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特表2022-538865リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(54)【発明の名称】リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の調製
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20220830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K31/704
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577269
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020039620
(87)【国際公開番号】W WO2020264160
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/868,184
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518000729
【氏名又は名称】ボード オブ レジェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 W. 7th Street,Austin,TX 78701,U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】521564065
【氏名又は名称】モレキュリン バイオテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MOLECULIN BIOTECH, INC.
【住所又は居所原語表記】5300 Memorial Drive, Suite 950, Houston, TX 77007, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド ピッカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデマル プリーベ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076DD09
4C076DD63
4C076EE23
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA55
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の製造方法、この方法により製造される組成物、及びそれにより製造される組成物の、がんの治療における使用を提供する。より具体的には、凍結乾燥されたアナマイシンの製造方法は、アナマイシン、1種又は複数種の脂質、1種又は複数種の非イオン性界面活性剤、及び1種又は複数種の溶媒を含む溶液を作製するステップと、アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;アナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥させることによりリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥されたアナマイシンの製造方法であって、
1種又は複数種の脂質、1種又は複数種の非イオン性界面活性剤、及び1種又は複数種の溶媒を含み、pHが4.8~5.9である溶液を作製するステップと;
前記脂質溶液に、DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含むアナマイシン溶液を加えることにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
前記アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
前記アナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥させることにより、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
凍結乾燥されたアナマイシンの製造方法であって、
水及びt-ブタノールを含む第1溶液であって、水対t-ブタノールの比が約8:2~約9:1である第1溶液を作製するステップと;
1種又は複数種の脂質及び1種又は複数種の非イオン性界面活性剤を前記第1溶液に添加することにより、第2溶液を生成するステップと;
前記第2溶液のpHを、pHが4.8~5.9となるように調整するステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第3溶液を前記第2溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
前記アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
前記アナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥させることにより、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記第2溶液は、DMPC、DMPG、及びポリオキシエチレンソルビタン界面活性剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2溶液は、DMPC、DMPG、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2溶液のpHは、HCl及びHSOからなる群から選択される医薬的に許容される酸を用いて5.3±0.2に調整される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第3溶液は、DMSO中にアナマイシンを約10wt%含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂質のそれぞれ及び前記界面活性剤のそれぞれは、別々に添加される、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
