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特表2022-531708少なくともアミトリプチリンを含む水性ゲルの形態の局所用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(54)【発明の名称】少なくともアミトリプチリンを含む水性ゲルの形態の局所用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/06 20060101AFI20220701BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20220701BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220701BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61K9/06
A61P25/04
A61P35/00
A61K31/135
A61K47/38
A61K47/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565993
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2021058518
(87)【国際公開番号】W WO2021204634
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】2003425
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519382570
【氏名又は名称】アルゴセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】プリンチペ ニコラ パオラ
(72)【発明者】
【氏名】ララマン フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ティロロワ ステファーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC27
4C076DD38
4C076EE32
4C076FF36
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA10
4C206FA07
4C206KA06
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA14
4C206ZA08
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、水性ゲルの形態の局所用医薬組成物に関しており、前記組成物は、少なくとも、前記組成物の総質量に対して10~30質量%の含有量のアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩、並びに水を含んでいる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用のための水性ゲルの形態の医薬組成物であって、
(i)少なくともアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩と、
(ii)水と
を含み、アミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の総量は、前記組成物の総質量に対して10~30質量%である、組成物。
【請求項2】
アミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の総量が、前記組成物の総質量に対して10~25質量%、好ましくは10~20質量%、いっそうより好ましくは10~15質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種類のセルロースポリマーを含み、好ましくは、その構造中にC10-C30脂肪側鎖を有さない少なくとも1種類のセルロースポリマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記セルロースポリマー(複数可)が、5000~1500000、好ましくは50000~800000、より好ましくは400000~800000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記セルロースポリマー(複数可)が、セルロースエーテルから;好ましくは非イオン性セルロースエーテルから;より好ましくは(a)メチルセルロース及びエチルセルロースなどの(C1-C4)アルキルセルロース、(b)ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの(ポリ)ヒドロキシル(C1-C4)アルキルセルロース、(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース及びヒドロキシブチルメチルセルロースなどの混合セルロース(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキル-(C1-C4)アルキルセルロース、並びに(d)これらの混合物から選択され;いっそうより好ましくは、前記組成物は、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの少なくとも1種類の(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキルセルロースを含み;より良いものとしては、前記組成物は、少なくともヒドロキシエチルセルロースを含むことを特徴とする、請求項3又は4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
セルロースポリマー(複数可)の総量が、前記組成物の総質量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~2.5質量%であることを特徴とする、請求項3、4又は5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種類のC2-C8ポリオールを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
2-C8ポリオール(複数可)が、C3-C6ポリオール、エチレングリコール、及びこれらの混合物から;好ましくは、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ペンタン-1,2-ジオール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、及びこれらの化合物の混合物から選択され;より好ましくは、前記組成物が、少なくともプロピレングリコールを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
