IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー、デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズの特許一覧

特表2022-539589EGFRvIIIと結合するモノクローナル抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】EGFRvIIIと結合するモノクローナル抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220905BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220905BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220905BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220905BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220905BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220905BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220905BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220905BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28
C07K19/00
C07K16/46
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P25/00
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P27/16
A61P15/00
A61P13/10
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K48/00
A61K38/16
A61K35/17 Z
A61K47/68
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500090
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 US2020040544
(87)【国際公開番号】W WO2021003297
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】62/869,956
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】309004585
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー、デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】THE U.S.A.AS REPRESENTED BY THE SECRETARY,DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド デイビッド ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ホ エリック チュン ヘイ
(72)【発明者】
【氏名】アンティグナーニ アントネラ
(72)【発明者】
【氏名】サーノヴスキー ロバート ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076CC01
4C076CC10
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA33
4C084DA34
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA671
4C084ZA811
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC411
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA04
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA67
4C087ZA81
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
上皮増殖因子受容体(EGFR)バリアント(v)IIIと特異的に結合するモノクローナル抗体および抗原結合断片、それらのコンジュゲート、ならびにキメラ抗原受容体が開示される。抗体の重鎖および軽鎖のドメインならびにキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子も開示され、この核酸分子を発現する宿主細胞も開示される。さらに、例えば、EGFRvIIIを発現する腫瘍の処置のための、これらのモノクローナル抗体、抗原結合断片、コンジュゲート、およびCARを発現するT細胞の使用が開示される。EGFRvIIIを発現する腫瘍を検出するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)それぞれSEQ ID NO:1および2として示される重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(b)それぞれSEQ ID NO:11および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(c)それぞれSEQ ID NO:13および14として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL;または
(d)それぞれSEQ ID NO:15および16として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
該モノクローナル抗体が上皮増殖因子受容体(EGFR)バリアントIII(vIII)と特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
(a)それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(b)それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(c)それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(d)それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(e)それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL;または
(f)それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
を含む、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
(a)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:5、6、7、8、9、および10として示されるアミノ酸配列を含む;
(b)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:20、21、22、23、24、および25として示されるアミノ酸配列を含む;
(c)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:20、28、22、23、24、および25として示されるアミノ酸配列を含む;
(d)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:33、34、35、36、37、および38として示されるアミノ酸配列を含む;
(e)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:47、48、49、50、51、および52として示されるアミノ酸配列を含む;または
(f)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:47、57、49、58、51、および52として示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1または請求項2記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
(a)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む;
(b)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む;
(c)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む;
(d)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む;
(e)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む;
(f)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む;または
(g)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、
前記請求項のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
ヒトフレームワーク領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
(a)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列を含む;
(b)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるアミノ酸配列を含む;
(c)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるアミノ酸配列を含む;
(d)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるアミノ酸配列を含む;
(e)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるアミノ酸配列を含む;
(f)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるアミノ酸配列を含む;または
(g)VHおよびVLが、それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~4のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
ヒト定常ドメインを含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
IgGである、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
抗体の半減期を増加させる修飾を含む組換え定常ドメインを含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
毒素または化学療法剤とコンジュゲートされた、前記請求項のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項11】
毒素が、シュードモナス外毒素(PE)、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、またはボツリヌス毒素である、請求項10記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
毒素がPEであり、PEがPE25、PE38、またはPE40である、請求項11記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項13】
化学療法剤が、モノメチルアウリスタチンEまたはマイタンシノイドである、請求項10記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1~6または10~13のいずれか一項記載の抗原結合断片。
【請求項15】
Fv断片、dsFV断片、ds-scvFV断片、Fab断片、F(ab')2断片、scFV断片、またはscFV2断片である、請求項14記載の抗原結合断片。
【請求項16】
検出可能マーカーとコンジュゲートされた、前記請求項のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項17】
前記請求項のいずれか一項記載の抗原結合断片を含む、キメラ抗原T細胞受容体。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片を含む、二重特異性抗体。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項記載の抗体もしくは抗原結合断片、または抗体もしくは抗原結合断片のVHもしくはVL、または請求項17記載のキメラ抗原T細胞受容体
をコードする、単離された核酸分子。
【請求項20】
(a)それぞれSEQ ID NO:3および4として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列;
(b)それぞれSEQ ID NO:18および19として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列;
(c)それぞれSEQ ID NO:27および19として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列;
(d)それぞれSEQ ID NO:31および32として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列;
(e)それぞれSEQ ID NO:41および42として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列;
(f)それぞれSEQ ID NO:45および46として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列;または
(g)それぞれSEQ ID NO:55および56として示されるVHおよび/またはVLのヌクレオチド配列
を含む、請求項19記載の核酸分子。
【請求項21】
cDNA配列である、請求項19または請求項20記載の核酸分子。
【請求項22】
プロモーターと機能的に連結された、請求項19~21のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項23】
請求項19~22のいずれか一項記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項24】
請求項19~23のいずれか一項記載の核酸分子またはベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項25】
請求項17記載のキメラ抗原T細胞受容体を発現する、単離されたT細胞。
【請求項26】
有効量の、前記請求項のいずれか一項記載の抗体、抗原結合断片、核酸分子、またはベクターと;
薬学的に許容される担体と
を含む、EGFRvIIIを発現する癌の処置において使用するための薬学的組成物。
【請求項27】
EGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片、またはモノクローナル抗体もしくは抗原結合断片を含む二重特異性抗体を作製する方法であって、
請求項1~16のいずれか一項記載の抗体、抗原結合断片、または二重特異性抗体をコードする1つまたは複数の核酸分子を宿主細胞において発現させる工程;および
抗体、抗原結合断片、または二重特異性抗体を精製する工程
を含む、方法。
【請求項28】
ヒト対象に由来する生物学的試料におけるEGFRvIIIの存在を検出する方法であって、以下:
免疫複合体を形成させるために十分な条件の下で、生物学的試料を、有効量の、請求項1~16のいずれか一項記載の抗体または抗原結合断片と接触させる工程;および
生物学的試料における免疫複合体の存在を検出する工程であって、生物学的試料における免疫複合体の存在が試料におけるEGFRvIIIの存在を示す、工程
を含む、方法。
【請求項29】
対象が、神経膠腫、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
生物学的試料が、それぞれ、神経膠腫、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌に由来する生検試料である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
有効量の、請求項1~26のいずれか一項記載の抗体、抗原結合断片、核酸分子、ベクター、T細胞、または薬学的組成物を対象へ投与する工程
を含む、対象における、EGFRvIIIを発現する腫瘍を阻害する方法であって、
対象が、EGFRvIIIを発現する腫瘍を有する、方法。
【請求項32】
腫瘍が、神経膠腫、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
対象が、ヒトである、請求項31または32記載の方法。
【請求項34】
腫瘍の阻害が、腫瘍の成長、サイズ、または転移の低下を含む、請求項31~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
有効量の、請求項1~26のいずれか一項記載の抗体、抗原結合断片、核酸分子、ベクター、T細胞、または薬学的組成物を、EGFRを過剰発現する腫瘍を有する対象へ投与する工程
を含む、対象における、EGFRを過剰発現する腫瘍を阻害する方法であって、
抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:1のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含むVH、ならびにSEQ ID NO:2のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含むVHを含み、それによって対象における腫瘍を阻害する、方法。
【請求項36】
腫瘍が、神経膠腫、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
対象が、ヒトである、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
腫瘍の阻害が、腫瘍の成長、サイズ、または転移の低下を含む、請求項35~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
対象における、EGFRvIIIを発現する腫瘍を阻害するための、または生物学的試料における、EGFRvIIIの存在を検出するための、請求項1~26のいずれか一項記載の抗体、抗原結合断片、核酸分子、ベクター、キメラ抗原受容体、キメラ抗原受容体を発現するT細胞、または薬学的組成物の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2019年7月2日に出願された米国仮出願第62/869,956号に基づく優先権を主張する。
【0002】
政府の支援に関する記載
本発明は、National Institutes of HealthのNational Cancer Instituteによるプロジェクト番号Z01#:Z1A BC 008757の下で政府の支援を受けて成された。米国政府は、本発現における一定の権利を有する。
【0003】
開示の領域
本開示は、癌生物学の領域、具体的には、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)バリアントIII(vIII)と特異的に結合するモノクローナル抗体およびその抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
EGFRは、しばしば、ヒト癌の発癌進行に関与している。遺伝子増幅および活性化変異を含む、発現の様々な変更が、発癌に寄与する。この大きい受容体は、621アミノ酸の外部ドメイン(ECD)、23アミノ酸の1回膜貫通ドメイン(TM)、および542アミノ酸の酵素活性細胞内ドメイン(ICD)を有する。EGFRは、受容体型チロシンキナーゼファミリーのメンバーであり、ヒト癌と正に関連していることが示された最初の受容体であった。リガンド結合は、受容体二量体形成およびキナーゼドメインの活性化をもたらし、それが、哺乳動物細胞の成長、生存、および分布を促進することができるいくつかの経路のうちの1つにシグナルを伝達する。活性化変異がECDまたはICDのいずれかにおいて起こり得;遺伝子増幅、および、EGFRバリアント(v)IIIを産生するエクソン2~7の損失、または構成的活性型の酵素変異体を生成するエクソン19の損失、によって例示される、大きい欠失も存在する。EGFRvIIIの発現またはエクソン19の損失は、癌細胞についてのみ報告されている。EGFRvIIIと結合することができ、野生型EGFRとは結合しない抗体が、依然必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
開示の概要
EGFRvIIIと特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体およびその抗原結合断片が開示される。いくつかの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、
(a)それぞれSEQ ID NO:1および2として示される重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(b)それぞれSEQ ID NO:11および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(c)それぞれSEQ ID NO:13および14として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL;または
(d)それぞれSEQ ID NO:15および16として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
を含む。
【0006】
いくつかの態様において、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、
(a)それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(b)それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(c)それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(d)それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
(e)それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL;または
(f)それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL
を含む。
【0007】
他の態様において、これらの抗体および抗原結合断片のコンジュゲートが開示される。さらに他の態様において、これらの抗体または抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体が開示される。さらなる態様において、これらのキメラ抗原受容体を発現するT細胞が開示される。
【0008】
いくつかの態様において、これらのモノクローナル抗体のVHおよび/またはVLをコードする核酸分子、これらの核酸を含むベクター、ならびにこれらの核酸分子および/またはベクターによって形質転換された宿主細胞が開示される。
【0009】
さらなる態様において、対象における、EGFRvIIIを発現する腫瘍を阻害するための、これらのモノクローナル抗体の使用が開示される。他の態様において、EGFRvIIIを検出するための、これらのモノクローナル抗体の使用が開示される。
【0010】
本発明の上記およびその他の特色および利点は、添付の図面を参照しながら進む、いくつかの態様の以下の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(1A)EGFR、(1B)KLH、とコンジュゲートされたEGFRvIIIペプチド抗原(aa286-303)の模式図。ループの位置およびEGFRのドメインIII上のma528のおよその結合部位も示される。図1Aおよび1Bの両方において、SEQ ID NO:69が示される。
図2】陽性対照としての528を含む、wtEGFR-HisおよびEGFRvIII-Hisに対する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)反応性による個々のハイブリドーマ上清の結果の棒グラフ(ELISA)。
図3】ハイブリドーマ上清の、細胞:MDA-MB-468細胞、A431細胞、F98EGFR細胞、およびF98npEGFRvIII細胞との反応性の棒グラフ。結果は、抗体が特異的に結合することを示している。ma528は対照である。
図4】A/Gカラムから溶出した7つのモノクローナル抗体の純度を示すSDS-PAGEゲル。
図5】精製されたモノクローナル抗体のELISAフォーマットにおけるwtEGFR-HisおよびEGFRvIII-Hisとの反応性。
図6A】フローサイトメトリーを使用した完全細胞における精製されたモノクローナル抗体の反応性。A.MDA-MB-468;A431 B.F98EGFR;F98npEGFRvIII;C.WI-38。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図6C図6Aの説明を参照のこと。
図7】個々の抗体の、287-302-Hisペプチドの野生型(wt)および選択された変異体との反応性。
図8A】可変cDNA遺伝子配列から推定される抗体の酸配列のアライメント。各抗体についてのVLは、図8Aにおいて、抗体名の後ろに「1-軽」が付いたものとしてリストされ(SEQ ID NO:2、12、30、40、44、および54)、各抗体についてのVHは、図8Bにおいて、抗体名の後ろに「1-重」が付いたものとしてリストされる(SEQ ID NO:1、17、26、29、39、43、および53)。以下の配列が示される:40H3:VHおよびVLは、SEQ ID NO:1および2であり;3D10:VHおよびVLは、SEQ ID NO:17および12であり;9G11:VHおよびVLは、SEQ ID NO:26および12であり;1D9:VHおよびVLは、SEQ ID NO:29および30であり;4A4:VHおよびVLは、SEQ ID NO:39および40であり;11E11:VHおよびVLは、SEQ ID NO:43および44であり;11G3:VHおよびVLは、SEQ ID NO:53および54である。
図8B図8Aの説明を参照のこと。
図9】抗体および免疫毒素タンパク質の癌細胞株に対する細胞傷害性。
図10A】40H3-PE38(免疫毒素)またはPE64(ネイティブ毒素)の、WI-38細胞、F98EGFR細胞、またはF98npEGFRvIII細胞への添加後の、細胞生存率の用量応答曲線。WI-38は、正常肺線維芽細胞株であり、「F98EGFR」は、全長EGFRをトランスフェクトされたラット神経膠腫細胞株であり、F98npEGFRvIIIは、非リン酸化EGFRvIIIをトランスフェクトされたラット神経膠腫細胞株である。
図10B図10Aの説明を参照のこと。
図10C図10Aの説明を参照のこと。
図11A】固定化されたEGFRループ、EGFRvIII細胞外ドメイン(ECD)、またはwtEGFR ECDに対する、40H3(全長抗体)についての、(Octet Biosensorを使用した)結合データ。
図11B図11Aの説明を参照のこと。
図11C図11Aの説明を参照のこと。
図12A】固定化されたEGFRループに対する、40H3-MMAE(抗体薬物コンジュゲートADC)、40H3-DM1(ADC)、または40H3-PE38免疫毒素の相互作用についての、Octet Biosensorデータ。ADCは、全長40H3抗体への細胞傷害性薬物の化学的付着によって構築される。40H3-PE38免疫毒素は、タンパク質毒素がscFvに融合している単鎖Fv(scFv)である。データは、いずれの薬物コンジュゲートについても結合活性の損失がないことが確認される。1価である免疫毒素は、より速い解離速度のため、より低い結合親和性を有する。
図12B図12Aの説明を参照のこと。
図12C図12Aの説明を参照のこと。
図13A】PDX細胞株GBM39に対する、40H3抗体または528抗体についてのフローサイトメトリーデータ。40H3は、全長抗体である。528抗体は、EGFRの全ての種と反応する。GBM39は、ヒト神経膠芽腫のPDX試料である。
図13B図13Aの説明を参照のこと。
図13C図13Aの説明を参照のこと。
図14】GBM39細胞への40H3-PE38(免疫毒素)の添加後の、細胞生存率の用量応答曲線。
図15A】MDA-MB-468細胞、A431細胞、またはF98npEGFRvIII細胞への40H3-MMAEの添加後の、細胞生存率の用量応答曲線。
図15B図15Aの説明を参照のこと。
図16A】MDA-MB-468細胞、A431細胞、またはF98npEGFRvIII細胞への40H3-DM1の添加後の、細胞生存率の用量応答曲線。
図16B図16Aの説明を参照のこと。
図17】DKMG EGFRvIIIに対する40H3、528、または40H3-PE38についてのフローサイトメトリーデータ。DKMG細胞株は、神経膠芽腫に由来する細胞から樹立された永久株である。細胞は、ゲノム組み込みを受けるEGFRvIIIをコードするウイルスベクターによって安定的に形質導入された。
図18】DKMG EGFRvIIIへの40H3-MMAE、40H3-DM1、または40H3-PE38の添加後の、細胞生存率の用量応答曲線。
図19】薬物コンジュゲーションのためのC末端システインを有するscFv。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列表
リストされた核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R.1.822において定義されるヌクレオチド塩基およびアミノ酸のための標準的な略語を使用して示される。各核酸配列の一方の鎖のみが示されるが、表示された鎖を参照することによって相補鎖が理解される。重鎖および軽鎖の可変ドメイン配列において、CDR配列には下線が付されている。配列表は、参照により本明細書に組み入れられる、ASCIIテキストファイル[Sequence_Listing、2020年7月1日、41,999バイトのサイズ]として提出される。添付の配列表において、以下のとおりである。
【0013】
SEQ ID NO:1は、40H3重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0014】
SEQ ID NO:2は、40H3軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0015】
SEQ ID NO:3は、40H3重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0016】
SEQ ID NO:4は、40H3軽鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0017】
SEQ ID NO:5~10は、40H3 CDRのアミノ酸配列である。
【0018】
SEQ ID NO:11は、3D10/9G11についてのコンセンサス重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
X1はIまたはTであり、
X2はSまたはGである。
【0019】
SEQ ID NO:12は、3D10および9G11についての軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0020】
SEQ ID NO:13は、1D9/4A4についてのコンセンサス重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
X1=QまたはL
X2=TまたはI
X3=DまたはE
【0021】
SEQ ID NO:14は、1D9/4A4についてのコンセンサス軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である(SEQ ID NO:14)。
XはVまたはAである。
【0022】
SEQ ID NO:15は、11E11/11G3についてのコンセンサス重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である(SEQ ID NO:15)。
X1=IまたはV
X2=KまたはM
X3=RまたはK
X4=TまたはA
X5=AまたはT
【0023】
SEQ ID NO:16は、11E11/11G3についてのコンセンサス軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
X1=AまたはP
X2=QまたはR
【0024】
SEQ ID NO:17は、3D10重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0025】
SEQ ID NO:18は、3D10重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸である。
【0026】
SEQ ID NO:19は、3D10および9G11の軽鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸である。
遺伝暗号の縮重のため、97位はCまたはAであり得、291位はCまたはTであり得る。
【0027】
SEQ ID NO:20~25は、3D10 CDRのアミノ酸配列である。
【0028】
SEQ ID NO:26は、9G11重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0029】
SEQ ID NO:27は、9G11重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0030】
SEQ ID NO:20、28、22、23、24、および25は、9G11 CDRのアミノ酸配列である。CDRのうちの5つは、3D10のCDRと同一である。
【0031】
SEQ ID NO:29は、1D9重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0032】
SEQ ID NO:30は、1D9軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0033】
SEQ ID NO:31は、1D9-1重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0034】
SEQ ID NO:32は、1D9軽鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0035】
SEQ ID NO:33~38は、1D9のCDRのアミノ酸配列である。
【0036】
SEQ ID NO:39は、4A4重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0037】
SEQ ID NO:40は、4A4軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0038】
SEQ ID NO:41は、4A4重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0039】
SEQ ID NO:42は、4A4軽鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0040】
SEQ ID NO:33~35および36~38は、4A4についてのCDRのアミノ酸配列である。これらは、1D9のCDRのアミノ酸配列と同一であることに注意すること。
【0041】
SEQ ID NO:43は、11E11重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0042】
SEQ ID NO:44は、11E11軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0043】
SEQ ID NO:45は、11E11重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸である。
【0044】
SEQ ID NO:46は、11E11軽鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸である。
【0045】
SEQ ID NO:47~52は、11E11 CDRのアミノ酸配列である。
【0046】
SEQ ID NO:53は、11G3重鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0047】
SEQ ID NO:54は、11G3軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列である。
【0048】
SEQ ID NO:55は、11G3重鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0049】
SEQ ID NO:56は、11G3軽鎖可変ドメインをコードする例示的な核酸配列である。
【0050】
SEQ ID NO:47、57、49、58、51、および52は、11G3のCDRのアミノ酸配列である。CDR配列のうちのいくつかは、11E11のCDRと同一であることに注意すること。
【0051】
SEQ ID NO:59は、リンカーのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO:61は、シグナルペプチドのアミノ配列である。
SEQ ID NO:61は、免疫グロブリンドメインのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO:62および63は、膜貫通ドメインのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO:64~68は、細胞内ドメインのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO:69は、EGFRのアミノ酸287~302である。
【0052】
いくつかの態様の詳細な説明
EGFRvIIIと特異的に結合し、正常細胞において発現された野生型EGFRとは結合しないモノクローナル抗体およびその抗原結合断片が、本明細書に開示される。例えば、EGFRvIIIを検出するため、腫瘍成長および腫瘍の転移を阻害するため、かつ/または腫瘍体積を減少させるため、これらの抗体を使用する方法も開示される。これらのモノクローナル抗体および抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体およびコンジュゲートが開示される。
【0053】
モノクローナル抗体40H3に由来するCDRを含む抗体および抗原結合断片は、EGFRvIIIと結合し、腫瘍細胞において発現された変異体EGFRおよび過剰発現されたEGFRとも結合するが、野生型(非癌細胞)において発現されたEGFRとは結合しない。これらの抗体は、全て、EGFR287-302ループと結合する。本明細書に開示された付加的な抗体に由来するCDRを含む抗体および抗原結合断片も、EGFRvIIIと特異的に結合し、野生型(非癌)細胞において発現された野生型EGFRとは結合しない。これらの抗体および抗原結合断片は、腫瘍細胞において発現された他の型のEGFRとも結合しない。
【0054】
野生型EGFRの活性化は、受容体コンフォメーションの変化を伴う、リガンド結合および単量体から二量体への遷移を必要とする二量体化を含む。単量体および二量体の両方のコンフォメーションにおいて、EGFRの細胞外ドメインについて、いくつかの構造が報告されている。これらの構造の分析は、野生型受容体においては露出していない残基の存在を示す。しかしながら、受容体が高度に発現され、正確に折り畳まれていないかもしれないか、または受容体の変異体バージョンが発現されている発癌条件下では、潜在性の構造が露出するようになり得る。正常条件下で立体的に利用可能でない1つの構造要素が、287~302(成熟受容体のナンバリングまたは全長受容体の301~326)のジスルフィドによって制限されたループである。このループは、EGFRvIIIにおいて露出しており、受容体発現が極めて高度である時に、またはECD変異が野生型構造を変更する時に、露出するようになり得る。いくつかの態様において、細胞上に露出したこのループを有する腫瘍を阻害する方法が提供される。
