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特表2022-537151癌の処置のためのネオアジュバント併用療法での活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体の使用
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  • 特表-癌の処置のためのネオアジュバント併用療法での活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】癌の処置のためのネオアジュバント併用療法での活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220817BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20220817BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220817BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K47/66
C07K19/00 ZNA
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573714
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020037556
(87)【国際公開番号】W WO2020252358
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/860,953
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011599
【氏名又は名称】シートムエックス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フンハリー,レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ウィル,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン,イファ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF68
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は一般に、癌の処置のための活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体のネオアジュバント併用療法の利用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)活性化可能抗PDL1抗体であって、
(i)ヒトPDL1を結合し、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、前記ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)前記CMに直接的または間接的に連結されたマスキング部分(MM)、
を含む活性化可能抗PDL1抗体、および
(B)抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を前記対象に施すこと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、240mg~2400mgの範囲の固定用量で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で前記対象に投与される、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ネオアジュバント併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、0.1mg/kg~20mg/kgの範囲の用量で前記対象に投与される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ネオアジュバント併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、3mg/kg未満の用量で前記対象に投与される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ネオアジュバント併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、1mg/kgおよび2mg/kgからなる群から選択される用量で前記対象に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体であって、
(i)ヒトPDL1を結合し、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、前記ABに、直接的または間接的に、連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)前記CMに、直接的または間接的に、連結されたマスキング部分(MM)、
を含む活性化可能抗PDL1抗体、および
(B)1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を前記対象に施すことを含む、方法。
【請求項8】
前記MMが、SEQ ID NO:1~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記MMが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記CMが、SEQ ID NO:26~92からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記CMが、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記活性化可能抗PDL1抗体が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記活性化可能抗PDL1抗体が、軽鎖および重鎖を含み、前記軽鎖が、前記MM、前記CM、および前記VLを含み、かつ前記軽鎖が、SEQ ID NO:120のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記活性化可能抗PDL1抗体が、軽鎖および重鎖を含み、かつ前記軽鎖が、スペーサー、前記MM、前記CM、および前記VLを含み、かつ前記軽鎖が、SEQ ID NO:121のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体であって、
SEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含む重鎖、ならびにSEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、
ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)、切断可能な部分(CM)およびマスキング部分(MM)を含む、
活性化可能抗PDL1抗体と;
(B)1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を前記対象に施すことを含む、方法。
【請求項16】
前記軽鎖が、SEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記軽鎖が、SEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
時間間隔あたり前記ネオアジュバント併用療法の1回用量の頻度で前記対象に前記ネオアジュバント併用療法の多回用量を投与することを含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ネオアジュバント併用療法の2回用量が、時間間隔あたり1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ネオアジュバント併用療法の多回用量が、3週ごとに前記ネオアジュバント併用療法の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項18~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記多回用量での前記活性化可能抗PDL1抗体の各用量が、同じであり、かつ前記多回用量での前記抗CTLA-4抗体の各用量が、同じである、請求項18~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ネオアジュバント併用療法の最終用量後に前記固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除することをさらに含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除するステップが、前記ネオアジュバント併用療法の最終用量の投与の6週後に実行される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体および前記抗CTLA-4抗体成分が両者とも、静脈内輸注により投与される、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記対象に前記ネオアジュバント併用療法を施すことが、前記ネオアジュバント併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与する前に前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与することを含む、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記ネオアジュバント併用療法を施すことが、同日に前記対象に前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分と前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記ネオアジュバント併用療法を施すことが、60分の期間にわたり静脈内輸注により前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与することを含む、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記ネオアジュバント併用療法を施すことが、30分の期間にわたり静脈内輸注により前記ネオアジュバント併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ネオアジュバント併用療法を施すことが、前記ネオアジュバント併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与した後30分以上を経て前記ネオアジュバント併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記ネオアジュバント併用療法を施すことが、
(i)60分の期間にわたり静脈内輸注により前記活性化可能抗PDL1抗体を投与すること;
(ii)生理食塩水洗浄液を投与すること;および
(iii)30分の期間にわたり静脈内輸注により前記抗CTLA-4抗体を投与すること、
を含み、
前記抗CTLA-4抗体を投与するステップが、前記活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後30分以上を経て実行される、
請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記活性化可能抗PDL1抗体の用量および前記抗CTLA-4抗体の用量を含む術後併用療法の1または複数回の用量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記術後併用療法の多回用量が、第一の術後期間にわたり時間間隔あたり前記術後併用療法の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記術後併用療法の2回用量が、前記第一の術後期間にわたり時間間隔あたり1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項31~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記術後併用療法の多回用量が、3週ごとに前記術後併用療法の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、240mg~2400mgの範囲の固定用量で前記対象に投与される、請求項31~34に記載の方法。
【請求項36】
前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で前記対象に投与される、請求項31~34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、0.1mg/kg~20mg/kgの範囲の用量で前記対象に投与される、請求項31~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、3mg/kg未満の用量で前記対象に投与される、請求項31~36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、1mg/kgおよび2mg/kgからなる群から選択される用量で前記対象に投与される、請求項31~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、800mgの固定用量で前記対象に投与され、かつ前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、1mg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項31~34のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記術後併用療法の初回用量が、腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除するステップの4~8週後の範囲のまたは5~7週後の範囲の期間内に前記対象に投与される、請求項31~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記術後併用療法の初回用量が、腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除するステップの約6週後に前記対象に投与される、請求項31~41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体および前記抗CTLA-4抗体成分が両者とも、静脈内輸注により投与される、請求項31~41のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記術後併用療法を前記対象に施すことが、前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与する前に前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与することを含む、請求項31~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記術後併用療法を施すことが、同日に前記対象に前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分と前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項31~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記術後併用療法を施すことが、前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を60分の期間にわたり静脈内輸注により投与することを含む、請求項31~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記術後併用療法を施すことが、30分の期間にわたり静脈内輸注により前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項31~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記術後併用療法を施すことが、前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与した後30分以上を経て前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項31~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記術後併用療法を施すことが、
(i)60分の期間にわたり静脈内輸注により前記活性化可能抗PDL1抗体を投与すること;
(ii)生理食塩水洗浄液を投与すること;および
(iii)30分の期間にわたり静脈内輸注により前記抗CTLA-4抗体を投与すること、
を含み、
前記抗CTLA-4抗体を投与するステップが、前記活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後30分以上を経て実行される、
