(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】読取り装置及びライダー測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220829BHJP
G01S 7/487 20060101ALI20220829BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20220829BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S7/487
G01S17/931
G01C3/06 120Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576624
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020067886
(87)【国際公開番号】W WO2021001261
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】102019209698.0
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520158920
【氏名又は名称】イベオ オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ibeo Automotive Systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボイシェル
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA07
2F112CA05
2F112DA02
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA41
2F112FA45
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA38
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA31
5J084CA32
5J084CA74
5J084EA01
(57)【要約】
本発明は、焦点面アレイ構成においてライダー測定装置(10)のライダー送信ユニット(18)とライダー受信ユニット(16)の間の光パルスの信号伝搬時間を特定する読取り装置(20)であって、ライダー受信ユニットの複数のセンサ素子(36a~36j)から検出値を受信する入力インターフェース(22)であって、センサ素子はライダー送信ユニットの送信素子(32)と対をなすマクロセル(34)に配置された、入力インターフェース(22)と、複数のセンサ素子の各々について個々の重み付けパラメータをそれぞれ決定する重み付け部(24)であって、重み付けパラメータはセンサ素子の信号対ノイズ比に基づく、重み付け部(24)と、検出値の検出時に対する検出値の割当てによるヒストグラムを生成する加算部(26)であって、個々の重み付けパラメータに基づいて検出値を重み付けするように構成された加算部(26)と、生成されたヒストグラムに基づいて信号伝搬時間を特定する伝搬時間部(28)と、信号伝搬時間を出力する出力部(30)と、を備える読取り装置(20)に関する。本発明は、さらに、信号伝搬時間を特定する方法、及び車両の周囲における物体(12)を検出する焦点面アレイ構成におけるライダー測定装置(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点面アレイ構成においてライダー測定装置(10)のライダー送信ユニット(18)とライダー受信ユニット(16)の間の光パルスの信号伝搬時間を特定する読取り装置(20)であって、
前記ライダー受信ユニットの複数のセンサ素子(36a~36j)から検出値を受信する入力インターフェース(22)であって、前記センサ素子は前記ライダー送信ユニットの送信素子(32)と対をなすマクロセル(34)に配置された、入力インターフェース(22)と、
前記複数のセンサ素子の各々について個々の重み付けパラメータをそれぞれ決定する重み付け部(24)であって、前記重み付けパラメータは前記センサ素子の信号対ノイズ比に依存する、重み付け部(24)と、
前記検出値の検出時に対する該検出値の割当てによるヒストグラムを生成する加算部(26)であって、前記個々の重み付けパラメータに基づいて前記検出値を重み付けするように構成された加算部(26)と、
生成された前記ヒストグラムに基づいて前記信号伝搬時間を特定する伝搬時間部(28)と、
前記信号伝搬時間を出力する出力部(30)と、
を備える読取り装置(20)。
【請求項2】
