(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】凍結融解添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220803BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220803BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20220803BHJP
C09D 125/08 20060101ALI20220803BHJP
C09D 131/04 20060101ALI20220803BHJP
C09D 123/08 20060101ALI20220803BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20220803BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C09D133/00
C09D125/08
C09D131/04
C09D123/08
B01F17/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559558
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 CN2019082904
(87)【国際公開番号】W WO2020210988
(87)【国際公開日】2020-10-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チョン、リン
(72)【発明者】
【氏名】チー、チン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チョン
(72)【発明者】
【氏名】ム-、チェンハイ
【テーマコード(参考)】
4D077
4J038
【Fターム(参考)】
4D077AB03
4D077AC03
4D077DC19X
4D077DD29X
4J038CB051
4J038CF031
4J038CF051
4J038CG001
4J038CH081
4J038JA27
4J038JA53
4J038KA09
4J038LA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA15
4J038NA26
4J038NA27
4J038PB05
(57)【要約】
【解決手段】 (a)少なくとも1つの凍結防止剤と、(b)少なくとも1つの乳化剤と、(c)いずれかの他の所望の任意の化合物と、を含む、凍結融解安定剤添加剤組成物、上記凍結融解安定剤添加剤組成物を作製するためのプロセス、上記凍結融解安定剤添加剤組成物を含有して作製された塗料配合物、および上記塗料配合物を作製するためのプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)少なくとも1つの乳化剤と、を含む、凍結融解安定剤添加剤組成物であって、前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、安定性を有する塗料配合物を提供し、前記塗料配合物の粘度が、凍結融解安定性試験前および後にストーマー粘度計を使用して23℃で測定される場合、前記配合物が、GB/T-9168-2008に記載の凍結融解安定性試験に供された後、前記塗料配合物の粘度の変化が、0パーセント~10パーセント未満であるような、凍結融解安定剤添加剤組成物。
【請求項2】
前記凍結防止化合物が、グリセリンアルコキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、ソルビトールアルコキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの乳化剤が、C12~C14第一級もしくは第二級アルコキシレート、ヒマシ油エトキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ブチレンオキシド、またはそれらの混合物を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、粒子凝集、沈降、またはケーキングを欠く外観を有する塗料配合物を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、(i)0重量パーセント~1重量パーセント未満のVOCレベル、および(ii)0重量パーセント~0.1重量パーセント未満のAPEレベルを有する塗料配合物を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、ASTM D2486-74Aに記載の手順に従って測定されるようにプロピレングリコールを含むものの60パーセント~120パーセントのスクラブ耐性を有する塗料配合物を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記乳化剤が、アルコキシル化乳化剤またはその誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記凍結防止化合物の濃度が、1重量パーセント~99重量パーセントであり、前記乳化剤の濃度が、1重量パーセント~99重量パーセントであり、それぞれ、前記組成物の総重量に基づく、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)少なくとも1つの乳化剤と、を混合することを含む、凍結融解安定剤添加剤組成物を作製するためのプロセス。
【請求項10】