請求項31~45のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記1または複数回の用量の前記術後併用療法の投与後に前記活性化可能抗PDL1抗体の用量の投与を含む術後単剤療法の1または複数回の用量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項31~49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記術後単剤療法の多回用量が、第二の術後期間にわたり時間間隔あたり前記活性化可能抗PDL1抗体の投与1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項31~49のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記術後単剤療法の多回用量が、2週ごとに前記活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
活性化可能抗PDL1抗体の前記術後単剤療法の用量が、240mg~2400mgの範囲の固定用量である、請求項50~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
活性化可能抗PDL1抗体の前記術後単剤療法の用量が、800mgの固定用量である、請求項50~53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
活性化可能抗PDL1抗体の前記術後単剤療法の用量が、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量である、請求項50~52のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記術後単剤療法の多回用量が、前記術後併用療法の最終用量の投与後2週ごとに前記活性化可能抗PDL1抗体の800mgの1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項51~52のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記術後単剤療法の初回用量が、前記術後併用療法の最終用量の3週後に前記対象に投与される、請求項50~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記第二の術後期間が、約1年である、請求項51~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記活性化可能抗PDL1抗体の前記術後単剤療法の用量が、静脈内輸注として投与される、請求項50~58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記抗CTLA-4抗体が、イピリムマブである、請求項1~59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記癌が、黒色腫である、請求項1~60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記癌が、切除可能なステージIII黒色腫である、請求項1~61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
癌の処置での使用のための活性化可能抗PDL1抗体であって、前記処置が、対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体とのネオアジュバント併用で前記対象に静脈内で前記活性化可能抗PDL1抗体を投与することを含み、

(i)ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)であって、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、前記ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)前記CMに、直接的または間接的に、連結されたマスキング部分(MM)と、
(B)抗CTLA-4抗体、
を含み、
前記対象が、固形腫瘍を有する、
活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項64】
前記ネオアジュバント併用の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、800mgの固定用量で前記対象に投与される、請求項63に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項65】
前記ネオアジュバント併用の前記抗CTLA-4抗体成分が、3mg/kg未満の用量でまたは1mg/kgおよび2mg/kgからなる群から選択される用量で前記対象に投与される、請求項63~64のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項66】
癌の処置における使用のための活性化可能抗PDL1抗体であって、前記処置が、1mg/kgの用量で対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体とのネオアジュバント併用で800mgの固定用量で前記対象に静脈内で前記活性化可能抗PDL1抗体を投与することを含み、
(i)ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)であって、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、前記ABに、直接的または間接的に、連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)前記CMに、直接的または間接的に、連結されたマスキング部分(MM)、
を含み、
前記対象が、固形腫瘍を有する、
活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項67】
前記MMが、SEQ ID NO:1~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項63~66のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項68】
前記MMが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む、請求項64~67のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項69】
前記CMが、SEQ ID NO:26~92からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項63~68のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項70】
前記CMが、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含む、請求項63~69のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項71】
SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、請求項63~70のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項72】
軽鎖および重鎖を含み、かつ前記軽鎖が、前記MM、前記CM、および前記VLを含み、かつ前記軽鎖が、SEQ ID NO:120のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む、請求項63~70のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項73】
軽鎖および重鎖を含み、前記軽鎖が、前記MM、前記CM、および前記VLを含み、かつ前記軽鎖が、SEQ ID NO:121のアミノ酸配列を含み、かつ前記重鎖が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む、請求項63~70のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項74】
癌の処置における使用のための活性化可能抗PDL1抗体であって、前記処置が、1mg/kgの用量で対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体とのネオアジュバント併用で800mgの固定用量で前記対象に静脈内で前記活性化可能抗PDL1抗体を投与することを含み、
SEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、
ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)、切断可能な部分(CM)およびマスキング部分(MM)を含み、
前記対象が、固形腫瘍を有する、
活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項75】
前記軽鎖が、SEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項76】
前記軽鎖が、SEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項77】
前記処置が、時間間隔あたり前記ネオアジュバント併用の1回用量の頻度で前記対象に前記ネオアジュバント併用の多回用量を投与することを含む、請求項63~76のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項78】
前記ネオアジュバント併用の2回用量が、時間間隔あたり1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項77に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項79】
前記ネオアジュバント併用の前記多回用量が、3週ごとに前記ネオアジュバント併用の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項77~78のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項80】
前記多回用量での前記活性化可能抗PDL1抗体の各用量が、同じであり、かつ前記多回用量での前記抗CTLA-4抗体の各用量が、同じである、請求項77~79のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項81】
前記処置が、前記ネオアジュバント併用の最終用量の投与後に前記固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除することをさらに含む、請求項63~80のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項82】
前記固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除するステップが、前記ネオアジュバント併用の最終用量の投与の6週後に実行される、請求項81に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項83】
前記ネオアジュバント併用の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、前記ネオアジュバント併用の前記抗CTLA-4抗体成分を投与する前に前記対象に投与される、請求項63~82のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項84】
前記ネオアジュバント併用の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、60分の期間にわたり静脈内輸注により投与される、請求項63~83のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項85】
前記ネオアジュバント併用の前記抗CTLA-4抗体成分が、30分の期間にわたり静脈内輸注により前記対象に投与される、請求項63~84のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項86】
前記ネオアジュバント併用の前記抗CTLA-4抗体成分が、前記ネオアジュバント併用の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与した後30分以上を経て前記対象に投与される、請求項63~85のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項87】
前記処置が、
(i)60分の期間にわたり静脈内輸注により前記活性化可能抗PDL1抗体を投与すること;
(ii)生理食塩水洗浄液を投与すること;および
(iii)30分の期間にわたり静脈内輸注により前記抗CTLA-4抗体を投与すること、
を含み、
前記抗CTLA-4抗体を投与するステップが、前記活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後30分以上を経て実行される、
請求項63~83のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項88】
前記処置が、前記活性化可能抗PDL1抗体の用量および前記抗CTLA-4抗体の用量を含む術後併用療法の1または複数回の用量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項63~87のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項89】
前記術後併用療法の多回用量が、第一の術後期間にわたり時間間隔あたり術後併用療法の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項88に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項90】
前記術後併用療法の2回用量が、第一の術後期間にわたり時間間隔あたり1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項88~89のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項91】
前記術後併用療法の多回用量が、3週ごとに前記術後併用療法の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項88~90のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項92】
前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分が、800mgの固定用量で前記対象に投与され、かつ前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分が、1mg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項88~91のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項93】
前記術後併用療法の初回用量が、前記腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の4~8週後の範囲のまたは5~7週後の範囲の期間内に前記対象に投与される、請求項88~92のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項94】
前記術後併用療法の初回用量が、前記腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の約6週後に前記対象に投与される、請求項88~93のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項95】
前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体および前記抗CTLA-4抗体成分が両者とも、静脈内輸注により投与される、請求項88~94のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項96】
前記対象に前記術後併用療法を施すことが、前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与する前に前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与することを含む、請求項88~95のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項97】
前記術後併用療法を施すことが、60分の期間にわたり静脈内輸注により前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与することを含む、請求項88~96のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項98】
前記術後併用療法を施すことが、30分の期間にわたり静脈内輸注により前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項88~97のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項99】
前記術後併用療法を施すことが、前記術後併用療法の前記活性化可能抗PDL1抗体成分を投与した後30分以上を経て前記術後併用療法の前記抗CTLA-4抗体成分を投与することを含む、請求項88~98のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項100】
前記術後併用療法が、
(i)60分の期間にわたり静脈内輸注により前記活性化可能抗PDL1抗体を投与すること;
(ii)生理食塩水洗浄液を投与すること;および