前記重み付け部(24)は、前記マクロセル(34)におけるスポット位置(38)の較正測定値に基づいて前記個々の重み付けパラメータを決定するように構成され、
前記スポット位置の中心点(M)から遠いセンサ素子(36a~36j)ほど小さな重み付けを受け、
好ましくは、前記スポット位置の外側のセンサ素子が0の重み付けを受ける、請求項1に記載の読取り装置(20)。
【請求項3】
前記重み付け部(24)は、一定の信号伝搬時間で、前記センサ素子(36a~36j)の逐次的な個々の較正読取り値に基づいて前記個々の重み付けパラメータを特定するように構成され、
前記較正読取り値における検出数が多いセンサ素子(36a~36j)ほど高い重み付けを受け、
好ましくは、前記較正読取り値における検出数が閾値以下のセンサ素子が0の重み付けを受ける、請求項1又は2に記載の読取り装置(20)。
【請求項4】
前記重み付け部(24)は、
前記センサ素子の信号ノイズを示す前記センサ素子の個々のノイズパラメータに基づいて前記個々の重み付けパラメータを決定するように構成され、
好ましくは、直前の信号伝搬時間測定値及び/又は先行する環境光測定値に基づいて前記個々のノイズパラメータを決定するように構成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の読取り装置(20)。
【請求項5】
前記重み付け部(24)は、整数の重み付け係数で個々の重み付けパラメータを決定するように構成され、
前記加算部(26)は、前記整数の重み付け係数に応じて検出値の複数回の計数に基づいて前記ヒストグラムを生成するように構成され、
前記整数の重み付け係数は、好ましくは2の累乗である、請求項1から4のいずれか一項に記載の読取り装置(20)。
【請求項6】
前記重み付け部(24)は、整数の計数用係数で前記個々の重み付けパラメータを決定するように構成され、
前記加算部(26)は、前記センサ素子のそれぞれの前記計数用係数の倍数に対応する検出値の排他的計数に基づいて前記ヒストグラムを生成し、残余の検出値を破棄するように構成され、
前記整数の計数用係数は、好ましくは2の累乗である、請求項1から5のいずれか一項に記載の読取り装置(20)。
【請求項7】
前記重み付け部(24)は、各センサ素子について部分的なヒストグラムをそれぞれ生成するように構成され、
前記重み付け部は、前記部分的なヒストグラムの評価に基づいて前記個々の重み付けパラメータを決定するように構成され、
前記加算部(26)は、前記個々の重み付けパラメータで重み付けされた前記部分的なヒストグラムの加算に基づいて前記ヒストグラムを生成するように構成された、請求項1から6のいずれか一項に記載の読取り装置(20)。
【請求項8】
前記ライダー測定装置(10)は、時間相関単一光子計数(TCSPC)測定法を実行するように構成された、請求項1から7のいずれか一項に記載の読取り装置(20)。
【請求項9】
車両(14)の環境における物体(12)の検出のための焦点面アレイ構成におけるライダー測定装置(10)であって、
光パルスの送信のための複数の送信素子(32)を有するライダー送信ユニット(18)及び前記光パルスの受信のための複数のセンサ素子(36a~36j)を有するライダー受信ユニット(16)であって、前記送信素子及び前記センサ素子が前記車両の水平面に平行に延在する線上に配置された、ライダー送信ユニット(18)及びライダー受信ユニット(16)と、
請求項1から8のいずれか一項に記載の読取り装置(20)と、
を備えるライダー測定装置(10)。
【請求項10】
前記ライダー測定装置は、車両(14)上で該車両のバンパーの領域に配置するように構成された、請求項9に記載のライダー測定装置(10)。
【請求項11】
焦点面アレイ構成においてライダー測定装置(10)のライダー送信ユニット(18)とライダー受信ユニット(16)の間の光パルスの信号伝搬時間を特定する方法であって、
前記ライダー送信ユニットの送信素子(32)に割り当てられたマクロセル(34)に配置された、前記ライダー受信ユニットの複数のセンサ素子(36a~36j)の検出値を受信するステップ(S10)と、
前記複数のセンサ素子について個々の重み付けパラメータをそれぞれ決定するステップ(S12)であって、前記重み付けパラメータは前記センサ素子の信号対ノイズ比に依存する、ステップ(S12)と、
前記検出値の該検出時に対する前記検出値の割当てによるヒストグラムを生成するステップ(S14)であって、加算部が、前記個々の重み付けパラメータに基づいて前記検出値を重み付けするように構成された、ステップ(S14)と、
生成された前記ヒストグラムに基づいて前記信号伝搬時間を特定するステップ(S16)と、
前記信号伝搬時間を出力するステップ(S18)と、
を備える方法。
