IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)の特許一覧

特表2022-538048ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
C01B21/086
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575945
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2020066449
(87)【国際公開番号】W WO2020260047
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182577.7
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギュレン, サイモン
(72)【発明者】
【氏名】レブマン, エドゥアール
(72)【発明者】
【氏名】ブイジーネ, オリヴィエ
(57)【要約】
【課題】 ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、有機反応媒体内で、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ剤と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩とアンモニアを生成し、それと同時に反応媒体を不活性ガス流と接触させてアンモニアをストリッピングする工程を含む、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機反応媒体内で、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ剤と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩とアンモニアを生成し、それと同時に反応媒体を不活性ガス流と接触させてアンモニアをストリッピングする工程を含む、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法。
【請求項2】
アルカリ塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩からなる群から選択され、好ましくはアルカリ塩がリチウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機反応媒体が少なくとも1種の有機溶媒を含み、有機溶媒が非プロトン性有機溶媒から、好ましくは酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ剤が、アルカリ水酸化物、炭酸アルカリ塩、炭酸水素アルカリ塩、及びアルカリ水素化物から選択され、好ましくはアルカリ剤が、水酸化リチウムLiOH又は水酸化リチウム水和物LiOH.HOである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
不活性ガスが、窒素、アルゴン、及び低酸素空気からなる群から選択され、好ましくは不活性ガスが窒素である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応が、底部にガス注入口及び上部にガス回収口を備えた撹拌槽型反応器内で行われ、不活性ガスが、ガス注入口を介して撹拌槽型反応器の底部に供給され、反応媒体に接触し、ガス回収口を通って撹拌槽型反応器の上部で放出される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応が、カラムの下部にガス注入口を備えており且つカラムの上部にガス回収口を備えている多段気液抽出カラム内で行われ、不活性ガスが、ガス注入口を介してカラムの下部に供給され、下を流れる反応媒体に向かって逆流して上向きに流れることによって反応媒体に接触し、ガス回収口を通ってカラムの上部で放出される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応媒体の温度が、0℃~100℃、より好ましくは10℃~60℃、更に好ましくは20℃~50℃に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
不活性ガスの流れが、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩+有機反応媒体からの溶媒の1トンに対して0.2~30トンに含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応が減圧下又は大気圧で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
方法が、アンモニアストリッピング後にアンモニアを多く含む不活性ガスを回収し、洗浄し、そしてリサイクルすることからなる工程を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
方法が、反応媒体の後処理を更に含み、後処理が、反応媒体が二相性(水性/有機)溶液である場合に、水相を除去し、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を有機相に回収する相分離工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を生成することによってビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を調製することから構成される予備工程を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩。