(iii)30分の期間にわたり静脈内輸注により前記抗CTLA-4抗体を投与すること、
を含み、
前記抗CTLA-4抗体を投与するステップが、前記活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後30分以上を経て実行される、
請求項88~96のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項101】
前記処置が、前記術後併用療法の前記1または複数回の用量の投与後に前記活性化可能抗PDL1抗体の用量を含む術後単剤療法の1または複数回の用量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項63~100のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項102】
前記術後単剤療法の多回用量が、第二の術後期間にわたり時間間隔あたり前記活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項101に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項103】
前記術後単剤療法の前記多回用量が、2週ごとに前記活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で前記対象に投与される、請求項102に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項104】
前記術後単剤療法の用量が、前記活性化可能抗PDL1抗体の800mgの固定用量である、請求項102に記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項105】
前記術後単剤療法の初回用量が、前記術後併用療法の最終用量の3週後に前記対象に投与される、請求項101~104のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項106】
前記活性化可能抗PDL1抗体の前記術後単剤療法の用量が、静脈内輸注として投与される、請求項101~105のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項107】
前記抗CTLA-4抗体が、イピリムマブである、請求項63~106のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項108】
前記癌が、黒色腫である、請求項63~107のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【請求項109】
前記癌が、切除可能なステージIII黒色腫である、請求項63~108のいずれかに記載の活性化可能抗PDL1抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月13日出願の米国特許仮出願第62/860,953号の利益を主張するものであり、その仮出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照
ファイル名「sequencelisting.txt」として、EFS-Webを介してコンピュータ可読形態(CFR)で37米国特許法施行規則第1.821条に準じて本明細書と同時に電子的に出願された「配列表」は、参照により本明細書に組み入れられる。配列表の電子コピーは、2020年6月12日に作成され、ディスクサイズは、37.6キロバイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は一般に、癌の処置のためのネオアジュバント併用療法での活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
抗体に基づく治療は、複数の疾患に効果的処置を提供してきたが、いくつかの例では、広範囲の標的発現による毒性が、それらの治療有効性を限定してきた。加えて、抗体に基づく治療法は、投与後の循環からの急速なクリアランスなどの他の限定を呈してきた。
【0005】
低分子治療法の領域では、活性化学物質のプロドラッグを提供する方策が、開発されてきた。そのようなプロドラッグは、相対的に不活性の(または顕著に低い活性の)形態で投与される。投与されると、プロドラッグは、インビボで活性化合物に代謝される。そのようなプロドラッグ方策は、意図する標的への薬物の増加された選択性、および有害効果の低減を提供し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、抗体に基づく治療法の分野では、低分子プロドラッグの所望の特徴を模倣する抗体が、必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
一態様において、本発明は、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)活性化可能抗PDL1抗体であって、
(i)ヒトPDL1を結合し、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)CMに直接的または間接的に連結されたマスキング部分(MM)、
を含む活性化可能抗PDL1抗体、および
(B)抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すこと
を含む、方法を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)800mgの用量の活性化可能抗PDL1抗体であって、
(i)ヒトPDL1を結合し、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)CMに直接的または間接的に連結されたマスキング部分(MM)、
を含む活性化可能抗PDL1抗体、および
(B)1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すこと
を含む、方法を提供する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体であって、
SEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含む重鎖、ならびにSEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、
ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)、切断可能な部分(CM)およびマスキング部分(MM)を含む、
活性化可能抗PDL1抗体と;
(B)1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すこと
を含む、方法を提供する。幾つかの実施形態において、軽鎖は、SEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、軽鎖は、SEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含む。
【0010】
またさらなる態様において、本発明は、癌の処置での使用のための活性化可能抗PDL1抗体であって、処置が、対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体とのネオアジュバント併用で対象に活性化可能抗PDL1抗体を静脈内投与することを含み、
活性化可能抗PDL1抗体が、
(i)ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)であって、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、ABに直接的または間接的に連結された、切断可能な部分(CM)と、
(iii)CMに直接的または間接的に、連結されたマスキング部分(MM)と、
を含む活性化可能抗PDL1抗体と、
(B)抗CTLA-4抗体、
を含み、
対象が、固形腫瘍を有する、
活性化可能抗PDL1抗体を提供する。
【0011】
特定の態様において、癌は、黒色腫である。幾つかの実施形態において、癌は、切除可能なステージIII黒色腫である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に記載されたネオアジュバント併用療法試験の略図を提供する。この試験では、活性化可能抗PDL1抗体およびイピリムマブのネオアジュバント併用療法が、それぞれ800mgの固定用量および3mg/kgで3週ごとに(q3w)輸注2回(1~42日目)として施され、続いて43日目に腫瘍の外科的手術を施す。腫瘍の外科的切除の6週後(85日目に開始する)、それぞれ800mgの固定用量および1mg/kgの活性化可能抗PDL1抗体およびイピリムマブの術後併用療法が、3週ごとに(q3w)輸注2回(85~126日目)として施される。127日目に開始して、任意選択による活性化可能抗PDL1抗体の単剤療法が、800mgの固定用量で2週ごとに最大1年間、施される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な記載
本発明は、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すことにより、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、および/または癌の進行を遅延させる方法を提供する。対象は、哺乳動物、典型的にはヒトである。
【0014】
一実施形態において、本発明は、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、および/または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)活性化可能抗PDL1抗体であって、
(i)ヒトPDL1を結合し、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)CMに直接的または間接的に連結されたマスキング部分(MM)、
を含む活性化可能抗PDL1抗体、および
(B)抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すこと
を含む、方法を提供する。
【0015】
本明細書で用いられる、用語「併用療法」に関連して用いられる場合の用語「ネオアジュバント」は、対象が固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除を受ける前に、固形腫瘍を有する対象に施される併用療法を指す。したがってネオアジュバント併用療法は、外科的処置の転帰を向上させることが意図される。幾つかの実施形態において、対象が固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除を受ける前にネオアジュバント併用療法を対象に施すことは、腫瘍を退縮させ、その結果手術を実施することがより効果的、かつ/または容易である。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法を対象に施すことは、ネオアジュバント併用療法を受けなければ外科的切除を介して処置可能でない固形腫瘍が、外科的切除を介して処置可能になり得る。幾つかの実施形態において、固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の前にネオアジュバント併用療法を対象に施すことは、術後の対象に残存するより少ない癌細胞をもたらす(例えば、ネオアジュバント併用療法を受けていない対象に残存する癌細胞の数に比較して)。幾つかの実施形態において、固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の前にネオアジュバント併用療法を対象に施すことは、術後の対象に残存する癌細胞をなくする(例えば、以前に腫瘍に存在した癌細胞がない)。本明細書の以下により詳細に記載される幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体を含む術後併用療法、および場合により、活性化可能抗PDL1抗体を含むさらなる術後単剤療法もまた、対象に施される。用語「併用療法」または「単剤療法」に関連して用いられる場合の用語「術後」は、固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の処置後の時点で対象に施される併用療法または単剤療法を指す。幾つかの実施形態において、対象は、固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の前にネオアジュバント併用療法(例えば、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)を施され、その後、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体を含む術後併用療法が、対象に施される。幾つかの実施形態において、対象は、固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の前にネオアジュバント併用療法(例えば、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)を施され、その後、術後併用療法(例えば、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)が、対象に施され、活性化可能抗PDL1抗体を含むさらなる術後単剤療法もまた、術後併用療法の術後実施の後に対象に施される。
【0016】
本明細書で用いられる用語「活性化可能抗PDL1抗体」は、以下の構造を含む化合物を指す:マスキング部分(MM)および切断可能な部分(CM)を含むプロドメインに直接的または間接的のどちらかでカップリングされた、ヒトPDL1を結合する抗PDL1抗体またはそれらの抗原結合部分(集合的に「AB」)。本明細書で用いられる用語「ヒトPDL1」および「PDL1」は、ヒトプログラム細胞死リガンド1を指すために本明細書で互換的に用いられる。本明細書で用いられる用語「PD1」は、ヒトプログラム細胞死タンパク質1を指す。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、非ヒトPDL1(例えば、マウスPDL1、ラットPDL1、霊長類PDL1、イヌPDL1、ネコPDL1、ウマPDL1、ウシPDL1、ブタPDL1、またはヒツジPDL1)に結合する抗PDL1抗体またはそれらの抗原結合部分を含む。ヒトPDL1に結合する活性化可能抗PDL1抗体の特性、機能、または利点を記載する本明細書に記載された実施形態が非ヒトPDL1に結合する活性化可能抗体の実施形態にも概ね適用可能であることは、当業者に理解されよう。例えば「活性化可能抗マウスPDL1抗体」は、それがマウスPDL1に結合できるように活性化され得る(例えば、アンマスクされる(unmasked))。
【0017】
用語「マスキング部分」および「MM」は、ABの付近に位置づけられた場合にPDL1へのAB(したがって活性化可能抗PDL1抗体)の結合を妨げるペプチドを指すために本明細書で互換的に用いられる。用語「切断可能な部分」および「CM」は、少なくとも1種のプロテアーゼ(例えば、腫瘍微小環境に存在する内因性プロテアーゼ)の基質を含むペプチドを指すために本明細書で互換的に用いられる。CMは、CMの切断がABの付近の位置からのMMの放出(本明細書では「アンマスキング」または「活性化」とも称される)を可能にするように、MMおよびAB成分に相対的に位置づけられる。したがってABのアンマスキングは典型的には、PDL1を結合できる「活性化された」抗PDL1抗体の発生をもたらす。用語「切断されていない」または「インタクトの」は、プロドメインの部分が活性化可能抗PDL1抗体の構造内でインタクトであるような活性化可能抗PDL1抗体を指すために本明細書で互換的に用いられる。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、天然由来または非天然由来アミノ酸残基またはアミノ酸類似体を含むポリマーを指すために本明細書で互換的に用いられる。
【0018】
活性化可能抗PDL1抗体のAB成分は典型的には、PDL1に対する結合特異性を有する抗PDL1抗体の抗原結合ドメインの少なくとも一部を含む。そのため活性化された抗PDL1抗体は、PDL1に対する特異性を有する。用語「抗原結合ドメイン」は本明細書では、抗原結合に参加する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗原結合部位は、重(「H」)および軽(「L」)鎖の可変(「V」)領域のアミノ酸残基により形成される。「超可変領域」と称される、重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチ(highly divergent stretches)が、「フレームワーク領域」または「FR」として知られるより保存されたフランキングストレッチの間に挟まれている。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域が、三次元空間内で互いに関して配設されて、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の各々は、それぞれ3つのCDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り付けは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (全体として参照により本明細書に組み入れられる、National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987および1991);Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);Chothia, et al. Nature 342:878-883 (1989))の定義に従う。