【請求項12】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコードがコンピュータで実行されると、請求項11に記載の方法のステップを実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点面アレイ構成におけるライダー測定装置のライダー送信ユニットとライダー受信ユニットの間の光パルスの信号伝搬時間を特定する読取り装置に関する。本発明は、さらに、信号伝搬時間を特定する方法及びライダー測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両(自動車、運搬装置、トラック、オートバイ、無人交通システムなど)は、運転手に若しくは作業者に情報を提供し、及び/又は部分的に若しくは完全に自動化された態様で車両の個々の機能を制御する複数のシステムを備える。車両の周囲、及び可能な場合には他の道路使用者が、センサによって検出される。検出データに基づいて、車両環境のモデルが生成可能となり、この車両環境の変化に対する反応が実行可能となる。自律的に又は部分的に自律的に走行する車両の分野の発展により、運転支援システム(Advanced Driver Assistance Systems:ADAS)の影響及び活動の場が、一層広がっている。より一層高精度なセンサの開発により、環境を検出し、運転手による介在なしに完全に又は部分的に車両の個々の機能を制御することが可能となる。
【0003】
ここで、環境の検出のために重要なセンサの原理は、ライダー技術(LiDAR:light detection and ranging、光検出と測距)である。ライダーセンサは、光パルスの送信及び反射光の検出に基づくものである。伝搬時間測定によって、反射部位までの距離が計算可能となる。受信反射の評価によって、送信先の検出が実行可能となる。対応するセンサの技術的実現に関して、一般にマイクロミラーに基づいて機能する走査系と、複数の送信素子及び受信素子が相互に隣接して固定的に並べて配置された非走査系(特に、いわゆる焦点面アレイ構成)との間で区別がなされる。
【0004】
この背景において、特許文献1には、光学的距離測定のための方法及び装置が記載される。測定パルスの送信のための送信マトリクス及び測定パルスの受信のための受信マトリクスの使用が開示される。測定パルスの送信では、送信マトリクスの送信素子のサブセットが活性化される。
【0005】
そのような焦点面アレイ構成におけるライダー測定装置による物体の検出における課題は、送信パワーが制限されていることにある。ライダー送信ユニットの送信素子を介して放射されるパワーは、制限されたチップサイズ及びチップの発熱のために制限される。パワーの増加は、製造の手間の増加及び高いコストに相関付けられる。これにより、特に、ライダーセンサの長距離範囲において、物体の検出における範囲の制限及び信頼性の制限をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以降において、ライダー測定装置の視野における物体の検出のための手法を提供することを課題とする。特に、物体の検出における範囲及び/又は信頼性が、一貫した製造の手間とともに向上されるべきである。有利なコストで実現可能でありかつエネルギー効率の高いライダーセンサが作製されるべきである。
【0008】
この問題を解決するために、本発明は、第1の態様において、焦点面アレイ構成においてライダー測定装置のライダー送信ユニットとライダー受信ユニットの間の光パルスの信号伝搬時間を特定する読取り装置であって、
ライダー受信ユニットの複数のセンサ素子から検出値を受信する入力インターフェースであって、センサ構成はライダー送信ユニットの送信素子と対をなすマクロセルに配置された、入力インターフェースと、
複数のセンサ素子の各々について個々の重み付けパラメータをそれぞれ決定する重み付け部であって、重み付けパラメータはセンサ素子の信号対ノイズ比に基づく、重み付け部と、
検出値の検出時に対する検出値の割当てによるヒストグラムを生成する加算部であって、個々の重み付けパラメータに基づいて検出値を重み付けするように構成された加算部と、
生成されたヒストグラムに基づいて信号伝搬時間を特定する伝搬時間部と、
信号伝搬時間を出力する出力部と、
を備える読取り装置に関する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、車両の環境における物体の検出のための焦点面アレイ構成におけるライダー測定装置であって、
光パルスの送信のための複数の送信素子を有するライダー送信ユニット及び光パルスの受信のための複数のセンサ素子を有するライダー受信ユニットであって、送信素子及びセンサ素子は車両の水平面に平行に延在する線上に配置された、ライダー送信ユニット及びライダー受信ユニットと、
前述の読取り装置と、
を備えるライダー測定装置に関する。
【0010】
