(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】圧延動作中のねじれ角を決定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B21B 19/04 20060101AFI20220810BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20220810BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20220810BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20220810BHJP
B21B 19/06 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B21B19/04
B21C51/00 D
B21B38/00 E
B21B38/04
B21B19/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565984
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2019061578
(87)【国際公開番号】W WO2020224758
(87)【国際公開日】2020-11-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513314366
【氏名又は名称】ヴァローレック ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デア ロフト,マーク
(72)【発明者】
【氏名】フォルス,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】クレンペル,クリスティアン
(57)【要約】
入側製品から出側製品への圧延中に出側製品のねじれ角を決定する非破壊的な方法に関する。該方法は、圧延中に入側製品の入側回転速度を測定するステップと、圧延中に対応する出側製品の出側回転速度を測定するステップと、縦方向の速度を測定してデルタ回転を決定するステップと、デルタ回転ならびに縦方向の出側速度および/または入側速度からねじれ角を決定するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入側製品から出側製品への圧延中に前記出側製品のねじれ角を決定するための非破壊的な方法であって、
・ 前記圧延中に前記入側製品の入側回転速度を測定するステップと、
・ 前記圧延中に対応する前記出側製品の出側回転速度を測定するステップと、
・ 対応する前記出側製品および/または前記入側製品のそれぞれの縦方向の出側速度および/または入側速度を測定するステップと、
・ 前記入側回転速度および前記出側回転速度からデルタ回転を決定するステップと、
・ 前記デルタ回転ならびに前記縦方向の出側速度および/または入側速度からねじれ角を決定するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記出側製品の出側外径を測定するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入側回転速度、前記出側回転速度、ならびに前記縦方向の出側速度および/または入側速度の測定は、開始時間(t
0)から終了時間(t
1)までの間に行われることを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記入側回転速度の測定は、入側開始時間から入側終了時間まで行われ、前記出側回転速度の測定は、出側開始時間から出側終了時間まで行われ、前記入側開始時間と前記入側終了時間が入側時間窓を定義し、前記出側開始時間と前記出側終了時間が出側時間窓を定義し、前記入側時間窓と前記出側時間窓は、開始時間(t
0)から終了時間(t
1)までの時間窓を共有していることを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ねじれ角(TA)は、次式(F)によって求められ、
【数1】
式中、Deltaは、前記開始時間t
0から前記終了時間t
1までの時間窓、または共有している前記時間窓における、前記出側製品の実行ターン数と前記入側製品の実行ターン数とのターン数の差を表し、
OD
Hは前記出側製品の外径、V
HTは前記出側製品の前記縦方向の出側速度を表すことを特徴とする、
請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記縦方向の出側速度V
HTは、前記縦方向の入側速度V
BTに伸長係数k
eを掛けたものに置き換えられる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記入側製品の入側外径を測定するステップをさらに含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記出側速度の測定と前記出側外径の測定は、前記出側製品の軸に直交する同一平面で行われることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記入側速度の測定と前記入側外径の測定は、前記入側製品の軸に直交する同一平面で行われることを特徴とする、