2-C8ポリオール(複数可)の総量が、前記組成物の総質量に対して0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、いっそうより好ましくは1~6質量%、なおより良くは3~6質量%であることを特徴とする、請求項7又は8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
温度20℃及び大気圧での粘度が、400~2500mPa.s;好ましくは900~2000mPa.s;より好ましくは1000~1500mPa.sであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
金属イオン封鎖剤及び/又は抗酸化剤を含まないことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
pHが3~8;好ましくは4~7;より好ましくは5~6であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
水の含量が、前記組成物の総質量に対して65質量%以上であり、好ましくは65~90質量%;より好ましくは70~90質量%、いっそうより好ましくは75~85質量%であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
脂肪物質を含まないことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
薬物として使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
神経因性疼痛の治療における局所使用のための;好ましくは、化学療法誘発性末梢神経因性疼痛、疱疹後神経因性疼痛、糖尿病性神経因性疼痛の治療における局所使用のための;より好ましくは、化学療法誘発性末梢神経因性疼痛の治療における局所使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
化学療法セッションを含む癌の治療において使用するためのものであって、化学療法により誘発され得る神経因性疼痛を治癒させる又は予防するために化学療法セッション間に局所投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
先端紅痛症の治療における局所使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、組成物の総質量に対して10~30質量%の含量のアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩、並びに水を含む、水性ゲルの形態の局所用医薬組成物に関する。
【0002】
末梢神経因性疼痛は、刺激に対して極度に敏感となり、刺激が無くてもインパルスを生じ得る末梢神経終末又は侵害受容器などの神経構造の損傷により引き起こされる。
この損傷は外傷、糖尿病、帯状疱疹及び進行癌などの疾患、化学療法処置又は化学火傷のような多くの理由により引き起こされることがある。末梢神経損傷は、継続的な自発性表在痛(灼熱感若しくは有痛性冷感)又は深部痛(圧迫感又は締め付けられるような感覚)、感覚減退を伴う若しくは臨床検査の際の反対側の痛覚過敏(有害な刺激に対する応答の増強)時の発作性疼痛(電撃、刺すような痛み)、異痛症(非有痛性刺激により引き起こされる疼痛)又は更には痛覚過敏(通常は侵害受容されない反復刺激時の持続的疼痛)の存在を特徴とする病状に至り得る。神経障害は痛覚異常、無痛覚、そう痒症などの感覚徴候にも関連する場合がある。
【0003】
化学療法誘発性神経障害は特に多く、生活に支障が出、治療が困難である。化学療法誘発性神経障害は用量依存的である。末梢神経損傷は、化学療法毒性に関連する大多数の神経学的損傷を表す。化学療法誘発性神経障害は、軸策又は脱髄に対する直接的な有害損傷の結果であり、血液毒性後の最も多い制限因子と言える。
よって、化学療法誘発性神経障害の場合には、化学療法の用量が低減されるか、又は治療が中断され、患者の機会の実損となる。
よって、神経障害は、小線維の損傷を含むことが多いアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン)、大線維を侵す可能性が高い白金誘導体(オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン)、抗トポイソメラーゼ(VP16)、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ)、レナリドマイドなどのサリドマイド誘導体、タキソール又はタキソテールなどのタキサンによる治療の後に見られてきた。神経障害は又、例えば抗CD20、抗CD30、抗CD38などの免疫療法処置の後にも見られる。
これらの化学療法誘発性疼痛はよく知られていない機序に従って振る舞い、幾人かの著者は、知覚性軸策、脱髄又は例えばパクリタキセル及びビンクリスチンの作用部位であるミトコンドリアへの損傷に関連するカルシウム代謝の変化により引き起こされると考えている。
よって、タキサンは脊髄神経節、微小管、ミトコンドリア及び神経終末に関与し、白金塩はミエリンとイオンチャネルに関与し、アルカロイドはミエリンと微小管に関与することが知られている。
【0004】
これらの神経因性疼痛は通常の鎮痛治療に不応である場合が多く、用量の低減又は更には化学療法の中断に至る。現在のところ、神経因性疼痛は、抗鬱薬(アミトリプチリン、デュロキセチン、ベンラファキシンなど)及び/又は抗癲癇薬(ガバペンチン、プレガバリン)を含む経口処置によって管理されている。残念ながら、これらの全身処置は、重い副作用(めまい、眠気、記憶喪失、口渇又は更には尿閉、悪心など)を引き起こし、コンプライアンスの低さ及び満足のいかない疼痛管理につながる。
これらの疼痛は、主として手足の末端に影響を及ぼし、機能障害を有する患者の生活の質に相当な変化をもたらし、歩行不能、握ることができない、睡眠の変化、鬱病症候群の出現又は更には自殺傾向に拡大し得る。又社会生活及び職業生活にも極めて重大な影響があり得る。
疼痛の強度は、疼痛がシンプル・ナンバー・スケール(0~10に格付けされた疼痛)で7/10超に値する患者では重度と記載される場合が多い。
疱疹後神経障害は様々な起源を持ち、一般に帯状疱疹ウイルスンによる過去の感染により引き起こされる神経損傷に関連する。損傷した神経は、もはや皮膚から脳にシグナルを正確に伝達することができない。
【0005】
三環系抗鬱薬は、1950年代の初めに発見された化学化合物である。これらの薬剤は、様々な精神障害、特に、鬱病、パニック発作、強迫性障害、夜尿症、双極性障害及び多動性を治療するために広く使用されている。これらの薬剤は又、鎮痛薬としても使用される。
これらの化合物は一般に、経口投与される。
アミトリプチリンは、1960年に発見された三環系抗鬱薬であり、大鬱、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害(GAD)、社会恐怖(SP)、パニック障害、線維筋痛症、慢性筋骨格疼痛、パーキンソン病の無動症、カタプレキシー、片頭痛、パーキンソン病、更年期の血管運動神経症状、夜尿症、月経前不快気分障害(PMDD)、双極性障害、神経性過食症、強迫性障害(OCD)及び神経因性疼痛の第一選択治療としてよく推奨されてきた。
これまでに患者は一般に疼痛の軽減用の鎮痛薬により処置されていた。主として経口投与が好ましかった。
