の化合物の結晶形態であって、CuK
α線を使用して測定されたとき、X線粉末回析(XPRD)が約2~約42°2θで収集される場合に9.6、15.2、18.0、19.4、23.0及び31.4の近似ピーク位置(°2θ±0.2)を含むXPRDパターンによって特徴付けられる結晶形態。
【請求項23】
9.6、15.2、15.8、17.5、18.0、19.4、21.9、23.0、24.5、25.1、26.4及び31.4の近似ピーク位置(°2θ±0.2)を含むXPRDパターンによって特徴付けられる、請求項22に記載の結晶形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年5月10日に出願された「MANUFACTURING METHODS AND POLYMORPHS OF A THIAZOLINE ANTI-HYPERALGESIC AGENT」という名称の米国仮特許出願第62/846,096号明細書に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、不快な知覚経験及び感情面での経験と定義される。しかし、疼痛は、情報価値があり、有用であり得る。例えば、侵害受容性疼痛は、傷害(例えば、組織の損傷)を示すことが多く、このような疼痛は、典型的には、傷害の原因へのさらなる曝露からそれ自体を取り除くか又はそれ自体を防御するために、動物又はヒトにおいて逃避行動又は防衛行動を惹起する。しかし、炎症、細胞損傷及びニューロン損傷並びに傷害又は疾患に起因する他のプロセスは、慢性病理学的疼痛の状態をもたらし得る。痛覚過敏は、侵害刺激への増進した感受性が存在し、このように疼痛の知覚が誇張される状態である。アロディニアは、通常、非侵害刺激が痛くなる状態である。痛覚過敏及び/又はアロディニアとして顕在化する持続性又は慢性疼痛は、依然として処置するのに難易度が高いままである。多くの患者は、現存する療法に応答しないか、又はそれらの疼痛が良好に管理されていないか(即ち不十分な軽減)、又は不十分な期間の軽減を経験している。
【0003】
痛覚過敏及びアロディニアの動物モデルにおいて示すことができるように、傷害、刺激物及び疾患によって生じる内因性反応種は、疼痛の重要な駆動体である。活性酸素種(ROS)及び反応性窒素種(RNS)は、フリーラジカル、例えばスーパーオキシド及びヒドロキシルラジカル並びに強力なオキシダントであるペルオキシナイトライト(OONO-、PNとしても知られる)及び過酸化水素(H2O2)を含む。傷害後に末梢において生じるペルオキシナイトライト及び過酸化水素の両方は、感覚求心性神経における興奮性の変化の一因となる。
【0004】
ペルオキシナイトライトは、オピエートによって誘発される抗侵害受容(疼痛)耐性(タキフィラキシー)の発生において関連付けられてきた(Muscoli et al.,2007,J Clin Invest 117:3530-3539)。ペルオキシナイトライトは、スーパーオキシド(O2
-)及び一酸化窒素(NO)の拡散律速反応からもたらされる。他の内因的に生成された反応種/オキシダントと異なり、ペルオキシナイトライトは、酵素的制御によって制御されない。ペルオキシナイトライト形成は、容易であり、その強力な酸化特性を本質的にチェックされないまま解放され、疼痛をもたらし得る下流の効果をもたらす。
【0005】
対照的に、スーパーオキシドは、NADPHオキシダーゼ及びキサンチン酸化酵素の作用から形成され、一酸化窒素は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)によって生成される。過酸化水素は、スーパーオキシド及びスーパーオキシドジスムターゼの作用から形成される。細胞ストレス(例えば、炎症、神経傷害、虚血)中、これらの酵素系の作用は、一酸化窒素、スーパーオキシド及びペルオキシドのレベルのかなりの増加をもたらすことができ、これは、ニューロン損傷、痛覚過敏及びアロディニアをもたらし得る。一酸化窒素及びスーパーオキシドの随伴性の増加は、ペルオキシナイトライトの非常に増加した局在的な増加をもたらし得、これは、タンパク質内のチロシン残基をニトロ化し、システイン残基を架橋すると共に、グルタチオン-ジスルフィドのホメオスタシスを撹乱し得る。まとめると、これらの作用は、神経障害性疼痛をはじめとする神経感作及び疼痛をもたらす。
【0006】
糖尿病は、神経障害の主な原因である。糖尿病患者の約50%は、灼熱、耐え難い、刺すような若しくは難治性タイプの疼痛として発現する末梢神経障害を発症する。現在利用可能な治療薬は、苦痛緩和的であり、症状の緩和をもたらすことで一部の患者にのみ効果的であり、疾患(糖尿病)修飾的ではない。さらに厄介なことに、最初に所与の治療薬からの緩和を経験する患者でも、通常、時間が経過すると疼痛状態に逆転する。プレガバリン、ガバペンチン及びラモトリギンなどの抗痙攣薬並びにカルバマゼピンなどの古い三環系抗うつ薬(TCA)は、有効となり得るが、CNS関連の有害作用(例えば、鎮静状態、認識障害等)を引き起こしやすい。デュロキセチンなどのノルエピネフリン及び/又はセロトニン再取込み阻害剤(SNRI)クラスに属する抗うつ薬は、一部の患者において有用な代替薬である。オピオイド及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用は、一般的であるが、オピオイド療法により生じることでよく知られている乱用の可能性、中止、用量漸増を招く耐性、便秘、悪心、嘔吐及び呼吸抑制並びにNSAID使用に関連する胃腸潰瘍及び腎臓毒性のために好ましくない。最後に、外用薬(カプサイシン、外用薬の亜硝酸薬及び外用薬のTCA)並びに局所麻酔薬が使用されているが、これらは、まちまちの結果を伴う。
【0007】
まとめると、有痛性糖尿病性神経障害は、最も一般的に使用されている薬物(NEURONTIN(登録商標)、LYRICA(登録商標)、CYMBALTA(登録商標))について5~6の範囲である治療必要数によって明らかなように、管理不良のままである(Treatment of Painful Diabetic Neuropathy-,Ther.Adv.Chronic Dis.2015,6(1)15(S Javed)。
【0008】
術後疼痛は、今日存在する優れた処置オプションを必要とする疼痛のもう1つの原因である。術後疼痛は、多くの場合、手術に起因するが、例えば熱傷後の急性疼痛の管理といった他の処置又は非手術外傷も重度の疼痛を引き起こし得る。術後疼痛管理は、手術患者が、回復を早める歩行を可能な限り早く開始することができるように、疼痛及び不快感を軽減又は除去する上で重要である。
【0009】
手術部位は、術後疼痛の程度に著しい影響を与える。一般に、胸郭及び上腹部での手術は、下腹部での手術より多くの痛みをもたらし、また下腹部での手術は、手足に対する末梢手術より多くの痛みをもたらす。特に、胸郭又は上腹部手術は、肺機能の大幅な変化、腹筋緊張の減少及び関連する横隔膜機能の低下を引き起こし得る。横隔膜の機能が低下すると、咳及び粘液排出ができなくなる恐れがあり、これによって肺虚脱及び/又は肺炎を引き起こし得る。持続的疼痛は、物理的活性及び可動性を低下させて、深部静脈血栓症及び肺閉塞のリスク増加を招く。これらの障害は、不快であるか、又はさらに生命に関わる場合もあり、その結果、多くの場合に長期にわたる入院となる。中度~重度の術後疼痛を有する患者は、多くの場合、外傷又は手術後の少なくとも最初の3日間、また多くの場合に手術後2~3週間も疼痛管理を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、限定されないが、有痛性糖尿病性神経障害及び術後疼痛を含め、多様な疼痛を軽減することができる新規クラスの治療薬が医療及び患者集団において必要とされている。本明細書に記載の方法及び化合物は、この切迫した必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図面は、一般に、例として、しかし何ら限定的ではなく、本発明の様々な実施形態を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】様々な実施形態に従う(R)-2-(2-ヒドロキシフェニルアミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸一塩酸塩(化合物1)のX線結晶構造である。
【
図2】様々な実施形態に従う化合物1の赤外線(IR)スペクトルである。
【
図3】様々な実施形態に従う化合物1の
1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトルである。