DMPC、DMPG、及びポリオキシチレン(polyoxythylene)ソルビタンモノラウレートは、前記第1溶液に順次添加される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物は、アナマイシンを1.8~2.2wt%と;ポリソルベート20を3.0~3.4wt%と;DMPC及びDMPGから選択される脂質を94.4~95.2wt%とを含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
生成した前記凍結乾燥物中の前記アナマイシンの純度は、少なくとも98%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
生成した前記凍結乾燥物中の前記アナマイシンの純度は、少なくとも99%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
まず前記第2溶液のpHをpH5.3±0.2に調整した後、前記溶液を少なくとも15分間平衡化させることと;
前記pHを測定し、前記pHが5.3を超えていた場合は前記pHを酸で調整することと;
前記溶液を少なくとも15分間平衡化することと;
前記pHを測定するステップ、前記pHを調整するステップ、及び前記溶液のpHがpH5.3±0.2のままとなるまで前記溶液を平衡化するステップ、を繰り返すことと
を更に含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記pHの調整に使用される前記酸は、HCl及びHSOから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2溶液は、酸を添加する度に少なくとも30分間平衡化される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
各溶液は、凍結乾燥が開始されるまで約38℃~約42℃の温度に維持される、請求項2~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の製造方法であって、
DMPC、DMPG、及びポリソルベート20を、事前に加温された水及びt-ブタノールの混合物に添加することにより第1溶液を調製するステップであって、事前に加温される温度は約35℃~約42℃であり、水対t-ブタノールの比は約8:2~約9:1である、ステップと;
第1溶液のpHを1種又は複数種の医薬的に許容される酸を用いて、溶液のpHが約15~90分間一定のままとなるように調整するステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第2溶液を前記第1溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
前記アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
前記脂質含有溶液を個々に分取して凍結乾燥させることにより、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記第2溶液は、DMSO中にアナマイシンを約10wt%含み、前記pHは、5.3±0.2である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法により調製されるリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の組成物であって、アナマイシンと、1種又は複数種の脂質と、1種又は複数種の非イオン性界面活性剤と、を含む、組成物。
【請求項19】
アナマイシンを1.8~2.2wt%と;ポリソルベート20を3.0~3.4wt%と;DMPC及びDMPGから選択される脂質を94.4~95.2wt%とを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記DMPCは65.3~67.3wt%であり、前記DMPGは27.1~29.9wt%である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
生成した前記凍結乾燥物中の前記アナマイシンの純度は少なくとも98%である、請求項18~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
がんの治療方法であって、請求項1~17のいずれか一項に従い製造される前記リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を再構成することにより調製される有効量のリポソーム化アナマイシンを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記患者はヒトであり、前記がんは白血病及びリンパ腫からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年6月28日に出願された米国仮出願第62/868,184号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に記載されているかの如く参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
アナマイシン(Annamycin)はがんの化学療法剤であり、アントラセン構造を有する一群(anthracene structural family)に属する。その物理的及び薬理学的特性に従い、アナマイシンを剤形化するための組成物が記載されており、この薬物はリポソームとして製剤化されている(米国特許第7,238,366号明細書参照)。リポソーム化アナマイシン(liposomal Annamycin)に関しては、成人の再発難治性急性リンパ芽球性白血病患者(M.Wetzler,et al.,Clinical Lymphoma,Myeloma and Leukemia,13(4),430-434 August 2013)及びドキソルビシン耐性乳がんの治療における(D.J.Booser et al.,Cancer Chemother.Pharmacol.50;6-8,2002)臨床試験が記載されている。
【0003】