本発明の更なる態様は、読取り装置に応じて構成された方法、及びコンピュータで実行されると、その方法のステップを実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品、並びにコンピュータで実行されると、ここに記載される方法の実行をもたらすコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【0011】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項に記載される。上記の特徴及び以下でさらに説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ指示された組合せだけでなく他の組合せ又は単独で使用可能であることが理解されるべきである。特に、読取り装置、ライダー測定装置及び方法並びにコンピュータプログラム製品は、従属請求項における読取り装置又はライダー測定装置について記載された実施形態に応じて構成され得る。
【0012】
本発明によると、その幾つかがライダー送信素子の送信素子にマクロセルにおいて割り当てられたライダー受信ユニットの個々のセンサ素子の検出値を融合することにおいて、重み付けが実行されることが規定される。重み付けは、ここでは個々のセンサ素子の信号対ノイズ比に基づく。特に、高い信号対ノイズ比を有するセンサ素子は、他のセンサ素子よりも重く重み付けされる。重み付けは、この点において、個々のセンサ素子がどれだけのパワーを受信するかに応じて選択される。本発明による手法は、複数のアンテナでの受信のための通信技術によって知られているような最大比合成手法に対応する。最大比合成法が、ライダーシステムに適用される。個々のセンサ素子の信号の重み付けは、ここでは、例えば、信号レベルの実効値(RMS)に比例し、及び/又は信号のノイズ成分に反比例する。重み付け係数は、各受信経路について、したがって各センサ素子について個々に決定される。
【0013】
送信素子に割り当てられた全てのセンサ素子が同一のものとしてみなされる従来の手法と比較して、測定精度が向上され得る。物体の検出における、より広い範囲又はより高い信頼性が生み出される。個々のセンサ素子が完全にオフされる手法と比較して、各センサ素子の信号対ノイズ比の関数としての重み付けパラメータの選択によって、向上した検出がもたらされる。信号全体を向上するために、弱い受信の受信経路も使用される。特定の状況では、能動センサ素子が選択される方法は、強い環境光の場合には最適ではない。本発明によると、物体の検出の向上が実現される。
【0014】
好適な実施形態では、重み付け部は、マクロセルのスポット位置の較正測定値に基づいて個々の重み付けパラメータを決定するように構成される。スポット位置の中心点から遠いセンサ素子ほど、低い重み付けを受ける。好ましくは、スポット位置の外側のセンサ素子は、0の重み付けを受ける。較正測定値は、ここでは、特に、サービス導入時及び/又はライダー測定装置の生産時の較正に対応する。製造許容差及び材料偏差によって、マクロセルのライダー受信ユニット又は複数のセンサ素子におけるスポット位置(送信素子の表示位置)は変化する。この状況は、通常は、マクロセルがスポット位置よりも広くなるように構成されることにおいて考慮される。較正測定では、スポット位置が測定可能であり、個々の重み付けパラメータがこの較正に基づいて確立可能となる。したがって、個々の重み付けパラメータは、もはや伝搬時間に対して変化するのではなく、ライダー測定装置に対して所定のものとなる。個々の重み付けパラメータを決定するために効率的に実施可能な方法がもたらされる。
【0015】
好適な実施形態では、重み付け部は、変化しない信号伝搬時間でのセンサ素子の逐次的な個々の較正読取り値に基づいて個々の重み付けパラメータを決定するように構成される。較正読取り値における検出数が多いセンサ素子ほど高い重み付けを受ける。好ましくは、較正読取り値における検出数が閾値以下のセンサ素子は、0の重み付けを受ける。較正読取り値は、この点において、一定の信号伝搬時間又はスポット位置で連続して個々のセンサ素子の活性化に対応する。各センサ素子について、どの信号成分が受信可能となるかについての確認が別個に実行される。サービス導入前に個々の重み付けパラメータを決定するために、効率的に実現可能な方法が生成される。
【0016】
好適な実施形態では、重み付け部は、センサ素子の信号ノイズを示すセンサ素子の個々のノイズパラメータに基づいて個々の重み付けパラメータを決定するように構成される。好ましくは、重み付け部は、直前の伝搬時間測定値に基づいて及び/又は先行する環境光測定値に基づいて個々のノイズパラメータを決定するように構成される。ノイズは、各センサ素子について別個に特定される。これにより、製造誤差が補償され得る。例えば、環境光測定は一定間隔で実行可能であり、環境光は全てのセンサ素子に対して同一であるものとする。個々のセンサ素子の信号によると、環境光によるセンサ素子の個々の影響が、その後に特定可能となる。ノイズ成分を特定する効率的な可能性が生み出される。