【
図4】様々な実施形態に従う化合物1の
13C-NMRスペクトルである。
【
図5】様々な実施形態に従う化合物1の実験(下部トレース)及び計算XRPD(X線粉末回折)トレース(上部トレース)である。
【
図6】様々な実施形態に従う化合物1の重量測定蒸気収着(GVS)/動的蒸気収着(DVS)等温線プロットである。
【
図7】様々な実施形態に従う化合物1の示差走査熱量測定(DSC)/熱重量分析(TGA)トレースの組合せである。
【
図8】様々な実施形態に従う化合物1の製造工程中に形成される可能性がある不純物の構造の一覧である。
【
図9】様々な実施形態に従う化合物1の製造工程中に形成される可能性がある不純物Cmp1 Imp-3が形成される様式を示す。
【
図10】非晶質化合物1のXPRDスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示される主題の特定の実施形態を以下で詳細に参照するが、その実施例は、添付の図面に一部が表示される。開示された主題を、列挙される請求項と関連して説明するが、例示される主題は、開示された主題に請求項を限定することを意図しないことが理解されるであろう。
【0014】
本明細書全体を通して、範囲の形態で表現される値は、範囲の上限として明示される数値だけではなく、あたかも各数値及び部分範囲が明示されているのと同様に、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て含むという柔軟な様式で解釈すべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1~約5%だけではなく、示される範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)の範囲も含むと解釈すべきである。「約X~Y」という記述は、他に指示されない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y又はZ」という記述は、他に指示されない限り、「約X、約Y又は約Z」と同じ意味を有する。
【0015】
本明細書では、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その」が用いられる場合、文脈から他の解釈が要求されない限り、1つ以上を含む。用語「又は」が用いられる場合、他に指示のない限り、非排他的な「又は」を指す。「A及びBの少なくとも1つ」又は「A又はBの少なくとも1つ」は、「A、B又はA及びB」と同じ意味を有する。加えて、本明細書で使用され、他に定義されていない専門用語及び学術用語は、説明の目的のためのものであり、限定の目的ではないことを理解すべきである。セクションの見出しの使用は、全て本明細書の読解を補助することを意図するものであり、限定的と解釈すべきではなく;あるセクションの見出しに関連する情報は、その具体的セクション内又は外で起こり得る。本明細書に関連する全ての刊行物、特許及び特許文献は、あたかも個別に参照により組み込まれるのと同じように、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる。本明細書及び参照により同様に組み込まれる文献との間に一致しない使用が生じた場合、組み込まれる参照文献中の使用は、本明細書中の使用に対して補助的であるべきであり;相いれない不一致については、本明細書中の使用が優先される。
【0016】
本明細書に記載される方法において、行為は、時間又は操作順序が明確に記載されている場合を除き、本発明の原則から逸脱することなく、任意の順序で実施することができる。さらに、指定される行為は、明示的な要求の表現で、それらを個別に実施することが記載されていない限り、同時に行うことができる。例えば、Xを行うことが要求される行為と、Yを行うことが要求される行為とは、単一の操作で同様に実施することができ、その結果生じる工程は、要求される工程の文字通りの範囲に該当することになる。
【0017】
定義
本明細書で使用される用語「約」は、例えば、記載の値又は記載の範囲の10%以内、5%以内若しくは1%以内の値又は範囲のある程度の変動を許容することができ、厳密な記載の値又は範囲を包含する。
【0018】
本明細書で使用される用語「実質的に」は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%若しくは少なくとも約99.999%以上又は100%のように大部分又はほとんどを指す。本明細書で使用される用語「実質的に含まない」は、全く含まないか、又はそれを含む組成物の材料特性に影響を及ぼさず、その組成物が、材料の約0wt%~約5wt%、若しくは約0wt%~約1wt%、若しくは5wt%以下又は約4.5wt%、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01未満、それと等しい若しくはそれを超えるか又は約0.001wt%以下であるようなその僅かな量を有することを意味し得る。用語「実質的に含有しない」は、組成物が、材料の約0wt%~約5wt%、若しくは約0wt%~約1wt%、若しくは5wt%以下又は約4.5wt%、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01未満、それと等しい若しくはそれを超えるか又は約0.001wt%以下であるか、又は0wt%であるようなその僅かな量を有することを意味し得る。
【0019】
本明細書で使用される用語「溶媒」は、固体、液体又は気体を溶解させることができる液体を指す。溶媒の非限定的な例として、シリコーン、有機化合物、水、アルコール、イオン液体及び超臨界流体である。
【0020】
本明細書で使用される用語「から独立して選択される」は、文脈から他の解釈が要求されない限り、同じ、異なる又はそれらの混合物である、言及された群を指す。従って、この定義では、「X1、X2及びX3は、独立して、希ガスから選択される」という表現は、例えば、X1、X2及びX3が全て同じである、X1、X2及びX3が全て異なる、X1とX2が同じであり、且つX3が異なるシナリオ並びに他の類似する変更を含み得る。
【0021】
本明細書で使用される用語「室温」は、約15℃~28℃の温度を指す。
【0022】
本明細書で使用される用語「標準温度及び圧力」は、25℃及び101kPaを指す。
【0023】
本明細書において使用する場合、用語「組成物」又は「医薬組成物」は、本発明内で有用な少なくとも1種の化合物と、薬学的に許容される担体との混合物を指す。医薬組成物は、患者又は対象への化合物の投与を促進する。当技術分野には、化合物を投与する複数の技法が存在し、そうしたものとして、限定されないが、静脈内、経口、エアゾール、非経口、眼、肺及び局所投与が挙げられる。
【0024】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持することができない動物の健康状態であり、その場合、疾患が改善されなければ、動物の健康は、悪化し続ける。
【0025】
対照的に、動物の「障害」は、動物がホメオスタシスを維持し得る健康状態であるが、動物の健康状態は、障害が存在しない場合に想定されるものより好ましくない。処置しないまま放置した場合、障害は、動物の健康状態に必ずしもさらなる疾患を引き起こすわけではない。
【0026】
本明細書において使用する場合、「有効量」、「医薬有効量」及び「治療的有効量」といった用語は、無毒性であるが、所望の生物学的結果をもたらすのに十分な薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状若しくは原因の軽減及び/若しくは緩和又は生物系のいずれかの他の所望の変化であり得る。任意の個別の症例における適切な治療量は、当業者が常用的な実験を用いて決定することができる。
【0027】
本明細書において使用する場合、用語「有効性」は、アッセイ内で達成される最大効果(Emax)を指す。
【0028】
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容される」は、化合物の生物活性又は特性を抑止せず、且つ相対的に無毒性である材料、例えば担体又は賦形剤を指し、即ち、材料は、望ましくない生物学的効果をもたらすことなく又はその中にそれが含有される組成物の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、個体に投与され得る。
【0029】
本明細書において使用する場合、言語「薬学的に許容される塩」は、無機酸若しくは無機塩基、有機酸若しくは有機塩基、その溶媒和化合物、水和物又は包接体を含む、薬学的に許容される無毒性の酸又は塩基から調製される、投与される化合物の塩を指す。