(a)グリセリンアルコキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、ソルビトールアルコキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)C12~C14第一級もしくは第二級アルコキシレート、ヒマシ油エトキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ブチレンオキシド、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの乳化剤と、を含む、凍結融解安定剤添加剤組成物。
【請求項11】
(A)樹脂系と、(B)請求項1に記載の凍結融解安定剤添加剤組成物と、を含む、塗料配合物。
【請求項12】
前記樹脂系、成分(A)が、アクリルポリマー、スチレン-アクリルポリマー、酢酸ビニル-アクリルポリマー、エチレン-酢酸ビニルポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの結合剤を含む、請求項11に記載の塗料配合物。
【請求項13】
前記結合剤が、前記塗料配合物の総重量に基づいて、5重量パーセント~60重量パーセントの濃度で存在する、請求項12に記載の塗料配合物。
【請求項14】
水性塗料配合物を含む、請求項11に記載の塗料配合物。
【請求項15】
(A)樹脂系と、(B)請求項1に記載の凍結融解安定剤添加剤組成物と、を混合することを含む、塗料配合物を作製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料配合物に有用な凍結融解安定剤添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラテックス塗料配合物は、一般に、非常に複雑な組成物で構成されており、複数の許容可能な特性を有さなければならず、複数の性能基準を満たさなければならない。凍結融解(FT)安定性は、ラテックス塗料配合物が良好な品質の建築塗料を確保するために示すべき重要な特性のうちの1つである。FT安定塗料配合物は、凍結および融解することができ、依然として滑らかで加工可能な材料のままである。適切なFT特性を有する塗料配合物を達成するために、FT安定剤添加剤は、典型的には、塗料配合物に添加される。エチレングリコール(EG)およびプロピレングリコール(PG)は、塗料業界で最も広く受け入れられているFT安定剤である。EGおよびPGは、水および塗料配合物に容易に溶解し、塗料配合物において安定剤として使用されるこれらの化合物は、低投与量での凍結および融解サイクル中に塗料配合物を安定に保つのに効率的である。しかしながら、EGおよびPGは、強い揮発性を有し、揮発性有機化合物(VOC)の主要な供給源の1つとみなされる。環境を保護するための政府規制の圧力が高まるにつれて、建築塗料に存在するVOCの量を低減することが非常に望ましい。また、高性能で環境にやさしい塗料配合物用FT安定剤は、塗料顧客による需要が高い。
【0003】
EGおよびPG安定剤の非VOC代替物として、トリスチリルフェノール(TSP)エトキシレート界面活性剤が塗料業界で受け入れられている。TSPタイプの界面活性剤は、現在「非アルキルフェノールエトキシレート(非APE)ベース」添加剤または「アルキルフェノールエトキシレートフリー」(APEフリー)添加剤として分類されるが、TSPタイプの界面活性剤は、おそらく、TSP界面活性剤の主要な構造がトリスチリルフェノールで開始されるエトキシレートであるため、当業者によってAPE(アルキルフェノールエトキシレート)添加剤とみなされ得る。しかしながら、TSPタイプの界面活性剤の性能の観点から、FT添加剤として使用されるTSPタイプの界面活性剤は、塗料業界では、高い(例えば、[>]50パーセント[%]超の)顔料体積濃度[PVC]含有量を有するミドルエンドの塗料配合物における使用について性能が低いと考えられている。同時に、一部の塗料顧客および配合者は、TSPタイプの生成物が他の安定剤生成物よりも高価であるだけでなく、TSPエトキシレートの使用がスクラブ耐性に関連する性能などの塗料性能に悪影響を有していると訴えている。したがって、水性塗料配合物で使用するための環境に優しい(非VOC、非APEベースの)FT安定剤組成物を提供することが非常に望ましく、FT安定剤組成物は、既知のPGおよびTSPと比較した場合に同等または増加したFT性能を有する。エトキシレート界面活性剤;FT安定剤組成物は、耐スクラブ性などの他の塗料特性を改善を提供する。
【0004】
これまで、様々な界面活性剤組成物を使用して塗料配合物のFT性能を改善する試みがなされてきた。例えば、米国特許第8,993,658(B2)号は、界面活性剤組成物およびそのような界面活性剤組成物の水性組成物のための使用を開示しており、ArO-[CH2CH-(CH2CH3)]1-10(CH2CH2O)5-50Hが、水性塗料組成物におけるFT安定性を改善することを教示する。しかしながら、上記特許は、同時に水性塗料組成物のFT安定性を増加させながら、水性塗料組成物に対して他の改善を提供しない。
【0005】
組成物のFT性能の改善に加えて、様々な成分を使用する組成物中のVOCの含有量を低下させる試みがなされてきた。例えば、米国特許第8,119,717 B2号は、建設業界によって保護または装飾として使用されるコーティング組成物を開示する。コーティングは、ラテックス成分、および揮発性合体溶媒を置換する薬剤を含み、得られるコーティング組成物は、低VOC含有量(例えば、1モル当たり132グラム[g/mol]以上の分子量[Mw])を有する。組成物は、(1)低VOC合体剤成分として使用されるC10-ゲルベアルコールアルコキシレート、および(2)凍結融解添加剤として使用されるポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)を含む。しかしながら、上記特許で教示される塗料配合物は、複雑であり、塗料配合物に対して記載される利点を達成するために複数の成分を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの塗料配合物は、FT添加剤として使用され得る成分を含有し得るが、塗料業界では、塗料配合物のFT性能を改善するために特定の界面活性剤および特定の凍結防止化合物のブレンドを提供することが望まれる。