【請求項15】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造し、副生成物の形成を低減又は回避するための、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩とアルカリ剤との反応中の不活性ガスストリッピングの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造するための方法に関する。より具体的には、本発明は、高純度の生成物を提供するビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造するための新規な方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(一般に「FSIH」と表される)及びその塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(一般に「LiFSI」と表される)は、様々な技術分野において中間体化合物又は最終化合物として有用である。ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩は、電池の電解質において特に有用である。このタイプの使用のためには、不純物の存在が重要な問題である。
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩の製造は、文献に広く記載されている。記載されている様々な技術の中でも、大部分は、HF、又はKF、CsF、AsF、SbF、CuF、ZnF、SnF、PbF、BiFなどの金属フッ化物を用いたフッ素化反応を使用する。例えば発煙硫酸及びフッ化アンモニウムの存在下でクロロスルホニルイソシアネートを使用する、或いは尿素及びフルオロスルホン酸を使用する、他の技術も開発されてきた。
【0004】
2つの同様の特許出願である(特許文献1)及び(特許文献2)では、最初に特定のクロロスルホニルイミドアンモニウム塩からフルオロスルホニルイミドアンモニウム塩を調製し、次いでこのようにして得られたフルオロスルホニルイミドアンモニウム塩をアルカリ金属化合物と反応させてフルオロスルホニルイミドアルカリ金属塩を得ることによって、金属不純物による汚染が最大限に抑制されることが示唆されている。最初のフッ素化工程は、(特許文献1)に準拠したフッ化水素との反応、又は(特許文献2)に準拠したNHF(HF)(p=0~10)との反応のいずれかによって行うことができる。これには、このようにして得られたフルオロスルホニルイミドアルカリ金属塩が、電解質特性を低下させる金属不純物を含まないことが主張されている。
【0005】
しかしながら、本発明の発明者は、(特許文献1)及び(特許文献2)に従って得られたフルオロスルホニルイミドアルカリ金属塩の中に予期しなかった新しい不純物の存在を発見した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、カチオン交換反応中に生成したアンモニアが、中間生成物及び/又は溶媒と不都合なことに反応して、望ましくない副生成物を形成すると考えられる。カチオン交換反応を減圧下で行ったとしても、液相と気相との間の熱力学的平衡のため、反応媒体中に若干のアンモニアが残る。
【0006】
従来技術の文献である(特許文献3)には、スルホニルイミドのリチウム塩を製造及び精製するための方法が更に開示されている。方法は、クロロスルホン酸とクロロスルホニルイソシアネートとを反応させてクロロスルホニルイミドを調製し、次いでクロロスルホニルイミドをフッ素化アンモニウムと反応させてフルオロスルホニルイミドアンモニウム塩を調製し、その後フルオロスルホニルイミドアンモニウム塩をリチウム化合物と反応させてリチウムスルホニルイミド塩を得てから、最後に特定の溶媒の助けを借りて、リチウムスルホニルイミド塩を精製することからなる。不純物の存在の問題は、ここでは最終的な特定の精製工程の実施によって解決されている。
【0007】
本発明者らは、高純度の製品を提供するビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ塩の新規な製造方法を提供するためには、依然として改善の余地があると考えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2674395号明細書
【特許文献2】欧州特許第2660196号明細書
【特許文献3】国際公開第2016/093399号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0191113号明細書
【特許文献5】国際公開第2009/123328号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2012“Absorption,2.Design of Systems and Equipment”
【発明の概要】
【0010】
出願人は、以降で、高純度のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造するための新規な方法を提供する。
【0011】
本発明の1つの主題は、有機反応媒体内で、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ剤と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩とアンモニアを生成し、それと同時に反応媒体を不活性ガス流と接触させてアンモニアをストリッピングする工程を含む、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法である。
【0012】
