(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】電極上のフラッシュを減少させる方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/05 20060101AFI20220705BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20220705BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A61N1/05
A61L31/04 110
A61L31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563630
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 US2020031797
(87)【国際公開番号】W WO2020231729
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517155196
【氏名又は名称】ガルバニ バイオエレクトロニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エウ,シンディ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C081
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C081AC03
4C081BB04
4C081BC02
4C081CA211
4C081CA212
4C081CA271
4C081CA272
4C081CB012
4C081CB05
4C081CB051
4C081CB052
4C081CE08
4C081DC04
4C081EA06
(57)【要約】
電極アセンブリ(20)を作製するために使用する方法は、材料(22)の第1層上に電極(24)を塗布するステップと、電極にリード(23)をレーザ溶接するステップと、電極およびリードの上に接着バックフィル(26)を塗布するステップと、接着バックフィルおよび第1層の一部の上に材料(28)の第2層を塗布して、電極と第2層の間の漏れ経路を防止するステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経調節のための移植可能な電極アセンブリ(20)を製造するために使用する方法であって、
孔(23)が形成された材料の第1層(22)を形成するステップ;
前記材料の第1層の孔内へ電極(24)を位置決めするステップ;
前記電極へ電気リード(30)を接続するステップ;
前記電極、前記電気リード接続部、および、前記第1層の一部の上に、前記電極と前記孔との間の間隙をシールするのに十分なバックフィル材料(26)を塗布するステップ;
前記バックフィル材料の上に材料の第2層(28)を塗布するステップ;
を有する方法。
【請求項2】
前記材料の第1層または前記材料の第2層のうちの1つ以上が、加熱および加圧されたポリマー材料の第1ショットおよび第2ショットによって形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1ショットによって形成される前記第1層、または前記第2ショットによって形成される前記第2層のいずれかの材料は、シリコーンを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記材料の第1層または前記材料の第2層のうちの1つ以上は、生体適合性熱可塑性エラストマーを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記バックフィル材料は、接着性シリコーンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記材料の第1層と前記孔との組み合わせは、各電極を所望の位置に保持する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
接続する前に、前記電極を接続に適した位置に保持するために、前記電極の縁部と前記孔との間に第2バックフィル材料を適用するステップをさらに有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第2バックフィル材料は、接着性シリコーンを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記バックフィル材料を適用する前に、前記第2バックフィル材料を硬化させるステップをさらに有する、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記材料の第2層を適用する前に、前記バックフィル材料を硬化させるステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記材料の第2層を適用するステップは、高圧注入を含む、請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記バックフィル材料は、前記電極と前記材料の第2層との間の漏れ経路を遮断し、
