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特表2022-532078皮膚及び創傷のための組成物並びにその使用の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】皮膚及び創傷のための組成物並びにその使用の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20220706BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/27 20060101ALN20220706BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20220706BHJP
   C12N 15/28 20060101ALN20220706BHJP
   C12N 15/15 20060101ALN20220706BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220706BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
A61K31/7105 ZNA
A61K38/17
A61K38/18
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/39
A61K9/127
A61K9/51
A61P17/02
A61P43/00 105
C12N15/27
C12N15/24
C12N15/28
C12N15/15
C12N15/113 Z
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565888
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2020032126
(87)【国際公開番号】W WO2020227642
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/845,134
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】300022641
【氏名又は名称】アストラゼネカ アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン,ケニー・ミーケル
(72)【発明者】
【氏名】ボグベルグ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ベルゲンヘム,ニルス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA66
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC50
4C076DD15F
4C076DD49F
4C076DD63F
4C076DD70F
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF65
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA18
4C084DA19
4C084DA40
4C084DB52
4C084DB53
4C084DB54
4C084DB55
4C084DB58
4C084DB62
4C084DC32
4C084MA05
4C084MA63
4C084MA65
4C084NA10
4C084ZA892
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA63
4C086MA65
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB21
(57)【要約】
本開示は、(i)創傷治癒の促進及び/若しくは改善、(ii)創傷部位での瘢痕形成の予防及び/若しくは低減、(iii)瘢痕の視認性の低減、並びに/又は(iv)表皮水疱症の治療のためのmRNA療法に関する。本発明における使用のためのmRNAは、インビボで皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与されるとき、創傷治癒ポリペプチド(例えば、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ阻害剤又はコラーゲン)をコードする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷治癒の促進及び/又は改善を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、前記対象の創傷に、有効量の、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法。
【請求項2】
創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、前記対象の前記創傷に、有効量の、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法。
【請求項3】
前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、床ずれ又はそれらの組合せである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記損傷は、外傷性損傷創傷である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記糖尿病性潰瘍は、糖尿病性足部潰瘍である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記創傷は、非治癒性創傷である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記非治癒性創傷は、糖尿病性足部潰瘍、褥瘡又は慢性下肢静脈潰瘍である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記創傷は、開放創である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記創傷は、閉鎖創である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記創傷は、擦過傷である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、糖尿病を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
瘢痕の視認性の低減を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、前記対象の前記瘢痕に、有効量の、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記創傷治癒ポリペプチドは、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ阻害剤及びコラーゲンからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記創傷治癒ポリペプチドは、アンフィレグリン、結合組織増殖因子(CTGF)、上皮増殖因子(EGF)、エピジェン、エピレグリン、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子7(FGF7)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、ヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子(HB-EGF)、インスリン様増殖因子1(IGF1)、インスリン様増殖因子2(IGF2)、ニューレグリン1(NRG-1)、胎盤増殖因子(PLGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)(例えば、PGDF-AA、PGDF-BB又はPGDF-AB)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)及び血管内皮増殖因子C(VEGF-C)からなる群から選択される増殖因子である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記創傷治癒ポリペプチドは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)からなる群から選択されるサイトカインである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ケモカインは、マクロファージ化学誘引タンパク質(MCP-1)又は間質細胞由来因子1(SDF-1)である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記プロテアーゼ阻害剤は、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI)である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
表皮水疱症の治療を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、前記対象の疱疹又は皮膚びらんに、有効量の、コラーゲンをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法。
【請求項19】
前記コラーゲンは、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン及びXXVIII型コラーゲンからなる群から選択される、請求項13又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記創傷治癒ポリペプチドは、配列番号9~38、45~84、197~211又は213~255のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記創傷治癒ポリペプチドは、VEGF-Aを含まない、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記有効量の前記医薬組成物を前記対象に局所的に投与することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記有効量の前記医薬組成物を前記対象に皮内投与することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記皮内投与は、マイクロニードル皮内投与である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記mRNAは、マイクロRNA(miR)結合部位を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記マイクロRNAは、造血系列の免疫細胞又はTLR7及び/若しくはTLR8を発現し、且つ炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインを分泌する細胞において発現される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロRNA結合部位は、miR-126、miR-142、miR-144、miR-146、miR-150、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27、miR-26a又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに関するものである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロRNA結合部位は、miR126-3p、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-155又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに関するものである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロRNA結合部位は、miR-142-3p結合部位である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記マイクロRNA結合部位は、前記mRNAの3’UTRに位置する、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記mRNAは、3’UTRを含み、前記3’UTRは、配列番号111の3’UTR配列と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%同一の核酸配列を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記mRNAは、5’UTRを含み、前記5’UTRは、配列番号3の5’UTR配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%同一の核酸配列を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記mRNAは、5’末端キャップを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記5’末端キャップは、Cap0、Cap1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジドグアノシン、Cap2、Cap4、5’メチルGキャップ又はその類似体を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記mRNAは、ポリA領域を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリA領域は、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90ヌクレオチド長又は少なくとも約100ヌクレオチド長である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリA領域は、約10~約200、約20~約180、約50~約160、約70~約140又は約80~約120ヌクレオチド長を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記mRNAは、少なくとも1つの化学修飾された核酸塩基、糖、骨格又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの化学修飾された核酸塩基は、シュードウラシル(ψ)、N1メチルシュードウラシル(m1ψ)、1-エチルシュードウラシル、2-チオウラシル(s2U)、4’-チオウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、5-メトキシウラシル及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ウラシルの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%又は100%は、5-メトキシウラシルに化学的に修飾される、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記医薬組成物は、送達剤をさらに含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記送達剤は、脂質ナノ粒子を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記脂質ナノ粒子は、
(a)(i)化合物II、(ii)コレステロール、及び(iii)PEG-DMG若しくは化合物I;
(b)(i)化合物VI、(ii)コレステロール、及び(iii)PEG-DMG若しくは化合物I;
(c)(i)化合物II、(ii)DSPC若しくはDOPE、(iii)コレステロール、及び(iv)PEG-DMG若しくは化合物I;
(d)(i)化合物VI、(ii)DSPC若しくはDOPE、(iii)コレステロール、及び(iv)PEG-DMG若しくは化合物I;
(e)(i)化合物II、(ii)コレステロール、及び(iv)化合物I;又は
(f)(i)化合物II、(ii)DSPC若しくはDOPE、(iii)コレステロール、及び(iv)化合物I
を含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月8日に出願された米国仮特許出願第62/845,134号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、全体として参照により本明細書に込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的手段により提出されており、且つ全体として参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2020年5月6日に作成された前記ASCIIの複製は、45817-0054WO1_SL.txtという名称であり、サイズが720,012バイトである。
【背景技術】
【0003】
創傷治癒は、損傷後に上皮の修復をもたらす複雑な多細胞プロセスである。創傷治癒には、いくつかの段階がある:炎症、肉芽組織の形成、上皮再形成、マトリックス形成及び再構築。瘢痕形成は、創傷治癒の主要な部分である。瘢痕は、創傷形成前に存在した正常な皮膚の代わりに創傷治癒プロセス中に形成する線維組織の領域である。瘢痕は、細胞外マトリックスの改変を示し、正常な皮膚と比較してエラスチン線維のレベルの低減を有する。ほぼ全ての創傷は、ある程度の瘢痕をもたらす。
【0004】
創傷は、急性又は慢性であり得る。急性創傷は、通常、経時的ではなく、突然に生じる皮膚に対する損傷の結果である(例えば、手術創又は外傷性創傷(例えば、切り傷))。正常な対象において、急性創傷は、通常、正常な創傷治癒プロセスに従って予測可能であり、且つ期待される速度で治る。対照的に、慢性創傷は、創傷治癒の段階を秩序立った時宜を得た様式で進展できない創傷である(例えば、30日で治癒に向けた著しい進展を示さない)。慢性創傷の非限定的な例としては、静脈性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍及び褥瘡が挙げられる。
【0005】
創傷は、一次癒合、二次癒合又は三次癒合によって治癒され得る。創傷は、組織の損失がほとんどなく、その結果、創傷の端が直接的に互いに隣り合っている場合、一次癒合によって治癒する。一次癒合よって治癒される創傷は、「閉鎖創」とも称される。創傷は、創傷部位での組織の損失が大きすぎて創傷の端が互いに近接できない状態にある場合、二次癒合によって治癒する。二次癒合よって治癒される創傷は、「開放創」とも称される。開放創は、治癒が起こるために皮膚移植を必要とする場合がある。最後に、三次癒合によって治癒される創傷は、最初に洗浄及び創面切除を行ない、続いて数日間開放したままにしてから閉鎖する。
【0006】
非治癒性創傷は、医療上の大きい負担となっている。非治癒性創傷は、長期の入院、生活の質の低下、死亡のリスクの増大、切断の必要性及び長期療養型施設への退院の可能性の増大をもたらす可能性がある。例えば、米国において、各年で糖尿病性足部潰瘍を有する推定71,000名の患者が手足又は指の切断を受ける。褥瘡は、高い死亡率を有し、入院に関する高いコストを負う。
【0007】
例えば、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ阻害剤及びコラーゲンなどのポリペプチドの多数のクラスが創傷治癒プロセスにおいて中心的な役割を果たす。これらのポリペプチドの多くは、瘢痕形成にも関与し、それらの活性の調節は、瘢痕形成を低減することが示されている。加えて、ある種の希少疾患は、皮膚病態を含み、創傷治癒を促進するこれらの同じポリペプチドのいくつかは、一部の患者において欠損している場合がある。例えば、表皮水疱症は、水疱を形成する脆弱な皮膚をもたらす希少疾患の群であり、損傷、熱、摩擦、ひっかき又は粘着テープに応答して現れる場合がある。症例によっては、疱疹が体内に生じる場合さえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリペプチドのこれらのクラスは、非治癒性急性及び慢性創傷において調節解除される場合があるが、対象における創傷治癒の促進又は改善などの潜在的な治療効果のためにこれらのポリペプチドの発現又は活性を増加させる薬剤を送達することは、依然として困難である。したがって、対象において創傷治癒を促進又は改善し、瘢痕形成を低減し、且つある種の希少疾患を治療するための組成物及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本開示は、創傷治癒の促進及び/又は改善を、それを必要とする対象において行うための方法であって、メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含み、mRNAは、創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、方法を提供する。
【0010】
本開示は、創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減を、それを必要とする対象において行うための方法であって、mRNA治療薬の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含み、mRNAは、創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)をコードするORFを含む、方法も提供する。
【0011】
本開示は、瘢痕の視認性の低減を、それを必要とする対象において行うための方法であって、mRNA治療薬の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含み、mRNAは、創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)をコードするORFを含む、方法も提供する。
【0012】
本開示は、表皮水疱症の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、mRNA治療薬の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含み、mRNAは、創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)(例えば、コラーゲン)をコードするORFを含む、方法も提供する。
【0013】
本開示は、(i)創傷治癒の促進及び/若しくは改善;(ii)創傷部位での瘢痕形成の予防及び/若しくは低減;(iii)瘢痕の視認性の低減;並びに/又は(iv)表皮水疱症の治療のためのmRNA治療薬を提供する。本発明のmRNA治療薬は、その技術が創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)をコードするmRNAの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所送達に続いて、標的細胞内での機能的な創傷治癒ポリペプチドのデノボ合成をもたらすため、これらの適用に特によく適している。本開示は、(1)望まれない免疫活性化(例えば、外来核酸のインビボ導入に関連する自然免疫反応)を最小限に抑え、且つ(2)タンパク質へのmRNAの翻訳効率を最適化するための治療用mRNA内での修飾ヌクレオチドの組込みを包含する。本開示の例示的な態様は、特に、タンパク質発現を増強するために、創傷治癒ポリペプチドをコードする治療用mRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)内での自然免疫反応の低減及び配列最適化のためのヌクレオチド修飾の組合せを特徴とする。
【0014】
さらなる実施形態において、本開示のmRNA治療薬技術は、脂質ナノ粒子(LNP)送達系を介する創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所送達も特徴とする。本開示は、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAと組み合せ、且つ例えば細胞取り込み、細胞内輸送及び/又はエンドソーム放出若しくはエンドソーム脱出など、インビボで投与された場合に特性が改善されたイオン化可能脂質に基づくLNPを特徴とする。本開示のLNP製剤は、LNPのインビボ皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与と関連する免疫原性の低下も示す。
【0015】
特定の態様において、本開示は、ポリヌクレオチド、例えばリボ核酸(RNA)、例えば創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAを含む組成物及び送達製剤、並びに(i)それを皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することにより、創傷治癒の促進及び/若しくは改善を、それを必要とするヒト対象において行い;(ii)それを皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することにより、創傷部位での瘢痕形成の予防及び/若しくは低減を、それを必要とするヒト対象において行い;(iii)それを皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することにより、瘢痕の視認性の低減を、それを必要とするヒト対象において行い;且つ/又はそれを皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することにより、表皮水疱症の治療を、それを必要とするヒト対象において行うための方法に関する。
【0016】
本開示は、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含む脂質ナノ粒子でカプセル化されたmRNAを含む医薬組成物を提供し、組成物は、(i)創傷治癒の促進及び/若しくは改善;(ii)創傷部位での瘢痕形成の予防及び/若しくは低減;(iii)瘢痕の視認性の低減;並びに/又は(iv)表皮水疱症の治療を必要とするヒト対象への皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与に好適である。
【0017】
本開示は、(a)(i)創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(ORFは、少なくとも1つの化学修飾された核酸塩基、糖、骨格又はそれらの任意の組合せを含む)、及び(ii)マイクロRNA(miRNA)結合部位を含む非翻訳領域(UTR)を含むmRNA;並びに(b)送達剤を含む医薬組成物をさらに提供し、医薬組成物は、(i)創傷治癒の促進及び/若しくは改善;(ii)創傷部位での瘢痕形成の予防及び/若しくは低減;(iii)瘢痕の視認性の低減;並びに/又は(iv)表皮水疱症の治療を必要とするヒト対象への皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与に好適である。
【0018】
いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドは、配列番号9~38、45~84、197~211及び213~255のいずれか1つに示されるアミノ酸配列又はその成熟型を含む。
【0019】
ポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、それを必要とする対象の創傷に皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される。いくつかの例では、医薬組成物は、対象の体重(mg/kg)当たり0.01mg/kg~約10mg/kgのポリヌクレオチドの用量で皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される。いくつかの例では、医薬組成物又はポリヌクレオチドは、0.1mg/kg~2.0mg/kgの用量で皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される。いくつかの例では、医薬組成物又はポリヌクレオチドは、0.1mg/kg~1.5mg/kgの用量で皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される。いくつかの例では、医薬組成物又はポリヌクレオチドは、0.1mg/kg~1.0mg/kgの用量で皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される。いくつかの例では、医薬組成物又はポリヌクレオチドは、0.1mg/kg~0.5mg/kgの用量で皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される。
【0020】
一態様において、本開示は、創傷治癒の促進及び/又は改善を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、対象の創傷に、有効量の、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法を特徴とする。
【0021】
別の態様において、本開示は、創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、対象の創傷に、有効量の、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法を特徴とする。
【0022】
前述の方法のいくつかの実施形態において、創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、床ずれ又はそれらの組合せである。いくつかの例において、損傷は、外傷性損傷創傷である。いくつかの例において、糖尿病性潰瘍は、糖尿病性足部潰瘍である。いくつかの実施形態において、創傷は、非治癒性創傷である。いくつかの例において、非治癒性創傷は、糖尿病性足部潰瘍、褥瘡又は慢性下肢静脈潰瘍である。いくつかの例において、創傷は、開放創である。いくつかの例において、創傷は、閉鎖創である。いくつかの例において、創傷は、擦過傷である。
【0023】
前述の方法のいくつかの実施形態において、対象は、糖尿病を有する。
【0024】
別の態様において、本開示は、褥瘡の視認性の低減を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、対象の褥瘡に、有効量の、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法を特徴とする。
【0025】
前述の方法のいくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドは、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ阻害剤及びコラーゲンからなる群から選択される。いくつかの例では、創傷治癒ポリペプチドは、アンフィレグリン、結合組織増殖因子(CTGF)、上皮増殖因子(EGF)、エピジェン、エピレグリン、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子7(FGF7)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、ヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子(HB-EGF)、インスリン様増殖因子1(IGF1)、インスリン様増殖因子2(IGF2)、ニューレグリン1(NRG-1)、胎盤増殖因子(PLGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)(例えば、PGDF-AA、PGDF-BB又はPGDF-AB)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)及び血管内皮増殖因子C(VEGF-C)からなる群から選択される増殖因子である。いくつかの例では、創傷治癒ポリペプチドは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)からなる群から選択されるサイトカインである。いくつかの例において、創傷治癒ポリペプチドは、マクロファージ化学誘引タンパク質(MCP-1)及び間質細胞由来因子1(SDF-1)からなる群から選択されるケモカインである。いくつかの例において、創傷治癒ポリペプチドは、プロテアーゼ阻害剤分泌性白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI)である。
【0026】
別の態様において、本開示は、表皮水疱症の治療を、それを必要とするヒト対象において行うための方法であって、対象の疱疹又は皮膚びらんに、有効量の、コラーゲンをコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物を皮内又は局所的に投与することを含む方法を特徴とする。いくつかの例では、コラーゲンは、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン及びXXVIII型コラーゲンからなる群から選択される。
【0027】
前述の方法のいくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドは、配列番号9~38、45~84、197~211又は213~255のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、創傷治癒ポリペプチドは、VEGF-Aを含まない。
【0028】
前述の方法のいくつかの実施形態において、方法は、有効量の医薬組成物を対象に局所的に投与することを含む。前述の方法のいくつかの実施形態において、方法は、有効量の医薬組成物を対象に皮内投与することを含む。いくつかの例では、皮内投与は、マイクロニードル皮内投与である。
【0029】
前述の方法のいくつかの実施形態において、mRNAは、マイクロRNA(miR)結合部位を含む。いくつかの例では、マイクロRNAは、造血系列の免疫細胞又はTLR7及び/若しくはTLR8を発現し、且つ炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインを分泌する細胞において発現される。いくつかの例では、マイクロRNA結合部位は、miR-126、miR-142、miR-144、miR-146、miR-150、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27、miR-26a又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに関するものである。いくつかの例では、マイクロRNA結合部位は、miR126-3p、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-155又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに関するものである。いくつかの例では、マイクロRNA結合部位は、miR-142-3p結合部位である。いくつかの例では、マイクロRNA結合部位は、mRNAの3’UTR中に位置する。
【0030】
前述の方法のいくつかの実施形態において、mRNAは、3’UTRを含み、前記3’UTRは、配列番号111の3’UTR配列と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%同一の核酸配列を含む。
【0031】
前述の方法のいくつかの実施形態において、mRNAは、5’UTRを含み、前記5’UTRは、配列番号3の5’UTR配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%同一の核酸配列を含む。
【0032】
前述の方法のいくつかの実施形態において、mRNAは、5’末端キャップを含む。いくつかの例では、5’末端キャップは、Cap0、Cap1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジドグアノシン、Cap2、Cap4、5’メチルGキャップ又はその類似体を含む。
【0033】
前述の方法のいくつかの実施形態において、mRNAは、ポリA領域を含む。いくつかの例では、ポリA領域は、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90ヌクレオチド長又は少なくとも約100ヌクレオチド長である。いくつかの例では、ポリA領域は、約10~約200、約20~約180、約50~約160、約70~約140又は約80~約120ヌクレオチド長を有する。
【0034】
前述の方法のいくつかの実施形態において、mRNAは、少なくとも1つの化学修飾された核酸塩基、糖、骨格又はそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、少なくとも1つの化学修飾された核酸塩基は、シュードウラシル(ψ)、N1メチルシュードウラシル(m1ψ)、1-エチルシュードウラシル、2-チオウラシル(s2U)、4’-チオウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、5-メトキシウラシル及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。いくつかの例では、ウラシルの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%又は100%は、5-メトキシウラシルに化学的に修飾される。
【0035】
前述の方法のいくつかの実施形態において、医薬組成物は、送達剤をさらに含む。いくつかの例では、送達剤は、脂質ナノ粒子を含む。いくつかの例では、脂質ナノ粒子は、(a)(i)化合物II、(ii)コレステロール、及び(iii)PEG-DMG若しくは化合物I;(b)(i)化合物VI、(ii)コレステロール、及び(iii)PEG-DMG若しくは化合物I;(c)(i)化合物II、(ii)DSPC若しくはDOPE、(iii)コレステロール、及び(iv)PEG-DMG若しくは化合物I;(d)(i)化合物VI、(ii)DSPC若しくはDOPE、(iii)コレステロール、及び(iv)PEG-DMG若しくは化合物I;(e)(i)化合物II、(ii)コレステロール、及び(iii)化合物I;又は(f)(i)化合物II、(ii)DSPC若しくはDOPE、(iii)コレステロール、及び(iv)化合物Iを含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】マウスにおける創傷治癒ポリペプチド、修飾VEGF-A RNAの皮内注射後の創傷治癒の評価のための試験の時間軸である。
図2】創傷治癒に対するMC3(mRNA VEGF 3μg MC3)で製剤化された創傷治癒ポリペプチド、修飾VEGF-A RNA、MC3(mRNA VEGF NT(3μg)MC3)で製剤化された翻訳不可能なVEGF-A RNA及び生理食塩水/クエン酸塩組成物の皮内投与(注射)の効果である。
図3】マウスにおける創傷治癒ポリペプチド、修飾VEGF-A RNAの局所投与後の創傷治癒の評価のための試験の時間軸である。
図4】創傷治癒に対するMC3(mRNA VEGF(3μg)MC3)で製剤化された創傷治癒ポリペプチド、修飾VEGF-A RNA及び生理食塩水/クエン酸塩組成物の局所投与の効果である。
図5A】化合物IIで製剤化された修飾VEGF-A RNAの局所投与、生理食塩水/クエン酸塩中で製剤化された修飾VEGF-A RNAの局所投与、MC3で製剤化された修飾VEGF-A RNAの局所投与及びMC3で製剤化された修飾VEGF-Aの皮内(単回の注射)投与の5~6時間後のブタ組織における創傷治癒ポリペプチド、ヒトVEGF-A(hVEGF-A)タンパク質の発現である。
図5B】ブタの皮膚上の創傷の写真であり、描かれた円は、局所投与の部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0042]本開示は、創傷治癒の促進及び/又は改善を、それを必要とする対象において行うためのmRNA治療薬を提供する。特に、本開示は、創傷治癒の促進及び/又は改善を、それを必要とする対象において行うための方法であって、創傷を、創傷治癒ポリペプチド又はその機能性部分をコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物又は製剤と、例えば皮膚を例えば組成物又は製剤と皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に接触させることによって接触させることを含む方法を提供する。
【0038】
[0043]本開示は、創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減を、それを必要とする対象において行うためのmRNA治療薬も提供する。特に、本開示は、創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減を、それを必要とする対象において行うための方法であって、対象に、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することを含む方法を提供する。
【0039】
[0044]本開示は、瘢痕の視認性の低減を、それを必要とする対象において行うためのmRNA治療薬も提供する。特に、本開示は、瘢痕の視認性の低減を、それを必要とする対象において行うための方法であって、対象に、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することを含む方法を提供する。
【0040】
[0045]本開示は、表皮水疱症の治療を、それを必要とする対象において行うためのmRNA治療薬も提供する。特に、本開示は、表皮水疱症の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、対象に、創傷治癒ポリペプチド(例えば、コラーゲン)をコードするORFを含むmRNAを含む医薬組成物を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することを含む方法を提供する。
【0041】
[0046]創傷治癒は、損傷後に上皮の修復をもたらす複雑な多細胞プロセスである。創傷治癒には、いくつかの段階がある:炎症、肉芽組織の形成、上皮再形成、マトリックス形成及び再構築。瘢痕形成は、創傷治癒の主要な部分である。瘢痕は、創傷形成前に存在した正常な皮膚の代わりに創傷治癒プロセス中に形成する線維組織の領域である。瘢痕は、細胞外マトリックスの改変を示し、正常な皮膚と比較してエラスチン線維のレベルの低減を有する。ほぼ全ての創傷は、ある程度の瘢痕をもたらす。
【0042】
[0047]創傷は、急性又は慢性であり得る。急性創傷は、通常、経時的ではなく、突然に生じる皮膚に対する損傷の結果である(例えば、手術創又は外傷性創傷(例えば、切り傷))。急性創傷は、通常、正常な創傷治癒プロセスに従って予測可能であり、且つ期待される速度で治る。対照的に、慢性創傷は、創傷治癒の段階を秩序立った時宜を得た様式で進展できない創傷である(例えば、30日で治癒に向けた著しい進展を示さない)。慢性創傷の非限定的な例としては、静脈性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍及び褥瘡が挙げられる。例えば、増殖因子(例えば、アンフィレグリン、結合組織増殖因子(CTGF)、上皮増殖因子(EGF)、エピジェン、エピレグリン、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子7(FGF7)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、ヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子(HB-EGF)、インスリン様増殖因子1(IGF1)、インスリン様増殖因子2(IGF2)、ニューレグリン1(NRG-1)、胎盤増殖因子(PLGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)(例えば、PGDF-AA、PGDF-BB又はPGDF-AB)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)及び血管内皮増殖因子C(VEGF-C))、サイトカイン(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α))、ケモカイン(例えば、マクロファージ化学誘引タンパク質(MCP-1)及びストロマ細胞由来因子1(SDF-1))、プロテアーゼ阻害剤(例えば、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI))並びにコラーゲン(例えば、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン又はXXVIII型コラーゲン)などのポリペプチドの多数のクラスが創傷治癒の促進に関与する。創傷治癒の促進に関与する例示的なポリペプチド(すなわち創傷治癒ポリペプチド)については、下の表1を参照されたい。これらの因子の調節解除は、非治癒性急性及び慢性創傷において観察され得る。
【0043】
[0048]mRNA治療薬は、その技術が創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所、細胞内送達に続いて、標的細胞内での機能的な創傷治癒タンパク質のデノボ合成をもたらすため、(i)創傷治癒の促進及び/若しくは改善、(ii)創傷部位での瘢痕形成の予防及び/若しくは低減、(iii)瘢痕の視認性の低減、並びに(iv)表皮水疱症の治療に特によく適している。驚くべきことに、皮膚の標的細胞へのmRNAの局所送達後、細胞自体の翻訳機構によって所望の創傷治癒タンパク質が発現され、したがって、完全に機能的な創傷治癒タンパク質が、縮小されたか、欠陥があるか又は欠損しているタンパク質を置き換える。
【0044】
[0049]インビボでの核酸に基づく治療薬(例えば、mRNA治療薬)の送達と関連する1つの課題は、身体の免疫系が外来核酸と遭遇する際に生じ得る自然免疫反応に起因する。外来mRNAは、トール様受容体(TLR)、特に、TLR7/8を通じた認識を介して免疫系を活性化することができ、これは、一本鎖RNA(ssRNA)によって活性化される。非免疫細胞において、外来mRNAの認識は、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)を通じて起こり得る。外来mRNAの免疫認識により、インターロイキン-1β(IL-1β)産生、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)分布及び強力なI型インターフェロン(I型IFN)反応を含む、望まれないサイトカイン効果が生じる場合がある。本開示は、免疫活性化を最小限に抑え、タンパク質へのmRNAの翻訳効率を最適化するための、治療用mRNA内での様々な修飾ヌクレオチドの組込みを特徴とする。特定の態様は、特に、タンパク質発現を増強するために、創傷治癒ポリペプチドをコードする治療用mRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)内での自然免疫反応の低減及び配列最適化のためのヌクレオチド修飾の組合せを特徴とする。
【0045】
[0050]本開示のmRNA治療薬技術の特定の実施形態は、脂質ナノ粒子(LNP)送達系を介する創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所送達も特徴とする。脂質ナノ粒子(LNP)は、標的細胞へのmRNAの安全で有効な皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所送達のための理想的なプラットフォームである。LNPは、細胞取り込み、細胞内輸送及びエンドソーム放出又はエンドソーム脱出を含む機構によって核酸を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に送達する固有の能力を有する。本発明は、インビボで投与された場合に特性が改善された創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAと組み合わせたイオン化可能脂質に基づくLNPを特徴とする。理論に拘束されるものではないが、本発明のイオン化可能脂質に基づくLNP製剤は、例えば、細胞取り込み、細胞内輸送及び/又はエンドソーム放出若しくはエンドソーム脱出などの特性が改善されていると考えられる。
【0046】
1.創傷治癒及び創傷治癒ポリペプチド
[0051] 創傷治癒は、損傷後に上皮の修復をもたらす複雑な多細胞プロセスである。創傷は、急性又は慢性であり得る。急性創傷は、通常、経時的ではなく、突然に生じる皮膚に対する損傷の結果である(例えば、手術創又は外傷性創傷(例えば、切り傷又はすり傷))。急性創傷は、通常、正常な創傷治癒プロセスに従って予測可能であり、且つ期待される速度で治る。対照的に、慢性創傷は、創傷治癒の段階を秩序立った時宜を得た様式で進展できない創傷である(例えば、30日で治癒に向けた著しい進展を示さない)。慢性創傷の非限定的な例としては、静脈性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍及び褥瘡が挙げられる。非治癒性創傷は、重大な病的状態(例えば、切断の必要性)及び重篤な症例では死をもたらす可能性がある。
【0047】
[0052]創傷治癒にはいくつかの段階がある:炎症、肉芽組織の形成、上皮再形成、マトリックス形成及び再構築。瘢痕形成は、創傷治癒の主要な部分である。瘢痕は、創傷形成前に存在した正常な皮膚の代わりに創傷治癒プロセス中に形成する線維組織の領域である。瘢痕は、細胞外マトリックスの改変を示し、正常な皮膚と比較してエラスチン線維のレベルの低減を有する。ほぼ全ての創傷は、ある程度の瘢痕をもたらす。
【0048】
[0053]例えば、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ阻害剤及びコラーゲンなどのポリペプチドの多数のクラスが、瘢痕形成を含む創傷治癒プロセスにおいて中心的な役割を果たす。様々な創傷治癒ポリペプチド(及びそれらの様々なアイソフォーム)に対応する野生型基準タンパク質配列は、下の表1において記載される。これらのポリペプチドは、創傷、例えば、非治癒性急性及び慢性創傷において調節解除され得る(例えば、発現の減少を有し得る)。
【0049】
[0054]特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物又は方法の創傷治癒ポリペプチドは、増殖因子創傷治癒ポリペプチドである。増殖因子創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、アンフィレグリン、結合組織増殖因子(CTGF)、上皮増殖因子(EGF)、エピジェン、エピレグリン、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子7(FGF7)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、ヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子(HB-EGF)、インスリン様増殖因子1(IGF1)、インスリン様増殖因子2(IGF2)、ニューレグリン1(NRG-1)、胎盤増殖因子(PLGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)(例えば、PGDF-AA、PGDF-BB又はPGDF-AB)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)及び血管内皮増殖因子C(VEGF-C)が挙げられる。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のEGFファミリーのメンバーである。創傷治癒EGFファミリータンパク質の非限定的な例としては、アンフィレグリン、EGF、エピジェン、エピレグリン、HB-EGF及びNRG-1が挙げられる。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のFGFファミリーのメンバーである。創傷治癒FGFファミリータンパク質の非限定的な例としては、FGF2、FGF7及びFGF10が挙げられる。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のTGFファミリーのメンバーである。創傷治癒TGFファミリータンパク質の非限定的な例としては、TGF-α及びTGF-βが挙げられる。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のVEGFファミリーのメンバーである。創傷治癒VEGFファミリータンパク質の非限定的な例としては、VEGF-C及びPLGFが挙げられる。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、PDGFであり、これは、ヘテロ(PDGF-AB)又はホモ(PDGF-AA又はPDGF-BB)二量体タンパク質である。創傷治癒PGDFファミリータンパク質の非限定的な例としては、PDGF-AA、PDGF-BB及びPDGF-ABが挙げられる。
【0050】
[0055]特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物又は方法の創傷治癒ポリペプチドは、サイトカイン創傷治癒ポリペプチドである。サイトカイン創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)が挙げられる。特定の実施形態において、サイトカイン創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のインターロイキンファミリーのメンバーである。創傷治癒インターロイキンファミリータンパク質の非限定的な例としては、IL-1、IL-6、IL-8及びIL-10が挙げられる。
【0051】
[0056]特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物又は方法の創傷治癒ポリペプチドは、ケモカイン創傷治癒ポリペプチドである。ケモカイン創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、マクロファージ化学誘引タンパク質(MCP-1)及び間質細胞由来因子1(SDF-1)が挙げられる。
【0052】
[0057]特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物又は方法の創傷治癒ポリペプチドは、プロテアーゼ阻害剤創傷治癒ポリペプチドである。プロテアーゼ阻害剤創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例は、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI)である。
【0053】
[0058]特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物又は方法の創傷治癒ポリペプチドは、コラーゲン創傷治癒ポリペプチドである。コラーゲン創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン及びXXVIII型コラーゲンが挙げられる。
【0054】
【表1-1】
【0055】
【表1-2】
【0056】
【表1-3】
【0057】
【表1-4】
【0058】
【表1-5】
【0059】
【表1-6】
【0060】
【表1-7】
【0061】
【表1-8】
【0062】
【表1-9】
【0063】
【表1-10】
【0064】
【表1-11】
【0065】
【表1-12】
【0066】
【表1-13】
【0067】
【表1-14】
【0068】
【表1-15】
【0069】
【表1-16】
【0070】
【表1-17】
【0071】
【表1-18】
【0072】
【表1-19】
【0073】
【表1-20】
【0074】
【表1-21】
【0075】
【表1-22】
【0076】
【表1-23】
【0077】
【表1-24】
【0078】
【表1-25】
【0079】
【表1-26】
【0080】
【表1-27】
【0081】
[0060]本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドを含む組成物及び本明細書に記載される組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の方法は、創傷治癒の促進及び/又は増大を、それを必要とする対象において行う際に有用である。
【0082】
[0061]本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドを含む組成物及び本明細書に記載される組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の方法は、創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減を、それを必要とする対象において行う際にも有用である。
【0083】
[0062]本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドを含む組成物及び/又は本明細書に記載される組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の方法に従って治療される創傷は、任意の型の創傷であり得る。特定の実施形態において、創傷は、一次癒合によって治癒される創傷である。特定の実施形態において、創傷は、開放創である。特定の実施形態において、創傷は、二次癒合によって治癒される創傷である。特定の実施形態において、創傷は、閉鎖創である。特定の実施形態において、創傷は、三次癒合によって治癒される創傷である。特定の実施形態において、創傷は、擦過傷、床ずれ、熱傷、慢性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、糖尿病性創傷、損傷、移植創、褥瘡、皮膚生検部位、手術創、静脈性潰瘍又はその組合せである。特定の実施形態において、創傷は、急性創傷である。特定の実施形態において、創傷は、慢性創傷である。特定の実施形態において、創傷は、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)である。特定の実施形態において、創傷は、静脈性潰瘍である。特定の実施形態において、創傷は、褥瘡である。特定の実施形態において、創傷は、本明細書に記載される組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の前に擦過される。特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与される対象は、糖尿病を有する。
【0084】
[0063]本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドを含む組成物及び本明細書に記載される組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の方法は、瘢痕の視認性の低減を、それを必要とする対象において行う際にも有用である。特定の実施形態において、瘢痕は、萎縮性瘢痕、陥凹性瘢痕、細線瘢痕、色素過剰瘢痕、色素不足瘢痕、肥厚性瘢痕、アイスピック瘢痕、ケロイド瘢痕、瘢痕拘縮、伸展性瘢痕、広汎性瘢痕又は瘢痕の任意の他の型からなる群から選択される瘢痕である。瘢痕の型の非限定的な例については、例えば、Bayat et al.,2003,BMJ 326:88-92を参照されたい。
【0085】
[0064]本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドを含む組成物及び本明細書に記載される組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の方法は、表皮水疱症を治療する際にも有用である。特定の実施形態において、創傷治癒ポリペプチドは、コラーゲン(例えば、表1を参照されたい)である。
【0086】
[0065]特定の態様において、本開示は、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、オープンリーディングフレーム(ORF))を含むポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドは、野生型全長ヒト増殖因子タンパク質(例えば、アンフィレグリン、CTGF、EGF、エピジェン、エピレグリン、FGF2、FGF7、FGF10、HB-EGF、IGF1、IGF2、NRG-1、PLGF、PDGF(例えば、PGDF-AA、PGDF-BB又はPGDF-AB)、TGF-α、TGF-β又はVEGF-C)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、野生型全長ヒト増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のEGFファミリーのメンバー(例えば、アンフィレグリン、EGF、エピジェン、エピレグリン、HB-EGF又はNRG-1)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、野生型全長ヒト増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のFGFファミリーのメンバー(例えば、FGF2、FGF7又はFGF10)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、野生型全長ヒト増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のTGFファミリーのメンバー(例えば、TGF-α又はTGF-β)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、野生型全長ヒト増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のVEGFファミリーのメンバー(例えば、VEGF-C又はPLGF)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、野生型全長ヒト増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、PDGF(例えば、PDGF-AA、PDGF-BB又はPDGF-AB)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドは、野生型全長ヒトサイトカインタンパク質(例えば、G-CSF、GM-CSF、HGF、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10及びTNF-α)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、野生型全長ヒトサイトカイン創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のインターロイキンファミリーのメンバー(例えば、IL-1、IL-6、IL-8又はIL-10)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドは、野生型全長ヒトケモカインタンパク質(例えば、MCP-1又はSDF-1)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドは、野生型全長ヒトプロテアーゼ阻害剤タンパク質(例えば、SLPI)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドは、野生型全長ヒトコラーゲンタンパク質(例えば、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン又はXXVIII型コラーゲン)(表1を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドは、野生型創傷治癒ポリペプチド配列に対して置換並びに挿入及び/又は付加、欠失及び/又は共有結合性修飾を含有するバリアント、ペプチド又はポリペプチドである。いくつかの実施形態において、配列タグ又はアミノ酸は、例えば、局在化のために、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる配列(例えば、N末端又はC末端)に付加され得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドのカルボキシ、アミノ末端又は内部領域に配置されるアミノ酸残基は、断片を提供するために任意選択により欠失され得る。
【0087】
[0066]いくつかの実施形態において、本発明のヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含むポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、ヒト創傷治癒ポリペプチド配列の置換バリアントをコードし、これは、1、2、3つ又は3つを超える置換を含み得る。いくつかの実施形態において、置換バリアントは、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含み得る。他の実施形態において、バリアントは、挿入バリアントである。他の実施形態において、バリアントは、欠失バリアントである。
【0088】
[0067]創傷治癒タンパク質断片、機能的タンパク質ドメイン、バリアント及び相同タンパク質(オルソログ)も本開示の創傷治癒ポリペプチドの範囲内である。本発明のポリヌクレオチドによってコードされる創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例は、表1において記載される。
【0089】
2.ポリヌクレオチド及びオープンリーディングフレーム(ORF)
[0068] 本発明は、(i)創傷治癒の促進及び/又は改善、(ii)創傷部位での瘢痕形成の予防及び/又は低減、並びに(iii)瘢痕の視認性の低減を、それを必要とする対象において行う際の使用のためのmRNAを特徴とする。本発明における使用のために注目されるmRNAは、対象に投与され、インビボでヒト創傷治癒タンパク質をコードする。したがって、本発明は、ポリヌクレオチド、例えば、ヒト創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)、そのアイソフォーム、その機能的断片及び創傷治癒ポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする連結されたヌクレオシドのオープンリーディングフレームを含むmRNAに関する。特定の例では、その機能的断片は、例えば、シグナル配列を欠く成熟創傷治癒ポリペプチドである。特に、本発明は、ヒト創傷治癒ポリペプチドのポリペプチド配列をコードするヌクレオチドを含む配列が最適化されたポリヌクレオチド又はそれらの配列の最適化されたポリヌクレオチドと高い配列同一性を有する配列を提供する。
【0090】
[0069]特定の態様において、本発明は、1つ以上の創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含むポリヌクレオチド(例えば、mRNAなどのRNA)を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のコードされる創傷治癒ポリペプチドは、
(i)全長創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型創傷治癒ペプチド(例えば、表1を参照されたい)と同じであるか又は本質的に同じ長さを有する);
(ii)創傷治癒ポリペプチドの成熟したプロセシングされた形態(例えば、表1に示される創傷治癒ポリペプチドの成熟したプロセシングされた形態);
(iii)本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドの機能的断片(例えば、創傷治癒ポリペプチドより短いが、創傷治癒ポリペプチドの創傷治癒活性を依然として保持しているトランケート型(例えば、カルボキシ、アミノ末端又は内部領域の欠失)配列);
(iv)そのバリアント(例えば、1つ以上のアミノ酸が置き換えられた全長又はトランケート型創傷治癒タンパク質、例えば、参照タンパク質に関してポリペプチドの創傷治癒活性の全て又は大部分を保持するバリアント(例えば、当技術分野で知られる天然又は人工的バリアントなど));又は
(v)(i)全長創傷治癒タンパク質(例えば、表1に記載されるタンパク質)、そのアイソフォーム又はそのバリアント、及び(ii)異種タンパク質を含む融合タンパク質
から選択され得る。
【0091】
[0070]特定の実施形態において、コードされる創傷治癒ポリペプチドは、ヒト増殖因子創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントなどの哺乳動物増殖因子創傷治癒ポリペプチドである。増殖因子創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、アンフィレグリン、CTGF、EGF、エピジェン、エピレグリン、FGF2、FGF7、FGF10、HB-EGF、IGF1、IGF2、NRG-1、PLGF、PDGF(例えば、PGDF-AA、PGDF-BB又はPGDF-AB)、TGF-α、TGF-β及びVEGF-C(例えば、表1を参照されたい)が挙げられる。いくつかの実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のEGFファミリーのメンバー(例えば、アンフィレグリン、EGF、エピジェン、エピレグリン、HB-EGF又はNRG-1)である。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のFGFファミリーのメンバー(例えば、FGF2、FGF7又はFGF10)である。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のTGFファミリーのメンバー(例えば、TGF-α又はTGF-β)である。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、タンパク質のVEGFファミリーのメンバー(例えば、VEGF-C又はPLGF)である。特定の実施形態において、増殖因子創傷治癒ポリペプチドは、PDGF(例えば、PDGF-AA、PDGF-BB又はPDGF-AB)である。
【0092】
[0072]特定の実施形態において、コードされる創傷治癒ポリペプチドは、ヒトサイトカイン創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントなどの哺乳動物サイトカイン創傷治癒ポリペプチドである。サイトカイン創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、G-CSF、GM-CSF、HGF、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10及びTNF-α(例えば、表1を参照されたい)が挙げられる。いくつかの実施形態において、サイトカイン創傷治癒ポリペプチドは、インターロイキン創傷治癒ポリペプチド(例えば、IL-1、IL-6、IL-8又はIL-10)である。
【0093】
[0073]特定の実施形態において、コードされる創傷治癒ポリペプチドは、ヒトケモカイン創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントなどの哺乳動物ケモカイン創傷治癒ポリペプチドである。ケモカイン創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、MCP-1及びSDF-1(例えば、表1を参照されたい)が挙げられる。
【0094】
[0074]特定の実施形態において、コードされる創傷治癒ポリペプチドは、ヒトプロテアーゼ阻害剤創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントなどの哺乳動物プロテアーゼ阻害剤創傷治癒ポリペプチドである。プロテアーゼ阻害剤創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例は、SLPI(例えば、表1を参照されたい)である。
【0095】
[0075]特定の実施形態において、コードされる創傷治癒ポリペプチドは、ヒトコラーゲン創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントなどの哺乳動物コラーゲン創傷治癒ポリペプチドである。コラーゲン創傷治癒ポリペプチドの非限定的な例としては、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン及びXXVIII型コラーゲン(例えば、表1を参照されたい)が挙げられる。
【0096】
[0076]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、細胞に導入されるとき、本発明のポリヌクレオチドの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の前の細胞内の創傷治癒ポリペプチドの発現レベル及び/又は検出可能な活性レベルと比較して、例えば少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%だけ細胞において創傷治癒ポリペプチドの発現レベル及び/又は検出可能な活性レベルを上昇させる。創傷治癒タンパク質の発現レベル及び/又は活性は、当技術分野において知られる方法に従って測定され得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、インビトロで細胞に導入される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、インビボで細胞に導入される。
【0097】
[0077]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、野生型ヒト創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1に記載されるポリペプチド)又はそのアイソフォームをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。
【0098】
[0078]本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、コドン最適化された核酸配列を含み、コドン最適化された核酸配列のオープンリーディングフレーム(ORF)は、野生型創傷治癒配列(例えば、表1に記載される創傷治癒ポリペプチドをコードする野生型ORF)に由来する。例えば、GM-CSFをコードする配列最適化ORFを含む本発明のポリヌクレオチドに関して、対応する野生型配列は、天然ヒトGM-CSFである。同様に、ヒトGM-CSFの機能的断片をコードする配列最適化mRNAに関して、対応する野生型配列は、ヒトGM-CSFに由来する対応する断片である。別の例として、PDGFをコードする配列最適化ORFを含む本発明のポリヌクレオチドに関して、対応する野生型配列は、天然ヒトPDGFである。同様に、ヒトPDGFの機能的断片をコードする配列最適化mRNAに関して、対応する野生型配列は、ヒトPDGFに由来する対応する断片である。さらに別の例として、FGF2をコードする配列最適化ORFを含む本発明のポリヌクレオチドに関して、対応する野生型配列は、天然ヒトFGF2である。同様に、ヒトFGF2の機能的断片をコードする配列最適化mRNAに関して、対応する野生型配列は、ヒトFGF2に由来する対応する断片である。
【0099】
[0079]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、ヒト創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1に記載される創傷治癒ポリペプチド)の全長配列を有する創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0100】
[0080]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、変異体創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、創傷治癒ポリペプチドアミノ酸配列中に少なくとも1つの点変異を含み、且つ創傷治癒ポリペプチドの活性を保持する創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含む。いくつかの実施形態において、変異体創傷治癒ポリペプチドは、対応する野生型創傷治癒の創傷治癒活性の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%である創傷治癒活性を有する。いくつかの実施形態において、変異体創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含む本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、配列最適化されている。
【0101】
[0081]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチドの活性を変化させない変異を有する創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。このような変異体創傷治癒ポリペプチドは、機能中性と呼ばれ得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、1つ以上の機能中性点変異を含む変異体創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含む。
【0102】
[0082]いくつかの実施形態において、変異体創傷治癒ポリペプチドは、対応する野生型創傷治癒ポリペプチドより高い創傷治癒活性を有する。いくつかの実施形態において、変異体創傷治癒ポリペプチドは、対応する野生型創傷治癒ポリペプチド(すなわち同じ創傷治癒ポリペプチドであるが、変異を有しない)の活性より少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%高い創傷治癒活性を有する。
【0103】
[0083]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えばmRNA)は、機能的創傷治癒ポリペプチド断片をコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含み、例えば1つ以上の断片が野生型創傷治癒ポリペプチドのポリペプチド部分配列に対応し、創傷治癒活性を保持する。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチド断片は、対応する全長創傷治癒ポリペプチドの創傷治癒活性の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%である創傷治癒活性を有する。いくつかの実施形態において、機能的創傷治癒ポリペプチド断片をコードするORFを含む本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、配列最適化されている。
【0104】
[0084]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、対応する全長創傷治癒ポリペプチドより高い創傷治癒活性を有する創傷治癒ポリペプチド断片をコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチド断片は、対応する全長創傷治癒ポリペプチドの創傷治癒活性より少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%高い創傷治癒活性を有する。
【0105】
[0085]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、野生型創傷治癒ポリペプチドより少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%又は25%短い創傷治癒ポリペプチド断片をコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。
【0106】
[0086]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、約900~約100,000ヌクレオチド(例えば、900~1,000、900~1,100、900~1,200、900~1,300、900~1,400、900~1,500、1,000~1,100、1,000~1,100、1,000~1,200、1,000~1,300、1,000~1,400、1,000~1,500、1,187~1,200、1,187~1,400、1,187~1,600、1,187~1,800、1,187~2,000、1,187~3,000、1,187~5,000、1,187~7,000、1,187~10,000、1,187~25,000、1,187~50,000、1,187~70,000又は1,187~100,000)を含む。
【0107】
[0087]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型配列、その機能的断片又はバリアント)をコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含み、ヌクレオチド配列(例えば、ORF)の長さは、少なくとも500ヌクレオチド長(例えば、少なくとも約500、600、700、80、900、1,000、1,050、1,100、1,187、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000若しくはそれを超えるか、又は100,000ヌクレオチド以下)である。
【0108】
[0088]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、例えば、マイクロRNA結合部位など、非コード配列である少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型配列、その機能的断片又はバリアント)をコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、5’-UTR(例えば、配列番号3、88~102及び165~167の配列から選択されるか又は配列番号3、配列番号193、配列番号39及び配列番号194の配列から選択される)及び3’UTR(例えば、配列番号104~112、150、151及び178の配列から選択されるか又は配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111及び配列番号178の配列から選択される)をさらに含む。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、5’末端キャップ(例えば、Cap0、Cap1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジドグアノシン、Cap2、Cap4、5’メチルGキャップ又はその類似体)及びポリAテール領域(例えば、約100ヌクレオチド長)を含む。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、配列番号111、112、150、151及び178又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される核酸配列を含む3’UTRを含む。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111又は配列番号178若しくはそれらの任意の組合せからなる群から選択される核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号111の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号151の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号150の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号178の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号175の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号195の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号196の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号4の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、配列番号177の核酸配列を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、ポリAテールを含む。いくつかの例では、ポリAテールは、50~150(配列番号265)、75~150(配列番号266)、85~150(配列番号267)、90~150(配列番号268)、90~120(配列番号269)、90~130(配列番号270)又は90~150(配列番号268)ヌクレオチド長である。いくつかの例において、ポリAテールは、100ヌクレオチド長(配列番号272)である。
【0109】
[0089]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、一本鎖又は二本鎖である創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。
【0110】
[0090]いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型配列、その機能的断片又はバリアント)をコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む本発明のポリヌクレオチドは、DNA又はRNAである。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、RNAである。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、mRNAであるか、又はmRNAとして機能する。いくつかの実施形態において、mRNAは、少なくとも1つの創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含み、インビトロ、インビボ、インサイチュ又はエクスビボで、コードされる創傷治癒ポリペプチドを産生するために翻訳可能である。
【0111】
[0091]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型配列、その機能的断片又はバリアント、例えば、表1の創傷治癒ポリペプチドを参照されたい)をコードする配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含み、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの化学修飾された核酸塩基、例えば、N1-メチルシュードウラシル又は5-メトキシウラシルを含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド中の全てのウラシルが、N1-メチルシュードウラシルである。他の実施形態において、ポリヌクレオチド中の全てのウラシルは、5-メトキシウラシルである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、miRNA結合部位、例えばmiR-142に結合するmiRNA結合部位及び/又はmiR-126に結合するmiRNA結合部位をさらに含む。
【0112】