【0019】
具体的実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体のAB成分は、SEQ ID NO:128(CDRL1)、129(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130(CDRL3)に対応するアミノ酸配列を含む可変軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域(VL)と、SEQ ID NO:125(CDRH1)、SEQ ID NO:126(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127(CDRH3)に対応するアミノ酸配列を含む可変重鎖CDRを含む重鎖可変領域(VH)とを含む。CDR配列のこの特異的組み合わせを有するABは、各々が参照により本明細書に組み入れられるPCT公開第WO2016/149201号およびWO2018/222949号に記載される通り、ヒトPDL1に対し結合特異性を有することが実証されている。
【0020】
本発明の実践で用いられる活性化可能抗PDL1抗体は、例えば、1つまたは複数の軽鎖可変領域(VL)、重鎖可変領域(VH)、または軽鎖および/もしくは重鎖の超可変領域、可変断片(Fv)、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fab断片、一本鎖抗体(scab)、一本鎖可変領域(scFv)、相補性決定領域(CDR)、ドメイン抗体(dAB)、BHHまたはBNAR型のシングルドメイン重鎖免疫グロブリン、シングルドメイン軽鎖免疫グロブリン、またはヒトPDL1を結合することが知られる他のポリペプチドを含むABを有してよい。幾つかの実施形態において、ABは、2つのFab領域および1つのFc領域を含む免疫グロブリンを含む。特定の実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、多価、例えば二価、三価などである。多くの場合、活性化可能抗PDL1抗体は、2つの軽鎖(各々がVL領域を含む)および2つの重鎖(各々がVH領域を含む)を含む。特定の実施形態において、各軽鎖は、VLに直接的または間接的に(例えば、リンカーを介して)連結されたプロドメインを含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一であり、同様に2つの重鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一である。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一であるが、2つの重鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一でない。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一でないが、2つの重鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一である。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖は、アミノ酸配列に関して互いに同一でなく、2つの重鎖は、互いにアミノ酸配列に関して互いに同一でない。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖は、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、またはより多くの)アミノ酸残基が互いに異なり、かつ/または2つの重鎖は、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、またはより多くの)アミノ酸残基が互いに異なる。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖は、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、またはより多くの)アミノ酸残基が互いに異なるが同一のCDR配列を有し、かつ/または2つの重鎖は、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、またはより多くの)アミノ酸残基が互いに異なるが同一のCDR配列を有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖のアミノ酸配列は、互いに少なくとも80%同一(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一)であり、かつ/または2つの重鎖のアミノ酸配列は、互いに少なくとも80%同一(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一)である。これらの実施形態の幾つかにおいて、2つの軽鎖のアミノ酸配列は、互いに少なくとも80%同一(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一)であり、同一のCDR配列を有し、かつ/または2つの重鎖のアミノ酸配列は、互いに少なくとも80%同一(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一)であり、同一のCDR配列を有する。
【0021】
活性化可能抗PDL1抗体におけるプロドメインの存在はしたがって、ABがPDL1ターゲットへの結合からマスクされない、またはさもなければ阻害されない場合、さもなければ非処置部位のABの結合から生じ得る毒性および/または有害副作用が低減される可能性を付与する。
【0022】
本発明の実践での使用に適したマスキング部分としては、活性化可能抗PDL1抗体の構造で用いられた場合に、ヒトPDL1への対応する親抗PDL1 ABの結合親和性に比較して、ヒトPDL1への活性化可能抗PDL1抗体の結合親和性を低減するように機能するマスキング部分が挙げられる。本明細書で用いられる用語「親AB」は、プロドメインのないABを指す。幾つかの実施形態において、MMは、ヒトPDL1への活性化可能抗PDL1抗体の結合親和性が、全体として参照により本明細書に組み入れられるPCT公開第WO2016/149201号に記載されたものなどのインビボまたはインビトロアッセイで測定された場合に、少なくとも2、4、6、8、12、28、24、30、36、48、60、72、84、もしくは96時間、または5、10、15、30、45、60、90、120、150、もしくは180日間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12か月間、またはより長い期間に、ヒトPDL1への対応する親ABの結合に比べて少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%およびさらに100%低減されるように、選択される。
【0023】
幾つかの実施形態において、MMは、得られる活性化可能抗PDL1抗体が、ヒトPDL1への対応する親ABの結合親和性よりも少なくとも5、10、25、50、100、250、500、1,000、2,500、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000、1,000,000、5,000,000、10,000,000、50,000,000倍、もしくはより多い倍率、または5~10、10~100、10~1,000、10~10,000、10~100,000、10~1,000,000、10~10,000,000、100~1,000、100~10,000、100~100,000、100~1,000,000、100~10,000,000、1,000~10,000、1,000~100,000、1,000~1,000,000、1000~10,000,000、10,000~100,000、10,000~1,000,000、10,000~10,000,000、100,000~1,000,000、もしくは100,000~10,000,000倍の間の倍率だけ低い、ヒトPDL1への結合親和性を呈するように、選択される。本明細書で用いられる、本明細書の上および下に表される全ての数値範囲は、その範囲を定義する数値限界を含むものとする。
【0024】
本明細書で用いられる活性化可能抗PDL1抗体における使用に適したマスキング部分は、全体として参照により本明細書に組み入れられるPCT公開第WO2009/025846号に記載されたものを含む、種々の公知技術のいずれかを利用して容易に同定され得る。
【0025】
多くの場合、MMは、約2~40アミノ酸長のポリペプチドである。幾つかの実施形態において、MMは、最大で約40アミノ酸長のポリペプチドである。特定の実施形態において、MMポリペプチドのアミノ酸配列は、標的ヒトPDL1のアミノ酸配列と異なる。幾つかの実施形態において、MMポリペプチド配列は、任意のヒトPDL1アミノ酸配列と50%以下同一である。幾つかの実施形態において、MMポリペプチド配列は、標的PDL1のアミノ酸配列と40%、30%、25%、20%、15%、または10%以下の同一性がある。2つの配列の%同一性は、デフォルトギャップウェイトを用いたGAPまたはBESTFITなどのプログラムを利用するテストポリペプチド配列と参照ポリペプチド配列の最適アライメントにより決定される。
【0026】
模範的なマスキング部分としては、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含むものが挙げられる:YCEVSELFVLPWCMG(SEQ ID NO:1)、SCLMHPHYAHDYCYV(SEQ ID NO:2)、LCEVLMLLQHPWCMG(SEQ ID NO:3)、IACRHFMEQLPFCHH(SEQ ID NO:4)、FGPRCGEASTCVPYE(SEQ ID NO:5)、ILYCDSWGAGCLTRP(SEQ ID NO:6)、GIALCPSHFCQLPQT(SEQ ID NO:7)、DGPRCFVSGECSPIG(SEQ ID NO:8)、LCYKLDYDDRSYCHI(SEQ ID NO:9)、PCHPHPYDARPYCNV(SEQ ID NO:10)、PCYWHPFFAYRYCNT(SEQ ID NO:11)、VCYYMDWLGRNWCSS(SEQ ID NO:12)、LCDLFKLREFPYCMG(SEQ ID NO:13)、YLPCHFVPIGACNNK(SEQ ID NO:14)、IFCHMGVVVPQCANY(SEQ ID NO:15)、ACHPHPYDARPYCNV(SEQ ID NO:16)、PCHPAPYDARPYCNV(SEQ ID NO:17)、PCHPHAYDARPYCNV(SEQ ID NO:18)、PCHPHPADARPYCNV(SEQ ID NO:19)、PCHPHPYAARPYCNV(SEQ ID NO:20)、PCHPHPYDAAPYCNV(SEQ ID NO:21)、PCHPHPYDARPACNV(SEQ ID NO:22)、PCHPHPYDARPYCAV(SEQ ID NO:23)、PCHAHPYDARPYCNV(SEQ ID NO:24)、およびPCHPHPYDARAYCNV(SEQ ID NO:25)。多くの場合、活性化可能抗PDL1抗体は、アミノ酸配列GIALCPSHFCQLPQT(SEQ ID NO:7)を含むMMを含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、MMは、SEQ ID NO:1~25からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0028】
CMにおける使用に適した基質は、各々が全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,666,817号、米国特許第8,563,269号、PCT公開第WO2014/026136号、およびBoulware et al.“Evolutionary optimization of peptide substrates for proteases that exhibit rapid hydrolysis kinetics,” Biotechnol Bioeng. 106.3 (2010): 339-46に記載されるものを包含する種々の公知の技術のいずれかを利用して同定されてよい。
【0029】
幾つかの実施形態において、CMを切断するプロテアーゼは、罹患した組織において活性であり、例えば上方制御され、プロテアーゼは、活性化可能抗体がプロテアーゼに暴露されると、活性化可能抗体中のCMを切断する。典型的には罹患組織は、腫瘍組織である。幾つかの実施形態において、プロテアーゼは、組織中でPDL1と共局在し、プロテアーゼは、活性化可能抗体がプロテアーゼに暴露されると、活性化可能抗体中のCMを切断する。幾つかの実施形態において、プロテアーゼは、非処置部位の組織(例えば、健常組織)よりも、処置部位または診断部位のPDL1ターゲット含有組織の中に、またはそこに接近して、相対的に高いレベルで存在し、プロテアーゼは、活性化可能抗体がプロテアーゼに暴露されると、活性化可能抗体中のCMを切断する。
【0030】
本明細書で用いられる活性化可能抗PDL1抗体中での使用に適した例示的CMとしては、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含むものが挙げられる:LSGRSDNH(SEQ ID NO:26)、TGRGPSWV(SEQ ID NO:27)、PLTGRSGG(SEQ ID NO:28)、TARGPSFK(SEQ ID NO:29)、NTLSGRSENHSG(SEQ ID NO:30)、NTLSGRSGNHGS(SEQ ID NO:31)、TSTSGRSANPRG(SEQ ID NO:32) TSGRSANP(SEQ ID NO:33)、VHMPLGFLGP(SEQ ID NO:34)、AVGLLAPP(SEQ ID NO:35)、AQNLLGMV(SEQ ID NO:36)、QNQALRMA(SEQ ID NO:37)、LAAPLGLL(SEQ ID NO:38)、STFPFGMF(SEQ ID NO:39)、ISSGLLSS(SEQ ID NO:40)、PAGLWLDP(SEQ ID NO:41)、VAGRSMRP(SEQ ID NO:42)、VVPEGRRS(SEQ ID NO:43)、ILPRSPAF(SEQ ID NO:44)、MVLGRSLL(SEQ ID NO:45)、QGRAITFI(SEQ ID NO:46)、SPRSIMLA(SEQ ID NO:47)、SMLRSMPL(SEQ ID NO:48)、ISSGLLSGRSDNH(SEQ ID NO:49)、AVGLLAPPGGLSGRSDNH(SEQ ID NO:50)、ISSGLLSSGGSGGSLSGRSDNH(SEQ ID NO:51)、LSGRSGNH(SEQ ID NO:52)、SGRSANPRG(SEQ ID NO:53)、LSGRSDDH(SEQ ID NO:54)、LSGRSDIH(SEQ ID NO:55)、LSGRSDQH(SEQ ID NO:56)、LSGRSDTH(SEQ ID NO:57)、LSGRSDYH(SEQ ID NO:58)、LSGRSDNP(SEQ ID NO:59)、LSGRSANP(SEQ ID NO:60)、LSGRSANI(SEQ ID NO:61)、LSGRSDNI(SEQ ID NO:62)、MIAPVAYR(SEQ ID NO:63)、RPSPMWAY(SEQ ID NO:64)、WATPRPMR(SEQ ID NO:65)、FRLLDWQW(SEQ ID NO:66)、ISSGL(SEQ ID NO:67)、ISSGLLS(SEQ ID NO:68)、ISSGLL(SEQ ID NO:69)、ISSGLLSGRSANPRG(SEQ ID NO:70)、AVGLLAPPTSGRSANPRG(SEQ ID NO:71)、AVGLLAPPSGRSANPRG(SEQ ID NO:72)、ISSGLLSGRSDDH(SEQ ID NO:73)、ISSGLLSGRSDIH(SEQ ID NO:74)、ISSGLLSGRSDQH(SEQ ID NO:75)、ISSGLLSGRSDTH(SEQ ID NO:76)、ISSGLLSGRSDYH(SEQ ID NO:77)、ISSGLLSGRSDNP(SEQ ID NO:78)、ISSGLLSGRSANP(SEQ ID NO:79)、ISSGLLSGRSANI(SEQ ID NO:80)、AVGLLAPPGGLSGRSDDH(SEQ ID NO:81)、AVGLLAPPGGLSGRSDIH(SEQ ID NO:82)、AVGLLAPPGGLSGRSDQH(SEQ ID NO:83)、AVGLLAPPGGLSGRSDTH(SEQ ID NO:84)、AVGLLAPPGGLSGRSDYH(SEQ ID NO:85)、AVGLLAPPGGLSGRSDNP(SEQ ID NO:86)、AVGLLAPPGGLSGRSANP(SEQ ID NO:87)、AVGLLAPPGGLSGRSANI(SEQ ID NO:88)、ISSGLLSGRSDNI(SEQ ID NO:89)、AVGLLAPPGGLSGRSDNI(SEQ ID NO:90)、GLSGRSDNHGGAVGLLAPP(SEQ ID NO:91)、およびGLSGRSDNHGGVHMPLGFLGP(SEQ ID NO:92)。具体的実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、アミノ酸配列ISSGLLSGRSDNH(SEQ ID NO:49)を有するCMを含む。
【0031】
本発明の実践で用いられる活性化可能抗PDL1抗体は、種々の構造的形態で存在し得る。活性化可能抗体の模範的式を、以下に提供する。MMおよびCMは以下の式で異なる成分として示されるが、本明細書に開示された全ての模範的実施形態(式を含む)において、MMおよびCMのアミノ酸配列は、例えばCMがMM内に完全にまたは部分的に含有されるように、重複し得ることが企図されることに留意するべきである。
