(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】感染を処置するための組成物および相乗的方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220822BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220822BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20220822BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20220822BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220822BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220822BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20220822BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220822BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220822BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20220822BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20220822BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20220822BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20220822BHJP
A61K 31/5383 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/00
A61P43/00 121
A61K31/43
A61K31/407
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P31/12
A61K38/17
A61P31/06
A61K31/215
A61K31/351
A61K31/155
A61K31/5383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576435
(86)(22)【出願日】2020-06-21
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020038862
(87)【国際公開番号】W WO2020257743
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521557414
【氏名又は名称】バイオイージス・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ディヌビレ,マーク・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レビンソン,スーザン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ストッセル,トーマス・ピー
(72)【発明者】
【氏名】コブジック,レスター
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086CB22
4C086CC05
4C086CC08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB11
4C206DB43
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA18
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA77
4C206MA78
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZB37
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、対象における微生物感染を処置するための組成物および方法、特に、対象における微生物感染に対する相乗的治療効果を生み出すためにゲルゾリン剤および抗菌剤を投与する方法に関する。本発明はまた、遅延投薬方法および/または相乗的方法を含む方法を含む、対象におけるウイルス感染を処置するための方法に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における微生物感染を相乗的に処置するための有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤を含む組成物。
【請求項2】
抗菌剤が、臨床的に許容される量であり、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤が、対象に、臨床的に許容される量の抗菌剤を投与しゲルゾリン剤を投与しない治療効果を相乗的に増強する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抗菌剤の臨床的に許容される量が、対象における抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
抗菌剤のMTDが、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
抗菌剤のMTDが、対象における抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量が、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
MEDが、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗菌剤の最低用量レベルであり、該応答が、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果が、対象の生存可能性を高めることを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果が、対象における微生物感染を低下させることを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
微生物感染が細菌感染であり、任意選択で肺炎球菌種によって引き起こされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
抗菌剤が、β-ラクタム抗生物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
抗菌剤が、ペニシリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
微生物感染が、1つのタイプのPseudomonas aeruginosaによって引き起こされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
抗菌剤が、カルバペネムクラスの抗菌剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
抗菌剤が、メロペネムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
抗菌剤が、抗真菌剤を含み、微生物感染が、真菌感染を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
抗菌剤が、抗寄生生物剤を含み、微生物感染が、寄生生物感染を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
抗菌剤が、抗ウイルス剤を含み、微生物感染が、ウイルス感染を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
対象が哺乳動物であり、任意選択でヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ゲルゾリン剤が、血漿ゲルゾリン(pGSN)を含み、任意選択で、組換えpGSNである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
ゲルゾリン剤が、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
対象における微生物感染に対する抗菌剤の治療効果を増加させる方法であって、
微生物感染を有する対象に、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれを投与するステップを含み、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤は、対象の微生物感染に対して相乗的治療効果を有し、相乗的治療効果は、ゲルゾリン剤なしで投与された抗菌剤の治療効果よりも大きい、方法。
【請求項25】
抗菌剤が、臨床的に許容される量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
微生物感染に対する相乗的治療効果が、微生物感染に対する対照の治療効果よりも高く、対照の治療効果は、抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれが他方なしで投与された場合の、微生物感染に対する抗菌剤の治療効果と、微生物感染に対するゲルゾリン剤の治療効果の合計である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
対照の治療効果が、ゲルゾリン剤の個々の治療効果に等しい、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対照の治療効果が、臨床的に許容される量で投与される抗菌剤の個々の治療効果に等しい、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
相乗的治療効果が、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
抗菌剤が、抗生物質製剤を含み、微生物感染が、細菌感染を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
抗菌剤が、抗真菌剤を含み、微生物感染が、真菌感染を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
抗菌剤が、抗寄生生物剤を含み、微生物感染が、寄生生物感染を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
抗菌剤が、抗ウイルス剤を含み、微生物感染が、ウイルス感染を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
ゲルゾリン剤が、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
ゲルゾリン分子が、血漿ゲルゾリン(pGSN)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ゲルゾリン分子が、組換えゲルゾリン分子である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
抗菌剤の臨床的に許容される量が、抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
抗菌剤のMTDが、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗菌剤のMTDが、抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量が、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与の相乗的治療効果が、対照の微生物感染のレベルと比較して、対象における微生物感染のレベルを低下させる、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
対照の感染レベルが、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与しない場合の感染レベルを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
対象の微生物感染のレベルが、対照の微生物感染のレベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
対象における微生物感染のレベルを決定し、決定の手段が、アッセイ、対象を観察すること、対象における微生物感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること、および対象の生存可能性を評価することのうちの1つまたは複数を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
生理学的症状が、発熱、倦怠感、および死亡死亡のうちの1つまたは複数を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
生理学的症状が、肺病変を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
生理学的症状が、体重減少を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
アッセイが、対象からの生物学的試料における微生物感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するための手段を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させる、請求項24に記載の方法。
【請求項50】
対照の生存可能性が、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の生存可能性である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象の生存可能性の増加が、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の肺病変のレベルと比較して、対象における肺病変のレベルを低下させる、請求項24に記載の方法。
【請求項53】
対照の肺病変のレベルが、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の肺病変のレベルである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与された対象における肺病変のレベルが、対照の肺病変のレベルより、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%低い、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
対象が、Pseudomonas aeruginosa細菌感染を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
抗菌剤が、カルバペネムクラスを含み、任意選択でメロペネムを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
細菌感染が、1つのタイプのStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)によって引き起こされる、請求項30に記載の方法。
【請求項58】
抗菌剤が、β-ラクタム抗生物質を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項59】
抗菌剤が、ペニシリンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項60】
細菌感染が、1つのタイプのPseudomonas aeruginosaによって引き起こされる、請求項30に記載の方法。
【請求項61】
抗菌剤が、カルバペネムクラスの抗菌剤である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
抗菌剤が、メロペネムである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
細菌感染が、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、結核菌、非結核性マイコバクテリウム、スピロヘータ、放線菌、ウレアプラズマ種細菌、マイコプラズマ種細菌、およびクラミジア種細菌のうちの1つまたは複数によって引き起こされる、請求項30に記載の方法。
【請求項64】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の投与手段が、経口、舌下、頬側、鼻腔内、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から独立して選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項65】
対象が、哺乳動物であり、任意選択でヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項66】
ゲルゾリン剤が、非治療的ゲルゾリン剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項67】
抗菌剤が、非治療剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項68】
対象における微生物感染を相乗的に処置するための方法であって、微生物感染を有する対象に、有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれを投与するステップを含み、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤は、対照の治療効果と比較して、対象の微生物感染に対して相乗的治療効果を有し、抗菌剤は、臨床的に許容される量で投与される、方法。
【請求項69】
対照が、ゲルゾリン剤を投与せずに投与される臨床的に許容される量の抗菌剤の投与の治療効果を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
抗菌剤の臨床的に許容される量が、抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
抗菌剤のMTDが、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
抗菌剤のMTDが、抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量が、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
MEDが、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗菌剤の最低用量レベルであり、該応答が、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
相乗的治療効果が、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
抗菌剤が、抗生物質製剤を含み、微生物感染が、細菌感染を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項77】
抗菌剤が、抗真菌剤を含み、微生物感染が、真菌感染を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
抗菌剤が、抗寄生生物剤を含み、微生物感染が、寄生生物感染を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項79】
抗菌剤が、抗ウイルス剤を含み、微生物感染が、ウイルス感染を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項80】
ゲルゾリン剤が、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項81】
ゲルゾリン分子が、血漿ゲルゾリン(pGSN)である、請求項68に記載の方法。
【請求項82】
ゲルゾリン分子が、組換えゲルゾリン分子である、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与の相乗的治療効果が、対照の微生物感染のレベルと比較して、対象における微生物感染のレベルを低下させる、請求項68に記載の方法。
【請求項84】
対照の感染レベルが、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与しない場合の感染レベルを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
対象の微生物感染のレベルが、対照の微生物感染のレベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
対象における微生物感染のレベルを決定し、決定の手段が、アッセイ、対象を観察すること、対象における微生物感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること、および対象の生存可能性を評価することのうちの1つまたは複数を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
生理学的症状が、発熱、倦怠感、および死亡のうちの1つまたは複数を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
生理学的症状が、体重減少を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
生理学的症状が、肺病変を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
アッセイが、対象からの生物学的試料における微生物感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するための手段を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項91】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させる、請求項68に記載の方法。
【請求項92】
対照の生存可能性が、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の生存可能性である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
対象の生存可能性の増加が、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の肺病変のレベルと比較して、対象における肺病変のレベルを低下させる、請求項68に記載の方法。
【請求項95】
対照の肺病変のレベルが、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の肺病変のレベルである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与された対象における肺病変のレベルが、対照の肺病変のレベルより、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%低い、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
対象が、Pseudomonas aeruginosa細菌感染を有する、請求項76に記載の方法。
【請求項98】
抗菌剤が、カルバペネムクラスを含み、任意選択でメロペネムを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
細菌感染が、1つのタイプのStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)によって引き起こされる、請求項76に記載の方法。
【請求項100】
抗菌剤が、β-ラクタム抗生物質を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項101】
抗菌剤が、ペニシリンを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項102】
細菌感染が、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、結核菌、非結核性マイコバクテリウム、スピロヘータ、放線菌、ウレアプラズマ種細菌、マイコプラズマ種細菌、およびクラミジア種細菌のうちの1つまたは複数によって引き起こされる、請求項76に記載の方法。
【請求項103】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の投与手段が、経口、舌下、頬側、鼻腔内、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から独立して選択される請求項68に記載の方法。
【請求項104】
対象が、哺乳動物である、請求項68に記載の方法。
【請求項105】
ゲルゾリン剤が、非治療的ゲルゾリン剤である、請求項68に記載の方法。
【請求項106】
抗菌剤が、非治療剤である、請求項68に記載の方法。
【請求項107】
対象の処置方法において使用するための、微生物感染に対する抗菌剤の治療効果を相乗的に増加させる抗菌剤とゲルゾリン剤とを含む医薬組成物であって、
対象は微生物感染を有し、方法は、対象における微生物感染を処置するのに有効な量で、ゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれの相乗的有効量を含む医薬組成物を投与するステップを含み、相乗的治療効果は、ゲルゾリン剤なしで投与された抗菌剤の治療効果よりも大きい、医薬組成物。
【請求項108】
ゲルゾリン剤および抗菌剤が、対象に別々にまたは同時に投与される、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項109】
抗菌剤が、臨床的に許容される量で投与され、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤が、対象に、臨床的に許容される量の抗菌剤を投与しゲルゾリン剤を投与しない治療効果を相乗的に増強する、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項110】
抗菌剤の臨床的に許容される量が、対象における抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である、請求項109に記載の医薬組成物。
【請求項111】
抗菌剤のMTDが、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項112】
抗菌剤のMTDが、対象における抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項113】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量が、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項114】
MEDが、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗菌剤の最低用量レベルであり、該応答が、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい、請求項113に記載の医薬組成物。
【請求項115】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果が、対象の生存可能性を高めることを含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項116】
ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果が、対象における微生物感染を低下させることを含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項117】
微生物感染が細菌感染であり、任意選択で肺炎球菌種によって引き起こされる、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項118】
抗菌剤が、ペニシリンを含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項119】
細菌感染が、1つのタイプのPseudomonas aeruginosaによって引き起こされる、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項120】
抗菌剤が、カルバペネムクラスの抗菌剤である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項121】