[0092]いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、例えば、式(I)を有する化合物、例えば、化合物1~232のいずれか、例えば、化合物II;式(III)、(IV)、(V)又は(VI)を有する化合物、例えば、化合物233~342のいずれか、例えば、化合物VI;又は式(VIII)を有する化合物、例えば、化合物419~428のいずれか、例えば、化合物I又はそれらの任意の組合せを含む送達剤とともに製剤化される。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物VI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約30~約60mol%の化合物II又はVI(又は関連する好適なアミノ脂質)(例えば、30~40、40~45、45~50、50~55又は55~60mol%の化合物II又はVI(又は関連する好適なアミノ脂質))、約5~約20mol%のリン脂質(又は関連する好適なリン脂質若しくは「ヘルパー脂質」)(例えば、5~10、10~15又は15~20mol%のリン脂質(又は関連する好適なリン脂質若しくは「ヘルパー脂質」))、約20~約50mol%のコレステロール(又は関連するステロール若しくは「非カチオン性」脂質)(例えば、約20~30、30~35、35~40、40~45又は45~50mol%のコレステロール(又は関連するステロール若しくは「非カチオン性」脂質)及び約0.05~約10mol%のPEG脂質(又は他の好適なPEG脂質)(例えば、0.05~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~7又は7~10mol%のPEG脂質(又は他の好適なPEG脂質))の範囲のモル比率で含む。代表的な送達剤は、例えば、47.5:10.5:39.0:3.0又は50:10:38.5:1.5のモル比率を含み得る。特定の例において、代表的な送達剤は、例えば、47.5:10.5:39.0:3;47.5:10:39.5:3;47.5:11:39.5:2;47.5:10.5:39.5:2.5;47.5:11:39:2.5;48.5:10:38.5:3;48.5:10.5:39:2;48.5:10.5:38.5:2.5;48.5:10.5:39.5:1.5;48.5:10.5:38.0:3;47:10.5:39.5:3;47:10:40.5:2.5;47:11:40:2;47:10.5:39.5:3;48:10.5:38.5:3;48:10:39.5:2.5;48:11:39:2;又は48:10.5:38.5:3のモル比率を含み得る。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II又はVI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II又はVI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。
【0113】
[0093]いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、5’-末端キャップ(例えば、Cap1)、5’UTR(例えば、配列番号3)、創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1に記載されるとおり)をコードするORF配列、3’UTR(例えば、配列番号111)及びポリAテール(例えば、約100ヌクレオチド長)を含むmRNAであり、ポリヌクレオチド中の全てのウラシルが、N1-メチルシュードウラシルである。いくつかの実施形態において、送達剤は、イオン化可能脂質としての化合物II又は化合物VI及びPEG脂質としてのPEG-DMG又は化合物Iを含む。
【0114】
3.シグナル配列
[0094] 本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、治療的に関連している部位へのコードされるポリペプチドの輸送を促進する追加の特徴をコードするヌクレオチド配列も含み得る。タンパク質輸送を促進する1つのこのような特徴は、シグナル配列又は標的化配列である。これらのシグナル配列によりコードされるペプチドは、標的化ペプチド、輸送ペプチド及びシグナルペプチドを含む、様々な名称により知られている。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、本明細書に記載される創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含む。
【0115】
[0095]いくつかの実施形態において、「シグナル配列」又は「シグナルペプチド」は、それぞれ約30~210、例えば、45~80又は15~60ヌクレオチド(例えば、約20、30、40、50、60又は70アミノ酸)長であるポリヌクレオチド又はポリペプチドであり、任意選択により、それぞれコード領域又はポリペプチドの5’(又はN末端)に組み込まれる。これらの配列の付加の結果、1つ以上の標的化経路を通じて、小胞体又はミトコンドリアなどの所望の部位にコードされるポリペプチドが輸送されるようになる。いくつかのシグナルペプチドは、タンパク質が所望の部位に輸送された後、例えばシグナルペプチダーゼによってタンパク質から切り出される。
【0116】
[0096]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、このヌクレオチド配列は、異種シグナルペプチドをコードする5’核酸配列をさらに含む。
【0117】
4.融合タンパク質
[0097] いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、目的のポリペプチドをコードする2つ以上の核酸配列(例えば、ORF)を含み得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントをコードする単一のORFを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、2つ以上のORF、例えば、創傷治癒ポリペプチド(第1の目的のポリペプチド)、その機能的断片又はバリアントをコードする第1のORF及び第2の目的のポリペプチドを発現する第2のORFを含み得る。いくつかの実施形態において、2つ以上の目的のポリペプチドは、遺伝的に融合され得、すなわち、2つ以上のポリペプチドは、同じORFによってコードされ得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2つ以上の目的のポリペプチド間のリンカー(例えば、GS(配列番号86)ペプチドリンカー又は当技術分野で知られる別のリンカー)をコードする核酸配列を含み得る。
【0118】
[0098]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、各々が目的のポリペプチドを発現する2、3、4つ又はそれを超えるORFを含み得る。
【0119】
[0099]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチドをコードする第1の核酸配列(例えば、第1のORF)及び第2の目的のポリペプチド(例えば、第2の創傷治癒ポリペプチド)をコードする第2の核酸配列(例えば、第2のORF)を含み得る。
【0120】
リンカー及び切断可能なペプチド
[0100] 特定の実施形態において、本開示のmRNAは、本明細書で多量体コンストラクトと呼ばれる2つ以上の創傷治癒ポリペプチドドメイン又は異種ドメインをコードする。多量体コンストラクトの特定の実施形態において、mRNAは、各ドメイン間に位置するリンカーをさらにコードする。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー又はプロテアーゼ感受性リンカーであり得る。特定の実施形態において、リンカーは、F2Aリンカー、P2Aリンカー、T2Aリンカー、E2Aリンカー及びそれらの組合せからなる群から選択される。2Aペプチドと呼ばれる自己切断ペプチドリンカーのこのファミリーは、当技術分野で記載されている(例えば、Kim,J.H.et al.(2011)PLoS ONE 6:e18556を参照されたい)。特定の実施形態において、リンカーは、F2Aリンカーである。特定の実施形態において、リンカーは、GGGS(配列番号8)リンカーである。特定の実施形態において、リンカーは、(GGGS)n(配列番号190)リンカーであり、n=2、3、4又は5である。特定の実施形態において、多量体コンストラクトは、構造:ドメイン-リンカー-ドメイン-リンカー-ドメイン、例えば、創傷治癒ポリペプチドドメイン-リンカー-創傷治癒ポリペプチドドメイン-リンカー-創傷治癒ポリペプチドドメインを有する介在性リンカーを伴う3つのドメインを含有する。
【0121】
[0101]一実施形態において、切断可能なリンカーは、F2Aリンカー(例えば、アミノ酸配列GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号186)を有する)である。他の実施形態において、切断可能なリンカーは、T2Aリンカー(例えば、アミノ酸配列GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号187)を有する)、P2Aリンカー(例えば、アミノ酸配列GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号188)を有する)又はE2Aリンカー(例えば、アミノ酸配列GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号189)を有する)である。当業者は、当技術分野で認められる他のリンカーが、本発明のコンストラクト(例えば、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる)における使用に好適であり得ることを理解するであろう。当業者は、他の多シストロンコンストラクトが本発明における使用に好適であり得ることを同様に理解するであろう。例示的な実施形態において、コンストラクト設計は、ほぼ等モル量の本発明のコンストラクトによってコードされる細胞内抗体及び/又はそのドメインをもたらす。
【0122】
[0102]一実施形態において、自己切断ペプチドは、2Aペプチドであり得るが、これに限定されない。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、馬鼻炎Aウイルス2Aペプチド、Thosea asignaウイルス2Aペプチド及び豚テッショウウイルス-1 2Aペプチドを含む様々な2Aペプチドが知られており、当技術分野において利用可能であり、且つ使用され得る。2Aペプチドは、リボソームスキッピングによって1つの転写物から2つのタンパク質を生成するためにいくつかのウイルスによって使用され、その結果、通常のペプチド結合が2Aペプチド配列で損なわれ、1つの翻訳イベントから2つの不連続なタンパク質の生成をもたらす。非限定的な例として、2Aペプチドは、配列番号188のタンパク質配列、その断片又はバリアントを有し得る。一実施形態において、2Aペプチドは、最後のグリシンと最後のプロリンとの間を切断する。別の非限定的な例として、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号188の断片又はバリアントのタンパク質配列を有する2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一例は、
【化1】
である。1つの例示的な実施形態において、2Aペプチドは、以下の配列:
【化2】
によってコードされる。2Aペプチドのポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載される方法によって改変若しくはコドン最適化され得、且つ/又は当技術分野で知られている。
【0123】
[0103]一実施形態において、この配列を使用して、2つ以上の目的のポリペプチドのコード領域を分離し得る。非限定的な例として、F2Aペプチドをコードする配列は、第1のコード領域Aと第2のコード領域Bとの間に存在し得る(A-F2Apep-B)。F2Aペプチドの存在は、F2Aペプチド配列の最後のグリシンとプロリンとの間で1つの長いタンパク質の切断をもたらし(NPGP(配列番号256)が切断されて、NPG及びPをもたらす)、それにより別々のタンパク質A(NPGで終わるF2Aペプチドが結合した21個のアミノ酸を有する)及び別々のタンパク質B(F2Aペプチドが結合した1個のアミノ酸Pを有する)を生成する。同様に、他の2Aペプチド(P2A、T2A及びE2A)に関して、長いタンパク質におけるペプチドの存在は、2Aペプチド配列の最後でグリシンとプロリンとの間での切断をもたらす(NPGP(配列番号256)が切断されて、NPG及びPをもたらす)。タンパク質A及びタンパク質Bは、同じ又は異なる目的のペプチド又はポリペプチドであり得る。
【0124】
5.創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の配列最適化
[0104] いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、配列最適化される。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)、任意選択により、別の目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)、5’-UTR、3’-UTR、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を任意選択により含む5’-UTR若しくは3’-UTR、任意選択により、リンカーをコードするヌクレオチド配列、ポリAテール又はそれらの任意の組合せを含み、ORFは配列最適化される。
【0125】
[0105]創傷治癒ポリペプチドをコードする配列最適化ヌクレオチド配列、例えば、コドン最適化mRNA配列は、参照配列(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードする野生型ヌクレオチド配列)に対して少なくとも1つの同義の核酸塩基置換を含む配列である。
【0126】
[0106]配列最適化ヌクレオチド配列は、部分的に又は完全に参照配列と配列において異なり得る。例えば、均一にUCUコドンによりコードされるポリセリンをコードする参照配列は、AGCコドンにより均一にコードされるポリセリンをコードする配列を生じさせるためにその核酸塩基の100%が置換されることによって(各コドンに対して、位置1のUがAにより置き換えられ、位置2のCがGにより置き換えられ、且つ位置3のUがCにより置き換えられる)配列最適化され得る。参照ポリセリン核酸配列と配列最適化ポリセリン核酸配列との間の網羅的ペアワイズアライメントから得られる配列同一性のパーセンテージは、0%である。しかし、両方の配列からのタンパク質産物は、100%同一である。
【0127】
[0107]いくつかの配列最適化(コドン最適化とも呼ばれることがある)方法が当技術分野で知られており(且つ下でより詳細に論じられ)、1つ以上の所望の結果を達成するために有用であり得る。これらの結果には、例えば、適正な折り畳みを確実にするためにある種の組織標的及び/又は宿主生物においてコドン頻度を合致させること;mRNA安定性を向上させるか、若しくは二次構造を低減するためにG/C含量を偏らせること;遺伝子構築又は発現に障害を与え得る縦列反復コドン又は塩基の一続きを最小限にすること;転写及び翻訳制御領域を個別調整すること;タンパク質輸送配列を挿入又は除去すること;コードされるタンパク質において翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加すること;タンパク質ドメインを付加、除去若しくはシャッフルすること;制限部位を挿入するか若しくは欠失させること;リボソーム結合部位及びmRNA分解部位を修飾すること;タンパク質の様々なドメインを適正に折り畳ませることができるようにするために翻訳速度を調整すること;及び/又はポリヌクレオチド内の問題のある二次構造を減少させるか又は排除することが含まれ得る。配列最適化ツール、アルゴリズム及びサービスが当技術分野で知られており、非限定的な例としては、GeneArt(Life Technologies)からのサービス、DNA2.0(Menlo Park CA)及び/又は独自の方法が挙げられる。
【0128】
[0108]各アミノ酸に対するコドンの選択肢は、下の表2で与えられる。
【0129】
【表2】
【0130】
[0109]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントをコードする配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含み、配列最適化ヌクレオチド配列によりコードされる創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントは、(例えば、配列最適化されていない参照ヌクレオチド配列によりコードされる創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントと比較して)特性の改善を有し、例えば、インビボでの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の発現活性に関する特性の改善を有する。このような特性としては、核酸安定性(例えば、mRNA安定性)の向上、標的組織における翻訳活性の上昇、発現されるトランケート型タンパク質の数の減少、折り畳みの改善又は発現されるタンパク質の誤った折り畳みを防ぐこと、発現産物の毒性低下、発現産物により引き起こされる細胞死の減少、タンパク質凝集の増加及び/又は減少が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
[0110]いくつかの実施形態において、配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、ORF)は、ヒト対象での発現のためにコドン最適化され、当技術分野での問題の1つ以上を回避する構造及び/又は化学的特徴、例えば、構造及び機能的完全性を保持しながら核酸に基づく治療薬の処方及び送達を最適化し;発現の閾値を克服し;発現率、半減期及び/又はタンパク質濃度を改善し;タンパク質局在化を最適化し;且つ免疫反応及び/又は分解経路などの有害な生体反応を回避するのに有用である特徴を有する。
【0132】
[0111]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)、別の目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、ORF)、5’-UTR、3’-UTR、マイクロRNA結合部位、リンカーをコードする核酸配列又はそれらの任意の組合せ)を含み、これは、
(i)参照ヌクレオチド配列(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするORF)中の少なくとも1つのコドンを代替コドンで置換して、ウリジン含量を増加させるか又は減少させて、ウリジン修飾配列を生成すること;
(ii)参照ヌクレオチド配列(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするORF)中の少なくとも1つのコドンを、同義コドンセット中のより高いコドン頻度を有する代替コドンと置換すること;
(iii)参照ヌクレオチド配列(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするORF)中の少なくとも1つのコドンを、G/C含量を増加させる代替コドンと置換すること;又は
(iv)それらの組合せ
を含む方法に従ってコドン最適化される。
【0133】
[0112]いくつかの実施形態において、配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするORF)は、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも1つの特性が改善されている。
【0134】
[0113]いくつかの実施形態において、配列最適化方法は、多パラメーターであり、1、2、3、4つ又はそれを超える本明細書中で開示される方法及び/又は当技術分野で知られる他の最適化方法を含む。
【0135】
[0114]本発明のいくつかの実施形態において有益であると考えられ得る特徴は、ポリヌクレオチドの領域によりコードされるか又はその領域内にあり得、このような領域は、創傷治癒ポリペプチドをコードする領域に対して上流(5’)、下流(3’)又はその領域内に存在し得る。これらの領域は、領域又はオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするタンパク質の配列最適化前及び/又は後にポリヌクレオチドに組み込まれ得る。このような特徴の例としては、非翻訳領域(UTR)、マイクロRNA配列、コザック配列、オリゴ(dT)配列、ポリAテール及び検出可能なタグが挙げられるが、これらに限定されず、XbaI認識を有し得る複数のクローニング部位を含み得る。
【0136】
[0115]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、5’UTR、3’UTR及び/又はマイクロRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2つ以上の5’UTR及び/又は3’UTRを含み、これらは、同じ又は異なる配列であり得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2つ以上のマイクロRNA結合部位を含み、これらは、同じ又は異なる配列であり得る。存在しないことを含め、5’UTR、3’UTR及び/又はマイクロRNA結合部位の任意の部分が配列最適化され得、配列最適化前及び/又は後に1つ以上の異なる構造又は化学修飾を独立して含有し得る。
【0137】
[0116]いくつかの実施形態において、最適化後、ポリヌクレオチドが再構成され、プラスミド、ウイルス、コスミド及び人工染色体などであるが、これらに限定されないベクターに形質転換される。例えば、最適化ポリヌクレオチドが再構成され、ケミカルコンピテント大腸菌(E.coli)、酵母、ニューロスポラ、トウモロコシ、ショウジョウバエなどに形質転換され得る。本明細書に記載される方法により高コピープラスミド様又は染色体構造が生じる。
【0138】
6.創傷治癒ポリペプチドをコードする配列最適化ヌクレオチド配列
[0117] いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書で開示される創傷治癒ポリペプチドをコードする配列最適化ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、このORFは、配列最適化されている。いくつかの実施形態において、配列最適化創傷治癒配列、その断片及びバリアントを使用して、本明細書で開示される方法を実行する。
【0139】
[0118]いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチド、例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、5’から3’末端に:
(i)本明細書で提供される5’キャップ、例えば、Cap1;
(ii)本明細書で提供される配列などの5’UTR、例えば、配列番号3;
(iii)創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、例えば、表1に記載される創傷治癒ポリペプチドをコードする配列最適化核酸配列;
(iv)少なくとも1つの終止コドン(3’UTRの5’末端に存在しない場合);
(v)本明細書で提供される配列などの3’UTR、例えば、配列番号111;及び
(vi)上で提供されるポリAテール
を含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド中の全てのウラシルが、N1-メチルシュードウラシル(G5)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド中の全てのウラシルが、5-メトキシウラシル(G6)である。
【0140】
[0119]本明細書で開示される配列最適化ヌクレオチド配列は、対応する野生型ヌクレオチド酸配列及び他の既知の配列最適化ヌクレオチド配列と異なり、例えば、これらの配列最適化核酸は、固有の組成上の特徴を有する。
【0141】
[0120]いくつかの実施形態において、(例えば、創傷治癒ポリペプチド、その機能的断片又はバリアントをコードする)配列最適化ヌクレオチド配列中のウラシル又はチミン核酸塩基のパーセンテージは、参照野生型ヌクレオチド配列におけるウラシル又はチミン核酸塩基のパーセンテージに対して改変される(例えば、減少する)。このような配列は、ウラシル修飾又はチミン修飾配列と呼ばれる。ヌクレオチド配列中のウラシル又はチミン含量のパーセンテージは、配列中のウラシル又はチミンの数をヌクレオチドの総数で除し、100をかけることによって決定され得る。いくつかの実施形態において、配列最適化ヌクレオチド配列のウラシル又はチミン含量は、参照野生型配列中のウラシル又はチミン含量よりも低い。いくつかの実施形態において、本発明の配列最適化ヌクレオチド配列中のウラシル又はチミン含量は、参照野生型配列中のウラシル又はチミン含量よりも高く、依然として有益な効果を維持し、例えば、参照野生型配列と比較した場合、発現が増加し、且つ/又はトール様受容体(TLR)反応が低下する。
【0142】
[0121]コドン頻度を最適化するための方法は、当技術分野において知られている。例えば、本明細書で提供される配列の任意の1つ以上のORFは、コドン最適化され得る。コドン最適化は、いくつかの実施形態において、適正な折り畳みを確実にするために標的及び宿主生物においてコドン頻度を合致させるか;mRNA安定性を向上させるか、若しくは二次構造を低減するためにGC含量を偏らせるか;遺伝子構築又は発現に障害を与え得る縦列反復コドン又は塩基の一続きを最小限にするか;転写及び翻訳制御領域を個別調整するか;タンパク質輸送配列を挿入若しくは除去するか;コードされるタンパク質において翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加するか;タンパク質ドメインを付加、除去若しくはシャッフルするか;制限部位を挿入するか若しくは欠失させるか;リボソーム結合部位及びmRNA分解部位を修飾するか;タンパク質の様々なドメインを適正に折り畳ませることができるようにするために翻訳速度を調整するか;又はポリヌクレオチド内の問題のある二次構造を減少させるか若しくは排除するために使用され得る。コドン最適化ツール、アルゴリズム及びサービスが当技術分野で知られており、非限定的な例としては、GeneArt(Life Technologies)からのサービス、DNA2.0(Menlo Park CA)及び/又は独自の方法が挙げられる。いくつかの実施形態において、オープンリーディングフレーム(ORF)配列は、最適化アルゴリズムを使用して最適化される。
【0143】
7.配列最適化核酸の特徴付け
[0122] 本発明のいくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードする本明細書で開示される配列最適化核酸を含むポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、少なくとも1つの核酸配列の特性(例えば、ヌクレアーゼに曝されたときの安定性)又は発現特性が非配列最適化核酸に対して改善しているかどうかを決定するために試験され得る。
【0144】
[0123]本明細書で使用する場合、「発現特性」は、インビボ(例えば、それを必要とする対象への皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の合成mRNAの翻訳活性)又はインビトロ(例えば、インビトロモデル系において試験される合成mRNAの翻訳活性)のいずれかでの核酸配列の特性を指す。発現特性としては、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAによって生成されるタンパク質の量及び生成される可溶性又は他の点で機能的なタンパク質の量が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される配列最適化核酸は、本明細書で開示される創傷治癒ポリペプチドをコードする配列最適化核酸配列(例えば、RNA、例えば、mRNA)によってコードされるタンパク質を発現する細胞の生存率に従って評価され得る。
【0145】
[0124]特定の実施形態において、非最適化参照核酸配列に対してコドン置換を含有する本明細書で開示される複数の配列最適化核酸(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、目的の特性、例えば、インビトロモデル系又は標的組織若しくは細胞中におけるインビボでの発現特性を測定するために機能的に特徴付けられ得る。
【0146】
a.核酸配列の固有の特性の最適化
[0125] 本発明のいくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの所望の特性は、核酸配列の固有の特性である。例えば、ヌクレオチド配列(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、インビボ又はインビトロ安定性のために配列最適化され得る。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は、特定の標的組織又は細胞中での発現のために配列最適化され得る。いくつかの実施形態において、核酸配列は、エンド及びエキソヌクレアーゼによるその分解を妨げることによってその血漿半減期を増大させるために配列最適化される。
【0147】
[0126]他の実施形態において、核酸配列は、溶液中での加水分解に対するその耐性を増大させる、例えば、配列最適化核酸又は配列最適化核酸を含む医薬組成物が、最小限の分解を伴って水性条件下で保管され得る時間を長くするために配列最適化される。
【0148】
[0127]他の実施形態において、配列最適化核酸は、乾燥保管条件での加水分解に対するその耐性を増大させる、例えば、配列最適化核酸が、最小限の分解を伴って凍結乾燥後に保管され得る時間を長くするために最適化され得る。
【0149】
b.タンパク質発現のために最適化された核酸配列
[0128] 本発明のいくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの所望の特性は、本明細書で開示される配列最適化配列によってコードされる創傷治癒ポリペプチドの発現のレベルである。タンパク質発現レベルは、1つ以上の発現系を使用して測定され得る。いくつかの実施形態において、発現は、細胞培養系、例えば、CHO細胞又はHEK293細胞中で測定され得る。いくつかの実施形態において、発現は、生細胞の抽出物、例えば、ウサギ網状赤血球ライセートから調製されるインビトロ発現系又は精製された個々の構成要素の集合によって調製されるインビトロ発現系を使用して測定され得る。他の実施形態において、タンパク質発現は、インビボ系、例えば、マウス、ウサギ、サルなどにおいて測定される。
【0150】
[0129]いくつかの実施形態において、溶液形態におけるタンパク質発現が望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態において、参照配列は、最適化されたレベルの可溶型で発現されるタンパク質を有する配列最適化核酸配列を得るために配列最適化され得る。タンパク質発現及び可溶性などの他の特性のレベル、凝集のレベル並びにトランケート型産物(すなわちタンパク質分解、加水分解又は欠陥のある翻訳に起因する断片)の存在は、例えば、電気泳動(例えば、ネイティブ又はSDS-PAGE)又はクロマトグラフィー法(例えば、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィーなど)を使用する当技術分野において知られる方法に従って測定され得る。
【0151】
c.標的組織又は標的細胞生存率の最適化
[0130] いくつかの実施形態において、核酸配列によってコードされる異種治療用タンパク質の発現は、標的組織又は細胞において有害な作用を有する場合があり、タンパク質収量を減少させるか、又は発現される産物の品質を低下させるか(例えば、タンパク質断片の存在又は封入体で発現されるタンパク質の沈殿に起因する)、又は毒性をもたらす。
【0152】
[0131]したがって、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書で開示される核酸配列、例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードする核酸配列の配列最適化は、配列最適化核酸によってコードされるタンパク質を発現する標的細胞の生存率を増大させるために使用され得る。
【0153】
[0132]異種タンパク質発現は、自己又は異種移植のために核酸配列でトランスフェクトされた細胞にとって有害である場合もある。したがって、本開示のいくつかの実施形態において、本明細書で開示される核酸配列の配列最適化は、配列最適化核酸配列によってコードされるタンパク質を発現する標的細胞の生存率を増大させるために使用され得る。細胞又は組織生存率、毒性及び他の生理反応における変化は、当技術分野において知られる方法に従って測定され得る。
【0154】
d.免疫及び/又は炎症反応の低減
[0133] いくつかの場合において、創傷治癒ポリペプチド又はその機能的断片をコードする配列最適化核酸の投与は、免疫反応を誘発する可能性があり、これは、(i)治療剤(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)、又は(ii)そのような治療剤の発現産物(例えば、mRNAによってコードされる創傷治癒ポリペプチド)、又は(iv)その組合せによって引き起こされる可能性がある。したがって、本開示のいくつかの実施形態において、本明細書で開示される核酸配列(例えば、mRNA)の配列最適化は、創傷治癒ポリペプチドをコードする核酸の投与又はそのような核酸によってコードされる創傷治癒ポリペプチドの発現産物によって誘発される免疫又は炎症反応を低減するために使用され得る。
【0155】
[0134]いくつかの態様において、炎症反応は、当技術分野において知られる方法、例えば、ELISAを使用して1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの増大を検出することによって測定され得る。用語「炎症性サイトカイン」は、炎症反応において上昇するサイトカインを指す。炎症性サイトカインの例としては、インターロイキン-6(IL-6)、GROαとしても知られるCXCL1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、インターフェロン-γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ誘導性タンパク質10(IP-10)又は顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が挙げられる。炎症性サイトカインという用語は、当技術分野で知られる炎症反応に関連する他のサイトカイン、例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(Il-13)、インターフェロンα(IFN-α)なども含む。
【0156】
8.創傷治癒ポリペプチドをコードする修飾されたヌクレオチド配列
[0135] いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、化学修飾された核酸塩基、例えば、化学修飾されたウラシル、例えば、シュードウラシル、N1-メチルシュードウラシル、5-メトキシウラシルなどを含む。いくつかの実施形態において、mRNAは、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFを含むウラシルが修飾された配列であり、mRNAは、化学修飾された核酸塩基、例えば、化学修飾されたウラシル、例えば、シュードウラシル、N1-メチルシュードウラシル又は5-メトキシウラシルを含む。
【0157】
[0136]本発明の特定の態様において、修飾ウラシル塩基がリボース糖に連結される場合、ポリヌクレオチドの場合のように、得られる修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドは、修飾ウリジンと呼ばれる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド中のウラシルは、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は約100%が修飾ウラシルである。一実施形態において、ポリヌクレオチド中のウラシルは、少なくとも95%が修飾ウラシルである。別の実施形態において、ポリヌクレオチド中のウラシルは、100%が修飾ウラシルである。
【0158】
[0137]ポリヌクレオチド中のウラシルにおいて少なくとも95%が修飾ウラシルである実施形態において、全体のウラシル含量は、mRNAが免疫反応をほとんど又は全く誘導せずに好適なタンパク質発現レベルをもたらすように調整され得る。いくつかの実施形態において、ORF中のウラシル含量は、対応する野生型ORFにおける理論上最小のウラシル含量(%UTM)の約100%~約150%、約100%~約110%、約105%~と約115%、約110%~約120%、約115%~約125%、約120%~約130%、約125%~約135%、約130%~約140%、約135%~約145%、約140%~約150%である。他の実施形態において、ORFのウラシル含量は、%UTMの約121%~約136%又は123%~134%である。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFのウラシル含量は、%UTMの約115%、約120%、約125%、約130%、約135%、約140%、約145%又は約150%である。これに関連して、「ウラシル」という用語は、修飾ウラシル及び/又は天然に存在するウラシルを指す場合がある。
【0159】
[0138]いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA中のORF中のウラシル含量は、ORF中の総核酸塩基含量の約30%、約25%、約20%、約15%又は約10%未満である。いくつかの実施形態において、ORF中のウラシル含量は、ORF中の総核酸塩基含量の約10%~約20%である。他の実施形態において、ORF中のウラシル含量は、ORF中の総核酸塩基含量の約10%~約25%である。一実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORF中のウラシル含量は、オープンリーディングフレーム中の総核酸塩基含量の約20%未満である。これに関連して、「ウラシル」という用語は、修飾ウラシル及び/又は天然に存在するウラシルを指す場合がある。
【0160】
[0139]さらなる実施形態において、修飾ウラシル及び調整されたウラシル含量を有する創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORFは、シトシン(C)、グアニン(G)又はグアニン/シトシン(G/C)含量(絶対又は相対)の増加を有する。いくつかの実施形態において、ORFのC、G又はG/C含量(絶対又は相対)における全体的な増加は、野生型ORFのG/C含量(絶対又は相対)と比較して少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%である。いくつかの実施形態において、ORF中のG、C又はG/C含量は、創傷治癒ポリペプチドをコードする対応する野生型ヌクレオチド配列の理論上最大のG、C又はG/C含量(%GTMX;%CTMX又は%G/CTMX)の約100%未満、約90%未満、約85%未満又は約80%未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるG及び/又はC含量(絶対又は相対)における増加は、低いG、C又はG/C含量を有する同義コドンを、より高いG、C又はG/C含量を有する同義コドンと置き換えることによって実施され得る。他の実施形態において、G及び/又はC含量(絶対又は相対)における増加は、Uで終わるコドンを、G又はCで終わる同義コドンと置き換えることによって実施される。
【0161】
[0140]さらなる実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORFは、修飾ウラシルを含み、創傷治癒ポリペプチドをコードする対応する野生型ヌクレオチド配列よりも少ないウラシル対(UU)及び/又はウラシルトリプレット(UUU)及び/又はウラシルクアドラプレット(UUUU)を含有するウラシル含量に調整されている。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORFは、ウラシル対及び/又はウラシルトリプレット及び/又はウラシルクアドラプレットを含有しない。いくつかの実施形態において、ウラシル対及び/又はウラシルトリプレット及び/又はウラシルクアドラプレットは、特定の閾値未満、例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORF中で発生数が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20以下に減少される。特定の実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORFは、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1つ未満の非フェニルアラニンウラシル対及び/又はトリプレットを含有する。別の実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA中のORFは、非フェニルアラニンウラシル対及び/又はトリプレットを含有しない。
【0162】
[0141]さらなる実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORFは、修飾ウラシルを含み、創傷治癒ポリペプチドをコードする対応する野生型ヌクレオチド配列よりも少ないウラシルに富むクラスターを含有するウラシル含量に調整されている。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORFは、創傷治癒ポリペプチドをコードする対応する野生型ヌクレオチド配列中の対応するウラシルに富むクラスターよりも短いウラシルに富むクラスターを含有する。
【0163】
[0142]さらなる実施形態において、代替的なより低頻度のコドンが使用される。修飾ウラシルを含むmRNAの創傷治癒ポリペプチドをコードするORF中のコドンの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%又は100%が代替コドンで置換され、各代替コドンは、同義コドンセット中の置換されるコドンのコドン頻度よりも低いコドン頻度を有する。ORFは、上記のようにウラシル含量も調整されている。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAのORF中の少なくとも1つのコドンが、同義コドンセット中の置換されるコドンのコドン頻度よりも低いコドン頻度を有する代替コドンで置換される。
【0164】
[0143]いくつかの実施形態において、修飾ウラシルを含むmRNAの創傷治癒ポリペプチドをコードするORFのウラシル含量の調整は、哺乳動物細胞に投与した場合、対応する野生型mRNAからの創傷治癒ポリペプチドの発現レベルよりも高い創傷治癒ポリペプチドの発現レベルを呈する。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、マウス細胞、ラット細胞又はウサギ細胞である。他の実施形態において、哺乳動物細胞は、サル細胞又はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、ヒト細胞は、HeLa細胞、BJ線維芽細胞又は末梢血液単核細胞(PBMC)である。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドは、mRNAがインビボで哺乳動物細胞に投与される場合、対応する野生型mRNA由来の創傷治癒ポリペプチドの発現レベルより高いレベルで発現される。いくつかの実施形態において、mRNAは、マウス、ウサギ、ラット、サル又はヒトに投与される。一実施形態において、マウスは、ヌルマウスである。いくつかの実施形態において、mRNAは、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg又は約0.2mg/kg若しくは約0.5mg/kgの量でマウスに投与される。他の実施形態において、創傷治癒ポリペプチドは、mRNAが哺乳動物細胞にインビトロで投与される場合に発現される。いくつかの実施形態において、発現は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1500倍又は少なくとも約3000倍増加される。他の実施形態において、発現は、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、60%、約70%、約80%、約90%又は約100%増加される。
【0165】
[0144]いくつかの実施形態において、ウラシル含量調整、修飾ウラシルを含むmRNAの創傷治癒ポリペプチドをコードするORFは、安定性の向上を示す。いくつかの実施形態において、mRNAは、同じ条件下での対応する野生型mRNAの安定性と比較して細胞中での安定性の向上を示す。いくつかの実施形態において、mRNAは、ヌクレアーゼに対する耐性、熱安定性及び/又は二次構造の安定性の向上を含む安定性の向上を示す。いくつかの実施形態において、mRNAにより示される安定性の向上は、mRNAの半減期(例えば、血漿、血清、細胞又は組織試料中)を決定すること及び/又は経時的なmRNAによるタンパク質発現の曲線下面積(AUC)(例えば、インビトロ又はインビボ)を決定することによって測定される。mRNAは、半減期及び/又はAUCが同じ条件下での対応する野生型mRNAの半減期及び/又はAUCよりも大きい場合、安定性の向上を有すると特定される。
【0166】
[0145]いくつかの実施形態において、本発明のmRNAは、同じ条件下での対応する野生型mRNAにより誘導される免疫反応と比較して、検出できるほどにより低い免疫反応(例えば、自然又は獲得)を誘導する。他の実施形態において、本開示のmRNAは、同じ条件下で創傷治癒ポリペプチドをコードするが、修飾ウラシルを含まないmRNAにより誘導される免疫反応と比較して、又は同じ条件下で創傷治癒ポリペプチドをコードし、修飾ウラシルを含むが、ウラシル含量が調整されていないmRNAにより誘導される免疫反応と比較して、検出できるほどにより低い免疫反応(例えば、自然又は獲得)を誘導する。自然免疫反応は、炎症促進性サイトカインの発現の増加、細胞内PRR(RIG-I、MDA5など)の活性化、細胞死及び/又はタンパク質翻訳の終結若しくは減少により明示され得る。いくつかの実施形態において、自然免疫反応の低減は、1型インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-κ、IFN-δ、IFN-ε、IFN-τ、IFN-ω及びIFN-ζ)の発現若しくは活性レベル又はトール様受容体(例えば、TLR7及びTLR8)などのインターフェロン調節遺伝子の発現により、且つ/又は細胞への本発明のmRNAの1回以上の投与後の細胞死の減少により測定され得る。
【0167】
[0146]いくつかの実施形態において、本開示のmRNAと反応した哺乳動物細胞による1型インターフェロンの発現は、対応する野生型mRNA、創傷治癒ポリペプチドをコードするが、修飾ウラシルを含まないmRNA又は創傷治癒ポリペプチドをコードし、修飾ウラシルを含むがウラシル含量が調整されていないmRNAと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%又は99.9%を超えて低減される。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、IFN-βである。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞への本開示のmRNAの投与により引き起こされる細胞死頻度は、対応する野生型mRNA、創傷治癒ポリペプチドをコードするが、修飾ウラシルを含まないmRNA又は創傷治癒ポリペプチドをコードし、修飾ウラシルを含むがウラシル含量が調整されていないmRNAで観察される細胞死頻度よりも10%、25%、50%、75%、85%、90%、95%又は95%を超えて少ない。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、BJ線維芽細胞である。他の実施形態において、哺乳動物細胞は、脾細胞である。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、マウス又はラットの細胞である。他の実施形態において、哺乳動物細胞は、ヒトの細胞である。一実施形態において、本開示のmRNAは、mRNAが導入される哺乳動物細胞の自然免疫反応を実質的に誘導しない。
【0168】
9.ポリヌクレオチドを修飾するための方法
[0147] 本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、例えば、mRNA)を含む修飾ポリヌクレオチドを含む。修飾ポリヌクレオチドは、化学的に修飾され得、且つ/又は構造的に修飾され得る。本発明のポリヌクレオチドが化学的且つ/又は構造的に修飾される場合、ポリヌクレオチドは、「修飾ポリヌクレオチド」と呼ばれ得る。
【0169】
[0148]本開示は、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチドなどのRNAポリヌクレオチド)の修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドを提供する。「ヌクレオシド」は、有機塩基(例えば、プリン又はピリミジン)又はその誘導体(本明細書中で「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせて糖分子(例えば、ペントース又はリボース)又はその誘導体を含有する化合物を指す。「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオチドは、1つ以上の修飾又は非天然ヌクレオシドを含むように、いずれかの有用な方法、例えば、化学的に、酵素的に又は組換えなどにより合成され得る。ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの1つ又は複数の領域を含み得る。このような領域は、可変骨格結合を有し得る。結合は、標準的なホスホジエステル結合であり得、この場合、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチドの領域を含む。
【0170】
[0149]本明細書で開示される修飾ポリヌクレオチドは、様々な個別の修飾を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、1つ、2つ又はそれを超える(任意選択により異なる)ヌクレオシド又はヌクレオチド修飾を含有する。いくつかの実施形態において、細胞に導入される修飾ポリヌクレオチドは、例えば、非修飾ポリヌクレオチドと比較した場合、タンパク質発現の向上、免疫原性の低下又は細胞中での変性の低減など、1つ以上の所望の特性を示し得る。
【0171】
[0150]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、構造的に修飾される。本明細書で使用する場合、「構造的」修飾は、ヌクレオチド自体に対する顕著な化学修飾を伴わずに、ポリヌクレオチドにおいて2つ以上の連結ヌクレオシドが挿入されているか、欠失しているか、重複しているか、反転されているか又はランダム化されているものである。化学結合は、構造的修飾をなすために必ず破壊され、再形成されることになるため、構造的修飾は、化学的な性質のものであり、したがって、化学修飾である。しかし、構造的修飾は、ヌクレオチドの異なる配列をもたらすことになる。例えば、ポリヌクレオチド「ATCG」は、「AT-5meC-G」へと化学的に修飾され得る。同じポリヌクレオチドが「ATCG」から「ATCCCG」に構造的に修飾され得る。ここで、ジヌクレオチド「CC」が挿入されており、その結果、ポリヌクレオチドに対する構造的修飾が生じる。
【0172】
[0151]本開示の治療用組成物は、いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つの核酸(例えば、RNA)を含み、核酸は、標準物質(修飾されていない)であり得るか又は当技術分野で知られるとおりに修飾され得るヌクレオチド及び/又はヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドを含む。そのような修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドは、天然に存在する修飾ヌクレオチド及びヌクレオシド又は天然に存在しない修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドであり得る。そのような修飾は、当技術分野で認められるとおりヌクレオチド及び/又はヌクレオシドの糖、骨格又は核酸塩基部分でそれらを含み得る。
【0173】
[0152]いくつかの実施形態において、本開示の天然に存在する修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドは、当技術分野で一般に知られるか又は認められるとおりのものである。そのような天然に存在する修飾ヌクレオチド及びヌクレオチドの非限定的な例は、とりわけ、広く認められるMODOMICSデータベースにおいて見出され得る。
【0174】
[0153]いくつかの実施形態において、本開示の天然に存在しない修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドは、当技術分野で一般に知られるか又は認められるとおりのものである。そのような天然に存在しない修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドの非限定的な例は、とりわけ、全てが参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開番号PCT/米国特許出願公開第2012/058519号明細書;PCT/米国特許出願公開第2013/075177号明細書;PCT/米国特許出願公開第2014/058897号明細書;PCT/米国特許出願公開第2014/058891号明細書;PCT/米国特許出願公開第2014/070413号明細書;PCT/米国特許出願公開第2015/36773号明細書;PCT/米国特許出願公開第2015/36759号明細書;PCT/米国特許出願公開第2015/36771号明細書;又はPCT/IB2017/051367号明細書において見出され得る。
【0175】
[0154]いくつかの実施形態において、本開示の少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)は、化学的に修飾されず、且つアデノシン、グアノシン、シトシン及びウリジンからなる標準的なリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、転写されるRNAにおいて存在するものなどの標準的なヌクレオシド残基(例えば、A、G、C又はU)を含む。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、DNAにおいて存在するものなどの標準的なデオキシリボヌクレオシド(例えば、dA、dG、dC又はdT)を含む。
【0176】
[0155]したがって、本開示の核酸(例えば、DNA核酸及びmRNA核酸などのRNA核酸)は、標準的なヌクレオチド及びヌクレオシド、天然に存在するヌクレオチド及びヌクレオシド、天然に存在しないヌクレオチド及びヌクレオシド又はそれらの任意の組合せを含み得る。
【0177】
[0156]本開示の核酸(例えば、DNA核酸及びmRNA核酸などのRNA核酸)は、いくつかの実施形態において、様々な(2つ以上の)異なる種類の標準的及び/又は修飾ヌクレオチド並びにヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、核酸の特定の領域は、1つ、2つ以上(任意選択により異なる)の種類の標準的及び/又は修飾ヌクレオチド並びにヌクレオシドを含有する。
【0178】
[0157]いくつかの実施形態において、細胞又は生物体に導入される修飾RNA核酸(例えば、修飾mRNA核酸)は、標準的なヌクレオチド及びヌクレオシドを含む非修飾核酸と比較して、それぞれ細胞又は生物体中での分解の低減を示す。
【0179】
[0158]いくつかの実施形態において、細胞又は生物体に導入される修飾RNA核酸(例えば、修飾mRNA核酸)は、標準的なヌクレオチド及びヌクレオシドを含む非修飾核酸と比較して、それぞれ細胞又は生物体中での免疫原性の低下(例えば、生得的反応の低下)を示し得る。
【0180】
[0159]核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)は、いくつかの実施形態において、所望の機能又は特性を達成するための核酸の合成中又は合成後に導入される非天然修飾ヌクレオチドを含む。修飾は、ヌクレオチド間結合、プリン若しくはピリミジン塩基又は糖上に存在し得る。修飾は、鎖の末端又は鎖中のどこか他の場所で化学合成又はポリメラーゼ酵素により導入され得る。核酸の領域のいずれかが化学的に修飾され得る。
【0181】
[0160]本開示は、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)の修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドを提供する。「ヌクレオシド」は、有機塩基(例えば、プリン又はピリミジン)又はその誘導体(本明細書で「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせて糖分子(例えば、ペントース又はリボース)又はその誘導体を含有する化合物を指す。「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオチドは、1つ以上の修飾又は非天然ヌクレオシドを含むように、いずれかの有用な方法、例えば、化学的に、酵素的に又は組換えなどにより合成され得る。核酸は、連結されたヌクレオシドの1つ又は複数の領域を含み得る。このような領域は、可変骨格結合を有し得る。結合は、標準的なホスホジエステル結合であり得、この場合、核酸は、ヌクレオチドの領域を含む。
【0182】
[0161]修飾ヌクレオチド塩基対形成は、標準的なアデノシン-チミン、アデノシン-ウラシル又はグアノシン-シトシン塩基対だけでなく、非標準的又は修飾塩基を含むヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチド間で形成される塩基対も包含し、水素結合ドナー及び水素結合アクセプターの構成により、非標準塩基と標準塩基との間又は例えば、少なくとも1つの化学修飾を有するそれらの核酸におけるものなど、2つの相補的な非標準塩基構造間での水素結合形成が可能になる。このような非標準塩基対形成の一例は、修飾ヌクレオチドイノシンと、アデニン、シトシン又はウラシルとの間の塩基対形成である。塩基/糖又はリンカーの任意の組合せが本開示の核酸に組み込まれ得る。
【0183】
[0162]いくつかの実施形態において、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)中の修飾核酸塩基は、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、1-エチル-シュードウリジン(e1ψ)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-メチル-シチジン(m5C)及び/又はシュードウリジン(ψ)を含む。いくつかの実施形態において、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)中の修飾核酸塩基は、5-メトキシメチルウリジン、5-メチルチオウリジン、1-メトキシメチルシュードウリジン、5-メチルシチジン及び/又は5-メトキシシチジンを含む。いくつかの実施形態において、ポリリボヌクレオチドは、化学修飾を含むが、これらに限定されない前述の修飾核酸塩基のいずれかの少なくとも2つ(例えば、2、3、4つ以上)の組合せを含む。
【0184】
[0163]いくつかの実施形態において、本開示のRNA核酸は、核酸の1つ以上又は全てのウリジン位置でN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)置換を含む。
【0185】
[0164]いくつかの実施形態において、本開示のRNA核酸は、核酸の1つ以上又は全てのウリジン位置でN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)置換及び核酸の1つ以上又は全てのシチジン位置で5-メチルシチジン置換を含む。
【0186】
[0165]いくつかの実施形態において、本開示のRNA核酸は、核酸の1つ以上又は全てのウリジン位置でシュードウリジン(ψ)置換を含む。
【0187】
[0166]いくつかの実施形態において、本開示のRNA核酸は、核酸の1つ以上又は全てのウリジン位置でシュードウリジン(ψ)置換及び核酸の1つ以上又は全てのシチジン位置で5-メチルシチジン置換を含む。
【0188】
[0167]いくつかの実施形態において、本開示のRNA核酸は、核酸の1つ以上又は全てのウリジン位置でウリジンを含む。
【0189】
[0168]いくつかの実施形態において、核酸(例えば、mRNA核酸などのRNA核酸)は、特定の修飾のために均一に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたって修飾される)。例えば、核酸は、N1-メチル-シュードウリジンで均一に修飾され得るが、これはmRNA配列中の全てのウリジン残基がN1-メチル-シュードウリジンで置き換えられることを意味する。同様に、核酸は、上記のものなどの修飾残基による置き換えによって配列中に存在するヌクレオシド残基のいずれかの種類に関して均一に修飾され得る。
【0190】
[0169]本開示の核酸は、部分的に又は分子の全長にわたって完全に修飾され得る。例えば、ヌクレオチド(例えば、プリン若しくはピリミジン又はA、G、U、Cの任意の1つ以上若しくは全て)の1つ以上若しくは全て又は所与の種類は、本開示の核酸中又はその既定の配列領域中(例えば、ポリAテールを含むか又は除くmRNA中)で均一に修飾され得る。いくつかの実施形態において、本開示の核酸中(又はその配列領域中)の全てのヌクレオチドXは、修飾ヌクレオチドであり、Xは、ヌクレオチドA、G、U、Cのいずれか1つ又は組合せA+G、A+U、A+C、G+U、G+C、U+C、A+G+U、A+G+C、G+U+C若しくはA+G+Cのいずれか1つであり得る。
【0191】
[0170]核酸は、約1%~約100%の修飾ヌクレオチド(全体的なヌクレオチド含量に関して又はヌクレオチドの1つ以上の種類、すなわちA、G、U又はCの任意の1つ以上に関して)又は間にある任意のパーセンテージ(例えば、1%~20%、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%及び95%~100%)を含有し得る。残りのパーセンテージは、修飾されていないA、G、U又はCの存在によって占められることが理解されるであろう。
【0192】
[0171]核酸は、最小1%及び最大100%の修飾ヌクレオチド又は間にある任意のパーセンテージ、例えば、少なくとも5%の修飾ヌクレオチド、少なくとも10%の修飾ヌクレオチド、少なくとも25%の修飾ヌクレオチド、少なくとも50%の修飾ヌクレオチド、少なくとも80%の修飾ヌクレオチド又は少なくとも90%の修飾ヌクレオチドを含有し得る。例えば、核酸は、修飾ウラシル又はシトシンなどの修飾ピリミジンを含有し得る。いくつかの実施形態において、核酸中のウラシルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%は、修飾ウラシル(例えば、5-置換ウラシル)で置き換えられる。修飾ウラシルは、単一の固有の構造を有する化合物によって置き換えられ得るか、又は異なる構造(例えば、2、3、4つ以上の固有の構造)を有する複数の化合物によって置き換えられ得る。いくつかの実施形態において、核酸中のシトシンの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%は、修飾シトシン(例えば、5-置換シトシン)で置き換えられる。修飾シトシンは、単一の固有の構造を有する化合物によって置き換えられ得るか、又は異なる構造(例えば、2、3、4つ以上の固有の構造)を有する複数の化合物によって置き換えられ得る。
【0193】
10.非翻訳領域(UTR)
[0172] ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドの翻訳は、様々なシス作用性核酸構造によって提供される様々な機構によって制御され、且つ調節され得る例えば、ヘアピン又は他の高次(例えば、シュードノット)分子内mRNA二次構造を形成する天然に存在するシス作用性RNAエレメントは、ポリヌクレオチドに対する翻訳調節活性をもたらすことができ、RNAエレメントが5’キャップ構造に近い5’UTR中に位置する場合に特に、RNAエレメントは、ポリヌクレオチド翻訳の開始に影響を及ぼすか又は調節する(Pelletier and Sonenberg(1985)Cell 40(3):515-526;Kozak(1986)Proc Natl Acad Sci 83:2850-2854)。
【0194】
[0173]非翻訳領域(UTR)は、翻訳されない開始コドン(5’UTR)の前及び終止コドン(3’UTR)後のポリヌクレオチドの核酸区間である。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む本発明のポリヌクレオチド(例えば、リボ核酸(RNA)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))は、UTR(例えば、5’UTR若しくはその機能的断片、3’UTR若しくはその機能的断片又はその組合せ)をさらに含む。
【0195】
[0174]シス作用性RNAエレメントも、多数のフレームシフト現象に関与する翻訳伸長に影響を及ぼし得る(Namy et al.,(2004)Mol Cell 13(2):157-168)。内部リボソーム進入配列(IRES)は、通常5’UTR中に位置するシス作用性RNAエレメントの別の種類を表すが、天然に存在するmRNAのコード領域内に見出されることも報告されている(Holcik et al.(2000)Trends Genet 16(10):469-473)。細胞のmRNAにおいて、IRESは5’-キャップ構造と共存する場合が多く、キャップ依存的な翻訳が損なわれる条件下で翻訳されることになる機能的能力を有するmRNAをもたらす(Gebauer et al.,(2012)Cold Spring Harb Perspect Biol 4(7):a012245)。天然に存在するシス作用性のRNAエレメントの別の種類は、上流のオープンリーディングフレーム(uORF)を含む。天然に存在するuORFは、多数のmRNAの5’UTR内に単独で又は多重に存在し、下流の主要なORFの翻訳に通常は負の影響を及ぼす(とりわけ酵母におけるGCN4 mRNA及び哺乳動物におけるATF4 mRNAを除き、uORFは、eIF2リン酸化が増加した条件下での下流の主要なORFの翻訳を促進するように機能する(Hinnebusch(2005)Annu Rev Microbiol 59:407-450))。ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を含む構成要素、構造、エレメント、モチーフ及び/又は特定の配列によってもたらされる追加の例示的な翻訳調節活性としては、mRNA安定化又は不安定化(Baker&Parker(2004)Curr Opin Cell Biol 16(3):293-299)、翻訳活性化(Villalba et al.,(2011)Curr Opin Genet Dev 21(4):452-457)及び翻訳抑制(Blumer et al.,(2002)Mech Dev 110(1-2):97-112)が挙げられるが、これらに限定されない。研究は、天然に存在するシス作用性RNAエレメントが、異種ポリヌクレオチドへの組込みにより、修飾するために使用されるときにそれらの対応する機能を付与し得ることを示している(Goldberg-Cohen et al.,(2002)J Biol Chem 277(16):13635-13640)。
【0196】
機能的RNAエレメントを含む修飾ポリヌクレオチド
[0175] 本開示は、修飾を含む合成ポリヌクレオチド(例えば、RNAエレメント)を提供し、修飾は、所望の翻訳調節活性をもたらす。いくつかの実施形態において、本開示は、5’非翻訳領域(UTR)、開始コドン、ポリペプチドをコードする完全なオープンリーディングフレーム、3’UTR及び少なくとも1つの修飾を含むポリヌクレオチドを提供し、少なくとも1つの修飾は、所望の翻訳調節活性、例えば、mRNA翻訳の翻訳忠実度を促進及び/又は増強する修飾をもたらす。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、シス作用性調節活性である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、開始コドン又はその近傍での43S前開始複合体(PIC)又はリボソームの滞留時間の増加である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、開始コドンでの又はそこからのポリペプチド合成の開始の増加である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、完全なオープンリーディングフレームから翻訳されるポリペプチドの量の増加である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、PIC又はリボソームによる開始コドンのデコードの忠実度の増大である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、PIC又はリボソームによるリーキースキャニングの阻害又は減少である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、PIC又はリボソームによる開始コドンをデコードする速度の低下である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、開始コドン以外のmRNA内の任意のコドンでのポリペプチド合成の開始の阻害又は減少である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、完全なオープンリーディングフレーム以外のmRNA内の任意のオープンリーディングフレームから翻訳されるポリペプチドの量の阻害又は減少である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、異常な翻訳産物の産生の阻害又は減少である。いくつかの実施形態において、所望の翻訳調節活性は、前述の翻訳調節活性の1つ以上の組合せである。
【0197】
[0176]したがって、本開示は、本明細書に記載されるとおりの所望の翻訳調節活性をもたらす配列及び/又はRNA二次構造を含むRNAエレメントを含むポリヌクレオチド、例えば、mRNAを提供する。いくつかの態様において、mRNAは、mRNA翻訳の翻訳忠実度を促進及び/又は増強する配列及び/又はRNA二次構造を含むRNAエレメントを含む。いくつかの態様において、mRNAは、リーキースキャニングの阻害及び/又は減少などの所望の翻訳調節活性をもたらす配列及び/又はRNA二次構造を含むRNAエレメントを含む。いくつかの態様において、本開示は、リーキースキャニングを阻害し、且つ/又は減少させることによってmRNAの翻訳忠実度を促進する配列及び/又はRNA二次構造を含むRNAエレメントを含むmRNAを提供する。
【0198】
[0177]いくつかの実施形態において、RNAエレメントは、天然及び/又は修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAエレメントは、本明細書に記載されるとおりの所望の翻訳調節活性をもたらす連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列で構成される。いくつかの実施形態において、RNAエレメントは、安定なRNA二次構造を形成するか又はそれに折り畳む連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含み、RNA二次構造は、本明細書に記載されるとおりの所望の翻訳調節活性をもたらす。RNAエレメントは、エレメントの一次配列(例えば、GCに富むエレメント)に基づき、エレメントによって形成されるRNA二次構造(例えば、ステムループ)により、RNA分子内のエレメントの位置(例えば、mRNAの5’UTR内に位置する)により、エレメント(例えば、「翻訳エンハンサーエレメント」)の生物学的機能及び/又は活性により、且つそれらの任意の組合せによって特定及び/又は特徴付けられ得る。
【0199】
[0178]いくつかの態様において、本開示は、リーキースキャニングを阻害し、且つ/又はmRNA翻訳の翻訳忠実度を促進する1つ以上の構造的修飾を有するmRNAを提供し、構造的修飾の少なくとも1つは、GCに富むRNAエレメントである。いくつかの態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントである。一実施形態において、GCに富むRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2又は約1ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、GCに富むRNAエレメントは、コザックコンセンサス配列の15~30、15~20、15~25、10~15又は5~10ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、GCに富むRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の直接隣に位置する。
【0200】
[0179]前述又は関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、いずれかの順序で連結された3~30、5~25、10~20、15~20、約20、約15、約12、約10、約7、約6又は約3ヌクレオチド、その誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントを提供し、配列組成は、70~80%のシトシン、60~70%のシトシン、50%~60%のシトシン、40~50%のシトシン、30~40%のシトシン塩基である。前述又は関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、いずれかの順序で連結された3~30、5~25、10~20、15~20、約20、約15、約12、約10、約7、約6又は約3ヌクレオチド、その誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントを提供し、配列組成は、約80%のシトシン、約70%のシトシン、約60%のシトシン、約50%のシトシン、約40%のシトシン又は約30%のシトシンである。
【0201】
[0180]前述又は関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、いずれかの順序で連結された20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4若しくは3ヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントを提供し、配列組成は、70~80%のシトシン、60~70%のシトシン、50%~60%のシトシン、40~50%のシトシン又は30~40%のシトシンである。前述又は関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、いずれかの順序で連結された20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4又は3ヌクレオチド、その誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントを提供し、配列組成は、約80%のシトシン、約70%のシトシン、約60%のシトシン、約50%のシトシン、約40%のシトシン又は約30%のシトシンである。
【0202】
[0181]いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントであり、GCに富むRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2又は約1ヌクレオチド上流に位置し、且つGCに富むRNAエレメントは、いずれかの順序で連結された3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含み、配列組成は、>50%のシトシンである。いくつかの実施形態において、配列組成は、>55%のシトシン、>60%のシトシン、>65%のシトシン、>70%のシトシン、>75%のシトシン、>80%のシトシン、>85%のシトシン又は>90%のシトシンである。
【0203】
[0182]他の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントであり、GCに富むRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2又は約1ヌクレオチド上流に位置し、且つGCに富むRNAエレメントは、約3~30、5~25、10~20、15~20又は約20、約15、約12、約10、約6若しくは約3ヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含み、配列は、反復GCモチーフを含み、反復GCモチーフは、[CCG]nであり、n=1~10(配列番号257)、n=2~8(配列番号258)、n=3~6(配列番号259)又はn=4~5(配列番号260)である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=1、2、3、4又は5(配列番号261)である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=1、2又は3である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=1である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=2である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=3である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=4(配列番号262)である。いくつかの実施形態において、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=5(配列番号263)である。
【0204】
[0183]別の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含むGCに富むRNAエレメントであり、GCに富むRNAエレメントは、表3に示される配列のいずれか1つを含む。一実施形態において、GCに富むRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2又は約1ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、GCに富むRNAエレメントは、コザックコンセンサス配列の約15~30、15~20、15~25、10~15又は5~10ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、GCに富むRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の直接隣に位置する。
【0205】
[0184]他の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する表3に示されるとおりの配列V1[CCCCGGCGCC(配列番号43)]又はその誘導体若しくは類似体を含むGCに富むRNAエレメントである。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に直接隣接し、且つ上流に位置する表3に示されるとおりの配列V1を含む。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTRのコザックコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列V1を含む。他の実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の1~3、3~5、5~7、7~9、9~12又は12~15塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列V1を含む。
【0206】
[0185]他の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する表3に示されるとおりの配列V2[CCCCGGC(配列番号44)]又はその誘導体若しくは類似体を含むGCに富むRNAエレメントである。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に直接隣接し、且つ上流に位置する表3に示されるとおりの配列V2を含む。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTRのコザックコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列V2を含む。他の実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の1~3、3~5、5~7、7~9、9~12又は12~15塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列V2を含む。
【0207】
[0186]他の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する表3に示されるとおりの配列EK[GCCGCC(配列番号42)]又はその誘導体若しくは類似体を含むGCに富むRNAエレメントである。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に直接隣接し、且つ上流に位置する表3に示されるとおりの配列EKを含む。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列EKを含む。他の実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の1~3、3~5、5~7、7~9、9~12又は12~15塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列EKを含む。
【0208】
[0187]さらなる他の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列に先行する表3に示されるとおりの配列V1[CCCCGGCGCC(配列番号43)]又はその誘導体若しくは類似体を含むGCに富むRNAエレメントであり、5’UTRは、表3に示される以下の配列を含む:GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGA(配列番号85)。当業者は、本明細書に記載されるRNA配列中の全てのUが、対応する鋳型DNA配列中、例えば、本開示のmRNAが、例えば、IVTを介して転写されるDNA鋳型又はコンストラクト中でTになることを当然認識することになる。
【0209】
[0189]いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、表3に示される5’UTR配列中のコザックコンセンサス配列に直接隣接し、且つ上流に位置する表3に示されるとおりの配列V1を含む。いくつかの実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列V1を含み、5’UTRは、表3に示される以下の配列を含む:
GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGA(配列番号85)。
【0210】
[0191]他の実施形態において、GCに富むエレメントは、mRNAの5’UTR中のコザックコンセンサス配列の1~3、3~5、5~7、7~9、9~12又は12~15塩基上流に位置する表3に示されるとおりの配列V1を含み、5’UTRは、表3に示される以下の配列を含む:
GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGA(配列番号85)。
【0211】
[0193]いくつかの実施形態において、5’UTRは、表3に示される以下の配列を含む。
【化3】
【0212】
【表3】
【0213】
[0195]別の態様において、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、少なくとも1つの修飾は、ヘアピン又はステムループを形成する順序で連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の配列を含む安定なRNA二次構造を含むGCに富むRNAエレメントである。一実施形態において、安定なRNA二次構造は、コザックコンセンサス配列の上流である。別の実施形態において、安定なRNA二次構造は、コザックコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10又は約5ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、安定なRNA二次構造は、コザックコンセンサス配列の約20、約15、約10又は約5ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、安定なRNA二次構造は、コザックコンセンサス配列の約5、約4、約3、約2、約1ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、安定なRNA二次構造は、コザックコンセンサス配列の約15~30、約15~20、約15~25、約10~15又は約5~10ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、安定なRNA二次構造は、コザックコンセンサス配列の12~15ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態において、安定なRNA二次構造は、約-30kcal/mol、約-20~-30kcal/mol、約-20kcal/mol、約-10~-20kcal/mol、約-10kcal/mol、約-5~-10kcal/molのデルタGを有する。
【0214】
[0196]別の実施形態において、修飾は、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結され、且つ修飾及びオープンリーディングフレームは異種である。
【0215】
[0197]別の実施形態において、GCに富むRNAエレメントの配列は、グアニン(G)及びシトシン(C)核酸塩基で排他的に構成される。
【0216】