【0032】
活性化可能抗PDL1抗体のMM、CM、およびAB成分は、以下の式で示される通り配列されてよい(N末端からC末端への順に)
(MM)-(CM)-(AB)
(AB)-(CM)-(MM)
(式中、MM、CM、およびABは、先に定義された通りであり、各「-」は、独立して、直接的または間接的な(即ち、本明細書の以下に記載されるようなリンカーを介する)連結を指す。
【0033】
多くの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体構築物中に1つまたは複数のリンカーを挿入して、MM-CM接合、CM-AB接合またはその両方の1つまたは複数に可撓性を授けることが望ましい場合がある。例えば特定の実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、以下の式の1つを含んでよい(ここで以下の式は、N末端からC末端の方向、またはC末端からN末端の方向のどちらかのアミノ酸配列を表す)
(MM)-L1-(CM)-(AB)
(MM)-(CM)-L2-(AB)
(MM)-L1-(CM)-L2-(AB)
(式中、MM、CM、およびABは、先に定義された通りであり、L1およびL2は、同じであるまたは異なってよく、各々が独立して、場合により存在しても、または存在しなくてもよい)。
【0034】
本発明の実践で用いられる活性化可能抗PDL1抗体での使用に適したリンカーは、種々の長さのいずれかであってよい。適切なリンカーとしては、約1~約20アミノ酸、または約1~約19アミノ酸、または約1~約18アミノ酸、または約1~約17アミノ酸、または約1~約16アミノ酸、または約1~約15アミノ酸、または約2~約15アミノ酸、または約3~約15アミノ酸、または約3~約14アミノ酸、または約3~約13アミノ酸、または約3~約12アミノ酸の範囲の長さを有するものが挙げられる。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、各々独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸残基を含む1つまたは複数のリンカーを含む。
【0035】
典型的にはリンカーは、Gly、Ser、Ala、およびThrからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含むフレキシブルリンカーであり、多くの場合、リンカーは、GlyおよびSerからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。模範的なフレキシブルリンカーとしては、グリシンホモポリマー(G)(ここでnは、少なくとも1である整数、または約1~約30の範囲の整数、または約1~約25の範囲の整数、または約1~約20の範囲の整数、または約1~約15の範囲の整数、または約1~約10の範囲の整数である);例えば(GS)(ここでnは、少なくとも1である整数、または約1~約30の範囲の整数、または約1~約25の範囲の整数、または約1~約20の範囲の整数、または約1~約15の範囲の整数、または約1~約10の範囲の整数である)、(GSGGS)(SEQ ID NO:93)(ここでnは、少なくとも1である整数、または約1~約30の範囲の整数、または約1~約25の範囲の整数、または約1~約20の範囲の整数、または約1~約15の範囲の整数、または約1~約10の範囲の整数である)、(GGGS)(SEQ ID NO:94)(ここでnは、少なくとも1である整数、または約1~約30の範囲の整数、または約1~約25の範囲の整数、または約1~約20の範囲の整数、または約1~約15の範囲の整数、または約1~約10の範囲の整数である)を含む、グリシン-セリンコポリマー;例えばGGSG(SEQ ID NO:95)、GGSGG(SEQ ID NO:96)、GSGSG(SEQ ID NO:97、GSGGG(SEQ ID NO:98)、GSSGGSGGSGG(SEQ ID NO:99)、GSSGGSGGSGGS(SEQ ID NO:100)、GSSGGSGGSGGSGGGS(SEQ ID NO:101)、GSSGGSGGSG(SEQ ID NO:102)、GSSGGSGGSGS(SEQ ID NO:103)、GGGS(SEQ ID NO:104)、GSSG(SEQ ID NO:106)、GGGSSGGSGGSGG(SEQ ID NO:107)、GGSおよび同様のものなどのグリシンおよびセリン残基を含む、またはそれらからなるリンカー;例えばGSSGT(SEQ ID NO:105)などのグリシン、セリン、およびトレオニン残基を含む、またはそれらからなるリンカー;アラニン-セリンコポリマー、ならびに当該技術分野で公知の他のフレキシブルリンカーが挙げられる。
【0036】
本発明の実践で用いられる活性化可能抗PDL1抗体はまた、例えばMMのアミノ末端で、配置されるスペーサーを含んでよい。幾つかの実施形態において、スペーサーは、例えばN末端からC末端へ、スペーサー-MM-CM-AB(ここで各「-」は、独立して直接的または間接的な(即ち、本明細書に記載されたリンカーのいずれかを介する)連結を指す)の構造配列で、活性化可能抗PDL1抗体のMMに直接接続される。例示的なスペーサーアミノ酸配列は、以下の模範的アミノ酸配列のいずれかを含む、またはそれからなってよい:QGQSGS(SEQ ID NO:108);GQSGS(SEQ ID NO:109);QSGS(SEQ ID NO:110);SGS;GS;S;QGQSGQG(SEQ ID NO:111);GQSGQG(SEQ ID NO:112);QSGQG(SEQ ID NO:113);SGQG(SEQ ID NO:114);GQG;QG;G;QGQSGQ(SEQ ID NO:115);GQSGQ(SEQ ID NO:116);QSGQ(SEQ ID NO:117);SGQ;GQ;およびQ。
【0037】
したがって幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QGQSGS(SEQ ID NO:108)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列GQSGS(SEQ ID NO:109)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QSGS(SEQ ID NO:110)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列SGSを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列GSを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列Sを含む、またはそれからなる。 幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QGQSGQG(SEQ ID NO:111)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列GQSGQG(SEQ ID NO:112)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QSGQG(SEQ ID NO:113)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列SGQG(SEQ ID NO:114)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列GQGを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QGを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列Gを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QGQSGQ(SEQ ID NO:115)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列GQSGQ(SEQ ID NO:116)を含む、またはそれからなる。 幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列QSGQ(SEQ ID NO:117)を含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列SGQを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列GQを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列Qを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、スペーサー配列を含まない。
【0038】
具体的実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、PL07-2001-C5H9v2であり、それは2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。各軽鎖は、VLアミノ酸配列のN-末端側に位置づけられたプロドメインアミノ酸配列(即ち、MMおよびCMを含むプロドメイン)を含む。PL07-2001-C5H9v2の各軽鎖中の可変軽鎖(VL)アミノ酸配列は、SEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQDNGYPSTFGGGTKVEIKR(SEQ ID NO:119)。CDRL1、CDRL2、およびCDRL3は各々、下線を付された文字で示される。
【0039】
PL07-2001-C5H9v2の各重鎖は、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIWRNGIVTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWSAAFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:118)。CDRH1、CDRH2、およびCDRH3は各々、下線を付された文字で示される。
【0040】
したがって一実施形態において、本発明の実践で用いられる活性化可能抗PDL1抗体は、SEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含むVLと、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHとを含む。重鎖および軽鎖のVLおよびVHは、活性化可能抗PDL1抗体のABを一緒に形成する。
【0041】
スペーサー、MM、CM、VLおよびヒトカッパ定常ドメインを含むPL07-2001-C5H9v2の各軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:124で表される:
【化1】
【0042】
スペーサー配列は、下線が付された文字で示され(SEQ ID NO:108に対応)、MM配列は、斜体の文字で示され(SEQ ID NO:7に対応)、CMは、太文字で示される(SEQ ID NO:49に対応)。VL配列は、下線と斜体の文字で示される(SEQ ID NO:119に対応)。MM配列のC末端とCM配列のN末端の間に、第一のリンカー配列がある(SEQ ID NO:107に対応)。CM配列のC末端とVL配列のN末端の間に、第二のリンカー配列GGSがある。
【0043】
PL07-2001-C5H9v2の各重鎖配列は、SEQ ID NO:122の配列を含む:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIWRNGIVTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWSAAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(SEQ ID NO:122)。
【0044】
PL07-2001-C5H9v2の重鎖配列は、SEQ ID NO:118のVHと、IgG4 S229Pのアミノ酸配列を含む。したがって具体的実施形態において、本発明の方法は、SEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含む軽鎖と、SEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含む重鎖を含む活性化可能抗PDL1抗体を用い、軽鎖は、MM、CM、およびVL(ここでMMおよびCMは、プロドメイン内に位置づけられる)を含む。活性化可能抗PDL1抗体は典型的には、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。
【0045】
したがって本発明の実践での使用に適した活性化可能抗PDL1抗体は、SEQ ID NO:120に対応する配列により具体化される、PL07-2001-C5H9v2中の各軽鎖のMM-L1-CM-L2-VL構造を含む軽鎖を含んでよい:
GIALCPSHFCQLPQTGGGSSGGSGGSGGISSGLLSGRSDNHGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQDNGYPSTFGGGTKVEIKR(SEQ ID NO:120)。
【0046】
これらの実施形態の幾つかにおいて、軽鎖は、SEQ ID NO:123に表される通り、PL07-2001-C5H9v2の上記のMM-L1-CM-L2-VL-ヒトカッパ定常ドメイン構造を含む:
GIALCPSHFCQLPQTGGGSSGGSGGSGGISSGLLSGRSDNHGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQDNGYPSTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:123)。
【0047】
これらの実施形態において、各重鎖は典型的には、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0048】
同様に適切な活性化可能抗PDL1抗体は、SEQ ID NO:121に対応する配列により具体化される、PL07-2001-C5H9v2中の各軽鎖のスペーサー-MM-L1-CM-L2構造を含む軽鎖を含んでよい:
QGQSGSGIALCPSHFCQLPQTGGGSSGGSGGSGGISSGLLSGRSDNHGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQDNGYPSTFGGGTKVEIKR(SEQ ID NO:121)。これらの実施形態において、各重鎖は典型的には、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0049】
上記方法の実践で用いられる活性化可能抗PDL1抗体は、本明細書に記載されたMM、CM、およびAB成分のいずれかを含んでよい。特有の実施形態において、MMは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む。これらおよび他の実施形態において、CMは、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、ABは、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、軽鎖および重鎖を含み、軽鎖は、MM、CM、およびVLを含み、軽鎖は、SEQ ID NO:120のアミノ酸配列を含み、重鎖はSEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む。別の実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、軽鎖および重鎖を含み、軽鎖は、スペーサー、MM、CM、およびVLを含み、軽鎖は、SEQ ID NO:121のアミノ酸配列を含み、重鎖はSEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法(例えば、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)の多回用量が、対象に投与される(例えば、対象が固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除を受ける前に)。本明細書で用いられる、本明細書に記載された併用療法に関連する「用量」の言及は、ネオアジュバント併用療法の各成分の用量を意味するものとする。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の2、3、4、5、6、7、8、9、または10回用量またはより多い用量が、対象に投与されてよい。典型的にはネオアジュバント併用療法の用量は、3週(21日)ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の用量は、週ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の用量は、2週ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の用量は、4週ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の用量は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の用量は、一定の頻度で投与される(例えば、ネオアジュバント併用療法の2回以上の用量は、3週ごとに投与され得る)。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の用量は、様々な頻度で投与される(例えば、ネオアジュバント併用療法の最初の2回の用量の間の期間は、3週間であり得、ネオアジュバント併用療法のその後の用量は、毎週投与され得る)。当業者に理解される通り、本明細書に記載されたネオアジュバント併用療法の他の一定のおよび様々な投与期間が、利用され得る。これらの実施形態の特定のものにおいて、ネオアジュバント併用療法の2回用量が、固形腫瘍の全てまたは一部の外科的切除の前に、対象に投与される。