前記材料の第2層は、加熱され加圧されたポリマー材料、または、加熱され加圧された可撓性熱可塑性エラストマーとのうちの1つである、
請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記材料の第1層は、前記材料の第2層とは異なる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記材料の第1層は第1硬度を有し、前記材料の第2層は第2硬度を有し、前記第1硬度と前記第2硬度は異なる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記電極に電気リードを接続するステップは、可撓性リードの一端を前記電極に接続するステップと、前記可撓性リードの反対側の端部をリード本体に接続するステップとを有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記可撓性リードは、マイクロコイルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記電極に電気リードを接続するステップは、相互接続リードの一端を前記電極に接続するステップと、前記相互接続リードの反対側の端部をリード本体に接続するステップとを有する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
電気リードを前記電極に接続するステップは、可撓性リードの一端を電極に接続し、前記可撓性リードの反対側の端部を相互接続リードに接続するステップを有する、請求項1から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記相互接続リードは、第2電極に対して接続された第2可撓性リードに対して接続される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記相互接続リードは、リード本体に接続される、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記電極に電気リードを接続するステップは、内部に形成された孔を含む材料の第1層を形成するステップの前に、または、前記材料の第1層の孔に電極を配置するステップの前に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記第1層は、前記第2層よりも硬い、請求項1記載の方法。
【請求項23】
記バックフィルは前記第1層および前記第2層よりも柔らかい、請求項1記載の方法。
【請求項24】
電極アセンブリであって、
内部に孔が形成された材料の第1層;
前記孔内に嵌合するように構成されたリードに対して接続可能な電極;
前記電極、前記リードの露出部分、および、前記電極と前記リードとの間の電気的接続の上に塗布されたバックフィル;
前記バックフィルおよび前記第1層の一部の上に塗布された材料の第2層;
を備え、
前記バックフィルは、前記電極と前記第1層との間の開口部を埋め、それによって、前記電極の露出表面の一部を覆う可能性がある、前記電極と前記第2層との間の漏れ経路を遮断する、
電極アセンブリ。
【請求項25】
神経調節のための電極アセンブリであって、
開口部を含む材料の第1層;
少なくとも部分的に前記開口部に設けられたリードに対して接続可能な電極;
前記電極を覆って設けられたバックフィルであって、前記電極の縁部、および、前記電極と前記リードとの間の電気的接続の少なくとも一部を覆うバックフィル;
前記バックフィルおよび前記第1層の一部を覆って設けられた材料の第2層であって、前記バックフィルは、前記電極と前記第1層との間の間隙を遮断して、前記電極のターゲット接触面と前記第2層との間の漏れ経路を減少させる、第2層;
を備える電極アセンブリ。
【請求項26】
前記開口部は、前記電極を位置決めするのに適している、請求項24または25記載の電極アセンブリ。
【請求項27】
前記電極は、溶接、圧着、または導電性接着剤のうちの少なくとも1つによって前記リードに対して接続される、請求項24から26のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項28】
前記電気的接続は、溶接、圧着、または導電性接着剤のうちの少なくとも1つである、請求項24から27のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項29】
前記バックフィルは接着シリコーンを含む、請求項24から28のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項30】
前記第2層は、高圧印加を含む、請求項24から29のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項31】