【0055】
いくつかの態様において、抗体は、抗体40H3の重鎖および軽鎖のCDRを含み、EGFRを過剰発現する腫瘍細胞と結合する。従って、対象における、EGFRを過剰発現する腫瘍を阻害する方法が提供される。
【0056】
いくつかの態様において、D290およびE293が、抗体または抗原結合断片がEGFR287-302ループと結合するために必要とされる。この結合特徴を有する(1D9、3D10、4A4、9G11、および11E3のような)例示的な抗体が提供される。他の態様において、E293が、抗体または抗原結合断片がEGFR287-302ループと結合するために必要とされる。この結合特徴を有する(11E11のような)例示的な抗体が提供される。さらなる態様において、R300が、抗体または抗原結合断片がEGFR287-302ループ(SEQ ID NO:69)と結合するために必要とされる。この結合特徴を有する(40H3のような)例示的な抗体が提供される。
【0057】
I.用語の概要
他に注記されない限り、技術用語は、従来の使用法に従い使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes X,published by Jones & Bartlett Publishers,2009;およびMeyers et al.(eds.),Encyclopedia of Cell Biology and Molecular Medicine,published by Wiley-VCH in 16 volumes,2008;およびその他の類似の参照に見出され得る。
【0058】
本明細書において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、前後関係が明白に他のことを示さない限り、単数および複数の両方をさす。例えば、「抗原(an antigen)」という用語は、単一の抗原または複数の抗原を含み、「少なくとも1つの抗原」という語句と等価であると見なされ得る。本明細書において使用されるように、「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられた全ての任意の塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量の値は、他のことが示されない限り、近似値であり、説明目的のために提供される。本明細書に記載されたものと類似のまたは等価な多くの方法および材料が使用され得るが、具体的な適当な方法および材料が本明細書に記載される。矛盾が生じるケースにおいては、用語の説明を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定するためのものではない。様々な態様の概説を容易にするため、以下の用語の説明が提供される:
【0059】
約: 前後関係が他のことを示さない限り、「約」とは、参照値のプラスまたはマイナス5%をさす。例えば、「約」100とは、95~105をさす。
【0060】
投与: 選択されたルートによる対象への組成物の導入。投与は局所または全身であり得る。例えば、選択されたルートが静脈内である場合、(開示された抗体または抗原結合断片等を含む組成物のような)組成物は、組成物を対象の静脈内に導入することによって投与される。例示的な投与ルートには、経口、(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内のような)注射、舌下、直腸、経皮(例えば、外用)、鼻腔内、膣、ならびに吸入のルートが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
薬剤: ある目的または結果を達成するために有用な物質または物質の組み合わせ;例えば、対象における腫瘍の成長または転移を阻害するために有用な物質または物質の組み合わせ。薬剤には、タンパク質、核酸分子、化合物、低分子、有機化合物、無機化合物、または関心対象のその他の分子が含まれる。薬剤には、(化学療法剤のような)治療剤、診断剤、または薬学的薬剤が含まれ得る。いくつかの態様において、薬剤は、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体、その抗原結合断片、それらのコンジュゲート、または抗体もしくは抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)である。特定の薬剤が、複数の結果を達成するために有用であり得ることを、当業者は理解するであろう。
【0062】
アミノ酸置換: ポリペプチド内のあるアミノ酸の異なるアミノ酸またはアミノ酸なし(即ち、欠失)との交換。いくつかの例において、ポリペプチド内のアミノ酸は、例えば、相同ポリペプチドに由来するアミノ酸と置換され、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片のアミノ酸は、EGFRvIIIと特異的に結合するもう1つの抗体またはその抗原結合断片に由来する対応するアミノ酸と置換され得る。
【0063】
抗体および抗原結合断片: EGFRvIIIのような分析物(抗原)と特異的に結合し、それを認識する免疫グロブリン、抗原結合断片、またはそれらの誘導体。「抗体」という用語は、最も広義に本明細書において使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗原結合断片を含むが、これらに限定されるわけではない、様々な抗体構造を包含する。
【0064】
抗体の非限定的な例には、例えば、抗原に対する結合親和性を保持している完全免疫グロブリンならびにそのバリアントおよび抗原結合断片が含まれる。抗原結合断片の例には、Fv、Fab、dsFv、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ(diabodies);直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFvおよびds-scFv);ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。抗体断片には、完全抗体の修飾によって作製された抗原結合断片、または組換えDNA方法論を使用して新規に合成されたものが含まれる(例えば、Kontermann and Dubel(Eds.),Antibody Engineering,Vols.1-2,2nd ed.,Springer-Verlag,2010を参照すること)。
【0065】
抗体には、(ヒト化マウス抗体のような)キメラ抗体および(二重特異性抗体のような)ヘテロコンジュゲート抗体のような遺伝子改変型も含まれる。
【0066】
抗体は1つまたは複数の結合部位を有し得る。複数の結合部位が存在する場合、結合部位は、相互に同一であってもよいし、または異なっていてもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体またはFab断片は、1つの結合部位を有し、二重特異性または二機能性の抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0067】
典型的には、天然に存在する免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互に接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。免疫グロブリン遺伝子には、カッパ型、ラムダ型、アルファ型、ガンマ型、デルタ型、イプシロン型、およびミュー型の定常領域遺伝子が含まれ、無数の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子が含まれる。2つの型の軽鎖、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgE。
【0068】
重鎖および軽鎖は、定常領域(または定常ドメイン)および可変領域(または可変ドメイン)を各々含有する。重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組み合わせが、抗原と特異的に結合する。
【0069】
「VH」または「VH」との言及は、Fv、scFv、dsFv、またはFabのような抗原結合断片のものを含む、抗体重鎖の可変領域をさす。「VL」または「VL」との言及は、Fv、scFv、ds-scFv、またはFabのものを含む、抗体軽鎖の可変ドメインをさす。
【0070】
VHおよびVLは、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域が介在する「フレームワーク」領域を含有する(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,NIH Publication No.91-3242,Public Health Service,National Institutes of Health,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照すること)。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。構成している軽鎖および重鎖のフレームワーク領域の組み合わせである抗体のフレームワーク領域は、三次元空間においてCDRを位置付け、整列させるために機能する。
【0071】
CDRは、抗原のエピトープとの結合を主に担う。特定のCDRのアミノ酸配列の境界は、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,NIH Publication No.91-3242,Public Health Service,National Institute of Health,U.S.Department of Health and Human Services,1991;「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikaniら("Standard conformations for canonical structures of immunoglobulins,"J.Mol.Bio.,273(4):927-948,1997;「Chothia」ナンバリングスキーム)、およびLefrancら("IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,"Dev.Comp.Immunol.,27(1):55-77,2003;「IMGT」ナンバリングスキーム)によって記載されたものを含む、多数の周知のスキームのうちの任意のものを使用して容易に決定され得る。各鎖のCDRは、典型的には、(N末端からC末端へ)CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、典型的には、特定のCDRが位置している鎖によって同定される。従って、VH CDR3は、それが見出される抗体のVHに由来するCDR3であり、VL CDR1は、それが見出される抗体のVLに由来するCDR1である。軽鎖のCDRは、時に、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3と呼ばれる。重鎖のCDRは、時に、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と呼ばれる。
【0072】
いくつかの態様において、開示された抗体は、異種の定常ドメインを含む。例えば、抗体は、半減期を増加させるための(「LS」変異のような)1つまたは複数の修飾を含む定常ドメインのような、ネイティブの定常ドメインとは異なる定常ドメインを含む。
【0073】
「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体であり、即ち、例えば、天然に存在する変異またはモノクローナル抗体調製物の作製中に発生した変異を含有する、可能性のあるバリアント抗体(そのようなバリアントは、一般に、微量に存在する)を除き、集団を構成する個々の抗体が、同一であり、かつ/または同一のエピトープと結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、ある抗原の単一の決定基に対するものである。従って、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の作製を必要とするものと解釈されてはならない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されるわけではない、多様な技術によって作成され得、モノクローナル抗体を作成するためのそのような方法およびその他の例示的な方法は、本明細書に記載される。いくつかの例において、モノクローナル抗体は、対象から単離される。モノクローナル抗体は、抗原結合またはその他の免疫グロブリン機能に対する効果を実質的に有しない保存的アミノ酸置換を有し得る(例えば、Greenfield(Ed.),Antibodies:A Laboratory Manual,2nd ed.New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,2014を参照すること)。
【0074】
「ヒト化」抗体または抗原結合断片は、ヒトフレームワーク領域と、(マウス、ラット、または合成のような)非ヒトの抗体または抗原結合断片に由来する1つまたは複数のCDRとを含む。CDRを提供する非ヒトの抗体または抗原結合断片は「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒトの抗体または抗原結合断片は「アクセプター」と呼ばれる。1つの態様において、ヒト化免疫グロブリンにおいて、全てのCDRがドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は、存在しなくてもよいが、存在する場合には、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、例えば、少なくとも約85~90%、例えば、約95%またはそれ以上、同一であり得る。従って、おそらくCDRを除く、ヒト化抗体または抗原結合断片の全ての部分が、天然ヒト抗体配列の対応する部分と実質的に同一である。
【0075】
「キメラ抗体」とは、典型的には、異なる種のものである、2つの異なる抗体に由来する配列を含む抗体である。いくつかの例において、キメラ抗体は、あるヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRおよび/またはフレームワーク領域と、もう1つのヒト抗体に由来するCDRおよび/またはフレームワーク領域とを含む。
【0076】
「完全ヒト抗体」または「ヒト抗体」とは、ヒトゲノムに由来する配列を含み、もう1つの種に由来する配列を含まない抗体である。いくつかの態様において、ヒト抗体は、ヒトゲノムに由来するCDR、フレームワーク領域、および(存在する場合)Fc領域を含む。ヒト抗体は、ヒトゲノムに由来する配列に基づき、抗体を作るための技術を使用して、例えば、ファージディスプレイによって、またはトランスジェニック動物を使用して、同定され、単離され得る(例えば、Barbas et al.Phage display:Laboratory Manuel.1st Ed.New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,2004.Print.;Lonberg,Nat.Biotech.,23:1117-1125,2005;Lonenberg,Curr.Opin.Immunol.,20:450-459,2008を参照すること)。
【0077】
生物学的試料: 対象から得られた試料。生物学的試料には、細胞、組織、ならびに体液、例えば、血液、血液の誘導体および画分(例えば、血清)、脳脊髄液;ならびに生検された、または外科的に摘出された組織、例えば、固定されていない組織、凍結組織、またはホルマリンもしくはパラフィンで固定された組織を含むが、これらに限定されるわけではない、対象における疾患または腫瘍(例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌)の検出のために有用な全ての臨床試料が含まれる。具体的な例において、生物学的試料は、以下に限定されるわけではないが、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような腫瘍を有するか、または有すると推測される対象から得られる。
【0078】
二重特異性抗体: 2つの異なる抗原結合ドメインから構成され、従って、2つの異なる抗原性エピトープと結合する組換え分子。二重特異性抗体には、2つの抗原結合ドメインの化学的にまたは遺伝学的に連結された分子が含まれる。抗原結合ドメインは、リンカーを使用して連結され得る。抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、抗原結合断片(例えば、Fab、scFv、ds-scFv)、またはそれらの組み合わせであり得る。二重特異性抗体は、1つまたは複数の定常ドメインを含み得るが、必ずしも定常ドメインを含まない。
【0079】
癌: 形質転換された上皮細胞を含む悪性腫瘍。癌の非限定的な例には、腺癌、扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、および小細胞癌が含まれる。いくつかの例において、癌は、乳癌、頭頚部癌、または膀胱癌である。
【0080】
化学療法剤: 異常な細胞成長を特徴とする疾患の処置において治療的有用性を有する化学的薬剤。例えば、化学療法剤は、癌、例えば、頭頚部癌、乳癌、および膀胱癌の処置のために有用である。1つの態様において、化学療法剤は、癌の処置において有用な薬剤である。使用され得る付加的な治療剤の具体例には、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたは架橋剤、DNA合成阻害剤、DNAおよびRNAの転写の阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、遺伝子制御剤、ならびに血管新生阻害剤が含まれる。1つの態様において、化学療法剤は、放射性化合物である。他の例には、抗新生物薬、5-フルオロウラシル(5-FU)およびIRTが含まれる。当業者は、有用な化学療法剤を容易に同定することができる(例えば、Slapak and Kufe,Principles of Cancer Therapy,Chapter 86 in Harrison's Principles of Internal Medicine,14th edition;Perry et al.,Chemotherapy,Ch.17 in Abeloff,Clinical Oncology 2nd ed.,(コピーライト)2000 Churchill Livingstone,Inc;Baltzer,L.,Berkery,R.(eds):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy,2nd ed.St.Louis,Mosby-Year Book,1995;Fischer,D.S.,Knobf,M.F.,Durivage,H.J.(eds):The Cancer Chemotherapy Handbook,4th ed.St.Louis,Mosby-Year Book,1993;Chabner and Longo,Cancer Chemotherapy and Biotherapy:Principles and Practice(4th ed.).Philadelphia:Lippincott Willians & Wilkins,2005;Skeel,.Handbook of Cancer Chemotherapy(6th ed.).Lippincott Williams & Wilkins,2003を参照すること)。組み合わせ化学療法は、癌を処置するための複数の薬剤の投与である。
【0081】
キメラ抗体: 例えば、異なる種に由来する、2つの異なる抗体に由来する配列を含む抗体。いくつかの例において、キメラ抗体は、あるヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRおよび/またはフレームワーク領域と、もう1つのヒト抗体に由来するCDRおよび/またはフレームワーク領域とを含む。
【0082】
キメラ抗原受容体(CAR): T細胞受容体の1つまたは複数の細胞内シグナリングドメインと接合された(scFvのような)細胞外抗体由来ターゲティングドメインを有する改変型T細胞受容体。「キメラ抗原受容体T細胞」とは、CARを発現するT細胞であり、CARの抗体由来ターゲティングドメインによって決定される抗原特異性を有する。(例えば、癌の処置のための)CARを作成する方法は、利用可能である(例えば、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Park et al.,Trends Biotechnol.,29:550-557,2011;Grupp et al.,N Engl J Med.,368:1509-1518,2013;Han et al.,J.Hematol Oncol.,6:47,2013;PCT公開WO2012/079000、WO2013/059593;および米国公開2012/0213783を参照すること)。
【0083】
免疫複合体を形成させるために十分な条件: 実質的に全ての他のエピトープとの結合より検出可能に大きい程度に、かつ/または実質的に全ての他のエピトープとの結合が実質的に排除される程度に、抗体またはその抗原結合断片がその同族エピトープと結合することを可能にする条件。免疫複合体を形成させるために十分な条件は、結合反応のフォーマットに依存し、典型的には、イムノアッセイプロトコルにおいて利用されるもの、またはインビボで見られる条件である。イムノアッセイのフォーマットおよび条件については、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,2nd ed.Cold Spring Harbor Publications,New York(2013)を参照すること。方法において利用される条件は、生存している哺乳動物または哺乳動物細胞において典型的な条件(例えば、温度、浸透圧、pH)への言及を含む「生理学的条件」である。いくつかの器官は極端な条件を受けることが認識されているが、生物内および細胞内の環境は、通常は、およそpH 7(例えば、pH 6.0~pH 8.0、より典型的には、pH 6.5~7.5)であり、主な溶媒として水を含有し、0℃超50℃未満の温度で存在する。浸透圧は、細胞の生存および増殖を支持する範囲内である。
【0084】
コンジュゲート: 共に連結された、例えば、共有結合によって共に連結された、2つの分子の複合体。1つの態様において、抗体は、エフェクター分子と連結され;例えば、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体は、エフェクター分子と連結される。連結は、化学的手段によってもよいし、または組換え手段によってもよい。1つの態様において、連結は、抗体部分とエフェクター分子との間の反応が、2つの分子の間に形成された共有結合を生成し、1つの分子が形成される、化学的なものである。ペプチドリンカー(短いペプチド配列)が、任意で、抗体とエフェクター分子との間に含まれてもよい。コンジュゲートは、抗体およびエフェクター分子のような別々の機能性を有する2つの分子から調製され得るため、時に、「キメラ分子」とも呼ばれる。
【0085】
保存的バリアント: 「保存的」アミノ酸置換とは、タンパク質の、標的タンパク質と相互作用する能力のような、タンパク質の機能に実質的に影響を与えないか、または減少させない置換である。例えば、EGFRvIIIに特異的な抗体は、参照抗体配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個まで、または10個までの保存的置換を含み、かつEGFRvIIIに対する特異的結合活性を保持することができる。保存的変動という用語には、非置換型の親アミノ酸の代わりの置換型アミノ酸の使用も含まれる。
【0086】
コードされた配列の単一のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸(例えば、5%未満、いくつかの態様において、1%未満)を変更するか、付加するか、または欠失させる、個々の置換、欠失、または付加は、変更が、化学的に類似しているアミノ酸同士の置換をもたらす、保存的変動である。
【0087】
以下の6つの群は、相互に保存的置換であると見なされるアミノ酸の例である:
(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リジン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0088】
非保存的置換とは、特異的にEGFRvIIIと結合するか、またはEGFRvIIIを発現する癌細胞と結合する能力のような、EGFRvIII特異的抗体の活性または機能を低下させるものである。例えば、あるアミノ酸残基がタンパク質の機能にとって必須である場合、その他の点で保存的であったとしても、その置換は、活性を妨害し得る。従って、保存的置換は、関心対象のタンパク質の基本的な機能を変更しない。
【0089】
接触: 直接物理的に会合している配置;固体および液体の両方を含み、インビボまたはインビトロのいずれかで起こり得る。接触には、ある分子ともう1つの分子との接触、例えば、もう1つのポリペプチドと接触しているペプチドのようなあるポリペプチドの表面上のアミノ酸が含まれる。接触には、例えば、ポリペプチドを細胞と直接物理的に会合するよう配置することによる、細胞の接触も含まれ得る。
【0090】
対照: 参照標準。いくつかの態様において、対照は、健常患者から得られた陰性対照試料である。他の態様において、対照は、EGFRvIIIを発現する腫瘍を有すると診断された患者から得られた陽性対照試料、または組換え作製された精製されたEGFRvIIIである。さらに他の態様において、対照は、歴史的対照または標準参照値もしくは値の範囲(例えば、以前に試験された対照試料、例えば、既知の予後もしくはアウトカムを有する患者の群、または基線もしくは正常値を表す試料の群)である。
【0091】
被験試料と対照との間の差は、増加であってもよいし、または反対に減少であってもよい。差は、定性的な差であってもよいし、または定量的な差、例えば、統計的に有意な差であってもよい。いくつかの例において、差は、少なくとも約5%、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超の対照に対する増加または減少であり得る。いくつかの態様において、腫瘍の成長、体積、および/または転移は、減少する。
【0092】
減少させる、または低下させる: 何かの質、量、または強度を低下させること;例えば、腫瘍負荷の低下。一例において、治療は、例えば、治療の非存在下での応答と比較して、(腫瘍のサイズ、腫瘍の数、腫瘍の転移、もしくはそれらの組み合わせのような)腫瘍、または腫瘍に関連した1つもしくは複数の症状を低下させる。具体的な例において、治療は、治療後に、腫瘍のサイズ、腫瘍の数、腫瘍の転移、またはそれらの組み合わせを減少させ、例えば、減少は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%である。そのような減少は、本明細書に開示される方法を使用して測定され得る。
【0093】
縮重バリアント: 本開示に関して、「縮重バリアント」とは、遺伝暗号の結果として縮重している配列を含む(抗体のような)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさす。20の天然アミノ酸が存在し、その大部分が複数のコドンによって指定される。従って、ヌクレオチド配列によってコードされるペプチドのアミノ酸配列が変化しない限り、そのペプチドをコードする全ての縮重ヌクレオチド配列が含まれる。
【0094】
検出可能マーカー: 抗体のような第2の分子の検出を容易にするため、第2の分子と直接または間接的にコンジュゲートされる(標識としても公知の)検出可能分子。例えば、検出可能マーカーは、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、顕微鏡法、または(CTスキャン、MRI、超音波、光ファイバー検査、および腹腔鏡検査のような)画像診断技術によって検出可能であり得る。検出可能マーカーの具体的な非限定的な例には、フルオロフォア、化学発光剤、酵素連結、放射性の同位体および重金属または化合物(例えば、MRIによる検出のための超常磁性酸化鉄ナノ結晶)が含まれる。検出可能マーカーを使用する方法および様々な目的のために適切な検出可能マーカーの選択の指針は、例えば、Green and Sambrook(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012)およびAusubel et al.(Eds.)(Current Protocols in Molecular Biology,New York:John Wiley and Sons,including supplements,2017)に記述されている。
【0095】
検出: 何かの実在、存在、または事実を同定すること。
【0096】
有効量: 処置のための、治療的に有効な量のような、物質を投与される対象において所望の効果を達成するために十分な特定の物質の量。例えば、これは、腫瘍の成長および/もしくは転移を阻害するため、または腫瘍の外面的な症状を測定可能に変更するために必要な抗体の量であり得る。
【0097】
いくつかの態様において、有効量の、EGFRvIIIと結合する開示された抗体または抗原結合断片の投与は、適当な対照と比較して、所望の量、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには少なくとも100%(腫瘍の排除)、腫瘍成長、腫瘍転移、または腫瘍体積を低下させるか、または阻害することができる。
【0098】
対象へ投与される、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体または抗原結合断片の有効量は、その対象に関連した多数の因子、例えば、対象の全体的な健康状態および/または体重によって変動するであろう。有効量は、投薬量を変動させ、例えば、腫瘍負荷の低下のような得られた応答を測定することによって決定され得る。有効量は、様々なインビトロ、インビボ、またはインサイチューのイムノアッセイを通して決定されてもよい。
【0099】
有効量には、以前または以後の投与との組み合わせによって、効果的な応答の達成に寄与する分割用量が包含される。例えば、有効量の薬剤は、単回投与されてもよいし、または数日もしくは数週間継続される処置の課程において、数回、例えば、毎日、投与されてもよい。しかしながら、有効量は、処置される対象、処置される状態の重症度および型、ならびに投与の様式に依存し得る。薬剤の単位剤形が、例えば、(例えば、貫通可能な蓋を有する)バイアルまたは無菌成分を有するシリンジに、ある量で、または有効量の倍数で、パッケージングされ得る。
【0100】
エフェクター分子: 所望の効果;例えば、エフェクター分子がターゲティングされる細胞に対する所望の効果を有するか、または及ぼすことが意図される分子。エフェクター分子には、化学的化合物、ポリペプチド、放射性同位体、および低分子のような分子が含まれる。エフェクター分子の非限定的な例には、毒素、化学療法剤、および抗血管新生剤が含まれる。いくつかのエフェクター分子は、複数の所望の効果を有するか、または及ぼすことができることを、当業者は理解するであろう。一例において、エフェクター分子は、キメラ分子の一部分、例えば、キメラ分子がターゲティングされる細胞に対する所望の効果を有することが意図される開示された抗体またはその断片を含むキメラ分子の一部分である。
【0101】
上皮増殖因子受容体(EGFR): (HER1またはERBB1としても公知の)EGFRは、受容体型チミジンキナーゼ(RTK)のERBBファミリーに属する受容体である。インビボで、EGFによるリガンド結合は、受容体リン酸化を介してRTK/RAS/PI(3)K経路の活性化をもたらし、細胞増殖、血管新生、および局所的な組織浸潤の増加、ならびにアポトーシスに対する抵抗性をもたらす。ヒトEGFRについての核酸配列は、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NM_005228.5(2019年6月18日)およびGENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000007.14(染色体内のEGFR)(2019年6月14日)に見出され得る。EGFRは、621アミノ酸の外部ドメイン(ECD)、23アミノ酸の1回膜貫通ドメイン(TM)、および542アミノ酸の酵素活性細胞内ドメイン(ICD)を有する。リガンド結合は、受容体二量体形成およびキナーゼドメインの活性化をもたらし、それが、哺乳動物細胞の成長、生存、および分布を促進することができるいくつかの経路のうちの1つにシグナルを伝達する。腫瘍において、構成的活性型であるEGFRバリアントIII(EGFRvIII)を産生するエクソン2~7の損失。EGFRvIIIについてのcDNA配列は、参照により本明細書に組み入れられるGENBANK(登録商標)アクセッション番号NM_001346941(2019年6月18日)に見出され得、アミノ酸配列は、参照により本明細書に組み入れられるNP_001333870.1(2019年6月14日)に見出され得る。野生型EGFRの活性化は、受容体コンフォメーションの変化を伴う、リガンド結合および単量体の二量体への遷移を必要とする二量体化を含む。活性化変異は、ECDまたはICDのいずれかにおいて起こり得る。構成的活性型の酵素変異体を生成するエクソン19の損失。EGFRは、遺伝子増幅または転写調節の損失のいずれかによって過剰発現され得る。(1細胞あたり約50,000超の受容体のような)高レベル発現は、受容体のミスフォールディングまたは遺伝子コピーのうちの1つもしくは複数における変異のいずれかをもたらす。過剰発現は、野生型対照と比較して、細胞に存在するEGFRの2倍以上の増加をもたらし得る。正常条件下で立体的に利用可能でない1つの構造要素は、287~302(成熟受容体のナンバリングまたは全長受容体の301~326)のジスルフィドによって制限されたループである。このループは、EGFRvIIIにおいて露出しており、受容体発現が極めて高度である時に、またはECD変異が野生型構造を変更する時に、露出するようになり得る。図1Aおよび1BならびにSEQ ID NO:69も参照すること。
【0102】
エピトープ: 抗原性決定基。これらは、特異的な免疫応答を誘発するような抗原性の分子上の特定の化学基またはペプチド配列であり、例えば、エピトープは、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原の領域である。抗体は、EGFRvIII上のエピトープのような特定の抗原性エピトープに結合することができる。
【0103】
発現: 核酸配列の転写または翻訳。例えば、遺伝子は、そのDNAがRNAまたはRNA断片へ転写される時に発現され、それらは、いくつかの例において、mRNAになるようプロセシングされる。遺伝子は、そのmRNAがタンパク質またはタンパク質断片のようなアミノ酸配列へ翻訳される時にも発現され得る。具体的な例において、異種遺伝子は、それがRNAへ転写される時に発現される。別の例において、異種遺伝子は、そのRNAがアミノ酸配列へ翻訳される時に発現される。「発現」という用語は、転写または翻訳のいずれかを意味するために、本明細書において使用される。発現の制御には、転写、翻訳、RNAの輸送およびプロセシング、mRNAのような中間分子の分解、または特定のタンパク質分子が産生された後のその活性化、不活化、区画化、もしくは分解に対する調節が含まれ得る。
【0104】
発現調節配列: 機能的に連結された異種核酸配列の発現を制御する核酸配列。発現調節配列が、配列核酸の転写を調節し、制御し、適宜、翻訳を調節し、制御する時、その発現調節配列は、その核酸配列と機能的に連結されている。従って、発現調節配列には、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前にある開始コドン(ATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするための、その遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、および終止コドンが含まれ得る。「調節配列」という用語には、その存在が発現に影響を与える成分が少なくとも含まれ、その存在が有利である付加的な成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含まれるものとする。発現調節配列には、プロモーターが含まれ得る。
【0105】
プロモーターは、転写を指図するために十分な最小配列である。プロモーター依存性遺伝子発現を調節可能にするため、例えば、細胞型特異的、組織特異的、または外的なシグナルもしくは薬剤によって誘導可能にするために十分なプロモーター要素も含まれ;そのような要素は、遺伝子の5'領域または3'領域に位置し得る。構成性プロモーターおよび誘導性プロモーターの両方が含まれる(例えば、Bitter et al.,Methods in Enzymology 153:516-544,1987を参照すること)。例えば、細菌系においてクローニングする時には、バクテリオファージラムダのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)等のような誘導性プロモーターが使用され得る。1つの態様において、哺乳動物細胞系においてクローニングする時には、(メタロチオネインプロモーターのような)哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター、または(レトロウイルス末端反復配列;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターのような)哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターが使用され得る。組換えDNA技術または合成技術によって作製されたプロモーターも、核酸配列の転写を提供するために使用され得る。
【0106】
ポリヌクレオチドは、宿主の挿入された遺伝子配列の効率的な転写を容易にするプロモーター配列を含有する発現ベクターへ挿入され得る。発現ベクターは、典型的には、複製開始点、プロモーターを含有し、形質転換細胞の表現型選択を可能にする特異的な核酸配列も含有する。
【0107】
発現ベクター: 発現させたいヌクレオチド配列と機能的に連結された発現調節配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクター。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性要素を含み;発現のためのその他の要素は、宿主細胞またはインビトロ発現系によって供給されてもよい。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドが組み入れられる、コスミド、プラスミド(例えば、裸のものまたはリポソームに含有されているもの)、ならびにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような、当技術分野において公知の全てのものが含まれる。
【0108】
Fc領域: 第1重鎖定常ドメインを除く抗体の定常領域。Fc領域とは、一般に、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの重鎖定常ドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの重鎖定常ドメインをさす。Fc領域は、これらのドメインのN末端側のフレキシブルなヒンジの一部または全部も含み得る。IgAおよびIgMについて、Fc領域は、テールピースを含んでもよいし、または含まなくてもよく、J鎖が結合していてもよいし、または結合していなくてもよい。IgGについて、Fc領域は、典型的には、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3を含み、任意で、Cγ1とCγ2との間のヒンジの下方部分を含むと理解されている。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、一般的には、C226またはP230からFcカルボキシル末端までの残基を含むと定義される(ナンバリングはKabatに従う)。IgAについて、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCα2およびCα3を含み、任意で、Cα1とCα2との間のヒンジの下方部分を含む。