【0030】
好適な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製され得る。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸(硫酸塩及び重硫酸塩を含む)並びにリン酸(リン酸水素及びリン酸二水素を含む)が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸クラスの有機酸から選択され得、その例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、マロン酸、サッカリン、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデリン酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギニン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸が挙げられる。
【0031】
本発明の化合物の好適な薬学的に許容される塩基付加塩として、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属塩をはじめとする金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛塩などが挙げられる。また、薬学的に許容される塩基付加塩として、例えば、N,N’-ジベンジルエチレン-ジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインなどの塩基性アミンから生成される有機塩が挙げられる。これらの塩の全ては、例えば、適切な酸又は塩基を化合物と反応させることにより、対応する化合物から調製することができる。
【0032】
塩は、分子が、正電荷及び負電荷の両方を有する分子である分子内塩(双性イオンとして知られる)も含み得る。
【0033】
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、これがその意図する機能を行い得るように、本発明内で有用な化合物を患者内において又は患者に運搬又は輸送することに関与する薬学的に許容される材料、組成物又は担体、例えば液体若しくは固体充填剤、安定剤、分散化剤、懸濁化剤、賦形剤、添加剤、増粘剤、溶媒又はカプセル化材料を意味する。典型的には、このような構築物は、1つの器官又は体の部分から別の器官又は体の部分に運搬又は輸送される。各担体は、本発明内で有用である化合物を含めた製剤の他の成分と適合性であり、且つ患者に対して傷害性でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体としての役割を果たし得る材料のいくつかの例は、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びバレイショデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;添加剤、例えばカカオバター及び坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;表面活性剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;並びに医薬製剤において用いられる他の無毒性の適合性の物質を含む。本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、本発明内で有用である化合物の活性と適合性であり、且つ患者に対して生理学的に許容されるあらゆるコーティング、抗菌剤及び抗真菌剤並びに吸収遅延剤なども含む。補助的な活性化合物は、組成物中にも組み込まれ得る。「薬学的に許容される担体」は、本発明内で有用である化合物の薬学的に許容される塩をさらに含み得る。本発明の実行において使用される医薬組成物中に含まれ得る他のさらなる成分は、当技術分野において公知であり、例えば参照により本明細書中に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Genaro,Ed.,Mack Publishing Co.,1985,Easton,PA)に記載されている。
【0034】
「患者」、「対象」又は「個体」という用語は、本明細書では互換可能に使用され、インビトロ又はインサイチュのいずれかにかかわらず、本明細書に記載の方法に適した任意の動物又はその細胞を指す。非限定的な実施形態では、患者、対象又は個体は、ヒトである。
【0035】
本明細書において使用する場合、用語「力価」は、最大応答(ED50)の半分をもたらすのに必要な用量を指す。
【0036】
「治療的」処置は、病理学の徴候を示す対象に対して、そうした徴候を軽減又は排除する目的で実施される処置である。
【0037】
本明細書において使用する場合、用語「処置」又は「処置すること」は、本明細書で考慮される状態若しくは本明細書で考慮される状態の症状の治療(cure)、治癒、緩和、軽減、改変、治療(remedy)、改善、向上若しくはそれに対する作用を目的とする、治療薬、即ち本発明の化合物(単独で若しくは別の薬剤と組み合わせて)の患者への適用若しくは投与又は本明細書で考慮される状態若しくは本明細書で考慮される状態の症状を有する患者から単離された組織若しくは単離された細胞株(例えば、診断若しくはエクスビボ適用のために)に対する治療薬の適用若しくは投与として定義される。こうした処置は、ゲノム薬理学の分野から得られる知識に基づいて具体的に設計又は修正することができる。
【0038】
本発明の化合物の調製
本明細書に記載の化合物は、当業者に周知の合成方法を用いて、本明細書に記載される一般スキームにより調製することができる。以下の例は、本発明の非限定的な実施形態を例示する。
【0039】
本明細書に記載の化合物は、1つ又は複数の立体中心を備え得、各立体中心は、(R)又は(S)配置のいずれかで独立に存在し得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、光学活性体又はラセミ体で存在する。本明細書に記載の化合物は、ラセミ、光学活性、位置異性体及び立体異性体又は本明細書に記載の治療に有用な特性を有するそれらの組合せを包含することが理解されるべきである。光学活性体の調製は、任意の好適な方法で達成され、非限定的な例として、再結晶技術を用いたラセミ体の分割、光学活性出発材料からの合成、キラル合成又はキラル固定相を用いたクロマトグラフィー分離を含む任意の好適な方法により達成される。特定の実施形態では、1つ又は複数の異性体の混合物が本明細書に記載の治療用化合物として使用される。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つ又は複数のキラル中心を有する。これらの化合物は、立体選択的合成、エナンチオ選択的合成並びに/又はエナンチオマー及び/若しくはジアステレオマーの混合物の分離を含め、任意の手段により調製される。化合物とその異性体との分割は、非限定的な例として、化学処理、酵素処理、分別結晶、蒸留及びクロマトグラフィーを含む任意の手段により達成される。
【0040】
本明細書に記載の方法及び製剤は、N-オキシド、S-オキシド(必要に応じて)、結晶形態(多形体としても知られる)、溶媒和化合物、非晶相及び/又は本発明の任意の化合物の構造を有する化合物の薬学的に許容される塩並びに同じタイプの活性を有するこれらの化合物の代謝物及び活性代謝物が挙げられる。溶媒和化合物としては、水、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル)又はアルコール(例えば、エタノール)溶媒和化合物、酢酸塩などが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、水及びエタノールなど、薬学的に許容される溶媒を含む溶媒和形態で存在する。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態で存在する。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、互変異性体として存在し得る。あらゆる互変異性体は、本明細書に呈示される化合物の範囲内に含まれる。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、プロドラッグとして調製される。「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換される薬剤を指す。特定の実施形態では、インビボ投与時、プロドラッグは、生物学的、薬学的又は治療的に活性な形態の化合物に化学的に変換される。他の実施形態では、プロドラッグは、1つ又は複数のステップ又は工程により、化合物の生物学的、薬学的又は治療的に活性な形態に酵素的に代謝される。