抗菌剤が、メロペネムである、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項122】
抗菌剤が、抗真菌剤を含み、微生物感染が、真菌感染を含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項123】
抗菌剤が、抗寄生生物剤を含み、微生物感染が、寄生生物感染を含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項124】
抗菌剤が、抗ウイルス剤を含み、微生物感染が、ウイルス感染を含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項125】
対象が、哺乳動物である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項126】
ゲルゾリン剤が、血漿ゲルゾリン(pGSN)を含み、任意選択で、組換えpGSNである、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項127】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項128】
ゲルゾリン剤が、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項129】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項130】
対象におけるウイルス感染を処置するための方法であって、ウイルス感染を有する対象に有効量のゲルゾリン剤を投与するステップを含み、ゲルゾリン剤は、対象がウイルス感染に罹患してから少なくとも3、4、5、6、7、8、9日、またはそれ以上後に投与され、対象がウイルス感染に罹患した日、対象がウイルス感染に罹患してから1日後、または対象がウイルス感染に罹患してから2日後には投与されない、方法。
【請求項131】
有効量のゲルゾリン剤が、対照の治療効果と比較して、対象におけるウイルス感染に対する治療効果を増加させる、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
対照の治療効果が、ゲルゾリン剤が対象に投与されない場合の治療効果を含む、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
抗ウイルス剤が、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル、ペラミビル、およびバロキサビルマルボキシルのうちの1つまたは複数を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
投与されたゲルゾリン剤の治療効果が、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い、請求項130に記載の方法。
【請求項135】
ゲルゾリン剤が、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項136】
ゲルゾリン分子が、血漿ゲルゾリン(pGSN)である、請求項130に記載の方法。
【請求項137】
ゲルゾリン分子が、組換えゲルゾリン分子である、請求項135または136に記載の方法。
【請求項138】
ゲルゾリン剤の投与の治療効果が、対照のウイルス感染のレベルと比較して、対象におけるウイルス感染のレベルを低下させ、対照の感染レベルは、ゲルゾリン剤を投与しない場合の感染レベルを含む、請求項131に記載の方法。
【請求項139】
対象のウイルス感染のレベルが、対照のウイルス感染のレベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
対象におけるウイルス感染のレベルを決定し、決定の手段が、アッセイ、対象を観察すること、対象におけるウイルス感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること、および対象の生存可能性を評価することのうちの1つまたは複数を含む、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
生理学的症状が、発熱、倦怠感、体重減少、および死亡のうちの1つまたは複数を含む、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
アッセイが、対象からの生物学的試料におけるウイルス感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するための手段を含む、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
有効量のゲルゾリン剤の投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させる、請求項140に記載の方法。
【請求項144】
対照の生存可能性が、ゲルゾリン剤の投与がない場合の生存可能性である、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
対象の生存可能性の増加が、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
ゲルゾリン剤の投与手段が、経口、舌下、頬側、鼻腔内、静脈内、吸入、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項147】
対象が、哺乳動物であり、任意選択でヒトである、請求項130に記載の方法。
【請求項148】
対象へのゲルゾリン剤の投与の1日以上前に対象を抗ウイルス剤で処置するステップをさらに含み、抗ウイルス剤は、対象がウイルス感染に罹患した日、対象がウイルス感染に罹患してから1日後、および、対象がウイルス感染に罹患してから2日後のうちの1日または複数日に投与される、請求項130から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗ウイルス剤のそれぞれが対象に投与され、対照の治療効果と比較して、ウイルス感染に対して相乗的治療効果を有し、抗ウイルス剤は、臨床的に許容される量で投与される、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
対照が、ゲルゾリン剤を投与せずに投与される臨床的に許容される量の抗ウイルス剤の投与の治療効果を含む、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
抗ウイルス剤の臨床的に許容される量が、抗ウイルス剤の最大耐量(MTD)未満の量である、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
抗ウイルス剤のMTDが、対象に対する抗ウイルス剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
抗ウイルス剤のMTDが、抗ウイルス剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
ゲルゾリン剤および抗ウイルス剤の相乗的有効量が、対象における抗ウイルス剤の最小有効量(MED)を減少させる、請求項149に記載の方法。
【請求項155】
MEDが、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗ウイルス剤の最低用量レベルであり、該応答が、抗ウイルス剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
ゲルゾリン剤および抗ウイルス剤の投与手段が、経口、舌下、頬側、鼻腔内、吸入、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から独立して選択される、請求項148に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月21日出願の米国仮出願第62/864,599号の米国特許法第119条(e)の下での利益を主張し、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
政府の利益
本発明は、助成金NIH AI125152ならびにNIH/NIAID契約HHSN272201000033I-HHSN27200003およびHHSN272201000033I-HHSN27200006に基づく政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明にある特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、いくつかの態様において、微生物感染の処置において宿主免疫防御を増強するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗菌剤耐性(antimicrobial resistance)は、世界的な公衆衛生上の懸念事項である。抗菌剤耐性は、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗寄生生物剤などのさまざまな抗菌剤の治療効果を低下させることが知られている。耐性肺炎球菌菌種の進化する存在の例としては、致命的な耐性肺炎球菌肺炎の症例報告(Waterer GWら、Chest 2000;18:1839-1840)およびS.pneumoniaのために入院した患者の22%(139/643人)がマクロライド耐性菌を有していたという知見(Cillonizら、Am J Respir Crit Care Med 2015;191:1265-1272)が挙げられる。最近の刊行物は、(1)小児集団におけるエリスロマイシン(96%)、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(79%)およびテトラサイクリン(77%)に対する侵襲性感染からのS.pneumoniae分離株の耐性(Caiら、Infect Drug Resist 2018年;11:2461-2469)および(2)高齢者集団における侵襲性感染からのS.pneumoniae分離株の調査(Intraら、Front Public Health 2017年;5:169)を証明している。レビュー刊行物、 Kollef & Betthauser,Curr.Opin.Inf.Dis.2019年;32:169-175は、市中感染型肺炎(CAP)に関連する一般的な病原菌、特にブドウ球菌およびStreptococcus pneumoniaの抗生物質耐性の増加を強調している。
【0004】
抗菌剤は、ヒトおよび動物における微生物感染に対する治療効果を有するため、微生物感染を処置するために長い間使用されてきた。以前は治療上有効であった抗菌剤に対する耐性は、感染を引き起こす病原体の変化によって引き起こされる場合がある。抗菌薬の乱用および誤用は、抗菌剤耐性の問題が拡大している要因であり得、これにより、以前は有効であった抗菌剤に対する反応性が低下している病原性感染のタイプが増加し続けている。抗菌剤耐性は、病原性感染を処置するための治療選択肢の欠如をもたらす。抗菌剤耐性病原体は、毎年多くの死者を出し、世界的に深刻な公衆衛生上の課題となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、部分的に、微生物感染を相乗的に処置するために使用することができる組成物に関する。組成物は、1つまたは複数の抗菌剤およびゲルゾリン剤を含む。本発明の方法は、部分的に、対象へのそのような組成物の投与に関するものであり、抗菌剤およびゲルゾリン剤は、対象における微生物感染を処置するために相乗的に作用する。
【0006】
本発明の一態様によれば、対象における微生物感染を相乗的に処置するための有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、臨床的に許容される量であり、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤は、対象に、臨床的に許容される量の抗菌剤を投与しゲルゾリン剤を投与しない治療効果を相乗的に増強する。ある特定の実施形態では、抗菌剤の臨床的に許容される量は、対象における抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である。いくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである。いくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象における抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量は、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる。ある特定の実施形態では、MEDは、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗菌剤の最低用量レベルであり、該応答は、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果は、対象の生存可能性を高めることを含む。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果は、対象における微生物感染を低下させることを含む。いくつかの実施形態では、微生物感染は細菌感染であり、任意選択により肺炎球菌種によって引き起こされる。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、β-ラクタム抗生物質を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、ペニシリンを含む。いくつかの実施形態では、微生物感染は、1つのタイプのPseudomonas aeruginosaによって引き起こされる。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、カルバペネムクラスの抗菌剤である。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、メロペネムである。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗真菌剤を含み、微生物感染は、真菌感染を含む。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、抗寄生生物剤を含み、微生物感染は、寄生生物感染を含む。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、抗ウイルス剤を含み、微生物感染は、ウイルス感染を含む。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物であり、任意選択によりヒトである。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、血漿ゲルゾリン(pGSN)を含み、任意選択により、組換えpGSNである。いくつかの実施形態では、組成物はまた、薬学的に許容される担体を含む。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む。いくつかの実施形態では、組成物はまた、薬学的に許容される担体を含む。
【0007】
本発明の一態様によれば、対象における微生物感染に対する抗菌剤の治療効果を増加させる方法であって、微生物感染を有する対象に、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれを投与するステップを含み、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤は、対象の微生物感染に対して相乗的治療効果を有し、相乗的治療効果は、ゲルゾリン剤なしで投与された抗菌剤の治療効果よりも大きい、方法。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、臨床的に許容される量で投与される。いくつかの実施形態では、微生物感染に対する相乗的治療効果は、微生物感染に対する対照の治療効果よりも高く、対照の治療効果は、抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれが他方なしで投与された場合の、微生物感染に対する抗菌剤の治療効果と、微生物感染に対するゲルゾリン剤の治療効果の合計である。ある特定の実施形態では、対照の治療効果は、ゲルゾリン剤の個々の治療効果に等しい。いくつかの実施形態では、対照の治療効果は、臨床的に許容される量で投与される抗菌剤の個々の治療効果に等しい。ある特定の実施形態では、相乗的治療効果は、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗生物質製剤を含み、微生物感染は細菌感染を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗真菌剤を含み、微生物感染は、真菌感染を含む。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、抗寄生生物剤を含み、微生物感染は、寄生生物感染を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗ウイルス剤を含み、微生物感染は、ウイルス感染を含む。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン分子は、血漿ゲルゾリン(pGSN)である。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン分子は、組換えゲルゾリン分子である。いくつかの実施形態では、抗菌剤の臨床的に許容される量は、抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である。いくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである。ある特定の実施形態では、抗菌剤のMTDは、抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量は、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる。いくつかの実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与の相乗的治療効果が、対照の微生物感染のレベルと比較して、対象における微生物感染のレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、対照の感染レベルは、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与しない場合の感染レベルを含む。ある特定の実施形態では、対象の微生物感染のレベルは、対照の微生物感染のレベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い。いくつかの実施形態では、対象における微生物感染のレベルを決定し、決定の手段は、アッセイ、対象を観察すること、対象における微生物感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること、および対象の生存可能性を評価することのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、生理学的症状は、発熱、倦怠感、および死亡のうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、生理学的症状は肺病変を含む。いくつかの実施形態では、生理学的症状は、体重減少を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、対象からの生物学的試料における微生物感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するための手段を含む。いくつかの実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させる。ある特定の実施形態では、対照の生存可能性は、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の生存可能性である。いくつかの実施形態では、対象の生存可能性の増加は、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。ある特定の実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の肺病変のレベルと比較して、対象における肺病変のレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、対照の肺病変のレベルは、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の肺病変のレベルである。ある特定の実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与された対象における肺病変のレベルは、対照の肺病変のレベルより、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%低い。いくつかの実施形態では、対象は、Pseudomonas aeruginosa細菌感染を有する。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、カルバペネムクラスを含み、任意選択によりメロペネムを含む。ある特定の実施形態では、細菌感染は、1つのタイプのStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、β-ラクタム抗生物質を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、ペニシリンを含む。ある特定の実施形態では、細菌感染は、1つのタイプのPseudomonas aeruginosaによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、カルバペネムクラスの抗菌剤である。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、メロペネムである。ある特定の実施形態では、細菌感染は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、結核菌、非結核性マイコバクテリウム、スピロヘータ、放線菌、ウレアプラズマ(Ureaplasma)種細菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)種細菌、およびクラミジア(Chlamydia)種細菌のうちの1つまたは複数によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の投与手段は、経口、舌下、頬側、鼻腔内、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から独立して選択される。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物であり、任意選択によりヒトである。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤は、非治療的ゲルゾリン剤である。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、非治療剤である。
【0008】
本発明の別の態様によれば、対象における微生物感染を相乗的に処置するための方法であって、微生物感染を有する対象に、有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれを投与するステップを含み、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤は、対照の治療効果と比較して、対象の微生物感染に対して相乗的治療効果を有し、抗菌剤は、臨床的に許容される量で投与される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対照は、ゲルゾリン剤を投与せずに投与される臨床的に許容される量の抗菌剤の投与の治療効果を含む。ある特定の実施形態では、抗菌剤の臨床的に許容される量は、抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である。いくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである。いくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量は、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる。ある特定の実施形態では、MEDは、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗菌剤の最低用量レベルであり、該応答は、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい。いくつかの実施形態では、相乗的治療効果は、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗生物質製剤を含み、微生物感染は細菌感染を含む。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、抗真菌剤を含み、微生物感染は、真菌感染を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗寄生生物剤を含み、微生物感染は、寄生生物感染を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗ウイルス剤を含み、微生物感染は、ウイルス感染を含む。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン分子は、血漿ゲルゾリン(pGSN)である。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン分子は、組換えゲルゾリン分子である。ある特定の実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与の相乗的治療効果が、対照の微生物感染のレベルと比較して、対象における微生物感染のレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、対照の感染レベルは、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与しない場合の感染レベルを含む。ある特定の実施形態では、対象の微生物感染のレベルは、対照の微生物感染のレベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い。いくつかの実施形態では、対象における微生物感染のレベルを決定し、決定の手段は、アッセイ、対象を観察すること、対象における微生物感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること、および対象の生存可能性を評価することのうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、生理学的症状は、発熱、倦怠感、および死亡のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、生理学的症状は、体重減少を含む。いくつかの実施形態では、生理学的症状は肺病変を含む。ある特定の実施形態では、アッセイは、対象からの生物学的試料における微生物感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するための手段を含む。いくつかの実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させる。ある特定の実施形態では、対照の生存可能性は、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の生存可能性である。いくつかの実施形態では、対象の生存可能性の増加は、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。いくつかの実施形態では、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれの投与によって、対照の病変のレベルと比較して、対象における肺病変のレベルが低下する。ある特定の実施形態では、対照の肺病変のレベルは、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれの投与がない場合の肺病変のレベルである。いくつかの実施形態では、相乗的有効量の抗菌剤およびゲルゾリン剤のそれぞれを投与された対象における肺病変のレベルは、対照の肺病変のレベルより、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%低い。いくつかの実施形態では、対象は、Pseudomonas aeruginosa細菌感染を有する。ある特定の実施形態では、抗菌剤はカルバペネムクラスを含み、任意選択によりメロペネムを含む。いくつかの実施形態では、細菌感染は、1つのタイプのStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)によって引き起こされる。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、β-ラクタム抗生物質を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、ペニシリンを含む。いくつかの実施形態では、細菌感染は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、結核菌、非結核性マイコバクテリウム、スピロヘータ、放線菌、ウレアプラズマ種細菌、マイコプラズマ種細菌、およびクラミジア種細菌のうちの1つまたは複数によって引き起こされる。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の投与手段は、経口、舌下、頬側、鼻腔内、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から独立して選択される。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、非治療的ゲルゾリン剤である。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、非治療剤である。