薬物送達系において、正確な投与量を確実に投与し、したがって、最も効果的な治療を施しながら、不純物により引き起こされる望まない副作用を回避することを目的として、純度及び品質が一定した製剤の製造が可能になることが望ましい。更に、維持の仕方が悪かったり、又は製剤化が不適切であったりした医薬品原料体(drug material)は、投与する前に分解して効果を失う可能性があり、その結果として高価な原薬が無駄になる。規制基準においても、ラベルに指定された手順に従うことにより、薬物の純度及び薬物の量が一定の水準で提供されることが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナマイシンの製剤化は、その固有の物理的特性のため、並びに特定の条件下においては親薬物及びリポソーム化製剤がどちらも本来不安定であるため、特に難しい課題である。アナマイシンのリポソーム化製剤は、分解してアナマイシンの結晶を形成し、及び/又は大きなリポソームを形成するか若しくは相分離するために、製剤が投与に適さないものになることが多い。したがって、純度が確保されると共に分解が回避されるリポソーム化アナマイシン前駆体の剤形を製剤化する安定した方法が見出されると有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
凍結乾燥されたアナマイシンの作製方法であって、
1種又は複数種の脂質、1種又は複数種の非イオン性界面活性剤、及び1種又は複数種の溶媒を含み、pHが4.8~5.9である溶液を作製するステップと;
この脂質溶液に、DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含むアナマイシン溶液を加えることにより、アナマイシンの脂質含有溶液(lipid containing solution of Annamycin)を得るステップと;
このアナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
このアナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥させることにより、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む方法を提供する。
【0006】
凍結乾燥されたアナマイシンの製造方法であって、
水及びt-ブタノールを含む第1溶液であって、水対t-ブタノールの比が約8:2~約9:1である第1溶液を作製するステップと;
1種又は複数種の脂質及び1種又は複数種の非イオン性界面活性剤を第1溶液に添加することにより、第2溶液を生成するステップと;
第2溶液のpHを、pHが4.8~5.9となるように調整するステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第3溶液を第2溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥させることにより、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む方法を提供する。
【0007】
リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の製造方法であって、
DMPC、DMPG、及びポリソルベート20を、事前に加温された水及びt-ブタノールの混合物に添加することにより、第1溶液を調製するステップであって、事前に加温される温度は約35℃~約42℃であり、水対t-ブタノールの比は約8:2~約9:1である、ステップと;
第1溶液のpHを、医薬的に許容される酸を用いて、溶液のpHが少なくとも15分間一定のままとなるように調整するステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第2溶液を第1溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を、個々に分取して凍結乾燥させることにより、リポソーム化前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む方法も提供する。
【0008】
本明細書に記載するいずれかの方法により調製されるリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物も提供する。
【0009】
がんの治療方法であって、本明細書に記載するいずれかの方法により調製されたリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を使用して調製された有効用量のリポソーム化アナマイシンを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法も提供する。
【0010】
本明細書に記載するいずれかの方法に従い調製されたリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の、がんを治療するための医薬の製造における、使用も提供する。
【0011】
がんの治療における使用のための、本明細書に記載するいずれかの方法に従い調製されたリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
改善された安定性及び高純度を有するリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を作成する方法を提供する。このリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物組成物は、その全体をあらゆる目的のために本明細書に参照により組み込む、例えば、米国特許第7,238,366号明細書に記載されているように水和することにより、再構成して水性リポソーム組成物にすることができ、次いで、がんの治療に使用される。
【0013】
特段の定めがない限り、本明細書において使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0014】
本明細書において使用する以下の用語は、次に定義する意味を有する。
【0015】
「アナマイシン」という語は、次に示す構造:
【化1】

を有する化合物である(7S,9S)-7-(((2R,3R,4R,5R,6S)-4,5-ジヒドロキシ-3-ヨード-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6,9,11-トリヒドロキシ-9-(2-ヒドロキシアセチル)-7,8,9,10-テトラヒドロテトラセン-5,12-ジオンを意味するものとする。
【0016】