しかしながら、アミトリプチリンの経口投与は、全ての三環系抗鬱薬の場合と同様に、抗コリン作動作用に関連した(動脈性低血圧症、洞性又は上室性頻脈、まれにVAD、視朦、口渇、皮膚紅潮、急性尿閉又は通過遅延のリスク)、抗αアドレナリン作動薬に関連した(鎮静、低血圧症、性交不能のリスク)、交感神経反射の中枢的阻害剤又は更には膜安定剤に関連した(催不整脈作用)いくつかの副作用を有する。特に、アミトリプチリンの不良な恐ろしい作用はQT間隔延長であり、適切に監視されなかった場合は患者の死に至りことがある。
特に、アミトリプチリンが糖尿病性神経因性疼痛の治療のために経口投与される場合には、鎮静、起立性低血圧及び抗コリン作性作用の症例が報告されている(特に、Kiani et al,Iran J Pharm.Res.2015 Fall;14(4):1263-8参照)。長期間、患者は、仕事又は日常生活の質に著しい影響を持つ記憶の問題、集中が困難であることを訴える。
更に、経口服用されたアミトリプチリンの有効性は遅く(製剤の有効性が認められ始めるまでに5~7日の処置を必要とし、患者によって異なり、不完全である。従って、これらの欠点を克服するために鎮痛薬の組合せを使用する必要がある場合が多い。
加えて、経口三環系抗鬱薬は、種々の精神障害に使用されることから、患者の評判が悪い場合が多い。
【0006】
経口処置の問題を鑑みて、局所的処置のための試みがなされてきた。神経因性疼痛のための局所用アミトリプチリンの有効性は実証されていない。特に、Thomson et al “Systematic review of topical amitriptyline for the treatment of neuropathic pain”,J.Clin.Pharm.Therm.2015,40, 496-503の文献では、管理臨床試験が局所用アミトリプチリンは神経因性疼痛の治療に有効ではないことを示すと結論付けられている。使用された最大用量は、多発性硬化症に罹患している患者及び神経因性疼痛に罹患している患者には5%である。又、文献“A phase III randomized, placebo-controlled study of topical amitriptyline and ketamine for chemotherapy-induced peripherical neuropathy”,Support Care Cancer,2014 July;22(7):1807-1814では、2質量%のケタミンと4質量%のアミトリプチリンを含む局所用組成物は化学療法後神経因性疼痛を治療するために有効ではないと結論付けられている。
よって、神経因性疼痛、特に、化学療法により誘発されるものには満足のいく治療はない。更に、前述の第III相臨床試験において報告されているように、疱疹後又は糖尿病性神経因性疼痛を有する患者において成功していると思われるケタミン及びアミトリプチリンを組み合わせた治療は神経因性疼痛を治癒させることができていない。
加えて、これらの疼痛の生活に支障がある性質にもかかわらず、検討された用量は経口でも局所でも5%を超えることはなかった。
更に、四肢(手足)の神経障害に苦しむ患者は、損傷のある又は荒れて乾燥した皮膚を有する場合が多い。
【0007】
同時に、Algotherapeutixによりこれまでに出願された国際出願WO2018/197307並びに文献“Rossignol, J. and al. High concentration of topical amitriptyline for treating chemotherapy-induced neuropathies.Support Care Cancer 27,3053-3059(2019)”は、末梢神経因性疼痛の治療における局所使用のための10~30質量%のアミトリプチリンを含むクリーム形態の医薬組成物の有効性を実証している。クリームは一般に全ての有効成分のより良好な経皮取り込み及び可溶化を提供することから、有効成分の局所投与に最もよく使用される剤形である。しかしながら、クリームの形態の、より正確には水中油型エマルションの形態の出願WO2018/197307の組成物の物理化学的安定性は、特に、薬物として使用するには満足のいくものではない。
アミトリプチリン塩酸塩は、塩として水に可溶の両親媒性分子である。驚くことに、これらの電解質の存在は、油球の表面変化をマスキングすることにより、又、油/水界面の平衡を乱すことにより、水中油型エマルションを不安定化していることが見出された。この不安定化は、エマルションの相転移及びやがて油と水の完全な分離を招いた。同時に、化学反応が生じて、最初は白色であったエマルションが黄化する。この相転移及び黄化は、特に薬物として組成物の市場に参入する可能性に関しては問題がある。
【発明の概要】
【0008】
よって、時間が経っても安定で、疼痛の治療、特に、末梢神経障害、特に、化学療法により誘発される神経障害の治療における皮膚適用として有効なアミトリプチリン系組成物を提供する真の必要性がある。
【0009】
驚くべき方法で、(i)少なくともアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩(ここで、アミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の総含量は、組成物の総質量に対して10~30質量%である)、並びに(ii)水を含む局所適用用水性ゲルの形態の医薬組成物が特に時間が経っても安定で、疼痛、特に、化学療法誘発性末梢神経因性(若しくはCIPN)疼痛、疱疹後神経因性(若しくはPHN)疼痛又は糖尿病性末梢神経因性(若しくはDPN)疼痛の有効な治療を可能とすることが見出された。
よって、本発明は、(i)少なくともアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩(ここで、アミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の総含量は、組成物の総質量に対して10~30質量%である)、並びに(ii)水を含む、局所適用用の水性ゲルの形態の医薬組成物に関する。
特に、本発明による組成物は、周囲温度(25℃)だけでなくより高い貯蔵温度(例えば45℃)であっても、時間が経っても良好な安定性を有する。
又、本発明による水性ゲルの形態の医薬組成物は、皮膚を経たアミトリプチリンの浸透を助け、従って、良好な治療効力を達成することも示された。
本発明による組成物は又、好ましくは、組成物の総質量に対して10~25質量%、特に、10~20質量%のアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の濃度で改善されたバイオアベイラビリティを有する。実際に、高濃度では、アミトリプチリンは、それ自体再配列して、バイオアベイラビリティを制限する可能性のある凝集塊の形成をもたらす傾向がある。
加えて、本発明による組成物は、組成物の良好な局所忍容性を増進する(アレルギーのリスクが低く、刺激作用のリスクが低い)少数の賦形剤を含む。
本発明による組成物は又、良好な使用特性を有し、すなわち、本組成物は、半透明、無臭で手触りがよい。特に、本発明による組成物は、出願WO2018/197307に開示されているエマルションに比べてべたつきがない。