前記第1層は、前記電極を所望の位置に保持するように構成される、請求項24から30のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項32】
前記バックフィルは前記電極の周辺縁部を覆う、請求項24から31のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項33】
前記材料の第1層、前記バックフィル、および前記材料の第2層は、シリコーン、ポリマー、またはあ生体適合性熱可塑性エラストマーのうちの1つ以上る、で請求項24から32のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項34】
前記材料の第1層と前記材料の第2層は同じである、請求項33記載の電極アセンブリ。
【請求項35】
前記材料の第1層と前記材料の第2層は異なる、請求項33記載の電極アセンブリ。
【請求項36】
前記材料の第1層は第1硬度を有し、前記材料の第2層は第2硬度を有し、前記第1硬度と前記第2硬度は異なる、請求項35記載の電極アセンブリ。
【請求項37】
前記電気的接続の前に、前記電極を所望の位置に配置するために、前記電極の縁部および前記孔に塗布される第2接着性バックフィル材料をさらに備え、任意選択的に、前記電気的接続は前記溶接を適用することを含む、請求項24から37のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項38】
前記接着性バックフィルは、前記第2接着性バックフィル材料が硬化した後に適用される、請求項37記載の電極アセンブリ。
【請求項39】
前記第2層は、前記バックフィルが硬化した後に適用される、請求項24から38のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項40】
前記電極に対して接続される前記リードは、前記電極に対して溶接された一端と、リード本体に対して接続された反対端とを有する可撓性リードである、請求項24から39のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項41】
前記可撓性リードは、マイクロコイルである、請求項40記載の電極アセンブリ。
【請求項42】
前記電極に対して接続される前記リードは、前記電極に対して溶接された一端と、リード本体に対してあ接続された反対端とを有する相互接続リードある、で請求項24から41のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項43】
前記電極に対して接続される前記リードは、一端が前記電極に対して接続され、反対端が相互接続リードに対して接続された可撓性リードである、請求項24から41のいずれか一項記載の電極アセンブリ。
【請求項44】
前記相互接続リードは、第2電極に対して接続された第2可撓性リードに対して接続されている、請求項43記載の電極アセンブリ。
【請求項45】
前記相互接続リードは、リード本体に対して接続される、請求項43または44記載の電極アセンブリ。
【請求項46】
前記第1層は、前記第2層よりも硬い、請求項24から45のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【請求項47】
前記バックフィルは、前記第1層および前記第2層よりも柔らかい、請求項24から46のいずれか1項記載の電極アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2019年5月10日に出願された米国仮出願第62/846,546号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示する開示は一般に、電極の分野に関し、より詳細には神経調節の分野で使用される電極に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
電極の電気化学的性能は、神経調節および他の用途に使用するためのリードおよびカフの最適化のための最優先分野の1つである。神経調節において、高性能電極は、治療を安全かつ有効に届けることにつながる。電極が高性能であることを確実にするためには、材料の選択および開発よりも多くのことが必要である。電極材料およびその電荷注入能力が標的治療のために最適化されたとしても、リードは、電荷注入表面が汚染物質または他の非導電性製造残留物によってブロックされる場合、目標電気化学的性能を達成することができない場合がある。電極の電荷注入表面上にリードの製造および組み立てプロセスからのシリコーンフラッシュが存在するシナリオにおいては、電気化学的性能が大幅に犠牲になり、リードからリードへと変動する可能性があり、これにより、治療のために最適化するようにシステムを調整することを困難にする。
【0004】