[0198]本明細書に記載されるとおりの所望の翻訳調節活性をもたらすRNAエレメントは、リボソームプロファイリングなどの既知の技術を使用して特定され且つ特徴付けられ得る。リボソームプロファイリングは、PIC及び/又はmRNAに結合したリボソームの位置の決定を可能にする技術である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるIngolia et al.,(2009)Science 324(5924):218-23を参照されたい)。この技術は、ヌクレアーゼ消化からPIC及び/又はリボソームによるmRNAの領域又はセグメントを保護することに基づく。保護は、「フットプリント」と呼ばれるRNAの30bp断片の生成をもたらす。RNAフットプリントの配列及び頻度は、当技術分野において知られる方法(例えば、RNA-seq)によって分析され得る。フットプリントは、リボソームのA部位のほぼ中央にある。PIC又はリボソームが、mRNAに沿う特定の位置又は部位で留まる場合、これらの位置で生成されるフットプリントは、比較的共通しているであろう。研究は、PIC及び/又はリボソームが処理能力の低下を示す位置でより多くのフットプリントが生成され、PIC及び/又はリボソームが処理能力の上昇を示す位置でより少ないフットプリントが生成されることを示している(Gardin et al.,(2014)eLife 3:e03735)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるRNAエレメントの任意の1つ以上を含むポリヌクレオチドに沿う別々の位置又は部位でのPIC又はリボソームの滞留時間又は占有時間は、リボソームプロファイリングによって決定される。
【0217】
[0199]UTRは、ポリヌクレオチド中のコード領域に対して同種又は異種であり得る。いくつかの実施形態において、UTRは、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFに対して同種である。いくつかの実施形態において、UTRは、創傷治癒ポリペプチドをコードするORFに対して異種である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2つ以上の5’UTR又はその機能的断片を含み、各々が、同じ又は異なるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2つ以上の3’UTR又はその機能的断片を含み、各々が、同じ又は異なるヌクレオチド配列を有する。
【0218】
[0200]いくつかの実施形態において、5’UTR若しくはその機能的断片、3’UTR若しくはその機能的断片又はそれらの任意の組合せは、配列最適化される。
【0219】
[0201]いくつかの実施形態において、5’UTR若しくはその機能的断片、3’UTR若しくはその機能的断片又はそれらの任意の組合せは、少なくとも1つの化学的に修飾された核酸塩基、例えば、N1-メチルシュードウラシル又は5-メトキシウラシルを含む。
【0220】
[0202]UTRは、調節性の役割、例えば、安定性、局在化及び/又は翻訳効率の増減をもたらす特性を有し得る。UTRを含むポリヌクレオチドは、細胞、組織又は生物体に投与され得、1つ以上の調節性の特徴が通例の方法を使用して測定され得る。いくつかの実施形態において、5’UTR又は3’UTRの機能的断片は、それぞれ全長5’又は3’UTRの1つ以上の調節性の特徴を含む。
【0221】
[0203]天然の5’UTRは、翻訳開始に関与する特徴を保有する。これらは、リボソームが多くの遺伝子の翻訳を開始させるプロセスに関与することが一般に知られているコザック配列のような特性を保有する。コザック配列は、コンセンサスCCR(A/G)CCAUGG(配列番号87)を有し、式中、Rは、開始コドン(AUG)の3塩基上流のプリン(アデニン又はグアニン)であり、これに別の「G」が続く。5’UTRは、伸長因子結合に関与する二次構造を形成することも知られている。
【0222】
[0204]特定の標的器官の多量に発現される遺伝子において一般的に見られる特徴を操作することにより、ポリヌクレオチドの安定性及びタンパク質産生を増強できる。例えば、アルブミン、血清アミロイドA、アポリポタンパク質A/B/E、トランスフェリン、アルファフェトプロテイン、エリスロポエチン又は第VIII因子などの肝臓発現mRNAの5’UTRの導入は、肝臓細胞株又は肝臓においてポリヌクレオチド発現を増強できる。同様に、ある組織での発現を向上させるための他の組織特異的なmRNAからの5’UTRの使用は、筋肉(例えば、MyoD、ミオシン、ミオグロビン、ミオゲニン、ヘルキュリン)に対して、内皮細胞(例えば、Tie-1、CD36)に対して、骨髄系細胞(例えば、C/EBP、AML1、G-CSF、GM-CSF、CD11b、MSR、Fr-1、i-NOS)に対して、白血球(例えば、CD45、CD18)に対して、脂肪組織(例えば、CD36、GLUT4、ACRP30、アディポネクチン)に対して且つ肺上皮細胞(例えば、SP-A/B/C/D)に対して可能である。
【0223】
[0205]いくつかの実施形態において、UTRは、タンパク質が共通の機能、構造、特徴又は特性を共有する転写物のファミリーから選択される。例えば、コードされるポリペプチドは、(すなわち少なくとも1つの機能、構造、特徴、局在化、起源又は発現パターンを共有する)タンパク質のファミリーに属し得、これらは、発生中に特定の細胞、組織において又はいくつかの時点で発現される。遺伝子又はmRNAのいずれかからのUTRは、新しいポリヌクレオチドを作製するために、タンパク質の同じ又は異なるファミリーの任意の他のUTRに対して交換され得る。
【0224】
[0206]いくつかの実施形態において、5’UTR及び3’UTRは、異種であり得る。いくつかの実施形態において、5’UTRは、3’UTRと異なる種に由来し得る。いくつかの実施形態において、3’UTRは、5’UTRと異なる種に由来し得る。
【0225】
[0207]共有の国際特許出願番号PCT/米国特許出願公開第2014/021522号明細書(その全体において参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/164253号パンフレット)は、ORFに対する隣接領域として本発明のポリヌクレオチド中で利用され得る例示的なUTRのリストを提供する。
【0226】
[0208]本出願の例示的なUTRとしては、グロビン、例えば、α-又はβ-グロビンなど(例えば、ツメガエル、マウス、ウサギ又はヒトグロビン);強力なコザック翻訳開始シグナル;CYBA(例えば、ヒトチトクロムb-245αポリペプチド);アルブミン(例えば、ヒトアルブミン7);HSD17B4(ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ);ウイルス(例えば、タバコエッチウイルス(TEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、デング熱ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、CMV前初期1(IE1))、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)、シンドビスウイルス又はPAVオオムギ黄化萎縮ウイルス);熱ショックタンパク質(例えば、hsp70);翻訳開始因子(例えば、elF4G);グルコース輸送体(例えば、hGLUT1(ヒトグルコース輸送体1));アクチン(例えば、ヒトα又はβアクチン);GAPDH;チューブリン;ヒストン;クエン酸回路酵素;トポイソメラーゼ(例えば、5’TOPモチーフ(オリゴピリミジントラクト)を欠くTOP遺伝子の5’UTR);リボソームタンパク質大サブユニット32(L32);リボソームタンパク質(例えば、ヒト又はマウスリボソームタンパク質、例えばrps9など);ATPシンターゼ(例えば、ATP5A1又はミトコンドリアH+-ATPシンターゼのβサブユニット);成長ホルモン(例えば、ウシ(bGH)又はヒト(hGH));伸長因子(例えば、伸長因子1α1(EEF1A1));マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD);筋細胞エンハンサー因子2A(MEF2A);β-F1-ATPase、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);コラーゲン(例えば、I型コラーゲン、アルファ2(Col1A2)、I型コラーゲン、アルファ1(Col1A1)、VI型コラーゲン、アルファ2(Col6A2)、VI型コラーゲン、アルファ1(Col6A1));リボホリン(例えば、リボホリンI(RPNI));低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(例えば、LRP1);カルジオトロフィン様サイトカイン因子(例えば、Nnt1);カルレティキュリン(Calr)、プロコラーゲン-リジン、2-オキソグルタレート5-ジオキシゲナーゼ1(Plod1);及びヌクレオバインディン(例えば、Nucb1)の核酸配列由来の1つ以上の5’UTR及び/又は3’UTRが挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
[0209]いくつかの実施形態において、5’UTRは、β-グロビン5’UTR;強力なコザック翻訳開始シグナルを含有する5’UTR;チトクロムb-245αポリペプチド(CYBA)5’UTR;ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ(HSD17B4)5’UTR;タバコエッチウイルス(TEV)5’UTR;ベネズエラウマ脳炎ウイルス(TEEV)5’UTR;非構造タンパク質をコードする風疹ウイルス(RV)RNAの5’近位オープンリーディングフレーム;デング熱ウイルス(DEN)5’UTR;熱ショックタンパク質70(Hsp70)5’UTR;eIF4G 5’UTR;GLUT1 5’UTR;その機能的断片及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0228】
[0210]いくつかの実施形態において、3’UTRは、β-グロビン3’UTR;CYBA 3’UTR;アルブミン3’UTR;成長ホルモン(GH)3’UTR;VEEV 3’UTR;B型肝炎ウイルス(HBV)3’UTR;α-グロビン3’UTR;DEN 3’UTR;PAVオオムギ黄化萎縮ウイルス(BYDV-PAV)3’UTR;伸長因子1α1(EEF1A1)3’UTR;マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)3’UTR;ミトコンドリアH(+)-ATPシンターゼのβサブユニット(β-mRNA)3’UTR;GLUT1 3’UTR;MEF2A 3’UTR;β-F1-ATPase 3’UTR;その機能的断片及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0229】
[0211]任意の遺伝子又はmRNAに由来する野生型UTRが、本発明のポリヌクレオチドに組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、UTRは、例えば、ORFに対してUTRの方向又は位置を変化させることにより、又はさらなるヌクレオチドを含むことにより、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチドの交換又は転位により、バリアントUTRを生成するために野生型又は天然UTRに対して改変され得る。いくつかの実施形態において、5’又は3’UTRのバリアント、例えば、野生型UTRの変異体又は1つ以上のヌクレオチドがUTRの末端に付加されるか、又はUTRの末端から除去されるバリアントが利用され得る。
【0230】
[0212]さらに、1つ以上の合成UTRが1つ以上の非合成UTRと組み合わせて使用され得る。例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれるMandal and Rossi,Nat.Protoc.2013 8(3):568-82を参照されたい。
【0231】
[0213]UTR又はその一部は、それらが選択された転写物と同じ方向で配置され得るか、又は方向若しくは位置が変更され得る。したがって、5’及び/又は3’UTRは、反転、短縮、伸長され得るか、又は1つ以上の他の5’UTR又は3’UTRと組み合わせられ得る。
【0232】
[0214]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、複数のUTR、例えば、二重、三重又は四重の5’UTR又は3’UTRを含む。例えば、二重UTRは、連続して又は実質的に連続して同じUTRの2コピーを含む。例えば、二重ベータ-グロビン3’UTRが使用され得る(内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2010/0129877号明細書を参照されたい)。
【0233】
[0215]特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書で開示されるUTRのいずれかから選択される5’UTR及び/又は3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、5’UTRは、
5’UTR-001(上流UTR)(GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号3);
5’UTR-002(上流UTR)(GGGAGAUCAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号89);
5’UTR-003(上流UTR)(国際公開第2016/100812号パンフレットを参照されたい);
5’UTR-004(上流UTR)(GGGAGACAAGCUUGGCAUUCCGGUACUGUUGGUAAAGCCACC)(配列番号90);
5’UTR-005(上流UTR)(GGGAGAUCAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号91);
5’UTR-006(上流UTR)(国際公開第2016/100812号パンフレットを参照されたい);
5’UTR-007(上流UTR)(GGGAGACAAGCUUGGCAUUCCGGUACUGUUGGUAAAGCCACC)(配列番号92);
5’UTR-008(上流UTR)(GGGAAUUAACAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号93);
5’UTR-009(上流UTR)(GGGAAAUUAGACAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号94);
5’UTR-010,上流(GGGAAAUAAGAGAGUAAAGAACAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号95);
5’UTR-011(上流UTR)(GGGAAAAAAGAGAGAAAAGAAGACUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号96);
5’UTR-012(上流UTR)(GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAUAUAUAAGAGCCACC)(配列番号97);
5’UTR-013(上流UTR)(GGGAAAUAAGAGACAAAACAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号98);
5’UTR-014(上流UTR)(GGGAAAUUAGAGAGUAAAGAACAGUAAGUAGAAUUAAAAGAGCCACC)(配列番号99);
5’UTR-015(上流UTR)(GGGAAAUAAGAGAGAAUAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC)(配列番号100);
5’UTR-016(上流UTR)(GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAAUUAAGAGCCACC)(配列番号101);
5’UTR-017(上流UTR);又は(GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUUUAAGAGCCACC)(配列番号102);
5’UTR-018(上流UTR)5’UTR
【化4】
を含む。
【0234】
[0216]いくつかの実施形態において、3’UTRは、
142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化5】

142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化6】
;又は
142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化7】

142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化8】

142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化9】

142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化10】

142-3p3’UTR(miR142-3p結合部位を含むUTR)
【化11】

3’UTR-018(配列番号150を参照されたい);
3’UTR(miR142及びmiR126結合部位バリアント1)
【化12】
3’UTR(miR142及びmiR126結合部位バリアント2)
【化13】
;又は
3’UTR(miR142-3p結合部位バリアント3)
【化14】
を含む。
【0235】
[0217]特定の実施形態において、本発明の5’UTR及び/又は3’UTR配列は、配列番号3、88~102又は165~167のいずれかを含む5’UTR配列からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同一であるヌクレオチド配列を含み、且つ/又は3’UTR配列は、配列番号104~112、150、151又は178のいずれか及びそれらの任意の組合せを含む。
【0236】
[0218]特定の実施形態において、本発明の5’UTR及び/又は3’UTR配列は、配列番号3、配列番号193、配列番号39又は配列番号194のいずれかを含む5’UTR配列からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同一であるヌクレオチド配列を含み、且つ/又は3’UTR配列は、配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111又は配列番号178のいずれか及びそれらの任意の組合せを含む。
【0237】
[0219]いくつかの実施形態において、5’UTRは、表5Bに示されるアミノ酸配列(配列番号3、配列番号193、配列番号39又は配列番号194)を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、表5Bに示されるアミノ酸配列(配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111又は配列番号178)を含む。いくつかの実施形態において、5’UTRは、表5Bに示されるアミノ酸配列(配列番号3、配列番号193、配列番号39又は配列番号194)を含み、且つ3’UTRは、表5Bに示されるアミノ酸配列(配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111又は配列番号178)を含む。
【0238】
[0220]本発明のポリヌクレオチドは、特徴の組合せを含み得る。例えば、ORFは、強力なコザック翻訳開始シグナルを含む5’UTR及び/又はポリAテールの鋳型となる付加のためのオリゴ(dT)配列を含む3’UTRに隣接され得る。5’UTRは、同じ及び/又は異なるUTRからの第1のポリヌクレオチド断片及び第2のポリヌクレオチド断片を含み得る(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0293625号明細書を参照されたい)。
【0239】
[0221]他の非UTR配列は、本発明のポリヌクレオチド内で領域又は小領域として使用され得る。例えば、イントロン又はイントロン配列の一部が、本発明のポリヌクレオチドに組み込まれ得る。イントロン配列の組込みにより、タンパク質産生及びポリヌクレオチド発現レベルが上昇し得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、UTRの代わりに又はUTRに加えて、内部リボソーム進入部位(IRES)を含む(例えば、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるYakubov et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.2010 394(1):189-193を参照されたい)。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’UTR配列の代わりにIRESを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、ORF及びウイルスキャプシド配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、非合成3’UTRと組み合わせて合成5’UTRを含む。
【0240】
[0222]いくつかの実施形態において、UTRは、少なくとも1つの翻訳エンハンサーポリヌクレオチド、1つ又は複数の翻訳エンハンサーエレメント(まとめて、ポリヌクレオチドから産生されるポリペプチド又はタンパク質の量を増加させる核酸配列を指す「TEE」)も含み得る。非限定的な例として、TEEは、転写プロモーターと開始コドンとの間に配置され得る。いくつかの実施形態において、5’UTRは、TEEを含む。
【0241】
[0223]一態様において、TEEは、キャップ依存的又はキャップ非依存的翻訳などであるが、これらに限定されない、核酸の翻訳活性を促進できるUTRにおける保存的エレメントである。
【0242】
11.マイクロRNA(miRNA)結合部位
[0224] 本発明のポリヌクレオチドは、調節エレメント、例えば、マイクロRNA(miRNA)結合部位、転写因子結合部位、構造化mRNA配列及び/又はモチーフ、内在性核酸結合分子に対する偽受容体として作用するように操作された人工的結合部位並びにそれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態において、このような調節エレメントを含むポリヌクレオチドは、「センサー配列」を含むと言われる。
【0243】
[0225]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、リボ核酸(RNA)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))は、目的のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、1つ以上のmiRNA結合部位をさらに含む。miRNA結合部位の包含又は組込みは、本発明のポリヌクレオチドの調節をもたらし、次に天然に存在するmiRNAの組織特異的及び/又は細胞型特異的な発現に基づいて、それからコードされるポリペプチドの調節をもたらす。
【0244】
[0226]本発明は、上記のポリヌクレオチドのいずれかを含む医薬組成物及び製剤も提供する。いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、送達剤をさらに含む。
【0245】
[0227]いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、ポリペプチドをコードする本明細書で開示される配列最適化核酸配列を含むポリヌクレオチドを含有し得る。いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、ポリペプチドをコードする本明細書で開示される配列最適化核酸配列に対する顕著な配列同一性を有するポリヌクレオチド(例えば、ORF)を含むポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)を含有し得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、miRNA結合部位、例えば結合するmiRNA結合部位をさらに含む。
【0246】
[0228]miRNA、例えば、天然に存在するmiRNAは、ポリヌクレオチドに結合し、且つ安定性を低下させることによるか又はポリヌクレオチドの翻訳を阻害することによって遺伝子発現を下方制御する19~25ヌクレオチドの非コードRNAである。miRNA配列は、「シード」領域、すなわち成熟miRNAの位置2~8の領域の配列を含む。miRNAシードは、成熟miRNAの位置2~8又は2~7を含み得る。
【0247】
[0229]マイクロRNAは、pre-miRNA(前駆体miRNA)と呼ばれる場合が多い短いヘアピン構造を形成するように分子内で折り畳まれるRNA転写物の領域に酵素的に由来する。pre-miRNAは、通常、その3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有し、且つ3’ヒドロキシル及び5’リン酸基を有する。この前駆体mRNAは、核内でプロセシングされ、続いてそれがDICER(RNase III酵素)によってさらにプロセシングされる細胞質に輸送されて、およそ22ヌクレオチドの成熟マイクロRNAを形成する。次に、成熟マイクロRNAは、リボ核粒子に組み込まれて、遺伝子サイレンシングを媒介するRNA誘導サイレンシング複合体、RISCを形成する。成熟miRNAに関して当技術分野で認められる命名法は、通常、成熟miRNAが由来するpre-miRNAのアームを指定し;「5p」は、マイクロRNAがpre-miRNAヘアピンの5プライムアームに由来することを意味し、「3p」は、マイクロRNAがpre-miRNAヘアピンの3プライム末端に由来することを意味する。本明細書において番号によって呼ばれるmiRは、同じpre-miRNAの反対のアームから生じる2つの成熟マイクロRNAのいずれかを指し得る(例えば、3p又は5pマイクロRNAのいずれか)。本明細書で参照される全てのmiRは、3p又は5pの命名によって特に指定されない限り、3p及び5pの両方のアーム/配列を含むものとする。
【0248】
[0230]本明細書で使用する場合、「マイクロRNA(miRNA又はmiR)結合部位」という用語は、miRNAと相互作用するか、会合するか又は結合するためにmiRNAの全て又はある領域に対して十分な相補性を有する、5’UTR及び/又は3’UTRにおけるものを含む、ポリヌクレオチド内、例えば、DNA内又はRNA転写物内の配列を指す。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、目的のポリペプチドをコードするORFを含み、1つ以上のmiRNA結合部位をさらに含む。例示的な実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、リボ核酸(RNA)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))の5’UTR及び/又は3’UTRは、1つ以上のmiRNA結合部位を含む。
【0249】
[0231]miRNAに対して十分な相補性を有するmiRNA結合部位は、ポリヌクレオチドのmiRNA媒介性の調節、例えば、miRNA媒介性の翻訳抑制又はポリヌクレオチド分解を促進するのに十分な相補性の程度を指す。本発明の例示的な態様において、miRNAに対して十分な相補性を有するmiRNA結合部位は、ポリヌクレオチドのmiRNA媒介性分解、例えば、mRNAのmiRNAガイドRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介性切断を促進するのに十分な相補性の程度を指す。miRNA結合部位は、例えば、19~25ヌクレオチド長のmiRNA配列、19~23ヌクレオチド長のmiRNA配列又は22ヌクレオチド長のmiRNA配列と相補性を有し得る。miRNA結合部位は、miRNAの一部とのみ、例えば、天然に存在するmiRNA配列の全長の1、2、3又は4ヌクレオチド未満の部分と、又は天然に存在するmiRNA配列より1、2、3又は4ヌクレオチド未満短い部分と相補的であり得る。全長又は完全な相補性(例えば、天然に存在するmiRNAの長さの全て又はかなりの部分にわたる全長相補性又は完全相補性)は、所望の調節がmRNA分解である場合に好ましい。
【0250】
[0232]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miRNAシード配列と相補性(例えば、部分的又は完全な相補性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miRNAシード配列と完全な相補性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miRNA配列と相補性(例えば、部分的又は完全な相補性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miRNA配列と完全な相補性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、1、2又は3つのヌクレオチド置換、末端付加及び/又はトランケーションを別にすれば、miRNA配列と完全な相補性を有する。
【0251】
[0233]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、対応するmiRNAと同じ長さである。他の実施形態において、miRNA結合部位は、5’末端、3’末端又はその両方において、対応するmiRNAよりも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12ヌクレオチド短い。さらなる他の実施形態において、マイクロRNA結合部位は、5’末端、3’末端又はその両方において、対応するマイクロRNAよりも2ヌクレオチド短い。対応するmiRNAよりも短いmiRNA結合部位は、依然としてmiRNA結合部位の1つ以上を組み込むmRNAを分解可能であるか、又はmRNAの翻訳を妨げることが可能である。
【0252】
[0234]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、ダイサーを含有する活性RISCの一部である対応する成熟miRNAに結合する。別の実施形態において、RISC中の対応するmiRNAへのmiRNA結合部位の結合は、miRNA結合部位を含有するmRNAを分解するか、又はmRNAの翻訳を妨げる。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miRNAを含むRISC複合体がmiRNA結合部位を含むポリヌクレオチドを切断するようにmiRNAに対して十分な相補性を有する。他の実施形態において、miRNA結合部位は、不完全な相補性を有し、その結果、miRNAを含むRISC複合体がmiRNA結合部位を含むポリヌクレオチドにおける不安定性を誘導する。別の実施形態において、miRNA結合部位は、不完全な相補性を有し、その結果、miRNAを含むRISC複合体がmiRNA結合部位を含むポリヌクレオチドの転写を抑制する。
【0253】
[0235]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、対応するmiRNAから、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のミスマッチを有する。
【0254】
[0236]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、対応するmiRNAのそれぞれ少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20又は少なくとも約21の連続ヌクレオチドと相補的な少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20又は少なくとも約21個の連続したヌクレオチドを有する。
【0255】
[0237]1つ以上のmiRNA結合部位を本発明のポリヌクレオチドに操作することにより、ポリヌクレオチドは、分解又は翻訳の低減に関して標的化され得るが、ただし、対象のmiRNAが入手可能であるものとする。これは、ポリヌクレオチドの送達に対するオフターゲット効果を減少させ得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドが、ある組織又は細胞に送達されることが意図されないが、最終目標がその組織又は細胞である場合、その組織又は細胞中で多量に存在するmiRNAは、miRNAの1つ又は複数の結合部位がポリヌクレオチドの5’UTR及び/又は3’UTRに操作される場合に目的の遺伝子の発現を阻害し得る。したがって、いくつかの実施形態において、1つ以上のmiRNA結合部位の本開示のmRNAへの組込みは、核酸分子送達時にオフターゲット効果の危険を低減し得るし、且つ/又はmRNAによってコードされるポリペプチドの発現の組織特異的調節を可能にし得る。さらなる他の実施形態において、1つ以上のmiRNA結合部位の本開示のmRNAへの組込みは、インビボでの核酸送達時に免疫反応を調節できる。さらなる実施形態において、1つ以上のmiRNA結合部位の本開示のmRNAへの組込みは、本明細書に記載される脂質を含む化合物及び組成物の血中からの急速なクリアランス(ABC)を調節できる。
【0256】
[0238]逆に、miRNA結合部位は、特定の組織におけるタンパク質発現を増加させるために自然にそれらが生じるポリヌクレオチド配列から除去され得る。例えば、miRNAを含有する組織又は細胞におけるタンパク質発現を向上させるために、特定のmiRNAに対する結合部位が、ポリヌクレオチドから除去され得る。
【0257】
[0239]複数の組織における発現の調節は、1つ以上のmiRNA結合部位、例えば、1つ以上の別個のmiRNA結合部位の導入又は除去を介して達成され得る。miRNA結合部位を除去するか又は挿入するかの判断は、発生及び/又は疾患における、組織及び/又は細胞でのmiRNA発現パターン及び/又はそれらのプロファイリングに基づいてなされ得る。生物学におけるmiRNA、miRNA結合部位並びにそれらの発現パターン及び役割の同定が報告されている(例えば、Bonauer et al.,Curr Drug Targets 2010 11:943-949;Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171-176;Contreras and Rao Leukemia 2012 26:404-413(2011 Dec 20.doi:10.1038/leu.2011.356);Bartel Cell 2009 136:215-233;Landgraf et al,Cell,2007 129:1401-1414;Gentner and Naldini,Tissue Antigens.2012 80:393-403及びそれらの中の全ての参考文献;各々は全体として参照により本明細書に組み込まれる)。
【0258】
[0240]miRNAがmRNAを調節し、それによりタンパク質発現が調節されることが知られている組織の例としては、肝臓(miR-122)、筋肉(miR-133、miR-206、miR-208)、内皮細胞(miR-17-92、miR-126)、骨髄細胞(miR-142-3p、miR-142-5p、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27)、脂肪組織(let-7、miR-30c)、心臓(miR-1d、miR-149)、腎臓(miR-192、miR-194、miR-204)及び肺上皮細胞(let-7、miR-133、miR-126)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
[0241]具体的には、miRNAは、免疫細胞(造血細胞とも呼ばれる)において、例えば、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞及びマクロファージ)、マクロファージ、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞などにおいて差次的に発現されることが知られている。免疫細胞特異的なmiRNAは、免疫原性、自己免疫、感染に対する免疫反応、炎症並びに遺伝子療法及び組織/器官移植後の望まれない免疫反応に関与する。免疫細胞特異的なmiRNAは、造血細胞(免疫細胞)の発生、増殖、分化及びアポトーシスの多くの態様も調節する。例えば、miR-142及びmiR-146は、免疫細胞において排他的に発現され、骨髄系の樹状細胞において特に多量に存在する。ポリヌクレオチドに対する免疫反応は、ポリヌクレオチドの3’-UTRにmiR-142結合部位を付加することによって遮断され得、組織及び細胞においてより安定な遺伝子導入を可能にすることが示されている。miR-142は、抗原提示細胞において外因性ポリヌクレオチドを効率的に分解し、形質導入細胞の細胞毒性除去を抑制する(例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれるAnnoni A et al.,blood,2009,114,5152-5161;Brown BD,et al.,Nat med.2006,12(5),585-591;Brown BD,et al.,blood,2007,110(13):4144-4152)。
【0260】
[0242]抗原媒介性免疫反応は、生物体に侵入した際、抗原提示細胞によりプロセシングされ、抗原提示細胞の表面に提示される外来抗原により引き起こされる免疫反応を指し得る。T細胞は、提示された抗原を認識し、抗原を発現する細胞の細胞傷害性除去を誘導し得る。
【0261】
[0243]本発明のポリヌクレオチドの5’UTR及び/又は3’UTRにmiR-142結合部位を導入することにより、miR-142媒介性分解を通じて抗原提示細胞において遺伝子発現を選択的に抑制することができ、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)での抗原提示を制限し、それによってポリヌクレオチド送達後の抗原媒介性免疫反応を妨げる。次に、ポリヌクレオチドは、細胞傷害性除去を誘発することなく標的組織又は細胞において安定して発現される。
【0262】
[0244]一実施形態において、免疫細胞、特に、抗原提示細胞において発現されることが知られているmiRNAに対する結合部位を、本発明のポリヌクレオチドに操作して、miRNA媒介性RNA分解を通じて抗原提示細胞においてポリヌクレオチドの発現を抑制することができ、抗原媒介性免疫反応を抑止する。ポリヌクレオチドの発現は、免疫細胞特異的なmiRNAが発現されない非免疫細胞中で維持される。例えば、いくつかの実施形態において、肝臓特異的なタンパク質に対する免疫原性反応を妨げるために、任意のmiR-122結合部位が除去され得、miR-142(及び/又はmirR-146)結合部位が本発明のポリヌクレオチドの5’UTR及び/又は3’UTRに操作され得る。
【0263】
[0245]APC及びマクロファージにおいて選択的分解及び抑制をさらに促進するために、本発明のポリヌクレオチドは、単独で又はmiR-142及び/若しくはmiR-146結合部位と組み合わせるかのいずれかで5’UTR及び/又は3’UTRにおいてさらなる負の調節エレメントを含み得る。非限定的な例として、さらなる負の調節エレメントは、構成的崩壊エレメント(CDE)である。
【0264】
[0246]免疫細胞特異的なmiRNAとしては、hsa-let-7a-2-3p、hsa-let-7a-3p、hsa-7a-5p、hsa-let-7c、hsa-let-7e-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-let-7g-3p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7i-3p、hsa-let-7i-5p、miR-10a-3p、miR-10a-5p、miR-1184、hsa-let-7f-1--3p、hsa-let-7f-2--5p、hsa-let-7f-5p、miR-125b-1-3p、miR-125b-2-3p、miR-125b-5p、miR-1279、miR-130a-3p、miR-130a-5p、miR-132-3p、miR-132-5p、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-143-3p、miR-143-5p、miR-146a-3p、miR-146a-5p、miR-146b-3p、miR-146b-5p、miR-147a、miR-147b、miR-148a-5p、miR-148a-3p、miR-150-3p、miR-150-5p、miR-151b、miR-155-3p、miR-155-5p、miR-15a-3p、miR-15a-5p、miR-15b-5p、miR-15b-3p、miR-16-1-3p、miR-16-2-3p、miR-16-5p、miR-17-5p、miR-181a-3p、miR-181a-5p、miR-181a-2-3p、miR-182-3p、miR-182-5p、miR-197-3p、miR-197-5p、miR-21-5p、miR-21-3p、miR-214-3p、miR-214-5p、miR-223-3p、miR-223-5p、miR-221-3p、miR-221-5p、miR-23b-3p、miR-23b-5p、miR-24-1-5p、miR-24-2-5p、miR-24-3p、miR-26a-1-3p、miR-26a-2-3p、miR-26a-5p、miR-26b-3p、miR-26b-5p、miR-27a-3p、miR-27a-5p、miR-27b-3p、miR-27b-5p、miR-28-3p、miR-28-5p、miR-2909、miR-29a-3p、miR-29a-5p、miR-29b-1-5p、miR-29b-2-5p、miR-29c-3p、miR-29c-5p、miR-30e-3p、miR-30e-5p、miR-331-5p、miR-339-3p、miR-339-5p、miR-345-3p、miR-345-5p、miR-346、miR-34a-3p、miR-34a-5p、miR-363-3p、miR-363-5p、miR-372、miR-377-3p、miR-377-5p、miR-493-3p、miR-493-5p、miR-542、miR-548b-5p、miR548c-5p、miR-548i、miR-548j、miR-548n、miR-574-3p、miR-598、miR-718、miR-935、miR-99a-3p、miR-99a-5p、miR-99b-3p及びmiR-99b-5pが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、新規のmiRNAは、マイクロアレイハイブリダイゼーション及びミクロトーム分析を通じて免疫細胞において同定され得る(例えば、各々の内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるJima DD et al,Blood,2010,116:e118-e127;Vaz C et al.,BMC Genomics,2010,11,288)。
【0265】
[0247]肝臓において発現されることが知られているmiRNAとしては、miR-107、miR-122-3p、miR-122-5p、miR-1228-3p、miR-1228-5p、miR-1249、miR-129-5p、miR-1303、miR-151a-3p、miR-151a-5p、miR-152、miR-194-3p、miR-194-5p、miR-199a-3p、miR-199a-5p、miR-199b-3p、miR-199b-5p、miR-296-5p、miR-557、miR-581、miR-939-3p及びmiR-939-5pが挙げられるが、これらに限定されない。肝臓でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の肝臓特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。肝臓特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0266】
[0248]肺において発現されることが知られているmiRNAとしては、let-7a-2-3p、let-7a-3p、let-7a-5p、miR-126-3p、miR-126-5p、miR-127-3p、miR-127-5p、miR-130a-3p、miR-130a-5p、miR-130b-3p、miR-130b-5p、miR-133a、miR-133b、miR-134、miR-18a-3p、miR-18a-5p、miR-18b-3p、miR-18b-5p、miR-24-1-5p、miR-24-2-5p、miR-24-3p、miR-296-3p、miR-296-5p、miR-32-3p、miR-337-3p、miR-337-5p、miR-381-3p及びmiR-381-5pが挙げられるが、これらに限定されない。肺でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の肺特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。肺特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0267】
[0249]心臓において発現されることが知られているmiRNAとしては、miR-1、miR-133a、miR-133b、miR-149-3p、miR-149-5p、miR-186-3p、miR-186-5p、miR-208a、miR-208b、miR-210、miR-296-3p、miR-320、miR-451a、miR-451b、miR-499a-3p、miR-499a-5p、miR-499b-3p、miR-499b-5p、miR-744-3p、miR-744-5p、miR-92b-3p及びmiR-92b-5pが挙げられるが、これらに限定されない。心臓でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の心臓特異的なマイクロRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。心臓特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0268】
[0250]神経系において発現されることが知られているmiRNAとしては、miR-124-5p、miR-125a-3p、miR-125a-5p、miR-125b-1-3p、miR-125b-2-3p、miR-125b-5p、miR-1271-3p、miR-1271-5p、miR-128、miR-132-5p、miR-135a-3p、miR-135a-5p、miR-135b-3p、miR-135b-5p、miR-137、miR-139-5p、miR-139-3p、miR-149-3p、miR-149-5p、miR-153、miR-181c-3p、miR-181c-5p、miR-183-3p、miR-183-5p、miR-190a、miR-190b、miR-212-3p、miR-212-5p、miR-219-1-3p、miR-219-2-3p、miR-23a-3p、miR-23a-5p、miR-30a-5p、miR-30b-3p、miR-30b-5p、miR-30c-1-3p、miR-30c-2-3p、miR-30c-5p、miR-30d-3p、miR-30d-5p、miR-329、miR-342-3p、miR-3665、miR-3666、miR-380-3p、miR-380-5p、miR-383、miR-410、miR-425-3p、miR-425-5p、miR-454-3p、miR-454-5p、miR-483、miR-510、miR-516a-3p、miR-548b-5p、miR-548c-5p、miR-571、miR-7-1-3p、miR-7-2-3p、miR-7-5p、miR-802、miR-922、miR-9-3p及びmiR-9-5pが挙げられるが、これらに限定されない。神経系で豊富なmiRNAは、miR-132-3p、miR-132-3p、miR-148b-3p、miR-148b-5p、miR-151a-3p、miR-151a-5p、miR-212-3p、miR-212-5p、miR-320b、miR-320e、miR-323a-3p、miR-323a-5p、miR-324-5p、miR-325、miR-326、miR-328、miR-922を含むが限定されない、ニューロンで特異的に発現されるもの並びにmiR-1250、miR-219-1-3p、miR-219-2-3p、miR-219-5p、miR-23a-3p、miR-23a-5p、miR-3065-3p、miR-3065-5p、miR-30e-3p、miR-30e-5p、miR-32-5p、miR-338-5p及びmiR-657を含むが、これらに限定されないグリア細胞で特異的に発現されるものをさらに含む。神経系でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意のCNS特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。神経系特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0269】
[0251]膵臓において発現されることが知られているmiRNAとしては、miR-105-3p、miR-105-5p、miR-184、miR-195-3p、miR-195-5p、miR-196a-3p、miR-196a-5p、miR-214-3p、miR-214-5p、miR-216a-3p、miR-216a-5p、miR-30a-3p、miR-33a-3p、miR-33a-5p、miR-375、miR-7-1-3p、miR-7-2-3p、miR-493-3p、miR-493-5p及びmiR-944が挙げられるが、これらに限定されない。膵臓でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の膵臓特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。膵臓特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0270】
[0252]腎臓において発現されることが知られているmiRNAとしては、miR-122-3p、miR-145-5p、miR-17-5p、miR-192-3p、miR-192-5p、miR-194-3p、miR-194-5p、miR-20a-3p、miR-20a-5p、miR-204-3p、miR-204-5p、miR-210、miR-216a-3p、miR-216a-5p、miR-296-3p、miR-30a-3p、miR-30a-5p、miR-30b-3p、miR-30b-5p、miR-30c-1-3p、miR-30c-2-3p、miR30c-5p、miR-324-3p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-363-3p、miR-363-5p及びmiR-562が挙げられるが、これらに限定されない。腎臓でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の腎臓特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。腎臓特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0271】
[0253]筋肉において発現されることが知られているmiRNAとしては、let-7g-3p、let-7g-5p、miR-1、miR-1286、miR-133a、miR-133b、miR-140-3p、miR-143-3p、miR-143-5p、miR-145-3p、miR-145-5p、miR-188-3p、miR-188-5p、miR-206、miR-208a、miR-208b、miR-25-3p及びmiR-25-5pが挙げられるが、これらに限定されない。筋肉でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の筋肉特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。筋肉特異的なmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドにおいて、単独で又はさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
【0272】
[0254]miRNAは、内皮細胞、上皮細胞及び脂肪細胞などであるが、これらに限定されない様々なタイプの細胞でも差次的に発現される。
【0273】
[0255]内皮細胞において発現されることが知られているmiRNAとしては、let-7b-3p、let-7b-5p、miR-100-3p、miR-100-5p、miR-101-3p、miR-101-5p、miR-126-3p、miR-126-5p、miR-1236-3p、miR-1236-5p、miR-130a-3p、miR-130a-5p、miR-17-5p、miR-17-3p、miR-18a-3p、miR-18a-5p、miR-19a-3p、miR-19a-5p、miR-19b-1-5p、miR-19b-2-5p、miR-19b-3p、miR-20a-3p、miR-20a-5p、miR-217、miR-210、miR-21-3p、miR-21-5p、miR-221-3p、miR-221-5p、miR-222-3p、miR-222-5p、miR-23a-3p、miR-23a-5p、miR-296-5p、miR-361-3p、miR-361-5p、miR-421、miR-424-3p、miR-424-5p、miR-513a-5p、miR-92a-1-5p、miR-92a-2-5p、miR-92a-3p、miR-92b-3p及びmiR-92b-5pが挙げられるが、これらに限定されない。ディープシークエンシング分析から多くの新規のmiRNAが内皮細胞において発見されている(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれるVoellenkle C et al.,RNA,2012,18,472-484)。内皮細胞でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の内皮細胞特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。
【0274】
[0256]上皮細胞において発現されることが知られているmiRNAとしては、let-7b-3p、let-7b-5p、miR-1246、miR-200a-3p、miR-200a-5p、miR-200b-3p、miR-200b-5p、miR-200c-3p、miR-200c-5p、miR-338-3p、miR-429、miR-451a、miR-451b、miR-494、miR-802及びmiR-34a、miR-34b-5p、miR-34c-5p、miR-449a、miR-449b-3p、呼吸器繊毛性上皮細胞において特異的なmiR-449b-5p、let-7ファミリー、miR-133a、miR-133b、肺上皮細胞において特異的なmiR-126、miR-382-3p、腎臓上皮細胞において特異的なmiR-382-5p及び角膜上皮細胞において特異的なmiR-762が挙げられるが、これらに限定されない。上皮細胞でのポリヌクレオチド発現を調節するために、任意の上皮細胞特異的なmiRNAからのmiRNA結合部位が本発明のポリヌクレオチドに導入され得るか又はそれから除去され得る。
【0275】
[0257]さらに、miRNAの大きいグループが胚性幹細胞において豊富であり、幹細胞自己再生並びに神経細胞、心臓、造血細胞、皮膚細胞、骨形成細胞及び筋肉細胞などの様々な細胞系列の発生及び/又は分化を制御する(例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれるKuppusamy KT et al.,Curr.Mol Med,2013,13(5),757-764;Vidigal JA and Ventura A,Semin Cancer Biol.2012,22(5-6),428-436;Goff LA et al.,PLoS One,2009,4:e7192;Morin RD et al.,Genome Res,2008,18,610-621;Yoo JK et al.,Stem Cells Dev.2012,21(11),2049-2057)。胚性幹細胞において多量にあるmiRNAとしては、let-7a-2-3p、let-a-3p、let-7a-5p、let7d-3p、let-7d-5p、miR-103a-2-3p、miR-103a-5p、miR-106b-3p、miR-106b-5p、miR-1246、miR-1275、miR-138-1-3p、miR-138-2-3p、miR-138-5p、miR-154-3p、miR-154-5p、miR-200c-3p、miR-200c-5p、miR-290、miR-301a-3p、miR-301a-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-302b-3p、miR-302b-5p、miR-302c-3p、miR-302c-5p、miR-302d-3p、miR-302d-5p、miR-302e、miR-367-3p、miR-367-5p、miR-369-3p、miR-369-5p、miR-370、miR-371、miR-373、miR-380-5p、miR-423-3p、miR-423-5p、miR-486-5p、miR-520c-3p、miR-548e、miR-548f、miR-548g-3p、miR-548g-5p、miR-548i、miR-548k、miR-548l、miR-548m、miR-548n、miR-548o-3p、miR-548o-5p、miR-548p、miR-664a-3p、miR-664a-5p、miR-664b-3p、miR-664b-5p、miR-766-3p、miR-766-5p、miR-885-3p、miR-885-5p、miR-93-3p、miR-93-5p、miR-941、miR-96-3p、miR-96-5p、miR-99b-3p及びmiR-99b-5pが挙げられるが、これらに限定されない。ヒト胚性幹細胞においてディープシークエンシングによって多くの予想される新規のmiRNAが発見される(例えば、各々の内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるMorin RD et al.,Genome Res,2008,18,610-621;Goff LA et al.,PLoS One,2009,4:e7192;Bar M et al.,Stem cells,2008,26,2496-2505)。
【0276】
[0258]いくつかの実施形態において、miRNAは、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞並びに内皮細胞及び血小板などのTLR7/TLR8を発現し、且つ/又はサイトカインを分泌できることが知られる細胞などの造血系列の免疫細胞における発現及び存在量に基づいて選択される。いくつかの実施形態において、miRNAセットは、このように、これらの細胞の免疫原性に部分的に関与している可能性があるmiRを含み、その結果、本発明のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)における対応するmiR部位の組込みが、特定の細胞型におけるmRNAの不安定化及び/又はこれらのmRNAからの翻訳の抑制につながる可能性がある。非限定的な代表例としては、造血細胞の多くに特異的であるmiR-142、miR-144、miR-150、miR-155及びmiR-223;B細胞において発現されるmiR-142、miR150、miR-16及びmiR-223;前駆造血細胞において発現されるmiR-223、miR-451、miR-26a、miR-16;並びに形質細胞様樹状細胞、血小板及び内皮細胞において発現されるmiR-126が挙げられる。miRの組織発現のさらなる議論については、例えば、Teruel-Montoya,R.et al.(2014)PLoS One 9:e102259;Landgraf,P.et al.(2007)Cell 129:1401-1414;Bissels,U.et al.(2009)RNA 15:2375-2384を参照されたい。3’UTR及び/又は5’UTR中のいずれか1つのmiR部位の組込みは、目的の複数の細胞型においてそのような効果を媒介し得る(例えば、miR-142は、B細胞及び樹上細胞の両方において豊富である)。
【0277】
[0259]いくつかの実施形態において、複数のmiRを有する同じ細胞型を標的化し、両方が豊富な場合(例えば、miR-142-3p及びmiR142-5pが、造血幹細胞において豊富である)、3p及び5pアームの各々に結合部位を組み込むことが有利であり得る。したがって、特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、(i)miR-142、miR-144、miR-150、miR-155及びmiR-223(多くの造血細胞において発現される)からなる群;又は(ii)miR-142、miR150、miR-16及びmiR-223(B細胞において発現される)からなる群;又はmiR-223、miR-451、miR-26a、miR-16(前駆造血細胞において発現される)からなる群からの2つ以上(例えば、2、3、4つ以上)のmiR結合部位を含有する。
【0278】
[0260]いくつかの実施形態において、複数の目的の細胞型が同時に標的化されるように様々なmiR(例えば、造血系列及び内皮細胞の多くの細胞を標的化するmiR-142及びmiR-126)を組み合わせることも有利であり得る。したがって、例えば、特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、2つ以上(例えば、2、3、4つ以上)のmiRNA結合部位を含み、(i)miRの少なくとも1つが、造血系列の細胞を標的化し(例えば、miR-142、miR-144、miR-150、miR-155又はmiR-223)且つmiRの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板又は内皮細胞を標的化するか(例えば、miR-126);又は(ii)miRの少なくとも1つが、B細胞を標的化し(例えば、miR-142、miR-150、miR-16又はmiR-223)且つmiRの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板又は内皮細胞を標的化するか(例えば、miR-126);又は(iii)miRの少なくとも1つが、前駆造血細胞を標的化し(例えば、miR-223、miR-451、miR-26a又はmiR-16)且つmiRの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板又は内皮細胞を標的化するか(例えば、miR-126);又は(iv)miRの少なくとも1つが、造血系列の細胞を標的化し(例えば、miR-142、miR-144、miR-150、miR-155又はmiR-223)、miRの少なくとも1つが、B細胞を標的化し(例えば、miR-142、miR150、miR-16又はmiR-223)、且つmiRの少なくとも1つが、形質細胞様樹状細胞、血小板若しくは内皮細胞(例えば、miR-126);又はmiR結合部位の前述の4つのクラスの任意の他の可能な組合せ(すなわち造血系列を標的化するもの、B細胞を標的化するもの、前駆造血細胞を標的化するもの及び/又は形質細胞様樹状細胞/血小板/内皮細胞を標的化するもの)を標的化する。
【0279】
[0261]一実施形態において、免疫反応を調節するために、本発明のポリヌクレオチドは、通常の免疫細胞又はTLR7及び/若しくはTLR8を発現し、且つ炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインを分泌する任意の細胞において(例えば、末梢リンパ器官の免疫細胞及び/又は脾細胞及び/又は内皮細胞において)発現される1つ以上のmiRに結合する1つ以上のmiRNA結合配列を含み得る。現在、通常の免疫細胞又はTLR7及び/若しくはTLR8を発現し、且つ炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインを分泌する任意の細胞において(例えば、末梢リンパ器官の免疫細胞及び/又は脾細胞及び/又は内皮細胞において)発現される1つ以上のmiRのmRNAへの組込みが、免疫細胞活性化(例えば、活性化B細胞の出現頻度によって測定されるとおりのB細胞活性化)及び/又はサイトカイン産生(例えば、IL-6、IFN-γ及び/又はTNFαの産生)を低減するか又は阻害することが発見されている。さらに、現在、通常の免疫細胞又はTLR7及び/若しくはTLR8を発現し、且つ炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインを分泌する任意の細胞において(例えば、末梢リンパ器官の免疫細胞及び/又は脾細胞及び/又は内皮細胞において)発現される1つ以上のmiRのmRNAへの組込みが、mRNAによってコードされる目的のタンパク質に対する抗薬物抗体(ADA)反応を低減できるか又は阻害できることが発見されている。
【0280】
[0262]別の実施形態において、脂質を含む化合物又は組成物において送達されるポリヌクレオチドの血中からの急速なクリアランスを調節するために、本発明のポリヌクレオチドは、通常の免疫細胞又はTLR7及び/若しくはTLR8を発現し、且つ炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインを分泌する任意の細胞において(例えば、末梢リンパ器官の免疫細胞及び/又は脾細胞及び/又は内皮細胞において)発現される1つ以上のmiRNAに結合する1つ以上のmiR結合配列を含み得る。現在、1つ以上のmiR結合部位のmRNAへの組込みが、mRNAを送達する際の使用のための脂質を含む化合物又は組成物の血中からの急速なクリアランス(ABC)を低減するか又は阻害することが発見されている。さらに、現在、mRNAへの1つ以上のmiR結合部位の組込みが、抗PEG抗IgMの血清レベルを低減し(例えば、B細胞によるポリエチレングリコール(PEG)を認識するIgMの急性的な産生を低減するか又は阻害し)且つ/又はmRNAを含む脂質を含む化合物又は組成物の投与後の形質細胞様樹状細胞の増殖及び/又は活性化を低減するか又は阻害することが発見されている。
【0281】
[0263]いくつかの実施形態において、miR配列は、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0261218号明細書及び米国特許出願公開第2005/0059005号明細書において教示されるものを含むが、これらに限定されない免疫細胞において発現される任意の既知のマイクロRNAに対応し得る。免疫細胞において発現されるmiRの非限定的な例としては、脾臓細胞、骨髄細胞、樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、B細胞、T細胞及び/又はマクロファージにおいて発現されるものが挙げられる。例えば、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24及びmiR-27は、骨髄細胞において発現され、miR-155は、樹状細胞、B細胞及びT細胞において発現され、miR-146は、TLR刺激時にマクロファージにおいて上方制御され、且つmiR-126は、形質細胞様樹状細胞において発現される。特定の実施形態において、miRは、免疫細胞において豊富に又は優先的に発現される。例えば、miR-142(miR-142-3p及び/又はmiR-142-5p)、miR-126(miR-126-3p及び/又はmiR-126-5p)、miR-146(miR-146-3p及び/又はmiR-146-5p)並びにmiR-155(miR-155-3p及び/又はmiR155-5p)は、免疫細胞において豊富に発現される。これらのマイクロRNA配列は、当技術分野で知られており、したがって、当業者は、これらのマイクロRNAがワトソン-クリック相補性に基づいて結合することになる結合配列又は標的配列を容易に設計できる。
【0282】
[0264]したがって、様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24及びmiR-27からなる群から選択されるmiRに対する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位を含む。別の実施形態において、mRNAは、免疫細胞において発現されるマイクロRNAに対する少なくとも2つのmiR結合部位を含む。様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現されるマイクロRNAに対する1~4つ(1、2、3又は4つ)のmiR結合部位を含む。別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、3つのmiR結合部位を含む。これらのmiR結合部位は、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27及びその組合せからなる群から選択されるマイクロRNAに対するものであり得る。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現される同じmiR結合部位の2つ以上(例えば、2、3、4つ)のコピー、例えば、miR-142、miR-146、miR-155、miR-126、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27からなるmiRの群から選択されるmiR結合部位の2つ以上のコピーを含む。
【0283】
[0265]一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、同じmiRNA結合部位の3つのコピーを含む。特定の実施形態において、同じmiR結合部位の3つのコピーの使用は、単一のmiRNA結合部位の使用と比較して、有利な特性を示し得る。3つのmiRNA結合部位を含有する3’UTRに対する配列の非限定的な例は、配列番号155(3つのmiR-142-3p結合部位)及び配列番号157(3つのmiR-142-5p結合部位)において示される。
【0284】
[0266]別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現される少なくとも2つの異なるmiR結合部位の2つ以上(例えば、2、3、4つ)のコピーを含む。2つ以上の異なるmiR結合部位を含有する3’UTRの配列の非限定的な例は、配列番号152(1つのmiR-142-3p結合部位及び1つのmiR-126-3p結合部位)、配列番号158(2つのmiR-142-5p結合部位及び1つのmiR-142-3p結合部位)並びに配列番号161(2つのmiR-155-5p結合部位及び1つのmiR-142-3p結合部位)において示される。
【0285】
[0267]別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現されるマイクロRNAに対する少なくとも2つのmiR結合部位を含み、miR結合部位の1つは、miR-142-3pに対するものである。様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、miR-142-3p及びmiR-155(miR-155-3p又はmiR-155-5p)、miR-142-3p及びmiR-146(miR-146-3又はmiR-146-5p)又はmiR-142-3p及びmiR-126(miR-126-3p又はmiR-126-5p)に対する結合部位を含む。
【0286】
[0268]別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現されるマイクロRNAに対する少なくとも2つのmiR結合部位を含み、miR結合部位の1つは、miR-126-3pに対するものである。様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、miR-126-3p及びmiR-155(miR-155-3p又はmiR-155-5p)、miR-126-3p及びmiR-146(miR-146-3p又はmiR-146-5p)又はmiR-126-3p及びmiR-142(miR-142-3p又はmiR-142-5p)に対する結合部位を含む。
【0287】
[0269]別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現されるマイクロRNAに対する少なくとも2つのmiR結合部位を含み、miR結合部位の1つは、miR-142-5pに対するものである。様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、miR-142-5p及びmiR-155(miR-155-3p又はmiR-155-5p)、miR-142-5p及びmiR-146(miR-146-3又はmiR-146-5p)又はmiR-142-5p及びmiR-126(miR-126-3p又はmiR-126-5p)に対する結合部位を含む。
【0288】
[0270]さらに別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞において発現されるマイクロRNAに対する少なくとも2つのmiR結合部位を含み、miR結合部位の1つは、miR-155-5pに対するものである。様々な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、miR-155-5p及びmiR-142(miR-142-3p又はmiR-142-5p)、miR-155-5p及びmiR-146(miR-146-3又はmiR-146-5p)又はmiR-155-5p及びmiR-126(miR-126-3p又はmiR-126-5p)に対する結合部位を含む。
【0289】
[0271]miRNAは、血管形成(例えば、miR-132)などの複雑な生物学的プロセスも調節し得る(Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171-176)。本発明のポリヌクレオチドにおいて、生物学的に関連のある細胞型又は関連のある生物学的プロセスに対してポリヌクレオチドの発現を調整するために、このようなプロセスに関与するmiRNA結合部位が除去され得るか又は導入され得る。これに関連して、本発明のポリヌクレオチドは、栄養要求性ポリヌクレオチドとして定められる。
【0290】
[0272]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、miRNA結合部位を含み、このmiRNA結合部位は、miRNA結合部位配列の任意の1つ以上の1つ以上のコピーを含む、表4から選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、それらの任意の組合せを含め、表4から選択される同じ又は異なるmiRNA結合部位の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるものをさらに含む。
【0291】
[0273]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miR-142に結合するか、又はmiR-142に対して相補的である。いくつかの実施形態において、miR-142は、配列番号114を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miR-142-3p又はmiR-142-5pに結合する。いくつかの実施形態において、miR-142-3p結合部位は、配列番号116を含む。いくつかの実施形態において、miR-142-5p結合部位は、配列番号118を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、配列番号116又は配列番号118と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0292】
[0274]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miR-126に結合するか、又はmiR-126に対して相補的である。いくつかの実施形態において、miR-126は、配列番号119を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、miR-126-3p又はmiR-126-5pに結合する。いくつかの実施形態において、miR-126-3p結合部位は、配列番号121を含む。いくつかの実施形態において、miR-126-5p結合部位は、配列番号123を含む。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、配列番号121又は配列番号123と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0293】
[0275]一実施形態において、3’UTRは、2つのmiRNA結合部位を含み、第1のmiRNA結合部位は、miR-142に結合し、且つ第2のmiRNA結合部位は、miR-126に結合する。特定の実施形態において、miR-142及びmiR-126に結合する3’UTRは、配列番号98又は163の配列を含むか、それからなるか又はそれから本質的になる。
【0294】
【表4】
【0295】
[0276]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチド中においてポリヌクレオチドのいずれかの位置(例えば、5’UTR及び/又は3’UTR)で挿入される。いくつかの実施形態において、5’UTRは、miRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、miRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態において、5’UTR及び3’UTRは、miRNA結合部位を含む。ポリヌクレオチドにおける挿入部位は、ポリヌクレオチドにおけるmiRNA結合部位の挿入が対応するmiRNAの非存在下で機能的ポリペプチドの翻訳を妨害せず;且つmiRNAの存在下において、ポリヌクレオチドにおけるmiRNA結合部位の挿入及び対応するmiRNAに対するmiRNA結合部位の結合がポリヌクレオチドを分解するか又はポリヌクレオチドの翻訳を妨げることが可能である限り、ポリヌクレオチドのいずれの場所であり得る。
【0296】
[0277]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、ORFを含む本発明のポリヌクレオチド中のORFの終止コドンから少なくとも約30ヌクレオチド下流に挿入される。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチド中のORFの終止コドンから少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド又は少なくとも約100ヌクレオチド下流で挿入される。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチド中のORFの終止コドンから約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、約20ヌクレオチド~約90ヌクレオチド、約30ヌクレオチド~約80ヌクレオチド、約40ヌクレオチド~約70ヌクレオチド、約50ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、約45ヌクレオチド~約65ヌクレオチド下流に挿入される。
【0297】
[0278]いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチド、例えば、mRNA内のコード領域の終止コドンの直後の3’UTR内に挿入される。いくつかの実施形態において、コンストラクト中に終止コドンの複数のコピーがある場合、miRNA結合部位は、最後の終止コドンの直後に挿入される。いくつかの実施形態において、miRNA結合部位は、終止コドンのさらに下流に挿入され、この場合、終止コドンとmiR結合部位との間に3’UTR塩基が存在する。いくつかの実施形態において、3’UTR中のmiRに関する可能な挿入部位の3つの非限定的な例は、配列番号162、163及び164において示され、これらは、3’UTR内でそれぞれ異なる可能な挿入部位の1つに挿入されるmiR-142-3p部位を有する3’UTR配列を示す。
【0298】
[0279]いくつかの実施形態において、1つ以上のmiRNA結合部位は、1つ以上の可能な挿入部位で5’UTR内に配置され得る。例えば、5’UTR中のmiRに関する可能な挿入部位の3つの非限定的な例は、配列番号165、166又は167において示され、これらは、5’UTR内でそれぞれ異なる可能な挿入部位の1つに挿入されるmiR-142-3p部位を有する5’UTR配列を示す。
【0299】
[0280]一実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドン後の3’UTRの1~100ヌクレオチド内に位置する。一実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドン後の3’UTRの30~50ヌクレオチド内に位置する。別の実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドン後の3’UTRの少なくとも50ヌクレオチド内に位置する。他の実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、終止コドンを含み、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、終止コドンの直後の3’UTR内又は終止コドン後の3’UTRの15~20ヌクレオチド内若しくは終止コドン後の3’UTRの70~80ヌクレオチド内に位置する。他の実施形態において、3’UTRは、2つ以上のmiRNA結合部位(例えば、2~4つのmiRNA結合部位)を含み、各miRNA結合部位間にスペーサー領域(例えば、10~100、20~70又は30~50ヌクレオチド長)が存在し得る。別の実施形態において、3’UTRは、miRNA結合部位の末端とポリAテールヌクレオチドとの間にスペーサー領域を含む。例えば、10~100、20~70又は30~50ヌクレオチド長のスペーサー領域は、miRNA結合部位の末端とポリAテールの開始部位との間に位置され得る。
【0300】
[0281]一実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドン前(上流)の5’UTRの1~100ヌクレオチド内に位置する。一実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドン前(上流)の5’UTRの10~50ヌクレオチド内に位置する。別の実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドン前(上流)の5’UTRの少なくとも25ヌクレオチド内に位置する。他の実施形態において、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレームは、開始コドンを含み、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのマイクロRNA結合部位は、開始コドンの直前の5’UTR内又は開始コドン前の5’UTRの15~20ヌクレオチド内若しくは開始コドン前の5’UTRの70~80ヌクレオチド内に位置する。他の実施形態において、5’UTRは、2つ以上のmiRNA結合部位(例えば、2~4つのmiRNA結合部位)を含み、各miRNA結合部位間にスペーサー領域(例えば、10~100、20~70又は30~50ヌクレオチド長)が存在し得る。
【0301】
[0282]一実施形態において、3’UTRは、2つ以上の終止コドンを含み、少なくとも1つのmiRNA結合部位は、終止コドンの下流に配置される。例えば、3’UTRは、1、2又は3つの終止コドンを含み得る。使用され得る三重の終止コドンの非限定的な例としては、UGAUAAUAG(配列番号124)、UGAUAGUAA(配列番号125)、UAAUGAUAG(配列番号126)、UGAUAAUAA(配列番号127)、UGAUAGUAG(配列番号128)、UAAUGAUGA(配列番号129)、UAAUAGUAG(配列番号130)、UGAUGAUGA(配列番号131)、UAAUAAUAA(配列番号132)及びUAGUAGUAG(配列番号133)が挙げられる。3’UTR内において、例えば、1、2、3又は4つのmiRNA結合部位、例えば、miR-142-3p結合部位は、終止コドンの直接隣又は最後の終止コドンの任意の数のヌクレオチド下流で配置され得る。3’UTRが、複数のmiRNA結合部位を含むとき、これらの結合部位は、互いの直接隣に対照的に(すなわち交互に)配置され得るか、又は代わりに、スペーサーヌクレオチドは、各結合部位間に配置され得る。
【0302】
[0283]一実施形態において、3’UTRは、3番目の終止コドンの下流に位置する単一のmiR-142-3p結合部位とともに3つの終止コドンを含む。3つの終止コドン及び最後の終止コドンの下流の異なる位置に位置する単一のmiR-142-3p結合部位を有する3’UTRの配列の非限定的な例は、配列番号151、162、163及び164において示される。
【0303】
【表5A-1】
【0304】
【表5A-2】
【0305】
【表5A-3】
【0306】
【表5A-4】
【0307】
【表5A-5】
【0308】
【表5B】
【0309】
[0284]一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、5’UTR、目的のポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレーム、免疫細胞において発現されるmiRに関する少なくとも1つのmiRNA結合部位を含む3’UTR及び連結したヌクレオシドの3’テール領域を含む。様々な実施形態において、3’UTRは、免疫細胞において発現される、好ましくは免疫細胞において豊富に又は優先的に発現されるmiRに関する1~4つ、少なくとも2つ、1、2、3又は4つのmiRNA結合部位を含む。
【0310】
[0285]一実施形態において、免疫細胞において発現される少なくとも1つのmiRNAは、miR-142-3pマイクロRNA結合部位である。一実施形態において、miR-142-3pマイクロRNA結合部位は、配列番号116に示される配列を含む。一実施形態において、miR-142-3pマイクロRNA結合部位を含むmRNAの3’UTRは、配列番号134に示される配列を含む。
【0311】
[0286]一実施形態において、免疫細胞において発現される少なくとも1つのmiRNAは、miR-126マイクロRNA結合部位である。一実施形態において、miR-126結合部位は、miR-126-3p結合部位である。一実施形態において、miR-126-3pマイクロRNA結合部位は、配列番号121に示される配列を含む。一実施形態において、miR-126-3pマイクロRNA結合部位を含む本発明のmRNAの3’UTRは、配列番号149に示される配列を含む。
【0312】
[0287]本開示のマイクロRNA結合部位が結合できるmiRに関する非限定的な例示的配列としては、以下のものが挙げられる:miR-142-3p(配列番号115)、miR-142-5p(配列番号117)、miR-146-3p(配列番号135)、miR-146-5p(配列番号136)、miR-155-3p(配列番号137)、miR-155-5p(配列番号138)、miR-126-3p(配列番号120)、miR-126-5p(配列番号122)、miR-16-3p(配列番号139)、miR-16-5p(配列番号140)、miR-21-3p(配列番号141)、miR-21-5p(配列番号142)、miR-223-3p(配列番号143)、miR-223-5p(配列番号144)、miR-24-3p(配列番号145)、miR-24-5p(配列番号146)、miR-27-3p(配列番号147)及びmiR-27-5p(配列番号148)。免疫細胞において発現される(例えば、免疫細胞において豊富に又は優先的に発現される)他の好適なmiR配列は、当技術分野において、例えば、University of ManchesterのマイクロRNAデータベース、miRBaseで知られており、且つ入手可能である。前述のmiRのいずれかに結合する部位は、miRに対するワトソン-クリック相補性、典型的にはmiRに対する100%の相補性に基づいて設計され得るし、且つ本明細書に記載されるとおりの本開示のmRNAコンストラクトに挿入され得る。