更に、本発明による組成物は、水中油型エマルションとは異なり、ポンプボトルで極めて容易に投与される。これらのポンプボトルは、有効成分の投与用量の良好な再現性及び正確さの確保のために特に有用である。
又、特に驚くべき方法で、本発明による局所適用用の水性ゲルの形態の医薬組成物は先端紅痛症の治療に有効であったことも見出された。
先端紅痛症は、紅斑、主として両下肢を発熱及び灼熱痛を伴って左右対称に侵す希な発作性のアクロシアニン症である。多くの科学文献がこの希少疾患を記載しており、特に、“Leroux MB. Erythromelalgia: a cutaneous manifestation of neuropathy? An Bras Dermatol.2018;93(1):86-94”がある。
本発明による組成物の局所適用(皮膚を介する)は、先端紅痛症及び神経因性疼痛、より詳しくは、化学療法誘発性末梢神経因性、疱疹後及び糖尿病性疼痛などの末梢神経因性疼痛の有効な治療をもたらす。
アミトリプチリンに基づく組成物は、疼痛を緩和するだけでなく、皮膚をより健康とすることが見出された。
更に、本発明による組成物の局所適用は、副作用が有ったとしても少ない。特に、組成物の塗布部位には皮膚刺激作用がない。
本発明は又、薬物として使用するための、より詳しくは、末梢神経因性疼痛などの神経因性疼痛の治療における局所使用のための本発明による組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の他の目的、特徴、態様及び利点は、以下に、又、以下の実施例により、更に明瞭に記載される。
本明細書において、特に断りのない限り、
「少なくとも1つの」という表現は、「1又は複数の」という表現に等しく、これに置き換えることができる。
「…~…(is between…and…)」という表現は、「…~…(from…to…)」という表現に等しく、これに置き換えることができ、限界値が含まれることを意味する。
「ポリオキシアルキレン化」という表現は、本発明の意味の範囲内でモチーフ-(O-アルキル)n-に相当し、ここで、nは2から200まで、好ましくは2から40まで、より好ましくは2から20まで変わる整数である。
「ポリオキシエチレン化」という表現は、本発明の意味の範囲内でモチーフ-(O-CH2CH2n-に相当し、ここで、nは、ここで、nは2から200まで、好ましくは2から40まで、より好ましくは2から20まで変わる整数である。
【0011】
医薬本発明による組成物は水性ゲルの形態である。
臨床データ交換標準コンソーシアム(Clinical Data Interchange Standards Consortium)(CDISC)によれば、医薬ゲルは、溶液又はコロイド分散物に剛性を与えるゲル化剤を含有する半固体投与形である。ゲルは懸濁粒子を含有し得る。
本発明の意味の範囲内で、本発明によるゲルの形態の組成物は、400~2500mPa.sの粘度(20℃及び大気圧で)を有する粘稠な水性組成物を含む。
好ましくは、20℃及び大気圧での本発明によるゲルの形態の組成物の粘度は、400~2500mPa.s;より好ましくは900~2000mPa.s;いっそうより好ましくは1000~1500mPa.sである。
例として、本発明による水性ゲル組成物の粘度は、ブルックフィールドLV粘度計の手段により、30mL容器、高さ40mm、直径35mmにて、温度20.0℃+/-2.0℃で、50rpm(毎分回転数)の速度で回転するモバイルナンバー63を用いて決定される。粘度計が較正されたところで、モバイルをボトルの底部から1センチメートルまでゲル中に浸漬する。測定値が安定した際に粘度を取得する。
本発明による組成物は、水中油型エマルション又は油中水型エマルションなどのエマルションの形態ではない。言い換えれば、本発明による組成物は油相を含まない。
よって、本発明による組成物はクリームの形態ではない。
有利には、本発明による組成物は脂肪物質を含まない。本発明の意味の範囲内で、「脂肪物質」は、25℃及び大気圧(760mmHg、すなわち、1.013.105Pa)で水に不溶性である、すなわち、水中溶解度が5%未満、好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満の有機化合物である。脂肪物質の例としては、ワックス、炭化水素、9~40個の炭素原子を含む脂肪アルコール、9~40個の炭素原子を含む脂肪エステル、好ましくは9~40個の炭素原子を含む脂肪エーテル、シリコーン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
アミトリプチリン
本発明による組成物は、少なくともアミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩を含む。
本発明によれば、アミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の総含量は、組成物の総質量に対して10~30質量%である。
【0013】
アミトリプチリンは下式(I)を有する。
【化1】
【0014】
本発明の文脈で、「アミトリプチリンの薬学上許容される塩」は、医薬組成物に適合する、すなわち、ヒトへの投与のために意図される塩を意味する。特に、アミトリプチリンの薬学上許容される塩は、水和物、溶媒和物、塩酸塩などの酸塩及びアミトリプチリン包接体である。
アミトリプチリンの最も好ましい塩は、アミトリプチリン塩酸塩である。
好ましくは、アミトリプチリン及び/又はその薬学上許容される塩の総含量は、組成物の総質量に対して10~25質量%、より好ましくは10~20質量%、いっそうより好ましくは10~15質量%である。
より好ましくは、アミトリプチリン塩酸塩の総含量は、組成物の総質量に対して10~25質量%、いっそうより好ましくは10~20質量%、なおより良くは10~15質量%である。
特に、驚くべき方法で、アミトリプチリン及び/又はアミトリプチリン塩酸塩などのその薬学上許容される塩の総含量は、本発明による組成物の総質量に対して10~25質量%、より好ましくは10~20質量%である場合、本発明による組成物のアミトリプチリンのバイオアベイラビリティは著しく改善されることが見出された。
実際に、高濃度のアミトリプチリンはそれ自体再配列して、バイオアベイラビリティを制限する可能性のある凝集塊の形成をもたらす傾向があることが認められている。
【0015】

本発明による組成物は、水を含む。
好ましくは、水の総含量は、組成物の総質量に対して65質量%以上、より好ましくは65~90質量%;いっそうより好ましくは70~90質量%、なおより良くは75~85質量%である。
【0016】
セルロース系ポリマー
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種類のセルロース系ポリマーを含む。
本発明による「セルロース系」ポリマーは、その構造中にβ-1,4結合により連結されたグルコース残基の鎖を有する、置換型又は非置換型のいずれの多糖化合物も意味し、非置換セルロースに加え、セルロース誘導体は陰イオン性、陽イオン性、両性又は非イオン性である。