【0009】
本発明の別の態様によれば、対象の処置方法において使用するための、微生物感染に対する抗菌剤の治療効果を相乗的に増加させる抗菌剤とゲルゾリン剤とを含む医薬組成物であって、対象は微生物感染を有し、方法は、対象における微生物感染を処置するのに有効な量で、ゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれの相乗的有効量を含む医薬組成物を投与するステップを含み、相乗的治療効果は、ゲルゾリン剤なしで投与された抗菌剤の治療効果よりも大きい、医薬組成物。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤は、対象に別々にまたは同時に投与される。ある特定の実施形態では、抗菌剤を、臨床的に許容される量で投与し、投与されたゲルゾリン剤および抗菌剤は、対象に、臨床的に許容される量の抗菌剤を投与しゲルゾリン剤を投与しない治療効果を相乗的に増強する。いくつかの実施形態では、抗菌剤の臨床的に許容される量は、対象における抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である。いくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象に対する抗菌剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである。ある特定の実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象における抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量は、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる。いくつかの実施形態では、MEDは、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗菌剤の最低用量レベルであり、該応答は、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果は、対象の生存可能性を高めることを含む。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的治療効果は、対象における微生物感染を低下させることを含む。いくつかの実施形態では、微生物感染は細菌感染であり、任意選択により肺炎球菌種によって引き起こされる。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、ペニシリンを含む。いくつかの実施形態では、細菌感染は、1つのタイプのPseudomonas aeruginosaによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、カルバペネムクラスの抗菌剤である。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、メロペネムである。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗真菌剤を含み、微生物感染は、真菌感染を含む。ある特定の実施形態では、抗菌剤は、抗寄生生物剤を含み、微生物感染は、寄生生物感染を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗ウイルス剤を含み、微生物感染は、ウイルス感染を含む。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤は、血漿ゲルゾリン(pGSN)を含み、任意選択により、組換えpGSNである。いくつかの実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体を含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、対象におけるウイルス感染を処置するための方法であって、ウイルス感染を有する対象に有効量のゲルゾリン剤を投与するステップを含み、ゲルゾリン剤は、対象がウイルス感染に罹患してから少なくとも3、4、5、6、7、8、9日、またはそれ以上後に投与され、対象がウイルス感染に罹患した日、対象がウイルス感染に罹患してから1日後、または対象がウイルス感染に罹患してから2日後には投与されない、方法を提供する。いくつかの実施形態では、有効量のゲルゾリン剤が、対照の治療効果と比較して、対象におけるウイルス感染に対する治療効果を増加させる。ある特定の実施形態では、対照の治療効果は、ゲルゾリン剤が対象に投与されない場合の治療効果を含む。ある特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル、ペラミビル、およびバロキサビルマルボキシルのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、投与されたゲルゾリン剤の治療効果は、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン分子は、血漿ゲルゾリン(pGSN)である。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン分子は、組換えゲルゾリン分子である。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤の投与の治療効果が、対照のウイルス感染のレベルと比較して、対象におけるウイルス感染のレベルを低下させ、対照の感染レベルは、ゲルゾリン剤を投与しない場合の感染レベルを含む。ある特定の実施形態では、対象のウイルス感染のレベルは、対照のウイルス感染のレベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い。いくつかの実施形態では、対象におけるウイルス感染のレベルを決定し、決定の手段は、アッセイ、対象を観察すること、対象におけるウイルス感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること、および対象の生存可能性を評価することのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、生理学的症状は、発熱、倦怠感、体重減少、および死亡のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、対象からの生物学的試料におけるウイルス感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するための手段を含む。ある特定の実施形態では、有効量のゲルゾリン剤の投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させる。いくつかの実施形態では、対照の生存可能性は、ゲルゾリン剤の投与がない場合の生存可能性である。ある特定の実施形態では、対象の生存可能性の増加は、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤の投与手段は、経口、舌下、頬側、鼻腔内、静脈内、吸入、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から選択される。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物であり、任意選択によりヒトである。ある特定の実施形態では、この方法はまた、対象へのゲルゾリン剤の投与の1日以上前に対象を抗ウイルス剤で処置するステップを含み、抗ウイルス剤は、対象がウイルス感染に罹患した日、対象がウイルス感染に罹患してから1日後、および、対象がウイルス感染に罹患してから2日後のうちの1日または複数日に投与される。いくつかの実施形態では、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗ウイルス剤のそれぞれが対象に投与され、対照の治療効果と比較して、ウイルス感染に対して相乗的治療効果を有し、抗ウイルス剤は、臨床的に許容される量で投与される。いくつかの実施形態では、対照は、ゲルゾリン剤を投与せずに投与される臨床的に許容される量の抗ウイルス剤の投与の治療効果を含む。ある特定の実施形態では、抗ウイルス剤の臨床的に許容される量は、抗ウイルス剤の最大耐量(MTD)未満の量である。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤のMTDは、対象に対する抗ウイルス剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤のMTDは、抗ウイルス剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤および抗ウイルス剤の相乗的有効量は、対象における抗ウイルス剤の最小有効量(MED)を減少させる。いくつかの実施形態では、MEDは、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗ウイルス剤の最低用量レベルであり、該応答は、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい。ある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤および抗ウイルス剤の投与手段は、経口、舌下、頬側、鼻腔内、吸入、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所、直腸、膣、滑液嚢内、および眼内投与から独立して選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、pGSN投与後の細菌性肺炎に対する宿主防御の改善を測定する全身実験の結果のグラフを示す。インビトロでは、pGSNは、通常の血漿レベルと同様に、125~250μg/mlで存在する場合、マクロファージの取り込み(
図1A)を改善する。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniaeを使用した。
【
図1B】
図1Bは、pGSN投与後の細菌性肺炎に対する宿主防御の改善を測定する全身実験の結果のグラフを示す。インビトロでは、pGSNは、通常の血漿レベルと同様に、125~250μg/mlで存在する場合、内在化肺炎球菌の死滅(
図1B)を改善する。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniaeを使用した。
【
図1C】
図1Cは、pGSN投与後の細菌性肺炎に対する宿主防御の改善を測定する全身実験の結果のグラフを示す。インビボでは、pGSN(感染の2時間前ならびに8時間後および20時間後の10mg s.c.により、i.n.吹送によって10
5肺炎球菌でチャレンジされたBl6マウスにおける細菌クリアランスが改善された(24時間で生存細菌がより少ない)(
図1C)。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniaeを使用した。
【
図1D】
図1Dは、pGSN投与後の細菌性肺炎に対する宿主防御の改善を測定する全身実験の結果のグラフを示す。インビボでは、pGSNを感染前にエアロゾルとして15分または30分間投与した場合、
図1Cと同様の結果が見られた。(
図1D)。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniaeを使用した。
【
図1E】
図1Eは、pGSN投与後の細菌性肺炎に対する宿主防御の改善を測定する全身実験の結果のグラフを示す。全身性pGSN(s.c.)によって、抗生物質処置がなくても、原発性(
図1E、3×10
5 CFU接種を使用)肺炎球菌性肺炎の生存率が改善した。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniaeを使用した。
【
図1F】
図1Fは、pGSN投与後の細菌性肺炎に対する宿主防御の改善を測定する全身実験の結果のグラフを示す。全身性pGSN(s.c.)によって、抗生物質処置がなくても、続発性インフルエンザ後肺炎球菌性肺炎(
図1F、PR8による軽度のインフルエンザ感染後7日目に500 CFU接種を使用)の生存率が改善した。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniaeを使用した。
【
図2A】
図2Aは、マクロファージに対するpGSNの効果にNOS3が必要であることを示すグラフを提供する。
図2Aは、インビトロでの肺炎球菌のマクロファージ殺傷を実証した実験結果を示している。NOS3欠損細胞または動物を使用した場合、細菌のマクロファージクリアランスはもはや増強されなかった。*=p<.01。
【
図2B】
図2Bは、マクロファージに対するpGSNの効果にNOS3が必要であることを示すグラフを提供する。
図2Bは、インビボでの細菌のマクロファージクリアランスを示す実験結果を示している。NOS3欠損細胞または動物を使用した場合、細菌のマクロファージクリアランスはもはや増強されなかった。*=p<.01。
【
図3A】
図3Aは、抗生物質感受性肺炎球菌性肺炎の研究のグラフを提供する。
図3Aは、pGSN(感染後2日目と3日目に5mgのi.p.)による処置の結果を示し、血清型3肺炎球菌に感染したマウスの生存率の改善を実証している(*=p=.01、n=20/群、2件の試験の要約、試験ごとに群あたり10匹のマウス)。
【
図3B】
図3Bは、抗生物質感受性肺炎球菌性肺炎の研究のグラフを提供する。
図3Bは、ペニシリン(PEN、感染後2日目と3日目にi.m.により100μg)による処置の結果を提供し、血清型3肺炎球菌に感染したマウスの生存率の改善を示す(*=p=.02、n=8~9/群、単一試験)。
【
図4A】
図4Aは、抗生物質耐性肺炎球菌性肺炎の研究結果のグラフを提供する。
図4Aの結果は、pGSN(感染後1日目から1日5mg i.p.)による処置により、ビヒクルまたはペニシリン(PEN、1日1mg用量 i.m)と比較して、血清型14肺炎球菌に感染したマウスの生存率が改善したことを実証している(*、それぞれp=.02、.04、多重比較のためのシダック補正後のログランク比較)。pGSNとペニシリンの併用処置も、ビヒクルまたはペニシリンと比較してより高い生存率をもたらした(**、両方の比較でp=.0001、多重比較でシダック補正を使用したログランク)。多重比較のためのシダック補正後、pGSN対pGSN+PEN群の生存率は、統計的に有意ではなかった(p=.47 n=38~41/群、4回の試験の要約、試験ごとに群あたり8~11匹のマウス)。
【
図4B】
図4Bは、抗生物質耐性肺炎球菌性肺炎の研究結果のグラフを提供する。(
図4B)体重減少の評価は、pGSNまたはpGSN+PEN群においてより迅速な体重回復を示した(示された各日の平均値、p=.001、ANOVA;Bの4回の試験で群あたりn=38~41、;任意のマウスの最後の観察は死亡後に繰り越された)。
【
図4C】
図4Cは、抗生物質耐性肺炎球菌性肺炎の研究結果のグラフを提供する。(
図4C)罹患率の評価は、pGSNまたはpGSN+PEN群においてより低い罹患率指数を示した(示された各日の平均値、p=.04、ANOVA;Cの3回の試験で群あたりn=30;任意のマウスの最後の観察は死亡後に繰り越された)。
【
図5】遅延投与の4種の処置の試験が評価された9つの実験からのデータ結果の表を提供する。
図5は、パイロット試験および距離測定試験を含む9つの実験の詳細を示している。列Hは、ペニシリン耐性肺炎球菌のBHIブロスにおける2倍増殖法[Restrepo AVら,BMC Microbiol 2005;5:34]を使用して得られた優れた増殖結果についての細菌増殖法の変化を示している。表に提供されているデータは、9つの実験すべてにおいて、生存率がPEN+pGSN群で最も高かったことを示している。PEN+pGSN群の生存率はpGSN群よりも高く、両方の生存率はビヒクルまたはPEN単独群よりも高かった。多重比較のためのシダック補正とともにログランク分析を使用した、プールされた9つの研究すべての分析によって決定されるように、生存率の差は統計的に有意であった。最後の4つの実験(番号6~9)の統計分析の結果の詳細を、
図4A~Cにまとめている。
【
図6】好中球減少性のマウスにrhu-pGSNを投与した場合と投与しない場合の、メロペネム用量の投与後の生存を評価する3つの実験のデータを表に提供する。
図6は、示されているメロペネム用量をMDR Pseudomonas aeruginosaの感染後3時間から皮下投与し、その後5日間8時間ごとに投与した3つの実験の詳細を示している。メロペネムの用量は、rhu-pGSNを投与した場合と投与しない場合のいずれかで投与された。rhu-pGSNを、-1、0、1、2、3、4、および5日目に腹腔内注射により12mgとして投与した。n/N=生存しているマウスの数/処置されたマウスの数。
【
図7A】
図7Aは、メロペネムとrhu-pGSNの併用治療で観察された延命効果を実証するグラフを提供する。シクロホスファミドにより好中球減少性になったBALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した。エンドポイント基準に達したとき、または7日目の研究終了時にマウスを安楽死させた。生存分析を、群サイズn=8の2つの研究(
図7Aおよび
図7B)を使用したログランク検定によって実施した。7日目の対照死亡率は、同じ1250mgのメロペネム用量で≧50%であった。p値は、メロペネム単独に対する併用療法の生存優位性を指す。MTDは、平均死亡時間を指す。
【
図7B】
図7Bは、メロペネムとrhu-pGSNの併用治療で観察された延命効果を実証するグラフを提供する。シクロホスファミドにより好中球減少性になったBALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した。エンドポイント基準に達したとき、または7日目の研究結果でマウスを安楽死させた。生存分析を、群サイズn=8の2つの研究(
図7Aおよび
図7B)を使用したログランク検定によって実施した。7日目の対照死亡率は、同じ1250mgのメロペネム用量で≧50%であった。p値は、メロペネム単独に対する併用療法の生存優位性を指す。MTDは、平均死亡時間を指す。
【
図7C】
図7Cは、メロペネムとrhu-pGSNの併用治療で観察された延命効果を実証するグラフを提供する。シクロホスファミドにより好中球減少性になったBALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した。エンドポイント基準に達したとき、または7日目の研究結果でマウスを安楽死させた。
図7Aおよび
図7Bの2つの別々の研究を組み合わせて結果を分析した(
図7C)。p値は、メロペネム単独に対する併用療法の生存優位性を指す。MTDは、平均死亡時間を指す。
【
図8】
図8Aは、rhu-pGSNの投与により肺内の細菌数が減少することを示すグラフを提供する。BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した2つの研究を実行した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)マウスを安楽死させ、または7日目の研究結果での生存者を安楽死させた(黒丸)。細菌を、プレート計数によって、均質化された肺から計数した。
図8Aは、第1の研究の結果のグラフを示す;p値は、併用療法対メロペネム単独の対応のないスチューデントt検定の比較を指す。グラフの下部にある線は、検出限界を示している。
図8Bは、rhu-pGSNの投与により肺内の細菌数が減少することを示すグラフを提供する。BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した2つの研究を実行した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)マウスを安楽死させ、または7日目の研究結果での生存者を安楽死させた(黒丸)。細菌を、プレート計数によって、均質化された肺から計数した。
図8Bは、第2の研究の結果のグラフを示す。個々のデータおよび組み合わせデータを2つの研究で分析し、メロペネム療法単独(Mero)対pGSNとの併用のペアワイズ分析を行った。p値は、併用療法対メロペネム単独の対応のないスチューデントt検定の比較を指す。グラフの下部にある線は、検出限界を示している。
図8Cは、
図8Aおよび
図8Bに示される2つの研究からの組み合わせデータのグラフを示す。p値は、併用療法対メロペネム単独の対応のないスチューデントt検定の比較を指す。グラフの下部にある線は、検出限界を示している。
【
図9A】
図9A~Cは、rhu-pGSNが感染誘発肺損傷を制限することを示すグラフを提供する。BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した2つの研究を実行した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)マウスを安楽死させ、または7日目の研究結果での生存者を安楽死させた(黒丸)。肺の代表的な切片を肺から切除し、H&E染色およびスコアリングのために処理した。
図9Aは、第1の研究の結果のグラフを示す;データを、2つの個別の研究について別々に分析し、メロペネム療法単独(Mero)またはpGSNとの併用のペアワイズ分析と組み合わせた。p値は、併用療法対メロペネム単独の対応のないスチューデントt検定の比較を指す。
【
図9B】
図9A~Cは、rhu-pGSNが感染誘発肺損傷を制限することを示すグラフを提供する。BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させ、メロペネム単独(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に1日3回、)またはpGSNとの併用(-1~+5日間、毎日12mg/日 腹腔内)のいずれかで処置した2つの研究を実行した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)マウスを安楽死させ、または7日目の研究結果での生存者を安楽死させた(黒丸)。肺の代表的な切片を肺から切除し、H&E染色およびスコアリングのために処理した。
図9Bは、第2の研究の結果のグラフを示す。データを、2つの個々の研究について別々に分析し、メロペネム療法単独(Mero)またはpGSNとの併用のペアワイズ分析と組み合わせた。p値は、併用療法対メロペネム単独の対応のないスチューデントt検定の比較を指す。
【
図9C】
図9A~Cは、rhu-pGSNが感染誘発肺損傷を制限することを示すグラフを提供する。
図9Cは、
図9Aおよび
図9Bに示される2つの研究からの組み合わせデータのグラフを示す。p値は、併用療法対メロペネム単独の対応のないスチューデントt検定の比較を指す。
【
図10】異なる用量のメロペネムで処置された生存マウスからの軽度の肺損傷を伴う全生存期間のデータを表に示している。示されているメロペネム用量を、感染後3時間から皮下投与し、その後5日間8時間ごとに投与した。rhu-pGSNを、-1、0、1、2、3、4、および5日目に腹腔内注射により12mgとして投与した。アスタリスク(*)は、チャレンジ後20時間で合計3匹のマウス(すべて実験番号2)を安楽死させたが、肺損傷はなかったことを示しており;3つのメロペネム+rhu-pGSN処置群のそれぞれに1匹のマウスが存在していた。これらの3匹のマウスをrhu-pGSN集計から除外すると、最終計数は41/61(67.2%)になった。n/N=複合肺損傷スコアが≦2の生存しているマウスの数/処置されたマウスの数。
【
図11A】
図11Aは、メロペネム単独またはメロペネムプラスrhu-pGSNのいずれかで処置されたマウスのベースライン温度の回復を実証する2つの実験のグラフを示す。両方の実験で、BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させた。
図11Aは、メロペネム単独で処置された(感染後3時間から5日間、1250mg/kg/日皮下に8時間ごと)第1の実験におけるマウスの温度のグラフを示す。動物の体温を、感染後8時間ごとに、研究が終了するまで監視した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)、または7日目の研究終了時(黒丸)にマウスを安楽死させた。
【
図11B】
図11Bは、メロペネム単独またはメロペネムプラスrhu-pGSNのいずれかで処置されたマウスのベースライン温度の回復を実証する2つの実験のグラフを示す。両方の実験で、BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させた。
図11Bは、(-1日目~+5日目まで毎日12mg/日 腹腔内)rhu-pGSNと組み合わせてメロペネムにより処置された第1の実験におけるマウスの温度のグラフを示す。動物の体温を、感染後8時間ごとに、研究が終了するまで監視した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)、または7日目の研究終了時(黒丸)にマウスを安楽死させた。
【
図11C】
図11Cは、メロペネム単独またはメロペネムプラスrhu-pGSNのいずれかで処置されたマウスのベースライン温度の回復を実証する2つの実験のグラフを示す。両方の実験で、BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させた。
図11Cは、メロペネム単独で処置された第2の実験におけるマウスの温度のグラフを示す(
図11Aと同じレジメン)。動物の体温を、感染後8時間ごとに、研究が終了するまで監視した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)、または7日目の研究終了時(黒丸)にマウスを安楽死させた。
【
図11D】
図11Dは、メロペネム単独またはメロペネムプラスrhu-pGSNのいずれかで処置されたマウスのベースライン温度の回復を実証する2つの実験のグラフを示す。両方の実験で、BALB/c-CyマウスをPseudomonas aeruginosaのUNC-D株に感染させた。
図11Dは、rhu-pGSNと組み合わせてメロペネムにより処置された(
図11Bと同じレジメン)第2の実験におけるマウスの温度のグラフを示す。動物の体温を、感染後8時間ごとに、研究が終了するまで監視した。エンドポイント基準に達したとき(白丸)、または7日目の研究終了時(黒丸)にマウスを安楽死させた。
【
図12-1】マウスインフルエンザにおいて組換えヒト血漿ゲルゾリン(rhu-pGSN)を使用した治療試験の詳細を示す表を提供する。*=pGSN対ビヒクルの生存%が≧10%優れている場合、処置効果を「肯定」とスコア付けし;pGSNによる生存率が<10%の場合は否定とスコア付けした。
【
図12-2】マウスインフルエンザにおいて組換えヒト血漿ゲルゾリン(rhu-pGSN)を使用した治療試験の詳細を示す表を提供する。*=pGSN対ビヒクルの生存%が≧10%優れている場合、処置効果を「肯定」とスコア付けし;pGSNによる生存率が<10%の場合は否定とスコア付けした。
【
図12-3】マウスインフルエンザにおいて組換えヒト血漿ゲルゾリン(rhu-pGSN)を使用した治療試験の詳細を示す表を提供する。*=pGSN対ビヒクルの生存%が≧10%優れている場合、処置効果を「肯定」とスコア付けし;pGSNによる生存率が<10%の場合は否定とスコア付けした。
【
図13】
図13は、さまざまな処置レジメンを使用した生存データの要約を提供する。pGSNは、血漿ゲルゾリンである。
【
図14A】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14B】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14C】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14D】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14E】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14F】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14G】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図14H】