有利なことには、本発明による方法は、非常に高純度の生成物を得ることを可能にする。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、従来技術の方法における不純物の形成が、反応中に生成したアンモニアと溶媒との間の予期しなかった未知の反応によるものであると考えている。従来技術の方法では、アンモニアは反応媒体中に長時間留まりすぎ、アンモニア含有量を減らすために使用される真空のような方法は、この問題を解決するためには適切ではなかった。有利なことには、本発明による方法は、反応媒体中のアンモニア量を理論上ゼロまで低減することを可能にする。反応媒体内のアンモニアの滞留時間は、有利なことには非常に短い。加えて、本発明による方法は、連続方式又は不連続方式のいずれかに従って、工業規模で実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示では、「...から...までを含んだ」という表現は、両端値を含むものとして理解されるべきである。
【0014】
本発明による方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造に関する。アルカリ塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩からなる群から選択することができる。好ましくは、アルカリ塩はリチウム塩であり、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩、Li(FSO(LiFSI)である。
【0015】
本発明による方法は、有機反応媒体内で、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ水酸化物、炭酸アルカリ塩、炭酸水素アルカリ塩、又はアルカリ水素化物と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩及びアンモニアを生成する工程を含む。
【0016】
有機反応媒体は、少なくとも1種の有機溶媒を含む。したがって、反応は、有機溶媒、有機溶媒の混合物、又は有機溶媒と水との混合物中で行われる。有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒から選択することができ、好ましくは:
- 環状及び非環状のカーボネート、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状のエステル、例えば、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状のエーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、
- シアノ-、ニトロ-、クロロ-又はアルキル-置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、
から選択することができる。
【0017】
好ましい実施形態によれば、溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル、及びアセトニトリルからなる群から選択される。
【0018】
アルカリ剤は、好ましくは、アルカリ水酸化物、炭酸アルカリ塩、炭酸水素アルカリ塩及びアルカリ水素化物からなる群から選択される。アルカリ水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群から選択することができる。好ましくは、アルカリ水酸化物は水酸化リチウムである。炭酸アルカリ塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムからなる群から選択することができる。好ましくは、炭酸アルカリ塩は炭酸リチウムである。炭酸水素アルカリ塩は、炭酸水素リチウム、重炭酸ナトリウム、及び重炭酸カリウムからなる群から選択することができる。好ましくは、炭酸水素アルカリ塩は、炭酸水素リチウムである。アルカリ水素化物は、水素化リチウム、水素化ナトリウム、及び水素化カリウムからなる群から選択することができる。好ましくは、アルカリ水素化物は水素化リチウムである。
【0019】
「アルカリ剤」という表現には、本明細書ではその水和物も含まれる。
【0020】
好ましくは、アルカリ水酸化物又はアルカリ水酸化物の水和物を使用することができる。アルカリ剤がリチウム塩である場合、それは、水酸化リチウムLiOH、及び水酸化リチウム水和物LiOH.HOからなる群から選択することができる。
【0021】
アルカリ剤は、固体として、純粋な液体として、又は水溶液若しくは有機溶液として添加することができる。好ましくは、反応媒体内での水の存在は、低減するか回避されなければならない。したがって、除外されるものではないが、アルカリ剤の水溶液の使用は好ましくない。
【0022】
使用されるアルカリ剤由来のアルカリ金属の量は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩1モルあたり0.5~5モル、より好ましくは0.9~2モル、更に好ましくは1~1.5モルに含まれる。アルカリ剤がアルカリ剤1モルに対して1モルのアルカリ金属を含む場合、使用されるアルカリ剤の量は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩1モルあたり0.5~5モル、より好ましくは0.9~2モル、更に好ましくは1~1.5モルに含まれる。これに当てはまらない場合には、それに応じて割合が計算される。例えば、アルカリ剤1モル当たり2モルのアルカリ金属を含有するアルカリ剤の場合、使用されるアルカリ剤の量は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩1モルあたり0.25~2.5モル、より好ましくは0.45~1モル、更に好ましくは0.5~0.75モルに含まれる。
【0023】
ビス(フルオロスルフォニル)イミドのアルカリ塩である目的生成物に加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩とアルカリ剤との間の反応は、アンモニア及び水と平衡状態にあるNHOHを生成する。ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩とアルカリ水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、又は水素化物との間の反応と同時に、本発明による方法は、反応媒体を不活性ガス流と接触させてアンモニアをストリッピングすることからなる工程を更に含む。