【0313】
[0288]別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(及び例えばmRNA、例えば、その3’UTR)は、少なくとも1つのmiRNA結合部位を含み、それにより例えばPEGに対して、例えばIgMの産生を低減又は阻害することにより、B細胞により、且つ/又はpDCの増殖及び/若しくは活性化を低減又は阻害することにより、血中からの急速なクリアランスを低減又は阻害することができ、且つコードされる目的のタンパク質の組織発現を調節するために少なくとも1つのmiRNA結合部位を含み得る。
【0314】
[0289]miRNA遺伝子調節は、周囲の配列の種、配列のタイプ(例えば、異種、同種、外来性、内在性又は人工)、周囲配列における調節エレメント及び/又は周囲配列における構造エレメントなどであるが、これらに限定されないmiRNAを取り囲む配列により影響され得る。miRNAは、5’UTR及び/又は3’UTRにより影響され得る。非限定的な例として、非ヒト3’UTRは、同じ配列タイプのヒト3’UTRと比較して、目的のポリペプチドの発現に対するmiRNA配列の調節効果を増大させ得る。
【0315】
[0290]一実施形態において、5’UTRの他の調節エレメント及び/又は構造エレメントは、miRNA媒介性遺伝子調節に影響し得る。調節エレメント及び/又は構造エレメントの一例は、5’UTRにおける構造化IRES(内部リボソーム進入部位)であり、これは、タンパク質翻訳を開始させるために翻訳伸長因子の結合が必要である。5’-UTRにおけるこの二次構造的構造化エレメントに対するEIF4A2結合は、miRNA媒介性遺伝子発現に必要である(全体として参照により本明細書に組み込まれるMeijer HA et al.,Science,2013,340,82-85)。本発明のポリヌクレオチドは、マイクロRNA媒介性遺伝子調節を促進するためにこの構造化5’UTRをさらに含み得る。
【0316】
[0291]少なくとも1つのmiRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチドの3’UTRに操作され得る。これに関連して、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれを超えるmiRNA結合部位が、本発明のポリヌクレオチドの3’UTRに操作され得る。例えば、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、2又は1つのmiRNA結合部位が、本発明のポリヌクレオチドの3’UTRに操作され得る。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに組み込まれるmiRNA結合部位は、同じであり得るか又は異なるmiRNA部位であり得る。本発明のポリヌクレオチドに組み込まれる異なるmiRNA結合部位の組合せは、異なるmiRNA部位のいずれかの2つ以上のコピーが組み込まれる組合せを含み得る。別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに組み込まれるmiRNA結合部位は、体内の同じ又は異なる組織を標的化し得る。非限定的な例として、本発明のポリヌクレオチドの3’-UTRにおける組織、細胞型又は疾患特異的なmiRNA結合部位の導入を通じて、特定の細胞型(例えば、骨髄細胞、内皮細胞など)における発現の程度が低減され得る。
【0317】
[0292]一実施形態において、miRNA結合部位は、本発明のポリヌクレオチド中の3’UTRの5’末端付近、3’UTRの5’末端と3’末端との間の約半分及び/又は3’UTRの3’末端付近に操作され得る。非限定的な例として、miRNA結合部位は、3’UTRの5’末端付近及び3’UTRの5’末端と3’末端との間の約半分に操作され得る。別の非限定的な例として、miRNA結合部位は、3’UTRの3’末端付近及び3’UTRの5’末端と3’末端との間の約半分に操作され得る。さらなる別の非限定的な例として、miRNA結合部位は、3’UTRの5’末端付近及び3’UTRの3’末端付近に操作され得る。
【0318】
[0293]別の実施形態において、3’UTRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のmiRNA結合部位を含み得る。miRNA結合部位は、miRNA、miRNAシード配列及び/又はシード配列に隣接するmiRNA配列に対して相補的であり得る。
【0319】
[0294]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチド中で少なくとも1つのセンサー配列を組み込み、投与のためにポリヌクレオチドを製剤化することにより制御され得る。非限定的な例として、本発明のポリヌクレオチドは、miRNA結合部位を組み込み、本明細書に記載される脂質のいずれかを含むイオン化可能脂質を含む脂質ナノ粒子中でポリヌクレオチドを製剤化することにより、組織又は細胞に標的化され得る。
【0320】
[0295]本発明のポリヌクレオチドは、異なる組織、細胞型又は生物学的状態におけるmiRNAの発現パターンに基づいて、特定の組織、細胞型又は生物学的状態においてより標的化された発現のために操作され得る。組織特異的なmiRNA結合部位の導入を通じて、本発明のポリヌクレオチドは、組織若しくは細胞における又は生物学的状態との関連で最適なタンパク質発現のために設計され得る。
【0321】
[0296]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、既知のmiRNAシード配列と100%の同一性を有するか又はmiRNAシード配列に対して100%未満の同一性を有するmiRNA結合部位を組み込むように設計され得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、既知のmiRNAシード配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するmiRNA結合部位を組み込むように設計され得る。miRNAシード配列は、miRNA結合親和性を低減させ、それによりポリヌクレオチドの下方調節の低減をもたらすように部分的に変異され得る。本質的に、miRNA結合部位とmiRNAシードとの間のマッチ又はミスマッチの程度は、タンパク質発現を調節するmiRNAの能力をより精密に調整するためにレオスタットとして作用し得る。さらに、miRNA結合部位の非シード領域中の変異は、タンパク質発現を調節するmiRNAの能力にも影響し得る。
【0322】
[0297]一実施形態において、miRNA配列は、ステムループのループに組み込まれ得る。
【0323】
[0298]別の実施形態において、miRNAシード配列は、ステムループのループにおいて組み込まれ得るし、miRNA結合部位は、ステムループの5’又は3’ステムに組み込まれ得る。
【0324】
[0299]一実施形態において、5’UTR中のmiRNA配列は、本明細書に記載される本発明のポリヌクレオチドを安定化するために使用され得る。
【0325】
[0300]別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドの5’UTR中のmiRNA配列は、開始コドンなどであるが、これに限定されない翻訳開始部位の到達性を低下させるために使用され得る。例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれるMatsuda et al.,PLoS One.2010 11(5):e15057を参照されたい。これは、最初の開始コドン(AUG)への到達性を低下させるために、開始コドン(-4~+37、AUGコドンのAが+1である)周囲でアンチセンスロックド核酸(LNA)オリゴヌクレオチド及びエクソン・ジャンクション複合体(EJC)を使用した。Matsudaは、開始コドン周囲の配列をLNA又はEJCで変化させると、ポリヌクレオチドの効率、長さ及び構造安定性に影響を与えることを示した。翻訳開始部位への到達性を低下させるために、本発明のポリヌクレオチドは、翻訳開始部位の付近で、Matsudaらにより記載されるLNA又はEJC配列の代わりにmiRNA配列を含み得る。翻訳開始部位は、miRNA配列の前、その後又はその内部であり得る。非限定的な例として、翻訳開始部位は、シード配列又は結合部位など、miRNA配列内に位置し得る。
【0326】
[0301]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、抗原提示細胞による抗原提示を弱めるために少なくとも1つのmiRNAを含み得る。miRNAは、完全なmiRNA配列、miRNAシード配列、シードを伴わないmiRNA配列又はその組合せであり得る。非限定的な例として、本発明のポリヌクレオチドに組み込まれるmiRNAは、造血系に特異的であり得る。別の非限定的な例として、抗原提示を弱めるための本発明のポリヌクレオチドに組み込まれるmiRNAは、miR-142-3pである。
【0327】
[0302]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、目的の組織又は細胞におけるコードされるポリペプチドの発現を弱めるために、少なくとも1つのmiRNAを含み得る。非限定的な例として、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのmiR-142-3p結合部位、miR-142-3pシード配列、シードを伴わないmiR-142-3p結合部位、miR-142-5p結合部位、miR-142-5pシード配列、シードを伴わないmiR-142-5p結合部位、miR-146結合部位、miR-146シード配列及び/又はシード配列を伴わないmiR-146結合部位を含み得る。
【0328】
[0303]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、免疫細胞においてmRNA治療薬を選択的に分解して、治療薬送達により引き起こされる望まれない免疫原性反応を抑止するために、3’UTRにおいて少なくとも1つのmiRNA結合部位を含み得る。非限定的な例として、miRNA結合部位は、抗原提示細胞において本発明のポリヌクレオチドをより不安定にし得る。これらのmiRNAの非限定的な例としては、miR-142-5p、miR-142-3p、miR-146a-5p及びmiR-146-3pが挙げられる。
【0329】
[0304]一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、RNA結合タンパク質と相互作用できるポリヌクレオチドの領域において少なくとも1つのmiRNA配列を含む。
【0330】
[0305]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、(i)創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型配列、その機能的断片又はバリアント)をコードする配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、ORF)並びに(ii)miRNA結合部位(例えば、miR-142に結合するmiRNA結合部位)及び/又はmiR-126に結合するmiRNA結合部位を含む。
【0331】
12.3’UTR
[0306] 特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、3’UTRをさらに含む。
【0332】
[0307]3’-UTRは、翻訳終結コドンの直後にあり、転写後に遺伝子発現に影響を与える調節領域を含有することが多いmRNAの区間である。3’-UTR内の調節領域は、ポリアデニル化、翻訳効率、局在化及びmRNAの安定性に影響し得る。一実施形態において、本発明に有用な3’-UTRは、調節タンパク質又はマイクロRNAに対する結合部位を含む。
【0333】
[0308]特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに有用な3’UTRは、配列番号151及び104~112又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される3’UTRを含む。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに有用な3’UTRは、配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111若しくは配列番号178又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号111、112又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号111の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号112の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号150の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号151の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号178の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号175の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号195の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号196の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号4の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列番号177の核酸配列を含む。
【0334】
[0309]特定の実施形態において、本発明に有用な3’UTR配列は、配列番号104~112、150、151及び178又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される3’UTR配列からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0335】
[0310]特定の実施形態において、本発明に有用な3’UTR配列は、配列番号150、配列番号175、配列番号195、配列番号196、配列番号4、配列番号177、配列番号111及び配列番号178又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される3’UTR配列からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0336】
13.5’キャップを有する領域
[0311] 本開示は、5’キャップ及び本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)の両方を含むポリヌクレオチドも含む。
【0337】
[0312]天然mRNAの5’キャップ構造は、mRNA安定性を向上させる核外移行に関与し、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)に結合し、これは、成熟環状mRNA種を形成するためのポリ(A)結合タンパク質とのCBPの会合を通じて細胞及び翻訳適格性におけるmRNA安定性に関与する。このキャップは、mRNAスプライシング中の5’近位イントロンの除去をさらに促進する。
【0338】
[0313]内在性mRNA分子を、5’末端にキャップ付加して、mRNA分子の末端のグアノシンキャップ残基と5’末端転写センスヌクレオチドとの間に5’-ppp-5’-三リン酸結合を生成することができる。次に、この5’-グアニル酸キャップをメチル化して、N7-メチル-グアニル酸残基を生成することができる。mRNAの5’末端の末端及び/又は末端前転写ヌクレオチドのリボース糖も任意選択により2’-O-メチル化され得る。グアニル酸キャップ構造の加水分解及び切断を通じた5’-キャップ除去は、分解のためにmRNA分子などの核酸分子を標的化できる。
【0339】
[0314]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、キャップ部分を組み入れる。
【0340】
[0315]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、キャップ除去を防ぎ、したがってmRNA半減期を延長させる非加水分解性キャップ構造を含む。キャップ構造加水分解は、5’-ppp-5’ホスホロジエステル結合の切断を必要とするため、キャップ付加反応中に修飾ヌクレオチドが使用され得る。例えば、5’-ppp-5’キャップにおいてホスホロチオエート結合を生成するために、製造者の説明書に従って、α-チオ-グアノシンヌクレオチドとともに、New England Biolabs(Ipswich,MA)からのワクシニアキャップ付加酵素が使用され得る。α-メチル-ホスホネート及びセレノ-ホスフェートヌクレオチドなど、さらなる修飾グアノシンヌクレオチドが使用され得る。
【0341】
[0316]さらなる修飾としては、糖環の2’-ヒドロキシル基上のポリヌクレオチド(上述のとおり)の5’末端及び/又は5’末端前ヌクレオチドのリボース糖の2’-O-メチル化が挙げられるが、これらに限定されない。複数の別個の5’-キャップ構造が、mRNA分子として機能するポリヌクレオチドなど、核酸分子の5’-キャップを生成するために使用され得る。本明細書中で合成キャップ類似体、化学的キャップ、化学的キャップ類似体又は構造若しくは機能的キャップ類似体とも呼ばれるキャップ類似体は、キャップ機能を保持する一方、それらの化学構造において天然(すなわち内在性、野生型又は生理的)5’-キャップと異なる。キャップ類似体は、化学的(すなわち非酵素的)又は酵素的に合成され、且つ/又は本発明のポリヌクレオチドに連結され得る。
【0342】
[0317]例えば、抗リバースキャップ類似体(ARCA)キャップは、5’-5’-三リン酸基により連結される2つのグアニンを含有し、1つのグアニンは、N7メチル基及び3’-O-メチル基を含有する(すなわちN7,3’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン(mG-3’mppp-G;3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gと同様に命名され得る)。他方の未修飾のグアニンの3’-O原子は、キャップ付きポリヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドに連結されるようになる。N7-及び3’-O-メチル化グアニンは、キャップ付きポリヌクレオチドの末端部分を提供する。
【0343】
[0318]別の例示的なキャップは、mCAPであり、これは、ARCAと同様であるが、グアノシン上に2’-O-メチル基を有する(すなわちN7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、mGm-ppp-G)。
【0344】
[0319]いくつかの実施形態において、キャップは、ジヌクレオチドキャップ類似体である。非限定的な例として、ジヌクレオチドキャップ類似体は、異なるリン酸の位置で内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,519,110号明細書に記載されるジヌクレオチドキャップ類似体など、ボラノリン酸基又はホスホロセレノアート基により修飾され得る。
【0345】
[0320]別の実施形態において、キャップは、キャップ類似体であり、当技術分野で知られ且つ/又は本明細書に記載されるキャップ類似体のN7-(4-クロロフェノキシエチル)置換ジククレオチド形態である。キャップ類似体のN7-(4-クロロフェノキシエチル)置換ジククレオチド形態の非限定的な例としては、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G及びN7-(4-クロロフェノキシエチル)-m3’-OG(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体(例えば、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるKore et al.Bioorganic&Medicinal Chemistry 2013 21:4570-4574に記載される様々なキャップ類似体及びキャップ類似体を合成する方法を参照されたい)が挙げられる。別の実施形態において、本発明のキャップ類似体は、4-クロロ/ブロモフェノキシエチル類似体である。
【0346】
[0321]キャップ類似体が、インビトロ転写反応においてポリヌクレオチド又はその領域の同時キャップ付加を可能にする一方、転写物の最大20%はキャップがないままである。これ及び内在性の細胞転写機構により生成される核酸の内在性5’-キャップ構造とキャップ類似体の構造的な相違は、翻訳適格性の低下及び細胞安定性の低下につながり得る。
【0347】
[0322]本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、より真正の5’-キャップ構造を生成するために、酵素を使用して製造後(IVT又は化学合成のいずれか)にもキャップ付加され得る。本明細書で使用する場合、「より真正」という句は、内在性又は野生型の特徴と構造的又は機能的のいずれかで酷似しているか又はそれを模倣する特徴を指す。すなわち、「より真正の」特徴は、先行技術の合成上の特徴又は類似体などと比較して、内在性、野生型、天然又は生理的細胞機能及び/若しくは構造のより良好な代表であるか、又は1つ以上の点について対応する内在性、野生型、天然又は生理的特徴よりも優れている。本発明のより真正の5’キャップ構造の非限定的な例は、とりわけ、当技術分野で知られる合成5’キャップ構造と(又は野生型、天然若しくは生理的5’キャップ構造と)比較して、キャップ結合タンパク質の結合が増強され、半減期が延長され、5’エンドヌクレアーゼに対する感受性が低下し、且つ/又は5’キャップ除去が減少しているものである。例えば、組換えワクシニアウイルスキャップ付加酵素及び組換え2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素は、ポリヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドとグアニンキャップヌクレオチドとの間で標準の5’-5’-三リン酸結合を生成することができ、キャップグアニンは、N7メチル化を含有し、且つmRNAの5’末端ヌクレオチドは、2’-O-メチルを含有する。このような構造は、キャップ1構造と呼ばれる。このキャップの結果、例えば、当技術分野で知られる他の5’キャップ類似体構造と比較して、翻訳適格性及び細胞安定性がより高くなり、細胞性炎症促進性サイトカインの活性化が低減される。キャップ構造としては、7mG(5’)ppp(5’)N、pN2p(キャップ0)、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp(キャップ1)及び7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2mp(キャップ2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0348】
[0323]非限定的な例として、製造後のキャップ付加キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドのほぼ100%がキャップ付加され得るため、より効率的であり得る。対照的に、一連のインビトロ転写反応においてキメラポリヌクレオチドにキャップ類似体が連結される場合、これは、約80%である。
【0349】
[0324]本発明によれば、5’末端キャップは、内在性キャップ又はキャップ類似体を含み得る。本発明によれば、5’末端キャップは、グアニン類似体を含み得る。有用なグアニン類似体としては、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン及び2-アジド-グアノシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
14.ポリAテール
[0325] いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、ポリAテールをさらに含む。さらなる実施形態において、ポリAテール上の末端基が安定性のために組み込まれ得る。他の実施形態において、ポリAテールは、デス-3’ヒドロキシルテールを含む。
【0351】
[0326]RNAプロセシング中に、安定性を向上させるために、アデニンヌクレオチドの長鎖(ポリAテール)がmRNA分子などのポリヌクレオチドに付加され得る。転写直後に転写物の3’末端を切断して、3’ヒドロキシルを遊離させ得る。次に、ポリAポリメラーゼは、アデニンヌクレオチドの鎖をRNAに付加する。ポリアデニル化と呼ばれるプロセスは、例えば、およそ80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240又は250残基長を含む、およそ80~およそ250残基長であり得るポリAテールを付加する。一実施形態において、ポリAテールは、100ヌクレオチド長(配列番号272)である。
【0352】
[0327]ポリAテールは、コンストラクトが核から輸出された後にも付加され得る。
【0353】
[0328]本発明によれば、安定性のためにポリAテール上の末端基が組み込まれ得る。本発明のポリヌクレオチドは、デス-3’ヒドロキシルテールを含み得る。それらは、Junjie Liら(内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるCurrent Biology,Vol.15,1501-1507,August 23,2005)により教示されるとおりの構造部分又は2’-Oメチル修飾も含み得る。
【0354】
[0329]本発明のポリヌクレオチドは、ヒストンmRNAを含む代替的なポリAテール構造を伴って転写物をコードするように設計され得る。Norburyによれば、「ヒト複製依存的ヒストンmRNAにおいて末端ウリジル化も検出された。染色体DNA複製の完了又は阻害後、これらのmRNAの代謝回転は、毒性の可能性があるヒストン蓄積の予防に重要であると考えられる。これらのmRNAは、それらの3’ポリ(A)テールの欠如により区別され、その機能は、代わりに安定したステムループ構造及びその同族のステムループ結合タンパク質(SLBP)により想定され;後者は、ポリアデニル化mRNA上でのPABPのものと同じ機能を果たす」(内容がその全体として参照により本明細書に組み込まれるNorbury,“Cytoplasmic RNA:a case of the tail wagging the dog,”Nature Reviews Molecular Cell Biology;AOP,published online 29 August 2013;doi:10.1038/nrm3645)。
【0355】
[0330]固有のポリAテール長は、本発明のポリヌクレオチドに対してある種の利点を提供する。一般に、ポリAテールの長さは、存在する場合、30ヌクレオチド長よりも長い。別の実施形態において、ポリAテールは、35ヌクレオチド長よりも長い(例えば、少なくとも約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500及び3,000ヌクレオチド又はそれを超える)。
【0356】
[0331]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド又はその領域は、約30~約3,000のヌクレオチド(例えば、30~50、30~100、30~250、30~500、30~750、30~1,000、30~1,500、30~2,000、30~2,500、50~100、50~250、50~500、50~750、50~1,000、50~1,500、50~2,000、50~2,500、50~3,000、100~500、100~750、100~1,000、100~1,500、100~2,000、100~2,500、100~3,000、500~750、500~1,000、500~1,500、500~2,000、500~2,500、500~3,000、1,000~1,500、1,000~2,000、1,000~2,500、1,000~3,000、1,500~2,000、1,500~2,500、1,500~3,000、2,000~3,000、2,000~2,500及び2,500~3,000)を含む。
【0357】
[0332]いくつかの実施形態において、全体的なポリヌクレオチドの長さ又はポリヌクレオチドの特定の領域の長さに対してポリAテールが設計される。この設計は、コード領域の長さ、特定の特徴若しくは領域の長さに基づくか、又はポリヌクレオチドから発現される最終産物の長さに基づき得る。
【0358】
[0333]これに関連して、ポリAテールは、ポリヌクレオチド又はその特徴よりも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100%超えて長いものであり得る。ポリAテールは、それが属するポリヌクレオチドのごく一部としても設計され得る。これに関連して、ポリAテールは、コンストラクトの全長、コンストラクト領域又はコンストラクトの全長-ポリAテールの10、20、30、40、50、60、70、80又は90%以上であり得る。さらに、ポリA結合タンパク質に対するポリヌクレオチドの操作された結合部位及びコンジュゲーションは、発現を増強し得る。
【0359】
[0334]さらに、複数の別個のポリヌクレオチドは、ポリAテールの3’末端で、修飾ヌクレオチドを使用して、3’末端を通じてPABP(ポリA結合タンパク質)を介して連結され得る。トランスフェクション実験は、関連する細胞株において実施され得、タンパク質産生は、トランスフェクションから12時間、24時間、48時間、72時間及び7日後にELISAによってアッセイされ得る。
【0360】
[0335]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、ポリA-Gカルテット領域を含むように設計される。G-カルテットは、DNA及びRNAの両方におけるGに富む配列によって形成され得る4つのグアニンヌクレオチドの環状水素結合アレイである。この実施形態において、G-カルテットは、ポリAテールの末端で組み込まれる。得られるポリヌクレオチドは、安定性、タンパク質産生及び様々な時間点での半減期を含む他のパラメーターについてアッセイされる。ポリA-Gカルテットは、120ヌクレオチドのポリAテール(配列番号273)のみを使用して見られるものの少なくとも75%と同等のmRNAからのタンパク質産生をもたらすことが発見された。
【0361】
15.開始コドン領域
[0336] 本発明は、開始コドン領域及び本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)の両方を含むポリヌクレオチドも含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、開始コドン領域と類似するか又は開始コドン領域のように機能する領域を有し得る。
【0362】
[0337]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの翻訳は、開始コドンAUGではないコドンで開始し得る。ポリヌクレオチドの翻訳は、ACG、AGG、AAG、CTG/CUG、GTG/GUG、ATA/AUA、ATT/AUU、TTG/UUGなどであるが、これらに限定されない代替開始コドン上で開始し得る(Touriol et al.Biology of the Cell 95(2003)169-178及びMatsuda and Mauro PLoS ONE,2010 5:11を参照されたい;各々の内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる)。
【0363】
[0338]非限定的な例として、ポリヌクレオチドの翻訳は、代替開始コドンACGで開始する。別の非限定的な例として、ポリヌクレオチド翻訳は、代替開始コドンCTG又はCUGで開始する。さらなる別の非限定的な例として、ポリヌクレオチドの翻訳は、代替開始コドンGTG又はGUGで開始する。
【0364】
[0339]開始コドン又は代替開始コドンなどであるが、これらに限定されない翻訳を開始するコドンに隣接するヌクレオチドは、翻訳効率、ポリヌクレオチドの長さ及び/又は構造に影響を与えることが知られている。(例えば、Matsuda and Mauro PLoS ONE,2010 5:11を参照されたい;内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる)。翻訳を開始するコドンに隣接するヌクレオチドのいずれかの遮蔽は、翻訳開始位置、翻訳効率、ポリヌクレオチドの長さ及び/又は構造を変化させるために使用され得る。
【0365】
[0340]いくつかの実施形態において、コドンを遮蔽するか又は隠して、遮蔽開始コドン又は代替開始コドンでの翻訳開始の可能性を低下させるために、開始コドン又は代替開始コドン付近で遮蔽剤が使用され得る。遮蔽剤の非限定的な例としては、アンチセンスロックド核酸(LNA)ポリヌクレオチド及びエクソン・ジャンクション複合体(EJC)が挙げられる。(例えば、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる、遮蔽剤LNAポリヌクレオチド及びEJCを記載するMatsuda及びMauro(PLoS ONE、2010 5:11)を参照されたい)。
【0366】
[0341]別の実施形態において、代替開始コドンで翻訳が開始されることになる可能性を上昇させるために、遮蔽剤を使用してポリヌクレオチドの開始コドンを遮蔽できる。いくつかの実施形態において、遮蔽された開始コドン又は代替開始コドンの下流の開始コドン又は代替開始コドンで翻訳が開始されることになる機会を増加させるために、遮蔽剤を使用して第1の開始コドン又は代替開始コドンを遮蔽できる。
【0367】
[0342]いくつかの実施形態において、開始コドン又は代替開始コドンは、miRNA結合部位に対する完全な相補体内に配置され得る。miRNA結合部位の完全な相補体は、遮蔽剤と同様に、ポリヌクレオチドの翻訳、長さ及び/又は構造の制御を促進する場合がある。非限定的な例として、開始コドン又は代替開始コドンは、miRNA結合部位に対する完全な相補体の中央に配置され得る。開始コドン又は代替開始コドンは、第1のヌクレオチド、第2のヌクレオチド、第3のヌクレオチド、第4のヌクレオチド、第5のヌクレオチド、第6のヌクレオチド、第7のヌクレオチド、第8のヌクレオチド、第9のヌクレオチド、第10のヌクレオチド、第11のヌクレオチド、第12のヌクレオチド、第13のヌクレオチド、第14のヌクレオチド、第15のヌクレオチド、第16のヌクレオチド、第17のヌクレオチド、第18のヌクレオチド、第19のヌクレオチド、第20のヌクレオチド又は第21のヌクレオチドの後に配置され得る。
【0368】
[0343]別の実施形態において、開始コドンではないコドンにおいてポリヌクレオチドの翻訳を開始させるために、ポリヌクレオチドの開始コドンがポリヌクレオチド配列から除去され得る。ポリヌクレオチドの翻訳は、除去した開始コドンの後のコドンにおいて又は開始コドン若しくは代替開始コドンの下流で開始され得る。非限定的な例において、開始コドン又は代替開始コドンの下流で翻訳を開始させるために、ポリヌクレオチド配列の最初の3ヌクレオチドとしての開始コドンATG又はAUGを除去する。翻訳開始、ポリヌクレオチドの長さ及び/又はポリヌクレオチドの構造を制御するか又は制御を試みるために、開始コドンが除去されたポリヌクレオチド配列は、下流の開始コドン及び/又は代替開始コドンに対する少なくとも1つの遮蔽剤をさらに含み得る。
【0369】
16.終止コドン領域
[0344] 本発明は、終止コドン領域及び本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)の両方を含むポリヌクレオチドも含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、3’非翻訳領域(UTR)の前に少なくとも2つの終止コドンを含み得る。終止コドンは、DNAの場合にはTGA、TAA及びTAGから、又はRNAの場合にはUGA、UAA及びUAGから選択され得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、DNAの場合には終止コドンTGA又はRNAの場合には終止コドンUGA及び1つのさらなる終止コドンを含む。さらなる実施形態において、さらなる終止コドンは、TAA又はUAAであり得る。別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、3つの連続終止コドン、4つの終止コドン又はそれを超える終止コドンを含む。
【0370】
17.創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAを含むポリヌクレオチド
[0345] 特定の実施形態において、本開示のポリヌクレオチド、例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、5’から3’末端に以下を含む:
(i)上で提供される5’キャップ;
(ii)上で提供される配列などの5’UTR;
(iii)ヒト創傷治癒ポリペプチドをコードするORF(例えば、表1に記載される創傷治癒ポリペプチド);
(iv)少なくとも1つの終止コドン、
(v)上で提供される配列などの3’UTR;及び
(vi)上で提供されるポリAテール。
【0371】
[0346]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、miRNA結合部位、例えばmiRNA-142に結合するmiRNA結合部位をさらに含む。いくつかの実施形態において、5’UTRは、miRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、miRNA結合部位を含む。
【0372】
[0347]いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、野生型ヒト創傷治癒ポリペプチドのタンパク質配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一であるポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0373】
[0348]いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチド、例えば、ポリペプチドをコードするmRNAヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、(1)上で提供される5’キャップ、例えば、CAP1、(2)5’UTR、(3)ヒト創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(3)終止コドン、(4)3’UTR、及び(5)上で提供されるポリAテール、例えば、約100残基のポリAテールを含む。
【0374】
[0349]いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチド、例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、(1)上で提供される5’キャップ、例えば、CAP1、(2)創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1に記載される創傷治癒ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列、及び(3)上で提供されるポリAテール、例えば、約100残基のポリAテールを含む。特定の実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA配列中の全てのウラシルが、5-メトキシウラシルによって置き換えられる。
【0375】
18.ポリヌクレオチドを作製する方法
[0350] 本開示は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)又はその相補体を作製するための方法も提供する。
【0376】
[0351]いくつかの態様において、本明細書で開示され、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、インビトロ転写(IVT)を使用して構築され得る。他の態様において、本明細書で開示され、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、オリゴヌクレオチド合成機を使用して化学合成によって構築され得る。
【0377】
[0352]他の態様において、本明細書で開示され、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、宿主細胞を使用することによって作製される。特定の態様において、本明細書で開示され、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、IVT、化学合成、宿主細胞発現又は当技術分野で知られる任意の他の方法の1つ以上の組み合わせにより作製される。
【0378】
[0353]天然に存在するヌクレオシド、天然に存在しないヌクレオシド又はその組合せは、完全に又は部分的に天然に、候補ヌクレオチド配列中に存在するヌクレオシドを置き換え、創傷治癒ポリペプチドをコードする配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、RNA、例えば、mRNA)に組み込まれ得る。次に、得られるポリヌクレオチド、例えば、mRNAは、タンパク質を生成し、且つ/又は治療薬という成果を生成するそれらの能力について調べられ得る。
【0379】
a.インビトロ転写/酵素的合成
[0354] 本明細書で開示される本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、インビトロ転写(IVT)系を使用して転写され得る。この系は、通常、転写緩衝液、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、RNase阻害剤及びポリメラーゼを含む。NTPは、天然及び非天然(修飾)NTPを含む本明細書に記載されるものから選択され得るが、これらに限定されない。ポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ及び本明細書で開示されるポリヌクレオチドを組み込むことができるポリメラーゼなどであるが、これらに限定されない変異体ポリメラーゼから選択され得るが、これらに限定されない。全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20130259923号明細書を参照されたい。
【0380】
[0355]任意の数のRNAポリメラーゼ又はバリアントが、本発明のポリヌクレオチドの合成において使用され得る。RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼ配列のアミノ酸を挿入するか又は欠失させることにより改変され得る。非限定的な例として、RNAポリメラーゼを改変して、未改変RNAポリメラーゼと比較して2’-修飾ヌクレオチド三リン酸を組み込む能力の向上を示すことができる(全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008078180号パンフレット及び米国特許第8,101,385号明細書を参照されたい)。
【0381】
[0356]バリアントは、RNAポリメラーゼを進化させ、RNAポリメラーゼアミノ酸及び/又は核酸配列を最適化することにより、且つ/又は当技術分野で知られる他の方法を使用することにより得ることができる。非限定的な例として、T7 RNAポリメラーゼバリアントは、Esvelt et al.(Nature 472:499-503(2011);全体として参照により本明細書に組み込まれる)によって記載される連続的な指向性進化システムを使用して進化され得、T7 RNAポリメラーゼのクローンは、93位のリジンのスレオニンによる置換(K93T)、I4M、A7T、E63V、V64D、A65E、D66Y、T76N、C125R、S128R、A136T、N165S、G175R、H176L、Y178H、F182L、L196F、G198V、D208Y、E222K、S228A、Q239R、T243N、G259D、M267I、G280C、H300R、D351A、A354S、E356D、L360P、A383V、Y385C、D388Y、S397R、M401T、N410S、K450R、P451T、G452V、E484A、H523L、H524N、G542V、E565K、K577E、K577M、N601S、S684Y、L699I、K713E、N748D、Q754R、E775K、A827V、D851N又はL864Fなどであるが、これらに限定されない少なくとも1つの変異をコードし得る。別の非限定的な例として、T7 RNAポリメラーゼバリアントは、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100120024号明細書及び同第20070117112号明細書に記載されるとおりの少なくとも変異をコードし得る。RNAポリメラーゼのバリアントとしては、置換バリアント、保存的アミノ酸置換、挿入バリアント及び/又は欠失バリアントも挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0382】
[0357]一態様において、ポリヌクレオチドは、野生型又はバリアントRNAポリメラーゼにより認識されるように設計され得る。その際、ポリヌクレオチドは、野生型又は親キメラポリヌクレオチドからの配列変化の部位又は領域を含有するように改変され得る。
【0383】
[0358]ポリヌクレオチド又は核酸合成反応は、ポリメラーゼを利用する酵素的方法により実行され得る。ポリメラーゼは、ポリヌクレオチド又は核酸鎖中のヌクレオチド間のホスホジエステル結合の生成を触媒する。現在知られているDNAポリメラーゼは、アミノ酸配列比較及び結晶構造分析に基づいて異なるファミリーに分類され得る。DNAポリメラーゼI(pol I)又はE.コリ(E.coli)のクレノー断片、バチルス(Bacillus)DNAポリメラーゼI、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ並びにT7 RNA及びDNAポリメラーゼを含むAポリメラーゼファミリーは、とりわけこれらのファミリーの中で最もよく研究されている。別の大きいファミリーは、DNAポリメラーゼα(polα)又はBポリメラーゼファミリーであり、全ての真核生物の複製DNAポリメラーゼ並びにファージT4及びRB69由来のポリメラーゼを含む。それらは同様の触媒機序を利用するが、ポリメラーゼのこれらのファミリーは、基質特異性、基質類似体組込み効率、プライマー伸長の程度及び速度、DNA合成の様式、エキソヌクレアーゼ活性及び阻害剤に対する感受性が異なる。
【0384】
[0359]DNAポリメラーゼは、それらが必要とする最適反応条件、例えば反応温度、pH並びに鋳型及びプライマー濃度に基づいても選択される。2つ以上のDNAポリメラーゼの組合せを利用して、所望のDNA断片サイズ及び合成効率を達成することがある。例えば、Chengらは、pHを上昇させ、グリセロール及びジメチルスルホキシドを添加し、変性時間を短縮し、伸長時間を延長し、且つクローニングした挿入物及びヒトゲノムDNAから効率的に長い標的を増幅するために3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する二次的な熱安定性DNAポリメラーゼを利用している。(内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるCheng et al.,PNAS 91:5695-5699(1994))。バクテリオファージT3、T7及びSP6に由来するRNAポリメラーゼは、生化学及び生物物理学研究用のRNAを調製するために広く使用されている。RNAポリメラーゼ、キャップ付加酵素及びポリAポリメラーゼは、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の国際公開第2014/028429号パンフレットにおいて開示される。
【0385】
[0360]一態様において、本発明のポリヌクレオチドの合成において使用され得るRNAポリメラーゼは、Syn5 RNAポリメラーゼである。(全体として参照により本明細書に組み込まれるZhu et al.Nucleic Acids Research 2013,doi:10.1093/nar/gkt1193を参照されたい)。近年、Syn5 RNAポリメラーゼは、Zhuらによって海洋シアノファージSyn5から特徴付けられ、Zhuらは、プロモーター配列も同定した(内容が全体として参照により本明細書に組み込まれるZhu et al.Nucleic Acids Research 2013を参照されたい)。Zhuらは、Syn5 RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼと比較してより広い範囲の温度及び塩分にわたってRNA合成を触媒することを見出した。さらに、プロモーターでの開始ヌクレオチドに対する要件が、T7 RNAポリメラーゼと比較してSyn5 RNAポリメラーゼの場合にはあまり厳しくないことが分かり、Syn5 RNAポリメラーゼがRNA合成に有望なものとなった。
【0386】
[0361]一態様において、Syn5 RNAポリメラーゼは、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの合成において使用され得る。非限定的な例として、Syn5 RNAポリメラーゼは、正確な3’末端を必要とするポリヌクレオチドの合成において使用され得る。
【0387】
[0362]一態様において、Syn5プロモーターは、ポリヌクレオチドの合成において使用され得る。非限定的な例として、Syn5プロモーターは、Zhu et al.(Nucleic Acids Research 2013)により記載されるとおりの5’-ATTGGGCACCCGTAAGGG-3’(配列番号185)であり得る。
【0388】
[0363]一態様において、Syn5 RNAポリメラーゼは、本明細書に記載され且つ/又は当技術分野で知られる少なくとも1つの化学修飾を含むポリヌクレオチドの合成において使用され得る(例えば、Zhu et al.(Nucleic Acids Research 2013)において記載されるシュード-UTP及び5Me-CTPの組込みを参照されたい)。
【0389】
[0364]一態様において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、Zhu et al.(Nucleic Acids Research 2013)によって記載される改変され且つ改善された精製手順を使用して精製されたSyn5 RNAポリメラーゼを使用して合成され得る。
【0390】
[0365]遺伝子操作における様々なツールは、鋳型として働く標的遺伝子の酵素による増幅に基づく。目的の個別の遺伝子又は特定の領域の配列の研究及び他の研究ニーズのために、ポリヌクレオチド又は核酸の小さい試料から複数のコピーの標的遺伝子を生成することが必要である。そのような方法は、本発明のポリヌクレオチドの製造において適用され得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介性増幅(TMA)とも呼ばれる核酸配列に基づく増幅(NASBA)及び/又はローリングサークル増幅(RCA)が、本発明のポリヌクレオチドの1つ以上の領域の製造において利用され得る。リガーゼによりポリヌクレオチド又は核酸を構築することも広く使用される。
【0391】
b.化学合成
[0366] 標準的な方法が、目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列、例えば、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を合成するために適用され得る。例えば、特定の単離ポリペプチドをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含有する単一DNA又はRNAオリゴマーが合成され得る。他の態様において、所望のポリペプチドの一部分をコードするいくつかの小さいオリゴヌクレオチドが合成され、続いてライゲートされ得る。いくつかの態様において、個々のオリゴヌクレオチドは、通常、相補的構築のための5’又は3’オーバーハングを含有する。
【0392】
[0367]本明細書で開示されるポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、当技術分野で知られる化学合成法及び可能な核酸塩基置換を使用して、化学的に合成され得る。例えば、全てが全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014093924号パンフレット、国際公開第2013052523号パンフレット;国際公開第2013039857号パンフレット、国際公開第2012135805号パンフレット、国際公開第2013151671号パンフレット;米国特許出願公開第20130115272号明細書;又は米国特許第8999380号明細書又は米国特許第8710200号明細書を参照されたい。
【0393】
c.創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの精製
[0368] 本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)の精製は、ポリヌクレオチドクリーンアップ、品質保証及び品質管理を含み得るが、これらに限定されない。クリーンアップは、AGENCOURT(登録商標)ビーズ(Beckman Coulter Genomics,Danvers,MA)、ポリ-Tビーズ、LNA(商標)オリゴ-T捕捉プローブ(EXIQON(登録商標)Inc.,Vedbaek,Denmark)又は強アニオン交換HPLC、弱アニオン交換HPLC、逆相HPLC(RP-HPLC)及び疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)などであるが、これらに限定されないHPLCに基づく精製方法などであるが、これらに限定されない当技術分野で知られる方法によって実施され得る。
【0394】
[0369]「精製」という用語は、「精製ポリヌクレオチド」などのポリヌクレオチドに関して使用される場合、少なくとも1つの夾雑物から分離されるものを指す。本明細書で使用する場合、「夾雑物」は、別のものを不適切で不純又は劣等なものにする任意の物質である。したがって、精製ポリヌクレオチド(例えば、DNA及びRNA)は、それが天然で見出されるものと異なる形態若しくは設定又は処理若しくは精製法にそれを供する前に存在したものと異なる形態若しくは設定で存在する。
【0395】
[0370]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)の精製は、望まれない免疫反応を低減するか又は除去し得る、例えば、サイトカイン活性を低減する不純物を除去する。
【0396】
[0371]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、カラムクロマトグラフィー(例えば、強アニオン交換HPLC、弱アニオン交換HPLC、逆相HPLC(RP-HPLC)及び疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)又は(LCMS))を使用して投与前に精製される。
【0397】
[0372]いくつかの実施形態において、カラムクロマトグラフィー(例えば、強アニオン交換HPLC、弱アニオン交換HPLC、逆相HPLC(RP-HPLC、疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)又は(LCMS))を使用して精製された本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、異なる精製方法により精製された本開示の同じポリヌクレオチドで得られる発現レベルと比較して、コードされる創傷治癒タンパク質の発現上昇を示す。
【0398】
[0373]いくつかの実施形態において、カラムクロマトグラフィー(例えば、強アニオン交換HPLC、弱アニオン交換HPLC、逆相HPLC(RP-HPLC)、疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)又は(LCMS))精製ポリヌクレオチドは、当技術分野で知られる点変異の1つ以上を含む創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0399】
[0374]いくつかの実施形態において、RP-HPLC精製ポリヌクレオチドの使用により、細胞に導入された場合、細胞において創傷治癒ポリペプチドの発現レベルが、RP-HPLC精製ポリヌクレオチドが細胞において導入される前又は非RP-HPLC精製ポリヌクレオチドが細胞において導入された後の細胞中での創傷治癒タンパク質の発現レベルに対して、例えば、10~100%、すなわち少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%上昇する。
【0400】
[0375]いくつかの実施形態において、RP-HPLC精製ポリヌクレオチドの使用により、細胞に導入された場合、細胞中の機能的創傷治癒タンパク質発現レベルが、RP-HPLC精製ポリヌクレオチドが細胞において導入される前又は非RP-HPLC精製ポリヌクレオチドが細胞において導入された後の細胞中での創傷治癒タンパク質の機能的発現レベルに対して、例えば、10~100%、すなわち少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%上昇する。
【0401】
[0376]いくつかの実施形態において、RP-HPLC精製ポリヌクレオチドの使用により、細胞に導入された場合、細胞において検出可能な創傷治癒ポリペプチド活性が、RP-HPLC精製ポリヌクレオチドが細胞において導入される前又は非RP-HPLC精製ポリヌクレオチドが細胞において導入された後の細胞中での機能的創傷治癒ポリペプチドの活性レベルに対して、例えば、10~100%、すなわち少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%上昇する。
【0402】
[0377]いくつかの実施形態において、精製ポリヌクレオチドは、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約96%純粋、少なくとも約97%純粋、少なくとも約98%純粋、少なくとも約99%純粋又は約100%純粋である。
【0403】
[0378]品質保証及び/又は品質管理チェックは、ゲル電気泳動、UV吸収又は分析的HPLCなどであるが、これらに限定されない方法を使用して実行され得る。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、逆転写酵素-PCRを含むが、これらに限定されない方法によりシークエンシングされ得る。
【0404】
d.創傷治癒ポリペプチドをコードする発現ポリヌクレオチドの定量化
[0379] いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)、それらの発現産物並びに分解産物及び代謝産物は、当技術分野で知られる方法に従って定量化され得る。
【0405】
[0380]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、エキソソーム中において又は1つ以上の体液に由来する場合に定量化され得る。本明細書で使用する場合、「体液」としては、末梢血液、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、眼房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液又は射精前の体液、汗、糞便物質、毛髪、涙、嚢胞液、胸膜及び腹腔液、心膜液、リンパ液、粥状液、乳糜、胆汁、間質液、月経、膿汁、皮脂、嘔吐物、腟分泌物、粘膜分泌液、便汁、膵液、副鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引液、胚盤胞腔液並びに臍帯血が挙げられる。代わりに、エキソソームは、肺、心臓、膵臓、胃、腸、膀胱、腎臓、卵巣、精巣、皮膚、結腸、乳房、前立腺、脳、食道、肝臓及び胎盤からなる群から選択される器官から回収され得る。
【0406】
[0381]エキソソーム定量方法において、2mL以下の試料が対象から得られ、エキソソームが、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、分画遠心分離、ナノ膜限外ろ過、免疫吸着捕捉、アフィニティー精製、マイクロ流体分離又はその組合せによって単離される。分析において、ポリヌクレオチドのレベル又は濃度は、投与されるコンストラクトの発現レベル、存在、非存在、短縮化又は改変であり得る。このレベルを1つ以上の臨床表現型又はヒト疾患バイオマーカーに対するアッセイと相関させることは有利である。
【0407】
[0382]本アッセイは、コンストラクト特異的なプローブ、サイトメトリー、qRT-PCR、リアルタイムPCR、PCR、フローサイトメトリー、電気泳動、質量分析又はそれらの組合せを使用して実施され得る一方で、エキソソームは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法などの免疫組織化学的方法を使用して単離され得る。エキソソームは、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、分画遠心分離、ナノ膜限外濾過、免疫吸着捕捉、アフィニティー精製、マイクロ流体分離又はそれらの組合せによっても単離され得る。
【0408】
[0383]これらの方法により、研究者が残存しているか又は送達されたポリヌクレオチドのレベルをリアルタイムで監視できるようになる。本発明のポリヌクレオチドが構造又は化学修飾のために内在性形態と異なることから、これが可能となる。
【0409】
[0384]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、紫外可視分光法(UV/Vis)などであるが、これに限定されない方法を使用して定量化され得る。UV/Vis分光計の非限定的な例はNANODROP(登録商標)分光計(ThermoFisher,Waltham,MA)である。ポリヌクレオチドが適正なサイズであり得るか否かを決定し、ポリヌクレオチドの分解が起こっていないことを確認するために、定量化されたポリヌクレオチドが分析され得る。ポリヌクレオチドの分解は、アガロースゲル電気泳動、強アニオン交換HPLC、弱アニオン交換HPLC、逆相HPLC(RP-HPLC)及び疎水性相互作用HPLC(HIC-HPLC)などであるが、これらに限定されないHPLCに基づく精製法、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)、キャピラリー電気泳動(CE)及びキャピラリーゲル電気泳動(CGE)などであるが、これらに限定されない方法により確認され得る。
【0410】
19.医薬組成物及び製剤
[0385] 本発明は、上記のポリヌクレオチドのいずれかを含む医薬組成物及び製剤を提供する。いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、送達剤をさらに含む。
【0411】
[0386]いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、創傷治癒ポリペプチドをコードする本明細書で開示される配列最適化核酸を含むポリヌクレオチドを含有し得る。いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、創傷治癒ポリペプチドをコードする本明細書で開示される配列最適化核酸配列に対する顕著な配列同一性を有するポリヌクレオチド(例えば、ORF)を含むポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)を含有し得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、miRNA結合部位、例えば、miR-126、miR-142、miR-144、miR-146、miR-150、miR-155、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27及びmiR-26aに結合するmiRNA結合部位をさらに含む。
【0412】
[0387]医薬組成物又は製剤は、任意選択により、例えば、治療的及び/又は予防的活性物質など、1つ以上のさらなる活性物質を含み得る。本発明の医薬組成物又は製剤は、無菌性及び/又はパイロジェンフリーであり得る。医薬品の製剤化及び/又は製造における全般的な考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins,2005(全体として参照により本明細書に組み込まれる)において見出され得る。いくつかの実施形態において、組成物は、ヒト、ヒト患者又は対象に投与される。本開示の目的に対して、「有効成分」という句は、一般に本明細書に記載されるとおりに送達されることになるポリヌクレオチドを指す。
【0413】
[0388]本明細書に記載される製剤及び医薬組成物は、薬理学の技術分野において知られるか又は本明細書で以後開発される任意の方法により調製され得る。一般に、このような調製方法は、有効成分を賦形剤及び/又は1つ以上の他の補助成分と合わせ、続いて必要に応じて及び/又は所望の場合、所望の単回又は複数回投与単位に生成物を分割、成型及び/又はパッケージ化する工程を含む。
【0414】
[0389]本開示による医薬組成物又は製剤は、バルクで、単回単位用量として、且つ/又は複数の単回単位用量として調製され、パッケージ化され、且つ/又は販売され得る。本明細書で使用する場合、「単位用量」は、有効成分の所定の量を含む医薬組成物の個別量を指す。有効成分の量は、一般に、対象に投与される有効成分の投与量及び/又はこのような投与量の好都合な割合、例えば、このような投与量の2分の1又は3分の1などと等しい。
【0415】
[0390]有効成分、薬学的に許容される賦形剤及び/又は本開示による医薬組成物中の任意のさらなる成分の相対量は、治療されている対象の個性、サイズ及び/又は状態に依存して、且つさらに組成物が投与されることになる経路に依存して変動し得る。
【0416】
[0391]いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物及び製剤は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含有し得る。非限定的な例として、組成物又は製剤は、1、2、3、4又は5つの本発明のポリヌクレオチドを含有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物又は製剤は、2つ以上のタイプのポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、直鎖状及び環状形態のポリヌクレオチドを含み得る。別の実施形態において、組成物又は製剤は、環状ポリヌクレオチド及びインビトロ転写(IVT)ポリヌクレオチドを含み得る。さらなる別の実施形態において、組成物又は製剤は、IVTポリヌクレオチド、キメラポリヌクレオチド及び環状ポリヌクレオチドを含み得る。
【0417】
[0392]本明細書で提供される医薬組成物及び製剤の説明は、原理的にヒトへの皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与に好適な医薬組成物及び製剤に向けられ、このような組成物は一般に、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば、非ヒト哺乳動物への皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与に好適であることが当業者によって理解されることになる。
【0418】
[0393]本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む医薬製剤を提供する。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、(1)安定性を向上させるために;(2)細胞トランスフェクションを向上させるために;(3)持続又は遅延放出を可能にするために(例えば、ポリヌクレオチドのデポー製剤から);(4)生体内分布を変化させるために(例えば、特定の組織又は細胞型に対してポリヌクレオチドを標的化する);(5)インビボでコードされるタンパク質の翻訳を向上させるために;及び/又は(6)インビボでのコードされるタンパク質の放出プロファイルを変化させるために1つ以上の賦形剤を使用して製剤化され得る。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、例えば、式(I)を有する化合物、例えば、化合物1~232のいずれか、例えば、化合物II;式(III)、(IV)、(V)又は(VI)を有する化合物、例えば、化合物233~342のいずれか、例えば、化合物VI;又は式(VIII)を有する化合物、例えば、化合物419~428のいずれか、例えば、化合物I又はそれらの任意の組合せを含む送達剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物VI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物VI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0のモル比率で含む。
【0419】
[0394]薬学的に許容される賦形剤としては、本明細書中で使用される場合、所望の特定の剤形に適するようなあらゆる溶媒、分散媒又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、希釈剤、造粒及び/又は分散剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、結合剤、滑沢剤又は油、着色、甘味又は香味剤、安定化剤、抗酸化剤、抗菌剤又は抗真菌剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、緩衝液、キレート剤、凍結保護物質(cyoprotectant)及び/又は充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物を製剤化するための様々な賦形剤及び組成物を調製するための技術は、当技術分野で知られている(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006を参照されたい;全体として参照により本明細書に組み込まれる)。
【0420】
[0395]代表的な希釈剤としては、炭酸カルシウム若しくはナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトールなど、及び/又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0421】
[0396]代表的な造粒及び/又は分散剤としては、デンプン、アルファ化デンプン若しくは微結晶デンプン、アルギン酸、グアーガム、寒天、ポリ(ビニル-ピロリドン)、(プロビドン)、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(VEEGUM(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウムなど、及び/又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0422】
[0397]代表的な界面活性剤及び/又は乳化剤としては、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス及びレシチン)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン[TWEEN(登録商標)80]、モノパルミチン酸ソルビタン[SPAN(登録商標)40]、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、PLUORINC(登録商標)F68、POLOXAMER(登録商標)188など、及び/又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0423】
[0398]代表的な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、モラセス、ラクトース、ラクチトール、マンニトール)、アミノ酸(例えば、グリシン)、天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0424】
[0399]酸化は、mRNA、特に、液体mRNA製剤に対する潜在的な分解経路である。酸化を防ぐために、抗酸化剤が製剤に加えられ得る。代表的な抗酸化剤としては、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、m-クレゾール、メチオニン、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸ナトリウム又はカリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウムなど、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0425】
[0400]代表的なキレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、エデト酸三ナトリウムなど、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0426】
[0401]代表的な抗菌又は抗真菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム塩化物、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム又はナトリウム、ソルビン酸カリウム又はナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸など、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0427】
[0402]代表的な保存剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータ-カロテン、クエン酸、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)など、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0428】
[0403]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド溶液のpHは、安定性を向上させるためにpH5~pH8に維持される。pHを制御するための代表的な緩衝液としては、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン(又はヒスチジン-HCl)、リンゴ酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなど、及び/又はそれらの組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0429】
[0404]代表的な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム又はマグネシウムなど、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0430】
[0405]本明細書に記載される医薬組成物又は製剤は、凍結中に本明細書に記載されるポリヌクレオチドを安定化するための凍結保護物質を含有し得る。代表的な凍結保護物質としては、マンニトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、グリセロール、デキストロースなど、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0431】
[0406]本明細書に記載される医薬組成物又は製剤は、「薬学的に洗練された」ケーキを生じさせ、長期(例えば、36ヶ月)保存中に凍結乾燥ポリヌクレオチドを安定化するために、凍結乾燥ポリヌクレオチド製剤中に充填剤を含有し得る。本発明の代表的な充填剤としては、スクロース、トレハロース、マンニトール、グリシン、ラクトース、ラフィノース及びそれらの組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0432】
[0407]いくつかの実施形態において、医薬組成物又は製剤は、送達剤をさらに含む。本開示の送達剤としては、リポソーム、脂質ナノ粒子、リピドイド、ポリマー、リポプレックス、微小胞、エキソソーム、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドでトランスフェクションされた細胞、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、ナノチューブ、複合物及びそれらの組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0433】
20.送達剤
a.脂質化合物
[0408] 本開示は、有利な特性を有する医薬組成物を提供する。本明細書に記載される脂質組成物は、哺乳動物細胞又は器官への治療薬及び/又は予防薬、例えば、mRNAの送達のために脂質ナノ粒子組成物中で有利に使用され得る。例えば、本明細書に記載される脂質は、免疫原性がほとんどないか又は全くない。例えば、本明細書で開示される脂質化合物は、参照脂質(例えば、MC3、KC2又はDLinDMA)と比較してより低い免疫原性を有する。例えば、本明細書で開示される脂質及び治療薬又は予防薬、例えば、mRNAを含む製剤は、参照脂質(例えば、MC3、KC2又はDLinDMA)及び同じ治療薬又は予防薬を含む対応する製剤と比較して、向上した治療指数を有する。
【0434】
[0409]特定の実施形態において、本出願は、
(a)創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;及び
(b)送達剤
を含む医薬組成物を提供する。
【0435】
脂質ナノ粒子製剤
[0410] いくつかの実施形態において、本発明の核酸(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)は、脂質ナノ粒子(LNP)中で製剤化される。脂質ナノ粒子は、通常、目的の核酸カーゴとともにイオン化可能カチオン性脂質、非カチオン性脂質、ステロール及びPEG脂質構成要素を含む。本発明の脂質ナノ粒子は、当技術分野で一般に知られるとおりの構成要素、組成物及び方法を使用して作製され得る;例えば、全てが全体として参照により本明細書に組み込まれるPCT/米国特許出願公開第2016/052352号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016/068300号明細書;PCT/米国特許出願公開第2017/037551号明細書;PCT/米国特許出願公開第2015/027400号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016/047406号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016000129号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016/014280号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016/014280号明細書;PCT/米国特許出願公開第2017/038426号明細書;PCT/米国特許出願公開第2014/027077号明細書;PCT/米国特許出願公開第2014/055394号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016/52117号明細書;PCT/米国特許出願公開第2012/069610号明細書;PCT/米国特許出願公開第2017/027492号明細書;PCT/米国特許出願公開第2016/059575号明細書及びPCT/米国特許出願公開第2016/069491号明細書を参照されたい。
【0436】
[0411]本開示の核酸(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)は、通常、脂質ナノ粒子中で製剤化される。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのイオン化可能カチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、少なくとも1つのステロール及び/又は少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)-修飾脂質を含む。
【0437】
[0412]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、20~60%のモル比率のイオン化可能カチオン性脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、20~50%、20~40%、20~30%、30~60%、30~50%、30~40%、40~60%、40~50%又は50~60%のモル比率のイオン化可能カチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、20%、30%、40%、50又は60%のモル比率のイオン化可能カチオン性脂質を含む。
【0438】
[0413]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、5~25%のモル比率の非カチオン性脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、5~20%、5~15%、5~10%、10~25%、10~20%、10~25%、15~25%、15~20%又は20~25%のモル比率の非カチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、5%、10%、15%、20%又は25%のモル比率の非カチオン性脂質を含む。
【0439】
[0414]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、25~55%のモル比率のステロールを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%、25~30%、30~55%、30~50%、30~45%、30~40%、30~35%、35~55%、35~50%、35~45%、35~40%、40~55%、40~50%、40~45%、45~55%、45~50%又は50~55%のモル比率のステロールを含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、25%、30%、35%、40%、45%、50%又は55%のモル比率のステロールを含む。
【0440】
[0415]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、0.5~15%のモル比率のPEG修飾脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、0.5~10%、0.5~5%、1~15%、1~10%、1~5%、2~15%、2~10%、2~5%、5~15%、5~10%又は10~15%のモル比率を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%のモル比率のPEG修飾脂質を含む。
【0441】
[0416]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、20~60%のモル比率のイオン化可能カチオン性脂質、5~25%のモル比率の非カチオン性脂質、25~55%のモル比率のステロール及び0.5~15%のモル比率のPEG修飾脂質を含む。
【0442】
イオン化可能脂質
[0417] いくつかの態様において、本開示のイオン化可能脂質は、式(I)の化合物:
【化15】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、
は、C5~30アルキル、C5~20アルケニル、-R*Y”、-YR”及び-R”M’R’からなる群から選択され;
及びRは、H、C1~14アルキル、C2~14アルケニル、-R*YR’’、-YR”及び-R*OR”からなる群から独立して選択されるか、又はR及びRを、それらが結合される原子と合わせて、複素環又は炭素環を形成し;
は、水素、C3~6炭素環、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR、-CQ(R)及び非置換C1~6アルキルからなる群から選択され、Qは、炭素環、複素環、-OR、-O(CHN(R)、-C(O)OR、-OC(O)R、-CX、-CXH、-CXH、-CN、-N(R)、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(S)N(R)、-N(R)R、-N(R)S(O)、-O(CHOR、-N(R)C(=NR)N(R)、-N(R)C(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-N(OR)C(O)R、-N(OR)S(O)R、-N(OR)C(O)OR、-N(OR)C(O)N(R)、-N(OR)C(S)N(R)、-N(OR)C(=NR)N(R)、-N(OR)C(=CHR)N(R)、-C(=NR)N(R)、-C(=NR)R、-C(O)N(R)OR及び-C(R)N(R)C(O)ORから選択され、且つ各nは、1、2、3、4及び5から独立して選択され;
各Rは、C1~3アルキル、C2~3アルケニル及びHからなる群から独立して選択され;
各Rは、C1~3アルキル、C2~3アルケニル及びHからなる群から独立して選択され;
M及びM’は、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-M”-C(O)O-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-S-S-、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択され、M”は、結合、C1~13アルキル又はC2~13アルケニルであり;
は、C1~3アルキル、C2~3アルケニル及びHからなる群から選択され;
は、C3~6炭素環及び複素環からなる群から選択され;
は、H、CN、NO、C1~6アルキル、-OR、-S(O)R、-S(O)N(R)、C2~6アルケニル、C3~6炭素環及び複素環からなる群から選択され;
各Rは、C1~3アルキル、C2~3アルケニル及びHからなる群から独立して選択され;
各R’は、C1~18アルキル、C2~18アルケニル、-R*YR”、-YR”及びHからなる群から独立して選択され;
各R”は、C3~15アルキル及びC3~15アルケニルからなる群から独立して選択され;
各R*は、C1~12アルキル及びC2~12アルケニルからなる群から独立して選択され;
各Yは、独立して、C3~6炭素環であり;
各Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から独立して選択され;且つ