請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記開始時間(t
0)および前記終了時間(t
1)は、定常段階で選択されることを特徴とする、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記入側製品がビレットであり、前記出側製品が素管である場合、前記圧延の動作は、穿孔動作である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記入側製品が素管であり、前記出側製品がシェルである場合、前記圧延の動作は、伸長動作である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
入側製品から出側製品への圧延中にねじれ角を非破壊的に決定するための装置であって、
前記入側製品の速度を測定するように構成された第1の入側センサと、
前記出側製品の速度を測定するように構成された第1の出側センサと、
出側外径センサ(60)と、
圧延中に前記センサが実行した測定に基づいて、前記出側製品のねじれ角を決定するように構成された電子機器と、
を備える、
装置。
【請求項14】
前記第1の出側センサ(58)は、前記出側製品の横方向の出側速度を測定するように構成され、
前記出側製品の縦方向の出側速度を測定するように構成された第2の出側センサ(57)をさらに備えることを特徴とする、
請求項13または14に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の入側センサ(53)は、前記入側製品の横方向の入側速度を測定するように構成されることを特徴とする、
請求項13~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記入側製品の縦方向の入側速度を測定するように構成された第2の入側センサ(52)をさらに備える、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
入側外径センサ(54)をさらに備える、
請求項13~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の入側センサ(53)、前記第2の入側センサ(52)および前記入側外径センサ(54)は、同じ入側測定平面(55)で測定が行われるように配置されることを特徴とする、
請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第1の出側センサ(58)、前記第2の出側センサ(57)および前記出側外径センサ(60)は、同じ出側測定平面(59)で測定が行われるように配置されることを特徴とする、
請求項14~18のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交叉穿孔圧延または伸長工程によるシームレス管(継目無管)の製造の分野に属し、熱間圧延パイプ、特に一般に素管(hollows)と呼ばれる鋼製の中空管の製造工程における非破壊的な検査方法に関する。また、本発明は、該方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交叉穿孔圧延によるシームレス管の製造において、ビレットとも呼ばれる円筒状の鋼ブランクが入側製品として圧延ロール装置の入側で、ビレットの軸に対して所定の傾斜を有するロール間に導入される。ロールによって、ビレットには、ビレットの材料の降伏強度よりも大きい応力が加えられる。ロールがビレットをプラグに引き付けることで、ビレットの中心部から材料が外側に押し出され、ビレットの材料がロールの外側と裏側に引き付けられる。これにより、内径と外径とを有する素管と呼ばれる出側製品が作製される。交叉穿孔圧延では、ビレットと、ビレットから形成された素管とがワークを形成する。素管は、圧延ロール装置の出側から圧延ロール装置を出る。
【0003】
交叉圧延による伸長工程において、ビレットと同様に、入側製品として素管が圧延ロール装置の入側に導入され、圧延ロール装置の出側に押し出される。ここで、プラグやマンドレルなどの内部ツールが使用される場合がある。対応する出側製品は、シェルと呼ばれる。
【0004】
ロールは、交叉穿孔圧延や伸長の際には、ワークを回転させる。穿孔動作の終了時には、ビレットは素管になっている。伸長動作の終了時には、素管はシェルになっている。交叉圧延ミルの重要な要素は、ロールとプラグまたはマンドレルである。ロールは、すべて同様に回転して、中心部に配置された圧延材料と共に、歯車のように作用する。そのため、材料は、ロールの回転方向とは逆方向に回転される。ロールの傾斜によって、ねじのような動きになる。
【0005】