【0109】
フレームワーク領域: 抗体の重鎖または軽鎖の可変領域においてCDR間に存在するアミノ酸配列。可変軽鎖および可変重鎖のフレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は、適切な方向にCDRを維持するために役立つ。
【0110】
異種: 異なる遺伝子起源に起因すること。ある細胞に対して異種である核酸分子とは、それが発現される細胞以外の遺伝子起源に起因するものである。1つの具体的な非限定的な例において、scFvのようなタンパク質をコードする異種核酸分子が、哺乳動物細胞のような細胞において発現される。異種核酸分子を細胞または生物へ導入する方法、例えば、核酸による形質転換、例えば、電気穿孔、リポフェクション、パーティクルガン加速、および相同組換えは、当技術分野において周知である。
【0111】
宿主細胞: ベクターを増加させ、そのDNAを発現させることができる細胞。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。この用語には、最初の宿主細胞の子孫も含まれる。複製中に起こった変異が存在し得るため、全ての子孫が親細胞と同一であるとは限らない。しかしながら、「宿主細胞」という用語が使用される時、そのような子孫も含まれる。
【0112】
IgG: 認識されている免疫グロブリンガンマ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスまたはアイソタイプに属するポリペプチド。ヒトにおいて、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。
【0113】
免疫複合体: 抗体または(scFvのような)抗原結合断片が可溶性抗原と結合することによって、免疫複合体が形成される。免疫複合体の形成は、従来の方法、例えば、免疫組織化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、ELISA、イムノブロッティング(例えば、ウエスタンブロット)、磁気共鳴画像法、CTスキャン、X線検査、およびアフィニティクロマトグラフィを通して検出され得る。
【0114】
免疫応答: B細胞、T細胞、または単球のような免疫系の細胞の、刺激に対する応答。1つの態様において、応答は、特定の抗原に対して特異的である(「抗原特異的応答」)。1つの態様において、免疫応答は、CD4+応答またはCD8+応答のようなT細胞応答である。別の態様において、応答は、B細胞応答であり、特異的抗体の産生をもたらす。
【0115】
免疫原: 動物において抗体の産生またはT細胞応答を刺激することができる化合物、組成物、または物質、例えば、動物へ注射されるか、または吸収される組成物、例えば、担体とカップリングされたEGFRvIII。免疫原は、本明細書に開示されるもののような抗体を産生するために使用され得る。
【0116】
腫瘍の阻害または処置: 腫瘍の徴候または症状を低下させる治療的介入(例えば、治療的に有効な量の、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体またはそのコンジュゲートの投与)。処置は、腫瘍のサイズの低下のような軽減を誘導することもできる。具体的な例において、処置は、転移の阻害を含む。
【0117】
「低下させる」という用語は、相対的な用語であり、従って、疾患または状態が、薬剤の投与後に定量的に減少する場合、または薬剤の投与後に参照薬剤と比較して減少する場合、その薬剤は、その疾患または状態を低下させる。徴候または症状の低下とは、処置の観察可能な有益な効果をさす。腫瘍に関連した徴候または症状の低下は、例えば、(まだ転移していない腫瘍を有する対象のような)感受性の対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部もしくは全部の臨床症状の重症度の低下、疾患の進行の緩徐化(例えば、腫瘍を有する対象の寿命の延長)、腫瘍の数もしくは腫瘍の除去と腫瘍の再発との間の時間の低下、対象の全体的な健康状態もしくは健康の改善、または特定の腫瘍に特異的な当技術分野において周知のその他のパラメータによって証拠付けられ得る。「予防的」処置とは、腫瘍の徴候を示していないが、腫瘍の遺伝的素因を有する対象、または前癌病変のような初期の徴候のみを示す対象へ、腫瘍の発症のリスクを減少させる目的で投与される処置である。「防止する」という用語は、疾患または状態の少なくとも1つの特徴が排除される限り、薬剤が疾患または状態を完全に排除することを必ずしも意味しない。従って、腫瘍を低下させるか、または防止する組成物は、腫瘍の発症のリスクを防止するかもしれないが、必ずしも、完全には防止しない。
【0118】
単離された: その成分が天然に存在する生物の細胞の他の生物学的成分、即ち、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNAならびにタンパク質から実質的に分離されているか、それらとは別に作製されているか、または精製されている(核酸、ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体、例えば、抗体のような)生物学的成分。従って、単離された核酸、ペプチド、およびタンパク質には、標準的な精製法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語には、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸、ペプチド、およびタンパク質が含まれ、化学的に合成された核酸も含まれる。単離された核酸、ペプチド、またはタンパク質、例えば、抗体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋であり得る。
【0119】
Kabat位置: Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition,Department of Health and Human Services,Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,NIH Publication No.91-3242,1991)によって画定されたナンバリング慣習に従うアミノ酸配列内の残基の位置。
【0120】
リンカー: 2つの分子を1つの連続分子へ連結するため、例えば、エフェクター分子を抗体と連結するため、または検出可能マーカーを抗体に連結するため、使用され得る二官能性分子。ペプチドリンカーの非限定的な例には、グリシン-セリンリンカーが含まれる。
【0121】
「コンジュゲートする」、「接合する」、「結合させる」、または「連結する」という用語は、2つの分子を1つの連続分子にすること;例えば、2つのポリペプチドを1つの連続ポリペプチドへ連結すること、またはエフェクター分子もしくは検出可能マーカー放射性核種もしくはその他の分子をscFvのようなポリペプチドに共有結合的に付着させることをさし得る。連結は、化学的手段または組換え手段のいずれかにより得る。「化学的手段」とは、2つの分子の間に共有結合が形成され、1つの分子が形成されるような、抗体部分とエフェクター分子との間の反応をさす。
【0122】
新生物、癌、または腫瘍: 新生物は、過剰な細胞分裂に起因する組織または細胞の異常な成長である。新生物成長は、腫瘍を生じ得る。個体における腫瘍の量が、腫瘍の数、体積、または質量として測定され得る「腫瘍負荷」である。転移しない腫瘍は、「良性」と呼ばれる。周囲の組織に浸潤するか、もしくは転移することができる(またはその両方である)腫瘍は、「悪性」と呼ばれる。
【0123】
同一の組織型の腫瘍は、(頭頚部、乳腺、または膀胱のような)特定の器官において発生した原発腫瘍である。同一の組織型の腫瘍は、異なるサブタイプの腫瘍に分類され得る。例えば、肺癌は、腺癌、小細胞型、扁平上皮型、または非小細胞型の腫瘍に分類され得る。
【0124】
肉腫(結合組織癌)および癌(上皮細胞癌)のような固形腫瘍の例には、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、およびその他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸直腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、頭頚部癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、ならびに(神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫のような)CNS腫瘍が含まれる。
【0125】
核酸: ホスホジエステル結合、関連する天然に存在する構造的バリアント、およびそれらの天然に存在しない合成類似体を介して連結された、ヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、関連する天然に存在する構造的バリアント、およびそれらの天然に存在しない合成類似体)から構成されるポリマー。従って、この用語には、ヌクレオチドおよびそれらの間の連結が、例えば、非限定的に、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホン酸、キラル-メチルホスホン酸、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)等のような天然に存在しない合成類似体を含むヌクレオチドポリマーが含まれる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置を使用して合成され得る。「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、一般に、約50ヌクレオチド以下の、短いポリヌクレオチドをさす。ヌクレオチド配列がDNA配列(即ち、A、T、G、C)によって表される時、これには、「T」が「U」に置き換わったRNA配列(即ち、A、U、G、C)も含まれることが理解されるであろう。
【0126】
「ヌクレオチド」には、ピリミジン、プリン、またはそれらの合成類似体のような、糖と連結された塩基を含むか、またはペプチド核酸(PNA)のように、アミノ酸と連結された塩基を含む、単量体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ヌクレオチドは、ポリヌクレオチド内の1つの単量体である。ヌクレオチド配列とは、ポリヌクレオチド内の塩基の配列をさす。
【0127】
ヌクレオチド配列を記載するための従来の表記法が、本明細書において使用される: 一本鎖ヌクレオチド配列の左側の末端が、5'末端であり;二本鎖ヌクレオチド配列の左方向が、5'方向と呼ばれる。新生RNA転写物にヌクレオチドが付加される5'から3'への方向は、転写方向と呼ばれる。mRNAと同一の配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と呼ばれ;そのDNAから転写されるmRNAと同一の配列を有するDNA鎖上にあり、RNA転写物の5'末端の5'側に位置する配列は、「上流配列」と呼ばれ;RNAと同一の配列を有するDNA鎖上にあり、コードRNA転写物の3'末端の3'側にある配列は、「下流配列」と呼ばれる。
【0128】
「cDNA」とは、一本鎖型または二本鎖型のいずれかの、mRNAと相補的または同一であるDNAをさす。
【0129】
「コードする」とは、明確なヌクレオチド配列(即ち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または明確なアミノ酸配列のいずれか、ならびにそれらに起因する生物学的特性を有する、生物学的過程の他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として役立つ、遺伝子、cDNA、またはmRNAのようなポリヌクレオチドの特定のヌクレオチド配列の固有の特性をさす。従って、遺伝子によって産生されたmRNAの転写および翻訳が、細胞またはその他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はそのタンパク質をコードする。遺伝子またはcDNAの、転写の鋳型として使用される、ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、一般的に、配列表に提供されるコード配列、および非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードするものと呼ばれ得る。他に特記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互の縮重バージョンであり、同一のアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。
【0130】
第1の配列を有するポリヌクレオチドが、第2の配列を有するポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする場合、その第1の配列は、その第2の配列に対して「アンチセンス」である。
【0131】
機能的に連結された: 第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれている時、その第1の核酸配列は、その第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、CMVプロモーターのようなプロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、そのプロモーターは、そのコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は、連続しており、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合、同一のリーディングフレーム内にある。
【0132】
薬学的に許容される担体: 有用な薬学的に許容される担体は、従来のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,19th Edition,1995は、開示された抗体およびその抗原結合断片の薬学的送達のための適当な組成物および製剤を記載している。
【0133】
一般に、担体の性質は、利用される特定の投与モードに依存する。例えば、非経口製剤は、一般的に、水、生理食塩水、平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール等のような薬学的にかつ生理学的に許容される液体を媒体として含む注射可能液を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態)のための従来の非毒性固体担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートのような少量の非毒性補助物質を含有していてよい。具体的な態様において、対象への投与のために適当な担体は、無菌であり得、かつ/または組成物の1つもしくは複数の測定された用量を含有する単位剤形に懸濁しているかもしくはその他の方法で含有されていてよい。それは、処置のために使用するための薬物治療を伴っていてもよい。単位剤形は、例えば、無菌の内容物を含有する密閉されたバイアルもしくは対象への注射のためのシリンジに存在してよく、またはその後の可溶化および投与のため凍結乾燥されていてもよく、または固体もしくはコントロールドリリース剤形であってもよい。
【0134】
ポリペプチド: 長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)に関わらない、アミノ酸の鎖。「ポリペプチド」は、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーを含むアミノ酸ポリマーに当てはまり、1つまたは複数のアミノ酸残基が、非天然アミノ酸、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるものにも当てはまる。「残基」とは、アミド結合またはアミド結合模倣物によってポリペプチドに組み入れられたアミノ酸またはアミノ酸模倣物をさす。ポリペプチドは、アミノ末端(N末端)およびカルボキシ末端(C末端)を有する。「ポリペプチド」は、ペプチドまたはタンパク質と交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーをさすため、本明細書において使用される。
【0135】
ポリペプチド修飾: 本明細書に開示される抗体のようなポリペプチドおよびペプチドは、未修飾のペプチドと本質的に同一の活性を有し、任意で、他の所望の特性を有する誘導体を作製するため、多様な化学的技術によって修飾され得る。例えば、カルボキシル末端であっても、側鎖であっても、タンパク質のカルボン酸基は、薬学的に許容される陽イオンの塩の形態で提供されてもよいし、またはC1-C16エステルを形成させるためエステル化されてもよいし、または式NR1R2(R1およびR2は、各々独立に、HもしくはC1-C16アルキルであるか、または5員環もしくは6員環のような複素環を形成させるため、組み合わされている)のアミドに変換されてもよい。アミノ末端であっても、側鎖であっても、ペプチドのアミド基は、HCl、HBr、酢酸塩、安息香酸塩、トルエンスルホン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、およびその他の有機塩のような薬学的に許容される酸付加塩の形態で提供されてもよいし、またはC1-C16アルキルもしくはジアルキルアミノに修飾されるか、もしくはさらにアミドに変換されてもよい。
【0136】
ペプチド側鎖のヒドロキシル基は、よく認識されている技術を使用して、C1-C16アルコキシまたはC1-C16エステルへ変換され得る。ペプチド側鎖のフェニルおよびフェノール環は、F、Cl、Br、もしくはIのような1つもしくは複数のハロゲン原子によって、またはC1-C16アルキル、C1-C16アルコキシ、カルボン酸およびそのエステル、もしくはそのようなカルボン酸のアミドによって置換され得る。ペプチド側鎖のメチレン基は、相同なC2-C4アルキレンに拡張され得る。チオールは、アセトアミド基のような多数のよく認識されている保護基のうちの任意のものによって保護され得る。増強された安定性をもたらす構造に対するコンフォメーション制約を選択し、提供するため、環構造を本開示のペプチドへ導入する方法も、当業者は認識するであろう。例えば、酸化された時に、ペプチドがジスルフィド結合を含有し、環状ペプチドが生成されるよう、C末端またはN末端のシステインをペプチドに付加することができる。他のペプチド環化方法には、チオエーテルならびにカルボキシル末端およびアミノ末端のアミドおよびエステルの形成が含まれる。
【0137】
精製された: 精製された、という用語は、絶対的な純度を必要とせず;むしろ、相対的な用語であるものとする。従って、例えば、精製されたペプチド調製物とは、(抗体のような)ペプチドまたはタンパク質が、細胞内のその天然環境にあるペプチドまたはタンパク質より濃縮されているものである。1つの態様において、調製物は、タンパク質またはペプチドが調製物のペプチドまたはタンパク質の総含量の少なくとも50%を表すよう精製される。
【0138】
組換え: 組換え核酸とは、天然に存在しない配列を有するか、または2つのそうでなければ分離されている配列セグメントの人工的な組み合わせによって作成された配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、またはより一般的には、核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって、例えば、遺伝子改変技術によって達成され得る。組換えタンパク質とは、天然に存在しない配列を有するか、または2つのそうでなければ分離されている配列セグメントの人工的な組み合わせによって作成された配列を有するものである。いくつかの態様において、組換えタンパク質は、細菌細胞または真核細胞のような宿主細胞に導入された異種(例えば、組換え)核酸によってコードされる。核酸は、例えば、導入された核酸によってコードされるタンパク質を発現することができるシグナルを有する発現ベクターに導入されてもよいし、または核酸は、宿主細胞染色体に組み込まれてもよい。
【0139】
配列同一性: アミノ酸配列間の類似性は、配列同一性とも呼ばれる、配列間の類似性によって表される。配列同一性は、しばしば、同一性(または類似性もしくは相同性)のパーセンテージによって測定され;そのパーセンテージが高いほど、2つの配列はより類似している。ポリペプチドの相同体、オルソログ、またはバリアントは、標準的な方法を使用して整列化された時、比較的高度の配列同一性を保有するであろう。
【0140】
比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene 73:237-44,1988;Higgins & Sharp,CABIOS 5:151-3,1989;Corpet et al.,Nuc. Acids Res.16:10881-90,1988;Huang et al.Computer Appls.in the Biosciences 8,155-65,1992;およびPearson et al.,Meth.Mol.Bio.24:307-31,1994に記載されている。Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990は、配列アライメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示している。
【0141】
整列化された後、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を計数することによって、一致の数が決定される。パーセント配列同一性は、一致の数を、同定された配列に示される配列の長さ、または(同定された配列に示される配列に由来する100個の連続するヌクレオチドもしくはアミノ酸残基のような)分節された長さのいずれかで割り、その後、得られた値に100を掛けることによって決定される。例えば、1554アミノ酸を有する被験配列と整列化された時に1166の一致を有するペプチド配列は、その被験配列と75.0パーセント同一である(1166÷1554*100=75.0)。パーセント配列同一性の値は、10分の1に丸められる。例えば、75.11、75.12、75.13、および75.14は、75.1に切り捨てられ、75.15、75.16、75.17、75.18、および75.19は、75.2に切り上げられる。長さの値は、必ず、整数である。
【0142】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403,1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと共に使用するため、National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)を含むいくつかの供給元から、そしてインターネット上で入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上のNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。
【0143】
ポリペプチドの相同体およびバリアントは、典型的には、関心対象のアミノ酸配列との全長アライメントにおいて計数された、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性の保有を特徴とする。参照配列に対してさらに大きい類似性を有するタンパク質は、この方法によって査定された時、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性のような増加する同一性のパーセンテージを示すであろう。全長未満の配列が配列同一性について比較される時、相同体およびバリアントは、典型的には、10~20アミノ酸の短いウインドウにおいて少なくとも80%の配列同一性を保有し、参照配列との類似性に依って、少なくとも85%または少なくとも90%もしくは95%の配列同一性を保有し得る。そのような短いウィンドウにおいて配列同一性を決定する方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。当業者は、これらの配列同一性の範囲が、案内のために提供されているに過ぎないことを理解するであろう;提供された範囲に含まれない強く有意な相同体が入手されることも全く可能である。
【0144】
核酸配列の配列比較のため、典型的には、1つの配列が、被験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する時、被験配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータが使用される。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981のローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 85:2444,1988の類似性検索(search for similarity)法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)、または手動アライメントおよび視覚的検査(例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed,Cold Spring Harbor,New York,2012) およびAusubel et al.(In Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,through supplement 104,2013)を参照すること)によって実施され得る。有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、Feng & Doolittle,J.Mol.Evol.35:351-360,1987のプログレッシブアライメント法の単純化を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp,CABIOS 5:151-153,1989によって記載された方法に類似している。PILEUPを使用して、参照配列は、以下のパラメータを使用して、パーセント配列同一性関係を決定するため、他の被験配列と比較される:デフォルトギャップウェイト(3.00)、デフォルトギャップレングスウェイト(0.10)、および重み付きエンドギャップ(weighted end gaps)。PILEUPは、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ、例えば、バージョン7.0から得ることができる(Devereaux et al.,Nuc.Acids Res.12:387-395,1984)。
【0145】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適当なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410,1990およびAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1977に記載されているBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(ncbi.nlm.nih.gov)を通して公に入手可能である。(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムは、11のワードレングス(W)、50のアライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較をデフォルトとして使用する。(アミノ酸配列のための)BLASTPプログラムは、3のワードレングス(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスをデフォルトとして使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989を参照すること)。オリゴヌクレオチドは、約100ヌクレオチド塩基までの長さの直鎖ポリヌクレオチド配列である。
【0146】
本明細書において使用されるように、「少なくとも80%の同一性」との言及は、指定された参照配列に対する「少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらには100%の同一性」をさす。本明細書において使用されるように、「少なくとも90%の同一性」との言及は、指定された参照配列に対する「少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらには100%の同一性」をさす。
【0147】
特異的に結合する: 抗体または抗原結合断片に言及する時、タンパク質およびその他の生物製剤の不均一な集団の存在下で、標的タンパク質の存在を決定する結合反応をさす。従って、指定された条件の下で、抗体は、特定の標的のタンパク質、ペプチド、または多糖(例えば、腫瘍細胞の表面に存在する抗原、例えば、EGFRvIII)と優先的に結合し、試料または対象に存在する他のタンパク質、例えば、同一の組織に由来する野生型(非腫瘍)細胞において発現された野生型EGFRとは有意な量で結合しない。他の態様において、抗体は、EGFRvIIIおよび腫瘍細胞において過剰発現されるEGFRの型と特異的に結合することができ、同一の組織の野生型(非腫瘍)細胞において発現された野生型EGFRとは結合しない。特異的結合は、標準的な方法によって決定され得る。特異的な免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイのフォーマットおよび条件の説明については、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Publications,New York(2013)を参照すること。
【0148】
抗体抗原複合体に関して、抗原と抗体との特異的結合は、約10-7M未満、例えば、約10-8M未満、10-9、またはさらには約10-10M未満のKDを有する。KDとは、ポリペプチドリガンド相互作用または抗体抗原相互作用のような特定の相互作用についての解離定数をさす。例えば、抗体または抗原結合断片と抗原との2分子相互作用について、それは、2分子相互作用の個々の成分の濃度を複合体の濃度で割ったものである。
【0149】
EGFRvIII上のエピトープと特異的に結合する抗体とは、EGFRvIIIタンパク質、例えば、EGFRvIIIを発現する細胞もしくは組織、EGFRvIIIが付着した基質、または生物学的標本中のもしくは生物学的標本から単離されたEGFRvIIIと実質的に結合する抗体である。当然、ある程度の非特異的相互作用が、抗体と(野生型EGFRを発現しない同一の組織型の細胞のような)非標的との間に起こり得る。典型的には、特異的結合は、抗体と、抗原を欠くタンパク質または細胞との間より、はるかに強い会合を、抗体と、抗原を保持するタンパク質または細胞との間にもたらす。特異的結合は、典型的には、このエピトープを欠くタンパク質または細胞または組織と比較して、エピトープを含むタンパク質または標的エピトープを発現する細胞もしくは組織と(単位時間当たりに)結合する抗体の量の2倍超、例えば、5倍超、10倍超、または100倍超の増加をもたらす。そのような条件の下でのタンパク質との特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性のため選択された抗体を必要とする。多様なイムノアッセイフォーマットが、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体またはその他のリガンドを選択するために適切である。例えば、固相ELISAイムノアッセイが、タンパク質と特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を選択するため、ルーチンに使用される。
【0150】
対象: ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリである、生存している多細胞脊椎生物。一例において、対象はヒトである。具体的な例において、対象は癌を有する。付加的な例において、腫瘍の成長または転移の阻害を必要とする対象が選択される。例えば、対象は、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような、EGFRvIIIを発現する腫瘍を有すると診断されており、処置を必要とする。
【0151】
T細胞: 免疫応答のために重要な白血球。T細胞には、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が含まれるが、これらに限定されるわけではない。CD4+ Tリンパ球は、その表面上にCD4を発現する免疫細胞である。ヘルパーT細胞としても公知のこれらの細胞は、抗体応答もキラーT細胞応答も含む免疫応答の組織化を助ける。Th1細胞およびTh2細胞は、ヘルパーT細胞の機能的サブセットである。Th1細胞は、インターフェロン-ガンマを含むサイトカインのセットを分泌し、それらの主な機能は、具体的には、細胞内微生物に関連した感染に対して、貪食細胞によって媒介される防御を刺激することである。Th2細胞は、インターロイキン(IL)-4およびIL-5を含むサイトカインのセットを分泌し、それらの主な機能は、IgEおよび好酸球/マスト細胞によって媒介される免疫反応を刺激し、Th1応答をダウンレギュレートすることである。
【0152】
治療剤: 包括的な意味で使用され、処置剤、予防剤、および補充剤を含む。治療剤は、疾患または障害を有する対象において、状態の特定のセットを寛解させるために使用される。
【0153】
疾患の処置または防止: 例えば、腫瘍のような疾患のリスクを有するか、または疾患を有する対象において、疾患または状態の完全な発症を阻害すること。「処置」とは、発症開始後の疾患または病理学的状態の徴候または症状を寛解させる治療的介入をさす。「寛解」という用語は、疾患または病理学的状態に関して、処置の観察可能な有益な効果をさす。有益な効果は、例えば、感受性の対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部もしくは全部の臨床症状の重症度の低下、疾患の進行の緩徐化、対象の全体的な健康状態もしくは健康の改善、または特定の疾患に特異的な当技術分野において周知のその他のパラメータによって証拠付けられ得る。「予防的」処置とは、疾患の徴候を示していない対象、または初期の徴候のみを示す対象へ、病理の発症のリスクを減少させる目的で投与される処置である。
【0154】
毒素: 細胞と接触した時に細胞傷害を誘導するエフェクター分子。毒素の具体的な非限定的な例には、アブリン、リシン、アウリスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE;例えば、Francisco et al.,Blood,102:1458-1465,2003を参照すること))およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF;例えば、Doronina et al.,BioConjugate Chem.,17:114-124,2006を参照すること))、マイタンシノイド(例えば、DM1;例えば、Phillips et al.,Cancer Res.,68:9280-9290,2008を参照すること)、シュードモナス外毒素(PE、例えば、PE35、PE37、PE38、およびPE40)、ジフテリア毒素(DT)、ボツリヌス毒素、サポリン、レストリクトシン(restrictocin)、もしくはゲロニン、またはそれらの修飾型毒素、または細胞成長を直接もしくは間接的に阻害するか、もしくは細胞を死滅させるその他の毒性薬剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。例えば、PEおよびDTは、典型的には、肝毒性を通して死亡をもたらす高度に毒性の化合物である。しかしながら、PEおよびDTは、(PEのドメインIaおよびDTのB鎖のような)毒素のネイティブターゲティング成分を除去し、それを抗体のような異なるターゲティング部分に交換することによって、免疫毒素として使用するための形態へ修飾され得る。
【0155】
形質転換された: 形質転換された細胞とは、分子生物学技術によって核酸分子が導入された細胞である。本明細書において使用されるように、形質転換された等の用語(例えば、形質転換、トランスフェクション、形質導入等)には、核酸分子をそのような細胞へ導入することができる全ての技術、例えば、ウイルスベクターによる形質導入、プラスミドベクターによる形質転換、ならびに電気穿孔、リポフェクション、およびパーティクルガン加速によるDNAの導入が含まれる。
【0156】
ベクター: 関心対象のタンパク質のコード配列と機能的に連結されており、コード配列を発現させることができるプロモーターを保持している(DNA分子またはRNA分子のような)核酸分子を含有する実体。非限定的な例には、裸のDNAまたは(脂質および/もしくはタンパク質に)パッケージングされたDNA、裸のRNAまたはパッケージングされたRNA、複製不可能であり得るウイルスもしくは細菌もしくはその他の微生物、または複製可能であり得るウイルスもしくは細菌もしくはその他の微生物の小成分が含まれる。ベクターは、時に、構築物とも呼ばれる。組換えDNAベクターとは、組換えDNAを有するベクターである。ベクターは、複製開始点のような、宿主細胞における複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1つまたは複数の選択可能マーカー遺伝子およびその他の遺伝要素も含み得る。ウイルスベクターとは、1つまたは複数のウイルスに由来するいくつかの核酸配列を少なくとも有する組換え核酸ベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、EGFRvIIIと特異的に結合する開示された抗体または抗原結合断片をコードする核酸分子を含む。
【0157】
~のために十分な条件の下で: 所望の活性を可能にする環境を記載するために使用される語句。
【0158】
II.いくつかの態様の説明
EGFRvIIIと特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体およびその抗原結合断片が提供される。いくつかの態様において、抗体および抗原結合断片は、以下に限定されるわけではないが、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような、EGFRvIIIを発現する腫瘍を処置するために使用され得る。抗体および抗原結合断片と薬学的に許容される担体とを含む組成物も、本明細書に開示される。抗体または抗原結合断片をコードする核酸、これらの核酸を含む発現ベクター、および核酸を発現する単離された宿主細胞も、提供される。
【0159】
EGFRvIIIと特異的に結合するモノクローナル抗体およびその抗原結合断片を含む組成物は、研究、診断、および治療の目的のために使用され得る。例えば、モノクローナル抗体は、EGFRvIIIを発現する腫瘍を有する対象を診断するため、または処置するため、使用され得る。
【0160】
A.抗体および抗原結合断片
EGFRvIIIのエピトープと特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体および抗原結合断片が提供される。いくつかの態様において、抗体および抗原結合断片は、インビボでEGFRvIIIタンパク質の生物学的機能または特性を阻害することができる(例えば、以下に限定されるわけではないが、腫瘍成長の低下および/もしくは阻害、または転移腫瘍の低下および/もしくは阻害)。EGFRvIIIと結合し、野生型EGFRとは結合しないいくつかのモノクローナル抗体が、本明細書に開示される。さらに、モノクローナル抗体40H3は、腫瘍細胞において過剰発現された時、EGFRに結合するが、野生型細胞においては結合しない。
【0161】