mは、5、6、7、8、9、10、11、12及び13から選択され;且つRが、-(CHQ、-(CHCHQR、-CHQR又は-CQ(R)であるとき、(i)nが1、2、3、4又は5であるとき、Qは、N(R)ではないか、又は(ii)nが1又は2であるとき、Qは、5、6又は7員ヘテロシクロアルキルではない)
の1つ以上であり得る。
【0443】
[0418]特定の実施形態において、式(I)の化合物のサブセットは、式(IA):
【化16】
又はそのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、lは、1、2、3、4及び5から選択され;mは、5、6、7、8及び9から選択され;Mは、結合又はM’であり;Rは、水素、非置換C1~3アルキル又は-(CHQであり、Qは、OH、-NHC(S)N(R)、-NHC(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)R、-NHC(=NR)N(R)、-NHC(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルであり;M及びM’は、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-M”-C(O)O-、-C(O)N(R’)-、-P(O)(OR’)O-、-S-S-、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択され;且つR及びRは、H、C1~14アルキル及びC2~14アルケニルからなる群から独立して選択される)のものを含む。例えば、mは、5、7又は9である。例えば、Qは、OH、-NHC(S)N(R)又は-NHC(O)N(R)である。例えば、Qは、-N(R)C(O)R又は-N(R)S(O)Rである。
【0444】
[0419]特定の実施形態において、式(I)の化合物のサブセットは、式(IB):
【化17】
又はそのN-オキシド又はその塩若しくは異性体のものを含み、全ての可変要素は、本明細書で定義されるとおりである。例えば、mは、5、6、7、8及び9から選択され;Rは、水素、非置換C1~3アルキル又は-(CHQであり、Qは、OH、-NHC(S)N(R)、-NHC(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)R、-NHC(=NR)N(R)、-NHC(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルであり;M及びM’は、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-M”-C(O)O-、-C(O)N(R’)-、-P(O)(OR’)O-、-S-S-、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択され;且つR及びRは、H、C1~14アルキル及びC2~14アルケニルから独立して選択される。例えば、mは、5、7又は9である。例えば、Qは、OH、-NHC(S)N(R)又は-NHC(O)N(R)である。例えば、Qは、-N(R)C(O)R又は-N(R)S(O)Rである。
【0445】
[0420]特定の実施形態において、式(I)の化合物のサブセットは、式(II):
【化18】
又はそのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、lは、1、2、3、4及び5から選択され;Mは、結合又はM’であり;Rは、水素、非置換C1~3アルキル又は-(CHQであり、nは、2、3又は4であり、且つQは、OH、-NHC(S)N(R)、-NHC(O)N(R)、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(R)R、-NHC(=NR)N(R)、-NHC(=CHR)N(R)、-OC(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルであり;M及びM’は、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-M”-C(O)O-、-C(O)N(R’)-、-P(O)(OR’)O-、-S-S-、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択され;且つR及びRは、H、C1~14アルキル及びC2~14アルケニルからなる群から独立して選択される)のものを含む。
【0446】
[0421]一実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIa)、
【化19】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、Rは、本明細書に記載されるとおりである)のものである。
【0447】
[0422]別の実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIb)、
【化20】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、Rは、本明細書に記載されるとおりである)のものである。
【0448】
[0423]別の実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIc)又は(IIe):
【化21】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、Rは、本明細書に記載されるとおりである)のものである。
【0449】
[0424]別実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIf):
【化22】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、Mは、-C(O)O-又は-OC(O)-であり、M”は、C1~6アルキル又はC2~6アルケニルであり、R及びRは、C5~14アルキル及びC5~14アルケニルからなる群から独立して選択され、且つnは、2、3及び4から選択される)のものである。
【0450】
[0425]さらなる実施形態において、式(I)の化合物は、式(IId)、
【化23】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、nは、2、3又は4であり;且つm、R’、R”及びR~Rは、本明細書に記載されるとおりである)のものである。例えば、R及びRの各々は、C5~14アルキル及びC5~14アルケニルからなる群から独立して選択され得る。
【0451】
[0426]さらなる実施形態において、式(I)の化合物は、式(IIg)、
【化24】
又はそれらのN-オキシド又はその塩若しくは異性体(式中、lは、1、2、3、4及び5から選択され;mは、5、6、7、8及び9から選択され;Mは、結合又はM’であり;M及びM’は、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-M”-C(O)O-、-C(O)N(R’)-、-P(O)(OR’)O-、-S-S-、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択され;且つR及びRは、H、C1~14アルキル及びC2~14アルケニルからなる群から独立して選択される)のものである。例えば、M”は、C1~6アルキル(例えば、C1~4アルキル)又はC2~6アルケニル(例えば、C2~4アルケニル)である。例えば、R及びRは、C5~14アルキル及びC5~14アルケニルからなる群から独立して選択される。
【0452】
[0427]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、米国特許出願第62/220,091号明細書、同第62/252,316号明細書、同第62/253,433号明細書、同第62/266,460号明細書、同第62/333,557号明細書、同第62/382,740号明細書、同第62/393,940号明細書、同第62/471,937号明細書、同第62/471,949号明細書、同第62/475,140号明細書及び同第62/475,166号明細書並びにPCT出願PCT/米国特許出願公開第2016/052352号明細書において記載される化合物の1つ以上である。
【0453】
[0428]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、米国特許出願第62/475,166号明細書において記載される化合物1~280から選択される。
【0454】
[0429]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、
【化25】
又はその塩である。
【0455】
[0430]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、
【化26】
又はその塩である。
【0456】
[0431]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、
【化27】
又はその塩である。
【0457】
[0432]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、
【化28】
又はその塩である。
【0458】
[0433]式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)、(IIf)又は(IIg)による脂質の中心のアミン部分は、生理的pHでプロトン化され得る。したがって、脂質は、生理的pHで正又は部分的に正の電荷を有し得る。そのような脂質は、カチオン性又はイオン化可能(アミノ)脂質と呼ばれる場合がある。脂質は、双性イオン、すなわち正及び負電荷の両方を有する中性分子でもあり得る。
【0459】
[0434]いくつかの態様において、本開示のイオン化可能脂質は、式(III)の化合物、
【化29】
又はその塩若しくは異性体(式中、
Wは、
【化30】
であり、
環Aは、
【化31】
であり;
tは、1又は2であり;
及びAは、CH又はNからそれぞれ独立して選択され;
Zは、CHであるか又は存在せず、ZがCHである場合、点線(1)及び(2)はそれぞれ単結合を表し;且つZが存在しない場合、点線(1)及び(2)は両方ともに存在せず;
、R、R、R及びRは、C5~20アルキル、C5~20アルケニル、-R”MR’、-R*YR”、-YR”及び-R*OR”からなる群から独立して選択され;
X1及びRX2はそれぞれ独立して、H又はC1~3アルキルであり;
各Mは、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、アリール基及びヘテロアリール基からなる群から独立して選択され;
M*は、C~Cアルキルであり;
及びWは、-O-及び-N(R)-からなる群からそれぞれ独立して選択され;
各Rは、H及びC1~5アルキルからなる群から独立して選択され;
、X及びXは、結合、-CH-、-(CH-、-CHR-、-CHY-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-(CH-C(O)-、-C(O)-(CH-、-(CH-C(O)O-、-OC(O)-(CH-、-(CH-OC(O)-、-C(O)O-(CH-、-CH(OH)-、-C(S)-及び-CH(SH)-からなる群から独立して選択され;
各Yは、独立して、C3~6炭素環であり;
各R*は、C1~12アルキル及びC2~12アルケニルからなる群から独立して選択され;
各Rは、C1~3アルキル及びC3~6炭素環からなる群から独立して選択され;
各R’は、C1~12アルキル、C2~12アルケニル及びHからなる群から独立して選択され;
各R”は、C3~12アルキル、C3~12アルケニル及び-R*MR’からなる群から独立して選択され;且つ
nは、1~6の整数であり;
環Aが、
【化32】
であるとき、
i)X、X及びXの少なくとも1つは、-CH-ではなく;且つ/又は
ii)R、R、R、R及びRの少なくとも1つは、-R”MR’である)
の1つ以上であり得る。
【0460】
[0435]いくつかの実施形態において、化合物は、式(IIIa1)~(IIIa8):
【化33】
【化34】
のいずれかである。
【0461】
[0436]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、米国特許出願第62/271,146号明細書、同第62/338,474号明細書、同第62/413,345号明細書及び同第62/519,826号明細書並びにPCT出願PCT/米国特許出願公開第2016/068300号明細書において記載される化合物の1つ以上である。
【0462】
[0437]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、米国特許出願第62/519,826号明細書において記載される化合物1~156から選択される。
【0463】
[0438]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、米国特許出願第62/519,826号明細書において記載される化合物1~16、42~66、68~76及び78~156から選択される。
【0464】
[0439]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、
【化35】
又はその塩である。
【0465】
[0440]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、(化合物VII)又はその塩である。
【0466】
[0441]式(III)、(IIIa1)、(IIIa2)、(IIIa3)、(IIIa4)、(IIIa5)、(IIIa6)、(IIIa7)又は(IIIa8)による脂質の中心のアミン部分は、生理的pHでプロトン化され得る。したがって、脂質は、生理的pHで正又は部分的に正の電荷を有し得る。そのような脂質は、カチオン性又はイオン化可能(アミノ)脂質と呼ばれる場合がある。脂質は、双性イオン、すなわち正及び負電荷の両方を有する中性分子でもあり得る。
【0467】
リン脂質
[0442] 本明細書で開示される脂質ナノ粒子組成物の脂質組成物は、1つ以上のリン脂質、例えば、1つ以上の飽和若しくは(多)不飽和リン脂質又はそれらの組合せを含み得る。一般に、リン脂質は、リン脂質部分及び1つ以上の脂肪酸部分を含む。
【0468】
[0443]リン脂質部分は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、2-リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンからなる非限定的な群から選択され得る。
【0469】
[0444]脂肪酸部分は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファ-リノレン酸、エルカ酸、フィタン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘニン酸、ドコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸からなる非限定的な群から選択され得る。
【0470】
[0445]特定のリン脂質は、膜への融合を促進し得る。例えば、カチオン性リン脂質は、膜(例えば、細胞膜又は細胞内膜)の1つ以上の負荷電リン脂質と相互作用し得る。膜へのリン脂質の融合により、脂質含有組成物(例えば、LNP)の1つ以上の要素(例えば、治療薬)が膜を通過できるようになり、例えば、標的組織への1つ以上の要素の送達が可能になる。
【0471】
[0446]分岐、酸化、環状化及びアルキンを含む修飾及び置換を有する天然種を含む非天然リン脂質種も企図される。例えば、リン脂質は、1つ以上のアルキン(例えば、1つ以上の二重結合が三重結合で置き換えられるアルケニル基)で官能化され得るか又はこれに架橋され得る。適切な反応条件下において、アルキン基は、アジドへの曝露時に銅触媒による環付加を受ける場合がある。このような反応は、膜透過又は細胞認識を促進するためにナノ粒子組成物の脂質二重層を官能化するか、又はナノ粒子組成物を標的化又はイメージング部分(例えば、色素)などの有用な構成要素と複合化する際に有用であり得る。
【0472】
[0447]リン脂質としては、グリセロリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジグリセロール及びホスファチジン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質は、スフィンゴミエリンなどのホスホスフィンゴ脂質も含む。
【0473】
[0448]いくつかの実施形態において、本発明のリン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン及びそれらの混合物を含む。
【0474】
[0449]特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、DSPCの類似体又はバリアントである。特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、式(IV)の化合物:
【化36】
又はその塩(式中、
各Rは、独立して、任意選択により置換されるアルキルであるか;又は任意選択により、2つのRは、介在原子と一緒に連結されて、任意選択により置換される単環式カルボシクリル又は任意選択により置換される単環式ヘテロシクリルを形成するか;又は任意選択により、3つのRは、介在原子と一緒に連結されて、任意選択により置換される二環式カルボシクリル又は任意選択により置換される二環式ヘテロシクリルを形成し;
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;
Aは、式:
【化37】
であり;
の各例は、独立して、結合又は任意選択により置換されるC1~6アルキレンであり、任意選択により置換されるC1~6アルキレンの1つのメチレン単位は、任意選択により、O、N(R)、S、C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、-NRC(O)O又はNRC(O)N(R)で置き換えられ;
の各例は、独立して、任意選択により置換されるC1~30アルキル、任意選択により置換されるC1~30アルケニル又は任意選択により置換されるC1~30アルキニルであり;任意選択により、Rの1つ以上のメチレン単位は、独立して、任意選択により置換されるカルボシクリレン、任意選択により置換されるヘテロシクリレン、任意選択により置換されるアリーレン、任意選択により置換されるヘテロアリーレン、N(R)、O、S、C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、-NRC(O)N(R)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、NRC(O)O、C(O)S、SC(O)、-C(=NR)、C(=NR)N(R)、NRC(=NR)、NRC(=NR)N(R)、C(S)、C(S)N(R)、NRC(S)、NRC(S)N(R)、S(O)、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、N(R)S(O)、-S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)、N(R)S(O)O、S(O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)又はN(R)S(O)Oで置き換えられ;
の各例は、独立して、水素、任意選択により置換されるアルキル又は窒素保護基であり;
環Bは、任意選択により置換されるカルボシクリル、任意選択により置換されるヘテロシクリル、任意選択により置換されるアリール又は任意選択により置換されるヘテロアリールであり;且つ
pは、1又は2であり;
ただし、本化合物は、式:
【化38】
(式中、Rの各例は、独立して、非置換アルキル、非置換アルケニル又は非置換アルキニルである)
の化合物ではないことを条件とする)
である。
【0475】
[0450]いくつかの実施形態において、リン脂質は、米国特許出願第62/520,530号明細書において記載されるリン脂質の1つ以上であり得る。
【0476】
i)リン脂質頭部修飾
[0451] 特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、修飾リン脂質頭部(例えば、修飾コリン基)を含む。特定の実施形態において、修飾頭部を有するリン脂質は、修飾四級アミンを有するDSPC又はその類似体である。例えば、式(IV)の実施形態において、Rの少なくとも1つは、メチルではない。特定の実施形態において、Rの少なくとも1つは、水素又はメチルではない。特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、以下の式の1つ:
【化39】
又はその塩(式中、
各tは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;
各uは、独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;且つ
各vは、独立して1、2又は3である)
である。特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、式(IV-a):
【化40】
又はその塩である。
【0477】
[0452]特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、グリセリド部分の代わりに環状部分を含む。特定の実施形態において、本発明で有用なリン脂質は、グリセリド部分の代わりに環状部分を有するDSPC又はその類似体である。特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、式(IV-b):
【化41】
又はその塩である。
【0478】
(ii)リン脂質尾部修飾
[0453] 特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、修飾尾部を含む。特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、修飾尾部を有するDSPC又はその類似体である。本明細書に記載されるとおり、「修飾尾部」は、より短いか又はより長い脂肪族鎖を有する尾部であり得、脂肪族鎖は、分岐が導入されているか、脂肪族鎖は置換基が導入されているか、脂肪族鎖において1つ以上のメチレンが環状又はヘテロ原子基により置き換えられているか又はそれらのいずれかの組合せである。例えば、特定の実施形態において、(IV)の化合物は、式(IV-a)又はその塩であり、式中、Rの少なくとも1つの例は、Rの各例であり、任意選択により置換されるC1~30アルキルであり、ここで、Rの1つ以上のメチレン単位は、独立して、任意選択により置換されるカルボシクリレン、任意選択により置換されるヘテロシクリレン、任意選択により置換されるアリーレン、任意選択により置換されるヘテロアリーレン、N(R)、O、S、-C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、NRC(O)N(R)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、-OC(O)N(R)、NRC(O)O、C(O)S、SC(O)、C(=NR)、C(=NR)N(R)、NRC(=NR)、NRC(=NR)N(R)、C(S)、C(S)N(R)、NRC(S)、NRC(S)N(R)、S(O)、OS(O)、-S(O)O、OS(O)O、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、N(R)S(O)、S(O)N(R)、-N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)、N(R)S(O)O、S(O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)、-N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)又はN(R)S(O)Oで置き換えられる。
【0479】
[0454]特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、式(IV-c):
【化42】
又はその塩(式中、
各Xは、独立して(両端を含む)0~30の整数であり;且つ
Gの各例は、任意選択により置換されるカルボシクリレン、任意選択により置換されるヘテロシクリレン、任意選択により置換されるアリーレン、任意選択により置換されるヘテロアリーレン、N(R)、O、S、C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、-NRC(O)N(R)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、NRC(O)O、C(O)S、SC(O)、-C(=NR)、C(=NR)N(R)、NRC(=NR)、NRC(=NR)N(R)、C(S)、C(S)N(R)、NRC(S)、NRC(S)N(R)、S(O)、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、N(R)S(O)、-S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)、N(R)S(O)O、S(O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)又はN(R)S(O)Oからなる群から独立して選択される)
の化合物である。各可能性は、本発明の個別の実施形態に相当する。
【0480】
[0455]特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、修飾ホスホコリン部分を含み、ここで、ホスホリル基に四級アミンを連結するアルキル鎖は、エチレンではない(例えば、nは、2ではない)。したがって、特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、式(IV)の化合物(式中、nは、1、3、4、5、6、7、8、9又は10である)である。例えば、特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、以下の式:
【化43】
の1つ又はその塩である。
【0481】
代替脂質
[0456] 特定の実施形態において、本発明において有用であるか又は有用である可能性があるリン脂質は、修飾ホスホコリン部分を含み、ここで、ホスホリル基に四級アミンを連結するアルキル鎖は、エチレンではない(例えば、nは、2ではない)。したがって、特定の実施形態において、有用なリン脂質である。
【0482】
[0457]特定の実施形態において、代替脂質は、本開示のリン脂質の代わりに使用される。
【0483】
[0458]特定の実施形態において、本発明の代替脂質は、オレイン酸である。
【0484】
[0459]特定の実施形態において、代替脂質は、以下の1つである。
【化44】
【化45】
【0485】
構造脂質
[0460] 本明細書で開示される医薬組成物の脂質組成物は、1つ以上の構造脂質を含み得る。本明細書で使用する場合、「構造脂質」という用語は、ステロールを指し、ステロール部分を含有する脂質も指す。
【0486】
[0461]脂質ナノ粒子における構造脂質の組込みは、粒子における他の脂質の凝集の緩和を促進し得る。構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、ホパノイド、フィトステロール、ステロイド及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない群から選択され得る。いくつかの実施形態において、構造脂質は、ステロールである。本明細書で定義されるとおり、「ステロール」は、ステロイドアルコールからなるステロイドのサブグループである。特定の実施形態において、構造脂質は、ステロイドである。特定の実施形態において、構造脂質は、コレステロールである。特定の実施形態において、構造脂質は、コレステロールの類似体である。特定の実施形態において、構造脂質は、アルファ-トコフェロールである。
【0487】
[0462]いくつかの実施形態において、構造脂質は、米国特許出願第62/520,530号明細書において記載される構造脂質の1つ以上であり得る。
【0488】
ポリエチレングリコール(PEG)-脂質
[0463] 本明細書で開示される医薬組成物の脂質組成物は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)脂質を含み得る。
【0489】
[0464]本明細書で使用する場合、「PEG-脂質」という用語は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質を指す。PEG-脂質の非限定的な例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEG-セラミド複合物(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン及びPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが挙げられる。このような脂質は、PEG化脂質とも呼ばれる。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC又はPEG-DSPE脂質であり得る。
【0490】
[0465]いくつかの実施形態において、PEG-脂質としては、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG-DSPE)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル(dipalmetoleyl)、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)又はPEG-1,2-ジミリスチルオキシルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0491】
[0466]一実施形態において、PEG-脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0492】
[0467]いくつかの実施形態において、PEG-脂質の脂質部分としては、約C14~約C22、好ましくは約C14~約C16の長さを有するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、PEG部分、例えば、mPEG-NHのサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000又は20,000ダルトンである。一実施形態において、PEG-脂質は、PEG2k-DMGである。
【0493】
[0468]一実施形態において、本明細書に記載される脂質ナノ粒子は、非拡散性PEGであるPEG脂質を含み得る。非拡散性PEGの非限定的な例としては、PEG-DSG及びPEG-DSPEが挙げられる。
【0494】
[0469]PEG-脂質は、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8158601号明細書及び国際公開第2015/130584A2号パンフレットに記載されるものなど、当技術分野で知られている。
【0495】
[0470]一般に、本明細書に記載される様々な式の他の脂質構成要素の一部(例えば、PEG脂質)は、全体として参照により組み込まれる“Compositions and Methods for Delivery of Therapeutic Agents”という表題の2016年12月10日に出願された国際特許出願番号PCT/米国特許出願公開第2016/000129号明細書に記載のとおりに合成され得る。
【0496】
[0471]脂質ナノ粒子組成物の脂質構成要素は、PEG又はPEG修飾脂質などのポリエチレングリコールを含む1つ以上の分子を含み得る。このような種は、代わりにPEG化脂質と呼ばれ得る。PEG脂質は、ポリエチレングリコールで修飾された脂質である。PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール及びこれらの混合物を含む非限定的な群から選択され得る。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC又はPEG-DSPE脂質であり得る。
【0497】
[0472]いくつかの実施形態において、PEG修飾脂質は、PEG DMGの修飾形態である。PEG-DMGは、以下の構造:
【化46】
を有する。
【0498】
[0473]一実施形態において、本発明において有用なPEG脂質は、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012099755号パンフレットに記載されるPEG化脂質であり得る。本明細書に記載されるこれらの代表的なPEG脂質のいずれも、PEG鎖上でヒドロキシル基を含むように修飾され得る。特定の実施形態において、PEG脂質は、PEG-OH脂質である。一般的に本明細書中で定められるとおり、「PEG-OH脂質」(本明細書中で「ヒドロキシ-PEG化脂質」とも呼ばれる)は、脂質上に1つ以上のヒドロキシル(-OH)基を有するPEG化脂質である。特定の実施形態において、PEG-OH脂質は、PEG鎖上に1つ以上のヒドロキシル基を含む。特定の実施形態において、PEG-OH又はヒドロキシ-PEG化脂質は、PEG鎖の末端に-OH基を含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態に相当する。
【0499】
[0474]特定の実施形態において、本発明において有用なPEG脂質は、式(V)の化合物である。本明細書では、式(V)の化合物:
【化47】
又はその塩(式中、
は、-ORであり;
は、水素、任意選択により置換されるアルキル又は酸素保護基であり;
rは、(両端を含む)1~100の整数であり;
は、任意選択により置換されるC1~10アルキレンであり、任意選択により置換されるC1~10アルキレンの少なくとも1つのメチレンは、独立して、任意選択により置換されるカルボシクリレン、任意選択により置換されるヘテロシクリレン、任意選択により置換されるアリーレン、任意選択により置換されるヘテロアリーレン、O、N(R)、S、C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、C(O)O、-OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、NRC(O)O又はNRC(O)N(R)によって置き換えられ;
Dは、クリックケミストリーにより得られる部分又は生理的条件下で切断可能な部分であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;
Aは、式:
【化48】
であり;
の各例は、独立して、結合又は任意選択により置換されるC1~6アルキレンであり、任意選択により置換されるC1~6アルキレンの1つのメチレン単位は、任意選択により、O、N(R)、S、C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、-NRC(O)O又はNRC(O)N(R)で置き換えられ;
の各例は、独立して、任意選択により置換されるC1~30アルキル、任意選択により置換されるC1~30アルケニル又は任意選択により置換されるC1~30アルキニルであり、任意選択により、Rの1つ以上のメチレン単位は、独立して、任意選択により置換されるカルボシクリレン、任意選択により置換されるヘテロシクリレン、任意選択により置換されるアリーレン、任意選択により置換されるヘテロアリーレン、N(R)、O、S、C(O)、C(O)N(R)、NRC(O)、-NRC(O)N(R)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、NRC(O)O、C(O)S、SC(O)、-C(=NR)、C(=NR)N(R)、NRC(=NR)、NRC(=NR)N(R)、C(S)、C(S)N(R)、NRC(S)、NRC(S)N(R)、S(O)、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、N(R)S(O)、-S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)、N(R)S(O)O、S(O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)又はN(R)S(O)Oで置き換えられ;
の各例は、独立して、水素、任意選択により置換されるアルキル又は窒素保護基であり;
環Bは、任意選択により置換されるカルボシクリル、任意選択により置換されるヘテロシクリル、任意選択により置換されるアリール又は任意選択により置換されるヘテロアリールであり;且つ
pは、1又は2である)
が提供される。
【0500】
[0475]特定の実施形態において、式(V)の化合物は、PEG-OH脂質(すなわち、Rは、-ORであり、且つRは、水素である)である。特定の実施形態において、式(V)の化合物は、式(V-OH):
【化49】
又はその塩である。
【0501】
[0476]特定の実施形態において、本発明において有用なPEG脂質は、PEG化脂肪酸である。特定の実施形態において、本発明において有用なPEG脂質は、式(VI)の化合物である。本明細書では、式(VI)の化合物:
【化50】
又はその塩(式中、
は、-ORであり;
は、水素、任意選択により置換されるアルキル又は酸素保護基であり;
rは、(両端を含む)1~100の整数であり;
は、任意選択により置換されるC10~40アルキル、任意選択により置換されるC10~40アルケニル又は任意選択により置換されるC10~40アルキニルであり;且つ任意選択により、Rの1つ以上のメチレン基は、任意選択により置換されるカルボシクリレン、任意選択により置換されるヘテロシクリレン、任意選択により置換されるアリーレン、任意選択により置換されるヘテロアリーレン、N(R)、O、S、C(O)、-C(O)N(R)、NRC(O)、NRC(O)N(R)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(R)、-NRC(O)O、C(O)S、SC(O)、C(=NR)、C(=NR)N(R)、NRC(=NR)、NRC(=NR)N(R)、-C(S)、C(S)N(R)、NRC(S)、NRC(S)N(R)、S(O)、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、OS(O)、-S(O)O、OS(O)O、N(R)S(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)、N(R)S(O)O、S(O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)、N(R)S(O)N(R)、OS(O)N(R)又はN(R)S(O)Oで置き換えられ;且つ
の各例は、独立して、水素、任意選択により置換されるアルキル又は窒素保護基である)
が提供される。
【0502】
[0477]特定の実施形態において、式(VI)の化合物は、式(VI-OH):
【化51】
又はその塩である。いくつかの実施形態において、rは、45である。
【0503】
[0478]さらなる他の実施形態において、式(VI)の化合物は、
【化52】
又はその塩である。
【0504】
[0479]一実施形態において、式(VI)の化合物は、
【化53】
である。
【0505】
[0480]いくつかの態様において、本明細書で開示される医薬組成物の脂質組成物は、PEG-脂質を含まない。
【0506】
[0481]いくつかの実施形態において、PEG-脂質は、米国特許出願第62/520,530号明細書に記載されるPEG脂質の1つ以上であり得る。
【0507】
[0482]いくつかの実施形態において、本発明のPEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、PEG修飾脂質は、PEG-DMG、PEG-c-DOMG(PEG-DOMGとも呼ばれる)、PEG-DSG及び/又はPEG-DPGである。
【0508】
[0483]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、式I、II又はIIIのいずれかのイオン化可能カチオン性脂質、DSPCを含むリン脂質、構造脂質及びPEG-DMGを含むPEG脂質を含む。
【0509】
[0484]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、式I、II又はIIIのいずれかのイオン化可能カチオン性脂質、DSPCを含むリン脂質、構造脂質及び式VIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0510】
[0485]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、式I、II又はIIIのイオン化可能カチオン性脂質、式IVを有する化合物を含むリン脂質、構造脂質及び式V又はVIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0511】
[0486]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、式I、II又はIIIのイオン化可能カチオン性脂質、式IVを有する化合物を含むリン脂質、構造脂質及び式V又はVIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0512】
[0487]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、式I、II又はIIIかのイオン化可能カチオン性脂質、式IVを有するリン脂質、構造脂質及び式VIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0513】
[0488]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、
【化54】
のイオン化可能カチオン性脂質及び式VIを含むPEG脂質を含む。
【0514】
[0489]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、
【化55】
のイオン化可能カチオン性脂質及びオレイン酸を含む代替脂質を含む。
【0515】
[0490]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、
【化56】
のイオン化可能カチオン性脂質、オレイン酸を含む代替脂質、コレステロールを含む構造脂質及び式VIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0516】
[0491]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、
【化57】
のイオン化可能カチオン性脂質、DOPEを含むリン脂質、コレステロールを含む構造脂質及び式VIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0517】
[0492]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、イオン化可能カチオン性脂質、DOPEを含むリン脂質、コレステロールを含む構造脂質及び式VIIを有する化合物を含むPEG脂質を含む。
【0518】
[0493]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約2:1~約30:1のN:P比を含む。
【0519】
[0494]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約6:1のN:P比を含む。
【0520】
[0495]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約3:1のN:P比を含む。
【0521】
[0496]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約10:1~約100:1のイオン化可能カチオン性脂質構成要素とRNAのwt/wt比を含む。
【0522】
[0497]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約20:1のイオン化可能カチオン性脂質構成要素とRNAのwt/wt比を含む。
【0523】
[0498]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約10:1のイオン化可能カチオン性脂質構成要素とRNAのwt/wt比を含む。
【0524】
[0499]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約50nm~約150nmの平均直径を有する。
【0525】
[0500]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約70nm~約120nmの平均直径を有する。
【0526】
[0501]いくつかの実施形態において、本発明のLNPは、約70nm~約85nmの平均直径を有する。
【0527】
[0502]本明細書で使用する場合、「アルキル」、「アルキル基」又は「アルキレン」という用語は、1つ以上の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超える炭素原子)を含む直鎖状又は分岐状、飽和炭化水素を意味する。「C1~14」アルキルという表示法は、1~14個の炭素原子を含む任意選択により置換される直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素を意味する。別段の指定がない限り、本明細書に記載されるアルキル基は、非置換及び置換アルキル基の両方を指す。
【0528】
[0503]本明細書で使用する場合、「アルケニル」、「アルケニル基」又は「アルケニレン」という用語は、2つ以上の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超える炭素原子)及び少なくとも1つの二重結合を含む任意選択により置換される直鎖状又は分岐状炭化水素を意味する。「C2~14アルケニル」という表示法は、2~14個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む任意選択により置換される直鎖状又は分岐状炭化水素を意味する。アルケニル基は、1、2、3、4つ又はそれを超える炭素-炭素二重結合を含み得る。例えば、C18アルケニルは、1つ以上の二重結合を含み得る。2つの二重結合を含むC18アルケニル基は、リノレイル基であり得る。別段の指定がない限り、本明細書に記載されるアルケニル基は、非置換及び置換アルケニル基の両方を指す。
【0529】
[0504]本明細書で使用する場合、「アルキニル」、「アルキニル基」又は「アルキニレン」という用語は、2つ以上の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超える炭素原子)及び少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む任意選択により置換される直鎖状又は分岐状炭化水素を意味する。「C2~14アルキニル」という表示法は、2~14個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む任意選択により置換される直鎖状又は分岐状炭化水素を意味する。アルキニル基は、1、2、3、4つ又はそれを超える炭素-炭素三重結合を含み得る。例えば、C18アルキニルは、1つ以上の炭素-炭素三重結合を含み得る。別段の指定がない限り、本明細書に記載されるアルキニル基は、非置換及び置換アルキニル基の両方を指す。
【0530】
[0505]本明細書で使用する場合、「炭素環」又は「炭素環基」という用語は、1つ以上の炭素原子の環を含む任意選択により置換される単環又は多環系を意味する。環は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20員環であり得る。「C3~6炭素環」という表示法は、3~6つの炭素原子を有する単環を含む炭素環を意味する。炭素環は、1つ以上の炭素-炭素二重又は三重結合を含み得、且つ非芳香族又は芳香族(例えば、シクロアルキル又はアリール基)であり得る。炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル及び1,2ジヒドロナフチル基が挙げられる。本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、非芳香族炭素環を意味し得、且つ二重結合又は三重結合を含んでも又は含まなくてもよい。別段の指定がない限り、本明細書に記載される炭素環は、非置換及び置換炭素環基の両方、すなわち任意選択により置換される炭素環を指す。
【0531】
[0506]本明細書で使用する場合、「複素環」又は「複素環基」という用語は、少なくとも1つの環が少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つ以上の環を含む任意選択により置換される単環又は多環系を意味する。ヘテロ原子は、例えば、窒素、酸素又は硫黄原子であり得る。環は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14員環であり得る。複素環は、1つ以上の二重又は三重結合を含み得、且つ非芳香族又は芳香族(例えば、ヘテロシクロアルキ又はヘテロアリール基)であり得る。複素環の例としては、イミダゾリル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、チアゾリル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、モルホリニル、ピロリル、ピロリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チオフェニル、ピリジニル、ピペリジニル、キノリル及びイソキノリル基が挙げられる。本明細書で使用する場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、非芳香族複素環を意味し得、且つ二重結合又は三重結合を含んでも又は含まなくてもよい。別段の指定がない限り、本明細書に記載される複素環は、非置換及び置換複素環基の両方、すなわち任意選択により置換される複素環を指す。
【0532】
[0507]本明細書で使用する場合、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」又は「ヘテロアルキニル」という用語はそれぞれ、本明細書で定義されるとおりのアルキル、アルケニル、アルキニルを指し、これは、1つ以上(例えば、1、2、3又は4つ)のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、ケイ素、リン)をさらに含み、1つ以上のヘテロ原子が、親炭素鎖内の隣接する炭素原子間に挿入され、且つ/又は1つ以上のヘテロ原子は、炭素原子と親分子との間、すなわち結合点間に挿入される。別段の指定がない限り、本明細書に記載されるヘテロアルキル、ヘテロアルケニル又はヘテロアルキニルは、非置換及び置換両方のヘテロアルキル、ヘテロアルケニル又はヘテロアルキニル、すなわち任意選択により置換されるヘテロアルキル、ヘテロアルケニル又はヘテロアルキニルを指す。
【0533】
[0508]本明細書で使用する場合、「生分解性基」は、哺乳動物実体における脂質のより速い代謝を促進し得る基である。生分解性基は、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(S)S-、-SC(S)-、-CH(OH)-、-P(O)(OR’)O-、-S(O)2-、アリール基及びヘテロアリール基からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「アリール基」は、1つ以上の芳香環を含む任意選択により置換される炭素環基である。アリール基の例としては、フェニル及びナフチル基が挙げられる。本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール基」は、1つ以上の芳香環を含む任意選択により置換される複素環基である。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル及びチアゾリルが挙げられる。アリール及びヘテロアリール基の両方とも任意選択により置換され得る。例えば、M及びM’は、任意選択により置換されるフェニル、オキサゾール及びチアゾールからなる非限定的な群から選択され得る。本明細書中の式において、M及びM’は、上記の生分解性基のリストから独立して選択され得る。別段の指定がない限り、本明細書に記載されるアリール又はヘテロアリール基は、非置換及び置換基の両方、すなわち任意選択により置換されるアリール又はヘテロアリール基を指す。
【0534】
[0509]アルキル、アルケニル及びシクリル(例えば、カルボシクリル及びヘテロシクリル)基は、別段の指定がない限り、任意選択により置換され得る。任意選択による置換基は、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素又はヨウ素基)、カルボン酸(例えば、C(O)OH)、アルコール(例えば、ヒドロキシル、OH)、エステル(例えば、C(O)OR、OC(O)R)、アルデヒド(例えば、C(O)H)、カルボニル(例えば、C(O)R、代わりにC=Oにより表される)、アシルハロゲン化物(例えば、C(O)X(式中、Xは、臭素、フッ素、塩素及びヨウ素から選択されるハロゲン化物である))、炭酸基(例えば、OC(O)OR)、アルコキシ(例えば、OR)、アセタール(例えば、-C(OR)2R””、ここで、各ORは、同じ又は異なり得るアルコキシ基であり、R””はアルキル又はアルケニル基である)、リン酸塩(例えば、P(O)43-)、チオール(例えば、SH)、スルホキシド(例えば、S(O)R)、スルフィン酸(例えば、S(O)OH)、スルホン酸(例えば、S(O)2OH)、チアール(例えば、C(S)H)、硫酸塩(例えば、S(O)42-)、スルホニル(例えば、S(O)2)、アミド(例えば、C(O)NR2又はN(R)C(O)R)、アジド(例えば、N3)、ニトロ(例えば、NO2)、シアノ(例えば、CN)、イソシアノ(例えば、NC)、アシルオキシ(例えば、OC(O)R)、アミノ(例えば、NR2、NRH又はNH2)、カルバモイル(例えば、OC(O)NR2、OC(O)NRH又はOC(O)NH2)、スルホンアミド(例えば、S(O)2NR2、S(O)2NRH、S(O)2NH2、N(R)S(O)2R、N(H)S(O)2R、N(R)S(O)2H又はN(H)S(O)2H)、アルキル基、アルケニル基及びシクリル(例えば、カルボシクリル又はヘテロシクリル)基からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。先行するもののいずれかにおいて、Rは、本明細書で定義されるとおりのアルキル又はアルケニル基である。いくつかの実施形態において、置換基自体が、例えば、本明細書で定義されるとおりの1、2、3、4、5又は6つの置換基でさらに置換され得る。例えば、C1~6アルキル基は、本明細書に記載されるとおりの1、2、3、4、5又は6つの置換基でさらに置換され得る。
【0535】
[0510]窒素を含有する本開示の化合物を、酸化剤(例えば、3-クロロ過安息香酸(mCPBA)及び/又は過酸化水素)による処理によってN-オキシドに変換して、本開示の他の化合物を得ることができる。したがって、結合価及び構造が許容されるとき、全ての示され且つ特許請求される窒素含有化合物が検討され、示される化合物及びそのN-オキシド誘導体(N□O又はN+-O-として指定され得る)の両方を含む。さらに、他の例において、本開示の化合物中の窒素は、N-ヒドロキシ又はN-アルコキシ化合物に変換され得る。例えば、N-ヒドロキシ化合物は、mCPBAなどの酸化剤によって親アミンの酸化によって調製され得る。結合価及び構造が許容されるとき、全ての示され且つ特許請求される窒素含有化合物も検討され、示される化合物並びにそのN-ヒドロキシ(すなわちN-OH)及びN-アルコキシ(すなわちN-OR、Rは、置換又は非置換C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C1~C6アルキニル、3~14員炭素環又は3~14員複素環である)誘導体の両方を包含する。
【0536】
(vi)他の脂質組成物構成要素
[0511] 本明細書で開示される医薬組成物の脂質組成物は、上記のものに加えて、1つ以上の構成要素を含み得る。例えば、脂質組成物は、1つ以上の透過性促進分子、炭水化物、ポリマー、表面改変剤(例えば、界面活性剤)又は他の構成要素を含み得る。例えば、透過性促進分子は、米国特許出願公開第2005/0222064号明細書により記載される分子であり得る。炭水化物は、単糖(例えば、グルコース)及び多糖(例えば、グリコーゲン並びにその誘導体及び類似体)を含み得る。
【0537】
[0512]ポリマーは、本明細書で開示される医薬組成物(例えば、脂質ナノ粒子形態の医薬組成物)を封入するか又は部分的に封入するために含まれ得、且つ/又は使用され得る。ポリマーは、生分解性及び/又は生体適合性であり得る。ポリマーは、ポリアミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルバメート、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリアセチレン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル及びポリアリレートから選択され得るが、これらに限定されない。
【0538】
[0513]脂質組成物とポリヌクレオチドとの間の比は、約10:1~約60:1(wt/wt)の範囲であり得る。
【0539】
[0514]いくつかの実施形態において、脂質組成物とポリヌクレオチドとの間の比は、約10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1又は60:1(wt/wt)であり得る。いくつかの実施形態において、脂質組成物と治療薬をコードするポリヌクレオチドのwt/wt比は、約20:1又は約15:1である。
【0540】
[0515]いくつかの実施形態において、本明細書で開示される医薬組成物は、2つ以上のポリペプチドを含有し得る。例えば、本明細書で開示される医薬組成物は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)を含有し得る。
【0541】
[0516]一実施形態において、本明細書に記載される脂質ナノ粒子は、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1又は70:1の脂質:ポリヌクレオチド重量比又は5:1~約10:1、約5:1~約15:1、約5:1~約20:1、約5:1~約25:1、約5:1~約30:1、約5:1~約35:1、約5:1~約40:1、約5:1~約45:1、約5:1~約50:1、約5:1~約55:1、約5:1~約60:1、約5:1~約70:1、約10:1~約15:1、約10:1~約20:1、約10:1~約25:1、約10:1~約30:1、約10:1~約35:1、約10:1~約40:1、約10:1~約45:1、約10:1~約50:1、約10:1~約55:1、約10:1~約60:1、約10:1~約70:1、約15:1~約20:1、約15:1~約25:1、約15:1~約30:1、約15:1~約35:1、約15:1~約40:1、約15:1~約45:1、約15:1~約50:1、約15:1~約55:1、約15:1~約60:1若しくは約15:1~約70:1などのこれらの比の範囲若しくはいずれかで、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を含み得る。
【0542】
[0517]一実施形態において、本明細書に記載される脂質ナノ粒子は、およそ0.1mg/ml~2mg/ml、例えば、限定されないが、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1.0mg/ml、1.1mg/ml、1.2mg/ml、1.3mg/ml、1.4mg/ml、1.5mg/ml、1.6mg/ml、1.7mg/ml、1.8mg/ml、1.9mg/ml、2.0mg/ml又は2.0mg/ml超の濃度でポリヌクレオチドを含み得る。
【0543】
(vii)ナノ粒子組成物
[0518] いくつかの実施形態において、本明細書で開示される医薬組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化される。したがって、本開示は、(i)本明細書に記載されるとおりの化合物などの送達剤を含む脂質組成物、及び(ii)創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むナノ粒子組成物も提供する。このようなナノ粒子組成物において、本明細書で開示される脂質組成物は、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを封入し得る。
【0544】
[0519]ナノ粒子組成物は、一般的にはマイクロメートル又はそれより小さい桁のサイズであり、脂質二重層を含み得る。ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム(例えば、脂質小胞)及びリポプレックスを包含する。例えば、ナノ粒子組成物は、直径が500nm以下の脂質二重層を有するリポソームであり得る。
【0545】
[0520]ナノ粒子組成物としては、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム及びリポプレックスが挙げられる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、1つ以上の脂質二重層を含む小胞である。特定の実施形態において、ナノ粒子組成物は、水性の区画により分離される2つ以上の同心円状の二重層を含む。脂質二重層は、官能化され得、且つ/又は互いに架橋され得る。脂質二重層は、1つ以上のリガンド、タンパク質又はチャネルを含み得る。
【0546】
[0521]一実施形態において、脂質ナノ粒子は、イオン化可能脂質、構造脂質、リン脂質及びmRNAを含む。いくつかの実施形態において、LNPは、イオン化可能脂質、PEG修飾脂質、ステロール及び構造脂質を含む。いくつかの実施形態において、LNPは、モル比率で約20~60%のイオン化可能脂質:約5~25%の構造脂質:約25~55%ステロール;及び約0.5~15%のPEG修飾脂質を有する。
【0547】
[0522]いくつかの実施形態において、LNPは、0.4未満の多分散値を有する。いくつかの実施形態において、LNPは、中性pHで正味の中性電荷を有する。いくつかの実施形態において、LNPは、50~150nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、LNPは、80~100nmの平均直径を有する。
【0548】
[0523]本明細書で一般に定められるように、「脂質」という用語は、疎水性又は両親媒性特性を有する低分子を指す。脂質は、天然に存在するか又は合成のものであり得る。脂質のクラスの例としては、脂肪、ワックス、ステロール含有代謝産物、ビタミン、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質及びポリケタイド並びにプレノール脂質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、いくつかの脂質の両親媒性特性により、水性媒体中でそれらがリポソーム、小胞又は膜を形成するようになる。
【0549】
[0524]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子(LNP)は、イオン化可能脂質を含み得る。本明細書で使用する場合、「イオン化可能脂質」という用語は、当技術分野でのその通常の意味を有し、1つ以上の荷電部分を含む脂質を指し得る。いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、正に荷電し得るか又は負に荷電し得る。イオン化可能脂質は、正に荷電される場合があり、この場合、それは「カチオン性脂質」と呼ばれ得る。特定の実施形態において、イオン化可能脂質分子は、アミン基を含む場合があり、イオン化可能アミノ脂質と呼ばれ得る。本明細書で使用する場合、「荷電部分」は、形式電荷を保有する化学部分、例えば1価(+1又は-1)、2価(+2又は-2)、3価(+3又は-3)などである。荷電部分は、アニオン性(すなわち負に荷電され得る)又はカチオン性(すなわち正に荷電され得る)であり得る。正荷電部分の例としては、アミン基(例えば、一級、二級及び/又は三級アミン)、アンモニウム基、ピリジニウム基、グアニジン基及びイミジゾリウム基が挙げられる。特定の実施形態において、荷電部分は、アミン基を含む。負荷電基又はその前駆体の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、ヒドロキシル基などが挙げられる。荷電部分の電荷は、一部の場合、環境的条件で変動する場合があり、例えば、pHの変化はその部分の電荷を変化させる場合があり、且つ/又はその部分を荷電させる場合があるか若しくは非荷電にする場合がある。一般に、分子の電荷密度が必要に応じて選択され得る。
【0550】
[0525]「荷電される」又は「荷電部分」という用語は、分子上の「部分的な負電荷」又は「部分的な正電荷」を指すものではないことを理解すべきである。「部分的な負電荷」及び「部分的な正電荷」という用語は、当技術分野でのその通常の意味を与えられる。「部分的な負電荷」は、極性になる結合を官能基が含み、電子密度が結合の1つの原子に向かって引かれ、原子上で部分的な負電荷を生じさせるようになる場合に起こり得る。当業者は、一般にこのように極性化され得る結合を認識する。
【0551】
[0526]いくつかの実施形態において、イオン化可能脂質は、イオン化可能アミノ脂質であり、当技術分野で「イオン化可能カチオン脂質」と呼ばれることがある。一実施形態において、イオン化可能アミノ脂質は、リンカー構造を介して連結される正荷電親水性頭部及び疎水性尾部を有し得る。
【0552】
[0527]これらに加えて、イオン化可能脂質は、環状アミン基を含む脂質でもあり得る。
【0553】
[0528]一実施形態において、イオン化可能脂質は、そのそれぞれの内容が全体として参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2013086354号パンフレット及び同第2013116126号パンフレットに記載のイオン化可能脂質から選択され得るが、これらに限定されない。
【0554】
[0529]さらに別の実施形態において、イオン化可能脂質は、それぞれがその全体として参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第7,404,969号明細書の式CLI-CLXXXXIIから選択され得るが、これらに限定されない。
【0555】
[0530]一実施形態において、脂質は、全体として参照により本明細書により組み込まれる国際公開第2012170889号パンフレットに記載されるものなどの切断可能な脂質であり得る。一実施形態において、脂質は、当技術分野で知られる方法により、且つ/又はそれぞれの内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013086354号パンフレットに記載されるとおりに合成され得る。
【0556】
[0531]ナノ粒子組成物は、様々な方法により特徴付けられ得る。例えば、ナノ粒子組成物の形態及びサイズ分布を調べるために、顕微鏡(例えば、透過型電子顕微鏡又は走査電子顕微鏡)が使用され得る。ゼータ電位を測定するために、動的光散乱又は電位差測定(例えば、電位差滴定)が使用され得る。粒径を決定するために動的光散乱も利用され得る。粒径、多分散指数及びゼータ電位など、ナノ粒子組成物の複数の特徴を測定するために、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd,Malvern,Worcestershire,UK)などの機器も使用され得る。
【0557】
[0532]ナノ粒子のサイズは、炎症などであるが、これに限定されない生物学的反応に対抗することを促進し得るか、又はポリヌクレオチドの生物学的効果を向上させ得る。
【0558】
[0533]本明細書で使用する場合、ナノ粒子組成物に関連して、「サイズ」又は「平均サイズ」は、ナノ粒子組成物の平均直径を指す。
【0559】
[0534]一実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、約10~約100nm、例えば約10~約20nm、約10~約30nm、約10~約40nm、約10~約50nm、約10~約60nm、約10~約70nm、約10~約80nm、約10~約90nm、約20~約30nm、約20~約40nm、約20~約50nm、約20~約60nm、約20~約70nm、約20~約80nm、約20~約90nm、約20~約100nm、約30~約40nm、約30~約50nm、約30~約60nm、約30~約70nm、約30~約80nm、約30~約90nm、約30~約100nm、約40~約50nm、約40~約60nm、約40~約70nm、約40~約80nm、約40~約90nm、約40~約100nm、約50~約60nm、約50~約70nm、約50~約80nm、約50~約90nm、約50~約100nm、約60~約70nm、約60~約80nm、約60~約90nm、約60~約100nm、約70~約80nm、約70~約90nm、約70~約100nm、約80~約90nm、約80~約100nm及び/又は約90~約100nmなどであるが、これらに限定されない直径を有する脂質ナノ粒子中に製剤化される。
【0560】
[0535]一実施形態において、ナノ粒子は、約10~500nmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は、100nm超、150nm超、200nm超、250nm超、300nm超、350nm超、400nm超、450nm超、500nm超、550nm超、600nm超、650nm超、700nm超、750nm超、800nm超、850nm超、900nm超、950nm超又は1000nm超の直径を有する。
【0561】
[0536]いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物の最大直径は、1μm以下(例えば、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm又はそれより小さい)である。
【0562】
[0537]ナノ粒子組成物は、比較的均一であり得る。ナノ粒子組成物の均一性、例えば、ナノ粒子組成物の粒径分布を示すために多分散指数が使用され得る。小さい(例えば、0.3未満)の多分散指数は、一般に狭い粒径分布を示す。ナノ粒子組成物は、約0~約0.25、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24又は0.25などの多分散指数を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子組成物の多分散指数は、約0.10~約0.20であり得る。
【0563】
[0538]組成物の界面動電位を示すために、ナノ粒子組成物のゼータ電位が使用され得る。例えば、ゼータ電位は、ナノ粒子組成物の表面電荷を示し得る。比較的低い正又は負電荷を有するナノ粒子組成物が一般に望ましく、なぜなら、高い電荷を有する種ほど、細胞、組織及び体内の他の要素と不要に相互作用し得るからである。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子組成物のゼータ電位は、約-10mV~約+20mV、約-10mV~約+15mV、約10mV~約+10mV、約-10mV~約+5mV、約-10mV~約0mV、約-10mV~約-5mV、約-5mV~約+20mV、約-5mV~約+15mV、約-5mV~約+10mV、約-5mV~約+5mV、約-5mV~約0mV、約0mV~約+20mV、約0mV~約+15mV、約0mV~約+10mV、約0mV~約+5mV、約+5mV~約+20mV、約+5mV~約+15mV又は約+5mV~約+10mVであり得る。
【0564】
[0539]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子のゼータ電位は、約0mV~約100mV、約0mV~約90mV、約0mV~約80mV、約0mV~約70mV、約0mV~約60mV、約0mV~約50mV、約0mV~約40mV、約0mV~約30mV、約0mV~約20mV、約0mV~約10mV、約10mV~約100mV、約10mV~約90mV、約10mV~約80mV、約10mV~約70mV、約10mV~約60mV、約10mV~約50mV、約10mV~約40mV、約10mV~約30mV、約10mV~約20mV、約20mV~約100mV、約20mV~約90mV、約20mV~約80mV、約20mV~約70mV、約20mV~約60mV、約20mV~約50mV、約20mV~約40mV、約20mV~約30mV、約30mV~約100mV、約30mV~約90mV、約30mV~約80mV、約30mV~約70mV、約30mV~約60mV、約30mV~約50mV、約30mV~約40mV、約40mV~約100mV、約40mV~約90mV、約40mV~約80mV、約40mV~約70mV、約40mV~約60mV及び約40mV~約50mVであり得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子のゼータ電位は、約10mV~約50mV、約15mV~約45mV、約20mV~約40mV及び約25mV~約35mVであり得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子のゼータ電位は、約10mV、約20mV、約30mV、約40mV、約50mV、約60mV、約70mV、約80mV、約90mV及び約100mVであり得る。
【0565】
[0540]ポリヌクレオチドの「封入効率」という用語は、提供される最初の量に対する、調製後の、ナノ粒子組成物により封入されるか又はそうでなければナノ粒子組成物と会合するポリヌクレオチドの量を説明する。本明細書で使用する場合、「封入」は、完全、実質的又は部分的な封じ込め、閉じ込め、囲い込み又は内包を指し得る。
【0566】
[0541]封入効率は、望ましくは高い(例えば、100%近い)。例えば、1つ以上の有機溶媒又は洗剤を用いてナノ粒子組成物を崩壊させる前後でナノ粒子組成物を含有する溶液中のポリヌクレオチドの量を比較することにより、封入効率が測定され得る。
【0567】
[0542]溶液中の遊離ポリヌクレオチドの量を測定するために蛍光が使用され得る。本明細書に記載されるナノ粒子組成物の場合、ポリヌクレオチドの封入効率は、少なくとも50%、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり得る。いくつかの実施形態において、封入効率は、少なくとも80%であり得る。特定の実施形態において、封入効率は、少なくとも90%であり得る。
【0568】
[0543]本明細書で開示される医薬組成物中に存在するポリヌクレオチドの量は、ポリヌクレオチドのサイズ、所望の標的及び/若しくは適用又はナノ粒子組成物の他の特性などの複数の要因並びにポリヌクレオチドの特性などに依存し得る。
【0569】
[0544]例えば、ナノ粒子組成物において有用なmRNAの量は、mRNAのサイズ(長さ又は分子質量として表される)、配列及び他の特徴に依存し得る。ナノ粒子組成物中のポリヌクレオチドの相対量も変動し得る。
【0570】
[0545]有効性及び忍容性を考慮して、脂質組成物及び本開示の脂質ナノ粒子組成物中に存在するポリヌクレオチドの相対量が最適化され得る。ポリヌクレオチドとしてmRNAを含む組成物に対して、N:P比は、有用な基準となり得る。
【0571】
[0546]ナノ粒子組成物のN:P比は、発現及び忍容性の両方を制御するため、N:P比が低く、発現が強いナノ粒子組成物が望ましい。N:P比は、ナノ粒子組成物中の脂質とRNAとの比率により変動する。
【0572】
[0547]一般に、より小さいN:P比が好ましい。1つ以上のRNA、脂質及びそれらの量は、約2:1~約30:1、例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1、20:1、22:1、24:1、26:1、28:1又は30:1などのN:P比を提供するように選択され得る。特定の実施形態において、N:P比は、約2:1~約8:1であり得る。他の実施形態において、N:P比は、約5:1~約8:1である。特定の実施形態において、N:P比は、5:1~6:1である。1つの特定の態様において、N:P比は、約5.67:1である。
【0573】
[0548]ナノ粒子組成物を提供することに加えて、本開示は、ポリヌクレオチドを封入することを含む、脂質ナノ粒子を作製する方法も提供する。このような方法は、本明細書で開示される医薬組成物のいずれかを使用すること及び当技術分野で知られる脂質ナノ粒子の作製の方法に従って脂質ナノ粒子を作製することを含む。例えば、Wang et al.(2015)“Delivery of oligonucleotides with lipid nanoparticles”Adv.Drug Deliv.Rev.87:68-80;Silva et al.(2015)“Delivery Systems for Biopharmaceuticals.Part I:Nanoparticles and Microparticles”Curr.Pharm.Technol.16:940-954;Naseri et al.(2015)“Solid Lipid Nanoparticles and Nanostructured Lipid Carriers:Structure,Preparation and Application”Adv.Pharm.Bull.5:305-13;Silva et al.(2015)“Lipid nanoparticles for the delivery of biopharmaceuticals”Curr.Pharm.Biotechnol.16:291-302及びそこで引用される参考文献を参照されたい。
【0574】
21.他の送達剤
a.リポソーム、リポプレックス及び脂質ナノ粒子
[0549] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、送達剤、例えば、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子又はそれらの任意の組合せを含む。本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、1つ以上のリポソーム、リポプレックス又は脂質ナノ粒子を使用して製剤化され得る。リポソーム、リポプレックス又は脂質ナノ粒子は、タンパク質産生に向けられるポリヌクレオチドの有効性を向上させるために使用され得るが、それは、これらの製剤が、ポリヌクレオチドによる細胞トランスフェクションを向上させることができ;且つ/又はコードされるタンパク質の翻訳を向上させることができるためである。リポソーム、リポプレックス又は脂質ナノ粒子は、ポリヌクレオチドの安定性を向上させるためにも使用され得る。
【0575】
[0550]リポソームは、主に脂質二重層から構成され得る人工的に調製された小胞であり、医薬製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与のための送達ビヒクルとして使用され得る。リポソームは、異なるサイズであり得る。多重膜小胞(MLV)は、直径が数百ナノメートルである場合があり、狭い水性の区画により分離される一連の同心円状の二重層を含有し得る。小型の単細胞小胞(SUV)は、直径が50nm未満である場合があり、大型の単層膜小胞(LUV)は、直径が50~500nmであり得る。リポソーム設計は、不健康な組織へのリポソームの連結を向上させるため、又はエンドサイトーシスなどであるが、これに限定されない事象を活性化するためのオプソニン又はリガンドを含み得るが、これらに限定されない。医薬製剤の送達を改善するために、リポソームは、低又は高pH値を含有し得る。
【0576】
[0551]リポソームの形成は、封入される医薬製剤及びリポソームの成分、脂質小胞が分散される媒体の性質、封入される物質の有効濃度及びその潜在的な毒性、小胞の適用及び/又は送達中に含まれる任意のさらなるプロセス、最適サイズ、多分散及び意図される適用に対する小胞の有効期間並びにバッチ間の再現性及び安全で効率的なリポソーム生成物の作製のスケールアップなどに依存し得る。
【0577】
[0552]非限定的な例として、合成膜小胞などのリポソームは、米国特許出願公開第20130177638号明細書、米国特許出願公開第20130177637号明細書、米国特許出願公開第20130177636号明細書、米国特許出願公開第20130177635号明細書、米国特許出願公開第20130177634号明細書、米国特許出願公開第20130177633号明細書、米国特許出願公開第20130183375号明細書、米国特許出願公開第20130183373号明細書及び米国特許出願公開第20130183372号明細書に記載される方法、装置及びデバイスによって調製され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、リポソームによって封入され得、及び/又はこれは、水性コア中に含有され得、続いて、例えば国際公開第2012031046号パンフレット、国際公開第2012031043号パンフレット、国際公開第2012030901号パンフレット、国際公開第2012006378号パンフレット及び国際公開第2013086526号パンフレット;並びに米国特許出願公開第20130189351号明細書、米国特許出願公開第20130195969号明細書及び米国特許出願公開第20130202684号明細書に記載されるとおりにリポソームによって封入され得る。各参考文献が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0578】
[0553]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、カチオン性水中油型エマルション中に製剤化され得、ここで、エマルション粒子は、油性コア及びエマルション粒子に対して分子を係留するポリヌクレオチドと相互作用し得るカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、親水相が分散される連続的な疎水相を含む油中水型エマルション中に製剤化され得る。代表的なエマルションは、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012006380号パンフレット及び国際公開第201087791号パンフレットに記載される方法によって作製され得る。
【0579】
[0554]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、脂質-ポリカチオン複合体中に製剤化され得る。脂質-ポリカチオン複合体の形成は、例えば、米国特許出願公開第20120178702号明細書に記載されるとおりの方法によって達成され得る。非限定的な例として、ポリカチオンは、ポリリジン、ポリオルニチン及び/又はポリアルギニンなどであるが、これらに限定されないカチオン性ペプチド又はポリペプチド並びに国際公開第2012013326号パンフレット又は米国特許出願公開第20130142818号明細書に記載されるカチオン性ペプチドを含み得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0580】
[0555]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013123523号パンフレット、国際公開第2012170930号パンフレット、国際公開第2011127255号パンフレット及び国際公開第2008103276号パンフレット;並びに米国特許出願公開第20130171646号明細書に記載されるものなど脂質ナノ粒子(LNP)中に製剤化され得る。
【0581】
[0556]脂質ナノ粒子製剤は、通常、1つ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質は、イオン化可能脂質(例えば、イオン化可能アミノ脂質)であり、当技術分野で「イオン化可能カチオン性脂質」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子製剤は、リン脂質、構造脂質及び粒子凝集を低減できる分子、例えばPEG又はPEG修飾脂質を含む他の構成要素をさらに含む。
【0582】
[0557]代表的なイオン化可能脂質としては、本明細書で開示される化合物1~342のいずれか1つ、DLin-MC3-DMA(MC3)、DLin-DMA、DLenDMA、DLin-D-DMA、DLin-K-DMA、DLin-M-C2-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-KC3-DMA、DLin-KC4-DMA、DLin-C2K-DMA、DLin-MP-DMA、DODMA、98N12-5、C12-200、DLin-C-DAP、DLin-DAC、DLinDAP、DLinAP、DLin-EG-DMA、DLin-2-DMAP、KL10、KL22、KL25、オクチル-CLinDMA、オクチル-CLinDMA(2R)、オクチル-CLinDMA(2S)及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。他の代表的なイオン化可能脂質としては、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(L608)、(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメミルヘキサコサ-17,20-ジエン-9-アミン、(16Z,19Z)-N5N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメイヒルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコス-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、Ν,Ν-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、1-[(11Z,14Z)-1-ノニルイコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-20-エン-10-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルエプタコス-15-エン-10-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコス-14-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコス-17-エン-10-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコント-24-エン-10-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコス-20-エン-10-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコント-22-エン-10-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコス-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘンイコサ-12,15-ジエン-1-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]エプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘンイコサン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、N,N-ジメチル-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、R-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、S-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)-Ν,Ν-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-[(5Z)-オクト-5-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、Ν,Ν-ジメチル-1-(ノニルオキシ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、Ν,Ν-ジメチル-1-[(9Z)-オクタデク-9-エン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;(2S)-N,N-ジメチル-1-[(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-3-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z、16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(9Z)-ヘキサデク-9-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-N,N-ジメチル-H(1-メトイルオクチル)オキシ]-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2R)-1-[(3,7-ジメチルオクチル)オキシ]-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、Ν,Ν-ジメチル-1-(オクチルオキシ)-3-({8-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン-2-アミン、Ν,Ν-ジメチル-1-{[8-(2-オクリルシクロプロピル)オクチル]オキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン及び(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,2-トリエン-10-アミン並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0583】