【0024】
液相に溶解した化学成分を、通常、ストリッピングガスと呼ばれるガスによってストリッピングすることは、化学工学の単位操作を行う者に公知の方法である。空気によるアンモニアのストリッピングは、特に廃水処理のために広く開示されている。この技術の一般的な原理は、例えばManfred Kriebelによる(非特許文献1)の中で見ることができる。この技術の別の用途は、例えば、(特許文献4)に開示されている。しかしながら、本発明者らの知る限り、この技術が本反応に適用されるのは初めてである。
【0025】
「同時に」という表現は、本明細書では、反応媒体からのアンモニアのストリッピングが、反応時間のかなりの部分の間、すなわち反応時間の50%を超えて、好ましくは反応時間の75%超えて、更に好ましくは反応時間の90%を超えて行われることを意味することが意図されている。好ましい実施形態によれば、ストリッピングは、アンモニアの生成がより多い場合には、少なくとも反応の開始中に行われる。
【0026】
不活性ガスは、反応媒体中に存在するいずれの化合物のとも化学的に反応しない任意の適切なガスとすることができる。好ましくは、安全上の理由から、不活性ガスは、反応媒体の爆発限界の外側にとどまるように、反応媒体の溶媒に応じて選択することができる。これは、窒素、アルゴン、及び低酸素空気からなる群から選択することができる。本文書において、「低酸素空気」とは、酸素が不足している空気、例えば10%未満の酸素を含む空気を意味する。好ましい実施形態によれば、不活性ガスは窒素である。
【0027】
反応及びストリッピングは、バッチ方式、半バッチ方式、又は連続方式で、好ましくは連続方式で、連続撹拌槽型反応器内で、一連の連続撹拌槽型反応器内で、又はカラム反応器内で行うことができる。
【0028】
第1の実施形態によれば、本発明による反応は、底部にガス注入口を備え、上部にガス回収口を備えた撹拌槽型反応器内で行われる。不活性ガスは、ガス注入口を介して撹拌槽型反応器の底部に供給され、反応媒体に接触し、ガス回収口を通って撹拌槽型反応器の上部で放出される。この第1の実施形態は、少量の生産に合わせることができる。
【0029】
第2の実施形態によれば、本発明による反応は、ストリッパーとしても知られている多段気液抽出カラムで行われる。ストリッパーは、カラムの下部にガス注入口を備え、カラムの上部にガス回収口を備えている。不活性ガスは、ガス注入口を介してカラムの下部に供給され、下を流れる反応媒体に向かって逆流して上向きに流れることによって反応媒体に接触し、ガス回収口を通ってカラムの上部で放出される。典型的には、ストリッパーは3~15の理論段数を示し得る。特に2段目及び最終段で、カラムに外的熱負荷が供給されてもよい。この第2の実施形態は、大量生産に合わせることができる。当業者は、市販の装置の中から適切な装置を選択できるであろう。
【0030】
反応媒体との接触中に、不活性ガスはアンモニアを吸着する。したがって、放出された不活性ガスにはアンモニアは濃縮される一方で、反応媒体内のアンモニアの濃度は減少する。液体と気体との間の接触は、適切なインターンを使用することにより改善することができる。典型的には、カラムのインターンは、物質移動プレート、ランダムパッキング、構造化パッキングから選択することができる。撹拌槽については、ガスディフューザー又は穴あきプレートを使用することにより、液体とガスとの間の接触を改善することができる。
【0031】
反応媒体の温度は、0℃~100℃、より好ましくは10℃~60℃、更に好ましくは20℃~50℃に含まれ得る。反応媒体に接触する前の不活性ガスの温度は、反応媒体の温度と同じであってもよく、或いは反応媒体と比較して+/-20℃であってもよい。外部加熱システムの代わりに、高温の不活性ガスの供給が使用されてもよい。第1の実施形態によれば、温度は反応の間一定である。第2の実施形態によれば、反応中に温度は一定に保たれず、温度は好ましくは増加していく傾斜に従う。安全上の理由から、選択した不活性ガスに応じて、温度が反応媒体の爆発限界未満に維持されてもよい。
【0032】
好ましくは、反応は大気圧で行われるが、大気圧よりも下又は上、例えば5mbar~1.5bar、好ましくは5mbar~100mbarで行うことを排除するものではない。別の実施形態によれば、本発明による方法は減圧下で行われる。
【0033】
反応媒体中のビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の濃度は、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~40重量%、更に好ましくは15重量%~35重量%に含まれ得る。
【0034】
不活性ガスの流れは、アンモニアを効果的に除去するために、反応器の設計及び反応の他のパラメータに応じて調整される。典型的には、不活性ガスの流れは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩+溶媒1トンに対して0.2~30トンに含まれ得る。より具体的には、反応が撹拌槽型反応器中で行われる場合、不活性ガスの流れは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩+溶媒1トンに対して1~30トン、好ましくは2~20トン、更に好ましくは3~10トンに含まれ得る。また、反応が多段気液抽出カラムで行われる場合、不活性ガスの流れは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩+溶媒1トンに対して0.2~20トン、好ましくは0.2~2トン、更に好ましくは0.4~1トンに含まれ得る。不活性ガスの量は、反応が多段気液抽出カラムで行われる場合、撹拌槽型反応器で行われる同じ反応と比較して、5~15分の1になる可能性がある。