よって、本発明に従って使用可能なセルロース系ポリマーは、微晶質形態及び置換セルロースを含め、非置換セルロースから選択することができる。
より好ましくは、本発明に従って使用可能なセルロース系ポリマーは、それらの構造中にC10-C30脂肪側鎖を含まない。
好ましくは、本発明に従って使用可能なセルロース系ポリマー(複数可)は、5000~1500000、より好ましくは50000~800000、いっそうより好ましくは400000~800000の平均分子量を有する。
本発明によるセルロース系ポリマーの中で、セルロースエーテル、セルロースエステル及びセルロースエステルエーテルを区別することができる。
セルロースエステルとしては、無機セルロースエステル(硝酸セルロースエステル、硫酸セルロースエステル又はリン酸セルロースエステルなど)、有機セルロースエステル(一酢酸セルロースエステル、三酢酸セルロースエステル、アミドプロピオン酸セルロースエステル、酢酸酪酸セルロースエステル、酢酸プロピオン酸セルロースエステル又は酢酸トリメリト酸セルロースエステルなど)並びに混合有機/無機セルロースエステル、例えば、酢酸酪酸硫酸セルロースエステル及び酢酸プロピオン酸硫酸セルロースエステルが挙げられる。セルロースエーテルエステルとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート及びエチルセルローススルフェートが挙げられる。
【0017】
非イオン性セルロースエーテルとしては、(C1-C4)アルキルセルロース、例えば、メチルセルロース及びエチルセルロース(例えば、DOW CHEMICALのEthocel standard 100 Premium);(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキルセルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えば、AQUALONにより供給されるNatrosol 250 HHR)及びヒドロキシプロピルセルロース(例えば、AQUALONのKlucel EF);混合セルロース(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキル-(C1-C4)アルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(例えば、DOW CHEMICALのMethocel E4M)、ヒドロキシエチル-メチルセルロース、ヒドロキシエチル-エチルセルロース(例えば、AKZO NOBELのBermocoll E 481 FQ)及びヒドロキシブチル-メチルセルロースが挙げられる。
【0018】
陰イオンセルロースエーテルとしては、(ポリ)カルボキシ(C1-C4)アルキルセルロース及びこれらの塩が挙げられる。これには例として、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース(例えば、AQUALON社のBlanose 7M)及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びそれらのナトリウム塩が挙げられる。
陽イオンセルロースエーテルとしては、陽イオンセルロースの誘導体、例えば、セルロースコポリマー又は水溶性第四級アンモニウムモノマーをグラフトした、特に米国特許第4131576号に記載されるセルロース誘導体、例えば、(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキルセルロース、例えば、特に、メタクリロイルエチル-トリメチルアンモニウム、メタクリルミドプロピル-トリメチルアンモニウム、ジメチル-ジアリルアンモニウムの塩をグラフトしたヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-又はヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。この定義で市販されている製品はより詳しくは、National Starch社により「Celquat(登録商標)L200」及び「Celquat(登録商標)H 100」の名称で販売されている製品がある。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、セルロース系ポリマーは、その構造中にC10-C30脂肪側鎖を含まないセルロース系ポリマー(複数可)から;より好ましくはセルロースエーテルから;いっそうより好ましくは非イオン性セルロースエーテルから;なおより良くは(a)メチルセルロース及びエチルセルロースなどの(C1-C4)アルキルセルロース、(b)ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキルセルロース、(c)ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、ヒドロキシプロピル-エチルセルロース、ヒドロキシエチル-メチルセルロース、ヒドロキシエチル-エチルセルロース及びヒドロキシブチル-メチルセルロースなどの混合セルロース(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキル-(C1-C4)アルキルセルロース、並びに(d)これらの混合物から選択される。
より好ましくは、本発明による組成物は、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの少なくとも1種類の(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキルセルロース;なおより良くは少なくともヒドロキシエチルセルロースを含む。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類のセルロース系ポリマーを含む場合、セルロース系ポリマー(複数可)の総含量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~2.5質量%である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類のセルロース系ポリマーを含む場合、(ポリ)ヒドロキシ(C1-C4)アルキルセルロース(複数可)の総含量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~2.5質量%である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類のセルロース系ポリマーを含む場合、ヒドロキシエチルセルロースの総含量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~2.5質量%である。
【0020】
ポリオール
好ましくは、本発明による組成物は、少なくともC2-C8ポリオールを含む。
「C2-C8ポリオール」は、本発明の意味の範囲内で、場合により1又は複数の酸素原子が挿入され、異なる炭素原子により保持される少なくとも2個の遊離ヒドロキシル基(-OH)を有するC2-C8炭化水素鎖からなる有機化合物であり、この化合物は環式又は非環式、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和であってよく、周囲温度(25℃)及び大気圧(1.013.105Pa)で液体状態である。