【0017】
好適な実施形態では、重み付け部は、整数の重み付け係数での個々の重み付けパラメータの決定のために構成される。加算部が、整数の重み付け係数による検出値の複数回の計数に基づいてヒストグラムを生成するように構成される。整数の重み付け係数は、好ましくは2の累乗である。これにより、効率的な実施可能性が実現される。整数の重み付けパラメータは、比較的少ないハードウェアの出費での重み付けを可能とし得る。特に有利には、2の累乗が用いられる。コスト効率的な実施可能性が生み出される。
【0018】
好適な実施形態では、重み付け部は、整数の計数用係数での個々の重み付けパラメータの決定のために構成される。加算部は、センサ素子の各計数用係数の倍数に対応する検出値の排他的な計数に基づいてヒストグラムを生成し、残りの検出値を破棄するように構成される。整数の計数用係数は、好ましくは2の累乗である。これも同様に、ハードウェアにおける重み付け手法の効率的な実施可能性がもたらされる。重み付けは、低い信号対ノイズ比の個々のセンサ素子のイベントを破棄することによって行われる。検出値又はそのようなセンサ素子のイベントは、破棄される。破棄は、ここでは簡単なカウンタによって実現可能である。効率的な実施可能性及び高い性能が生み出される。
【0019】
好適な実施形態では、重み付け部は、各センサ素子に対する部分的なヒストグラムをそれぞれ生成するように構成される。重み付け部は、部分的なヒストグラムの評価に基づいて個々の重み付けパラメータを決定するように構成される。加算部は、個々の重み付けパラメータで重み付けされた部分的なヒストグラムの加算に基づいてヒストグラムを生成するように構成される。個々のヒストグラムは、各センサ素子について生成される。重み付け係数は、ノイズレベルによって決定され得る。部分的なヒストグラムは、重み付けされて追加されればよく、部分的なヒストグラムの各ヒストグラムビンは重み付け係数を以て全体ヒストグラムに追加される。比較的高い負荷で個々のヒストグラムの計算が当然にもたらされる。一方で、各センサ素子について測定値に対する事後処理としてそれぞれ最適に重み付け係数を確立することができる。伝搬時間に対する重み付け係数の確立が生み出される。現在の条件に対する適応が実現される。
【0020】
各重み付け係数は、これは全ての検出値に関連する対応のセンサ素子の個々の重み付け係数に関するので、好ましくはセンサ素子の全ての検出値に対して、特に、全てのビンに関して同一である。いずれの個々の重み付けパラメータも、部分的なヒストグラムの個々のビンには割り当てられない。
【0021】
好適な実施形態では、ライダー測定装置は、時間相関単一光子計数(TCSPC)測定法を実行するように構成される。好ましくは、ライダー測定装置は、TCSPC測定法に基づいて動作される。個々の光子イベントが計数(検出)される。
【0022】
好適な実施形態では、ライダー測定装置は、車両のバンパー上の領域において車両上に配置するように設計される。自由な視界が、車両の前方又は後方の物体に対して得られる。車両の環境における物体の良好な検出が実現される。
【0023】
焦点面アレイ構成は、実質的に平面内のセンサ素子の(又は送信素子の)構成を意味するものとして理解される。ライダー受信ユニットは、特に、対応するセンサ素子を有するマイクロチップである。ライダー送信素子も同様に、特に、対応する送信素子を有するマイクロチップである。受信ユニット及び送信ユニットは、マイクロチップ上に共に配置され得る。送信素子及びセンサ素子は、例えば、チップ上に行列状にそれぞれ配置され、チップの領域にわたって分散される。1以上のセンサ素子が、送信素子に割り当てられる。ライダー送信ユニットの光パルスは、特に、レーザ光のパルスを意味するものとして理解される。信号伝搬時間は、特に、光パルスがライダー送信ユニットによって送信され、ライダー測定装置の環境における物体上での反射後にライダー受信ユニットによって受信されるのに要する期間を示す。検出値は、特に、センサ素子上への光子の入射を示す。信号伝搬時間は、特に、生成されたヒストグラムにおいて高い点の検出値に基づいて決定可能である。車両の環境は、特に、車両の周囲において車両から視認可能な領域を備える。
【0024】
添付図面との関連において一部の選択された例示実施形態の補助により、以下に本発明をより詳細に記載及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の態様によるライダー測定装置の概略図である。
【
図3】光パルスの送信のためのライダー送信ユニットの概略図である。
【