ロールは、ロール軸が圧延材料の軸に平行な平面に配置されるバレルの形態を有してもよく、円錐形の形状を有してもよい。円錐形の場合、送り角がゼロであれば、ロール軸はワークの軸と1点で交差することになる。
【0006】
このような圧延ロール装置が、米国特許第3,719,066号に記載されている。
【0007】
穿孔または伸長工程において、材料の軸に沿ってロールの表面速度が異なるため、出側製品にねじれが生じる。このねじれは、膨張係数、穿孔器の種類、送り角、トー角、ロールの形状、材料のグレード、送り効率など、複数の要因に依存する。そのため、ねじれは、圧延ロール装置、材料および圧延工程のパラメータに依存する。
【0008】
また、圧延工程では、作製された中空管やシェルに欠陥が生じることがある。そのため、これらの欠陥を検出するために、完成した中空管またはシェルは検査される。外面の欠陥には、横方向のもの、縦方向のもの、または斜め方向のものがある。斜め方向の欠陥は、横方向と縦方向の間の角度を有する。欠陥は、素管またはシェルの外面に位置する場合がある。外面の斜め方向の欠陥は、一般的にねじれの向きに関係しており、ねじれ角がわかっていれば、UTで容易に検出することができる。このため、中空管またはシェルのねじれ角を特定することで、その後、外面の斜め方向の欠陥の向きを推定することができ、結果として、超音波検査などの非破壊的な検査によるこれらの斜め方向欠陥の検出性を向上させることができるという利点がある。
【0009】
ねじれ角を評価する方法として、代表的なビレットの外面に切り欠き部を設ける方法が知られている。切り欠き部は、ビレット全体に沿って延在しているため、縦方向の溝を有する溝付きビレットを得ることができる。次いで、溝付きビレットは、穿孔される。素管に刻まれたこの溝の跡を測定することで、穿孔後にねじれ角を評価することができる。この解決策は、多くの試験を必要とし、パラメータのセットごとに少なくとも1つの試験を行う必要があるため、実用的ではなく、コストがかかる。また、この解決策は、時間がかかり、資源を消費する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、効率よくねじれ角を決定することができ、工業的ペースにも対応可能な非破壊的な方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
有利には、本発明の方法および装置は、穿孔後に伸長工程を行う、マンネスマン圧延、ピルガー圧延、プラグ圧延、マンドレル圧延などのあらゆる交叉圧延工程に対応可能である。
【0012】
有利には、本発明の方法は、非破壊的な方法である。また、交叉圧延スタンドのすべてのパラメータや穿孔工程から独立して、ねじれを決定することができる。
【0013】
本発明は、入側製品から出側製品への圧延中に出側製品のねじれ角を決定するための非破壊的な方法に関する。該方法は、
・ 圧延中に入側製品の入側回転速度を測定するステップと、
・ 圧延中に対応する出側製品の出側回転速度を測定するステップと、
・ 対応する出側製品および/または入側製品のそれぞれの縦方向の出側速度および/または入側速度を測定するステップと、
・ 入側回転速度および出側回転速度からデルタ回転を決定するステップと、
・ デルタ回転ならびに縦方向の出側速度および/または入側速度からねじれ角を決定するステップと、
を含む。
【0014】
一態様によれば、入側回転速度、出側回転速度、ならびに縦方向の出側速度および/または入側速度の測定は、開始時間(t0)から終了時間(t1)までの間に行われてもよい。
【0015】
別の態様によれば、入側回転速度の測定は、入側開始時間から入側終了時間まで行われてもよく、出側回転速度の測定は、出側開始時間から出側終了時間まで行われてもよい。入側開始時間と入側終了時間が入側時間窓を定義し、出側開始時間と出側終了時間が出側時間窓を定義する。入側時間窓と出側時間窓は、開始時間(t0)から終了時間(t1)までの時間窓を共有している。
【0016】
本方法は、出側製品の出側外径を測定するステップをさらに含んでいてもよい。
【0017】
ねじれ角(TA)は、次式(F)によって求められてもよい。
【0018】
【数1】
式中、Deltaは、開始時間t
0から終了時間t
1までの時間窓、または共有している時間窓における、出側製品の実行ターン数と入側製品の実行ターン数とのターン数の差を表す。また、OD
Hは出側製品の外径、V
HTは出側製品の縦方向の出側速度を表す。
【0019】
一実施形態において、縦方向の出側速度VHTは、縦方向の入側速度VBTに伸長係数keを掛けたものに置き換えられる。
【0020】
本方法は、入側製品の入側外径を測定するステップをさらに含んでいてもよい。
【0021】
一態様によれば、出側速度の測定と出側外径の測定は、出側製品の軸に直交する同一平面で行われてもよい。
【0022】
別の態様によれば、入側速度の測定と入側外径の測定は、入側製品の軸に直交する同一平面で行われてもよい。
【0023】
開始時間(t0)および終了時間(t1)は、ねじれ角をより正確に決定するために、定常段階で選択されてもよい。
【0024】