好ましくは、本発明によるC2-C8ポリオール(複数可)は非環式、非芳香族である。
本発明によるC2-C8ポリオールは、それらの構造中に2~8個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、より好ましくは2~5個の炭素原子を含む。
より詳しくは、本発明に従って使用されるポリオール又はポリオールは、2~10個のヒドロキシ基、より好ましくは2~5個のヒドロキシ基、いっそうより好ましくは2~3個のヒドロキシ基を含む。
好ましい様式では、本発明に従って使用されるC2-C8ポリオール(複数可)は、C3-C6ポリオール、エチレングリコール、及びこれらの混合物から選択される。
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に従って使用されるC2-C8ポリオール(複数可)は、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ペンタン-1,2-ジオール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、及びこれらの化合物の混合物から選択され;より好ましくは、この組成物は、少なくともプロピレングリコールを含む。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類のC2-C8ポリオールを含む場合、C2-C8ポリオール(複数可)の総含量は、組成物の総質量に対して0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、いっそうより好ましくは1~6質量%、なおより良くは3~6質量%である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類のC2-C8ポリオールを含む場合、プロピレングリコールの総含量は、組成物の総質量に対して0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、いっそうより好ましくは1~6質量%、なおより良くは3~6質量%である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類のセルロース系ポリマーと少なくとも1種類のC2-C8ポリオールを含む場合、一方のC2-C8ポリオール(複数可)の総含量と他方のセルロース系ポリマー(複数可)の総含量の質量比は、0.01~150、より好ましくは0.1~20、いっそうより好ましくは0.4~6、より好ましくは1~6、更には1.2~6.の範囲である。
有利には、本発明による組成物が、少なくとも1種類のセルロース系ポリマーと少なくとも1種類のC2-C8ポリオールを含む場合、セルロース系ポリマーの質量による総含量は、C2-C8ポリオールの質量による総含量より厳格に低い。
【0021】
界面活性剤
本発明による組成物は場合により少なくとも1種類の界面活性剤を含んでよい。
本発明に従って使用可能な界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び/又は双性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物から選択することができる。
より好ましくは、本発明に従って使用可能な界面活性剤(複数可)は、非イオン性界面活性剤から選択される。
本発明に従って使用可能な非イオン性界面活性剤は、アルキルポリグルコシド(APG)、オキシアルキルレン化グリセロールエステル、オキシアルキルレン化脂肪酸及びソルビタンエステル、ポリオキシアルキルレン化脂肪酸エステル(特に、ポリオキシエチレン化及び/又はポリオキシプロピレン化)(場合により、例えばArlacel 165の名称でICI社から入手可能な混合物PEG-100ステアラート/グリセリルステアラートなどの脂肪酸とグリセロールエステルと組み合わせたもの)、オキシアルキルレン化糖エステル、及びこれらの混合物から選択することができる。
アルキルポリグルコシドとしては、6~30個の炭素原子、好ましくは8~16個の炭素原子を含むアルキル基を含有し、且つ、好ましくは1、2~3単位のグルコシドを含むグルコシド基を含有するものが挙げられる。アルキルポリグルコシドは、例えば、デシルグルコシド(アルキル-C9/C11-ポリグルコシド(1.4))、例えば、Kao Chemicals社からMydol 10(登録商標)の名称で入手可能な製品又はCognis社からPlantacare 2000 UP(登録商標)の名称で入手可能な製品;カプリリル/カプリルグルコシド、例えば、Cognis社からPlantacare KE 3711(登録商標)の名称で入手可能な製品;ラウリルグルコシド、例えば、Cognis社からPlantacare 1200 UP(登録商標)の名称で入手可能な製品;ココグルコシド、例えば、Cognis社からPlantacare 818 UP(登録商標)の名称で入手可能な製品;カプリリルグルコシド、例えば、Cognis社からPlantacare 810 UP(登録商標)の名称で入手可能な製品;及びこれらの混合物から選択することができる。
オキシアルキルレン化グリセロールエステルとしては、特に、グリセリル及び脂肪酸エステルのポリオキシエチレン化誘導体並びにこれらの水素化誘導体が挙げられる。これらのオキシアルキルレン化グリセロールエステルは、例えば、水素化及びオキシエチレン化グリセリル及び脂肪酸エステル、例えば、Goldschmidt社からRewoderm LI-S 80の名称で入手可能なPEG-200水素化グリセリルパルマート;オキシエチレン化グリセリルココアート、例えば、Goldschmidt社からTegosoft GCの名称で入手可能なPEG-7グリセリルココアート、及びGoldschmidt社からRewoderm LI-63の名称で入手可能なPEG-30グリセリルココアート;オキシエチレン化グリセリルステアラート;及びこれらの混合物から選択することができる。
オキシアルキルレン化糖のエステルは、特に、脂肪酸及び糖エステルのポリエチレングリコールエーテルである。これらのオキシアルキルレン化糖エステルは、例えば、オキシエチレン化グルコースエステル、例えば、Amerchol社からGlucamate DOE 120の名称で入手可能なPEG-120メチルグルコースジオレアートから選択することができる。
好ましくは、本発明に従って使用される非イオン性界面活性剤のアルキレンオキシドのモル数は、2~400;より好ましくは4~250と様々である。
好ましくは、本発明による組成物は界面活性剤を含まない。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物は少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤;より好ましくは、ポリオキシアルキルレン化グリセロールエステルから選択される非イオン性界面活性剤;いっそうより好ましくは、グリセリルエステル及び水素化ポリオキシエチレン化脂肪酸、例えば、PEG-200水素化グリセリルパルマート、ポリオキシエチレン化グリセリルココアート、例えば、PEG-7グリセリルココアート及びPEG-30グリセリルココアート、ポリオキシエチレン化グリセリルステアラート、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含む。