【0052】
これらの実施形態の特定のものにおいて、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、240mg~2400mgの範囲の固定用量で投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、800mgの固定用量で投与される。他の実施形態において、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。特定の実施形態において、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10.0mg/kg、または30.0mg/kgの用量で対象に投与される。これらの実施形態の特定のものにおいて、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約240mg~約2400mgの範囲の固定用量で投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約800mgの固定用量で投与される。他の実施形態において、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約0.3mg/kg~約30mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約0.3mg/kg、約1.0mg/kg、約3.0mg/kg、約10.0mg/kg、または約30.0mg/kgの用量で対象に投与される。
【0053】
幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4成分は、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で投与される。時にはネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4成分は、0.1mg/kg~20mg/kgの範囲の、または0.1mg/kg~15mg/kgの範囲の、または0.1mg/kg~10mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~10mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~5mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~3mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~2mg/kgの範囲の用量で投与される。特定の実施形態において、ネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、3mg/kg未満または2mg/kg未満の用量で投与される。時にはネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、1mg/kgおよび2mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。多くの場合、ネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、1mg/kgの用量で投与される。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4成分は、約0.3mg/kg~約30mg/kgの範囲の用量で投与される。時にはネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4成分は、約0.1mg/kg~約20mg/kgの範囲の、または約0.1mg/kg~約15mg/kgの範囲の、または約0.1mg/kg~約10mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約10mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約5mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約3mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約2mg/kgの範囲の用量で投与される。特定の実施形態において、ネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、約3mg/kg未満または約2mg/kg未満の用量で投与される。時にはネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、約1mg/kgおよび約2mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。多くの場合、ネオアジュバント併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、約1mg/kgの用量で投与される。
【0054】
幾つかの実施形態において、本発明は、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、および/または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)800mgまたは約800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体であって、
(i)ヒトPDL1を結合し、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)CMに直接的または間接的に連結されたマスキング部分(MM)、
を含む活性化可能抗PDL1抗体、および
(B)1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すこと
を含む、方法を提供する。
【0055】
適切なMM、CM、スペーサー、およびリンカーアミノ酸配列としては、本明細書に記載されたもののいずれかが挙げられる。これらの実施形態の幾つかにおいて、活性化可能抗PDL1抗体は、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。これらの実施形態の特定のものにおいて、活性化可能抗PDL1抗体は、軽鎖および重鎖を含み、軽鎖が、MM、CM、およびVLを含み、軽鎖が、SEQ ID NO:120のアミノ酸配列を含み、重鎖が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含むか、または軽鎖および重鎖を含み、軽鎖が、スペーサー、MM、CM、およびVLを含み、軽鎖が、SEQ ID NO:121のアミノ酸配列を含み、重鎖が、SEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0056】
別の実施形態において、本発明は、固形腫瘍を有する対象における癌を処置する、癌の症状を緩和する、および/または癌の進行を遅延させる方法であって、
(A)800mgまたは約800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体であって、
SEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含む重鎖、ならびにSEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、
ヒトPDL1に結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)、切断可能な部分(CM)およびマスキング部分(MM)を含む、
活性化可能抗PDL1抗体と;
(B)1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体、
を含むネオアジュバント併用療法を対象に施すこと
を含む、方法を提供する。幾つかの実施形態において、軽鎖は、SEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、軽鎖は、SEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含む。
【0057】
特定の実施形態において、ネオアジュバント併用療法の1つまたは複数の用量の投与と、固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除する処置の両方の完了後に、方法は、活性化可能抗PDL1抗体の投与および抗CTLA-4抗体の投与を含む術後併用療法の1または複数回の用量を対象に投与することをさらに含む。ネオアジュバント併用療法と術後併用療法とにおいて、用いられる活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体は典型的には、同じである。
【0058】
幾つかの実施形態において、術後併用療法の多回用量が、第一の術後期間にわたり時間間隔あたり術後併用療法の1回用量の頻度で対象に投与される。例えば、術後併用療法の2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10回、またはより多くの用量が、対象に投与されてよい。典型的には、術後併用療法の用量は、3週(21日)ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の用量は、週ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の用量は、2週ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の用量は、4週ごとに1回投与される。これらの実施形態の特定のものにおいて、腫瘍の外科的切除の後、術後併用療法の2回の用量が、(第一の)術後期間にわたり時間間隔あたり1回用量の頻度で対象に投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の用量は、術後に一定の頻度で投与される(例えば、術後併用療法の2回以上の用量が、3週ごとに1回投与され得る)。幾つかの実施形態において、術後併用療法の用量は、術後に様々な頻度で投与される(例えば、術後併用療法の最初の2回用量の間の期間は、3週間であり得、術後併用療法のその後の用量は、毎週投与され得る)。当業者に理解される通り、術後併用療法の他の一定の投与期間および様々な投与期間が、利用され得る。多くの場合、術後併用療法の初回用量の投与は、腫瘍の外科的切除の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週後に投与される。特定の実施形態において、術後併用療法の初回用量は、腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除する手順の4~8週後、または5~7週後の範囲内の時点で投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の初回用量は、腫瘍の外科的切除の約6週後に投与される。
【0059】
これらの実施形態の特定のものにおいて、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、240mg~2400mgの範囲の固定用量で投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、800mgの固定用量で投与される。他の実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10.0mg/kg、または30.0mg/kgの用量で対象に投与される。これらの実施形態の特定のものにおいて、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約240mg~約2400mgの範囲の固定用量で投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約800mgの固定用量で投与される。他の実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約0.3mg/kg~約30mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、約0.3mg/kg、約1.0mg/kg、約3.0mg/kg、約10.0mg/kg、または約30.0mg/kgの用量で対象に投与される。
【0060】
幾つかの実施形態において、術後併用療法の抗CTLA-4成分は、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で投与される。時には術後併用療法の抗CTLA-4成分は、0.1mg/kg~20mg/kgの範囲の、または0.1mg/kg~15mg/kgの範囲の、または0.1mg/kg~10mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~10mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~5mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~3mg/kgの範囲の、または0.5mg/kg~2mg/kgの範囲の用量で投与される。特定の実施形態において、術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、3mg/kg未満または2mg/kg未満の用量で投与される。時には術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、1mg/kgおよび2mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。多くの場合、術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、1mg/kgの用量で投与される。特定の実施形態において、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体成分は、800mgの固定用量で対象に投与され、術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、1mg/kgの用量で対象に投与される。幾つかの実施形態において、術後併用療法の抗CTLA-4成分は、約0.3mg/kg~約30mg/kgの範囲の用量で投与される。時には術後併用療法の抗CTLA-4成分は、約0.1mg/kg~約20mg/kgの範囲の、または約0.1mg/kg~約15mg/kgの範囲の、または約0.1mg/kg~約10mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約10mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約5mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約3mg/kgの範囲の、または約0.5mg/kg~約2mg/kgの範囲の用量で投与される。特定の実施形態において、術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、約3mg/kg未満または約2mg/kg未満の用量で投与される。時には術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、約1mg/kgおよび約2mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。多くの場合、術後併用療法の抗CTLA-4抗体成分は、約1mg/kgの用量で投与される。
【0061】
幾つかの実施形態において、単剤療法として活性化可能抗PDL1抗体を投与する術後レジメンが、用いられる。典型的にはこの活性化可能抗PDL1抗体は、ネオアジュバント併用療法および術後併用療法で用いられるものと同じである。これらの実施形態において、術後併用療法の1または複数回の用量の投与の後に、単剤療法として活性化可能抗PDL1抗体の1または複数回の用量が、投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の少なくとも1週後に投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の少なくとも2週後に投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の少なくとも3週後に投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の少なくとも4週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の1週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の2週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の3週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、術後併用療法の最終用量の4週後に投与される。
【0062】