図4】ライダー受信ユニットのマクロセルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、車両14の環境における物体12を検出するための本発明によるライダー測定装置10を模式的に示す。図示された例示実施形態では、ライダー測定装置10は、車両14に一体化される。車両14の環境における物体12は、例えば、他の車両、静止物体(道路標識、家屋、樹木など)又は他の道路使用者(歩行者、自転車に乗る人など)であり得る。ライダー測定装置10は、好ましくは、車両14のバンパーの領域に搭載され、特に、車両の前方における車両14の環境を評価することができる。例えば、ライダー測定装置10は、フロントバンパーに一体化され得る。
【0027】
本発明によるライダー測定装置10は、ライダー受信ユニット16及びライダー送信ユニット18を備える。またさらに、ライダー測定装置10は、ライダー測定装置10の視野を調整する読取り装置20を備える。
【0028】
好ましくは、ライダー受信ユニット16及びライダー送信ユニット18の双方が、焦点面アレイ構成において設計される。各装置の素子は、対応するチップ上において実質的に平面内に配置される。ライダー受信ユニット又はライダー送信ユニットのチップは、対応する光学系(送信光学系又は受信光学系)の焦点に配置される。特に、ライダー受信ユニット16のセンサ素子又はライダー送信ユニット18の送信素子は、それぞれの受信光学系又は送信光学系の焦点に配置される。これらの光学系は、例えば、光学レンズ系によって構成され得る。
【0029】
ライダー受信ユニット16のセンサ素子は、好ましくは、SPAD(単一光子アバランシェダイオード)として構成される。ライダー送信ユニット18は、レーザ光又はレーザパルスの送信のための複数の送信素子を備える。送信素子は、好ましくはVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)として構成される。ライダー送信ユニット18の送信素子は、送信チップの領域にわたって分散される。ライダー受信ユニット16のセンサ素子は、受信チップの領域にわたって分散される。
【0030】
送信光学系は送信チップに割り当てられ、受信光学系は受信チップに割り当てられる。光学系は、各チップ上に到達する空間領域からの光を表す。空間領域は、物体12について検査又は検知される、ライダー測定装置10の視野範囲に対応する。ライダー受信ユニット16又はライダー送信ユニット18の空間領域は、実質的に同一である。送信光学系は、空間領域の部分領域を表す立体角に対する送信素子を表す。これにより、送信素子は、レーザ光をこの立体角内に送信する。送信素子は、空間領域全体を包含する。受信光学系は、空間領域の部分領域を構成する立体角に対するセンサ素子を表す。全てのセンサ素子は、空間領域全体を包含する。同じ立体角とみなされる送信素子及びセンサ素子は、相互に対してマッピングされ、したがって相互に対して割り当てられ又は対をなす。送信素子のレーザ光は、通常は常に、関連するセンサ素子に存在する。有利には、複数のセンサ素子が、送信素子の立体角内に配置される。
【0031】
空間領域内での物体12の特定又は検出のために、ライダー測定装置10は、測定処理を実行する。そのような測定処理は、測定システム及びその電子機器の構造設計に応じて1以上の測定サイクルを含む。好ましくは、ここでは、読取り装置20には、TCSPC法(時間相関単一光子計数法)が用いられる。ここでは、個々の入射光子が、特にSPADによって検出され、センサ素子の活性化の時刻(検出時)が記憶素子に蓄積される。検出時は、レーザ光が送信される基準時との関係にある。差分から、レーザ光の伝搬時間が確定可能であり、それにより、物体12の距離が特定可能となる。
【0032】
ライダー受信ユニット16のセンサ素子は、一方でレーザ光に対して、他方で環境放射に対して活性化され得る。レーザ光は物体12の所定距離において常に同じ時間で入射するが、環境放射はセンサ素子を活性化する同様の可能性を任意の時間で与える。測定、特に複数の測定サイクルの複数回の実行によって、センサ素子の活性化が、物体の距離に対するレーザ光の伝搬時間に対応する検出時毎に追加されていく。比較により、環境放射による活性化は、測定サイクルの測定継続期間にわたって均一に分布されていく。測定は、レーザ光の送信及びその後の検出に対応する。記憶素子に蓄積される測定処理の個々の測定サイクルのデータは、物体12の距離を推定するために、複数回特定された検出時の評価を可能とする。
【0033】
センサ素子は、有利にはTDC(時間/デジタル変換器)によって接続される。TDCは、センサ素子の活性化の時刻を記憶素子に蓄積する。そのような記憶素子は、例えば、短期メモリ又は長期メモリとして構成され得る。測定処理について、TDCは、センサ素子が入射光子を検出する時刻を記憶素子に入力していく。これは、記憶素子のデータに基づくヒストグラムによってグラフィカルに表現され得る。ヒストグラムでは、測定サイクルの継続期間が非常に短い時間区間(いわゆるビン)に分割される。センサ素子が活性化されると、TDCは、ビンの値を1だけ増分する。レーザパルスの伝搬時間、したがって、検出時と基準時の差分に対応するビンが入力されていく。