【0007】
先行技術の問題は、FT安定剤添加剤組成物が特定の凍結防止化合物および特定の乳化剤の混合物を含む、塗料配合物に有用なFT安定剤添加剤組成物に関する本発明によって解決される。いくつかの実施形態では、そのような混合物は、塗料配合物の粘度変化に関連する相乗効果を提供する。驚くべきことに、相乗効果は、特定の凍結防止化合物および特定の乳化剤の所定の混合比を使用して、FT安定剤添加剤組成物を含有する塗料配合物のFT性能を改善するときに生じる。
【0008】
本発明の新規FT安定剤添加剤組成物は、組成物が非VOCおよび非APEベースの利点を示す一方で、例えば、異なるタイプの樹脂系から作製された塗料配合物における良好なFT安定化効果を含み、様々な実施形態においていくつかの利点を示す。塗料配合物における組成物の性能評価はまた、いくつかの実施形態では、従来のTSPタイプの生成物と比較して改善されたスクラブ耐性を示す。さらに、本発明のFT添加剤組成物は、例えば、従来の複雑な合成経路に頼ることなく、単純な混合ステップによって容易に生成することができる。
【0009】
一実施形態では、本発明は、例えば、(a)グリセリンアルコキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、ソルビトールアルコキシレートなどのような少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)C12~C14一次または二次エトキシレート、エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)ブロックコポリマー、ヒマシ油エトキシレート、イソオクタノールアルコキシレート、イソデカノールアルコキシレートなどのような少なくとも1つの乳化剤と、(c)所望に応じていずれかの任意の化合物と、を含む、FT安定剤添加剤組成物を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、上記FT安定剤添加剤組成物を作製するためのプロセスを提供する。
【0011】
また別の実施形態では、本発明は、例えば、(A)樹脂系、(B)上記FT安定剤添加剤組成物、および(C)いずれかの所望の任意の化合物を含む塗料配合物を提供する。
【0012】
さらに別の実施形態では、本発明は、上記塗料配合物を作製するためのプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、配合物に対してFT試験を行った後の塗料配合物の粘度変化(KU粘度)と配合物中のFT添加剤組成物の投与量(凍結防止剤と乳化剤の比率)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、配合物に関する、「凍結融解安定性」は、GB/T-9168-2008に記載される凍結融解安定性試験を使用して決定される凍結融解プロセスの特定のサイクル数後の安定性を意味する。
【0015】
本明細書における「凍結防止化合物」とは、水の凝固点を下げることができる添加剤を意味する。
【0016】
広範な実施形態では、本発明は、水性塗料配合物において有用な凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物に関する。本発明のFT安定剤添加剤組成物は、(a)少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)少なくとも1つのアルコキシル化乳化剤と、を含む。所望に応じて、任意の化合物を凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物に添加することもできる。
【0017】
本発明のFT添加剤組成物は、1つ以上の凍結防止化合物を含むことができる。例えば、一実施形態では、凍結防止化合物は、それらのすべての組み合わせを含む以下の1つ以上が、(1)以上の機能性を有する1つ以上のアルコキシル化凍結防止化合物を含むことができる。(≧)例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、およびソルビトールで開始されるアルコキシレートを含む、マルチOH基などの2つの官能基。およびそれらの混合物;(2)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびそれらの混合物などの出発アルキレンオキシド化合物から誘導される。(3)1重量%水溶液で曇点が(>)20℃を超える水溶性。(4)一実施形態では(<)1,000未満、別の実施形態では<700、さらに別の実施形態では<500のMwを有する。(5)低VOCまたは非VOC化合物。(6)一実施形態では>250℃、別の実施形態では>287℃の沸点を有する。
【0018】
一実施形態では、凍結防止添加剤化合物は、グリセリンアルコキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、ソルビトールアルコキシレート、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。凍結防止化合物は、例えば、VORANOL(商標)CP 300、DOWFAX(商標)DF 121、VORANOL(商標)RN482(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ポリオール4640(Perstorpから入手可能)、およびそれらの混合物などの市販の化合物を含むことができる。
【0019】
本発明の組成物を調製するために使用される凍結防止化合物の量は、FT添加剤組成物の総重量に基づいて、例えば、一実施形態では1重量%~99重量%、別の実施形態では10重量%~90重量%、さらに別の実施形態では20重量%~80重量%を含む。
【0020】