[0558]リン脂質としては、グリセロリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジグリセロール及びホスファチジン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質は、スフィンゴミエリンなどのホスホスフィンゴ脂質も含む。いくつかの実施形態において、リン脂質は、DLPC、DMPC、DOPC、DPPC、DSPC、DUPC、18:0ジエーテルPC、DLnPC、DAPC、DHAPC、DOPE、4ME 16:0 PE、DSPE、DLPE、DLnPE、DAPE、DHAPE、DOPG及びそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、リン脂質は、MPPC、MSPC、PMPC、PSPC、SMPC、SPPC、DHAPE、DOPG及びそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、脂質組成物中のリン脂質(例えば、DSPC)の量は、約1mol%~約20mol%の範囲である。
【0584】
[0559]構造脂質としては、ステロール及びステロール部分を含有する脂質が挙げられる。いくつかの実施形態において、構造脂質としては、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、構造脂質は、コレステロールである。いくつかの実施形態において、脂質組成物中の構造脂質(例えば、コレステロール)の量は、約20mol%~約60mol%の範囲である。
【0585】
[0560]PEG修飾脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEG-セラミド複合物(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン及びPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが挙げられる。このような脂質は、PEG化脂質とも呼ばれる。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG DMPE、PEG-DPPC又はPEG-DSPE脂質であり得る。いくつかの実施形態において、PEG-脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG-DSPE)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル(dipalmetoleyl)、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)又はPEG-1,2-ジミリスチルオキスルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。いくつかの実施形態において、PEG部分のサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000又は20,000ダルトンである。いくつかの実施形態において、脂質組成物中のPEG-脂質の量は、約0mol%~約5mol%の範囲である。
【0586】
[0561]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLNP製剤は、透過性促進分子さらに含み得る。非限定的な透過性促進分子は、全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許出願公開第20050222064号明細書に記載されている。
【0587】
[0562]LNP製剤は、リン酸複合物をさらに含有し得る。リン酸複合物は、インビボ循環時間を延長させることができ、且つ/又はナノ粒子の標的送達を向上させることができる。リン酸複合物は、例えば、国際公開第2013033438号パンフレット又は米国特許出願公開第20130196948号明細書に記載される方法によって作製され得る。LNP製剤は、例えば、米国特許出願公開第20130059360号明細書、米国特許出願公開第20130196948号明細書及び米国特許出願公開第20130072709号明細書に記載されるとおりのポリマー複合物(例えば、水溶性複合物)も含有し得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0588】
[0563]LNP製剤は、対象において本発明のナノ粒子の送達を促進するために複合物を含み得る。さらに、複合物は、対象においてナノ粒子の食作用性クリアランスを阻害し得る。いくつかの実施形態において、複合物は、ヒト膜タンパク質CD47から設計される「自己」ペプチドであり得る(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれるRodriguez et al,Science 2013 339,971-975に記載の「自己」粒子)。Rodriguezらにより示されるとおり、自己ペプチドは、ナノ粒子送達を促進したナノ粒子のマクロファージ媒介性クリアランスを遅延させた。
【0589】
[0564]LNP製剤は、炭水化物担体を含み得る。非限定的な例として、炭水化物担体は、無水修飾フィトグリコーゲン又はグリコーゲン型物質、オクテニルコハク酸フィトグリコーゲン、フィトグリコーゲンベータ-デキストリン、無水修飾フィトグリコーゲンベータ-デキストリンを含み得るが、これらに限定されない(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012109121号パンフレット)。
【0590】
[0565]LNP製剤は、粒子の送達を改善するために界面活性剤又はポリマーでコーティングされ得る。いくつかの実施形態において、LNPは、PEGコーティング及び/又は全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許出願公開第20130183244号明細書に記載されるとおりの中性表面電荷を有するコーティングなどであるが、これらに限定されない親水性コーティングでコーティングされ得る。
【0591】
[0566]LNP製剤は、脂質ナノ粒子が、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,241,670号明細書又は国際公開第2013110028号パンフレットに記載されるとおりの粘膜バリアに浸透し得るように粒子の表面特性を変化させるために操作され得る。
【0592】
[0567]粘液に浸透するように操作されるLNPは、ポリマー性物質(すなわちポリマー性コア)及び/又はポリマー-ビタミン複合物及び/又はトリ-ブロックコポリマーを含み得る。ポリマー性物質としては、ポリアミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルバメート、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリ(スチレン)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリアセチレン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル及びポリアリレートが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0593】
[0568]粘液に浸透させるために操作されるLNPは、ポリヌクレオチド、アニオン性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、カチオン界面活性剤、例えばジメチルジオクタデシル-アンモニウムブロミドなど)、糖又は糖誘導体(例えば、シクロデキストリン)、核酸、ポリマー(例えば、ヘパリン、ポリエチレングリコール及びポロクサマー)、粘液溶解薬(例えば、N-アセチルシステイン、ヨモギ、ブロメライン、パパイン、クサギ属(clerodendrum)、アセチルシステイン、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エプラジノン、メスナ、アンブロキソール、ソブレロール、ドミオドール、レトステイン、ステプロニン、チオプロニン、ゲルゾリン、サイモシンβ4ドルナーゼアルファ、ネルテネキシン、エルドステイン)及びrhDNaseを含む様々なDNaseなどであるが、これらに限定されない表面改変剤も含み得る。
【0594】
[0569]いくつかの実施形態において、粘液浸透LNPは、粘膜浸透促進コーティングを含む低浸透圧性製剤であり得る。製剤は、それが送達されている上皮に対して低浸透圧性であり得る。低浸透圧性製剤の非限定的な例は、例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013110028号パンフレットにおいて見出され得る。
【0595】
[0570]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、Silence Therapeutics(London、United Kingdom)からのATUPLEX(商標)システム、DACCシステム、DBTCシステム及び他のsiRNA-リポプレックス技術、STEMGENT(登録商標)(Cambridge、MA)からのSTEMFECT(商標)並びに核酸のポリエチレンイミン(PEI)又はプロタミン系標的化及び非標的化送達などであるが、これらに限定されないリポプレックスとして製剤化される(Aleku et al.Cancer Res.2008 68:9788-9798;Strumberg et al.Int J Clin Pharmacol Ther 2012 50:76-78;Santel et al.,Gene Ther 2006 13:1222-1234;Santel et al.,Gene Ther 2006 13:1360-1370;Gutbier et al.,Pulm Pharmacol.Ther.2010 23:334-344;Kaufmann et al.Microvasc Res 2010 80:286-293Weide et al.J Immunother.2009 32:498-507;Weide et al.J Immunother.2008 31:180-188;Pascolo Expert Opin.Biol.Ther.4:1285-1294;Fotin-Mleczek et al.,2011 J.Immunother.34:1-15;Song et al.,Nature Biotechnol.2005,23:709-717;Peer et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2007 6;104:4095-4100;deFougerolles Hum Gene Ther.2008 19:125-132;全てが全体として参照により本明細書に組み込まれる)。
【0596】
[0571]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、固形脂質ナノ粒子(SLN)として製剤化され、これは、平均直径が10~1000nmの球状であり得る。SLNは、脂溶性分子を可溶化することができ、界面活性剤及び/又は乳化剤で安定化され得る固形脂質コアマトリックスを保持する。代表的なSLNは、全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013105101号パンフレットに記載されるとおりのものであり得る。
【0597】
[0572]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、制御放出及び/又は標的送達のために製剤化され得る。本明細書で使用する場合、「制御放出」は、治療成果をもたらすための特定の放出パターンに従う医薬組成物又は化合物放出プロファイルを指す。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、制御放出及び/又は標的送達のために、本明細書に記載され且つ/又は当技術分野で知られる送達剤に封入され得る。本明細書で使用する場合、「封入する」という用語は、封じ込めるか、取り囲むか又は内包することを意味する。これは本発明の化合物の製剤に関連するため、封入は、実質的、完全又は部分的であり得る。「実質的に封入される」という用語は、本発明の医薬組成物又は化合物の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99超又は99超が送達剤内に封じ込められるか、取り囲まれるか又は内包され得ることを意味する。「部分的に封入する」とは、本発明の医薬組成物又は化合物の10未満、10、20、30、40、50又はそれ未満が送達剤内に封じ込められるか、取り囲まれるか又は内包され得ることを意味する。
【0598】
[0573]有利には、封入は、蛍光及び/又は電子顕微鏡写真を使用して、本発明の医薬組成物又は化合物の脱出又は活性を測定することによって決定され得る。例えば、本発明の医薬組成物又は化合物の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9又は99%超が送達剤中で封入される。
【0599】
[0574]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、治療用ナノ粒子中で封入され得、本明細書で「治療用ナノ粒子ポリヌクレオチド」と呼ばれる。治療用ナノ粒子は、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010005740号パンフレット、国際公開第2010030763号パンフレット、国際公開第2010005721号パンフレット、国際公開第2010005723号パンフレット及び国際公開第2012054923号パンフレット;並びに米国特許出願公開第20110262491号明細書、米国特許出願公開第20100104645号明細書、米国特許出願公開第20100087337号明細書、米国特許出願公開第20100068285号明細書、米国特許出願公開第20110274759号明細書、米国特許出願公開第20100068286号明細書、米国特許出願公開第20120288541号明細書、米国特許出願公開第20120140790号明細書、米国特許出願公開第20130123351明細書及び米国特許出願公開第20130230567明細書;並びに米国特許第8,206,747号明細書、同第8,293,276号明細書、同第8,318,208号明細書及び同第8,318,211号明細書に記載される方法によって製剤化され得る。
【0600】
[0575]いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子ポリヌクレオチドは、持続放出のために製剤化され得る。本明細書で使用する場合、「持続放出」は、指定の期間にわたってある放出速度に従う医薬組成物又は化合物を指す。期間としては、数時間、数日、数週、数ヶ月及び数年が挙げられ得るが、これらに限定されない。非限定的な例として、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの持続放出ナノ粒子は、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010075072号パンフレット及び米国特許出願公開第20100216804号明細書、米国特許出願公開第20110217377号明細書、米国特許出願公開第20120201859号明細書及び米国特許出願公開第20130150295号明細書において開示されるとおりに製剤化され得る。
【0601】
[0576]いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子ポリヌクレオチドは、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008121949号パンフレット、国際公開第2010005726号パンフレット、国際公開第2010005725号パンフレット、国際公開第2011084521号パンフレット及び国際公開第2011084518号パンフレット;並びに米国特許出願公開第20100069426号明細書、米国特許出願公開第20120004293号明細書及び米国特許出願公開第20100104655号明細書において記載されるものなど標的特異的になるように製剤化され得る。
【0602】
[0577]LNPは、マイクロ流体ミキサー又はマイクロミキサーを使用して調製され得る。代表的なマイクロ流体ミキサーとしては、Microinnova(Allerheiligen bei Wildon,Austria)により製造されるものを含むが限定されないスリットインターデジタル型マイクロミキサー及び/又はスタガードヘリンボーンマイクロミキサー(SHM)が挙げられ得るが、これらに限定されない(各々が全体として参照により本明細書に組み込まれるZhigaltsevet al.,“Bottom-up design and synthesis of limit size lipid nanoparticle systems with aqueous and triglyceride cores using millisecond microfluidic mixing,”Langmuir 28:3633-40(2012);Belliveau et al.,“Microfluidic synthesis of highly potent limit-size lipid nanoparticles for in vivo delivery of siRNA,”Molecular Therapy-Nucleic Acids.1:e37(2012);Chen et al.,“Rapid discovery of potent siRNA-containing lipid nanoparticles enabled by controlled microfluidic formulation,”J.Am.Chem.Soc.134(16):6948-51(2012)を参照されたい)。代表的なマイクロミキサーとしては、Institut fuer Mikrotechnik Mainz GmbH,Mainz Germanyからのスリットインターデジタル型マイクロ構造ミキサー(SIMM-V2)又は標準的なスリットインターデジタル型マイクロミキサー(SSIMM)又はキャタピラー(CPMM)又はImpinging-jet(IJMM)が挙げられる。いくつかの実施形態において、SHMを使用してLNPを作製する方法は、微細構造誘導性カオス的移流(MICA)により混合が起こる少なくとも2つの入力の流れの混合をさらに含む。この方法によれば、流体の流れは、ヘリンボーン状パターンで存在するチャネルを通って流れ、これにより回転流が起こり、流体が互いの周囲で折り重なる。この方法は、流体混合のための表面も含む場合があり、ここで、流体の循環中に表面が方向を変化させる。SHMを使用してLNPを作製する方法としては、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20040262223号明細書及び米国特許出願公開第20120276209号明細書に開示されるものが挙げられる。
【0603】
[0578]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、マイクロ流体技術を用いて脂質ナノ粒子中に製剤化され得る(各々が全体として参照により本明細書に組み込まれるWhitesides,George M.,“The Origins and the Future of Microfluidics”,Nature 442:368-373(2006);及びAbraham et al.“Chaotic Mixer for Microchannels”,Science 295:647-651(2002)を参照されたい)。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、Harvard Apparatus(Holliston,MA)又はDolomite Microfluidics(Royston,UK)からのものなどであるが、これらに限定されないマイクロミキサーチップを使用して脂質ナノ粒子中に製剤化され得る。スプリット及び再合流機序による2つ以上の流体の流れの急速混合のためにマイクロミキサーチップが使用され得る。
【0604】
[0579]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、約1nm~約100nm、例えば約1nm~約20nm、約1nm~約30nm、約1nm~約40nm、約1nm~約50nm、約1nm~約60nm、約1nm~約70nm、約1nm~約80nm、約1nm~約90nm、約5nm~約100nm、約5nm~約10nm、約5nm~約20nm、約5nm~約30nm、約5nm~約40nm、約5nm~約50nm、約5nm~約60nm、約5nm~約70nm、約5nm~約80nm、約5nm~約90nm、約10~約20nm、約10~約30nm、約10~約40nm、約10~約50nm、約10~約60nm、約10~約70nm、約10~約80nm、約10~約90nm、約20~約30nm、約20~約40nm、約20~約50nm、約20~約60nm、約20~約70nm、約20~約80nm、約20~約90nm、約20~約100nm、約30~約40nm、約30~約50nm、約30~約60nm、約30~約70nm、約30~約80nm、約30~約90nm、約30~約100nm、約40~約50nm、約40~約60nm、約40~約70nm、約40~約80nm、約40~約90nm、約40~約100nm、約50~約60nm、約50~約70nm、約50~約80nm、約50~約90nm、約50~約100nm、約60~約70nm、約60~約80nm、約60~約90nm、約60~約100nm、約70~約80nm、約70~約90nm、約70~約100nm、約80~約90nm、約80~約100nm及び/又は約90~約100nmなどであるが、これらに限定されない直径を有する脂質ナノ粒子中に製剤化され得る。
【0605】
[0580]いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、約10~500nmの直径を有し得る。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、100nm超、150nm超、200nm超、250nm超、300nm超、350nm超、400nm超、450nm超、500nm超、550nm超、600nm超、650nm超、700nm超、750nm超、800nm超、850nm超、900nm超、950nm超又は1000nm超の直径を有し得る。
【0606】
[0581]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、より小型のLNPを使用して送達され得る。このような粒子は、0.1μm未満~最大100nm、例えば、0.1μm未満、1.0μm未満、5μm未満、10μm未満、15um未満、20um未満、25um未満、30um未満、35um未満、40um未満、50um未満、55um未満、60um未満、65um未満、70um未満、75um未満、80um未満、85um未満、90um未満、95um未満、100um未満、125um未満、150um未満、175um未満、200um未満、225um未満、250um未満、275um未満、300um未満、325um未満、350um未満、375um未満、400um未満、425um未満、450um未満、475um未満、500um未満、525um未満、550um未満、575um未満、600um未満、625um未満、650um未満、675um未満、700um未満、725um未満、750um未満、775um未満、800um未満、825um未満、850um未満、875um未満、900um未満、925um未満、950um未満又は975um未満などであるが、これらに限定されない直径を含み得る。
【0607】
[0582]本明細書に記載されるナノ粒子及び微粒子は、マクロファージ及び/又は免疫反応を調節するために幾何学的に設計され得る。幾何学的に設計された粒子は、肺送達などであるが、これに限定されない標的送達のために本明細書に記載されるポリヌクレオチドを組み込むために、様々な形状、サイズ及び/又は表面電荷を有し得る(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013082111号パンフレットを参照されたい)。幾何学的に設計された粒子の他の物理的特性としては、窓形成、曲がったアーム、非対称及び表面の粗さ、細胞及び組織との相互作用を変化させ得る電荷が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0608】
[0583]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるナノ粒子は、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20130172406号明細書に記載されるものなどであるが、これに限定されない、ステルスナノ粒子又は標的特異的なステルスナノ粒子である。ステルス又は標的特異的なステルスナノ粒子は、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、ポリアミン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレート又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない2つ以上のポリマーを含み得るポリマー性マトリックスを含み得る。
【0609】
b.リピドイド
[0584] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、送達剤、例えば、リピドイドを含む。本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、リピドイドで製剤化され得る。複合体、ミセル、リポソーム又は粒子は、これらのリピドイドを含有し、したがって、局所的(例えば、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所)及び/又は全身性の投与経路を介するリピドイド製剤の注射後のコードされるタンパク質の産生によって判断されるとおり、ポリヌクレオチドの効果的な送達を達成するように調製され得る。ポリヌクレオチドのリピドイド複合体は、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)、局所、静脈内、筋肉内又は皮下経路を含むが、これらに限定されない様々な手段によって投与され得る。
【0610】
[0585]リピドイドの合成は、文献(全てが全体として本明細書に組み込まれるMahon et al.,Bioconjug.Chem.2010 21:1448-1454;Schroeder et al.,J Intern Med.2010 267:9-21;Akinc et al.,Nat Biotechnol.2008 26:561-569;Love et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2010 107:1864-1869;Siegwart et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2011 108:12996-3001を参照されたい)において記載される。
【0611】
[0586]ペンタ[3-(1-ラウリルアミノプロピオニル)]-トリエチレンテトラミン塩酸塩(TETA-5LAP;98N12-5としても知られる、Murugaiah et al.,Analytical Biochemistry,401:61(2010)を参照されたい)、C12-200(誘導体及びバリアントを含む)及びMD1を含むが、これらに限定されない異なるリピドイドによる製剤は、インビボ活性について試験され得る。リピドイド「98N12-5」は、Akinc et al.,Mol Ther.2009 17:872-879によって開示される。リピドイド「C12-200」は、Love et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2010 107:1864-1869及びLiu and Huang,Molecular Therapy.2010 669-670によって開示される。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0612】
[0587]一実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、アミノアルコールリピドイド中で製剤化され得る。アミノアルコールリピドイドは、米国特許第8,450,298号明細書(全体として参照により本明細書に組み込まれる)において記載される方法によって調製され得る。
【0613】
[0588]リピドイド製剤は、ポリヌクレオチドに加えて3又は4つ以上の構成要素を含む粒子を含み得る。リピドイド及びリピドイドを含むポリヌクレオチド製剤は、国際公開第2015051214号パンフレット(全体として参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0614】
c.ヒアルロニダーゼ
[0589] いくつかの実施形態において、注射(例えば、筋肉内又は皮下注射)のための本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)及びヒアルロニダーゼ。ヒアルロニダーゼは、間質性バリアの構成物であるヒアルロナンの加水分解を触媒する。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナンの粘度を低下さることにより、組織透過性を増大させる(Frost,Expert Opin.Drug Deliv.(2007)4:427-440)。代わりに、ヒアルロニダーゼを使用して、筋肉内又は皮下投与されたポリヌクレオチドに曝される細胞の数を増加させることができる。
【0615】
d.ナノ粒子模倣物
[0590] いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、ナノ粒子模倣物内に封入され且つ/又はそれに吸収される。ナノ粒子模倣物は、病原体、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、プリオン及び細胞などであるが、これらに限定されない送達機能生物体又は粒子を模倣し得る。非限定的な例として、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、ウイルスの送達機能を模倣し得る非バイロン粒子中に封入され得る(例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012006376号パンフレット並びに米国特許出願公開第20130171241号明細書及び米国特許出願公開第20130195968号明細書を参照されたい)。
【0616】
e.自己組織化ナノ粒子又は自己組織化高分子
[0591] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、送達のための自己組織化ナノ粒子又は両親媒性高分子(AM)中に本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む。AMは、ポリ(エチレングリコール)に共有結合されたアルキル化糖骨格を有する生体適合性両親媒性ポリマーを含む。水溶液において、AMは自己組織化してミセルを形成する。核酸自己組織化ナノ粒子は、国際出願番号PCT/米国特許出願公開第2014/027077号明細書において記載され、AM及びAMを形成する方法は、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20130217753号明細書において記載される。
【0617】
f.カチオン及びアニオン
[0592] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)並びにZn2+、Ca2+、Cu2+、Mg2+及びその組合せなどのカチオン又はアニオンを含む。代表的な製剤は、例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,265,389号明細書及び同第6,555,525号明細書に記載されるとおりの金属カチオンと錯体形成したポリマー及びポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、カチオン性ナノ粒子は、二価及び一価カチオンの組合せを含有し得る。カチオン性ナノ粒子又はカチオン性ナノ粒子を含む1つ以上のデポーにおけるポリヌクレオチドの送達は、長時間作用型デポーとして作用し、且つ/又はヌクレアーゼによる分解の速度を低下させることによってポリヌクレオチドのバイオアベイラビリティを向上させ得る。
【0618】
g.アミノ酸脂質
[0593] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、アミノ酸脂質との製剤である本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む。アミノ酸脂質は、アミノ酸残基及び1つ以上の脂溶性尾部を含む脂溶性化合物である。アミノ酸脂質の非限定的な例及びアミノ酸脂質を作製する方法は、米国特許第8,501,824号明細書に記載される。アミノ酸脂質製剤は、ポリヌクレオチドに結合し、且つそれを放出するアミノ酸脂質を含む放出可能形態においてポリヌクレオチドを送達し得る。非限定的な例として、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの放出は、例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,098,032号明細書、同第6,897,196号明細書、同第6,426,086号明細書、同第7,138,382号明細書、同第5,563,250号明細書及び同第5,505,931号明細書において記載されるとおりの酸に不安定なリンカーによってもたらされ得る。
【0619】
h.高分子電解質間複合体
[0594] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、高分子電解質間複合体中に本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む。高分子電解質間複合体は、電荷動的ポリマーが1つ以上のアニオン性分子と複合体を形成するときに形成される。電荷動的ポリマー及び高分子電解質間複合体並びに高分子電解質間複合体を作製する方法の非限定的な例は、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,524,368号明細書において記載される。
【0620】
i.結晶性ポリマー系
[0595] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、結晶性ポリマー系中に本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む。結晶性ポリマー系は、結晶性部分及び/又は結晶性部分を含む末端単位を有するポリマーである。代表的なポリマーは、米国特許第8,524,259号明細書(全体として参照により本明細書に組み込まれる)において記載される。
【0621】
j.ポリマー、生分解性ナノ粒子及びコア-シェルナノ粒子
[0596] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)並びに天然及び/又は合成ポリマーを含む。ポリマーとしては、ポリエテン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(l-リジン)(PLL)、PLLにグラフトされたPEG、カチオン性リポポリマー、生分解性カチオン性リポポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)、架橋分岐ポリ(アルキレンイミン)、ポリアミン誘導体、修飾ポロクサマー、弾性生分解性ポリマー、生分解性コポリマー、生分解性ポリエステルコポリマー、生分解性ポリエステルコポリマー、マルチブロックコポリマー、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸)(PAGA)、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリウレア、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、アミン含有ポリマー、デキストランポリマー、デキストランポリマー誘導体又はその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0622】
[0597]代表的なポリマーとしては、MIRUS(登録商標)Bio(Madison、WI)及びRoche Madison(Madison、WI)からのDYNAMIC POLYCONJUGATE(登録商標)(Arrowhead Research Corp.、Pasadena、CA)製剤、PHASERX(商標)ポリマー製剤、例えば、限定されないが、SMARTT POLYMER TECHNOLOGY(商標)(PHASERX(登録商標)、Seattle、WA)、DMRI/DOPE、ポロクサマー、Vical(San Diego、CA)からのVAXFECTIN(登録商標)アジュバント、キトサン、Calando Pharmaceuticals(Pasadena、CA)からのシクロデキストリン、デンドリマー及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ポリマーが挙げられる。RONDEL(商標)(RNAi/オリゴヌクレオチドナノ粒子送達)ポリマー(Arrowhead Research Corporation、Pasadena、CA)及びPHASERX(登録商標)(Seattle、WA)などのpH応答性コ-ブロックポリマー。
【0623】
[0598]ポリマー製剤は、(例えば、筋肉内又は皮下注射後の)ポリヌクレオチドの持続又は遅延放出を可能にする。ポリヌクレオチドに関して改変された放出プロファイルは、例えば、長期間にわたるコードされるタンパク質の翻訳をもたらし得る。ポリマー製剤は、ポリヌクレオチドの安定性を向上させるためにも使用され得る。持続放出製剤としては、PLGAミクロスフェア、エチレン酢酸ビニル(EVAc)、ポロクサマー、GELSITE(登録商標)(Nanotherapeutics,Inc.Alachua、FL)、HYLENEX(登録商標)(Halozyme Therapeutics、San Diego CA)、フィブリノーゲンポリマーなどのサージカルシーラント(Ethicon Inc.Cornelia、GA)、TISSELL(登録商標)(Baxter International,Inc.Deerfield、IL)、PEG-系シーラント及びCOSEAL(登録商標)(Baxter International,Inc.Deerfield、IL)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0624】
[0599]非限定的な例として、修飾mRNAは、調節可能な放出速度(例えば、数日及び数週)でPLGAミクロスフェアを調製し、封入プロセス中に修飾mRNAの完全性を維持しながら、PLGAミクロスフェア中に修飾mRNAを封入することにより、PLGAミクロスフェア中に製剤化され得る。EVAcは、前臨床持続放出インプラント適用において広く使用される非生分解性、生体適合性ポリマーである(例えば、長期放出製品Ocusert、緑内障用のピロカルピン眼内挿入物又はプロゲスタサート、持続放出プロゲステロン子宮内デバイス;経皮送達系テストダーム、デュラゲシク及びセレギリン、カテーテル)。ポロクサマーF-407 NFは、5℃未満の温度で低粘度であるポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンの親水性の非イオン性界面活性剤トリブロックコポリマーであり、15℃より高い温度で固形ゲルを形成する。
【0625】
[0600]非限定的な例として、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、米国特許第6,177,274号明細書に記載されるとおりにPLLとともにグラフとされるPEGのポリマー性化合物とともに製剤化され得る。別の非限定的な例として、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、PLGA-PEGブロックコポリマー(例えば、米国特許出願公開第20120004293号明細書並びに米国特許第8,236,330号明細書及び同第8,246,968号明細書を参照されたい)又はPLGA-PEG-PLGAブロックコポリマー(例えば、米国特許第6,004,573号明細書を参照されたい)などのブロックコポリマーと製剤化され得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0626】
[0601]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ポリ(アミン-コ-エステル)又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない少なくとも1つのアミン含有ポリマーとともに製剤化され得る。代表的なポリアミンポリマー及び送達剤としてのそれらの使用は、例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,460,696号明細書、同第8,236,280号明細書に記載される。
【0627】
[0602]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、例えば、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,696,038号明細書、同第6,517,869号明細書、同第6,267,987号明細書、同第6,217,912号明細書、同第6,652,886号明細書、同第8,057,821号明細書及び同第8,444,992号明細書;米国特許出願公開第20030073619号明細書、米国特許出願公開第20040142474号明細書、米国特許出願公開第20100004315号明細書、米国特許出願公開第2012009145号明細書及び米国特許出願公開第20130195920号明細書;並びに国際公開第2006063249号パンフレット及び国際公開第2013086322号パンフレットに記載されるとおり、生分解性カチオン性リポポリマー、生分解性ポリマー又は生分解性コポリマー、生分解性ポリエステルコポリマー、生分解性ポリエステルポリマー、直鎖状生分解性コポリマー、PAGA、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー又はそれらの組み合わせ中に製剤化され得る。
【0628】
[0603]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、米国特許出願公開第20130184453号明細書に記載されるとおりの少なくとも1つのシクロデキストリンポリマー中又はそれとともに製剤化され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、国際公開第2013106072号パンフレット、国際公開第2013106073号パンフレット及び国際公開第2013106086号パンフレットに記載されるとおりの少なくとも1つの架橋カチオン結合ポリマー中又はそれとともに製剤化され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、米国特許出願公開第20130231287号明細書に記載されるとおりの少なくともPEG化アルブミンポリマー中又はそれとともに製剤化され得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0629】
[0604]いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリヌクレオチドは、ポリマー、脂質及び/又はリン酸カルシウムなどであるが、これに限定されない他の生分解性薬剤の組合せを使用してナノ粒子として製剤化され得る。構成要素を、コア-シェル、ハイブリッド及び/又は交互積層構造中で合わせて、送達のためのナノ粒子の微調整が可能になる(Wang et al.,Nat Mater.2006 5:791-796;Fuller et al.,Biomaterials.2008 29:1526-1532;DeKoker et al.,Adv Drug Deliv Rev.2011 63:748-761;Endres et al.,Biomaterials.2011 32:7721-7731;Su et al.,Mol Pharm.2011 Jun 6;8(3):774-87;全体として参照により本明細書に組み込まれる)。非限定的な例として、ナノ粒子は、親水性-疎水性ポリマー(例えば、PEG-PLGA)、疎水性ポリマー(例えば、PEG)及び/又は親水性ポリマー(全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第20120225129号パンフレット)などであるが、これらに限定されない複数のポリマーを含み得る。
【0630】
[0605]コア-シェルナノ粒子の使用は、カチオン架橋ナノゲルコア及び様々なシェルを合成するためのハイスループットアプローチにさらに焦点を置いている(全体として参照により本明細書に組み込まれるSiegwart et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2011 108:12996-13001)。ポリマー性ナノ粒子の複合体形成、送達及び内部移行は、ナノ粒子のコア及びシェル構成要素の両方で化学組成を変化させることにより、適格に制御され得る。例えば、コア-シェルナノ粒子は、それらがコレステロールをナノ粒子に共有結合させた後、siRNAをマウス肝細胞に効率的に送達し得る。
【0631】
[0606]いくつかの実施形態において、中間PLGA層と、PEGを含有する外側の中性脂質層を含む中空脂質コアは、本明細書に記載されるとおりのポリヌクレオチドの送達のために使用され得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、本明細書で開示されるポリヌクレオチドのコア及びポリマーシェルを含み得、これは、コア中のポリヌクレオチドを保護するために使用される。ポリマーシェルは、本明細書に記載されるポリマーのいずれかであり得、当技術分野において知られる。ポリマーシェルは、コア中のポリヌクレオチドを保護するために使用され得る。
【0632】
[0607]本明細書に記載されるポリヌクレオチドとの使用のためのコア-シェルナノ粒子は、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許8,313,777号明細書又は国際公開第2013124867号パンフレットにおいて記載される。
【0633】
k.ペプチド及びタンパク質
[0608] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、ポリヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションを増加させ、且つ/又はポリヌクレオチドの体内分布を変化させ(例えば、特定の組織又は細胞型を標的化することによって)、且つ/又はコードされるタンパク質の翻訳を増加させるペプチド及び/又はタンパク質により製剤化される本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む(例えば、国際公開第2012110636号パンフレット及び国際公開第2013123298号パンフレット)。いくつかの実施形態において、ペプチドは、米国特許出願公開第20130129726号明細書、米国特許出願公開第20130137644号明細書及び米国特許出願公開第20130164219号明細書に記載されるものであり得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0634】
l.複合物
[0609] いくつかの実施形態において、本開示の組成物又は製剤は、担体又は標的化基に共有結合されるか、又は一緒に複合物として融合タンパク質(例えば、標的化基及び治療用タンパク質又はペプチドを有する)を生成する2つのコード領域を含む本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を含む。複合物は、選択的に組織又は生物体中でナノ粒子をニューロンに向けるか、又は脳血管関門の通過を支援するペプチドであり得る。
【0635】
[0610]複合物は、天然に存在する物質、例えば、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)又はグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン又はヒアルロン酸);又は脂質などを含む。リガンドは、組換え又は合成分子、例えば、合成ポリマーなど、例えば、合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)などでもあり得る。ポリアミノ酸の例としては、ポリアミノ酸、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリエド)コポリマー、ジビニルエーテル-マレイン酸無水物コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー又はポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン脂質、カチオンポルフィリン、ポリアミンの四級塩又はアルファヘリックスペプチドが挙げられる。
【0636】
[0611]いくつかの実施形態において、複合物は、本明細書で開示されるポリヌクレオチドに対する担体として機能し得る。複合物は、ポリアミン、ポリリジン、ポリアルキレンイミン及びポリ(エチレングリコール)にグラフトされ得るポリエチレンイミンなどであるが、これらに限定されないカチオン性ポリマーを含み得る。代表的な複合物及びそれらの調製は、各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,586,524号明細書及び米国特許出願公開第20130211249号明細書において記載される。
【0637】
[0612]複合物は、標的化基、例えば、細胞又は組織標的化剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質又はタンパク質、例えば、腎臓細胞などの特定の細胞型に結合する抗体も含み得る。標的化基は、サイロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチド模倣物又はアプタマーであり得る。
【0638】
[0613]標的化基は、タンパク質、例えば、糖タンパク質又はペプチド、例えば、コリガンドに対して特異的な親和性を有する分子又は抗体、例えば、内皮細胞又は骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体であり得る。標的化基は、ホルモン及びホルモン受容体も含み得る。これらは、非ペプチド種、例えば脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フルコース又はアプタマーも含み得る。リガンドは、例えば、リポ多糖又はp38MAPキナーゼの活性化因子であり得る。
【0639】
[0614]標的化基は、特定の受容体を標的化することが可能な任意のリガンドであり得る。例としては、葉酸、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、アプタマー、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDL及びHDLリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、標的化基は、アプタマーである。アプタマーは、未修飾であるか、又は本明細書で開示される修飾の任意の組合せを有し得る。非限定的な例として、標的化基は、例えば、米国特許出願公開第2013021661012号明細書(全体として参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるとおり、血液-中枢神経系障壁を横切る標的送達のためのグルタチオン受容体(GR)-結合複合物であり得る。
【0640】
[0615]いくつかの実施形態において、複合物は、より大きい治療有効性を提供するために長時間作用型連続放出系を含む相乗的生体分子-ポリマー複合物であり得る。相乗的生体分子-ポリマー複合物は、米国特許出願公開第20130195799号明細書に記載されるものであり得る。いくつかの実施形態において、複合物は、国際公開第2012040524号パンフレットに記載されるとおりのアプタマー複合物であり得る。いくつかの実施形態において、複合物は、米国特許第8,507,653号明細書に記載されるとおりのアミン含有ポリマー複合物であり得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、SMARTT POLYMER TECHNOLOGY(登録商標)(PHASERX(登録商標),Inc.Seattle,WA)に複合化され得る。
【0641】
[0616]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、シグナル配列又は標的化配列も含み得る細胞透過性ポリペプチドに共有結合的に複合化される。複合物は、安定性の向上及び/又は細胞トランスフェクションの向上を有するように設計され得;且つ/又は体内分布を変化させ得る(例えば、特定の組織又は細胞型に標的化される)。
【0642】
[0617]いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、送達を促進するために薬剤に複合化され得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、国際公開第2011062965号パンフレットに記載されるとおりの標的化ブロックを有する標的化モノマー又はポリマーなどのモノマー又はポリマーであり得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、例えば、米国特許第6,835.393号明細書及び同第7,374,778号明細書に記載されるとおりのポリヌクレオチドに共有結合される輸送剤であり得るいくつかの実施形態において、薬剤は、米国特許第7,737,108号明細書及び同第8,003,129号明細書に記載されるものなどの膜障壁輸送促進剤であり得る。各参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0643】
22.使用方法
[0618] 本明細書に記載されるポリヌクレオチド、医薬組成物及び製剤は、(i)創傷治癒を促進及び/又は改善し、(ii)創傷部位での瘢痕形成を予防及び/又は低減し、(iii)それを必要とする対象における瘢痕の視認性を低減し;且つ/又は(iv)例えば、表皮水疱症の場合のように、創傷治癒ポリペプチドの欠如又はレベルの低減による創傷又は慢性皮膚病態をもたらす疾患を治療するための医薬の調製、製造及び治療上の使用において使用される。
【0644】
[0619]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物及び製剤は、それを必要とする対象において創傷治癒ポリペプチドのレベルを上昇させるための方法において使用される。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物及び製剤は、それを必要とする対象において創傷治癒ポリペプチドのレベルを上昇させるための方法において使用される。
【0645】
[0620]例えば、本発明の一態様は、対象において創傷治癒を促進及び/又は改善する方法であって、その対象への創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)を含む組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含む方法を提供する。
【0646】
[0621]本明細書で使用する場合、用語「局所投与」は、皮膚、例えば、無傷の又は壊れた皮膚への本発明の組成物又は製剤の適用を指す。皮膚が壊れている場合、用語「局所」は、組成物又は製剤を、皮膚の特定の層というよりもむしろ創傷の表面と接触させることを包含する。好ましい実施形態において、皮膚は、組成物又は製剤の適用の前に創傷自体から又は皮膚を緩やかに擦過することによって壊される。一実施形態において、創傷は、事故、例えば、擦過、穿刺、断裂又は潰瘍の結果である。一実施形態において、創傷は、外科手技の結果である。
【0647】
[0622]本明細書で使用する場合、用語「皮内」は、真皮、すなわち表皮と皮下組織との間への本発明の製剤の化合物の適用を指す。本発明の化合物又は製剤は、既知の方法を使用して、例えば、マイクロニードルを使用して皮内に注射され得る。
【0648】
[0623]別の実施形態において、創傷は、慢性創傷、例えば、創傷を受けた3ヶ月後に治癒されなかった創傷である。一実施形態において、創傷は、急性創傷である。
【0649】
[0624]本発明の別の態様は、対象における創傷部位での瘢痕形成を予防及び/又は低減する方法であって、その対象への創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)を含む組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含む方法を提供する。
【0650】
[0625]本発明の別の態様は、対象において瘢痕の視認性を低減する方法であって、その対象への創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)を含む組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含む方法を提供する。
【0651】
[0626]本発明のさらなる別の態様は、表皮水疱症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、その対象への創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNA)を含む組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与を含み、創傷治癒ポリペプチドがコラーゲンである方法を提供する。特定の実施形態において、表皮水疱症は、単純性表皮水疱症である。いくつかの実施形態において、表皮水疱症は、接合部型表皮水疱症である。いくつかの実施形態において、表皮水疱症は、栄養障害型表皮水疱症である。
【0652】
[0627]創傷(例えば、急性又は慢性創傷)における創傷治癒ポリペプチドのレベルは、低減され得る。したがって、創傷における創傷治癒ポリペプチドのレベルを上昇させることは、(i)創傷治癒を促進及び/若しくは改善し、(ii)創傷部位での瘢痕形成を予防及び/若しくは低減し、(iii)瘢痕の視認性を低減し、且つ/又は(iv)表皮水疱症の治療のための有望な治療である。したがって、本発明の特定の態様において、本明細書で開示されるポリヌクレオチド、例えば、mRNAは、(i)創傷治癒を促進及び/若しくは改善し、(ii)創傷部位での瘢痕形成を予防及び/若しくは低減し、(iii)瘢痕の視認性を低減し、且つ/又は(iv)表皮水疱症の治療における使用に好適な創傷治癒ポリペプチドをコードする1つ以上の配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、対象に、創傷治癒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えばmRNAを提供することにより、創傷治癒ポリペプチド若しくは創傷治癒ポリペプチド活性の欠如又は対象における減少した若しくは異常な創傷治癒ポリペプチド活性を治療する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列最適化される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、創傷治癒ポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、ORF)を含み、核酸は、例えば、そのG/C、ウリジン又はチミジン含量を改変することによって配列最適化され、且つ/又はポリヌクレオチドは、少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、miRNA結合部位、例えば、miRNA-142に結合するmiRNA結合部位及び/又はmiRNA-126に結合するmiRNA結合部位を含む。
【0653】
[0628]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与は、対象の細胞において創傷治癒ポリペプチドの発現をもたらす。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物又は製剤を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することにより、対象における創傷治癒ポリペプチドの発現及び/又は活性の上昇がもたらされる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAを含む組成物又は製剤を対象に皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与する方法において使用され、方法は、対象の少なくとも一部の細胞における創傷治癒ポリペプチドの発現及び/又は活性の上昇をもたらす。
【0654】
[0629]いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAを含む組成物又は製剤の対象への皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与は、細胞対象中の創傷治癒ポリペプチドの発現及び/又は活性を、正常な対象、例えば、創傷に罹患していないヒトにおいて予想される発現及び/又は活性レベルの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%若しくはそれを超えるレベルまで上昇させる。
【0655】
[0630]いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与は、顕著な創傷治癒の発生を可能にするのに十分な時間にわたり持続する、対象の細胞の少なくとも一部における創傷治癒タンパク質の発現をもたらす。
【0656】
[0631]いくつかの実施形態において、コードされるポリペプチドの発現は、増加される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、細胞に導入した場合、細胞における創傷治癒ポリペプチドの発現及び/又は活性レベルを、ポリペプチドが細胞に導入される前の細胞における創傷治癒ポリペプチド発現及び/又は活性レベルに対して、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%まで上昇させる。
【0657】
[0632]本開示の他の態様は、哺乳動物対象、例えば、創傷又は創傷治癒ポリペプチドの発現の増加から恩恵を被ることになる他の状態を有する対象へのポリヌクレオチドを含有する細胞の移植に関する。哺乳動物対象への細胞の投与は、当業者に知られており、これは局所移植(例えば、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)、局所又は皮下投与)、器官送達又は全身的な注射(例えば、静脈内注射又は吸入)及び薬学的に許容される担体中での細胞の製剤化を含むが、これらに限定されない。
【0658】
[0633]本開示は、創傷治癒ポリペプチドの活性の増大を、それを必要とする対象、例えば創傷を有する対象において行う方法であって、対象に治療有効量の本明細書で開示される創傷治癒ポリペプチド、例えば、表1に記載されるヒト創傷治癒ポリペプチド、その変異体又は表1に記載されるヒト創傷治癒ポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするmRNAを含む組成物又は製剤を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することを含む方法も提供する。
【0659】
[0634]いくつかの態様において、それを必要とする対象、例えば創傷を有する対象への皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後に測定される創傷治癒ポリペプチド活性は、少なくとも健康なヒト対象において観察される正常な創傷治癒ポリペプチド活性レベルである。いくつかの態様において、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後に測定される創傷治癒ポリペプチド活性は、創傷患者において観察される創傷治癒ポリペプチド活性レベルより高い。いくつかの態様において、治療有効量の本明細書で開示される創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAを含む組成物又は製剤を対象に皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与した後の、それを必要とする対象、例えば創傷を有する対象における創傷治癒ポリペプチド活性の増大は、健康なヒト対象において観察される正常な創傷治癒ポリペプチド活性の少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又は100パーセントを超える。いくつかの態様において、本明細書で開示される創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAを含む組成物又は製剤を対象に皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与した後(例えば、単回投与の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の後)に創傷患者において観察される創傷治癒ポリペプチド活性レベルを超える創傷治癒ポリペプチド活性における増大は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、12日、14日、21日又は28日間維持される。
【0660】
[0635]いくつかの実施形態において、本発明の方法において使用されるポリヌクレオチド(例えば、mRNA)、医薬組成物及び製剤は、本明細書で開示される創傷治癒ポリペプチドをコードするウラシル修飾配列及び本明細書で開示されるmiRNA結合部位、例えば、miR-142に結合するmiRNA結合部位及び/又はmiR-126に結合するmiRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするウラシル修飾配列は、少なくとも1つの化学的に修飾された核酸塩基、例えば、N1-メチルシュードウラシル又は5-メトキシウラシルを含む。いくつかの実施形態において、本発明の創傷治癒ポリペプチドをコードするウラシル修飾配列における核酸塩基の型(例えば、ウラシル)の少なくとも95%は、修飾核酸塩基である。いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするウラシル修飾配列中のウラシルの少なくとも95%は、1-N-メチルシュードウリジン又は5-メトキシウリジンである。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、例えば、式(I)を有する化合物、例えば、化合物1~232のいずれか、例えば、化合物II;式(III)、(IV)、(V)又は(VI)を有する化合物、例えば、化合物233~342のいずれか、例えば、化合物VI;又は式(VIII)を有する化合物、例えば、化合物419~428のいずれか、例えば、化合物I又はそれらの任意の組合せを含む送達剤とともに製剤化される。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0又は約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物VI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約30~約60mol%の化合物II又はVI(又は関連する好適なアミノ脂質)(例えば、30~40、40~45、45~50、50~55又は55~60mol%の化合物II又はVI(又は関連する好適なアミノ脂質))、約5~約20mol%のリン脂質(又は関連する好適なリン脂質若しくは「ヘルパー脂質」)(例えば、5~10、10~15又は15~20mol%のリン脂質(又は関連する好適なリン脂質若しくは「ヘルパー脂質」))、約20~約50mol%のコレステロール(又は関連するステロール若しくは「非カチオン性」脂質)(例えば、約20~30、30~35、35~40、40~45又は45~50mol%のコレステロール(又は関連するステロール若しくは「非カチオン性」脂質)及び約0.05~約10mol%のPEG脂質(又は他の好適なPEG脂質)(例えば、0.05~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~7又は7~10mol%のPEG脂質(又は他の好適なPEG脂質))の範囲のモル比率で含む。代表的な送達剤は、例えば、47.5:10.5:39.0:3.0又は50:10:38.5:1.5のモル比率を含み得る。特定の例において、代表的な送達剤は、例えば、47.5:10.5:39.0:3;47.5:10:39.5:3;47.5:11:39.5:2;47.5:10.5:39.5:2.5;47.5:11:39:2.5;48.5:10:38.5:3;48.5:10.5:39:2;48.5:10.5:38.5:2.5;48.5:10.5:39.5:1.5;48.5:10.5:38.0:3;47:10.5:39.5:3;47:10:40.5:2.5;47:11:40:2;47:10.5:39.5:3;48:10.5:38.5:3;48:10:39.5:2.5;48:11:39:2;又は48:10.5:38.5:3のモル比率を含み得る。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II又はVI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II又はVI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0又は約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。
【0661】
[0636]当業者は、本発明の薬物又は治療の治療効果が、対象から(例えば、前臨床試験対象(齧歯類、霊長類など)から、又は臨床対象(ヒト)から)採取された試料中でのコードされるタンパク質の発現レベルを測定することにより特徴付けられ得るか、又はこれにより決定され得ることを理解するであろう。同様に、本発明の薬物又は治療の治療効果は、対象から(例えば、前臨床試験対象(齧歯類、霊長類など)から、又は臨床対象(ヒト)から)採取された試料中でのコードされるタンパク質(例えば、酵素)の活性レベルを測定することにより特徴付けられ得るか、又はこれにより決定され得る。さらに、本発明の薬物又は治療の治療効果は、対象から採取された試料中での適切なバイオマーカーのレベルを測定することにより特徴付けられ得るか、又はこれにより決定され得る。タンパク質及び/又はバイオマーカーのレベルは、本発明のmRNA治療薬の単回投与での投与後に決定され得るか、又は単回投与での皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後のいくつかの時間点で決定及び/若しくは監視され得るか、又は一連の治療、例えば、複数回投与治療全体を通じて決定及び/若しくは監視され得る。
【0662】
創傷治癒タンパク質発現レベル
[0637] 本発明の特定の態様は、対象、例えば、動物(例えば、齧歯類、霊長類など)又はヒト対象における創傷治癒タンパク質の発現レベルの測定、決定及び/又は監視を特徴とする。動物としては、正常で健康な又は野生型動物並びに創傷治癒及びその治療を理解する際の使用のための動物モデルが挙げられる。代表的な動物モデルとしては、齧歯類モデル、例えば、糖尿病及び静脈高血圧マウスモデル並びにブタ褥瘡モデルが挙げられる。
【0663】
[0638]創傷治癒タンパク質発現レベルは、例えば、血液試料又は針生検に由来する生体試料中でタンパク質レベルを決定するための任意の当技術分野で認められている方法により測定又は決定され得る。「レベル」又は「タンパク質のレベル」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは、試料又は対象内でのタンパク質の重量、質量又は濃度を意味する。特定の実施形態において、試料は、例えば、以下:精製、沈殿、分離、例えば遠心分離及び/又はHPLCのいずれかに供され得、続いて例えば質量及び/又は分光測定分析を使用するタンパク質のレベルの決定に供され得ることが当業者によって理解されるであろう。代表的な実施形態において、タンパク質発現レベルを決定するために、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が使用され得る。他の代表的な実施形態において、タンパク質精製、分離及びLC-MSは、本発明によるタンパク質のレベルを決定するための手段として使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明のmRNA療法(例えば、単回の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与)は、mRNA療法の単回用量の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、少なくとも96時間、少なくとも108時間、少なくとも122時間にわたり、対象の組織(例えば、肝臓)における創傷治癒タンパク質発現レベルの上昇をもたらす(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍の上昇及び/又は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも100%の正常レベルまでの上昇)。
【0664】
創傷治癒タンパク質活性
[0639] 創傷(例えば、非治癒性創傷)において、創傷治癒ポリペプチド(例えば、表1を参照されたい)の活性(例えば、シグナル伝達活性)は、正常な生理活性レベル(例えば、治癒している創傷における)と比較して低減される。本発明のさらなる態様は、対象、例えば、動物(例えば、齧歯類、霊長類など)又はヒト対象における創傷治癒ポリペプチドの活性レベル(例えば、シグナル伝達活性レベル)の測定、決定及び/又は監視を特徴とする。活性レベルは、生体試料中でシグナル伝達活性レベルを決定するための任意の当技術分野で認められている方法(例えば、下流シグナル伝達タンパク質レベルの分析、リン酸化状態の分析、受容体アッセイの使用)により測定又は決定され得る。「活性レベル」又は「シグナル伝達活性レベル」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは試料又は試料内の総タンパク質の体積、質量又は重量当たりのポリペプチドの活性を意味する。代表的な実施形態において、「活性レベル」又は「シグナル伝達活性レベル」は、流体(例えば、体液、例えば、血清、血漿、尿など)のミリリットル当たりの単位に関して記載されるか又は組織の重量当たり又は試料内のタンパク質(例えば、総タンパク質)の重量当たりの単位に関して記載される。
【0665】
[0640]特定の実施形態において、本発明のmRNA療法は、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与の6~12時間後、12~24時間後、24~48時間後又は48~72時間後に(例えば、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の48時間目又は72時間目に)(例えば、医薬組成物の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与前の創傷治癒ポリペプチドの活性レベルと比較して)組織(例えば、創傷の部位又は創傷に隣接する部位)における創傷治癒ポリペプチド活性の少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍又は少なくとも100倍、1.5倍~100倍、1.5~10倍、10倍~50倍の増大をもたらすのに有効なmRNAの用量を含む医薬組成物を特徴とする。
【0666】
[0641]代表的な実施形態において、本発明のmRNA療法は、上記の活性のレベルをもたらすmRNAの単回の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所用量を含む医薬組成物を特徴とする。別の実施形態において、本発明のmRNA療法は、上記の活性のレベルを維持するmRNAの複数回の単回単位の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所用量で投与され得る医薬組成物を特徴とする。
【0667】
創傷治癒バイオマーカー
[0642] いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物又は製剤の有効量の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与は、創傷治癒障害のバイオマーカーのレベルを正常化する(創傷治癒障害のバイオマーカーの概要については、例えば、Lindley et al.,2016,Plast Reconstr Surg,138(3):18S-28Sを参照されたい)。創傷治癒障害のバイオマーカーの非限定的な例としては、(i)ベータ-カテニン、c-myc、ADAM12、miRNA-16、miRNA-20a、miRNA-21、miRNA-106a、miRNA-130a、miRNA-203、MMP1、MMP2、MMp3、MMP7、MMP8、MMP9、MMP10、MMP11、MMP13、IL1、IL6及び/又はプロカルシトニンのレベルの上昇、(ii)BMPR、LRIG1、GATA3、IDR2,4、K15、カテリシジン、TGF-β I、II及びIIIリガンド、ホスホ-smad2、TIMP1、CD34+/CD45減少循環細胞、HIF1-2、miRNA-200b及び/又はmiRNA-191のレベルの低下、並びに(iii)EGFRの細胞質染色の増加が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与は、本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物又は製剤の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の短い期間内で創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルの正常化をもたらす。バイオマーカーのレベルを決定する方法は、当技術分野において知られており、本明細書に記載されるバイオマーカーのレベルを決定する際に使用され得る。
【0668】
[0643]いくつかの実施形態において、創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、創傷組織(例えば、創面切除された創傷組織又は創傷液)において測定される。創傷組織(例えば、創面切除された創傷組織又は創傷液)を得る方法及び創傷組織(例えば、創面切除された創傷組織又は創傷液)中のバイオマーカーのレベルを測定するための方法は、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、血液において測定される。いくつかの実施形態において、創傷治癒障害のさらなるバイオマーカーの1つのレベルは、血液の構成要素、例えば、血漿又は血清において測定される。血液及び血液の構成要素を得る方法及び血液又は血液の構成要素中のバイオマーカーのレベルを測定するための方法は、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、乾燥血液スポットにおいて測定される。創傷治癒障害のレベルが乾燥血液スポットにおいて決定される実施形態において、決定の方法は、当技術分野において知られる質量分析法であり得る。いくつかの実施形態において、創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、尿において測定される。尿を得る方法及び尿中のバイオマーカーのレベルを測定するための方法は、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、胆汁において測定される。胆汁を得る方法及び胆汁中のバイオマーカーのレベルを測定するための方法は、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、創傷治癒障害の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、肝臓組織において測定される。肝臓組織を得る方法、例えば、生検及び肝臓組織中のバイオマーカーのレベルを測定するための方法は、当技術分野において知られている。
【0669】
[0644]本発明のさらなる態様は、別の試料中、例えば、同じ患者、別の患者、対照及び/又は同じ若しくは異なる時点からの同じ又は別のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベル)、並びに/又は生理的レベル、並びに/又は高レベル、並びに/又は超生理的レベル、並びに/又は対照のレベルと比較して、試料中で決定されるバイオマーカーのレベル(又はレベル(複数))を決定することを特徴とする。当業者は、バイオマーカーの生理的レベル、例えば、正常又は野生型動物、正常又は健康な対象などでのレベル、特に、健康な及び/又は正常な機能を有する対象の特徴となる1つ又は複数のレベルに精通しているであろう。本明細書で使用する場合、「高レベル」という句は、正常若しくは野生型前臨床動物において又は正常若しくは健康な対象、例えば、ヒト対象において通常見られるものより大きい量を意味する。本明細書で使用する場合、「超生理的」という用語は、正常若しくは野生型前臨床動物において又は正常若しくは健康な対象、例えば、ヒト対象において通常見られるものよりも大きく、任意選択により顕著に増強された生理的反応をもたらす量を意味する。本明細書で使用する場合、「比較する」又は「比較して」という用語は、好ましくは、2つ以上の値、例えば、バイオマーカーのレベルの数理的比較を意味する。したがって、このような値の少なくとも2つを互いに比較する場合、値の一方がもう一方の値又は値の群よりも高いか、低いか又はそれと同一であるかのいずれかであることは当業者にとって容易に明らかとなるであろう。比較すること又は比較は、これに関連して、例えば、対照値と比較すること、例えば、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与(例えば、創傷(例えば、非治癒性創傷)に罹患している人における)前の前記対象における又は正常若しくは健康な対象における創傷治癒障害のバイオマーカーの参照血液、血清、血漿及び/又は組織(例えば、創傷組織)レベルと比較して、対照値と比較することであり得る。比較すること又は比較は、これに関連して、例えば対照値と比較すること、例えば皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与(例えば、創傷(例えば、非治癒性創傷)に罹患している人における)前の前記対象における又は正常若しくは健康な対象における創傷治癒障害のバイオマーカーの参照血液、血清、血漿及び/又は組織(例えば、創傷組織)レベルと比較して対照値と比較することでもあり得る。
【0670】
[0645]本明細書で使用する場合、「対照」は、好ましくは、その対象の創傷治癒状態が知られている対象からの試料である。一実施形態において、対照は、健康な患者の試料である。別の実施形態において、対照は、既知の創傷治癒状態、例えば、重度、軽度又は健康な創傷治癒状態を有する少なくとも1名の対象、例えば、対照患者からの試料である。別の実施形態において、対照は、創傷治癒に対して治療されていない対象からの試料である。さらなる実施形態において、対照は、単一の対象からの試料又は様々な対象からの試料のプール及び/又はその対象から異なる時点で採取された試料である。
【0671】
[0646]「レベル」又は「バイオマーカーのレベル」という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは試料又は対象内の本発明のバイオマーカーの質量、重量又は濃度を意味する。特定の実施形態において、試料は、例えば、以下:物質精製、沈殿、分離、例えば遠心分離及び/又はHPLCの1つ以上に供され得、続いて例えば質量分光測定分析を使用するバイオマーカーレベルの決定に供され得ることが当業者によって理解されるであろう。特定の実施形態において、LC-MSは、本発明によるバイオマーカーのレベルを決定するための手段として使用され得る。
【0672】
[0647]バイオマーカーの「レベルを決定する」という用語は、本明細書で使用する場合、対象からの試料中、例えば、対象からの体液(例えば、血清、血漿、尿、リンパ液、創傷液など)中又は対象の組織(例えば、創傷など)中の少なくとも1つの物質の量を定量化することを含む方法を意味し得る。
【0673】
[0648]「参照レベル」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明のmRNA療法の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)若しくは局所投与前の対象における(例えば、創傷に罹患している人における)又は正常若しくは健康な対象における(例えば、バイオマーカーの)レベルを指し得る。