【0035】
好ましい実施形態によれば、アンモニアのストリッピング後、アンモニアを多く含む不活性ガスが回収され、洗浄され、リサイクルされる。追加の洗浄及びリサイクル工程は、酸性水溶液で満たされたスクラバーにアンモニアを捕捉し、スクラバーから純粋な不活性ガスを回収することから構成することができる。
【0036】
好ましい実施形態によれば、アンモニアストリッピング後、反応媒体は、10000ppm未満のアンモニア、より好ましくは5000ppm未満のアンモニア、より好ましくは1000ppm未満のアンモニア、より好ましくは500ppm未満のアンモニア、より好ましくは300ppm未満のアンモニア、より好ましくは0~100ppmのアンモニア、より好ましくは1ppm~50ppmのアンモニア、更に好ましくは5ppm~20ppmのアンモニアを含む。本文書において、アンモニアの含有量とは、検討される媒体中のNH及びNH の重量濃度を指す。アンモニウム塩については、NH の重量のみが考慮され、塩の総重量は考慮されない。
【0037】
非常に純粋なビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を回収するために、反応媒体の追加の処理が行われてもよい。反応媒体は、特にアルカリ塩が水溶液である場合、二相性(水溶液/有機)溶液であってもよい。この場合、方法は、水相を除去し、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を有機相に回収する相分離工程を含み得る。追加の工程は、濾過、濃縮、抽出、再結晶、クロマトグラフィーによる精製、乾燥、及び/又は配合を含み得る。
【0038】
有利には、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、非常に高い純度を有する。これは、90%を超える、好ましくは95%を超える、より好ましくは99%~100%の塩の純度を示し得る。
【0039】
好ましくは、これは以下のアニオン含有量を示し得る:
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物イオン(Cl)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物イオン(F)含有量;及び/又は
- 30000ppm未満、好ましくは10000ppm未満、より好ましくは5000ppm未満の硫酸塩イオン(SO 2-)含有量。
【0040】
好ましくは、これは以下の金属元素含有量を示し得る:
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量。
【0041】
加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩がビス(フルオロスルホニル)イミドナトリウムでない場合、これは以下を示し得る:
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na)含有量。
【0042】
加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩がビス(フルオロスルホニル)イミドカリウムでない場合、これは以下を示し得る:
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)含有量。
【0043】
その非常に高い純度のため、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムは、電池用の電解質組成物において有利に使用することができる。
【0044】
有利には、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、アンモニアと中間生成物及び/又は溶媒との望ましくない反応による副生成物を含まない。本発明の1つの目的は、本発明による方法によって得られる、得ることが可能な、又は得ることができる、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩に関する。
【0045】
本発明の別の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造し、副生成物の形成を低減又は回避するために、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩とアルカリ剤との反応中に不活性ガスストリッピングを使用することである。
【0046】
本発明による方法で使用されるビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩は、当業者に公知の任意の方法によって得ることができる。これは、購入されてもよく、或いは上流のプロセスで調製されてもよい。一実施形態によれば、本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を調製し、次いで反応媒体内でビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ剤と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩とアンモニアとを生成すること;及びそれと同時に反応媒体を不活性ガス流と接触させてアンモニアをストリッピングすること;を含む、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造する方法に関する。
【0047】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の調製方法の例は、例えば、(特許文献5)、(特許文献1)、及び(特許文献2)の中で見ることができる。ビス(フルオロスルフォニル)のアンモニウム塩を調製するための1つの具体的な方法を以降で開示する。