「高純度リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物」という語は、検証済みの標準試料を用いたHPLCにより、アナマイシンが95%以上であると分析された材料の純度を意味するものとする。幾つかの実施形態において、アナマイシンの純度は、少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%である。
【0017】
「リポソーム」、「リポソーム化(liposomal)」、及びこれらに類する語は、脂質、脂肪酸、脂質二分子層型構造、一枚膜小胞体、及びアモルファス脂質小胞体(amorphous lipid vesicle)を含む略球状構造を意味するものとする。古典的には、リポソームは、ある体積の水性物質(aqueous volume)を内包する完全に閉じられた脂質二分子層膜である。リポソームは、アナマイシンが二分子層の内側にあっても、二分子層の一部であっても、及び二分子層に吸収されていてもよい、非古典的な形態を包含する。リポソームは、一枚膜小胞体(単一の二分子層膜を有する)であっても、又は多重膜小胞体(それぞれ、水性の層によって隣接する層から分離された複数の二分子層膜を特徴とするタマネギ様構造)であってもよい。二分子層は、疎水性の「尾部」領域及び親水性の「頭部」領域を有する2つの脂質単分子層(monolayer)から構成される。二分子層膜は、脂質単分子層の疎水性(無極性)の「尾部」が二分子層の中心方向に向き、親水性の「頭部」が水層方向に向くような構造をとる。
【0018】
「リポソーム前駆体(preliposome)-凍結乾燥物」及び「リポソーム化前駆体凍結乾燥物」という語は、水溶液を添加するとリポソームを形成することになる非水性材料を意味するものとする。幾つかの実施形態において、非水性材料は、乾燥した(非液体、非ゲルのような)材料である。凍結乾燥物は、凍結した液体を不揮発性材料から昇華させることによる乾燥残渣、回転蒸発及び類似の手順による残渣、並びに水性層を添加すると(撹拌有り又は撹拌無しで)リポソームが得られることになる乾燥組成物を包含するように、包括的な意味で使用される。特に、「リポソーム前駆体-凍結乾燥物」は、凍結乾燥後にリポソーム化形態にないものと理解すべきである。
【0019】
「脂質」という語は、脂肪酸又はその誘導体である医薬的に許容される有機化合物の分類のいずれかを指す。幾つかの実施形態において、脂質は、DMPC及びDPMGを含むホスファチジルコリン等のリン脂質であるが、卵のホスファチジルエタノールアミン等の他の脂質も含むことができる。
【0020】
「非イオン性界面活性剤」という語は、共有結合している酸素を含む親水性基を有し、これが疎水性の親構造に結合している、医薬的に許容される界面活性剤を指す。好適な非イオン性界面活性剤としては、エトキシル化物、脂肪アルコールエトキシル化物、アルクルフェノール(alklphenol)エトキシル化物、脂肪酸エトキシル化物、エトキシル化脂肪エステル及び油、エトキシル化アミン、脂肪酸アミド、末端封止されたエトキシル化物、ポロキサマー、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル、並びにソルビトールの脂肪酸エステルが挙げられる。幾つかの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ソルビタンをエトキシル化した後、カルボン酸を付加することにより生成する、ポリソルベート型界面活性剤である。幾つかの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)及びモノオレイン酸ポリエトキシル化ソルビタン(ポリソルベート80)を含む。
【0021】
「ポリソルベート20」は、異なる鎖長のポリオキシエチレンの混合物が結合している一般的なソルビタン糖から構成される、市販の非イオン性界面活性剤(ICI Americas Inc.)を指す。このポリオキシエチレン糖は脂肪酸にも結合している。この材料の商品名はTween(商標)20であり;組成はポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(MW約1300)である。ポリソルベート20として、次を示す。w+x+y+z=20である。
【化2】
【0022】
「医薬的に許容される酸」という語は、当該技術分野において、忍容性が高く、ヒトの患者に投与するのに適していることが知られている、任意の有機及び無機酸を指す。この種の塩として、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2、2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファー酸(+)、カンファー-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸(DL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(DL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロプリオニック酸(proprionic acid)、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、ウンデシレン酸が挙げられる。医薬的に許容される酸としては、塩酸及び硫酸が挙げられる。
【0023】
上の項では多くの略語及び頭字語を使用した。これらの完全表記を次に示す。
DMPC ジミリストイルホスファチジルコリン
DMPG 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(ナトリウム塩)
DMSO ジメチルスルホキシド
IV 静脈内
DEHP フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
PVC ポリ塩化ビニル
WPI 注射用水(USP)
【0024】
本明細書及びその後に続く特許請求の範囲全体を通して、文脈上、他のことが要求されない限り、「含む(comprise)」という単語又は変化形である「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、記述された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むことを示すが、他の任意の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を排除しないと理解すべきである。本明細書において、そのような指定された範囲を記載した場合、記載した範囲は、記載した範囲の間にある全ての具体的な整数量も含むことを意図している。例えば、約35~42℃の範囲には、35、36、37、38、39、40、41、及び42℃も包含されることが意図されている。