一実施形態において、入側製品がビレットであり、出側製品が素管である場合、圧延動作は、穿孔動作であってもよい。
【0025】
別の実施形態において、入側製品が素管であり、出側製品がシェルである場合、圧延動作は、伸長動作であってもよい。
【0026】
また、本発明は、入側製品から出側製品への圧延中にねじれ角を非破壊的に決定するための装置に関する。該装置は、
・ 入側製品の速度を測定するように構成された第1の入側センサと、
・ 出側製品の速度を測定するように構成された第1の出側センサと、
・ 出側外径センサ(60)と、
・ 圧延中にセンサが実行した測定に基づいて、出側製品のねじれ角を決定するように構成された電子機器と、
を備える。
【0027】
第1の出側センサ(58)は、出側製品の横方向の出側速度を測定するように構成されてもよい。本装置は、出側製品の縦方向の出側速度を測定するように構成された第2の出側センサ(57)をさらに備えてもよい。
【0028】
第1の入側センサ(53)は、入側製品の横方向の入側速度を測定するように構成されてもよい。
【0029】
一実施形態によれば、該装置は、入側製品の縦方向の入側速度を測定するように構成された第2の入側センサ(52)を備えてもよい。
【0030】
該装置は、入側外径センサ(54)をさらに備えてもよい。
【0031】
変形例において、第1の入側センサ(53)、第2の入側センサ(52)および入側外径センサ(54)は、同じ入側測定平面(55)で測定が行われるように配置されてもよい。
【0032】
変形例において、第1の出側センサ(58)、第2の出側センサ(57)および出側外径センサ(60)は、同じ出側測定平面(59)で測定が行われるように配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】交叉圧延スタンドの圧延間隔を模式的に示す図である。
【
図2】ねじれの跡を有する出側製品を模式的に示す図である。
【
図3b】穿孔後の溝付き素管を模式的に示す図である。
【
図4】ビレットの穿孔中の圧延力測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、管の圧延工程の一般的な原理を示す。以下、穿孔の場合の原理を説明する。ただし、伸長工程の場合も基本的に同じステップが行われる。本工程では、一般的にビレット(1)と呼ばれる丸棒が、圧延温度で加熱され、同じ回転方向に駆動される2つの傾斜している孔型ロール(2a,2b)の間で、入側(5)を介して圧延ロール装置に導入される。ビレット(1)は、内部プラグ(3)によって穿孔される。そのため、ビレット(1)は、内部プラグ(3)の上、および圧延間隔を形成する孔型ロール(2a,2b)の間を一方向に圧延される。ビレット(1)は、内部プラグ(3)の反対側で素管(4)になる。素管は、出側(6)で圧延ロール装置を出る。該装置は、ビレットの外径と比較して、素管の外径を大きくするか、維持するか、わずかに小さくするように構成することができる。該装置は、所定の壁厚を有する素管を作製するように構成され得る。
【0035】
穿孔中のビレット(1)の変形を把握するために、試験を行った。縁部の長さが60×60mmのグリッド状になるように溝を機械加工したビレットを用いて試験を行った。グリッドの溝の深さは3mm、幅は4mmであった。20のビレットを作製し、様々な圧延条件で処理した。
【0036】
図2は、素管(4)を模式的に示している。素管(4)は、第1の端部(21)または始端部と、中央部またはヒレ部(23)と、第2の端部(22)または終端部と、を有する。ねじれ線(24)が図に示されている。ねじれ線(24)の異なるパターンを示す3つの領域を観察することができる。ねじれ線(24)は、ヒレ部(23)に沿って概ね規則的な楕円を形成している。このねじれ線(24)は、始端部(21)および終端部(22)でより不規則になっている。そのため、ヒレ部(23)におけるねじれ線(24)は、ヒレ部(23)に沿って概ね一定のねじれ角に対応しており、端部におけるねじれは、圧延間隔の開始と終了に影響される。実際、これらの3つの領域は、穿孔工程の3つの段階に対応している。すなわち、素管の始端部は、噛み込みまたは圧延開始時に作製され、ヒレ部(23)は、静止または定常段階で作製され、終端部(22)は、終了時または圧延終了段階で作製される。
【0037】
試験の間、鋼の挙動を確認した。
図3aは、直線状の軸方向溝(31)および直線状の周方向溝(32)を有するビレット(30)を含む、特殊な溝付き入側製品を展開して模式的に示している。圧延前の溝付きビレット(30)は、縦方向に向けられた直線状の軸方向溝(31)と、横方向に向けられた周方向溝(32)と、を有し、これらがグリッド状のパターンを形成している。このパターンに従って、寸法の異なる複数のビレットを作製した。このビレットを加熱し、膨張係数や素管の壁厚などの様々なパラメータを変えて圧延した。溝付きビレット(30)を穿孔した後、対応する溝付き素管(33)では、周方向溝(32)が横方向に向いたままで互いに離間しているのに対して、軸方向溝(31)が縦方向に対して角度をなして螺旋を形成していることが観察された。これは、