この問題に対処するための既知の解決策には欠点がある。1つの解決策は、薄膜技術を使用して、電極を直接基板上に集積し、成形工程を完全に省略するものである。このアプローチの欠点は、薄膜材料が十分に柔らかくなく、慢性インプラント用途としてはシリコーンほど十分な実績がないことである。さらに、この解決策は、神経インターフェースデバイス(例えば、カフまたはパドル電極)の3次元フォームファクタを微調整して患者の大きく変動する解剖学的構造および患者背景に適合するようにするための製造自由度が、より少ない。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らによる詳細な欠陥分析により、電極が成形プロセスからのシリコーンフラッシュによって部分的に覆われ得ることを明らかにした。電極表面を覆うこれらのシリコーン「フラッシュ」は、治療が送達される有効表面積を減少させる。シリコンフラッシュは、製造中に加圧され加熱されたシリコーンが電極のエッジの周囲に漏れる結果として発生する可能性がある。
【0006】
本開示は上記課題に対処し、本発明の電極アセンブリおよび電極アセンブリを作製する方法を記載する。1実施形態によれば、電極アセンブリを製造するために使用する方法は以下を有する:位置決め補助窓を有する成形シリコーンの第1ショット上に電極を組み立てるステップ;インプラントグレード接着剤で電極を適所にタグ付けし、レーザ溶接または抵抗溶接を介して電極を中間導電性ワイヤまたはコイルに電気的に接続するステップ;電極上に接着性バックフィルを塗布し、相互接続するステップ;接着性バックフィルおよび電極上に材料の第2ショットを塗布するステップ。
【0007】
1つの特定の実施形態において、第1ショット、第2ショット、および接着性バックフィルはすべてシリコーンから構成されてもよいが、異なる材料を各ショットおよびバックフィルについて使用してもよい。さらに、第1ショットは電極または電極パッドをその所望の位置に、それらのプロファイルに適合するように形成されたブラインドポケットで保持することができる。高圧成形中に射出される第2ショットは、接着性バックフィルが硬化した後に適用されてもよい。接着性バックフィル材料を適用することにより、金属電極と第1ショットとの間のギャップを封止し、シリコーンが第2ショット成形から亀裂を通って組織に面する表面上の電極の上部に達することを防止してもよい。
【0008】
1実施形態において、神経調節のための埋め込み型電極アセンブリを作製する際に使用するための方法が提供される。同方法は以下を有する:内部に孔が形成された材料の第1層を形成するステップ;電極を材料の第1層内の孔に配置するステップ;電気リードを電極に接続するステップ;電極、電気リード接続部、および第1層の一部分の上に、電極と孔との間のギャップをシールするのに十分なバックフィル材料を適用するステップ;バックフィル材料の上に材料の第2層を適用するステップ。
【0009】
1実施形態において、以下を備える電極アセンブリが提供される:内部に孔が形成された材料の第1層;孔内に嵌合するように構成されたリードに接続可能な電極;前記電極、前記リードの露出部分、および前記電極と前記リードとの間の電気的接続の上に塗布されたバックフィル;前記バックフィルのおよび前記第1層の一部の上に塗布された材料の第2層。前記埋め戻しは、前記電極と前記第1層との間の開口を埋め、それによって、前記電極と前記第2層との間の、電極の露出表面の一部を覆うことができる漏洩経路を遮断する。
【0010】
1実施形態において、神経調節のための電極アセンブリが提供される。電極アセンブリは以下を備える:開口部を有する材料の第1層;開口部内に少なくとも部分的に設けられたリード線に接続可能な電極;電極上に設けられ、電極の縁部および電極とリード線との間の電気接続の少なくとも一部を覆うバックフィル;バックフィルおよび第1層の一部の上に設けられた材料の第2層。バックフィルは、電極と第1層との間の開口部を遮断して、電極のターゲット接触面と第2層との間の漏れ経路を低減する。
【0011】
本開示の詳細な特徴は、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】神経束の周りに掛けられた例示的な埋め込み型デバイスの断面図である。
【
図1B】本開示に従って作製された電極アセンブリの平面図および断面図である。
【
図2】本開示による電極アセンブリおよび導電性ワイヤの平面図および断面図である。
【
図3】本開示による電極アセンブリを作製するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、埋め込み型デバイスの使用によって、静脈内または静脈外で神経を刺激するためのシステムおよびデバイスに関する。埋め込み型デバイスは、リードの遠位端に向かって配置され、または神経インターフェースデバイス内に配置された、1以上の電極を有する。リードはカフまたは平坦なパドルリードを含み、血管、例えば、動脈、静脈または神経、または神経束の内部または周囲に埋め込まれ、これにより電極が表面組織と接触する。神経の刺激は、ニューロン、神経細胞、神経束、または、ニューロン、神経細胞、神経束、その他の標的位置を興奮させる神経系の他の標的位置に対して電気(例えば、電気パルス)を送達することによって定義される。