いっそうより好ましくは、この実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種類のポリオキシエチレン化グリセリルココアートを含む。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類の界面活性剤を含む場合、界面活性剤(複数可)の総含量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~4質量%である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類の界面活性剤を含む場合、非イオン性界面活性剤(複数可)の総含量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~4質量%である。
好ましくは、本発明による組成物が少なくとも1種類の界面活性剤を含む場合、(ポリ)オキシアルキルレン化グリセロールエステル(複数可)の総含量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~4質量%である。
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は抗酸化剤を含まない。
本発明の変形形態によれば、組成物は更に、少なくとも1種類の抗酸化剤;より好ましくは、トコフェロール及びそのエステル、例えば、トコフェロール酢酸エステル、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、及びこれらの混合物から選択されるものを含む。
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は金属封鎖剤を含まない。
本発明の変形形態によれば、組成物は更に、少なくとも1種類の金属封鎖剤;より好ましくは、(a)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(二ナトリウムEDTA)、(b)ホスホン酸誘導体及びその塩、例えば、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン)酸、ジエチレン-トリアミンペンタ(メチレンホスホン)酸、(c)ポリアミノ化ポリマー、例えば、ポリアルキレンポリアミン及びその誘導体、特に、ポリエチレンイミン、(d)金属封鎖活性を有するデンドリマー、(e)スペルミン、スペルミジン、トランスフェリン、フェリチンなどのタンパク質、(f)フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、ニトリロ酢酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸などのカルボン酸、(g)メシル酸デフェロキサミンメシレート、及びこれらの混合物から選択されるものを含む。
「金属封鎖剤」(「キレート剤」とも呼ばれる)の定義は当業者に周知であり、金属イオンとキレートを形成し得る化合物又は化合物の混合物を刺す。キレートは、化合物(金属イオン封鎖剤又はキレート剤)が金属イオンと配位結合されている無機錯体であり、すなわち、それは金属イオンと1又は複数の結合を形成している(金属イオンを含む環の形成)。
金属イオン封鎖剤(又はキレート)剤は一般に、金属イオンとの結合の形成を可能とする少なくとも2個の電子供与原子を含む。
【0023】
本発明の別の特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種類の金属封鎖剤及び少なくとも1種類の抗酸化剤を含む。
本発明の別の変形形態によれば、組成物は、脂肪物質、金属封鎖剤及び/又は抗酸化剤を含まない。
【0024】
好ましくは、本発明による組成物のpHは、3~8、より好ましくは4~7、なおより良くは5~6である。
これらの組成物のpHは、通常使用されるアルカリ化剤又は酸性化剤の手段によって所望の値に調整することができる。アルカリ化剤の例としては、アンモニア、アルカノールアミン、無機又は有機水酸化物が挙げられる。酸性化剤としては、例えば、無機又は有機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、スルホン酸が挙げられる。
【0025】
本発明による組成物は又、1又は複数の芳香剤、バッファー、色素、抗菌剤及び/又は抗真菌剤などの、医薬で通常使用される添加剤を含有してもよい。
抗菌剤としては、パラベンが好ましく使用され、より好ましくはメチルパラベンである。
これらの点在は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して0~20質量%の量で存在してよい。
当業者は、本発明の組成物の特性に害がないように、これらの任意選択の添加剤及びそれらの量を選択するのに注意を払うであろう。
【0026】
本発明の特に好ましい実施形態において、局所適用のための水性ゲルの形態の医薬組成物は、
組成物の総質量に対して10~30質量%、好ましくは10~25質量%、より好ましくは10~20質量%、いっそうより好ましくは10~15質量%のアミトリプチリン又はその薬学上許容される塩、
組成物の総質量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~2.5質量%の少なくとも1種類の上記のようなセルロース系ポリマー、
組成物の総質量に対して0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、いっそうより好ましくは1~6質量%、なおより良くは3~6質量%の少なくとも1種類の上記のようなC2-C8ポリオール、
場合により、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~4質量%の少なくとも1種類の上記のような非イオン性界面活性剤、
場合により、上記のような、0~3質量%の少なくとも1種類の金属封鎖剤及び/又は少なくとも1種類の抗酸化剤、
場合により、pHを3~8、好ましくは4~7、より好ましくは5~6に維持するための、0~1質量%の1又は複数の上記のようなpH調整剤、
組成物の総質量に対して総含量65質量%以上、好ましくは65~90質量%;より好ましくは70~90質量%、いっそうより好ましくは75~85質量%の水
を含む。
この実施形態の変形形態によれば、組成物は、脂肪物質、界面活性剤、金属封鎖剤及び/又は抗酸化剤を含まない。
【0027】
本発明の特に好ましい実施形態において、局所適用のための水性ゲルの形態の医薬組成物は、
組成物の総質量に対して10~30質量%、好ましくは10~25質量%、より好ましくは10~20質量%、いっそうより好ましくは10~15質量%、アミトリプチリン又はその薬学上許容される塩、