【0034】
図2に、光パルスの信号伝搬時間を特定するための本発明による読取り装置20を模式的に示す。読取り装置20は、入力インターフェース22、重み付け部24、加算部26、伝搬時間部28及び出力部30を備える。各部及びインターフェースは、ソフトウェア及び/又はハードウェアで個々に又は組み合わせて実現又は実施可能である。特に、各部は、ライダー測定装置のプロセッサ上に実現されるソフトウェアで実施可能である。
【0035】
ライダー受信ユニットの複数のセンサ素子の検出値が、入力インターフェース22を介して受信される。特に、検出値は、複数のセンサ素子を有するマクロセルで受信される。検出値は、ここでは、センサ素子における入射光子の時間に対応し得る。検出値は、ここでは、一方では登録された環境光(ノイズ)に起因して、他方では物体上でのライダー送信ユニットの反射光パルスに起因してもたらされる。
【0036】
各個々のセンサ素子に対する重み付け部24では、個々の重み付けパラメータが決定される。この重み付けパラメータは、特に、マクロセルについて又は測定について、ヒストグラムの生成においてこのセンサ素子がどの程度考慮されるかを示す。重み付け部24は、ここでは、伝搬時間において、したがってライダー測定装置の動作中に、個々の重み付けパラメータを決定するために、さらにサービス導入前に重み付けパラメータの1回の確定のために構成され得る。
【0037】
基本的には、本発明によると、送信素子に共に割り当てられた複数のセンサ素子についての最大比合成を用いることが提案される。重み付け部24は、ここでは、個々の重み付けパラメータを決定するように構成され、それらの重み付けパラメータは個々のセンサ素子の信号対ノイズ比に依存する。特に、重み付けは、信号レベルの実効値に比例して、かつノイズレベルに反比例して使用され得る。重み付け部24では、重み付け係数は、各受信経路について、したがって各センサ素子について個々に決定される。
【0038】
重み付けパラメータを決定するために、一方では、遠位場における信号強度(平方根)が較正段階においてマクロセルの全てのセンサ素子について特定可能である。このために、スポット位置の測定は、工場での較正において実行されてもよい。さらに、連続的にそれぞれ信号対ノイズ比を特定することができるように、個々のセンサ素子を活性化することもできる。基本的には、ノイズレベルは、環境光に依存し、例えば、レーザパルスの送信前にそれぞれ特定され得る。スポットの遠位場位置内のセンサ素子は、重み付けされて追加されていく。スポット位置の外側のセンサ素子は、オフされてもよい。
【0039】
加算部26では、ヒストグラムが、検出値の検出時に対する検出値の割当てによって生成される。センサ素子又はセンサ素子の検出値の加算は、イベントに基づく。各センサ素子は、光子の検出に応じてバイナリ出力信号を生成する。入射の時刻が特定され、ヒストグラムに記録される。ヒストグラムの生成に応じて、直前に決定された個々の重み付けパラメータが考慮される。
【0040】
特に、全ての検出値が、共通のヒストグラムにおいて直接記憶可能である。ここで、重み付けは、特に、整数の重み付け係数に基づいて行われてもよい。高い信号対ノイズ比のセンサ素子の検出は、例えば、ヒストグラムの対応するビンに4の増分を生成し得る(重み付け係数4)。中程度の信号対ノイズ比のセンサ素子の検出は、ヒストグラムの対応するビンに2の増分を生成し得る(重み付け係数2)。低い信号対ノイズ比のセンサ素子の検出は、例えば、ヒストグラムの対応するビンに1の増分を生成し得る(重み付け係数1)。スポット位置の外側にあるセンサ素子は、例えば、無視されてもよい。
【0041】
これに対して代替的に、低い信号対ノイズ比のセンサ素子の検出値を破棄することによって重み付けが実行可能である。個々の検出値の破棄は、単純なカウンタによって、又はどの検出値が破棄されるべきかを示す計数用係数に基づいて実現可能である。例えば、高い信号対ノイズ比のセンサ素子は、ヒストグラムの対応するビンの増分をイベント毎に活性化させ得る(計数用係数1)。例えば、中程度の信号対ノイズ比のセンサ素子は、ヒストグラムの対応するビンの増分を1つおきの検出において活性化させ得る(計数用係数2)。例えば、低い信号対ノイズ比のセンサ素子は、ヒストグラムの対応するビンでの1の増分を4回目のイベント毎に生成させ得る(計数用係数4)。
【0042】
整数の計数用係数及び重み付け係数、特に2の累乗の使用は、ハードウェアの観点で特に有利に実現可能となる。計数用係数の使用は、ここでは、より一層効率的に実施可能であるが、適用可能である場合には、高い信号対ノイズ比のセンサ素子の検出値が破棄されて考慮されないため、より低い性能をもたらす。