【0025】
本特許明細書に述べた各米国特許及び国際特許出願の全開示内容を完全に、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込む。
【0026】
純度及び安定性が非常に高いリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の作製方法を提供する。特に、凍結乾燥したアナマイシンの作製方法であって、
水及びt-ブタノールを含む第1溶液であって、水対t-ブタノールの比が約8:2~約9:1である第1溶液を作製するステップと;
1種又は複数種の脂質及び1種又は複数種の非イオン性界面活性剤を第1溶液に添加することにより、第2溶液を生成するステップと;
第2溶液のpHを、pHが4.8~5.9となるように調整するステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第3溶液を第2溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥させることにより、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を得るステップと
を含む方法を提供する。
【0027】
幾つかの実施形態において、第2溶液は、DMPC、DMPG、及びポリオキシエチレンソルビタン界面活性剤を含む。幾つかの実施形態において、第2溶液は、DMPC、DMPG、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、各脂質及び各非イオン性界面活性剤は、別々に添加される。
【0029】
幾つかの実施形態において、DMPC、DMPG、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートは、第1溶液に順次添加される。
【0030】
幾つかの実施形態において、この方法は、第2溶液のpHを、HCl及びHSOからなる群から選択される医薬的に許容される酸を用いて5.3±0.2に調整することを含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、この方法は、DMSO中にアナマイシンを約10wt%含む第3溶液を第2溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得ることを含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物は、アナマイシンを1.8~2.2wt%と;ポリソルベート20を3.0~3.4wt%と;DMPC及びDMPGから選択される脂質を94.4~95.2wt%とを含む。幾つかの実施形態において、DMPCは65.3~67.3wt%であり、DMPGは27.1~29.9wt%である。
【0033】
幾つかの実施形態において、生成する凍結乾燥物中のアナマイシンの純度は少なくとも98%である。幾つかの実施形態において、生成する凍結乾燥物中のアナマイシンの純度は少なくとも99%である。
【0034】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥されたアナマイシンの作製方法であって、
水及びt-ブタノールを含む第1溶液であって、水対t-ブタノールの比が約8:2~約9:1である第1溶液を作製するステップと;
1種又は複数種の脂質及び1種又は複数種の非イオン性界面活性剤を第1溶液に添加することにより、DMPC、DMPG、及びポリソルベート20を含む第2溶液を生成するステップと;
第2溶液のpHを、pHが5.3±0.2となるように調整するステップと;
この溶液を少なくとも15分間平衡化するステップと;
pHを測定し、pHが5.3を超えていた場合は酸でpHを調整するステップと;
この溶液を少なくとも15分間平衡化するステップと;
pHを測定するステップ、pHを調整するステップ、及び溶液のpHがpH5.3±0.2のままとなるまで溶液を平衡化するステップを繰り返すステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第3溶液を第2溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得るステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を凍結乾燥することにより、脂質含有アナマイシン凍結乾燥物を得るステップと
を含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、pHの調整に使用される酸は、HCl及びHSOからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、酸は、1M HCl等のHClである。
【0036】
幾つかの実施形態において、この方法は、アナマイシン含有溶液を添加した後、pHを測定し、必要に応じてpHを5.3±0.2に調整することを更に含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、脂質含有溶液は、酸を添加する度に少なくとも30分間平衡化される。幾つかの実施形態において、脂質含有溶液は、酸を添加する度に約45分間平衡化される。
【0038】
幾つかの実施形態において、各溶液は、凍結乾燥を開始するまで約38℃~約42℃の温度に維持される。
【0039】
幾つかの実施形態において、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物は、
DMPC、DMPG、及びポリソルベート20を、事前に加温された水及びt-ブタノールの混合物に添加することにより第1溶液を調製するステップであって、事前に加温される温度は約35℃~約42℃であり、水対t-ブタノールの比は約8:2~約9:1である、ステップと;
第1溶液のpHを、1種又は複数種の医薬的に許容される酸を用いて、溶液のpHが約15~90分間一定のままとなるように調整するステップと;