組成物の総質量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~2.5質量%の少なくとも1種類の上記のような非イオン性セルロースエーテル、好ましくは平均分子量が50000~800000のもの、
組成物の総質量に対して0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、いっそうより好ましくは1~6質量%、なおより良くは3~6質量%の、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ペンタン-1,2-ジオール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、及びこれらの化合物の混合物から選択される少なくとも1種類のC2-C8ポリオール、
場合により、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、いっそうより好ましくは1~4質量%の少なくとも1種類の上記のようなオキシアルキルレン化グリセロールエステル、
場合により、上記のような、0~3質量%の少なくとも1種類の金属封鎖剤及び/又は少なくとも1種類の抗酸化剤、
場合により、pHを3~8、好ましくは4~7、より好ましくは5~6に維持するための0~1質量%の1又は複数の上記のようなpH調整剤、
組成物の総質量に対して総含量65質量%以上、好ましくは65~90質量%;より好ましくは70~90質量%、いっそうより好ましくは75~85質量%の水
を含む。
この実施形態の変形形態によれば、組成物は、脂肪物質、界面活性剤、金属封鎖剤及び/又は抗酸化剤を含まない。
【0028】
これらの特に好ましい実施形態による組成物は、先端紅痛症及び末梢神経因性疼痛、特に、化学療法誘発性末梢神経因性疼痛の治療において特に有効である。
この実施形態によるこれらの組成物は、特に安定である。これらの組成物に対して、周囲温度(25℃)及び加速化温度(40℃)条件で6か月の安定性試験を行った。これらの試験の結果は、これらの組成物が外観又は化学的に(有効成分の用量及び分解産物)変化しなかったということである。
本発明による好ましい組成物に対して又、強酸度、強アルカリ度、熱、光及び酸化条件下での強制分解を行った。見られた分解産物は許容限界の範囲内に留まった。
【0029】
本発明の主題は又、薬物として使用するための上記のような本発明による組成物である。
本発明の主題は又、神経因性疼痛の治療における局所使用のための;好ましくは、末梢神経因性疼痛の治療における局所使用のための;より好ましくは、化学療法誘発性末梢神経因性疼痛、疱疹後神経因性疼痛、糖尿病性神経因性疼痛の治療における局所使用のための;いっそうより好ましくは、化学療法誘発性末梢神経因性疼痛の治療における局所使用のための上記のような本発明による組成物である。
本発明の主題は又、先端紅痛症の治療における局所使用のための上記のような本発明による組成物である。
本発明は又、化学療法セッションを含む癌の治療において使用するための上記のような本発明による組成物に関し、この組成物は、化学療法により誘発され得る神経因性疼痛、特に、末梢疼痛を治癒させる又は予防するために化学療法セッション間に局所投与される。
本発明は又、化学療法により誘発され得る神経因性疼痛、特に、末梢疼痛の治癒又は予防における使用のための上記のような本発明による組成物に関する。
以下、実施例により、本発明による組成物及びこの組成物の利点を説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明の限定を表すものではなく、単に本発明を説明する。
【実施例
【0030】
実施例1:
水性ゲルの形態の配合剤A(発明品)及びクリームの形態の配合剤B(比較品)における比較ex vivoアミトリプチリン経皮吸収試験
以下の水性ゲル(組成物A)を下表に挙げた成分から調製した。量は質量%で表す。
【表1】
【0031】
組成物B(クリーム)は、組成物Bの総質量に対して10質量%のアミトリプチリン塩酸塩及び90質量%Excipial Hydrocreme(登録商標)(Galderma社から入手可能)を含む。
組成物A及びBのそれぞれをヒト皮膚の別個のサンプルに塗布した。各組成物について試験は、3名の異なるドナーからの皮膚3サンプル(9サンプルとなる)で3回反復した。
皮膚サンプルをフランツセルに入れ、表面温度が32℃±1℃となるまで加熱した。
組成物A又はBを各皮膚サンプル上にセル当たり10mg(5mg/cm2皮膚相当)の割合でスパチュラにて均一に拡げる。
皮膚サンプルを塗布16時間後にすすぐ。
各皮膚サンプルを、ピンセットを用いて吸収紙に置いた(真皮を転倒させる)。
角質層を、粘着性ストリップを用いて除去した。
角質層の除去後、サンプルに孔を開けた。その後、表皮を真皮から分離する。それらのそれぞれを別のバイアルに入れる。
その後、種々のサンプルを抽出した。
この浸透特性は、Rossignol et al.により上述の文献に記載された試験において臨床上有効であることが示された。
これらの抽出の結果を下表にまとめる。
【表2】
【0032】
また、アミトリプチリンの全身通過量は投与した用量の0.1%未満であったことも認められた。このことはアミトリプチリンの全身取り込みが無視できるものであることを意味する。
本発明による水性ゲルAは、アミトリプチリンの満足のいく皮膚浸透特性を備え、比較クリームBで見られたアミトリプチリンの皮膚浸透特性と同様であることに留意されたい。
また、組成物Aから得られるバイオアベイラビリティと組成物Bから得られるバイオアベイラビリティは同等であることにも留意されたい。
【0033】
実施例2:
本発明による水性ゲルの形態の別の医薬組成物(組成物A’)を下表に挙げた成分から調製した。量は質量%で表す。
【表3】

本発明による水性ゲルA’は、皮膚へのアミトリプチリンの満足のいく浸透特性及びアミトリプチリンの満足のいくバイオアベイラビリティを備えていることが認められた。
【0034】
実施例3:
水性ゲルの形態の配合剤C(発明品)及びクリームの形態の配合剤B(比較品)の安定性試験
以下の水性ゲル(組成物C)を下表に挙げた成分から調製した。量は質量%で表す。
【表4】
【0035】
組成物B(クリーム)は、組成物Bの総質量に対して10質量%のアミトリプチリン塩酸塩及び90質量%Excipial Hydrocreme(登録商標)(Galderma社から入手可能)を含む。
組成物B及びCのそれぞれを40℃の炉に入れた。
その後、組成物の安定性を経時的(T0、炉に入れた時間;T24時間、炉に入れてから24時間後;及びT3月、炉に入れてから3か月後)に、視覚的に評価した。
結果を下表にまとめる。
【表5】
【0036】
本発明による水性ゲルとしての組成物Cでは、40℃で3か月後に離漿は見られなかった。
水中油型エマルションとしての比較組成物Bの相転移は、40℃でわずか24時間後に見られた。
更に、本発明による組成物Cには、40℃で6か月の全安定性試験を行った。
結果を以下の表6及び7にまとめる。
【表6】

【表7】
【0037】
本発明による水性ゲルの形態の組成物Cでは、40℃で6か月後に離漿は見られなかった。
また、行った各試験に関して大きな変動は見られなかった。
よって、本発明による水性ゲルの形態の組成物の良好な物理化学安定性を示すことができる。
【国際調査報告】