多くの場合、術後単剤療法の多回用量は、第二の術後期間にわたり時間間隔あたり活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で対象に投与される。例えば、術後単剤療法の2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10回、またはより多くの用量が、対象に投与されてよい。幾つかの実施形態において、多回投与の術後併用単剤療法の多回用量は、2週ごとに活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で対象に投与される。単剤療法での処置は、対象がもはや改善を呈さなくなるまで、継続してもよい。幾つかの実施形態において、単剤療法での処置は、最大1年間継続する。典型的には、単剤療法としての活性化可能抗PDL1抗体の多回用量が、対象に投与される。幾つかの実施形態において、単剤療法の用量は、2週ごとに1回投与される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体の多回用量は、第二の術後期間にわたり一定の頻度で単剤療法として対象に投与される(例えば、単剤療法として対象に投与される活性化可能抗PDL1抗体の2回以上の用量が、2週ごとに1回投与され得る)。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体の多回用量は、第二の術後期間にわたり様々な頻度で単剤療法として対象に投与される(例えば、活性化可能抗PDL1抗体の最初の2回用量の間の期間は、2週間であり得、活性化可能抗PDL1抗体のその後の用量は、毎週または毎月投与され得る)。当業者に理解される通り、本明細書に記載された活性化可能抗PDL1抗体の他の一定の投与期間および様々な投与期間が、利用され得る。
【0063】
幾つかの実施形態において、単剤療法として活性化可能抗PDL1抗体を投与する術後レジメンは、術後併用療法の事前投与を行わずに利用され得る。典型的にはこの活性化可能抗PDL1抗体は、ネオアジュバント併用療法で用いられるものと同じである。これらの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体の1または複数回用量が、術後に単剤療法として対象に施される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の少なくとも1週後に投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の少なくとも2週後に投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の少なくとも3週後に投与される。幾つかの実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の少なくとも4週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の1週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の2週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の3週後に投与される。特定の実施形態において、術後単剤療法の初回用量は、手術の4週後に投与される。
【0064】
多くの場合、術後単剤療法の多回用量は、第一の術後期間にわたり時間間隔あたり活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で対象に施される。例えば、術後単剤療法の2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10回、またはより多くの用量が、対象に投与されてよい。幾つかの実施形態において、術後併用単剤療法の多回用量は、2週ごとに活性化可能抗PDL1抗体の1回用量の頻度で対象に投与される。単剤療法での処置は、対象がもはや改善を呈さなくなるまで、継続してよい。幾つかの実施形態において、単剤療法での処置は、最大1年間継続する。典型的には、単剤療法としての活性化可能抗PDL1抗体の多回用量が、対象に投与される。幾つかの実施形態において、単剤療法の用量は、2週ごとに1回施される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体の多回用量は、第一の術後期間にわたり一定の頻度で単剤療法として対象に投与される(例えば、単剤療法として対象に投与される活性化可能抗PDL1抗体の2回以上の用量が、2週ごとに1回投与され得る)。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体の多回用量は、第一の術後期間にわたり様々な頻度で単剤療法として対象に投与される(例えば、活性化可能抗PDL1抗体の最初の2回用量の間の期間は、2週間であり得、活性化可能抗PDL1抗体のその後の用量は、毎週または毎月投与され得る)。当業者に理解される通り、本明細書に記載された活性化可能抗PDL1抗体の他の一定の投与期間および様々な投与期間が、利用され得る。
【0065】
幾つかの実施形態において、単剤療法として(術後併用療法の事前投与を有して、またはなしに)対象に投与される活性化可能抗PDL1抗体の用量は、240mg~2400mgの範囲の固定用量である。幾つかの実施形態において、単剤療法として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体成分は、800mgの固定用量で投与される。他の実施形態において、単剤療法として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体は、0.3mg/kg~30mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。これらの実施形態の特定のものにおいて、活性化可能抗PDL1抗体成分は、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、10.0mg/kg、または30.0mg/kgの用量で単剤療法として対象に投与される。典型的には、それぞれ活性化可能抗PDL1抗体の800mgの固定用量である、術後単剤療法の多回用量は、2週ごとに対象に施される。幾つかの実施形態において、単剤療法として(術後併用療法の事前投与を有して、またはなしに)対象に投与される活性化可能抗PDL1抗体の用量は、約240mg~約2400mgの範囲の固定用量である。幾つかの実施形態において、単剤療法として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体成分は、約800mgの固定用量で投与される。幾つかの実施形態において、単剤療法として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体成分は、約0.3mg/kg~約30mg/kgの範囲の用量で対象に投与される。これらの実施形態の特定のものにおいて、活性化可能抗PDL1抗体成分は、約0.3mg/kg、約1.0mg/kg、約3.0mg/kg、約10.0mg/kg、または約3.0mg/kgの用量で単剤療法として対象に投与される。典型的には、それぞれが活性化可能抗PDL1抗体の約800mgの固定用量である、術後単剤療法の多回用量は、2週ごとに対象に施される。
【0066】
ネオアジュバントと術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体成分を投与する場合、投与経路、投与期間、および投与順序に関して同じプロトコルが用いられてよい。典型的には、併用療法(即ち、ネオアジュバントおよび術後併用療法のどちらか)の成分として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体は、抗CTLA-4抗体を投与する前に対象に投与される。特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体は、ネオアジュバント併用療法または術後併用療法のどちらかの活性化可能抗PDL1抗体成分の投与の完了後30分以上を経て対象に投与される。多くの場合、ネオアジュバント併用療法の成分(即ち、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)は、同日に対象に投与される。同じく、術後併用療法の成分(即ち、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)は多くの場合、同日に投与される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、静脈内(IV)輸注により対象に投与される。同様に幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、静脈内輸注により対象に投与される。典型的には、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体の両方が、対象に静脈内投与される(例えば、静脈内輸注による)。
【0067】
幾つかの実施形態において、併用療法(即ち、ネオアジュバントおよび術後併用療法のどちらか)の成分として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体は、抗CTLA-4抗体を投与した後に対象に投与される。特定の実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、ネオアジュバント併用療法または術後併用療法のどちらかの活性化可能抗CTLA-4抗体成分の投与の完了後30分以上を経て対象に投与される。多くの場合、ネオアジュバント併用療法の成分(即ち、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)は、同日に対象に投与される。同じく、術後併用療法の成分(即ち、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体)は多くの場合、同日に投与される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、静脈内(IV)輸注により対象に投与される。同様に幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、静脈内輸注により対象に投与される。典型的には、活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体の両方が、対象に静脈内投与される(例えば、静脈内輸注による)。
【0068】
活性化可能抗PDL1抗体の術後単独療法を施す場合、投与経路、投与時間、および投与順序に関して同じプロトコルが、用いられてよい。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体の術後単独療法は、対象に静脈内に施される(例えば、静脈内輸注による)。
【0069】
具体的実施形態において、併用療法(例えば、ネオアジュバントまたは術後併用療法のどちらか)の実施は、
(i)活性化可能抗PDL1抗体を静脈内輸注により60分または約60分の期間にわたり投与すること;
(ii)生理食塩水洗浄液を投与すること;および
(iii)抗CTLA-4抗体を静脈内輸注により30分または約30分の期間にわたり投与すること、
を含み、抗CTLA-4抗体を投与するステップは、活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後30分または約30分以上を経て実行される。
【0070】
具体的実施形態において、併用療法(例えば、ネオアジュバントまたは術後併用療法のどちらか)の実施は、
(i)抗CTLA-4抗体を静脈内輸注により30分または約30分の期間にわたり投与すること;
(ii)生理食塩水洗浄液を投与すること;および
(iii)活性化可能抗PDL1抗体を静脈内輸注により60分または約60分の期間にわたり投与すること、
を含み、活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップは、抗CTLA-4活性化可能抗PDL1抗体(anti-CTLA-4 activatable anti-PDL1 antibody)を投与するステップの完了後30分または約30分以上を経て実行される。
【0071】
幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の期間にわたり静脈内輸注により投与される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、または約120分の期間にわたり静脈内輸注により投与される。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4は、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分の期間にわたり静脈内輸注により投与される。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4は、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60分の期間にわたり静脈内輸注により投与される。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4は、活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分以上を経て投与される。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4は、活性化可能抗PDL1抗体を投与するステップの完了後約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60分以上を経て投与される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、抗CTLA-4抗体を投与するステップの完了後15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分以上を経て投与される。幾つかの実施形態において、活性化可能抗PDL1抗体は、抗CTLA-4抗体を投与するステップの完了後約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60分以上を経て投与される。
【0072】
具体的実施形態において、方法は、ネオアジュバント併用療法の2回用量を3週ごとに1回用量の頻度で対象に施すこと、および術後併用療法の2回用量を第一の術後期間にわたり3週ごとに1回用量の頻度で対象に施すこと、および術後単独療法の多回用量を第二の術後期間にわたり2週ごとに1回用量の頻度で対象に施すこと、を含み、ネオアジュバント併用療法および術後併用療法は各々、800mgの固定用量の活性化可能抗FPDL1抗体(anti-FPDL1 antibody)および1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体を含み、術後単独療法は、800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体を含む。別の具体的実施形態において、方法は、ネオアジュバント併用療法の2回用量を約3週ごとに1回用量の頻度で対象に施すこと、および術後併用療法の2回用量を第一の術後期間にわたり約3週ごとに1回用量の頻度で対象に施すこと、および術後単独療法の多回用量を第二の術後期間にわたり約2週ごとに1回用量の頻度で対象に施すこと、を含み、ネオアジュバント併用療法および術後併用療法は各々、約800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体および約1mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体を含み、術後単独療法は、約800mgの固定用量の活性化可能抗PDL1抗体を含む。
【0073】
本明細書に記載された方法および処置における使用に適した抗CTLA-4抗体としては、ヒトCTLA-4への特異的結合を有する任意の抗CTLA-4抗体が挙げられる。典型的には抗CTLA-4抗体は、イピリムマブである。イピリムマブは、B7リガンドへのCTLA-4の結合を遮断する完全にヒトのIgG1モノクローナル抗体であり、YERVOYとして販売されている。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、B7リガンドへのCTLA-4の結合を遮断する完全にヒトのIgG2モノクローナル抗体である、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP-675,206とも称される)である(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、Lee et al., J Gynecol Oncol. 2019 Nov;30(6):e112. doi: 10.3802/jgo.2019.30.e112を参照されたい)。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、B7リガンドへのCTLA-4の結合を遮断する完全にヒトのIgG1モノクローナル抗体である、CS1002である。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、IgG1モノクローナル抗体のザリフレリマブ(AGEN1884とも称される)である。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、ヒト化IgG2モノクローナル抗体のADU-1604である。幾つかの実施形態において、抗CTLA-4抗体は、新規なIgG1ヒト化モノクローナル抗体のCBT-509である(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、Shi et al., DOI: 10.1200/JCO.2019.37.8_suppl.32 Journal of Clinical Oncology 37, no. 8_suppl (March 10, 2019) 32-32を参照されたい)。他の抗CTLA-4抗体、例えば、Waightら(全体として参照により本明細書に組み入れられる、Cancer Cell. 2018 Jun 11; 33(6): 1033-1047.e5, doi: 10.1016/j.ccell.2018.05.005)に開示された抗CTLA-4抗体のいずれか、または当業者がclinicaltrials.govのウェブサイトを検索することにより見出し得る任意の抗CTLA-4抗体が、本明細書に記載された方法および材料での使用に企図される。