図14A~Hは、さまざまな処置レジメンの生存率および罹患率の分析結果を提供する。rhu-pGSNまたはビヒクルで処置されたマウスの生存率(
図14A、C、E、およびG)と罹患率(
図14B、D、F、およびH)の比較。(
図14A~B)遅延処置を使用した18の試験すべて(通常、群あたり10匹以上のマウス、
図12および13の詳細を参照のこと)の結果。一部の試験では、6日目または3日目に異なる処置群で処置を開始した。(
図14C~D)6日目以降に開始する遅延処置を使用した13件の試験の結果。(
図14E~F)3日目に開始する処置を使用した8件の結果。(
図14G~H)3日目に最初は低用量で開始し、6/7日目から用量を増加させた4件の試験の結果。*=
図14A、C、E、およびGの場合、それぞれ0.000001、0.00001、0.0005、0.0005;
図14B、D、F、およびHの場合はp<0.0001。
【
図15】ビヒクルまたはrhu-pGSNで処置された動物(9日目)の肺組織においてアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションされた差次的発現遺伝子の上位50を示す実験結果を提供する。9日目のrhu-pGSN処置動物の肺における上位50のダウンレギュレーション(左)およびアップレギュレーション(右)遺伝子を示すヒートマップ(右のスケールで範囲-2~+2を示している)。
【
図16-1】血漿ゲルゾリン(pGSN)で処置された肺組織(9日目)におけるダウンレギュレーションされた遺伝子オントロジー(GO)プロセスと経路の上位10を示す。
【
図16-2】血漿ゲルゾリン(pGSN)で処置された肺組織(9日目)におけるダウンレギュレーションされた遺伝子オントロジー(GO)プロセスと経路の上位10を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、部分的に、微生物感染を有する対象にゲルゾリン剤および抗菌剤を投与することによって、微生物感染を低減させる2つの薬剤の相乗的治療効果をもたらすことができるという発見に基づいている。本発明は、いくつかの態様において、微生物感染を有する対象に投与されると、対象において相乗的に作用し、それらの相乗作用は、ゲルゾリン剤または抗菌剤のいずれかを臨床的に許容される用量で対象に投与し、他方を対象に投与しない場合の治療効果よりも大きい治療効果をもたらす外因性ゲルゾリン剤および抗菌剤を含む治療組成物を含む。本発明のある特定の方法は、本発明の医薬組成物を、対象における微生物感染に対して相乗的治療効果を生み出すのに有効な量で、微生物感染を有する対象に投与するステップを含む。本発明のいくつかの方法は、ウイルス感染を有する対象へのゲルゾリン剤の遅延用量投与を含み、これは、対象におけるウイルス感染の処置を増強する。
【0013】
相乗的治療効果
本発明の方法は、微生物感染を有する対象において相乗的治療効果を生み出して、微生物感染を軽減および治療するステップを含む。ゲルゾリン剤と抗菌剤の一方または両方が微生物感染に対して統計的に有意な個別の治療効果を有さない場合でも、それらを互いに組み合わせて投与し、微生物感染に対して相乗的治療効果を生み出すことができると結論付けた。したがって、本発明のいくつかの態様において、1つまたは複数の抗菌剤に耐性のある微生物によって引き起こされる対象における微生物感染は、対象に対する相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤を投与することの新たに発見された相乗的治療効果のおかげで、本発明の相乗的治療方法を使用して効果的に治療することができる。
【0014】
ゲルゾリン剤または抗菌剤などの薬剤に関して本明細書で使用される「個々の治療効果」という用語は、微生物感染を有する対象に投与されたときの薬剤の治療効果を意味する。本発明の方法および組成物に関して、ゲルゾリン剤の個々の治療効果は、対象に抗菌剤を投与しないで、対象にゲルゾリン剤を投与することによって生じる、対象における微生物感染に対する治療効果である。本発明の方法および組成物に関して、抗菌剤の個々の治療効果は、ゲルゾリン剤を投与しないで、対象に抗菌剤を投与することによって生じる、対象における微生物感染に対する治療効果である。
【0015】
当技術分野で理解されているように、相乗的治療効果は、2種以上の薬物間の相互作用から生じる治療効果であり、薬物の総治療効果は、各薬物の個々の治療効果の合計よりも大きくなる。本発明の方法に関して、投与されたゲルゾリンおよび抗菌剤の総治療効果は、ゲルゾリン剤の個々の治療効果と抗菌剤の個々の治療効果の合計よりも大きい。非限定的な例において、Streptococcus pneumoniae感染を有する対象を、相乗的有効量の血漿ゲルゾリン(pGSN)剤およびペニシリンを対象に投与するステップを含む本発明の方法で処置して、対象の感染に対して相乗的治療効果をもたらすことができる。この例では、pGSN剤とペニシリンの両方を投与する治療効果は、Streptococcus pneumoniae感染に対するその量のpGSNの個々の治療効果とその量のペニシリンの個々の治療効果の合計よりも大きい。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、相乗的有効量のゲルゾリン剤および非治療的抗菌剤のそれぞれを、微生物感染を有する対象に投与するステップを含む。併用投与の相乗効果により、抗菌剤の治療効果が高まる場合がある。「非治療剤」という用語は、本明細書では、対象における微生物感染に対して統計的に有意な個々の治療効果を有さない抗菌剤に関して使用される。本発明の方法および組成物に関して使用される非治療剤は、当技術分野で「治療剤」または「抗菌治療剤」と呼ばれる抗菌剤ではないことを理解すべきである。例えば、医療従事者にとって、臨床的に許容される量で投与された場合に、微生物感染に対して統計的に有意な個々の治療効果がない抗菌剤は、その微生物感染を有する対象に投与する治療剤に指定されないであろう。同様に、ペニシリンはある特定の微生物感染に対して統計的に有意な個々の治療効果を有さないことが当技術分野で認識されており、したがって、ペニシリンはそれらの感染に関して「非治療剤」として理解および定義されるであろう。本発明のある特定の実施形態では、抗菌剤は、対象における微生物感染に対するその個々の治療効果に関して非治療剤である。本発明のいくつかの実施形態では、抗菌剤は、対象における抗菌剤耐性微生物感染に対するその個々の治療効果に関して非治療剤である。対象における微生物感染に対する統計的に有意な個々の治療効果を欠くゲルゾリン剤は、本明細書では、微生物感染に関して非治療剤と呼ぶことができる。
【0017】
個々のおよび相乗的治療効果
本発明の方法および組成物のある特定の実施形態は、対象における微生物感染に対する個々の治療効果を欠く1つまたは複数の薬剤を含む。場合によっては、ゲルゾリン剤は、微生物感染に対して個々の治療効果を有する場合があり、抗菌剤は、統計的に有意な個々の治療効果を有さない場合がある。抗菌剤の場合には、微生物感染に対する抗菌剤の個々の治療効果の欠如は、微生物感染を引き起こす微生物の抗菌剤耐性が原因である場合とそうでない場合がある。微生物または微生物感染に関連して、本明細書で使用される「耐性」という用語は、抗菌剤によってそれぞれ殺傷されないかまたは減少されない微生物を意味する。本発明のいくつかの実施形態では、抗菌剤耐性微生物または感染に対する抗菌剤の個々の治療効果は、ゼロであり得る。
【0018】
ある特定の状況において、対象における微生物感染は、抗菌剤の個々の治療効果に耐性のある微生物に起因する。後天的な抗菌剤耐性は、以前は疾患の有効な治療であった抗菌剤への曝露に耐える、疾患の原因となる微生物の能力として理解され得る。「抗菌剤耐性」である微生物は、対象における微生物感染の原因である場合があり、微生物感染に対して治療上有効であることが以前に知られていた1つまたは複数の抗菌剤を含む、1つまたは複数の抗菌剤は、微生物感染に対して無効である。非限定的な例では、対象における肺炎球菌感染は、1つまたは複数の抗生物質の治療効果に耐性のあるStreptococcus pneumoniaeが対象において存在することに起因し得る。
【0019】
本発明のある特定の実施形態では、投与されるゲルゾリン剤の量および投与される抗菌剤の量は、それぞれ、対象への投与のために臨床的に許容される量であることが理解されるであろう。臨床的に許容できる量で投与された抗菌性感染(antimicrobial infection)の投与によって、ある特定の微生物感染が低減しないことが知られている。例えば、ある場合には、微生物感染を引き起こす微生物は、投与された抗菌剤に耐性があり、他のそのような場合には、微生物感染を引き起こす微生物は、臨床的に許容される量の抗菌剤の投与によって十分に殺傷されない。どちらの状況でも、対象の微生物感染を低減するのに十分な量の抗菌剤を投与することが可能であり得るが、必要な量は、対象に毒性および/または他の有害な生理学的影響をもたらすので、それは臨床的に許容されない量である。対照的に、本発明の方法のある特定の実施形態の相乗的治療効果によって、毒性が統計的に有意に少なく、かつ対象における有害な副作用がより少ない、対象における微生物感染の低減を成功させる臨床的に許容される量の抗菌剤の投与が可能になる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、抗菌剤の臨床的に許容される量は、抗菌剤の最大耐量(MTD)未満の量である。薬剤を投与することの負の副作用を防止または低減するために、どのように個体のMTDを決定することができるかは当技術分野で理解されている。本発明のいくつかの実施形態では、抗菌剤のMTDは、対象に対して許容可能な用量である、対象に対する抗菌剤の可能な最高の用量レベルである。許容可能な用量は、対象の不快感、生理学的苦痛、対象の死亡のリスクの増加などを含むがこれらに限定されない、所与の用量レベルでの副作用に基づいて決定することができる。本発明のいくつかの実施形態では、対象に投与される抗菌剤のMTDは、抗菌剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。例えば、その抗菌剤に耐性のある微生物を減少させるかまたは殺傷するのに有効な抗菌剤の用量または量は、対象に投与された場合、対象に臨床的に許容されない毒性および/または有害な副作用をもたらす場合がある。
【0021】
本発明の方法は、微生物感染を有する対象に抗菌剤とゲルゾリン剤の両方を投与することの相乗的治療効果を有するため、それらの方法を、より低用量の抗菌剤とともに使用することができるという点において有利である。本発明の方法のいくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤および抗菌剤の相乗的有効量は、対象における抗菌剤の最小有効量(MED)を減少させる。ゲルゾリン剤の量または用量および抗菌剤の量または用量は、独立して選択され、臨床的に許容される量および用量であることを理解すべきである。
【0022】
場合によっては、ある量のゲルゾリン剤および/またはある量の抗菌剤は、対象における微生物感染に対する個々の治療効果を有さない。場合によっては、ある量のゲルゾリン剤および/またはある量の抗菌剤は、ゼロより大きい微生物感染に対する個々の治療効果を有する。表1は、微生物感染を有する対象に投与されたある量のゲルゾリン剤に起因する独立した治療効果、微生物感染を有する対象に投与されたある量の抗菌剤に起因する独立した治療効果、および微生物感染を有する対象に投与されたその量のゲルゾリン剤およびその量の抗菌剤に起因する相乗的治療効果の間の関係を示す。示されているそれぞれの状況において、相乗的治療効果は、ゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれの独立した治療効果の合計よりも大きい。
【0023】
【0024】
治療組成物および方法
本発明の組成物または本発明の処置方法の相乗的治療効果(本明細書では、本発明の処置方法に対する「応答」とも呼ばれる)は、例えば、相乗的処置の投与後の症状の低減または欠如などの、処置の1つまたは複数の生理学的効果を検出することによって決定することができる。対象における微生物感染を監視および評価し、処置に応答した対象における微生物感染の存在、不在、レベル、重症度、重症度の変化などのうちの1つまたは複数を決定する追加の手段は、当技術分野において周知であり、これらの手段を本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態と併せて利用してもよい。
【0025】
本発明の方法は、ゲルゾリン剤と抗菌剤との相乗的組み合わせを、微生物感染を有する対象に、それぞれが対象における微生物感染を低減するための相乗的治療効果をもたらすのに有効な量で投与するステップを含む。ゲルゾリン剤および抗菌剤は、同時に投与することができる。ゲルゾリン剤および抗菌剤は、同じ製剤でまたは別個の製剤であるが、対象において同時であるように投与されるもので投与することができる。
【0026】
本発明の方法および組成物を使用して、微生物感染を処置することができる。本明細書で使用される場合、微生物感染に関連して使用される場合の「処置する」、「処置される」、または「処置すること」という用語は、対象が微生物感染を発症する可能性を低下させる予防的処置を指すことができ、微生物感染を排除または改善し、微生物感染がより進行するかまたは重篤になるのを防ぎ、および/または本発明の治療方法がない場合の微生物感染の進行と比較して、微生物感染の進行を遅らせるための、対象が微生物感染を発症した後の処置を指すために使用することができる。
ゲルゾリン剤
ゲルゾリンは高度に保存された多機能タンパク質であり、最初はマクロファージのサイトゾルで記述され、その後多くの脊椎動物細胞で同定されている(Piktel E.ら、Int J Mol Sci 2018年;19:E2516;Silacci P.ら、Cell Mol Life Sci 2004年;61:2614-23。)ゲルゾリンの固有の特性は、その遺伝子が、細胞外液に分泌され、25アミノ酸の付加配列を発現することによってその細胞質対応物(cGSN)とは異なる別個の血漿アイソフォーム(pGSN)をコードするスプライスバリアントを発現することである。pGSNは通常、哺乳類の血液中を200~300μg/mlの濃度で循環し、最も豊富な血漿タンパク質の1つになる。本明細書で使用される「ゲルゾリン剤」という用語は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含む組成物を意味する。本発明のいくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体のうちの1つまたは複数のみを含む。本発明のある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤は、検出可能な標識、担体、送達剤などの非限定的な例である、さらなる追加の成分のうちの1つを含み得る。本発明のある特定の態様では、ゲルゾリン分子は血漿ゲルゾリン(pGSN)であり、ある特定の例では、ゲルゾリン分子は細胞質GSNである。本発明の組成物および方法に含まれるゲルゾリン分子は、組換えゲルゾリン分子であり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ゲルゾリン剤」という用語は、外因性ゲルゾリン分子を含む化合物である。ゲルゾリン分子に関して本明細書で使用される「外因性」という用語は、内因性ゲルゾリン分子と呼ばれ得る、同じゲルゾリン分子が対象に天然に存在する場合でも、対象に投与されるゲルゾリン分子を意味する。本発明の方法または組成物に含まれるゲルゾリン剤は、野生型ゲルゾリン分子(GenBankアクセッション番号:X04412)、ゲルゾリン分子のアイソフォーム、アナログ、バリアント、フラグメントまたは機能的誘導体であり得る。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、「ゲルゾリンアナログ」を含んでもよく、これは、本明細書で使用される場合、ネイティブのゲルゾリンまたはそのフラグメントのいずれかと機能が実質的に類似する化合物を指す。ゲルゾリンアナログは、ゲルゾリン配列に実質的に類似する生物学的に活性なアミノ酸配列を含み、ゲルゾリンの生物活性に実質的に類似する生物活性を有する置換、欠失、伸長、置き換え、または別様に修飾配列を有し得る。例えば、ゲルゾリンのアナログは、ゲルゾリンと同じアミノ酸配列を有さないが、ゲルゾリンの生物活性を保持する程度にゲルゾリンと十分に相同であるものである。生物活性は、例えば、ゲルゾリンアナログの特性を決定することによって、および/または感染の影響を低減または防止するゲルゾリンアナログの能力を決定することによって決定することができる。ゲルゾリン生物活性アッセイは、当業者に既知である。
【0029】
本発明の方法および組成物のある特定の実施形態は、ゲルゾリン分子のフラグメントを含む。「フラグメント」という用語は、「親」ゲルゾリンの生物活性のレベルの少なくとも一部または実質的にすべてを維持するゲルゾリンのセグメントを提供するゲルゾリン分子の任意の部分を含むことを意味し;この用語は、例えば、天然に存在するペプチド配列、合成または化学的に合成されたペプチド配列、および遺伝子操作されたペプチド配列など、任意の供給源から作製されたゲルゾリンフラグメントを含むことを意味する。ゲルゾリンフラグメントまたは誘導体分子に関して本明細書で使用される「親」という用語は、フラグメントまたは誘導体の配列が由来するゲルゾリン分子を意味する。
【0030】
本発明の方法および組成物のある特定の実施形態では、ゲルゾリンフラグメントは、機能的フラグメントであり、その親ゲルゾリン分子の機能の少なくとも一部からすべてまでを保持している。本発明の方法および組成物は、いくつかの実施形態において、ゲルゾリンの「バリアント」を含み得る。本明細書で使用される場合、ゲルゾリンバリアントは、ネイティブのゲルゾリンまたはそのフラグメントのいずれかと構造および生物活性が実質的に類似している化合物であり得る。本発明のある特定の態様では、ゲルゾリンバリアンントは、機能的バリアンントと呼ばれ、その親ゲルゾリン分子の機能の少なくとも一部からすべてまでを保持している。
【0031】
ゲルゾリン誘導体もまた、本発明の方法および組成物の実施形態に含めることが企図されている。ゲルゾリンの「機能的誘導体」は、ゲルゾリンの生物活性と実質的に類似の生物活性を有する誘導体である。「実質的に類似している」とは、量的には異なるが質的には同じであり得る活性を意味する。例えば、ゲルゾリンの機能的誘導体は、ゲルゾリンと同じアミノ酸骨格を含むことができるが、例えば、結合リン脂質、または共有結合した炭水化物などの翻訳後修飾などの他の修飾も、本発明の治療方法の性能に対するそのような修飾の必要性に応じて含んでいる。本明細書で使用される場合、この用語はまた、ゲルゾリンの化学誘導体を含むことを意味する。このような誘導体は、ゲルゾリンの溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善する場合がある。誘導体はまた、ゲルゾリンの毒性を低下させるか、またはゲルゾリンの望ましくない副作用などを排除または軽減する場合がある。誘導体、および具体的には、そのような効果を媒介することができる化学部分は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy、2012年、編者: Allen,Loyd V.,Jr、第22版)に開示されている。そのような部分をゲルゾリンなどの分子にカップリングするための手順は、当技術分野において周知である。「機能的誘導体」という用語は、ゲルゾリンの「フラグメント」、「バリアンント」、「アナログ」、または「化学的誘導体」を含むことを意図している。
【0032】
微生物感染
「微生物(microbe)」および「微生物の(microbial)」という用語は、本明細書では「微生物感染」と呼ばれることがある、疾患を引き起こす微生物(microorganism)を指すために使用される。微生物および微生物のという用語は、細菌、真菌、ウイルス、および寄生生物などの微生物を包含するが、これらに限定されず、これらは、対象に存在する場合、それぞれ細菌、真菌、ウイルス、および寄生生物感染を引き起こすことができる。対象における感染の処置または低減に関して本明細書で使用される「抗菌剤」という用語は、細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、および寄生生物感染をそれぞれ処置するために対象に投与することができる抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および抗寄生生物剤を包含する。本発明は、いくつかの態様において、対象における感染を処置するための方法を含む。本発明のいくつかの実施形態において、対象は、微生物感染を有することが知られているか、微生物感染に曝露された疑いがあるか、または曝露されるリスクがあるか、または曝露された。
【0033】
対照対象または群で評価され得る対象における微生物感染の特徴としては、生存可能性、死亡、体重、対象からの生物学的試料中の微生物のレベル、対象からの生物学的試料中の微生物の存在、倦怠感の存在、不在、および/またはレベル、体温、発熱、咳、肺滲出液、うっ血、頭痛、悪寒、体の痛み、発疹、紅潮など、が挙げられるが、これらに限定されない。異なる微生物感染では異なる特徴が示される場合があり、ヒトにおける微生物感染の特徴は、別の動物種における同じ微生物感染の特徴とは異なる場合があることが理解されるであろう。異なる微生物感染に存在する特徴ならびにヒトおよび/または動物に存在する特徴は、当技術分野において既知である。当業者は、本発明の方法および組成物の使用と併せて、検出および評価のために微生物感染の1つまたは複数の特徴を容易に選択することができる。微生物感染に関して本明細書で使用される「特徴」という用語は、微生物感染の生理学的症状を指す場合がある。
【0034】
本明細書で使用される場合、「感染」および「微生物感染」という用語は、感染性生物による、表面的、局所的、または全身的な宿主の侵入から生じる障害を指す。本発明の方法および組成物のある特定の実施形態を使用して、細菌、ウイルス、寄生生物、真菌、および原生動物を含むがこれらに限定されない微生物などの感染性生物に起因する、対象に生じる微生物感染を処置することができる。
【0035】
微生物因子
本明細書で病原性因子とも呼ばれ得る微生物因子は、細菌因子、真菌因子、ウイルス因子、寄生因子、および原生動物因子を含み得る。本明細書において以下に列挙されるものなどの微生物因子は、対象に存在する場合、対象に微生物感染をもたらすことがある。
【0036】
対象に存在する場合に細菌感染を引き起こすことがある細菌としては、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌を挙げることができる。グラム陽性細菌の例としては、パスツレラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌種(Staphylococcus)、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、連鎖球菌(Streptococcus)種、例としてA群化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑色連鎖球菌(Streptococcus viridans)群、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、ウシレンサ球菌(Streptococcus bovis)、連鎖球菌嫌気性種、Streptococcus pneumoniae、および大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、枯草菌(Bacillus)種、例として炭疽菌(Bacillus anthracis)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、例としてジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、好気性コリネバクテリウム種、および嫌気性コリネバクテリウム種、ジフテロイド(Diphtheroids)種、リステリア(Listeria)種、例としてリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、エリシペロトリクス(Erysipelothrix)種、例として豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム(Clostridium)種、例としてウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、が挙げられる。
【0037】
グラム陰性細菌としては、ナイセリア(Neisseria)種、例として淋菌(Neisseria gonorrhoeae)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ブランハメラ(Branhamella)種、例としてブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalis)、エシェリキア(Escherichia)種、例として大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター(Enterobacter)種、プロテウス(Proteus)種、例としてプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、シュードモナス(Pseudomonas)種、例としてシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・マレイ(Pseudomonas mallei)、およびシュードモナス・シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei)、クレブシェラ種、例として肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、サルモネラ(Salmonella)種、赤痢菌種(Shigella)種、セラチア(Serratia)種、アシネトバクター(Acinetobacter)種;ヘモフィルス(Haemophilus)種、例としてヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、および軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ブルセラ(Brucella)種、エルシニア(Yersinia)種、例としてエルシニア・ペスト(Yersinia pestis)およびエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、フランシセラ(Francisella)種、例としてフランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、パスツレラ(Pasturella)種、例としてパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)種、メニンゴセプティカ(meningosepticum)、カンピロバクター(Campylobacter)種、例としてカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、バクテロイデス(Bacteroides)種、(口腔、咽頭)例としてバクテロイデス フラジリス(Bacteroides fragilis)、フソバクテリウム(Fusobacterium)種、例としてフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、カリマトバクテリウム・グラヌロマティス(Calymmatobacterium granulomatis)、ストレプトバチルス(Streptobacillus)種、例としてストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、レジオネラ(Legionella)種、例としてレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、が挙げられる。
【0038】
他のタイプの細菌としては、抗酸菌、スピロヘータ、および放線菌が挙げられる。
抗酸菌の例としては、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、例として結核菌(Mycobacterium tuberculosis)およびらい菌(Mycobacterium leprae)が挙げられる。
【0039】
スピロヘータの例としては、トレポネーマ(Treponema)種、例としてトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、およびボレリア(Borrelia)種、例としてボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)(ライム病)、およびボレリア・リカレントリス(Borrelia recurrentis)、およびレプトスピラ(Leptospira)種、が挙げられる。
【0040】
放線菌の例としては、アクチノマイセス(Actinomyces)種、例としてアクチノマイセス・イスラエリー(Actinomyces israelii)、およびノカルディア(Nocardia)種、例としてノカルディア・ステロイド(Nocardia asteroids)、が挙げられる。