【0674】
[0649]本明細書で使用する場合、「正常な対象」又は「健康な対象」という用語は、創傷又は創傷治癒障害に関連する症状に罹患していない対象を指す。本発明の特定の実施形態において、健康な対象からの試料が対照試料として使用されるか、又は健康若しくは正常な対象の試料からのバイオマーカーレベルに対する既知若しくは標準化された値が対照として使用される。
【0675】
[0650]ベースライン又は参照レベルと比較して上昇しているか、増大しているか、又はより高い創傷治癒障害のバイオマーカーに関して、いくつかの実施形態において、創傷治癒(例えば、創傷治癒障害)に対する治療を必要とする対象又は創傷治癒(例えば、創傷治癒障害)に対して治療されている対象からの試料におけるバイオマーカーのレベルをバイオマーカーの対照レベルと比較することは、対象(創傷治癒に対して治療を必要とするか又は治療されている)からの試料中のバイオマーカーレベルをベースライン又は参照レベルと比較することを含み、対象(創傷治癒に対して治療を必要とするか又は治療されている)からの試料中のバイオマーカーレベルが、ベースライン又は参照レベルと比較して上昇しているか、増大しているか、又はより高い場合、これは、対象が創傷治癒障害に罹患しており、且つ/又は治療を必要としていることを示し;且つ/又は対象(創傷治癒に対して治療を必要とするか又は治療されている)からの試料中のバイオマーカーレベルが、ベースラインレベルと比較して低下しているか又はより低い場合、これは、対象が創傷治癒に罹患していないか、創傷治癒に対して問題なく治療されているか、又は創傷治癒に対する治療が必要ないことを示す。一定の期間内、例えば、6時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、60時間以内若しくは72時間以内及び/又は一定の持続時間、例えば48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月などにわたり、バイオマーカーのレベルの低下が強いほど(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍低下及び/又は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも100%低下)、例えば本発明のmRNA療法(例えば、単回投与又は複数回レジメン)などの療法がより成功する。
【0676】
[0651]皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後1、2、3、4、5、6日以内又はそれを超える、特に、体液(例えば、血漿、血清、尿、例えば、尿沈渣、創傷液)中又は対象における組織(例えば、創傷組織)中での、バイオマーカーのレベルの少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも100%又はそれを超える低下は、創傷治癒を問題なく治療するのに好適な用量であることを示し、本明細書で使用する場合、低下は、好ましくは、特定の期間の終わり(例えば、投与後、例えば、単回皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後)に決定されるバイオマーカーのレベルを、その期間の始め(例えば、その用量の投与前)に決定される同じバイオマーカーのレベルと比較することを意味する。代表的な期間としては、投与後12、24、48、72、96、120又は144時間、特に、投与後24、48、72又は96時間が挙げられる。
【0677】
[0652]基質レベル(例えば、バイオマーカー)における持続的な低下は、特に、創傷治癒の治療において成功したmRNA治療薬投与及び/又は皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)若しくは局所投与レジメンを示す。このような持続的な低下は、本明細書では効果の「持続時間」と呼ばれ得る。代表的な実施形態において、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の1、2、3、4、5、6、7、8日以内又はそれを超える、特に、体液(例えば、血漿、血清、尿、例えば、尿沈渣、創傷液)又は対象の組織(例えば、創傷組織)中のバイオマーカーのレベルの少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%以上の低下は、治療アプローチが成功していることを示す。代表的な実施形態において、1つ以上の試料(例えば、体液及び/又は組織)中での基質(例えば、バイオマーカー)レベルの持続的な低下が好ましい。任意選択により、少なくとも1つの組織、好ましくは2、3、4、5つ又はそれを超える組織でのそのバイオマーカーの持続的な低下と組み合わせて、例えば、バイオマーカーにおける持続的な低下をもたらすmRNA療法は、治療が成功していることを示す。
【0678】
[0653]ベースライン又は参照レベルと比較して減少しているか、低減しているか、又はより低い創傷治癒障害のバイオマーカーに関して、いくつかの実施形態において、創傷治癒(例えば、創傷治癒障害)に対する治療を必要とする対象又は創傷治癒(例えば、創傷治癒障害)に対して治療されている対象からの試料におけるバイオマーカーのレベルをバイオマーカーの対照レベルと比較することは、対象(創傷治癒に対して治療を必要とするか又は治療されている)からの試料中のバイオマーカーレベルをベースライン又は参照レベルと比較することを含み、対象(創傷治癒に対して治療を必要とするか又は治療されている)からの試料中のバイオマーカーレベルが、ベースライン又は参照レベルと比較して減少しているか、低減しているか、又はより低い場合、これは、対象が創傷治癒障害に罹患しており、且つ/又は治療を必要としていることを示し;且つ/又は対象(創傷治癒に対して治療を必要とするか又は治療されている)からの試料中のバイオマーカーレベルが、ベースラインレベルと比較して増大しているか又はより高い場合、これは、対象が創傷治癒に罹患していないか、創傷治癒に対して問題なく治療されているか、又は創傷治癒に対する治療が必要ないことを示す。一定の期間内、例えば、6時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、60時間以内若しくは72時間以内及び/又は一定の持続時間、例えば48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月などにわたり、バイオマーカーのレベルの増大が強いほど(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍増大及び/又は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも100%増大)、例えば本発明のmRNA療法(例えば、単回投与又は複数回レジメン)などの療法がより成功する。
【0679】
[0654]皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後1、2、3、4、5、6日以内又はそれを超える、特に、体液(例えば、血漿、血清、尿、例えば、尿沈渣、創傷液)中又は対象における組織(例えば、創傷組織)中での、バイオマーカーのレベルの少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも100%又はそれを超える増大は、創傷治癒を問題なく治療するのに好適な用量であることを示し、本明細書で使用する場合、増大は、好ましくは、特定の期間の終わり(例えば、投与後、例えば、単回皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後)に決定されるバイオマーカーのレベルを、その期間の始め(例えば、その用量の投与前)に決定される同じバイオマーカーのレベルと比較することを意味する。代表的な期間としては、投与後12、24、48、72、96、120又は144時間、特に、投与後24、48、72又は96時間が挙げられる。
【0680】
[0655]基質レベル(例えば、バイオマーカー)における持続的な増大は、特に、創傷治癒の治療において成功したmRNA治療薬投与及び/又は皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)若しくは局所投与レジメンを示す。このような持続的な増大は、本明細書では効果の「持続時間」と呼ばれ得る。代表的な実施形態において、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後の1、2、3、4、5、6、7、8日以内又はそれを超える、特に、体液(例えば、血漿、血清、尿、例えば、尿沈渣、創傷液)又は対象の組織(例えば、創傷組織)中のバイオマーカーのレベルの少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%以上の増大は、治療アプローチが成功していることを示す。代表的な実施形態において、1つ以上の試料(例えば、体液及び/又は組織)中での基質(例えば、バイオマーカー)レベルの持続的な増大が好ましい。任意選択により、少なくとも1つの組織、好ましくは2、3、4、5つ又はそれを超える組織でのそのバイオマーカーの持続的な増大と組み合わせて、例えば、バイオマーカーにおける持続的な増大をもたらすmRNA療法は、治療が成功していることを示す。
【0681】
[0656]いくつかの実施形態において、本発明のmRNA療法の単回投与は、約0.01mg/kg~約10mg/kgの対象の体重当たりのポリヌクレオチド(mpk)である。いくつかの実施形態において、本発明のmRNA療法の単回投与は、約1~10mpk、約2~9mpk、約3~8mpk、約4~7mpk又は約5~6mpkである。いくつかの実施形態において、本発明のmRNA療法の単回投与は、約0.2~約0.8mpk、約0.3~約0.7mpk、約0.4~約0.8mpk又は約0.5mpkである。別の実施形態において、本発明のmRNA療法の単回投与は、1.5mpk未満、1.25mpk未満、1mpk未満又は0.75mpk未満である。
【0682】
瘢痕形成及び視認性
[0657] 本発明の特定の態様は、対象、例えば、動物(例えば、齧歯類、霊長類など)又はヒト対象における瘢痕の視認性の測定、決定及び/又は監視を特徴とする。動物としては、正常で健康な又は野生型動物並びに瘢痕の低減及びその瘢痕の予防治療を理解する際の使用のための動物モデルが挙げられる。
【0683】
[0658]瘢痕の形成又は視認性は、瘢痕の低減又は視認性を決定するための任意の当技術分野において認められる方法によって測定され得るか又は決定され得る(例えば、Idriss&Maibach,2009,Skin Research and Technology,15:1-5を参照されたい)。例えば、瘢痕のサイズ、高さ、色、柔軟性、質感、表面積及び/又は瘢痕の部位での毛の存在は、測定され得るか又は決定され得るし、且つそれぞれ治療前の瘢痕のサイズ、高さ、色、柔軟性、質感、表面積及び/又は瘢痕の部位での毛の存在と比較され得る。いくつかの実施形態において、本発明のmRNA療法(例えば、単回の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与)は、mRNA療法の単回用量の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、少なくとも96時間、少なくとも108時間、少なくとも122時間にわたり、対象の瘢痕のサイズ、高さ又は表面積の減少をもたらす(例えば、mRNA療法の前のサイズ、高さ又は表面積のそれぞれ2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍の減少及び/又は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%までの減少)。いくつかの実施形態において、本発明のmRNA療法(例えば、単回の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与)は、mRNA療法の単回用量の皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与後、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、少なくとも96時間、少なくとも108時間、少なくとも122時間にわたり、対象の瘢痕の視認性又は瘢痕上の毛の存在の増大をもたらす(例えば、mRNA療法の前の瘢痕の視認性又は瘢痕上の毛の存在のそれぞれ2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍の増大及び/又は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%までの増大)。
【0684】
23.使用のための組成物及び製剤
[0659] 本発明の特定の態様は、上で開示されるポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物又は製剤を対象とする。特定の実施形態において、組成物又は製剤は、対象への内皮(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与のためのものである。
【0685】
[0660]いくつかの実施形態において、組成物又は製剤は、
(i)創傷治癒ポリペプチド(例えば、野生型配列、その機能的断片又はバリアント)をコードする配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、ORF)を含むポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)であって、ポリヌクレオチドが、少なくとも1つの化学的に修飾された核酸塩基、例えば、N1-メチルシュードウラシル又は5-メトキシウラシル(例えば、ウラシルの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%又は100%は、N1-メチルシュードウラシル又は5-メトキシウラシルである)を含み、且つポリヌクレオチドが、miRNA結合部位、例えば、miR-142に結合するmiRNA結合部位(例えば、miR-142-3p又はmiR-142-5p結合部位)及び/又はmiR-126に結合するmiRNA結合部位(例えば、miR-126-3p又はmiR-126-5p結合部位)をさらに含むポリヌクレオチド;並びに
(ii)例えば、式(I)を有する化合物、例えば、化合物1~232のいずれか、例えば、化合物II;式(III)、(IV)、(V)又は(VI)を有する化合物、例えば、化合物233~342のいずれか、例えば、化合物VI;又は式(VIII)を有する化合物、例えば、化合物419~428のいずれか、例えば、化合物I又はそれらの任意の組合せを含む送達剤
を含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、化合物VI、その塩若しくは立体異性体又はそれらの任意の組合せを含む脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物II、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物VI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約50:10:38.5:1.5のモル比率で含む。いくつかの実施形態において、送達剤は、化合物VI、DSPC、コレステロール及び化合物I又はPEG-DMGを、例えば、約47.5:10.5:39.0:3.0のモル比率で含む。
【0686】
[0661]いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の理論上最小のウラシル又はチミン含量と比較したORFのウラシル又はチミン含量(%UTM又は%TTM)は、約100%~約150%である。
【0687】
[0662]いくつかの実施形態において、上のポリヌクレオチド、組成物又は製剤は、創傷治癒を促進及び/又は増大するために使用される。
【0688】
[0663]いくつかの実施形態において、上のポリヌクレオチド、組成物又は製剤は、創傷部位での瘢痕形成を予防及び/又は低減するために使用される。
【0689】
[0664]いくつかの実施形態において、上のポリヌクレオチド、組成物又は製剤は、瘢痕の視認性の低減を、それを必要とする対象において行うために使用される。
【0690】
[0665]いくつかの実施形態において、上のポリヌクレオチド、組成物又は製剤は、表皮水疱症を治療するために使用される。
【0691】
24.投与形態
[0666] 上記の本発明のポリヌクレオチド、医薬組成物及び製剤は、内皮(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与され得る。いくつかの実施形態において、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与のための製剤は、少なくとも1つの不活性成分を含み得る。
【0692】
[0667]本発明のポリヌクレオチド(例えば、創傷治癒ポリペプチド又はその機能的断片又はバリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、本明細書に記載される方法を使用して製剤化され得る。製剤は、修飾及び/又は未修飾であり得るポリヌクレオチドを含有し得る。製剤としては、細胞透過剤、薬学的に許容される担体、送達剤、生体内崩壊性又は生体適合性ポリマー、溶媒及び持続放出送達デポーがさらに挙げられ得るが、これらに限定されない。製剤化されたポリヌクレオチドは、当技術分野で知られ且つ本明細書に記載される投与経路(例えば、内皮(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与)を使用して細胞に送達され得る。
【0693】
[0668]内皮(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与のための医薬組成物は、少なくとも1つの不活性成分を含み得る。使用される不活性成分は、いずれかが米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration)(FDA)により承認されたものであり得るか、又は使用される不活性成分の中に承認されているものがなくてもよい。
【0694】
25.キット及びデバイス
a.キット
[0669] 本発明は、本発明の特許請求されるヌクレオチドを好都合に及び/又は効果的に使用するための様々なキットを提供する。一般的には、キットは、使用者が対象の複数回の治療の実施を可能にするために及び/又は複数回の実験の実施を可能にするのに十分な量及び/又は数の構成要素を含むことになる。
【0695】
[0670]一態様において、本発明は、本発明の分子(ポリヌクレオチド)を含むキットを提供する。
【0696】
[0671]前記キットは、翻訳可能領域を含む第1のポリヌクレオチドを含む、タンパク質産生のためのものであり得る。キットは、製剤組成物を形成するための包装及び説明書並びに/又は送達剤をさらに含み得る。送達剤は、生理食塩水、緩衝溶液、リピドイド又は本明細書で開示される任意の送達剤を含み得る。
【0697】
[0672]いくつかの実施形態において、緩衝溶液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸塩及び/又はEDTAを含み得る。別の実施形態において、緩衝溶液は、生理食塩水、2mMカルシウムを含む生理食塩水、5%スクロース、2mMカルシウムを含む5%スクロース、5%マンニトール、2mMカルシウムを含む5%マンニトール、乳酸リンゲル液、塩化ナトリウム、2mMカルシウムを含む塩化ナトリウム及びマンノースを含み得るが、これらに限定されない(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20120258046号明細書を参照されたい)。さらなる実施形態において、緩衝溶液は沈殿され得るか又はそれは凍結乾燥され得る。各構成要素の量は、一貫し、再現性のあるより高濃度の生理食塩水又は単純な緩衝液製剤を可能にするために変動され得る。構成要素は、ある期間にわたる及び/又は様々な条件下における緩衝溶液中での修飾RNAの安定性を向上させるためにも変動され得る。一態様において、本発明は、タンパク質産生のためのキットであって、標的細胞に導入した場合に翻訳可能領域によりコードされるタンパク質の所望の量を産生するのに有効な量で提供される、翻訳可能領域を含むポリヌクレオチド;細胞の自然免疫反応を実質的に阻害するために有効な量で提供される、阻害性核酸を含む第2のポリヌクレオチド;及び包装及び説明書を含むキットを提供する。
【0698】
[0673]一態様において、本発明は、タンパク質産生のためのキットであって、ポリヌクレオチドが細胞ヌクレアーゼによる分解低下を示す翻訳可能領域を含むポリヌクレオチド並びに包装及び説明書を含むキットを提供する。
【0699】
[0674]一態様において、本発明は、タンパク質産生のためのキットであって、ポリヌクレオチドが細胞ヌクレアーゼによる分解低下を示す翻訳可能領域を含むポリヌクレオチド並びに第1の核酸の翻訳可能領域の翻訳に好適な哺乳動物細胞を含むキットを提供する。
【0700】
b.デバイス
[0675] 本発明は、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込み得るデバイスを提供する。これらのデバイスは、安定な製剤において、ヒト患者など、それを必要とする対象に直ちに送達するために利用可能である製剤中でポリヌクレオチドを合成するための試薬を含有する。
【0701】
[0676]皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所投与のためのデバイスは、本明細書で教示される単回、複数回又は分割投与レジメンに従って本発明のポリヌクレオチドを送達するために利用され得る。そのようなデバイスは、例えば、内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013151666号パンフレットにおいて教示される。
【0702】
26.定義
[0677] 本開示がより容易に理解され得るようにするために、特定の用語が最初に定義される。本願で使用される場合、本明細書中で他に明らかに提供される場合を除き、以下の各用語は、以下で示す意味を有するものとする。本願全体を通じてさらなる定義が示される。
【0703】
[0678]本発明は、その群のメンバーの厳密に1つが所与の製品又はプロセスに存在するか、それで使用されるか、又はそうでなければそれに関連している実施形態を含む。本発明は、その群のメンバーの2つ以上又は全てが所与の製品又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はそうでなければそれに関連している実施形態を含む。
【0704】
[0679]本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、別途文脈から明らかに示されない限り、複数形を含む。「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)という語並びに「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で互換的に使用され得る。特定の態様において、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は、「単数」を意味する。他の態様において、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は、「2つ以上」又は「複数」を含む。
【0705】
[0680]さらに、本明細書で使用される「及び/又は」は、他方の有無にかかわらず、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示と見なされるべきである。したがって、「及び/又は」という用語は、本明細書中の「A及び/又はB」などの句で使用される場合、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むものとする。同様に、「A、B及び/又はC」などの句に使用される「及び/又は」という用語は、以下の態様の各々を包含するものとする:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0706】
[0681]別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語は全て本開示が関連する技術分野の当業者により通常理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、当業者に本開示において使用される用語の多くの一般辞書を提供する。
【0707】
[0682]態様が「含む」という語とともに本明細書に記載される場合には常に、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語において記載される他に類似の態様も提供される。
【0708】
[0683]単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI)承認形態で示される。数範囲は、範囲を定義する数を含む。値の範囲が列挙される場合、各々の介在する整数値及びその各々の分数、その範囲の列挙される上限と下限との間についても、そのような値間の各々の部分範囲とともに具体的に開示されることは理解されるべきである。あらゆる範囲の上限及び下限は、その範囲に独立して含まれるか又はその範囲から排除され得、上限及び下限のいずれかが含まれるか、いずれも含まれないか又は両方が含まれる各範囲も本発明内に包含される。値が明確に挙げられる場合、挙げられる値とほぼ同じ数量又は量である値も本発明の範囲内であることを理解されたい。組合せが開示される場合、その組合せの要素の各副組合せも具体的に開示され、本発明の範囲内である。逆に、異なる要素又は要素群が個々に開示される場合、それらの組合せも開示される。本発明のいずれかの要素が複数の代替物を有するように開示される場合、各代替物が単独で又は他の代替物との任意の組合せで排除される本発明の例も、本明細書により開示され;本発明の2つ以上の要素がこのような排除を有し得、このような排除を有する要素の全ての組合せが本明細書により開示される。
【0709】
[0684]ヌクレオチドは、それらの一般的に認められた一文字コードで参照される。別段の指示がない限り、核酸は5’から3’方向に左から右に書かれる。核酸塩基は、それらの一般的に知られたIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される一文字記号により本明細書中で参照される。したがって、Aは、アデニンを表し、Cは、シトシンを表し、Gは、グアニンを表し、Tは、チミンを表し、Uは、ウラシルを表す。
【0710】
[0685]アミノ酸は、それらの一般に知られる三文字記号又はIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される一文字記号のいずれかにより、本明細書において参照される。別段の指示がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向に左から右に書かれる。
【0711】
[0686]約:「約」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲を通じて数値と連結して使用する場合、当業者によく知られ且つ許容される正確度の間隔を示し、このような正確度の間隔は、±10%である。
【0712】
[0687]範囲が与えられている場合、終点の値が含まれる。さらに、別段の指示がない限り又は文脈及び当業者の理解から別段明らかとならない限り、範囲として表される値は、内容から別段明らかに示されない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の様々な実施形態において述べられる範囲内のあらゆる具体的な値又は部分範囲を想定し得る。
【0713】
[0688]組み合わせて投与される:本明細書で使用する場合、「組み合わせて投与される」又は「組み合わせた投与」という用語は、患者に対して各薬剤の効果の重複が存在し得るように、2つ以上の薬剤を同時に又はある時間間隔内において対象に投与することを意味する。いくつかの実施形態において、これらは、互いに約60、30、15、10、5又は1分以内に投与される。いくつかの実施形態において、薬剤の投与は、組合せ(例えば、相乗)効果が達成されるように十分に接近して間隔をあけられる。
【0714】
[0689]アミノ酸置換:「アミノ酸置換」という用語は、親又は参照配列(例えば、野生型創傷治癒ポリペプチド配列)中に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置き換えることを指す。アミノ酸は、例えば、化学ペプチド合成を介して又は当技術分野で知られる組換え方法を通じて親又は参照配列(例えば、野生型創傷治癒ポリペプチド配列)中で置換され得る。したがって、「位置Xでの置換」への参照は、位置Xに存在するアミノ酸の代替的アミノ酸残基での置換を指す。いくつかの態様において、置換パターンは、概略図AnY(ここで、Aは、天然に又は元来位置nに存在するアミノ酸に対応する1文字コードであり、Yは、置換するアミノ酸残基である)に従って記載され得る。他の態様において、置換パターンは、概略図An(YZ)(ここで、Aは、天然に又は元来位置Xに存在するアミノ酸を置換するアミノ酸残基に対応する1文字コードであり、Y及びZは、代替的な置換するアミノ酸残基である)に従って記載され得る。
【0715】
[0690]本開示との関連で、置換(それらがアミノ酸置換と呼ばれる場合でも)は、核酸レベルで行われ、すなわち、アミノ酸残基の代替的アミノ酸残基での置換は、第1のアミノ酸をコードするコドンを、第2のアミノ酸をコードするコドンで置換することにより行われる。
【0716】
[0691]動物:本明細書で使用する場合、「動物」という用語は、動物界のあらゆるメンバーを指す。いくつかの実施形態において、「動物」は、発生のあらゆる段階のヒトを指す。いくつかの実施形態において、「動物」は、発生のあらゆる段階の非ヒト動物を指す。特定の実施形態において、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類又はブタ)である。いくつかの実施形態において、動物としては、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類及び寄生虫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子改変動物又はクローンである。
【0717】
[0692]およそ:本明細書で使用する場合、「およそ」という語は、目的の1つ以上の値に適用する場合、記載される参照値に類似する値を指す。特定の実施形態において、「およそ」という用語は、別段の断りがない限り又は文脈から別段明らかでない限り、記載される参照値のいずれかの方向の(より大きいか又はより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又はそれ未満内に入る値の範囲を指す(このような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0718】
[0693]関連する:疾患に関して本明細書中で使用される場合、「関連する」という用語は、対象の症状、測定結果、特徴又は状況が、その疾患の診断、発生、存在又は進行と関連があることを意味する。関連は、疾患に原因として関連し得るが、それが必要ではない。例えば、創傷患者の生活の質の低下をもたらす症状、後遺症又は任意の作用は、創傷治癒(例えば、創傷治癒障害)に関連するとみなされ、本発明のいくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを必要とする対象に皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することによって治療、緩和又は予防され得る。
【0719】
[0694]2つ以上の部分に関して使用される場合、「会合する」、「複合化する」、「連結される」、「結合される」及び「係留される」という用語は、2つ以上の部分に関して使用される場合、これらの部分が、直接若しくは結合物質として作用する1つ以上のさらなる部分を介してのいずれかで互いに物理的に会合又は連結して、その構造が用いられる条件、例えば生理的条件下において、ある部分が依然として物理的に会合したままであるように十分に安定である構造を形成することを意味する。「会合」は、厳密に直接的共有化学結合によるものである必要はない。これは、「会合した」実体が物理的に会合したままであるように十分に安定したイオン結合若しくは水素結合又はハイブリッド形成に基づく結合性も示唆し得る。
【0720】
[0695]二官能性:本明細書で使用する場合、「二官能性」という用語は、少なくとも2つの機能を維持可能であるか、又は維持するあらゆる物質、分子又は部分を指す。機能は、同じ成果又は異なる成果をもたらし得る。機能をもたらす構造は、同じであるか又は異なり得る。例えば、本発明の二官能性修飾RNAは、創傷治癒ペプチドをコードし得る(第1の機能)一方、コードRNAを含むヌクレオチドは、それ自体で且つ自からRNAの半減期を延長可能である(第2の機能)。この例において、タンパク質欠乏が起こっている対象に対する二官能性修飾RNAの送達は、疾患又は状態を緩和又は治療し得るペプチド又はタンパク質分子を産生するだけでなく、長期間にわたり対象において存在する集団修飾RNAも維持する。他の態様において、二官能性修飾mRNAは、例えば、創傷治癒ペプチド(第1の機能)及び第1のタンパク質に融合されるか、又は第1のタンパク質と同時発現されるかのいずれかの第2のタンパク質をコードするRNAを含むキメラ又はキメラ(quimeric)分子であり得る。
【0721】
[0696]生体適合性:本明細書中で使用する場合、「生体適合性」という用語は、免疫系による損傷、毒性又は拒絶のリスクがほとんどないか又は全くなく、生細胞、組織、器官又は系と適合性があることを意味する。
【0722】
[0697]生分解性:本明細書で使用する場合、「生分解性」という用語は、生物の作用によって無害の生成物に分解可能であることを意味する。
【0723】
[0698]生物学的に活性:本明細書で使用する場合、「生物学的に活性」という句は、生物系及び/又は生物体において活性を有する任意の物質の特徴を指す。例えば、ある生物体に投与された場合にこの生物体に生物学的作用を及ぼす物質は、生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドの一部でさえも生物学的に活性であるか、又は生物学的に関連すると考えられる活性を模倣する場合、生物学的に活性であるとみなされ得る。
【0724】
[0699]キメラ:本明細書で使用する場合、「キメラ」は、2つ以上の不調和であるか又は異種である部分又は領域を有するものである。例えば、キメラ分子は、創傷治癒ポリペプチドを含む第1の部分及び第2の治療用タンパク質(例えば、別個の酵素性活性を有するタンパク質、抗原結合部分又は創傷治癒ポリペプチドの血漿半減期を延長可能な部分、例えば、抗体のFc領域)を含む第2の部分(例えば、第1の部分に遺伝子操作により融合される)を含み得る。
【0725】
[0700]配列最適化:「配列最適化」という用語は、参照核酸配列中の核酸塩基が代替的核酸塩基で置き換えられ、その結果、核酸配列の特性が向上する、例えばタンパク質発現が向上するか、又は免疫原性が低下するプロセス又は一連のプロセスを指す。
【0726】
[0701]一般に、配列最適化における最終目的は、参照ヌクレオチド配列によりコードされる同じポリペプチド配列をコードする同義のヌクレオチド配列を生成することである。したがって、参照ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドに関して、コドン最適化ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド中に(コドン最適化の結果として)アミノ酸置換はない。
【0727】
[0702]コドン置換:配列最適化に関連して、「コドン置換」又は「コドン置き換え」という用語は、参照核酸配列中に存在するコドンを別のコドンで置き換えることを指す。コドンは、例えば、化学ペプチド合成を介して又は当技術分野で知られる組換え方法を通じて参照核酸配列において置換され得る。したがって、核酸配列(例えば、mRNA)中の特定の位置での又は核酸配列(例えば、mRNA)の特定の領域若しくは部分配列内での「置換」又は「置き換え」への参照は、代替コドンによるこのような位置又は領域でのコドンの置換を指す。
【0728】
[0703]本明細書で使用する場合、「コード領域」及び「コードする領域」という用語及びその文法的変異形は、発現時にポリペプチド又はタンパク質をもたらすポリヌクレオチド中のオープンリーディングフレーム(ORF)を指す。
【0729】
[0704]化合物:本明細書で使用する場合、「化合物」という用語は、示される構造の全ての立体異性体及び同位体を含むことを意味する。本明細書で使用する場合、「立体異性体」という用語は、化合物のいずれかの幾何異性体(例えば、シス及びトランス異性体)、エナンチオマー又はジアステレオマーを意味する。本開示は、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何的に純粋、エナンチオマー的に純粋又はジアステレオマー的に純粋)及びエナンチオマー及び立体異性体混合物、例えばラセミ体を含む、本明細書に記載の化合物のあらゆる立体異性体を包含する。化合物のエナンチオマー及び立体異性体混合物並びにそれらをその構成要素となるエナンチオマー又は立体異性体に分割する手段は、よく知られている。「同位体」は、同じ原子数であるが、核においてニュートロン数が異なることから異なる質量数を有する原子を指す。例えば、水素の同位体としては、トリチウム及び重水素が含まれる。さらに、本開示の化合物、塩又は複合体は、溶媒又は水分子と組み合わせて調製して、通例の方法によって溶媒和物及び水和物を形成することができる。
【0730】
[0705]接触:本明細書で使用する場合、「接触」という用語は、2つ以上のものの間の物理的な連結を確立することを意味する。例えば、哺乳動物細胞をナノ粒子組成物と接触させるとは、哺乳動物細胞及びナノ粒子が物理的連結を共有するようにすることを意味する。インビボ及びエクスビボの両方で外部のものと細胞を接触させる方法は、生物学分野でよく知られている。例えば、ナノ粒子組成物及び哺乳動物内で配置される哺乳動物細胞の接触は、様々な投与経路(例えば、静脈内、筋肉内、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)及び皮下)により実施され得、様々な量のナノ粒子組成物を含み得る。さらに、2つ以上の哺乳動物細胞は、ナノ粒子組成物により接触させられ得る。
【0731】
[0706]保存的アミノ酸置換:「保存的アミノ酸置換」は、タンパク質配列中のアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定められており、これには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン又はヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン又はシステイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン又はトリプトファン)、ベータ-分岐状側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン又はヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸で置き換えられる場合、アミノ酸置換は、保存的とみなされる。別の態様において、一連のアミノ酸は、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/又は組成が異なる構造的に同様の連なりで保存的に置き換えられ得る。
【0732】
[0707]非保存的アミノ酸置換:非保存的アミノ酸置換は、(i)陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、His又はLys)が、陰性残基(例えば、Glu又はAsp)に対して又はこれにより置換されるか、(ii)親水性残基(例えば、Ser又はThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe又はVal)に対して又はこれにより置換される、(iii)システイン又はプロリンが任意の他の残基に対するか又はこれにより置換されるか、又は(iv)かさ高い疎水性又は芳香側鎖を有する残基(例えば、Val、His、Ile又はTrp)がより小さい側鎖を有する(例えば、Ala又はSer)か、又は側鎖がないもの(例えば、Gly)に対して又はこれにより置換されるものを含む。
【0733】
[0708]他のアミノ酸置換は、当業者により容易に同定され得る。例えば、アミノ酸アラニンの場合、置換は、D-アラニン、グリシン、ベータ-アラニン、L-システイン及びD-システインのいずれか1つから得られ得る。リジンの場合、置換は、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモ-アルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン又はD-オルニチンのいずれか1つであり得る。一般に、単離ポリペプチドの特性の変化を誘導すると予想され得る機能的に重要な領域における置換は、(i)極性残基、例えばセリン又はスレオニンが疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン又はアラニンに対して(又はこれにより)置換される;(ii)システイン残基が任意の他の残基に対して(又はこれにより)置換される;(iii)陽性側鎖を有する残基、例えばリジン、アルギニン又はヒスチジンが、陰性側鎖を有する残基、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸に対して(又はこれにより)置換される;又は(iv)巨大な側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、このような側鎖を有するもの、例えばグリシンに対して(又はこれにより)置換されるものである。前述の非保存的置換の1つがタンパク質の機能特性を変化させ得る可能性は、タンパク質の機能的に重要な領域に対する置換の位置にも相関する。したがって、一部の非保存的置換は、生物学的特性に対する効果をほとんど又は全く有しない。
【0734】
[0709]保存される:本明細書で使用する場合、「保存される」という用語は、それぞれ比較される2つ以上の配列の同じ位置で改変が起こらないポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列のヌクレオチド又はアミノ酸残基を指す。比較的保存されるヌクレオチド又はアミノ酸は、配列の他の場所で出現するヌクレオチド又はアミノ酸よりも多くの関連配列間で保存されるものである。
【0735】
[0710]いくつかの実施形態において、2つ以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存される」と言われる。いくつかの実施形態において、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一又は少なくとも95%同一である場合、「高度に保存される」と言われる。いくつかの実施形態において、2つ以上の配列は、それらが互いに約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%、約98%又は約99%同一である場合、「高度に保存される」と言われる。いくつかの実施形態において、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも30%同一、少なくとも40%同一、少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一又は少なくとも95%同一である場合、「保存される」と言われる。いくつかの実施形態において、2つ以上の配列は、それらが互いに約30%同一、約40%同一、約50%同一、約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一又は約99%同一である場合、「保存される」と言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全長に適用され得るか、又は部分、領域若しくはその特徴に適用され得る。
【0736】
[0711]制御放出:本明細書で使用する場合、「制御放出」という用語は、治療成果をもたらすための特定の放出パターンに従う医薬組成物又は化合物放出プロファイルを指す。
【0737】
[0712]環状又は環状化:本明細書で使用する場合、「環状」という用語は、連続的ループの存在を指す。環状分子は、環状である必要はなく、サブユニットの非破壊鎖を形成するために連結されるのみである。本発明の操作されたRNA又はmRNAなどの環状分子は、単一の単位若しくはマルチマーであり得るか、又は複合体若しくはより高次の構造の1つ以上の構成要素を含み得る。
【0738】
[0713]細胞毒性:本明細書で使用する場合、「細胞毒性」は、細胞(例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生生物、プリオン又はそれらの組合せにおいて、死滅させるか又は傷害性、毒性若しくは致命的な影響を生じさせることを指す。
【0739】
[0714]送達する:本明細書で使用する場合、用語「送達する」とは、ある実体をある目的地に提供することを意味する。例えば、ポリヌクレオチドを対象に送達することは、ポリヌクレオチドを含むナノ粒子組成物を対象に皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することを含み得る。哺乳動物又は哺乳動物細胞へのナノ粒子組成物の投与は、1つ以上の細胞をナノ粒子組成物と接触させること含み得る。
【0740】
[0715]送達剤:本明細書で使用する場合、「送達剤」は、少なくとも部分的に、インビボ、インビトロ又はエクスビボでの標的とする細胞へのポリヌクレオチドの送達を促進するいずれかの物質を指す。
【0741】
[0716]不安定化:本明細書で使用する場合、「不安定」、「不安定化」又は「不安定化する領域」という用語は、同じ領域又は分子の出発野生型又は天然形態よりも安定性が低い領域又は分子を意味する。
【0742】
[0717]ジアステレオマー:本明細書で使用する場合、「ジアステレオマー」という用語は、互いに鏡像ではなく、且つ互いに重ねることができない立体異性体を意味する。
【0743】
[0718]消化:本明細書で使用する場合、「消化」という用語は、より小さい断片又は構成要素に分解することを意味する。ポリペプチド又はタンパク質を指す場合、消化の結果、ペプチドが生成される。
【0744】
[0719]遠位:本明細書で使用する場合、「遠位」という用語は、中心から離れた位置にあるか、又は目的の点又は領域から離れた位置にあることを意味する。
【0745】
[0720]ドメイン:本明細書で使用する場合、ポリペプチドに言及するとき、「ドメイン」という用語は、1つ以上の同定可能な構造又は機能的特徴若しくは特性(例えば、結合能、タンパク質-タンパク質相互作用の部位として働く)を有するポリペプチドのモチーフを指す。
【0746】
[0721]投与レジメン:本明細書で使用する場合、「投与レジメン」又は「投与のレジメン」は、投与のスケジュール又は医師が決定した治療、予防又は緩和ケアのレジメンである。
【0747】
[0722]有効量:本明細書で使用する場合、薬剤の「有効量」という用語は、有益な又は所望の結果、例えば臨床結果などをもたらすのに十分な量であり、このように、「有効量」は、それが適用される文脈に依存する。例えば、タンパク質欠乏(例えば、創傷治癒ポリペプチド欠乏)を治療する薬剤を皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)又は局所的に投与することとの関連で、薬剤の有効量は、例えば、薬剤の投与を伴わずに観察される症状の重症度と比較した場合、創傷治癒ポリペプチド欠乏に関連する症状を緩和、軽減、排除又は予防するのに十分な創傷治癒ポリペプチドを発現するmRNAの量である。「有効量」という用語は、「有効用量」、「治療有効量」又は「治療有効用量」と互換的に使用され得る。
【0748】
[0723]エナンチオマー:本明細書で使用する場合、「エナンチオマー」という用語は、少なくとも80%(すなわち少なくとも90%が一方のエナンチオマーであり、最大で10%が他方のエナンチオマーである)、少なくとも90%又は少なくとも98%の光学純度又はエナンチオマー過剰率(当技術分野で標準的な方法により決定した場合)を有する本発明の化合物の各個別の光学的に活性のある形態を意味する。
【0749】
[0724]封入する:本明細書で使用する場合、「封入する」という用語は、封じ込めるか、取り囲むか又は内包することを意味する。
【0750】
[0725]封入効率:本明細書で使用する場合、「封入効率」は、ナノ粒子組成物の調製において使用されるポリヌクレオチドの最初の総量と比較した、ナノ粒子組成物の一部となるポリヌクレオチドの量を指す。例えば、最初に組成物に提供される全部で100mgのポリヌクレオチドから97mgのポリヌクレオチドがナノ粒子組成物中に封入される場合、封入効率は、97%として与えられ得る。本明細書で使用する場合、「封入」は、完全、実質的又は部分的な封じ込め、閉じ込め、囲い込み又は内包を指し得る。
【0751】
[0726]コードされるタンパク質切断シグナル:本明細書で使用する場合、「コードされるタンパク質切断シグナル」は、タンパク質切断シグナルをコードするヌクレオチド配列を指す。
【0752】
[0727]操作される:本明細書で使用する場合、本発明の実施形態は、それらが、構造的であれ又は化学的であれ、出発点、野生型又は天然分子から変動する特徴又は特性を有するように設計される場合、「操作されている」。
【0753】
[0728]送達促進:本明細書で使用する場合、「送達促進」という用語は、目的の標的組織への対照ナノ粒子(例えば、MC3、KC2又はDLinDMA)によるポリヌクレオチドの送達レベルと比較した場合の、目的の標的組織(例えば、哺乳動物肝臓)へのナノ粒子による、より多くの(例えば、少なくとも1.5倍多い、少なくとも2倍多い、少なくとも3倍多い、少なくとも4倍多い、少なくとも5倍多い、少なくとも6倍多い、少なくとも7倍多い、少なくとも8倍多い、少なくとも9倍多い、少なくとも10倍多い)ポリヌクレオチドの送達を意味する。特定の組織へのナノ粒子の送達のレベルは、ある組織の重量に対するその組織において産生されるタンパク質の量を比較するか、ある組織の重量に対するその組織中のポリヌクレオチドの量を比較するか、ある組織中の総タンパク質の量に対するその組織中で産生されるタンパク質の量を比較するか、又はある組織中の総ポリヌクレオチドの量に対するその組織中のポリヌクレオチドの量を比較することによって測定され得る。標的組織へのナノ粒子の送達促進は、治療される対象において決定されることを必要とせず、動物モデル(例えば、ラットモデル)などの代理物において決定され得ることが理解されるであろう。
【0754】
[0729]エキソソーム:本明細書で使用する場合、「エキソソーム」は、哺乳動物細胞により分泌される小胞又はRNA分解に関与する複合体である。
【0755】
[0730]発現:本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象の1つ以上を指す:(1)(例えば、転写による)DNA配列からのmRNA鋳型の産生;(2)(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成及び/又は3’末端プロセシングによる)mRNA転写物のプロセシング;(3)ポリペプチド又はタンパク質へのmRNAの翻訳;並びに(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0756】
[0731]エクスビボ:本明細書で使用する場合、「エクスビボ」という用語は、生物体(例えば、動物、植物若しくは微生物又はそれらの細胞若しくは組織)の外側で起こる事象を指す。エクスビボ事象は、天然(例えば、インビボ)環境からの変化を最小限に抑えた環境において行われ得る。
【0757】
[0732]特徴:本明細書で使用する場合、「特徴」は、特徴、特性又は特有の要素を指す。ポリペプチドに対して言及する場合、「特徴」は、分子の、別個のアミノ酸配列に基づく構成要素として定義される。本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの特徴は、表面の所見、局所的な立体構造の形状、折り畳み、ループ、半ループ、ドメイン、半ドメイン、部位、末端又はそれらの任意の組合せを含む。
【0758】
[0733]製剤:本明細書で使用する場合、「製剤」は、少なくとも1つのポリヌクレオチド並びに担体、賦形剤及び送達剤の1つ以上を含む。
【0759】
[0734]断片:「断片」は、本明細書で使用する場合、部分を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離される全長タンパク質を消化することにより得られるポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、断片は、N末端及び/若しくはC末端並びに/又は内部部分配列が欠失している、全長タンパク質(例えば、創傷治癒ポリペプチド)の部分配列である。本発明のいくつかの好ましい態様において、本発明のタンパク質の断片は、機能的断片である。
【0760】
[0735]機能的:本明細書で使用する場合、「機能的」生体分子は、それが、特徴とする特性及び/又は活性を呈する形態の生体分子である。したがって、本発明のポリヌクレオチドの機能的断片は、創傷治癒ポリペプチドの機能的断片を発現可能なポリヌクレオチドである。本明細書で使用する場合、創傷治癒ポリペプチドの機能的断片は、野生型創傷治癒ポリペプチド(すなわちその天然に存在するアイソフォームのいずれかの断片)又はその変異体若しくはバリアントの断片を指し、ここで、断片は、対応する全長タンパク質の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の生物学的活性を保持する。
【0761】
[0736]ヘルパー脂質:本明細書で使用する場合、「ヘルパー脂質」という用語は、脂質部分(脂質層、例えば、脂質二重層への挿入のため)及び極性部分(脂質層表面での生理的溶液との相互作用のため)を含む化合物又は分子を指す。一般的には、ヘルパー脂質は、リン脂質である。ヘルパー脂質の機能は、アミノ脂質を「補完」し、二重層の膜融合性を向上させること及び/又は例えば細胞へ送達される核酸のエンドソーム脱出促進を補助することである。ヘルパー脂質は、LNPの表面に対する重要な構造要素であるとも考えられる。
【0762】
[0737]相同性:本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。一般に、「相同性」という用語は、2つの分子間の進化的な関連を暗示する。したがって、相同である2つの分子は、共通の進化的祖先を有するであろう。本発明との関連で、相同性という用語は、同一性及び類似性の両方を包含する。
【0763】
[0738]いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、分子中のモノマーの少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が同一である(厳密に同じモノマー)か、又は類似している(保存的置換)場合、互いに対して「相同」であるとみなされる。「相同」という用語は、必ず少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列)間の比較を指す。
【0764】
[0739]同一性:本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子間の全体的なモノマー保存を指す。2つのポリヌクレオチド配列のパーセント同一性の計算は、例えば、最適比較のためにこの2つの配列に対してアライメントを行うことによって行われ得る(例えば、ギャップは、最適アライメントのために第1及び第2の核酸配列の一方又は両方に導入され得、比較のために、非同一配列は、無視され得る)。特定の実施形態において、比較のためにアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%である。次に、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドにより占有される場合、その分子は、その位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、この2つの配列の最適アライメントのために導入する必要があるギャップ数及び各ギャップの長さを考慮した、これらの配列により共有される同一である位置の数の関数である。2つの配列間での配列比較及びパーセント同一性の決定は、数理的アルゴリズムを使用して達成され得る。DNA及びRNAを比較する場合、チミン(T)及びウラシル(U)は、均等とみなされ得る。
【0765】
[0740]好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給元から、且つタンパク質及びヌクレオチド配列の両方のアライメントのために利用可能である。パーセント配列同一性を決定するための1つの好適なプログラムは、bl2seqであり、プログラムのBLAST suiteの一部は、米国連邦政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から利用可能である。Bl2seqは、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間で比較を行う。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用される一方、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。他の好適なプログラムは、例えば、Needle、Stretcher、Water又はMatcherであり、これらは、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であり、European Bioinformatics Institute(EBI)(www.ebi.ac.uk/Tools/psa)からも利用可能である。
【0766】
[0741]配列アライメントは、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X又はClustal Omega)、MUSCLEなど、当技術分野で知られる方法を使用して実行され得る。
【0767】
[0742]ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列とアライメントを行う単一ポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それら自体のパーセント配列同一性をそれぞれ有し得る。パーセント配列同一性値が小数点以下第1位に丸められることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13及び80.14は、80.1に丸められる一方、80.15、80.16、80.17、80.18及び80.19は、80.2に丸められる。長さの値が常に整数であることも留意されたい。
【0768】
[0743]特定の態様において、第2のアミノ酸配列(又は核酸配列)に対する第1のアミノ酸配列(又は核酸配列)のパーセンテージ同一性「%ID」は、%ID=100×(Y/Z)(式中、Yは、第1及び第2の配列のアライメントにおいて同一であるマッチとしてスコア化されるアミノ酸残基(又は核酸塩基)の数(目視検査又は特定の配列アライメントプログラムによりアライメントを行う場合)であり、Zは、第2の配列中の残基の総数である)として計算される。第1の配列の長さが第2の配列よりも長い場合、第2の配列に対する第1の配列のパーセント同一性は、第1の配列に対する第2の配列のパーセント同一性よりも高くなる。
【0769】
[0744]当業者は、パーセント配列同一性の計算のための配列アラインメントの生成が、一次配列データにより排他的に実行される二元配列-配列比較に限定されないことを理解するであろう。また、配列アラインメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能性データ(例えば、変異の位置)又は系統的データなどの異種供給源からのデータと統合することによって生成することができることも理解されるであろう。複数配列アラインメントを生成するために異種のデータを統合する好適なプログラムは、T-Coffeeであり、www.tcoffee.orgで利用可能であり、代わりに例えばEBIから利用可能である。また、パーセント配列同一性を計算するために使用される最終的なアラインメントは自動的に又は手動でキュレートされ得ることも理解されるであろう。
【0770】
[0745]免疫反応:「免疫反応」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食作用性細胞、顆粒球及び侵入病原体のヒト身体、病原体に感染した細胞又は組織、癌細胞又は自己免疫若しくは病的炎症の場合には正常なヒト細胞若しくは組織への選択的な損傷、その破壊又はそれからの排出を生じさせる、上記の細胞又は肝臓により産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用を指す。一部の場合、脂質構成要素及び封入された治療薬を含むナノ粒子の投与は、免疫反応を誘発する場合があり、これは、(i)封入された治療薬(例えば、mRNA)、(ii)このような封入された治療薬の発現産物(例えば、mRNAによりコードされるポリペプチド)、(iii)ナノ粒子の脂質構成要素、又は(iv)それらの組合せにより引き起こされ得る。
【0771】
[0746]炎症反応:「炎症反応」は、特異的及び非特異的な防御系を含む免疫反応を指す。特異的な防御系反応は、抗原に対する特異的な免疫系反応である。特異的な防御系反応の例としては、抗体反応が挙げられる。非特異的な防御系反応は、一般に免疫記憶が不可能である白血球、例えば、マクロファージ、好酸球及び好中球によって媒介される炎症反応である。いくつかの態様において、免疫反応は、炎症性サイトカインの分泌を含み、その結果、炎症性サイトカインレベルが上昇する。
【0772】
[0747]炎症性サイトカイン:「炎症性サイトカイン」という用語は、炎症反応において上昇するサイトカインを指す。炎症性サイトカインの例としては、インターロイキン-6(IL-6)、GROαとしても知られるCXCL1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、インターフェロン-γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ誘導性タンパク質10(IP-10)又は顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が挙げられる。炎症性サイトカインという用語は、当技術分野で知られる炎症反応に関連する他のサイトカイン、例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(Il-13)、インターフェロンα(IFN-α)なども含む。
【0773】
[0748]インビトロ:本明細書で使用する場合、「インビトロ」という用語は、生物体(例えば、動物、植物又は微生物)内ではなく、人工環境において、例えば試験管又は反応容器中、細胞培養物中、ペトリ皿中などにおいて起こる事象を指す。
【0774】
[0749]インビボ:本明細書で使用する場合、「インビボ」という用語は、生物体(例えば、動物、植物若しくは微生物又はその細胞若しくは組織)内で起こる事象を指す。
【0775】
[0750]挿入及び欠失バリアント:「挿入バリアント」は、ポリペプチドに対して言及する場合、天然又は出発配列中の特定の位置のアミノ酸の直接隣に1つ以上のアミノ酸が挿入されるものである。アミノ酸に対して「直接隣」とは、アミノ酸のアルファ-カルボキシ又はアルファ-アミノ官能基のいずれかに連結されることを意味する。「欠失バリアント」は、ポリペプチドに対して言及する場合、天然又は出発アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が除去されるものである。通常、欠失バリアントは、分子の特定の領域で1つ以上のアミノ酸欠失を有することになる。
【0776】
[0751]インタクト:本明細書で使用する場合、ポリペプチドとの関連で、「インタクト」という用語は、野生型タンパク質に対応するアミノ酸を保持することを意味し、例えば、野生型アミノ酸が変異していないか又は置換されていない。逆に、核酸との関連で、「インタクト」という用語は、野生型核酸に対応する核酸塩基を保持することを意味し、例えば、野生型核酸塩基が変異していないか又は置換されていない。
【0777】
[0752]イオン化可能アミノ脂質:「イオン化可能アミノ脂質」という用語は、1、2、3つ又はそれを超える脂肪酸又は脂肪アルキル鎖及びpH滴定可能なアミノ頭部基(例えば、アルキルアミノ又はジアルキルアミノ頭部基)を有する脂質を含む。イオン化可能アミノ脂質は、一般的には、アミノ頭部基のpKaを下回るpHではプロトン化されており(すなわち正荷電)、pKaを上回るpHでは実質的に荷電していない。このようなイオン化可能アミノ脂質としては、DLin-MC3-DMA(MC3)及び(13Z,165Z)-N,N-ジメチル-3-ノニドコサ-13-16-ジエン-1-アミン(L608)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0778】
[0753]単離される:本明細書で使用する場合、「単離される」という用語は、(天然であれ又は実験の設定であれ)連結された構成要素の少なくとも一部から分離されている物質又は実体を指す。単離された物質(例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチド)は、それらが単離された物質に対して様々なレベルの純度を有し得る。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に連結された他の構成要素の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又はそれを超える割合から分離され得る。いくつかの実施形態において、単離された物質は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%超の純度である。本明細書で使用する場合、物質は、それが実質的に他の構成要素を含まない場合、「純粋」である。
【0779】
[0754]実質的に単離される:「実質的に単離される」は、化合物が、それが形成されたか又は検出された環境から実質的に分離されることを意味する。部分的分離は、例えば、本開示の化合物に富む組成物を含み得る。実質的な分離は、本開示の化合物又はその塩の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%又は少なくとも約99重量%を含有する組成物を含み得る。
【0780】
[0755]「単離」される本明細書で開示されるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞又は任意の組成物は、天然では見られない形態であるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞又は組成物である。単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド又は組成物は、もはやそれらが天然で見られる形態でない程度まで精製されているものを含む。いくつかの態様において、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド又は組成物は、実質的に純粋である。
【0781】
[0756]異性体:本明細書で使用する場合、「異性体」という用語は、本発明のいずれかの化合物のあらゆる互変異性体、立体異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを意味する。本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心及び/又は二重結合を有し得、したがって立体異性体、例えば二重結合異性体(すなわち幾何E/Z異性体)又はジアステレオマー(例えば、エナンチオマー(すなわち(+)又は(-))又はシス/トランス異性体)として存在することが認識される。本発明によれば、本明細書で示される化学構造及びしたがって本発明の化合物は、対応する立体異性体の全て、すなわちステレオメリックに純粋な形態の両方(例えば、幾何的に純粋であるか、エナンチオマー的に純粋であるか又はジアステレオマー的に純粋である)並びにエナンチオマー及び立体異性体混合物、例えばラセミ体の両方を包含する。本発明の化合物のエナンチオマー及び立体異性体混合物は、一般的に、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高性能液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体として化合物を結晶化すること又はキラル溶媒中で化合物を結晶化することなどのよく知られる方法によりそれらの構成要素のエナンチオマー又は立体異性体に分割され得る。エナンチオマー及び立体異性体は、よく知られる非対称合成方法により、ステレオメリックに又はエナンチオマー的に純粋な中間体、試薬及び触媒からも得ることができる。
【0782】
[0757]リンカー:本明細書で使用する場合、「リンカー」は、原子、例えば10~1,000の原子の基を指し、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル及びイミンなどであるが、これらに限定されない原子又は基から構成され得る。リンカーは、第1の末端の核酸塩基又は糖部分の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドに、且つ第2の末端でペイロード、例えば検出可能な薬剤又は治療薬に連結され得る。リンカーは、核酸配列への組込みに支障をきたさないような十分な長さのものであり得る。リンカーは、任意の有用な目的のために、本明細書に記載されるとおり、例えば、ポリヌクレオチドマルチマー(例えば、2つ以上のキメラポリヌクレオチド分子又はIVTポリヌクレオチドの連結を通じて)又はポリヌクレオチド複合物を形成し、且つペイロードを投与するために使用され得る。リンカーに組み込まれ得る化学基の例としては、本明細書に記載されるとおり、それぞれが任意選択により置換され得るアルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール又はヘテロシクリルが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーの例としては、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレン又はプロピレングリコール単量体の単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール又はテトラエチレングリコール)及びデキストランポリマー及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、還元剤又は光分解を使用して切断され得るリンカー内の切断可能な部分、例えば、ジスルフィド結合(-S-S-)又はアゾ結合(-N=N-)が挙げられるが、これらに限定されない。選択的に切断可能な結合の非限定的な例としては、例えばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又は他の還元剤及び/又は光分解の使用により切断され得るアミド結合並びに例えば酸性又は塩基性加水分解により切断され得るエステル結合が挙げられる。
【0783】
[0758]投与方法:本明細書で使用する場合、「投与方法」は、皮内(例えば、マイクロニードルを使用して)、局所、皮下又は組成物を対象に送達する他の方法を含み得る。投与方法は、特異的な領域又は身体の系への標的送達の(例えば、特異的に送達する)ために選択され得る。
【0784】
[0759]修飾される:本明細書で使用する場合、「修飾される」は、本発明の分子の状態又は構造の変化を指す。化学的、構造的及び機能的を含む多くの方法で分子が修飾され得る。いくつかの実施形態において、本発明のmRNA分子は、例えば、それが天然リボヌクレオチドA、U、G及びCに関連するため、非天然ヌクレオシド及び/又はヌクレオチドの導入により修飾される。キャップ構造などの非標準のヌクレオチドは、それらがA、C、G、Uリボヌクレオチドの化学構造と異なるにもかかわらず「修飾される」とみなされない。
【0785】
[0760]粘液:本明細書で使用する場合、「粘液」は、粘性があり、ムチン糖タンパク質を含む天然物質を指す。
【0786】
[0761]ナノ粒子組成物:本明細書で使用する場合、「ナノ粒子組成物」は、1つ以上の脂質を含む組成物である。ナノ粒子組成物は、一般的にはマイクロメートル又はそれより小さい桁のサイズであり、脂質二重層を含み得る。ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム(例えば、脂質小胞)及びリポプレックスを包含する。例えば、ナノ粒子組成物は、直径が500nm以下の脂質二重層を有するリポソームであり得る。
【0787】
[0762]天然に存在する:本明細書で使用する場合、「天然に存在する」は、人工的な補助を伴わずに天然に存在することを意味する。
【0788】
[0763]非ヒト脊椎動物:本明細書で使用する場合、「非ヒト脊椎動物」は、野生及び飼育される種を含む、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)を除く全ての脊椎動物を含む。非ヒト脊椎動物の例としては、哺乳動物、例えば、アルパカ、バンテン、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、イヌ、ロバ、ガヤル、ヤギ、モルモット、ウマ、ラマ、ラバ、ブタ、ウサギ、トナカイ、ヒツジ、水牛及びヤクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0789】
[0764]核酸配列:「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド配列」という用語は、互換的に使用され、連続的な核酸配列を指す。この配列は、一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAのいずれか、例えば、mRNAであり得る。
【0790】
[0765]「核酸」という用語は、その最も広い意味において、ヌクレオチドのポリマーを含むあらゆる化合物及び/又は物質を含む。これらのポリマーは、ポリヌクレオチドと呼ばれることが多い。本発明の代表的な核酸又はポリヌクレオチドとしては、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(β-D-リボ配置を有するLNA、α-L-リボ配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能基を有する2’-アミノ-LNA及び2’-アミノ官能基を有する2’-アミノ-α-LNAを含むLNA)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)若しくはハイブリッド又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0791】
[0766]「コードするヌクレオチド配列」という句は、ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA又はDNA分子)コード配列を指す。コード配列は、核酸が投与される個体又は哺乳動物の細胞において発現を指示可能なプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに作動可能に連結される開始及び終結シグナルをさらに含み得る。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含み得る。
【0792】
[0767]オフターゲット:本明細書で使用する場合、「オフターゲット」は、任意の1つ以上の標的、遺伝子又は細胞転写物におけるあらゆる意図しない影響を指す。
【0793】
[0768]オープンリーディングフレーム:本明細書で使用する場合、「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、所与の読み枠における終止コドンを含有しない配列を指す。
【0794】
[0769]作動可能に連結される:本明細書で使用する場合、「作動可能に連結される」という句は、2つ以上の分子、コンストラクト、転写物、実体、部分などの間の機能的連結を指す。
【0795】
[0770]任意選択により置換される:本明細書で「任意選択により置換されるX」(例えば、任意選択により置換されるアルキル)の形態の句は、「X(式中、Xは、任意選択により置換される」(例えば、「アルキル(式中、このアルキルは、任意選択により置換される」)と均等であるものとする。特徴「X」(例えば、アルキル)自体が任意選択であることを意味するものではない。
【0796】
[0771]部分:本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドの「部分」又は「領域」は、ポリヌクレオチドの全長未満のポリヌクレオチドのいずれかの部分として定義される。
【0797】
[0772]患者:本明細書で使用する場合、「患者」は、治療を求め得るか又は治療を必要とする、治療を要する、治療を受けている、治療を受けることになる対象又は特定の疾患若しくは状態に対して熟練した専門家によるケア下にある対象を指す。いくつかの実施形態において、治療は、急性疾患を発症するリスクを予防するか又は低減するために必要であるか、要求されるか又は受けられ、すなわち、それは、予防的治療である。
【0798】
[0773]薬学的に許容される:「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、信頼できる医学的判断の範囲内において、妥当なリスク/利益比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指すために用いられる。
【0799】
[0774]薬学的に許容される賦形剤:「薬学的に許容される賦形剤」という句は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載される化合物以外(例えば、活性化合物を懸濁可能又は溶解可能なビヒクル)であり、患者において実質的に無毒性及び非炎症性である特性を有する任意の成分を指す。賦形剤としては、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(色)、皮膚軟化剤、乳化剤、注入剤(希釈剤)、フィルム形成剤又はコーティング、香味剤、香料、流動促進剤(流動促進物質)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁化又は分散剤、甘味料及び水和の水が挙げられ得る。代表的な賦形剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC及びキシリトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0800】
[0775]薬学的に許容されるその塩:本開示は、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩も含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の誘導体を指し、ここで、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離塩基性基を適切な有機酸と反応させることによって)親化合物が修飾される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アルパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンホレート、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトネート、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、硫酸ラウリル、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデンカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、並びに無毒性アンモニウム、四級アンモニウム及びアミンカチオン、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むが、これらに限定されないものが挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒性無機又は有機酸から形成される親化合物の従来の無毒性塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、水中若しくは有機溶媒中又はその2つの混合物中で化学量論的な量の適切な塩基又は酸とこれらの化合物の遊離酸又は塩基形態を反応させることによって調製され得;一般にエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルなどの非水性媒体が使用される。好適な塩のリストは、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418,Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Wiley-VCH,2008,及びBerge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66,1-19(1977)において見出される。
【0801】
[0776]薬学的に許容される溶媒和物:「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、本明細書で使用する場合、適切な溶媒の分子が結晶格子中に組み込まれる本発明の化合物を意味する。適切な溶媒は、投与される投与量で生理的に許容される。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水又はその混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶化又は沈殿によって調製され得る。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一、二及び三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジルなどである。水が溶媒である場合、溶媒和物は、「水和物」と呼ばれる。
【0802】
[0777]薬物動態:本明細書で使用する場合、「薬物動態」は、分子又は化合物の任意の1つ以上の特性を指すが、それは、これが生きている生物に投与される物質の運命の決定に関連するからである。薬物動態は、吸収の程度及び吸収の速度、分布、代謝並びに排泄を含むいくつかの領域に分けられる。これは、ADMEと一般的に呼ばれる:(A)吸収は、物質が血液循環に入るプロセスであり、(D)分布は、体液及び身体の組織全体にわたる物質の分散又は散在であり、(M)代謝(又は生体内変換)は、娘代謝産物への親化合物の不可逆的な変換であり、(E)排泄(又は排除)は、身体からの物質の排出を指す。稀な場合において、いくつかの薬物は、不可逆的に身体組織に蓄積する。
【0803】
[0778]物理化学的:本明細書で使用する場合、「物理化学的」は、物理学的及び/又は化学的な特性を意味するか又はこれらに関連する。
【0804】
[0779]ポリヌクレオチド:「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用する場合、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その類似体又はこれらの混合物を含む、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマーを指す。この用語は、分子の一次構造を指す。したがって、この用語は、三本、二本及び一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)並びに三本、二本及び一本鎖リボ核酸(「RNA」)を含む。これは、例えば、アルキル化により、且つ/又はキャッピングにより修飾された及び未修飾形態のポリヌクレオチドも含む。より具体的には、「ポリヌクレオチド」という用語は、(2-デオキシ-D-リボースを含有する)ポリデオキシリボヌクレオチド、(D-リボースを含有する)ポリリボヌクレオチド、スプライシングされているか又はスプライシングされていないかにかかわらず、例えば、tRNA、rRNA、hRNA、siRNA及びmRNAを含むもの、プリン又はピリミジン塩基のN-又はC-グリコシドであるポリヌクレオチドのあらゆる他のタイプ及び非ヌクレオチド(normucleotidic)骨格、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルホリノポリマーを含有する他のポリマー及び他の合成配列特異的な核酸ポリマーを含むが、ただし、ポリマーは、DNA及びRNAにおいて見出されるものなど、塩基対形成及び塩基スタッキングを可能にする配置において核酸塩基を含有するものとする。特定の態様において、ポリヌクレオチドは、mRNAを含む。他の態様において、mRNAは、合成mRNAである。いくつかの態様において、合成mRNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基を含む。いくつかの態様において、特定のクラスの全ての核酸塩基は、非天然核酸塩基で置き換えられている(例えば、本明細書で開示されるポリヌクレオチド中の全ウリジンが非天然核酸塩基、例えば、5-メトキシウリジンで置き換えられ得る)。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド(例えば、合成RNA又は合成DNA)は、合成DNAの場合には天然核酸塩基、すなわちA(アデノシン)、G(グアノシン)、C(シチジン)及びT(チミジン)のみを含むか、又は合成RNAの場合にはA、C、G及びU(ウリジン)を含む。
【0805】
[0780]当業者は、本明細書で開示されるコドンマップ中のT塩基は、DNA中に存在する一方、T塩基は、対応するRNAにおいてU塩基により置き換えられることを理解するであろう。例えば、例としてベクター又はインビトロ翻訳(IVT)鋳型などのDNA形態の本明細書で開示されるコドン-ヌクレオチド配列は、その対応する転写されたmRNAにおいてU塩基として転写されるそのT塩基を有する。この点において、コドン最適化DNA配列(Tを含む)及びそれらの対応するmRNA配列(Uを含む)の両方は、本発明のコドン最適化ヌクレオチド配列とみなされる。当業者は、均等なコドンマップが1つ以上の塩基を非天然塩基で置き換えることによって作製され得ることも理解するであろう。したがって、例えば、TTCコドン(DNAマップ)は、UUCコドン(RNAマップ)に対応し、これは、同じくΨΨCコドン(Uがシュードウリジンで置き換えられているRNAマップ)に対応する。
【0806】