DMSO中にアナマイシンを約8~12wt%含む第2溶液を第1溶液に添加することにより、脂質含有溶液を得るステップと;
脂質含有溶液を無菌濾過するステップと;
アナマイシンの脂質含有溶液を、個々に分取して凍結乾燥させることにより、リポソーム化前駆体凍結乾燥物を得るステップと
により製造される。
【0040】
幾つかの実施形態において、この方法は、第1溶液のpHをHCl及びHSOからなる群から選択される医薬的に許容される酸を用いて5.3±0.2に調整することを含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、この方法は、DMSO中にアナマイシンを約10wt%含む第2溶液を第2溶液に添加することにより、アナマイシンの脂質含有溶液を得ることを含む。
【0042】
幾つかの実施形態において、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物は、アナマイシンを1.8~2.2wt%と;ポリソルベート20を3.0~3.4wt%と;DMPC及びDMPGから選択される脂質を94.4~95.2wt%とを含む。幾つかの実施形態において、DMPCは65.3~67.3wt%であり、DMPGは27.1~29.9wt%である。
【0043】
幾つかの実施形態において、生成する凍結乾燥物中のアナマイシンの純度は少なくとも98%である。幾つかの実施形態において、生成する凍結乾燥物中のアナマイシンの純度は少なくとも99%である。
【0044】
本明細書に記載するいずれかの方法により調製され、アナマイシンを1.8~2.2wt%と;ポリソルベート20を3.0~3.4wt%と;DMPC及びDMPGから選択される脂質を94.4~95.2wt%とを含むリポソーム化アナマイシン前駆体の組成物も提供する。幾つかの実施形態において、DMPCは65.3~67.3wt%であり、DMPGは27.1~29.9wt%である。
【0045】
幾つかの実施形態において、リポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の組成物の純度は少なくとも98%である。
【0046】
水/t-ブタノール中にDMPG、DMPC、及びポリソルベート20を含む、pHを調整した溶液に、アナマイシンのDMSO溶液を添加することによる、アナマイシンの脂質含有溶液を調製するプロセスであって、pHは、pH4.8~5.9で15~75分間維持される、プロセスも提供する。他の実施形態において、pHは5.3±0.2に維持される。他の実施形態において、このpHは約45分間維持される。
【0047】
高純度のリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を、個々の実用可能な量(individual practicable quantity)で調製するプロセスであって、予め測定された個々の分取量の脂質含有溶液を約48時間凍結乾燥させることを含む、プロセスも提供する。
【0048】
特定の実施形態は、個々の実用可能な量が、45mgのアナマイシンを含む50mLのバイアル内で調製される、高純度のリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の調製を含む。
【0049】
がんの治療方法であって、本明細書に記載するいずれかの方法により調製されたリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を使用して調製された有効用量のリポソーム化アナマイシンを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法も提供する。
【0050】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載するいずれかの方法に従い調製されたリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物の、がんを治療するための医薬の製造における、使用を提供する。
【0051】
幾つかの実施形態において、がんの治療における使用のための、本明細書に記載するいずれかの方法に従い調製されるリポソーム化アナマイシン前駆体凍結乾燥物を提供する。
【0052】
一般的な実験方法
ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホル(phosphor)-rac-(1グリセロール)]ナトリウム塩(DMPG)を、それぞれ乾燥粉末として、日本国大阪府の日本ファインケミカル株式会社(Nippon Fine Chemicals,Inc.)から入手した。
【0053】
アナマイシン(純度>95%)(MW=640.39)を、先に記載されたように(僅かに修正して)合成した(Horton,D.,Priebe,W、4-デメトキシ-3’-デスアミノ-2’-ハロ-アントラサイクリン及びそれを含む医薬組成物(4-demethoxy-3’-desamino-2’-halo-anthracyclines and pharmaceutical compositions containing same)、米国特許第4,537,882号明細書、1985)。
【0054】
ポリソルベート20、DMSO、クロロホルム、及びt-ブチルアルコールを、Aldrich Chemical Company,Inc.,Milwaukee,Wisから入手した。生理食塩水をAbbott Laboratories,North Chicago,Illから入手した。
【0055】
投与量及び投与経路
アナマイシンのリポソーム化前駆体凍結乾燥物粉末を、通常は投与当日に、有効用量のリポソーム化アナマイシンを調製するために使用して、例えば、非PVC IVバッグ内の生理食塩水中に懸濁させる。リポソーム化溶液の安定性のためには、薬物をリポソーム化前駆体凍結乾燥物として投与直前まで低温で保存(凍結させて-80℃~0℃で保存)することが必要であり、一旦形成した後は24時間以内に使用し、使用しなかった場合は廃棄すべきである。リポソーム化アナマイシンは、がんを治療する方法及び哺乳動物、特に、ヒトにおける腫瘍の成長を抑制する方法に使用される。治療され得るがんとしては、白血病及びリンパ腫が挙げられる。特に、アナマイシンは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)等の白血病の治療に使用することができる。リポソーム化アナマイシンは、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫の治療に使用することができる。