正常な条件の下で立体的に利用不可能な1つの構造的要素が、287~302(成熟受容体のナンバリングまたは全長受容体の301~326)のジスルフィドによって制限されたループであり、これは、EGFRvIIIにおいては露出している。いくつかの態様において、D290およびE293が、抗体または抗原結合断片がEGFR287-302ループに結合するために必要とされる。この結合特徴を有する(1D9、3D10、4A4、9G11、および11E3のような)例示的な抗体が提供される。他の態様において、E293が、抗体または抗原結合断片がEGFR287-302ループと結合するために必要とされる。この結合特徴を有する(11E11のような)例示的な抗体が提供される。さらなる態様において、R300が、抗体または抗原結合断片がEGFR287-302ループと結合するために必要とされる。この結合特徴を有する(40H3のような)例示的な抗体が提供される。開示された抗体は、キメラまたはヒト化であり得、従って、1つまたは複数の異種フレームワーク領域を含み得る。
【0162】
いくつかの態様において、EGFRvIII特異的抗体は、可変重鎖領域(VH)および可変軽鎖領域(VL)を含み、EGFRvIIIと特異的に結合する。いくつかの態様において、モノクローナル抗体は、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、およびHCDR3を含むVH、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、およびLCDR3を含むVLを含む。
【0163】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、EGFR287-302ループのようなEGFRのエピトープと特異的に結合することができ、中和性である。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、開示された抗体のうちの1つの、それぞれ、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含むVHおよびVLを含む。
【0164】
以下のモノクローナル抗体についての記述は、少なくとも1つのCDRを各々含むVHおよびVLを含む単離されたモノクローナル抗体をさす。当業者は、(Kabat、Chothia、またはIMGT のナンバリングスキームのような)様々なCDRナンバリングスキームが、CDRの位置を決定するために使用され得ることを理解するであろう。開示されたモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列およびCDRの位置は、本明細書において、IGMTナンバリングを使用して示される。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される抗体の特定のアミノ酸を参照する時、様々なCDRナンバリングスキームの使用を容易に理解するであろう。ChothiaおよびKabbatを使用したCDRの同定のためのプログラムは、インターネット上で入手可能である。
【0165】
いくつかの態様において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(a)それぞれSEQ ID NO:1および2として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[40H3];
(b)それぞれSEQ ID NO:11および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[3D10/9G11コンセンサス];
(c)それぞれSEQ ID NO:13および14として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[1D9/4A4コンセンサス];または
(d)それぞれSEQ ID NO:15および16として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[11E11/11G3コンセンサス]
のうちの1つを含む。CDRは、例えば、IMGT、Kabat、またはChothiaを使用して同定され得る。他の態様において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、
(a)それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[3D10];
(b)それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[9G11];
(c)それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[1D9];
(d)それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[4A4];
(e)それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[11E11];または
(f)それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるVHおよびVLの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、VHおよびVL[11G3]
のうちの1つを含む。CDRは、例えば、IMGT、Kabat、またはChothiaを使用して同定され得る。
【0166】
いくつかの非限定的な例において、
(a)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:5、6、7、8、9、および10として示されるアミノ酸配列を含む[40H3];
(b)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:20、21、22、23、24、および25として示されるアミノ酸配列を含む[3D10];
(c)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:20、28、22、23、24、および25として示されるアミノ酸配列を含む[9G11];
(d)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:33、34、35、36、37、および38として示されるアミノ酸配列を含む[1D9および4A4];
(e)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:47、48、49、50、51、および52として示されるアミノ酸配列を含む[11E11];または
(f)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:47、57、49、58、51、および52として示されるアミノ酸配列を含む[11G3]。これらの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、EGFRvIIIと特異的に結合する。1つの非限定的な例において、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、SEQ ID NO:5、6、7、8、9、および10として示されるアミノ酸配列を含み[40H3]、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、腫瘍細胞において過剰発現されたEGFRとも結合する。
【0167】
いくつかの態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[40H3]。他の態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[3D10]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[9G11]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[1D9]。さらに他の態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[4A4]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[11E11]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む[11G3]。これらの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、EGFRvIIIと特異的に結合する。1つの非限定的な例において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、腫瘍細胞において過剰発現されたEGFRとも結合する。
【0168】
いくつかの態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[40H3]。他の態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[3D10]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[9G11]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[1D9]。さらに他の態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[4A4]。さらなる態様において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[11E11]。さらなる態様において、VHおよびは、それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるアミノ酸配列と、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む[11G3]。これらの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、EGFRvIIIと特異的に結合する。1つの非限定的な例において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、腫瘍細胞において過剰発現されたEGFRとも結合する。
【0169】
さらなる態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:5、6、7、8、9、および10として示されるアミノ酸配列を含む[40H3]。他の態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:17および12として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:20、21、22、23、24、および25として示されるアミノ酸配列を含む[3D10]。さらなる態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:26および12として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:20、28、22、23、24、および25として示されるアミノ酸配列を含む[9G11]。さらなる態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:29および30として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:33、34、35、36、37、および38として示されるアミノ酸配列を含む[1D9]。さらに他の態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:39および40として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:33、34、35、36、37、および38として示されるアミノ酸配列を含む[4A4]。さらなる態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:43および44として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:47、48、49、50、51、および52として示されるアミノ酸配列を含む[11E11]。さらなる態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:53および54として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:47、57、49、58、51、および52として示されるアミノ酸配列を含む[11G3]。これらの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、EGFRvIIIと特異的に結合する。1つの非限定的な例において、VHおよびVLは、SEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれSEQ ID NO:5、6、7、8、9、および10として示されるアミノ酸配列を含み、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、腫瘍細胞において過剰発現されたEGFRとも結合する。
【0170】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:1および2として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。他の態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:17および12として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。さらなる態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:26および12として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。付加的な態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:29および30として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。さらなる態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:39および40として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。さらなる態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:43および44として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。他の態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:53および54として示されるアミノ酸配列を含む、VHおよびVLを含む。これらの態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、EGFRvIIIと特異的に結合する。1つの非限定的な例において、VHおよびVLは、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2として示されるアミノ酸配列を含み、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、腫瘍細胞において過剰発現されたEGFRとも結合する。
【0171】
1.抗体および抗原結合断片の付加的な説明
抗体または抗原結合断片は、ヒト化抗体またはその抗原結合断片であり得る。抗体または抗原結合断片は、1つまたは複数のヒトフレームワーク領域のような(これに限定されるわけではない)任意の適当なフレームワーク領域を含み得る。ヒトフレームワーク領域、およびヒト抗体フレームワーク領域において作成され得る変異は、当技術分野において公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,585,089号を参照すること)。キメラ抗体も提供される。以下に限定されるわけではないが、異なるマウスフレームワーク領域のような異種フレームワーク領域が、抗体の重鎖または軽鎖に含まれ得る(例えば、Jones et al.,Nature 321:522,1986;Riechmann et al.,Nature 332:323,1988;Verhoeyen et al.,Science 239:1534,1988;Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285,1992;Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437,1992;およびSinger et al.,J.Immunol.150:2844,1993を参照すること)。
【0172】
抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。抗体は、例えば、IgM抗体、またはIgG抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4であり得る。EGFRvIIIと特異的に結合する抗体のクラスは、他のクラスにスイッチされてもよい。1つの局面において、VLまたはVHをコードする核酸分子が、それぞれ、軽鎖または重鎖の定常領域をコードする核酸配列を含まないよう、当技術分野において周知の方法を使用して単離される。VLまたはVHをコードする核酸分子は、次いで、免疫グロブリン分子の異なるクラスに由来するCLまたはCHをコードする核酸配列と機能的に連結される。これは、当技術分野において公知であるように、CL鎖またはCH鎖を含むベクターまたは核酸分子を使用して達成され得る。例えば、最初はIgGであったEGFRvIIIと特異的に結合する抗体を、クラススイッチすることができる。クラススイッチは、あるIgGサブクラスを別のサブクラスへ、例えば、IgG1をIgG2、IgG3、またはIgG4へ変換するため、使用され得る。
【0173】
いくつかの例において、開示された抗体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体等のような抗体のオリゴマーである。
【0174】
(a)結合親和性
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、1.0×10-8M以下、5.0×10-8M以下、1.0×10-9M以下、5.0×10-9M以下、1.0×10-10M以下、5.0×10-10M、または1.0×10-11M以下の(例えば、Kdによって測定される)親和性で、EGFRvIIIタンパク質と特異的に結合することができる。Kdは、例えば、公知の方法を使用して、関心対象の抗体のFabバージョンおよびその抗原によって実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定され得る。1つのアッセイにおいて、Fabの抗原に対する溶液結合親和性は、未標識の抗原の滴定系列の存在下で最小濃度の(125I)-標識抗原によってFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体によってコーティングされたプレートによって、結合した抗原を捕獲することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照すること)。アッセイのための条件を確立するため、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を50mM炭酸ナトリウム(pH 9.6)中の5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)で一夜コーティングし、その後、室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc#269620)において、100μMまたは26pM[125I]-抗原を、(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab-12と一致する)関心対象のFabの段階希釈液と混合する。次いで、関心対象のFabを一夜インキュベートする;しかしながら、平衡に達することを確実にするため、インキュベーションは、より長期間(例えば、約65時間)継続されてもよい。その後、混合物を、室温で(例えば、1時間)インキュベートするため、捕獲プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートをPBS中の0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートを乾燥させた後、150μl/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するため、選択する。
【0175】
別のアッセイにおいて、Kdは、およそ10レスポンスユニット(RU)で固定化された抗原CM5チップによって、25℃で、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され得る。簡単に説明すると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE(登録商標),Inc.)を、供給業者の説明書に従い、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH 4.8)で5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈した後、およそ10レスポンスユニット(RU)のカップリングされたタンパク質を達成するため、5l/分の流速で注入する。抗原の注入の後、未反応基をブロッキングするため、1Mエタノールアミンを注入する。動態測定のため、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)によるFabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、25℃で、およそ25l/分の流速で注入する。会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時に適合させることによって、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software version 3.2)を使用して、会合速度(kon)および解離速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照すること。前記表面プラズモン共鳴アッセイによって会合速度が106M-1s-1を超える場合には、ストップフローを備えた(stop-flow equipped)分光光度計(Aviv Instruments)または攪拌キュベット付きの8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)のような分光計において測定される、増加する濃度の抗原の存在下でのPBS(pH 7.2)中の20nM抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度(励起=295nm;放射=340nm、16nmバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって、会合速度を決定することができる。
【0176】
(b)多重特異性抗体
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体のような多重特異性抗体に含まれる。そのような多重特異性抗体は、同一の型または異なる型の2つ以上の抗体、(scFvのような)抗原結合断片の架橋のような公知の方法によって作製され得る。多重特異性抗体を作成する例示的な方法には、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開番号WO2013/163427に記載されたものが含まれる。適当な架橋剤には、(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルのような)適切なスペーサーによって分離された2つの異なる反応性基を有するヘテロ二官能性のもの、または(スベリン酸ジスクシンイミジルのような)ホモ二官能性のものが含まれる。そのようなリンカーは、Pierce Chemical Company(Rockford,Ill)より入手可能である。
【0177】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、EGFRvIIIと特異的に結合し、さらに、Her-2のような腫瘍抗原、またはプログラム細胞死(PD)-1もしくはPDリガンド(PD-L1)もしくはPD-L2のようなチェックポイント阻害剤とも特異的に結合する二重特異性抗体に含まれる。
【0178】
様々な型の多重特異性抗体が公知である。二重特異性単鎖抗体は、単一の核酸分子によってコードされ得る。二重特異性単鎖抗体およびそのような抗体を構築する方法の例は、当技術分野において公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,076,459号、第8,017,748号、第8,007,796号、第7,919,089号、第7,820,166号、第7,635,472号、第7,575,923号、第7,435,549号、第7,332,168号、第7,323,440号、第7,235,641号、第7,229,760号、第7,112,324号、第6,723,538号を参照すること)。二重特異性単鎖抗体の付加的な例は、PCT出願番号WO 99/54440;Mack,J.Immunol.,158:3965-3970,1997;Mack,PNAS,92:7021-7025,1995;Kufer,Cancer Immunol.Immunother.,45:193-197,1997;Loffler,Blood,95:2098-2103,2000;およびBruhl,J.Immunol.,166:2420-2426,2001に見出され得る。二重特異性Fab-scFv(「バイボディ(bibody)」)分子の作製は、例えば、Schoonjans et al.(J.Immunol.165:7050-57,2000)およびWillems et al.(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161-76,2003)に記載されている。バイボディについて、例えば、1つのscFvがFab鎖のC末端に融合したバイボディを作製するため、scFv分子を、VL-CL(L)またはVH-CH1鎖のうちの1つと融合させることができる。
【0179】
(c)抗原結合断片
重鎖および軽鎖の可変領域を含み、EGFRvIIIと特異的に結合する、Fab、F(ab')2、およびFvのような抗原結合断片が、本開示に包含される。これらの抗体断片は、抗原と選択的に結合する能力を保持し、「抗原結合」断片である。これらの断片には、以下のものが含まれる:
(1)抗体分子の1価抗原結合断片を含有する断片、Fabは、完全な軽鎖および1本の重鎖の一部分を与える、酵素パパインによる完全抗体の消化によって作製され得る。
(2)抗体分子の断片、Fab'は、完全な軽鎖および重鎖の一部分を与えるため、完全抗体をペプシンによって処理し、その後、還元することによって得ることができる;1抗体分子につき2つのFab'断片が得られる。
(3)その後の還元なしに、完全抗体を酵素ペプシンによって処理することによって得ることができる抗体の断片、(Fab')2;F(ab')2は、2つのジスルフィド結合によってつながれた2つのFab'断片の二量体である。
(4)2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する、遺伝学的に改変された断片、Fv、ならびにそのジスルフィド連結型(dsFV)。
(5)遺伝学的に融合した単鎖分子として適当なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝学的に改変された分子として定義される(scFvのような)単鎖抗体。scFvは、免疫グロブリンの軽鎖可変領域および免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合した融合タンパク質である(例えば、Ahmad et al.,Clin.Dev.Immunol.,2012,doi:10.1155/2012/980250;Marbry,IDrugs,13:543-549,2010を参照すること)。scFvにおけるVHドメインおよびVLドメインの分子内方向は、提供された抗体(例えば、提供された多重特異性抗体)について決定的ではない。従って、両方の可能な配置(VHドメイン-リンカードメイン-VLドメイン;VLドメイン-リンカードメイン-VHドメイン)を有するscFvが使用され得る。ds-scFvのような他の型も有用である。
(6)scFVの二量体として定義される単鎖抗体の二量体(scFV2)。これは「ミニ抗体」とも名付けられている。
【0180】
これらの断片を作成する方法は、当技術分野において公知である(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,2nd,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,2013を参照すること)。
【0181】
さらなる態様の群において、抗体結合断片は、典型的には約25kDaであり、各重鎖および各軽鎖について3つのCDRを含む完全な抗原結合部位を含有する、Fv抗体であり得る。Fv抗体を作製するためには、宿主細胞において、VHおよびVLを2つの個々の核酸構築物から発現させることができる。VHおよびVLが非連続的に発現される場合、Fv抗体の鎖は、典型的には、非共有結合性の相互作用によってつながれる。しかしながら、これらの鎖は、希釈時に解離する傾向を有するため、グルタルアルデヒド、分子内ジスルフィド、またはペプチドリンカーを通して、鎖を架橋する方法が開発されている。従って、一例において、Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がジスルフィド結合によって化学的に連結されたジスルフィド安定化Fv(dsFv)であり得る。
【0182】
付加的な例において、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続されたVH鎖およびVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続された、VHドメインおよびVLドメインをコードする核酸分子を構築することによって調製される。核酸分子が発現ベクターへ挿入され、その後、それが、哺乳動物細胞のような宿主細胞へ導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを含む単一のポリペプチド鎖を合成する。scFvを作製する方法は、当技術分野において公知である(Whitlow et al.,Methods:a Companion to Methods in Enzymology,Vol.2,page 97,1991;Bird et al.,Science 242:423,1988;米国特許第4,946,778号;Pack et al.,Bio/Technology 11:1271,1993;Ahmad et al.,Clin.Dev.Immunol.,2012,doi:10.1155/2012/980250;Marbry,IDrugs,13:543-549,2010を参照すること)。単鎖抗体の二量体(scFV2)も企図される。
【0183】
抗原結合断片は、抗体のタンパク質加水分解によって、または断片をコードするDNAの(大腸菌(E.coli)細胞のような)宿主細胞における発現によって調製され得る。抗原結合断片は、従来の方法による完全抗体のペプシンまたはパパインによる消化によっても得ることができる。例えば、抗原結合断片は、F(ab')2と表記される5S断片を提供するペプシンによる抗体の酵素的切断によって作製され得る。この断片は、3.5S Fab' 1価断片を作製するため、チオール還元剤を使用して、任意で、ジスルフィド結合の切断に起因するスルフヒドリル基の保護基も使用して、さらに切断され得る。あるいは、ペプシンを使用した酵素的切断は、直接、2つの1価Fab'断片および1つのFc断片を生成する(米国特許第4,036,945号および米国特許第4,331,647号ならびにそれらに含有される参照;Nisonhoff et al.,Arch.Biochem.Biophys.89:230,1960;Porter,Biochem.J.73:119,1959;Edelman et al.,Methods in Enzymology,Vol.1,page 422,Academic Press,1967;およびColigan et al.at sections 2.8.1-2.8.10 and 2.10.1-2.10.4を参照すること)。
【0184】
1価の軽鎖-重鎖断片を形成させるための重鎖の分離、断片のさらなる切断、またはその他の酵素的、化学的、もしくは遺伝学的な技術のような、抗体を切断する他の方法も、断片が、完全抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用され得る。
【0185】
ドメイン抗体(dAb)と呼ばれる抗原結合シングルVHドメインも、免疫されたマウスのゲノムDNAから増幅されたマウスVH遺伝子のライブラリから同定されている(Ward et al.Nature 341:544-546,1989)。高い親和性で抗原に結合することができるヒトシングル免疫グロブリン可変ドメインポリペプチドも記載されている(例えば、PCT公開番号WO 2005/035572およびWO 2003/002609を参照すること)。本明細書に開示されたCDRは、dAbに含まれていてもよい。
【0186】
いくつかの態様において、開示された抗体に由来する重鎖および/または軽鎖の相補性決定領域(CDR)のうちの1つまたは複数は、足場タンパク質のようなもう1つのタンパク質の表面において発現される。足場タンパク質の表面における抗体のドメインの発現は、当技術分野において公知である(例えば、Liu et al.,J.Virology 85(17):8467-8476,2011を参照すること)。そのような発現は、EGFRvIIIに対する結合を保持するキメラタンパク質を作る。いくつかの具体的な態様において、重鎖CDR1、CDR2、および/またはCDR3のうちの1つまたは複数のような、重鎖CDRのうちの1つまたは複数が、足場タンパク質に移植される。1つまたは複数のCDRは、ダイアボディまたは別の型の単鎖抗体分子に含まれていてもよい。
【0187】
(d)バリアント
ある種の態様において、本明細書において提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改善することが望ましいかもしれない。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を保有することを条件として、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせが、最終構築物に到達するために作成され得る。
【0188】
ある種の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発のための関心対象の部位には、CDRおよびフレームワーク領域が含まれる。アミノ酸置換を関心対象の抗体に導入し、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについて、生成物をスクリーニングすることができる。
【0189】
バリアントは、典型的には、正確な折り畳みおよびVH領域とVL領域との間の安定化のために必要なアミノ酸残基を保持し、分子の低いpIおよび低い毒性を保存するための残基の電荷特徴を保持する。収率を増加させるためのアミノ酸置換は、VH領域およびVL領域において作成され得る。機能的に類似しているアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換の表は、当業者に周知である。以下の6つの群は、相互に保存的置換であると見なされるアミノ酸の例である:
(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リジン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0190】
いくつかの態様において、抗体の重鎖は、SEQ ID NO:1、11、13、15、17、26、29、39、43、または53のうちの1つとして示されるアミノ酸配列と比較して、10個まで(例えば、1個まで、2個まで、3個まで、4個まで、5個まで、6個まで、7個まで、8個まで、または9個まで)の(保存的アミノ酸置換のような)アミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、抗体の軽鎖は、SEQ ID NO:2、12、14、16、30、40、44、または54のうちの1つとして示されるアミノ酸配列と比較して、10個まで(例えば、1個まで、2個まで、3個まで、4個まで、5個まで、6個まで、7個まで、8個まで、または9個まで)の(保存的アミノ酸置換のような)アミノ酸置換を含む。
【0191】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、公知のフレームワーク領域と比較して、または本明細書に開示された抗体のフレームワーク領域と比較して、10個まで(例えば、1個まで、2個まで、3個まで、4個まで、5個まで、6個まで、7個まで、8個まで、または9個まで)の(保存的アミノ酸置換のような)アミノ酸置換を、抗体の重鎖、および/もしくは抗体の軽鎖、または抗体の重鎖および軽鎖のフレームワーク領域に含み、EGFRvIIIタンパク質に対する特異的結合活性を維持していてもよい。
【0192】
ある種の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような変更が抗体の抗原結合能を実質的に低下させない限り、1つまたは複数のCDRに存在し得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変更(例えば、本明細書において提供される保存的置換)が、CDRにおいて作成され得る。前記に提供されたバリアントVH配列およびバリアントVL配列のある種の態様において、各CDRは、変更されていないか、または1個以下、2個以下、もしくは3個以下のアミノ酸置換を含有する。
【0193】
抗体の結合親和性を増加させるため、天然免疫応答における抗体の親和性成熟を担うインビボ体細胞変異過程と類似した過程において、例えば、H-CDR3領域またはL-CDR3領域において、VLセグメントおよびVHセグメントをランダムに変異させることができる。従って、それぞれH-CDR3またはL-CDR3に相補的なPCRプライマーを使用して、VH領域およびVL領域を増幅することによって、インビトロ親和性成熟を達成することができる。この過程においては、得られたPCR産物が、VHおよび/またはVLのCDR3領域にランダム変異が導入されたVHセグメントおよびVLセグメントをコードするよう、いくつかの位置において4ヌクレオチド塩基のランダム混合物がプライマーに「添加(spiked)」される。これらのランダムに変異させられたVHセグメントおよびVLセグメントを、EGFRvIIIに対する結合親和性を決定するために試験することができる。インビトロ親和性成熟の方法は公知である(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)およびHoogenboom et al.in Methods in Molecular Biololy 178:1-37(O'Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,(2001)を参照すること)。
【0194】
Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載されたような、変異誘発のため標的とされ得る抗体の残基または領域の同定のために有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法においては、残基または標的残基の群(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluのような荷電残基)を同定し、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるか否かを決定するため、中性または陰性荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に交換する。最初の置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置において、さらなる置換を導入することができる。あるいは、またはさらに、抗原抗体複合体の結晶構造を、抗体と抗原との間の接触点を同定するために使用する。そのような接触残基および近隣残基を、置換の候補として標的とするか、または排除することができる。所望の特性を含有するか否かを決定するため、バリアントをスクリーニングすることができる。