図3bに模式的に示されている。そのため、回転するロール(2a,2b)の作用により、金属が螺旋状に変形する。
【0038】
変形パターンは、溝付き素管(33)の始端と終端を除いて、溝付き素管(33)に沿って規則的であり、螺旋部は略同じ角度を有することが観察された。その角度は、変形があまり重要でない管の終端部を除いて概ね一定であり、管の本体の主要部分で観察される螺旋部の角度よりも小さい。
【0039】
これらの試験から、いくつかの数学的モデルが検証された。その結果、ねじれ角が、中空管のある点における第1の時間から第2の時間までの相対的な変位の成分の関数であり、且つ第1の時間から第2の時間までのこの変位中のビレットの回転に対する中空管の相対的な回転量の関数であるというアプローチが見出された。
【0040】
また、管の速度を経時的に正確な座標で統合することで、ビレットまたは素管の変位を評価することができる。
【0041】
本発明の方法を使用することで、始端部および終端部における実用的なねじれを決定することができる。ただし、これは、ねじれが始端部および終端部に沿って変化するため、精度が低い。また、現在の試験機では角度の変化が考慮されていないため、その後の非破壊的な検査の目的には関係がない。このような始端部および終端部におけるねじれは、非破壊的な検査の目的上、未定義のねじれとみなされる。
【0042】
興味深いことに、未定義のねじれ長さを、始端部のねじれ長さまたは終端部のねじれ長さとして定義することができる。未定義のねじれ長さは、
・ ビレットの圧延中に圧延力を測定するステップ、またはビレットの圧延中に圧延トルクを測定するステップと、
・ 素管の横方向の速度を測定するステップと、
・ 圧延力または圧延トルクがゼロから上昇する第1の時間と、圧延力または圧延トルクがそれぞれ所定の力または所定のトルクに達する第2の時間との間の第1の時間窓を決定するステップと、
・ 横方向の速度測定値および第1の時間窓から噛み合わせ(21)の長さを決定するステップと、
・ 圧延力または圧延トルクが所定の力または所定のトルクから減少する第3の時間と、圧延力または圧延トルクが概ねゼロに達する第4の時間との間の第2の時間窓を決定するステップと、
・ 横方向の速度測定値および第2の時間窓からクリアリング(22)の長さを決定するステップと、
によって決定することができる。
【0043】
これにより、終端部および始端部における未定義のねじれ角の長さを決定することができる。
【0044】
始端部のねじれ長さまたは終端部のねじれ長さは、独立して決定することができる。
【0045】
定常段階とは、穿孔中に加えられる最大圧延力の92%の圧延力または圧延トルクとして定義される。
【0046】
図4は、典型的な圧延トルクの時間関数を表す曲線を示している。ここで、噛み合わせ(41)は、定常段階(42)に対応する曲線の概ね平坦な部分まで増加するトルクを示している。この曲線では、加えられた最大トルクの92%以上をトルクが維持している間は、一部が不規則になる場合があり、圧延トルクの減少に対応するクリアリングで終了している。
【0047】
確立されたモデルは、主に定常段階で機能する。定常段階は、圧延速度またはトルク/力が実質的に一定であるか、または他の方法で定義された作業時間に対応する。作業時間は、圧延開始時の初期加速と圧延終了時の速度低下を除いている。また、定常段階は、静止プロセスとも呼ばれる。
図4に示すように、管を圧延すると、圧延開始時(41)には、ビレットに加えられる圧延力が漸進的に増加し、速度が増加する。圧延終了時(43)には、圧延力および速度が低下する。これは、少なくともロールに対するビレットおよび管の出入りによるものである。最後に、このモデルは、圧延力が概ね一定であり、圧延速度も概ね一定であり、経時的な変化が10%未満である定常段階(42)に適している。
【0048】
定常段階は、圧延力および圧延トルクの測定値に基づいて決定され得る。
【0049】
本発明の一態様によれば、ねじれ角(TA)は、次式(F)によって求められる。
【0050】
【数2】
式中、Deltaは、開始時間t
0から終了時間t
1までの時間窓における、出側製品(素管またはシェル)の実行ターン数と入側製品(ビレットまたは素管)の実行ターン数とのターン数の差を表す。これは、次式で表すことができる。
Delta=turns
outlet-turns
inlet
穿孔動作に適用した場合、次式で表すことができる。
Delta=turns
hollow-turns
billet
turns
outletは、出側製品の外面で測定した開始時間t
0から終了時間t
1までの横方向の出側速度の積分値を、素管またはシェルである出側製品の外径で割ることで求められてもよい。
【0051】
turnsinletは、入側製品の外面で測定した開始時間t0から終了時間t1までの横方向の入側速度の積分値を、ビレットまたは素管である入側製品の外径で割ることで求められてもよい。
【0052】