凍結防止化合物によって示される有利な特性のいくつかは、例えば、(1)化合物が非VOC化合物であり、(2)化合物が低発泡性であることを含む。例えば、凍結防止添加剤化合物を使用する利点の1つは、凍結防止添加剤化合物が非VOCであることである。本明細書における「非VOC」とは、添加剤のVOC含有量が、一実施形態では0重量%~1重量%未満、別の実施形態では0~0.05重量%、さらに別の実施形態では0重量%~0.001重量%を含むことを意味する。凍結防止添加剤化合物のVOC特性は、GB 18582に従ってガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0021】
凍結防止添加剤化合物を使用する別の利点は、凍結防止添加剤化合物が低発泡性であることである。本明細書における「低発泡性」とは、添加剤の発泡がゼロであるか、または従来の凍結防止添加剤化合物と比較して発泡の目視観察によって決定されるように少なくとも微小レベルに維持されることを意味する。
【0022】
本発明のFT添加剤組成物は、1つ以上のアルコキシル化乳化剤を含むことができる。例えば、一実施形態では、アルコキシル化乳化剤は、(bi)開始剤および(bii)アルキレンオキシドを反応させることによって調製される1つ以上のアルコキシル化乳化剤を含むことができる。開始剤成分(bi)には、例えば、C4~C18直鎖または分岐アルコール、酸、エステル、アミン、およびそれらの混合物が含まれる。開始剤の典型には、C12~C14第一級および第二級アルコール、ヒマシ油、イソオクタノール、イソデカノール、およびそれらの混合物が含まれ得る。アルキレンオキシドの典型、成分(bii)は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびそれらの混合物を含み得る。
【0023】
別の実施形態では、アルコキシル化乳化剤は、リン酸エステル、硫酸塩、およびそれらの混合物などのアルコキシル化乳化剤の誘導体を含む。
【0024】
一実施形態では、それによって限定されないが、例えば、本発明で有用なアルコキシル化乳化剤、成分(b)は、例えば、以下の1つ以上のアルコキシル化乳化剤から選択される:(1)いくつかのアルキレンオキシドを有する一実施形態では>1、別の実施形態では>3、さらに別の実施形態では>5の単位。(2)例えば、一実施形態では8から18の範囲、別の実施形態では8から15の範囲の中間の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する。さらに別の実施形態では10から15まで。(3)水に分散または溶解する。(4)非APEベースの組成物を使用する場合、開始剤である成分(bi)にアルキルフェノール基を使用することは避けてください。
【0025】
1つの好ましい実施形態では、乳化剤は、C12~C14第一級または第二級アルコキシレート、ヒマシ油エトキシレート、およびEO/POブロックコポリマー、ならびにそれらの混合物を含む。乳化剤はまた、例えば、TERGITOL(商標)15-S、ECOSURF(商標)LF、TERGITOL(商標)L TERGITOL(商標)X(The Dow Chemical Companyから入手可能)などの市販の化合物、およびそれらの混合物を含む。
【0026】
本発明のFT安定剤添加剤組成物を調製するために使用される乳化剤の量は、例えば、それぞれFT安定剤添加剤組成物の総重量に基づいて、一実施形態では1重量%~99重量%、
別の実施形態では20重量%~90重量%、さらに別の実施形態では20重量%~80重量%を含む。
【0027】
1つの好ましい実施形態では、凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物が調製され、水性塗料配合物で使用される場合、成分(a)対成分(b)の混合比は、一実施形態では重量で9/1~1/9、別の実施形態では重量で8/2~2/8であり、さらに別の実施形態では重量で8/2~4/6である。上記範囲において、FT安定剤添加剤組成物は、添加剤組成物が使用される水性塗料配合物に相乗的なFT安定化効果を提供する。
【0028】
本明細書において、塗料配合物に関して、「相乗的FT安定化効果」とは、FT安定剤添加剤組成物が塗料配合物の粘度に実質的または有意に影響を及ぼさないことを意味する。本明細書において、塗料配合物に関して、「粘度に有意に影響を及ぼす」とは、FT安定剤添加剤組成物の使用が、塗料配合物に添加される場合、塗料配合物の粘度を増加または減少させないことを意味する。または、少なくともFT安定剤添加剤組成物を使用することによる塗料配合物の粘度における任意の変化は、最小限に保たれる。塗料配合物における、凍結防止添加剤化合物、成分(a)単独の使用は、組み合わされた凍結防止添加剤化合物、成分(a)、および乳化剤、成分(b)よりも実質的に高い粘度を有する塗料配合物をもたらすことが見出された。この場合、単独で使用される凍結防止添加剤化合物は、配合物が流動性となり、容易に取り扱われることを妨げる粘度を有する塗料配合物を提供する。塗料配合物における、乳化剤、成分(b)単独の使用は、組み合わされた凍結防止添加剤化合物、成分(a)、および乳化剤、成分(b)よりもわずかに高いか、または同じ粘度を有する塗料配合物をもたらすことが見出された。よって、本発明のFT安定剤添加剤組成物の相乗的なFT安定化効果は、塗料配合物の粘度の変化、増加または減少のいずれかを、ゼロまたは最小限に維持することを含む。例えば、本発明のFT安定剤添加剤組成物の添加前および後の塗料配合物の粘度の変化は、一実施形態では20%未満、別の実施形態では0%~20%、また別の実施形態では0%~10%、さらに別の実施形態では0%~5%である。塗料配合物の粘度特性は、ストーマー粘度計などのKU粘度計を使用してクレブス単位(KU)で測定される。
【0029】