【0048】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を調製する予備工程は、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を生成することを含み得る。
【0049】
ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩が原料として使用される。これは、以下の式で表すことができる:
(Cl-SO-N-SO-Cl) X
(式中、Xは、H、Li、Na、K、Cs、及びNHからなる群から選択される1つを表す)。
【0050】
好ましい実施形態によれば、原料は、式(Cl-SO-NH(一般的にCSIHで表される)のビス(クロロスルホニル)イミドである。CSIHは市販されており、或いは例えば以下の公知の方法によって製造される:
- クロロスルホニルイソシアネートClSONCOをクロロスルホン酸ClSOOHと反応させること;
- 塩化シアンCNClを無水硫酸SO及びクロロスルホン酸ClSOOHと反応させること;
- スルファミン酸NHSOOHを塩化チオニルSOCl及びクロロスルホン酸ClSOOHと反応させること。
【0051】
好ましい実施形態によれば、フッ素化剤はフッ化アンモニウムNHFである。本発明内において、「フッ化アンモニウム」という表現は、フッ化アンモニウムのHF付加物、例えばNHF(HF)も含み、式中のnは1~10、好ましくは1~4、より好ましくはNHF.HF又はNHF(HF)である。フッ素化剤は市販されており、或いは公知の方法によって製造することができる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、フッ化アンモニウムは無水物である。含水量は、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、更に好ましくは500ppm未満であってよい。
【0053】
使用されるフッ化アンモニウムの量は、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩1モルあたり、1~10当量、より好ましくは1~7当量、更に好ましくは2~5当量に含まれる。
【0054】
反応は、好ましくは有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒から選択することができ、好ましくは:
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、
- シアノ-、ニトロ-、クロロ-、又はアルキル-置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、
である。
【0055】
好ましい実施形態によれば、有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル、及びアセトニトリルからなる群から選択される。
【0056】
好ましい実施形態によれば、有機溶媒は無水である。水分含有量は、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、更に好ましくは50ppm未満であってよい。
【0057】
反応は、0℃~200℃、好ましくは30℃~100℃の温度で行うことができる。好ましくは、反応は大気圧で行われるが、大気圧より下又は上、例えば800mbar~1.2barで行われることを排除するものではない。
【0058】
反応は、バッチ方式、半バッチ方式、又は連続方式で行うことができる。好ましい実施形態によれば、フッ化アンモニウムは最初に有機溶媒に添加される。次いで、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩を反応媒体に添加することができる。
【0059】
本発明によれば、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させることにより、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を得ることができる。
【0060】
好ましい実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を調製するための工程は、塩基性化合物を反応媒体に添加することからなる任意選択的な工程を更に含み得る。塩基性化合物は、固体、純粋な液体、水溶液若しくは有機溶液、又は気体であってよい。塩基性化合物は、ガス状アンモニア、アンモニア水、アミン、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、プロピオン酸塩、若しくはシュウ酸塩からなる群から選択することができる。アミンの中でも、脂肪族アミン(エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリブチルアミンなど)、アルキレンジアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンなど)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンなど)、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン(ベンジルアミン及びメタキシレンジアミンなど)、これらのアミンのエチレンオキシド付加物、ホルムアミジン、グアニジン、アミジン、及び複素環式アミン(ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、ピリジン、及びインドールなど)を含む任意のタイプのアミンが好都合な場合がある。本発明による塩基性化合物は、好ましくはガス状アンモニア又はアンモニア水である。
【0061】