速度の測定とは、表面における速度の測定である。これらの測定は、光学的手段によって行われてもよい。また、測定は、速度レーザセンサによって行うことができる。このようなセンサの利点は、速度の測定を高温の材料に行うことができることである。実際、ビレット、素管およびシェルは、圧延のために数百度の温度になっている場合がある。高温の材料と低温の材料で試験を行ったところ、このようなレーザセンサは、材料の温度差に影響されないことが判明した。
【0053】
また、代替的に、外径を測定することなく、直線的な横方向の速度(長さ単位を秒などの時間単位で割った値)ではなく、回転速度(rad/s)を直接測定するセンサを用いて、出側または入側の回転速度を評価することもできる。
【0054】
また、式中、ODHは中空間の外径を表す。
【0055】
ビレットおよび素管の外径を、光学センサで測定してもよい。
【0056】
開始時間t0から終了時間t1までは、選択された時間窓に対応していてもよい。好ましくは、開始時間t0から終了時間t1までは、ワークの穿孔の定常段階に入るように選択される。
【0057】
また、式中、VHTは出側製品の縦方向の出側速度を表す。回転速度の測定は、レーザセンサなどの光学的手段によって行われる。
【0058】
代替的に、伸長因子に対応する乗数係数keを用いて、入側製品の縦方向の入側速度を使用することができる。
【0059】
変形例において、第1の開始時間および第1の終了時間は、入側製品の測定のために選択され、第2の開始時間および第2の終了時間は、出側製品の測定のために選択される。これらは、第1の時間窓または第2の時間窓をそれぞれ定義する。この場合、上記式は、第1の時間窓と第2の時間窓に共通する共有時間窓に適用される。代替的に、同じ継続時間を有する時間窓が第1の時間窓および第2の時間窓で選択され、上記式(F)を適用するために定常段階で選択される。
【0060】
また、本発明は、素管のねじれ角を測定するための装置に関する。該装置は、
(1)入側横方向速度測定装置(53)を有する入側モジュール(51)と、
(2)出側横方向速度測定装置(57)および出側縦方向速度測定装置(58)と、出側外径測定装置(60)と、を有する出側モジュール(56)と、
を備える。好ましくは、出側横方向速度測定装置および出側縦方向速度測定装置は、測定が出側測定平面(59)と呼ばれる同じ平面で行われるように配置される。出側測定平面は、交叉圧延ロール装置における材料の縦軸(X)に概ね垂直である。また、外径測定装置は、ZUMBACH社による回転式のSTEELMASTER SMRゲージであり得る。この測定装置の原理は、回転モードまたは静止モードにおけるレーザによって実現される光学的測定に基づいている。
【0061】
速度測定装置は、Polytec社によるレーザ表面速度計LSV_065などのレーザ測定装置であり得る。
【0062】
入側モジュール(51)は、入側縦方向速度測定装置(54)を備えてもよい。好ましくは、入側横方向速度測定装置および入側縦方向速度測定装置は、測定が入側測定平面(54)と呼ばれる同じ平面で行われるように配置される。この入側測定平面は、交叉圧延ロール装置における材料の縦軸(X)に概ね垂直である。すなわち、測定は、測定平面内に位置する管の表面の位置で行われる。この特徴により、正確な測定を行うことができる。
【0063】
入側モジュール(51)は、ビレットなどの入側製品の外径が一般的に知られている場合であっても、入側製品の外径を自動的に取得して処理する入側外径測定装置(55)を備えてもよい。
【0064】
一態様によれば、横方向速度測定装置および縦方向速度測定装置、ならびに外径測定装置(それぞれ出側または入側の装置)は、レーザ光線で測定されるスポットまたは表面が、入側または出側測定平面(55;59)と呼ばれる中心線に直交する同一平面に位置するように配置される。これは、速度の測定と素管外径の測定とが同一平面で行われることを意味する。その利点は、計算されたねじれ角の精度が向上することである。
【0065】
測定平面(入側および出側)は、圧延間隔に可能な限り近づける必要がある。
【0066】
有利には、本方法は、非破壊的な方法である。
【0067】
本方法は、あらゆる鋼グレード、またはあらゆる種類の材料に対応し、また、あらゆる寸法、ビレットのあらゆる外径および得られる管のあらゆる外径に対応するため、ビレットの外径と素管の外径の間の様々な比率にも対応できるという利点がある。
【0068】
また、本方法は、作製されたすべての管で行うことができ、特定の管に特化したものではない。
【0069】
バーの回転と軸方向の動きが測定精度に与える影響を確認するための試験を行った。まず、第1の軸方向速度で冷管にゆっくりとした動きを刻印し、外径の測定を行った。この実験を、第1の縦方向の速度よりも早い第2の縦方向の速度で繰り返した。これは、89.1mm~89.3mmの外径で0.05mmの差が観察されただけで、外径への大きな影響は確認されなかった。回転速度を変えて試験を行ったが、これらの試験でも、測定された平均外径に大きな影響は確認されなかった。
【0070】
素管に沿った複数の位置でねじれ角を計算することができる。素管に沿った異なる位置の異なるねじれ角から、平均的なねじれ角を算出することができる。
【国際調査報告】