【0195】
ある種の態様において、抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片のグリコシル化の程度を増加させるか、または減少させるため、変更され得る。グリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作られるか、または除去されるよう、アミノ酸配列を変更することによって便利に達成され得る。
【0196】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着した炭水化物を変更することができる。哺乳動物細胞によって産生されるネイティブ抗体は、典型的には、一般に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって付着した分岐型(branched)バイアンテナ型(biantennary)オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照すること。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびにバイアンテナ型オリゴ糖構造の「ステム」内のGlcNAcに付着したフコースが含まれ得る。いくつかの態様において、抗体内のオリゴ糖の修飾は、ある種の改善された特性を有する抗体バリアントを作るため、作成され得る。
【0197】
1つの態様において、Fc領域に(直接または間接的に)付着したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO 2008/077546に記載されている、MALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn 297に付着した全ての糖構造(例えば、複合型、ハイブリッド型、および高マンノース型の構造)の合計に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基をさす;しかしながら、Asn297は、抗体の軽微な配列変動のため、297位の約±3アミノ酸上流または下流、即ち、294位~300位に位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開番号US 2003/0157108(Presta,L.);US 2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照すること。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連した刊行物の例には、US 2003/0157108;WO 2000/61739;WO 2001/29246;US 2003/0115614;US 2002/0164328;US 2004/0093621;US 2004/0132140;US 2004/0110704;US 2004/0110282;US 2004/0109865;WO 2003/085119;WO 2003/084570;WO 2005/035586;WO 2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損しているLec 13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願番号US 2003/0157108 A1(Presta,L);およびWO 2004/056312 A1(Adamsら)、特に、実施例11)、ならびにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞のようなノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);およびWO2003/085107を参照すること)が含まれ得る。
【0198】
例えば、抗体のFc領域に付着したバイアンテナ型オリゴ糖がバイセクティングGlcNAcを含む、バイセクト型(bisected)オリゴ糖を含む抗体バリアントがさらに提供される。そのような抗体バリアントは、低下したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO 2003/011878(Jean-Mairetら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);およびUS 2005/0123546(Umanaら)に記載されている。Fc領域に付着したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を含む抗体バリアントも、提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO 1997/30087(Patelら);WO 1998/58964(Raju,S.);およびWO 1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0199】
いくつかの態様において、抗体の定常領域は、抗体のインビボ半減期を最適化するための1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。IgG Abの血清半減期は、新生児型Fc受容体(FcRn)によって制御される。従って、いくつかの態様において、抗体は、FcRnとの結合を増加させるアミノ酸置換を含む。IgG定常領域における置換T250QおよびM428L(例えば、Hinton et al.,J Immunol.,176:346-356,2006を参照すること);M428LおよびN434S(「LS」変異、例えば、Zalevsky,et al.,Nature Biotechnology,28:157-159,2010を参照すること);N434A(例えば、Petkova et al.,Int.Immunol.,18:1759-1769,2006を参照すること);T307A、E380A、およびN434A(例えば、Petkova et al.,Int.Immunol.,18:1759-1769,2006を参照すること);ならびにM252Y、S254T、およびT256E(例えば、Dall’Acqua et al.,J.Biol.Chem.,281:23514-23524,2006を参照すること)のような、いくつかのそのような置換は、当業者に公知である。
【0200】
いくつかの態様において、抗体の定常領域は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を最適化するための1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。ADCCは、主に、密接に関連したFcγ受容体のセットを通して媒介される。いくつかの態様において、抗体は、FcγRIIIaとの結合を増加させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。IgG定常領域における置換、S239DおよびI332E(例えば、Lazar et al.,Proc.Natl.,Acad.Sci.U.S.A.,103:4005-4010,2006を参照すること);ならびにS239D、A330L、およびI332E(例えば、Lazar et al.,Proc.Natl.,Acad.Sci.U.S.A.,103:4005-4010,2006を参照すること)のような、いくつかのそのような置換は、当業者に公知である。
【0201】
FcRnおよびFcγRIIIaとの増加した結合を有するIgG定常領域を生成するため、前記置換の組み合わせが含まれてもよい。組み合わせは、抗体の半減期およびADCCを増加させる。例えば、そのような組み合わせには、Fc領域に以下のアミノ酸置換を有する抗体が含まれる:(1)S239D/I332EおよびT250Q/M428L;(2)S239D/I332EおよびM428L/N434S;(3)S239D/I332EおよびN434A;(4)S239D/I332EおよびT307A/E380A/N434A;(5)S239D/I332EおよびM252Y/S254T/T256E;(6)S239D/A330L/I332EおよびT250Q/M428L;(7)S239D/A330L/I332EおよびM428L/N434S;(8)S239D/A330L/I332EおよびN434A;(9)S239D/A330L/I332EおよびT307A/E380A/N434A;または(10)S239D/A330L/I332EおよびM252Y/S254T/T256E。
【0202】
いくつかの例において、抗体またはその抗原結合断片は、感染細胞に対して直接細胞傷害性であるよう、または補体、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、もしくはマクロファージによる食作用のような天然の防御を使用するよう、修飾される。
【0203】
ある種の態様において、本明細書において提供される抗体は、当技術分野において公知であり、容易に入手可能である付加的な非タンパク質部分を含有するよう、さらに修飾され得る。抗体の誘導体化のための適当な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されるわけではない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のため、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐型または非分岐型であり得る。抗体に付着したポリマーの数は変動し得、複数のポリマーが付着している場合、それらは、同一の分子であってもよいし、または異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または型は、改善すべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が明確な条件の下で治療において使用されるか否か等を含むが、これらに限定されるわけではない考慮に基づき、決定され得る。
【0204】
抗体または抗原結合断片は、誘導体化されてもよいし、または(別のペプチドもしくはタンパク質のような)別の分子と連結されてもよい。一般に、抗体または抗原結合断片は、誘導体化または標識によってEGFRvIIIとの結合が有害な影響を受けないよう、誘導体化される。例えば、抗体または抗原結合断片は、(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性の会合、またはその他の方法によって)1つまたは複数の他の分子実体、例えば、別の抗体(例えば、二重特異性抗体もしくはダイアボディ)、検出可能マーカー、エフェクター分子、または(ストレプトアビジンコア領域もしくはポリヒスチジンタグのような)抗体もしくは抗体の一部分と別の分子との会合を媒介することができるタンパク質もしくはペプチドと機能的に連結され得る。
【0205】
本明細書において提供される開示された抗体が結合するのと同一のEGFRvIII上のエピトープと結合する抗体も含まれる。EGFR287-302ループ上のそのようなエピトープと結合する抗体は、(実施例に記載されるもののような)結合アッセイにおいて、本明細書において提供される抗体と相互に競合する(例えば、統計的に有意な様式で、結合を競合的に阻害する)能力に基づき、同定され得る。106×Kdより高い競合抗体濃度の競合抗体の存在下で、競合抗体が、本開示の抗体のEGFR287-302ループ結合を50%超阻害する時、その抗体は、結合について「競合する」。ある種の態様において、本開示の抗体と同一のEGFR287-302ループ上のエピトープと結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、本明細書に記載されるように、調製され、単離され得る。
【0206】
B.コンジュゲート
EGFRvIIIに対して特異的なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、当業者に公知の多数の手段を使用して、エフェクター分子または検出可能マーカーのような薬剤とコンジュゲートされ得る。共有結合性および非共有結合性の両方の付着手段が使用され得る。コンジュゲートには、エフェクター分子または検出可能マーカーと、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体または抗原結合断片との共有結合が存在する分子が含まれるが、これに限定されるわけではない。化学療法剤、抗血管新生剤、毒素、125I、32P、14C、3H、および35Sのような放射性薬剤、ならびにその他の標識、標的部分、およびリガンド等を含む(が、これらに限定されるわけではない)様々なエフェクター分子および検出可能マーカーが使用され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0207】
具体的なエフェクター分子または検出可能マーカーの選択は、具体的な標的分子または標的細胞、および所望の生物学的効果によって異なる。従って、例えば、エフェクター分子は、(腫瘍細胞のような)特定の標的細胞の死をもたらすために使用される細胞毒であり得る。
【0208】
エフェクター分子および検出可能マーカーは、当業者に公知の多数の手段を使用して、関心対象の抗体または抗原結合断片と連結され得る。共有結合性および非共有結合性の両方の付着手段が使用され得る。エフェクター分子または検出可能マーカーを抗体または抗原結合断片に付着させる手法は、エフェクターの化学構造によって変動する。ポリペプチドは、典型的には、エフェクター分子または検出可能マーカーの結合をもたらす、抗体上の適当な官能基との反応のために利用可能なカルボン酸(COOH)基、遊離アミン(-NH2)基、またはスルフヒドリル(-SH)基のような多様な官能基を含有する。あるいは、抗体または抗原結合断片は、付加的な反応性官能基を露出させるか、または付着させるため、誘導体化される。誘導体化は、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)から入手可能なもののような、多数の公知のリンカー分子の付着を含み得る。リンカーは、抗体または抗原結合断片をエフェクター分子または検出可能マーカーと接合するために使用される任意の分子であり得る。リンカーは、抗体または抗原結合断片、およびエフェクター分子または検出可能マーカーの両方と共有結合を形成することができる。適当なリンカーは、当業者に公知であり、直鎖型もしくは分岐型の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーを含むが、これらに限定されるわけではない。抗体または抗原結合断片、およびエフェクター分子または検出可能マーカーが、ポリペプチドである場合、リンカーは、側鎖を通して構成アミノ酸と(例えば、ジスルフィド結合を通してシステインと)接合されてもよいし、または末端アミノ酸のアルファ炭素のアミノ基およびカルボキシル基と接合されてもよい。
【0209】
さらに、いくつかの態様において、存在する時に、エフェクター分子または検出可能マーカーと抗体または抗原結合断片との間の距離が増加するよう、リンカーのサイズを増加させるスペーサー要素を、リンカーは含み得る。例示的なスペーサーは、当業者に公知であり、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第7,964,5667号、第498,298号、第6,884,869号、第6,323,315号、第6,239,104号、第6,034,065号、第5,780,588号、第5,665,860号、第5,663,149号、第5,635,483号、第5,599,902号、第5,554,725号、第5,530,097号、第5,521,284号、第5,504,191号、第5,410,024号、第5,138,036号、第5,076,973号、第4,986,988号、第4,978,744号、第4,879,278号、第4,816,444号、および第4,486,414号、ならびに米国特許公開第20110212088号および第20110070248号にリストされたものを含む。
【0210】
従って、いくつかの態様において、コンジュゲートは、エフェクター分子または検出可能マーカーを、EGFRvIII特異的抗体またはその抗原結合断片と接続するリンカーを含む。いくつかの態様において、細胞内環境において、リンカーの切断が、抗体または抗原結合断片からエフェクター分子または検出可能マーカーを放出するよう、リンカーは、細胞内条件下で切断可能である。さらに他の態様において、リンカーは切断可能でなく、エフェクター分子または検出可能マーカーは、例えば、抗体分解によって放出される。いくつかの態様において、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ)に存在する切断剤によって切断可能である。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームのプロテアーゼを含むが、これらに限定されるわけではない、細胞内酵素ペプチダーゼまたはプロテアーゼによって切断されるペプチドリンカーであり得る。いくつかの態様において、ペプチドリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。しかしながら、リンカーは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸長、例えば、1~2、1~3、2~5、3~10、3~15、1~5、1~10、1~15アミノ酸長であり得る。プロテアーゼには、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ、これらは、全て、標的細胞内でジペプチド薬物誘導体を加水分解して、活性薬物の放出をもたらすことが公知である(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照すること)。例えば、チオール依存性プロテアーゼ、カテプシンBによって切断可能なペプチドリンカー(例えば、フェニルアラニン-ロイシンまたはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシンリンカー)が使用され得る。そのようなリンカーの他の例は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,214,345号に記載されている。具体的な態様において、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチドリンカーは、バリン-シトルリンリンカーまたはフェニルアラニン-リジンリンカーである(例えば、バリン-シトルリンリンカーを含むドキソルビシンの合成を記載している米国特許第6,214,345号を参照すること)。
【0211】
他の態様において、切断可能リンカーは、pH感受性、即ち、あるpH値において加水分解に感受性である。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソームにおいて加水分解可能な酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等)が使用され得る(例えば、米国特許第5,122,368号;第5,824,805号;第5,622,929号;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123;Neville et al.,1989,Biol.Chem.264:14653-14661を参照すること)。そのようなリンカーは、血中のような中性pH条件下では比較的安定しているが、リソソームのおよそのpHであるpH 5.5または5.0より低いpHでは不安定である。ある種の態様において、加水分解可能リンカーは、例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に付着したチオエーテルのような、チオエーテルリンカーである(例えば、米国特許第5,622,929号を参照すること)。
【0212】
さらに他の態様において、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)、およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDB、およびSMPTを使用して形成され得るものを含む、多様なジスルフィドリンカーが、当技術分野において公知である(例えば、Thorpe et al.,1987,Cancer Res.47:5924-5931;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugate:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987);Phillips et al.,Cancer Res.68:92809290,2008を参照すること。米国特許第4,880,935号も参照すること)。
【0213】
さらに他の具体的な態様において、リンカーは、マロン酸リンカー(Johnson et al.,1995,AntiCancer Res.15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1299-1304)、または3'-N-アミド類似体(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1305-12)である。
【0214】
さらに他の態様において、リンカーは、切断可能でなく、エフェクター分子または検出可能マーカーは、抗体分解によって放出される(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国公開番号2005/0238649を参照すること)。
【0215】
いくつかの態様において、リンカーは、細胞外環境において切断に対して抵抗性である。例えば、コンジュゲートが細胞外環境(例えば、血漿中)に存在する時、コンジュゲートの試料の中の約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約3%以下、または約1%以下のリンカーが切断される。リンカーが細胞外環境において切断に対して抵抗性であるか否かは、例えば、関心対象のリンカーを含有するコンジュゲートを、予定された期間(例えば、2、4、8、16、または24時間)血漿と共にインキュベートし、次いで、血漿中に存在するエフェクター分子または検出可能マーカーの量を定量化することによって決定され得る。コンジュゲートにおいて使用され得る多様な例示的なリンカーは、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、WO 2004-010957、米国公開番号2006/0074008、米国公開番号2005/0238649、および米国公開番号2006/0024317に記載されている。
【0216】
本明細書に開示された抗体または抗原結合断片は、例えば、(同一の型の、または、例えば、二重特異性抗体を作るため、異なる型の)2つ以上の抗体を架橋することによって誘導体化され得る。適当な架橋剤には、(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルのような)適切なスペーサーによって分離された2つの異なる反応性基を有するヘテロ二官能性のもの、または(スベリン酸ジスクシンイミジルのような)ホモ二官能性のものが含まれる。そのようなリンカーは市販されている。
【0217】
多様な放射線診断化合物、放射線治療化合物、(酵素または蛍光分子のような)標識、毒素、およびその他の薬剤を、抗体に付着させるための、報告されている多数の方法を考慮すれば、当業者は、与えられた薬剤を抗体または抗原結合断片またはその他のポリペプチドに付着させるための適当な方法を決定することができるであろう。例えば、抗体または抗原結合断片は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を作成するため、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、マイタンシン、マイタンシン誘導体、例えば、DM1として公知の(メルタンシン(mertansine)としても公知の)マイタンシンの誘導体、またはその他の化学療法剤のような低分子量薬物とコンジュゲートされ得る。いくつかの態様において、本明細書に記載された様々な化学療法剤は、コンジュゲートを生成するため、提供された抗体とコンジュゲートされ得る。
【0218】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片と、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン、およびCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体のような1つまたは複数の低分子毒素とのコンジュゲートが、提供される。
【0219】
マイタンシノイド毒素部分として使用するために適当なマイタンシン化合物は、入手可能であり、公知の方法に従って天然起源から単離されてもよいし、遺伝子改変技術を使用して作製されてもよいし(Yu et al(2002)PNAS 99:7968-7973を参照すること)、または公知の方法に従って合成的に調製されたマイタンシノールおよびマイタンシノール類似体であってもよい。マイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカの低木メイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から最初に単離された(米国特許第3,896,111号)。その後、ある種の微生物も、マイタンシノールおよびC-3マイタンシノールエステルのようなマイタンシノイドを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成マイタンシノールならびにその誘導体および類似体は、例えば、各々、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,137,230号;第4,248,870号;第4,256,746号;第4,260,608号;第4,265,814号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,308,268号;第4,308,269号;第4,309,428号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,317,821号;第4,322,348号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,364,866号;第4,424,219号;第4,450,254号;第4,362,663号;および第4,371,533号に開示されている。マイタンシノイドを含有するコンジュゲート、それを作成する方法、およびその治療的使用は、例えば、米国特許第5,208,020号;第5,416,064号;第6,441,163号、および欧州特許EP 0 425 235 B1に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に特別に組み入れられる。
【0220】
一例において、コンジュゲートは、EGFRvIIIと特異的に結合するモノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)と、非還元可能チオエステルリンカーと、マイタンシノイド毒素DM1とを含み;例えば、コンジュゲートは、以下に示される構造を含み得る(「mAb」とは、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片をさす)。
【0221】
いくつかの態様において、エフェクター分子は、アウリスタチン、例えば、(ドラスタチン-10の誘導体としても当技術分野において公知の)アウリスタチンEまたはその誘導体である。アウリスタチンは、例えば、アウリスタチンEとケト酸との間で形成されたエステルであり得る。例えば、アウリスタチンEは、それぞれパラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応して、AEBおよびAEVBを生成することができる。他の例示的なアウリスタチンには、AFP、MMAF、およびMMAEが含まれる。例示的なアウリスタチンの合成および構造は、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開番号2003/0083263;国際特許公開番号WO 04/010957、国際特許公開番号WO 02/088172、ならびに米国特許第7,498,298号、第6,884,869号、第6,323,315号;第6,239,104号;第6,034,065号;第5,780,588号;第5,665,860号;第5,663,149号;第5,635,483号;第5,599,902号;第5,554,725号;第5,530,097号;第5,521,284号;第5,504,191号;第5,410,024号;第5,138,036号;第5,076,973号;第4,986,988号;第4,978,744号;第4,879,278号;第4,816,444号;および第4,486,414号に記載されている。アウリスタチンMMAEを含む抗体薬物コンジュゲートの付加的な説明およびそのようなコンジュゲートを作成する方法は、例えば、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国公開番号2011/0268751、2008/0305044、2007/0258987に提供されている。アウリスタチンは、微小管動態ならびに核および細胞の分裂に干渉し、抗癌活性を有することが示されている。アウリスタチンは、チューブリンに結合し、細胞傷害効果または細胞分裂阻害効果を細胞に対して及ぼすことができる。アウリスタチンまたは得られたコンジュゲートが所望の細胞株に対して細胞分裂阻害効果または細胞傷害効果を及ぼすか否かを決定するための当技術分野において公知の多数の異なるアッセイが存在する。
【0222】
一例において、コンジュゲートは、EGFRvIIIと特異的に結合するモノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)と、バリン-シトルリン(Val-Cit)ペプチド切断可能部位を含む切断可能リンカーと、スペーサーと、毒素MMAEとを含み;例えば、コンジュゲートは、以下に示される構造を含み得る(「mAb」とは、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片をさす)。
【0223】
1つの好ましい態様において、コンジュゲートは、
(nは、0~10の(偶数のような)整数(例えば、0~8、0~4、2~4、2~8、1~10、1~8、もしくは1~4、または2、4、6、もしくは8)であり、Aは、本明細書に開示されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり、Sは、抗体に由来する硫黄原子である)であり得る。1つの態様において、好ましくは、nは、0~8、好ましくは、0~4の偶数である。S部分は、(例えば、DTTまたはTCEPのような還元剤による処理による)抗体の鎖間ジスルフィドの還元または部分還元によって露出し得る。
【0224】
1つの非限定的な態様において、コンジュゲートは、
(nは、4であり、Aは、本明細書に開示されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である)であり得る。
【0225】
付加的な毒素が、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体およびこれらの抗体の抗原結合断片と共に利用されてもよい。例示的な毒素には、シュードモナス外毒素(PE)、リシン、アブリン、ジフテリア毒素およびそのサブユニット、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、ならびにカリケアマイシン、ならびにボツリヌス毒素A~Fが含まれる。これらの毒素は、当技術分野において周知であり、多くが商業的な供給元から容易に入手可能である(例えば、Sigma Chemical Company,St.Louis,MO)。企図される毒素には、毒素のバリアントも含まれる(例えば、国特許第5,079,163号および第4,689,401号を参照すること)。いくつかの態様において、これらのコンジュゲートは、癌、例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌の処置のために有用である。
【0226】
サポリンは、リボソーム複合体の60S部分を不活化することによってタンパク質合成を妨害する、サボンソウ(Saponaria officinalis)に由来する毒素である(Stirpe et al.,Bio/Technology,10:405-412,1992)。しかしながら、この毒素は、細胞に特異的に侵入するための機序を有しておらず、従って、細胞によって効率的に取り込まれるためには、内部移行する細胞表面タンパク質を認識する抗体または抗原結合断片とのコンジュゲーションを必要とする。
【0227】
ジフテリア毒素は、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)から単離される。典型的には、免疫毒素において使用するためのジフテリア毒素は、非特異的毒性を低下させるか、または排除するため、変異させられる。完全な酵素活性を有するが、顕著に低下した非特異的毒性を有するCRM107として公知の変異体が、1970年代から公知であり(Laird and Groman,J.Virol.19:220,1976)、ヒト臨床試験において使用されている。米国特許第5,792,458号および米国特許第5,208,021号を参照すること。
【0228】
リシンは、トウゴマ(Ricinus communis)(Castor bean)に由来するレクチンRCA60である。リシンの例については、米国特許第5,079,163号および米国特許第4,689,401号を参照すること。トウゴマ凝集素(RCA)は、それぞれおよそ65kDおよび120kDの分子量のため、RCA60およびRCA120と名付けられた2つの型で存在する(Nicholson & Blaustein,J.Biochim.Biophys.Acta 266:543,1972)。A鎖は、タンパク質合成不活化および細胞死滅を担う。B鎖は、リシンを細胞表面ガラクトース残基と結合させ、A鎖のサイトゾルへの輸送を容易にする(Olsnes et al.,Nature 249:627-631,1974および米国特許第3,060,165号)。
【0229】
リボヌクレアーゼも、免疫毒素として使用するため、ターゲティング分子とコンジュゲートされている(Suzuki et al.,Nat.Biotech.17:265-70,1999を参照すること)。α-サルシン(sarcin)およびレストリクトシンのような例示的なリボトキシンは、例えば、Rathore et al.,Gene 190:31-5,1997;およびGoyal and Batra,Biochem.345 Pt 2:247-54,2000に記述されている。カリケアマイシンは、ミクロモノスポラ・エチノスポラ(Micromonospora echinospora)から最初に単離されたものであり、アポトーシスをもたらす、DNAの二本鎖破損を引き起こすエンジイン抗腫瘍抗生物質ファミリーのメンバーである(例えば、Lee et al.,J.Antibiot.42:1070-87,1989を参照すること)。この薬物は、臨床試験中の免疫毒素の毒性部分である(例えば、Gillespie et al.,Ann.Oncol.11:735-41,2000を参照すること)。
【0230】
アブリンは、トウアズキ(Abrus precatorius)に由来する毒性レクチンを含む。毒性成分であるアブリンa、b、c、およびdは、約63~67kDの分子量を有し、ジスルフィドによって連結された2つのポリペプチド鎖AおよびBから構成される。A鎖はタンパク質合成を阻害し;B鎖(アブリン-b)はD-ガラクトース残基と結合する(Funatsu et al.,Agr.Biol.Chem.52:1095,1988;およびOlsnes,Methods Enzymol.50:330-335,1978を参照すること)。
【0231】
1つの態様において、毒素はシュードモナス外毒素(PE)(米国特許第5,602,095号)である。本明細書において使用されるように、PEには、全長ネイティブ(天然に存在する)PEまたは修飾されたPEが含まれる。そのような修飾には、ドメインIaの排除、ドメインIb、II、およびIIIの様々なアミノ酸欠失、単一アミノ酸置換、ならびにカルボキシル末端における1つまたは複数の配列の付加が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない(例えば、Siegall et al.,J.Biol.Chem.264:14256-14261,1989を参照すること)。提供された抗体と共に利用されるPEには、ネイティブ配列、ネイティブ配列の細胞傷害性断片、ならびにネイティブPEの保存的に修飾されたバリアントおよびその細胞傷害性断片が含まれ得る。PEの細胞傷害性断片には、標的細胞におけるその後のタンパク質分解もしくはその他のプロセシングによって細胞傷害性となるもの、またはそれなしに細胞傷害性であるものが含まれる。PEの細胞傷害性断片には、PE25、PE40、PE38、およびPE35が含まれる。PEおよびそのバリアントの付加的な説明については、例えば、米国特許第4,892,827号;第5,512,658号;第5,602,095号;第5,608,039号;第5,821,238号;および第5,854,044号;PCT公開番号WO 99/51643;Pai et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:3358-3362,1991;Kondo et al.,J.Biol.Chem.,263:9470-9475,1988;Pastan et al.,Biochim.Biophys.Acta,1333:C1-C6,1997を参照すること。
【0232】
以下に限定されるわけではないが、PE-LR、PE-6X、PE-8X、PE-LR/6X、およびPE-LR/8Xのような、プロテアーゼ抵抗性PEバリアントおよび低下した免疫原性を有するPEバリアントも、本明細書において企図される(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Weldon et al.,Blood 113(16):3792-3800,2009;Onda et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,105(32):11311-11316,2008;ならびにPCT公開番号WO 2007/016150、WO 2009/032954、およびWO 2011/032022を参照すること)。PEバリアントは、PE25であり得る(参照により本明細書に組み入れられるWeldon et al.,Blood 2009;113:3792-3800を参照すること)。
【0233】
いくつかの例において、PEは、PE-LRのような、リソソーム分解に対して抵抗性のバリアントである(Weldon et al.,Blood 113(16):3792-3800,2009;PCT公開番号WO 2009/032954)。他の例において、PEは、PE-LR/6Xと名付けられたバリアントである(PCT公開番号WO 2011/032022)。他の例において、PEは、PE-LR/8Mと名付けられたバリアントである(PCT公開番号WO 2011/032022)。
【0234】