添加される塩基性化合物の量は、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の初期量を基準として、好ましくは0.1~10当量、好ましくは0.5~5当量、より好ましくは0.5~3当量である。
【0062】
温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは15℃~90℃に維持される。有利には、この任意選択的な工程は、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させる前の工程と同じ温度で行うことができる。
【0063】
任意選択的には、本発明による方法は、中間の分離工程を含み得る。この中間分離工程は、当業者に公知の任意の典型的な分離手段によって、例えば濾過(例えば加圧下又は真空下)又はデカンテーションによって行うことができる。代わりに、又はそれに加えて、そのような中間分離工程は、塩基性化合物の添加後に行われてもよい。
【0064】
得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩は、好ましくは結晶化によって更に精製することができる。
【0065】
結晶化の開始前に、反応媒体内のビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の濃度は、10重量%~95重量%、好ましくは30重量%~80重量%、より好ましくは40重量%~70重量%に含まれ得る。この方法は、典型的には反応媒体の有機溶媒の一部を蒸発させることによって、加熱することによって、圧力を下げることによって、又はその両方によって、反応媒体内でビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を濃縮することから構成される追加の工程を含み得る。一実施形態によれば、濃縮工程は、0℃~120℃、好ましくは5℃~80℃、より好ましくは10℃~70℃に含まれる温度での溶媒の蒸留から構成することができる。圧力は、溶媒の性質に応じて、典型的には大気圧から10-2mbarの間、好ましくは1mbar~500mbar、より好ましくは5mbar~100mbarで調整することができる。蒸留は、当業者に公知の任意の典型的な手段によって、連続プロセス方式又は不連続/バッチ方式で、例えば連続バッチ方式の溶媒蒸発、バッチ式蒸留、ショートパスの連続フロー蒸留、又は薄膜蒸発装置などで行うことができる。
【0066】
塩の結晶は、任意選択的に予め濃縮されていてもよい塩を含む反応混合物の温度を下げることによって、及び/又は析出溶媒を添加することによって得ることができる。
【0067】
塩を含む反応混合物の温度は、塩の溶解温度よりも低い値まで下げることができる。好ましくは、温度は、溶媒の沸点~-20℃、より好ましくは70℃~-10℃、更に好ましくは30℃~0℃に含まれる値まで下げられる。温度が下げられる間、圧力は好ましくは一定に保たれ得る。しかしながら、同時に圧力を下げることを排除するものではない。これにより、反応混合物の有機溶媒の一部が蒸発する可能性がある。圧力は、大気圧~10-2mbar、好ましくは1mbar~500mbar、より好ましくは5mbar~100mbarに含まれる値まで下げることができる。
【0068】
代わりに又はそれに加えて、塩を含む反応混合物に少なくとも1種の析出溶媒が添加されてもよい。析出溶媒は、好ましくは、反応混合物の有機溶媒内で非常に溶解性を有しており且つビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩にとって貧溶媒である有機溶媒の中から選択することができる。析出溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、及び四塩化炭素などのハロゲン化溶媒;クロロベンゼンやトルエンなどの置換芳香族炭化水素溶媒;並びにヘキサンやヘプタンなどのアルカン溶媒;からなる群から選択することができる。析出溶媒は、好ましくは、ジクロロメタン及びジクロロエタンから選択することができる。反応混合物の析出溶媒と有機溶媒との間の体積比は、0.1~50、好ましくは0.2~20、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは1~10に含まれ得る。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の精製は、析出溶媒を添加せずに、塩を含む反応混合物の温度を低下させることから構成される。本発明の別の実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の精製は、塩を含む反応混合物の温度を低下させずに、析出溶媒を添加することから構成される。好ましい第3の実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の精製は、析出溶媒を添加し、塩を含む反応混合物の温度を下げることから構成される。析出溶媒が好ましくは最初に添加され、その後に温度が下げられる。しかしながら、他の方法で進めること、又は2つの行為を同時に行うことを除外するものではない。
【0070】
結晶化したビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の分離は、当業者に公知の任意の典型的な分離手段、例えば濾過によって行うことができる。濾過は、当業者に公知の任意の手段によって、大気圧下、加圧下、又は真空下で実施することができる。濾過媒体のメッシュサイズは、好ましくは2マイクロメートル以下、より好ましくは0.45マイクロメートル以下、更に好ましくは0.22マイクロメートル以下とすることができる。分離生成物は、適切な溶媒で1回以上洗浄することができる。結晶化工程及び分離工程は、1回行うことができ、或いは分離された結晶化塩の純度を改善するために、必要に応じて2回以上繰り返すことができる。
【0071】