【0043】
特定の実施形態では、例えば、本発明の化合物の芳香環部分の部位は、様々な代謝反応に対して感受性である。芳香環構造に適切な置換基を組み込むことにより、この代謝経路を低減、最小化又は排除することができる。特定の実施形態では、代謝反応に対する芳香環の感受性を低減又は排除するための適切な置換基は、あくまで例として、重水素、ハロゲン又はアルキル基である。
【0044】
本明細書に記載の化合物は、1つ又は複数の原子を、同じ原子数を有するが、天然に通常見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換される。本明細書に記載の化合物に含めるのに好適な同位体の例としては、2H、3H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P及び35Sが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、同位体標識化合物は、薬物及び/又は基質組織分布試験で有用である。他の実施形態では、重水素などのより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性(例えば、より長いインビボ半減期又はより少ない投薬量要件)をもたらす。また別の実施形態では、11C、18F、15O及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、基質受容体占有を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)試験に有用である。同位体標識化合物は、任意の好適な方法により、又は他の場合に用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いる工程により調製される。
【0045】
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、限定されないが、発色団若しくは蛍光部分、生物発光標識又は化学発光標識の使用を含む他の手段によって標識される。
【0046】
本明細書に記載の化合物及び異なる置換基を有する他の関連化合物は、本明細書に記載の技術及び材料を用いて、且つ例えばFieser&Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-17(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991),Larock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989),March,Advanced Organic Chemistry 4th Ed.,(Wiley 1992);Carey&Sundberg,Advanced Organic Chemistry 4th Ed.,Vols.A and B(Plenum 2000,2001)及びGreen&Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Ed.,(Wiley 1999)(これらの全ては、そのような開示について参照により組み込まれる)に記載されるように合成される。本明細書に記載される化合物の一般的な調製方法は、本明細書に提供される製法に見出される様々な部分の導入を目的とする適切な試薬及び条件の使用によって修正される。
【0047】
本明細書に記載の化合物は、市販の供給源から入手可能な化合物から出発する任意の好適な手順を用いて合成されるか、又は本明細書に記載の手順を使用して調製される。
【0048】
特定の実施形態では、ヒドロキシル(フェノールを含む)、アミノ、イミノ、チオ又はカルボキシ基などの反応性官能基は、反応へのそれらの不要な関与を回避するために保護される。保護基を用いて、反応性部分の一部又は全部を遮断し、保護基が除去されるまで、そうした基が化学反応に関与することを防止する。他の実施形態では、各保護基は、様々な手段により除去可能である。完全に異なる反応条件下で切断される保護基は、差別的除去の要件を満たす。
【0049】
特定の実施形態では、保護基は、酸、塩基、還元条件(例えば、水素化分解など)及び/又は酸化条件により除去される。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタール及びtert-ブチルジメチルシリルなどの基は、酸不安定性であり、これらの基を用いて、水素化分解により除去可能なCbz基及び塩基不安定性のFmoc基で保護されたアミノ基の存在下でカルボキシ及びヒドロキシ反応性部分を保護する。カルボン酸及びヒドロキシ反応性部分は、酸不安定性基、例えばカルバミン酸tert-ブチルで遮断されたアミンの存在下において、塩基不安定性基、例えば、限定されないが、メチル、エチル及びアセチルを用いて、又は酸及び塩基安定性の両方であるが、加水分解で除去可能なカルバミン酸塩を用いて遮断される。
【0050】
特定の実施形態では、カルボン酸及びヒドロキシ反応性部分は、ベンジル基などの加水分解により除去可能な保護基で遮断されるが、酸と水素結合することができるアミン基は、Fmocなどの塩基不安定性基で遮断される。カルボン酸反応性部分は、本明細書に例示される通り、単純なエステル化合物への変換(アルキルエステルへの変換を含む)により保護されるか、又は2,4-ジメトキシベンジルなどの酸化により除去可能な保護基で遮断されるのに対して、共存するアミノ基は、フッ化物不安定性カルバミン酸シリルで遮断される。
【0051】
アリル遮断基は、安定性であり、後に金属又はπ酸触媒により除去されることから、酸保護基及び塩基保護基の存在下で有用である。例えば、アリルで遮断されたカルボン酸は、酸不安定性カルバミン酸tert-ブチル又は塩基不安定性アセテートアミン保護基の存在下においてパラジウム触媒反応で脱保護される。また別の形態の保護基は、化合物又は中間体が結合される樹脂である。残基が樹脂に結合されている限り、官能基は、遮断され、反応しない。樹脂から放出されると、官能基は、反応のために利用可能となる。
【0052】
典型的な遮断/保護基は、
【化1】
から選択され得る。
【0053】
他の保護基、さらには保護基の作製及びそれらの除去に適用が可能な技術の詳細な説明は、Greene&Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley&Sons,New York,NY,1999及びKocienski,Protective Groups,Thieme Verlag,New York,NY,1994に記載されており、これらは、そのような開示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
製造方法
式Iの化合物(化合物1)を製造する方法を記載する。
【化2】
【0055】
本方法は、
【化3】
の構造を有するアミン化合物を、
【化4】
と塩基及び第1の溶媒の存在下で反応させて、式II:
【化5】
の中間生成物を形成するステップ;及び
中間生成物を酸及び第2の溶媒と接触させて、化合物1を形成するステップ
を含む。
【0056】
様々な実施形態では、化合物1は、以下のスキーム1:
【化6】
に従って調製することができる。
【0057】
様々な実施形態では、化合物1双性イオンは、酸で処理する前に単離される。化合物1双性イオンの正式名は、(R)-2-((2-ヒドロキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-3-イウム-4-カルボキシレートである。単離は、化合物1双性イオンが不溶性であるか又はやや可溶性であるイソ-プロパノールなどの好適な溶媒からの再結晶化又は沈殿など、当技術分野で公知の方法によって達成することができる。
【0058】
化合物1双性イオンは、様々な実施形態において、スキーム2:
【化7】
に従って調製することができる。
【0059】
様々な実施形態では、単離された化合物1双性イオンは、スキーム3:
【化8】
に従って化合物1に変換することができる。
【0060】
スキーム1及びスキーム3において、HAは、プロトン酸を表し、A-は、HAの共役塩基を表す。
【0061】