【0014】
図1Aは、可撓性の生体適合性材料から形成された埋め込み型装置10を含むシステムの例を示す。生体適合性材料は例えば、生体適合性熱可塑性エラストマー、軟質ポリマー基材などであり、ソース12(
図1には示されていない)によって埋め込み可能装置内に誘導された電流を使用して神経を刺激するために使用することができる。
図1Aに示す埋め込み型デバイス10は、神経または血管(図示せず)の周りに巻かれたカフの形態の血管外デバイスである。埋め込み型デバイス10は単に1例として提供されており、多くの異なる形状、構成、サイズなどで提供されてもよい。例えば、埋め込み型デバイスは、標的の周りに完全に巻き付けられる必要はなく、パドル状であってもよく、血管外および血管内の両方の適用において、または神経組織を刺激するための他の構成において使用することができる。
【0015】
埋め込み型デバイス10は1つ以上の電極12、センサ、またはそのアレイを含んでもよく、各アレイは1つ以上の電極またはセンサのセットを含む。いくつかの実施形態において、各電極12は埋め込み型デバイス10に近接する神経を刺激するために電界を放出するように構成されてもよい。電極アレイ内の電極12の各セットはこの目的のために、1つ以上の個々の電極を備えてもよい。
【0016】
各電極12(またはその電極のセットなど)は、実質的に導電性材料から高密度の可撓性相互接続(図示せず)となるように作られたマイクロコイルリードなどの導電性ワイヤまたはコイルリード30(
図2)に対して結合することができる。いくつかの実施形態において、例えば、導電性ワイヤまたはコイルリード30は白金、ステンレス鋼(例えば、MP35Nまたはチタン)などの金属から実質的に(例えば、90重量パーセントまたは95重量パーセント)構成されてもよい。金などの他の金属を使用してもよい。
図1に示されるように、電極12は、他の電極に対して直列および/または並列に接続して複数のチャネルを提供し、これにより、放出される電場のパラメータ(例えば、大きさ、方向、位置など)の選択性を高めてもよい。いくつかの実施形態において、この構成は、神経のより標的化された効率的な刺激を提供することができる。
【0017】
電極12は、必要に応じて、または所望に応じて、リード線30を介して、埋め込み型デバイス10の1つまたは複数の他の構成要素(図示せず)に結合することができる。例えば、神経インターフェースデバイスのための主リード線本体、制御回路、バッテリ、容量性ストレージ、および/または他の充電可能なストレージ要素などである。1実施形態において、各電極12がリード30に接続(すなわち、溶接または他の適切な技術)され、次いで、神経インターフェースデバイス10の可撓性相互接続リード(図示せず)に接続される。相互接続リードはリード本体に直接接続することができ、または必要に応じて直列または並列のいずれかでリード30間に電気的接続を提供することができる。リード30は、マイクロコイルまたは他の適切な柔軟リードであってもよい。相互接続リードは、リード本体に直接接続することもでき(および/または代替的に)、または所望に応じて直列または並列のいずれかで電極12間に電気接続を提供することもできる。相互接続リードは、マイクロコイルまたは他の適切な柔軟リードであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、リード30はリード30および相互接続リードの両方を指す場合がある。他の実施形態において、リード30は相互接続リードのみから構成されてもよい。他の実施形態において、リード30が電極12間の相互接続リードのみから構成されてもよく、リード本体に接続可能なリード30の一部として相互接続リードから構成されてもよい。
【0018】
電極12は、埋め込み型デバイス10および/またはその周辺物に関連する物理的または時間的パラメータを測定するセンサまたはセンサのアレイであってもよい。例えば、1実施形態において、センサセットは2点間の電位を測定するためのセンサを含んでもよい。さらに、センサセットは、圧力、温度、時間、抵抗、コンダクタンス、電気/磁束などの他の特性を測定するための他のセンサを含んでもよい。センサセット内の各センサは、制御回路、電極12、エネルギー源等の埋め込み型装置10の他の構成要素に結合することができる。
【0019】