最後に、分離された結晶化塩は、純粋な乾燥製品を得るために好ましくは乾燥される。乾燥工程は、当業者に公知の任意の手段によって、典型的には減圧下で、及び/又は加熱によって、及び/又は不活性ガス流、典型的には窒素流を用いて、行うことができる。
【0072】
有利には、ビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化アンモニウム塩は非常に高い純度を有する。これは、
- 90%を超える、好ましくは95%を超える、より好ましくは99%~100%(質量パーセント)の塩の純度;及び/又は
- 20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは0%~1%(質量パーセント)の溶媒含有量;
を示し得る。
【0073】
好ましくは、これは以下のアニオン含有量を示し得る:
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物イオン(Cl)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物イオン(F)含有量;及び/又は
- 30000ppm未満、好ましくは10000ppm未満、より好ましくは5000ppm未満の硫酸塩イオン(SO 2-)含有量。
【0074】
好ましくは、これは以下の金属元素含有量を示し得る:
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量。
【0075】
加えて、これは、
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppmの未満ナトリウム(Na)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)含有量;
を示し得る。
【0076】
一般的に言えば、溶媒や試薬などを含む、本発明による方法で使用される全ての原材料は、好ましくは、非常に高い純度基準を示し得る。好ましくは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Cr、Ni、Znなどの金属成分のそれらの含有量は、10ppm未満、より好ましくは2ppm未満である。
【0077】
加えて、本発明による方法のいくつかの工程又は全ての工程は、反応媒体の腐食に耐えることができる装置の中で行われることが有利である。この目的のために、反応媒体と接触する部品には、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売されているモリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素、及びタングステンに基づく合金、又はInconel(登録商標)又はMonelTMの名称で販売されている銅及び/若しくはモリブデンが添加されたニッケル、クロム、鉄、及びマンガンの合金、より好ましくはHastelloy C276又はInconel 600、625、若しくは718合金など、耐腐食性を有する材料が選択される。オーステナイト鋼、より具体的には304、304L、316、又は316Lステンレス鋼などのステンレス鋼も選択することができる。最大22重量%、好ましくは6%~20%、より好ましくは8%~14%のニッケル含有量を有する鋼が使用される。304及び304L鋼は、8%~12%で変動するニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は、10%~14%で変動するニッケル含有量を有する。より具体的には、316L鋼が選択される。反応媒体の腐食に対して耐性を有する高分子化合物からなるか、又はそれでコーティングされた装置を使用することもできる。特に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン又はテフロン)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)などの材料を挙げることができる。ガラス器具も使用することができる。均等な材料を使用することは、本発明の範囲外ではない。反応媒体との接触に適したものとすることができる他の材料として、黒鉛誘導体も挙げることができる。濾過用の材料は、使用する媒体に適合している必要がある。フッ素化ポリマー(PTFE、PFA)、ロードされたフッ素化ポリマー(VitonTM)、及びポリエステル(PET)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、綿、及びその他の適合性を有する材料を使用することができる。
【0078】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0079】
実施例1
250mLの撹拌槽型反応器の中で、40gの結晶化NHFSIを93mLのエチルメチルカーボネートに溶解した。反応器の温度を30℃に固定した。8.7gのLiOH.HOを添加した。反応器の底部に170g/hの速度でNガスを注入し、Nバブリングを継続しながら8時間反応を行った。アンモニウム含有量はIPCによって滴定した。8時間反応させた後、NH /NHの含有量は100ppm未満であった。
【0080】
実施例2
実施例1と同じ反応を、Nバブリングなしで行った。20時間反応させた後、NH /NHの含有量はまだ10,000ppmを超えていた。
【0081】
純度分析
実施例1及び2で得られた反応混合物を、電位差測定(NH 含有量)、キャピラリー電気泳動及びイオンクロマトグラフィー、並びに19F NMRによって分析した。結果を表1に報告する。
【0082】
【表1】
【0083】
アンモニアの除去が行われない場合には(Ex.2)、反応時間が長く、また最終生成物は不純物を含んでおり、この存在は電子機器用途に望ましくない。本発明(Ex.1)に従って反応が行われる場合には、反応時間が短くなり、純度が改善される。残っている痕跡量の不純物2は、電子機器の性能を損なわないほど十分に低いと考えられる。
【国際調査報告】