上記の、FT添加剤化合物、成分(a)、およびアルコキシル化乳化剤、成分(b)に加えて、本発明の凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物はまた、他の追加の任意の化合物または添加剤を含み得、そのような任意の化合物は、FT添加剤化合物または乳化剤とともに組成物に添加され得る。本発明の凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物を調製するために使用することができる任意の添加剤または薬剤は、それらの使用または機能について当該技術分野で知られている1つ以上の任意の化合物を含むことができる。例えば、本発明のFT安定剤添加剤組成物を作製するのに有用な任意の添加剤、薬剤、または成分は、湿潤剤、分散剤、発泡制御剤、レオロジー調整剤、殺生物剤、pH中和剤、水など、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0030】
本発明の組成物を調製するために使用される任意の化合物の量は、例えば、一実施形態では0重量%~50重量%、別の実施形態では0.01重量%~30重量%、また別の実施形態では1重量%~10重量%を含む。
【0031】
一般的な実施形態では、本発明の凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物を作製するためのプロセスは、(a)少なくとも1つの凍結防止添加剤化合物と、(b)少なくとも1つのアルコキシル化乳化剤と、(c)いずれかの所望の任意の化合物と、を混合するステップを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明の凍結融解(FT)安定剤添加剤組成物は、例えば、(i)所定量の成分(a)および(b)を秤量し、成分を混合物を形成するために容器に充填するステップ、ならびに
(ii)容器内の混合物を、以下の混合速度で機械的撹拌下で撹拌するステップ、によって調製される。
一実施形態では、20分(分)から2時間(時間)までの期間で、一実施形態では、毎分200回転(rpm)から1,000rpmである。
【0033】
組成物が作製されると、FT添加剤組成物の様々な実施形態によって示されるいくつかの有利な特性が存在する。例えば、(1)FT添加剤組成物は優れた凍結融解安定性を示すことができる(2)FT添加剤組成物は良好な耐スクラブ性を示す、(3)FT添加剤組成物は非VOCである、(4)FT添加剤組成物は非である-APEベースである、および(5)FT添加剤組成物は、様々な樹脂と幅広い適合性がある。
【0034】
例えば、FT添加剤組成物の特性の1つは、一実施形態では0.5重量%~1.5重量%、別の実施形態では0.5重量%~1重量%の凍結融解安定性を有する塗料配合物を提供することである。塗料配合物の安定性は、粒子サイズ測定または肉眼での目視観察によって測定される。
【0035】
例えば、FT添加剤組成物の別の特性は、良好なスクラブ耐性を有する塗料を提供することである。良好なスクラブ耐性は、FT添加剤化合物が、FT添加剤としての従来のPGまたはEGと比較して、塗料フィルムのスクラブ耐性を低減しないか、または少なくともスクラブ耐性の最小の低減に維持されることを意味する。スクラブ耐性は、例えば、一実施形態ではFT添加剤としてPGを有するものの60%~120%、別の実施形態では80%~120%、さらに別の実施形態では90%~110%を含む。塗料配合物のスクラブ耐性特性は、ASTM D2486-74Aに記載されている手順に従って、フィルムサンプルがフィルムサンプルの厚さにわたってスクラブされる前に、ペイントフィルムサンプルが通過するサイクル数によって測定される。
【0036】
FT添加剤組成物の別の有利な特性には、例えば、非VOC組成物であるFT添加剤組成物が含まれる。本明細書における「非VOC」とは、FT添加剤組成物のVOC含有量が、一実施形態では1重量%未満、別の実施形態では0重量%~0.05重量%、さらに別の実施形態では0重量%~0.001重量%を含むことを意味する。FT添加剤組成物のVOC特性は、GB 18582に従ってガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0037】
FT添加剤組成物のさらに別の有利な特性には、例えば、非APEベースの組成物であるFT添加剤組成物が含まれる。本明細書における「非APEベース」または「APEフリー」とは、組成物のアルキルフェノールエトキシレート含有量が、一実施形態では0.1重量%未満、別の実施形態では0重量%~0.1重量%未満、また別の実施形態では0重量%~0.01重量%、
さらに別の実施形態では0重量%~0.0005重量%を含むことを意味する。組成物のアルキルフェノールエトキシレート含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。
【0038】
また、FT添加剤組成物は、有益には、スチレンアクリル(SA)樹脂、純粋または全アクリル(AA)樹脂、ビニルアクリル(VA)樹脂、エチレン-酢酸ビニル(EVA)結合剤、およびそれらの混合物などの様々な樹脂に対して広範な適合性を有する。本明細書における「適合性」とは、本発明のFT添加剤組成物が、SA樹脂でのみ作用することができる従来のTSPタイプのFT添加剤と比較して、上記の異なるタイプの樹脂において効果的に作用し、VA樹脂などの他の樹脂には適さないことを意味する。
【0039】
塗料組成物または配合物を構成する成分は、塗料を作製する技術においてよく知られており、典型的には、樹脂ポリマーおよび添加剤、例えば、水、分散剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、レオロジー調整剤、pH緩衝剤、pH中和剤、殺生物剤、顔料、充填剤、合体剤など、ならびにそれらの混合物を含む。本発明のFT安定剤添加剤組成物は、塗料配合物のための別の添加剤として有用である。1つの好ましい実施形態では、FT安定剤添加剤組成物は、例えば、水性塗料配合物において有用である。
【0040】