埋め込み型装置10の各構成要素は、基板が形成または固定された構成要素を支持するように、軟質ポリマー基板14内に形成または固定されてもよい。特定の実施形態において、基板14は、シリコーンなどの可撓性ポリマー材料の単一片を有してもよく、これにより、患者への移植およびその中での操作を容易にすることができる。いくつかの実施形態において、基板14は、種々の構成要素、例えば、電極12またはアレイ、センサ、およびワイヤまたはコイル30が層間に配置された材料の複数の層を含むことができる。1実施形態において、第1層は、加熱されたシリコーンが加圧下で金型に射出される、すなわち「ショット」される金型内で形成されてもよい。第1ショット層の一連の孔は型によって形成されてもよく、または硬化してから切断して第1層となるようにしてもよい。孔が形成されると、1つまたは複数の電極を各孔に配置することができ、各電極は、典型的にはリードを電極の背面に溶接することによって、ワイヤまたはコイル30に接続される。電極およびリードが溶接されると、加熱され加圧された可撓性ポリマー材料の第2ショット層を電極の背面の上に配置して、第1ショット層と第2ショット層との間の電極をシールし、それぞれの孔内にそれらの位置を維持することができる。
【0020】
以下の方法は、上記の種類のシリコーンフラッシュを防止するのに一貫して有効であることが見出された。
図1Bは、
図1Aの線A‐Aに沿った断面である。
図1Bに示されるように、材料の第1層22は、例えばシリコーン、ポリマー、または生体適合性熱可塑性エラストマー材料、または生体適合性熱可塑性ポリウレタンの第1ショットである。材料の第1層22は1つ以上の孔23を含むように構成されてもよく、その各々は金属電極24を所望の位置に保持してもよい。電極24は、電極の前面側が第1層22の露出表面とほぼ同一平面上にあるように、孔23内に配置される。次に、シリコーン接着剤などの材料のバックフィル26(埋め戻し材料)を、熱または圧力を使用せずに、または少なくとも圧力を使用せずに、電極24の裏面上に重ねて、電極および第1層の一部の上にシールを形成し、それによって、電極24と第1層22との間の孔23の縁部の周りの残りの開口部を閉鎖することができる。次に、第1層と同様の材料の第2層28を、バックフィル26の上に適用することができる。
【0021】
バックフィル26は、第1層22および第2層28の硬度と比較して異なる硬度の材料を含むことができる。例えば、バックフィル26は、第1層22および第2層28と比較して、より柔らかい(またはより硬くない)材料を含んでもよい。
1例では、第1層22および第2層28の硬度は約50ショアA~90ショアA、好ましくは60~85ショアA、好ましくは70~80ショアAとすることができる。バックフィル26の硬度は≧30ショアA、好ましくは≧25ショアA、好ましくは≧20ショアA、好ましくは≧15ショア、好ましくは≧10ショア(例えば、ショアデュロメータを使用して測定される)とすることができる。
【0022】
1実施形態において、同じ材料の第1層および第2層を使用する代わりに、各層は異なる材料であってもよい。例えば、第1層はシリコーンまたはポリマー材料のより硬いデュロメータで作製され、これにより、金属電極が第1層を通って引き裂かれ、神経インターフェースデバイスが適用される神経血管束(NVB)が切り込まれる可能性がより低くなるようにしてもよい。第2層は異なる剛性を有する異なる材料、またはより好ましい組織反応を引き出すように、または神経インターフェースデバイスフォームファクタがより柔軟になるのを助けるように構成されたより低いデュロメータを有する同じ材料(シリコーン)であってもよい。これは、NVBに及ぼされる圧力を低下させ、それによって、機械的に誘発される組織損傷のリスクを低減するために有益である。異なる材料または剛性の2つの層が利用される場合、2つの層が制御不能に混合するのを防止することが望ましい。機械的弾性率分布の変動は、残留応力の蓄積によって予測不可能な方法で神経インターフェース装置が変形する可能性があるからである。2つの層の制御を改善することは、本開示に記載される製造方法を使用することによって達成できる。
【0023】
バックフィル26は
図2に示すように、電極24をリード30に接続した後に適用することができる。リード30はレーザ溶接または他の適切な技術を用いて電極24に接続され、上述のように、電極とリード本体(図示せず)または相互接続リードとの間に電気的接続を提供することができる。例えば、リードと電極との間の電気的接続としては、溶接(レーザまたは抵抗)、圧着、および導電性接着剤のうちの少なくとも1つを使用することができる。
【0024】
電極24へのリード接続部の上にバックフィル26を塗布することは、リード接続部を時間的にさらに固定する役割を果たすことができる。材料の第2層28は、バックフィル26が硬化された後にのみ適用されてもよい。
【0025】
図3を参照すると、本開示による電極アセンブリの製造方法は、S1~S6で示されるステップを含む。
【0026】
S1 32:例えば、シリコーンのような材料の第1ショットで型を満たすことによって、神経刺激デバイスの材料の第1層を作製して、第1層を形成する。第1層は、モールドによって形成されるか、またはモールドされた後に第1層から切り出される複数の孔を含んでもよい。
【0027】
S2 33: 1つ以上の電極を第1層の孔のそれぞれに配置する。
【0028】
S3 34:電極を溶接のために適所に保持するために、シリコーン接着剤などのバックフィル材料を、コイルの溶接がされない電極の縁部に沿って、各孔内の1つまたは複数の電極に塗布する。バックフィル材料は、少量で塗布されてもよい。湿気硬化またはUV硬化される接着剤製造業者の硬化プロファイルに従うことによって、バックフィル材料を確実に適切に硬化させする。