スキーム1における塩基は、任意の好適な塩基、例えば、限定されないが、一級、二級若しくは三級アミン、アルカリリチウム、グリニャール試薬又はアルカリ金属水酸化物であり得る。様々な実施形態では、塩基は、LiOH、NaOH、KOH及びそれらの組合せからなる群から選択される。様々な実施形態において、塩基は、NaOHである。
【0062】
第1の溶媒は、出発材料を溶解させることができる任意の好適な溶媒であり得る。第1の溶媒は、様々な実施形態において、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒又はそれらの任意の組合せであり得る。好適な極性プロトン性溶媒は、様々な実施形態において、水、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、イソ-プロパノール及びそれらの混合物であり得る。様々な実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びそれらの混合物であり得る。第1の溶媒は、例えば、約1:1(プロトン性:非プロトン性)~約1:10(プロトン性:非プロトン性)又は約10:1(プロトン性:非プロトン性)といった任意の好適な比のプロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物でもあり得る。様々な実施形態において、第1の溶媒は、水である。
【0063】
酸は、HF、HCl、HBr、H2SO4、HNO3、H3NSO3、H3PO4などの任意の好適な無機酸であり得る。酸は、有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、酪酸、ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、ジグルコン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリセロリン酸、ヘミスルフィック酸、ヘキサン酸、ギ酸、フマル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(イセチオン酸)、乳酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メシチレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、2-ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、ペクチン酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、ピバル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデカン酸などであり得る。様々な実施形態において、酸は、塩酸(HCl)である。
【0064】
第2の溶媒は、化合物1双性イオンなどの極性物質を溶解させることができる任意の好適な溶媒であり得る。第2の溶媒は、様々な実施形態において、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒又はそれらの任意の組合せであり得る。好適な極性プロトン性溶媒は、様々な実施形態において、水、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、イソ-プロパノール及びそれらの混合物であり得る。様々な実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びそれらの混合物であり得る。第2の溶媒は、例えば、約1:1(プロトン性:非プロトン性)~約1:10(プロトン性:非プロトン性)又は約10:1(プロトン性:非プロトン性)といった任意の好適な比のプロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物でもあり得る。様々な実施形態において、第2の溶媒は、イソ-プロパノールである。
【0065】
化合物1は、塩酸付加塩であるが、他の薬学的に許容される酸付加塩を本明細書に記載の方法に使用することもできる。薬学的に許容される酸とは、毒性でないか、又はそうでなければ生物学的に不適切ではない酸を指す。薬学的に許容される酸付加塩は、薬学的に許容される無機酸を用いて形成することができ、そうした酸として、限定されないが、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
【0066】
薬学的に許容される酸付加塩は、薬学的に許容される有機酸を用いて形成することもできる。薬学的に許容される有機酸の例として、限定されないが、酢酸、トリフルオロ酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、酪酸、ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、ジグルコン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリセロリン酸、ヘミスルフィック酸、ヘキサン酸、ギ酸、フマル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(イセチオン酸)、乳酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メシチレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、2-ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、ペクチン酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、ピバル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデカン酸などが挙げられる。本方法を使用して、必要に応じて、化合物1の調製を商業的スケールの工程に経済的にスケーリングすることができる。本方法は、有利には、安価且つ環境に配慮した試薬を用いて化合物1を生成する。
【0067】
化合物1の物理的特性
化合物1、(R)-2-(2-ヒドロキシフェニルアミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸一塩酸塩は、式I:
【化9】
の構造を有する。
【0068】
化合物1は、以下のpKa値:2.29±0.02(酸性)、6.97±0.01(塩基性)及び10.24±0.03(酸性)を有する。化合物1は、メタノール及びtert-ブチルアルコール:水(1:1)中に自由に可溶である。化合物1は、イソ-プロパノール、エタノール、10%水:酢酸イソ-プロピル、10%水/テトラヒドロフラン及び水中にやや可溶である。化合物1は、n-ヘプタン、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソ-プロピル、tert-ブチルメチルエーテル及びtert-ブチルアルコール中に溶けにくい。
【0069】
化合物1は、pH7.2において、-0.07(3mLのPBS緩衝液:1mLのオクタノール)及び-0.39(2mLのPBS緩衝液:2mLのオクタノール)のLogD分配係数を有し、ここで、PBSは、リン酸緩衝液である。
【0070】
図1は、化合物1のX線結晶構造を示す。
図1の構造の結晶学的パラメータを以下の表1に列挙する。
【0071】
【0072】
表2は、化合物1の赤外線スペクトルで観察された化合物中の官能基のピーク帰属(
図2)を列挙する。
【0073】
【0074】
表3は、化合物1の
1H NMRスペクトルにおける水素原子核のピーク帰属(
図3)を列挙する。
【0075】
【0076】
表4は、化合物1の
13C NMRスペクトルにおける炭素原子核のピーク帰属(
図4)を列挙する。
【0077】
【0078】
化合物1及び関連化合物の他の特徴は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,102,636号明細書に記載されている。
【0079】
化合物1の多形体
n-ヘプタン、メタノール、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソ-プロパノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソ-プロピル、tert-ブチルメチルエーテル、10%水/90%イソ-プロピルアルコール、10%水/90%テトラヒドロフラン、tert-ブチルアルコール、水及び1:1のtert-ブチルアルコール:水を含む15の有機/水性溶媒系を用いて、結晶質化合物1の多形性スクリーニングを実施した。