【0041】
対象に存在する場合にウイルス感染を引き起こすことがあるウイルス因子としては、レトロウイルス、HIV-1、HDTV-III、LAVE、HTLV-III/LAV、HIV-III、およびHIV-LPを含むヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス(Calcivirus)、トガウイルス、馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス(Flavirus)、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、フィロウイルス、エボラウイルス、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、オルトミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ブニヤウイルス(Bungavirus)、ハンターンウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス、アレナウイルス、出血熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ビルナウイルス、ヘパドナウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1型および単純ヘルペスウイルス2型を含むヘルペスウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、イリドウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、D型肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、アストロウイルスならびに未分類ウイルスを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
対象に存在する場合に真菌感染を引き起こすことがある真菌因子としては、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、例としてクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Crytococcus neoformans)、ヒストプラズマ(Histoplasma)種、例としてヒストプラズマ・カプスラタム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス(Coccidioides)種、例としてコクシジオイデスイ・ミティス(Coccidiodes immitis)、パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)種、例としてパラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ブラストミセス(Blastomyces)種、例としてブラストミセス・デルマティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジア(Chlamydia)種、例としてクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、カンジダ(Candida)種、例としてカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、スポロトリックス(Sporothrix)種、例としてスポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、アスペルギルス(Aspergillus)種、およびムコール症の真菌を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0043】
対象に存在する場合に寄生生物感染を引き起こすことがある寄生生物因子としては、プラスモジウム(Plasmodium)種、例として熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、および三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)およびトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)を含むプラスモジウム種を挙げることができる。血液由来寄生生物および/または組織寄生生物としては、プラスモジウム(Plasmodium)種、バベシア(Babesia)種、例としてバベシア・ミクロチ(babesia microti)および多型バベシア(Babesia divergens)、リーシュマニア(Leishmania)種、例としてリーシュマニアトロピカ(Leishmania tropica)、リーシュマニア(Leishmania)種、(リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania braziliensis)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、トリパノソーマ(Trypanosoma)種、例としてトリパノソーマ・ガンビエンス(Trypanosoma gambiense)、トリパノソーマ・ロデシエンセ(Trypanosoma rhodesiense)(アフリカ睡眠病)、およびクルーズトリパノソーマ(シャーガス病)、が挙げられる。
【0044】
対象に存在する場合に感染を引き起こす場合がある他の医学的に関連する微生物は、文献に広く記載されており、例えば、その内容のすべてが、本明細書によって参照として本明細書に組み込まれている、C.G.A Thomas、Medical Microbiology、Bailliere Tindall、Great Britain、1983を参照のこと。本発明の方法および組成物のある特定の実施形態を使用して、これらおよび他の医学的に(medially)関連する微生物による感染を処置することができる。
【0045】
抗菌剤
「抗菌剤」、「抗細菌剤」、「抗ウイルス剤」、「抗真菌剤」、および「抗寄生生物剤」などの語句は、当業者に定着した意味を有し、標準的な医学のテキストにおいて定義される。要約すると、抗細菌剤は、細菌を殺傷するか、または細菌の増殖もしくは機能を阻害する。抗細菌剤としては、抗生物質および類似の機能を有する他の合成化合物または天然化合物が挙げられる。抗生物質は、通常、細胞、例えば、微生物によって二次代謝産物として生成される低分子量分子である。一般に、抗生物質は、微生物に特異的であり、宿主細胞には存在しない1つまたは複数の細菌の機能または構造を妨害する。
【0046】
抗細菌剤の大きなクラスは抗生物質である。広範囲の細菌を殺傷するか、または阻害するために有効な抗生物質は、広域スペクトル抗生物質と呼ばれる。他のタイプの抗生物質は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌のクラスの細菌に対して主に有効である。これらのタイプの抗生物質は、狭域スペクトル抗生物質と呼ばれる。単一の生物または疾患に対して有効であり、他のタイプの細菌に対しては有効ではない他の抗生物質は、限定スペクトル(limited spectrum)抗生物質と呼ばれる。抗細菌剤は、それらの主な作用機序に基づいて分類されることがある。一般に、抗細菌剤は、細胞壁合成阻害剤、細胞膜阻害剤、タンパク質合成阻害剤、核酸合成または機能阻害剤、および競合阻害剤である。
【0047】
抗細菌剤としては、アミノグリコシド、β-ラクタム剤、セファロスポリン、マクロライド、ペニシリン、キノロン、スルホンアミド、およびテトラサイクリンが挙げられるが、これらに限定されない。抗細菌剤の例としては、アセダプソン、アセトスルホンナトリウム、アラメシン、アレキシジン、アムジノシリンクラブラン酸カリウム、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アミシクリン、アミフロキサシン、メシル酸アミフロキサシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アミノサリチル酸、アミノサリチル酸ナトリウム、アモキシリン、アンホマイシン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アパルシリン(Apalcillin)ナトリウム、アプラマイシン、アスパルトシン、硫酸アストロマイシン、アビラマイシン、アボパルシン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズロシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、バシトラシン、バシトラシンメチレンジサリチレート、亜鉛バシトラシン、バンベルマイシン、ベンゾイルパスカルシウム、ベリスロマイシン(Berythromycin)、硫酸ベタマイシン、ビアペネム、ビニラマイシン(Biniramycin)、塩酸ビフェナミン、ビシピリチオンマグスルフェックス(Bispyrithione Magsulfex)、ブチカシン、硫酸ブチロシン、硫酸カプレオマイシン、カルバドックス、カルベニシリン二ナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、カルベニシリンフェニルナトリウム、カルベニシリンカリウム、カルモナムナトリウム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファマンドールナファート、セファマンドールナトリウム、セファパロール、セファトリジン、セファザフルル(Cefazaflur)ナトリウム、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフブペラゾン、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフェピム、塩酸セフェピム、セフェテコール、セフェキシム、塩酸セフメノキシム、セフメタゾール、セフメタゾールナトリウム、セフォニシド一ナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォラニド、セフォタキシム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン、セフォテタン二ナトリウム、塩酸セフォチアム、セフォキシチン、セフォキシチンナトリウム、セフピミゾール、セフピミゾールナトリウム、セフピラミド、セフピラミドナトリウム、硫酸セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフタジジムナトリウム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムピボキセチル、セフロキシムナトリウム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、塩酸セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチンナトリウム、セファピリンナトリウム、セフラジン、塩酸セトサイクリン(Cetocycline Hydrochloride)、セトフェニコール、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、パントテン酸クロラムフェニコール錯体、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、クロルヘキシジンホスファニレート(Chlorhexidine Phosphanilate)、クロロキシレノール、クロルテトラサイクリンビスルフェート、塩酸クロルテトラサイクリン、シラスタチン、シノキサシン、シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、シロレマイシン、クラリスロマイシン、クラブラン酸カリウム、塩酸クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クリンダマイシンデキストロース、塩酸クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリンベンザチン、クロキサシリンナトリウム、クロキシキン(Cloxyquin)、コリスチメテート(Colistimethate)、コリスチメタン酸ナトリウム、硫酸コリスチン、クーママイシン、クーママイシンナトリウム、シクラシリン、シクロセリン、ダルフォプリスチン、ダプソン、ダプトマイシン、デメクロサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、デメサイクリン、デノフンギン(Denofungin)、ジアベリジン、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ジピリチオン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、ドキシサイクリンカルシウム、ドキシサイクリンホスファテックス、ドキシサイクリンヒクラート、ドキシサイクリン一水和物、ドロキサシンナトリウム、エノキサシン、エピシリン、塩酸エピテトラサイクリン、エルタペネム、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシスラート、エリスロマイシンエストレート、エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシングルセプタート、ラクトビオン酸エリスロマイシン、プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、塩酸エタンブトール、エチオナミド、フレロキサシン、フロキサシリン、フルダラニン、フルメキン、ホスホマイシン、ホスホマイシントロメタミン、フモキシシリン、塩化フラゾリウム、酒石酸フラゾリウム、フシジン酸ナトリウム、フシジン酸、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン(Genifloxacin)、硫酸ゲンタマイシン、グロキシモナム、グラミシジン、ハロプロジン、ヘタシリン、ヘタシリンカリウム、ヘキセジン、イバフロキサシン、イミペネム、イソコナゾール、イセパマイシン、イソニアジド、ジョサマイシン、硫酸カナマイシン、キタサマイシン、レボフロキサシン、レボフラルタドン、レボプロピルシリンカリウム、レキシスロマイシン(Lexithromycin)、リンコマイシン、塩酸リンコマイシン、リネゾリド、ロメフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、メシル酸ロメフロキサシン、ロラカルベフ、マフェナイド、メクロサイクリン、スルホサリチル酸メクロサイクリン、リン酸メガロマイシンカリウム、メキドクス、メロペネム、メタサイクリン、塩酸メタサイクリン、メテナミン、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、メチシリンナトリウム、メチオプリム、塩酸メトロニダゾール、リン酸メトロニダゾール、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ミノサイクリン、塩酸ミノサイクリン、塩酸ミリンカマイシン(Mirincamycin Hydrochloride)、モネンシン、モネンシンナトリウム、塩酸モキシフロキサシン、ナフシリンナトリウム、ナリジクス酸ナトリウム、ナリジクス酸、ナタマイシン、ネブラマイシン、パルミチン酸ネオマイシン、硫酸ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、ニュートラマイシン、ニフラデン、ニフラルデゾン、ニフラテル、ニフラトロン、ニフルダジル、ニフリミド、ニフルピリノール、ニフルキナゾール、ニフルチアゾール、ニトロサイクリン、ニトロフラントイン、ニトロミド、ノルフロキサシン、ノボビオシンナトリウム、オフロキサシン、オルメトプリム、オキサシリンナトリウム、オキシモナム、オキシモナムナトリウム、オキソリン酸、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンカルシウム、塩酸オキシテトラサイクン、パルジマイシン、パラクロロフェノール、パウロマイシン(Paulomycin)、ペフロキサシン、メシル酸ペフロキサシン、ペナメシリン(Penamecillin)、ベンザチンペニシリンG、ペニシリンGカリウム、プロカインペニシリンG、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ベンザチンペニシリンV、ヒドラバミンペニシリンV、ペニシリンVカリウム、ペンチジドンナトリウム、アミノサリチル酸フェニル、ピペラシリン、ピペラシリンナトリウム、ピルベニシリン(Pirbenicillin)ナトリウム、ピリジシリン(Piridicillin)ナトリウム、塩酸ピルリマイシン、塩酸ピバンピシリン、パモ酸ピバンピシリン、ピバンピシリンプロベネート(Pivampicillin Probenate)、硫酸ポリミキシンB、ポルフィロマイシン、プロピカシン(Propikacin)、ピラジンアミド、ピリチオン亜鉛、酢酸キンデカミン、キヌプリスチン、ラセフェニコール(Racephenicol)、ラモプラニン、ラニマイシン(Ranimycin)、レロマイシン、レプロマイシン、リファブチン、リファメタン(Rifametane)、リファメキシル(Rifamexil)、リファミド(Rifamide)、リファンピン、リファペンチン、リファミキシン、ロリテトラサイクリン、硝酸ロリテトラサイクリン、ロサラマイシン、酪酸ロサラマイシン、プロピオン酸ロサラマイシン、リン酸ロサラマイシンナトリウム、ステアリン酸ロサラマイシン、ロソキサシン、ロキサルソン、ロキシスロマイシン、サンサイクリン、サンフェトリネムナトリウム(Sanfetrinem Sodium)、サルモキシシリン、サルピシリン(Sarpicillin)、スコパフンギン(Scopafungin)、シソマイシン、硫酸シソマイシン、スパフロキサシン、塩酸スペクチノマイシン、スピラマイシン、塩酸スタリマイシン(Stallimycin Hydrochloride)、ステフィマイシン(Steffimycin)、滅菌チカルシリン二ナトリウム、硫酸ストレプトマイシン、ストレプトニコジド、スルバクタムナトリウム、スルファベンズ、スルファベンズアミド、スルファセタミド、スルファセタミドナトリウム、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジアジンナトリウム、スルファドキシン、スルファレン、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファモキソール、スルファニル酸亜鉛(Sulfanilate Zinc)、スルファニトラン、スルファサラジン、スルファソミゾール、スルファチアゾール、スルファザメット(Sulfazamet)、スルフイソキサゾール、スルフイソキサゾールアセチル、スルフイソキサゾールジオラミン、スルホミキシン、スロペネム、スルタミシリン、サンシリンナトリウム(Suncillin Sodium)、塩酸タランピシリン、タゾバクタム、テイコプラニン、塩酸テマフロキサシン、テモシリン、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸テトラサイクリン錯体、テトロキソプリム、チアンフェニコール、チフェンシリンカリウム、チカルシリンクレジルナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、チカルシリン一ナトリウム、チクラトン、塩化チオドニウム、トブラマイシン、硫酸トブラマイシン、トスフロキサシン、トリメトプリム、硫酸トリメトプリム、トリスルファピリミジン(Trisulfapyrimidine)、トロレアンドマイシン、硫酸トロレアンドマイシン、トロバフロキサシン、チロスリシン、バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、バージニアマイシン、ゾルバマイシン(Zorbamycin)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
抗ウイルス剤は、天然の供給源から単離または合成することができ、ウイルスを殺傷するか、またはウイルスの増殖もしくは機能を阻害するのに有用である。抗ウイルス剤は、ウイルスによる細胞の感染、またはウイルスの細胞内での複製を防止する化合物である。ウイルス感染のプロセス内には、抗ウイルス剤によって阻止または阻害される可能性のあるいくつかの段階が存在する。これらの段階としては、宿主細胞に対するウイルスの付着(免疫グロブリンまたは結合ペプチド)、ウイルスの脱殻(例えば、アマンダジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えば、インターフェロン)、ウイルスRNAまたはウイルスDNAの複製(例えば、ヌクレオチドアナログ)、新しいウイルスタンパク質の成熟(例えば、プロテアーゼ阻害因子)、ならびにウイルスの出芽および放出が挙げられる。
【0049】
本発明において有用な抗ウイルス剤には、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオチドアナログ、およびプロテアーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。抗ウイルスの特定の例としては、エースマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス(Alvircept Sudotox);塩酸アマンダジン;アラノチン;アリルドン;メシル酸アテビルジン;アブリジン;シドフォビル;シパムフィリン(Cipamfylline);塩酸シタラビン;メシル酸デラビルジン;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアルリジン;ホサリラート;ホスカネットナトリウム;ホスホネトナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;メシル酸サキナビル;塩酸ソマンタジン;ソリブジン;スタトロン(Statolon);スタブジン;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;リン酸ビダラビン;リン酸ビダラビンナトリウム;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;およびジンビロキシム、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドに類似するが、不完全かもしくは異常なデオキシリボース基またはリボース基を有する、合成化合物である。一旦これらのヌクレオチドアナログが、細胞内に入ると、これらはリン酸化され、ウイルスDNAまたはウイルスRNAへの組み込みに関して正常なヌクレオチドと競合する三リン酸形態を形成する。これらのヌクレオチドアナログの三リン酸形態が、増殖する核酸鎖に組み込まれると、これらの三リン酸形態は、ウイルスポリメラーゼとの不可逆的な会合を生じ、したがって鎖の終結を生じる。ヌクレオチドアナログとしては、アシクロビル(単純ヘルペスウイルスおよび水痘-帯状疱疹ウイルスの処置のために使用される)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置に有用である)、イドクスウリジン、リバビリン(呼吸器合胞体ウイルスの処置に有用である)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモド、およびレシキモド(resimiquimod)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
抗真菌剤は、浅在性の真菌感染ならびに日和見性および主要な全身性の真菌感染を処置するために使用される。抗真菌剤は、感染性の真菌の処置および防止に有用である。抗真菌剤はこれらの作用機序に基づいて分類されることがある。いくつかの抗真菌剤は、例えば、グルコースシンターゼを阻害することによって細胞壁阻害因子として機能する。これらとしては、バシウンギン(basiungin)/ECBが挙げられるが、これに限定されない。他の抗真菌剤は、膜の完全性を不安定化することによって機能する。これらとしては、イミダゾール、例としてクロトリマゾール、セルタコナゾール(sertaconzole)、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、およびボリコナゾール(voriconacole)、およびFK463、アムホテリシンB、BAY38-9502、MK991、プラディマイシン、UK292、ブテナフィン、ならびにテルビナフィン、が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗真菌剤は、キチン(例えば、キチナーゼ)または免疫抑制(501クリーム)を破壊することによって機能する。
【0052】
抗寄生生物剤は、寄生生物を殺傷するか、または阻害する。駆虫薬とも呼ばれる、ヒトへの投与に有用な抗寄生生物剤の例としては、アルベンダゾール、アムホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、クロロキンHCl、リン酸クロロキン、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、酸ジエチルカルバマジン、ジロキサニドフロエート、エフロルニチン、フラゾリドン(furazolidaone)、糖質コルチコイド、ハルファントリン、ヨードキノール、アイバメクチン、メベンダゾール、メフロキン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メトリホナート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルティモックス、オキサムニキン、パラモマイシン、ペンタミジンイセチオネート、ピペラジン、プラジカンテル、リン酸プリマキン、プログアニル、ピランテルパモエート、ピリメタミン-スルホンアミド、ピリメタミン-スルファドキシン、キナクリンHCl、硫酸キニーネ、グルコン酸キニジン、スピラマイシン、スチボグルコネートナトリウム(アンチモニルグルコン酸ナトリウム)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメトプリム(trimethroprim)-スルファメトキサゾール、およびトリパルサミド、が挙げられるが、これらに限定されず、これらのうちのいくつかは、単独で使用されるか、または他のものと組み合わせて使用される。
【0053】
対象
本明細書で使用される場合、対象は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、および霊長類、例えばサルを含むがこれらに限定されない脊椎動物であり得る。本発明のある特定の態様では、対象は、家畜、野生動物、または農業動物であり得る。したがって、本発明は、ヒトおよび非ヒト対象における微生物感染を処置するために使用することができる。例えば、本発明の方法および組成物は、獣医用途ならびにヒトの処置レジメンにおいて使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、対象はヒトである。本発明のいくつかの実施形態では、対象は微生物感染を有し、処置を必要としている。
【0054】
いくつかの実施形態では、対象は、微生物感染をすでに有しているか、または有していた。いくつかの実施形態では、対象は、感染を有する原因である1つまたは複数のリスク因子を有するため、対象は、感染を有するリスクが高い。微生物感染のリスク因子としては、免疫抑制、免疫不全、年齢、外傷、火傷(熱傷など)、手術、異物、癌、新生児、未熟児などが挙げられるが、これらに限定されない。微生物感染を獲得するリスクの程度は、対象が有する危険因子の多数性および重症度または重要性に依存する。リスクチャートおよび予測アルゴリズムは、リスク因子の存在および重症度に基づいて、対象の微生物感染のリスクを評価するために利用可能である。対象における感染のリスクを評価する他の方法は、当業者によって知られている。
【0055】
対象が微生物感染に罹患した場合に関して本明細書で使用される場合、「感染した」という用語は、対象が、これらに限定されないが、細菌因子、ウイルス因子、真菌因子、寄生因子などの微生物感染因子に感染した日を意味する。対象の微生物への既知のまたは潜在的な曝露の日を、対象の微生物因子への感染のゼロ日と見なすことができることが理解されるであろう。微生物感染への曝露は、感染した個体との直接または間接的な接触を意味すると理解される。感染した個体との接触は、物理的な接触、感染した対象の呼吸、唾液、液滴、滲出液、体液、排出物との接触であり得る。いくつかの実施形態では、間接的接触は、感染した個体によって汚染された基材との対象による物理的接触であり得る。感染した個体によって汚染され得る基材の例としては、食品、布、紙、金属、プラスチック、段ボール、流体、空気系などが挙げられるが、これらに限定されない。微生物感染へのこれらおよび他の曝露手段は、当技術分野で知られている。
【0056】
評価および対照