【0056】
この方法は、哺乳動物に有効量の医薬組成物(drug composition)を投与することを含む。投与ステップは、好適には、非経口的に、静脈内、動脈内、筋肉内、リンパ管内、腹腔内、皮下、胸膜腔内、髄腔内注射によるか又は局所的適用による投薬により投与することができる。幾つかの実施形態において、この種の投与は、腫瘍の縮小又は消失が達成されるまでの反復投与レジメンであり、異なる薬剤を用いる外科処置又は化学療法等の腫瘍治療の形態と組み合わせて用いることができる。幾つかの実施形態において、投与される組成物の用量は、投与される対象の哺乳動物に対し約125~280mg/mの間にある。
【実施例
【0057】
ここで、以下に示す実施例をほんの一例として、実施形態を説明する。
【0058】
一般手順
実施例1 アナマイシンリポソーム凍結乾燥物前駆体の調製
t-ブタノール及びWFI(注射用水)を使用前に湯浴で40℃±5℃に加温した。
【0059】
t-ブタノール(9181.2g±1%)を15Lのビーカーに加え、撹拌しながら注射用水(WFi、1465.8g±1%)を加えた。この添加を行う間、ビーカーを約40℃に維持した。混合した溶液約2Lを抜き取り、後続のステップで「濯ぎ」洗液として使用するために滅菌されたビーカーに入れた。主(bulk)アルコール/水溶液の撹拌を継続した。
【0060】
ビーカーに入れたDMPC(743.554g±1%)を、主アルコール/水溶液に加えた。DMPCを全て添加した後、「濯ぎ」液の一部(約1/4)を、ビーカーに残存している残留物を洗い流すために使用し、主混合物に加えた。全ての材料が溶解するまで混合物を撹拌した。
【0061】
ビーカーに入れたDMPGナトリウム塩(318.654g±1%)を、主アルコール/水溶液に加えた。DMPGを全て添加した後、「濯ぎ」液の一部(約1/4)をビーカーに残存している残留物を洗い流すために使用し、主混合物に加えた。全ての材料が溶解するまで混合物全体を撹拌した。
【0062】
100mLビーカーに入れたポリソルベート20(36.12g±1%)を、主溶液に慎重に分割して加えた。ポリソルベート20を全て添加した後、「濯ぎ」液の一部(約1/4)をビーカーに残存している残留物を洗い流すために使用し、主混合物に加えた。全ての材料が溶解するまで混合物全体を撹拌し、40±5℃に維持した。
【0063】
主溶液のpHを測定し、1.0M HClで5.3±0.2に調整した。pHを2~3分間隔で測定し、再び1.0M HClで5.3±0.2に調整した。このステップを混合物のpHが2~3分間に亘り一定のpHである約5.3±0.2のままとなるまで繰り返した。次いで溶液を45分間撹拌し、pHを再び調べ、必要に応じて1.0M HClでpH5.3±0.2に調整した。混合物を更に45分間撹拌した後、pHを測定した。必要に応じて、pHを調整する手順を、2~3分間撹拌した後のpHの読み取り値がpH5.3±0.2になるまで継続した。pHが最初の読み取り値から変化しなくなったら、主溶液は更なる処理に用いる準備ができた状態にある。そうならない場合、このステップをpHが約45分間に亘りpH5.3±0.2のままとなるまで繰り返した。
【0064】
アナマイシン(THF複合体として)を米国特許第977,327号明細書(実施例VIII、第7~8欄)の手順に従い精製された形態(HPLCにより>98%)で調製した。
【0065】
滅菌されたビーカー内で、アナマイシン(THF複合体、API 23.16g±1%)にDMSO(234.08g±1%)を加え、材料が溶解するまで撹拌した。DMSO/API溶液を主溶液に撹拌しながら加え、残っている「濯ぎ」液を全て主溶液に直接加え、撹拌を継続した。
【0066】
この溶液を、0.2ミクロンの滅菌フィルタを2回通過させた。濾過された生成物の溶液を周囲温度で一晩保存した。生成した溶液のバルク体積は約13.83Lであった。
【0067】
濾過した生成物溶液(25mL、処理中に行う試験の一部として実施した密度試験から求められた重量による)を、50mLの透明なガラス製凍結乾燥バイアルに充填した。凍結乾燥を48時間実施することにより、DMSO、t-ブチルアルコール、及び水を全て除去し、リポソーム化前駆体粉末を得た。
【0068】
凍結乾燥された粉末のアナマイシンの純度を、検証済みの標準試料を使用したHPLCにより測定した。
【0069】
本発明を具体的な実施形態及び実施例を参照しながら説明してきたが、当業者は、その主旨及び範囲から逸脱することなく本発明に様々な修正を施すことが可能であることを認識している。
【0070】
本明細書に引用した特許、特許出願、及び刊行物を含む全ての参考文献の全体を、既に具体的に組み込まれていたか否かに関わらず、参照により本明細書に組み込む。
【0071】
上の個々の項で言及した本発明の様々な特徴及び実施形態は、適切であれば、必要な変更を加えて他の項に適用される。したがって、1つの項で特定された特徴は、適切であれば、他の項で特定された特徴と組み合わせることができる。
【0072】
一部の特定の実施形態に関する上の記載は、他者が現在の知識を適用することにより、そのような特定の実施形態を、上位概念から逸脱することなく、様々な用途のために容易に修正又は適合させることができるような充分な情報を提供しており、したがって、そのような適合及び修正は、開示した実施形態の意味及び均等な範囲内にあると理解すべきであり、そのように意図されている。本明細書において用いられている言い回し又は専門用語は、説明のみを目的としており、限定を目的とするものではないことを理解すべきである。図面及び明細書本文において、例示的な実施形態を開示し、特定の用語を使用しているが、これらは、別段の指定がない限り、一般的及び説明的な意味でのみ使用しており、特許請求の範囲を限定することを目的で使用しているのではない。更に当業者は、本明細書において議論した方法の特定のステップが、代替的な順序で配列することができ、又はステップを組み合わせることができることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に開示した具体的な実施形態に限定されないことが意図されている。当業者は、本明細書に記載した本発明の実施形態の多くの均等物を認識するか又は定型的な実験の範囲を超えることなく確認することができるであろう。この種の均等物は以下に示す特許請求の範囲に包含される。
【国際調査報告】