1つの一般的な実施形態では、塗料配合物は、例えば、(A)樹脂系と、(B)上記の凍結融解安定剤添加剤組成物と、(C)上記のようないずれかの他の所望の任意の添加剤化合物と、を含む。好ましい実施形態では、塗料配合物の樹脂系、成分(A)は、例えば、少なくとも1つの結合剤を含む。結合剤は、塗料配合物組成物でフィルム形成をコーティングするために有用である。例えば、結合剤は、純粋または全アクリル(AA)ポリマー、スチレン-アクリル(SA)ポリマー、ビニルアクリル(VA)ポリマー、酢酸ビニル-アクリルポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)ポリマーなど、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
塗料配合物中の結合剤の濃度は、例えば、一実施形態では5重量%~60重量%、別の実施形態では10重量%~60重量%、
さらに別の実施形態では10重量%~40重量%である。
【0042】
FT添加剤組成物は上記のように非VOC組成物であるため、有利には、本発明の塗料配合物は、配合物中に揮発性有機化合物が存在しないか、または、意図しない汚染のために、配合物中に少なくとも微量のVOCが存在する。一般に、配合物中のVOCの濃度は、例えば、一実施形態では1リットル当たり150グラム(g/L)未満、別の実施形態では50g/L未満、さらに別の実施形態では5g/L未満である。他の実施形態では、配合物のVOC含有量は、例えば、一実施形態では0.01g/L~150g/L未満、別の実施形態では0.01g/L~50g/L未満、さらに別の実施形態では0.01g/L~5g/L未満を含む。
【0043】
一般に、塗料配合物は、水性塗料配合物を含む。一実施形態では、水性塗料配合物は、外装建築塗料を含む。別の実施形態では、水性塗料配合物は、内装建築塗料を含む。
【0044】
前述のように、本発明のFT安定剤添加剤組成物が作製されると、FT安定剤添加剤組成物は、例えば、FT安定化塗料生成物を調製するための塗料配合物に添加される。広範な実施形態では、塗料配合物を作製するためのプロセスは、例えば、(A)上記の樹脂系と、(B)上記の凍結融解安定剤添加剤組成物と、(C)いずれかの所望の任意の化合物と、を混合することを含む。塗料業界で使用される従来の混合方法はまた、本明細書において塗料配合物を調製するために有用であり、配合物の成分の混合は、例えば、1つの一般的な実施形態では摂氏20度(℃)~30℃の温度で実施される。
【0045】
FT安定剤添加剤組成物を含有する塗料配合物は、例えば、以下を含む、いくつかの有益な特性を示す:(1)塗料配合物は、改善したFT安定性を有する、(2)塗料配合物は、増加したスクラブ耐性を有する、(3)塗料配合物は、非VOC代替物である、(4)塗料配合物は、非APEベース代替物である。
【0046】
例えば、塗料配合物の特性の1つは、例えば、塗料配合物が、一実施形態では-5℃~室温(20℃)、別の実施形態では-10℃~室温(20℃)、さらに別の実施形態では-18℃~室温(20℃)の凍結融解安定性を有することを含む。塗料配合物の安定性特性およびその粘度は、GB/T-9168-2008に記載される試験手順に従って測定される。安定性を測定する上記試験に加えて、塗料配合物は、肉眼に対するその外観によって分析して、望ましくない凝集、沈降、またはケーキングを形成し得る任意の粒子を観察して、塗料配合物の安定性特性を確認することができる。
【0047】
塗料配合物の別の特性には、例えば、配合物を環境に優しい配合物にする非VOCまたは低VOC濃度を有する塗料配合物が含まれる。例えば、塗料配合物のVOC濃度は、存在する場合、
一実施形態では<150g/L、別の実施形態では<50g/L、さらに別の実施形態では<5g/Lである。塗料配合物のVOC特性は、GB 18582に従ってガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0048】
塗料配合物のさらに別の特性には、例えば、スクラブ耐性の増加を示す塗料配合物が含まれる。例えば、スクラブ耐性は、一実施形態ではFT添加剤としてPGを有する対照試料の60%~120%、別の実施形態では80%~120%、さらに別の実施形態では90%~110%を含む。塗料配合物のスクラブ耐性特性は、ASTM D2486-74Aに記載される手順に従ってフィルムがスクラブされるサイクルによって測定される。
【0049】
FT添加剤組成物は、例えば、水性塗料配合物において有用である。有利なことに、低VOC水性塗料配合物は、上記FT安定剤、成分(a)を使用して生成される。記載されるFT安定剤、成分(a)を有する低VOC水性塗料は、例えば、外装建築塗料および/または内装建築塗料において有用である。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての部および割合は、特に指示がない限り重量である。
【0051】
以下の発明例(Inv.Ex.)および比較例(Comp.Ex.)で使用される様々な用語および呼称を、以下で説明する。
「PVC」は、顔料体積濃度の略である。
【0052】
本発明のFT添加剤組成物を調製する際に使用される様々な材料、成分、または原料を表Iに説明する。
【表1】
【0053】
実施例1~6および比較例A~E-凍結融解添加剤
Inv.Ex.1~6およびComp.Ex.EのFT添加剤組成物試料は、表IIに指定される2つの成分を機械的撹拌下で単純に混合することによって調製した。組成物試料を表IIに記載する。
【表2】
【0054】
本発明のFT添加剤組成物を含有する塗料配合物を調製する際に使用される様々な材料、成分、または原料を表IIIに説明する。
【表3】
【0055】
塗料配合物を調製するための一般的なプロセス
以下の一般的なプロセスを使用して、本発明のFT添加剤組成物(本明細書では「FT安定剤」と呼ばれる)を含有する塗料配合物を調製した。
【0056】
パートA:粉砕手順
ステップ(1):分散プレートを分散機に取り付けた。
【0057】
ステップ(2):水を1リットル(L)ステンレススチールカップに加えた。