EGFRvIIIと特異的に結合するモノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)は、検出可能マーカー;例えば、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、顕微鏡法、または(コンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴画像法(NMRI)、磁気共鳴断層撮影、(MTR)、超音波、光ファイバー検査、および腹腔鏡検査のような)画像診断技術によって検出可能な検出可能マーカーとコンジュゲートされてもよい。検出可能マーカーの具体的な非限定的な例には、フルオロフォア、化学発光剤、酵素連結、放射性の同位体および重金属または化合物(例えば、MRIによる検出のための超常磁性酸化鉄)が含まれる。例えば、有用な検出可能マーカーには、蛍光化合物、例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニドリン光体等が含まれる。ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)のような生物発光マーカーも有用である。抗体または抗原結合断片は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等のような、検出のために有用な酵素とコンジュゲートされてもよい。抗体または抗原結合断片が検出可能酵素とコンジュゲートされる時、それは、識別され得る反応生成物を生成するため、酵素が使用する付加的な試薬を添加することによって検出可能である。例えば、薬剤、西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する時、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加は、視覚的に検出可能な有色の反応生成物をもたらす。抗体または抗原結合断片は、ビオチンとコンジュゲートされ、アビジンまたはストレプトアビジンの結合の間接的な測定を通して検出されてもよい。アビジン自体が酵素または蛍光標識とコンジュゲートされていてもよいことに注意するべきである。
【0235】
抗体または抗原結合断片は、ガドリニウムのような超常磁性薬剤とコンジュゲートされてもよい。超常磁性酸化鉄のような超常磁性薬剤も、標識として有用である。抗体は、(ユーロピウムおよびジスプロシウムのような)ランタニドならびにマンガンとコンジュゲートされてもよい。抗体または抗原結合断片は、(ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグのような)二次レポーターによって認識される予定されたポリペプチドエピトープによって標識されてもよい。
【0236】
抗体または抗原結合断片は、放射標識されたアミノ酸とコンジュゲートされてもよい。放射標識は、診断および治療の両方の目的のため使用され得る。例えば、放射標識は、x線、放射スペクトル、またはその他の診断技術によって、EGFRvIIIおよびEGFRvIII発現細胞を検出するため、使用され得る。さらに、放射標識は、対象における腫瘍の処置のため、例えば、癌、例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような、EGFRvIIIを発現する腫瘍の処置のため、毒素として治療的に使用され得る。ポリペプチドのための標識の例には、以下の放射性同位体または放射性ヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されるわけではない:3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I。
【0237】
そのような検出可能マーカーを検出する手段は、当業者に公知である。従って、例えば、放射標識は、写真用フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出され得、蛍光マーカーは、放射された光を検出するための光検出機を使用して検出され得る。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を供給し、基質に対する酵素の作用によって生成された反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は、発色した標識を単純に可視化することによって検出される。
【0238】
抗体または抗原結合断片は、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル基もしくはエチル基、または炭水化物基のような化学基によって誘導体化されてもよい。これらの基は、抗体または抗原結合断片の生物学的特徴を改善するため、例えば、血清半減期を増加させるため、または組織結合を増加させるため、有用であり得る。
【0239】
コンジュゲート内の各抗体または各抗原結合断片についてのエフェクター分子または検出可能マーカー部分の平均数は、例えば、各抗体または各抗原結合断片について1~20部分の範囲であり得る。いくつかのコンジュゲートにおいて、各抗体または各抗原結合断片についてのエフェクター分子または検出可能マーカー部分の平均数は、抗体または抗原結合断片の付着部位の数によって限定され得る。例えば、付着がシステインチオールである場合、抗体または抗原結合断片は、システインチオール基を1個もしくは数個しか有しないかもしれず、またはリンカーが付着し得る十分に反応性のチオール基を1個もしくは数個しか有しないかもしれない。ある種の態様において、コンジュゲート内の各抗体または各抗原結合断片についてのエフェクター分子または検出可能マーカー部分の平均数は、1~約8;約2~約6;約3~約5;約3~約4;約3.1~約3.9;約3.2~約3.8;約3.2~約3.7;約3.2~約3.6;約3.3~約3.8;または約3.3~約3.7の範囲である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,498,298号を参照すること。コンジュゲート調製物内の各抗体または各抗原結合断片についてのエフェクター分子または検出可能マーカー部分の平均数は、質量分析およびELISAアッセイのような従来の手段によって特徴決定され得る。コンジュゲートの負荷(例えば、エフェクター分子/抗体比)は、種々の方式で、例えば、(i)抗体に対するエフェクター分子-リンカー中間体またはリンカー試薬のモル過剰を限定すること、(ii)コンジュゲーション反応の時間または温度を限定すること、(iii)システインチオール修飾のための部分的なまたは限定的な還元条件、(iv)リンカー-エフェクター分子付着の数または位置の調節のため、システイン残基の数および位置が修飾されるような、組換え技術による抗体のアミノ酸配列の改変(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるWO2006/03448に開示されたように調製されたチオMabまたはチオFab)によって調節され得る。
【0240】
C.キメラ抗原受容体(CAR)
1つまたは複数の細胞内T細胞シグナリングドメインと連結された、膜貫通ドメインと連結された、EGFRvIIIと特異的に結合する細胞外抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変断片(scFv))を含む、人工的に構築されたキメラタンパク質であるキメラ抗原受容体(CAR)も、本明細書に開示される。開示されたCARの特徴には、非MHC拘束性の様式で、T細胞の特異性および反応性をEGFRVIII発現細胞へ向け直す能力が含まれる。非MHC拘束性のEGFRVIII認識は、抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力を、開示されたCARを発現するT細胞に与える。
【0241】
細胞内T細胞シグナリングドメインには、例えば、T細胞受容体シグナリングドメイン、T細胞共刺激シグナリングドメイン、または両方が含まれ得る。T細胞受容体シグナリングドメインとは、CD3ゼータタンパク質の細胞内部分のような、T細胞受容体の細胞内ドメインを含むCARの一部分をさす。共刺激シグナリングドメインとは、抗原に対するリンパ球の効率的な応答のために必要とされる抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分をさす。
【0242】
1.細胞外領域
いくつかの態様は、本明細書に開示されたEGFRVIIIと特異的に結合する抗原結合ドメインを含むCARを提供する。例えば、抗原結合ドメインは、前記において開示された抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むscFvであり得る。
【0243】
いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、40H3抗体、1D9抗体、3D10抗体、4A4抗体、9G3抗体、11E11抗体、または11G3抗体(前記を参照すること)のうちの1つの、それぞれ重鎖および軽鎖の可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み得る。例えば、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:1および2、SEQ ID NO:11および12、SEQ ID NO:13および14、またはSEQ ID NO:15および16のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み得る。抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17および12、SEQ ID NO:26および12、SEQ ID NO:29および30、SEQ ID NO:39および40、SEQ ID NO:43および44、またはSEQ ID NO:53および54のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み得る。本明細書に開示された抗体または抗原結合断片のうちの任意のものが、CARにおいて使用され得る。1つの態様において、抗体または抗原結合断片はヒト化されている。
【0244】
いくつかの態様において、抗原結合ドメインはscFvであり得る。いくつかの態様において、scFvは、
として示されるアミノ酸配列を含むリンカーのようなペプチドリンカーによって接合された重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0245】
CARは、例えば、抗原結合ドメインのN末端に、シグナルペプチド配列を含み得る。シグナルペプチド配列は、任意の適当なシグナルペプチド配列を含み得る。1つの態様において、シグナルペプチド配列は、
を含む、またはそれからなるアミノ酸配列のような、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体配列である。シグナルペプチド配列は、細胞表面におけるCARの発現を容易にし得るが、発現されるCARにおけるシグナルペプチド配列の存在は、CARが機能するために必要ではない。細胞表面におけるCARの発現によって、シグナルペプチド配列は、CARから切断され得る。従って、いくつかの態様において、CARは、シグナルペプチド配列を欠く。
【0246】
CARの抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間には、ポリペプチド配列を含むスペーサードメインが存在してよい。スペーサードメインは、300個までのアミノ酸、好ましくは、10~100個のアミノ酸、最も好ましくは、25~50個のアミノ酸を含み得る。いくつかの態様において、スペーサードメインは、ヒト免疫グロブリン配列のような免疫グロブリンドメインを含み得る。1つの態様において、免疫グロブリンドメインは、免疫グロブリンG(IgGl)のCH2およびCH3ドメイン配列(CH2CH3)を含む。これに関して、スペーサードメインは、SEQ ID NO:61:
として示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリンドメインを含み得る。
【0247】
特定の理論に拘束されるわけではないが、CH2CH3ドメインは、CARの抗原結合ドメインをCAR発現細胞の膜から遠ざけ、ネイティブTCRのサイズおよびドメイン構造をより正確に模倣し得ると考えられる。
【0248】
2.膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、CARは、CARの細胞外ドメインと融合した膜貫通ドメインを含むよう設計され得る。1つの態様において、CAR内のドメインのうちの1つと天然に会合している膜貫通ドメインが使用される。
【0249】
膜貫通ドメインは、天然または合成の起源に由来し得る。起源が天然である場合、ドメインは、膜結合型タンパク質または膜貫通型タンパク質に由来し得る。開示されたCARにおいて使用するための例示的な膜貫通ドメインには、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通領域が少なくとも含まれ得る。あるいは、膜貫通ドメインは、合成であってよく、そのケースにおいては、ロイシンおよびバリンのような疎水性の残基を主に含むであろう。いくつかの態様において、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出されるであろう。
【0250】
任意で、好ましくは、2~10アミノ酸長の、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞内T細胞シグナリングドメインおよび/またはT細胞共刺激ドメインとの間の連結を形成し得る。例示的なリンカー配列には、1つまたは複数のグリシン-セリンダブレットが含まれる。
【0251】
いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインのようなT細胞受容体の膜貫通ドメインを含む。従って、CARは、SEQ ID NO:62:
を含む、またはそれからなるCD8膜貫通ドメインを含み得る。もう1つの態様において、膜貫通ドメインは、CD137またはCD28のようなT細胞共刺激分子の膜貫通ドメインを含む。従って、CARは、SEQ ID NO:63:
を含む、またはそれからなるCD28膜貫通ドメインを含み得る。
【0252】
3.細胞内領域
CARの細胞内領域は、CARが発現されるか、または置かれるT細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化を担う1つまたは複数の細胞内T細胞シグナリングドメインを含む。例示的なT細胞シグナリングドメインは、本明細書において提供され、当業者に公知である。
【0253】
細胞内T細胞シグナリングドメイン全体がCARにおいて使用されてもよいが、多くのケースにおいて、完全鎖を使用する必要はない。細胞内T細胞シグナリングドメインの短縮された一部分が使用される場合、そのような短縮された一部分は、関連するT細胞エフェクター機能シグナルを伝達する限り、完全鎖の代わりに使用され得る。
【0254】
CARにおいて使用するための細胞内T細胞シグナリングドメインの例には、抗原受容体エンゲージメント後にシグナル伝達を開始するために協調的に作用するT細胞受容体(TCR)および共刺激分子の細胞質配列、ならびにこれらの配列の誘導体またはバリアント、ならびに同一の機能的能力を有する合成配列が含まれる。
【0255】
T細胞受容体シグナリングドメインは、刺激性または阻害性のいずれかの方式でT細胞受容体複合体の一次活性化を制御する。開示されたCARは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナリングモチーフを含有し得る、刺激性の様式で作用する一次細胞質シグナリング配列を含み得る。開示されたCARに含まれ得るITAM含有一次細胞質シグナリング配列の例には、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dタンパク質に由来するものが含まれる。いくつかの態様において、CAR内の細胞質シグナリング分子は、CD3ゼータに由来する細胞内T細胞シグナリングドメインを含む。
【0256】
CARの細胞内領域は、(CD3-ゼータのような)ITAM含有一次細胞質シグナリングドメインを、単独で、またはCARに関して有用なその他の所望の細胞質ドメインと組み合わせて含み得る。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および細胞内共刺激シグナリングドメインを含み得る。共刺激シグナリングドメインとは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分をさす。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答のために必要とされる抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、およびB7-H3が含まれる。開示されたCARに含まれ得るシグナリングドメインの付加的な例は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRSF18;グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質GITRとしても公知)のシグナリングドメインである。
【0257】
いくつかの態様において、CARは、CD3ゼータシグナリングドメイン、CD8シグナリングドメイン、CD28シグナリングドメイン、CD137シグナリングドメイン、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。1つの態様において、細胞質ドメインは、CD3-ゼータのシグナリングドメインおよびCD28のシグナリングドメインを含む。別の態様において、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナリングドメインおよびCD137のシグナリングドメインを含む。さらにもう1つの態様において、細胞質ドメインは、CD3-ゼータのシグナリングドメインならびにCD28およびCD137のシグナリングドメインを含む。CAR上の1つまたは複数のT細胞シグナリングドメインの順序は、当業者によって必要に応じて変動させられ得る。そのようなT細胞シグナリングドメインについての例示的なアミノ酸配列が提供される。例えば、
CD3ゼータシグナリングドメインは、
として示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなることができ、
CD8シグナリングドメインは、
として示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなることができ、
CD28シグナリングドメインは、
として示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなることができ、
CD137シグナリングドメインは、
として示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなることができる。
【0258】
本発明のCARの細胞質シグナリング部分内の細胞質シグナリング配列は、ランダムな、または指定された順序で相互に連結されていてよい。任意で、好ましくは、2~10アミノ酸長の、短いポリペプチドリンカーが、連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレットは、特に適当なリンカーを提供する。さらに、CARのシグナリングドメインと膜貫通ドメインとの間に、ポリペプチド配列を含むスペーサードメインが存在してもよい。スペーサードメインは、300個までのアミノ酸、好ましくは、10~100個のアミノ酸、最も好ましくは、25~50個のアミノ酸を含み得る。
【0259】
4.CARの付加的な説明
本明細書に記載されたCARの機能性部分も提供される。「機能性部分」という用語は、CARに関して使用される時、それを含むCAR(親CAR)の生物学的活性を保持する、CARの一部または断片をさす。機能性部分には、例えば、親CARと類似の程度、同一の程度、またはより高い程度に、標的細胞を認識するか、または疾患を検出するか、処置するか、もしくは防止する能力を保持するCARの部分が包含される。親CARを基準として、機能性部分は、例えば、親CARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、またはそれ以上を含み得る。
【0260】
CARまたはその機能性部分は、親CARのアミノ酸配列に見出されない付加的なアミノ酸をアミノ末端もしくはカルボキシ末端または両端に含み得る。望ましくは、付加的なアミノ酸は、CARまたは機能性部分の生物学的機能、例えば、標的細胞の認識、癌の検出、癌の処置または防止等に干渉しない。さらに望ましくは、付加的なアミノ酸は、親CARの生物学的活性と比較して、生物学的活性を増強する。
【0261】
親CARとの実質的なまたは有意な配列同一性または類似性を有し、バリアントの元となったCARの生物学的活性を保持する、本明細書に記載されたCARの機能性バリアントも提供される。機能性バリアントには、例えば、親CARと類似の程度、同一の程度、またはより高い程度に、標的細胞を認識する能力を保持する、本明細書に記載されたCAR(親CAR)のバリアントが包含される。親CARを基準として、機能性バリアントは、例えば、親CARと少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上、アミノ酸配列が同一であり得る。
【0262】
機能性バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含む親CARのアミノ酸配列を含み得る。あるいは、またはさらに、機能性バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を含む親CARのアミノ酸配列を含み得る。このケースにおいて、非保存的アミノ酸置換は、機能性バリアントの生物学的活性に干渉せず、阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能性バリアントの生物学的活性が親CARと比較して増加するよう、機能性バリアントの生物学的活性を増強し得る。
【0263】
(機能性部分および機能性バリアントを含む)CARは、CAR(またはその機能性部分もしくは機能性バリアント)が、生物学的活性、例えば、抗原と特異的に結合し、哺乳動物の疾患細胞を検出し、または哺乳動物の疾患を処置するか、もしくは防止する能力等を保持することを条件として、任意の長さであり得、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、CARは、約50~約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000アミノ酸長またはそれ以上であり得る。
【0264】
(本発明の機能性部分および機能性バリアントを含む)CARは、1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は、当技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、a-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、trans-3-ヒドロキシプロリン、trans-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン、β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N'-ベンジル-N'-メチル-リジン、N',N'-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、oc-アミノシクロヘプタンカルボン酸、-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンを含む。
【0265】
(機能性部分および機能性バリアントを含む)CARは、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えば、ジスルフィド架橋を介した環化を受けてもよいし、または酸付加塩に変換されてもよく、かつ/または、任意で、二量体化もしくは重合されるか、もしくはコンジュゲートされてもよい。
【0266】
キメラ抗原受容体、そのような受容体を含むT細胞を生成する方法、および(例えば、癌の処置のための)その使用は、当技術分野において公知であり、本明細書にさらに記載される(例えば、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Brentjens et al.,2010,Molecular Therapy,18:4,666-668;Morgan et al.,2010,Molecular Therapy,published online February 23,2010,pages 1-9;Till et al.,2008,Blood,1 12:2261-2271;Park et al.,Trends Biotechnol.,29:550-557,2011;Grupp et al.,N Engl J Med.,368:1509-1518,2013;Han et al.,J.Hematol Oncol.,6:47,2013;PCT公開WO2012/079000、WO2013/126726;および米国公開2012/0213783を参照すること)。例えば、開示されたキメラ抗原結合受容体をコードする核酸分子は、開示されたCARを作成するため、T細胞のような宿主細胞における発現のため、(レンチウイルスベクターのような)発現ベクターに含まれてよい。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体を使用する方法は、対象からT細胞を単離する工程、キメラ抗原受容体をコードする(レンチウイルスベクターのような)発現ベクターによってT細胞を形質転換する工程、および処置のため、例えば、対象における腫瘍の処置のため、キメラ抗原受容体を発現する改変されたT細胞を対象へ投与する工程を含む。
【0267】
D.ポリヌクレオチドおよび発現
EGFRvIIIと特異的に結合する抗体、抗体結合断片、コンジュゲート、およびCARのアミノ酸配列をコードする核酸が提供される。これらの分子をコードする核酸は、(CDR配列、重鎖および軽鎖の配列のような)本明細書において提供されるアミノ酸配列、(フレームワーク配列のような)当技術分野において入手可能な配列、および遺伝暗号を使用して、当業者によって容易に作製され得る。配列は異なるが、同一の抗体配列をコードする核酸、またはVLおよび/もしくはVHの核酸配列を含むコンジュゲートもしくは融合タンパク質をコードする核酸のような、多様な機能的に等価な核酸を構築するため、当業者は、遺伝暗号を容易に使用することができる。
【0268】
EGFRvIIIと特異的に結合する抗体、抗体結合断片、コンジュゲート、およびCARをコードする核酸配列は、任意の適当な方法、例えば、適切な配列のクローニング、またはNarang et al.,Meth.Enzymol.68:90-99,1979のホスホトリエステル法;Brown et al.,Meth.Enzymol.68:109-151,1979のホスホジエステル法;Beaucage et al.,Tetra.Lett.22:1859-1862,1981のジエチルホスホラミダイト法;例えば、Needham-VanDevanter et al.,Nucl.Acids Res.12:6159-6168,1984に記載された自動合成装置を、例えば、使用する、Beaucage & Caruthers,Tetra.Letts.22(20):1859-1862,1981によって記載された固相ホスホラミダイトトリエステル法;および米国特許第4,458,066号の固体支持体(solid support)法のような方法による直接化学合成によって調製され得る。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを作製する。これは、相補配列とのハイブリダイゼーションによって、または一本鎖を鋳型として使用したDNAポリメラーゼによる重合によって、二本鎖DNAへ変換され得る。DNAの化学合成は、一般に、約100塩基の配列に限定されるが、より短い配列のライゲーションによって、より長い配列を得ることができることを、当業者は認識するであろう。
【0269】
例示的な核酸は、クローニング技術によって調製され得る。適切なクローニングおよび配列決定の技術、ならびに多くのクローニング演習を通して当業者を指導するために十分な説明書の例は、公知である(例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed,Cold Spring Harbor,New York,2012)およびAusubel et al.(In Current Protocols in Molecular Biololy,John Wiley & Sons,New York,through supplement 104,2013を参照すること)。生物学的試薬および実験機器の製造業者からの製品情報も、有用な情報を提供する。そのような製造業者には、SIGMA Chemical Company(Saint Louis,MO)、R&D Systems(Minneapolis,MN)、Pharmacia Amersham(Piscataway,NJ)、CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto,CA)、Chem Genes Corp.、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)、Glen Research,Inc.、GIBCO BRL Life Technologies,Inc.(Gaithersburg,MD)、Fluka Chemica-Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG,Buchs,Switzerland)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、およびApplied BioSystems(Foster City,CA)が含まれ、当業者に公知の多くの他の商業的供給元も含まれる。
【0270】
核酸は増幅法によって調製されてもよい。増幅法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅系(TAS)、自家持続配列複製系(3SR)が含まれる。多様なクローニング方法、宿主細胞、およびインビトロ増幅方法論が、当業者に周知である。
【0271】
いくつかの態様において、核酸分子は、キメラ抗原受容体T細胞を生成するため、T細胞における発現のため、本明細書において提供されるCARをコードする。キメラ抗原結合受容体をコードする核酸分子は、T細胞のような宿主細胞における発現のため(レンチウイルスベクターのような)ベクターに含まれ得る。例示的な細胞には、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、および制御性T細胞が含まれる。キメラ抗原受容体をコードする核酸分子およびそのような受容体を含むT細胞を生成する方法は、当技術分野において公知である(例えば、各々、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Brentjens et al.,2010,Molecular Therapy,18:4,666-668;Morgan et al.,2010,Molecular Therapy,published online February 23,2010,pages 1-9;Till et al.,2008,Blood,1 12:2261-2271;Park et al.,Trends Biotechnol.,29:550-557,2011;Grupp et al.,N Engl J Med.,368:1509-1518,2013;Han et al.,J.Hematol Oncol.,6:47,2013;PCT公開WO2012/079000、WO2013/126726;および米国公開2012/0213783を参照すること)。
【0272】
核酸分子は、細菌、植物、酵母、昆虫、および哺乳動物の細胞のような、組換えによって改変された細胞において発現され得る。抗体、抗原結合断片、およびコンジュゲートは、(必要に応じて、エフェクター分子もしくは検出可能マーカーと連結された)個々のVH鎖および/もしくはVL鎖として発現されてもよいし、または融合タンパク質として発現されてもよい。抗体および抗原結合断片の発現および精製の方法は公知であり、さらに本明細書に記載される(例えば、Al-Rubeai(ed),Antibody Expression and Production,Springer Press,2011を参照すること)。イムノアドヘシンも発現され得る。従って、いくつかの例において、VHおよびVL、ならびにイムノアドヘシンをコードする核酸が提供される。核酸配列は、任意で、リーダー配列をコードしてもよい。
【0273】
scFvを作るためには、フレキシブルリンカーによって接合されたVLドメインおよびVHドメインを含む連続的な単鎖タンパク質として、VH配列およびVL配列が発現され得るよう、VHおよびVLをコードするDNA断片を、フレキシブルリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードするもう1つの断片と機能的に連結することができる(例えば、Bird et al.,Science 242:423-426,1988;Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883,1988;McCafferty et al.,Nature 348:552-554,1990;Kontermann and Dubel(Ed),Antibody Engineering,Vols.1-2,2nd Ed.,Springer Press,2010;Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,2nd,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,2013を参照すること)。任意で、フューリン切断部位のような切断部位がリンカーに含まれてもよい。
【0274】
VHおよび/またはVLをコードする核酸は、任意で、Fcドメイン(イムノアドヘシン)をコードしてもよい。Fcドメインは、IgA、IgM、またはIgGのFcドメインであり得る。Fcドメインは、参照により本明細書に組み入れられる、米国公開特許出願番号2010/093979に記載されるような、最適化されたFcドメインであり得る。一例において、イムノアドヘシンは、IgG1 Fcである。
【0275】
単鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみが使用される場合、1価であり得、2つのVHおよびVLが使用される場合、2価であり得、3つ以上のVHおよびVLが使用される場合、多価であり得る。EGFRVIIIと特異的に結合し、かつ以下に限定されるわけではないが、CD3のような、別の抗原と特異的に結合する二重特異性または多価の抗体が生成され得る。コードされたVHおよびVLは、任意で、フューリン切断部位をVHドメインとVLドメインとの間に含み得る。
【0276】
大腸菌、その他の細菌宿主、酵母、ならびにCOS、CHO、HeLa、および骨髄腫細胞株のような様々な高等真核細胞を含む、タンパク質の発現のために利用可能な多数の発現系が、当業者に公知である。
【0277】
抗体、抗体結合断片、コンジュゲート、およびCARをコードする1つまたは複数のDNA配列は、適当な宿主細胞へのDNA移入によってインビトロで発現され得る。細胞は原核細胞または真核細胞であり得る。この用語には、最初の宿主細胞の子孫も含まれる。複製中に起こった変異が存在し得るため、全ての子孫が親細胞と同一とは限らないことが理解される。安定的な、即ち、外来DNAが宿主内に継続的に維持される移入の方法は、当技術分野において公知である。関心対象の抗体を発現するハイブリドーマも、本開示に包含される。
【0278】
抗体もしくは抗原結合断片またはそれらのコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド配列は、発現調節配列と機能的に連結され得る。コード配列と機能的に連結された発現調節配列は、コード配列の発現が発現調節配列と適合性の条件の下で達成されるよう、ライゲートされる。発現調節配列には、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前にある開始コドン(即ち、ATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするその遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、および終止コドンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0279】
クローニングされた遺伝子の高レベル発現を得るため、最低でも、転写を指図する強力なプロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位(配列内リボソーム結合部位)、および転写/翻訳ターミネーターを含有する発現カセットを構築することが望ましい。大腸菌について、これには、T7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、またはラムダプロモーターのようなプロモーター、リボソーム結合部位が含まれ、好ましくは、転写終結シグナルが含まれる。真核細胞について、調節配列には、例えば、免疫グロブリン遺伝子、HTLV、SV40、またはサイトメガロウイルスに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサー、ならびにポリアデニル化配列が含まれ得、さらに、スプライスドナー配列および/またはアクセプター配列(例えば、CMVおよび/またはHTLVのスプライスアクセプター配列およびドナー配列)が含まれ得る。カセットは、大腸菌については、形質転換または電気穿孔、哺乳動物細胞については、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、またはリポフェクションのような周知の方法によって、選択された宿主細胞へ移入され得る。カセットによって形質転換された細胞は、amp遺伝子、gpt遺伝子、neo遺伝子、およびhyg遺伝子のようなカセットに含有される遺伝子によって付与される抗生物質耐性によって選択され得る。
【0280】
抗体もしくは抗原結合断片またはそれらのコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド配列は、配列の挿入または組み入れを可能にするために操作され得る、プラスミド、ウイルス、またはその他の媒体を含むが、これらに限定されるわけではない発現ベクターへ挿入され得、原核細胞または真核細胞のいずれかにおいて発現され得る。宿主には、微生物、酵母、昆虫、および哺乳動物が含まれ得る。真核生物またはウイルスの配列を有するDNA配列を原核細胞において発現させる方法は、当技術分野において周知である。宿主における発現および複製が可能な生物学的に機能性のウイルスおよびプラスミドDNAベクターは、当技術分野において公知である。
【0281】
宿主が真核細胞である時、リン酸カルシウム共沈殿のようなDNAのトランスフェクションの方法、微量注射、電気穿孔、リポソームに収容されたプラスミドまたはウイルスベクターの挿入のような従来の機械的手法が使用され得る。真核細胞は、抗体、標識された抗体、またはそれらの抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列、および単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子のような選択可能な表現型をコードする第2の外来DNA分子によって同時形質転換されてもよい。別の方法は、真核細胞を一過性に感染させるか、または形質転換し、タンパク質を発現させるための、サルウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスのような真核ウイルスベクターの使用である(例えば、Viral Expression Vectors,Springer press,Muzyczka ed.,2011を参照すること)。当業者は、COS、CHO、HeLa、および骨髄腫細胞株のような高等真核細胞を含む細胞におけるタンパク質の産生において有用なプラスミドおよびベクターのような発現系を容易に使用することができる。
【0282】