【0029】
S4 35:1つまたは複数の電極のそれぞれの裏面または相互接続点に、リードまたは同様のデバイスを溶接または他の方法で接続して、電極とリードとの間に物理的および電気的接続を形成する。
【0030】
S5 36:電極、リード、およびホールの間に完全なシールを形成するように、電極の裏面、および溶接された相互接続点または露出したリード、および第1層の一部の上にバックフィルを適用し、それによって、電極の裏面と前面との間の漏れ経路を防止する。S3に記載されているように、接着剤の適切な硬化を確実にする。
【0031】
S6 37:バックフィルが適用された第1層を型の中に配置し、電極の裏面上にシリコーン材料の第2ショットを適用して、神経刺激デバイスを完成させる。
【0032】
他の生体適合性ポリマーのような他の生体適合性材料をシリコーンの代わりに使用してもよい。同様に、異なる生体適合性材料が、シリコーン接着剤のみに対してバックフィルとして使用されてもよい。
【0033】
さらに、上記の製造ステップは1例として提示されているが、製造ステップのいくつかの順序は変更可能であることが当業者には理解されよう。例えば、ステップS2 33~ステップS5 36の順序は、電気リードを電極に接続するステップ(例えば、S4 35)が、バックフィル材料が適用される前(例えば、S3 34)、または電極が第1層(例えば、S2 33)の孔(電極位置決めウィンドウ)に配置される前、または第1層が作成される前(例えば、S1 32)となるように変更されてもよい。言い換えれば、電極が第1層の孔に配置される前、またはバックフィル材料が適用される前、または第1層が形成される前において、あらかじめ接続された(例えば、溶接された)電極および電気リードサブアセンブリを設けることができる。
【0034】
上記に加えて、または上記に代わるものとして、本教示と一致する以下の実施例を、以下の番号を付した条項に記載する。
【0035】
1. 神経調節のための移植可能な電極アセンブリ(20)を製造するために使用する方法であって、
孔(23)が形成された材料の第1層(22)を形成するステップ;
材料の前記第1層の前記孔内へ電極(24)を位置決めするステップ;
前記電極へ電気リード線(30)を接続するステップ;
前記電極、前記電気リード接続部、および前記第1層の一部の上に、前記電極と前記孔との間の間隙をシールするのに十分なバックフィル材料(26)を塗布するステップ;
前記バックフィル材料の上に第2層の材料(28)を塗布するステップ;
を有する方法。
【0036】
2.前記材料の第1層および前記材料の第2層のうちの1つまたは複数は、加熱および加圧されたポリマー材料の第1ショットおよび第2ショットによって形成される、条項1記載の方法。
【0037】
3.前記第1ショットによって形成された前記第1層または前記第2ショットによって形成された前記第2層のいずれかの材料が、シリコーンを含む、条項2記載の方法。
【0038】
4.前記材料の第1層および前記材料の第2層のうちの1つまたは複数が、生体適合性熱可塑性エラストマーを含む、条項2記載の方法。
【0039】
5.前記バックフィル材料が、接着性シリコーンを含む、条項1記載の方法。
【0040】
6.材料の前記第1層と前記孔との組み合わせが、各電極を所望の位置に保持する、条項1記載の方法。
【0041】
7.接続する前に、前記電極を接続のための所定の位置に保持するために、前記電極の縁部と前記孔との間に第2バックフィル材料を塗布するステップをさらに含む、条項6記載の方法。
【0042】
8.前記第2バックフィル材料が、接着性シリコーンを含む、条項7記載の方法。
【0043】
9.前記バックフィル材料を適用する前に、前記第2バックフィル材料を硬化させるステップをさらに含む、条項7記載の方法。
【0044】
10.前記第2材料層を適用する前に、前記バックフィル材料を硬化させるステップをさらに有する、条項1記載の方法。
【0045】
11.前記第2材料層を適用するステップは、高圧注入を含む、条項1記載の方法。
【0046】
12.前記バックフィル材料は、前記電極と前記第2層との間の漏れ経路を遮断し、前記第2層は、加熱および加圧されたポリマー材料または加熱および加圧された可撓性熱可塑性エラストマーのうちの1つである、条項1記載の方法。
【0047】
13.前記第1層は、前記第2層とは異なる、条項1記載の方法。
【0048】
14.前記第1層が第1硬度を有し、前記第2層が第2硬度を有し、前記第1硬度と前記第2硬度が異なる、条項1記載の方法。
【0049】
15.前記電極に電気リードを接続するステップは、可撓性リード線の一端を前記電極に接続し、前記可撓性リード線の反対側の端をリード本体に接続するステップを有する、条項1記載の方法。
【0050】
16.前記可撓性リード線は、マイクロコイルである、条項15記載の方法。
【0051】