対象における微生物感染は、限定されないが、対象から得られた生物学的試料中の微生物の存在;対象から得られた生物学的試料中の微生物のレベルまたは量;および対象において検出された微生物感染の1つまたは複数の生理学的症状の存在および/またはレベル、などの微生物感染の1つまたは複数の特徴を評価することを含むがこれに限定されない、当技術分野で知られている方法を使用して検出することができる。対象において検出された微生物感染の特徴は、微生物感染の特徴の対照値と比較することができる。対照値は、さまざまな形態をとることができる所定値であり得る。対照値は、中央値や平均値など、単一のカットオフ値であり得る。対照値は、微生物感染を有する個体の群および微生物感染の処置を投与された個体の群などの比較群に基づいて確立することができる。比較群の別の例は、微生物感染の1つもしくは複数の症状または診断を有する対象の群、および微生物感染の1つもしくは複数の症状または診断を有さない対象の群であり得る。もちろん、所定値は、選択した特定の集団によって異なる。例えば、ゲルゾリン剤を投与され、抗菌剤を投与されていない微生物感染を有する個体の集団は、抗菌剤を投与され、ゲルゾリン剤は投与されていない微生物感染を有する個体の集団とは1つまたは複数の異なる微生物感染の特徴を有することがある。したがって、選択された所定値は、個体が該当するカテゴリーを考慮に入れることができる。適切なカテゴリーは、当業者による単なる定型的な実験により選択することができる。
【0057】
対照は、本発明の方法において、異なる対照群の特徴、対象の特徴と対照群の特徴などを比較するために使用することができる。対象および対照間の比較、ある対照と別の対照との比較などは、相対的な違いに基づいている場合がある。例えば、限定することを意図するものではないが、ゲルゾリン剤および抗菌剤を対象に投与するステップを含む本発明の相乗的治療方法で処置される対象の生理学的症状は、ゲルゾリン剤が投与されており、抗菌剤は投与されていない対照群の生理学的症状と比較することができる。比較は、相対的な用語で表すことができ、例えば、体温の上昇(発熱を示す)または体温の低下が微生物感染の特徴である場合、本発明の相乗的治療方法で処置された対象の体温を、対照の体温レベルと比較することができる。いくつかの実施形態では、好適な対照は、本発明の相乗的治療方法で処置されていない対象である。処置された対象と対照との比較は、処置された対象と選択された対照との間の温度差のパーセンテージを比較することを含み得る。場合によっては、本発明の方法で処置された対象の体温を、選択された対照と比較して低いと決定することができ、比較では、対照の体温レベルと比較して、対象の体温が、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、または5.9%低いことを示す。
【0058】
ある特定の例では、本発明の方法で処置された対象の体温を、選択された対照と比較して高いと決定することができ、比較では、対照の体温レベルと比較して、対象の体温が、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、または5.9%高いことを示す。
【0059】
別の非限定的な例では、微生物感染のレベルは、微生物感染を有する対象から得られる生物学的試料中の微生物の存在、不在、および/または量を検出するためのアッセイを使用して決定することができる。本発明の相乗的治療方法を使用して処置された対象におけるアッセイの結果は、対照の微生物感染のレベル、例えば、そのように処置されていない対照対象から得られた試料に対するアッセイの結果と比較することができる。本発明の方法を使用して処置された対象における微生物感染のレベルを評価するためのアッセイの結果を対照と比較して、対象レベルと対照レベルとの間のパーセンテージの差を決定することができる。いくつかの実施形態では、処置された対象の微生物感染のレベルは、対照感染レベルの100%未満である。本発明のある特定の実施形態では、処置される対象の微生物感染のレベルは、対照の微生物感染のレベルの99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%以下である。
【0060】
別の非限定的な例において、本発明の方法を使用する微生物感染のレベルおよび/または抗菌剤の治療効果の増加は、対照の生存可能性と本発明の相乗的方法または組成物で処置された対象の生存可能性を比較することによって決定することができる。対照の生存可能性の非限定的な例は、本発明の方法で処置されていない微生物感染を有する対象における生存可能性である。測定できる生存可能性のパラメータの非限定的な例には、本発明の処置後に対象が生存し続ける時間の長さ(時間、日、週など)の決定、および本発明の処置後に対象が死亡または生存するかどうかの決定が含まれる。生存可能性に関連するこれらおよび他のパラメータを対照と比較して、本発明の相乗的方法または組成物の治療効果を評価および決定する方法が理解されるであろう。対照の生存可能性の非限定的な例は、抗菌剤とゲルゾリン剤のそれぞれの相乗的有効量の投与がない場合の対照が生存する日数と比較した、本発明の相乗的方法による処置後に対象が生存する日数である。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の相乗的方法で処置された対象の生存可能性は、対照の生存可能性より、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、300%、400%、500%、高い。
【0061】
別の非限定的な例において、本発明の方法を使用する微生物感染のレベルおよび/または抗菌剤の治療効果の増加は、対照の肺病変のレベルと本発明の相乗的方法または組成物で処置された対象の肺病変のレベルを比較することによって決定することができる。対照の肺病変のレベルの非限定的な例は、本発明の方法で処置されていない微生物感染を有する対象における肺病変のレベルである。測定できる肺病変のパラメータの非限定的な例には、対象における肺組織病理の決定が含まれる。非限定的な例では、肺組織の組織病理(例えば、対象からの生検によって得られる試料など)は、当技術分野で知られている方法を使用して評価することができ、例えば、肺組織は、理事会認定の病理学者によって盲検法で観察およびスコア付けされる場合がある。スコアリングシステムを使用して、対象の肺組織を対照と比較することができる。非限定的な例では、4ポイント、4基準システム(炎症;浸潤;壊死;およびその他、出血を含む)を使用して、最大スコアが16ポイントで、肺病変を評価することができる。各基準のポイントは、病理所見なし(0)、最小(1)、軽度(2)、中程度(3)、および重度(4)の病理所見に基づいて割り当てることができる。スコアリングシステムにより、対象組織と対照組織を比較して、肺病変を評価することができる。肺病変を比較する追加の手段は当技術分野で知られており、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の相乗的方法で処置された対象の肺病変のレベルは、対照の肺病変のレベルより、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、300%、400%、500%、低い。
【0062】
別の非限定的な例において、本発明の方法を使用する微生物感染のレベルおよび/または抗菌剤の治療効果の増加は、対照の体重減少または相対的体重減少のレベルと本発明の相乗的方法または組成物で処置された対象の体重減少または相対的体重減少のレベルを比較することによって決定することができる。対照の体重減少のレベルの非限定的な例は、本発明の方法で処置されていない微生物感染を有する対象における体重減少のレベルである。測定できる体重減少および/または相対的体重減少のパラメータの非限定的な例には、微生物感染前の対象の体重、本発明の相乗的方法による処置前の微生物感染中の対象の体重、本発明の相乗的治療方法を受けた後の対象の体重など、が含まれる。非限定的な例において、Pseudomonas aeruginosa感染を有する対象の体重は、ゲルゾリン剤および、その非限定的な例はメロペネムであるカルバペネムクラスの薬剤を含む本発明の相乗的処置の投与の前後に決定することができる。対象の体重は、対象の処置前の体重、感染前の体重、および/または別の対照の体重と比較することができる。本発明の相乗的処置の投与後の対象における体重減少の低下は、対象における微生物感染の低減を示す。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の相乗的方法で処置された対象の体重減少のレベルは、対照の体重減少のレベルより、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、300%、400%、500%、低い。
【0063】
対照は、所定値に加えて、実験材料と並行して試験される材料の試料であり得ることが理解されるであろう。例には、対照集団からの試料、または実験試料と並行して試験される、製造を通じて生成された対照試料が含まれ;また、対照は、本発明の方法または組成物の実施形態による処置の前、処置中、または処置後の対象からの試料であり得る。したがって、感染を有する対象について決定された1つまたは複数の特徴は、後でその対象におけるそれらの特徴の「対照」値として使用してもよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の相乗的方法の有効性は、本発明の方法を使用して処置される対象における相乗的治療結果を以下の一方または両方と比較することによって評価することができる:(1)ゲルゾリン剤の個々の治療効果および(2)抗菌剤の個々の治療効果。本発明のある特定の態様では、治療有効性のレベルの差は、対照レベルからの増加を示すスケールで評価することができる。いくつかの態様では、増加は、(1)または(2)で得られた対照のゼロレベルから、本発明の相乗的方法による処置から生じるゼロより大きいレベルへの増加である。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の相乗的治療方法の治療効果のレベルは、対照の治療効果のレベルから、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、300%、400%、500%、またはそれ以上増加する。
【0065】
遅延投薬方法
本発明のいくつかの実施形態は、感染した対象におけるウイルス感染を低減させるのに有効であると決定された遅延投薬スケジュールを含む。対象がウイルス感染に罹患した日(ゼロ日)の3日以上後までの、対象へのゲルゾリン剤の投与の遅延により、ゲルゾリン剤の治療効果が増強される。本発明の処置方法のいくつかの実施形態は、ウイルス感染を有する対象に有効量のゲルゾリン剤を投与するステップを含み、ゲルゾリン剤は、ウイルス感染を有する対象が感染してから少なくとも3、4、5、6、7、8、9日、またはそれ以上後に投与される。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、対象がウイルス感染に罹患した日(ゼロ日)には対象に投与されない。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、対象がウイルス感染に罹患した後の第1日目(1日目)には投与されない。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、対象がウイルス感染に罹患した後の第2日目(2日目)には投与されない。本発明の方法のいくつかの実施形態では、ゲルゾリン剤は、対象におけるウイルス感染の0日目、1日目、および2日目のうちの1つまたは複数の日に投与されない。
【0066】
対象が微生物感染に罹患した場合に関して本明細書で使用される場合、「感染した」という用語は、対象が、微生物感染因子、例えば、これらに限定されないが、細菌因子、ウイルス因子、真菌因子などに感染した日を意味する。対象の微生物への既知のまたは可能性のある曝露の日を、対象の微生物因子への感染のゼロ日と見なすことができることが理解されるであろう。
【0067】
ウイルス感染を処置するための当技術分野で知られている標準的なレジメンは、(1)対象のウイルスへの既知または潜在的な曝露の日に、対象に抗ウイルス剤を投与すること、(2)対象のウイルスへの既知または潜在的な曝露から48時間以内に、対象に抗ウイルス剤を投与すること、(3)ウイルスへの特定の既知の曝露なしに対象に抗ウイルス剤を投与することによる抗ウイルス剤を用いた季節的予防、および(4)ウイルスのコミュニティ発生の状況における抗ウイルス剤を用いた予防のうちの1つまたは複数を含んでもよい。ウイルス感染への曝露は、ウイルス感染に罹患した個体との直接または間接的接触を意味すると理解される。感染した個体との接触の非限定的な例は、物理的接触、すなわち感染した対象の呼吸、唾液、液滴、滲出液、体液、排出物などとの接触であり得る。いくつかの実施形態では、間接的接触は、感染した個体によって汚染された基材との対象による物理的接触であり得る。ウイルス感染に罹患した個体によって汚染され得る基材の例としては、食品、布、紙、金属、プラスチック、段ボール、流体、空気系などが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルス感染へのこれらおよび他の曝露手段は、当技術分野で知られている。本発明の方法を使用して、インフルエンザA、B、C、およびD感染などのウイルス感染を処置することができる。ウイルス感染の非限定的な例としては、H1N1、H3N2、コロナウイルス(例:229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-2など)によって引き起こされるものが挙げられる。
【0068】
時限/遅延ゲルゾリン剤投薬レジメンを使用してウイルス感染を処置する方法は、ウイルス感染への対象の既知の曝露、ウイルス感染への疑わしい曝露、ウイルス感染への潜在的な曝露、および/またはウイルス感染への曝露のリスクに続いて、決定された時間遅延でのゲルゾリン剤の投与を含み得る。投与されるゲルゾリン剤は、ゲルゾリン分子、その機能的フラグメント、またはゲルゾリン分子の機能的誘導体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ゲルゾリン分子は血漿ゲルゾリン(pGSN)であり、本発明の方法の特定の実施形態では、ゲルゾリン分子は組換えゲルゾリン分子である。
【0069】
いくつかの実施形態では、有効量のゲルゾリン剤が、対照の治療効果と比較して、対象におけるウイルス感染に対する治療効果を増加させ、対照の治療効果は、ゲルゾリン剤が対象に投与されない場合に生じる治療効果を含む。いくつかの実施形態では、投与されたゲルゾリン剤の治療効果は、対照の治療効果より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。
【0070】
本発明のある特定の実施形態では、ゲルゾリン剤の投与の治療効果が、対照のウイルス感染レベルと比較して、対象におけるウイルス感染のレベルを低下させ、対照の感染レベルは、ゲルゾリン剤を投与しない場合の感染レベルであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法におけるゲルゾリン剤の投与後の対象のウイルス感染レベルは、対照のウイルス感染レベルより少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低い。
【0071】
対象におけるウイルス感染の1つ以上のレベルは、例えば、対象から得られた生物学的試料におけるウイルス感染の特徴の存在、不在、および/またはレベルを検出するためのアッセイ;対象を観察すること;対象におけるウイルス感染の1つまたは複数の生理学的症状を評価すること;対象の生存可能性を評価すること;または他の当技術分野で知られている手段のうちの1つ以上を使用して決定され得る。ウイルス感染の生理学的症状には、発熱、倦怠感、体重減少、および死亡のうちの1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明の実施形態は、対象のウイルス感染への曝露からまたは曝露が疑われてから3、4、5、6、7日後またはそれ以上後に、有効量のゲルゾリン剤を対象に投与するステップを含んでもよく、この場合に、有効量のゲルゾリン剤の投与が、対照の生存可能性と比較して、対象の生存可能性を増加させ、ここで、対照の生存可能性は、ゲルゾリン剤の投与がない場合の生存可能性である。本発明の時限投薬レジメンを使用したゲルゾリン剤の投与後の対象の生存可能性の増加は、対照の生存可能性より、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、または200%高い。
【0073】
対象がウイルス感染に罹患した日(ゼロ日)の3日以上後までの、対象へのゲルゾリン剤の投与の時間遅延により、ゲルゾリン剤の治療効果が増強され、時間遅延を抗ウイルス剤の投与と組み合わせて使用して、これにより対象に投与される抗ウイルス剤とゲルゾリン剤の相乗効果をもたらすことができる。本発明のいくつかの態様では、本発明のウイルス感染を処置する方法は、対象へのゲルゾリン剤の時間遅延投与の1日以上前に、対象に抗ウイルス剤を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、ウイルス感染への対象の曝露または潜在的な曝露の前に投与され得るか、またはウイルス感染への対象の曝露のまたは曝露の疑いのあった0日目、1日目、2日目に投与され得る。対象に投与されたゲルゾリン剤および抗ウイルス剤のそれぞれの有効量によって、ゲルゾリン剤と抗ウイルス剤の両方が相乗効果をもたらす方法で対象に投与されない対照の治療効果と比較して、ウイルス感染に対して相乗的治療効果を有する場合があることが確認されている。本明細書の他の箇所に記載されるように、抗ウイルス剤は臨床的に許容される量で投与され、対照の治療効果は、ゲルゾリン剤を投与せずに投与される臨床的に許容される量の抗ウイルス剤の投与の治療効果であり得ることが理解される。
【0074】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、抗ウイルス剤の臨床的に許容される量は、抗ウイルス剤の最大耐量(MTD)未満の量である。場合によっては、抗ウイルス剤のMTDは、対象に対する抗ウイルス剤の、可能な限り最も高いが、それでも許容できる用量レベルである。ある特定の例では、抗ウイルス剤のMTDは、抗ウイルス剤に対して事前に選択された臨床的制限毒性に少なくとも部分的に基づいて決定される。相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗ウイルス剤を投与するステップを含む本発明の方法において、相乗効果は、対象における抗ウイルス剤の最小有効量(MED)を減少させる。本発明のある特定の方法では、MEDは、平均有効性において臨床的に有意な応答を提供する抗ウイルス剤の最低用量レベルであり、該応答は、抗菌剤の該用量を含まない対照によって提供される応答よりも統計的に有意に大きい。
【0075】
抗ウイルスレジメンの一部として対象に投与できる抗ウイルス剤の非限定的な例は、ノイラミニダーゼ阻害剤抗ウイルス薬:リン酸オセルタミビル(ジェネリック版または商品名Tamiflu(登録商標)で入手可能)、ザナミビル(商品名Relenza(登録商標))、およびペラミビル(商品名Rapivab(登録商標));ならびにキャップ依存性エンドヌクレアーゼ(CEN)阻害剤:例として、バロキサビルマルボキシル(商品名Xofluza(登録商標))である。
【0076】
インフルエンザA、B、C、およびD感染などのウイルス感染を予防および処置するための抗ウイルス療法は知られており、当技術分野で定型的に使用されている。ある特定のウイルス株が既知の抗ウイルス療法に耐性があり得ることも認識されている[例えば、Moscona,A.,20090,N Engl J Med 360;10:953-956を参照のこと]。本発明の方法のいくつかの実施形態は、抗ウイルス剤に耐性がないウイルス株によって引き起こされるウイルス感染を処置するための抗ウイルス剤の効力を高める。本発明の方法のある特定の実施形態は、抗ウイルス剤に耐性がないウイルス株によって引き起こされるウイルス感染を処置するための抗ウイルス剤の効力を高める。
【0077】
本発明の方法のある特定の実施形態は、抗ウイルス剤を投与するレジメンがない状態で投与される時限用量のゲルゾリンレジメンを使用してウイルス感染を処置する。本発明の方法のいくつかの実施形態は、抗ウイルス剤レジメンおよび時間遅延ゲルゾリンレジメンを、そのような治療を必要とする対象に投与することによってウイルス感染を処置する。本発明の方法のいくつかの実施形態では、抗ウイルス剤および遅延用量ゲルゾリン剤の対象への投与は、対象におけるゲルゾリン剤および抗ウイルス剤の相乗的治療効果をもたらす。本発明の方法のある特定の実施形態の相乗的治療効果は、対照の治療効果と比較して、対象における非抗ウイルス耐性ウイルス感染の処置を増強することができる。本発明の方法のいくつかの実施形態の相乗的治療効果を使用して、対照の治療効果と比較して、対象における抗ウイルス耐性ウイルス感染の処置を増強することができる。
【0078】
薬剤の調製および投与
本発明の方法および組成物は、患者の処置およびまた新しい治療方法の臨床開発にとって重要な意味を有する。また、ここで臨床研究者は、本発明の方法を使用して、臨床試験におけるヒト対象のエントリー基準を決定することが期待されている。医療従事者は、対象に期待される正味の利益に基づいて、処置のための治療レジメンを選択する。正味の利益は、リスク対利益の比率から導出される。
【0079】
処置の量は、例えば、対象に投与されるゲルゾリン剤および/または抗菌剤の量を増減することによって、投与される治療組成物を変更することによって、投与経路を変更することによって、投与タイミングを変更することによって、などで変更することができる。有効量は、処置される特定の感染または状態、処置される対象の年齢および生理的状態、感染または状態の重症度、処置の持続期間、投与の特定の経路などの、医療従事者の知識と専門知識の範囲内である要因によって変化する。例えば、有効量は、個体が微生物感染に曝されたか、または微生物感染に対する曝露によって影響された程度に依存し得る。
【0080】
有効量
本発明の処置方法または組成物に関連して本明細書で使用される「有効量」という用語は、「相乗的有効量」と呼ばれる。本発明の方法は、ゲルゾリン剤および抗菌剤のそれぞれを、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤である量で投与するステップを含む。本発明の方法で対象に投与される場合、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤は、対象における微生物感染に対する相乗的治療効果および/または対象における微生物感染の低減をもたらす。
【0081】
有効量は、医学的に望ましい結果を提供するのに十分な各薬剤の投与量である。本発明の組成物および方法のある特定の実施形態で使用することができる薬剤の例には、ゲルゾリン剤および抗菌剤が含まれるが、これらに限定されない。本発明の薬剤は、感染を処置または予防するために使用されること、すなわち、それらは、感染を発症するリスクのある対象において予防的に使用され得ることを理解されるべきである。したがって、有効量とは、感染の発症のリスクを低下させたり、遅らせたり、場合によっては完全に予防したりすることができる量である。薬剤が急性の状況で使用される場合、それは、そのような有害事象から通常流れる1つまたは複数の医学的に望ましくない結果を防ぐために使用されることが認識される。
【0082】
有効量の決定に関与する要因は当業者に周知であり、定型的な実験のみで対処することができる。本発明の薬剤の最大用量(単独でまたは他の治療剤と組み合わせて)、すなわち、健全な医学的判断による最高の安全用量を使用することが一般的に好ましい。しかしながら、当業者は、患者が、医学的理由、心理的理由、または事実上他の理由のために、より低い用量または許容用量を主張する可能性があることを理解するであろう。
【0083】
本発明の薬剤の治療有効量は、感染などの障害を処置するのに有効な量である。感染の場合、所望の反応は、感染の進行を阻害すること、および/または感染のレベルを低下させることである。これには、感染の進行を一時的に遅らせることだけが含まれる場合があるが、感染の進行を永久に停止することも含まれる場合がある。これは、当業者に既知である定型的診断方法によって監視することができる。感染の処置に対する所望の反応はまた、感染の発症を遅らせること、または感染の発症を予防することでもあり得る。
【0084】
薬剤および送達
本発明の方法で使用される薬剤は、好ましくは減菌であり、対象への投与に好適な重量または体積の単位で所望の応答を生じるための有効量のゲルゾリンおよび有効量の抗菌剤を含有する。対象に投与される薬剤の用量は、異なるパラメータに従って、特に使用される投与様式および対象の状態に従って選択することができる。他の要因としては、所望の処置期間が挙げられる。適用された初期用量で対象の応答が不十分である事象において、患者の耐性が許容する範囲で、より高い用量(または異なる、より局部的送達経路による効果的により高い用量)を使用することができる。薬剤の投与量は、特に合併症が発生した場合に、個々の医師または獣医が調整することができる。治療有効量は、通常、1日以上で毎日1回または複数回の投与において0.01mg/kg~約1000mg/kg、約0.1mg/kg~約200mg/kg、または約0.2mg/kg~約20mg/kgで変化する。ゲルゾリン剤および抗菌剤はまた、本明細書において薬剤と呼んでもよい。
【0085】
本発明の薬剤を所望の組織、細胞、または体液に効果的に送達する種々の投与様式が当業者に知られている。投与される方法および投与量は、特に合併症が発生した場合に、個々の医師、医療従事者、または獣医が調整することができる。投与される絶対量は、投与のために選択された材料、投与が単回投与であるか複数回投与であるか、および年齢、体調、サイズ、体重、および疾患または状態の病期を含む個々の対象パラメータを含むさまざまな要因に依存する。これらの要因は当業者に周知であり、定型的な実験のみで対処することができる。
【0086】
薬学的に許容される担体には、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、および当技術分野で周知である他の材料が含まれる。例示的な薬学的に許容される担体は、米国特許第5,211,657号に記載されており、その他のものは、当業者に知られている。本発明のある特定の実施形態では、そのような調製物は、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、水溶液、水などを含有し得る。医薬において使用される場合、塩は薬学的に許容され得るが、非薬学的に許容される塩は、その薬学的に許容される塩を調製するために好都合に使用することができ、これは、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的および薬学的に許容される塩には、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製されるものが含まれるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0087】
当業者に知られている種々の投与様式を使用して、抗菌剤およびゲルゾリン剤を含む本発明の医薬組成物を対象に効果的に送達して、対象の微生物感染に対する相乗的治療効果を生み出すことができる。本発明のそのような組成物または医薬化合物を投与するための方法は、局所、静脈内、経口、腔内、髄腔内、滑液嚢内、頬側、舌下、鼻腔内、経皮、硝子体内、皮下、筋肉内および皮内投与であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の組成物を投与するための手段は、吸入である。本発明は、本明細書に開示される特定の投与様式によって限定されない。当技術分野における標準的な参考文献(例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,2012年、編者: Allen,Loyd V.,Jr、第22版)は、種々の医薬調製物および製剤を医薬担体に送達するための投与様式および製剤を提供している。本発明の治療化合物の投与に有用な他のプロトコルは、当業者に知られており、投与量、投与スケジュール、投与部位、投与様式(例えば、臓器内)などは、本明細書で提示されているものとは異なる。本発明の薬剤の投与に有用な他のプロトコルは、当業者に知られており、投与量、投与スケジュール、投与部位、投与様式などは、本明細書で提示されているものとは異なる。
【0088】
例えば、試験目的または獣医治療目的のための、ヒト以外の哺乳動物への本発明の薬剤の投与は、上記と実質的に同じ条件下で実施される。本発明がヒトおよび動物の両方の疾患に適用可能であることが当業者によって理解されるであろう。したがって、本発明は、畜産および獣医学ならびにヒト治療において使用されることを意図している。薬剤は、医薬調製物において対象に投与することができる。
【0089】
投与される場合、本発明の医薬調製物は、薬学的に許容される量および薬学的に許容される組成物において適用される。「薬学的に許容される」という用語は、活性成分の生物活性の有効性を妨害しない非毒性物質を意味する。そのような調製物は、通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意選択により他の治療剤を含み得る。医薬において使用される場合、塩は薬学的に許容されるべきであるが、非薬学的に許容される塩は、その薬学的に許容される塩を調製するために好都合に使用することができ、これは、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的および薬学的に許容される塩には、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製されるものが含まれるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0090】