【0080】
1つのみの結晶形態を取得した(形態1)。化合物1は、非溶媒和、結晶質、一塩酸塩である。
図5は、下部トレースにおいて、化合物1の実験により得られたXPRDスペクトルを、及び上部トレースにおいて、シミュレートXPRDスペクトルを示す。XPRDスペクトルは、CuKα線を用いて測定し、2~42°2θから収集した。化合物1の実験により得られたXPRDスペクトルは、以下のピーク及び関連強度を有する。
【0081】
【0082】
【0083】
重量測定蒸気収着(GVS)は、0%~90%RHで6%の取り込みを示す。サンプルは、吸湿性である。GVS等温線プロットを
図6に記載する。
【0084】
(R)-2-(2-ヒドロキシフェニルアミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸一塩酸塩のDSC/TGA結果の組合せを
図7に記載する。DSCは、200℃~250℃で分断した吸熱を示し、TGAは、分解(合計5%質量損失)が約202℃で開始することを示す。化合物1からの非晶質形態は、例えば、本明細書の実施例4に記載される結晶質化合物1の凍結乾燥により製造することができる。
【0085】
化合物1の不純物
様々な実施形態において、本明細書に記載される化合物1は、以下の表5に記載され、また
図8及び
図9に示される通り、最大で約0.30%w/wの1つ又は複数の不純物を含み得る。
【0086】
【0087】
様々な実施形態において、化合物1は、約0.30%w/w、0.25%w/w、0.20%w/w又は0.15%w/w未満の、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を有する。様々な実施形態において、化合物1は、約0.0001%~約0.30%w/w、約0.0001%~約0.25%w/w、約0.0001%~約0.20%w/w、約0.001%~約0.15%w/w又は約0.01%~約0.15%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を有する。
【0088】
様々な実施形態において、化合物1は、約0.0005%、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.010%、約0.012%、約0.014%、約0.016%、約0.018%、約0.020%、約0.022%、約0.024%、約0.026%、約0.028%、約0.030%、約0.032%、約0.034%、約0.036%、約0.038%、約0.040%、約0.042%、約0.044%、約0.046%、約0.048%又は約0.050%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を有する。様々な実施形態において、化合物1は、約0.010%~約0.020%w/wの不純物BO-Imp-1及び約0.002%~約0.004%w/wの不純物BO-Imp-5を含む。様々な実施形態において、本明細書に記載の化合物1中の1つ又は複数の不純物は、単離された化合物1中において、本明細書に記載される量で存在する。様々な実施形態において、本明細書に記載の化合物1中の1つ又は複数の不純物は、単離及び精製された化合物1中において、本明細書に記載される量で存在する。精製された化合物1は、本明細書に記載の分析精製技術又は当技術分野で公知の他の精製技術のいずれかの1つ又は複数に付された化合物1の量である。
【0089】
BO-Imp-1~BO-Imp-5の不純物は、2-クロロベンゾオキサゾール出発材料から発生し得る。これらの不純物の形成を示すフローチャートを
図8に示す。
【0090】
BO-Imp-3は、水酸化ナトリウムとの副次的競合反応経路による2-クロロベンゾオキサゾールの加水分解によって形成する工程不純物である。これは、化合物1の双性イオンの濾過によりパージすることができる。BO-Imp-3は、5hにわたる5N水酸化ナトリウムの加熱を用いるなど、化合物1の強制分解試験中に副次的不純物(0.3%)として形成し得る。
【0091】
Cmp1 Imp-3は、塩酸塩形成中にイソ-プロパノール溶媒と共に無塩化合物1の酸触媒エステル化によって形成する工程不純物である。その形成は、イソ-プロパノール中の化学量論的塩化水素を用いることにより最小化され得、これは、イソ-プロパノール中の化合物1の双性イオンの予冷懸濁液に添加される。これは、化合物1の濾過によりパージすることができる。Cmp1 Imp-3は、
図9に示すように形成される。
【0092】
化合物1のエナンチオマーは、(S)-2-(2-ヒドロキシフェニルアミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸一塩酸塩であり、(S)-化合物1と呼ぶことができる。様々な実施形態において、化合物1のエナンチオマー純度は、少なくとも約95%、97%、98%、99%、99.2%、99.4%、99.6%、98.8%、99.9%、99.99%又はそれを超え得る。従って、例えば、化合物1のエナンチオマー純度が99.5%である場合、組成物は、99.5%の化合物1と、0.5%の(S)-化合物1とを含有する。エナンチオマー純度は、化合物1及び(S)-化合物1の相対量のみを指し、本明細書に記載のように別の不純物も存在し得る。
【0093】
組成物
本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を含む。特定の実施形態では、組成物は、経口又は非経口、例えば経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)口腔、(経)尿道、膣(例えば、経膣及び膣周囲)、鼻(内)及び(経)直腸、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、髄腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入及び局所投与などの投与経路のために製剤化される。
【0094】
様々な実施形態において、化合物1の医薬組成物は、
【化10】
を含み、これは、約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む。医薬組成物は、本明細書に記載される通り、少なくとも1つの薬学的に許容される担体も含み得る。
【実施例】
【0095】
本発明の様々な実施形態は、説明のために提供される以下の実施例を参照してよりよく理解することができる。本発明は、本明細書に記載の実施例に限定されない。
【0096】
実施例1:化合物1双性イオンの調製
【化11】
精製水(8容量)をアルゴンで約30分ガス抜きした。L-ペニシラミン(1.6756mol.)を添加してから、温度を30℃未満に維持しながら約10分攪拌した。混合物を10±5℃まで冷却した。温度を20℃未満に維持しながら、脱ガス水(2容量)中の水酸化ナトリウム(3.3512mol)の冷却した溶液を上記の塊にゆっくりと添加した後、30℃未満で2-クロロベンゾオキサゾール(1.8431mol)をゆっくりと添加した。完全な添加後、反応塊を周囲温度に到達させてから、周囲温度で8h以上にわたり攪拌した。反応の完了後、反応混合物を10±5℃まで冷却し、イソ-プロピルアルコール(10容量)で希釈し、30℃未満で2N水性塩酸を滴下することによりpH4.3~4.6まで酸性化した。この溶液を5±5℃で約16h攪拌した。濾過により固体を単離し、イソ-プロピルアルコール(3容量)で洗浄した後、乾燥させて、白色の固体として双性イオンを取得した(302g、67.7%)。
【0097】
実施例2:化合物1双性イオンからの化合物1の調製
【化12】
双性イオンをイソ-プロピルアルコール(17.5容量)に添加して、5±5℃に冷却した。イソ-プロピルアルコール中の新たに調製した2M HCl(双性イオンに関して1.05当量)を10℃未満で添加した。混合物を約15分攪拌し、透明な溶液を不活性雰囲気下で濾過した。5±5℃で濾過物を16h以上攪拌した。混合物を30℃未満で約3容量まで濃縮し、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を添加(5容量)し、5±5℃で20h以上維持した。形成された固体をろ過により単離し、MTBE(3容量)で洗浄した。単離した固体を50±5℃で約12h真空棚段乾燥器内で乾燥させて、結晶性の白色の固体として化合物1を取得した。
【0098】