[0781]標準的なA-T及びG-C塩基対は、水素結合の形成を可能にする条件下において、チミジンのN3-H及びC4-オキシと、アデノシンのそれぞれN1及びC6-NH2との間及びシチジンのC2-オキシ、N3及びC4-NH2と、グアノシンのそれぞれC2-NH2、N’-H及びC6-オキシとの間で生じる。したがって、例えば、グアノシン(2-アミノ-6-オキシ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)は、イソグアノシン(2-オキシ-6-アミノ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)を形成するために修飾され得る。このような修飾の結果、シトシンと標準的な塩基対をもはや有効に形成しないヌクレオシド塩基が生じる。しかし、イソシトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-アミノ-4-オキシ-ピリミジン-)を形成するためのシトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-オキシ-4-アミノ-ピリミジン)の修飾の結果、グアノシンと効果的に塩基対形成しないが、イソグアノシンと塩基対を形成することになる修飾ヌクレオチドが生じる(Collinsらに対する米国特許第5,681,702号明細書)。イソシトシンは、Sigma Chemical Co.(St.Louis、Mo.)から入手可能であり;イソシチジンは、Switzer et al.(1993)Biochemistry 32:10489-10496及びそこで引用される参考文献によって記載される方法によって調製され得;2’-デオキシ-5-イソシチジンは、Tor et al.,1993,J.Am.Chem.Soc.115:4461-4467及びそこで引用される参考文献の方法によって記載され得;且つイソグアニンヌクレオチドは、Switzer et al.,1993、上掲及びMantsch et al.,1993,Biochem.14:5593-5601によって記載される方法を使用するか、又はCollinsらに対する米国特許第5,780,610号明細書に記載される方法によって調製され得る。他の非天然塩基対は、2,6-ジアミノピリミジン及びその補体(1-メチルピラゾロ-[4,3]ピリミジン-5,7-(4H,6H)-ジオンの合成に対するPiccirilli et al.,1990,Nature 343:33-37に記載される方法によって合成され得る。固有の塩基対を形成する他のこのような修飾ヌクレオチド単位が知られており、Leach et al.(1992)J.Am.Chem.Soc.114:3675-3683及びSwitzer et al.,上掲において記載されるものなどである。
【0807】
[0782]ポリペプチド:用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すように本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含み得る。この用語は、天然に又は介在;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識構成要素とのコンジュゲーションなどにより修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。また、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸及びクレアチンなどの非天然アミノ酸を含む)並びに当技術分野で知られる他の修飾を含有するポリペプチドもこの定義に含まれる。
【0808】
[0783]この用語は、本明細書で使用する場合、あらゆるサイズ、構造又は機能のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドを指す。ポリペプチドとしては、コードされるポリヌクレオチド産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片及び他の均等物、前述のもののバリアント及び類似体が挙げられる。ポリペプチドはモノマーであり得るか、又は二量体、三量体若しくは四量体などの多分子複合体であり得る。これらは、一本鎖又は多鎖ポリペプチドも含み得る。最も一般的には、多連鎖ポリペプチド中に、ジスルフィド結合が見られる。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用され得る。いくつかの実施形態において、「ペプチド」は、50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50アミノ酸長であり得る。
【0809】
[0784]ポリペプチドバリアント:本明細書で使用する場合、「ポリペプチドバリアント」という用語は、アミノ酸配列が天然又は参照配列と異なる分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、天然又は参照配列と比較した場合、アミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失及び/又は挿入を保持し得る。通常、バリアントは、天然又は参照配列に対して、少なくとも約50%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約99%の同一性を保持することになる。いくつかの実施形態において、これらは、天然又は参照配列と少なくとも約80%又は少なくとも約90%同一である。
【0810】
[0785]単位薬物当たりのポリペプチド(PUD):本明細書で使用する場合、PUD又は単位薬物当たりの生成物は、体液又は組織中で測定される場合、総1日用量、通常、生成物(ポリペプチドなど)1mg、pg、kgの分割部分として定義され、通常、体液中での測定により除されるpmol/mL、mmol/mLなどの濃度で定義される。
【0811】
[0786]予防する:本明細書で使用する場合、「予防する」という用語は、感染、疾患、障害及び/若しくは状態の部分的若しくは完全な発症遅延;特定の感染、疾患、障害及び/若しくは状態の1つ以上の症状、特徴若しくは臨床症状の部分的若しくは完全な発症遅延;特定の感染、疾患、障害及び/若しくは状態の1つ以上の症状、特徴若しくは徴候の部分的若しくは完全な発症遅延;感染、特定の疾患、障害及び/若しくは状態からの部分的若しくは完全な進行遅延;並びに/又は感染、疾患、障害及び/若しくは状態に関連する病態発生リスクの低下を指す。
【0812】
[0787]増殖:本明細書で使用する場合、「増殖」という用語は、増えるか、拡大するか若しくは増加するか又は急速に増えるか、拡大するか若しくは増加することを引き起こすことを意味する。「増殖性」は、増殖能を有することを意味する。「抗増殖性」は、増殖特性を無効にするか又はこれに不適切な特性を有することを意味する。
【0813】
[0788]予防:本明細書で使用する場合、「予防」は、疾患の広がりを防ぐために使用される治療薬又は一連の行動を指す。
【0814】
[0789]予防法:本明細書で使用する場合、「予防法」は、健康を維持し、疾患の拡大を防ぐためにとられる手段を指す。「免疫予防法」は、疾患の拡大を防ぐために能動的又は受動的免疫を生じさせるための手段を指す。
【0815】
[0790]タンパク質切断部位:本明細書で使用する場合、「タンパク質切断部位」は、アミノ酸鎖の切断制御が化学的、酵素的又は光化学的手段によって達成され得る部位を指す。
【0816】
[0791]タンパク質切断シグナル:本明細書で使用する場合、「タンパク質切断シグナル」は、切断のためのポリペプチドに対する印を与えるか又はそれを標識する少なくとも1つのアミノ酸を指す。
【0817】
[0792]目的のタンパク質:本明細書で使用する場合、「目的のタンパク質」又は「所望のタンパク質」という用語は、本明細書で提供されるもの並びにその断片、変異体、バリアント及び改変物を含む。
【0818】
[0793]近位:本明細書で使用する場合、「近位」という用語は、中心又は目的の点若しくは領域のより近くに位置することを意味する。
【0819】
[0794]シュードウリジン;本明細書で使用する場合、シュードウリジン(ψ)は、ヌクレオシドウリジンのC-グリコシド異性体を指す。「シュードウリジン類似体」は、シュードウリジンのあらゆる修飾物、バリアント、アイソフォーム又は誘導体である。例えば、シュードウリジン類似体としては、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン、1-メチルシュードウリジン(mψ)(N1-メチル-シュードウリジンとしても知られる)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(mψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(mψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acpψ)及び2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0820】
[0795]精製:本明細書で使用する場合、「精製する」、「精製された」、「精製」は、実質的に純粋にするか、又は不要な構成要素、材料汚染、混合物若しくは不備を取り除くことを意味する。
【0821】
[0796]参照核酸配列:「参照核酸配列」又は「参照核酸」又は「参照ヌクレオチド配列」又は「参照配列」という用語は、配列最適化され得る出発核酸配列(例えば、RNA、例えば、mRNA配列)を指す。いくつかの実施形態において、参照核酸配列は、野生型核酸配列、その断片又はバリアントである。いくつかの実施形態において、参照核酸配列は、既に配列最適化された核酸配列である。
【0822】
[0797]塩:いくつかの態様において、本明細書で開示される送達のための医薬組成物は、それらの脂質構成物のいくつかの塩を含む。「塩」という用語は、いずれかのアニオン及びカチオン錯体を含む。アニオンの非限定的な例としては、無機及び有機アニオン、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シュウ酸(例えば、ヘミシュウ酸)、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、リン酸二水素、酸化物、炭酸、重炭酸、硝酸、亜硝酸、ニトリド、亜硫酸水素、スルフィド、亜硫酸、重硫酸、硫酸、チオ硫酸、硫酸水素、ホウ酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、グリコール酸、グルコン酸、リンゴ酸、マンデル酸、チグリン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、ポメタクリル酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、臭素酸、次亜臭素酸、ヨウ素酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、ヒ酸、亜ヒ酸、クロム酸、二クロム酸、シアン化物、シアン酸、チオシアン酸、水酸化物、過酸化物、過マンガン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0823】
[0798]試料:本明細書で使用する場合、「試料」又は「生体試料」という用語は、その組織、細胞又は構成要素部分(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血液、尿、膣液及び精液を含むが、これらに限定されない体液)のサブセットを指す。試料としては、生物全体又は例えば血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚の外部の部分、呼吸器、腸及び泌尿生殖器、涙、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、器官を含むが、これらに限定されない、その組織、細胞若しくは構成要素の部分のサブセット又はその一片若しくは一部から調製されるホモジネート、ライセート又は抽出物がさらに挙げられ得る。試料は、タンパク質又は核酸分子などの細胞構成要素を含有し得る普通ブイヨン又はゲルなどの培地をさらに指す。
【0824】
[0799]シグナル配列:本明細書で使用する場合、「シグナル配列」、「シグナルペプチド」及び「輸送ペプチド」という句は、互換的に使用され、ある種の細胞小器官、細胞区画へのタンパク質の輸送若しくは局在化又は細胞外輸送を指示し得る配列を指す。この用語は、シグナル配列ポリペプチド及びシグナル配列をコードする核酸配列の両方を包含する。したがって、核酸との関連で、シグナル配列への言及は、実際にシグナル配列ポリペプチドをコードする核酸配列を指す。
【0825】
[0800]シグナル伝達経路:「シグナル伝達経路」は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達に寄与する様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。本明細書で使用する場合、「細胞表面受容体」という句は、例えば、シグナル及び細胞の形質膜を横断するこのようなシグナルの伝達を受容可能な分子及び分子複合体を含む。
【0826】
[0801]類似性:本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)間及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関係性を指す。ポリマー分子の、ある別のものに対するパーセント類似性の計算は、パーセント類似性の計算が当技術分野で理解されるとおりの保存的置換を考慮することを除き、パーセント同一性の計算と同じように実施され得る。
【0827】
[0802]単回単位用量:本明細書で使用する場合、「単回単位用量」は、1回の投与/1つの時間/1つの経路/1つの接触点で投与される、すなわち単回投与事象である任意の治療薬の用量である。
【0828】
[0803]分割用量:本明細書で使用する場合、「分割用量」は、1回の単位用量又は総1日用量を2回以上の用量に分けることである。
【0829】
[0804]特異的な送達:本明細書で使用する場合、「特異的な送達」、「特異的に送達」又は「特異的に送達する」という用語は、オフターゲット組織(例えば、哺乳動物脾臓)と比較した場合の、目的の標的組織(例えば、哺乳動物肝臓)へのナノ粒子による、より多くの(例えば、少なくとも1.5倍多い、少なくとも2倍多い、少なくとも3倍多い、少なくとも4倍多い、少なくとも5倍多い、少なくとも6倍多い、少なくとも7倍多い、少なくとも8倍多い、少なくとも9倍多い、少なくとも10倍多い)ポリヌクレオチドの送達を意味する。特定の組織へのナノ粒子の送達のレベルは、ある組織の重量に対するその組織において産生されるタンパク質の量を比較するか、ある組織の重量に対するその組織中のポリヌクレオチドの量を比較するか、ある組織中の総タンパク質の量に対するその組織中で産生されるタンパク質の量を比較するか、又はある組織中の総ポリヌクレオチドの量に対するその組織中のポリヌクレオチドの量を比較することによって測定され得る。例えば、腎血管標的化のために、ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドの全身投与後に肝臓又は脾臓に送達されるものと比較して組織1g当たり1.5、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍又は20倍多いポリヌクレオチドが腎臓に送達されるとき、肝臓及び脾臓と比較して哺乳動物腎臓に特異的に提供される。ナノ粒子が標的組織に特異的に送達する能力は、治療されている対象において決定される必要はなく、動物モデル(例えば、ラットモデル)などの代理物において決定され得ることが理解されるであろう。
【0830】
[0805]安定な:本明細書で使用する場合、「安定な」は、反応混合物から且つ有効な治療薬に製剤化可能ないくつかの場合において、有用な純度までの単離の後まで残るのに十分に頑強な化合物を指す。
【0831】
[0806]安定化:本明細書で使用する場合、「安定化する」、「安定化させる」、「安定化領域」という用語は、安定にされるか又は安定になることを意味する。
【0832】
[0807]立体異性体:本明細書で使用する場合、「立体異性体」という用語は、全ての可能な異なる異性体及び立体構造形態を指し、化合物(例えば、本明細書に記載されるいずれかの式の化合物)は、特に全ての可能な立体化学的及び立体構造的な異性体形態、基本的な分子構造の全てのジアステレオマー、エナンチオマー及び/又はコンフォーマーを保持し得る。一部の本発明の化合物は、異なる互変異性形態で存在し得、後者は、全て本発明の範囲内に含まれる。
【0833】
[0808]対象:「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後判定又は治療が望ましい任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象としては、ヒト、飼育動物、家畜、動物園の動物、スポーツ用の動物、ペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛など、霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータン及びチンパンジーなど、イヌ科、例えばイヌ及びオオカミなど、ネコ科、例えばネコ、ライオン及びトラなど、ウマ類、例えばウマ、ロバ及びシマウマなど、クマ、食用動物、例えばウシ、ブタ及びヒツジなど、有蹄動物、例えばシカ及びキリンなど、齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター及びモルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、哺乳動物は、ヒト対象である。他の実施形態において、対象は、ヒト患者である。特定の実施形態において、対象は、治療を必要とするヒト患者である。
【0834】
[0809]実質的に:本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、目的の特徴又は特性の全体的な又はほぼ全範囲又は程度を示す定性的条件を指す。生物学分野の当業者は、生物学的及び化学的特徴が完了に到り且つ/若しくは完全になるまで進行するか、又は絶対的な結果を達成若しくは回避することが、たとえあったとしても極めて稀であることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用される「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的特徴に特有の完全性の潜在的欠如を表現するために用いられる。
【0835】
[0810]実質的に等しい:本明細書で使用する場合、それが用量間の時間差に関するとき、この用語は、プラス/マイナス2%を意味する。
【0836】
[0811]実質的に同時に:本明細書で使用する場合、それが複数回の投与に関するとき、この用語は、2秒以内を意味する。
【0837】
[0812]罹患している:疾患、障害及び/又は状態に「罹患している」個体は、疾患、障害及び/又は状態の1つ以上の症状を有すると診断されているか、又はそのような症状を呈している。
【0838】
[0813]罹患しやすい:疾患、障害及び/又は状態に「罹患しやすい」個体は、疾患、障害及び/又は状態の症状を有すると診断されていないか、且つ/又は疾患、障害及び/又は状態の症状を呈していないが、疾患又はその症状を発症する傾向を有する。いくつかの実施形態において、疾患、障害及び/又は状態(例えば、創傷治癒(例えば、創傷治癒障害))に罹患しやすい個体は、以下の1つ以上によって特徴付けられ得る:(1)疾患、障害及び/又は状態の発症に関連する遺伝子変異;(2)疾患、障害及び/又は状態の発症に関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害及び/又は状態に関連するタンパク質及び/又は核酸の発現及び/又は活性の増大及び/又は低減;(4)疾患、障害及び/又は状態の発症に関連する習慣及び/又は生活様式;(5)疾患、障害及び/又は状態の家族歴;並びに(6)疾患、障害及び/又は状態の発症に関連する微生物への曝露及び/又は感染。いくつかの実施形態において、疾患、障害及び/又は状態に罹患しやすい個体は、疾患、障害及び/又は状態を発症することになる。いくつかの実施形態において、疾患、障害及び/又は状態に罹患しやすい個体は、疾患、障害及び/又は状態を発症しないことになる。
【0839】
[0814]持続放出:本明細書で使用する場合、「持続放出」という用語は、特定の期間にわたってある放出速度に従う医薬組成物又は化合物放出プロファイルを指す。
【0840】
[0815]合成:「合成」という用語は、人の手により生成、調製及び/又は製造されることを意味する。本発明のポリヌクレオチド又は他の分子の合成は、化学的又は酵素的のいずれでもあり得る。
【0841】
[0816]標的細胞:本明細書で使用する場合、「標的細胞」は、任意の1つ以上の目的の細胞を指す。細胞は、インビトロ、インビボ、インサイチュ又は生物体の組織若しくは器官で見出され得る。生物体は、動物、例えば、哺乳動物、ヒト、対象又は患者であり得る。
【0842】
[0817]標的組織:本明細書で使用する場合、「標的組織」は、ポリヌクレオチドの送達が所望の生物学的及び/又は薬理学的効果をもたらす任意の1つ以上の目的の組織型を指す。目的の標的組織の例としては、特定の組織、器官及び系又はその群が挙げられる。特定の適用において、標的組織は、肝臓、腎臓、肺、脾臓又は血管における血管内皮(例えば、冠動脈内又は大腿動脈内)であり得る。「オフターゲット組織」は、コードされるタンパク質の発現が、所望の生物学的及び/又は薬理学的効果をもたらさない任意の1つ以上の組織型を指す。
【0843】
[0818]オフターゲット組織(issue)における治療薬の存在は、(i)拡散を介した又は血流を通じた投与部位から末梢組織又は遠位オフターゲット組織へのポリヌクレオチドの漏出(例えば、特定の組織でポリペプチドを発現させることが意図されるポリヌクレオチドがオフターゲット組織に到達し、ポリペプチドがオフターゲット組織で発現される);又は(ii)拡散を介した又は血流を通じた末梢組織又は遠位オフターゲット組織への、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与後のポリペプチドの漏出(例えば、ポリヌクレオチドが標的組織でポリペプチドを発現させ、ポリペプチドが末梢組織に拡散する)の結果であり得る。
【0844】
[0819]標的化配列:本明細書で使用する場合、「標的化配列」という句は、タンパク質又はポリペプチドの輸送又は局在化を指示し得る配列を指す。
【0845】
[0820]末端:本明細書で使用する場合、1つ又は複数の「末端」という用語は、ポリペプチドに言及する場合、ペプチド又はポリペプチドの端部を指す。このような端部は、ペプチド又はポリペプチドの最初又は最後の部位のみに限定されず、末端領域のさらなるアミノ酸を含み得る。本発明のポリペプチドに基づく分子は、N末端(遊離アミノ基(NH)があるアミノ酸が最後にある)及びC末端(遊離カルボキシル基(COOH)があるアミノ酸が最後にある)の両方を有するものとして特徴付けられ得る。本発明のタンパク質は、一部の場合、ジスルフィド結合により又は非共有結合性の力により合わせられる複数のポリペプチド鎖で構成される(マルチマー、オリゴマー)。これらの種類のタンパク質は、複数のN及びC末端を有することになる。代わりに、ポリペプチドの末端は、該当し得る場合、有機複合物などの非ポリペプチドに基づく部分によってそれらが開始又は終結するように修飾され得る。
【0846】
[0821]治療薬:「治療薬」という用語は、対象に投与された場合、治療、診断及び/若しくは予防効果を有し、且つ/又は所望の生物学的及び/若しくは薬理効果を誘発する薬剤を指す。例えば、いくつかの実施形態において、創傷治癒ポリペプチドをコードするmRNAは、治療薬であり得る。
【0847】
[0822]治療有効量:本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、感染、疾患、障害及び/若しくは状態に罹患しているか、又は罹患しやすい対象に投与される場合、感染、疾患、障害及び/若しくは状態の症状を治療し、改善し、感染、疾患、障害及び/若しくは状態の発症を診断し、予防し、且つ/又は遅延させるのに十分である、送達されることになる薬剤(例えば、核酸、薬物、治療薬、診断薬、予防薬など)の量を意味する。
【0848】
[0823]治療的に有効な成果:本明細書で使用する場合、「治療的に有効な成果」という用語は、感染、疾患、障害及び/若しくは状態に罹患しているか、又は罹患しやすい対象において、感染、疾患、障害及び/若しくは状態の症状を治療し、改善し、感染、疾患、障害及び/若しくは状態の発症を診断し、予防し、且つ/又は遅延させるのに十分な成果を意味する。
【0849】
[0824]総1日用量:本明細書で使用する場合、「総1日用量」は、24時間で投与又は処方される量である。総1日用量は、単回単位用量又は分割用量として投与され得る。
【0850】
[0825]転写因子:本明細書で使用する場合、「転写因子」という用語は、例えば、転写の活性化又は抑制により、DNAからRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を指す。一部の転写因子は、転写の調節のみをもたらし、他の因子は、他のタンパク質と協同して作用する。一部の転写因子は、特定の条件下で転写の活性化及び抑制の両方を行い得る。一般に、転写因子は、標的遺伝子の調節領域において、特異的なコンセンサス配列と非常によく類似した1つ又は複数の特異的な標的配列と結合する。転写因子は、標的遺伝子のみ又は他の分子との複合体における標的遺伝子の転写を調節し得る。
【0851】
[0826]転写:本明細書で使用する場合、「転写」という用語は、DNA(例えば、DNA鋳型又は配列)からmRNA(例えば、mRNA配列又は鋳型)を生成する方法を指す。
【0852】
[0827]トランスフェクション:本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」は、細胞へのポリヌクレオチド(例えば、外来核酸)の導入を指し、そこで、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが発現される(例えば、mRNA)か、又はポリペプチドが細胞機能を調節する(例えば、siRNA、miRNA)。本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」は、ポリペプチド又はタンパク質へのポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の翻訳及び/又はポリペプチド若しくはタンパク質の翻訳後修飾を指す。トランスフェクションの方法としては、化学的方法、物理的処理及びカチオン性脂質又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0853】
[0828]治療すること、治療、療法:本明細書で使用する場合、「治療すること」又は「治療」又は「療法」という用語は、疾患又は状態、例えば、創傷治癒(例えば、創傷治癒障害)の1つ以上の症状又は特徴の部分的又は完全な軽減、緩和、改善、解放、発症遅延、進行阻害、重症度軽減及び/又は発症率低下を指す。例えば、創傷治癒を「治療すること」は、状態と関連する症状を減少させること、患者の寿命を延長すること(生存率を増大させること)、状態の重症度を低下させること、状態の発症を予防するか又は遅延させることなどを指し得る。疾患、障害及び/若しくは状態の徴候を示さない対象に、且つ/又は疾患、障害及び/若しくは状態に関連する病態を発症するリスクを低下させるために疾患、障害及び/若しくは状態の早期の徴候のみを示す対象に施され得る。
【0854】
[0829]未修飾:本明細書で使用する場合、「未修飾」は、ある方法で変化させられる前のあらゆる物質、化合物又は分子を指す。未修飾は、常にではないが、生体分子の野生型又は天然形態を指し得る。分子に対して、一連の修飾が行われ得、それにより各修飾分子が続く修飾に対する「未修飾」出発分子として働き得る。
【0855】
[0830]ウラシル:ウラシルは、RNAの核酸における4種類の核酸塩基の1つであり、Uという文字により表される。ウラシルは、ヌクレオシドウリジンを得るためにβ-N-グリコシド結合を介してリボース環又はより具体的にはリボフラノースに連結され得る。ヌクレオシドウリジンは、その核酸塩基の1文字コード、すなわちUによっても一般的に略される。したがって、本開示との関連で、ポリヌクレオチド配列中のモノマーがUである場合、このようなUは、「ウラシル」又は「ウリジン」として互換的に命名される。
【0856】
[0831]ウリジン含量:「ウリジン含量」又は「ウラシル含量」という用語は、互換的であり、特定の核酸配列中に存在するウラシル又はウリジンの量を指す。ウリジン含量又はウラシル含量は、絶対値(配列中のウリジン又はウラシルの総数)又は相対値(核酸配列中の核酸塩基の総数に対する存在するウリジン又はウラシルパーセンテージ)として表され得る。
【0857】
[0832]ウリジン修飾配列:「ウリジン修飾配列」という用語は、異なる全体的若しくは局所的なウリジン含量(より高いか若しくはより低いウリジン含量)を有するか、又は候補核酸配列のウリジン含量及び/若しくはウリジンパターンに対して異なるウリジンパターン(例えば、勾配分布若しくはクラスター形成)を有する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)を指す。本開示の内容において、「ウリジン修飾配列」及び「ウラシル修飾配列」という用語は、均等であり、互換的とみなされる。
【0858】
[0833]「高ウリジンコドン」は、2又は3つのウリジンを含むコドンとして定義され、「低ウリジンコドン」は、1つのウリジンを含むコドンとして定義され、「ウリジンなしコドン」は、ウリジンが全くないコドンである。いくつかの実施形態において、ウリジン修飾配列は、低ウリジンコドンでの高ウリジンコドンの置換、ウリジンなしコドンでの高ウリジンコドンの置換、高ウリジンコドンでの低ウリジンコドンの置換、ウリジンなしコドンでの低ウリジンコドンの置換、低ウリジンコドンでのウリジンなしコドンの置換、高ウリジンコドンでのウリジンなしコドンの置換及びそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、高ウリジンコドンは、別の高ウリジンコドンで置き換えられ得る。いくつかの実施形態において、低ウリジンコドンは、別の低ウリジンコドンで置き換えられ得る。いくつかの実施形態において、ウリジンなしコドンは、別のウリジンなしコドンで置き換えられ得る。ウリジン修飾配列は、ウリジン富化又はウリジン希薄化であり得る。
【0859】
[0834]ウリジン富化:本明細書で使用する場合、「ウリジン富化」という用語及び文法的変異形は、対応する候補核酸配列のウリジン含量に対する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)中のウリジン含量(絶対値で又はパーセンテージ値として表される)の上昇を指す。ウリジン富化は、候補核酸配列中のコドンを、含有するウリジン核酸塩基がより少ない同義コドンで置換することにより実行され得る。ウリジン富化は、網羅的(すなわち候補核酸配列の全長に対する)又は局所的(すなわち候補核酸配列の部分配列又は領域に対する)であり得る。
【0860】
[0835]ウリジン希薄化:本明細書で使用する場合、「ウリジン希薄化」という用語及び文法的変異形は、対応する候補核酸配列のウリジン含量に対する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)中のウリジン含量(絶対値で又はパーセンテージ値として表される)の低下を指す。ウリジン希薄化は、候補核酸配列中のコドンを、含有するウリジン核酸塩基がより少ない同義コドンで置換することにより実行され得る。ウリジン希薄化は、網羅的(すなわち候補核酸配列の全長に対する)又は局所的(すなわち候補核酸配列の部分配列又は領域に対する)であり得る。
【0861】
[0836]バリアント:本開示で使用する場合のバリアントという用語は、天然又は出発配列(例えば、野生型配列)中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されており、異なるアミノ酸が同じ位置でその代わりに挿入されている天然バリアント(例えば、多型、アイソフォームなど)及び人工的バリアントの両方を指す。これらのバリアントは、「置換バリアント」と記載され得る。置換は、単一であり得、分子中の1つのアミノ酸のみが置換されているか又はそれらが複数であり得、2つ以上のアミノ酸が同じ分子中で置換されているものであり得る。アミノ酸が挿入されるか又は欠失している場合、得られるバリアントは、それぞれ「挿入バリアント」又は「欠失バリアント」である。
【0862】
[0837]開始コドン:本明細書で使用する場合、「開始コドン(start codon)」という用語と互換的に使用される「開始コドン(initiation codon)」という用語は、リボソームによって翻訳されるオープンリーディングフレームの最初のコドンを指し、連結されたアデニン-ウラシル-グアニン核酸塩基のトリプレットで構成される。開始コドンは、アデニン(A)、ウラシル(U)及びグアニン(G)の最初の文字コードによって示され、「AUG」として簡潔に書かれる場合が多い。天然mRNAは、開始コドンとしてAUG以外のコドンを使用する場合があり、これは本明細書において「代替開始コドン」と呼ばれ、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの開始コドンは、AUGコドンを使用する。翻訳開始のプロセス中、開始コドンを含む配列は、リボソームにより結合されたイニシエーターtRNA(Met-tRNA Met)のアンチコドンに対する相補的塩基対形成を介して認識される。オープンリーディングフレームは、本明細書において「代替開始コドン」と呼ばれる2つ以上のAUG開始コドンを含有し得る。
【0863】
[0838]開始コドンは、翻訳開始において重要な役割を果たす。開始コドンは、リボソームにより翻訳されるオープンリーディングフレームの最初のコドンである。通常、開始コドンは、ヌクレオチドトリプレットのAUGを含むが、いくつかの例において、翻訳開始は、別のヌクレオチドで構成される他のコドンで発生する場合がある。真核生物における翻訳の開始は、メッセンジャーRNA分子(mRNA)、40Sリボソームサブユニット、翻訳装置の他の構成要素(例えば、真核生物翻訳開始因子;eIF)間の多数のタンパク質-タンパク質、タンパク質-RNA及びRNA-RNA相互作用を含む多段階の生化学的プロセスである。mRNA翻訳開始の現在のモデルは、前開始複合体(代わりに、「43S前開始複合体」;「PIC」と略される)が、翻訳を助長する特定のヌクレオチドの文脈(コザック配列)内に存在する最初のAUGコドンに遭遇するまで、5’から3’方向にヌクレオチドをスキャニングすることによってmRNA(通常、5’キャップ)上の動員部位から開始コドンまで移動するということを仮定する(Kozak(1989)J Cell Biol 108:229-241)。PICによるスキャニングは、イニシエーターMet-tRNA MetトランスファーRNAのアンチコドンを含むヌクレオチドとmRNAの開始コドンを含むヌクレオチド間の相補的な塩基対形成時に終わる。AUGコドンとMet-tRNA Metアンチコドン間の生産的な塩基対形成は、結果的に大きい60SリボソームサブユニットがPICに結合して、翻訳伸長の能力をもつ活性リボソームを形成する一連の構造的及び生化学的事象を誘発する。
【0864】
[0839]コザック配列:用語「コザック配列」(「コザックコンセンサス配列」とも呼ばれる)は、遺伝子又はオープンリーディングフレームの発現を増強し、真核生物において5’UTR中に位置する翻訳開始エンハンサーエレメントを指す。コザックコンセンサス配列は、プレプロインスリン遺伝子の翻訳に対する開始コドン(AUG)の周囲にある単一変異の効果の分析に従って、配列
【化58】
(R=プリンである)として最初に定義された(Kozak(1986)Cell 44:283-292)。本明細書で開示されるポリヌクレオチドは、コザックコンセンサス配列又はその誘導体若しくは修飾を含む。(翻訳エンハンサー組成の例及びその使用方法、全体として参照により本明細書に組み込まれるAndrewsらに対する米国特許第5,807,707号明細書;全体として参照により本明細書に組み込まれるChernajovskyに対する米国特許第5,723,332号明細書;全体として参照により本明細書に組み込まれるWilsonに対する米国特許第5,891,665号明細書を参照されたい)。
【0865】
[0840]修飾される:本明細書で使用する場合、「修飾される」又は「修飾」は、状態の変化又はポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の組成物又は構造の変化を指す。ポリヌクレオチドは、化学的、構造的及び/又は機能的なものを含む様々な方法において修飾され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、1つ以上のRNAエレメントの組込みによって構造的に修飾され得、RNAエレメントは、1つ以上の機能(例えば、翻訳調節活性)を提供する配列及び/又はRNA二次構造を含む。したがって、本開示のポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾(例えば、1つ以上の化学的、構造的又は機能的修飾(それらの任意の組合せを含む)を含み得る)で構成され得る。
【0866】
[0841]核酸塩基:本明細書で使用する場合、用語「核酸塩基」(代わりに、「ヌクレオチド塩基」又は「窒素塩基」は、核酸において見出されるプリン又はピリミジン複素環式化合物を指し、核酸又はその部分若しくはセグメントに改善された特性(例えば、結合親和性、ヌクレアーゼ耐性、化学的安定性)を付与する天然に存在するプリン及びピリミジンのいずれかの誘導体又は類似体を含む。アデニン、シトシン、グアニン、チミン及びウラシルは、天然の核酸において優勢に見出される核酸塩基である。当技術分野において知られ且つ/又は本明細書に記載される他の天然、非天然及び/又は合成核酸塩基が核酸に組み込まれ得る。
【0867】
[0842]ヌクレオシド/ヌクレオチド:本明細書で使用する場合、「ヌクレオシド」という用語は、核酸塩基(例えば、プリン又はピリミジン)又はその誘導体若しくは類似体(本明細書において「核酸塩基」とも呼ばれる)に共有結合的に連結された糖分子(例えば、RNA中のリボース又はDNA中のデオキシリボース)又はその誘導体若しくは類似体を含有するが、ヌクレオシド間連結基(例えば、リン酸基)を欠く化合物を指す。本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシド間連結基(例えば、リン酸基)に共有結合されたヌクレオシド或いは核酸又はその部分若しくはセグメントに改善された化学的及び/又は機能的特性(例えば、結合親和性、ヌクレアーゼ耐性、化学的安定性)を付与するその任意の誘導体、類似体若しくは修飾を指す。
【0868】
[0843]核酸:本明細書で使用する場合、「核酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、ヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体のポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を包含する。これらのポリマーは、「ポリヌクレオチド」と呼ばれることが多い。したがって、本明細書で使用する場合、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は均等であり、互換的に使用される。本開示の代表的な核酸又はポリヌクレオチドとしては、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA-RNAハイブリッド、RNAi誘導剤、RNAi薬剤、siRNA、shRNA、mRNA、修飾mRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒性DNA、三重らせん形態を誘導するRNA、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(β-D-リボ配置を有するLNA、α-L-リボ配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能基を有する2’-アミノ-LNA及び2’-アミノ官能基を有する2’-アミノ-α-LNAを含むLNA)又はそのハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0869】
[0844]核酸構造:本明細書で使用する場合、「核酸構造」という用語(「ポリヌクレオチド構造」と互換的に使用される)は、核酸(例えば、mRNA)を含む連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の原子の配置若しくは組織化、化学的構成物、エレメント、モチーフ及び/又は配列を指す。この用語は、核酸の二次元又は三次元状態を指す。したがって、「RNA構造」という用語は、RNA分子(例えば、mRNA)を含む連結されたヌクレオチド又はその誘導体若しくは類似体の原子の配置若しくは組織化、化学的構成物、エレメント、モチーフ及び/又は配列を指し、且つ/又はRNA分子の二次元及び/又は三次元状態を指す。核酸構造は、組織化の複雑さの増大に基づいて、本明細書において「分子構造」、「一次構造」、「二次構造」及び「三次構造」と呼ばれる4つの組織の分類にさらに区分され得る。
【0870】
[0845]オープンリーディングフレーム:本明細書で使用する場合、「ORF」と略される「オープンリーディングフレーム」という用語は、ポリペプチドをコードするmRNA分子のセグメント又は領域を指す。ORFは、開始コドンで始まり、終止コドンで終わる連続した一続きの重複していないインフレームのコドンを含み、リボソームによって翻訳される。
【0871】
[0846]前開始複合体(PIC):本明細書で使用する場合、「前開始複合体」(代わりに、「43S前開始複合体」;「PIC」と略される)という用語は、mRNA分子の5’キャップに対する結合及び結合後に5’UTRのリボーススキャニングを実施することが本質的に可能な40Sリボソームサブユニット、真核生物翻訳開始因子(eIF1、eIF1A、eIF3、eIF5)及びeIF2-GTP-Met-tRNA Met三成分複合体を含むリボ核タンパク質複合体を指す。
【0872】
[0847]RNAエレメント:本明細書で使用する場合、「RNAエレメント」という用語は、生物学的機能を提供し、且つ/又は生物学的活性(例えば、翻訳調節活性)を有するRNA分子の部分、断片又はセグメントを指す。本明細書に記載されるものなどの1つ以上のRNAエレメントの組込みによるポリヌクレオチドの修飾は、修飾ポリヌクレオチドに1つ以上の望ましい機能的特性を提供する。本明細書に記載されるとおりのRNAエレメントは、天然に存在するか、天然に存在しないか、合成的であるか、操作されるか、又はそれらの任意の組合せであり得る。例えば、調節活性を提供する天然に存在するRNAエレメントは、ウイルス、原核生物及び真核生物(例えば、ヒト)のトランスクリプトーム全体に見出されるエレメントを含む。特定の真核生物mRNA及び翻訳されたウイルスRNAにおけるRNAエレメントは、細胞における多くの機能の媒介に関与することが示されている。代表的な天然のRNAエレメントとしては、翻訳開始エレメント(例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)、Kieft et al.,(2001)RNA 7(2):194-206を参照されたい)、翻訳エンハンサーエレメント(例えば、APP mRNA翻訳エンハンサーエレメント、Rogers et al.,(1999)J Biol Chem 274(10):6421-6431を参照されたい)、mRNA安定性エレメント(例えば、AUに富むエレメント(ARE)、Garneau et al.,(2007)Nat Rev Mol Cell Biol 8(2):113-126を参照されたい)、翻訳抑制エレメント(例えば、Blumer et al.,(2002)Mech Dev 110(1-2):97-112を参照されたい)、タンパク質結合RNAエレメント(例えば、鉄応答エレメント、Selezneva et al.,(2013)J Mol Biol 425(18):3301-3310を参照されたい)、細胞質内ポリアデニル化エレメント(Villalba et al.,(2011)Curr Opin Genet Dev 21(4):452-457)及び触媒姓RNAエレメント(例えば、リボザイム、Scott et al.,(2009)Biochim Biophys Acta 1789(9-10):634-641を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0873】
[0848]滞留時間:本明細書で使用する場合、「滞留時間」という用語は、mRNA分子に沿う別々の部位又は位置での前開始複合体(PIC)又はリボソームの占有時間を指す。
【0874】
[0849]翻訳調節活性:本明細書で使用する場合、「翻訳調節活性」(「翻訳調節機能」と互換的に使用される)は、PIC及び/又はリボソームの活性を含む翻訳装置の活性を調節する(例えば、調節する、影響する、制御する、変える)生物学的機能、機構又はプロセスを指す。いくつかの態様において、所望の翻訳調節活性は、mRNA翻訳の翻訳忠実度を促進及び/又は増強する。いくつかの態様において、所望の翻訳調節活性は、リーキースキャニングを低減及び/又は阻害する。
【0875】
27.均等物及び範囲
[0850] 当業者は、通常の実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明による具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識することになるか、又は確認できるであろう。本発明の範囲は、以上の記載に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載のとおりである。
【0876】
[0851]特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」などの冠詞は、反対の意味が記載されているか又は文脈から別段の解釈が明らかとならない限り、1つ又は2つ以上を意味し得る。群の1つ以上のメンバー間に「又は」を含む請求項又は記載は、反対の意味が記載されているか又は文脈から別段の解釈が明らかとならない限り、その群のメンバーの1つ、2つ以上又は全てが所与の製品又はプロセスに存在するか、それで使用されるか、又はそうでなければそれに関連している場合に満たされるとみなされる。本発明は、その群のメンバーの厳密に1つが所与の製品又はプロセスに存在するか、それで使用されるか、又はそうでなければそれに関連している実施形態を含む。本発明は、その群のメンバーの2つ以上又は全てが所与の製品又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はそうでなければそれに関連している実施形態を含む。
【0877】
[0852]また、「含む」という用語は、非限定的であるものとし、さらなる要素又は工程の包含を可能にするが、それが必要なわけではない。したがって、「含む」という用語が本明細書中で使用される場合、「からなる」という用語も包含及び開示される。
【0878】
[0853]範囲が与えられている場合、終点の値が含まれる。さらに、別段の指示がない限り又は文脈及び当業者の理解から別段の解釈が明らかとならない限り、範囲として表される値は、本発明の様々な実施形態において記載される範囲内の任意の具体的な値又は部分範囲を、文脈からの明らかな別段の指示がない限り、この範囲の下限の単位の1/10まで想定し得ることを理解されたい。
【0879】
[0854]さらに、先行技術内に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。このような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、その排除が本明細書に明示的に記載されていない場合でも、これらは、除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、いずれかの核酸又はそれによりコードされるタンパク質、いずれかの作製方法、いずれかの使用方法など)は、あらゆる理由のために、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、任意の1つ以上の請求項から除外され得る。
【0880】
[0855]引用される全ての出典、例えば本明細書で引用される参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリ及び技術は、引用の際に明示されていなくても参照により本明細書に組み込まれる。引用される出典及び本願の記載に矛盾が生じる場合、本願の記載が優先されるものとする。
【0881】
[0856]節及び表の見出しは、限定を意図するものではない。
【実施例
【0882】
実施例1
キメラポリヌクレオチドの合成
A.三リン酸経路
[0857] キメラポリヌクレオチドの2つの領域又は部分は、三リン酸化学を使用して連結又はライゲートされ得る。この方法によれば、100ヌクレオチド以下の第1の領域又は部分は、5’一リン酸塩及び末端3’desOH又は遮断されたOHを用いて化学的に合成され得る。領域が80ヌクレオチドより長い場合、これは、ライゲーションのための2本の鎖として合成され得る。
【0883】
[0858]第1の領域又は部分がインビトロ転写(IVT)を使用して非位置的修飾領域又は部分として合成される場合、5’一リン酸塩の変換とその後の3’末端キャップ付加とが続き得る。一リン酸塩保護基は、当技術分野で知られるもののいずれかから選択され得る。
【0884】
[0859]キメラポリヌクレオチドの第2の領域又は部分は、化学合成又はIVT法のいずれかを使用して合成され得る。IVT法は、修飾キャップとともにプライマーを利用し得るRNAポリメラーゼを含み得る。代わりに、最大80ヌクレオチドのキャップが、化学的に合成され、IVT領域又は部分にカップリングされ得る。
【0885】
[0860]ライゲーション法について、DNA T4リガーゼでのライゲーションとそれに続くDNAseによる処理とにより、鎖状体形成が容易に回避されるはずであることに留意されたい。
【0886】
[0861]キメラポリヌクレオチド全体がリン酸-糖骨格とともに作製される必要はない。領域又は部分の1つがポリペプチドをコードする場合、このような領域又は部分は、リン酸-糖骨格を含み得る。
【0887】
[0862]次に、ライゲーションは、任意の既知のクリックケミストリー、オルトクリックケミストリー、ソルリンク又は当業者に知られる他のバイオコンジュゲート化学を使用して実施され得る。
【0888】
B.合成経路
[0863] キメラポリヌクレオチドは、一連の出発セグメントを使用して作製され得る。このようなセグメントとしては、
(a)標準的な3’OHを含むキャップ付加及び保護された5’セグメント(SEG.1)
(b)ポリペプチドのコード領域を含むことができ、標準的な3’OHを含む5’三リン酸セグメント(SEG.2)
(c)コーディセピンを含むか又は3’OHを含まないキメラポリヌクレオチドの3’末端(例えば、テール)に対する5’一リン酸セグメント(SEG.3
)が挙げられる。
【0889】
[0864]合成(化学的又はIVT)の後、セグメント3(SEG.3)を、コーディセピンに続いてピロホスファターゼで処理して、5’一リン酸を生成することができる。
【0890】
[0865]次に、セグメント2(SEG.2)が、RNAリガーゼを使用してSEG.3にライゲートされ得る。次に、ライゲーションされたポリヌクレオチドを、精製し、ピロホスファターゼで処理して、二リン酸エステルを切断することができる。次に、処理されたSEG.2-SEG.3コンストラクトが精製され、SEG.1が5’末端にライゲートされる。キメラポリヌクレオチドのさらなる精製工程が実施され得る。
【0891】
[0866]キメラポリヌクレオチドがポリペプチドをコードする場合、ライゲートされたか又は連結されたセグメントは、5’UTR(SEG.1)、オープンリーディングフレーム又はORF(SEG.2)及び3’UTR+ポリA(SEG.3)として表され得る。
【0892】
[0867]各工程の収率は、90~95%程度となり得る。
【0893】
実施例2
cDNA産生のためのPCR
[0868] cDNAの調製のためのPCR工程は、Kapa Biosystems(Woburn,MA)によって2×KAPA HIFI(商標)HotStart ReadyMixを使用して実施され得る。この系は、2×KAPA RadyMix12.5μl;フォワードプライマー(10μM)0.75μl;リバースプライマー(10μM)0.75μl;鋳型cDNA約100ngを含み;dHOで25.0μlに希釈される。PCR反応条件は、95℃で5分間及び98℃で20秒、続いて58℃で15秒、続いて72℃で45秒を25サイクル、次に72℃で5分間、その後、最後まで4℃である。
【0894】
[0869]本発明のリバースプライマーは、mRNAにおけるポリA120(配列番号273)のためにポリT120(配列番号271)を組み込み得る。より長いか又はより短いポリ(T)区画を有する他のリバースプライマーを使用して、ポリヌクレオチドmRNAにおけるポリ(A)テールの長さを調整することができる。
【0895】
[0870]反応は、製造者の説明書に従って、InvitrogenのPURELINK(商標)PCR Microキット(Carlsbad,CA)を使用してクリーンアップされ得る(最大5μg)。反応物が多いほど、大容量の製品を使用するクリーンアップが必要となる。クリーンアップ後、NANODROP(商標)を使用してcDNAを定量化し、アガロースゲル電気泳動によって分析して、cDNAが予想されるサイズであることを確認する。次に、cDNAは、インビトロ転写反応に進める前にシークエンシング分析のために提出され得る。
【0896】
実施例3
インビトロ転写(IVT)
[0871] インビトロ転写反応は、均一に修飾されたポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを生成し得る。このような均一に修飾されたポリヌクレオチドは、本開示のポリヌクレオチドの領域又は部分を含み得る。投入するヌクレオチド三リン酸(NTP)ミックスは、天然及び非天然NTPを使用して作製され得る。
【0897】
[0872]典型的なインビトロ転写反応は、
1 鋳型cDNA - 1.0μg
2 10×転写緩衝液(400mM Tris-HCl pH8.0、190mM MgCl、50mM DTT、10mMスペルミジン) - 2.0μL
3 カスタムNTP(各25mM) - 7.2μL
4 RNase阻害剤 - 20U
5 T7 RNAポリメラーゼ - 3000U
6 dHO 20.0μLまで、及び
7 37℃で3時間~5時間のインキュベーション
を含み得る。
【0898】
[0873]粗製IVTミックスは、翌日のクリーンアップのために4℃で一晩保管され得る。次に、1UのRNase不含DNaseが、元の鋳型を消化するために使用され得る。37℃で15分間のインキュベーションの後、mRNAは、製造者の説明書に従って、AmbionのMEGACLEAR(商標)キット(Austin,TX)を使用して精製され得る。このキットは、500μgまでのRNAを精製できる。クリーンアップ後、RNAは、NanoDropを使用して定量化され、RNAが適正なサイズであること及びRNA分解が起こっていないことを確認するためにアガロースゲル電気泳動により分析され得る。
【0899】
実施例4
酵素によるキャップ付加
[0874] ポリヌクレオチドのキャップ付加は、IVT RNA 60μg~180μg及び72μlまでのdHOを含む混合物により実施され得る。混合物は、RNAを変性させるために65℃で5分間インキュベートされ、続いて速やかに氷に移され得る。
【0900】
[0875]次に、プロトコルは、10×キャップ付加緩衝液(0.5M Tris-HCl(pH8.0)、60mM KCl、12.5mM MgCl)(10.0μl);20mM GTP(5.0μl);20mM S-アデノシルメチオニン(2.5μl);RNase阻害剤(100U);2’-O-メチルトランスフェラーゼ(400U);ワクシニアキャップ付加酵素(グアニリルトランスフェラーゼ)(40U);dHO(28μLまで)の混合;及び37℃で60μg RNAの場合には30分間又は180μgのRNAの場合には2時間までのインキュベーションを含み得る。
【0901】
[0876]次に、ポリヌクレオチドは、製造者の説明書に従って、AmbionのMEGACLEAR(商標)キット(Austin,TX)を使用して精製され得る。クリーンアップ後、RNAは、NANODROP(商標)(ThermoFisher,Waltham,MA)を使用して定量化され、RNAが適正なサイズであること及びRNA分解が起こっていないことを確認するためにアガロースゲル電気泳動により分析され得る。RNA産物は、シークエンシングのためのcDNAを生成するために逆転写-PCRを行ってシークエンシングされ得る。
【0902】
実施例5
ポリAテール付加反応
[0877] cDNA中にポリ-Tがない場合、ポリAテール付加反応は、最終産物をクリーニングする前に実施されなければならない。これは、キャップ付加IVT RNA(100μl);RNase阻害剤(20U);10×テール付加緩衝液(0.5M Tris-HCl(pH8.0)、2.5M NaCl、100mM MgCl)(12.0μl);20mM ATP(6.0μl);ポリAポリメラーゼ(20U);dHO 123.5μlまでを混合し、37℃で30分間インキュベーションすることによってなされ得る。ポリAテールが既に転写物中にある場合、テール付加反応を抜かし、AmbionのMEGACLEAR(商標)キット(Austin、TX)(500μgまで)によるクリーンアップに直接的に進み得る。ポリAポリメラーゼは、いくつかの場合、酵母において発現された組換え酵素である。
【0903】
[0878]ポリAテール付加反応の処理能力又は完全性は、必ずしも正確なサイズのポリAテールをもたらすわけではないことを理解すべきである。したがって、およそ40~200ヌクレオチド、例えば、約40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、150~165、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164又は165ヌクレオチドのポリAテールが、本発明の範囲内である。
【0904】
実施例6
天然5’キャップ及び5’キャップ類似体
[0879] ポリヌクレオチドの5’-キャップ付加を、以下の化学的RNAキャップ類似体を使用してインビトロ-転写反応中に同時に完了して、製造者のプロトコルに従って5’-グアノシンキャップ構造を生成し得る:3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G[ARCAキャップ];G(5’)ppp(5’)A;G(5’)ppp(5’)G;m7G(5’)ppp(5’)A;m7G(5’)ppp(5’)G(New England BioLabs、Ipswich、MA)。修飾RNAの5’-キャップ付加を、ワクシニアウイルスキャップ付加酵素を使用して転写後に完了して、「キャップ0」構造を生成し得る:m7G(5’)ppp(5’)G(New England BioLabs、Ipswich、MA)。キャップ1構造を、ワクシニアウイルスキャップ付加酵素及び2’-Oメチル-トランスフェラーゼの両方を使用して生成して:m7G(5’)ppp(5’)G-2’-O-メチルを生成し得る。キャップ2構造は、キャップ1構造に続いて2’-Oメチル-トランスフェラーゼを使用して5’-末端から3番目のヌクレオチドの2’-O-メチル化から生成され得る。キャップ3構造は、キャップ2構造に続いて2’-Oメチル-トランスフェラーゼを使用して5’末端から4番目のヌクレオチドの2’-O-メチル化から生成され得る。酵素は、組換え供給源由来であり得る。
【0905】
[0880]哺乳動物細胞にトランスフェクトされる場合、修飾mRNAは、12~18時間又は18時間超であり、例えば24、36、48、60、72時間又は72時間超の安定性を有し得る。
【0906】
実施例7
キャップ付加アッセイ
A.タンパク質発現アッセイ
[0881] 本明細書中で教示されるキャップのいずれかを含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、等濃度で細胞にトランスフェクトされ得る。トランスフェクションから6、12、24及び36時間後、培養培地に分泌されるタンパク質の量がELISAによってアッセイされ得る。培地中により高いレベルのタンパク質を分泌する合成ポリヌクレオチドは、より高い翻訳能があるキャップ構造を有する合成ポリヌクレオチドに対応する。
【0907】
B.純度分析合成
[0882] 本明細書中で教示されるキャップのいずれかを含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、変性アガロース-尿素ゲル電気泳動又はHPLC分析を使用して、純度について比較され得る。電気泳動による1本の固定されたバンドを有するポリヌクレオチドは、複数のバンド又は引きずったバンドを有するポリヌクレオチドと比較してより高い純度の産物に対応する。単一HPLCピークを有する合成ポリヌクレオチドも、より高い純度の産物に対応する。より高い効率でのキャップ付加反応により、より高純度のポリヌクレオチド集団がもたらされることになる。
【0908】
C.サイトカイン分析
[0883] 本明細書中で教示されるキャップのいずれかを含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、複数濃度で細胞にトランスフェクトされ得る。トランスフェクションから6、12、24及び36時間後、培養培地に分泌されるTNF-アルファ及びIFN-ベータなどの炎症促進性サイトカインの量が、ELISAによってアッセイされ得る。培地へのより高レベルの炎症促進性サイトカインの分泌を引き起こすポリヌクレオチドは、免疫を活性化するキャップ構造を含有するポリヌクレオチドに対応することになる。
【0909】
D.キャップ付加反応効率
[0884] 本明細書中で教示されるキャップのいずれかを含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼ処理後にLC-MSによってキャップ付加反応効率について分析され得る。キャップ付きポリヌクレオチドのヌクレアーゼ処理により、LC-MSにより検出可能な遊離ヌクレオチド及びキャップ付加5’-5-三リン酸キャップ構造の混合物が生じることになる。LC-MSスペクトルにおけるキャップ付き産物の量は、反応からの総ポリヌクレオチドのパーセントとして表され得、キャップ付加反応効率に対応することになる。キャップ付加反応効率がより高いキャップ構造は、LC-MSにより、より多量のキャップ付き産物を有することになる。
【0910】
実施例8
修飾RNA又はRT PCR産物のアガロースゲル電気泳動
[0885] 個々のポリヌクレオチド(20μl体積中200~400ng)又は逆転写PCR産物(200~400ng)が、非変性1.2%アガロースE-Gel(Invitrogen、Carlsbad、CA)上のウェルにロードされ、製造者のプロトコルに従って12~15分間泳動が行われ得る。
【0911】
実施例9
Nanodropによる修飾RNA定量化及びUVスペクトルデータ
[0886] TE緩衝液中の修飾ポリヌクレオチド(1μl)が、化学合成又はインビトロ転写反応からの各ポリヌクレオチドの収量を定量化するためのNanodrop UV吸収読み取りのために使用され得る。
【0912】
実施例10
タンパク質発現のためのスクリーニングの方法
A.エレクトロスプレーイオン化
[0887] 対象に投与されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を含有し得る生体試料が調製され、1、2、3又は4つの質量分析機器を使用してエレクトロスプレーイオン化(ESI)に関する製造者のプロトコルに従って分析され得る。生体試料は、タンデムESI質量分析システムを使用しても分析され得る。
【0913】
[0888]タンパク質断片又はタンパク質全体のパターンは、所与のタンパク質に関する既知の対照と比較され得、同一性が比較によって決定され得る。
【0914】
B.マトリックス支援レーザー脱離/イオン化
[0889] 対象に投与される1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を含有し得る生体試料が調製され、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)に関する製造者のプロトコルに従って分析され得る。
【0915】
[0890]タンパク質断片又はタンパク質全体のパターンは、所与のタンパク質に関する既知の対照と比較され得、同一性が比較によって決定され得る。
【0916】
C.液体クロマトグラフィー-質量分析-質量分析
[0891] 1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を含有し得る生体試料が、中に含有されるタンパク質を消化するためにトリプシン酵素で処理され得る。得られたペプチドは、液体クロマトグラフィー-質量分析-質量分析(LC/MS/MS)によって分析され得る。ペプチドを、質量分析計内で断片化して、コンピューターアルゴリズムを介してタンパク質配列データベースに一致され得る特徴的なパターンを得ることができる。消化された試料を希釈して、所与のタンパク質のための1ng以下の出発材料を得ることができる。試料緩衝液バックグラウンド(例えば、水又は揮発性塩)を含有する生体試料は、溶液中での消化を誘導するのに適している;より複雑なバックグラウンド(例えば、洗剤、不揮発性塩、グリコール)は、試料分析を容易にするためにさらなるクリーンアップ工程を必要とする。
【0917】
[0892]タンパク質断片又はタンパク質全体のパターンは、所与のタンパク質に関する既知の対照と比較され得、同一性が比較によって決定され得る。
【0918】
実施例11
ナノ粒子組成物の生成
A.ナノ粒子組成物の生成
[0893] ナノ粒子は、マイクロフルイディクス及び一方がポリヌクレオチドを含有し、他方が脂質構成要素を有する2つの流体の流れのT-ジャンクション混合などの混合プロセスにより作製され得る。
【0919】
[0894]脂質組成物は、エタノール中の約50mMの濃度で、本明細書で開示されるイオン化可能アミノ脂質、例えば、化合物IIなどの式(I)による脂質又は化合物VIなどの式(III)による脂質、リン脂質(Avanti Polar Lipids、Alabaster、ALから得られるDOPE又はDSPCなど)、PEG脂質(Avanti Polar Lipids、Alabaster、ALから得られるPEG-DMGとしても知られる1,2ジミリストイルsnグリセロールメトキシポリエチレングリコール)及び構造脂質(Sigma Aldrich、Taufkirchen、Germanyから得られるコレステロールなど、又はコルチコステロイド(プレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン及びヒドロコルチゾンなど)又はその組合せ)を合わせることによって調製される。溶液は、保管のために例えば、-20℃で冷蔵されるべきである。脂質は、所望のモル比率を得るために合わせられ、水及びエタノールで約5.5mM~約25mMの最終脂質濃度まで希釈される。
【0920】
[0895]ポリヌクレオチド及び脂質組成物を含むナノ粒子組成物は、約5:1~約50:1の脂質組成物とポリヌクレオチドのwt:wt比率でポリヌクレオチドを含む溶液と脂質溶液を合わせることによって調製される。脂質溶液を、約10ml/分~約18ml/分の流速でNanoAssemblrマイクロ流体に基づく系を使用してポリヌクレオチド溶液に迅速に注入して、約1:1~約4:1の水とエタノール比率を有する懸濁液を得る。
【0921】
[0896]RNAを含むナノ粒子組成物のために、脱イオン水中の0.1mg/mlの濃度のRNAの溶液は、原液を形成するために3~4のpHの50mMクエン酸ナトリウム緩衝液中で希釈される。
【0922】
[0897]ナノ粒子組成物は、エタノールを除去し、緩衝液交換を達成するために透析によって処理され得る。製剤は、10kDの分子量カットオフを有するSlide-A-Lyzerカセット(Thermo Fisher Scientific Inc.、Rockford、IL)を使用して、一次産物の200倍の体積でリン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4に対して2回透析される。最初の透析は、室温で3時間実行される。次に、製剤は、4℃で一晩透析される。得られるナノ粒子懸濁液は、0.2μmの無菌フィルター(Sarstedt、Nuembrecht、Germany)に通してガラスバイアルに濾過され、圧着式の蓋で密封される。0.01mg/ml~0.10mg/mlのナノ粒子組成物溶液が一般に得られる。
【0923】
[0898]上記の方法は、ナノ-沈殿及び粒子形成を誘導する。T-ジャンクション及び直接注入を含むが、これらに限定されない代替的なプロセスを使用して、同じナノ-沈殿を達成することができる。
【0924】
B.ナノ粒子組成物の特徴付け
[0899] Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd、Malvern、Worcestershire、UK)を使用して、粒径、多分散指数(PDI)並びに粒径を決定する際の1×PBS及びゼータ電位を決定する際の15mM PBS中のナノ粒子のゼータ電位を決定することができる。
【0925】
[0900]紫外-可視分光法を使用して、ナノ粒子組成物中のポリヌクレオチド(例えば、RNA)の濃度を決定することができる。1×PBS中の100μLの希釈製剤を、メタノール及びクロロホルムの900μLの4:1(v/v)混合物に加えた。混合した後、溶液の吸光度スペクトルを、例えば、DU 800分光光度計(Beckman Coulter、Beckman Coulter,Inc.、Brea、CA)上において230nm~330nmで記録する。ナノ粒子組成物中のポリヌクレオチドの濃度は、組成物中で使用されるポリヌクレオチドの吸光係数並びに例えば260nmの波長での吸光度と、例えば330nmの波長でのベースライン値との間の差に基づいて計算され得る。
【0926】
[0901]RNAを含むナノ粒子組成物のために、QUANT-IT(商標)RIBOGREEN(登録商標)RNAアッセイ(Invitrogen Corporation Carlsbad、CA)を使用して、ナノ粒子組成物によるRNAの封入を評価することができる。試料を、TE緩衝溶液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH7.5)中でおよそ5μg/mLの濃度まで希釈する。50μLの希釈試料を、ポリスチレン96ウェルプレートに移し、50μLのTE緩衝液又は50μLの2% Triton X-100溶液のいずれかをウェルに加えた。プレートを37℃の温度で15分間インキュベートした。RIBOGREEN(登録商標)試薬を、TE緩衝液中で1:100に希釈し、100μLのこの溶液を各ウェルに加える。蛍光強度は、例えば、約480nmの励起波長と例えば、520nmの発光波長で蛍光プレートリーダー(Wallac Victor 1420 Multilablel Counter;Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用して測定され得る。試薬ブランクの蛍光強度は、試料の各々のものから減算され、遊離RNAのパーセンテージは、破壊された試料(Triton X-100の添加によって引き起こされる)の蛍光値によって未変化の試料(Triton X-100の添加を伴わない)の蛍光強度を割ることによって決定される。
【0927】
[0902]ナノ粒子組成物の代表的な製剤は、下の表6において示される。「化合物」という用語は、MC3、化合物II又は化合物VIなどのイオン化可能脂質を指す。「リン脂質」は、DSPC又はDOPEであり得る。「PEG-脂質」は、PEG-DMG又は化合物Iであり得る。
【0928】
【表6】
【0929】
実施例12
ナノ粒子及びクエン酸生理食塩水組成物の調製
[0903] エタノール中の脂質の原液は、化合物II、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma)及び1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(NOF CorporationからのDMG-PEG2000)から調製された。脂質は、12.5mMの総脂質濃度までエタノール99.5%中で混合された。組成は、50:10:38.5:1.5%モルの比の化合物II、DSPC、コレステロール、DMG-PEG2000であった。VEGF-A改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号5又は配列番号6)を解凍し、最終製剤における11:1の総脂質:mRNA重量比(3の電荷比 窒素:リン酸(N:P))に対応する濃度で酢酸ナトリウム緩衝液及びHyClone水中において6.25mMまで希釈した。希釈後の最終製剤は、以下のとおりであった。
【0930】
【表7】
【0931】
【表8-1】
【0932】
【表8-2】
【0933】
【表8-3】
【0934】
【表8-4】
【0935】
[0904]化合物II-LNP組成物を、脂質を含有するエタノール溶液及び改変VEGF-A RNAの水溶液を、マイクロ流体デバイス上で素早く混合し、それに続いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で透析を行うことによって調製した。簡単に述べると、改変VEGF-A RNA溶液及び脂質溶液を、シリンジポンプによって制御される2つのシリンジを使用して、水とエタノール3:1の体積比及び12~14mL/分の流速で、マイクロ流体混合デバイス(NanoAssemblr(商標)(Precision Nanosystems))に注入した。エタノールを、10KDカットオフを有する膜を使用してPBS緩衝液に対して化合物II-LNP組成物を一晩透析することによって除去した。化合物II-LNP組成物は、粒径(63nm)、多分散指数(0.10)及び封入(96%)によって特徴付けられた。化合物II-LNP組成物を、PBSで0.06mg/mLの最終濃度まで希釈し、無菌濾過した。化合物II-LNP組成物は、冷蔵保管された。化合物II-LNPのサイズ及び多分散を、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd)を使用して動的光散乱によって決定し、化合物II-LNP製剤中のmRNAの封入及び濃度を、RiboGreenアッセイを使用して決定した。
【0936】
[0905]DLin-MC3-DMA脂質ナノ粒子(MC3-LNP):エタノール中の脂質の原液は、DLin-MC3-DMA(Jayaraman,M.,et al.,Angew Chem Int Ed Engl,2012,51(34),p.8529-33に記載されるとおりに合成される)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma)及び1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(NOF CorporationからのDMG-PEG2000)から調製された。脂質は、12.5mMの総脂質濃度までエタノール99.5%中で混合された。組成は、50:10:38.5:1.5%モルの比のDLin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール、DMG-PEGであった。VEGF-A改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号5又は配列番号6)を解凍し、最終製剤における10.25:1の総脂質:mRNA重量比(3の電荷比 窒素:リン酸(N:P))に対応する濃度で酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)及びHyClone水中において6.25mMまで希釈した。希釈後の最終製剤は、以下のとおりであった。
【0937】
【表9】
【0938】
[0906]DLin-MC3-DMAの構造は、
【化59】
である。
【0939】
[0907]脂質ナノ粒子(LNP)組成物:LNP組成物を、脂質を含有するエタノール溶液及びVEGF-A改変RNAの水溶液を、マイクロ流体デバイス上で素早く混合し、それに続いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で透析を行うことによって調製した。簡単に述べると、VEGF-A改変RNA溶液及び脂質溶液を、シリンジポンプによって制御される2つのシリンジを使用して、水とエタノール3:1の体積比及び12~14mL/分の流速で、マイクロ流体混合デバイス(NanoAssemblr(商標)(Precision Nanosystems))に注入した。マイクロ流体混合の後、MC3-LNPを、10kの分子量カットオフを有するSlide-A-Lyzer(商標)G2透析カセット(Thermo Scientific)を使用して、リン酸緩衝食塩水(pH7.4)に対して一晩透析した。
【0940】
[0908]LNP組成物は、粒径(77~85nm)、VEGF-A改変RNA濃度(0.076~0.1mg/mL)、多分散指数(0.04~0.08)及び封入(96~98%)によって特徴付けられた。LNP組成物を、PBSで0.075mg/mLの最終濃度まで希釈し、無菌濾過した。LNP組成物は、冷蔵保管された。MC3-LNPのサイズ及び多分散を、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd)を使用して動的光散乱によって決定し、MC3-LNP製剤中のmRNAの封入及び濃度を、RiboGreenアッセイを使用して決定した。
【0941】
[0909]クエン酸生理食塩水組成物:クエン酸生理食塩水組成物を、解凍した改変VEGF-A RNA溶液を、HyClone水及び濃縮した緩衝溶液で希釈して、pH6.5の10mM クエン酸ナトリウム及び130mM 塩化ナトリウムの最終組成物とすることによって調製した。
【0942】
実施例13
マウスにおける創傷治癒ポリペプチドをコードする修飾RNAの皮内注射後の創傷治癒の評価
[0910] 改変VEGF-A RNA及びDLin-MC3-DMAを含むMC3脂質ナノ粒子組成物を、配列番号5の配列を有するVEGF-A改変RNAにより実施例13のように調製した。
【0943】
[0911]翻訳不可能な(NT)改変VEGF-A RNA及びDLin-MC3-DMAを含む第2のMC3脂質ナノ粒子組成物を、配列番号7の配列を有するVEGF-A改変RNAにより実施例13のように調製した。
【0944】
[0912]雄db/dbマウスを使用した。これらのマウスは、II型糖尿病の樹立されたモデルであり、野生型マウスと比較した場合に創傷治癒障害を有する。
【0945】
[0913]図1は、試験の外科手技、治療及び観察時点の時間軸を提供する。グルコース及び体重は、試験開始前及び終了時の週に測定された。マウスは、手術前の週に測定された絶食(4時間)グルコースレベルに従ってランダム化された。マウスは、手術を受ける前にイソフルランで麻酔をかけられた。外科手技は、バリカン及び除毛クリームを使用することによってマウスの背中の毛を除去することによって開始された。各マウスの背中上の1つの創傷は、10mm生検パンチにより印を付け、続いてそれを切除することによって作られた。創傷は、創傷を保護するためのテガダームの透明な包帯材によって覆われた。粘着性の弾性包帯を、マウスの周囲に置いて創傷領域を覆い、鎮痛薬(0.08mg/mlのTamgesic)の注射を、マウスの体重に応じて0.05~0.1mg/kgの投与量で投与した。
【0946】
[0914]マウスは、3つの治療群に分けられた:(a)クエン酸/生理食塩水溶液(pH6.5の10mMクエン酸ナトリウム及び130mM塩化ナトリウム)(n=7)、(b)mRNA VEGF NT 3μg MC3(MC3 LNPで製剤化された翻訳不可能なVEGF-A改変RNA製剤)(n=7)、及び(c)mRNA VEGF 3μg MC3(MC3 LNPで製剤化された改変VEGF-RNA)。治療溶液は、3日目に単回投与として、創傷の周囲に4カ所の注射(各10μl)(合計40μl)として皮内注射された。
【0947】
[0915]創傷は、全ての創傷が治癒されるまで最大17日間2日又は3日おきに調べられた。テガダームは、試験後に除去され、置き換えられた。創傷の写真は、創傷から固定した距離でCanonのカメラで撮影された。創傷面積は、画像解析ソフトウェアImage Jを使用して創傷の縁をなぞることによって決定され、続いて、ベースライン面積に対するパーセント面積として計算された。対応のない両側t検定を用いて統計学的評価を行い、p値<0.05は有意であるとみなされた。
【0948】
[0916]表10及び図2における結果に示されるとおり、MC3で製剤化された3μgの改変VEGF-A RNAを含む脂質ナノ粒子組成物の皮内注射は、開放創面積のパーセントの減少によって実証されるとおり、MC3で製剤化された3μgの翻訳不可能なVEGF-Aを含む脂質ナノ粒子組成物又はクエン酸生理食塩水と比較して、創傷治癒を著しく改善した。
【0949】
【表10】
【0950】
実施例14
マウスにおける創傷治癒ポリペプチドをコードする修飾RNAの局所適用後の創傷治癒の評価
[0918] 改変VEGF-A RNA及びDLin-MC3-DMAを含むMC3脂質ナノ粒子組成物を、配列番号5の配列を有するVEGF-A改変RNAにより実施例13のように調製した。
【0951】
[0919]雄db/dbマウスを使用した。これらのマウスは、II型糖尿病の樹立されたモデルであり、野生型マウスと比較した場合に創傷治癒障害を有する。
【0952】
[0920]図3は、試験の外科手技、治療及び観察時点の時間軸を提供する。グルコース及び体重は、試験開始前及び終了時の週に測定された。マウスは、手術前の週に測定された絶食(4時間)グルコースレベルに従ってランダム化された。マウスは、手術を受ける前にイソフルランで麻酔をかけられた。外科手技は、バリカン及び除毛クリームを使用することによってマウスの背中の毛を除去することによって開始された。各マウスの背中上の1つの創傷は、10mm生検パンチにより印を付け、続いてそれを切除することによって作られた。創傷は、創傷を保護するためのテガダームの透明な包帯材によって覆われた。粘着性の弾性包帯を、マウスの周囲に置いて創傷領域を覆い、鎮痛薬(0.08mg/mlのTamgesic)の注射を、マウスの体重に応じて0.05~0.1mg/kgの投与量で投与した。
【0953】
[0921]マウスは、2つの治療群に分けられた:(a)クエン酸/生理食塩水溶液(pH6.5の10mMクエン酸ナトリウム及び130mM塩化ナトリウム)(n=5)、及び(b)mRNA VEGF 3μg MC3(n=5)。治療溶液は、0日目と3日目にテガダームを通して挿入された針を介する局所適用により投与された(図3)。
【0954】
[0922]創傷は、全ての創傷が治癒されるまで最大17日間2日又は3日おきに調べられた。テガダームは、試験後に除去され、置き換えられた。創傷の写真は、創傷から固定した距離でCanonのカメラで撮影された。創傷面積は、画像解析ソフトウェアImage Jを使用して創傷の縁をなぞることによって決定され、続いて、ベースライン面積に対するパーセント面積として計算された。対応のない両側t検定を用いて統計学的評価を行い、p値<0.05は有意であるとみなされた。
【0955】
[0923]表11及び図4における結果に示されるとおり、MC3で製剤化された3μgの改変VEGF-A RNAを含む脂質ナノ粒子組成物の局所適用は、開放創面積のパーセントの減少によって実証されるとおり、クエン酸生理食塩水の適用と比較して、創傷治癒を著しく改善した。
【0956】
【表11】
【0957】
実施例15
ブタ皮膚におけるヒト創傷治癒ポリペプチドの定量化
[0925] クエン酸生理食塩水組成物並びにVEGF-A改変RNA及び化合物II又はDLain-MC3-DMA(MC3)を含むナノ粒子組成物は、実施例13のように調製された。クエン酸生理食塩水組成物、化合物IIナノ粒子組成物及びMC3ナノ粒子組成物は全て、配列番号5の配列を有するVEGF-A改変RNAとともに調製された。
【0958】
[0926]創傷標本:ゲッティンゲンミニブタの皮膚の角質層を、メスで除去し、表皮の残りを、Cotechミニグラインダーを使用して除去した。
【0959】
[0927]改変VEGF-A RNA及びMC3を含むナノ粒子組成物の局所投与:MC3中に3μgのmRNAを含有する40μlのナノ粒子製剤を、表皮がブタの皮膚から除去された3つの領域に適用した。組織を、適用の5~6時間後に除去し、液体窒素中で瞬間凍結し、分析が実施される時間まで-80℃で保管した。この手順を4頭のブタで繰り返した。
【0960】
[0928]改変VEGF-A RNA及びMC3を含むナノ粒子組成物の皮内注射:MC3中に3μgのmRNAを含有する40μlのナノ粒子製剤を、表皮がブタの皮膚から除去された3つの部位に皮内注射(インスリンシリンジを使用する)によって投与した。組織を、適用の5~6時間後に除去し、液体窒素中で瞬間凍結し、分析が実施される時間まで-80℃で保管した。この手順を4頭のブタで繰り返した。
【0961】
[0929]VEGF-A RNA及び化合物IIを含むナノ粒子組成物の局所投与:化合物II中に3μgのmRNAを含有する50μlのナノ粒子製剤を、表皮がブタの皮膚から除去された3つの領域に適用した。組織を、適用の5時間後に除去し、液体窒素中で瞬間凍結し、分析が実施される時間まで-80℃で保管した。この手順を5頭のブタで繰り返した。
【0962】
[0930]クエン酸/生理食塩水の局所投与(対照):クエン酸/生理食塩水中に100μgのmRNAを含有する50μlの製剤を、表皮がブタの皮膚から除去された3つの領域に適用した。組織を、適用の5時間後に除去し、液体窒素中で瞬間凍結し、分析が実施される時間まで-80℃で保管した。この手順を3頭のブタで繰り返した。
【0963】
[0931]各組織試料を、ELISAを使用してヒトVEGF-Aタンパク質の発現について分析し、結果を表12に要約した(図5A~B)。
【0964】
【表12】
【0965】
[0932]図5Aは、MC3、LNP中で製剤化された改変VEGF-A RNAによる局所適用及び単回注射治療の5~6時間後にブタ組織中のヒトVEGF-Aタンパク質(hVEGF-A)の産生並びに化合物II LNPで製剤化された改変VEGF-A RNAによる局所適用治療の5時間後のブタ組織におけるhVEGF-Aタンパク質の産生を示す。クエン酸生理食塩水組成物による治療は、hVEGF-Aタンパク質の産生をもたらさなかった。図5Bは、ブタ皮膚上の創傷を示し、描かれた円はMC3中で製剤化された改変VEGF-A RNAによる局所治療の部位を示す。
【0966】
[0933]概要及び要約の節ではなく、詳細な説明の節が、特許請求の範囲の解釈に用いられるように意図されていることは理解されるべきである。概要及び要約の節は、本発明者によって検討されるように、1つ以上であるが全てでない本発明の例示的な実施形態を示す場合があり、故に、本発明及び添付の特許請求の範囲を限定することは決して意図されていない。
【0967】
[0934]本発明は、機能的構成要素を用いて上に説明されており、その具体的な機能及び関係の実施を例示している。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、本明細書中に任意に定義されている。別の境界は、その具体的な機能及び関係が適切に実施される限り、定義され得る。
【0968】
[0935]具体的な実施形態の前述の説明は、本発明の一般的性質を十分に示すことになることから、他者は、当業者の有する知見を適用することにより、過度の実験を行うことなく、本発明の一般概念から逸脱することなく、具体的な実施形態のような様々な応用を容易に変更し、且つ/又は適応させることができる。したがって、このような適応形態及び変更形態は、本明細書で提示される教示及び指導に基づき、本開示の実施形態の均等物の意味及び範囲に包含されることが意図されている。本明細書における表現法又は用語法は、限定ではなく、説明を目的としていることが理解されるべきであり、本明細書の用語法又は表現法は、当業者によって教示及び指針を踏まえて解釈されるべきである。
【0969】
[0936]本発明の広がり及び範囲は、上記の代表的な実施形態のいずれによっても限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ定められるべきものである。
【0970】
[0937]本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾が生じた場合、定義を含めて本明細書が優先する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【配列表】
2022532078000001.app
【国際調査報告】