薬剤または組成物は、所望であれば、薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトへの投与に好適な1つまたは複数の適合性のある固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を意味する。医薬組成物の成分はまた、所望の薬効を実質的に損なう相互作用がないような方法で、本発明の薬剤と、および互いに混ざり合うことができる。
【0091】
医薬組成物は、上記のように、アセテート、ホスフェート、シトレート、グリシン、ボレート、カーボネート、ビカーボネート、水酸化物(および他の塩基)および前述の化合物の薬学的に許容される塩を含む好適な緩衝剤を含み得る。医薬組成物はまた、任意選択により、好適な防腐剤:例として塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベンおよびチメロサールを含み得る。
【0092】
上記医薬組成物は、簡便に単位剤形で提供してもよく、製薬の分野で周知のいずれの方法によって調製してもよい。すべての方法は、1つまたは複数の副成分を構成する担体と活性剤を結合させるステップを含む。一般に、組成物は、活性化合物を、液体担体、細かく分割した固体担体、またはその両方と均一かつ緊密に合わせ、次に必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0093】
経口投与に好適な組成物は、カプセル、錠剤、丸薬、トローチなどの個別の単位として提示することができ、それぞれが所定量の活性化合物(例えば、ゲルゾリン)を含有する。他の組成物としては、水性液体または非水性液体中の懸濁液、例としてシロップ、エリキシル、エマルジョン、またはゲルが挙げられる。
【0094】
経口使用のための医薬調製物は、固体賦形剤として得ることができ、任意に、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して錠剤または糖衣錠コアを得てもよい。好適な賦形剤は、特に充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;セルロース製剤、例として、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などであり得る。所望であれば、崩壊剤、例として、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩を加えてもよい。任意選択により、経口製剤は、生理食塩水または緩衝液、すなわち、内部酸条件を中和するためのEDTA中に製剤化することもでき、または担体なしで投与することもできる。
【0095】
上記の1つまたは複数の成分の経口剤形も特に企図される。誘導体の経口送達が効果的であるように、1つまたは複数の成分を化学的に修飾することができる。一般に、企図される化学修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の結合であり、前記部分により、(a)タンパク質分解の阻害;および(b)胃または腸からの血流への取り込みが可能になる。また、これらの成分の全体的な安定性の増加および身体における循環時間の増加が、所望される。このような部分の例としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリプロリン、が挙げられる。AbuchowskiおよびDavis,1981年、“Soluble Polymer-Enzyme Adducts” In: Enzymes as Drugs,HocenbergおよびRoberts編、Wiley-Interscience,New York,N.Y.,pp.367-383;Newmarkら、1982年、J.Appl.Biochem.4:185-189。使用され得る他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チオキソカン(tioxocane)である。
【0096】
薬剤の場合、放出の場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、十二指腸または腸の他の場所で物質を放出する利用可能な製剤を有する。好ましくは、放出は、ゲルゾリン剤および/または抗菌剤の保護によって、または腸内などの胃環境を超えた生物学的に活性な物質の放出のいずれかによって、胃環境の有害な影響を回避する。
【0097】
経口投与用に製剤化されたミクロスフェアも使用することができる。そのようなミクロスフェアは、当技術分野で明確に定義されている。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に好適な投与量でなければならない。
【0098】
頬側投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチの形態をとることができる。
吸入による投与に関して、本発明に従って使用するための化合物は、好適な噴霧剤例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の好適なガスの使用によって、加圧パックまたは噴霧器からエアロゾル噴霧を提示する形態で簡便に提供され得る。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定することができる。例えば、吸入器または吹送器で使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の混合粉末と、好適な粉末基剤、例として、ラクトースまたはデンプンとを含有するように製剤化することができる。
【0099】
ゲルソリンの肺送達も、本明細書中で企図される。ゲルソリンは、吸入している間に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮の内層を血流に向かって横切る。
本発明の医薬組成物の経鼻(または鼻腔内)送達もまた企図される。経鼻送達により、治療用製品を鼻に投与した直後に、肺に製品を堆積させる必要なしに、本発明の医薬組成物を血流に通過させることが可能になる。経鼻送達用の製剤には、デキストランまたはシクロデキストランを含む製剤が含まれる。
【0100】
化合物を、全身的に送達することが望ましい場合、注射による、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化してもよい。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、防腐剤が添加されたアンプルまたは複数回投与容器で提示してもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの配合剤を含有し得る。
【0101】
非経口投与用の製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。任意選択により、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて高濃度の溶液の調製が可能になる好適な安定剤または薬剤を含有してもよい。あるいは活性化合物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するための粉末形態であり得る。
【0102】
特にゲルゾリン剤および抗菌剤を含むがこれらに限定されない薬剤は、粒子で提供され得る。本明細書で使用される粒子は、本明細書に記載のゲルゾリンまたは抗菌剤の全部または一部で構成され得るナノ粒子またはマイクロ粒子(または場合によってはより大きい)を意味する。粒子は、腸溶コーティングを含むがこれに限定されないコーティングによって囲まれたコア内に薬剤を含み得る。薬剤はまた、粒子全体に分散され得る。薬剤はまた、粒子に吸着され得る。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびそれらの任意の組み合わせなどを含む、任意の次数放出動態であり得る。粒子は、薬剤に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、または非生分解性の材料もしくはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、製薬および医薬の分野で定型的に使用される材料のいずれかを含み得る。粒子は、溶液中または半固体状態でゲルゾリンを含有するマイクロカプセルであり得る。粒子は、事実上任意の形状であり得る。
【0103】
非生分解性および生分解性の両方のポリマー材料を、薬剤を送達するための粒子の製造に使用することができる。そのようなポリマーは、天然または合成ポリマーであり得る。ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて選択される。特に興味深い生体接着性ポリマーとしては、H.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubell in Macromolecules,(1993) 26:581-587によって記載された生体侵食性ヒドロゲルが挙げられ、その教示は本明細書に組み込まれる。これらとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0104】
上記薬剤は、制御放出システム中に含まれ得る。「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の方法およびプロファイルが制御されている任意の薬物含有製剤を指すことを意図している。これは、即時放出性および非即時放出性製剤を指し、非即時放出性製剤は、持続放出性および遅延放出性製剤を含むがこれらに限定されない。「持続放出」(「徐放放出」とも呼ばれる)という用語は、従来の意味で使用され、長期間にわたって薬物の漸進的放出を提供し、必ずしもそうではないが、好ましくは、長期間にわたって薬物の実質的に一定の血中濃度をもたらす製剤を指す。「遅延放出」という用語は、その従来の意味で、製剤の投与とそれからの薬物の放出との間に時間遅延がある薬物製剤を指すために使用される。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の漸進的放出を伴う場合と伴わない場合があり、したがって、「持続放出」であっても、またはそうでなくてもよい。
【0105】
長期持続放出性インプラントの使用は、慢性状態の処置に特に好適であり得る。本明細書で使用される「長期」放出は、インプラントが、治療レベルの薬剤を少なくとも7日間、好ましくは30~60日間送達するように構築および配置されることを意味する。長期持続放出性インプラントは当業者に周知であり、上記の放出システムのいくつかを含む。
【0106】
本発明はまた、キットの使用を企図する。本発明のいくつかの態様では、キットは、1つまたは複数の医薬調製物バイアル、医薬調製物希釈剤バイアル、抗菌剤およびゲルゾリン剤を含むことができる。医薬品調製物用の希釈剤を含有するバイアルは任意である。希釈剤バイアルは、ゲルゾリン剤および/または抗菌剤の濃縮溶液または凍結乾燥粉末であり得るものを希釈するための生理食塩水などの希釈剤を含み得る。使用説明書としては、特定の量の希釈剤を特定の量の濃縮医薬調製物と混合するための使用説明書を挙げることができ、それにより、注射または注入のための最終製剤が調製される。使用説明書としては、有効量のゲルゾリン剤および抗菌剤で対象を治療するための使用説明書を挙げてもよい。この調製物を含有する容器は、この容器が、ボトル、セプタムを備えたバイアル、セプタムを備えたアンプル、注入用バッグなどであるか否かにかかわらず、調製物がオートクレーブされたか、またはそうでなければ滅菌された場合に色が変化する従来の目印のような印を含み得ることもまた、理解される。
【0107】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明され、これは、決してさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願全体にわたって引用されたすべての参考文献(文献参照、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0108】
以下の実施例は、本発明の実施の特定の例を説明するために提供されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者に明らかであるように、本発明は、さまざまな組成物および方法での用途を見出すであろう。
【実施例】
【0109】
実施例1
抗生物質耐性肺炎球菌性肺炎が発生し、問題となる可能性がある。自然免疫を増強する手段を含む、感染と闘うための新規な治療戦略を評価するための研究が行われてきた。マクロファージおよび宿主の生存に対するpGSN投与の効果を決定するために実験を実行した。
方法:
菌種および培養物
S.pneumoniae血清型3(カタログ番号6303、American Type Culture Collection、Rockville、MD)を、5%羊血液補充寒天ペトリ皿(カタログ番号90001-282、VWR、West Chester、PA)で一晩培養し、調製して、以前に報告されたように定量化した(Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6)。
インビトロおよびインビボ手順
(1)インビトロ研究
125~250μg/mlのpGSNを細菌培養物に添加し、細菌の生存率を決定するインビトロ研究を実行した。
(2)インビボ研究
B16マウスを、i.n.吹送によって105の肺炎球菌でチャレンジし、感染の2時間前と8時間後および20時間後に10mg pGSNをs.c.投与した。いくつかの研究では、感染前に15分または30分間、pGSNをエアロゾルとして投与した。エアロゾルを、Hamada,K.ら、J.Immunology.2003年;170(4):1683-9におけるように、5mg/mlの溶液を使用して生成した。
【0110】
結果/考察
インビトロ研究の結果は、pGSNは、125~250μg/mlで存在する場合、マクロファージの取り込み(
図1A)および内在化肺炎球菌の死滅(
図1B)を改善したことを示し、これは、通常の血漿レベルと同様である。インビボでは、pGSN(感染の2時間前ならびに8時間後および20時間後の10mg s.c.により、i.n.吹送により10
5肺炎球菌でチャレンジされたBl6マウスにおける細菌クリアランスを改善した(24時間で生存細菌がより少ない)(
図1C);pGSNを感染前に、エアロゾルとして15分または30分間投与した場合、同様の結果が見られた;エアロゾルを、Hamada,K.,ら,J.Immunology.2003;170(4):1683-9におけるように、5mg/mlの溶液を使用して生成した(
図1D)。全身性pGSN(s.c.)によって、抗生物質処置がなくても、原発性(
図1E、3×10
5 CFU接種を使用)または続発性インフルエンザ後肺炎球菌性肺炎(
図1F、PR8による軽度のインフルエンザ感染後7日目に500 CFU接種を使用)の生存率が改善した。*=p<.05対対照、n=群あたり6~12。すべての実験で血清型3 Strep.Pneumoniae[ATCC #6303]を使用した。
【0111】
マクロファージNOS3は、マウスにおける肺炎に対する宿主防御の重要なメカニズムであり、ヒトマクロファージでも機能する(Yang,Z.,ら,Elife.2014;3.Epub 2014/10/16.Doi 10.7554/elife.03711)。結果は、pGSNがNOS3欠損マクロファージ(
図2A)およびNOS3欠損マウス(
図2B)における殺菌反応を改善できなかったため、この経路がマクロファージに対するpGSN効果の重要なメカニズムとして機能することを示した。
【0112】
大腸菌およびフランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)を使用して、追加の研究を実行した(Yang.Z.ら、American Journal of Physiology Lung Cellular and Molecular Physiology.2015年;309(1):L11-6を参照のこと)。
【0113】
実施例2
肺炎球菌性肺炎の抗生物質感受性および抗生物質耐性マウスモデルに対するpGSN処置の効果を評価するための研究を実行した。
方法:
菌種および培養物
S.pneumoniae血清型3および14(それぞれカタログ番号6303および700677)を、American Type Culture Collection(Rockville、MD)から入手した。血清型3の細菌を、5%羊血液補充寒天ペトリ皿(カタログ番号90001-282、VWR、West Chester、PA)で一晩培養し、調製して、以前に報告されたように定量化した(Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6)。血清型14は一貫した結果を達成するためにより詳細なプロトコルを必要としたため、Restrepo AVら、BMC Microbiol 2005年;5:34で報告された増殖プロトコルに従い、これは、遠心分離の前に液体ブロス培養で2つの連続増殖を使用し、インビボ投与のためにOD600による細菌濃度の調整を行う。
【0114】
肺炎球菌性肺炎のマウスモデル
正常な6~8週齢(週)の雄型CD1マウスは、Charles River Laboratories(Wilmington、MA)から入手した。以前に報告されたように、原発性肺炎球菌性肺炎が誘発された(Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6)。抗生物質感受性肺炎の場合、ケタミン(72mg/kg ip)プラスキシラジン(9.6mg/kg ip)の麻酔下で、Streptococcus pneumoniae 3型の1.5~2×106コロニー形成単位(CFU)の鼻腔内滴下注入をマウスに行った。ペニシリン(最小発育阻止濃度(MIC)=8μg/ml)および他の抗生物質(Jabes D.ら、J Infect Dis 1989年;159:16-25)に耐性のあるStreptococcus pneumoniae 14型を抗生物質耐性肺炎モデル化に使用した。この病原体について、距離計測実験により、上記のように麻酔下での滴下注入に使用された、およそ300×106コロニー形成単位(CFU)の高致死性接種物が特定された。ほとんどの試験では、ビヒクル、ペニシリン(PEN)、pGSN、またはPEN+pGSN群に、群あたり10匹のマウスを使用した。
【0115】
処置およびアウトカム
組換えヒトpGSN(rhu-pGSN)を、大腸菌にて合成して、Fujifilm Diosynth(Billingham、UK)によって精製した。rhu-pGSNを、結果に詳述されているように、5~10mgの範囲の用量で腹腔内注射によってマウスに投与した。いくつかの実験では、ペニシリン(Gプロカイン注射用懸濁液、NDC 57319-485-05、Phoenix Pharmaceuticals)を、0.1~2mgのi.m.注射によって筋肉内投与した。マウスを10日間監視し、 Burkholder T.ら、Curr Protoc Mouse Biol 2012年;2:145-65のガイドラインに適合した複合指標(すなわち、背中を丸めた外観、波立った毛皮、または部分的に閉じた目をそれぞれ1ポイント;陰茎突出または広げられた後四半身を1.5ポイント;無気力の場合を2ポイント;最大スコアは8で;評価は処置群を盲検化せずに実行した)を使用して生存率、体重の変化、および全体的な罹患率を測定した。生存しなかった動物については、生存した最終日の体重および罹患率のスコアを繰り越した。好中球の流入を定量化することによって肺の炎症を評価するために、動物の1つのコホートは、前述のように安楽死後感染から48時間後に肺洗浄を受けた(Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6、およびYang Z.ら、Elife 2014年;3。遠心分離後、再懸濁した洗浄液試料を血球計算盤により計数し、ライトギムザ染色した細胞遠心分離調製物で細胞数の差を計数した。
【0116】
統計分析
Prism(GraphPad Software)またはSAS(SAS Institute)ソフトウェアを使用してデータを分析した。カプランマイヤー生存曲線の差を、多重比較のためにシダック調整とともにログランク検定を使用して分析した。他の測定では、ANOVAによって群間の差を調査した。
【0117】
結果
rhu-pGSNによる遅延処置を、前処置による生存率の改善を実証するために以前に使用されたのと同じマウスモデルで試験した(Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6)。
図3Aに示すように、血清型3肺炎球菌感染後2日目と3日目にのみ与えられたpGSN処置により、抗生物質処置がない場合でも、ビヒクル対照と比較して致死性が高い接種物からの生存が大幅に改善された。血清型14を使用したその後の実験とは対照的に、抗生物質処置マウスの100%の生存率により、血清型3がペニシリンに非常に感受性であることが確認された(
図3B)。
【0118】
これらの知見が抗生物質耐性肺炎にまで及ぶかどうかを判断するために、非常に毒性の高い血清型14の肺炎球菌を使用して同様のモデルを開発した。処置は、感染後24時間で開始し、9日間毎日続けた。希釈剤ビヒクルのみで処置されたマウスは、高い死亡率を経験した(
図4A)。ペニシリン処置単独では効果がなく(
図4A)、この菌種の報告されたインビトロでの高レベルの耐性と一致している(Jabes D.ら、J Infect Dis 1989年;159:16-25)。
【0119】
処置前の24時間中に、すべてのマウスは、同等の体重減少および罹患率スコアによって証明される同一の悪化を経験した。感染後48時間での好中球流入は、ペニシリンの有無にかかわらずpGSNの単回投与で処置された動物において減少した(ビヒクル、PEN、pGSNおよびPEN+pGSN群のそれぞれの総洗浄好中球×10E4:186±54、153±74、111±16、104±20;p<.03、n=5~6/群)。rhu-pGSN処置のみで、全生存率の大幅な改善、体重減少からの回復、および罹患率スコアの改善がもたらされた(
図4A~C)。
【0120】
インビトロでは、ペニシリン処置単独またはpGSNとの組み合わせは、細菌増殖に影響を与えなかった(細菌CFUの増加、ビヒクル、PEN(16μg/ml)またはPEN+pGSN(250μg/ml)による1時間(時間)培養:それぞれ88000、105000、88000、平均2回の繰り返し)。
【0121】
インビボでは、ペニシリンとpGSNの組み合わせによる処置は、pGSN単独の場合よりも高い生存率をもたらした(
図4A)が、多重比較のために調整した場合、これは統計的に差がなかった(p=0.47、
図5を参照)。すべての生存実験の結果を
図5に示し、これは、9つの実験のそれぞれについて、生存率がpGSN+PEN群で最も高く、PENまたはビヒクル単独いずれかと比較してpGSN単独がそれに続くことを示している(pGSN+PENの組み合わせはpGSN単独よりも著しく良好である)。
図5の表は遅延投与の4種の処置の試験が評価された9つの実験からの結果を提供する。本質的に同一の処置を使用し、9つの研究すべてで得られた全体的な結果を代表する最終の4つの実験からのデータを
図4A~Cに示す。
図5は、パイロット試験および距離計測試験を含む9つの実験すべての詳細を提供する。列Hは、ペニシリン耐性肺炎球菌のBHIブロスにおける2倍増殖法(Restrepo AVら,BMC Microbiol 2005;5:34)を使用して得られた優れた増殖結果についての細菌増殖法の変化を示している。多重比較のためのシダック補正とともにログランク分析を使用した、プールされた9つの研究すべての分析によって決定されるように、生存率の差は統計的に有意であった。最終の4つの実験(番号6~9)の統計分析の結果の詳細を、
図4A~Cにまとめている。
【0122】
考察
研究は、感染が明らかになった後に対象が示す臨床状況を模倣するように設計および構成された。したがって、実験は、以前の研究で使用された前処置または同時処置ではなく、マウスが目に見える病気になるまで投与を遅らせるという臨床的に関連するシナリオを使用して実行した(Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6)。この設計を使用して、処置アウトカムを改善するためのpGSNの可能性を評価した。重要な知見は、抗生物質なしで単独で使用した場合、または菌種が非常に耐性のある次善の抗生物質と組み合わせて使用した場合、pGSN処置の遅延によって生存率が改善されたことであった。感染したpGSN処置動物で観察された気管支肺胞好中球数の低下は、pGSN刺激常在マクロファージ、pGSNの炎症調節活性、またはその両方による細菌クリアランスの加速を反映している場合がある。血清型14では、治療前のより長い遅延を研究する能力は、パイロット試験においては、処置なしの2日目または3日目までに比較的多数の死亡があったために制限されていた。他のモデルシステムにおいて他の抗生物質耐性菌を調査するための研究を行う。pGSNが他の細菌に対するマクロファージの殺菌機能を増強するという以前の知見(例えば、E.coli,F.tularensis LVS [Yang Z.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015年;309:L11-6.])は、この点に関して有望であるが、直接の試験が必要である。
【0123】
データの全体は、pGSNとそれ自体では効果がなかったペニシリン治療との相乗的相互作用を示唆している。しかし、この結論は、実行された最終試験だけでなく、すべてのプールされた距離計測の分析に依存している。最終の4つの繰り返し研究(
図4A~C)のみを分析すると、比較は同じ方向になるが、統計的有意性は達成されない。付随するrhu-pGSNによるインビトロでの細菌増殖に対するペニシリン効果の増強は観察されなかった。特定の理論に拘束されることを意図していないが、これらのデータは、pGSNによって強化された抗細菌防御が、ペニシリンによってわずかに乱された(しかし殺傷されなかった)細菌に対してさらに効果的である場合があることを示唆している。このメカニズムは、特に耐性菌による他の感染において同様の結果が観察された場合、将来的注目に値する。まとめると、rhu-pGSNは、抗菌薬耐性の設定においても、臨床的に適切な遅延の後に与えられた場合、致死性が高い肺炎球菌性肺炎モデルにおけるアウトカムを改善することができる。これらの知見は、重篤な抗生物質耐性感染の補助療法としてのpGSNのさらなる評価を支持する。
【0124】
実施例3
好中球減少症のマウスモデルにおいて、致死性が高い多剤耐性Pseudomonas aeruginosa肺炎におけるメロペネムに対するrhu-pGSN処置の効果を評価するための研究を行った。
方法
rhu-pGSNの生成
組換えヒト血漿ゲルゾリン(rhu-pGSN)を、大腸菌において産生させ、その後、再構成のために凍結乾燥した。製剤成分を含有するビヒクル対照を、比較マウスに使用した。
菌種および増殖条件
Pseudomonas aeruginosa UNC-Dは、嚢胞性線維症の患者から分離された喀痰である[Lawrenz MBら、Pathog.Dis.73(2015)]。細菌は、トリプチケースソイ寒天培地(TSA)プレート上、およびレノックスブロスにおいて37℃にてブロス培養物を振とうしながら培養した。UNC-D株の最小発育阻止濃度は、セフタジジム[32μg/ml]、メロペネム[8μg/ml]、イミペネム[16μg/ml]、トブラマイシン[32μg/ml]、ピペラシリン[16μg/ml]、アズトレオナム[4μg/ml]、コリスチン[1μg/ml]、およびホスホマイシン[256μg/mL]である。細菌を、レノックスブロスにおいて一晩培養し、細菌を1×PBSで洗浄してから、OD600ベースの推定値および最終50μlの送達量に基づいて最終濃度に希釈することにより、動物チャレンジ研究用に調製した。細菌接種を、TSAプレートでの段階希釈およびコロニー計数によって確認した。
【0125】
動物の呼吸器感染モデル
Pseudomonas aeruginosa UNC-D株のBALB/c感染モデル[Lawrenz MBら、(2015) Pathog.Dis.73(5):ftv025]を、メロペネムを含むいくつかの臨床的に重要な抗生物質に耐性のある多剤耐性(MDR)Pseudomonas aeruginosa UNC-D株に対し失敗したメロペネム単剤療法の有効性を改善する可能性のある補助療法を試験するために、特別に設計した。以前の経験は、このモデルが、メロペネム処置単独で約50%の死亡率を提供するメロペネム用量を使用して新規化合物を調査する場合に、最も有益であることを実証していた[Lawrenz MBら、(2015) Pathog.Dis.73(5):ftv025]。University of Louisvilleの標準的な動物実験ガイドラインに従って、マウスを飼育し、処置した。要約すると、雌型BALB/cマウスを、感染前の-5日目と-3日目にシクロホスファミド注射(150 mg/kg)を使用して好中球減少症にさせて、通常、好中球数が約90%減少した。およそ105.5CFUのUNC-Dを、挿管を介した気管内注入によって肺に直接滴下注入した。メロペネム(Hospira;Lake Forest、IL)を、感染後3時間から始まり、8時間ごとに5日間皮下注射によって投与した。