【0043】
同様に、各センサ素子に対してそれぞれ別個に作成された複数の部分的なヒストグラムが追加されるように、ヒストグラムを生成することができる。重み付けパラメータに基づくヒストグラムのビンの内容の重み付けが実行可能となる。
【0044】
伝搬時間部28では、信号伝搬時間が、生成されたヒストグラムに基づいて特定される。これのために、特に、ヒストグラムの高い点が検出され得る。高い点は、最高信号強度の時間に対応し、したがって物体における光パルスの反射の位置に対応する。
【0045】
特定された信号伝搬時間は、出力部30を介して出力される。特に、その後に物体の位置特定が行われ得る。
【0046】
図3に、ライダー送信ユニット18の構造を模式的に示す。チップは、アレイ(行列)状に配置された複数の送信素子32を備える。例えば、数千個の送信素子が使用され得る。送信素子32は、好ましくは行毎に活性化される。より簡潔にするため、1つの送信素子32のみに符号を付す。
【0047】
図示する例示実施形態では、行0・・・ny-1は、それぞれ複数の送信素子0・・・nx-1を備える。例えば、100行(ny=100)及び行毎に128個の送信素子(nx=128)が設けられ得る。行間の行間隔A1は、数マイクロメートル、例えば、40μmの領域にあればよい。同じ行における送信素子32間の素子間隔A2は、同程度の大きさにあればよい。
【0048】
図4では、合計10個のセンサ素子36a~36jを有するマクロセル34を模式的に示す。さらに、スポット位置38を、ついてはライダー送信ユニットの送信素子に対応するスポットの位置を模式的に示す。スポットは、通常、ここでは、少なくとも概ねガウススポットプロファイルを有する。
図4の図示では、スポット位置38の2つの同心円によって、信号強度がこのスポットプロファイル内で外向きにどれだけ減少するかが示される。図示するように、スポットの中心点はセンサ素子36eにあり、したがってマクロセル34の中心点の外側にある。したがって、センサ素子36eは、最も高い信号成分を有することになる。本発明によると、センサ素子36a~36jにそれぞれ割り当てられた個々の重み付け係数によって、それらのセンサ素子がヒストグラムの生成においてどの程度重く重み付けられるのかが確立される。図示する例では、センサ素子36g及び36jは、0の重み付けで考慮され、ヒストグラムの確定には含まれない。センサ素子36eは4倍に重み付けされてもよく、センサ素子36a、36b及び36は2倍に重み付けされてもよく、残余のセンサ素子は1倍に重み付けされてもよい。
図4の図示及び上記重み付けは、ここでは例として理解されるべきである。他の個数のセンサ素子がマクロセルに配置されてもよく、他の重み付けが用いられてもよいことが理解されるべきである。
【0049】
図5に、本発明による方法を模式的に示す。方法は、検出値の受信ステップS10、個々の重み付けパラメータの各決定ステップS12、ヒストグラムの生成ステップS14、信号伝搬時間の特定ステップS16、及び信号伝搬時間の出力ステップS18を備える。方法は、例えば、ライダー測定装置のプロセッサで実行されるソフトウェアにおいて実施可能である。
【0050】
本発明を図面及び説明の補助とともに包括的に記載及び説明した。記載及び説明は、例として理解されるべきであり、限定的なものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。他の実施形態又は変形例が、本発明の適用に際して並びに図面、開示及び以降の特許請求の範囲の正確な分析において当業者に想到される。
【0051】
特許請求の範囲において、文言「備える」及び「有する」は、更なる素子/要素又はステップの存在を排除しない。不定冠詞「a」又は「an」は、複数の存在を排除しない。個々の素子/要素又は個々のユニット/部は、特許請求の範囲において列挙された幾つかのユニット/部の機能を実行することができる。素子/要素、ユニット/部、インターフェース、装置及びシステムは、ハードウェア及び/又はソフトウェアにおいて部分的又は完全に実施可能である。幾つかの異なる従属請求項における一部の規定の単なる列挙は、それらの規定の組合せが同様に有利には使用できない旨と理解されるべきではない。特許請求の範囲における符号は、限定的なものとして理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0052】
10 ライダー測定装置
12 物体
14 車両
16 ライダー受信ユニット
18 ライダー送信ユニット
20 読取り装置
22 入力インターフェース
24 重み付け部
26 加算部
28 伝搬時間部
30 出力部
32 送信ユニット
34 マクロセル
36a~36j センサ素子
38 スポット位置
【国際調査報告】