17.前記電極に電気リードを接続するステップは、相互接続リードの一端を前記電極に接続し、前記相互接続リードの反対側の端をリード本体に接続するステップを有する、条項1記載の方法。
【0052】
18.前記電極に電気リードを接続するステップは、可撓性リード線の一端を前記電極に接続し、前記可撓性リード線の反対側の端を相互接続リード線に接続するステップを有する、条項1記載の方法。
【0053】
19.前記相互接続リードは、第2電極に接続された第2可撓性リードに接続される、条項18記載の方法。
【0054】
20.前記相互接続リードは、リード本体に接続される、条項18記載の方法。
【0055】
21.電極アセンブリであって、
孔が形成された材料の第1層;
孔の中に嵌まるように構成された電極;
前記電極に溶接されたリード線;
前記リードおよび溶接部の露出部分の上に塗布される接着性バックフィル;
前記接着性バックフィルおよび前記第1層の一部の上に塗布される材料の第2層;
を備え、
前記第1層は、前記電極を所望の位置に保持するように構成され;
前記第2層には高圧が印加され;
前記接着性バックフィルは、前記電極と前記第1層との間の開口を埋め戻し、それによって、前記電極の露出した表面の一部を覆うことができる前記電極と前記第2層との間の漏れ経路を遮断する、
電極アセンブリ。
【0056】
22.前記材料の第1層、前記バックフィル、および前記材料の第2層は、シリコーン、ポリマー、または生体適合性熱可塑性エラストマーのうちの1つまたは複数である、条項21記載の電極アセンブリ。
【0057】
23.前記第1材料層と前記第2材料層は同じである、条項22記載の電極アセンブリ。
【0058】
24.前記第1材料層と前記第2材料層が異なる、条項22記載の電極アセンブリ。
【0059】
25.前記材料の第1層が第1硬度を有し、前記材料の第2層が第2硬度を有し、前記第1硬度と前記第2硬度が異なる、条項24記載の電極アセンブリ。
【0060】
26.前記溶接を適用する前に、前記電極が所望の位置になるように、前記電極の縁部および前記孔に適用される第2接着性バックフィル材料をさらに含む、条項21記載の電極アセンブリ。
【0061】
27.前記接着性バックフィルは、前記第2接着性バックフィル材料が硬化した後に塗布される、条項26記載の電極アセンブリ。
【0062】
28.前記第2層は、前記バックフィルが硬化した後に適用される、条項21記載の電極アセンブリ。
【0063】
29.前記電極に溶接された前記リードは、前記電極に溶接された一端と、リード本体に接続された前記可撓性リードの反対端とを有する可撓性リードである、第21項記載の方法。
【0064】
30.前記可撓性リードは、マイクロコイルである、条項29記載の方法。
【0065】
31.前記電極に溶接された前記リードは、前記電極に溶接された一端と、リード本体に接続された反対端とを有する相互接続リードである、条項21記載の方法。
【0066】
32.前記電極に溶接された前記リードは、前記電極に溶接された一端と、相互接続リードに接続された反対端とを有する可撓性リードである、条項21記載の方法。
【0067】
33.前記相互接続リードは、第2電極に溶接された第2可撓性リードに接続される、条項32記載の方法。
【0068】
34.前記相互接続リードは、リード本体に接続される、条項32記載の方法。
【0069】
35.神経調節のための移植可能な電極アセンブリ(20)を製造するために使用する方法であって、
前記電極へ電気リード(30)を接続するステップ;
孔(23)が形成された材料の第1層(22)を形成するステップ;
前記材料の第1層の前記孔内に電極(24)を位置決めするステップ;
前記電極、前記電気リード接続部、および、前記第1層の一部の上に、前記電極と前記孔との間の間隙をシールするのに十分なバックフィル材料(26)を塗布するステップ;
前記バックフィル材料の上に材料の第2層(28)を塗布するステップ;
を有する方法。
【0070】
36.神経調節のための移植可能な電極アセンブリ(20)を製造するために使用する方法であって、
孔(23)が形成された材料の第1層(22)を形成するステップ;
前記電極へ電気リード(30)を接続するステップ;
前記材料の第1層の孔内へ前記電極(24)を位置決めするステップ;
電極、電気リード接続部、および、前記第1層の一部の上に、前記電極と前記孔との間の間隙をシールするのに十分なバックフィル材料(26)を塗布するステップ;
前記バックフィル材料の上に材料の第2層(28)を塗布するステップ;
を有する方法。
【0071】
本発明の、例示された実施例を含む実施例の前述の説明は、例示および説明の目的のためにのみ提示されており、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。当業者にとって、本発明の範囲から逸脱することなく、その多数の修正、適応、および使用形態は明らかであろう。上述の例示的な例は、本明細書で論じられる一般的な主題を読者に紹介するために与えられ、開示される概念の範囲を限定することを意図しない。
【国際調査報告】