実施例3:(R)-2-((2-ヒドロキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸の代替的合成
des-HCl化合物1(即ち化合物1のHCl付加塩を欠失している)は、スキーム4に従って調製することができる。
【化13】
【0099】
(i)N-(2-メトキシフェニル)シアンアミド(2)
【化14】
アセトニトリル(90mL)中の1-(2-メトキシフェニル)チオ尿素(1)(5.00g、27.44mmol)の攪拌及び氷冷懸濁液に水性アンモニア(25%、90mL)を添加した。ジアセトキシヨードベンゼン(10.60g、32.92mmol)を10分の期間にわたって少量ずつ添加した。反応混合物を室温で4h攪拌した後、沈殿した硫黄を濾過した。濾過物をその初期容量の約50%まで濃縮し、酢酸エチルで抽出した(3×20mL)。酢酸エチル層を水(2×30mL)、次に塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水固体Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濾過物を減圧下で濃縮した。得られた残留物は、石油エーテル/エチルエーテル(1:1)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、N-(2-メトキシフェニル)-シアンアミド(2)(3.33g、82%収率)を取得した。300MHz
1H-NMR(CDCl
3,ppm):7.08(ddd,J=7.5,1.9,0.5Hz,1H)7.04(ddd,J=7.5,7.5,1.9Hz)6.98(ddd,J=7.5,7.5,1.7Hz)6.88(dd,J=7.5,1.7Hz)6.26(s,1H)3.88(s,3H).ESI-MS(m/z):149[M+H]
+.
【0100】
(ii)((R)-2-((2-メトキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸(3)の調製
【化15】
脱イオン水/アセトニトリル(20mL/20mL)中のN-(2-メトキシフェニル)シアンアミド(2)(1.00g、6.75mmol)及びL-ペニシラミン(1.21g、8.10mmol)の混合物をアルゴン雰囲気下で還流させながら2h加熱した。次に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣を逆相クロマトグラフィーにより精製して、(R)-2-((2-メトキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸(3)(0.92g、49%収率)を取得した。300MHz
1H-NMR(CD
3OD,ppm):7.43-7.33(m,2H)7.15(dd,J=8.3,1.1Hz,1H)7.03(ddd,J=7.7,7.7,1.2Hz)4.42(s,1H)3.91(s,3H)1.77(s,3H)1.60(s,3H).ESI-MS(m/z):281[M+H]
+.
【0101】
(iii)(R)-2-((2-ヒドロキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸(4)の調製
【化16】
三臭化ホウ素(BBr
3)(2.19mL、12.84mmol)を、CH
2Cl
2(20mL)中の(R)-2-((2-メトキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸(3)(360mg、1.28mmol)の溶液に0℃で添加した。反応混合物を周囲温度で3h攪拌した後、水(2mL)を添加し、得られた懸濁液を10分攪拌した。得られた沈殿物を濾過し、除去した。濾過物を蒸発させ、逆相クロマトグラフィーにより精製して、(R)-2-((2-ヒドロキシフェニル)アミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸(4)(210mg、64%収率)を得た。300MHz
1H-NMR(CD
3OD,ppm):6.94-6.86(m,2H)6.82-6.77(m,1H)6.73(ddd,J=7.5,7.5,1.5Hz)4.19(s,1H)3.91 1.68(s,3H)1.49(s,3H).ESI-MS(m/z):267[M+H]
+.
【0102】
実施例4:非晶質化合物1
化合物1の非晶質形態は、以下のように調製することもできる:(R)-2-(2-ヒドロキシフェニルアミノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸一塩酸塩(化合物1、200mg)をtert-ブタノール:水混合物(1:1比、40容量、8ml)にRTで溶解させた。溶液を濾過して、潜在的な種晶を除去し、濾過した溶液をドライアイス及びアセトン浴上の丸底フラスコ内で凍結させた。次に、サンプルを凍結乾燥のために配置した。凍結乾燥後に回収した固体(非晶質化合物1である)のXPRDを
図10に示す。
【0103】
実施例5:化合物1のバッチの分析試験
化合物1の調製のための出発材料は、市販のものから入手可能であり、使用前に合格判定基準が満たされていることを確認するためにこれらを試験する。出発材料(L)-ペニシラミン及び2-クロロベンゾオキサゾールの規格を表6に記載する。
【0104】
【0105】
個体への投与に好適であり、且つ本明細書に記載の方法に従って調製された化合物1のバッチを純度について分析した。
【0106】
【0107】
【0108】
実施例6:化合物Iの試験で使用された分析方法
分析方法は、様々な実施形態において、以下に記載する装置及びパラメータを用いて実施した。試験は、USP(米国薬局方)に属する方法及び規格に従い、個体への投与に好適なバッチ化合物1に対して行われた。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法は、不純物の量など、表9に記載のパラメータの1つ又は複数を有する化合物1を生成する。
【0117】
【0118】
【0119】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法に従って生成される化合物1は、不純物の量を含めて、表10に記載される分析パラメータの1つ以上を有する。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
様々な実施形態では、本明細書に記載される方法に従って生成される化合物1は、不純物の量を含めて、表11又は表12に記載される分析パラメータの1つ又は複数を有する。
【0127】
使用される用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語ではなく、そうした用語及び表現の使用には、表示及び記載される特徴のあらゆる均等物又はその部分を排除する意図はなく、むしろ様々な変更形態が本発明の実施形態の範囲内で可能であることが認識される。従って、本発明は、特定の実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示されるが、本明細書に開示される概念の変更形態及び改変形態は、当業者によって講じられ得ること並びにこうした変更形態及び改変形態は、本発明の実施形態の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0128】
実施形態の列挙
下記の例示的な実施形態を提供するが、これらの番号付けが重要さのレベルを示すものと解釈すべきではない。
【0129】
実施形態1は、式I
【化17】
の化合物を製造する方法を提供し、この方法は、
【化18】
の構造を有するアミン化合物を、
【化19】
と塩基及び第1の溶媒の存在下で反応させて、式II:
【化20】
の中間生成物を形成するステップ;及び中間生成物を酸及び第2の溶媒と接触させて、式Iの化合物を形成するステップを含む。
【0130】
実施形態2は、塩基がアルカリ金属水酸化物を含む、実施形態1に記載の方法を提供する。
【0131】
実施形態3は、アルカリ金属水酸化物が、LiOH、NaOH、KOH及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施形態1~2のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0132】
実施形態4は、アルカリ金属水酸化物がNaOHである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0133】