組換えCARを作製するための宿主細胞は、哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞は、ヒト細胞であり得る。いくつかの態様において、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)またはT細胞であり得る。T細胞は、培養T細胞、例えば、初代T細胞、もしくは培養T細胞株に由来するT細胞、例えば、Jurkat、SupTl等、または哺乳動物から得られたT細胞のような任意のT細胞であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、またはその他の組織もしくは体液を含むが、これらに限定されるわけではない多数の起源から得られてよい。T細胞は、濃縮または精製されていてもよい。T細胞は、ヒトT細胞であり得る。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であり得る。T細胞は、任意の型のT細胞であり得、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えば、Th1細胞およびTh2細胞、CD8+ T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリT細胞、未感作T細胞等を含むが、これらに限定されるわけではない、任意の発達段階のものであり得る。T細胞は、CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞であり得る。
【0283】
本明細書に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞の集団も提供される。細胞の集団は、少なくとも1つの他の細胞、例えば、組換え発現ベクターのうちの任意のものを含まない宿主細胞(例えば、T細胞)、またはT細胞以外の細胞、例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞等に加えて、記載された組換え発現ベクターのうちの任意のものを含む宿主細胞を含む、不均一な集団であり得る。あるいは、細胞の集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例えば、から本質的になる)実質的に均一な集団であってもよい。集団は、集団の全ての細胞が、組換え発現ベクターを含むような、集団の全ての細胞が、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンである、細胞のクローン集団であってもよい。本発明の1つの態様において、細胞の集団は、本明細書に記載される組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0284】
ポリペプチドをコードする核酸を、その生物学的活性を減少させることなく、修飾することができる。いくつかの修飾は、ターゲティング分子のクローニング、発現、または融合タンパク質への組み入れを容易にするために作成され得る。そのような修飾は、当業者に公知であり、例えば、終結コドン、開始部位を提供するためアミノ末端に付加されるメチオニン、便利に置かれた制限部位を作るため、いずれかの末端に置かれる付加的なアミノ酸、または精製工程を補助するための(ポリHisのような)付加的なアミノ酸を含む。組換え方法に加えて、本開示のイムノコンジュゲート、エフェクター部分、および抗体は、当技術分野において周知の標準的なペプチド合成を使用して、完全にまたは部分的に構築されてもよい。
【0285】
発現の後、抗体、抗原結合断片、およびコンジュゲートは、当技術分野における標準的な手法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィ等によって精製され得る(一般に、Simpson ed.,Basic methods in Protein Purification and Analysis:A laboratory Manual,Cold Harbor Press,2008を参照すること)。抗体、抗原結合断片、およびコンジュゲートは、100%純粋である必要はない。部分的に、または所望の均一性にまで精製された後、治療的に使用される場合には、ポリペプチドは内毒素を実質的に含まないべきである。
【0286】
哺乳動物細胞、および大腸菌のような細菌からの、抗体、抗原結合断片、およびコンジュゲートの発現および/または適切な活性型への再折り畳みの方法は、記載されており、周知であり、本明細書に開示される抗体に適用可能である。例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,2nd,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,2013、Simpson ed.,Basic methods in Protein Purification and Analysis:A laboratory Manual,Cold Harbor Press,2008、およびWard et al.,Nature 341:544,1989を参照すること。
【0287】
しばしば、大腸菌またはその他の細菌に由来する機能性異種タンパク質は、封入体から単離され、強力な界面活性剤を使用した可溶化およびその後の再折り畳みを必要とする。当技術分野において周知であるように、可溶化工程においては、ジスルフィド結合を分離するため、還元剤が存在しなければならない。還元剤を含む例示的な緩衝液は、0.1Mトリス(pH 8)、6Mグアニジン、2mM EDTA、0.3M DTE(ジチオエリスリトール)である。ジスルフィド結合の再酸化は、Saxena et al.,Biochemistry 9:5015-5021,1970に記載され、Buchner et al.(前記)に具体的に記載されるように、還元型および酸化型の低分子量チオール試薬の存在下で実施され得る。
【0288】
組換え方法に加えて、抗体、抗原結合断片、および/またはコンジュゲートは、標準的なペプチド合成を使用して、完全に、または部分的に構築されてもよい。ポリペプチドの固相合成は、配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に付着させた後、配列内の残りのアミノ酸を逐次的に付加することによって達成され得る。固相合成のための技術は、Barany & Merrifield,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.Vol.2:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.pp.3-284;Merrifield et al.,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2156,1963、およびStewart et al.,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.,1984によって記載されている。より長いタンパク質は、より短い断片のアミノ末端およびカルボキシル末端の縮合によって合成され得る。(例えば、カップリング試薬N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドの使用による)カルボキシル末端の活性化によってペプチド結合を形成させる方法は、当技術分野において周知である。
【0289】
E.検出の方法
EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞のような、EGFRvIIIを発現する細胞の、対象における存在を検出する方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、免疫複合体を形成させるため、対象に由来する細胞を、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体またはそのコンジュゲートのうちの1つまたは複数と接触させる工程を含む。次いで、免疫複合体の存在(または欠如)が検出される。免疫複合体の存在は、対象における、EGFRvIIIを発現する細胞の存在を示す。検出方法は、免疫複合体のインビボ検出またはインビトロ検出を含み得る。いくつかの態様において、EGFRvIIIを発現する細胞の検出は、腫瘍細胞における、EGFRvIIIの細胞表面発現の検出を含む。提供された方法のいくつかの態様において、対象における、EGFRvIIIを発現する細胞の検出は、腫瘍を検出する。いくつかの非限定的な例において、腫瘍は、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような癌である。いくつかの例において、方法は、EGFRvIIIを過剰発現する腫瘍細胞も検出することができる。
【0290】
多様なフォーマットが、EGFRvIIIを発現する細胞、例えば、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞を検出するために有用である。いくつかの態様において、腫瘍、例えば、癌を有するか、有すると推測されるか、またはその発症のリスクを有する対象が選択される。例えば、対象は、頭頚部癌、乳癌、もしくは膀胱癌を有するか、有すると推測されるか、またはその発症のリスクを有する。いくつかの例において、対象は、頭頚部癌、乳癌、もしくは膀胱癌を有するか、有すると推測されるか、またはその発症のリスクを有する。従って、EGFRvIIIを発現する細胞の存在が、これらの対象において検出され得る。
【0291】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片がEGRF287-302ループと結合するためには、R300が必要とされ、方法は、EGFRの過剰発現も検出することができる。過剰発現は、約50,00超の受容体、約60,00超の受容体、約70,00超の受容体、約80,00超の受容体、約90,00超の受容体、または約100,00超の受容体を有する細胞が検出されるよう測定され得る。例えば、そのような方法は、免疫複合体を形成させるため、対象に由来する生物学的試料の中の腫瘍細胞を、本明細書において提供されるコンジュゲートもしくは抗体またはそれらの抗原結合断片のうちの1つまたは複数と接触させる工程を含む。次いで、免疫複合体の存在(または欠如)が検出され、かつ/または定量される。対象に由来する細胞における免疫複合体の存在(または量)は、対象における、EGFRを過剰発現する腫瘍細胞の存在を示す。
【0292】
1つの態様において、試料が対象から得られ、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の存在がインビトロで査定される。例えば、そのような方法は、免疫複合体を形成させるため、対象に由来する生物学的試料の中の腫瘍細胞を、EGFRvIIIと特異的に結合する本明細書において提供されるコンジュゲートもしくは抗体またはそれらの抗原結合断片のうちの1つまたは複数と接触させる工程を含む。次いで、免疫複合体の存在(または欠如)が検出される。対象に由来する細胞における免疫複合体の存在は、対象における、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の存在を示す。例えば、対照試料における免疫複合体の形成と比較した、試料における免疫複合体の存在の増加は、対象における、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の存在を示す。いくつかの態様において、対照が利用され得る。
【0293】
生物学的試料は、典型的には、ヒトのような関心対象の哺乳動物対象から得られる。試料は、生検、剖検からの組織、および病理学標本を含むが、これらに限定されるわけではない、任意の試料であり得る。生物学的試料には、組織の切片、例えば、組織学的目的のために採取された凍結切片も含まれる。
【0294】
開示された方法のいくつかの例において、抗体または抗原結合断片は、検出可能マーカーとコンジュゲートされる。いくつかの例において、方法は、さらに、免疫複合体を形成させるために十分な時間、EGFRvIII特異的抗体と特異的に結合する二次抗体、その抗原結合断片、またはこれらの分子を含むコンジュゲートを接触させる工程、およびこの免疫複合体を検出する工程を含む。対照試料またはその他の標準における免疫複合体の存在と比較した、(前記のような)選択された対象に由来する生物学的試料におけるこの免疫複合体の存在の増加は、生物学的試料における、EGFRvIIIを発現する内皮細胞の存在を検出する。いくつかの例において、二次抗体は、検出可能マーカーとコンジュゲートされている。
【0295】
抗体または二次抗体のための適当な検出可能マーカーは、記載されており、当業者に公知である。例えば、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、磁性薬剤、および放射性材料。適当な酵素の非限定的な例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適当な補欠分子族複合体の非限定的な例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれる。適当な蛍光材料の非限定的な例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが含まれる。非限定的な例示的な発光材料は、ルミノールであり;非限定的な例示的な磁性薬剤は、ガドリニウムであり、非限定的な例示的な放射性標識には、125I、131I、35S、または3Hが含まれる。
【0296】
EGFRvIIIと特異的に結合する抗体およびそれらのコンジュゲートは、免疫組織化学的アッセイにおいて使用され得る。これらのアッセイは、当業者に公知である(イムノアッセイフォーマットの説明については、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Publications,New York(2013)を参照すること)。
【0297】
本明細書に開示される抗体は、インビボのEGFRvIIIを発現する腫瘍細胞を検出するためにも使用され得る。いくつかの例において、インビボ検出は、対象における腫瘍の存在を診断する。従って、対象における病理学的状態、例えば、腫瘍、例えば、癌;例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌を検出する方法が開示される。1つの態様において、有効量の、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体(もしくはその抗原結合断片)またはそれらのコンジュゲートが、抗体または抗原結合断片が免疫複合体を形成するために十分な時間、対象へ投与され、次いで、免疫複合体が検出され得る。対象における免疫複合体の検出は、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の存在を決定する。1つの具体的な非限定的な例において、免疫複合体の検出は、免疫シンチグラフィーによって実施される。免疫複合体検出の他の具体的な非限定的な例には、ラジオローカライゼーション(radiolocalization)、ラジオイメージング(radioimaging)、(例えば、ビオチン化抗体およびアビジン-酸化鉄を使用した)磁気共鳴画像法、(例えば、111インジウム標識モノクローナル抗体を使用した)陽電子放出断層撮影、または(例えば、ルシフェラーゼもしくは緑色蛍光タンパク質によって標識された抗体を使用した)蛍光画像法が含まれる。参照により本明細書に組み入れられるPaty et al.,Transplantation.,77:1133-1137,2004を参照すること。いくつかの例において、開示された方法は、例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌を検出する。
【0298】
磁気共鳴画像法の状況において、造影剤検出は、磁気共鳴スキャナー磁場強度によって大きく影響を受け得る。磁場強度の増加は、造影剤を検出する能力の数桁の改善を提供する(Hu et al.,Ann.Rev.Biomed.Eng.,6:157-184,2004;Wedeking et al.,Magn.Reson.Imaging.,17:569-575,1999)。例えば、2テスラ(T)におけるガドリニウムの検出の限界は、およそ30μMである。4Tにおいては、検出の限界が、およそ1μMに低下する。新たに利用可能になった7~12Tスキャナーによれば、低い(10~100)nM濃度のこの造影剤が検出されると予想される。類似の感度は、酸化鉄のような造影剤を使用しても同定され得る。検出された後、試験結果は、腫瘍の外科的なまたはその他の切除を補助するか、またはガイドするため、使用され得る。
【0299】
1つの態様において、有効量の、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片またはそれらのコンジュゲートは、抗癌処置後に腫瘍を有する対象へ投与される。投与された抗体または抗原結合断片またはコンジュゲートが腫瘍細胞上のEGFRvIIIと免疫複合体を形成することを可能にするために十分な時間が経過した後、免疫複合体が検出される。例えば、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体またはそのコンジュゲートは、腫瘍処置の前または後に対象へ投与され得る。腫瘍は、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような癌であり得る(が、これらに限定されるわけではない)。免疫複合体の存在(または欠如)は、処置の有効性を示す。例えば、処置前に採取された対照と比較した、免疫複合体の増加は、その処置が有効でないことを示し、処置前に採取された対照と比較した、免疫複合体の減少は、その処置が有効であることを示す。
【0300】
F.処置の方法
治療的に有効な量の、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片またはそれらのコンジュゲート、またはEGFRvIIIと特異的に結合する抗原結合断片を発現するCAR T細胞を、EGFRvIIIを発現する腫瘍、例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような癌を処置するため、対象へ投与することができる。いくつかの態様において、治療的に有効な量の、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片またはそれらのコンジュゲート、またはEGFRvIIIと特異的に結合する抗原結合断片を発現するCAR T細胞の投与は、癌、例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌のような、EGFRvIIIを発現する腫瘍の徴候または症状を減少させる。従って、EGFRvIIIを発現する腫瘍を有するか、有すると推測されるか、またはその発症のリスクを有する対象が、処置のために選択され得る。治療的に有効な量の本明細書に開示された核酸分子およびベクターも有用である。
【0301】
他の態様において、腫瘍は、EGFRを過剰発現するかもしれず、かつ/またはミスフォールドされたEGFRを発現するかもしれない。いくつかの態様において、EGFRを過剰発現し、かつ/またはミスフォールドされたEGFRを発現する腫瘍を有する対象が選択される。本明細書に開示される組成物は、対象におけるこれらの腫瘍を処置するために有用である。
【0302】
さらなる態様において、治療的に有効な量の本明細書に開示された抗体または抗原結合断片は、対象における、EGFRを過剰発現する腫瘍を阻害する方法においても使用され得る。この方法は、有効量の抗体、抗原結合断片、核酸分子、ベクター、T細胞、または薬学的組成物を、EGFRを過剰発現する腫瘍を有する対象へ投与する工程を含む。いくつかの非限定的な例において、抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:1のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含むVH、ならびにSEQ ID NO:2のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含むVHを含む。これらの抗原結合断片を含む核酸分子、ベクター、およびCAR T細胞も、有用である。腫瘍は、癌、例えば、頭頚部癌、乳癌、または膀胱癌であり得る。従って、EGFRを過剰発現する腫瘍を有するか、有すると推測されるか、またはその発症のリスクを有する対象が、処置のために選択され得る。
【0303】
いくつかの例において、本明細書に開示された抗体、抗原結合断片、CAR T細胞、組成物、およびコンジュゲートは、腫瘍の成長もしくは転移を遅延させるか、もしくは阻害するため、腫瘍体積を低下させるため、または転移を低下させるため、対象へ投与され得る。これらの適用において、治療的に有効な量の、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体または抗原結合断片またはコンジュゲートまたはCAR T細胞または組成物が、EGFRvIIIとの免疫複合体を形成させるために十分な量および条件で、対象へ投与され、それによって、腫瘍の成長もしくは転移が遅延し、もしくは阻害され、腫瘍体積が低下し、または腫瘍の徴候もしくは症状が阻害される。適当な対象の例には、EGFRvIIIを発現する腫瘍を有すると診断されたか、または有すると推測される対象、例えば、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、もしくはメラノーマのような癌を有する対象が含まれる。
【0304】
治療的に有効な量は、疾患の重症度および患者の全身状態に依存する。治療的に有効な量は、主観的な症状の軽快、または医師もしくはその他の有資格観察者によって認められる客観的に同定可能な改善のいずれかを提供するものである。1つの態様において、治療的に有効な量は、(頭頚部癌、乳癌、膀胱のような癌の成長のような)腫瘍成長を阻害するため、転移を阻害するため、腫瘍体積を低下させるために必要な量、または腫瘍の徴候もしくは症状を低下させるために有効な量である。投与される薬剤の治療的に有効な量は、所望の効果および処置すべき対象に依って変動し得る。いくつかの例において、治療的な量は、患者の腫瘍負荷を排除するか、もしくは低下させる量、または転移細胞の増殖を防止するか、もしくは低下させるか、もしくは腫瘍の症状を低下させる量である。
【0305】
開示された方法から利益を得ることができる対象には、ヒトおよび獣医学的対象が含まれる。対象は、例えば、対象が腫瘍を有するか否かを決定するため、開示された治療を開始する前にスクリーニングされ得る。EGFRvIIIを発現する腫瘍の存在は、本明細書において提供される方法を使用して処置され得ることを示す。
【0306】
局所投与および全身投与を含む任意の投与方法が、開示された抗体、抗原結合断片、コンジュゲート、CAR T細胞、組成物、および付加的な薬剤のため、使用され得る。例えば、局所投与、経口投与、血管内投与、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、皮内投与、くも膜下腔内投与、および皮下投与が使用され得る。具体的な投与モードおよび投薬計画は、症例の詳細(例えば、対象、疾患、関与する疾患状態、および処置が予防的であるか否か)を考慮に入れて、主治医によって選択されるであろう。複数の薬剤または組成物が投与されるケースにおいて、1つまたは複数の投与ルートが使用され得る;例えば、化学療法剤は経口投与され得、抗体または抗原結合断片またはコンジュゲートまたは組成物は静脈内投与され得る。投与の方法には、コンジュゲート、抗体、抗原結合断片、CAR T細胞、核酸分子、または組成物が、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、固定油、オレイン酸エチル、またはリポソームのような薬学的に許容される担体によって提供される、注射が含まれる。いくつかの態様において、例えば、抗体または抗原結合断片を、腫瘍が除去された組織の領域または腫瘍発症の傾向があると推測される領域へ適用することによる、開示された化合物の局所投与が使用され得る。いくつかの態様において、治療的に有効な量の抗体もしくは抗原結合断片(またはそれらのコンジュゲート)を含む薬学的調製物の、腫瘍内(または腫瘍の近く)における徐放が有益であり得る。
【0307】
抗体もしくは抗原結合断片またはそれらのコンジュゲート、またはCAR T細胞を含む組成物は、正確な投薬量の個々の投与のために適当な単位剤形に製剤化され得る。さらに、組成物は、単回投与または複数回投与のスケジュールで投与され得る。複数回投与スケジュールは、初期の処置過程が、複数回に分けて、例えば、1~10回の投与によって行われた後、組成物の作用を維持するか、または補強するために必要なその後の間隔で、さらに投与が行われるものである。処置は、数日~数ヶ月またはさらには数年にわたる、化合物の毎日投与または1日複数回投与を含み得る。従って、投薬計画は、少なくとも一部分、処置すべき対象の具体的な必要性に基づき決定され、投与する実務者の判断に依存するであろう。
【0308】
抗体、コンジュゲート、組成物、または付加的な薬剤の典型的な投薬量は、約0.01~約30mg/kg、例えば、約0.1~約10mg/kgの範囲であり得る。いくつかの例において、投薬量は、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.2mg/kg、少なくとも約0.3mg/kg、少なくとも約0.4mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約4mg/kg、少なくとも約3mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約6mg/kg、少なくとも約7mg/kg、少なくとも約8mg/kg、少なくとも約9mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約11mg/kg、少なくとも約12mg/kg、少なくとも約13mg/kg、少なくとも約14mg/kg、少なくとも約15mg/kg、少なくとも約16mg/kg、少なくとも約17mg/kg、少なくとも約18mg/kg、少なくとも約19mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約21mg/kg、少なくとも約22mg/kg、少なくとも約23mg/kg、少なくとも約24mg/kg、少なくとも約25mg/kg、少なくとも約26mg/kg、少なくとも約27mg/kg、少なくとも約28mg/kg、少なくとも約29mg/kg、または少なくとも約30mg/kgである。
【0309】
具体的な例において、対象は、コンジュゲート、抗体、組成物、CAR T細胞、または付加的な薬剤のうちの1つまたは複数を含む治療用組成物を、例えば、数週間、数ヶ月、または数年にわたり、少なくとも2日連続、10日連続等のような1日複数回の投薬スケジュールで投与される。一例において、対象は、少なくとも30日、例えば、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも24ヶ月、または少なくとも36ヶ月の期間、コンジュゲート、抗体、組成物、または付加的な薬剤を投与される。
【0310】
いくつかの態様において、開示された治療剤は、ある期間にわたり毎日または週に複数回、静脈内、皮下、またはその他のモードによって投与され、その後、無処置の期間が置かれ、次いで、そのサイクルが繰り返される。いくつかの態様において、処置の最初の期間(例えば、毎日または週に複数回の治療剤の投与)は、3日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または12週間である。関連する態様において、無処置の期間は、3日間、1週間、2週間、3週間、または4週間、継続される。ある種の態様において、治療剤の投薬計画は、3日間、毎日、その後、3日間休薬;または1週間、毎日もしくは週に複数回、その後、3日間もしくは1週間休薬;または2週間、毎日もしくは週に複数回、その後、1もしくは2週間休薬;または3週間、毎日もしくは週に複数回、その後、1、2、もしくは3週間休薬;または4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12週間、毎日もしくは週に複数回、その後、1、2、3、もしくは4週間休薬である。
【0311】
抗体、抗原結合断片、コンジュゲート、CAR T細胞、または組成物の投与は、他の抗癌剤もしくは抗血管新生剤の投与、または(腫瘍の外科的切除もしくは放射線治療のような)治療的処置を伴ってもよい。例えば、治療的な量の抗体またはコンジュゲートの投与の前、途中、または後に、対象は、1つまたは複数の付加的な治療を受容することができる。一例において、対象は、腫瘍の処置のための治療的な量の1つまたは複数の薬剤の投与の前に、腫瘍を除去するか、または低下させるため、1つまたは複数の処置を受容する。例えば、付加的な薬剤には、化学療法剤、抗血管新生剤、またはそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。もう1つの例において、治療的に有効な量の抗体または抗原結合断片またはコンジュゲートを投与する前に、腫瘍の少なくとも一部が、外科的に、もしくはその他の方法で切除されるか、またはサイズもしくは体積を低下させられる。
【0312】
使用され得る付加的な治療剤の具体的な例には、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたは架橋剤、DNA合成阻害剤、DNAおよびRNAの転写の阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、遺伝子制御剤、ならびに血管新生阻害剤が含まれる。(治療的に有効な量で投与される)これらの薬剤、および処置は、単独で、または組み合わせて、使用され得る。例えば、任意の適当な抗癌剤または抗血管新生剤が、本明細書に開示された抗体、コンジュゲートと組み合わせて、使用され得る。そのような薬剤の方法および治療的投薬量は、当業者に公知であり、熟練した医師によって決定され得る。一例において、化学療法剤には、5-FUもしくはIRTまたは両方が含まれる。
【0313】
微小管結合剤とは、微小管形成を安定化するか、または不安定化し、それによって、細胞分裂を阻害するため、チューブリンと相互作用する薬剤をさす。開示された治療と共に使用され得る微小管結合剤の例には、非限定的に、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン(ナベルビン)、エポチロン、コルヒチン、ドラスタチン15、ノコダゾール、ポドフィロトキシン、およびリゾキシン(rhizoxin)が含まれる。そのような化合物の類似体および誘導体も使用され得、当業者に公知である。例えば、適当なエポチロンおよびエポチロン類似体は、国際公開番号WO 2004/018478に記載されている。パクリタキセルおよびドセタキセルのようなタキソイド、ならびに米国特許第6,610,860号;第5,530,020号;および第5,912,264号によって教示されるパクリタキセルの類似体も使用され得る。
【0314】
非限定的に、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ならびにそれらの誘導体および類似体を含む、適当なDNAおよびRNAの転写の制御剤も、開示された治療と組み合わせて使用するために適当である。対象へ投与され得るDNAインターカレーターおよび架橋剤には、非限定的に、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、ブレオマイシン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ならびにそれらの誘導体および類似体が含まれる。治療剤として使用するために適当なDNA合成阻害剤には、非限定的に、メトトレキサート、5-フルオロ-5'-デオキシウリジン、5-FU、およびそれらの類似体が含まれる。適当な酵素阻害剤の例には、非限定的に、カンプトテシン、エトポシド、ホルメスタン、トリコスタチン、ならびにそれらの誘導体および類似体が含まれる。遺伝子制御に影響を与える適当な化合物には、ラロキシフェン、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ミフェプリストン、ならびにそれらの誘導体および類似体のような、1つまたは複数の遺伝子の発現の増加または減少をもたらす薬剤が含まれる。
【0315】
一般的に使用されている化学療法薬の例には、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブルスファン、CCNU、カルボプラチナム(Carboplatinum)、シスプラチナム(Cisplatinum)、シトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(またはドセタキセルのようなその他のタキサン)、ベルバン(Velban)、ビンクリスチン、VP-16が含まれ、いくつかの比較的新しい薬物には、ゲムシタビン(ジェムザール)、ハーセプチン、IRT(Camptosar、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン(ハイカムチン)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼベリン(Zevelin)、およびカルシトリオールが含まれる。
【0316】
使用され得る免疫調整剤の非限定的な例には、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(Imreg(New Orleans,La.)製)、SK&F 106528、およびTNF(腫瘍壊死因子;Genentech)が含まれる。
【0317】
従って、開示されたEGFRvIII特異的抗体、抗原結合断片、またはそれらのコンジュゲート、CAT T細胞、および核酸分子と組み合わせて使用するための化学療法剤の非限定的な例には、化学療法剤、例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millenium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スーテント(SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(Sirolimus、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、GlaxoSmithKline)、ロナファルニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(BAY43-9006、Bayer Labs.)、およびゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;アルキルスルホン酸、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;葉酸代謝拮抗抗悪性腫瘍薬、例えば、ペメトレキセド(ALIMTA(登録商標)Eli Lilly)、アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパ;エチレンイミンおよびメチラメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチロメラミン;アセトゲニン(具体的には、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(例えば、合成類似体トポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(例えば、その合成類似体、アドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)、およびビゼレシン);クリプトフィシン(具体的には、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例えば、合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質、カリケアマイシン、カリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1;ダイネマイシン(dynemicin)、例えば、ダイネマイシンA;ビスホスホネート、例えば、クロドロン酸;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(例えば、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬(anti-adrenals)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウムアセテート(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサマイトシン(ansamitocins);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(具体的には、T-2毒素、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)A、およびアンギジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(商標)クレモフォールフリー、アルブミン、パクリタキセルのナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、およびTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル(chloranbucil);GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤 RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;ならびに前記のうちの任意のものの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0318】
抗血管新生剤の非限定的な例には、タンパク質、酵素、多糖、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、および組換えベクターのような分子、ならびに血管成長を低下させるか、またはさらには阻害するために機能する低分子が含まれる。適当な血管新生阻害剤の例には、非限定的に、アンジオスタチンK1-3、スタウロスポリン、ゲニステイン、フマギリン、メドロキシプロゲステロン、スラミン、インターフェロン-アルファ、メタロプロテイナーゼ阻害剤、血小板因子4、ソマトスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、サリドマイド、ならびにそれらの誘導体および類似体が含まれる。例えば、いくつかの態様において、抗血管新生剤は、VEGF(例えば、AVASTIN(登録商標)、Roche)またはVEGF受容体(例えば、VEGFR2抗体)と特異的に結合する抗体である。一例において、抗血管新生剤には、VEGFR2抗体、もしくはDMXAA(VadimezanまたはASA404としても公知;例えば、Sigma Corp.(St.Louis,MO)から市販されている)、または両方が含まれる。例示的なキナーゼ阻害剤には、増殖因子のリン酸化および活性化を防止するGLEEVAC(登録商標)、IRESSA(登録商標)、およびTARCEVA(登録商標)が含まれる。使用され得る抗体には、増殖因子および血管新生経路を阻止するHERCEPTIN(登録商標)およびAVASTIN(登録商標)が含まれる。
【0319】