【0058】
ステップ(3):増粘剤およびpH緩衝剤をスチールカップに加え、スチールカップの内容物を450rpmで10分間継続的に分散させた。得られた混合物は徐々に粘度が高くなった。
【0059】
ステップ(4):分散剤および湿潤剤をそれぞれスチールカップにおいて混合物に添加し、スチールカップの内容物を10分間継続的に分散させた。
【0060】
ステップ(5):スチールカップにおける混合物の粘度が増加するにつれて、分散速度を徐々に1,800rpmに上昇させながら、二酸化チタンおよび充填剤をスチールカップにおいて混合物に添加した。
【0061】
ステップ(6):ステップ(5)から得られた混合物をさらに30分間連続的に分散させて、得られた最終混合物の均一性を保証した。
【0062】
パートB:レットダウン手順
ステップ(7):分散プレートを撹拌機に交換し、ステップ(6)から得られた混合物を撹拌機で1,800rpmで連続的に撹拌した。
【0063】
ステップ(8):結合剤、消泡剤、合体剤、および殺生物剤を、ステップ(7)から得られた混合物にそれぞれ加えた。混合物の粘度が低下するにつれて、撹拌機の撹拌速度を徐々に700~800rpmに減速し、次いで混合物を700~800rpmで10分間連続的に撹拌した。
【0064】
ステップ(9):増粘剤をステップ(8)からの混合物に加え、混合物の粘度が増加するにつれて、撹拌速度を1,800rpmまで増加させ、混合物を10分間連続的に撹拌した。塗料配合物である得られた混合物の、クレブス単位(KU)で報告される、粘度は、増粘剤を使用して調整した。KU粘度は、95KU~100KUの範囲で調整した。粘度は、従来のストーマー粘度計を使用して測定されるようにKUで報告する。よく知られているように、ストーマー粘度計は、粘度を決定するために負荷ベース回転を使用する。
【0065】
パートC:FT安定剤の追加
ステップ(10):ステップ(9)からの塗料配合物は、いくつかのパートに分けた。
【0066】
ステップ(11):塗料配合物の各パートを700~800rpmで連続的に撹拌し、次いで、配合物を連続的に10分間撹拌しながら、FT安定剤を(表IIに記載されるように試験される特定の配合物に従った)配合物に添加した。
【0067】
ステップ(12):試験されるステップ(11)の配合物からの各塗料配合物試料は、試料をFT試験に供する前に、実験室において実験室カウンタートップ上で室温(約23℃)で少なくとも24時間保持した。
【0068】
実施例7~9-塗料配合物
3つの塗料配合物は、上記一般手順を使用して調製し、塗料配合物は、本明細書において以下に記載されるように試験および評価した。3つの塗料配合物は、表IVに記載されており、(1)SA結合剤(59%PVC)を含むミドルエンド建築塗料、(2)AA結合剤(52%PVC)を含む内装建築塗料、および(3)AA結合剤(55.6%PVC)を含むミドルエンド外装建築塗料を含む。配合物に使用されるPVCは、50%~70%の範囲で適用され、3つの配合物は、内装および外装の両方の建築塗料をカバーし、配合物にはSAおよびAAタイプの結合剤を使用した。
【表4】
【0069】
性能評価試験
凍結融解安定性試験(GB/T-9168-2008)
塗料配合物試料を-5±2℃の温度の冷凍庫に入れ、18時間凍結させた。次いで、塗料試料を冷凍庫から取り出し、室温(約23℃)下に6時間置いた。凍結融解(FT)プロセスを各塗料試料について3サイクル繰り返し、配合物の外観を、現象:沈殿、ゲル化、凝固、または凝集のいずれかについて視覚的に確認した。配合物において上記の現象が視覚的に観察されなかった場合、配合物の凍結融解安定性を認定した。
【0070】
塗料配合物のKU粘度は、FT性能の指標として上記FT試験前および後に試験した。KU粘度変化が低いほど、配合物のFT性能が良好である。
【0071】
スクラブ耐性試験(ASTM試験方法D 2486-74A)
塗料配合物試料を試験するための一般的な手順は、以下のとおりであった:
ステップ(1):黒色ビニルスクラブチャート上に150ミクロン(μm)フィルムアプリケーターで塗料のドローダウンを作製する。
【0072】
ステップ(2):黒色ビニルスクラブチャートを現在の温度の部屋(CTR)で7日間乾燥させる。
【0073】
ステップ(3):黒色ビニルスクラブチャートをスクラブマシンに置き、研磨スクラブ媒体、例えば、タイプSC-2を使用してチャートを試験する。
【0074】
ステップ(4):スクラブ耐性試験を開始し、第1のカットスルーサイクルを記録する。
【0075】
性能評価結果
実験1-SA結合剤(59%PVC)を含む塗料配合物
(a)粘度
凍結融解添加剤試料の総投与量は、各試験で1重量%に保った。デルタKU、すなわち、FT試験後に得られたKUから初期KUを引いたものが、本明細書では凍結融解添加剤試料のFT性能の尺度として使用される。デルタKUが小さいほど、FT安定化性能が良好である。
【0076】
表Vおよび
図1に示される試験結果から、凍結防止化合物、CP300、単独(Comp.Ex.A)が低いFT安定化性能を示したことを見ることができる。
FT試験の3サイクル後、塗料試料は、撹拌下でも流動性のない固化した外観を示した。凍結防止化合物、CP300を乳化剤、15-S-9と混合した場合(Inv.Ex.1~4)、より良好な流動性およびより少ない骨材とともにFT性能が大幅に改善した。凍結防止化合物、CP300、単独(Comp.Ex.A)および乳化剤、15-S-9、単独(Comp.Ex.B)と比較して、2つの成分のブレンドは、より小さなデルタKUを示した。相乗効果は、重量で8/2~4/6のCP300/15-S-9の混合比に見られた。対照的に、Comp.Ex.Eでは、乳化剤、L-64を凍結防止化合物、CP300と混合し、低いFT性能が見られた。
【表5】
【0077】
(b)スクラブ耐性