【0074】
これらの方法の実践に従う対象は典型的には、医師のケアの下にあり、固形腫瘍を有すると典型的には診断されている。幾つかの実施形態において、方法は、ネオアジュバント併用療法の最終容量の投与後に対象における固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除するさらなるステップを含む。特定の実施形態において、方法は、固形腫瘍の全てまたは一部を外科的に切除するステップの後、本明細書に記載された方法に従って術後併用療法の1または複数回の用量を投与することをさらに含む。幾つかの実施形態において、方法は、本明細書に記載された方法に従って術後単独療法の1または複数回の用量を投与することをさらに含む。
【0075】
本明細書に記載された実施形態において、癌は、黒色腫である。黒色腫は、切除可能なステージIII黒色腫であってよい。切除可能なステージIII黒色腫は、組織学的または細胞学的評定により確認されてよい。
【0076】
上記の併用療法を利用した例示的な処置レジメンを、実施例1に記載する。
【0077】
本発明の方法で用いられる活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体は、静脈内投与に適した医薬組成物中に配合され得る。各々は、凍結乾燥または溶液形態で提供されてよいが、いずれかの化合物が凍結乾燥形態で提供される場合、それは、投与前に医薬的に許容できる希釈剤に溶解される。静脈内投与では、適切な希釈剤としては、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシパニー)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)および同様のものが挙げられる。本発明の実践での使用に適する活性化可能抗PDL1抗体を含む医薬組成物は、PCT公開第WO2016/149201号およびWO2018/222949号に記載されており、それらのPCT公開のそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられる。全ての例で、組成物は、滅菌されなければならない。
【0078】
さらなる実施形態において、本発明は、癌の処置での使用のための、活性化可能抗PDL1抗体、または活性化可能抗PDL1抗体と医薬的に許容できる希釈剤とを含む組成物を提供し、処置は、対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体とネオアジュバント併用で活性化可能抗PDL1抗体またはその組成物を対象に静脈内投与することを含み、
活性化可能抗PDL1抗体は、
(i)ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)であって、
SEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDRH1)、SEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDRH2)、およびSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
SEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、SEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、およびSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む抗体またはその抗原結合部分(AB)と、
(ii)プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである、ABに直接的または間接的に連結された切断可能な部分(CM)と、
(iii)CMに直接的または間接的に連結されたマスキング部分(MM)と、
(B)抗CTLA-4抗体、
を含み、
対象は、固形腫瘍を有する。
【0079】
上記の活性化可能抗PDL1抗体構造における使用に適したCM、MM、VL、VH、リンカー、およびスペーサー成分をコードするアミノ酸配列は、本明細書の先に記載されたもののいずれかを包含する。
【0080】
さらなる実施形態において、本発明は、癌の処置における使用のための活性化可能抗PDL1抗体を提供し、処置は、1mg/kgの用量で対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体とのネオアジュバント併用で800mgの固定用量で対象に活性化可能抗PDL1抗体を静脈内投与することを含み、
SEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、
ヒトPDL1を結合する抗体またはその抗原結合部分(AB)、切断可能な部分(CM)およびマスキング部分(MM)を含み、
対象は、固形腫瘍を有する。
幾つかの実施形態において、軽鎖は、SEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、軽鎖は、SEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含む。
【0081】
幾つかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、癌の処置における使用のための、活性化可能抗PDL1抗体、または活性化可能抗PDL1抗体と医薬的に許容できる希釈剤とを含む組成物であり、処置は、対象に静脈内投与される抗CTLA-4抗体と術後併用で活性化可能抗PDL1抗体またはその組成物を対象に静脈内投与することを含む。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法と術後併用療法において用いられる活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体は、同じである。
【0082】
幾つかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、癌の処置での使用のための、活性化可能抗PDL1抗体、または活性化可能抗PDL1抗体と医薬的に許容できる希釈剤とを含む組成物であり、処置は、ネオアジュバントおよび術後併用処置の実施後に術後単独療法として活性化可能抗PDL1抗体またはその組成物を対象に静脈内投与することを含む。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント併用療法と術後併用療法と術後単独療法において用いられる活性化可能抗PDL1抗体は、同じである。
【0083】
先に記載された処置における使用に適した、ネオアジュバント併用療法の活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体成分、術後併用療法の活性化可能抗PDL1抗体および抗CTLA-4抗体成分、または術後単独療法の活性化可能抗PDL1抗体の各々の用量および/または投与レジメンは、対応する処置の方法について本明細書に記載されたもののいずれかを含む。幾つかの実施形態において、癌は、例えば切除可能なステージIII黒色腫などの黒色腫である。典型的には抗CTLA-4抗体は、イピリムマブである。
【0084】
癌の処置における使用のための活性化可能抗PDL1抗体は、本明細書に記載された処置ステップのいずれかを含んでよい。
【0085】
以下の実施例は、本発明の実践をさらに例示するものであり、その範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0086】
実施例
固形腫瘍を有する対象のためのネオアジュバント併用療法として抗CTLA-4抗体と組み合わせた活性化可能抗PDL1抗体の評価
この試験は、ネオアジュバント併用療法のネオアジュバントの投与後の病理学的奏効に基づいて、固形腫瘍を有する対象においてイピリムマブと組み合わせたPL07-2001-C5H9v2の抗腫瘍効果を評価する。
【0087】
PL07-2001-C5H9v2は、SEQ ID NO:122の重鎖配列とSEQ ID NO:124の軽鎖配列とを含む、プロテアーゼで活性化可能抗PDL1抗体である。PL07-2001-C5H9v2は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。軽鎖は、MMおよびCMを含むプロドメイン配列を含有する。WO2016/149201号およびWO2018/222949号を参照されたい。対応する活性化された抗PDL1抗体は、ヒトPDL1を結合する。
【0088】
イピリムマブは、抗CTLA-4抗体である。それは、B7リガンドへのCTLA-4の結合を遮断する完全にヒトのIgG1モノクローナル抗体であり、YERVOYとして販売される。
【0089】
この試験では、対象は、800mgのPL07-2001-C5H9v2と1mg/kgイピリムマブの併用療法の2回用量(即ち、1日目および22日目のq3w;全て±2日)と、それに続く43日目(-2/+7日)の腫瘍の外科的切除で処置される。800mgのPL07-2001-C5H9v2と1mg/kgイピリムマブの併用の追加的な2回用量を、手術のおよそ6週後(即ち、85日目(±2日)および106日目(±2日)にq3w)に投与する。併用療法の4回目の用量を受けた3週後(即ち、127日目(±2日))に、対象は、800mgのPL07-2001-C5H9v2単剤療法をq2wで継続する選択肢を有する。対象は、術後にPL07-2001-C5H9v2を、疾患再燃、許容できない毒性、または他の処置中止理由が発生するまで最大1年間受けてもよい。最大4回用量のイピリムマブを、任意の対象に投与する。試験計画の略図を、図1に表す。
【0090】
800mgの活性化可能抗PDL1抗体PL07-2001-C5H9v2を、60分にわたり輸注する。併用療法の成分として投与される場合、活性化可能抗PDL1抗体を最初に投与し、続いて生理食塩水洗浄液、その後、イピリムマブ輸注を行う。イピリムマブを、PL07-2001-C5H9v2(活性化可能抗PDL1抗体)輸注の完了後30分以上を経て輸注する。1mg/kgイピリムマブを、30分のIV輸注として投与する。PL07-2001-C5H9v2の輸注の間に最短で14日を要し、イピリムマブの輸注の間に最短で21日を要する。例外的状況で、輸注を7日まで遅延させてもよい。
【0091】
この試験は、1つの対象コホートを含む。組織学的に確認された切除可能なステージIII黒色腫および根治目的の手術に適した触知可能な疾患を有する対象。
【0092】
対象適格性の規準は、以下の通りである:
性別:全て(Al)
健常な志願者の許容:なし
【0093】
組み入れ基準
1.少なくとも18歳
2.RECISTv1.1により定義された測定可能な疾患
3.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンス状態が1以下の評定
4.バイオマーカ標的のために腫瘍組織および血液試料を提供することに同意
5.脳転移を治療された対象は、脳転移が安定であり(処置の完了後少なくとも8週間および試験処置の初回投与前28日以内に核磁気共鳴画像(MRI)での進行の証拠がない)、対象が放射線治療またはステロイドを必要としないならば適格である。脳転移の有効なスクリーニング(例えば、脳のコンピュータ断層撮影またはMRI)を要しない。
6.スクリーニング実験値が以下の規準の全てに適合しなければならない:
i.白血球>2000/μLまたは2.0×109/L
ii.好中球≧1500/μLまたは1.5×109/L
iii.血小板≧100×103/μLまたは100×109/L
iv.ヘモグロビン≧9.0g/dL(輸血されていてもよい)または90.0g/L
v.クレアチニン≦2mg/dLもしくは176.9μmol/L、または測定もしくは計算されたクレアチニンクリアランス(糸球体濾過量もクレアチニンまたはクレアチニンクリアランスの代わりに用いられ得る)>50mL/分
vi.ASTおよびALT≦2.5×基準値上限(ULN)
vii.ULN内の総ビリルビン(ギルバート症候群と診断されない限り、それらの対象は、3.0mg/dLまたは51.3μmol/L未満の総ビリルビンを有しなければならない)
viii.アミラーゼおよびリパーゼ≦1.5×ULN
ix.国際標準比(INR)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN
x.血清アルブミン≧2.5g/dL
7.生検され得る1つまたは複数の顕微鏡的リンパ節転移(RECISTv1.1に従って測定できる)を有し、最後の6か月以内にin-transit転移の病歴を有しない、組織学的または細胞学的に確認された切除可能なステージIII黒色腫。
8.正常範囲内の乳酸脱水素酵素(LDH)。
【0094】
除外基準
1.試験処置の初回投与前28日以内に細胞毒性のある化学療法、生物学的製剤、放射線照射、免疫療法または任意の研究薬剤での処置。この間隔は、骨のみの放射線治療を受けた対象、または最も近日の事前治療が3日以下の半減期を有する認可された単剤の低分子キナーゼ阻害剤であった対象では、2週間に低減され得る。
2.キメラ抗原受容体T細胞を含むレジメンでの事前治療。
3.非限定的に、炎症性腸疾患、関節リウマチ、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性肝炎、全身性硬化症、全身エリテマトーデス、自己免疫性血管炎、自己免疫性ニューロパチー、1型インスリン依存性糖尿病を含む活動性の自己免疫疾患(複数可)の病歴。
4.原因にかかわらず心筋炎の病歴。
5.irAEにより処置を中止する必要があると定義された事前のチェックポイント阻害剤療法への不耐性の病歴。
6.中毒性表皮壊死融解症またはスチーブンス・ジョンソン症候群の病歴。
7.全身ステロイド(1日に10mg以上のプレドニゾン当量)または免疫抑制剤投薬での処置を要した任意の症候群または医療的状態の病歴。吸入または外用ステロイドは、許される。
8.ベースライン補正QT間隔(Qtc)>470ms。
9.事前の抗癌剤治療で未解消の急性毒性CTCAEv5.0 グレード1≧(またはベースラインのどちらか大きい方)。脱毛症および他の非急性毒性は、許容され得る。
10.ヒトmAb治療への重度アレルギーもしくはアナフィラキシー反応、または任意の活性化可能抗体治療への既知の過敏症の病歴。
11.既知のヒト免疫不全ウイルス、後天性免疫不全症候群または任意の関連病を有する対象。
12.急性または慢性B型またはC型肝炎の対象。
13.同種異系組織/固形臓器移植、幹細胞移植、または骨髄移植の病歴。
14.試験処置の初回投与前4週以内の大手術(例えば、全身麻酔を要する)、または完全な治癒が確認されていれば、試験処置の初回投与前14日以内の小手術(例えば、胸部、腹部または頭蓋内構造に関係しない)もしくはガンマナイフ処置(充分な治癒を含む)(局所/外用局所麻酔が実行された生検を除く)。
15.治癒と見なされ、研究者の意見で低い再発リスクを示す局在化された癌を除く、過去2年以内に処置された癌に関係しない活動性の悪性腫瘍の病歴。これらの例外としては、基底または扁平上皮癌、表在性膀胱癌、および前立腺、子宮頸部または乳房の上皮内癌が挙げられるが、これらに限定されない。
16.試験処置の初回投与前30日以内に生ワクチンを受けた(例えば、麻疹、おたふく風邪、風疹、水疱瘡/帯状疱疹、黄熱病、狂犬病、BCG、および腸チフスワクチン)。
17.非限定的に、試験処置の初回投与前24週以内の進行中の重度大動脈狭窄、心筋梗塞または卒中を含む介入性の疾病;試験処置の初回投与前12週以内の以下のいずれか:症候性うっ血性心不全(即ち、New York Heart Association Class IIIまたはIV)、不安定狭心症、または臨床上有意義で非制御の心不整脈;1日目前4週以内の非治癒創傷または潰瘍;および試験処置の初回投与前5日以内の全身抗ウイルス、抗生物質、または抗真菌治療を要する活動性感染症。
18.1月あたり1回以上(複数可)のドレナージを要する胸水または心外膜液または腹水。
19.多発性骨髄炎の病歴。
20.妊娠中または授乳中の女性。
21.長期転帰のために対象が経過観察されている場合のみを除き、進行中の介入臨床試験(例えば、投薬、放射線照射、手術)に参加している。
22.黒色腫のための事前の全身処置。
23.ブドウ膜の、眼内の、または粘膜皮膚の黒色腫の診断。
【0095】
抗癌活性の証拠を定義するための一次基準は、外科的切除からの腫瘍試料の中央判定に基づくネオアジュバント療法後の病理学的奏効である。対象ケアの管理および処置中止のための基準は、放射線の奏効の評定(術前)、術後の摘出試料の局所的な病理学的評定、または疾患再燃である。RECISTv1.1により定義される腫瘍縮小効果は、外科的切除の前に評定される。
【0096】
配列表を、以下の表1に示す。
【表1】
【0097】
前述の発明は、明瞭さおよび理解を目的として若干詳細に記載されているが、本発明の真の範囲を逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を施し得ることは、本開示を読むことにより当業者に明白となろう。本明細書で言及された全ての発行物、特許出願、特許、および他の参考資料は、全体として参照により組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が、支配する。本明細書に記載された材料、例および実施形態が例示目的に過ぎず限定でないこと、ならびにそれらに照らした様々な修正または変更が当業者に示唆され、添付の特許請求の範囲の主旨および範囲に含まれることは、理解されよう。
図1
【国際調査報告】