いくつかの例において、付加的な薬剤は、モノクローナル抗体、例えば、3F8、アバゴボマブ(Abagovomab)、アデカツムマブ(Adecatumumab)、アフツズマブ、アラシズマブ(Alacizumab)、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート(Altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトクス(Anatumomab mafenatox)、アポリズマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ(Bivatuzumab)メルタンシン、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、CC49、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シズツムマブ、クリバツズマブテルトラキセタン(Clivatuzumab tertraxetan)、コナツムマブ、ダセツズマブ、デツモマブ(Detumomab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドレコロマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ(Etaracizumab)、ファーレツズマブ、フィギツムマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレンバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ(Imciromab)、インテツムマブ(Intetumumab)、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ(Iratumumab)、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ(Lorvotuzumab)メルタンシン、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ、マパツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ、ミツモマブ(Mitumomab)、モロリムマブ(Morolimumab)、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オファツムマブ、オララツマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、パニツムマブ、ペンツモマブ(Pemtumomab)、ペルツズマブ、ピンツモマブ(Pintumomab)、プリツムマブ(Pritumumab)、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソラフェニブ、スニチニブ、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomab paptox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、TGN1412、チシリムマブ(Ticilimumab)(=トレメリムマブ)、ティガツズマブ、TNX-650、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ(Votumumab)、ザルツムマブである。
【0320】
いくつかの型の癌のための別の一般的な処置は、外科的処置、例えば、癌またはその一部分の外科的切除である。処置の別の例は、放射線治療、例えば、外科的切除前の、腫瘍の根絶または収縮を助けるための放射性材料またはエネルギーの腫瘍部位への投与(例えば、外照射療法)である。
【0321】
前記の分類のうちの1つまたは複数に含まれてもよいし、または含まれなくてもよい、他の治療剤、例えば、抗腫瘍剤も、開示された治療と組み合わせて投与するために適当である。例えば、そのような薬剤には、アドリアマイシン、アピゲニン、ラパマイシン、ゼブラリン、シメチジン、ならびにそれらの誘導体および類似体が含まれる。
【0322】
付加的な薬剤についての調製および投薬スケジュールは、製造業者の説明書に従い、または当業者によって経験的に決定されたように、使用され得る。そのような化学療法についての調製および投薬スケジュールは、Chemotherapy Service,(1992)Ed.,M.C.Perry,Williams & Wilkins,Baltimore,Mdにも記載されている。
【0323】
組み合わせ治療は、相乗作用を提供し、相乗性であると立証され得る。即ち、活性成分が共に使用された時に達成される効果が、それらの化合物を別々に使用して得られる効果の和より大きい。相乗効果は、活性成分が(1)同時に製剤化され(co-formulated)、組み合わせられた単位投薬製剤として同時に投与されるか、もしくは送達される時;(2)別々の製剤として交互にもしくは平行して送達される時;または(3)何らかの他の計画によって、達成され得る。交互に送達される時に、例えば、別々のシリンジによる異なる注射によって、化合物が逐次的に投与されるか、または送達される時に、相乗効果が達成され得る。一般に、交互の場合には、有効な投薬量の活性成分が各々、逐次的に、即ち、連続的に投与され、組み合わせ治療においては、有効な投薬量の2つ以上の活性成分が、同時に投与される。
【0324】
G.組成物
(薬学的に許容される担体のような)担体の中に、EGFRvIIIと特異的に結合する開示されたコンジュゲート、抗体、もしくは抗原結合断片、または核酸分子、またはCAR T細胞のうちの1つまたは複数を含む組成物が提供される。組成物は、対象への投与のため、単位剤形として調製され得る。所望のアウトカムを達成するための、投与の量およびタイミングは、処置する医師の判断による。組成物は、(静脈内のような)全身投与または(腫瘍内のような)局所投与のため、製剤化され得る。一例において、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合断片、またはそのような抗体もしくは抗原結合断片を含むコンジュゲート、またはCAR T細胞は、静脈内投与のような非経口投与のため、製剤化される。本明細書に開示されるコンジュゲート、抗体もしくは抗原結合断片、またはCAR T細胞を含む組成物は、例えば、腫瘍、例えば、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、または皮膚癌において発生した腫瘍の処置および/または検出のため、有用である。いくつかの例において、組成物は、癌の処置または検出のため、有用である。
【0325】
投与するための組成物には、水性担体のような薬学的に許容される担体の中に溶解したコンジュゲート、抗体、もしくは抗原結合断片(または懸濁したCAR T細胞)の溶液が含まれ得る。多様な水性担体、例えば、緩衝生理食塩水等が使用され得る。これらの溶液は、無菌であり、一般に、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。組成物は、pH調整緩衝剤、毒性調整剤等のような生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含有し得る。これらの製剤における抗体もしくは抗原結合断片、コンジュゲート、またはCAR T細胞の濃度は広く変動し得、選択された投与モードおよび対象の必要に従って、主に、液体の体積、粘性、体重等に基づき、選択されるであろう。そのような剤形を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者に明らかであろう。
【0326】
静脈内投与のための典型的な組成物は、1日当たり対象1人当たり約0.01~約30mg/kgの抗体または抗原結合断片またはコンジュゲート(または抗体もしくは抗原結合断片を含むコンジュゲートの相当用量)を含む。投与可能な組成物を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者に明らかであり、Remington's Pharmaceutical Science,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA(1995)のような刊行物に、より詳細に記載されている。いくつかの態様において、組成物は、約0.1mg/ml~約20mg/ml、または約0.5mg/ml~約20mg/ml、または約1mg/ml~約20mg/ml、または約0.1mg/ml~約10mg/ml、または約0.5mg/ml~約10mg/ml、または約1mg/ml~約10mg/mlの濃度範囲で、1つまたは複数の(EGFRvIIIと特異的に結合する抗体または抗原結合断片のような)抗体、抗原結合断片を含む液体製剤であり得る。
【0327】
抗体、抗原結合断片、またはコンジュゲートは、凍結乾燥形態で提供され、投与前に滅菌水で再水和されてもよいが、既知濃度の無菌溶液として提供されてもよい。抗体または抗原結合断片またはコンジュゲートの溶液は、次いで、0.9%塩化ナトリウム(USP)を含有する注入バッグに添加され、いくつかのケースにおいて、0.5~15mg/kg体重の投薬量で投与される。抗体または抗原結合断片およびコンジュゲート薬物の投与については、相当の経験が、当技術分野において入手されており;例えば、抗体薬物は、1997年のRITUXAN(登録商標)の認可以降、米国において販売されている。抗体、抗原結合断片、およびコンジュゲートは、静脈内プッシュまたはボーラスではなく、低速注入によって投与されてもよい。一例において、比較的高い負荷用量が投与され、その後、比較的低いレベルで維持用量が投与される。例えば、4mg/kgの抗体もしくは抗原結合断片という初期負荷用量(または抗体もしくは抗原結合断片を含むコンジュゲートの相当用量)が、90分間にわたり注入され、その後、以前の用量がよく耐容された場合には、4~8週間、毎週、2mg/kgという維持用量が30分間にわたり注入される。
【0328】
コントロールドリリース(controlled release)非経口製剤は、インプラント、油性注射剤、または粒子系として作成され得る。タンパク質送達系の広範な概説については、Banga,A.J.,Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems,Technomic Publishing Company,Inc.,Lancaster,PA,(1995)を参照すること。粒子系には、マイクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が含まれる。マイクロカプセルは、中心コアとして細胞毒または薬物のような治療用タンパク質を含有する。マイクロスフェアにおいては、治療薬が粒子全体に分散している。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは、一般に、それぞれ、ナノ粒子、ナノスフェア、およびナノカプセルと呼ばれる。毛細血管は、およそ5μmの直径を有するため、ナノ粒子のみが静脈内投与される。微粒子は、典型的には、直径がおよそ100μmであり、皮下または筋肉内に投与される。例えば、Kreuter,J.,Colloidal Drug Delivery Systems,J.Kreuter,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,pp.219-342(1994);およびTice & Tabibi,Treatise on Controlled Drug Delivery,A.Kydonieus,ed.,Marcel Dekker,Inc.New York,NY,pp.315-339,(1992)を参照すること。
【0329】
ポリマーは、本明細書に開示された抗体または抗原結合断片またはコンジュゲート組成物のイオンコントロールドリリース(ion-controlled release)のために使用される。コントロールされた薬物送達において使用するための様々な分解性および非分解性のポリマーマトリックスは、当技術分野において公知である(Langer,Accounts Chem.Res.26:537-542,1993)。例えば、ブロックコポリマーであるポラクサマー(polaxamer)407は、低温では、粘性であるが可動性の液体として存在し、体温では、半固体ゲルを形成する。組換えインターロイキン-2およびウレアーゼの製剤化および持続送達のために有効な媒体であることが示されている(Johnston et al.,Pharm.Res.9:425-434,1992;およびPec et al.,J.Parent.Sci.Tech.44(2):58-65,1990)。あるいは、ヒドロキシアパタイトが、タンパク質のコントロールドリリースのためのマイクロキャリアとして使用されている(Ijntema et al.,Int.J.Pharm.112:215-224,1994)。さらにもう1つの局面において、リポソームが、脂質に封入された薬物のコントロールドリリースおよび薬物ターゲティングのため、使用される(Betageri et al.,Liposome Drug Delivery Systems,Technomic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,PA(1993))。治療用タンパク質のコントロールされた送達のための多数の付加的な系が公知である(米国特許第5,055,303号;米国特許第5,188,837号;米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号;米国特許第4,957,735号;米国特許第5,019,369号;米国特許第5,055,303号;米国特許第5,514,670号;米国特許第5,413,797号;米国特許第5,268,164号;米国特許第5,004,697号;米国特許第4,902,505号;米国特許第5,506,206号;米国特許第5,271,961号;米国特許第5,254,342号、および米国特許第5,534,496号を参照すること)。
【0330】
いくつかの例において、対象は、例えば、対象の細胞機構を使用して、インビボ抗体産生を提供するため、抗体、その抗原結合断片、または(例えば、毒素との)コンジュゲートをコードするDNAを投与される。核酸構築物による免疫は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,643,578号および米国特許第5,593,972号および米国特許第5,817,637号に教示されている。米国特許第5,880,103号は、コードする核酸を生物へ送達するためのいくつかの方法を記載している。その方法には、核酸のリポソーム送達が含まれる。そのような方法は、当業者によって、抗体またはその抗体結合断片の作製に適用され得る。
【0331】
核酸投与の1つのアプローチは、哺乳動物発現プラスミドのようなプラスミドDNAの直接投与である。開示された抗体またはその抗体結合断片をコードするヌクレオチド配列は、発現を増加させるため、プロモーターの調節下に置かれ得る。
【0332】
核酸を使用するための別のアプローチにおいて、開示された抗体またはその抗体結合断片を、弱毒化ウイルス宿主またはベクターまたは細菌ベクターによって発現させてもよい。組換えワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、またはその他のウイルスベクターが、抗体を発現させるため、使用され得る。例えば、ワクシニアベクターおよび方法、有用なプロトコルは、米国特許第4,722,848号に記載されている。BCG(カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette Guerin))は、開示された抗体の発現のための別のベクターを提供する(Stover,Nature 351:456-460,1991を参照すること)。
【0333】
1つの態様において、開示された抗体またはその抗体結合断片をコードする核酸は、細胞へ直接導入され得る。例えば、標準的な方法によって、核酸を金マイクロスフェアに負荷し、Bio-RadのHELIOS(商標)Gene Gunのような装置によって、皮膚へ導入することができる。核酸は、強力なプロモーターの調節下にあるプラスミドからなる「裸のもの」であってよい。
【0334】
典型的には、DNAは、筋肉内に注射されるが、他の部位に直接注射されてもよい。注射のための投薬量は、一般的に、およそ0.5μg/kg~約50mg/kgであり、典型的には、約0.005mg/kg~約5mg/kgである(例えば、米国特許第5,589,466号を参照すること)。
【0335】
H.キット
キットも提供される。例えば、対象における、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の検出、対象における腫瘍の処置のためのキット。キットは、典型的には、EGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片および/またはそれらのコンジュゲートを含む。
【0336】
EGFRvIIIと特異的に結合するコンジュゲートまたは抗体または抗原結合断片のうちの複数が、キットに含まれてもよい。従って、キットは、EGFRvIIIと特異的に結合する2つ以上の抗体、またはEGFRvIIIと特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片、およびそれらのコンジュゲート、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの態様において、Fv断片のような抗原結合断片、または抗原結合断片を含むコンジュゲートが、キットに含まれる。一例において、例えば、インビボで使用するため、抗体はscFv断片であり得る。
【0337】
キットは、容器と、容器上のまたは容器に付随したラベルまたはパッケージインサートとを含み得る。適当な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックのような多様な材料から形成されていてよい。容器は、典型的には、開示されたEGFRvIII特異的抗体、抗原結合断片、またはコンジュゲートのうちの1つまたは複数を含む組成物を保持する。いくつかの態様において、容器は、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。ラベルまたはパッケージインサートは、組成物が特定の状態を処置するために使用されることを示す。
【0338】
ラベルまたはパッケージインサートは、典型的には、例えば、腫瘍の処置または防止の方法における、開示されたEGFRvIII特異的抗体もしくはその断片またはそれらのコンジュゲートの使用についての説明書をさらに含む。パッケージインサートは、典型的には、そのような治療用生成物の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌、および/または使用に関する警告についての情報を含有する、治療用生成物の市販のパッケージに習慣的に含まれる説明書を含む。説明材料は、書面であってもよいし、(コンピュータディスケットもしくはコンパクトディスクのような)電子的形態であってもよいし、または(ビデオファイルのような)視覚的なものであってもよい。キットは、キットが設計された特定の適用を容易にするための付加的な成分も含み得る。従って、例えば、キットは、(酵素標識のための酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、二次抗体のような適切な二次標識等のような)標識を検出する手段をさらに含有し得る。キットは、特定の方法の実施のためにルーチンに使用される緩衝液およびその他の試薬をさらに含み得る。そのようなキットおよび適切な内容物は、当業者に公知である。
【実施例
【0339】
本明細書に開示された実験的研究においては、EGFR287-302ループを、ジスルフィドによって制限されたペプチドとして作製し、担体タンパク質キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とカップリングした。KLHとカップリングされたペプチドを、Balb/cマウスに注射した。これらのマウスに由来する血清を、ループペプチドとの反応性についてモニタリングし、高い力価が達成された時、ハイブリドーマ形成のため、脾臓を摘出した。次いで、候補ハイブリドーマ上清を、wtEGFRおよびEGFRvIIIとの反応性についてアッセイした。EGFRvIIIに対する高い反応性およびwtEGFRに対する低い反応性を有する抗体を、以下に開示されるように、単離し、特徴決定した。
【0340】
実施例1
EGFRvIIIと反応性のハイブリドーマの選択
抗体ベースの治療の標的として、増幅されたEGFR、またはEGFRvIIIを含む変異体バージョンを、上皮癌および悪性神経膠腫の表面において発現させる。EGFRの細胞外ドメイン(ECD)のジスルフィドによって制限されたループ287~302(ナンバリングは成熟ヒトEGFRについて、図1Aに表されたもの)に対する抗体を生成するため、5匹のBalb/cマウスを、残基286~303を含むKLHとコンジュゲートされたペプチドによって繰り返し免疫した(図1B)。注射されたペプチドに対する力価が、1:128,000希釈でバックグラウンドを超えた時(表1)、脾臓を採集し、骨髄腫細胞株Sp2/0との融合を通して候補ハイブリドーマを作製した。
【0341】
(表1)ループペプチドに対するマウス抗体力価を測定する間接ELISAアッセイについての吸光度値
【0342】
免疫原に対して特に高い力価を示した、最初はクローニングされていなかったハイブリドーマを、2匹のマウスから確立した(表1)。およそ40のハイブリドーマ上清を各融合から生成し、EGFRvIII-HisのECDおよびEGFRvIIIを発現する細胞に対する結合についてELISAフォーマットで評価した。7つの見込みのあるハイブリドーマを特徴決定するため、フォローアップ実験を行った。
【0343】
良好な細胞結合活性を有する選択されたハイブリドーマに由来する個々の上清を、wtEGFR-HisまたはEGFRvIII-HisのいずれかのECDとの結合について、ELISAによってアッセイした。ニッケルでコーティングされた96穴プレートを、Hisタグ付きEGFRタンパク質をディスプレイするために使用した。結果は、wtEGFR-Hisと比べた、EGFRvIII-Hisに対する結合の強い優先を示し、このことから、287-302ループが、EGFRvIIIにおいてはディスプレイされているが、wtEGFRにおいてはアクセスしにくいことが確認された(図2)。次に、同一のハイブリドーマ上清(1:10希釈)を、EGFRvIIIまたはwtEGFRのいずれかをトランスフェクトされたラット神経膠腫F98細胞との結合についてアッセイした。再び、結合は、上清の、EGFRvIIIのECDとの強い相互作用(図3)およびwtEGFRに対する乏しい反応性(図3)を反映した。EGFRのドメインIII(図1Aを参照すること)と反応したモノクローナル抗体ma528が、陽性対照として使用され、いずれのトランスフェクトされた細胞株の表面にも同等に結合することが示された(図3)。
【0344】
EGFRをコードする遺伝子は、ある種の上皮癌において増幅され、かつ/または過剰発現されている。過剰発現されたEGFRを有する細胞に対する結合をアッセイするため、上清(1:10希釈)を、トリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-468または類表皮癌株A431のいずれかに添加した。再び、陰性対照としての免疫前血清を超える結合が、大部分の上清について認められた。この時点では、上清の抗体濃度を決定しなかった。むしろ、限界希釈によって細胞をクローニングし、次いで、真の「クローン性」ハイブリドーマとして成長させた。
【0345】
実施例2
精製された抗体の特徴決定
固定化されたプロテインA/Gを使用して、クローニングされたハイブリドーマ上清に由来する7つの抗体を、さらに特徴決定するため、精製した。精製された抗体の2つのSDS-PAGEゲル(還元試料のうちの1つおよび非還元試料のうちの1つ)を供給した(図4)。最初のハイブリドーマ上清と比較した時、精製された抗体は、ELISAアッセイにおいて、定性的に類似した結果によって反応した。実際、比較的低い濃度の抗体(5ng/ml)は、EGFRvIII-Hisによって頑強なシグナルを生じ、wtEGFR-Hisとの結合はほとんどまたは全く示さなかった(図5)。細胞結合アッセイにおいて、7つのモノクローナル抗体の各々の結合を特徴決定するため、フローサイトメトリーを使用した。抗体を2ug/mlで添加した。再び、ma528を陽性対照として使用し、同一アイソタイプ抗体を、非結合性の陰性対照として使用した。F98EGFR細胞に対する抗体の結合を特徴決定した時、ヒストグラムは、ma528の強い結合(3705の幾何平均)、40H3の弱い結合(191の幾何平均)、残りの6つのモノクローナル抗体またはアイソタイプ対照による結合の欠如を示した(図6B)。F98-EGFRvIIIにおいて結合を査定した時、再び、ma528は、最も高い反応性を示したが、7つの全てのモノクローナル抗体からの実質的な結合も、それに近かった(およそ1000~1300の範囲の幾何平均)(図6B)。アイソタイプ対照は、結合しなかった。次に、癌株MDA-MB-468(図6A)、A431(図6A)、およびWI-38(図6C)、非癌性「正常」ヒト細胞株において、結合をアッセイした。MDA-MB-468細胞においては、ma528の次に40H3が実質的な結合を示し、他の6つの抗体は、アイソタイプ対照を超える最小の反応性を示した(図6A)。A431細胞においては、実質的に類似した結果が達成された(図6A)。しかしながら、生理学的なレベルでwtEGFRを発現するWI-38においては、ma528のみが2454の幾何平均で実質的な結合を示した(図6C)。WI-38においては、他の全ての抗体が、100未満の幾何平均を有していた(図6C)。機能的に、抗体40H3およびma528のみが、癌によって発現されたEGFRFとの結合を示すと結論付けられた。EGFRは、遺伝子増幅または転写調節の損失のいずれかによって過剰発現され得る。高レベル発現は、受容体のミスフォールディング、または遺伝子コピーのうちの1つもしくは複数における変異のいずれかをもたらす。
【0346】
しかしながら、40H3は、正常細胞WI-38に対して反応性を示さず、ma528は、癌細胞および正常細胞の両方と強く反応した。興味深いことに、EGFRvIIIをトランスフェクトされたF98細胞との抗体結合を査定した時、7つの抗体は、類似した実質的な反応性を示した。
【0347】
実施例3
EGFR286-303内の結合部位の位置
各抗体の結合部位のマッピングを補助するため、EGFR287-302ループ内の3個の荷電残基、D290、E293、およびR300を各々アラニンに変化させ、hisタグ付きペプチドとして作製した(図7)。287-302ループのwt配列を同様に作製した。ループ内の電荷残基が広がったため、相対的な抗体結合活性は、各抗体の相互作用に関与する重要残基の位置についての情報を提供することができた。結果は、抗体が以下の3つの群のうちの1つに分類されることを示した:(1)残基D290およびE293がアラニンに変化した時、結合が失われた:(2)E293のアラニンへの変化によってのみ、結合が失われた:および(3)R300がアラニンに変化した時、結合が失われた。総合すると、7つのEGFRvIII反応性抗体は、hisタグ付きペプチドに対する結合特徴に基づき、少なくとも3つの群に分かれた。群1は、7つの抗体のうちの5つ:1D9、3D10、4A4、9G11、および11E3を含有した。群2は、11E11を有し、群3は、40H3を含んでいた(表2)。
【0348】
(表2)各モノクローナル抗体のアイソタイプ決定およびペプチド反応性
EGFR287-302ループ:CGADSYEMEEDGVRKC(SEQ ID NO:69)
【0349】
実施例4
抗体の配列分析
7つの抗体の重鎖および軽鎖の両方の可変領域を配列決定し、推定アミノ酸を決定した(図8)。細胞結合抗体の配列分析は、7つの抗体が4つの群にクラスタリングされ得ることを示唆した。3D10および9G11(群1)は、類似した配列を共有しており、VH鎖に2アミノ酸、VL鎖に1アミノ酸の違いを有する。1D9および4A4(群2)の間には、VH鎖に3アミノ酸、VL鎖に1アミノ酸の違いが存在し、最後に、11E11および11G3(群3)を比較した時には、VH鎖に4アミノ酸、VL鎖に2アミノ酸の違いが存在した。特定の群内で、VH領域またはVL領域のいずれかのCDR3に位置しているアミノ酸の違いはなかった。配列分析は、40H3が、他の3つの群と比較して、最も異なる配列を有し、別にクラスタリングされるようであることを示唆した。それは、他の6つの抗体と比較して、VH鎖において75%~80%の配列類似性を有し、VLにおいて50%~60%の配列類似性を有する。対照的に、他の6つは、相互に比較した時、VH鎖において88%~98%の配列類似性を有し、VLにおいて85%~98%の配列類似性を有する。また、40H3と他の3つの群との間のアミノ酸配列の違いは、VH鎖およびVL鎖の両方の3つのCDR領域の全てにおいて見られた。
【0350】
(表3)最も高い類似性を有するアミノ酸配列、CDRおよびフレームワーク(FR)領域のペアワイズ比較
【0351】
実施例5
クローニングされたハイブリドーマに由来する抗体cDNA配列
クローニングされた各抗体についての重鎖および軽鎖についてのDNA配列が決定されており、本明細書において提供される。
【0352】
実施例6
例示的な抗体ベースの治療剤
抗体は、わずかな例外を除き、良好な親和性で結合する時でさえ、腫瘍細胞に対して細胞傷害性であることは少ない。そのため、毒性ペイロードの抗体への付加、または免疫細胞を腫瘍へ誘引するため親抗体を修飾する戦略が行われる。重鎖および軽鎖のFv部分(cDNA)の、PE38との融合は、組換え免疫毒素を提供する。40H3が、毒性ペイロードを送達するために使用され得、その他の抗体も使用され得る。40H3の親抗体は、ヒト腫瘍細胞に対して非毒性であるが、免疫毒素は、ナノモル濃度範囲で毒性である(図9)。(scFvのような)抗体結合断片またはモノクローナル抗体がシステイン残基を含むよう修飾され、薬物が抗体または抗原結合断片とコンジュゲートされる、別の例示的な構築物は、図19に示される。
【0353】
実施例7
EGFRループ、EGFRwt ECD、およびEGFRvIII ECDに対する40H3の結合親和性
平衡解離定数Kdによって記載される、18アミノ酸ペプチドループ(EGFR ECDの286-302;以後「EGFRループ」と呼ばれる)に対する40H3の結合親和性は、およそ1nMであった(図11および表4)。EGFRvIII ECDに対する40H3の結合親和性は、およそ270pMのKd値を有した(図11および表4)。この解離定数は、40H3抗体が露出したEGFRループに対して高い親和性を示すことを示した。対照的に、EGFRwt ECDに対する40H3の結合は、その低い会合速度のため、有意なKd値を生じなかった(図11)。
【0354】
(表4)EGFRwt ECD、EGFRvIII ECD、またはEGFRループに対する40H3抗体のKd
【0355】
実施例8
EGFRおよびEGFRvIIIを発現する細胞株に対する40H3-PE38の細胞傷害性
40H3のscFV領域を、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(PE)の38kDa C末端断片と融合させることによって、40H3-PE38免疫毒素を作製した。EGFRループに対する40H3 PE38の結合親和性Kdは、2.3nMであった(図12、表5)。
【0356】
(表5)EGFRループに対する40H3 DM1、40H3 MMAE、または40H3 PE38のKd
【0357】
40H3-PE38の細胞傷害能を、EGFRvIIIまたはEGFRを発現する細胞(それぞれ、F98npEGFRvIIIおよびF98EGFR)に対して評価した(図10)。40H3-PE38は、1nM未満(およそ0.4nM)のIC50でF98npEGFRvIII細胞に対して細胞傷害活性を示し、およそ4nMのIC50を有していた野生型EGFRを発現する同一の細胞F98EGFRと比較して、10倍強力であった(表6)。
【0358】
(表6)MDA-MB-468、MDA-MB-468、またはWI-38に対する40H3 PE38またはPE64のIC50
【0359】
この結果は、抗体の、野生型EGFRと比べて優先的なEGFRvIIIに対する結合特異性を確認する。肺線維芽細胞に由来し、正常なEGFR発現を有するWI-38細胞は、40H3-PE38と共にインキュベートされた時、生存率の損失を示さなかった(IC50>10nM)(図10および表6)。
【0360】
実施例9
EGFRvIII発現細胞株またはEGFR過剰発現細胞株に対する40H3 MMAEの細胞傷害性
40H3モノクローナル抗体を、切断可能リンカーmc-vc-PABによってモノメチルアウリスタチンE(MMAE)とコンジュゲートした。得られた抗体薬物コンジュゲート40H3 MMAEは、EGFRループに対して強い結合を示し、そのことから、コンジュゲーション過程がその結合能に干渉しないことが示された(図12、表5)。40H3 MMAEの細胞傷害能を、EGFRvIII発現細胞(F98npEGFRvIII)またはEGFR過剰発現癌細胞株(MDA-MB-468およびA431)のいずれかに対して評価した(図15、表7)。
【0361】
(表7)ADCおよびITについてのIC50の要約表
*値は72時間目に入手可能であった全データの平均値である(1K細胞/ウェルのみによる実験を除く)
【0362】
40H3 MMAEは、両方の細胞株MDA-MB-468およびA431に対して、およそ8nMのIC50で、細胞傷害活性を示した(表7)。ラット神経膠芽腫に由来するF98npEGFRvIII細胞は、40H3 MMAEと共にインキュベートされた時、生存率の損失を示さなかった(IC50およそ100nM)(図16および表7)。
【0363】
実施例10
EGFRvIII発現細胞株またはEGFR過剰発現細胞株に対する40H3 DM1の細胞傷害性
40H3モノクローナル抗体を、非切断可能リンカーによって、マイタンシン(DM1)とコンジュゲートした。得られた抗体薬物コンジュゲート40H3 DM1は、EGFRループに対して強い結合を示し、そのことから、コンジュゲーション過程がその結合能に干渉しないことが示された(図12、表5)、40H3 DM1の細胞傷害能を、EGFRvIII発現細胞(F98npEGFRvIII)またはEGFR過剰発現癌細胞株(MDA-MB-468およびA431)のいずれかに対して評価した(図15、表7)。40H3 MMAEは、MDA-MB-468およびA431の両方に対して、それぞれおよそ75nMおよび30nMのIC50で、細胞傷害活性を示した(表7)。ラット神経膠芽腫に由来するF98npEGFRvIII細胞は、40H3 DM1と共にインキュベートされた時、有意な細胞死を示さなかった(IC50>100nM)(図15および表7)。
【0364】
実施例11
患者由来異種移植片(PDX)神経膠芽腫細胞株に対する40H3-PE38の細胞傷害性
患者由来異種移植片(PDX)神経膠芽腫細胞株GBM39を得た。このPDX細胞株は、EGFRおよびEGFRvIIIの両方の発現を有することが示された。フローサイトメトリー分析は、汎EGFRモノクローナル抗体528による結合を介して、PDXのEGFR発現を示す(図13、表8)。
【0365】
(表8)蛍光強度中央値および全細胞数(カウント)によって提示されたGBM39に対する528モノクローナル抗体のフローサイトメトリーデータ
【0366】
40H3および40H3 PE38の両方が、PDXとの結合を示し、そのことから、EGFRvIIIおよび/またはミスフォールドされた過剰発現されたEGFRの存在が示唆された(図13、表9および10)。40H3ベースの抗体治療薬に対するGBM39の感受性を、40H3 PE38による処理によって調査した(図14)。
【0367】
(表9)蛍光強度中央値および全細胞数(カウント)によって提示されたGBM39に対する40H3モノクローナル抗体のフローサイトメトリーデータ
【0368】
(表10)蛍光強度中央値および全細胞数(カウント)によって提示されたGBM39に対する40H3 PE38免疫毒素のフローサイトメトリーデータ
【0369】
実施例12
EGFRvIII発現を有するヒト神経膠芽腫細胞株に対する、40H3に由来する免疫毒素および抗体薬物コンジュゲートの細胞傷害性
40H3ベースの抗体治療薬の有効性を、EGRvIIIIをトランスフェクトされたヒト神経膠芽腫細胞株DKMGにおいて調査した。フローサイトメトリー分析は、40H3も汎EGFR抗体528も結合することを示した(図17、表11および12)。
【0370】
(表11)蛍光強度中央値および全細胞数(カウント)によって提示されたDKMG-EGFRvIIIに対する40H3抗体のフローサイトメトリーデータ
【0371】
(表12)蛍光強度中央値および全細胞数(カウント)によって提示されたDKMG-EGFRvIIIに対する528抗体のフローサイトメトリーデータ
【0372】
抗体薬物コンジュゲート40H3 MMAEまたは40H3 DM1および免疫毒素40H3 PE38による処理によって、EGFRによって指図されるDKMG-EGFRvIIIの細胞死が証明された。3つの40H3抗体由来バリアントは、全て、DKMG-EGFRvIII細胞株において細胞傷害性を誘導した(図18、表7)。コンジュゲートされていない裸の40H3抗体は、細胞傷害活性を誘導しなかった。
【0373】
実施例13
実施例7~12についての材料および方法
細胞傷害アッセイ(図10、13、15、16、および9;表6および7):1ウェル当たり1000個の細胞を、100μlの体積で、96穴プレートに播種した。24時間後、抗体薬物コンジュゲート(ADC;40H3 MMAEもしくは40H3 DM1)、抗体(40H3)、免疫毒素(40H3 PE38)、またはシュードモナス外毒素(PE64)を、示された濃度で添加した(ADCおよびモノクローナル抗体については、100、10、1、および0.1nM;免疫毒素については、10、1、0.1、および0.01nM;PE64については、1、0.1、0.01、0.001nM)。72時間(GBM39については48時間;図3)後に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assayキット(Promega,Madison WI)を使用して生存率を決定した。このアッセイは、代謝活性細胞の存在のシグナルとなる、存在するATPの量を定量化する。Ultra-Glo-ルシフェラーゼによって触媒されるルシフェリンの一酸素添加によって生じる蛍光として、ATPを測定した。各ウェルの蛍光を測定し、未処理の細胞(対照)に対するパーセンテージとして値を提示した。データは、各免疫毒素濃度についての、トリプリケートウェルによる少なくとも2回の独立した実験からのものであった。
【0374】
結合親和性アッセイ(図11および12;表4および5):C末端Hisタグ付きEGFRvIII ECD(Acrobiosystem,DE,USA)に対する抗体薬物コンジュゲート(ADC;40H3 MMAEまたは40H3 Dm1)、抗体(40H3)、または免疫毒素(40H3-PE38)の結合親和性定数「Kd」を、Octet Red96 分析装置(Pall Life Sciences,New York,USA)を使用して測定した。EGFRvIII ECD-HISをNi-NTAバイオセンサーに捕獲し、「抗原」として使用した。簡単に説明すると、全てのリガンドおよび抗体を、1×PBS、1%BSA、および0.05%ツイーンから構成された緩衝液で希釈した。40H3-PE38を250nM、125nM、62.5nM、31.25nM、15.625nM、および7.813nMに希釈した。2ug/ml(200ulで)のEGFRlp-HIS、EGFRwt ECD-HIS、またはEGFRvIII-HISを「抗原」として使用した。Kd決定の条件は、以下の通りであった:10分、予浸、60秒、基線確立、120秒、抗原負荷、120秒、抗原負荷後の基線再確立、120秒、40H3 PE38 10会合、最後に、20分、解離。基線および会合緩衝液および解離緩衝液は、pH 7.4であった。全ての手順が30℃で行われた。ForteBio Data Analysis 11.1ソフトウェアを使用して結合動態を分析した。全ての異なる濃度に基づき決定された全てのKdを組み合わせる、Global Fitオプションを使用して、Kd値を決定した。
【0375】
フローサイトメトリーアッセイ(図14および17;表8~12):PBS(K D Medical,MD,USA)、2mM EDTA(K D Medical,MD,USA)、1%BSA(Sigma-Aldrich,MO,USA)、および0.1%アジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich,MO,USA)からなるFACS緩衝液において、抗体または免疫毒素を、96穴プレートにおいて、4℃で1時間、懸濁細胞(1ウェル当たり1×105細胞)と共にインキュベートした。マウス抗PE抗体M40-1を免疫毒素結合を検出するために使用した。4℃で45~60分間、1:250希釈で、R-フィコエリトリンがコンジュゲートされたF(ab')2ヤギ抗マウスIgG Fcγ(カタログ番号115-116-071;Jackson ImmunoResearch,ME,USA)によって、結合した抗体を検出した。SA3800 Spectral Analyzer(Sony Biotechnology,San Jose,CA,USA)によって抗体結合を特徴決定し、FlowJo(Tree Star,Inc.,Ashland,OR,USA)によってデータを分析し、蛍光強度中央値がプロットされたヒストグラムフォーマットで表示した。
【0376】
本発明の原理を適用することができる多くの可能な態様を考慮すれば、例示された態様が本発明の例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことが理解されるはずである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。従って、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および本旨に含まれる全てのものを本発明として主張する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
【配列表】
2022539589000001.app
【国際調査報告】