実施形態5は、第1の溶媒が極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0134】
実施形態6は、第1の溶媒が極性プロトン性溶媒である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0135】
実施形態7は、第1の溶媒が水である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0136】
実施形態8は、式IIの中間生成物が酸及び第2の溶媒との接触前に単離される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0137】
実施形態9は、酸が無機酸又は有機酸である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0138】
実施形態10は、酸が無機酸である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0139】
実施形態11は、酸が塩酸(HCl)である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0140】
実施形態12は、式Iの化合物が少なくとも約98%のエナンチオマー純度を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0141】
実施形態13は、式Iの化合物は、約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0142】
実施形態14は、式Iの化合物が、約0.010%~約0.020%w/wのBO-Imp-1と、約0.002%~約0.004%w/wのBO-Imp-5とを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0143】
実施形態15は、式I:
【化21】
の化合物であって、約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO、BO-Imp-1、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5及びCmp1 Imp-3からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む化合物を提供する。
【0144】
実施形態16は、約0.010%~約0.020%w/wのBO-Imp-1と、約0.002%~約0.004%w/wのBO-Imp-5とを含む、実施形態15に記載の化合物を提供する。
【0145】
実施形態17は、約0.01%~約0.10%w/wのBO-Imp-1と、約0.05%~約0.3%w/wのCmp1 Imp-3とを含む、実施形態15~16のいずれか1つに記載の化合物を提供する。
【0146】
実施形態18は、少なくとも約98%のエナンチオマー純度を有する、実施形態15~17のいずれか1つに記載の化合物を提供する。
【0147】
実施形態19は、実施形態15~18のいずれか1つに記載の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0148】
実施形態20は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、実施形態19に記載の医薬組成物を提供する。
【0149】
実施形態21は、式I:
【化22】
の化合物の結晶形態であって、CuK
α線を使用して測定されたとき、X線粉末回析(XPRD)を約2~約42°2θで収集される場合に9.6、15.2、18.0、19.4、23.0及び31.4の近似ピーク位置(°2θ±0.2)を含むXPRDパターンによって特徴付けられる結晶形態を提供する。
【0150】
実施形態22は、9.6、15.2、15.8、17.5、18.0、19.4、21.9、23.0、24.5、25.1、26.4及び31.4の近似ピーク位置(°2θ±0.2)を含むXPRDパターンによって特徴付けられる、実施形態21に記載の結晶形態を提供する。
【0151】
実施形態23は、0.05%w/w未満の、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4、BO-Imp-5のそれぞれを含む、実施形態15~18のいずれか1つに記載の化合物を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
の化合物
、及び、組成物の全量に基づき約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO
(2-クロロベンゾオキサゾール)、BO-Imp-1
(2-ヒドロキシベンゾオキサゾール)、BO-Imp-2
(2’H-[2,3’-ビ-1,3-ベンゾオキサゾール]-2’-オン)、BO-Imp-3
(2-アミノフェノール)、BO-Imp-4
(2-[ビス(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)アミノ]フェノール)、BO-Imp-5
(2-[(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)アミノ]フェノール)及びCmp1 Imp-3
(プロパン-2-イル(4R)-2-(2-ヒドロキシアニリノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾール-4-カルボキシレート)からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む、
組成物。
【請求項2】
約0.010%~約0.020%w/wのBO-Imp-1と、約0.002%~約0.004%w/wのBO-Imp-5とを含む、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
約0.01%~約0.10%w/wのBO-Imp-1と、約0.05%~約0.3%w/wのCmp Imp-3とを含む、請求項1に記載の
組成物。
【請求項4】
0.05%w/w未満の、BO-Imp-2、BO-Imp-3、BO-Imp-4及びBO-Imp-5のそれぞれを含む、請求項
3に記載の
組成物。
【請求項5】
少なくとも約98%のエナンチオマー純度を有する、請求項
1に記載の
組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の
組成物を含む医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
有痛性糖尿病性神経障害又は術後疼痛の治療に用いられる、請求項6又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
式I:
【化6】
の化合物の結
晶であって、CuK
α線を使用して測定されたとき、X線粉末回析(XPRD)が約2~約42°2θで収集される場合に9.6、15.2、18.0、19.4、23.0及び31.4
のピーク位置(°2θ±0.2)を含むXPRDパターンによって特徴付けられる結
晶。
【請求項10】
前記結晶が、9.6、15.2、15.8、17.5、18.0、19.4、21.9、23.0、24.5、25.1、26.4及び31.4
のピーク位置(°2θ±0.2)を含むXPRDパターンによって特徴付けられる、請求項
9に記載の結
晶。
【請求項11】
請求項9に記載の結晶を含む、有痛性糖尿病性神経障害又は術後疼痛の治療に用いられる医薬組成物。
【請求項12】
約0.0001%~約0.30%w/wの、2-Cl-BO(2-クロロベンゾオキサゾール)、BO-Imp-1(2-ヒドロキシベンゾオキサゾール)、BO-Imp-2(2’H-[2,3’-ビ-1,3-ベンゾオキサゾール]-2’-オン)、BO-Imp-3(2-アミノフェノール)、BO-Imp-4(2-[ビス(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)アミノ]フェノール)、BO-Imp-5(2-[(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)アミノ]フェノール)及びCmp1 Imp-3(プロパン-2-イル(4R)-2-(2-ヒドロキシアニリノ)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾール-4-カルボキシレート)からなる群から選択される少なくとも1つの不純物を含む、式I:
【化7】
の化合物の原薬。
【国際調査報告】