スクラブ耐性は、塗料層の高密度化および粉砕防止の指標である。前述のように、TSPタイプ生成物の1つの欠点は、スクラブ耐性特性に対する悪影響である。このスクラブ耐性試験では、Comp.Ex.D(1%PGを使用)を対照として使用した。表VIに示されるように、Inv.Ex.5(CP-300/15-S-9)が使用された場合、スクラブ耐性は、PG性能の91.7%に維持された。対照的に、Comp.Ex.B(15-S-9)のスクラブ耐性は、PG性能の48.2%に維持された。乳化剤、15-S-9を含むComp.Ex.Bは、表Vに示されるInv.Ex.1のデルタKU粘度よりも高いデルタKU粘度を有し、Comp.Ex.Bのスクラブ耐性は、表VIに示されるInv.Ex.1のスクラブ耐性よりもほぼ2倍悪かった。Comp.Ex.C(FT-100)のスクラブ耐性性能は、51.9%であり、これも良くなかった。
【表6】
【0078】
実験2-AA結合剤(52%PVC)を含む内装建築塗料
発明例は、AA結合剤を含有する塗料配合物において評価した。表VIIに示されるように、Comp.Ex.BおよびComp.Ex.Cと比較して、FT添加剤組成物(Inv.Ex.2および6)は、非常に小さいデルタKUを達成した。同時に、FT添加剤組成物(Inv.Ex.2および6)のスクラブ耐性性能は、
FT-100(Comp.Ex.B)よりも良好であった。
【表7】
【0079】
実験3-AA結合剤(55.6%PVC)を含むミドルエンド外装建築塗料
表VIIIに示されるように、AA結合剤を含む外装塗料で試験を実施した。上記の他の実験の結果と同様に、Inv.Ex.2は、小さなデルタKUで良好なFT性能を示した。加えて、Inv.Ex.2のスクラブ耐性は、Comp.Ex.BおよびComp.Ex.Cの両方よりも良好であった。
【表8】
【0080】
上記のように実施される試験から、例えば、以下を含むいくつかの結論に到達することができる:(1)本発明の解決策は、単純な機械的混合によって容易に得ることができる、(2)上述の基準を満たす凍結防止化合物および乳化剤の混合物は、凍結融解サイクル中に塗料配合物を安定化するための効果的な性能を達成することができる、(3)相乗効果は、本発明の組成物の成分についての特定の混合比を使用することによって達成することができる、(4)良好なEH&Sプロファイルは、非VOC、非APEOベース特性で達成することができる、(5)スクラブ耐性性能の有意な改善は、従来のTSP誘導体と比較して、本発明の組成物を使用して得ることができる、(6)解決策は、水性建築塗料配合物における異なる結合剤と適合性であり得る。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)少なくとも1つの乳化剤と、を含む、凍結融解安定剤添加剤組成物であって、前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、安定性を有する塗料配合物を提供し、前記塗料配合物の粘度が、凍結融解安定性試験前および後にストーマー粘度計を使用して23℃で測定される場合、前記配合物が、GB/T-9168-2008に記載の凍結融解安定性試験に供された後、前記塗料配合物の粘度の変化が、0パーセント~10パーセント未満であるような、凍結融解安定剤添加剤組成物。
【請求項2】
前記凍結防止化合物が、グリセリンアルコキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、ソルビトールアルコキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの乳化剤が、C12~C14第一級もしくは第二級アルコキシレート、ヒマシ油エトキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ブチレンオキシド、またはそれらの混合物を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、粒子凝集、沈降、またはケーキングを欠く外観を有する塗料配合物を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、(i)0重量パーセント~1重量パーセント未満のVOCレベル、および(ii)0重量パーセント~0.1重量パーセント未満のAPEレベルを有する塗料配合物を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記凍結融解安定剤添加剤組成物が、ASTM D2486-74Aに記載の手順に従って測定されるようにプロピレングリコールを含むものの60パーセント~120パーセントのスクラブ耐性を有する塗料配合物を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記乳化剤が、アルコキシル化乳化剤またはその誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(a)グリセリンアルコキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、ソルビトールアルコキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの凍結防止化合物と、(b)C12~C14第一級もしくは第二級アルコキシレート、ヒマシ油エトキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ブチレンオキシド、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの乳化剤と、を含む、凍結融解安定剤添加剤組成物。
【請求項9】
(A)樹脂系と、(B)請求項1に記載の凍結融解安定剤添加剤組成物と、を含む、塗料配合物。
【請求項10】
前記樹脂系、成分(A)が、アクリルポリマー、スチレン-アクリルポリマー、酢酸ビニル-アクリルポリマー、エチレン-酢酸ビニルポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの結合剤を含む、請求項9に記載の塗料配合物。
【国際調査報告】