【0126】
rhu-pGSN補助療法がメロペネムの有効性を改善するかどうかを判断するために、感染後-24、-3、3、27、51、75、99、および123時間での0.3mlの腹腔内注射により、12mg/日のrhu-pGSNを投与した。感染後8時間ごとに7日間、マウスの発病を監視し、これには、研究開始前に皮下に植え込まれたトランスポンダー(BioMedic Data Systems;Seaford、DE)を介して測定された温度も含まれる。瀕死のマウスを人道的に安楽死させ、次の時点で感染に屈したとスコア付けした。前に記載されたように、組織試料を細菌数および病理のために採取した[Lawrenz MBら、Pathog.Dis.73(2015)]。7日まで生存していたマウスは、感染に耐えたとしてスコア付けし、安楽死させた;組織も同様に処理した。肺の組織病理は、理事会認定の獣医病理学者によって盲検法でスコア付けされた。4ポイント、4基準システム(炎症;浸潤;壊死;およびその他、出血を含む)を使用して、最大スコアが16ポイントで、肺病変を評価した。各基準のポイントを、病理所見なし(0)、最小(1)、軽度(2)、中程度(3)、および重度(4)の病理所見に基づいて割り当てた。
【0127】
統計分析
全体で、3つの同等の実験を、このモデルを使用して独立して実行した。滴定実験を、メロペネムの新しいバッチを使用して、正式な実験の前に抗生物質の各ロットの有効用量(ED)50を推定するときに行った。全生存期間および最小の肺損傷(組織病理スコア≦2として事後定義)を伴う生存期間を、実験全体およびメロペネムのみの対照群がマウスの≦50%を保護した実験条件について集計した。二項分布の正規近似を介して、rhu-pGSNを使用した場合と使用しない場合の処置群間の生存マウスの割合の差についての95%信頼区間およびp値を計算した。対照メロペネム群の死亡率がおよそ50%以上である個々の実験条件について、生存曲線をログランク検定により分析し、温度データを二元配置ANOVAにより分析し、細菌負荷および病理スコアを、テューキーの事後検定多重度調整を使用した一元配置ANOVAにより分析した。事前に指定された主要エンドポイントは、感染チャレンジから7日後の生存率であった。これらのデータの分析中に、健康な肺(組織病理スコア≦2)での生存率を調査するための「生存プラス」エンドポイントを、良好なアウトカムの臨床的に有意性のある拡張として使用した。細菌負荷および温度応答は、臨床的改善の直接的尺度ではなかったため、この二段階コンポジット(two-pronged composite)には含まれていなかった。
【0128】
結果
rhu-pGSNは、Pseudomonas aeruginosaに感染したマウスの生存率を改善した
rhu-pGSNが肺感染に対するメロペネムの有効性を改善できるかどうかを判断するために、雌型BALB/cマウスをシクロホスファミドで好中球減少症にさせ(n=8)、MDR Pseudomonas aeruginosaに感染させ、さまざまな用量のメロペネムで処置して、このモデルにおいてメロペネム療法が失敗し始める(つまり、メロペネムのED
50に近づく)用量を決定した。マウスを、感染後5日間、rhu-pGSNを含むかまたは含まない選択された用量のメロペネムで処置し、感染後7日間、瀕死性疾患の発症を監視した(
図6)。実験1と2の両方で、1250mg/kg/日のメロペネムによる処置は、≦50%の生存率をもたらし、メロペネム処置の失敗を示し、これによりrhu-pGSNによる補助療法が有効性を改善できるかどうかの確認が可能になった。この用量を受けた動物に焦点を当てると、rhu-pGSNを加えると、各研究の最後まで生存した動物の数が数値的に増加した(
図7A~B)。2つの連続した研究を組み合わせると、メロペネムを単独で受けたマウスの31%が7日間生存したが、これと比較してマウスにrhu-pGSNを用いたメロペネムを与えた場合の生存率は75%であった(Δ(95%信頼区間)=44%(13,75);p=0.0238;
図7C)。予測よりも高いメロペネム有効性(メロペネムのみの群で75%の生存率)を示した異なるロットのメロペネムを使用した第3の実験では、処置群間で生存率に差は見られなかった(
図6)。
【0129】
rhu-pGSN療法による生存率の増加が肺の細菌負荷の減少と関連しているかどうかを確認するために、安楽死時に、1250mg/kg/日を投与されたマウスの肺からコロニー数を決定した(
図8A~C)。rhu-pGSNによってメロペネム単独と比較して感染マウスの肺の細菌負荷の制御が改善されたことを示唆する一般的な傾向が観察されたが、細菌数の統計的に有意な差は第2の研究でのみ観察された(p=0.0273)。
【0130】
組み合わせた3つの実験におけるすべての投薬群の全生存期間は、rhu-pGSNを用いないかまたは用いて、メロペネムで処置されたマウスでそれぞれ35/64(55%)および46/64(72%)であった[Δ(95%信頼区間)=17%(1,34)]。補助的なrhu-pGSNによる処置は、Pseudomonas aeruginosaによる肺感染に対するメロペネムの有効性を高めたが、肺における細菌増殖の阻害は、観察された効果を部分的にしか説明しない可能性がある。興味深いことに、両方の研究でメロペネム単独により肺から脾臓への広がりが制御されていたが、pGSNによって一部の動物において脾臓への定着が可能になったことが観察された。この観察結果は、どの研究でも単独では有意ではなかったが、データを組み合わせると、pGSN処置マウスの脾臓数が有意に増加することが実証された。生存率の改善と併せて、これらの観察結果は、rhu-pGSNがオプソニン効果を発揮して脾臓の取り込みを高めたことと一致していた。
【0131】
rhu-pGSNは急性肺損傷を制限する
肺の細菌負荷の減少とrhu-pGSNを受けたマウスの生存率の増加との間に明確な関係がないため、rhu-pGSN保護が代替または追加のメカニズムによって媒介されている可能性が高まった。pGSNは炎症を調節するため、1250mg/kg /日を受けたPseudomonas aeruginosaに感染した動物において、rhu-pGSN補助療法によって肺損傷が低減されたかどうかの問題を調査した。動物から採取された肺組織の代表的な切片は、理事会認定の獣医病理学者によって病理について盲検的にスコア付けされた。メロペネムにrhu-pGSNを加えると、宿主の肺の損傷が低減した(
図9A~B;それぞれp=0.0035およびp=0.1514)。これら2つの独立した研究のデータを組み合わせると、メロペネム単独を受けたマウスの平均病理スコアは6.86であったが、メロペネムとrhu-pGSNの両方を受けたマウスの平均病理スコアは2.53であった(
図9C;p=0.0049)。
【0132】
rhu-pGSNが肺の損傷からの保護をもたらしたというこれらの観察に基づいて、1250mg/kg/日より上および下のメロペネムの用量を受けたマウスを含むように、分析を拡張した。3回の個々の実験で異なる用量のメロペネムを受けたマウスの全生存期間を
図6に示す。7日間感染に耐えた動物を、ほぼ正常な肺組織学(病理スコア≦2)または肺病変の兆候(病理スコア>2)のいずれかを示すものとしてグループ化した。この基準を遡及的に使用すると、軽度の肺損傷を伴う全生存期間は、メロペネムのみを受けた26/64(41%)マウスと、メロペネムプラスrhu-pGSNを与えられた38/64(59%)マウスで見られた[Δ(95%信頼区間)=19%(2,36)](
図10)。非常に効果的および非効果的なメロペネム用量によって生成されるノイズを排除するために、≧75%および≦25%の任意であるが臨床的に合理的な除外限界を、対照生存率に課した。メロペネム単独に対する反応性のこの中間点では、別の探索的事後分析により、メロペネム単独の場合は12/32(37.5%)、メロペネムとrhu-pGSNを組み合わせた場合は27/32(84.4%)に良好なアウトカム(ほぼ正常な肺を伴う生存)が得られた。[Δ=47%(26,68)]。
【0133】
生存マウスを分母として使用すると、ほぼ正常な肺の組織病理が、メロペネム単独療法対メロペネムおよびrhu-pGSN併用療法において、それぞれ26/35(74.3%)および38/46(82.6%)に見られた。これらのデータを合わせると、rhu-pGSNの添加により、抗細菌剤のみで処置された、Pseudomonas aeruginosa感染によって引き起こされた肺損傷が低減する場合があることが示されている。
【0134】
血漿ゲルゾリンは、宿主の全身性反応の解消を加速する
疾患の進行を監視する一環として、感染の過程で宿主の体温を追跡した。このモデルでは、すべてのマウスには、感染後最初の24時間以内に体温の着実な低下を呈する傾向があった。効果的な処置を受けたマウスの場合、温度は最終的に正常に戻ったが、効果の低い処置を受けたマウスの温度は低下し続けた[Lawrenz MBら、(2015) Pathog.Dis.73(5):ftv025]。温度正規化の時間経過により、異なる処置間の回復率の差を評価することができた。これらの実験でメロペネム単独の標的ED
50に近づく投薬レジメンに焦点を当て、pGSNが感染に耐えたマウスの温度恒常性の回復を促進したかどうかの問題を調査した。生存の優位性を達成した2つの研究では、マウスは通常、感染後最初の24時間以内に体温が約-12.22°C(10°F)低下した(
図11A~D)。7日目まで生存することになっていたメロペネム単独で処置されたマウスは、感染後3~5日以内に体温を35°C(95°F)に回復し始めた。対照的に、宿主の体温の回復は、rhu-pGSNおよびメロペネムで処置されたマウスではるかに迅速であり、生存者の体温は2日目までに35°C(95°F)に回復した。したがって、補助的なrhu-pGSNによって、生存率および肺病変が改善するだけでなく、温度曲線で測定した場合、宿主の全身回復が加速した。rhu-pGSNによる生存の効果が見られなかった第3の実験では、処置群間で温度経過の差は観察されなかった。
【0135】
考察
rhu-pGSNを、重度の多剤耐性Pseudomonas aeruginosa肺炎の確立されたマウスモデルでメロペネムに加える、と生存率が改善した。生存マウスの体温の正常化は、一般に、メロペネム単独よりもrhu-pGSN補助療法による方が迅速に起こった。rhu-pGSNレシピエントからの肺は、一般に生存細菌が少なかった。さらに、rhu-pGSNは、生存動物の急性肺損傷の程度を軽減し、これは、重篤な細菌性肺炎の処置における臨床的に重要な進歩を表す可能性がある。まとめると、これらの知見は、メロペネム処置にrhu-pGSNを加えることによってもたらされる生存の効果は、感染過程での細菌負荷および肺損傷の重症度のrhu-pGSNを介した低下に大部分が起因する可能性が高いことを示唆している。
【0136】
感染に対する宿主防御の第1のラインは、集中的な炎症反応を伴う。しかし、過度の局所および全身性炎症は、一次感染部位から近位および遠位の重要な臓器に有害である可能性がある。急性損傷が後退すると、pGSNは炎症プロセスの解消を促進し、結果として生じる損傷を制限する。
【0137】
メロペネムにrhu-pGSN処置を加えることによる考えられる効果を、好中球減少症のマウスモデルにおける致死性が高い多剤耐性Pseudomonas aeruginosa肺炎において検討した。すべてのマウスは、即時抗菌療法なしで感染から約24時間以内に死亡した。単独処置としてのrhu-pGSNにより、平均生存期間が約12時間延長された。≧50%の死亡率をもたらすメロペネムの用量を決定するために、抗生物質の各バッチで滴定実験を実行した。それにもかかわらず、アウトカムは必ずしも予測可能であるとは限らず、一部の試験ではメロペネム対照の死亡率が≦25%または≧75%以上になった。このような極端な条件下では、マウスは病気が重いか、または十分に病気ではないため、アウトカムに対する補助的rhu-pGSNの考えられる効果が隠されている可能性がある。それにもかかわらず、メロペネムとともに与えられたrhu-pGSNは、ほとんどの条件下でメロペネム単独よりも効果的であった。
【0138】
これらの前臨床データによって、標準治療モダリティの補助としてのrhu-pGSNが、肺損傷を制限しながら生存率を高めるのに有効である可能性があるという証拠の増加がさらに強化される。投薬間隔全体で超生理学的レベルであっても、3日間連続して治療を行ったrhu-pGSNレシピエントでは、重篤な有害事象も薬物関連の有害事象も観察されなかった。
【0139】
マウスグラム陰性肺炎の確立されたモデルを使用すると、肺胞洗浄からの細菌コロニー数および安楽死時の組織病理的肺損傷スコアは、実験内および実験間でかなりのばらつきが観察されたが、メロペネムおよびrhu-pGSNで処置されたマウスと比較してメロペネム単独を受けたマウスで高かった。メロペネム単独で比較的効果がなかった状況で最も顕著に、メロペネムにrhu-pGSNを加えることにより、死亡率と実質損傷の両方が軽減された。
【0140】
実施例4
方法
インフルエンザのマウスモデル
正常な6~8週齢の雄型CD1マウスは、Charles River Laboratories(Wilmington、MA)から入手した。予算および時間の制限のため、雄型マウスのみを使用した。すべてのマウスが到着し、実験開始の1週間前に共同飼育された。各試験では、マウスの個別のバッチを使用した。プラーク形成単位(PFU)として定量化されたH1N1インフルエンザウイルスのマウス適応株であるA/プエルトリコ/8/1934(PR8)は、ViraSource(Durham、NC)から調達した。72mg/kgのケタミンプラス9.6mg/kgのキシラジンを腹腔内注射で投与して、マウスに麻酔をかけた。次に、マウスは、ウイルスを含有する(試験に応じて400~1000PFUの範囲)PBSの懸濁液25μlまたはビヒクル単独の鼻腔内注入を受けた。すべての感染は、ほぼ同じ時刻(およそ午前10時から)に行われた。最初の滴定では、ビヒクル処置マウスで約60%の死亡率をもたらす用量として400PFUが特定され、この用量を大部分の試験で使用した(
図12を参照のこと)。ほとんどの試験では、ビヒクルおよびpGSN処置群に1群あたり少なくとも10匹のマウスを使用した;インフルエンザの用量、マウスの総数、およびそれらの体重の詳細は、基礎となるデータの表[Kobzik L: 「Expanded Tables 1 & 2」。Harvard Dataverse、V1 2019年。www.doi.org/10.7910/DVN/53GJY1]に提供されている。
【0141】
処置およびアウトカム
組換えヒトpGSN(rhu-pGSN)を、大腸菌にて合成して、Fujifilm Diosynth(Billingham、UK)によって精製した。げっ歯類モデルにおけるrhu-pGSNの機能の以前の実証に基づいて、またヒトゲルゾリンを用いたデータにより臨床翻訳の取り組みが容易になるため、マウスゲルゾリンではなくヒトゲルゾリンを使用した。rhu-pGSNを、結果に詳述されているように、0.5~5mgの範囲の用量で、感染後3日目または6日目から皮下注射によりマウスに毎日投与した。マウスを12日間監視し、以前に説明されたガイドライン[Burkholder Tら、Current Protocols Mouse Biol.2012年;2: 145-65.]から適合した複合指標(すなわち、背中を丸めた外観、波立った毛皮、または部分的に閉じた目をそれぞれ1ポイント;陰茎突出または広げられた後四半身を1.5ポイント;無気力の場合を2ポイント;最大スコアは8で;評価は処置群を盲検化せずに実行した)を使用して生存率、体重の変化、および全体的な罹患率を測定した。生存しなかった動物については、生存した最終日の体重および罹患率のスコアを繰り越した。
【0142】
肺トランスクリプトームプロファイリング
ビヒクルまたはrhu-pGSNのいずれかで処置したマウスから感染後7日目および9日目に肺組織を取得した(感染後3日目から1日あたり2mgを投与し、次に7日目に1日あたり5mgに増加した)。RNAは、RNAEasyミニキット(Qiagen、Germantown、MD)を製造元の指示に従って使用して単離した。Cellecta(Mountain View、CA)のMouse DriverMap標的遺伝子発現プロファイリングパネルを使用してRNA試料を分析した。Cellectaプラットフォームは、高度に多重化されたRT-PCR増幅および次世代シーケンシング(NGS)定量を使用して、4753タンパク質をコードする機能的に重要なマウス遺伝子の発現を測定する。Cellectaユーザーマニュアルの項目5.3に詳述されている手順に従って、Illumina NextSeq 500機器でシーケンシングされた増幅インデックスライブラリを作成した。シーケンシングデータをFASTQ形式に変換して、DriverMap Sample Extractionソフトウェアを使用してさらに分析した。これにより、4753遺伝子パネルにアラインメントされた列の各試料についてのカウントの未加工データマトリックスファイルを作成した。
【0143】
統計分析
Prism(GraphPad Software)またはSAS(SAS Institute)ソフトウェアを使用してデータを分析した。カプランマイヤー生存曲線の差を、多重比較のためにシダック調整とともにログランク検定を使用して分析した。研究全体でのpGSN対ビヒクルの比較の均質性に関するBreslow-Day検定では、p>0.2が得られ、これは、均質性が棄却されなかったことを示し、試験により階層化されたログランク(Mantel-Cox)検定を介して実行された研究全体の比較を支持している。他の測定では、ANOVAによって群間の差を調査した。列カウントを正規化するためにスケーリングされたトランスクリプトームプロファイリングの結果を、log2カウントに変換し(すべてのセルに0.1を加えてゼロ値を削除した後)、Qlucoreソフトウェア(Lund、Sweden)を使用して分析した。カスタムバックグラウンド遺伝子リスト(つまり、Cellecta DriverMapプラットフォームを使用して測定された約4700遺伝子)を使用した評価が可能となるツール(Pantherバージョン14.118およびMetaCore(バージョン19.3、Clarivate Analytics,Philadelphia、PA))を使用して、遺伝子セット濃縮のさらなる分析を実行した。
【0144】
結果
rhu-pGSNが生存率に及ぼす影響
rhu-pGSNがアウトカムを改善する可能性を評価するために、さまざまな用量およびタイミングレジメンを試験し、合計18の試験を実施して、これを
図12において表にまとめ、
図13に要約した。可能性のある臨床使用法を模倣するために、マウスはチャレンジ後数日まで処置されなかった。
【0145】
主な知見は、rhu-pGSNによる処置の遅延によって、マウスの生存率の有意な改善がもたらされたことであった(
図14A~H)。すべての研究を組み合わせて、12日目にビヒクルで処置した39%(93/236)の生存マウス、およびpGSNで処置した62%(241/389)の生存マウスが得られた(p=0.000001、
図14A)。遅延処置が感染後6日目(
図14C)に開始されたかまたは3日目(
図14E、14G)に開始されたかどうかにかかわらず、生存率の改善が観察された。同様に、ビヒクル処置と比較して、rhu-pGSNにより罹患率スコアが低下した(
図14B、14D、14F、14H)。対照的に、
図14A~Hに要約された実験では、体重の減少または回復(生存動物)に統計的に有意な差は一貫して観察されなかった。唯一の例外は、最初は低用量レジメンを試験した試験で見出された(3~6/7日目に>2mgのrhu-pGSN、その後11日目まで5mg)。後者の一連の試験では、研究終了時の体重が(0日目と比較して)ビヒクル処置マウスでは81.4±4.7%であったのに対し、pGSN処置マウスでは85±2.6%であった(p<0.0001、4試験の要約、また
図12および
図13、ならびに拡張データのすべての実験のより詳細な表[Kobzik L:「Expanded Tables 1 & 2」。Harvard Dataverse、V1 2019年。www.doi.org/10.7910/DVN/53GJY1]を参照のこと)。rhu-pGSNの有益な効果は、18の個々の試験のすべてではなく、大部分で観察された(
図12、考察を参照のこと)。
【0146】
トランスクリプトームプロファイリング
rhu-pGSN処置が感染した肺のトランスクリプトームプロファイル[Harvard Dataverse: Expanded Tables 1 & 2.//doi.org/10.7910/DVN/53GJY116を参照のこと]を変更したかどうかを評価するために、このモデルの通常の死亡の開始(8日目)の直前(7日目)および直後(9日目)に肺組織を採取した(1日につき群あたりn=5日)。プロトコルごとに、rhu-pGSNの用量は、プロファイリング用に選択された2つの時点の間で、この実験の7日目において増加した。ビヒクル処置マウスとrhu-pGSN処置マウスから7日目に得られた肺試料の比較は、有意差を示さなかった。対照的に、9日目の試料の分析では、195個のダウンレギュレーション遺伝子と149個のアップレギュレーション遺伝子からなる、rhu-pGSN処置群で344個の差次的に発現する遺伝子が同定された。上位50のアップレギュレーションおよびダウンレギュレーション遺伝子を
図15に示し、これは、rhu-pGSN処置群でダウンレギュレーション遺伝子(とりわけ、IL10、IL12rb、CTLA4、ならびにCCR9、7、および5など)の中で顕著な多くのサイトカインおよび免疫関連遺伝子で注目に値する。完全なダウンレギュレーション遺伝子リストの遺伝子濃縮分析を、Pantherオンライン分析ツールを使用して実行し、GOオントロジーまたはReactomeデータベースにクエリを実行した。主な知見は、免疫および炎症反応に関連する生物学的プロセスの発現の減少、またはサイトカインおよび他の細胞活性化因子の放出であった。上位10の最も重要なプロセス/経路を
図16に示す。別の遺伝子濃縮分析ソフトウェアツール(MetaCore)を使用した分析でも、同様の結果が作成された。アップレギュレーション遺伝子リストの分析により、組織の形態形成および上皮/表皮細胞の分化に関連するプロセスの濃縮が同定された(インフルエンザを介した損傷の修復と一致する、考察を参照のこと)。DriverMap遺伝子リストの詳細、同定された差次的発現遺伝子、ならびにダウンレギュレーションおよびアップレギュレーション遺伝子リストを使用してPantherおよびMetaCoreデータベースにクエリを実行する遺伝子濃縮分析の完全な結果は、拡張データで利用可能なスプレッドシートにおけるワークシート2~15で提示される[Kobzik L:Harvard Dataverse、V1 2019.www.doi.org/10.7910/DVN/8HBFD7]。本明細書に記載されている研究の実験群に関するデータは、 Harvard Dataverse: Expanded Tables 1 & 2.//doi.org/10.7910/DVN/53GJY116の表1および表2に示されており、ここには、また、重みなどの追加の変数および統計分析についても記載されている。本明細書に記載されている実験からの追加データは、NCBI Gene Expression Omnibus:血漿ゲルゾリンで処置されたインフルエンザ感染マウスからの肺組織のトランスクリプトームプロファイリングで提供されている。アクセッション番号GSE138986;//identifiers.org/geo:GSE138986。
【0147】
考察
処置開始を遅らせるという臨床的に適切なシナリオを使用して、rhu-pGSNが重症インフルエンザのアウトカムを改善する可能性を評価するための研究を実行した。重要な知見は、pGSN処置の遅延は、感染後3日目から、または6日目までに使用した場合でも、生存率を大幅に改善することであった。患者の感染直後に(重度の症状の発症直後とは対照的に)早期治療を開始することが実行不可能であることに加えて、一部の実験モデルで観察された有害な結果を考慮して、インフルエンザに対する即時の免疫応答を妨げないように、遅延を実施した。
【0148】
一部の制限は考察に値する。第1には、観察された実験的ばらつきである。rhu-pGSNによる処置は、実施された実験の大部分で生存率を増加させたが、それらのすべてで増加させたわけではなかった。いくつかの否定的試験では、例として、ウイルスストックに関する技術的問題、滴下注入方法の変動、「低用量、次に高用量」試験での不十分な初期rhu-pGSN用量などであるが、これらに限定されない要因の結果と考えられた。可能な限り、これらの潜在的なばらつきの原因を減らすために方法が調整された。
【0149】
実験変数も操作して、例えば、感染開始後6日目対3日目という遅い処置が有効かどうかを調査し、研究の他の変数を評価した。最終的に、生存分析にすべての試験が含まれるか(
図14A、B)、または6日目もしくは3日目から処置を使用した試験(
図14C-H)が含まれるかにかかわらず、有益な効果が観察された。
【0150】
生存マウスに安楽死を行った場合、マウスは12日間だけ追跡された。生存曲線は依然として潜在的に低下していたため、最終的な死亡率を確信をもって確認することはできなかった。しかし、プラセボ処置よりもrhu-pGSNを使用した場合、死亡までの期間は最低でも延長された。
【0151】
特に、rhu-pGSNは、実験モデルにおいてインフルエンザで死亡したすべてのマウスをレスキューしたわけではないが、結果は有意な生存延長効果を示した。重症インフルエンザの新規な治療法を特定するという目標を考えると、支持液、追加の治療剤(例えば、抗ウイルス剤に限定されない)、および入院患者に与えられた呼吸ケアなしでマウスにおいて得られた結果は、方法が、臨床現場で同様の利益および相乗的利益をもたらすであろうという結論を支持する。結果は、感染後の好適な時期にゲルゾリン剤を投与することと、抗ウイルス薬などの標準的な治療法との併用療法が、より大きな生存延長効果を提供することを示唆している。
【0152】
まとめると、rhu-pGSNは、臨床的に適切な遅延の後に与えられた場合、致死性が高いマウスインフルエンザモデルのアウトカムを改善することができる。これらの知見は、肺炎球菌性肺炎のモデルに見られる利点と一致している。pGSNの作用機序は、宿主の応答を伴い、特定のタイプの病原体に依存していないようである。実験結果は、ヒトおよび他の哺乳動物における重症インフルエンザおよび他のウイルス感染の補助療法としてのゲルゾリンの使用を支持する。
【0153】
実施例5
相乗的な量のゲルゾリン剤と抗ウイルス剤を用いる追加の研究が実行される。ある特定の研究では、リン酸オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、またはバロキサビルマルボキシルが、対象に投与される抗ウイルス薬である。ゲルゾリン剤は、本明細書で上記のように遅延用量法で投与される。有効量の抗ウイルス剤およびゲルゾリン剤は、インフルエンザA、B、C、またはDのうちの1つなどのウイルス感染を有するかまたは有すると疑われる対象に投与され、有効量は、対象の感染においてウイルスに対する相乗的治療効果をもたらす。相乗的治療効果は、対照における1つまたは複数の特徴の改善よりも、対象におけるウイルス感染の1つまたは複数の特徴をより大きく改善し、対照は、相乗的有効量のゲルゾリン剤および抗ウイルス剤の投与を含む処置を受けていない。
【0154】
均等物
本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載し説明してきたが、当業者は、本明細書に記載された機能を実行し、かつ/または結果および/または1つまたは複数の利点を得るための、種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形および/または改変のそれぞれは、本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途または用途(複数)に依存することを、容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、または確認できるであろう。したがって、前述の実施形態は単なる例示として提示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載され請求される以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法に関する。さらに、そのような特徴、システム、物品、および/または方法が相互に矛盾しない場合、そのような特徴、システム、物品、および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0155】
本明細書において定義され、使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味を使い分けると理解されるべきである。
【0156】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または」という語句は、そのように結合した要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「一方または両方」を意味すると理解されるべきである。具体的に特定された要素と関連するかどうかにかかわらず、明確に反対の指示がない限り、「および/または」の句によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択により存在してもよい。
【0157】
本出願で引用または参照されるすべての参考文献、特許および特許出願ならびに刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】